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2003-03-25 第156回国会 参議院 財政金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十五年三月二十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      平野 達男君     渡辺 秀央君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柳田  稔君     理 事                 入澤  肇君                 尾辻 秀久君                 林  芳正君                 円 より子君                 浜田卓二郎君     委 員                 上杉 光弘君                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 田村耕太郎君                 中島 啓雄君                 溝手 顕正君                 森山  裕君                 若林 正俊君                 大塚 耕平君                 勝木 健司君                 櫻井  充君                 峰崎 直樹君                 山本  保君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君                 椎名 素夫君    国務大臣        財務大臣     塩川正十郎君        国務大臣        (金融担当大臣)        (経済財政政策        担当大臣)    竹中 平蔵君    副大臣        内閣府副大臣   伊藤 達也君        財務大臣    小林 興起君        国土交通大臣  中馬 弘毅君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    政府参考人        総務大臣官房審        議官       岡本  保君        総務省自治税務        局長       板倉 敏和君        財務省主計局次        長        杉本 和行君        財務省主計局次        長        勝 栄二郎君        財務省主税局長  大武健一郎君        財務省理財局長  寺澤 辰麿君        国税庁課税部長  村上 喜堂君    参考人        日本政策投資銀        行総裁      小村  武君        日本銀行総裁   福井 俊彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成十五年度における公債発行特例に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ─────────────
  2. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十五年度における公債発行特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として総務省自治財政局長林省吾君外六名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十五年度における公債発行特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として日本政策投資銀行総裁小村武君外一名の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 平成十五年度における公債発行特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 池田幹幸

    池田幹幸君 おはようございます。日本共産党池田幹幸です。  今日は、竹中大臣内閣委員会と重なっておりまして、時間、御無理いただきましてありがとうございます。それで、短時間でということですので、竹中大臣の件について、金融問題について先にちょっと時間をいただきたいと思うんです。  前回はちょうどイラクへのアメリカの攻撃が始まった日でばたばたしておりまして、最後の方が何かぼやけたよう感じになっておりますので、ちょっと前回の締めくくりをさせていただきたいなというふうに思うんです。  前回といいますのは、新生銀行融資姿勢の問題です。私が、新生銀行が要注意先回収の対象にして、いわゆる貸しはがしですね、やっているということで問題を取り上げたんですが、こんな回収の仕方いいのかということで尋ねたところ、大臣は、良い取引先を大切にすると、銀行ガバナンスを発揮してもらいたいというふうにお答えになった。私は全く同感なんです。  その上に立って伺いたいんですけれども、私、問題にしたのは、新生銀行は要注意先にとどまらないで正常先に対しても回収を進めているというところを問題にしました。正常先に対する貸しはがしプログラムというものがあるということで、そのことについて内部文書もお示ししたわけなんですが、若干繰り返しになりますけれども一、二分説明したいと思うんですが、要するに新生銀行が二〇〇二年の四月に社内文書で、正常先に対する貸しはがしの基本的手口が書かれておる、そういう文書を出しております。  その中では、回収の期限を二〇〇二年の十二月末として、資産売却、ほかの銀行などの肩代わり、それができなければ、最長二、三か月の準備期間を与えた上で、ロールの停止もやむを得ないという形でやっておるということですね。短期資金の借換えという手口がここで活用されているわけですけれども、それをやるに当たって、上期中、六月末ですね、六月末に実現可能な対応策に係る合意を得たいと。対応策の実現可能が認められない場合には、上期終了前であっても短期ロールができなくなる可能性がありますといった、そういった交渉例、示しながらやっていると。悪いうわさが立たないよう細心の注意を払うという注意書きもあるということも前回説明しました。  そうしますと、大臣答弁になった取引先大切にするという、そういったものとは全然懸け離れた、正常先という優良企業を大切にしない、そういった姿勢がここに現れていると思うんですが、いかがでしょうか。
  8. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 前回も申し上げましたように、銀行としては、これは社会のために、また自らの利益のためにもその優良な貸付先というのはこれは大事にすると、これは当然のことであろうかと思います。  今、委員が御紹介になったのは私的な内部文書でありますので、我々としてはちょっと確認しようもないわけでございますけれども、一つの重要なポイントは個別の経営判断、ここは貸すかどうかと、これはやはり貸す側の言い分、借りる側の言い分、常にこれはあるわけでありますので、その個別の経営判断について我々として立ち入るということは、これは困難であるということをまず御理解をいただきたいと思います。  重要なことは、我々としては、やはり全体として社会の中でしっかりとした貢献をしていただきたいということ、それともう一つは、個別の取引に関してあえて申し上げられることがあるとすれば、銀行の貸す側という優越的な地位を濫用してそれで不当な条件を迫ったり、それはこれできちっと取り締まられるべき問題であると、そのように思っております。  繰り返しになりますが、我々としては、やはり銀行として是非ガバナンスを発揮していただきたい、そういう結果を出してもらいたいと思っておりますし、ただし、個別の経営判断については、これはもう非常に細かな判断の積み重ねであろうというふうに思っておりますので、これについて立ち入るということは差し控えたいと思います。
  9. 池田幹幸

    池田幹幸君 だから、銀行ガバナンス発揮してもらいたいというのであれば、その実態がどうであるかということを知った場合には、やりようもないんだという形じゃなしに、きちんと調査をなさったらいいんですよね。私、この文書あるってお示ししました、あれ間違いないですから、四月二十六日付け文書を調べられたらいいんですよね。要するに、正常債権を減らしていっているということについては統計上もはっきりしていますですよね。この間も言いましたけれども、二〇〇〇年度に業務改善命令を受けたときの減少率が、正常先ですよ、一二・七%なんですが、二〇〇二年度の上半期では一一・八%、減少しているんですね。だから、改善命令を受けても全然改まっていないということなんですよ。  これは雑誌ですけれども、エコノミストに出て、じゃなかった、朝日新聞インタビューですが、朝日新聞インタビュー八城社長が、リスクに見合った金利を取ろうとしたら二〇〇一年に業務改善命令貸しはがしの批判を浴びたと、日本は理屈が通らないと思ったというんですよ。このため、二か月程度の金利引上げ交渉で貸せないと即決していたのを改めて、半年掛けてじっくり説明するようにした、やり方は変えたが原則は曲げていないと言っているんですよ。堂々たるものですよね。二か月を半年に引き延ばしたという、何のことはない、五十歩百歩ですが、そういうことを平然と言っています。改善命令どこ吹く風ということですよね。こういった実態があるんですよ。  これはもう新聞報道ですからごらんにもなっていたかも分かりませんが、要するに新生銀行では債権回収どんなふうにやっているかと。やっぱり同じ文書でこんなこと書いてあるんですが、債権回収の成功をホームランと呼んでいる、ホームラン。これは雑誌週刊エコノミストにも出ています。各部門の査定には、回収によって貸出し残高をどれだけ減らしたかということで査定がされるんです。融資第三部、融資戦略本部というところでは何をやっているかといいますと、千点満点で業績評価します。そのうち、正常先残高削減、これが六百五十点です、千点のうち。正常先減らしたら六百五十点。それから、瑕疵担保特約による買戻し百点、その他二百五十点、こんなふうに付けているんですよ。要するに正常先を減らせばいい成績が収められるというわけですね。こういうふうにして職員をもう、銀行職員指導している。どう思いますか。
  10. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 繰り返しになりますけれども、個別の企業の中での私的な管理のこと等々、内部文書の存在等々、ちょっと我々としては確認しようがございません。  委員の御指摘は、そういった銀行がきちっと貸せるはずのところにきちっと貸していないのではないだろうかという、そういう御懸念をいろんな形で表明しておられるのだと思います。  我々としては個別の、繰り返しになりますけれども、これは経営判断現場現場で物すごい数の経営判断があるわけで、それについて監督当局として立ち入るというのは、これは現実問題としてはこれはもう不可能だというふうに、また、これはやはり、これはもう市場経済の大原則としてそういうことはまたすべきでもないということを是非とも御理解をいただきたいと思います。  我々としては、結果としてやはり企業のコーポレートガバナンスが、銀行ガバナンスが発揮されるよう枠組みを作って、その下でしっかりと監視をしていくと。個別の取引については優越的な地位の濫用がないように、これは公取等々の枠組み等の中でしっかりと見ていただくと、そういうことに尽きようかと思います。  繰り返しになりますが、我々は、特に公的資金を注入したところについては経営健全化計画を出させておりまして、それに基づいてしっかりと経営がなされているかということを管理するという仕組みを持っているわけでありますので、その枠組みに沿って新生銀行についても融資態度についてフォローをしているところでございます。
  11. 池田幹幸

    池田幹幸君 健全化計画を出させて、実際どういった姿勢銀行がやっているのかということをこれはもう金融庁として調べようがないんであれば、指導のしようもないんであれば、健全化計画出す意義すらなくなってきますよ。そんなことじゃ駄目ですよ。ちゃんときちんと、こういうことがやられているんだから、調べようがないんじゃない、調べれば調べられますよ、そうでしょう、その権限あるわけですよ。そういうことを私はやるべきだと言っているんです。前回もお話ししましたけれども、これ新生銀行のまねを全部やり始めたら大変ですよ。もう既に始まっていますよ。前回も申し上げましたビッグ4でもそれやっていますよね。要するに、同じことをやって、もう正常先だろうが何だろうが、収益の低い貸出しをどんどん回収するということになりかねない状況になっているわけです。  竹中大臣は、前回、前から新生銀行のこれについて新しいビジネスというふうに言っているんですけれども、しかし投資ファンド、年間一〇%から二〇%のリターンを求められて、そういう方向でこれをやっていくということになりますと、これは日本金融システムにとって決していい結果を生まない。このままほっておいたんじゃ、もうなめられっ放しと、前回も言いましたけれども、そういう状況になるんだということを申し上げておきたいと思います。  大臣、お時間ないということでございますので、どうも──答弁結構です。済みません。もう同じ答弁でしょう。調査しますということだったら答えてください。
  12. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) その貸し渋り、貸しはがしに対して厳重な態度を取らなきゃいけないということは私自身も痛感をしております。貸し渋り、貸しはがしのホットラインで今情報を集めて、それを検査に反映させるというよう手法、新たな手法を我々は取ろうとしておりますので、それはひとつ是非とも積極的に活用して、池田委員懸念ような問題が少しでも減じていくように努力をしたいと思っております。  それと、中小企業向け貸出しについては、業務改善命令をこれ十三年三月に発出しておりますけれども、それを受けて、十四年三月期にはその目標を新生銀行も達成をしております。今年度に関しても、今後に関しても、もしそういうことがあるならば、これはやはり厳しい業務改善命令を出してそれを達成させると。これはもう監督の重要な柱として、しっかりと我々としてはやらせたいというふうに思っております。
  13. 池田幹幸

    池田幹幸君 どうも大臣ありがとうございました。  それじゃ、税法に入りますが、消費税問題について、私、今日は伺いたいと思います。  改正案では、消費税中小企業特例、これを大幅縮小するということになっております。そもそも、中小企業特例というのを法律に定めたということについてなんですが、これは一体どういう理由から入れたものでしょうか。私は、要するに、零細業者納税事務負担の問題とか税務当局徴税事務負担の問題等々から出たものだと思いますが、確認願います。
  14. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 先生承知のとおり、我が国として消費税導入しなければという時期になってまいりましたけれども、大変当時反対も多かったわけでございます。そういうことの中から、特に事務負担が多い、あるいは大変だと思われる層に配慮いたしまして、そして導入に踏み切ったという、そういう経緯から中小特例がその当時作られたと承っております。
  15. 池田幹幸

    池田幹幸君 財務大臣に伺いますけれども、このごろ、そういたしますと、この中小企業特例縮小するということについては、そもそも導入時の事情が変化したと。つまり、小零細企業に対する、小零細企業納税事務負担、これについては余りもう考慮しなくてもよくなったというお考えですか。
  16. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 常に零細企業等については事務負担というのは、これは税金を納める納めないにかかわらず、特に納税ということを考えればあるわけでございますから、そこのところについては、やはり今なお簡易課税制度というものを導入しているわけでございまして、これによって今回も処理していくという考え方でございます。
  17. 池田幹幸

    池田幹幸君 簡易課税制度も五千万ということに縮めるわけですよね。そこまでこうやると、三千万から一千万。  私、言いたいのは、その部分納税者にとって事務負担というのは、これはもう大した問題じゃないということですか。
  18. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 大した問題でないということは言えないと思うんですが、国民すべて納税義務がある中に、だれでも事務負担というのはどうしても起こるわけでございますが、しかし余り過大な負担であるとこれはうまくいかないということはあるわけでございまして、これは配慮しなければならないわけでございますが、今のこの税当局のいろいろな調査によりますと、五千万を超えている人たちについては、簡易課税がいいのか、それともきちっと計算して出した方がいいのかという、つまり、計算できるぐらい事務について精通をする、あるいは処理ができるという人たちが非常に増えてきているというよう時代背景を受けまして、比較して出すぐらいでしたらもう簡易課税制度要らないわけで、最初からきちっとした課税をすればいいわけでございますから、そういうことの中に、まあ五千万以下の人たちは大変だろうけれども、まあ五千万ぐらいで切ろうかというよう考え方に踏み切ったところでございます。
  19. 池田幹幸

    池田幹幸君 簡易課税の問題、ちょっとおくにして。  三千万から一千万、免税点引下げを中心にちょっと伺いたいんですが、中小企業団体日本商工会議所等団体から要望書政府に対して出されておることは周知のとおりなんですが、そこでは明確にこう言っているんですね。  要するに、納めている側の中小企業の側が、これは決して免税業者ということじゃなしに課税業者が大部分ですよね、この団体団体では。消費税創設時の小規模零細業者実態は現在も何ら変わっておらず、いわんや、デフレ経済の進展や価格競争の激化により、仕入れにかかわる消費税分価格転嫁がより困難になっており、いわゆる益税どころか、むしろ損税となっている。こうした実態を考慮せずに免税点制度縮小・廃止することは、消費税分転嫁できないことによる企業収益圧迫要因を増加させるだけでなく、事務負担を過度に増大させ、小規模事業者経営に重大な悪影響を及ぼすものであるということで、これはもう反対だという要望書、これは受け取っておられますよね。実際、もう中小業者が何ら変わっていないんだと言っているんですから、まずその上に立った対策を考えるべきじゃありませんか。
  20. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 御承知のとおり、一方では国民皆様から、何となく自分たち消費税を取られているんだけれども、それが本当に国に納税されているのかと、そういう疑問の声が上がってきているのも御承知のとおりであります。  そういうことを配慮いたしまして、やはり国民皆様消費税払っていただいたらそれは税当局に来るんだということも示していかなければならないということの中に、それじゃ三千万以下でいいのか、一千万以下でいいのかとか、そういうようなことになってくるわけでありまして、その辺を配慮しまして、この税の透明性あるいは公平性という観点から思い切って今度三千万が一千万になるわけでございますが、しかし、先生おっしゃるとおり、大変だというような方々に配慮しまして、いろいろと相談業務あるいはPR業務ということについては税当局としても更に一層頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。
  21. 池田幹幸

    池田幹幸君 その中小業者団体中小企業団体がもうこれじゃもう税負担に堪えられなくなるんだと言っているんですからね。それをもっと重く受け止めないかぬし、透明性の問題についてはまた後からちょっと伺いたいと思いますが、引き続き免税点引下げについてなんですが、これは経済産業省アンケート調査やっている。衆議院でも我が党の吉井議員が示して質問しましたので、今日は資料として準備しませんでしたけれども、経済産業省はきちんとそれ調査しているんですね。  そこによりますと、法案の特例縮小に関して、仮にあなたの会社が、商店が課税業者となる場合には消費税価格転嫁できますかと聞かれたのに対して、これに対する回答、売上げ二千五百万から三千万円の階級でほとんど転嫁できないと答えている、それから一部しか転嫁できないと答えている、その合計が四五・四%です。全階級の平均で見ますと五二・三%です。この半数は、半数事業者がこれは転嫁できないと答えている。この理由大臣塩川大臣ちょっとお休みですけれども、これは大変大事なところなんで、ともかくこんな状況に置かれている、税金を納められない、堪えられない、この理由は何だと思われますか。
  22. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 何といいますか、全部消費税は納めなければならぬですけれども、あるいは力関係で、業界なんかで、消費税をおれは払わない、まけろとか、そういうようなことがこの日本でございますからあるのでないかと、中小企業実態等を見た感じで、私は個人的にはそんなことも推測するわけでございますが、しかし理論的に言いますと、やはりそこは払っていただく、納税義務があるということでやってまいりませんと、いつまでもそういう悪い、一部にあると言われております習慣を残して、いや、結局そういうものはまけてしまえばいいんだということではこの消費税が普及してまいりませんので、やはり払っていただくことが当たり前なんだという風潮をどこかできちっと作っていかなければいけないということもありましょう。  しかし、さはさりながら、先生がおっしゃるとおり、いじめられるというようなそういう現実の中でどんなふうに考えていくかということがこの判断だと思うわけでございますが、ただ、一方で、今のところ、事業者の中で、現在のこの状況の中で実は六割は今消費税を払っていないんですね、三千万以下でございますから。それを今回一千万にいたしますと、逆に四割が払わない、六割は払うようになるというように、四割六割と、こう変わってくるわけでございまして、まあ、今回こういう状況の中で、やはり消費税というものは納税するということになっているわけでございますから、そういう中で、この免ずる人たちのウエートを六割はいいよというところから四割ぐらいはいいよと、逆に六割は払ってちょうだいよという、この比率の逆転ということもこの時代背景として必要かなということで踏み切ったところでございます。
  23. 池田幹幸

    池田幹幸君 ちょっと私の聞いたこと以外のことで随分いろいろとお話しになったわけですがね。その六割の問題についても私、後で質問します。そのことはそれで置いておいて。  私伺ったのは、何でそういうことになっているかという理由なんですね。それはある程度言われたけれども、要するに、つづめて言えば競争が激しいということなんですよね。これ、通産省のこのアンケート調査の中でちゃんと別途そのことについても聞いているんです。それを見ますと、消費税転嫁が不十分な主な理由は、競争が激しいため、景気が低迷しているためというのが半数以上なんです。正に、ほかは小さな細々した理由なんです。景気が悪いからなんですよね。競争が激しいからなんです。  だから、こういう状況が続く限り、払ってくださいと言ったって、払いたくたって払えないという現実があるということを今問題にしているんですね。だからそこなんですよね。払ってくださいという滞納一掃運動については、これもまた後で伺いますがね。  要するに、転嫁できないという業者が納税にどのように対応しているかということなんですが、やっぱりこのアンケート調査によりますと、売上げの少ない業者では、課税業者であっても免税業者であっても、少なくない割合の業者が損税を被っていると。自分から仕入れで支払った消費税分も払っちゃっているということなんですよ。自分の分が乗っけられないだけじゃなしに、仕入れで払った分まで乗っけられないという状況が起きているわけですね。これは実に約五割が損税を払っているということがこのアンケート結果には出ているんです。細々したことをちょっと説明する時間はないので省きます。数字は明確に表れております。  そうしますと、こういった実態が、免税点引下げ損税というそういう実態を更に悪化させていくということで、中小企業経営を今度のこの法改正によって、三千万から一千万に引き下げたことによってかなり大きな事態を生み出すことになると、そういうことについては十分配慮して、考えた上でやってのことですか。
  24. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 一応、先ほど言いました、中小企業の四団体と言われましたが、そういう団体等とも担当官庁を通じてよく話をしてきたところでございますし、そういういろいろなところへの根回しも、根回しというかお話合いも済んだ上で、一応この決定に至ったというふうに承知をしているところでございます。  さはさりながら、先生がおっしゃるとおり、いろいろとこの不況下に大変なこともございますし、急にということもございましょう。したがいまして、実施時期もすぐではなくて、この法律を通していただいてからでも、平成十六年四月、来年からでございますので、その期間に、いろいろとこういうふうになっていきますよという制度のPR、あるいは消費税というものはちゃんと転嫁していくんだというような思想の普及等も重ねて合わせましていろいろと準備をしていきたいと、そんなふうに考えているところでございます。
  25. 池田幹幸

    池田幹幸君 そんな、もう通っちゃってからどうするこうするじゃ駄目なんで、今これ審議していて、これ駄目だと、我々は反対だという立場から質問しているんですからね。通してしまってからどうしましょうという話じゃないんですよね。それはまず考えていただきたいと思いますが。  それで、こういう形で経営が圧迫されたらどうなるのかということなんですけれども、消費税の滞納問題というのは既に現実の問題としてかなり悪化しています。  国税庁から資料をいただきました。この資料の一から三は、一、二、三は国税庁からいただいた資料です。いわゆる滞納の実態ですね。  この推移を見てみますと、法人税に関して見ますと、滞納の発生割合が一九九二年度の三・一から二〇〇一年度一・六と半分に減少しています。ところが、消費税の滞納発生割合は、九二年度の五・四から二〇〇一年度五・八と、若干増加という状況ですね。新規発生件数で見ますと、法人税が四十七万三千から十五万九千件という形で、七〇%ほど減少しています。消費税は逆に増えたというか、若干横ばいですね。それから、期首滞納件数で見てみますと、これは消費税が七・五倍になったのに対して法人税は一・一倍ということで、これも相当に期首滞納では消費税が多いという結果がこれ明確に出ております。  法人税の滞納発生割合が減少している一方で、消費税は若干なりとも増加であると。期首滞納件数については大幅に消費税が増加と。これは消費税の滞納がやっぱり深刻になってきているということを実態に示しておるわけですね。  そうすると、じゃ、その理由は一体何なんだろうかということなんですが、いかにお考えでしょうか、理由
  26. 村上喜堂

    政府参考人(村上喜堂君) お答えいたします。  税目別の発生原因について必ずしも明確な御説明できないわけでありますが、今、先生から法人税と消費税の対比がありましたが、法人税の場合、御案内のとおり、赤字になれば法人税の納税はございませんから、やはり経済情勢が悪いと、その企業経営状態が悪くなってくると赤字になってまいります。そうしますと、納税がございませんから、したがって滞納も発生しないということだと思います。消費税は、一方、赤字黒字関係ございませんから、経済情勢に沿って滞納があるのではないかと思います。
  27. 池田幹幸

    池田幹幸君 そのとおりなんですよね。正にそのとおりなんです。ここのところが大事なところなんですね。  そうしますと、消費税の場合、売上げが伸びないと、景気が悪くて。そこで、売上げが落ちている中で、消費税転嫁できないと、消費税も自己負担している。こういう実態が今の状態を悪くしているわけなんですから、じゃ、どうすればいいのかということになるわけなんですけれども。  少なくとも、免税点引下げということになりますと、この実態をむしろ悪化させる、そういうことになるということじゃありませんか、今の部長の説明からいっても。当然、論理的にはそういうケースになりますね、大臣。いや、ちょっと待って、これはもう政治的な問題だから、大臣、本当は大臣に答えていただきたいんですがね。
  28. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) おっしゃるとおり、この状況下で滞納が増えるか増えないかといえば、多分増える可能性もあろうかと思うわけでございますが、しかし、税というのを取る、いただく方から見ますと、滞納がありそうだから取らないとか、そういう考え方でなくて、やはりいただくところからいただくと。いただけるというか、そういう状況にあるわけですから、売上げがあって、そこからいただくわけですから。理想論に基づいて、理念に基づいて、さっき言いました公平性という理念に基づいてきちっといただくということで課税をするわけでございます。  課税をした後は実態論になるわけでございまして、さはさりながら、こういう状況でなかなか払えない、苦しいとかいうことについては、やはりまた、先ほど申し上げました税の相談とかいろんなことをきめ細かくやっていくつもりでございまして、いずれにいたしましても、これで制度を変えますと、まず、払える方はすぐ払えるということにもなろうかと思うわけでございますので、あと大変な方についてはやはりいろいろと実務の中で相談にあずかっていく。  ただ、いずれにいたしましても、ずっと国民の間から出てきております、私たちが納めた消費税がどこかへ消えちゃっているんじゃないかと、いわゆる益税解消という議論もございますから、そういう面での公平性というのは非常に大きく担保したという形になるのではないかと思っております。
  29. 池田幹幸

    池田幹幸君 どこかに消えちゃったんじゃないかという益税の問題の解消だと言われました。これは、そういう考え方があると大変なんですよ。  これはひとつ今日の資料の三、四を見ていただきたいんですがね。これは東京国税局と税務署が、これは二〇〇〇年ですね、九九年から二〇〇〇年三月にかけて電車の中のつり革広告でこれやったやつなんです。これを見ますと、「私らさあ、給料から源泉で所得税ひかれて、ちゃんと消費税も払っているのにそれを預かる人のなかにきちんと税務署に納めない人がいるなんて、ぜったい許せないじゃん。」と、こう書いてあるんですが、これ、「滞納しない、正しい納税。」とあるんですけれどもね。  正に今、小林さんおっしゃったように、滞納よりもね、脱税しているんじゃないか、消費税取りながら納めていないんじゃないか、そういうふうに消費者に思わせる効果抜群ですよね。業者に対して滞納しないで払ってくださいという広告ですよと言いながら、実際はそうじゃないんじゃないですか。  まず伺いたいんですが、消費税「預かる人」ってあるんですが、これは消費税は預かり税ですか。いや、それはいいですよ、そんなもの。事務局、いいです。大臣、これはもう正に政治姿勢の問題です。さっきおっしゃった。これは預かり税じゃないでしょう。
  30. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 素人的にいいますと、預り金的な性格ということでそういうことになるんでしょうけれども、確かにこれ見ますと、ちょっと余りいい広告ではないなという気がいたします。これもう、今出ているんじゃなくて、もうやめて、やめちゃったんでしょう、やっぱり。やっぱりそうですね、これはちょっとねということになるじゃないですか。だから、そういういろいろな誤解も解いて国民の気持ちを一つにしていくために、今回はこれですっきりある程度していく部分もあると。  ただ、重ねて申し上げますけれども、何か益税を良くないから解消するためにこういう制度を設けた、そういうことじゃないですよ。結果として益税があっても解消されるだろうというだけでありまして、これは結果論でありまして、目的はあくまでも皆さんにただ公平に払っていただくという理念でやっているだけでございますので、それは御承知おきいただきたいと思います。
  31. 池田幹幸

    池田幹幸君 理論的に益税があっても、その益税なんてもう本当ないんだと、もう損税だって言っているんです、最初申し上げましたように。それが実態なんですよね。  そこへもってきて、これもうやめたでしょうとおっしゃるけれども、最近のコマーシャルというのは、テレビのコマーシャル、一応ストーリー的なものをやりますね。最初三十秒ぐらいやっていたのが、だんだんだんだん流しているうちに縮めて、十秒に縮める、五秒に縮めても前のやつが頭の中に残っていますから同じ効果を発揮するんですよ。そういうスタイルになっているでしょう。これその手法なんです。まずこれで長いことやって、今、まんてんちゃんですよ、これ。確かに、「預かる人のなかに」という、こういうフレーズはないけれども、「とめないで!私の払った消費税。」と。止めているという思想がやっぱりあるでしょう。止めているんじゃないですよ。納めたくても納められない経済実態だと先ほど申し上げました。これ同じ手法じゃないですか。直ちにやめるべきじゃないですか。  大臣、これはもう答えてください。いやいや、事務局はいいですよ、こんなもの。政治的な問題だから。結構です。やめるべきですよ。
  32. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) これが今のあれでございますか。
  33. 池田幹幸

    池田幹幸君 はい。
  34. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) ちょっとまあおっしゃるとおりいろいろとございますので、このせりふがいいかどうかは、大事なことでございますから、税というのは。ちょっと考えさせていただきたいと思います。
  35. 池田幹幸

    池田幹幸君 本当に、さっき申し上げましたよう実態を知らない方々、消費税、業者の方々が払いたくても払えないといった実態にあるんだということを知らない方々のために、こんなことは許せない。特にこの写真は念が入っていまして、野菜のかごを抱えているんですね。八百屋さんですよ。本当に日常の小零細企業を敵視するといったようなことがありますから、これは改めてもらいたい、さっき言われたんでそのとおりにしていただきたいと思います。  それで、結局は、それをやろうと思えば景気の回復ということが今本当に大事になってくるということなんですが、そこでもう一つの問題について申し上げておきたいというふうに思うんですね。  免税点、先ほど言いましたように、免税点引下げは、小林さんは、何か三千万から一千万になったとしても、あ、違うわ、免税業者が六割だと、今度は四割になるということなんですよね。二割減るというよりも、課税業者が二割増えるということになるんですかね。その課税業者が二割というのは、大体百四十八万事業者、それで間違いないですか。ちょっと事務当局。
  36. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  現在、三千万のところで免税業者が三百六十八万社、これが二百三十一万社に減りまして、百三十六万社が課税事業者になると、こういうことでございます。
  37. 池田幹幸

    池田幹幸君 そうしますと、今度、免税点引下げによる増収見込みが三千二百億円ということになっておるわけですが、これは間違いないですね。そうしますと、この三千二百億円というのは消費税収の約三%に相当するわけです。  大臣、伺いたいんですが、六割から四割に減るという形で相当納税課税業者が増えますと。しかし、それによる増収効果は三%だと。そうすると、ここで政治判断ですよ。こんなもの、大した増収効果もないのにやめたらいいじゃないですか。これやめれば、中小業者にとっては非常にハッピーなんです。ハッピーというほどじゃないか、今までどおりだから。少なくとも奈落の底に突き落とされる気分は味わわなくて済むんですよ。こんなことを考えたら当たり前じゃないですか。どうですか。
  38. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) おっしゃるとおりのそういう政治判断の中から、やはりできるだけ多くの方にきちっと税金というのを払っていただこうというような税の改革といいますか、あるべき姿の追求ということも含めて、消費税導入時においては余り急激なショックということでいたさなかったものを、そろそろここまで持ってきたという、そういう流れの中での政治判断ではないかなと、そんなふうに思っているところでございます。
  39. 池田幹幸

    池田幹幸君 その政治判断は逆でなけりゃいかぬと思いますよ。ともかく、百三十六万の言ってみれば消費税滞納候補者が増えるわけですよ。要するに、通産省、あ、失礼、経済産業省のアンケート、先ほどのアンケートでは、要するに売上げの低ければ低いほど、売上げの少ない階級ほどともかく転嫁できないわけですから。転嫁できないんです。これだったら、消費税倒産とか消費税廃業とか、そういうのが出てきますよ、本当に、冗談なしに。何のための政治だということを私は申し上げたいんです。  この点についてはおきまして、もう一つの問題に移りたいと思いますが、仕入れ税額控除の問題について伺いたいと思います。  消費税導入時点からこの論議はあったんですけれども、現行法制度の下では、税務調査をやった際に消費税の仕入れ税額控除が全額否認されるおそれが出てくるんじゃないかという論議が導入時ありました。そのときに、そんなことはないといって政府はそれを否定し、税務調査における不当な扱いによる仕入れ税額控除が全額否認されるなんということはないんだという答弁がありました。しかし、実際上、今そういう事態が起きています。仕入れ税額控除否認事件というのが相当起きておりまして、中小企業納税できずにつぶれるということが起きています。  そこで、この問題についてちょっと伺っていきたいと思うんですけれども、消費税導入のときの立法趣旨を定めた税制改革法があります。その税制改革法の十条でこう言っています。経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるものとするということと、我が国における取引慣行及び納税者事務負担に極力配慮したものだと。これは先ほどの論議であった、そのとおりなんですね。  そうしますと、ここまで明確に規定している以上、我が国の事情をまず勘案したとしますと、消費税は、我が国の事情を勘案した累積排除、累積を排除する、それから前段階控除方式の付加価値税だというふうに定めたものだというふうに私は解するんですが、それでいいですよね。
  40. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  先生御存じのとおり、消費税は正に、税法の三十条の七項に書かれておりますように、消費税自体は各段階における事業者の売上げに課税して、税の累積が生じないように前段階で課された税を控除する、仕入れ税額控除ということを基本としているわけでございます。したがいまして、あくまでもこれは、諸外国も同じでございますけれども、各取引段階における事業者の売上げに課税し、前段階で課された税を控除する仕組みを基本としていますから、付加価値そのものではありません。  したがいまして、あくまでも仕入れの掛かった税額を控除するということを前提に、前段階で課された税額を控除する要件として、取引の事実を証する書類等の保存ということを義務付けた上で控除を認めるという仕組みができ上がっているわけであります。
  41. 池田幹幸

    池田幹幸君 そこのところのいろいろ議論あるんですが、結果的には付加価値に税を掛けることになるじゃありませんか、累積排除して前段階控除してやると。計算の仕方として、売上げに対する税率を掛けるやり方で計算するんですよという話ですからね。要するに、消費税、付加価値税ですから、消費税というのは少なくとも前段階で自分が支払った消費税分については販売の際に転嫁できるんだと、こういうことになっているわけですよ。そういうものとして理解した上での話なんですけれども。  事実、累積排除方式だからということで導入時にいろいろ議論があって、国税庁の課長がわざわざ「エコノミスト」に投書したりして、要するにこんなことまで言っているんですね。要するに、仕入れ税額控除が全くできないケースも出てくるじゃないかという論があったのに対して、そんなことはないんだと、このようなことは現実にあり得ないと言っているんですよ。わざわざ現実にあり得ないということで投書してきたんですけれども。  実際上は、仕入れ税額控除というのは納税義務者たる事業者のこれは権利ですからね。それはそうでしょう、売るときに転嫁する権利、ちゃんとあるわけですから、そのためには控除してもらわなきゃいかぬということですよね。だから、その控除をする権利があるわけですから、それを全面的に否認するなんてことは普通はあり得ないと考えるのは当然で、これ理論的にはそうですよね、大臣。──うなずいておられるので、そう進めたいと思うんですが。  そうしますと、消費税の仕入れ税額控除が否認されるということが実際起きているわけですけれども、法律上は、さっき三十条七項と言われたんですけれども、その根拠は三十条七項だけですよね。
  42. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 正に三十条七項に明確に規定しているということでありますが、諸外国、EU等でも、あくまでもそうした前段階で課された税額を言わば保存する、あるいはその帳簿、あるいはEUの場合にはインボイスという形でございますけれども、そうした仕入れ税額を証明する書類を残して初めて言わば税額控除ができるということであります。いわゆる先生が言われました付加価値そのものを課税対象としているという構成ではありませんで、売上げに課税し、ただし、その売上げから既に掛かった税金は累積を排除するために差っ引くという仕組みでできているということであります。
  43. 池田幹幸

