○金子哲夫君 私は、社会
民主党・市民連合を代表して、ただいま
議題となりました
政府提出の
イラクにおける
人道復興支援活動等の
実施に関する
特別措置法案について質問いたします。(
拍手)
まず最初に確認しておかなければならないことは、
米英両国による
イラクへの
武力攻撃は完全な
国際法違反、
国連憲章違反であったということであります。そして、米国が
イラク攻撃を行う理由とした
大量破壊兵器はいまだに見つからず、
米英両国では、意図的な
情報操作があったのではないかと深刻な問題になっています。
そもそも、
国連決議に基づかない
武力行使は許されませんが、
大量破壊兵器の脅威という
大義すら不確かなものであったとすれば、
イラク戦争には一片の正当性もなかったと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
国際法に反する不当な
イラク侵略・占領を肯定し、これに加担するこの
法律は、そもそも
前提からして認めることができません。また、このような
米英軍の
イラク攻撃にいち早く支持をした小泉首相の責任もまた重大と言わなければなりません。
イラクの
大量破壊兵器がいまだに発見されていないことをどうお考えですか。また、このまま発見されない場合の
イラク戦争の正当性についてどう
説明されるのですか。
総理、はっきりとお答えください。
大量破壊兵器はいずれ見つかるといった、あなたの希望的観測は聞き飽きました。また、
大量破壊兵器疑惑がただの口実であり
情報操作であったことがはっきりした場合、どのように責任をとられるおつもりか、はっきりと具体的にお答えください。
私は、本
法案のような拙速な立法を行うよりも、公正な査察の再開と真実の解明こそが優先されるべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。(
拍手)
さて、今回の
イラク戦争の一番の被害者は、間違いなく、
イラクの一般市民であります。長らく、フセイン政権の圧制の
もとで苦しみ、今度は、
米英軍の軍事
攻撃とその後の軍事占領の中で苦しめられています。
米英の
攻撃の巻き添えや誤爆によって、さきの湾岸戦争を上回る三千人以上とも五千人以上とも言われる罪なき市民のとうとい命が奪われたのです。そして、多くの人々が傷つきました。我が党の
現地調査団は、空爆で夫を奪われ、その後に子供を出産したという悲惨な女性の訴えを聞きました。
国連決議なしの正当性のない
攻撃であっただけでなく、
大量破壊兵器保有そのものが証明されないとするなら、
米英両国やその支持国は重大な責任を負うのは当然のことです。
私は、
復興支援より先にまず行うべきことは、このような
イラク国内の正確な被害調査を行い、すべての被害者に対する補償を行うことが必要だと考えています。
特に、これらの犠牲者について、
総理はどうお考えでしょうか。
また、この無法な
イラク戦争によって物理的に
イラクの
政府そのものをなくしてしまったのですから、この戦争によって奪われた罪なき
民間人の犠牲者に対する
米英や
我が国の責任は重大だと考えます。このことをどうお考えか、あわせて
総理にお尋ねいたします。
本
法案が
根拠としている
国連安保理決議一四八三は、加盟国に人道的支援と
イラク復興を呼びかけたものです。決議は、
自衛隊の
派遣を求めるものではありません。医療や食糧援助、生活インフラの
再建などの人道的支援こそが
日本に最も求められている役割であり、
国連決議の精神であると考えるべきであります。
そのために、
自衛隊の
派遣ではなく、医療チームの
派遣やNGOなどの
協力を得て、真の意味で
イラク国民の役に立つ
復興支援を行うことが求められています。既に、NGOは
イラク国内での支援
活動を開始し、成果を上げています。
自衛隊の
派遣に固執するためのこの
法案は、
国連決議や国際貢献を名目にしながら、ブーツ・オン・ザ・グラウンドという米国からの要求にこたえ、対
米軍事支援を行うことが
目的であることは明らかであります。
イラクでは、いまだ新たな政権樹立の見込みすら立たず、
米英軍の占領
状況にあります。ここに
自衛隊を
派遣するということは、
占領行政への参画にほかなりません。相手国の領土、そこにおける
占領行政などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えられるので認められないとしてきたこれまでの
政府見解にも真っ向から反するものであります。
なぜ、あえて
憲法に違反してまで
自衛隊を送る必要があるのか、明快にお答えいただきたいと思います。
イラク特措法による
自衛隊の
活動地域は、テロ特措法と同様、非
戦闘地域に限定されるとのことであります。しかし、主に海上での補給、輸送を想定したテロ特措法とは異なり、陸上が中心となる
イラクでの
活動に際して、非
戦闘地域と
戦闘地域の線引きは事実上不可能であります。
イラクでは、いまだに散発的な戦闘が続き、
米軍も、
イラク全土はまだ
戦闘地域としており、さらに今後、武装組織の反乱が拡大するおそれも指摘されています。
現実に、
イラクは全土が
戦闘地域であり、
自衛隊の
活動を非
戦闘地域に限るという
イラク特措法の
前提は机上の空論にすぎないのではないでしょうか。石破
防衛庁長官は、
戦闘行為を、国や国に準ずる組織による組織的、計画的な
武力の
行使と
説明され、
治安の悪化は戦闘ではなく、フセイン政権崩壊後の
イラクには
戦闘地域はないと
説明されていますが、まさにへ理屈であり、全くの詭弁であります。
政府は本当に
現状の
イラクで
