○保坂展人君 私は、社会
民主党・
市民連合を代表して、
政府提出の
個人情報保護法関連五
法案、そして、
野党四会派
提出の同関連四
法案について、
小泉総理並びに関係
大臣、
野党提案者に質問いたします。(
拍手)
まず、
政府提出の
行政機関の
個人情報保護法案について、私は、重大な
懸念を表明いたします。
国民に十一けたの背番号を割り当て、
行政が
個人情報を管理する住民
基本台帳ネットワークシステムが稼働するに当たって、
個人情報保護法制が必要だという議論が繰り返し語られてきました。まず、厳しい基準を持って運営、管理しなければならないのは、国、自治体、特殊
法人の扱う
個人情報であることは言うまでもありません。
小泉総理、
総理みずからに、官に厳しくという姿勢のかけらでもあるのでしょうか。わずかに加えられた
個人単位の
罰則だけで、あとは昨年
廃案になった
法案とほとんど同じ構造の
法案を
提出する神経を私は疑います。官は誤りを犯さない、役人性善説にあなたは立つのでしょうか。
個人情報保護法を
懸念し、また、
批判し、拒否する声を、
小泉総理、あなたはどう聞いたのか、率直に答弁をいただきたいと思います。
小泉総理は、
行政機関をチェックする
第三者機関設置を求める声をことごとく、結果として否定されてきました。
民間には、
主務大臣を置いて監視の目を光らせるのに、
行政は適切な運営をするはずだからと野放しでいいのでしょうか。屋上屋を重ねる、行革の時代に逆行する、こう言われるなら、
国民生活
審議会や
情報公開・
個人情報審査会を活用することを検討してもよかったのではないでしょうか。答弁を求めます。
データマッチングの禁止も重要です。
第八条で、
目的外
使用を禁止しながら、
行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で内部
使用する場合で、「相当な
理由のあるとき」は除外されるとしていますが、「相当な
理由」をもってデータマッチングされるのはどのような場合なのか、具体例を示していただきたいと思います。
また、第十条で、
行政機関が
個人情報ファイルを
保有しようとするときは
総務大臣に通知しなければならないと
報告を
義務づけておりますが、一年以内に消去される
個人情報ファイルは
適用除外とされています。言いかえれば、一年以内に消すのであれば
報告なしの収集、監視は思いのままという、ざる法になっているではありませんか。また、
政令で定める数に満たないファイルも同様です。その数なるものは、ずばり何件なのか。
以上、
総務大臣に答弁を求めます。
政府案は、
開示請求などに対し、
原則三十日以内の決定、例外三十日の延長としています。しかし、第二十条では、さらなる例外として、期限の定めのない決定期間の延長ができることとなっています。これは
情報公開法と同様の
規定ですが、
情報公開請求をしてからすべての決定までに一年近くも要する例が既に出てきており、この
法案でも、決定が出るまで、ただ待つだけで、裁判も
不服申し立てもできないという
情報公開法と同様の問題が生じかねないと思います。
この点を、
総務大臣の見解をただすとともに、
野党案ではどのような工夫がなされているのか、提案者にお尋ねしたいと思います。
昨年
廃案となった
政府提出法案の議論に大きな影を投げかけた防衛庁リスト事件は、憲法が保障する
国民の思想、信条の自由を脅かす、極めて深刻で重大な事件でしたが、結局、安全確保
措置に関する
保護法違反で海幕三佐ら四人が懲戒・訓戒処分に、事務次官や官房長ら五人は自衛隊法の信用失墜や指揮監督
義務違反で減給・戒告処分になりました。
しかし、今回再提案され、
罰則が強化されたはずの
政府案では、これら昨年の防衛庁リスト事件で処分された防衛庁長官ら関係者は、どこまでが処罰対象になるのでしょうか。
総務大臣に明快な答弁を求めたいと思います。
小泉総理、
民間情報に関しては、偽りその他不正な手段によって
個人情報の
開示を受けてはならないとあっても、
行政が
個人から
情報を取得するときには、その規制、網はかけられておりません。また、
民間が
個人情報を
第三者に提供する場合、または
目的外
使用する場合には、
本人同意が必要条件となっていますが、
行政機関は、何と、「相当な
理由」があればよしとしています。さらに、
開示、
訂正、
利用停止の
手続は
行政の場合にも存在するものの、請求を拒否できる
規定も存在し、甚だしきは、
個人情報の存否を明らかにすることを拒むこともできるとされています。
官に甘く民に厳しいという欠陥は明らかではないでしょうか。改めて、
総理の答弁を求めます。
個人情報保護法案に移ります。
まず議論すべきは、なぜ個別法ではなくて包括法なのかという問題です。