    池田幹幸君 だから、前段階控除するのは当然、控除は納税義務者である業者の権利ですよ。こんなことはもうさっきも言っているんで、元へ戻さないでいただきたいんですけれども。  要するに、三十条七項というのは、帳簿とか請求書等を保存しない場合には、いわゆる「当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。」ということだから、保存していなかったらもう税額控除しないよということなんですよね。で、これ、私思うんですけれども、保存がなくても、それがこれだけ仕入れに掛かっているよということが証明できれば、それはそれで問題ないんだろうと思うし、簡易課税というのもそういう考え方であるんだろうと思うんですけれども、それはおくとして、保存していない場合にはまあしゃあないなというふうなことにするとしても、やっぱりこれは一つ問題があるんじゃないかなと思うんです。  で、今実際、税務署がやっているのはどのようにやっているかといいますと、保存しない場合というのは、調査に入ったときにすぐ見せない、提示できるようになっていないと、それも保存しないということになるんだという解釈なんですね。そういう解釈の下にやっていますから、これ自身は僕は拡大解釈だと思うんですけれども、それはさておくとしても、それはさておくとしても、そういたしますと、保存、すぐ提示できるようにして保存していない場合以外には否認理由はないと、こういうことになりますよね。これは当局の方で。
  44. 村上喜堂

    政府参考人(村上喜堂君) お答えいたします。  消費税法三十条七項の執行のお尋ねでございますので、先ほど主税局長から答弁いたしましたように、これは帳簿及び請求書の保存と法律に明確にうたっております。この保存につきましては、帳簿の保存という解釈でございますが、これは物理的な保存では足りず、税務調査のために税務職員により適法な提示要求がなされたときに、直ちにこれに応じることができる状態での保存を意味すると、こう解されております。これは、国税当局だけの解釈ではなくて、判例でも支持されている考え方であります。
  45. 池田幹幸

    池田幹幸君 だから、それは、私の方からそれは申し上げたんです。それ以外の理由はないなということを質問しているんですよ。
  46. 村上喜堂

    政府参考人(村上喜堂君) この帳簿及び請求書の保存でございますが、どういうことを、記載事項が法定されております。したがいまして、ケースによりますけれども、その記載事項を満たさない場合は、その部分について否認されることはあるかと思います。
  47. 池田幹幸

    池田幹幸君 それは技術的な問題で、要するに保存していないということを理由とする以外にはないということだと思うんですね。  ところが、実際は違うんです。もっとほかの理由で否認されているんです。これは、こういうことが起こっているんですね。立会人がいるとか、立会人がいるといった等の理由で帳簿調査をやらないんです。もうこれ以上調査しませんということで、帳簿等の確認努力をしないまま、帳簿の提示がなかったということにして仕入れ税額控除否認ということが起きているんです。  これは、こう言っているんですね。税務当局は、課税売上げは推計して、仕入れ額は推計しないと。課税売上げに税率掛けて消費税額要求できるというふうに税務当局考えているんですね。これはおかしいじゃないかと。実際帳簿を示しているのに、見ない、立会人がいるから見ないということでやるわけですが、結局、国税庁はこういったやり方を指導しているんですよね。それでもって、前段階控除を受け入れる事業者の権利を結局は結果的に侵害していると。仕入れ税額控除を受ける権利を侵害している。  そういう指導をやりながらこんなことをやるということは、私は許せないと思うんですよね。大臣、どうですか。
  48. 村上喜堂

    政府参考人(村上喜堂君) 今、第三者の立会いの話がございましたが、これは、第三者が立会いをされますと、我々税務職員に課せられている守秘義務上問題になってまいります。したがって、そういった場合に適法な調査ができないというので御主張をさせていただいております。この点につきましても、判例で我々の考えは支持されておると思います。  それから、推計課税のお話がございましたが、確かに消費税法上、推計課税の規定はございません。しかし、推計課税というのとその仕入れ税額控除というのは一応別物だと思っております。仕入れ税額控除の要件を満たさない場合は仕入れ税額控除は否認されるのだろうと思いますし、実際の帳簿がないであるとか各種資料がないという理由だけで課税ができないということであれば、到底課税の公平が担保できませんので、その場合には推計課税を行う。あるいは、消費税法は推計課税ございませんが、消費税につきましても、これは課税標準が課税売上げでありますので、何らかの合理的な、適法な方法においてそれを算定するということは、これはもう法律で、判例でも支持されていることであります。
  49. 池田幹幸

    池田幹幸君 売上げの方は推計すると、仕入れは推計しませんと。これは、これ自身おかしな話で、法律上はその整合性があるんだとお考えでしょうけれども、国民の目から見たらおかしいじゃないかと。これはもう少し後でやる、もう一回あれしますけれども、先に申し上げておきますが、要するに、仕入れ税額控除は否認して、ともかく否認して、売上げにごぼっと消費税率を掛けるといったら、これは消費税でなくなっちゃうんですよね。これ、いわゆる中曽根内閣のときの売上税ですよ、売上税になっちゃうと。だから、何のことはない。税務調査ということで売上税にしちゃうというふうな、こんなことできるのかというふうに思うんですが、それも後でまた問題にします。  それで、私はまず、こういう税務調査を指導していることを問題にしたいと思う、こういうことをやりなさいと言って。これはもう消費税導入されて二、三年ごろから始まったことなんですけれども、こういう指導しています。  ここに私はこの文書を持っているんですけれども、これは「消費税課税標準額(課税売上高)の推計及び仕入れ税額控除の取り扱いについて」という文書なんです。それは、消費税導入から三年目の一九九一年、消費税調査に本格的に乗り出そうとしたときなんですが、各国税局、各国税局で調査官等に指導する際の資料の一つなんです、これは。これは、これ、私が持っているのは関東信越国税局の学習会で使われたものです。  ここでどんなことがあるかといいますと、こう書いてありますね。消費税につき更正又は決定をする場合には、消費税法第二十八条第一項に規定する課税資産の譲渡等の対価の額の合計額を推計してこれをすることができると。推計してできるということがここに書いてありましたね。そして、推計課税が許される一定の要件とはとしまして、一、帳簿が備え付けられていないこと、二、帳簿の備付けはあってもその記載が不備、不正確であって信頼できないこと、三、調査において帳簿の提示を拒むなど非協力的なことと、こうあるんです。  調査において帳簿の提示を拒むなど非協力的であることと、こうなりますと、これはどうなんだということになるんですよね。このことが現場で乱用されたら一体どうなるんだろうと。全国で仕入れ控除否認事件が起きる。事実、かなり起きました。最近は少し件数が減ってきているんですけれども、物すごい勢いで起きたんですよ。  なぜそしたら、考えてみたらおかしいじゃないですか。先ほどから私言っているように、保存だけが理由だとすれば、私はおかしいと思うけれども、それでも、帳簿が備え付けられていないと、それからすぐ提示できないと、そこまで百歩譲って提示まで含めて保存だというふうに認めるとしても、三番目のこれ何だと、帳簿の提示を拒むなど非協力的なこと。非協力的なこと、これはもう調査官の判断ですよね。それが何で仕入れ税額控除を否認する要件になるんですか。法律上こんなことになり得ないはずでしょう。大臣どう思われます。いや、そこはもう実態はいいです。もういいです。
  50. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 何をもって非協力的とするかというのは、それは正に判断が難しいところかと思いますが、あるのに帳簿が出てこない。本当にないのかもしれませんけれども、そういうような中で、やはりとにかくまじめに執行しようとしても御協力いただけないということに対して多分、非協力、やむを得ずというのが非協力的になるのでありまして、一生懸命協力しているんだけれども、よく分からないというぐらいのレベルでは、やはりそこは丁寧にお話を聞くというように、丁寧を心掛けるということは、国税庁の職員として私はやっていると思っております。
  51. 池田幹幸

    池田幹幸君 私、申し上げたように、保存という要件が満たされていないと、私はそれでもおかしいと思うけれども、それを一応認めたとしても、この三番目はやっぱりおかしい。  その事例を申し上げますよ。今大臣言われたように、それだけ努力しておればまあまあそれでも許されるかなという考えもあるかも分かりませんけれども、そんなんじゃないんです、実態は。  これは二〇〇〇年に起こった事件なんですが、これは宝石卸売業の方ですね。これ東京上野税務署です。個人課税第三部門の調査官が見えたわけですね。突然見えた。税務調査であるという申し入れてきた。しかし、ちょっと今、ちょっとすぐには対応できないということで、話し合って後日ということに話合いが付いた。後日、その約束の日に見えた。そのときに、この卸売業者の方は立会人を頼んだ。立会人。そうすると、第三者がいるので調査ができないと。守秘義務の、先ほど大武さん言われたけれども、守秘義務の関係でできないということを言って帰っちゃったというんですよ。それはそれでおしまい。  その次に、今度は突然また訪ねてきたと。税務調査だということだったんで、その卸売業者の方は応じたわけですよ。応じたんだけれども、調査官の方は、用意した帳簿書類を全部ちょっと預からせてくれと言われた。それを預けてしまったんじゃ業務にも支障を来すので嫌だと、ここでやってくれと、こう言った。そうこう押し問答しているときにお客さんが見えた。お客さんが見えたら、守秘義務があるからといって帰っちゃったと。人がいるところではできない、守秘義務があるからって帰っちゃったと。この人一人で商売しているんですよ。狭い店なんだ。卸売、宝石の卸売業といったって狭いスペースなんですね。時計屋さんと一緒にやっている、そういうところなんです。  だから、その彼にしてみれば、調査に応じている間、店は店番する人がいないわけですから、信頼できる立会人ということを本来は頼みたい。しかしそれがいないとすれば、もうちょっと何とかやってくださいよと言うのに、ところがお客さんが来たら帰っちゃうという状況だから、仕方ないんで、朝か夕方にやってくれと。今度は業務時間以外はできないと、こう言って、二回、三回訪ねてきて、そのたびに押し問答で、結局はもう非協力的ということで全額否認ですよ。仕入れ税額控除全額否認。  大体ですよ、お客さんが来たら、来るたびに、守秘義務を守ってもらうためには店閉めないかぬのですか。どうするんです。もしそれでなければ休まにゃいかぬのですか。これはどうしようもないですよ。何でこんなところにこんな守秘義務があるんですか。第三者だって、本人がいいと言ったら守秘義務もへったくれもないでしょう。何でこんなことをやって全額否認なんてことが起こるのか、おかしいと思いませんか。
  52. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 今のようなお話を聞いていますと、だれでもこれは問題だなというようなことになるわけでございますが、しかしその現場にいたわけではございませんので、現場では現場なりのまた違った考え、情報というか、そういうものもあったかも分かりませんが、いずれにいたしましても、個別の問題について遠くから論評することは差し控えなければならないと思いますが、いずれにいたしましても、一般的な考え方として、零細な方で一人でやっていらっしゃって、そしてそういうところについて形式的にびしびしといくというのは、税をいただくという役所としてはやはり考えて執行していかなければいけないということでございますが、そういうことも含めて、税務相談というようなこと、あるいはいろいろな税務職員に対するまた勉強会、講習会を取りあえず税務当局等もやっておりますので、個別論については御相談をいただいて、そして常識的に納得できるような範囲内でやっていくことが大事だろうと思います。
  53. 池田幹幸

    池田幹幸君 その個別的にやるのも大事ですが、私が一番ここで問題にしているのはこの指導ですよ、国税庁の。こんな指導があるから、協力的か協力的でないかという権限を持たされた調査官が、例の立会人問題となれば過去いろいろな問題はあります、いろいろ説があるわけで、それはあるでしょうが、立会人がいるから駄目だということで、最初もうこれでもってこいつは非協力的だという、こう刷り込まれちゃって、それからこういうやり方、こうエスカレートするわけですね、だんだんと。  つまり、こういう指導があるからこんなことが起こるんだというところを私は問題にしているんです。こんな協力か非協力か調査官の判断で、協力したら消費税としてちゃんと税額控除、非協力的であればもう売上税だということでしょう。何で調査官一人が消費税と売上税を分けることができるんですか。こういった指導を私は、もう十年来やられてきているわけですけれどもね、もうこれ改めろということを言いたいんですが、いかがですか。
  54. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) これは、改めろというよりは、常に税をいただく職業にある者については、やはり払う方の立場に立って、そして親切に、あるいは協力を求める形でやっていかなければいけない。よくあるような、何といいますか、ちょっと権力をかさに着ていじめるというような印象を持たれることは、それは国税当局としても全く本意でございませんので、いろんな方がいらっしゃいますからついついそういうことがもし起こるようなことがあれば、それは厳に慎まなければいけないというように当局としては考えておりますので、今後とも、税の実務の面にあって皆様が御納得いただけるような、そういう指導はしていかなければならないと考えております。
  55. 池田幹幸

    池田幹幸君 そういうことであれば、やっぱり踏み込んで、過去にこうやった指導をしたのについては、これはもうやめようというところまでやっぱりやるべきだろうと思うんです。小林大臣がそういうお答えになっても、具体的には結局何もされなかったと。ある程度言葉の上ではそうおっしゃったとしてもですよ。その仕組みとしてはこれが厳然としてばんと残っておるということになると、これはもう何にも改まりませんよ。そのことを一つ申し上げておきたいと思うんですね。  要するに、拡大解釈なんですよ、当局による。もっときちんと法律に基づいて、最初に申し上げましたように、少なくとも私は前段階控除の付加価値税だと思いますが、やり方によって、付加価値そのものに掛ける税金じゃないんだから、売上げに掛けて控除するやり方を取っているんですとおっしゃっても、その拡大解釈をやられちゃうと、非協力的だったらこうだというふうなことになっちゃうと、これはもう何をか言わんやなんですね。消費税そのものを、そのものの性格を国税庁が勝手にその性格を変えることができると。国税庁がというよりも調査官が、これ協力的だから、はい、消費税としてやりましょう、非協力は売上税だ。これつぶれちゃいますよ、この会社。実際、この方、六百数十万の、二年間で六百数十万の更正決定されちゃっている。もう払えない、払えないとなったら今度延滞税だ、一四・六%と変わってくるわけですね。ますますこれはもうどうしようもない、がんじがらめになっていくわけです。  だから、こういったことについては改めるということをひとつおっしゃっていただきたいし、塩川大臣についても一言、このことについての感想なり決意なりをお聞かせ願いたいと思うんです。
  56. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 要するに制度は、その今の協力、非協力的といっても、非常に非協力的な人間にどうするかというところから制度もできておりますので、物事はみんなそういう両面があるわけで、そういう人に対してびしっといくためにはそういうふうに書いていませんとできない、むしろそっちをねらって制度はできているわけですよね。しかし、おっしゃるとおり、もう零細で協力しようにも、頑張ろうにもうまくいかない、そのかわいそうな例をびしっとやるためにこの制度はできているとはとても思えませんので、そっちにきちっと適用して、今言われたようなことについては、人間的といいましょうかな、政治家ではそういうような言葉になるわけですが、まあ穏やかにその人の立場に立ってやると。やっぱり相手によって、この制度も一本しか書いていませんので、こういう人に対してはこうだ、ああいう人に対してはこうだと書いていないわけですから、そこは常識の範囲内でやはり納得できるような形にしていくということだろうと思うわけでございます。
  57. 池田幹幸

    池田幹幸君 じゃ、終わります。
  58. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  私の方は、税制の基本問題と企業再生、二つの柱でお伺いしたいと思います。  昨年の六月、税制改正の議論がありましたときに、いわゆる広く薄く課税論について質問いたしました。要するに、今納税者が少なくなっているのは景気が悪いからだという点を御指摘して、余り広く薄く論には根拠がないというようなことを質問したわけですが、その上で今日は、そのときも取り上げましたけれども、課税最低限の問題について伺いたいというふうに思います。  あらかじめ申し上げますと、課税最低限を引き下げていく、つまり庶民にとっては増税の方向にしていくということと、その一方で企業、特に大きな企業には減税していくということが決して社会の活力を生むということにはならないと。これはそんな根拠もなければ、そんな実例も世界のどこにもないわけですから、むしろこの需要低迷の中で課税最低限を引き下げていったり、一部の黒字の企業だけ減税しても景気は全然良くなりません。消費がかえって落ち込んで悪循環に落ち込みます。そういう立場で一番大事な庶民増税の基本部分の質問をさせていただきたいと思いますが、課税最低限です。  最初にお伺いいたしますけれども、そもそもこの所得税の課税最低限というのは何のためにあるのかという点をお聞かせいただきたいと思います。
  59. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 御説明させていただきます。  課税最低限は、納税者の大半を占めます給与所得者につきまして、ここまでは税負担が生じない、所得税負担が生じないという給与収入の水準として実は定まる。その意味では、具体的には、いろんな控除の中で、給与所得控除あるいは基本的な人的な控除、基礎控除ですとか配偶者控除、扶養控除、それに社会保険料控除といった各種控除を合計した額が課税最低限ということになります。このよう課税最低限自体、その水準自体が幾らだということではなくて、今申し上げたような基本的な控除の額を積み上げた結果定まってくると、こういう性格のものであるということであります。
  60. 大門実紀史

    大門実紀史君 政府税調の中期答申、ここにございますけれども、二〇〇〇年七月に出ました中期答申ではこのように書いてありますけれども、「課税最低限は、経済生活を通じて所得を得た国民が個人所得課税負担を分かち合う際に、ここまでは税負担を求めない」と、「ここまでは税負担を求めないという給与収入の水準を示すこと」というふうに書かれています。  その、ここまで負担を求めないという給与収入の水準というのは、大体何が基準に今まで考えられてきたか、教えてもらいたいと思います。
  61. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  今、先生が言われた同じ中期答申の中で、政府税調では次のように書かれているかと思います。「かつてわが国の国民の生活水準が国際的に低かった時期には、生計費からの観点が重視される傾向にありました。その後、高度成長期から安定成長を経て、国民の所得水準は大幅に上昇するとともに、国民の保有資産も相当程度増加してきています。このような経済社会の構造変化などに鑑みると、課税最低限については、生計費の観点からのみではなく、個人所得課税を通じて公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて総合的に検討していく必要があります。」という御指摘をいただいているところであります。
  62. 大門実紀史

    大門実紀史君 そう書いてあるのは私も読んでいますが、私聞いていますのは、そもそも課税最低限がどういう歴史で設けられて、ここまでは負担を求めないという意味ですね。今のは、いろいろ総合的に考えようという、ちょっと別な話だと思うんですが、ここまでは負担を求めないという意味はどういうことですかと伺っているです。
  63. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 先ほど申し上げましたとおり、いわゆる課税最低限が幾らかという基準で議論しているわけではありません。正に今申し上げた意味でいえば、人的控除あるいは給与所得控除、社会保険料控除、それぞれの言わば水準を議論し、結果として課税最低限というのが決まってくる。そのときに、それぞれの社会状況の中で、先ほど政府税調の御答申にもありましたとおり、生計費という観点を重視した時代から、むしろみんなで分かち合うというようなことを念頭に置いた時代へと移ってきている、結果としてその言わば課税最低限という数字が決まってくる、そういうものなのかと存じている次第であります。
  64. 大門実紀史

    大門実紀史君 そうしますと、一定の所得以下には税金を掛けないという考え方が、どちらかというともう古いとわきに置かれて、国民生活も豊かになったんだから、ほかのことを総合して決めていこうという考え方に変わったということですか。
  65. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 変わったといいますか、そもそも控除の考え方というのはそのようにできているわけであります。例えば、ほかの国の例で申し上げても恐縮ですが、例えばアメリカですとかそういうところでは、確かに人的控除、これはアメリカの場合には一人当たり三十六万六千円ぐらいになるかと存じますけれども、こういうところについては確かに最低生活費の配慮への性格を有するという説明が一部なされています。ただ、実際はアメリカの場合もそれだけじゃなくて、政策的な配慮から例えば医療費控除、あるいは慈善寄附金控除等、概算控除みたいなものを足して、言わばよく言われる課税最低限みたいな議論になっているわけであります。  したがいまして、一義的に課税最低限が何かの目的だけでできているというものではむしろないんだろうと存じている次第であります。
  66. 大門実紀史

    大門実紀史君 確認のために伺いますけれども、政府もかつてはマーケットバスケット方式ということで、食料費、生計費をいろいろ試算して課税最低限を考える物差しといいますか、一つの基準にされてきましたけれども、もうそういう考えは日本の場合はないということですか。
  67. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  全くないわけじゃありません。先ほどの政府税調答申でも述べていますように、「生計費の観点からのみではなく、」と書いてありますのも、もちろんそれも一つのメルクマールとして入っているということかとは存じます。
  68. 大門実紀史

    大門実紀史君 具体的に今、そうしたらマーケットバスケット方式のような何か物差しを調査とか計算されておりますか。
  69. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 具体的には、当方の国税というよりは住民税の方が常に議論になるわけですが、一つの生活保護基準みたいなものも念頭に置いているということかと存じます。  ただ、所得税の場合には必ずしも、従来からもそうでございますが、必ずしもそれだけではない、いろんな要素を勘案しながら、結果として特にいわゆる標準世帯というような形の世帯は必ずしも多くない、いろんな形の世帯になっておりますし、個々人によって医療費控除を受けるとか、あるいはいろんな、老年者控除の問題ですとか公的年金等控除ですとか、いろんな諸控除がばらばらと入っているわけでございまして、そういうものを全体としてとらえていく。  そのときに、以前も先生からの御質問でお答えさせていただいたかと存じますが、諸外国に比べて日本国民所得比で見ても所得税負担が非常に低いということだけははっきりしていて、これは、負担全体として、やはり基幹税としての所得税というものの言わば在り方を見直さなければならないという一環として、そうした諸控除の在り方も見直させていただいてきているということかと存じます。
  70. 大門実紀史

    大門実紀史君 国民所得比に比べて云々は前回申し上げましたが、これはもう景気要因、所得が、そのものが下がっている、この要因が非常に大きいということを指摘したわけですので、今日は同じことを議論いたしませんけれども。  アメリカ、ドイツで、今先ほどアメリカと言われましたけれども、例えばドイツではどういうふうな形でこの課税最低限は決められておりますか。
  71. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) ドイツの場合には特にそうなんですが、税制と歳出とが非常に言ってみますと入れ食っている要因がございます。ですから一概にかなり言いにくいんですが、例えばドイツの場合、課税最低限は、例えば生活保障的意味合いから、一人当たり七千二百三十六ユーロという数字でございますが、約九十二万円、これ以下の所得に対してはゼロ税率が適用するということになっているようであります。約九十二万円ぐらい、今の換算レートだとなるかと思います。  ただ、同時に、言わば必要経費的性格を有する概算控除とか世帯構成による税負担能力の減殺を調整する控除というものも含まれるということであります。  それからさらにドイツの場合には、実はそれ以外に児童手当の制度がありまして、これは給付でございまして、ある一定額の児童手当の言わば水準と有利な方を選べるというようなこともございまして、歳出面の措置も勘案されている点がちょっとなかなか難しくて、一概な比較が非常に難しいのかと存じております。
  72. 大門実紀史

    大門実紀史君 私の方で調べた話を幾つか簡潔に申し上げますと、例えばアメリカも貧困水準の公式がちゃんと定められておりまして、あのレーガン税制、八六年のレーガン税制のときでさえ、貧困水準未満の低所得者には非課税ということを掲げて、実際に課税最低限をあのレーガンのときでさえ引き上げているんですよね。逆にもう税金を掛けないと、レーガンの時代でさえそういうふうにやっているわけです。いわゆる大金持ち減税と言われたレーガン税制のときでさえ、課税最低限の部分についてはむしろ引き上げているんですね。これは、今申し上げた貧困水準というのが非常にきちっと守られているし、それはもう基本的な考え方になっていると、アメリカでさえと。  ドイツでも、これは九二年に裁判がありまして判決が出ておりますけれども、簡単に言いますと、社会扶助法に基づいて、日本で言う、どう言いますかね、生活保護水準の方々に税金を掛けるというのは違法だというふうな裁判所のきつい判決も出ているんです。  今お聞きしますと、日本の場合はそれよりも全体を見てというようなふうに何か課税最低限に対する考え方が変化しているように思いますけれども、我が国にも生活保護基準というのがあるわけでして、そこのところとの兼ね合いといいますか、どう考えるかというふうなことは基本には置くべきだと思いますが、その辺の配慮はなされておりますか。
  73. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 当然念頭には置かせていただいていまして、先生がお配りいただきましたあの資料の、ここにありますような生活扶助基準という数字もそれなりに頭には置いているということではあります。  ただ、先ほど来何度も申し上げましたように、こうした標準世帯的な発想で税制というのは必ずしもできないものですから、いろんな言わば状況があって、特に高齢化社会にあって、お年寄りに対する税というのは老年者控除を始め上乗せ控除もありますしいろいろあるものですから、こうしたものだけで決めていくということではない、むしろ諸控除の在り方をどう考えるか。これからの自由な選択で、これから人間の生活設計をしていく中にあって、阻害しないような諸控除をどうやって作っていくかということを考えながら、今模索しているということかと存じます。
  74. 大門実紀史

    大門実紀史君 私が指摘していることがどうもお分かりじゃないようなんですけれども、私が申し上げているのは、例えばアメリカにおける公的貧困水準とかドイツにおける社会扶助法に基づくとか、日本でいえば生活保護基準と。それ以外の、それ以上いろいろ収入、所得があって、いろんな控除があると、いろんなものがあると、医療費控除もあれば住宅の取得控除もあると、こんな話をしているわけじゃないんです。コアの部分の話を今はしているので、余りあれこれ言わないでいただきたいと思います。  資料をお配りした一枚目、私の方で作りましたけれども、そのコアの部分でどうなっているかというところを、平成十四年度と十五年度でどういう変化になるかを計算して作ってみました。左の方が生活保護基準による年間支給額です。右の方が課税最低限を構成する諸控除ということで、下の方に上段合計、下段合計とありますが、上段合計の数字が平成十四年度水準、下段合計の数字が今回の税制改正を含めて平成十五年度ベースで計算するとこうなるという数字です。  例えば生活保護でいきますと、一番左の欄、生活扶助一級地の一というのは、これは例えば東京です。この場合、四人家族で生活保護の水準というのは、下段の方ですね、今度ですと二百七十一万三千四百四十円というのが、これは今度の予算ベースですけれども、出ております。それに対して課税最低限は、右の方を見ていっていただきますと、今度の改正による改正後ですけれども、計算してみますと、標準世帯で、これは社会保険料控除、給与所得控除を入れたものですが、三百二十五万というふうになります。  ただ、先ほどから申し上げているコアの部分の話でいきますと、いわゆる社会保険料控除、これは税的な要素もあるわけですから、そういうものとか、あるいはサラリーマンの経費であります給与所得控除と、こういうものを除いたいわゆる人的控除だけ積み上げますと、百七十七万というふうに去年に比べて下がります。  ですから、私は、いろいろあれこれではなくて、このコアの部分を最低守っていくと。本当に今この不況でリストラに遭ったり職を失ったり、本当にぎりぎりの生活をされている方がどんどん増えているわけですね、ホームレスの方が増えているのに分かるようにですね。そういう点でいくと、あれこれ税制の議論、考え方が違っても、絶対守らなきゃいけない、アメリカでさえドイツでさえ守っているこの部分の数字は動かしちゃいけないと。ここに税金を掛けるようなことをやってはいけないと、こういう不況だからこそと思うわけですけれども、人的控除でいきますと、百七十七万のところにもうまた下がっていると。  こういうことは、これはもう政治の基本的な役割としてこういうふうになるべきではないというふうに私思うんですが、これは是非、政治の基本問題ですから、塩川大臣に、この数字を見てどう思われますか、御所見を伺えればと思います。
  75. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) ちょっと技術的に……
  76. 大門実紀史

    大門実紀史君 いいです。後でいいです。そうしたら、塩川大臣にちょっと所見を伺ってからでいいです。是非ちょっと塩川大臣
  77. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 申し訳ございません。今、先生が言われました生活保護基準による年間支給額、確かにこの額であることは十分存じておりますが、これはミーンズテストを経て、言い換えれば他の資産等のない方でございます。こちらにありますような一般の課税最低限の方というのは資産等もおありになります。もしない場合は、正に生活保護を申請されれば差額は当然非課税になるわけでございまして、そういう意味では、今のように資産とか所得は少なくても大変財産をお持ちの方もいらっしゃるわけで、そういうものを一律所得税という世界で非課税にするのが適当かどうかと、そういうところが議論されているのかと思います。そこだけちょっと補足。  生活保護基準以下であってミーンズテストをクリアすれば、所得があってもそこは言わば非課税になるわけであります。
  78. 大門実紀史

    大門実紀史君 そんなことは聞いていないからいいですよ。
  79. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 課税最低限の問題と生活保護者の問題ございますが、今問題になっておりますのは、失業保険で給付を受けている人と課税最低限の適用あるいは生活保護の問題等総合的に研究しようということで現在検討しておりまして、その結果によってまた御意見申し上げたいというふうに思っております。
  80. 大門実紀史

    大門実紀史君 是非、こういう時代ですので、この人的控除の本当に最低限のところについては、税金を掛けないということは守っていただきたいと思います。  次に、企業再生、不良債権処理との関係で企業再生の方の質問をさせていただきます。  今、産業再生機構が国会で大議論になっておりまして、議論の中心は、恣意的な運用にならないこととか、あるいはどの企業を再生するかという点で、どうやって選ぶかと、恣意的にならないということと、透明性を確保するとか、あるいは国民負担につながるんじゃないかというようなところが産業再生機構のところでは大変議論になっております。  ところが、今日取り上げたいのは、もう一つ企業再生の枠組みで、余り知られていないといいますか議論されていないことなんですが、政策投資銀行企業再生ファンドへの出資というのを昨年からやっております。一昨年ですかね、改革先行プログラム、また昨年の改革加速のための総合対応策ですか、この辺で補正予算も付いて、政策投資銀行が再生ファンドに出資をして、その半分は国民税金公的資金を使って国策としてファンドに出資して、ファンドが企業を再生していくというこの枠組みですけれども、これは去年の十二月、カーライルの問題で私質問いたしましたけれども、その後予算も増えたと思いますが、その枠組みと仕組み、簡単に説明をお願いできますか。
  81. 小村武

    参考人小村武君) 私どもは、再生ファンドとして運用している中身は、一つは個別の企業を再生させるためのファンド、それからもう一つは、数多くの企業を救済するためにあらかじめ資金、リスクマネーを集めて専門家が再生を図る、これはマザーファンドと言っておりますが、この二種類が大きく分けてございます。  現在までのところ、十一件のファンドに投資を決定いたしまして、個別のファンドは、申し上げますと、ダックビブレという仙台を中心、あるいは青森にもございますが、今、さくら野百貨店として再生をしている企業とか等々がございまして、四社五件であります。  それから、マザーファンドは六件でございます。
  82. 大門実紀史

    大門実紀史君 先に全体の、この前の補正でも付いた予算の枠組みといいますか、全体の出資の枠組み、ちょっと教えてもらえますか。
  83. 小村武

    参考人小村武君) 十三年度予算で産投会計から五百億円の出資をいただき、私どもの自己資金を合わせまして一千億のファンド資金を確保いたしました。十四年度においても同様、産投特会から五百億円、私どもの自己資金五百億円、現在二千億円の資金を用意をいたしております。
  84. 大門実紀史

    大門実紀史君 その上で、正確にマザーファンド、つまり一つのファンドが幾つかの会社の企業の再生をやるというそのマザーファンドですね、それと個別ファンドというのは、もうその企業を対象にして再生をやるという区別ですよね。マザーファンドはどれなのか、具体的にちょっと、皆さん、資料の二枚目ですけれども、具体的に教えてもらえますか。
  85. 小村武

    参考人小村武君) あらかじめ先生の方からお配りいただいております「再生ファンドの設立状況」というものがございますが、この中で申し上げますと、最初の日本みらいキャピタル、これは運営会社でありまして、この下の方にNMC2002L.P.とありますが、これと一体のものと考えていただきたいと思います。これがマザーファンドでありまして、これは旧興銀の方が、部長をされた方が設立されたものであります。  その次のジャパン・リカバリー・ファンド、これは東京三菱銀行等とともに設立をしたファンドでございます。  それから、ダックビブレは個別でございます。  それから、エーシークリードファンド、これは主として中堅・中小企業の再生を目的としたファンドでございまして、商社に勤めておられた方と公認会計士の方、大学の同級生が設立をしたファンドであります。これもマザーファンドでございます。  それから、ルネッサンスファンド、これにつきましてはBNPパリバ・ジャパンの子会社を運営する再建ファンドでございますが、これも中堅・中小企業を中心にした再生を目的としたファンドでございます。マネージャーは日本の方でございまして、銀行出身の方でございます。  それから、MKSファンドⅠとございますが、これは英国のシュローダー・グループから独立をした投資チームでございまして、これは日本のメーカー、自動車メーカーに勤めておられた方が今代表を務めておられます。これも事業再生を行うマザーファンドでございます。  それから、カーライル・ジャパン、これは先生おっしゃったものでございまして、カーライル・グループが組成をするファンドでございます。日本の投資チームは日本人がヘッドを構成をいたしております。これにつきましては、先般も御指摘いただいたハゲタカにならないように、保守的運営をするということで、私ども契約上はっきりさせております。  それから、ダイエーは個別ファンドでございまして、NMCは先ほど申し上げました。  あとは個別ファンドでございます。  以上でございます。
  86. 大門実紀史

