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2003-05-07 第156回国会 衆議院 法務委員会 第10号
公式Web版
会議録情報
0
平成
十五年五月七日(水曜日) 午前十時一分
開議
出席委員
委員長
山本
有二君
理事
佐藤
剛男君
理事
塩崎 恭久君
理事
園田 博之君
理事
吉田 幸弘君
理事
河村たかし
君
理事
山花 郁夫君
理事
漆原 良夫君
理事
石原健太郎
君
太田
誠一君 小西 理君
左藤
章君 笹川 堯君 下村 博文君
中野
清君
平井
卓也
君 平沢 勝栄君 保利
耕輔君
星野 行男君 保岡
興治
君 吉川 貴盛君 吉野 正芳君
鎌田さゆり
君 中村 哲治君 日野 市朗君 水島 広子君 山内 功君
木島日出夫
君
春名
直章君 保坂
展人君
徳田 虎雄君 山村 健君 …………………………………
法務大臣
森山 眞弓君
法務
副
大臣
増田 敏男君
法務大臣政務官
中野
清君
最高裁判所事務総局総務局
長 中山 隆夫君
最高裁判所事務総局民事局
長 兼
最高裁判所事務総局行政
局長
園尾
隆司君
最高裁判所事務総局家庭局
長
山崎
恒君
政府参考人
(
内閣官房内閣審議官
兼
文化庁長官官房審議
官) 森口 泰孝君
政府参考人
(
司法制度改革推進本部事
務局長
)
山崎
潮君
政府参考人
(
警察庁警備局長
)
奥村萬壽雄
君
政府参考人
(
法務省大臣官房司法法制
部長) 寺田 逸郎君
政府参考人
(
法務省民事局長
) 房村 精一君
政府参考人
(
法務省刑事局長
) 樋渡 利秋君
政府参考人
(
公安調査庁次長
)
栃木庄太郎
君
政府参考人
(
特許庁長官
)
太田信一郎
君
参考人
(
毎日新聞社論説委員
)
三木
賢治
君
参考人
(
弁護士
)
杉井
厳一
君
法務委員会専門員
横田 猛雄君
—————————————
委員
の
異動
五月二日
辞任
補欠選任
樋高
剛君 山田 正彦君 同月七日
辞任
補欠選任
後藤田正純
君
平井
卓也
君
不破
哲三
君
春名
直章君 同日
辞任
補欠選任
平井
卓也
君
後藤田正純
君
春名
直章君
不破
哲三
君 同日
理事樋高剛
君同月二日
委員辞任
につき、その
補欠
として
石原健太郎
君が
理事
に当選した。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
理事
の
補欠選任
政府参考人出頭要求
に関する件
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
(
内閣提出
第九八号)
民事訴訟法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第六六号)
人事訴訟法案
(
内閣提出
第六七号) ————◇—————
山本有二
1
○
山本委員長
これより
会議
を開きます。
理事
の
補欠選任
についてお諮りいたします。
委員
の
異動
に伴い、現在
理事
が一名欠員となっております。その
補欠選任
につきましては、先例により、
委員長
において指名するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
山本有二
2
○
山本委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決しました。 それでは、
理事
に
石原健太郎
君を指名いたします。 ————◇—————
山本有二
3
○
山本委員長
内閣提出
、
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
、
民事訴訟法等
の一部を
改正
する
法律案
及び
人事訴訟法案
の各案を議題といたします。 本日は、各
案審査
のため、
参考人
として、
毎日新聞社論説委員三木賢治
君、
弁護士杉井厳一
君、以上二名の
方々
に御
出席
いただいております。 この際、
参考人各位
に
委員会
を代表して
一言
ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中のところ本
委員会
に御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお
立場
から忌憚のない御
意見
をお聞かせいただき、
審査
の
参考
にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、
三木参考人
、
杉井参考人
の順に、それぞれ十五分以内で御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
の
質疑
に対してお答えをいただきたいと存じます。 なお、御発言の際はその都度
委員長
の許可を得て発言していただくようお願いいたします。 それでは、まず
三木参考人
にお願いいたします。
三木賢治
4
○
三木参考人
毎日
新聞
で
司法
などを担当しております
論説委員
でおります
三木賢治
でございます。きょうは、よろしくどうぞお願いいたします。これまで
事件
や
裁判
を取材してきた私なりの経験をもとに私見を述べさせていただきたいと思います。 用意した原稿を読ませていただきます。 昔から、