民間における
個人情報保護法制は、金融信用
情報、
情報通信
分野、教育
情報、医療
情報などの各
分野で
実効性のある
法整備が急がれています。まずは個別法こそ必要と
考えますが、
国民全部に網をかける包括法を優先するのはなぜでしょうか。
規制を受ける「
個人情報取扱事業者」は「
個人情報データベース等を
事業の用に供している者」と定義されています。「
事業者」とは何か、
事業を営む者ではないのでしょうか。
個人の親睦や趣味、または非営利
活動が「
事業者」とみなされるのですか。NGOやNPO、生協、労働組合、市民運動、同窓会、同好会など、すべからく「
個人情報取扱事業者」としてしまう乱暴さは、市民生活を混乱に陥れるのではないでしょうか。
内閣官房がことしの三月に配付した
個人情報漏えい事件のリストをよく読んでみました。
平成六年からの全六十六件のうち、金融信用
情報が十八件、
情報通信関連が十八件、医療七件、教育六件、これがすべてであり、ここには、非営利のNPOや
個人の不祥事は一件も含まれていません。
この事実をどのように受けとめますか。実際の漏えい事件はすべて営利
事業者であるならば、まず営利
事業者の個別
分野から規制すべきではないですか。
総理、厚生労働
大臣、
野党提案者にお尋ねいたします。
また、「
個人情報データベース等」とは「特定の
個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」と法文ではありますが、コンピューターを用いた電子
情報に限定しているわけではありません。コンピューターを使って検索できる体系的な
個人情報であれば、ペーパーによる印刷された
個人情報、例えば電話帳や分厚い同窓会名簿などでも、これを持っていただけで
個人情報取扱事業者だと拡大解釈の余地が生まれるのではないか。これは全く該当しないと断言できるのか、
総理、厚生労働
大臣の答弁を求めます。
今回、「
報道」の定義が
法案化されましたが、小泉
内閣は、「
報道」を国家が定義することに恐れや自戒の念がないのでしょうか。
そもそも「客観的事実」が何であるのか、この認識は立場によってそれぞれ違います。小泉
内閣が的確な経済政策を打ってきたというのは、
小泉総理自身としては客観的事実であると感じても、私からすれば主観的倒錯にすぎません。だれが「客観的事実」を
認定するのか。
主務大臣がこれを判定するとしたら、
報道か
報道でないかを国家が選別するという事態を招くことになります。
また、メディア規制法という
批判をかわすために、
報道機関に
個人を含み、「
著述を業として行う者」も加えましたが、出版社は明記されていません。雑誌ジャーナリズムに対する規制の余地を残していないのかどうか、ここも伺いたいと思います。
さらに、フリーライター、
著述家が
報道機関などと同一に解されるという今回の
政府案の理論をもってすれば、「大学その他の
学術研究を
目的とする
機関若しくは
団体又はそれらに属する者」以外の在野の学者、
個人の研究者はなぜ排除されてしまうのか、そこに一貫した
考え方があるのかどうか。
以上、三点について、
総理、厚生労働
大臣のしっかりした
説明を求めたいと思います。
最後に、一例を挙げたいと思います。
例えば、原因不明、しかし、公害発生源と強く疑われる工場の周囲で、住民の健康被害が多発している場合を想定してみてください。住民が手をとり合って、ボランティアの協力を得て、周辺住民五千件の健康被害実態調査を行ったとします。さて、この
情報収集は公衆衛生の向上のためと解されて、
適用除外となるのでしょうか。
NGOや市民運動の
目的は、実は、
報道でも
学術でもなく、公害の原因の特定と排除、早期の健康被害防止にあります。NGOが雑誌や新聞でこの調査を
報告すれば
報道と解する向きもあるのでしょうが、それでは、NGOが記者会見をすれば
報道、発表に相当するのかどうか。あるいは、この調査をNGOが学会で発表すれば
学術目的というふうに言えるのでしょうが、学会に属する学者と
公開討論会を持てば
学術目的となるのかどうか。この
法案の中にこういった視点が欠落しているのではないかと思います。
市民参加の時代をうたって成立したNPO法のもとで続々誕生している非営利
法人や、環境問題、人権抑圧に取り組むNGO、そして、大不況のもとで団結を求め雇用条件の改善を求める労働組合なども「
個人情報取扱事業者」とされることは、時の
政府による恣意的な弾圧やゆがんだ
罰則適用を招くおそれが大ではないでしょうか。
これら危惧される懸案について、
総理と、御自身が医者でもある厚生労働
大臣の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