    大門実紀史君 ありがとうございます。  これは、マザーファンドは今どんな案件を手掛けているというのは、これは公表できないわけですか。
  87. 小村武

    参考人小村武君) これは、基本的にはファンド自身の判断によるものと思いますが、一つは、これをリスクマネーを集めるものですから、どういう投資家がそこに札を入れているのか、あるいはその出口としてどういうところに投資をするのか、これは私ども、投資家との協議は綿密に行いまして、私どものマニュアルに沿った運営をしておりますが、先ほど申し上げたように、先生御存じもないような小さな中小企業の再生を行う場合があります。こういったところであらかじめそういう企業の名前が出るということは、その企業活動に大変影響を及ぼすのではないか、あるいはリスクマネーが集まりにくくなるのではないか、こういうところがありまして、多くのマザーファンドはこの投資の内容については明らかにしておらないところであります。
  88. 大門実紀史

    大門実紀史君 政策投資銀行は、今どの案件を手掛けていてどういう進行状況であるかというのは常に把握されているということですか。
  89. 小村武

    参考人小村武君) もちろんそういうことを怠りなくやっております。
  90. 大門実紀史

    大門実紀史君 これは、国民の公的なお金が半分入っているわけですよね。そうなりますと、損失が出た場合、出資をして再生がうまくいかない、あるいはそのファンドが損失を出した場合、これはどこの負担になりますか。
  91. 小村武

    参考人小村武君) このファンドに損失が出た場合には、当然その投資家がその分配当がなくなる、資金が毀損するということになります。
  92. 大門実紀史

    大門実紀史君 いやいや、だから、政策投資銀行が出資されて、その半分は国民のお金だと。私は、企業再生そのものは何も悪いことという意味で言っているわけではありませんよ。失敗することもありますからね。その場合、政策投資銀行を通じて半分国民のお金が入ったと、それがうまくいかなかったり、あるいはファンドが破綻したという場合、それはだれの負担になりますか、国民の分というのは。
  93. 小村武

    参考人小村武君) このファンドの、私どもが銀行内に設けておりますこの再生ファンド用の資金は、おっしゃるように半分は産投特会からの出資であります。あとの半分は私どもの収益を積み上げた自己資金であります。当然、半々でそのリスクを負担をしているということでありまして、私どもは政府が御決定になった改革プログラムに沿って、政府が、こういう形でリスクマネーを負担をしてしっかりやれということでありますから、毀損をしないように、その審査能力を信用していただいて出資をいただいたものというふうに了解をしております。
  94. 大門実紀史

    大門実紀史君 いや、私も信用していますけれども、うまくいかなかった場合のことを聞いているんです。  うまくいかなかった場合、これ全体で今、あれでしょう、二千億の枠ですね。国民の公的税金部分で一千億ですね。かなり大きな話だと思うんですね。全部は返ってこないなんて言いませんけれども、その中でロスが出た部分、これは産業の特会でロスが出るということになりますか。
  95. 小村武

    参考人小村武君) 私どもの銀行に出資をしていただいたものですから、私どもの資本がそれだけ減るということでございます。
  96. 大門実紀史

    大門実紀史君 そうすると、要するに半分は補正で組まれて、五百億、五百億と。これは産業特会に入るわけですね。それで出資すると。じゃ、もしその中でロスが出ると、産業特会のロスにならないで、政策投資銀行負担するという、そういうことですか。
  97. 小村武

    参考人小村武君) はい。
  98. 大門実紀史

    大門実紀史君 分かりました。  もう一つは、そうは言っても国民税金が半分入っているわけですから、透明性の確保といいますか、どうも、初めてじゃないかと思うんですね、公的資金がどこにどう使われているかよく分からないというのは。非常に心配といいますか、しているわけですけれども、どういうふうに透明性の確保をしていくというか、後での説明責任も含めて、その辺はどういうふうに報告されるんですか、国民には。
  99. 小村武

    参考人小村武君) 今、事業再生ファンドというのは我が国の金融市場においては非常に未成熟であります。人材もおりません。リスクマネーも不足しております。我が国の投資家は大半が低リスク低リターンであります。こういう世界でなかなかこの事業再生に対する投資家というのは現れてきません。  そういう意味におきまして、私どもは、こういうマーケットにおいて、事業再生ファンドなりあるいはDIP融資、事業再生融資、こういったマーケットをまず作っていかなきゃならない。これは私ども政策投資銀行の役割、重要な役割として、今、先駆者的な役割をさしていただいております。  いずれこのマーケットが成熟してくれば、恐らくいろんな形でその活動状況もまた明らかになると思いますが、少なくとも、私どもが出資をした分につきましては、最終の段階におきまして、イグジットの段階におきまして、これは、この企業が上場をした、そのときの配当は幾らというようなものが、最終的にこのファンドの資金拠出を行った段階におきまして明らかにしてまいりたいと思っております。
  100. 大門実紀史

    大門実紀史君 私思うんですけれども、政策投資銀行日本のファンドを育てるために乗り出しているという話ですけれども、そんなことで育つのかなと。本当に、何といいますか、そういうのはもうそれこそ民間に、民でできることは民間に任して、政策投資銀行が一生懸命やったってそんなふうに育つようなことではないと思いますし、やっぱり公的資金が入るわけですから、結果だけ報告するというのでいいのかどうかという疑問をちょっと申し上げておきたいと思いますが。  この一覧表の中の一番下にあります新潟原動機、新潟トラシス、これは新潟鉄工所破綻の関係のところだと思うんですが、この二つは企業再生ファンドではなくて個別の企業だと思いますが、個別の企業に出資をしていいということにはなっていなかったと思うんですが、いかがですか。この三枚目に、「「企業再建ファンド」への出資に関する基本的な考え方」とありますけれども、これはファンドに対する出資で、あくまで、個別の企業に出資していいとはどこにも書いていないんですが、これはどういう基準でこの二つに出資されたんでしょうか。
  101. 小村武

    参考人小村武君) 事業再生ファンドを形成するときの最大の目標は、一つはリスクマネーを集めること、もう一つは、事業を再生するときに、既存の株主に退却をしてもらい、新たな株主を集めることでありますが、その際、てんでばらばらに株主が意見を申し述べ、その企業が再生をできなくなる、緊急性に間に合わないというときに、あらかじめファンドを作って株主間で意思の統一をし一体的行動を取ると、これが事業再生ファンドの最大の目標だと思います。  新潟鉄工の場合には、私ども子供のころ、新潟鉄工が会社更生法を受けるというのは夢にも思いませんでした。しかし実態は、そういう状態になったときに、まずDIP融資、事業再生融資を行い、その次に新たなスポンサーを探しました。幸い石川島播磨重工というところが、新潟鉄工そのもの、会社全体ではないんですが、原動機だとか車両とか除雪、こういった面において技術が優れているということで、スポンサーとして名を挙げてきたわけです。たまたま、この新潟鉄工がスポンサーでありリスクマネーの一部を供給してくれる、この、私どもと二社しかございませんでした。  その際に、改めてファンドを作るというよりも、ファンドと同じ効果の株主間協定というのを結びまして株主として一体的な行動を取り、私どもがこの企業の再生を果たした段階においては株主から離脱をしていくと、こういう約束をいたしまして、実質、私どもはこれを、ファンドと同じような機能を持たし、たまたまファンドの手続、信託銀行に資金を拠託するとか、そういう手続的なコストの掛かる部分を省略をし、実質的にこれを私どもがファンド形成をいたしたということでございます。
  102. 大門実紀史

    大門実紀史君 私、申し上げたいのは、新潟鉄工所、私も下請関連調べに行きましたので、大変な技術力のあるところですから、いい技術を残して再生してほしいと思うんですが、ちょうど冒頭申し上げましたとおり、産業再生機構の問題で、どこの企業を再生するのかとか、どこの企業を、選ぶわけですよね、閻魔大王と言われていますけれどもね、非常にそれがシビアになっているときに、政策投資銀行だけぽこっと、この企業再生ファンドに対する考え方にも書いていない形で、今言われたように株主間協定ですか、あれこれ言ったって、要するにこれに書いていない形ですぱっと一つの会社に、これ三十億と十億ですよね、出資されているのはね、すぽっとお金入れてしまうと。片やどこの企業を再生するかで大議論になっているときに、この枠組みでいったらすぱっとお金入れてしまうと。それがいかがなものかというふうに御指摘をしているわけなんですね。  ですから、どうやって新潟、この二つがどうのこうのという意味じゃないんです、どうやって具体的にこの二つが、だれが決めたのか、どこに説明して決めたのか、国民税金が三十億、十億でしたら十五億と五億入っているわけですから、そういう説明責任といいますか、この部分に関しては、先ほどのマザーファンドの場合は、今、手掛けているのを言えないというのはありましたけれども、少なくともこの個別企業はっきりしているわけですからね。  しかも、この今までの枠組みにない形での出資ですから、これはきちっと説明されるべきだし、今後こういう個別企業への出資の場合は、大事な再生の場合もあると思いますので、きちっと説明責任あるいは基準を設けるということをやらないと、ぽんぽんぽんぽん、政策投資銀行だけ一千億の枠があるからってあっちこっちやっていったら、これでもう話がぐちゃぐちゃになっちゃいますので、そういう基準なり判断なり説明責任を果たすということを何か検討される必要があると思いますが、いかがですか。
  103. 小村武

    参考人小村武君) 新潟鉄工の場合は、皆さん御存じのように一企業ではありません。これで新潟経済の本当に三分の一ぐらい破壊されるぐらいの大きな社会的インパクトがありまして、私どもは、この一企業に対して着目するんではなしに、新潟経済がどうなるかということ。それから、私どもは、これ、ごらんのように、新潟鉄工を救済しているんではないんです。新潟鉄工と違う形で事業を再生しているんです。そして、雇用を守り地域経済を守ると、そういうことでありまして、企業再生という言葉を使っておりません。  したがいまして、私どもは絶えずそういうことを御説明申し上げておりますが、なかなか御理解いただけない面がありますが、これからそのPR等についてはきちっとしていきたいと思いますし、こういう機会を与えていただいて大変有り難いと思っております。
  104. 大門実紀史

    大門実紀史君 そんなことを説明するために来てもらったんじゃないんですよ。基準をどうするんですかと。これから個別企業に出資していく場合の基準とか説明責任どうするんですかと聞いているんだから。何も言えないんですか。大事だからやったというだけなんですか。後からそれを言うだけで済むんですか、国民税金半分使っておいて。済みませんよ、そんなことで。ちゃんと答えなさいよ、あなた。何を言っているんだ。
  105. 小村武

    参考人小村武君) 私どもの活動については、ITのいろんな技術を駆使しながらPRに努めております。  個別ファンドにつきましては、責任を持って、考えられるあらゆる手段を通じてPRをしていきたい、説明をしていきたい、こう考えております。
  106. 大門実紀史

    大門実紀史君 またやります。  終わります。     ─────────────
  107. 柳田稔

    委員長柳田稔君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、平野達男君が委員を辞任され、その補欠として渡辺秀央君が選任されました。     ─────────────
  108. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は公明党会派を代表して質問をいたしますが、内容につきましては個人的な私見も入るものですから、そのことは最初にお断りを申し上げたいと思います。  まず、提出法案につきましては、相続税、贈与税一体化の導入、あるいは課税最低限の引下げ、それから証券税制の簡素化など、これは私も含めて長らく主張され、議論をされてきたことが方向的には含まれておりますし、その内容が十分であるというふうには申し上げませんけれども、基本的な方向性も含めてこの改正法案には賛成でありますので、そのことはまず最初に申し上げておきたいと思います。  今日は、全体的な議論を少しさせていただきたいと思います。  毎年財務省が提出されますが、十五年度につきましても、平成十五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算という、俗称財政収支試算、財政収支の展望を提出をしておられます。大変な内容になるわけでありますが、収支差額という欄があるわけですが、この収支差額が普通に考えれば国債発行必要額につながっていくわけでありますが、成長率を名目ゼロとして計算されたケースでは、現在、十四年度末で三十兆ですか、十五年度末で三十六兆というふうに想定されております国債発行額、収支差額が、平成十八年度には四十五兆円、四十五・五兆円というすさまじい額に膨らんできますが、これは成長率ゼロと仮定された場合ですね。  もう一つ試算をされておられます。これは名目成長率が、平成十六年度が〇・五%ですか、それから十七年度一・五%、十八年度二・五%ということを前提とした試算になっておりますが、このときの収支差額は、速記録のためにお聞きするわけですけれども、平成十八年度は幾らになっておりますか。
  109. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 四十二・九兆円でございます。
  110. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 つまりゼロ成長、多分そういう可能性が高いだろうと思いますけれども、このときは四十五兆円を超える。それが景気回復をしたという想定の下に今申し上げたような成長率を設定されたと思いますけれども、その場合でも実に四十二・九兆円、約四十三兆円になるという結果ですね。  副大臣、この計算は実によく当たるのでありまして、もう一番最初に作られた財政収支試算が、昭和五十年度が出発点でありましたけれども、このときには、もう間もなく国債発行が、残高が百兆円というのを正確に予測しておりまして、ほぼそのとおりになりました。その後、改定されるたびにほぼそのとおり推移してきておりまして、収支差額は一度も縮まらないというのが今日までの結果なんですね。  それで、まだ辛うじて国債発行額、つまり政府の借金額よりも税収の方がわずかですけれども上回っていますよね。これが逆転するのはいつですか。
  111. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 逆転するというか、十九年度以降は作っておりませんので、このままでございます。逆転しないところで終わっているわけです。
  112. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 そうですかな。ゼロ成長の場合は、平成十八年度、収支差額四十五・五兆円でしょう。税収が四十二・六兆円ですから、税収で見るとこれは逆転ですよ。ゼロ成長の場合にはもっと早いんじゃないですか。十七年度、国債発行額、まあ収支差額ですけれども、四十二・九兆円、税収が十七年度で四十二・九兆円。十八年度でこれは逆転しますね。その他収入というのは、競馬の馬券がもっと売れるようになればとか、そういう、まあ日銀がうまくもうけてくれればとかいう話になるわけですけれども、ここはそれほど期待できる基本的な歳入項目ではありません。税収と借金額が逆転するという数字が、これは平気で財務省の試算として提出されているわけであります。  そこで塩川大臣、この財政収支の、皆様方が予測されている収支差額を今後どういうふうに処理されるおつもりなのか、御答弁いただきたいと思います。
  113. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) これは、今お尋ねのは、二つ予測を出しているというのは、これはまずいですね。本当にまずいんですよ。これはやっぱりどっちかですね。  従来は大蔵省が主体となって出していましたですね。今度は内閣府の方で、経済財政諮問会議の方で一つ予測出ていますね。それとが、一つ、そちらの方は政治的な配慮といいましょうか、行政改革した結果としてこうするというあれで出ていますし、今財務省の方で出しているのは、これはもう純粋に機械的に積み重ねて出してきたので、行政改革もするわけじゃなし、何もない。現在の制度の上に立っての計算でやってきておる。  こういうことなんですが、いや、これではいけないというので、行政改革をして縮めていこうという、そういう発想をしておるわけでございまして、これを十四年度から十五年度にわたります場合を見ました場合、十四年度ベースを上回らないようにして十五年度総額を組んでいくということ、これは御存じいただいていますね。  そうすると、当然増はどこで見たのかということになってくるんです。当然増は、これは一つは、一番大きく見たのは既定経費の削減。要するに一般歳出の削減をやりました。そのときに、公共事業については三%削る、それから選択的助成金については二%削るというふうなことをして当然増を抑えてきた。それと単価の見直し等をやってきたということでございました。  そうしますと、十六年、十七年度のことについてどうなるかということなんですけれども、この基本方針は堅持していきたいと思っておりまして、そういたしますと、政策的配慮をしていくならば、財務省の試算に対しまして相当なやっぱり改革を加えていかなきゃならないだろうということになってまいりまして、その点についての詳細な計算というものはまだやっておりませんけれども、経済財政諮問会議等においては、その分を縮めて四十兆円以下に収めるようにするという、そういうことで計画を出しておる。そこらは私はまだ何ともお答えすることができません。  そのためにはまず第一に、社会保障の在り方というものと、それから国と地方との負担の在り方、それから公共事業の在り方という、この三つの大きい財政支出をどういう具合にしてこれを改正するかということが将来の展望に大きく影響してくるということでございますので、今それを十八年度どうなるということはちょっと私の方からは申し上げにくいと、こういうことでございます。
  114. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 行政改革は、これ結構なんですけれどもね。じゃ、どの行政改革で幾ら節減できるかとか、要するに、今国の財政がどういう状況になっているかというのを私は正確に認識をして、それに対する正確な対応というものを考えなければ、これが政治あるいは行政含めて国家が責任を果たしていないということになるわけですよね。ですから、行政改革はそれは当然やるべきですよ。でも、もう小泉内閣がスタートしてこの改革で幾ら減りました、この改革で幾ら減りますという具体的な展望というのは出ていませんよね。それを出せというのが無理なのかもしれません。目標としてはそうだということでしょう。私は、そういう話を全部やり続けながら今日までこの財政収支試算というのはそのとおりに進んできたという、この事実をやっぱり認識すべきだと思うんですよね。  ですから、やっぱり税の議論をきちんとしなきゃいけないということで、今私は塩川大臣に期待した答弁は、無い物ねだりかもしれませんけれども、行政改革で幾ら節減をする見通しです、それに対して税構造の改革でこれだけ増収策を図る予定ですと、そういう話を具体的に御答弁いただくことが実はもうこの段階では必要だということを申し上げたいわけですよね。  どん詰まりですよ、日本政府は。EU加盟の条件というのは財政赤字比率三%でしょう。かつて私どもがもう国家として破綻したということを言いたい放題言っておったイタリアですらEUに加盟しているじゃありませんか。  それから、何で今のこの財政がもつんですか。ゼロ金利政策だからでしょう。これ、金利が上がったら、金利の国債費の支払項目というのは物すごく増えますよ。これ残念ながら国債利払いと書いていないんだね、その他と書いてあるんですよ。もうこれ言いづらくなったんですよね。これがすさまじい額で膨らみますよ。どうするんですか。  それから、ほかにいい運用先が生まれたら、幾ら女優さんを使って国債宣伝をしたって、買わなくなるという事態が起こり得ますよ。国債が買われなくなったらどうするんですか。今は、幸いなことに国内で運用先がないから国債が売れているでしょう。じゃ海外に持っていったらどうかと言われたら、国債の格付はシングルAでしょう。うわさでは間もなくこれがトリプルBに下げられるかもしれないというんですから。  トリプルBに国債が下がったら一般の民間企業は海外マーケットで資金調達できなくなりますよ。既にその現象は出ているわけでありまして、具体的な名は言いませんけれども、私もよく承知している案件で、国債がシングルAだから、国内企業です。ソニーとか日産とかトヨタとか、世界のマーケットで既に評価の確立している企業はそれなりにやっていけるでしょう。そうでなくて、国内でやっている企業が、いざ、今金融が麻痺していますから、必要な資金が出てこない。それならば海外で資金調達をしようと外資に相談するんですよ。そうすると、格付を取るんです。国債がシングルAですから、かなりの有力企業でもダブルBとか、トリプルBになればまだいいんですよ。ダブルBになったらジャンクボンドですから、買うやつがいなくなりますよ。よって、資金調達が今世界のマーケットの中で日本の有力企業であってもできなくなりつつある。これが国債がトリプルBに格付が下がったらどうなりますか。ほとんど締め出しですよね。  そういう事態で、政治家ももちろんですけれども、財務省はよく平気な顔をしておられるなというのが私の感想でありまして、感想を言っていられるようなのんきな事態じゃないんですけれども、どうするんですか。
  115. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは一つの評論として私今お聞きしておりましたが、今、国債と一般企業の要するに社債と、例えばアメリカ等において発行しておりますのは全部現地法人がやっておりますので、直ちにこれ連動しておるものじゃございませんで、しかしながら、一般の人は今おっしゃったような想像はしますわな、空想は。  ですから、そういうことは私はやっぱり十分に心してやっていかなきゃならぬと思いますが、それぞれの会社が発行しておりますのは現地法人で発行しております。ですから、格付は現地法人としての格付を取っております。これが一つであります。  もう一つ、じゃ、これからの将来どうするんだと。例えば私の方で、今、五年間に中期展望としての税収と、増収と減税とをセットしてやるということをやりましたですね。これをやりましたときでも御意見はいろいろございましたけれども、結局、そういう努力をしてバランスを保っていこうということをやっておるということですね。それはやっぱりそれだけの努力をしておるということでございまして、全く野方図にほってあるということじゃございません。  それからもう一つ、プライマリーバランスを二〇一〇年にゼロにするという予定でございましたけれども、これは要するに増収、減の五年のバランスを認めてもらえなかったものだから、結局これは二〇一三年ごろをめどにしようということになりました。これも一つの目標としてやっぱりそれに対する仕組みを組んでいくということをやっております。  それから、先ほど冒頭に申しましたように、来年度の予算、十五年度予算を編成するときに、十四年度を上回らないようしようという一つの基準を設けまして、その際に申し上げましたところ、中期展望の集中整理をする三年の間、三年間の間というものを限りまして、対前年度、先ほど申しました、公共事業を三%削ろう、そして選択的補助金については二%削ろうというその一つ枠組みを作って予算を編成するということを努力するということにいたしておりまして、それによりまして当然増をできるだけそういう歳出削減でカバーするということをやっておると、そういう努力をしておるということも御承知いただきたいと思います。
  116. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は別に激高したりはいたしませんから、安定した精神で質問を続けますけれども、別に塩川大臣が悪いと申し上げているわけじゃないんですよ。だからお互いに、私どもは政治に携わっております。そして、後ろにいらっしゃる大武君始め主税局の人たちは税制の在り方を真剣に議論をしてきている。私はそれはもうそう思っていますよ。その議論の中身をやっぱりそろそろ具体的にしないと大変だぞということを申し上げたいわけです。  例えば、大臣、私は、現地法人で起債をしていますから大丈夫ですとおっしゃった面についてはちゃんと申し上げているんですよ。既に世界的に活躍している企業で、世界のマーケットで評価が確立しているところはそういうことができるんです。  例えば国内で、国内的に資金調達ができないから外資に相談をするというケースが増えているんです。私も幸い外資の方々と友人が多いですから、いろんな人たちと話します。彼らの方が心配していますよ。  つまり、国債の格付がシングルAになったということがどうしても出発点になって格付が出てしまう。ですから、私が先ほどダブルBと申し上げたのは抽象的な案件ではありません。私が御相談にあずかって、外資系の方々と相談をして、格付機関、ムーディーズ社でありますけれども、時間を掛けて格付を取ってもらいました。そしたらダブルBなんです。ダブルBですと、資金調達できないんですよ。これは現実に日本の国内で起きている事態ですから、決して抽象的な想像で申し上げている話ではありません。つまり私が申し上げたいことは、事態は客観的に見て事実として非常に深刻な状況に陥っているということを申し上げたい。  ではどうするか。当然、行政改革はやるべきであります。これは大いにやって、幾らでも経費節減をしていかなければいけません。さらに、今の合併の問題も私は言い続けています。地方自治体と地方自治体がお互いに好き合って結婚するなんて話じゃないんです。中央と地方のシステムを変えて、どうしたら幾ら安い行政コストに引き下げられるかという改革であるべきであって、そういうことも含めて、改革で幾らぐらい節減を目指す。しかし、それで追っ付かない現実が今申し上げた数字だと私は言いたいわけです。それはやっぱり税構造の改革ですよ。  ところが、小泉内閣、私はずっと応援してきたつもりです。ここでまあ言葉は選びませんから時にはきつく聞こえ過ぎるかもしれませんけれども、小泉改革を与党の枠内で応援する質疑をしてきたつもりです。でも、もう私は問題がちょっと限界に来ていると思っているんですよ。彼は、消費税の引上げはしない、これは共産党さんとは大分意見が違ってくると思いますけれども、消費税の引上げはしない、任期中にはしないという大見えを切っておられます。  だから、今、いろんな制度にひずみが出るわけでしょう。医療制度で個人負担三割負担を云々するんであれば、じゃ、私も三割負担反対ですよ、だけれども、三割負担に持っていく制度的なひずみというのはどこから来るか。財源がないからですよ。国庫負担を三割から五割に引き上げるとおっしゃる。じゃ、その財源手当てをどうするんですか。  ちょっと年を取りましたから昔のことを言いますけれども、昔の主税局だったら跳び上がって大騒ぎするはずですよ。国庫負担を増やすというんだから。じゃ、それは今年度は要らないという話じゃなくて、これからどれだけ税収増を必要とするかという計算をして、それを言い立てなきゃ駄目ですよ。  そういうことが言いたいわけでありますが、私は、行政改革を先にやります、景気対策を先にやりますということは、税構造に手を付けない口実にしか聞こえなくなったというふうに思いますけれども、塩川大臣、もう一遍おっしゃってください。
  117. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) もう一度ちょっと質問の要点を言ってくれませんか。
  118. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 じゃ、今のを答弁だと思って、結構であります。  それでは、私はこう思いますよ。景気回復が先だという議論があります。景気回復をしない根本原因の一つが消費が出てこないということですよ。なぜ消費が出てこないか。それはいろんな理由がありますと思います。  でも、根本にある一つの問題というのは、国家の将来に対する不安感ですよ。要するに、社会保障制度はどうなるのか、国家は大丈夫なのか。やっぱり自衛すれば貯蓄に回りますよ。社会保障制度を持たない中国で貯蓄率が四〇%。これは、あれだけ低い賃金の中で、やっぱり将来が不安だから四〇%も貯蓄をするわけです。日本の一四%、若干最近下がっているようですけれども、この貯蓄率が高いか低いかという議論の中に、やっぱり日本の将来は大丈夫かという議論があるんですよ。  だから、私は、むしろ今までの議論とは逆になります。今まで私もそう考えてきました。一般の人もそう考えてきたでしょう。景気対策にとって税制改革はタブーだと言い続けてきましたよね。でも、税構造がこういう状況にあって、国家財政が完全に破綻しているということの方がむしろ景気対策として、景気の与える影響としてはマイナスだと。  だから、国家が決然として、日本の将来は大丈夫だと。税もちゃんともらえるよ、社会保障制度もちゃんと維持できるよ、安心してお金を使いなさいということを、これをメッセージとして明確に出すことがむしろ景気対策になるんじゃないか、そう思いますが、副大臣、どう思いますか。
  119. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 基本論として、浜田先生の言われることはよく分かるところでございます。  しかし、まず当面の不況を脱する。つまり、税収の中で法人税が非常に落ち込んでいる、ここに企業が弱っている、そしてまた、今日の不況というものが企業を直撃しているという姿が分かる中に、今回の税制の大きな改革は、そういう企業に元気を付けさせて、民間経済の活性化と。  その中身は、まず企業を元気にしていこう、元へ戻していこう、企業の再生というようなところの中に、思い切った投資減税あるいは研究開発減税とか、そういうことによって民間経済が活性化すれば、その延長線上に法人税の増収もあるだろう。つまり、景気が良くなるだろうということを見込み、あるいは新しい企業がどんどん出てくるような、そういう土壌を築いていくということに今回は私は一つの大きな減税政策の力点があろうと思うわけでありますし、それからまた、個人の持っている、一千四百兆というんですか、この金融資産に着目をいたしまして、この中の一つは、しっかりと結構高齢者層によってため込まれていると。  それが若い人に流れてこないのは、やはり日本の相続税、贈与税の大きな問題点があるんじゃないかと。したがって、とにかく相続、贈与ということの中に、贈与税を軽減いたしまして、思い切ってこれが若い層に金が動くと。動けば、例えば、特に住宅についてはまた力点を置いておりますけれども、おうちを建てるとか、いろんなことの中に消費が動いてくるだろうという、そういうところに私は今回の減税の大きな力点があると思っているわけであります。
  120. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 別に、冒頭申し上げたように、今回の法改正に反対はしておりません。賛成です。ですから、今おっしゃったことは当然分かっているわけでありましてね。  ただ、税の基本は、やっぱり法人税というのは赤字になるときはあるんですよ。不景気になりゃなるんですよ。法人税というのは安定しません。だから、それは私は政策的にいろいろあり得ると思っています。  基本は、やっぱり消費税ですよ。それから、所得税ですよ。消費税五%でいつまでも行くつもりですか。もちろん、消費税には逆進性があります。ですから、私は、三%を五%に上げるときは議席がありませんでしたから主張できなかったけれども、あのときは、生活必需品とか食料品とかいうのは三%に据え置いてもよかったと。導入時の議論を思い浮かべますと、私はそう主張しておりましたからそう思っております。  だから、そういう逆進性に対する配慮は十分しながらでありますけれども、思い切って一〇%ぐらいに上げたらどうですか。少なくともその提案をしてみたらどうですか。景気が良くなったらということを言っていたら、景気がずっと良くならなかったらずっと借金でやるんですか。だから、そこは私はやっぱり踏ん切りだと思うんですね。国家としての責任をどうやって果たしていくか、ぎりぎりのところに来ていると思いますよ。  それから、所得税もそうです。課税最低限の議論が先ほどありました。それぞれの立場で議論は大いにあっていいと思いますけれども、私は、今回のこの課税最低限の引下げは誠に不十分である。ただ、賛成しますよ、引き下げる方向に働いているからね。やっぱり思い切って二百万円ぐらいまで課税最低限を下げたらどうですか。  それから、税率構造だっておかしいですよ。日本人で働いている人の二五%は所得税を払っていない。働いている人の八割まで、失礼、所得税を払っている人の八割までが税率一〇%でしょう。EUに入れませんよ。イギリスの消費税率、ちょっと正確に記憶しておりませんけれども、二〇%ぐらいあるんでしょう。所得税の納めている人の八割の税率が二二%ではありませんか。だからEUに加盟できるんですよ。  何も三%に戻せとは言いません。五〇%で平気な顔をして国家運営をやっている我々政治家の責任、国庫を預かっている財務省の責任、それをもっと深刻に考えなかったら、この国は破綻しているんですよ。  生意気なことを言って申し訳ありませんけれども、税をもらえなくなった国家は、これは衰退するんです。日本は衰退過程に確実に入っていますよ。そのことの認識をお互いにきちんとして、景気とか行政改革と、当たり前なんですから、そのために努力するのは。その間に税構造の議論を放棄していいという理屈は出てきません。  御感想があったら伺って、質問を終わります。
  121. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 今、大臣の方からお礼を申し上げておいてくれというお話もございましたが、基本的な在り方として、非常に浜田先生の御意見に賛同するところが大でございます。  さはさりながら、とにかく法人税が著しく落ち込んでいる等々、日本企業再生というのは非常に大きな課題であるということの中に緊急経済対策というような観点を盛り込んで、今回は思い切った減税政策を特に企業に力点を置いて持ち込んで、一日も早き景気回復を達成しようということでございます。
  122. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ─────・─────    午後一時十二分開会
  123. 柳田稔