裁判
の長きはなきに等しいと言われてまいりました。この間、
最高裁
を初め
関係機関
が
開廷期日
の間隔を短くしたり、
集中審理
などによって
短縮化
を図る
努力
を重ねてきたことは十分承知いたしておりますけれども、それでもまだ依然として長期化する
裁判
が少なくないのが
実情
だと思います。 つい最近も、オウム真理教による一連の
事件
の首魁とされる教祖、
麻原彰晃
こと
松本智津夫被告
の
論告求刑公判
が開かれたばかりですが、
求刑
までに初
公判
から七年、逮捕からですと八年が既に経過しております。来年の早い
段階
で
判決
が言い渡される見通しとはいえ、極刑が予想される
事件
だけに控訴、上告が当然見込まれるところであり、
確定判決
が下されるまでには優に十年以上の
年月
を要することは必至の情勢であります。 御承知のように、刑法には
公訴時効
の規定があり、
年月
の経過とともに
法的安定性
が回復されたり、
証拠
が散逸することなどを
理由
に
刑罰権
が消滅するとの
考え方
が定着しております。
時効期間
は、
死刑
の場合、犯行時から十五年です。その
時効成立
に匹敵するような
年月
をかけなければ
確定判決
が得られない
刑事裁判
が
法治国家
においてまかり通っている
現実
は、不可思議であり、理不尽としか言いようがありません。
被害者救済
の
観点
からも、
司法
にはでき得る限り早い決着が求められております。
事件
の
被害者
や最愛の家族を失った遺族の
方々
が、遅々として進まぬ
裁判
をどのような気持ちで見守っているかと考えただけで心が痛みます。 それなのに、
法曹関係者
の間では、
松本被告
の
事件
については、十三
もの罪
で
起訴
され、しかも
被告人
が否認している割には
裁判
の進行がスムーズだとする見解が少なくないのが
実情
なのですから、
一般
の
市民
としては、いよいよやりきれません。 こうした
法曹人
と
一般市民
との
意識
の乖離の解消こそ、現在
政府
が進めている
司法制度改革
の中で真っ先に
解決
されねばならない問題であります。そのためにも、
裁判
の
迅速化
は避けては通れない問題です。
政官財界
を巻き込んだ戦後
最大級
の
疑獄
とされる
リクルート事件
の主役、
江副浩正被告
の
公判
も、
起訴
から一
審判決
まで十四年がかかりました。一国の首相を退陣に追い込んだ
疑獄
にもかかわらず、
事件
の風化が叫ばれる中での断罪となったことは、返す返すも残念でなりません。
汚職事件
で期待される一罰百戒の効果も、長引いた
裁判
のおかげで薄らいでしまったと言わざるを得ません。 一昨年の
データ
によりますと、
刑事訴訟
全体の
平均審理期間
は三・三カ月で、
否認事件
に限っても九・七カ月となっております。また、
審理期間
が二年を超した
事件
は、
被告人数
にして〇・四%にすぎないそうです。 この
数字
を根拠に、
裁判迅速化法案
に対しては
立法
事実がないとの反論があることを承知いたしておりますが、だからといって、決して
刑事裁判
が全般的に
迅速
に処理されているわけではないことに御注視いただく必要があると思います。
刑事事件
の圧倒的多数を占めているのは、窃盗、
覚せい剤取締法違反
など、言ってみればありふれた犯罪です。これらは、法の適用などに大きな問題があることは少なく、基本的には
開廷回数
が二、三回で
判決
が言い渡されております。
自白事件
の
平均開廷回数
は、一昨年の場合、二・四回だったとの
データ
もございます。 しかしながら、
新聞
、テレビのニュースをにぎわし、
社会
の関心を呼んだ
事件
についての
裁判
は決して速やかには進行されておりません。
起訴
後、初
公判
までの
準備期間
に半年、結審後、
判決
までに半年はかかるのが常ですし、
死刑
が予想されるような
凶悪事件
で
被告人
が否認したり、
政治家
の
汚職事件
では、
審理期間
が優に一年を超しています。いわゆる大
事件
の
裁判
では、
法案
が目安とするところの二年間をクリアしていないケースが少なくないのです。 結局、圧倒的多数を占めるありふれた
事件
の
裁判
が短期で終わるために、全体の
審理期間
の
数値
を押し下げておりますが、注目すべき
事件
の
公判
ほど長期化しているわけです。和歌山の
カレー事件
の
裁判
も、既に初
公判
から三年七カ月が費やされております。
民事訴訟
でも、似たような
傾向
が指摘できようかと思います。 一昨年の統計では、
民事訴訟
全体の
平均審理期間
は八・五カ月であり、事実
関係
に
争い
があって
証人調べ
が行われたような
事件
に限っても十九・二カ月で
審理
が終了しております。
審理期間
が二年を超えたものは全体の七・二%にすぎません。 そこで、
刑事訴訟
同様に
立法
事実がない、わざわざ
裁判迅速化法
をつくる必要はないとの
意見
も生まれるわけですけれども、これも、
争い
の少ない
事件数
が大多数を占めているがために、
平均審理期間
の
数値
を引き下げていることを見逃してはなりません。
医療過誤
や
建築関係
の
訴訟
など判断に
専門知識
を必要とするような
事件
では、
裁判
が長期化する
傾向
が否めません。
口頭弁論
を傍聴しますと、