戦闘地域と非
戦闘地域の区分けが可能だと考えているのでしょうか。
また、
政府はどのような調査に基づいて
判断しようとされているのでしょうか。現在の
イラクは
米英の占領
状況にあり、すべての情報を両国が把握しているのですから、
我が国が主体性を持って
判断することは到底できないはずであります。またもや米国の情報をうのみにされようとするのでしょうか。明快にお答えください。
次に、本法によって
派遣される
自衛隊の
活動は、
イラクの
治安維持に当たる
米軍に対する補給、輸送などの後方支援が中心になると予想されています。
しかし、
武器弾薬の輸送は
武力行使と一体と言わざるを得ず、
米英軍を敵視する
勢力が両者を区分けしてくれるとは考えられません。実際に、補給
部隊がねらい撃ちにされるケースが現在も相次いでおり、武装した米兵を輸送する
自衛隊が襲撃される
可能性は極めて大きいと考えられます。
武器弾薬の陸上輸送は、まさに補給
部隊の役割にほかならず、
憲法の禁止する
武力行使との一体化そのものであります。
自衛隊員が輸送する米兵とともに反撃すれば集団的自衛権の
行使に当たると考えられ、絶対に反対であります。
さて、
イラクの情勢が極めて危険であることから、
派遣する
自衛隊に適用する
武器使用基準の
緩和を求める声がありました。
任務を妨害する相手への威嚇射撃などを認めた国際基準に
武器使用基準を改めることは、
憲法が禁じている海外での
武力行使に直結するものであり、断じて認められません。
今回、
イラク特措法がそこまで踏み込まなかったことは賢明でしたが、こうした
議論が何の抵抗もなく
政府内で
議論されること自体が問題であります。平和
憲法をどう考えているのでしょうか。仮に、
イラクの情勢が従来の
武器使用基準では対応できないものだとすれば、そのような
地域へ
自衛隊を
派遣すること自体が問題なのであり、危険だから基準を
緩和するという発想は本末転倒も甚だしいと言わざるを得ません。
武器使用基準の見直しを行わないかわりに無反動砲などの
重火器を携行する方針とも伝えられておりますが、
イラクがそれほど危険であるというなら、そもそも、
自衛隊が行くべきではないのであります。
使用装備の
内容という重大な問題を
基本計画にゆだね、安易に携行
武器を強化することにも断じて反対であります。
重火器を持たなければみずからの安全を守れないほど、
イラクの情勢は危険なのでしょうか。であるなら、そもそも、
自衛隊は
派遣できないはずであります。御見解をお伺いいたします。
次に、
国会の
関与の問題です。
イラク特措法に基づく
自衛隊の派兵は、
国会の
事前承認が義務づけられておらず、
原則二十日以内の事後
承認でよいとされています。
周辺事態法ですら
原則事前承認であることを考えれば、緊急性の全くない
イラクへの派兵が事後
承認とされるということは到底理解できません。事後
承認とする理由をはっきりとお示しください。
イラク戦争では、多数のクラスター爆弾、劣化ウラン弾などの非人道的兵器が
使用されました。特に劣化ウラン弾は、その被害が長期にわたって続き、子供
たちに集中的に被害が出る非人道的な兵器であります。
湾岸戦争時よりも大量の劣化ウラン弾が
使用されたと言われています。どのような形であれ、
イラクの
復興支援活動を進めるために今必要なことは、残留放射能の測定など、劣化ウラン弾が
使用された実態をしっかり調査し、
復興支援活動時における二次被害を
防止する
措置を講ずることが必要だと考えていますが、どのような対策をお考えでしょうか。お伺いします。
この問題では、
イラクで支援
活動を続けるNGOからも危惧と不安の声が出されていることをあわせて指摘しておきます。
イラク国内では、既に、さきの湾岸戦争時に
米軍が
使用した劣化ウラン弾によって深刻な被害が、特に子供
たちに出ています。私は、この劣化ウラン弾による被害者に対する救援
活動こそ、被爆者治療の経験と知識を持つ
我が国が行うべき最大の
イラク支援
活動でなければならないと考えています。(
拍手)
さらに、今次戦争に
使用された劣化ウラン弾によって、今後ますます被害が深刻化することが危惧されています。
このような劣化ウラン弾による被害について、どのようにお考えでしょうか。また、
日本政府としてこの劣化ウラン弾問題にどのように支援を行おうとしているのか、明確にお答えください。
大量破壊兵器に関する不確かな
疑惑に基づいて、非人道的兵器を大量に
使用し、何の罪もない子供
たちを長期にわたってむしばんでいく
米英の
イラク攻撃は、断じて許されるものではありません。こうした実態からも、最も必要とされるのは医療や食糧援助などの人道支援であり、米国の顔色だけをうかがい、
イラクの困難を口実に、とにかく
自衛隊の
派遣ありきとする本
法案は、
イラク国民からも歓迎されるはずがありません。
私は、広島の出身です。一発の原子爆弾で一瞬にして廃墟と化した広島の町から、平和の願いを届けるために
国会に来ました。広島の原爆犠牲者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。
今、この誓いを破り、
憲法を無視して、
自衛隊が次々と海外に派兵されようとしています。私は、絶対にこれを認めることはできません。再び過ちを繰り返してはならないからであります。私は、そのことこそが、今ここにいるすべての政治家の責任であると考えています。そのことを申し上げ、社会
民主党・市民連合としての代表質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