    委員長柳田稔君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十五年度における公債発行特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案、両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  124. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 塩川財務大臣にまず質問に入る前に私はお尋ねをしたいんですけれども、アメリカのイラク攻撃に対して小泉さんが真っ先に支持をし、戦後の復興について財政支援をするということを明快に発表しておるわけです。昨日も衆議院の集中審議、テレビ等で見さしていただいておりますけれども、国連決議とアメリカのイラク攻撃に対しての整合性というのは、やっぱり私は果たされていないというふうに思っているんですけれども、閣議の中でこういう議論があったときに、総理が自分の意見を通そうとするときに、塩川財務大臣などの良識ある人たちはそのことに対して、いや、やっぱり安保理決議がない中での攻撃について、日本は明快に同盟国としてアメリカに主張すべきことは主張すべきであるというようなことは御発言はなさらないのかどうかということをまず私は大臣にお聞きをしたいんですけれども。
  125. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) おおむねこういう問題は、外務大臣が閣議で状況等を報告しまして、それに対しまして、事あるごとに意向を述べるということをいたしております。それぞれの意見を言っておりますけれども、閣議の中の御意見というものは、ちょっとこれは公表することは勘弁していただきたいと思っておりまして、私は、私個人に関することは申し上げられますけれども、閣議の中の意見ということはちょっと御勘弁願いたいと思います。
  126. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私は、日本内閣が本当に正常に機能しているかどうかという観点で今お聞きをしているんですね。  国民の七割ぐらいの人は武力行使については否定的、やっぱり話合いで解決をすべきと思っていますのに、総理が独断専行でアメリカを支持するということに対して、その内閣の構成員である各大臣がそれぞれ良識ある御判断の中で自らの発言をし、その総理の暴発をいさめるというようなことがないと、民主国家の運営というのは私は任せられない。これは、軍事独裁国家と同じように総理の思いがままに内閣が動くということが決定付けられていくとすれば、私は本当に日本の政治というのは危機的な状況に陥っていくんじゃないかと、そういうふうに思いますのでお聞きをしているんですが、発言の内容等々について言えということではないわけですけれども、異存があるときには存分に閣議の中で話し合える土壌があるのかどうか。  今のお答えですと、外務大臣が発言をしてその方向性が決まってしまえば、総理と外務大臣の意見が合っていれば、そのことにほかの大臣は意見を差し挟むことができないというような御答弁に聞こえたんですけれども。そうだとすると、私は日本内閣というのは本当に健全性が損なわれているというふうに思うのですけれども。
  127. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 分かりました。  ここへ至るまでの間に個々の問題について報告があって、それで議論をしておりまして、そういう場合は割と皆濶達に意見として言っておりますけれども、そこを取りまとめて私がこう判断するというのは総理一人なんです。これは総理がその判断をいたします。けれども、そこへ至るまでの意見は、それはそれぞれ皆言っておりますから、私は閣議としては有効に機能しておると思っております。
  128. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうしますと、内閣全体で総理の今回の発言を支持し、日本政府の行動を支持するというふうに受け取ってよろしいわけですね。
  129. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) そのとおり取っていただいて結構であります。
  130. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それは非常に残念なことでございまして、やっぱり政権交代が行われないと日本というのはアメリカにずっと隷属をしていく国というふうに取られてしまって、今度のイラク戦争を引き起こしていく責任国の一つとして諸外国から糾弾をされても致し方ないよう状況に陥っているというふうに思っておりまして、非常に残念に思います。  通告しておらないで済みませんでした。  それから、本日、日銀で、金融政策運営についてということで、午前中の政策会議で決定をされた内容が私たちのところにもファクスがされてきていますけれども、「三月三十一日までは、日本銀行当座預金残高が十五から二十兆円程度となるよう金融市場調節を行う。四月一日以後は、日本郵政公社の発足に伴い、日本銀行当座預金残高が十七から二十二兆円程度となるよう金融市場調節を行う。 なお、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」、こういう決定がされたというふうに私たちのところにも御連絡がいただいておりますけれども、このイラク戦争が起こっている現状、そしてこれから後のことを踏まえて、株式市場や為替市場などを通じた日本経済全体にどのような影響を及ぼしていくというふうに大臣自身はお考えでございますか。
  131. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 確実的なことは申し上げられませんけれども、私たち及び財務省の中で議論しておりますこと、並びに閣内におきまして閣僚、閣議、懇談会がございますが、それぞれの席で出ておりますことを要約して申しますと、短期で終わるということと長期になるであろうということの、これによって議論が違いますけれども、おおよその見方は、一応短期に終わって、その後更に戦争が深く入るのか仲裁が入るのか、いろんな国際情勢の変化が起こってくるんではなかろうかと。しかし、一応は短期で激戦の状態が終わるとするならばという想定で見ておりましたならば、そんなに大きい変動はないだろうと。ということは、為替とかあるいは証券等につきましては既にある程度織り込み済みの状態があるということでございますので、この二、三日の状況を見ておりますと、そのような傾向は出てきておるように思っております。  それから、油の一番問題は供給でございますけれども、これについても大体は備蓄が異常に高く積み重ねておられますので、短期の場合は余り心配ないだろうと。  ただし、これが中長期、半年以上続くという状態になってきた場合に十分な見直しをしなければならぬ、そういう見当であります。現在のところ、今、大体そんな見解に立っておると思います。
  132. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 財務大臣として、日銀にイラクの対応策として具体的にこんなことをやっていただいたらいいなと思うようなものはございますでしょうか。
  133. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) これは、福井総裁が今度新しく就任いたしまして、速水総裁の時代から私からもかねてからお願いしておることは、潤沢な流動性を確保するということをやってほしいということをお願いしておりました。  漏れ承りますと、今日初めての政策会合が日銀で持たれまして、その趣旨は徹底しておるように思っております。  その会合の中で決められたことの一つは、当分、必要な流動資金は確保するということが会合で決められております。そして、四月一日以降、郵便貯金が新しく当座加入してくるので、更に二兆円ほど上回ったものとして、平均残高で十七兆から二十二兆の間、確保せよということを言っております。  それからもう一つは、新しい流動資金の貸付け形態等を、これがどんなのか、まだ私は聞いておりませんが、聞いておりますところによると、補完的貸付け制度というものを復活させて、これを積極的に活用しようと。この融資によって中小企業融資が相当カバーできるのではないかという見通しを立てておるようなことでございます。  そして、今日の会合の最後のところで、企業金融や金融調整の面においてどのようなことができるのか、今後どのようなことができるのかということを至急各部署ごとで、日銀の中の各部署ごとで準備を急いでほしい、そして、次回の金融政策決定会議等において報告するようにしろと、こういうことが総裁から各部署に出ておるということでございまして、相当積極的に取り組んでおるということは言えると思っております。
  134. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 もう少し具体的に、国債をこのぐらい買ってほしいとか、あるいはETFの買い付けをしてほしいとかという答弁が出るのかと思ったんですけれども、結構でございます。ありがとうございました。  それでは、特例債法について入らせていただきたいと思います。  今後の財政改革について、まず二〇一〇年の早い段階でプライマリーバランスを回復することが重要だと「改革と展望」で述べています。しかし一方で、「改革と展望」の参考資料の今後の財政収支の状況を見ると、今後も四十兆円を超えるような国債の発行が続く見込みであることが示されています。こんな状態で、本当にあと六、七年でプライマリーバランスを回復ができるのでしょうかね。二〇一〇年の目標ということですけれども。また、デフレ克服の年次目標はいつごろなんでしょうか。これをはっきりしていただきたいと思います。
  135. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) プライマリーバランスは、黙っていては回復できるとは思っていないわけでございまして、やはり相当それなりの覚悟を固めてその状況を脱していかなければならないという中に、政府としては、二〇一〇年代の初頭、大臣からは二〇一三年という言葉も出されたことがございますが、二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスを回復するという前提に立って物事を進めていく中に、まず、御承知のとおり、「改革と展望」でも明らかにしておりますけれども、二〇〇六年度まではいわゆるGDPとの対比の中に二〇〇二年度を超えて財政支出を行わない、出さないということで、財政支出を抑制型にしていくことを決めているわけでありまして、それ以降も大いなる支出の削減、それは地方とも話をしなければいけませんけれども、地方公共団体との御協力、お話合いを経て思い切った財政支出の改善に取り組むというようなことをもちまして、徐々に回復をしていくという段取りになっているところでございます。  いつデフレを脱却するかと、これも極めて難しいわけでございますが、今日においても実質成長率は若干でもプラスになっているという、つまり経済がまだ破綻していないということでございます。この実質を、名目もプラスにしていくということでございまして、これは数年以内には私は必ず今言いました名目もプラスに転じるというふうに考えているところでございます。
  136. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 この委員会質疑等々を通じて、政府はあと一、二年でデフレを脱却できるというふうに見ているというふうに私は承っているわけですけれども、このまま新日銀総裁の下で何も新しい政策が取られなかったとすれば、デフレはなお続く公算が大きいのではないでしょうか。民間の研究機関では二〇〇八年ごろまではデフレが続くと見ているようです。政府がデフレはあと一、二年、数年で克服すると言明した限り、それを信ずることができるに値する新しい政策を示す必要があるのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  137. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 日銀がどう考えて今のデフレ克服に向けて政府に御協力をいただいているかということにつきましては、日銀の独立性もございますので、我々として日銀にああせいこうせいと言う立場にないわけでございますが、御承知のとおり、日銀総裁を選ぶに当たりまして、今日の経済状況を見ていただく中に、デフレ克服に意欲を持った方でかつ能力のある方、それが実行できる方という観点で日銀総裁を選んだ経緯があるわけでございますので、そういう意味では福井新総裁に大いに期待をしているところでございます。
  138. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 デフレが克服をできなければ財政の健全化、プライマリーバランスの回復などというのは本当に期待できないというふうに思うわけでございます。  現在の国債の消化は、我が国の個人貯蓄残高一千四百兆円という巨大な資金が背景にあってのことです。その個人貯蓄残高がこのところ急激に減少しているということですけれども、貯蓄が減少する中での国債の大量消化ということに対して今後不安が生じてくるのではないかと思いますが、いかがですか。
  139. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 今、先生言われましたとおり、確かに貯蓄率が下がってきているのは事実でございます。  ただ、フローではそういう現象が出てきているわけでありますけれども、ストックで見たときに今なお諸外国に比べて非常に日本は貯蓄残高が多いというようなところでございまして、そして、今現在、発行した国債につきまして非常にこれはきちっとした形で処理されているわけでございますので、見る限り、今、当分、見る限り問題点がないという状況でございます。  これがずっとそのまま行くのかどうかということにつきましては、我々としては、当分の間はこれだけの貯蓄残高があって今日の状況を見れば大丈夫だろうという判断を持っているところでございます。
  140. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 このまま景気が上がっていかない状況になりますと、やっぱり家計費の中に貯蓄を取り崩していかなければならないよう状況が続いてくるというふうに思っておりまして、やっぱり先を見通した政策を先手先手と打っていく必要があるのではないかというふうに思いますので指摘をさせていただきました。  特例公債発行額は三十兆二百五十億円ということですけれども、借換債の発行は七十四兆九千六百七十八億円もあるということですよね。このことは非常に注目するべきことだと思いますけれども、平成十五年度国債発行総額は、特例公債発行額は三十兆二百五十億円を含めて百四十一兆四千二百二十八億円です。これを消化方式別に見ると、市中の発行分の合計が百十二兆七千三百九億円となっており、その区分を見ますと、三十年債が一兆六千億円、二十年債が四兆八千億円、十五年債が五兆五千億円、十年債が二十二兆八千億円、五年債が二十二兆八千億円、それから二年債が二十兆九千六百億円、短期国債が三十四兆一千七百九億円、物価連動国債が一千億円となっておりますけれども、短期満期の発行額が非常に多くなっているということに懸念感じます。  また、新しく物価連動国債が一千億円発行されておりますが、いわゆる二〇〇八年問題などを踏まえた今後の消化方式別発行の見通しについてお伺いをしておきたいというふうに思います。  あわせて、物価連動国債を発行するに至った経緯についてもお尋ねをしておきたいと思います。
  141. 寺澤辰麿

    政府参考人(寺澤辰麿君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、平成十五年度国債発行予定額百四十一兆円でございまして、その年限別の配分に当たりましては、バランスの取れた配分を行うということと、ベンチマーク化をすることによって国債市場における国債の流動性を高めるといったようなことを基本的な考え方として、短期、中期、長期、超長期の間で市場のニーズも聞きながら調整をしているところでございます。  それから、物価連動国債の発行に至った経緯ということでございますが、国債の大量発行が続く中、今後とも国債の安定消化を確保していくためには、多様な投資家のニーズにこたえることができる商品設計を行わなきゃならないというふうに考えているところでございます。  物価連動国債は、元本の額が物価動向に応じて変動するものでございますので、投資家の立場からいたしますと、将来のインフレリスクを回避することができるという商品性となっているわけでございます。そういった一定の投資家のニーズが期待できる商品であるということで検討してきたところでございます。  また、物価連動国債につきましては、市場の期待インフレ率を把握する手段ともなり得るということで、昨年の六月二十五日に閣議決定されましたいわゆる骨太の方針第二弾におきましても、物価動向を適切に把握する等の観点から、物価連動債を含む新たな方法について検討を進めるとされたところでございます。  こうした観点から、平成十五年度から物価連動国債を発行することといたしておりますが、これまでの国債と違いまして、元本が変動するという初めての商品でございますので、日銀におきますシステム及び証券会社や金融機関におきますシステムの準備が相当掛かりますので、平成十五年度の発行も、恐らく平成十六年度の一―三月に発行することになるというふうに考えております。
  142. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 物価連動をするということになりますと、順調に、順調にというか、物価が少しずつ上がっていけば、その国債を買うメリットというようなものはあると思いますけれども、今の横ばい状態、今のような右肩下がりのような物価がずっと続いていく場合に、こういうものにニーズが集まるとは思えないわけですけれども、だから一千億という小規模なものにきっと限ったんだろうというふうに思いますけれども、そこらの見通しというのはどんなふうに考えておられるんですか。
  143. 寺澤辰麿

    政府参考人(寺澤辰麿君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、確かに、将来のインフレによる元本価値の目減りを回避するというのが物価連動国債の商品特性でございますので、デフレ下においては確かに売りにくいという点はございます。  ただ、現在私どもが考えております物価連動国債につきましては、先ほど申し上げました、現在の市場の期待インフレ率を把握するという役割が一つあることと、物価連動国債は十年を一応検討しておりますので、確かに足下の経済はデフレ基調であるかもしれませんが、市場において十年間を通してデフレが継続すると考えるかどうか。恐らくそうではないと考えられると思いますので、そういった点が物価連動国債のニーズにどういう反映をするのか。さらに、市場にデフレ予想があるといたしますと、それが物価連動国債の発行条件に反映をするということでございますので、通常の国債より高い金利発行せざるを得ないというようなことで、そういう市場の調整を通じてこの物価連動国債は消化されていくものと考えております。
  144. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 何か、いいのかどうかちょっと分からないんですけれども、分かりました。  個人向け国債の販売がこの春から始まりましたけれども、売行き状況、あるいはまた浮かび上がった問題点について説明をしていただきたいと思います。  郵便局と銀行との間で売行きの違いというのがあるようにも聞いていますけれども、その理由についても説明をしてください。  それから、郵便局での販売を更に増やしていく考えはおありなのかどうかという点も併せてお答えをいただきたいと思います。
  145. 寺澤辰麿

    政府参考人(寺澤辰麿君) お答えいたします。  個人向け国債につきましては、平成十四年度は、民間金融機関の取扱い分三千億、郵便局取扱い分五百億、合計三千五百億円の発行を予定していたところでございます。また十五年度は、民間金融機関取扱い分一兆二千億円、郵便局取扱い分三千億円、合計一兆五千億円の発行を予定しております。  それで、平成十四年度分でございます第一回の発行につきましては、二月三日から二十一日まで募集を行いまして、その結果、十四年度の発行予定額三千五百億を上回る三千八百三十五億円を販売したところでございます。また、平成十五年分となります第二回の発行につきましては、今月の十二日から二十六日を募集期間として現在募集を行っているところでございます。  目下の募集状況につきましては、御指摘のとおり、郵便局におきましては第一回、第二回ともに最初の日に完売をいたしましたけれども、民間金融機関については、完売したところもあればそうでないというところもございます。  第一回につきまして、民間金融機関が三百九十機関、第二回目につきましては四百三十五機関が取り組んでいただいておりまして、現在取扱い中でございますので、全体の状況はまだつかんでおりませんけれども、第一回の発行に比べまして、第二回は申込み自体が、申込み希望額、販売希望額が小さくなっておりますので、実需を反映した募集の取組が行われていると思っております。  それから、郵便局の取扱い高をどうするかということでございましたが、十五年につきましては、郵政事業庁と協議をいたしまして、年間発行額を三千億円ということで、そのうち第一回分といたしまして、四分の一の七百五十億円ということにしてございます。  完売をしておりますけれども、郵便局の今後の取扱いにつきましては、販売状況を見た上で、郵政事業庁と検討をさせていただきたいと思っております。
  146. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 郵便局での販売は手数料が必要ないということですよね。民間の金融機関では販売手数料が必要なためにやっぱり郵便局の方に集中をしがちというふうに聞いていますけれども、そうだとすれば、郵便局でもう少し販売数を増やしていく方が国民にとっては使い勝手がいいのではありませんか。そのことを聞いているんですけれども。
  147. 寺澤辰麿

