○入澤肇君 本日のしんがりを引き受けまして、御質問させていただきます。
できるだけ衆議院の
議論、今までの
議論と重複しないように質問したいと思いますけれ
ども、今日も幾人かの
委員から、どうも今度の
個人情報保護法はメディア
規制という批判が免れないんじゃないかというふうな御質問がございました。私も聞いていまして、政府側の説明にもう一工夫あっていいんじゃないかなというような感想を持ったわけであります。
実は、この修正案を作るときに、私も与党三党の
議論の現場におりましたので、そのときに考えたことを今日
体系的にちょっと並べてみますので、それについて当局の御
認識をお伺いしたいと思います。
相当な
議論をやりました。第一点は、修正前の旧法の第二章、
基本原則のうち、第五条の「適正な
取得」、これは「
個人情報は、適法かつ適正な方法で
取得されなければならない。」、こういう
規定でございます。それから第八条の「
透明性の確保」、「
個人情報の
取扱いに当たっては、
本人が適切に関与し得るよう配慮されなければならない。」。この二つの
規定は表現の自由を妨げるんじゃないかと。また、そのおそれが出てくるんじゃないかというふうな心配がメディア側から出てきたわけであります。
〔
委員長退席、理事常田
享詳君着席〕
今回の
個人情報保護法は、正に学問の自由とか信仰の自由とかあるいは表現の自由という
基本的人権と
個人情報保護との
調整をどうするかという
基本的な問題をはらんでいまして、こういうふうな疑いが出るということが一つ大きな問題であるということで、与党三党の
議論の中では、これは削除しようと、まず。
しかし、OECDで八つの
原則がありまして、それを日本版では五つの
原則にしたわけですね。これは衆議院で堀部
参考人が、八つを五つにするという、これは正に日本的な工夫だというふうなことは言われていましたけれ
ども、二つを削って
あと三つだけ残すと、これはおかしいということで、全体として
基本原則というその章を削除したわけであります。その代わりに、それに代わるべきものとして
基本的な理念、
基本理念というのを置いたわけですね。これが一点。
それからもう一つは、この
基本原則の
規定が裁判上の訴えの
利益の根拠
規定と解釈されるんじゃないかというふうなことも心配されましたので、本来そういうことはないというふうに当局側は有権的な解釈で示していたんですけれ
ども、解釈であいまいなことを、あいまいな印象を与えるのはよくないということで、思い切って
基本原則ということが削除されたわけであります。
第二番目は、これも解釈によってあいまいさを残すということを極力防ごうという視点から、特に報道機関、今も
議論がありましたけれ
ども、報道ということについてきちんとした定義を置いたらどうかということで、定義を置くようにしたわけであります。
これは、その後この
委員会を聞いていまして、さらにまだ客観的な事実とかなんかについても、何が客観的だとかいって、いろんなあいまいだというような質問が出ているんですけれ
ども、この点は、いずれ各省統一で私は
ガイドライン的なものが出てくるんじゃないかというふうに今期待しているわけでございます。
それから第三点目は、行政当局の介入によりまして表現の自由が侵されるのを防ぐと、そういう
意味で、報道等につきましては
主務大臣の権限を行使しないという
規定を改めて入れたわけです。
それから、最も
中心的な中身である第四章の
個人情報取扱事業者の義務等の
規定、これにつきましては、以上の
観点から報道機関等には適用しないという、これは元々そういうふうに書いてあったんですけれ
ども、どうも書き方があいまいだということで、旧法の五十五条を第五十条のように明確に改めたと。その代わりに、私は主張したんですけれ
ども、
個人情報保護のための包括法として位置付けるのであれば、報道機関等を全く除くというのはおかしいと、そういうことで、第五十条の第二項、これはもう少し強く書いたらどうかということを主張したんですが、その
議論は通らなくて、努めなきゃならないというふうな
規定になったわけです。
要するに、この五十条の二項というのは、ある
意味では本邦初演というか、私
どもの持っている我が国の
法律体系の中では、罰則なき義務的訓示
規定ということで極めて珍しい
規定なわけですね。しかし、これは自治規範として非常にこれから大きな
意味を持ってくると私は思っております。これを旧法のままそのまま存続させておこうじゃないかということになったわけであります。
それからもう一つ、
行政機関の関係の
法律について言いますれば、本来、私は
国家公務員法を改正して、
国家公務員法の罰則の
体系を直すべきじゃないかということを強く主張したんですけれ
ども、最近の立法例見ますと、マネーロンダリングの防止の
法律につきましても、
国家公務員法のその罰則の
体系よりも更にきつい
体系を科すようにしたし、今回の
行政庁の
職員の罰則については、防衛庁の事件等もありまして、この
法律で個別に強化するという、そういうふうな方針を政府が取られるということで一応納得したわけであります。
このように、私はかなりの工夫をして、報道の自由、表現の自由、学問の自由、信仰の自由等、憲法の自由を守るんだと、憲法で
規定された、保障された
基本的人権を守るんだという姿勢を政府はきちんと示している。にもかかわらず、今日もいろんな
意見が出るということは、今私が申し上げましたような修正の過程における
体系的な説明が政府側から十分なされていないんじゃないかというふうな感じがいたしますので、それについての
認識なり感想なりをまずお伺いしたいと思います。