    政府参考人(寺澤辰麿君) お答えいたします。  御指摘のように、民間金融機関の中には、現在、国債はペーパーレスになっておりまして、これを購入し保有するためには、金融機関に国債の保有するための口座を開設する必要がございます。その口座開設に当たりまして、金融機関によって口座管理手数料等を徴求しておるところもあるということで、それが今回、第一回の販売以降いろいろ議論をされているということは承知しております。  それから、郵便局が売れるから郵便局をもっと増やせばいいということは、議論としてはあると思いますけれども、これまでも国債の窓口販売実績からいたしますと郵便局の取扱額が相対的に多いことでございますので、先ほど言いました、現在、第二回目が四百三十五機関で取り扱っていただいておりまして、非常に銀行から農協、信金、いろんな機関がそれに参加しておりますので、それぞれの取扱いの程度が違うということがございますので、第二回の販売状況も眺めながら、今後検討していきたいと思っております。
  148. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、税制の方の改革案について入らせていただきます。  平成十五年度は国税及び地方税合わせて一兆八千億円の減税先行ですが、かねて、増減税の税収は中立にしたいというのが財務大臣のいつもの御答弁でございました。しかし、今度のような減税先行はいつごろまで続けていかれるというふうにお考えなんでしょうか。
  149. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  正に先生言われましたように、十五年度税制改正、やはり財政規律に配慮しながら、かつ足下の経済情勢にも対応するということで、多年度税収中立を一つの指針として措置したと。  特に、今回の改正の影響を機械的に計算をいたしますと、減税は基本的に十五年度から直ちに適用となるというのに対しまして、増収項目については十五年度から十七年度にかけて段階的に実は適用になるということから、当初三年間は減収超過ということで、おおむね六、七年で当初の減収超過分を後年度の増収超過で埋めるという、そういう機械的試算ではありますけれども、多年度中立になっているということであります。
  150. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうしますと、平成十六年度には今回改正の配偶者特別控除は廃止をされますので、五千億円ですかね、増収になるということですけれども、今後どのような増収計画の下で、六、七年掛けて増減税収中立に持っていこうとされているのか、具体的に答えていただきたいと思います。
  151. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 十五年度税制改正によります年度別の増減収を試算いたしますと、機械的試算ですが、国・地方合計ベースで、一応、十五年度はネットで一兆八千億円の減税、十六年度も一兆五千億円の減税、それから十七年度が五千億円の減税、それから十八年度以降八千億、それから十九年度一兆二千億、二十年度一兆二千億と、そして二十一年度一兆一千億と、こんなような数字になっているところでございます。
  152. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その増収にする項目ですね、例えばどういうものを考えておられるんですか。今度の配偶者特別控除の廃止ということに加えて、さらに特定扶養控除の廃止だとか、あるいは各種個人保険控除の廃止等々も考えておられるのかどうかということをお聞きをしているんですが。
  153. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えをさせていただきます。  今回の十五年度の税制改正では、当然、特定扶養控除などのいわゆる改正は入れておりません。  今回、一応、増収項目としては、配偶者特別控除、それから消費税免税点引下げ等の改正、それから酒税、たばこ税と、こういうようなものによって増収を確保するということでございます。
  154. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それは今回の改正でしょう、税制改正でしょう。それは今回のですよね。そうじゃなくて、今後の見通しを聞いているんですけれども。
  155. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えの仕方が不適切だったのかと思いますが、今回の改正によるいわゆる多年度税収中立というのを申し上げたわけで、来年度以降の改正を私お答えしたわけではございません。来年度はまた来年度以降、それぞれ増減税の法律を出していくことになると思います。  ただ、今回の税制につきましては、今、先生も言われましたとおり、例えば増収項目でいえば配偶者特別控除、国分は十六年分、それから地方は十七年度分から始まると思います。それから、消費税は十六年の四月から、ただし個人は実質は消費税については十七年の一月からということになります。それから、酒税は十五年の五月から、たばこ税は十五年の七月から、これらはいずれも法律の改正の中に入れて措置してある。それらの言わば今申し上げた数字は、今回の十五年度税制改正に伴う増減収の推移を御説明したということでございまして、さらに、今後の見通しはまた今後、正にこういう国会の場で御議論いただくということになるのかと存じます。
  156. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 こうした今回のような配偶者特別控除の廃止によって、我が国の所得税の課税最低限度額は低下をしたというふうに考えられますけれども、このことは基本的に望ましい方向だというふうに考えておられるのかどうか。  諸外国と比較をして、多分現状、円とドルの為替レート百二十一円換算でやると、アメリカの課税最低限度が三百十六万四千円ぐらいでしょうか。それに対して日本は、今回の改正によって三百二十五万程度になるということで、ほぼ横ばい状況になるので、諸外国と比べてそんなに差のない課税最低限になったというふうにお考えになっているのでしょうか。そこはどうでしょう。
  157. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えをさせていただきます。  いわゆる所得税におけるいろんな諸控除の見直しというのは、もちろん最終的にはそれの積み上げが課税最低限を構成するという意味で、課税最低限全体としてどうであるかという御議論は十分踏まえさせていただかなければならないんですが、ただ一方で、その諸控除そのものが、それぞれその時代に合っているかどうかということをやはりきちっと見直していくという姿勢はこれからも必要だろうというふうに思っております。  例えば、今回の配偶者特別控除の見直しも、やはり配偶者特別控除が創設されたときに比べると、現在では共働き世帯が専業主婦世帯を上回る、あるいは配偶者特別控除の存在がある意味では女性の就労の選択に中立的でないんじゃないかといったような御指摘もあって、今回の見直しにさせていただいているわけでございます。  今後も、いわゆる人的控除からいろんな諸控除、それぞれ時代にどういうふうにマッチしているのかしていないのか、それらを一つ一つ点検をしていくという作業がいわゆる政府税制調査会からも指摘されておりまして、それらを今見直ししていくので、最初から、例えばそれの結果、課税最低限を引き下げるということを元々目的にしているわけじゃありません。ただ、今の例えば複雑に絡み合った控除体系がいいのかどうか、もっと簡素化した方がいいんじゃないかと、こういうことももちろんございますし、それらを踏まえて議論していくと。  ただ、一方で、所得税自体は、諸外国と比べても国民所得比、極めて負担が軽いということもまた確かでございますから、全体、これは控除だけではなくて税率構造も含めて、もう一度議論をきちっとしていかなければならないというふうに思っているところでございます。
  158. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その為替換算を購買力平価水準によって計算をする場合、先進諸外国に比べてかなりもう既に低い水準になっているのではないかと私は考えるんですけれども、その購買力平価水準、塩川財務大臣は百五十から百六十円ぐらいが妥当だというふうにいつもお答えになっているんですが、今百二十一円換算でアメリカと同程度の課税最低限ということになりますと、百五十円、百六十円で換算をした場合、もっともっと低い位置にもう既にあるという認識を私は持つことができるんじゃないかと思いますけれども、そのことについてどうお考えでしょうか。
  159. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 確かに、購買力平価というのも、例えば世界銀行だと百五十四円だとか、OECDですと百五十円ですが、いろいろございます。やはり購買力平価そのものが、ある意味では為替相場が貿易取引だけではなくて資本取引、様々な市場の需給に影響されるといった問題点を持ったものかと思います。  したがいまして、先生が言われるとおり、購買力平価も確かに重要な指標ではありますけれども、その一つの試算で為替水準の適否を考えるというのはいかがかなと。やはり我々、税を議論するという観点から見ると、やはり国によってその購買力平価のその対象品目の取り方ですとか品目間のウエート付けとか、それぞれ水準がまちまちでございまして、やはり制度の国際比較ということからすると、我々がよく使っております実際の為替レートということで比較する方が適切なのかなというふうには思っています。  ただ、確かに先生が言われるとおり、購買力平価で見ると日本の水準というのが、イギリスは日本よりはるかに低い課税最低限を取っていますが、その他の国に比べると、少しずつ、特にアメリカとはほぼ同じぐらい、ないしは若干高いところもありますし、それからドイツ、フランスは日本より高くなっているというような状態かと思います。
  160. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回の配偶者特別控除制度の廃止については、私も働く女性の一人として望ましい方向であるというふうに評価をさせていただきたい、そう思っています。  しかし、この廃止によって浮く財源について、どういう使い方をするのかということが極めて私は重要な問題になってくると思います。女性たちの社会進出を更に進めていくための予算に使っていただくとか、あるいは育児、教育等に大幅に使っていただくようなことを財務省は考えていただけるのかどうか。この浮いた財源についての使い道でございますけれども、特定できるのかどうか、お聞きをします。
  161. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 税制改正に関連いたしまして、実は与党の方から児童手当の対象年齢を考えろというようなお話が来ておりまして、そういうことを踏まえてこれから与党と政府との間で話合いが持たれていくことになっているわけでございます。  ただ、こちらで減らしたから即それを充てるというような形には制度上はもちろんなっているわけではございません。
  162. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 恐らく、この配偶者控除を、特別控除を廃止をしようという議論の中でそうしたことの要望というのも寄せられてくるというふうに思いますので、十分考えていただきまして、更なる女性たちが就労できるよう状況を整えていくために使っていただけるようにお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、十年ほど前までは世界的に税のフラット化が言われていました。アメリカを始め各国は急速にその税のフラット化を推し進めてまいりました。米国も一時税率の刻みを二段階まで縮小しましたが、その後、やはり極端なフラット化への反省が出されて、現在は五段階、六段階ですかね、六段階ですよね、に戻しています。  税のフラット化は、所得再分配機能をゆがめるし、税の持っているビルトインスタビライザー機能というんでしょうか、それをも低下させると思います。東京大学の八田教授も、税率が少々高いからという理由で仕事を辞める人はほとんどいない、税率と仕事をするしないの因果関係はほとんど認められないと言っています。  これまで縮小してきた税率の刻みを今後は逆に一つ、二つ段階を増やしていく必要が生じてくるんではないかと思われますけれども、いかがでしょう。
  163. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 確かに、累進課税の長所というものは配分という面であるのは言うまでもないわけでございますが、じゃ、かといって余り急速な累進構造というのがプラスだけかといいますと、それによってもたらされるマイナスももちろんあるわけでございます。  そういう中で、フラットと累進構造と、その間にバランスをもって税を決めていくということが大事だろうという中に、今日言われておりますことは、一度、非常に高かった累進構造の極めて高いところの税率を下げるということで勤労意欲を増そうという議論が一方にあり、それが今実行されてきたわけでございます。  それから、余り低いところに税率がありますと、やはりこれは国民全体に負担していただくという、みんなで国を支えるという思想との問題もございますので、余り低いところは少し上げていこうじゃないかという議論もある。その辺のところでバランスをもってこれからの税率が決まっていくだろうと思うところでございます。
  164. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 消費税について、三千万円の免税点のところが一千万円に引き下げたということは、この消費税が持っている矛盾の解決に向けて一歩踏み出したということで評価をできるわけですけれども、どうして一千万円で止めたのでしょうか。アメリカや諸外国などでは三百万円、三百五、六十万円ぐらいのところで免税点を抑えているというふうに思いますけれども、いっそのこと、消費税が持っている非常に矛盾したこの点を是正をしていくためには、もう少し、全廃をして更にそこから生じてくる矛盾に対して手当てをしていくという方法の方がよかったのではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょう。
  165. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 一つの理想論というか、理念というものがもちろん世の中にあるわけでございますが、しかし、現在どのようなことになっているかという現実論もあるわけでございます。  そういう中で、これまで、消費税導入のときの経緯等から、三千万以下については消費税は課さないと、つまり課されないというふうに思ってきたそういう方々に今度どんと行くということになりますと、やはり零細な方にとって事務の手数量、事務処理の手数が増えるとかというようなこともございますので、やはりそういうことを考えて、いきなり三千をゼロではなくて、千というところに止めたということだと思います。
  166. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 非常にどっち付かずの政策だというふうに思いますよ。  だって、三千万円まで免税点にしておれてそのまま現行を維持しようとしたならば、その三千万円までの免税点については消費税の徴収はしないということを決めればいいわけですよ。そして、仕入れに掛かった今までの消費税について、払った消費税については、今度は内税化をするわけですよね、表示を。その内税化の中に仕入れ原価と一緒に入れて定価表示をすればいいわけで、消費税を取らなくていいわけですよね。  そういうふうにして三千万円で免税点のところを抑えてあげられれば、この今度の、消費税を払わなければならないために大変な事務の雑多なことをやらなければならなくなりますし、今まで負担をしなくてもよかった部分というかな、払わなくてもよかった部分を今度は徴収をされるわけですね。そういう状況が発生をしてきて新たな混乱というのを招いているんですよね。  ですから、今まで財務省は、消費税三千万円免税点についても消費税は徴収すべきというふうに進めてきました。そうですよね。そういう状況の中で、払わなくてもいいんだと、取っても払わなくてもいいということに対して消費者が、なぜ払わないのに取るのかということで非常に議論になったわけですよ。そうなんですよ。  だから、今度内税方式にして定価の中に払った消費税が入れられるということが決まったわけですから、三千万円の免税点のところもきちんとそこは手当てができるわけなんですよ。それなのにそこを一千万に引き下げたという、本当にどっち付かずで、どちらにも悪いというふうな結果になってしまうんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  167. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 今まで納めていなかった方が納めるようになるという、そういう制度が変わることに際しまして、やはり余り急激な変化というのはいろんな意味で問題を引き起こしがちでございますので、やはり三千からゼロではなくて三千から一千というのは、そういう意味では今日の状況を考えて、先ほどこの委員会でも逆に下げ過ぎではないかと、そこで起こる問題をどうするんだという御議論も随分出たわけでございますから、そういうようないろいろな御議論を勘案しながら、取りあえず一千万と。  これによりまして、前にも申し上げましたけれども、事業者のうち、今までは六割が課税されていなかったのが、これからは四割が残って六割は課税される方に行くということで、この四割、六割の、四対六の比率が変わるという、つまり半分、五割を超えて負担者の方が増えるという形になったということで大きな前進を見るだろうと思っているところでございます。
  168. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ちょっと私の趣旨とは違う答弁かなというふうに思いますね。  一千万円、それじゃ免税点の今度は対象になる一千万円以下の商工業者に対しては、内税方式でやるわけですから、消費税の徴収についてはしないように指導をして、今後はそこからはもう下げないというようなことが約束ができないんでしょうか。
  169. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 先生言われますとおり、免税業者というのも仕入価格の上昇という形で消費税負担しておるわけでございますですね。ですから、そういう方々についても、その負担分については免税業者でも販売価格転嫁することが適正なわけでございます。  ですから、そういう意味では、こういう方々にも、言ってみれば総額として自分の値付けをされるわけで、ただ、先ほどから内税というふうに先生が申されているんですが、今回のは決して内税を強要しているものではありませんので、消費者にとって最終の自分が買う価格が分かるようにということで決める、改正させていただくわけで、内税であれ外税であれ、どちらでも何でも構わないんです。要は、消費者の方が自分が支払う価格が正にどこかに公示されている、そういう仕組みに変えようということなので、その中には、今先生が言われた一千万以下のそういう免税業者の方については、その総額の中に御自身が負担された分を転嫁した形で値決めができるような方向に行けるように、できるだけ広報、指導、相談体制を整えていきたいというふうに思っている次第であります。
  170. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ですから、その一千万円免税点は、消費税という名目では消費者からは取らないということが決められれば、今後、その一千万円の免税点の制限をなくする、撤廃をするようなことは議論にならなくなるんですよね。消費者から預かってしまうので、そのことが懐に入ってしまうという状況を私は憂えているんですね。だから、そういう指導をしたらいかがですかというふうに言っているんですよ。  三千万円免税点制度を入れるときに、消費税を取りなさいと、ここで私、国会の議論の中で聞いたときに唖然としちゃったんですけれども、納めなくてもいいけれども、取りなさいという指導をしているということが問題なんじゃないかというふうに思うので、今問題にしているわけでございます。
  171. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) こういうことだと思うんですよね。今度トータルを決めるというのは、単に、もしミカンを買いに行って百円とこう書いてあったとき、後でチーンとレジで鳴って百五円取られるというのでは、あれということになりますので、最初から百五円と書いておきなさいというだけなんですね。  しかし、そこを百円とこう書いたらどうなるのかといいますと、実は大きな店で税金を納めるところでは、その百円の中にその五%分ですね、何円かがここに入っての百円なんですね。しかし、零細な方というのは、その百円の中に実は税金なんというものはもう入れない、もうそのまま百円で売って、つまり大型店だったら百五円のところを百円で売ると。  あるいは、そういう感じで売るわけで、そこには消費税はいただかないという人たちがまだ零細なところには結構いるわけですよね。だから、そういう消費税をいただかないような、トータルで百円なんですから、それでもってやっているという人たちから取ろうにも、元々消費税がその中に入った形で入っていないわけですから、取ろうにも取るのはおかしいじゃないかというようなこともあるわけですから、そういう意味ではやっぱり、余り零細な人、こっちで言うのもおかしいんですけれども、税当局がね。やっぱり一千万以下の人からすぐ税を取るというのはやはり問題があるという考え方も十分に納得できるわけでございます。
  172. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 何か副大臣、私が言うこと全然聞いていないじゃありませんか。後で議事録見てください。自分の答弁が変なのが分かりますよ、きっと。  竹中大臣、おいでいただきましたので、お伺いをいたします。  昨年秋、竹中大臣内閣改造によって金融担当大臣を兼任することになりました。そのころから、それまでやや持ち直しの動きを見せていた景気動向が急速に弱含みに転じ、不良債権処理も一向に進まないことから、小泉総理とともに不良債権処理の加速化を言い出しました。プロジェクトチームを立ち上げ、様々な反対意見や疑問が次々と出される中で、大臣は金融再生プログラムを打ち出しました。当然、当初大臣が考えていたような内容からは後退したものでしたが、あれだけ金融界からの反対意見があったにもかかわらず一応の方針を示したわけです。あれから早半年近くがたっていますが、大臣から見た金融再生プログラムで示した方針の評価、その方針、評価どおり事が進んでおられるのかどうかを述べていただきたいと思います。
  173. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 昨年の十月末に金融再生プログラムを発表いたしまして、今それに基づきまして最初の決算が行われようとしております。金融再生プログラムがどのような効果をもたらすかというのは、やはりその決算においてまず最初にしっかりと評価をしなければいけないというふうに考えております。  したがいまして、今の段階ではその再生プログラムを着実に実施していただきたいという非常に強い期待を銀行に対して今持っているわけでありますが、ただ、それでも一例、やや挙げますと、我々が掲げた資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化、そうした問題に向けて、銀行が去年の終わり辺りから非常にいろんな動きを見せ始めたというのは、これはニュース等々でもかなり御確認をいただけるのではないかと思っております。  問題はしかし、自己資本を充実するために増資をする、しかしその増資に当たって優越的な地位の濫用とか、そういうことがあっては困るわけで、それがしっかりと行われるか、正にコンプライアンス、法令遵守をしっかりしてもらわなければいけない。その結果として、その自己資本に基づいて強い財務基盤を作っていって、中長期的に円滑な資金供給ができるような結果を出していただかなければいけないわけですので、私は、変化は始まったと、それに基づいて良い結果を出してもらいたい、それの最初の重要な評価ポイントがこの三月期末の決算であると、そのように認識をしております。
  174. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうすると、予定された状況で推移をしているというふうにお考えなんでしょうか。  私は、何かますます、金融経済、財政問題、どれを取っても回復どころかますます泥沼に入り込んでしまっている状況なんじゃないかなと、こう憂えているんですけれども、そうした今の現状も大臣にとりましては、いや予定した工程なんだと、これから良くなるんだというふうに、そうお考えなんでしょうか。この半年間のこの評価というのは極めて重要だというふうに思うのですけれども。
  175. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) まず、金融再生プログラムに基づいてどういうことを予定していたかというふうに率直に聞かれますと、実はそれはそんなに明確に、必ずここでこういう増資が起こるとか、そういうことを想定したわけではございません。  私は、金融機関が例えば自己資本の増強に当然のことながら努力をするだろうというふうには思っておりましたが、そのアクションそのものは、正直なところ私が予想していたよりも早くアクションは起こったと思っております。  しかし、これは繰り返し言いますが、その中身が問題ですから、その中身がどうかというのは、そのコンプライアンスの状況、それがどのよう財務基盤を強化するかと、これは正にこれから評価をしなければ、安易に今の時点で申し上げることはできないのではないかと思っております。  それと一点、大渕委員は経済が泥沼に入っているのではないかという御心配、御懸念を表明なさっておられますが、これは今、特に今年に入ってからイラクの問題がどうなるかということで、世界じゅうの市場が、資本市場が不安定化する中に日本もおりましたので、そうした状況下でこのプログラムをどのように評価するかという難しい問題があろうかと思っております。  ただ、私は日本の経済が泥沼に入っているというふうには思っておりません。これは一つの、あくまで一つの数字ではございますけれども、十四年度の経済成長率は我々が予想していたよりも高いところに来ていると、これは何度か申し上げさせていただきました。この一―三月期が、仮に一―三月期が仮にゼロ%成長であったとしても、十四年度の成長率は、これは計算でありますから、一・八%成長という結果になります。  我々としては、実はゼロから一%ぐらいの間の非常に低い成長率を二、三年間やはり我慢しなければいけない、それが集中調整期間であるというふうにずっと考えてきた。今ももちろんそのように考えているわけでございますが、この一年に関しては、むしろアメリカ経済に引っ張られたという面も一部ございますけれども、循環的には少し良い風も吹いてきた、そうした中で着実に改革を進めていくことが今正に求められているというふうに認識をしています。
  176. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 三月の月例経済報告の景気判断でも横ばい状況ということで、GDPについても今一・八とおっしゃいました。〇・九%だったですかしら、発表されたのは。そういう中ですよね。  しかし、そうだとすると、その実体経済、私たちが今暮らしている社会の中で相変わらず企業倒産が続き、あるいはリストラがされて、あるいは給与の削除などがされて、非常に景気が良くなっているという実感が感じられない。ここはどこにそれじゃギャップがあるというふうにお考えなんでしょうか。良くなっている分野というのは特定なところなのかどうか、そこを教えていただけませんか。
  177. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) まず数字の件ですが、ちょっと〇・九%と御指摘がございましたが、これは十二月に我々が改定した改定見通し、当初はゼロ%の見込みだったのを改定して、〇・九%に今改定をしておりますが、先ほど申し上げましたように、このまま一―三月期がひどい数字にならない限りは、それより更に上にいく可能性が高いと。先ほど言いましたように、もしゼロであれば一・八にいくと、そういう状況になっております。  実はこういう統計の数字、特にマクロの統計の数字と実感との乖離でございますけれども、これは非常に悩ましい問題が常にあると思います。これは実はバブルのときも、不況だというふうに感じていた人というのは結構いたんですね、今から思いますと。その意味では、実は実感というのはなかなか難しいものだと思います。  特に、今格差が、地域格差、それと業種間の格差、個人でも所得の格差が実は拡大している中で、マクロというか平均値で見ることの意味というのはなかなかむしろ難しくなっているというふうに思います。これはどうしてなのかというのは大変重要な問い掛けであろうかと思いますが、これは御承知ように、自動車産業は史上最高益を今出しているわけですね。その意味では、正に日本のリーディング産業が最高益を出しているというのも、これは一つの事実でございます。もちろん、地域によって、部門によって大変苦しい状況が続いている。  それともう一つ、まあ我々の実感と密接に関連する部門としては、やはり給与の話があろうかと思います。  これに関しては、むしろ過去一年間ぐらい、一、二年の間、企業業績が悪い間も、むしろ給与というのは余り下がらなかったんですね。結果的に労働分配率が上がって資本分配率が下がった。その調整をこの半年、一年ぐらい急激に行ってきた関係で、特にボーナス、特に昨年の夏のボーナスの低下は非常に大きかった。私は、企業の利潤に遅れて給与が調整されてきていますが、この給与の調整もかなり進んできたのではないだろうかというふうに思っておりますので、その意味では、マクロの数字と実感の乖離というのは常にあるものの、むしろ今後は少しはこの実感が縮まっていくということを期待しているところでございます。
  178. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 終わります。
  179. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 それでは質問させていただきたいと思いますが、今、私、今までは大体我々大きい会派から順番に聞いていって、少数会派の方に、いつも最後のころを聞いて大変、私も初めて後から聞いて、なるほど同じような質問をされるものだな、予定されているんだなと思って、逆にきっと我々が質問した後に質問するときは随分苦労されているなというふうに感じたんですが。逆にまた、今ちょっとデータを聞いて、ちょっと竹中大臣、数字が出ましたのでちょっと聞きたいんですが、ゼロから〇・九になり、それから今年度の成長率ですね、年度の。大体一・八%ぐらい行くだろうと、こうおっしゃいましたですね、これからの見込みでは。これは名目ではどのぐらいになるんですか。
  180. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) まず、一・八の意味をもう一度申し上げさせていただきますが、この一―三月期がゼロ%成長であったとして、これまでの、昨年の四―六月期等とですね、それでGDPを出しますと、前年度に対して十四年度は実質で一・八%成長という単純な数字が出てまいります。そういう意味でございます。  名目でありますが、済みません、すぐにはちょっと数字が出ませんのですが、その場合に想定される名目成長率はマイナス〇・三%。繰り返し言いますが、これは想定でございます。
  181. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今、名目を聞いたのは、政府が今デフレ対策ということをある意味では正面から据えてやろうとしているんですね。そのときに我々は数字を聞くときに、確かに実質というのは、インフレ下においては実質という評価は非常に私は分かるんですけれども、デフレ下においては、やっぱり名目でどうだったのかということを私は逆に問わないと本当の、我々が議論するときに、ある意味では、今は聞いて一・八%、これならきっと名目でもプラスになったのかなと思って、ようやくゼロ金利が解除へ行くのかとか、いろいろ明るい展望はやや持ち掛けたんですが、やっぱりまだ名目でもマイナスだということなんで、やっぱりこれからは、私はむしろ、目標を立てるときには、まず名目を立てて、そして実質も併せて表示すると、こういうふうに私はやるべきじゃないかという意見だけ申し上げておきたいと思います。  それでは、最初に、二〇一三年にプライマリーバランスの黒字という、今、大渕さんもおっしゃいましたし、先ほど非常に格調高い浜田さんの質問などもありまして、やっぱり私もこれは少し聞かなきゃいかぬなというふうに思っているんですが、先日、本会議でも、私どもの大塚議員から、いわゆる三十兆円枠に代わる新しい、言ってみますと歯止めといいますか財政規律を確かにしていくというときに、余りにもその三十兆円枠から今度は、いやいや、二〇一三年にプライマリー黒字ですよということで、我々からすると、ちょっとその間が空き過ぎるなと。それに対して答弁があったのは、要するに、単年度において一般的な支出について伸び率を前年度よりも下げますよと、こういう表示があったんですよね。  そうすると、私は非常にすぐ、意地が悪いですから、これは補正予算を組んだらこんなもの一発で狂っちゃうんじゃないかなというふうに思うんですよね。  今、補正予算論議がずっと続いていますけれども、その意味で、単年度におけるいわゆる一般歳出の伸びをきちっとコントロールしますよと、こういうふうにおっしゃっているんですが、これは補正予算という問題をどのように考えておられるのか、この点についてはどんな考え方を持っていらっしゃるんでしょうか。この点は財務省の方がいいかな、財務大臣でも結構ですよ。
  182. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 今、十五年度予算を御審議いただいているときに、補正の話というものは全く考えていないわけでございまして、そういう中で、今言いました対前年度の予算はどうだこうだという議論をしているところでございます。ただ、念のために、よく補正についても聞かれるわけでございますが、今見渡す限り、今現在、十四年度、御承知ように補正を置きました。これが今執行されているわけでありまして、そして十五年度、普通の形でこの三月までに予算を通していただいて、四月から普通に実行させていただければ、当面補正の必要性はないというふうに財務当局は考えているところでございます。
  183. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私は別に引っ掛けるつもりでしゃべっているんじゃないんです。もうこの何年間補正予算がなかったことはないんですよね。しかも、補正予算によって絶えず財政規律がゆがめられてきたという歴史があるわけですよね。  で、それをやらない、つまり、いわゆる当初予算、予算というのは単年度主義ですから、いい悪いは別にしてですね。そうすると、その予算というものの、今審議をしているその予算がある意味ではどうやったらその歯止め利くかというときに、いや、毎年の予算の歳出を、伸び率を前年度以下に収めるんですよと、こういうふうにおっしゃられても、必ずそれが、今副大臣がおっしゃっても、私がしゃべっているんじゃなくて、もう与党の重要な幹部の方々が、いやもう補正予算やらなきゃいかぬというようなことがもう出ている。それは、そのことはちょっと別にして、別にしてというよりも、そういうことはこれからはもう一切やらないんですということならば実は、いわゆる前年度以下に収めますということで一つの歯止めになる基準になるかなと思うんですが、どうもそんなことはありっこないんじゃないのかというふうに思えるものですから今みたいな質問をしたわけなんですね。  その意味では、私はやはり、どうしても二〇一〇年代、まあ一三年という塩川大臣の説もありますが、このプライマリーバランスの黒字への回復ということについて、私はどうもやはり政府、今新しい歯止めがまだ見付かっていない中で、どうやったらこれができるんですかということについての見通しというものがいま一つ我々にぴんと来ないんですよ。  先ほどの浜田卓二郎議員の質問の中で、私はもう耳にたこができるほど聞いているのは、これは財務大臣が宮澤さんのときからなんですよ、もう私も何度もこれを繰り返していますから、もう御存じだと思うんですよ。要するに、国と地方の関係をどうするか、それから中央政府と、あ、ごめんなさい、社会保障のありようについてどう変えるか、これは骨太の方針ができた段階でそこは必ずやるでしょうからと。これはまだ竹中大臣の前です。それが出るということで実は、つまり将来の国の姿が明らかになってくるわけですね、そうなると。その姿が明らかにならないと、どうも二〇一三年度あるいは二〇一〇年というもののプライマリー黒字というのの問題も見通せないんじゃないかという気がするんですよね。  そうでないのになぜ二〇一〇年代初頭あるいは一三年というのが、プライマリー黒字はやりますよと言っても、その間における国と地方の関係なり、あるいは社会保障の財政についての負担をどうするかということの、税と保険の関係なども含めて、あるいは国民負担率、余り私は国民負担率という言葉は好きじゃないものですから公的負担率というふうによく言うんですが、その負担の上限というのは五〇%だとよく言われているけれども、じゃ本当にそれで将来の姿は描けるのかねと。こういう絵姿が出てこないのになぜ二〇一〇年代、あるいは時々二〇一三年度とおっしゃる方もおられるんですけれども、それがどうしてできるのかということを我々にちょっと分かりやすく、ちょっともう一回示していただけませんかね。
  184. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 目標でございますから、まだ二〇一〇年代初頭、まあ一三年でもいいわけですけれども、随分先の話でございますから、しかしその先の話のところぐらいまでにはプライマリーバランスを回復させるという大きな目標を立てましたということで、これは目標でございます。じゃ、そこにそういう過程でいくに当たりましては、おっしゃるとおりいろいろなことがそこのところまでには成し遂げていかなければならない中に、社会保障費をどうするか。そこについては確かに長期的には消費税とかいうような、いろんな税の話も出てくるでございましょう。しかし、そういう問題を今ここですべて仕上げてビジョンを示せればいいとは思うわけでございますが、私が見る限り、政府としてもそこまではぴしっとしたものを今まだ作っていない。「改革と展望」の中で作っていこうという意欲があるのが見て取れるわけであります。  そして、具体的に今すぐやりましょうということの中にはっきりとうたってまいりましたその改革への道筋として、一つは落ち込み過ぎました、まず当面の問題ですが、景気対策もありますが、落ち込み過ぎた法人税を民間経済を活性化して上げていこうというために、今までやってこなかった単年度の税収中立という問題を、この枠を破って多年度ということ、つまり多年度ということは、当面は思い切った減税を景気対策に打つんだという、これもやれやれという国民の声もありましたけれども、なかなかやってこなかったことを初めて、一・八兆という規模でもって初めて減税先行という形で、やがて税金が大きく上がってくる、経済活性化するということを考えた税制改革に今年は取り組もうとしておりますし、それから、芽ということで、芽出しにすぎないかもしれませんけれども、国庫補助金の削減のめど、そしてまた、あるいは国と地方の場合も、これもずっと言ってきたわけですけれども、いよいよここに来て本当に市町村の合併ということが進んでまいりました。  この地方公共団体の三千を超えるという市町村が千の方に近づくことによるこの大きな市町村の大合併というのは、これまで言葉で言ってきた改革ではなくて、正に実行する形の中で大きく地方の姿が変わってまいりますときに、地方交付税の議論も、議論から実行に変わるという大きな転換点を見るような気がするわけでございまして、そういう意味では、地方交付税の大きな問題というのがこのときまでには相当程度この姿が明らかになってくるという、改革の方向性は私はこれで出ているというふうに思うわけでございます。
  185. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いや、小林さんね、先ほど多年度税収中立って初めてやったと言うけれども、そうじゃないんです。もう経験あるんですよ。九四年のちょうど消費税を引き上げることを決めたときに先行減税をやっているんですよ。五・五兆円だったですか。これは一九九七年から例によって五%に引き上げた。あのときの議論はたしか税収中立で、その間の赤字をどうするんだと、つなぎ国債を発行するということで、それはやりましたよ、それは。  だから、そういうのは過去に何回もやっているんです。税収中立というのは、おっしゃっているけれども、これは塩川大臣がよく言うように、それはしかし増税というふうになってきたら今度はなかなか大変だということはよく分かるんですよね。ですから、それは後でまた税の話はしましょう。  そんなもので、いや、今やっている最中ですよと。先ほど浜田さんのお話があったように、財政的に見たらもう国家財政はとんでもないところへ来ているんでしょう。私、何度も言わせようとしています。  そこで、竹中大臣に。同じように二〇一〇年代、「改革と展望」を作られているわけですが、今お話をしているように、二〇一〇年代のプライマリーバランスの黒字という問題は、本当に我々が今申し上げたような観点からすると、いつ、なるほどこういう改革をし、こういう構造に国家を組み立て直していけばこういうふうになっていくんだなと、そういう展望というのはいつごろこれは出てくるんでしょうかね。経済財政諮問会議でも恐らく議論されていると思いますので、その辺りもちょっと教えていただければと思います。
  186. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) プライマリーバランスの回復をどのように道筋を立ててやっていくか、これは経済財政諮問会議にとっても最大の今の課題の一つであるというふうに思っております。  現時点で、先ほど小林大臣からお答えがありましたように、我々としては、非常に大きなマクロ的な枠組みの中でそれをある程度は示せているという状況になっているというふうに考えております。その枠組みは、これはマクロでありますから、今、国と地方の分配の問題がございましたけれども、国と地方もこれまとめて一つの一般政府でありますので、これはちょっと極端に言えば、国と地方は重要な問題であるけれども、マクロ的に見るとそれは配分の問題ですということで、マクロで考えるとするならば、まず一般政府の大きさを今の時点よりも大きくしない。したがって、政府の規模に緩やかなキャップをはめているというのが一つのやり方です。このキャップをはめている中で、経済を活性化することによってGDPを上昇を少しずつさせて税収を上げて、それによって、今GDPに対してプライマリー赤字は大体五%ですから、毎年GDP比〇・五%ずつぐらいこれによって改善をしていく。  今は二〇〇七年までをこの対象の期間としております。昨年の「改革と展望」の時点では二〇〇六年までだったんですけれども、こういう形である程度二〇〇六年までは今の大体半分ぐらいまで減らすことができる。しかし、その先更に同じよう政府の歳出にキャップをはめていくのか、それとも国民負担を何らか考えるのか。正にその給付と負担をどのように考えるかと、これは大きな政治的な決定でありますから、それは二〇〇六年までに給付をどうするのか、政府のサービスをどのようにするのか、国民負担をそれに見合ってどうするのかということを二〇〇六年までに決めていって、その先も同じよう縮小、つまりGDP比で〇・五%比ずつぐらいのプライマリー赤字の縮小を目指していく。そうすると、二〇一〇年代初頭にマクロの枠組みとしてはプライマリーバランスの回復が可能になる。実は「改革と展望」で示した枠組みはそのような形になっております。  したがって、まだ二〇〇六年まで我々がやることは、とにかく歳出を抑えて無駄をなくすことである。その先については二〇〇六年までに結論を改めてみんなでこう議論して出す。そのような中で大枠としてはプライマリーバランスを回復していけるというふうに考えております。  それと、あえて峰崎議員の御指摘で、補正予算というのはどうなるんだということで、これはこれで大変重要な問題でございます。補正予算でもしも何らかの赤字、その一瞬赤字がもし増えたら、例えば五兆円もし赤字が増えた場合は、GDP比一%更にプライマリー赤字が拡大することになります。これを十年で解消していこうと思ったら、GDP比〇・五%の改善ではなくて、〇・一%上乗せされますから、〇・六%改善しなければいけない。そういうことに、仮にですけれどもなってしまいます。それが可能かどうかということは、だからこそ毎年毎年この「改革と展望」をローリングして、きちっとチェックしていきましょうと、そのような形に今しているわけでございます。
  187. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私は一度本当はこれは総理にも直接聞きたかったんですけれども、今二〇〇六年までとおっしゃいましたね。要するに行政改革、つまり国民税負担を求める以上は、まずは行政の改革をやらなきゃいけない。じゃ、どのぐらいの行政の改革までいけば国民負担を求めるのか。そこのところがはっきりしないままに、いや、とにかく自分の在任中は消費税を上げないとか、とにかくこういろいろおっしゃっていますんですが、本当に将来の二〇一〇年代のこのいわゆるプライマリー黒字へ向けて、行政改革については今二〇〇六年までというふうにおっしゃいましたよね。ここまでは行政改革でやりますと、しかし、どのぐらいどういうところの中身かというのは私も細かいあれは別にして、そうすると今からこれ、二〇〇三年度、四年度、五年度、六年度、四年間ですか。そうするとこの四年度の間のいわゆる〇・五%とか、その分を掛けていくとなると二兆四千億ですか。それが行政の改革の量なんだということなんでしょうかね。そういうふうに理解していいんですか。  ここまでの、それぐらいの金額が、この二〇〇六年までの間の金額の積上げがこれが行政でカットする分ですと。つまり、負担増で求めない分だと、それでプライマリー黒字に向けた努力をしていくんですと。量ですよ、中身じゃないですよ。そういう理解竹中さん、よろしいんですか。
  188. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 行政改革という具体的な話と、今ちょっと議論しているマクロの話というのはちょっと次元が違うものではありますが、あえてその整合的な議論をさせていただくとすれば、私の理解では、一般政府の規模を今と同じぐらいのレベルでGDP比で抑えるというふうにしているわけですから、ほっておいたら、何もしなければどんどんどんどん歳出は膨らんでいきます。どのぐらい膨らんでいくかはちょっとにわかには私は分かりませんが、その膨らんでいくであろう歳出の規模と、現状を維持したいというこの差額が正に行政改革として求められるものであるということになろうかと思います。
  189. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そうすると、デフレ下でGDPがこう減っていくと、現実にはですね。そうなっていくと、ますます、何というのか、税収の伸びはもちろんこれ弾性値でいえば落ちていくと思うんですね。そうすると、その分また行政改革、行政改革とこういうふうにいくわけですね、歳出カットというか。  そうすると、先ほど浜田議員もおっしゃったんですが、本当にこれ日本の財政というのはそれまでの間に、あと何年もすればGDPの二〇〇%、一千兆を超すぐらいの、何といいましょうか、赤字借金体質になっちゃうんじゃないかと、こういうふうに危惧されているわけですね。そのときに本当に財政の規律が維持できるんだろうかねという大変な難問も待っているわけですけれども、そういうふうに固定的に考えてよろしいものなんでしょうかね、今の話は。
  190. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) そのよう懸念があるからこそデフレを早急に抑えたいというふうに考えるわけです。そのよう懸念があるからこそ、二年ぐらいの集中調整期間を終えて本来日本が持っている成長力を早く回復したいというふうに考えるわけです。  日本は、実質で見て例えば二%程度の本来の潜在成長力を持っていると思います。不良債権問題に片を付けて年金等将来不安を解消していけば、そのぐらいの実質成長ができる経済であると思っております。そのときに物価の上昇率がゼロからプラスであるということになりますと、名目成長率はその物価上昇分プラス実質成長率で増えていくわけでありますから、今御指摘のよう懸念もなくなるはずであると。逆に、それをしないと、やはり日本の経済は、これはやはり財政というのは名目GDPに対してどれだけの名目の公債残高を持っているかという点が大変重要になりますから、そこはやはり危険なことであると。  繰り返しになりますが、であるからこそデフレの克服がやはり重要な課題であり、経済の活性化が急がれるということになるんだと思います。
  191. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 デフレの問題はまたいつか、いつかというか、必ずやらなきゃいけない課題ですから議論したいと思うんですが、ちょっと先に進みたいと思います。  そうすると、このプライマリーバランスの黒字の問題について、我々も何となくまだ釈然としない気持ちが残っていますけれども、塩川大臣、かつて私、大臣になられてすぐのころだと思いますが、公共事業の在り方について、自分としては今、公共事業のGDPに対する比率が六%とか七%だと、日本の場合はですね、事業費ベースでいくと三十兆から四十兆近い、これをヨーロッパ並みの二%か三%ぐらいまで下げたいんだとおっしゃいましたね。私は、それは非常に重要な指摘で、先ほどちょっと国と地方の関係、それから社会保障財源のありよう、それともう一つ、大きな歳出項目の中ではこの土建屋国家と言われたいわゆる公共事業のウエートをどう下げるかと。今度は内部の問題なんですよね。  この考え方について、あのときはたしか就任されてすぐでしたけれども、やや、十年後とおっしゃいましたか五年後と言いましたか、非常に切りのいい年だったと思いますが、その目標については考え方はまだ変えておられませんね。
  192. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 変わっておりません。十年と申しました。十年でヨーロッパ並みの一ないし二%ぐらいの程度にいたしたいと思っております。  これは着実に進んできております。小泉政権になりましてから規制緩和してそういう公共事業の見直し等をやりまして、今日ちょうど昼飯のとき、時間でございましたけれども、道路四公団の規格並びに仕様書を改正いたしました。これによりまして、道路建設を予定しておりましたのが、合計四兆円節約するということにしまして、工事費を一八%削減するということを決定いたしました。  これは一次でございます。これからにつきましては河川もございます。念のために、これはビッグニュースだと思いますのでなにしていただいたらと思っておりますが。建設中の残事業ですね、残事業であれ十何兆ございましたですね。そのうちの総額四兆円を削減して、削減率一八%返ると。これは何で私、返るんだと言いましたら、規格と仕様書を変えることによってこれだけ浮いてまいりますと、こういう返事をいたしまして、そういうことをあらゆる部門において進めていきたいと思っております。  なお、問題の社会保障でございますけれども、近いうちに医療の基本問題を出します。これは今の制度の中でその医療制度の改正をやっていくというのは非常に難しい状態がございますので、やっぱり制度を変えなけりゃならぬというところに重点を置いた議論をしていきたいと思っております。
  193. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 仕様書とかそういうものを変えるだけで簡単にぽんと下がるというのはなかなかすごいものだなと思う。じゃ、入札制度とかいろんなものを変えるともっともっと変えられるんじゃないかと思いますが、そのことはちょっとまた別途やるとして。  そういうときに、私、道路特定財源問題があるんですよ。今日は国土交通省からもお見えになっておりまして、私も、もう総理大臣、小泉さんがなられてすぐこの道路特定財源を一般財源にすると言うから、これは大変なことだなと。私どもも、この道路特定財源問題については是非これはやはり将来的に一般財源にしていくべきだという考え方を持っておったわけですけれども。  そこで、大臣、今年度の改革はどう行われたかということについて先にやりたいと思いますが、もう一つは、この道路特定財源は今度の法律、もう一つ別の公共事業の五か年計画ですか、長期計画の中で五年間またこれ継続するということになっているんですよ。そうすると、このいわゆる道路予算そのものは、この五年間は、そこの財源については、道路特定財源の部分についてはもう手が付けられませんということになっちゃう。  そうすると、先ほどおっしゃいました二〇一〇年ごろには二、三%に持っていくというときに、絶えず道路財源だけは別ですよと。そうするとこれ、ほかの公共事業の方から、いや河川だ、いや砂防だ、いや農業土木だといったようなところから、おいおい、あそこのおまえ公共事業は全然減らないのにおれのところだけは何でこんなに減らすんだという、省庁横並びの日本の今日の公共事業のありようからすれば、このいわゆる特定財源の問題のたがをはめているがゆえに、私は、先ほどおっしゃられた二〇一〇年の目標自身も、これは実現非常にしにくくなるんじゃないのか、できないんじゃないのかなという懸念を持つんです。これがだから一点です。  ですから、以上申し上げたように、まず、道路特定財源はこれは今年度どう改革されたのか、これはむしろ国土交通省の方からお聞きになった方がいいかもしれませんね。  それからもう一つは、いわゆる特定財源制度を五年間も延長ということを政府として、特に財務大臣として認められた。そうすると、この五年間は、揮発油税や道路重量税が正確にこれが道路特定財源かどうかは別にして、これは一体、本当に財政構造の今度は中身を変えようとするときに大変な桎梏になってきているんじゃないかと。  この二点についてお尋ねしたいと思います。
  194. 中馬弘毅

    ○副大臣(中馬弘毅君) 道路特定財源につきましては、委員、別の機会にも総理にも御質問されておりますが、総理のそのときのお答えでも、やはりこれは道路を整備するという形で暫定的に、暫定といいましてもずっと続けておりますけれども、一般の規定よりも倍の税を取っているわけでございまして、それの利用者の御理解なしにこれを他に転用するということは私はできないと思います。  そういうことをはっきり総理もお答えになっているわけでございまして、そのことでございますから、ただ、一般化一般化といった場合に、ただ福祉に教育に使うという意味じゃなくて、道路に関連したところまでだったら利用者の方々の御理解も得られるであろうということから、開かずの踏切だとか、そのほか道路に関連した駅前整備だとか、そういったところに今度は使うようにしているわけでございます。
  195. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ちょっと後の課題は別にして、今の問題だけ先ちょっとやりたいんですけれどもね。  その総理がおっしゃったことというのは、いや、この間答弁聞いていますよ。私は、去年ですね、いろいろ一般財源というのは私は、正に一般財源で、これは特別会計に入れないでもう財務省に入れた方がいいと。二十三円四十銭ですか、あの揮発油税でいけば、倍になっています。世界と比べてみてくださいよ、その税率は。二十三円四十銭というような揮発油税で済んでいるようなところはアメリカとかカナダとかそういう大陸系の諸国しかないです。ヨーロッパ諸国は全部税は高いですよ、もっと。だから、あれは特定財源で暫定税率にしないでも、本則にしていても、私ども、きっとあれは税をもっとヨーロッパ並みに上げても私はいいと思うんです。国民六千万人、ほとんどの人が今車を運転し、車の利用をやっているわけですから、私はそれは、我が党内的に言えば、それを国民に説得すればそれはできる話だと思っています。そのことはちょっと別にしましょう。そこで議論しているんじゃないんです。  去年はそれでも二千三百億近く、今日は具体的な数字、今持っていません。持っていらっしゃると思う。その金額は、いわゆる道路重量税からその二千三百億円近い金は一般財源として、これは正に道路に関連した問題だとかそういうところに、使わないところに実はその支出をしているわけです。  ところが、今年度はそれがどうなったか。本州四国、その本四架橋公団のいわゆる負債にはそれを充てますということで、これ自身もまだ、本四架橋公団自身のこうなった原因、責任、それから、これからのそれが返せるという見通し、こういうものが何の議論もされないうちに、そちらの方にもう、二千三百億近くだったでしょうか、出されていましたね。これ自身も問題だと思うんですが。  ということは、もう道路特定財源として去年自動車重量税の一部を一般財源化したものが、今年度はそれが全くなくなっちゃって、そして全部そういうものへと、地方に移譲したという話もありますが、ほとんどそこのところは去年よりも後退をしているじゃないですか。仮に、万が一、去年は一般財源化ということで、いや、ある程度はやりましたよということを去年はやったとしても、今年度はそれ自身が全然そうなっていない、むしろ後退しているじゃないですか。  しかも、もっと言えば、これ、道路特定財源問題についてもっといろいろ言いたいことたくさんありますけれども、そういうことを考えたときに、これは、小泉内閣は道路公団の民営化問題と並んで道路特定財源の一般財源化ということを高々とうたっていながら、何にもこれは進んでいないじゃないかと、こういうふうに私は思うんですけれども、どういうふうに思われますか。
  196. 中馬弘毅

    ○副大臣(中馬弘毅君) 先ほど申しましたように、これは我が国土交通省だけで解決できる問題じゃなくて、我々は、所掌された範囲の中でこれを特定財源として規定していただきまして、まだまだ国の道路は未整備でございます。法律的にも九千三百四十二をちゃんと計画としてやるということを決めているわけでございまして、これを与えられた範囲の中ではもちろん着実にやっていっているわけでございまして、しかし、今委員御指摘のような形でこれを一遍一般財源化してやろうじゃないかということであれば、これは政府税調も含めて大きな議論にして、少なくともそういう名目で取った税を一度ゼロに戻さなければいけないと思います。そうした上で、新たにどういう税の形で取るか、またやはりガソリン税に乗せるのか、あるいは消費税にするのか、ともかくとして、そういった形でなかったらこれは私は使えないと思いますよ。
  197. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いやいや、塩川さん、ちょっと。
  198. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) ちょっと、今の質問で答えを補足させていただきたいと思います。  一般財源として使っていないんじゃないかとおっしゃるんで、私はずっと峰崎さんの話を聞いていましたら、非常に問題の提起の仕方がアカデミックで、そしてすぐに結論を出せという話がなっておりますから、そうはなかなか政治はいかないと。  例えば、一般財源にどのように使ったのかということの一つとして、本四事業団、道路公団の方に二千三百も行きました。これはおかしいじゃないかという御指摘だと私は思うんです。ところが、この道路四公団を整備しますときに、本四は三兆九千億円の残が残っておりまして、これを融資しなければ行政改革ができないもんだから、だから五年間で一兆三千億円を肩代わりする、その一年分として二千三百億円を肩代わりしようということですから、だからこれは正に一般財源的に使っておるということなんです。そこを、道路の建設に使わないから道路予算で使って一般財源になっていないじゃないかと、こうおっしゃるけれども、それはちょっと私はおかしい。  それからもう一つ、もう一つの方に、ちょっと、あなたちょっと、時間ちょっとしゃべらしてくださいよ。でないと、いつまでも平行線のような議論をしておってもいかぬと私は思うんです。  一般財源にどうして使うかということの話は、これから五年間の間ということをおっしゃいました。正に五年間の間にそれをやっていかなきゃならぬのです。一番大きい改革は、ガソリンとか特定財源がございます。特定財源は地方財源にどのように移管していくかということじゃなくて、一般財源化してくるんです。ですから、今言ったように、もう明日から、かみそりで切ったように明日からもうやるんだと、こういうことではなくして、その準備とやっぱり行政の仕組みを変えていくことによって一般財源化していくということを、これをやっぱり将来見ておいていただきたい。その計画でやっていきます。そのために、国と地方との財源配分ということ等もここに乗して議論していかなきゃならぬということでございますので、御了解いただきたいと思います。
  199. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いやいや、それは、その議論というのは、ちょっと今横道それましたけれども、総理のリーダーシップで道路特定財源は一般財源化しますということを国会で我々は聞いているわけですよ、二年前の五月ですわ。そうすると、二年前の五月にそういう提起をされれば、当然それが実践を、どう実践されていくかということを検証していかなきゃいけない。  だけれども、今の本州四国架橋公団の問題は、これは本州四国架橋公団は一体今の債務がどれぐらいあって、これはどういう解決のスキームをするのか、どういう責任の取り方をするのか、地方自治体がどういう対応をしていくのかということ、全部絡んでくるわけでしょう。そういう意味で、私はやはり、そのことをきちんとやはりやらなければまずいねということをずっとこの間言い続けてきているわけです。(発言する者あり)何言っているんですか、場外で。  それで、今はもう私もこの問題、これ、以上で終わりますので、国土交通大臣の方はもう結構ですから、あれしますが。  いずれにせよ、今おっしゃっていられることはもうずっと聞いているんです。そうじゃなくて、根っこのところに、そもそもそういう改革をしようとしたものが改革が進んでいないんじゃないかというふうに私は判断をしているわけです。  恐らくいろいろ言いたいことたくさんあると思いますが、そのことは別に、(「進んでいるんですよ」と呼ぶ者あり)去年はしかし二千三百億円ですね。まあ、ちょっとやじに答える必要ないのかもしれませんが、二千三百億円、それは自由に使ったじゃないですか、重量税から。それが今度は本州四国架橋公団の方にぽんと行きます、これは行革のためにやるんですから一般財源ですわと。そうは簡単にそれはそうですよというふうにはいきませんよ、それは。(「譲与税も行っていますよ、九百五十億円ぐらいは」と呼ぶ者あり)  いや、それは、いいですか、その話もありますよ、それは。譲与税は、ちょっと質問を、立って質問をしてもらってもいいですが、譲与税のところも、やり取りをしても仕方ありませんけれども、本当にあれは譲与税なのか、一体それは道路を造るところの自治体に行くようになっているのか、いまだにはっきりしないですよ、それは。どうですか、今、その点。九百三十億でしたか、入りますね。あの財源はどういうふうに地方自治体に配分されるんですか、その基準は何なんですか。
  200. 中馬弘毅

    ○副大臣(中馬弘毅君) これは、譲与税として地方と国に分かれておりますけれども、そのうち、今までは四分の一だったのを三分の一にして、地方の、地方分権の時代でもございますし、地方の自主的な財源をある程度増やすことによって、民営化委員会の方も指摘しておりますように、今後の高速道路等につきましては国と地方の負担により新たな方式を導入することと、こういうことにしているわけでございまして、そういうところに充てるべくこの九百三十というのがここにはじき出されたわけでございます。
  201. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もうこれ以上議論しませんけれども、それはもうずっとそういう紋切り型の答弁は分かっているんですよ。そのいわゆる国に送られる財源はどういう使われ方をするかといったら、それは要するに一千億の新しい直轄で造る国道の地方負担分として送っているんでしょう。そうでしょう。そうしたら今までの仕組みと余り変わらないでしょう。その今までの仕組みというか、高速道路を造る、しかもそれは、国費を投入してというのはまだこれ決まっていない話でしょう。いわゆる道路公団民営化委員会の答申には、真っ先にやらなきゃいけないことにはそんなもの入っていませんよ。将来どうしても造りたいけれども、これは採算上難しいというところだけはやらなきゃいかぬという、そこだけつまみ食いしてやっているんじゃないですか。全体としてのそのトータルがはっきりしないし、まずやらなきゃいかぬのは経営者の交代だと、公団の総裁を変えなきゃいかぬということまで言っているんですよ。  いずれにしても、この問題については時間がありませんので、取りあえず今の話はこれで打ち切らせていただいて、国土交通大臣の方は結構でございます。  それじゃ、塩川大臣、二点目をちょっと答えてください。
  202. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 二点目。
  203. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いわゆる道路特定財源として五年間いわゆる自動車関係の予算というものの財源を固定化したがために、いわゆる公共事業の配分を含め、歳出の今度は質の中身がそのことによって桎梏になっていやしませんかと、こういう質問をしましたでしょう。あなたの言う目標が達成できないんじゃないですか。
  204. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほども申しましたように、一挙に道路財源を、特定財源を一般財源化すると言ったけれども、これは一挙に一年でなるものじゃございませんで、だからその段取りをやっぱり付けていかなきゃなりません。その一つとして例えば道路公団の改革をやったということもございますし、それから環境対策費というものに使ってまいりましたし、そういうものに順次、道路にある程度関係のある事業、これ、いろんな事業がございますが、今まで道路特定財源では使えなかったそういう分野に対してこの特定財源を充てていくということを順次やっていきます。  そしてさらに、大きい問題としては、先ほど言いましたように、国と地方との税の配分の見直しのときに、これは一般財源化の非常に有力な財源になってくるということでございますので、それは先ほど言った国と地方との役割分担等、いろんなものをそういう制度改正をしていかなければ税の適用をはめていくことができないということでございますので、その点は御理解いただかなけりゃならぬと思います。
  205. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 それなら長期計画から外して、これは非常に重要だから、単年度単年度、今年だけ、じゃやらせてください、まだ国と地方の関係がはっきりしていません。そういうふうにして、これ五年間という長期計画で縛ったために、国と地方の関係の結論が今年出たとしても、四年間はもう先、何もできないということですよ、これ、法律で縛ったら。またその法律を改正すれば別かもしれませんが。  この話はもう、ちょっとまた時間がありませんので、大塚さんの質問に食い込みますので、ちょっと先に進みたいと思いますが、今の問題、プライマリーバランスの問題終わりまして、次に、ちょっと税制の問題について移りたいと思うんです。  総理大臣は昨年、今日は竹中大臣もお見えになっていますから、政府税調、それから経済財政諮問会議、両方税制論議が始まったんです、去年の一月から。そのとき総理大臣は、シャウプ以来の税制改革をやってくれと、こういう話だったんですよ。実現できたと言えるかどうかという前に、そういうシャウプ以来というのを聞いて、これは一体どういう意味だというふうに思われましたか。それをまずお二人に聞いてみたいと思います。
  206. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) その一つは相続税と贈与税の関係であります。これはシャウプ以来全然変えていなかったんで、シャウプ以来の税制の改革の大きい一つの、何といいましょうか、柱であります。
  207. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 じゃ、竹中さんはまた後でちょっとお聞きしますが、いや、そういう個別税制を変えるのがあれですか、シャウプ以来の改正なんですか。  私が受け取ったシャウプ以来の改正というのは、戦後のあのどさくさの中で、非常に混乱していた時代の中で、戦後日本の経済発展の土台を作った税制改革だった、時代をある意味では大きく画した税制改革だったんじゃないのか。その前は恐らく一九四一年でしたか、馬場税制改革というのがありますね。これは戦時体制に移行するときにたしか税制改革をやったやつです。昔、大蔵大臣をやられた村山達雄さんに随分とお聞きしたことがありますから、あのときの馬場改革はどういう改革だったと。  そういう意味で、シャウプ以来の改革というのは、シャウプ税制でやっていないことを改革しろというふうにあのとき諮問されたんですか。そうじゃなくて、シャウプ税制以来の本格的、抜本的な改革をやってくれということだったんじゃないんですか。どういう受け止め方だったんですか。
  208. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  政府税制調査会の方に総理から昨年の一月十七日、御指示をいただきましたのは、正に先生が言われましたとおり、毎年毎年の言わば経済状況とかそういうところで見ながら税制を見直していくというよりは、あるべき税制を構築する、それこそ二十一世紀、新しい時代の視点から一から税制の議論をして、それも一挙かどうかは分かりません、しかし、できるところからそれを抜本的に改革をしていく、その土台作りとなる税制の答申を作ってくれというのが御指示でございました。  したがいまして、あるべき税制というので一年掛けて御議論いただき、その間、諮問会議とそれから政府税制調査会とそれぞれ大所高所、それぞれ御議論いただいてまとめていった。これは全部というわけじゃありません。今回お出ししている税制改正は、その中の当面取るべき税制ということでやらせていただいているわけです。  その中の一つに、例えば今、大臣が申された相続、贈与の一体化というようなものも、高齢社会になった今日において、果たして資産というものの意義というのを、単にフローに着目した税だけではなくて、やはりストックも頭に入れた税制を作っていく必要がある。あるいは証券税制もしかりで、いわゆる日本の場合には相対社会ですから、どうしても銀行なりそういう間接金融というところで資金調達がされてきたわけですが、しかし、これからのやはり世界のスタンダードを考えると、直接金融というものへも優遇して資金を流していかざるを得ない、そういう言わば改正も入れるというようなことで、言ってみますと、いろんな方面の改正をやらさせていただいているんだと思います。  その一つに、先ほど来の御議論にある諸控除の見直し、所得税の在り方というものもまず第一歩の手を付けさせていただいているわけです。もちろん所得税もこれだけではなくて、いわゆる今後、所得税そのものが、所得、消費、資産、その全体の中でどういう位置付けを持つべきか、税率構造も含めてどういうふうに考えるか、更に課題は残っているわけですが、その中の一つとして、例えば配偶者特別控除の見直しをまずやらさせていただいている。そういう全体のパッケージの中から、当面やれるものを改正させていただいていると。  そういう意味では、一年掛けた答申自体は、それなりでシャウプ税制と比肩する新しい時代を見据えたものになっているのかと存じます。
  209. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大武局長、例えば、シャウプ税制のときに包括的所得税となりますね。今度は、ひょっとするとこのいわゆる金融に関する税というのは、もしかすると二元的所得税に入ったかもしれないというような思いを持っている人もいるんです。あるいはしたいと思っている人もいる。そうすると、金融所得というものと勤労性所得のありようはやっぱりシャウプのときと違ってきているねと、これは大きく変わってきていると思いますね。  それから、二十一世紀の基幹税をどういう税にするのかと。私どもは、前の税制調査会の、政府税調の会長をやっておられた加藤寛さんからは、消費税を入れた、これは消費税を入れることによって、実は所得税のいわゆる所得捕捉というものがなかなか日本で難しいから、いわゆる所得税で重視するよりこれからは基幹税としては消費税だなと。そうすると、二十一世紀の基幹税というのは、どうも先ほど来聞いていると、所得税も基幹税ですよ、それから消費税も基幹税ですよと、こうなっているけれども、実はあの導入消費税導入したときの加藤寛さんは一人の責任者だと思いますが、いやいや、冗談じゃないと、いわゆる所得税を基幹税としてやるのはなかなかもう難しいから、ある意味では消費税というものにこれからシフトいくんだよと。このいわゆる議論というのは一体どうなっているのかと。  それからもう一つですね、更に言えば、要するに今までは社会保障というものの税における対応というのは、あるいは財政における対応というのは、税控除という仕組みを人的控除を始めとして取ってきたねと。控除主義じゃなくて、これは私もびっくりしたんですが、ヨーロッパの場合には給付に切り替えていくと。そうすると、先ほどいわゆる超過累進課税制度というものが、私は超過累進課税制度こそは所得再配分機能で社会民主主義的な政権では当然それを採用するんだろうと、こう思っていたら、実は最もフラットな税でやっているのはこれはスウェーデンなんです。ですよね、御存じのように。超過累進課税が残っているところというのは、日本あるいはアメリカといったようなところは二段階から、今六段階とおっしゃった、多分五段階だと思いますが、五段階になってきている。  そうすると、超過累進課税制度というものは、かつてはそれこそ社会保障制度の財源を充実するためには、所得を基幹税にしながら、その超過累進課税というものが一つの大きな財政的な税財源の基盤になっていたと。ところが、どうも最近ではそういうふうにやっている国は小さな国、ごめんなさい、小さな政府、アメリカとかですね、日本が小さいかどうかは別にして、要するに課税最低限をある程度高くしておいて、そして高い所得の人の税率を上げて、それが財政の給付となって、これが小さな政府の中における高い累進課税になっていると。  そうすると、どうも我々の常識からすると、二十一世紀における社会福祉・社会保障財源の在り方というのはやっぱり変わってきているんではないかなと、そういうふうに見ると、ヨーロッパの動きなんか見るとですね。そういう論点が実は本来、シャウプ税制以来の改革ということであれば、もちろんもっとあるかもしれません、私は真っ先にこれ議論されて、答申として出て、本年度の税制改正に出てくるんだろうと、こう思っていたわけです。  国と地方の財源とか、あるいは社会保障財源と税の関係をどうするかということは、これは骨太方針というか、きっとこれから六月ごろをめどにして出されるんでしょう。しかし、そこのいわゆる姿をやはり私はきちんと出さないと、これはシャウプ税制以来の改革というふうには、名はうたったけれども、まるっきりそんなものになっていないんじゃないかというふうに思うんですが、その辺りどういうふうにお考えになりますか。
  210. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) お答えさせていただきます。  先生の御指摘二つあったんだと思うんですが、これからのあるべき税制というのについて政府税調ではっきり書いてあるのは実は消費税だけではありませんで、やはり最後は、これからの社会は一人一人の個人が負担していかざるを得ない、そういう意味では所得税と消費税が言わば基幹税であるというふうにあるべき税制では書かれているわけです。従来はそれに加えて法人税があったわけですけれども、法人税は、中長期的に見るとどうしても、国際課税状況ですとかグローバルスタンダードから見ると、なかなか基幹税として位置付けにくい税になってきているということが明確に書かれているわけです。  そのときに、所得税か消費税か、これは実ははっきり言うと、日本国民負担率というか租税負担率で考えれば、正に加藤税調会長時代は、所得税はそれなりの税負担をいただいていて、消費税というか間接税がない、そういう状態であったわけですけれども、現在は、実は所得税も空洞化というか、非常に国民負担率で見ると小さくなり、消費税も相対的に諸外国に比べて低い。こういう状態のままでは、税としてこれからの二十一世紀の日本を担っていけるのかというところにやはり税調としての一番のスタンスがあるんだと思います。そういう意味では、消費税の税率も、税体系全体の中でいずれその言わば税率の引上げも検討していかざるを得ないだろうということが出ているわけです、中長期的ですけれども。  それから、所得税に関しても、正にこの空洞化の状態を何らかの形で直していかざるを得ない。そこは諸控除の見直しもあれば、税率の構造もある。特に、先ほど言われた、包括的所得税なのかあるいは二元的所得税か、これははっきり言うと、現在、石会長は包括的所得税論者でいらっしゃいますから、そういう意味では包括的所得税を完全に捨てたわけではありません。例えば今度の、配当課税を含めて分離課税的な言わば形にはしていますけれども、しかしこれは分離選択であって、総合課税を捨ててはいないわけで、配当控除というのも可能な選択として残しているわけでございます。  ただ、将来的に金融の在り方を考えると、すべてこれを総合課税できるかというと、やはりそれは金融の一元化、課税の一元化というのは包括所得税の中においても実は存在し得るんではないかというのが、多分、石会長の御意見であって、将来的にこれを二元化するのか、あるいは金融は一元化して、その後、更に今のような形の包括所得税のまま置いておくのか、そこはなお、残念ながらまだ課題としてこれから議論していく。特に、今後、中期答申に向けてこの辺りも、諸外国の動向も調べて答申をしたいというのが政府税調の御意見かと存じます。  それから最後に、控除主義と給付というところも、これもある意味で言うと、世界の流れが一つになっているとはどうも思えません。確かに、言われるように、広く薄く全部掛けて、その代わり累進構造に代わる部分社会保障支出としてやるという北欧型を取るのか、先生も言われるとおり、ある程度支出は、国の関与を小さくするためにできるだけ税の範囲内でなお累進を残しておくという選択を取るのか、この辺りも正にこれからの国家ビジョンとしてどう考えるかと。その辺りは両論なお残ったままとなっています。この辺りも、今回、政府税調では北欧とそれからアメリカ、カナダと二つチームを先生方お出になられて、それぞれの状況調査してまた中期答申という形で出していこうというスタンスかと存じます。
  211. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう大塚さんの方に食い込んでいるので、もうできる限り短くしていきたいと思うんですが、問題は、そういうところに実はシャウプ以来の勧告というのは答えを出していただくというふうに我々思っていたわけです。結論を求めるのは時間早過ぎるよと言われればそうかもしれないんですが、実は先ほど来から何度も、浜田さんの先ほどのお話を出すわけじゃないんですが、今日の日本の財政状況日本の経済の実態を見るとそんなに悠長もしておられないんでないのかなというふうに思えるんです。  今、政府税調の答申の中身について、大武さんの方から空洞化ということがしきりに出てくるんですね。実は、昨年の六月に向けて経済財政諮問会議のキーワードというのは活力というんです。どうもそこのところが最後まで私は合わなかったと思うんですが、今のちょっと議論全部聞いておいていただいたかどうかあれなんですが、竹中大臣は、いわゆる総理大臣からシャウプ以来の税制改革だと、やれと言われたときに、改革の方向として、今、大武局長の方から出されましたけれども、政府税調の方の動きも出ていますけれども、今、経済財政諮問会議としては、このいわゆるシャウプ以来の税制改革の中では、何を今の日本のこれからの中長期的な国家ビジョンに向けて改革をしていったらいいのかという点について、あれば出していただきたい。
  212. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) シャウプ以来の抜本的な税制改革、我々はその志を持ってやっているつもりでございます。その中身、どういうことを心掛けているのかということでありますが、何度か議論に出ていますように、正にシャウプ勧告というのは包括的所得税の考え方に基づいて非常に理論的にも整合性の高い体系として始まったと。しかしながら、その後、毎年毎年の、その時々の時代の要請に応じたということであったにしても、その時々の部分的な修正によって全体の体系も見えにくくなっているのではないだろうか。  我々は、であるからこそ、租税の大原則に戻って、それはこれまでで言うならば簡素、中立、公平ということでありますけれども、この際、その中立というのは、例えばレーガンのマークⅡ、第二回目の改革のときは、これはフェアネス、シンプリシティーとエコノミックグロース、中立のことをエコノミックグロースというふうに呼んでいた。これは、資源配分が中立であるような税制が結局経済成長率を最大化させるんだと。だから我々あえてそこを活力というふうに読み替えて、この原点に立ち返ってその税制改革を遂行していく。そのためには、先ほどからスウェーデンの例等々も出ていましたけれども、やはり税制というのはやはり広く、民主主義社会を支えるものとして広く負担していただく。その結果として、税率も低く薄くなる。それが活力にもつながると、そのよう考え方はしっかりと骨太の方針には書かしていただいたつもりでございます。  重要な点は、この改革は一年で完成するものではなくて、やはり複数年度にわたって行っていく。十五年度の税制改革はその初年度であるという位置付けであります。したがいまして、この初年度として活力を高めるための投資関連の減税等々が前に出ておりますけれども、例えば公平、簡素、そうした点に踏まえても、例えば公平感のある、納得のいけるようなこれは税制そのものの、税率とか云々ではなくて、徴税システムそのものもしっかりと議論していかなければいけないと我々は思っておりますし、そういうことまで含めて抜本的にやはり継続してやっていくものであるというふうに思っております。  ちなみに、レーガンの税制改革、サッチャーの税制改革、初年度に大きなことをやりまして、しかし、もう一つ、六年目に更に大きなことをやっている。これで完成した。その意味では、まあ六年間掛けたという言い方もできるわけでありますので、我々もそういう点も見習いながら、やはり継続してやっていくことが必要であろうというふうに思っております。
  213. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ちょっと、最後のレーガンの改革は、どうも私はそうでない。レーガンの最初のマークⅠというのは余り評価されていないで、そしてそのいわゆる根本的な是正でレーガン・マークⅡ、一九八六年の改革はあったというふうに私自身は理解をしていますので、ちょっととらえ方が違いますが。  また、実は、本当にこれから竹中大臣とも税の話で、特に活力というものがどうもやはり広く薄くというところに行って、どうもそれが本当に活力なんだろうかねというふうに思っているところあります。これは恐らく経済政策の考え方にも連なっていく考え方だと思いますので、これはまた引き続き大所高所に立って議論をしていきたいと思っていますが。  最後に、大塚さん、大変申し訳ありません、お手元に資料一というのを出したんですが、これは、実は前回私がお願いをして、今度の税制改革で、今年度の税制改革で一体──配ってください。    〔資料配付〕
  214. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 所得階層別に見て、例えば証券税制の改革はどういう効果が、どのように効果が出てくるのか、どんな影響があるのか、あるいは相続税の問題なんかはどういう影響があるのかというようなことについてできる限り調べていただきたいということで出てきた数字の一つでございます。  四枚ほど、この収入階級別の、いわゆる年間収入、預貯金、生命保険、株式・投資信託と、こんなところで、今回の株式・投資信託がどんなウエートで持たれているのかということを第Ⅰ分位から第Ⅴ分位ということで総務省の貯蓄動向調査報告というところから取って出てきたわけであります。  高額所得者ほど株式や投資信託は多いねということは分かるから、やはり高額所得者に優位ですねということはこの程度では言えるんですが、私が実は本当に知りたかったのは、このいわゆる株式や株式投資信託を持っている、どのぐらい持っておられる方の所得が分かり、それはどういう影響あるかという逆が見たかったんですね。所得階層別にと言ったからそうだったかもしれない。しかし、そのことを調査課の調査課長ほか来ていただいて丁寧に説明受けました。ないんですよ、そのデータそのものの、そういうものを出そうとしても、そういうデータがございませんということなんです。  それはなぜないんだと言っても仕方ないのでありますが、やはりきちんとした納税者番号制度が入って資産をちゃんとつかんで、そのデータがないということが、実は我々が今度の改正やってどんな影響あるのかと言ったときに、大ざっぱにはこういう影響ありますねということは言えても、もっとビビッドに、国民の皆さん方から見て、ああ、なるほどねと、株式をこんなにたくさん持っておられる方にはこういう影響があるんだね、これは大体所得ではこれぐらいの人たちなんだねと、これがなかなかどうもはっきりデータが出なかったから一枚だけしか出さなかったんですけれども。  その意味で私は、納税者番号制度の問題も含めて、もっとやはり、これは国税当局、徴税当局ですから、公権力の行使のところが余りにもいろんなものを調査するというのは弊害がもちろんあることを重々分かりながらも、本当に世界の人たちから日本の税制改革というのはどんな論議をしているんだと、国民にどんな影響を与えているんだと、そのことについての的確な情報を与えられているのかと、こういったときに、これがこの程度のことしか出てこないとなると、ちょっとやはり我々としては国民になかなか説明し切れないのかなと。  そうすると、どうしても観念的な議論になってしまってなかなか説得力持ったことができないということなので、是非この辺りの徴税のデータの補修その他について配慮をしていただきたいし、充実をさせていただきたいということを述べまして、もし何かあれば、御意見あればお伺いして、私の方を終わりたいと思います。
  215. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) 今、先生が言われましたとおり、私どもも、アメリカと比較いたしますと、こうしたデータが足りないのは正にそのとおりでございます。  これはやはり、アメリカの場合にはいわゆる納税者番号によりまして番号管理でやっているというところがありまして、そういう意味で、それを大数法則でまとめたところの資料を公表するという形で分析ができるようになっております。ところが日本の場合には、御存じのとおり番号がないということもありまして、名寄せが一切こういう金融所得についてできていないというのが実態でございます。  そういう意味では、先生御指摘のとおり、今後そういうものも含めて、特に電子申告になりますと電子番号というのをそれぞれ取っていただくことになります。そういうものを活用して、もちろん守秘義務の範囲内でどういうふうなことができていくのか、これは研究はさせていきたいと思います。  ただ、配当の課税につきましては、先生は金持ちを優遇という形でお話しになられたんですけれども、我々の意図したところは今回の、正に先生がお出しになったこの表に象徴されますように、実は株式あるいは株式投資信託のウエートが余りにも低い。そういう意味では、この人たち、低所得者に少しでも多くなじんでいただきたいと、そういう意味で簡素な税制を目指したと。少しでもこちらへシフトしていただくことなんで、むしろ金持ち優遇であれば、むしろよく言う非課税枠を広げるとか、そういう方がいいのかもしれません。しかし、そうではなくて簡素に、もう証券会社で完結しちゃうというようなことをやらせていただいたのも、むしろ今所得の少ない方々に証券投資になじんでいただければという思いでこの改正をさせていただいているということだけ付言しておきたいと思います。したがって、その効果もその移動がどうなるかによって掛かっているので、分析は非常に難しいということだけは御了解いただきたいと思います。
  216. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ありがとうございます。     ─────────────
  217. 柳田稔

    委員長柳田稔君) この際、政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十五年度における公債発行特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会政府参考人として総務大臣官房審議官岡本保君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定します。     ─────────────
  219. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今、峰崎先生や浜田先生ほか諸先輩の議論を聞いていてちょっと急に聞きたくなっちゃったんですが、大武局長はまだいらっしゃいますか。  先ほど、消費税だけではなくて所得税も空洞化して非常に日本税負担が低くなってきているというお話があったんですけれども、確かに課税負担率は低くなってきていますけれども、その一方で納税者の担税感というんですか、重税感は重いという、この何といいますか不均衡がなぜかということについてちょっと御感想があればお伺いしたいんですけれども、その原因は何だと思われますか。
  220. 大武健一郎

    政府参考人大武健一郎君) ある意味で言えば幾つか、これはもう私見でございますが、私見でもよろしいんでございましょうか。  一つは、やはり急速な高齢化、それに伴う自動的な歳出増、それに見合ういわゆる負担ができていない、負担システムができていないというところがあって、何となく、先ほど来もありましたように、浜田先生の御質問にもありましたとおり、将来に対する不安と今払っているものとの実はつながりが非常に見えにくくなっているという点があるように思います。  それから、税を執行させていただいている者からしますと、やはり自分の払っている税が果たしてどのように使われるかということについて、はっきり言うとこれはもう特定財源しかなくなってしまうんで、そういう意味では税の根幹を揺るがす話なんでございますが、いわゆるどういうものに使われるかがそれぞれによって、自分の出す方はどれに使ってほしいというのが多分それぞれお持ちなのかもしれませんが、逆に支出の例は、例えば過疎地に住む方であればその過疎地の対策を抜きにはあり得ないんですけれども、都会の方からはそんなものが何で要るかと、こういう御議論になってしまう。この辺りはやはり非常に、歳出を含めて財政全体の姿をどうやって国民理解を得ていくかということが税の基本にあるなというふうに思っています。  ただ、明らかにマクロの数字がこれだけ相対的に低いということは徐々に、国会でこのように御審議いただいている中から広がってきておりまして、大学の学生などもその辺りは次第次第に理解していただけているようにはなっていると思っています。  その意味では、消費税も所得税も明らかに諸外国に比べても低いということはあって、これを何らかの形で国民合意の中でどういうふうに負担をいただくのか、それは保険料も含めてこれから御議論いただかなければならなくなるだろうというふうに思っている次第であります。
  221. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今お答えいただいた論点というのは、課税負担率は低いけれども担税感は重いと、このギャップを生み出している要因は何かということで、一番は先々に対する不安であると、二番目は歳出の使い方に対する、何といいますか、不透明感、こんなものが影響しているという、こういう定性的な分析というのが本当に必要だと思っていまして、実は今日の議題になっております法案について本会議質問でも、例えば、予算規模は日本の場合、G7の中で二番目に小さいのに対して債務残高が圧倒的に多いのはなぜかと、その理由を定性的に説明してほしいというふうに三大臣にお願いをしたんですが、片山大臣はそれなりにそれらしいお答えをいただいたんですけれども、財務大臣竹中大臣には余りそこは明確なお答えをいただけなかったという気がしておるんですが、改めて答弁漏れという観点で、なぜ予算規模はそんなに大きくないのに債務残高がこんなに膨らんでしまっているんだという、その定性的な理由について是非ちょっと御意見を両大臣にお伺いしたいんですけれども。
  222. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) ちょっととっさなことでございますが、確かにそういう御質問、本会議の方でいただきました。  すごくちょっと単純なお答えになってしまうかもしれませんが、これは取りも直さず財政赤字が非常に大きいと。財政赤字の積み重ねが公債残高になるわけでございますから、財政赤字の累計が非常に大きな額になっている。これは言うまでもなく、しかもこの財政赤字というのは比較的短期間に積み上がっておりますので、ここ特に十年ぐらいの財政赤字がやはり非常に大きなものであったということになろうかと思います。  しからばその要因は何かということであろうかと思いますが、これは歳出歳入両方に当然のことながら原因がある。  歳出面に関しましては、バブル以降の成長率の低下、キンクに対して当面需要不足ということで対処をしようとしたと、その結果として歳出が膨れ上がったということが一つの要因であろうかと思います。さらには高齢化等々による社会保障の増大というものも非常に大きかった、そのようなことが重なっていると思います。  もう一つ、税が、税収が下がったということもあろうかと思いますが、これは主税局の方で専ら分析をしていただけると思いますが、ここ何年かに関しては、例えばでありますけれども、時価会計の導入でありますとか、そうした形で評価損が出て企業収益が税務上上がらなかったと、そのような要因もあろうかと思います。  ちょっと急な御質問なので、今考えられること幾つか申し上げましたが、そのような要因の複合的な結果であろうかというふうに思います。
  223. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 財政当局から見ますと、やはりここのところ一番効いてきているのは税収の落ち込み、予想した以上に、予想したところまで税が上がってこない。中を見ますと、非常に法人税が落ち込んでいるのが目に付くわけでございます。  そんな中で、今この税制改革等でお願いしております企業を活性化させるということが税収の、急がば回れではありませんけれども、税収増の面では非常に大事じゃないかなと、そんなふうに思っているところでございます。
  224. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 総務省にもおいでいただいていると思うんですが、片山大臣は確かに本会議では、地方財政の場合、収入が変動型である一方、支出は固定型なので景気変動によって収支じりが赤字になることもあると、こういう御答弁いただいたんですが、地方財政の経費率が高過ぎることも定性的な問題として今後解決しなければならない問題だと思いますので、地方財政における経費率あるいは人件費率について少し客観的な数字を御開示いただきたいんですが、特に他国との比較ももし分かればよろしくお願いします。
  225. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) お答えいたします。  今、人件費のお話ございましたが、地方の公務員数は、平成十四年で、公営企業を除きました普通会計ベースで約二百七十万人ございます。このうち法令で基準、例えば教育関係でございますと四十人学級等で基準が決まっておりますし、それから例えば政令で警察でございますと各県別定数が定まっておりますが、このような警察、消防、教育関係の職員で約百六十万人、六〇%を占めております。その他の職員につきましても、福祉、戸籍事務等個々の事務について法令上その義務付けが行われておりますが、こういう結果といたしまして、地方財政計画ベースで給与関係経費は二十三・四兆円、歳出全体の二七%という状況でございます。  諸外国と地方政府の人件費、直ちに比較したものはないのでございます。承知いたしておりませんが、人件費も含めまして最終消費ベースで、OECDでやっている対GDP比で見てみますと、日本の地方政府ベースは七・四%でございますが、アメリカは九・五、イギリス七・四、ドイツ九・七というよう状況になってございます。  いずれにいたしましても、我が国の地方政府、国の法令等の今申し上げました教育、福祉、警察など住民生活に身近な行政サービス、正にそういう現物給付のサービスを直接提供するという形をやっておりますので、その部分で、景気の動向にかかわらず、一定の行政需要というものに対応していく必要があるということであろうかと存じます。
  226. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 冒頭の二百七十万人というのは公営企業を除くベースというふうにおっしゃいましたけれども、公営企業を含むとどのぐらいの数字になられますか。
  227. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) 公営企業等部門が約四十四万人おります。ですから、合わせまして約三百十万人でございます。
  228. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 それから、消防、警察等の職員の数が多いというのは分かるんですが、それにしても、地方政府の人件費率が日本が二七%で、諸外国のお分かりになっている手元の平均で七・四とおっしゃったと思うんですけれども、違いますか。失礼しました。  じゃ、もう一度お願いします。そこの部分だけでいいです。
  229. 岡本保

    政府参考人(岡本保君) 諸外国の人件費率の比較したものは承知をいたしておりませんが、いわゆる最終消費支出、地方政府の行う最終消費支出、つまりその中に人件費というものが含まれますが、そういうものを含めたベースでいきますと、日本の地方政府は七・四%でございますが、アメリカは九・五、イギリスは七・四、ドイツは九・七というような数字になっておるということでございます。
  230. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございました。  そうすると、分かる範囲では決して人件費率は高くないという数字でありますので、しかし、やはりこれは中央政府だけじゃなくて地方政府も、なぜどんどん赤字が肥大化していくのかということについては是非引き続きその定性的な分析をしていただいて、そこの部分を改善するような手を打たない限りは、幾ら中期計画だとか多年度何とかだとかいって数字合わせの計画を立てても、赤字が発生する原因がなくならなければ、竹中大臣的に申し上げると、ロールオーバーしていく計画がどんどんどんどんできるばっかりで、最後は雪だるまになっちゃうという、そういう現象が生じますので、是非そこはよろしくお願いします。  総務省の方、もう結構でございますので。  先般の本会議質疑では幾つか積み残しの御答弁があったような気がいたしますが、その中で、先ほど峰崎委員からも御質問があったんですけれども、もう一度私からもお伺いしたいんですが、私は、やはり単年度予算編成における財政肥大化の歯止めというものは今何かあるんですかということを明確にお伺いしたつもりなんですけれども、それについてはどの大臣からも明確なお答えはなかったんですが、単年度予算編成において、財政肥大化を抑制するために今どんな工夫をしておられるのか、ちょっと切り口を変えてそういうお伺いの仕方でもいいんですけれども、それについて、塩川大臣かあるいは副大臣でも結構でございますが。
  231. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 御承知のとおり、十四年度予算と十五年度予算を見ていただけば分かるわけでございますが、社会保障費のようなものは、義務的経費、やむを得ず増大というのがございますわね。この社会保障費を別といたしますと、実は、政策的にこれはあえて、これからの民間経済の活性化等を求めて科学技術振興予算だけは対前年増加しておりますけれども、ほかの項目を見ますと、すべて前年よりマイナスなんですね。  つまり、一般的に去年の予算よりも今年は増やさない、こういうことで一年一年、前が増えなければ増えないわけですから、何年たっても。そういう形で予算の抑制を図っているというのが一番の抑制策ではないかと思われます。
  232. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ということは、前年比マイナスというのが今の単年度予算編成の原則だというふうに考えてよろしいですか。
  233. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 少なくとも、十四年度から十五年度の予算を見る限り、その原則は守られていると思われます。
  234. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 それは、今後編成されるかもしれない、まだ分かりませんけれども、補正予算を含めたベースで前年比マイナスが現政権における単年度予算編成の原則だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  235. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 補正予算の場合は、大体景気の落ち込みが回復するということで、公共事業費等経済波及効果の多いものに限定して、あるいはセーフティーネットワーク、雇用対策とかそういうことに限定されて行われるわけでございまして、一般の予算についてはこれはもうそのまま上げていないわけでございますから、基本的にはそういう原則でいくということになろうかと思います。  ただ、総理が言われます大胆かつ柔軟にですか、そういうことの中に一部景気対策が緊急に行われることはありますけれども、財政の基本的な予算の考え方としては、とにかく昨年を上回らない、むしろ下げていくということではないかと思います。
  236. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 同趣旨でありますけれども、補足をさせていただきたいんですが、基本的には、先ほど峰崎委員に申し上げましたように、一般政府の規模を大きくしていかないことであると。現状、GDP比で見て大きくしていかないことである。これが、先ほどから申し上げている、その意味では一つの基準といいますか、モラルとしてキャップをはめていると、歳出キャップを緩やかにはめているというふうにお考えいただきたいと思います。  御質問の趣旨は、それはしかし中期の課題であろうと、単年度には何かあるのかという、そういう御趣旨とも取れますが、それに関しては、この中期の「改革と展望」に矛盾しない形で、実はこの十五年度の予算編成に当たっては、予算編成に入る夏の段階で予算の全体像というのを諮問会議で決めております。この中期のを更に短期の、当面のに落とし込む形で予算の全体像を決める。その中では、当然、今、小林大臣がおっしゃったように、歳出規模をこれだけに抑えると、これだけ大きくしないということを目標に掲げているわけです。  したがって、中期の歳出キャップをもって、それを毎年毎年予算の全体像という形で矛盾しない形で決めていくと、これが一つの単年度の歯止めにもなっていくというふうに考えております。
  237. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 もう一度小林大臣にお伺いしたいんですが、当初予算対比で前年比マイナスではないですね。補正予算を含めて前年度最終予算対比マイナスを単年度予算編成における財政規律維持のためのルールとすると、こういう理解でよろしいですね。
  238. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 補正はその都度その都度何か特別な事情でぱっとやるわけでございますから、原則としてはやはり当初予算、当初予算同士を比べてそういう原則を守ると。補正については比べようがないわけでございますから、突然ぽっと出るわけですから、それについてはそれについて対応して、しかしそれは原則としないということだと思います。
  239. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 何か最近、副大臣の御答弁塩川大臣に似てきたなという気がするんですが、ここは水掛け論ですからこれ以上申し上げませんが、先ほど定性的な理由は何かと、税のところとか予算のところ両方でお伺いしましたけれども、やっぱり定性的な理由として、今おっしゃるように補正予算というのは景気が変動して、いざというときには何かしなきゃいけないというこの理屈はだれでも分かるんですけれども、そのときに、余り経済効果のないところにとにかく予算をばらまいてしまえという形で予算を付けるという、そういう構造と傾向が、そういう定性的要因があることが予算を肥大化させている理由ではないかということを僕は申し上げたいわけです。  例えば、これは補正予算じゃないですけれども、沖振法がまた新しい第三次のものができましたけれども、それで沖縄に関係予算が付いたときに沖縄県庁の知り合いから電話が掛かってきて、いや大変ですよと。どうしたんですかと言いましたら、予算が付いちゃったと。みんな何か事業を考えろといって、もらったお金をどう使うかというのでいろんなアイデアを出して、それが本当に意味があるものであれば結構なんですけれども、もらったはいいけれども、実際にどう使っていいか分からないというところに予算をばらまいている。  これは、今後例えばまた補正予算が組まれれば雇用対策資金も出るでしょうけれども、十三年度の二次補正のときのあの三千五百億円同様、都道府県にばらまいたら、何か化石掘りのためのパートを雇ったとか、そんな形になっていくとか、そういう定性的なところが問題だということをお話し申し上げたいがためにこういうやり取りをさせていただいたので、まあやはり私が僣越でございますが副大臣の立場であれば、やはり最終予算対比で補正も含めて前年を超えないというぐらいの網を掛けてこそ初めて、じゃその限られた財源をどう使おうかという発想になろうかと思いますので、やはりその単年度予算編成のルールというのは私は一番大事だと思うんですね。それを是非塩川大臣も明確にしていただきたいと思うんです。  なぜ大事かといいますと、プライマリーバランスの話ばっかりに目が行きますけれども、その間に国債残高というのは利払い費がどんどん膨らんで新規発行が増えなくても増えちゃうんですよね。この部分にどうメスを入れていくかという話は、今日、今、日銀総裁おいでいただきましたけれども、日銀がどれだけの国債を保有するかという話ともこの後絡んでまいりますけれども、是非、そのプライマリーバランスの話をしていてもらちが明かないと。単年度予算編成についてどういう運営をするのか。  そしてもう一つだけ申し上げておきますと、やはり政治家というのは、自分が在任期間中に何をするのかということについて公約をおっしゃり、あるいは具体的に政策をおやりになるのが基本であって、二〇一三年度まで竹中さんや塩川さんがいらっしゃらないとは思いませんよ、ひょっとしたらいるかもしれないけれども、でもその席にはいらっしゃらない可能性が高いですよね。そんな先のことをにしきの御旗にして財政運営や経済運営をされては困りますというのが多分大勢の皆さんの共通認識ですので、是非その単年度ごとに何をするのかということをきっちりお考えいただきたいなというふうに思います。  それから、ちょっとしつこいものですから、本会議答弁のアフターケアをしたいんですけれども、竹中大臣は、私が「改革と展望」とそれから財務省がお出しになっている税収見通しとの間で数字の整合性が付いていないのはなぜかと、それを反映させなかったのはなぜかというふうにお伺いしたところ、計量モデルにおいて税収増減の見込みが算出できない技術的な問題があるというふうに御答弁されたんですが、技術的な問題というのはどういうことでしょうか。
  240. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 私の記憶違いでなければ、その税制の改革、制度変更がどのように影響を与えるのか、大塚委員の御指摘はそういう点ではなかったかというふうに記憶しておりますんですが、ちょっと済みません、私が申し上げたかったのは、その税収、税制の改革がございます。  で、例えばIT投資に関連する投資減税、RアンドDの減税等々がございます。その部分がどのように税収に影響を与えるかということだけを取り出して見るのは技術的に我々のレベルでは困難である。それは、「改革と展望」では御承知ようにマクロモデルを用いて、マクロ全体の整合性を確認するというのを作業にしておりますので、税そのものを非常に精緻な形で必ずしも部門化しているわけではない。例えば投資減税等々見ますと、それが結果として資本コストを下げますと、資本コストが下がったことによって投資が増える、投資が増えることによってマクロのGDPが違ってくる、それが更に消費や投資に影響する、そういうことを一つの連立方程式の解として求めておりますので、ほかの税制改革、ほかの例えば景気要因とかいろいろあって結果として税収がどうなるというのは、これは確認できるわけでありますけれども、一つのエレメントが変化したことによって、例えば税制が変わったことによってそれがどのように影響を与えているかというのを単独で取り出すのは困難であると、そのような趣旨で申し上げたつもりでございます。
  241. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 しかし、そんなに緻密な、例えば税の細かい税目をこういじったからそれをモデルの中にこう反映するなんという、そんな緻密な分析をする人はまずいないわけで、マクロのモデル回したら、例えば内閣府の試算では平成十七年度にはこのぐらいの成長率になるということになれば、GDPを構成している項目で個人消費はこのぐらい増えるということが出てくるわけですから、しからば消費税はどのぐらいになるというような、ある程度大ざっぱな見通しは立つわけで、そういうものを反映してなぜおやりにならないのですかという質問もその中に込めていたつもりなんですけれども、まあいいです。  で、全くやっておられないのかと思ったら、これは二月に財務省がお出しになった平成十五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算というものの中には、ちゃんと「改革と展望」二〇〇二年度版を前提として十八年度までの税収の見通し等を出しておられるわけですから、だから私が申し上げたいのは、この間も私本会議で申し上げましたように、全然両方が何のリンクもしてない、財務省からお出しになる数字と内閣府からお出しになる数字が独り歩きすることのないようにそこはちゃんと調整してくださいと、これが調整が付かないと合成の誤謬だというふうに申し上げたわけですよね、集成の誤謬じゃなくて。だから是非内閣府、財務省、これから日銀も一緒になっておやりになるということですから、国民の側から見たらちゃんと整合性の取れた数字を御提示いただきたいということをお願いだけしておきたいと思います。  それで、今日は日銀総裁においでいただきまして、どうもありがとうございます、御就任早々。  資料を配っていただけますか。    〔資料配付〕
  242. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 総裁、こんなところでなんですが、大変ごぶさたしておりまして、元部下でございましたが。  総裁、九一年の一月十七日は何をしておられたか御記憶にございますでしょうか、夜。
  243. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 昼間の日程管理はきちんとやっておりますけれども、夜の日程管理はややおろそかにしておりまして、ちょっと記憶にございません。
  244. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 恐縮でありますが、私と飲んでおりまして、私と今の現考査局長と当時理事でいらっしゃった総裁と一杯やっておりまして、ちょうど湾岸戦争が始まった日でありまして、それから十二年たってまた中東危機のこういう状況の中で一緒にお仕事をさせていただけるというのは大変因果な巡り合わせだとは思いますが、残念ながら日本経済の方はずっと右肩下がりで来ておりまして、今日は新総裁に、参議院としては昨日予算委員会でも若干お話をお伺いさせていただきましたが、財金として初めてしっかりお話をお伺いさせていただきたいと思います。  まず、基本的なことからで恐縮なんですけれども、従来から国債の買いオペというのは成長通貨の供給だということで私も理解しておったんですけれども、残念ながら、今の日銀が持っている国債の残高からすると、成長通貨の供給という領域を超えてしまっているような気がするんですが、その点はどういう御認識でいらっしゃいますか。
  245. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 大塚委員承知のとおり、日本銀行が長期債券、特に長期国債を対象にしてオペレーションいたします場合には、従来からは一貫していわゆる成長通貨を供給すると。つまり、世の中に通貨を供給して戻ってこない、言わば成長が続いている間は底だまりになる通貨を長い資産を対象に供給していくと、こういう思想を貫いてきておりました。ごく最近までずっとそうだったと思います。  しかし、最近になりまして経済の状況は非常に厳しくなり、特にデフレ脱却というふうなことで、経済全体に流動性をもう多めに供給しなければいけないと。この段階になりましても、通貨供給の主要な手段として長期国債を使っていくことが適当だという判断になっておりますので、ごく最近の時点で見ますと、銀行残高の増加を上回る国債買入れ額の増加という形になっております。  そういう形では、確かに従来のパターンから見た成長通貨の供給パターンを少しはみ出しているという姿になっているのは御指摘のとおりだと思いますけれども、しかし、現在におきましても日本銀行の国債買入れ残高銀行券の発行残高を超えないという一つの歯止めを設けながらやっておりまして、この歯止めは、日本銀行の通貨政策に対する信認、それだけではなくて、振り返って国債そのものの信認を維持するということにも役立っているんではないか。非常に広い意味でとらえて、成長通貨の概念を限界的にははみ出しておりますけれども、残高から見て、そこを大きく逸脱しているということではないというふうに理解しております。
  246. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 塩川大臣にお伺いしたいんですが、本会議大臣の御答弁では、成長通貨の供給の域を超えていないというふうに御答弁されたんですが、やはり先ほどの先輩方の質疑を聞いていてもつくづく思ったんですけれども、今、だれがいいとかだれが悪いとか、政府のやっていることは間違っているとか、そういうくだらない議論をする気はありませんので、事実は事実として明確に御認識していただいて御答弁いただくということが必要だと思うんです。  今、日銀総裁は、限界的には確かに成長通貨の供給という域を超えている、しかし、一応キャップをはめているというふうに御答弁なられましたので、財務省として今の日銀の国債の購入量は成長通貨の供給の域を超えているというふうにお認めになりますか。
  247. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 確かに超えております。
  248. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうであれば、本会議のときからそのようにきちっとお答えいただきたいと思っております。  さて、そうすると、内閣府にお伺いしたいんですが、これは大臣でも参考人の方でも結構ですが、我が国の現時点における潜在経済成長率、それからハイパワードマネーの伸び率、マネーサプライの伸び率、足下どのぐらいでございましょうか。
  249. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 平成十三年度の白書で潜在成長力の議論をさせていただいております。これは、八〇年代後半には四%を上回っていた、九〇年代前半には二%強であった、九〇年代後半は一%強に落ち込んだというふうに分析をしております。これは言わば供給力の伸び率というふうにお考えいただいていいと思いますが、潜在成長力という場合に、本来持っている、例えば不良債権問題を解決して、将来に対する安心な年金システムを確立して、それで本来持っているそういう意味での潜在的な成長率に関しては、現在も日本は二%程度は十分に持っていようかというふうに思っております。  それと、ハイパワードマネーの伸び率、前年同期比で見まして、二〇〇二年、これは年の数字でありますが二五・七%、二〇〇二年の十―十二月期は、これは前年同期比でございますが二〇・四%、マネーサプライの伸び率は、二〇〇二年で三・三%、二〇〇二年の十―十二月期で前年同期比二・九%というふうに承知をしております。
  250. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうすると、成長通貨の供給という域をかなり超えてハイパワードマネーが出ているというふうに理解していいかと思うんですけれども、そこで、日銀自身としては確かに国債の保有量を銀行券の発行残高ということでキャップを掛けてやっているわけですが、政府の側から見ると、じゃ余りに日銀に大量に国債を持たせることは何がしかやはり問題であるというふうにお考えならば、何かルールをそこでお作りになるのがやはり経済政策の運営当局として適切ではないかと思うんです。  先般の本会議では、財政法五条に抵触していないかという質問に対して、法制局長官は、形式的には、法律論としては、既発債市場から購入しているから、それ自体は抵触していないというふうにお答えになって、法律論としては確かにそうなんですけれども、しかし、財政法の精神というのは、私が偉そうに申し上げるまでもなく、財政規律をいかに維持するかという観点で財政法五条が盛り込まれているわけですから、例えば国債の発行残高に占める日銀の保有シェアをどのぐらいを上限にするとか、あるいは日銀のバランスシートに占める国債のウエートをどのぐらいにするとか、何か現時点でお考えになっておられるベンチマークはございますでしょうか。
  251. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私は、今御質問のなにが短絡でございましたので、私の答えも短絡にお答えしたんですけれども、国債の保有とそれから銀行発行券の関係というものは、これは日銀としてはやっぱり経営の倫理観の問題が大きくそこにあるんだろうと思っておりまして、発行券を超えて国債を持っているということに対しては、それは善良な形ではないと思いますけれども、しかし、よく考えてみますと、国債の中でも長期国債と短期国債がございまして、私は長期国債が発行券内において少しく差があるということをいつかの委員会でございましたか申しまして、短期国債というのは一年以内ぐらいに大体消化されるものが多いであろうと思っておりますので、この点については余り強い拘束力を持たす必要もないんではないかと。そういう点において、今のところ、通貨の発行券と国債の保有との関係は、そんなに私は危機的な状態ではないと思っております。  しかしながら、おっしゃるように、これは市場から買っておりますからいいんであって、政府から日銀引受けの格好を取ったら絶対いけないと。それはもう苦い経験、私たちは大東亜戦争の経験ございますから、これはもう絶対に避けるべきであると。その精神をきちっと堅持しながら国債の保有の推移を見ておるということが現在私の考えなんであります。  そういう点から見まして、現在のところ、くどいようでございますけれども、そんなに非難されるような状態ではない。けれども、好ましい状態ではないということは事実でございますから、ですから、この際に個人消費を思い切り金融機関、一般金融機関なり投資家、あるいはできれば個人所有が国債の保有が一番いいんではないかと思っておりまして、現在、二%ちょっとぐらいなんですかね、個人の保有しておりますのが、その程度をもっと引き上げて、私は一五%ぐらいまで、六分の一ぐらい個人が持ってくれりゃいいがなという、これは理想ですけれども、そんな考えを持っておるということであります。
  252. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今、お手元に配らせていただきました資料の一ページに、日銀の去年の三月末のバランスシートをお示ししておりますけれども、今の大臣のお話ですと、長期の国債が発行銀行券の残高を超えていなければいいというようなふうに聞こえたんですけれども、そういう理解でよろしいですか。もう一度だけ確認しますけれども。
  253. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 今言ったのはそういう意味です。
  254. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 それでは、日銀にちょっと、今の質問の流れで出てきてしまいましたので、数字がもしお手元にあれば教えていただきたいんですが、去年の三月末の短期国債というのは、末残では確かに三十七・三兆円ですが、平残といいますか、一年間を通して平均で大体どのぐらい短期国債をお持ちになっておられますでしょうか。  どなたか、もしお答えになられる方がいれば。
  255. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) どうも遅れて失礼いたしました。  大体四十七、八、四十、そうですね、少し波がございますね。四十三兆から四十八兆ないし五十兆と、それぐらいの推移でございます。
  256. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。急な質問で恐縮でございますが。  そうすると、たまたま去年の三月末の三十七・三兆というのは、多分、期末ですから償還して四月一日になったらまた発行すればいいということで少し平均より減っているわけですが、今のお話ですと、四十三ないしは四十八、多いときは五十というようなお話があったので、間ぐらいを取って四十五としましょうか。  四十五兆という短期国債は、ずっとこれつながっているわけですね。ということは、この長期国債四十九兆に四十五を足したら、これはもう百兆を超えちゃっていますから、その根雪のようにたまっている短期国債というのは、やはりこれは事実上の長期国債ではないかというふうに私は思うんですけれども、その点について日銀総裁はどのようにお考えですか。
  257. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在の厳しい情勢に対処するために非常に多めの流動性の供給をしなければならないと、そういう状態が長引いているということは事実でございます。この長引くこと自身は好ましくないというので今デフレ脱却の努力を懸命にやっておるわけですが、こういう好ましくない状況が続いている限り、日本銀行は多めに流動性を供給をすると。その供給する手段として、長期国債も、あるいは短期国債を含むその他の短期資産も総動員しながら資金を供給しているということでございます。  日本銀行としましては、将来必ずいい経済にしたいということであります。いい経済になれば、今のように余分な流動性を供給をしなくても済む経済になると。逆に言えば、今、余分に供給している通貨は吸収する過程に入るということだと思います。  その段階になりますと、この短期の国債を含め短期の資産で日本銀行が資金を供給している部分は逆に吸収しやすくなる。長期の債券を売りオペしながら吸収をするというのは、その間の価格変動を考えますと、非常にやりにくいわけでございます。  したがいまして、今、異常な状況に対処して流動性を余計に供給しているときに短期の資産の保有が増えているということ自身は、日本銀行にとっては将来にとってはやりやすいという面もございます。そういう面も御配慮いただきたいというふうに思います。
  258. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 確かに、日銀にとって短期債が増えているというのは意味があるというのは分かるんですけれども、今日は特例公債の法案審査の流れの中で日銀においでいただいておりますので、結局、財政規律をいかに維持するかというのが問題の切り口でございますので、大臣、この短期国債が根雪になっている部分というのは、今、貸し渋りの問題、竹中大臣の方で問題になっている貸し渋りの問題で中小企業がなぜ苦しいかというと、ずっと銀行から根雪の融資としてもう毎年三億をべたっと貸してもらっていて、期末が来たら必ず更新してもらえると思っていたものが、ある日突然、いやいや、もう今期は二億しか貸せませんよといって根雪を削られるところに、今の貸し渋り、貸しはがしの問題が起きているわけですね。  これは、この短期ロールオーバーの分が四十五兆もあるというのは、ちょうどその中小企業金融における根雪と一緒ですよ、これは。これが消化できるうちはいいですけれども、消化できなくなったら、中小企業の社長のお気持ちがその段階で塩川大臣はきっとお分かりになるんじゃないかと思うんですけれども。  日銀総裁にちょっとお伺いしたいんですが、お付けした資料の三ページ以降に、総裁が富士通総研の理事長になられて以降の御発言を整理してございます。本当に、データベースでずっと拝見したら、大変膨大な情報発信をしておられて、それ自体はすばらしいことでございますし、御炯眼の内容を一杯拝読したわけですが、例えば、「財政運営等についての所見」というところで、三ページでございますが、2番の(2)とか2番の(3)を見ますと、「日銀を頂点とするわが国の金融システムが知らぬ間に国債の自動引き受け装置に転じてしまう。」と、あるいは(3)番を見ますと、「やり方次第では、日銀が国債の引き受け装置になり、国債の信認低下に伴う海外への資本流出を招いて、失敗に終わりかねない。」と、こういう御発言をもう二年前にしておられるわけであります。  財政状況は二年前よりも更に悪化しているわけでありますので、今議論をさしていただいておりますこの短期国債の根雪の部分ですね、これについて何か具体的な制御目標とか、あるいはその制御方針について何か今お考えのことがあれば、もう一度お伺いさしていただきたいんですが。
  259. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 私が過去に民間のシンクタンクにおりまして、いろいろ発言さしていただきました。その時点で主として私の頭の中に置いておりましたのは、長期国債を対象にしての議論でございます。長期国債の発行が仮に市場で行われているにしても、もし日本銀行のそのオペレーションの姿勢が必要以上に甘過ぎれば、民間の金融システムを通じて結果的に財政に対する安易なファイナンスが行われるという結果を招きかねないと、そういう懸念を表明したわけでありまして、これは通貨当局の金融政策の規律の問題であり、政府の財政政策の規律の問題、あるいは国債管理政策の規律の問題としてしか解決のしようがない問題だと思います。  したがいまして、国会等でも十分な議論が行われて、どこに最終的な歯止め、規律のよすがを求めるかという議論を絶えず継続的に行われていく必要がある。今、私は日本銀行の立場になりましたけれども、流動性を多めに供給しなければならない経済だということははっきり認識しておりますが、さりとて政策に規律が失われるというふうなことにならないように、この難しいバランスはきちんと取っていかなければならないと、そういうふうに考えております。
  260. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今は日本銀行の立場になったというふうにお話しになったんですけれども、いやしかし、富士通総研の理事長時代に情報発信された様々なお考えが非常に見識がおありだということで今そのお立場になられたわけですので、日銀総裁になったから意見が変わったというのでは困るということを一言、大変恐縮でございますが、申し上げておきます。  その上で、確かに三ページにありますような表現が、これが長期国債を念頭に置いているものだとすれば、それはそれで一応理解はしますが、四ページの(6)を見ていただくと、これは一年前、もっと最近ですね、八か月ぐらい前ですか、「日銀や金融機関に国債が過大に沈殿し始め、財政規律が失われ、国債暴落という将来に対する大きなリスクを一点に集中し始めている。」と、このように見解を述べられているわけであります。  そこで、くどいようですけれども、今度は塩川大臣竹中大臣にお伺いしますけれども、新総裁が就任されて、政府、日銀が一体となってこの現下の日本経済の苦境を脱するために知恵を絞るというのは、これは結構なことでございます。しかし、一方的に日銀に何かさせるんではなくて、財政当局や竹中大臣のところにおいても、自分たちはこういう努力をするというカードを切ってこそ政府・日銀一体となってということでありますので、もう一度聞きますけれども、この短期国債の根雪の部分ですね、日銀が持っている、これについて何かシーリングを設けるとか、あるいは長期国債と短期国債を合わせて発行銀行券の残高の範囲に抑えるとか、あるいはもう、しかし両方出したら百兆になっちゃうわけですから、それではなかなか難しいというんでしたら、繰り返しになりますが、国債の発行残高に占める日銀の保有分はどのぐらいにするとか、日銀のバランスシートに占める国債のシェアはどのぐらいにするとか、何か財政当局として単年度予算編成におけるルールをそこでお示しいただけないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
  261. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私はまだ、そのルールはまだ決めるところまでなかなか、算定のところ考えしておりませんけれども、しかし私は、これはかねてから、これは今の答弁は、これ、公式な答弁になっちゃいますね、財務大臣としてのね。これやったらなかなか言いにくいんですよ、所管違いますから。  私は前からこの短期国債の関係について一つの意見を持っておるんです。しかしそれは、日銀さんとしてもそれはなかなかできにくいかも分かりませんけれども、もしそういう政治的な配慮が全然ないんだということでお許しいただくならば、私はこれはCPに切り替えるべきだと思っておるんです。どんどんとそこへ切り替えていって、その対象範囲を多様化していけばいいんではないかと、私はそう思っておりまして、その努力はできないだろうかなと。そうしたら、私自身としても、その役柄上、助かるなと思ったりしておるんです。例えば、手形の買いオペを、対象を拡大するとか、そういうことも可能ではないかなと思ったりするんですが、これは、だからこの発言は、私は前提で断っていますように、大臣としての発言じゃございませんで、あなたがわざわざお聞きになるからそう言っておるだけのことで、そういう政策を私は考えておると。  けれども、その比率を、国債の保有を幾らぐらいに、どのぐらいにしろということについては今全くまだ考えておりませんが、極力私は、国債の保有は減らしてもらった方がいいなということは私自身としても念願しております。
  262. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 大塚委員が先ほどから主張されておられる一つ懸念、例えば、日本銀行政府にある意味で、安易にとあえて言えば、そういう協力する形で国債を引き受けることになれば日銀のバランスシートが損なわれるし、財政の規律も失われる、それは国民経済にとって好ましいことではないのではないかと。その懸念懸念として理解できるというふうに私も思います。  しかしながら、やはり政府と日銀それぞれに役割分担があるんだと思います。我々がやるべきは、まず、日銀の国債保有を云々するということではなくて、まずやはり財政の赤字そのものを適切にコントロールしていく。そのための「改革と展望」、骨太の方針を作る。その場に、経済財政諮問会議にメンバーとして福井総裁にもお入りいただいて、これはこれで、私は、やはり厳しい注文を付けていただく。財政、もっと規律をしっかりしろと、そういう注文を付けていただいて財政規律を確立していくことが、やはりこれは我々がまずなすべき本道ではないかというふうに思います。今夕、福井総裁に最初においでいただく諮問会議がございます。そうした場でのやはり建設的な、一種の建設的な緊張感が政府日本銀行の間にあって、その中で議論を進めていくことが重要であろうかと思います。  同様に、これだけ日本銀行が流動性を積まなきゃいけないというのは、何といっても日本銀行システム、金融システムが弱っているからであって、これは金融庁の我々の責任としてしっかりとやっていかなければいけない。そうした点についても、諮問会議の場で福井総裁からは非常に厳しい御意見を是非これは積極的にいただきたいと思っております。  その意味では、日銀のバランスシートに何らかの制約をまず議論をするというよりは、我々としては、財政の規律の確立、金融システムの安定化にまず積極的に努力をする。それがまずやるべきことではないかというふうに考えております。
  263. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 竹中大臣塩川大臣の所信表明と承っておきますので、是非、明確なルールを作っていただいた方が私はいいと思いますけれども、なるべくそういう方向で御検討いただきたいと思います。  それから、日銀の方には、もうこれは福井総裁には釈迦に説法かもしれませんが、やはりバランスシートの健全性を維持するという意味で、いろいろとこれから知恵を絞っていただきたいと思うんですが。  日銀が出しております調査月報の去年の七月号に日銀の政策・業務とバランスシートというレポートが出ているのでありますが、この中には例えば、後で見ていただきたいですけれども、九十八ページの辺りには、「日本銀行のバランスシートへの信認を保つことは、日本金融システムやマクロ経済政策運営全体への信認にも資するものである。」、このように書かれているわけであります。そうした中で、さりながら、これは八十六ページに書いてありますが、二〇〇一年度末のバランスシートの規模を約二十年前、一九八〇年度末と比較すると約六倍、二十三兆円から百三十九兆円に拡大しているほか、バランスシートの規模の対名目GDP比率も約三倍、九%から二八%に上昇している、こういうことでございます。  そこで、取りあえず、今日最初の諮問会議ということですので、諮問会議に行かれる前にこのバランスシートの現状を再確認させていただきたいんですが、直近の数字で日銀のバランスシートの残高、それから国債の保有残高、これはどのくらいになっておられますでしょうか。
  264. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 今年の三月二十日現在のバランスシートでございますが、資産の総計が百三十四兆六千百二十一億円ということでございます。負債及び資本の合計も当然同じでございます。
  265. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 細かい数字を総裁にお伺いして恐縮ですが、国債の残高は、私のお持ちした計表では八十六・七兆になっていますが、これに該当する三月二十日現在の数字はお幾らでしょうか。
  266. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 国債は八十七兆四千八十一億円ということでございます。
  267. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。  バランスシートのトータルは若干減っていますけれども国債は増えているという意味で、バランスシートに占める国債のウエートは更に上がっているわけであります。  そこで、先ほど御紹介申し上げました調査月報の八十六ページに書いてある内容のうち、バランスシートの規模が対名目GDP比率で見ても二十年前の三倍になっている、つまり、九%から二八%になっているという表現があるんですが、総裁御自身としては、日銀のバランスシートの対名目GDP比はこのぐらいが適正であるとか、何か御定見を持っておられますでしょうか。
  268. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 先ほども申し上げましたとおり、経済のダイナミズムが欠けている。これを再び活力を持たせるために日本銀行は緩和政策をしている。その場合に、金利がゼロになって流動性を多く供給することをばねにして緩和効果を浸透させていく、こういう展開になっておりますものですから、今の時点で断面図を取りますと、経済実体の大きさに比べて日本銀行のバランスシートが必然的に大きくならざるを得ない。したがって、望ましい将来の経済の姿と対比いたしますと、経済実体に対して日本銀行のバランスシートは膨れ過ぎている。これは正しいと思います。  これが現在の問題を表しているのであって、この姿を将来はもっといい形に回復させていくというのが今の政策運営のねらいでございます。したがいまして、矛盾するようでありますけれども、今は日本銀行のバランスシートを政策的に大きくすることによって、将来、実体経済にまでいい影響を及ぼしていく。  最近までの時点で日本銀行の金融政策を点検いたしますと、日本銀行が流動性を供給しても、末端の経済にまでいい影響がなかなか及びにくい。この金融政策の効果の伝達ルートのいろいろなところに目詰まりが生じているというふうに私は判断しています。  今日の臨時の政策決定会合におきましても私はその点強く問題提起をいたしまして、日本銀行が流動性を供給したときに末端にまでその効果が及ぶようにあらゆる伝達経路を点検しましょう、そのために必要な道具立てもそろえましょうということを問題提起いたしました。次回の政策決定会合以降、解明されたポイントごとに新しい政策手段を用意していきたい、そういう体制を今取ろうとしているところでございます。
  269. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今日はかなり中央銀行について細かい話題をさせていただいているわけですが、なぜかといえば、新総裁が就任されて、政府、日銀が一体となって、政府と定例会合まで開きながら政策を進めようというわけですから、是非塩川大臣竹中大臣には日銀の現状というものをよく御理解いただきたいなと思っているわけであります。  先ほどのバランスシート、対GDP比では二八%と申し上げましたが、二〇〇一年度のFRBとECB、欧州中央銀行を比較すると、やはり同じ月報内に出ていますけれども、日銀が対GDP比で二八%に対して、FRBは六%です。ECBは一二%です。だから、今の福井総裁の発言をお伺いすると、先々はよりいい方向に進めていくんだけれども目先はどうなるかは定かではないという御趣旨ですので、もっと膨らむかもしれません。FRBが対GDP比で六%の規模のバランスシートなのに、日銀のバランスシートが対GDP比で三〇%、三五%というふうに増えていってはこれは大変なことですので。  だから私が申し上げたいのは、単年度予算編成のルールにしてもそうですし、日銀の国債保有にしてもそうですけれども、考えられるいろんなターゲットをきっちり決めて、全部が全部守れとは言いませんよ、しかしそういうものに目配りしながら経済運営をしていくことが、結果として転ばぬ先のつえになるのではないかということを申し上げたいわけであります。  財政規律を守るというときに、常識的には三つの手段があるというふうに言われますけれども、一つは数値目標です。二番目は予算の制度です、手続をどうするかということ。三番目は透明性だと言われています。  その透明性については、あしたまた委嘱審査がありますけれども、予算の中身を、本当にこれが正しいのかというのを本当はもっともっと時間を掛けて一個一個議会で議論していけば大分透明性は高まるかもしれません。しかし、二番目の予算編成の制度とか手続というのは、これはもう、これももちろんメスを入れていかなきゃいけないところですけれども、なかなか急には変わらない。もちろん小泉政権になって少し官邸主導でやっておられるというのは分かりますけれども、欠けているのは数値目標なんですね。  確かに、プライマリーバランス、二〇一三年度均衡させるというのはありますけれども、これは繰り返し申し上げますけれども、これは両大臣がもういらっしゃらない、福井総裁ももういらっしゃらないずっと先の話の目標を言っているだけで、そうではなくて単年度ごとの数値目標を明確にするという手段も使わないと、なかなかこの財政規律は維持できないのではないかと。  その場合のその数値目標というのは、よく財政学会とか経済政策学会で言われているような、グラム・ラドマン法に言われたようなそういうものだけじゃなくて、今の日本は、例えば日銀のバランスシートの対GDP比の規模をこのくらいにするとか、そういう今まで欧米ではなかったような数値目標も含めて御検討をいただかないと、他国に例のない事態を迎えているわけですから、なかなか乗り切ることは難しいんじゃないかということを申し上げたいわけであります。  この点について竹中大臣の御所感と、できれば塩川大臣の御所感もお伺いしたいと思います。
  270. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 大塚委員、御専門家の立場で日銀のバランスシートを非常に精査して今日は御議論いただいていると思います。  言うまでもありませんが、実は政府のバランスシートも肥大化をしております。それが国債面で見ると非常に明らかなように借金残高になっているわけでありますから、これはやはり同時に解決していく努力をしなければいけないと思っております。  今日は、先ほど御指摘してくださった中で、数値目標、これはもう一度是非繰り返させていただきたいんですが、我々は中期の目標を持っております。中期の目標を単年度にするときには、これは単年度でこれ予算編成を当然していくわけでありますから、それに当たっては、その中期の目標と整合的な予算の全体像という目標を、これは予算の編成に入るプロセスの前に、昨年の夏にやりました。これはやはり続けていこうと思っておりますから、これはやはり私は一つのその単年の規律になっていくものであるというふうに考えております。  それと、予算の制度の話がございましたが、小泉内閣になってから予算の制度については随分改革したつもりでございますけれども、予算のこのプロセスそのものは更に改革の余地があると思っております。  これはニュージーランド、イギリス、オーストラリア、九〇年代に入ってそういったことに成功した国というのは、おしなべて見てみると、やはり共通の三つのことをやっているというふうに気が付く。  その第一というのは、政府はやはり明確な目標、成果目標を立てることです。何を政策としてやりたいのかという目標を明確に立てる。二番目としては、その目標を一度設定したらそれを実現するために予算の執行にはできるだけ柔軟度を与える、柔軟なシステムにする。例えば、使い残したら、もしも使い残したら、あとは自分の目的のために使っていいですよというのも一つでしょうし、複数年度で何か考えられるような仕組みを、法のもちろん制約はあるわけですが、考えていくというのも一つでありましょう。三番目には、厳しい事後評価を行う、政策の評価を行うということではないかと思います。  こういうことを少しずつでも取り入れようというふうにこの二年間やってきましたけれども、これを更に諸外国、やっぱりこの三つをどこもやっているんだと、そういう点から更にプロセスについて今見直そうという、これは経済財政諮問会議の今年の非常に大きなテーマにもしておりますので、そういった面での努力も我々としては行っていきたいというふうに思っているところでございます。
  271. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 今、竹中大臣言いましたので、私の言いたいことをほとんど言うてしもうた、大体同じようなことですが。  しかし、私は一つ念願としておりますのは、この国の予算書というものは、できればバランスシート、いわゆる企業会計方式を導入したものにどうしてもできないだろうかなと思うておるんです。取りあえず特別会計だけでもそうしたいと思いまして、財政審の方に一生懸命お願いしておるような次第なんですが、やっぱり何といいましょうか、単年度主義にならざるを得ないのは、大福帳式ですから、要するに、この金銭消費支出帳が予算書なんですから、これはやっぱりもっとそういういわゆる企業会計にするならば、そうすれば私は予算の執行は配当、配分も単年度じゃなくしてある程度継続事業的なものもやっていけるように思っておりまして、そのことは非常に予算の効率的な使用に、利用に結び付くんではないかなと思っております。  それをやるということが一つと、それから、何としても、やっぱり行政のシステムの中にいろいろなシステムがございますが、これを改革していかなければ、非常に予算の無駄遣いが私は多いように思うんです。  そこで、二年前から主計局が中心となりまして予算の執行の評価をやり出したんですが、これは今度政府が中心となって、内閣中心にひとつ組織的な評価方法を取っていきたいと、こう思っておりますが、要するに、プラン・ドゥー・シーのシーの方が全然すかっぱで抜けておる。これがやっぱり非常に予算の効率が悪いということでございまして、午前中、浜田先生なり峰崎先生から御指摘があったようなことは、これは全部見てみると、そのシーの面が全然行き届いておらないところから出てくる問題が相当あると思っておりまして、そういうようなものも併せてやっていく。  その上での計画を立てていかないと、これは何がその目標にするかといいましても、現在のところ、現在の制度の上にのみ立っての目標を作りましたならば、プライマリーバランスの達成というのは非常に難しい条件になってくるということを心配しておりますんで、制度改正と併せてプライマリーバランスの達成を図っていく手順を付けていくことが一番大事なことだと私は現在は認識しております。
  272. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今、竹中大臣からは複数年度予算の話があったり、あるいは塩川大臣から継続事業の話がありましたが、一点だけ意見を申し上げておきますと、複数年度予算とか継続事業というのは、確かに単年度主義で、余らせたら困ると、余ったら何か空出張に使ってしまえみたいな、そういう弊害を呼ぶ部分もありますので、その弊害を是正するためには、複数年度予算にしなければならない面もあります。  ところが、多年度事業計画とか継続事業というのは逆にその硬直化を呼ぶとも言われていまして、プラス・マイナス両方がありますので、日本の場合、それが典型例が公共事業なわけです。御承知のとおり、公共事業は道路でありますと道路整備緊急措置法で道路整備計画ができて、その財源の根拠として道路整備特別会計法があり、それに基づいて特別会計が組まれると。  したがって、この今、後段の方で申し上げた特別会計法を根拠にした特別会計に計上される財源を当てにして最初から前段で申し上げました道路整備計画ができちゃうから、できちゃうから、これはもう多年度事業だということで、財政が苦しくなっても、いやいや、もうこれはお墨付きいただいているものだから造るという面がありますので、複数年度事業とか継続事業、多年度予算というのは、柔軟にこれから制度改革していく上では必要な発想ですけれども、今申し上げましたような、実は現時点でもそれが既に予算制度の中にビルトインされていて、それが予算の肥大化につながっている面もあると。むしろそちらの方は改善しなきゃいけない点なんですね。だから、この間の本会議から今日に掛けて繰り返し繰り返し定性的な問題は何かとお伺いしているのは、例えばそういうことなんですよ。  使い残しをしちゃいけないという形が逆に無駄を呼んでいる部分は、使い残しを認めればいいと。しかし、景気が悪くなったのに、前に決められた計画だからそのままやりますというような継続事業みたいなところは、逆に単年度ごとに見直していかなきゃいけないという、そういう制度要因を是非財務省の中できっちり御議論いただいて、見直していただきたいなと思います。  さて、少し話題が変わりますけれども、今日、日銀は緊急の政策決定会合を開かれまして、その関係で今日は、実は大渕先生も日銀総裁に多分御質問なさりたかったと思うんですが、順番を変えていただいてやらせていただいております。御協力いただいた先生方、本当にありがとうございます。  御存じかどうか分かりませんが、日銀の株の買取り上限を二兆円から三兆円に引き上げたということで記者発表したと聞いております。しかし、残念ながら株は二百円下がりました。  福井総裁は、十八日の衆議院財務金融委員会での参考人質疑の際に、この株の買取りの、この措置の意味を前向きに受け止めながら考えていきたいというふうに述べておられるわけですが、この措置の意味について改めてお伺いをしたいんですが。
  273. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 私の基本認識は、日本の資本主義というものが大きく変わりつつある。従来の日本の資本主義は、株式持ち合いというものをしっかり組み込んで、それでうまくワークする資本主義である。今変わりつつある資本主義経済というのは、株式持ち合いというものと共存し得ない資本主義に変わってきている。したがって、企業も金融機関も持ち合っている株式を早く解消をしたいという、そういう動機を強く抱えた資本主義経済になっていると思います。  この場合に、日本金融システムが既にオーバーバンキングあるいは不良債権問題の処理という重い重い課題を背負っておりまして、ずっと株式を持っていても、この株式の値下がりによって更にダメージを受ける、こういうリスクを抱えています。また、その株式を売り出しますと、経済全体が今は非常に厳しい局面でございますから、株価全体を押し下げて、まだ日本経済はデフレスパイラルに陥っていないと私は思っていますが、そういう基盤が脆弱なぎりぎりのところでバランスを取って動いている経済に、資産価格の大幅な下落ということが起こりますとショックが大きい、下手をするとデフレスパイラルに陥りかねないリスクがある、こういう厳しい認識を私は持っております。  したがいまして、株式の持ち合い解消そのものは、将来の日本の資本主義、新しい日本の資本主義の姿に橋渡しをしていく重要なプロセスなんですけれども、その過程において必要以上に経済とか金融システムにショックをもたらすことはまた好ましくない、何らかの形でこのショックをアブソーブする必要があると。特に、今のようにイラクとの戦いが起こって、いつ何どき予期せざるショックが経済とか金融システムに及んでくるかもしれないというときには、そのショックアブソーバーのファンクションは十分備えを持って、持っておく必要があると。  日本銀行が、昨年、二兆円という枠で銀行保有株式の吸収措置を講じましたのは、銀行は、いわゆる自己資本のうちのコア部分、ティア1と言われている部分を超える大きさの株式を持っている場合に、これはある期限までにこの株式の保有を解消したいという強い動機付けを銀行は与えられていますので、そのプレッシャーが市場に強く及ぶリスクがあるので、そのショックアブソーバーとして日本銀行はああいう措置を用意いたしました。もちろん、政府の方の株式保有機構と共同作用としてこれがうまくワークすることを期待して実施したわけでございます。  最近までの状況を見ますと、日本銀行が当初予想しましたよりも、銀行日本銀行の買入れ措置に対して株を売り進んできている、こういう状況でございます。二兆円の枠の既にハーフウエーラインを超えております。一兆円を超える買入れ残高を既に持っておりまして、残りはもう半分に満たないということになってきております。  政府の方の保有機構と言ってみれば肩を並べて両方で均衡を保って吸収していければ、必ずしも日本銀行の枠を今ここで増やす必要はないかもしれないんでございますけれども、政府の方の御用意が整うまでもう少し時間が掛かるかもしれないというふうに思いますと、いつ何どき強いショックが来るかもしれないということであれば、せめてそのティア1を超える部分銀行保有株は、日本銀行の買入れ措置によってほぼ全部吸収できるというぐらいまでの備えをしいて、今後起こり得べきショックに対応したいと、こういう趣旨でございます。  ただ、日本銀行は、恐らく委員懸念のとおり、こういう株式の保有残高を増やすということは、先ほどお示しいただいた日本銀行のバランスシートの資産のサイドに持つ数字の大きさが大きくなり、しかもその中で価格変動リスクを抱えてくる、こういうことでございますので、日本銀行の持っている自己資本との対比で、ある限界がある、あるいはこれからいろいろ新しい施策を展開していきます場合に、日本銀行の自己資本をどういうふうに割り当てていくかという問題がより厳しくなる、こういう問題を十分認識しながら、今回の措置は必要だという強い判断の下に今回決定したということでございます。
  274. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いざというときにティア1を超えている部分を全部買い取れるだけのバッファーを用意したということですが、今現在把握していらっしゃる数字で、金融機関がティア1以上の株の保有額というのはお幾らぐらいになるんでしょうか。
  275. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 三月末の推定でございますが、三兆円ぐらい、約三兆円ぐらいと御認識いただきたいと思います。
  276. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうすると、今回の措置は二兆から三兆にしたわけで、もう既に一兆買われていますので、バッファーは二兆しかないですから、ティア1より上の部分が三兆あるんでしたら、二兆を四兆にしなくてよろしかったんですか。
  277. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行がすべてそういう金融機関からの放出株を買っているわけではございません。市場で消化されている部分もございますし、政府の保有機構の方にも、ウエートは低いですけれども、やはり消化がある程度進んでいるということでございます。
  278. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 それでは、再三申し上げますが、政府、日銀、一体となってやる以上、日銀が努力すれば政府も努力するという姿を見せていただかなくてはいけないわけですが、株式保有機構の方は余り使われていないわけですけれども、これからどういう工夫をされて使われるようにするんでしょうか。竹中大臣
  279. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) 御指摘のとおり、実績を比べますと、日本銀行に随分頑張っていただいているというよう状況になっております。これについては、我々としては、せっかくの制度でありますから積極的に活用してくださいということはいろいろ呼び掛けてはおりますけれども、これについては与党の方でも今いろいろ、どのような対策があり得るかということを御検討いただいているというふうに聞いております。与党の議論等々注視しながら、しかるべく対応策を考えていきたいと思っております。
  280. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 今のような立て板に水の竹中大臣答弁が出るときは何も考えていないというような気もいたしますが、しかし、具体的に考えているんでしたら、早めにそういうことをアナウンスメントすること自体が正しく株価対策になるわけですから、それはいつごろはっきりすることですか。
  281. 竹中平蔵

    国務大臣竹中平蔵君) これ、ちょっと与党の方でいろいろ御議論をいただいておりますので、我々としても与党の御議論を見守りながら、しっかりと考えていきたいと思っております。
  282. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 じゃ、近日中に出てくることを祈りますけれども。  日銀の方にもう一度お伺いしたいんですが、この株式保有をするべきであったかせざるべきであったかという議論は今更しても、もう既に一兆も持ってしまっているわけですから、水掛け論ですので余りする気はありませんが、しかし、バランスシートにどのぐらいの影響が出ているのかということはきっちり把握していただく必要があると思うんですが、今現在、株式を購入された結果、含み損としてどのくらいを抱えていらっしゃるんでしょうか。
  283. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) これは、原価法で期末に評価しておりまして、その都度、含み損に対してはきちんと対応している、減損処理もしているということでございますが、その間のインターバルにおきましては格別具体的な評価をいたしておりません。
  284. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 一兆お持ちになって、買取りを始めたのが十一月の末ですから、どうでしょう、ざっと一五%ぐらい下落したとして、一千五百億ぐらいの含み損が出ているのかもしれませんけれども。  改めてこの問題をちょっと深めたいんですけれども、速水前総裁は御退任直前まで、株式の保有上限を引き上げる必要はないし、そのつもりもないというふうにはっきりおっしゃっておられたわけで、総裁が替わられたことによって方針ががらっと変わったわけでありますが、これは総裁が替わったことによる要因だけでしょうか、それとも何かほかの経済情勢、もちろんイラクがあったことは分かっていますけれども、何か具体的な理由があって三月二十日をもって急に方針が変わったのでしょうか。その背景についてもうちょっとお伺いしたいんですが。
  285. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 今回の措置も政策委員会できちんと議論をして結論を出しました。そういう意味では、総裁が替わったから物事の判断が急に変わったということではございません。  一つの大きな変化は、やっぱりイラクとの戦いが起こったということでございます。当面の市場の反応は、海外の市場も日本の市場も比較的落ち着いているわけでございます。これは、短期決戦シナリオというものを十分市場がのみ込んで、そういう範囲内で今市場が動いているということでありますけれども。悪いことを予感したくはないんですけれども、こういうシナリオにほころびが生じたときには、こういういいシナリオを市場が織り込み過ぎているときには、その反動のリスクもまた大きいと。これは政策当局者としては十分カウントしておかなければいけないことでございます。  かたがた、ベースになっている日本経済の基盤は必ずしも盤石でない、むしろ脆弱だということでございます。その場合に一番ショックを強く受けるのは、今のところは残念ながら金融システムです。金融システムはいろんな要素で脆弱になっておりますが、その中でも株価変動リスクと金融機関の経営とが遮断されていないと。このリスクファクターを、今回は、従来に比べますとより強く我々としては計算に入れなければならないということになりました。  もちろん、政策委員会で議論いたしましたときも、単なる株価対策ということと誤解されないかというふうな御心配の意見もたくさん出ましたけれども、より本質的な問題に我々は対処しようということで判断したわけでございます。
  286. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 先ほどお配りした資料の十ページをごらんいただくと、一番最後、9の(5)に、「金融政策の範囲は広がっており、工夫の余地は大きい。」と。これは今年に入ってからの御発言であります。一番後ろのページでございます。  工夫の余地は大きいということで、これからいろんなことを打ち出していただけるんではないかなと思いますが、その中の議論の俎上には恐らく上るでありましょうREITとかETFなんですが、最終的にそれを購入対象とするかどうかは別ですが、REITとETFの市場残高についてお伺いできますでしょうか。
  287. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) ごく最近の市場規模でございますが、REITは約四千四百億円、これは一月末時点でございます。それからETFは約二兆三千七百億円、これは二月末時点でございます。
  288. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 先ほど御紹介しました日銀の調査月報のこのレポートの中にも、日銀が資産を買う場合ないしは資産を持つ場合の三原則として、健全性と中立性と流動性ということを明記しておられるんですね。  健全性というのは、ここは与野党間で議論になるところですけれども、どれが健全でどれが健全でないか、リスクが高いか低いかということですが、REITやETFに関して問題なのは中立性です。  つまり、先ほども今回の株の措置でこれが株価対策と勘違いされると困るというふうにおっしゃいましたけれども、価格に対する影響力が強く働いてしまうと、これは中立性を損ねますので、今お伺いしたように、四千四百億とか三千七百億という市場規模の資産を日銀が買うということは、この中立性の観点からいって到底無理な話でありまして、大体どのぐらいの市場規模のある金融資産でしたら購入対象になり得ますでしょうか、もし何かお考えの基準みたいなものがあれば聞かせていただきたいんですが。
  289. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 具体的な数値基準というのはもちろんございませんが、定性的な基準というのは、今、大塚委員が御指摘のとおりでございまして、日本銀行が買い入れる資産というのはなるべくリスクの少ない資産と。国債に比べてリスクのより多い資産に踏み込みます場合でも、その中で相対的にリスクの少ない資産。  それから、マーケットの規模がやっぱり十分大きくて、日本銀行が市場に介入しましても、基本的なマーケットの価格形成機能、つまり金利機能に対してひずみをもたらさない。日本銀行が一番大事なことは、金利機能が十分生きている金融・資本市場、これは金融政策の舞台でもありますので、日本銀行の行動でこの舞台に傷を付けるというふうなことは自己矛盾でございます。そういうことがないようにすることが第二点。  それから、個別の資産の買入れにわたり過ぎないと。例えば株式については特定の銘柄を仮に買うというふうなことになりますと、全マーケットの中で特定の銘柄に対して強い影響を与え過ぎる。これはやはりコンフリクト・オブ・インタレストといいますか、利益相反になるということでございますので、それも避ける。  大要、これぐらいの原則があると思います。  したがいまして、REITとかETFについて今具体的に検討をしているわけではありませんけれども、仮に、今後いろんなものを、いろんな買入れ対象資産というものを総点検するといったような場合に、こういった項目を点検する場合にも、今申し上げました尺度でこれはきちんと評価をしなければならないと、こういうふうに思っています。
  290. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 御答弁としてはそういう御答弁になるのは分かりますが、現実問題として、REITは四千四百億、ETFは三千七百億しかないわけですから……(「二兆三千七百億」と呼ぶ者あり)二兆三千七百億。これは失礼しました。ETFは二兆三千七百億ですね。だから、少なくともREITについては、これは当分購入対象にはなり得ないというふうに理解してよろしいでしょうか。
  291. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在存在しております市場規模そのものがまず第一に参考材料になるということは、おっしゃるとおりです。  ただし、日本銀行がマーケットに入りますことによって市場そのものがディストーションを生む、むしろ市場を殺してしまう場合と、入りますことによってそれが触発効果を持って市場が大きくなる場合と、両方あります。少しダイナミックな判断も必要だと。必ずしも今REITの買入れが可能だと判断を持っているわけではありませんが、ごく一般論としてそういうふうに申し上げました。
  292. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 株式購入の方に少しもう一回話を戻させていただきたいんですけれども、今日はこの去年の七月の月報のレポートを存分に利用させていただいているんですが、これの九十九ページを拝見すると、CPとか社債のくだりのところで、いったん適格とした企業債務であっても、信用力が低下した場合には日本銀行のオペ対象や適格担保から外していると、こういう表現があるわけです。これ、当たり前の話だと思うんですが。  株については、速水前総裁の時代から随分議論をさせていただいているんですが、購入時点では日銀の適格基準を満たした格付以上のものであったとしても、購入後に格付が下がるようなケースもあるわけでありまして、やはり日銀はそのバランスシート及び間接的に国民の資産である資産の健全性についてちゃんとモニタリングをしているんだということを明確にするためにも、やはり銘柄は、私は期末にはきっちり公開するべきではないかというふうに思っているわけですが、例えば、先ほど総裁が期末には評価するというふうに、含み損ですけれども、評価するというふうにおっしゃいましたけれども、今までの議論の延長線上でいくと、総裁も、それから審議委員も、そして担当の執行役員もだれも銘柄は知らないまま、現場しか銘柄を知らないでオペレーションしますということを国会でずっとおっしゃっているんですけれども、それで出てきた評価損が正しいか間違っているか、これはだれも確認できないんですね。  もうこういう段階まで話が来ていますから、今更株の購入をやめろとは私も申し上げませんけれども、例えば日銀が自発的に銘柄を公開できないと言うんでしたら、日銀法の五十八条に基づいて所管大臣である財務大臣が、少なくとも財務省には銘柄を報告しろとか、あるいは国会には銘柄を出させるとか、最低限そのぐらいのことはするべきではないかと私は思うんですが、できれば財務大臣と日銀総裁と、両方から御答弁をいただきたいと思います。
  293. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) その話は一時あったんですけれども、私は知らせてもらったらかえって迷惑だと思いまして、それは日銀の中で審査委員会みたいなものをきちっと作って自主管理をしてくださいと。どうせ信託を使っての話にもなるだろうから、私ら政治家がそれを知ったら迷惑ですと、こういうことを言ったんです。
  294. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行の金融政策、例えば債券の買入れ、あるいは債券以外の資産の買入れは常にマクロの金融政策の立場でやっております。つまり、総体としての流動性の供給。しかし、実際に使います道具、買入れ対象資産は、国債の場合にはこれも正にマクロとマクロ、平仄が合うわけですけれども、民間の資産を買います場合にはどうしてもそこでマクロとミクロの衝突が起こります。  したがいまして、ミクロの利害関係を全部ディスクローズして表に出すということは、マクロの政策手段としてはむしろ使いにくくなると、こういう矛盾をはらんでおりますので、その調和を図るために、例えば今回買入れ措置を行っております株式については個別銘柄は明らかにしないと。買うときも買入れ委託先に委託して、日本銀行が直接甲か乙か丙かという判断はしないということによって、一枚そこに市場の客観性を入れることによってマクロとミクロとの調和を図っている。  したがいまして、買入れ後もこの銘柄を公表しますと、その会社と、つまり発行会社と取引先銀行との関係などが様々憶測を呼ぶ種になるわけでございます。そうしますと、マクロの政策とミクロの利害との矛盾というのがあらわになりますので、これはできるだけ避ける方が政策運営上も望ましいんではないかと、そういうふうに考え続けております。
  295. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうすると、決算における評価が正しく行われていることはだれがチェックするんでしょうか。
  296. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 担当者が自分で評価をするだけで終わりますと確かに正しくないと思いますが、そのために監事、監事が客観的な立場でこれを監察しております。業務の監査を行っております。
  297. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 現在の監事は、日銀OB以外は監事にいらっしゃいますでしょうか。監事の中に日銀OB以外の方はいますでしょうか。
  298. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日銀OB以外の方はもちろんいらっしゃいます。
  299. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 何人のうち何人がOB以外でしょうか。
  300. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 現在、ただいま三人いらっしゃいますが、そのうちお一方がOBでございません。
  301. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いずれにしても、きちっと運営をされる御決意でやっておられるとは思いますが、例えば監事が見ますとおっしゃったときに、他意はなくても、三人ともOBであれば、こういう御時世ですから本当ですかという話になりますし、それから先ほど塩川大臣は日銀の中に何とか審査委員会を設けてとか言っていましたけれども、ほかの職員は一切見ないことになっているわけですから、そういう審査委員会はできないんですよね。そうであれば、公認会計士とか第三者を絡めて何かきちっとやるとか、とにかくそこは徹底した管理をしていただきたいなと思います。  それから、私が再三再四このことを申し上げているのは、別に日銀が評価をいい加減にするということを申し上げているわけではなくて、お耳に入っているかどうか分かりませんが、日銀にある銘柄をある金融機関が売った後に、その銘柄の発行企業に対する融資回収したりして、あるいは今度新しくできるであろう産業再生機構にその企業が持ち込まれて何か大きく資産価値が落ちるようなことがあると、最初からそれを念頭にして日銀に株を持ち込むような金融機関もあり得るのではないかと。そういうことをやはり抑止することが必要だという観点で申し上げているわけでありますので、銘柄を公開してくださいと幾ら言っても、ここはこれまた水掛け論ですのでこの辺でやめますけれども、是非、そういう観点で心配をしているということを是非念頭に置いていただきたいと思います。  塩川大臣、今日の政策決定会合の決定を念頭に置いてかどうか知りませんけれども、二十二日に日銀の国庫納付金の減額に言及しておられますけれども、これは日銀法の五十三条を改正するようなことを何か念頭に置いておられるんでしょうか。
  302. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いや、今そういうのは念頭に置いておりません。
  303. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 参考人の方でもいいですけれども、日銀の国庫納付金を減額するというのは、どのようなことを今お考えになっておられるんでしょうか。
  304. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 別に、御承知のとおり、日銀は剰余金を国庫に納めるわけでございますが、今日のこの状況で日銀として何か新たな資産を保有する、買うというようなことになってまいりますと、結果として国庫の納付金が減るわけでございますが、そういう措置を日銀がたとえ取ったとしてもやむを得ないという大臣の、私はそういう趣旨で大臣が発言されたと思っております。
  305. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いや、副大臣、それはちょっと違うと思います。結果として損失が出れば決算上剰余金が減るのは分かりますけれども、その中で引当金を今までよりたくさん積ませるとか準備金をたくさん積ませるとか、そういうことを認めるということをおっしゃっているんじゃないんですか。大臣、どういう御趣旨でおっしゃったんですか。
  306. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 引当金を積ませるというような趣旨では大臣は発言しておられません。
  307. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そういう形でなくて、日銀国庫納付金の減額を認めるということは、やっぱり何か五十三条の条文をいじらないとできないことなんじゃないですか。
  308. 小林興起

    ○副大臣小林興起君) 失礼いたしました。引き当て損、損が出たときにそれについては積むというのは積むということでございます。
  309. 寺澤辰麿

    政府参考人(寺澤辰麿君) お答えいたします。  日銀納付金の計算は、日銀法第五十三条第五項の規定に基づきまして、各事業年度の損益計算上の剰余金、いわゆる利益でございますが、利益の額から、準備金として積み立てた金額、法定準備金の金額及び配当金を控除した残額とするということになります。  したがいまして、日銀納付金が減少する場合としてどういう場合があるかということでございますが、損益計算上の剰余金、利益が減少する場合又は課税対象たる準備金の積立てが増加する場合というのがあろうかと思います。  損益計算上の剰余金が減少する場合はそれではいかなる場合があるかということでございますが、ただいま先生が御議論をされております現行の買取りスキームで申し上げますと、現在は、期末におきます時価の総額が帳簿価額の総額を下回る場合には、その差額、含み損でございますけれども、に対して引当金を計上するということになっておりますので、それは剰余金が低下する要因になるということでございます。
  310. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうすると、これは念のための確認ですけれども、日銀は各支店が地方自治体にも事業税を納付しておりまして、これは地方自治体の大きな、大きなというか、かなり当てにされた財源になっているんですが、事業税なんかには何か工夫をされる御予定はあるんでしょうか。これは総務省かと思いますけれども。
  311. 板倉敏和

    政府参考人(板倉敏和君) 今御指摘ございましたとおり、日本銀行が国庫に納付する納付金の額は、日本銀行法によりまして、法人事業税の課税標準である所得の計算上、損金の額に算入するということとされております。  このために、今いろいろお話ございましたが、仮に、他の条件の変更がなくて、法人事業税の所得の計算上損金算入が認められない引当金、課税される引当金が増加をすることによりまして国庫納付金の額が減少するという場合には、一般的に申しますと、当該事業年度の課税所得は増えると、こういうことになります。  ただし、その年度の税額が増額するか減額するかと、増額するかどうかということは、課税所得がマイナスのケースもございますので一概には申し上げられないと、こういうことでございます。
  312. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。  それでは、大分時間も迫っておりますので、今日は参議院としてかなり本格的に福井総裁のいろいろ御意見をお伺いしているわけですが、少し大きな視点から御発言をいただきたいんですけれども。  九一年一月十七日は、総裁はもう当時理事でおられて、私は営業局というところにおったわけですけれども、当時、バブルの発生から崩壊の過程で、今振り返ってみたら、今ほどの、今の時点から振り返ったあの当時のようなことが起きていたとは、あの当時気が付いていなかった人が多かったであろうと思います。  やはり、異常なことが起きているときは、表面上ですね、その水面下でも何か非常に異常なことが起きている蓋然性が高いと思うんですけれども、そういう苦い経験を総裁もされたわけですし、日銀関係者はみんなしているわけですけれども、現在のこの異常なマクロ経済政策、超低金利、財政はもうGDP比一四〇%の赤字を抱えて、この異常なマクロ経済政策の下で今何が起きているのかということについて、是非日銀総裁としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  313. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 八〇年代後半以降、正に九一年、御指摘になった時点を含んでおりますけれども、八〇年代後半以降、これは日本だけではなくて世界経済全体が大きな局面変化を迎えたと。これは振り返ってみて非常に明らかだと思いますし、今それがなお続いていると、局面変化が完了しないで続いていると、こういうふうに思います。やっぱり、経済のグローバル化とか情報通信革命というのは言葉で聞くほど簡単なことではなくて、経済の仕組みを根本的に変えるやっぱり潮流の変化だというふうに思います。  それから、これは日本もその中に、例外でなくて十分その中に巻き込まれているということでありますが、日本自身について見ましても、やっぱり世界一成熟化した経済と。これは、本当に日本ほど高い所得レベルが所得格差を余り伴わないで実現している国というのはやっぱりない、ほとんどないと言っていいと思います。それだけに、人々が普通の物とかサービスでは飽き足りないと、そのレベルを極端にまで上げた経済と。  もう一つ言えますことは、豊かになるにつれ、日本の人口動態というのは急激な変化を遂げてきて、人口伸び率が急激に下がってきた、間もなく人口が減少過程に入ると、こういうことでございますので、世界で起こっている潮流変化と国内で我々が負担しなければならない条件変化、両方合わせますと、やっぱり高度成長型の経済運営とか経済の成果をエンジョイするという姿はもう完全に過去のものだと。  これから先はどういう経済になるかというと、新しい価値の創造というものが伴わなければ企業収益を上げられないと。企業収益を上げられなければ、所得の配分にもあずかれない、政府も税収が上がらないと、こういうメカニズムに完全に変わってきていると思います。つまり、経済のモデル全体が古いモデルから新しいモデルに早く移行しなければならない。  個々の企業、金融機関のレベルについていえば、ビジネスモデルを早く変えて、やはり一単位当たりの投資によって新しい価値創造を生むことによって高い収益率を上げるというモデルに早く変わらなければならないということだと思います。今ちょうどそのモデルチェンジの谷間にあって、次のモデルへの移行過程に苦しみ続けていると。  したがって、世の中全般見渡しますと、政府はたくさんお金を使い、日本銀行金利を非常に低くし、さらには流動性をたくさん供給していても、民間の企業、民間金融機関がいまいち十分新しいリスクにチャレンジして新しいリスクを取ろうとしないと、こういう状況にあります。したがいまして、お金はどうしても政府の経済政策に必要な国債発行の方向に向かって流れていると。現在ただいまの状況はそうだと思います。  しかし、民間企業、民間金融機関とも、次なるモデルはもう既に頭の中では十分探り当てていると。いろいろ困難な問題ありますけれども、それを克服しながら前進しようとしていることは確かであります。早い企業は、既に新しいビジネスモデルに到達しているところもある。日本では数が少ないけれども、初めから新しいビジネスモデルでスタートアップしようとしている企業も決して少なくないんでございます。  したがって、政府の経済政策が、古いところに張り付いている資源を新しい方向にシフトさせる。財政政策が本来持っている資源の再配分機能というものを、もう既に今年度の予算案では相当織り込まれてきていると思いますが、今後更にその方向を強く推し進めることによって、民間部門の資源シフトを政府の政策が背後から大きく支援する、そういう形の政策体系が築かれていくことが私は望ましいと思っておりまして、その場合には、日本銀行が多めに流動性を供給したその流動性が、日本銀行がこれから開拓いたしますいろんな伝達経路を通じて実際にお金を使ってくれる企業に行き渡るスピードも早くなるんじゃないかと、こういうふうに思っておりまして、私は日本の将来について決して悲観的な見方をしていません。努力する価値は大いにあると、こういうふうに思っています。
  314. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 先々のビジョンについては、おっしゃるとおり明るい気持ちを持って臨みたいと思うんですが、やはりあのバブルのときは、あれだけ異常にマネーサプライが伸びていても、消費者物価は伸びてそんなに高くなっていないから大丈夫ではないかと思っていたら、バブルが起きていたわけであります。  今回は、今日もこの特例公債の件でおいでいただいているというのは、もう月並みな言葉になり掛けていますけれども、やっぱり国債バブルがこの背景で起きているんではないかということでありますので、国債管理政策、そしてその一翼を、一翼を成すと言うと語弊がありますが、それと密接にかかわる中央銀行の国債保有について、どういう現状認識で、どういう方針で臨むのかということを間違えますと、国債バブルの崩壊によって何が起きるかということは総裁自身も過去の発言の中でいろんなことを言っておられるわけであります。  また、今おっしゃったような支出の内容を改善するというようなことは、三ページにあります2の(1)で、財政政策については、今後は景気刺激効果よりも信認効果(収支改善、支出の効率化、社会保障制度のトータル設計)等に比重を移していくことが必要であるということを言っておられるわけですから、そういうことを片方では塩川大臣にがんがん言っていただいて、やらなければ国債の保有シェアは日銀は落とすと、協力できないというぐらいの真剣勝負をしていただかないと、日銀総裁になったら急に財務省の物分かりがよくなっちゃったというんでは、これは困るということをあえて申し上げておきます。  そしてまた、今日は時間がなくなりましたので細かくはやりませんが、今度公社化される郵貯にしても簡保にしても、あるいは金融行政の在り方にしても、本当に幅広くこれまで御発言をなさっておられるわけですから、これまでの御発言の重みということをよくよく再認識していただいて、期待にたがわぬ御活躍をしていただきたいと思います。  最後に、一つだけお伺いします。一番最後のページを見ていただくと、十ページに、「その他」というところで、御退任されて直後は東大の図書館に通って読書にふけったというのは私も新聞で拝見したんですが、改めてデータベースから引用してみると、丸山真男氏という政治学者の講義録を読み返して、「「日本の民主主義をもう一度考え直す時期が来ている」と痛感した。」というふうにコメントしておられます。  日本の民主主義が、第二十九代日銀総裁として、どういう点が問題で、これから国会で答弁を多数されるわけですから、どう臨んでいかれるのかということについて最後に所見をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  315. 福井俊彦

    参考人(福井俊彦君) 日本銀行の持分をかなり離れているとは思いますけれども、私見を申し上げさせていただきますれば、戦後の日本の再興というのは、やはり当然のことですけれども、経済を最優先、ウエートを置きながら国を再興してきたということでございます。しかも、それが高度成長あるいは輸出企業優先ということで、黒字の達成ということを大目標にして国を建設してきたわけであります。  その限りにおいては、やっぱりこの国をもっとトータルにどういう国に仕立て上げるか、特に国の安全保障とか外交の問題とか、さらには文化的な価値の問題とか、これらが総合されて国の形というのは成立すると思いますけれども、その部分のウエートがやはり少し下がった状況で五十数年過ぎたんではないかなという気がいたします。  したがいまして、本当の意味での市民社会の分厚い形成の上に日本の民主主義が構築されているかというと、その基盤がやはり少し弱いと。やや経済に偏り過ぎていて、率直に我々も反省しますと、GDP成長率が今幾らだということには物すごく過敏に反応する国民ですけれども、そのほかの価値観に対しての感応度はやっぱり少し弱いんじゃないでしょうか。それが日本の民主主義という政治の仕組みが生み出すものについてある限界をもたらしているんではないかと、全くこれは私の個人的な見解でございます。  市民社会の基盤が厚くて、民主主義の機能がより広く発揮されている社会。これからの日本社会というのは恐らく、高度成長というのは過去の物語とさっき私申し上げました。ならば、やはりそういうもっと広い価値基盤に立った市民社会、その上に民主主義の仕組みが構築されていくという形の国づくりにおのずとなるんじゃないかなと私は思っています。  先ほど私、将来に夢を捨てていないと申し上げましたのは、単に経済の面だけから言っているわけではなくて、多くの国民が今は単に政治に不満だという形で本当に心の中で感じているのは、多分私が申し上げたようなことにかなり近いところじゃないかなというふうに感じております。
  316. 柳田稔

    委員長柳田稔君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は明二十六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会