審理そのもの
で時間がかかるというよりも、
弁護士
らの多忙を
理由
に
裁判
が遅延する
傾向
もうかがえます。 と申しますのも、
裁判長
が
原告
、
被告双方
の代理人の
弁護士
の都合を聞きながら次回
口頭弁論
の
期日
を決める際のことですが、
双方
が不都合を連発するために、たちまち次回
期日
が一月も二月も先に設定されてしまうことが珍しくありません。
法曹関係者
、とりわけ一部の
弁護士
が、
裁判
を
スピードアップ
しようとの意欲を欠いており、そのために
裁判
が長引く
傾向
も否定できないと思います。
民事訴訟
の場合は、
紛争
の
当事者
に、我が国の
裁判制度
がはなから期待されていない
側面
があることも見逃すわけにはいきません。よい例が、貿易に絡むトラブルが起きた場合、
大手企業
の
訟務担当者
の多くは、
相手
が
外国企業
ならば、
日本国内
で
訴訟
を起こすことにこだわらない。
訴訟システム
についての
知識
があり、
弁護士
の
選任
が容易な
米国
などならば、むしろ
相手国
での
裁判
を優先するとさえ言われております。
日本
の
裁判
は時間がかかり、
弁護士費用
もかさむから、
米国
などで争った方が得策という
考え方
ですが、
法治国家
の
国民
が自国での
裁判
を選ぶことにちゅうちょしている
現実
は明らかに異常ですし、情けないことでもあります。その昔、
先達先哲
が
裁判権
を獲得するために重ねた労苦を踏みにじる行為とも言えましょう。自
国民
から
信頼
されぬ
裁判制度
は抜本的に問い直されてしかるべきなのです。
国内
での貸し金や手形をめぐる
紛争
では、本来
原告
となるべき
立場
の人や
企業
が、
解決
を
裁判所
に求めず、
サルベージ屋
と言われる
取り立て業者
に
債権
の
回収
をゆだねる
傾向
があることもゆゆしき問題です。
一般
に、
サルベージ屋
は
債権額
の半額を
手数料
としていると言われます。つまり、百万円の
回収
を頼み、うまく
回収
できたところで、
債権者
には五十万円しか入らない。それでも、いつ終わるかわからない
裁判
で
争い
、
弁護士
に
報酬
を支払うよりはましだとの考えが広がっているわけです。 当然のことながら、
サルベージ屋
の多くは
暴力団
と何らかの
関係
があると言われておりますが、
バブル経済時代
には、名の通った
企業
までが、みずからの利益のために
サルベージ屋
を頼み、結果的に
暴力団
につけ入るすきを与えたり、
経済やくざ
と呼ばれる
暴力団
を肥え太らせる役割を果たしてきたと指摘されております。一部
企業
と
暴力団
との間には昔からのくされ縁もあり、すべてが
裁判
のあり方に起因しているとは申しませんが、
裁判
が
信頼
されていないために、結果的に
アングラ勢力
を助長してきた
側面
も否定できないと思います。
市民感覚
で申せば、
裁判
がどのぐらいの
期間
で決着するのか、あらかじめ提示されないと、不安で
提訴
がしにくいものなのです。長引けば、その間いろいろと煩わしい思いをしなくてはならないというばかりでなく、
費用
もかさむと考えられているからです。 その
意味
でも、
裁判迅速化法
によって大方の
裁判
が
スピードアップ
することになれば、
裁判所
は
信頼
を回復することが可能だと考えます。一
審判決
まで二年というめどについては、一年については
審理不尽
となる
事件
が少なくないように感じられますし、三年となれば
迅速化
にならないと映ることを勘案すれば、妥当な線と言ってよかろうかと思います。 もちろん、
迅速化
に重きを置く
余り
、
審理
や
証拠調べ
が不十分な
手抜き裁判
がまかり通るようでは言語道断です。
裁判所
はかえって
国民
の
信頼
を失うこと必定です。昨今、
訴訟件数
の増加を背景に、
証人調べ
や
鑑定
が十分に行われていないとの批判もあるだけに、
日弁連
などが、
迅速化
ではなく
拙速化
だと懸念するのは無理からぬところです。
法案審議
に当たっては、
迅速化
と
充実化
がセットにされねばならないことを改めて確認しなければなりません。 要するに、黒白のはっきりしている
事件
はいたずらに
審理
が引き延ばされないように努める、
争い
が
複雑多岐
にわたり、二年では到底終結しない
事件
は、長期化することを明確にし、あらかじめ
判決言い渡し
の
予定期日
を示すことが肝要と考えます。二年は大切な
努力目標
ではあるが、
拙速
を招く懸念があればこだわらないというのが原則でなければならないと思います。もっとも、上訴を踏まえれば、一審の二年という
期間
も決して短くはないということも忘れては困ります。
裁判
の
迅速化
を図るには、何よりも
法曹人
の
意識改革
が必要です。
松本被告
の
事件
で七年で
論告求刑
まで行けば上々という浮世離れした
感覚
は改めてもらわなくてはなりません。その上で、
裁判所
の
体制
や
訴訟
の進め方の
改革
を進めなければなりません。
現状
のままで
スピードアップ
だけを目指せば、それこそ
拙速化
を招きます。 何はさておき、
裁判官
の
大幅増員
が不可欠です。
東京地裁
の場合だと思いますが、
裁判官
一人の
手持ち事件
が
平均
百八十件にも達しているようなありさまでは、遅滞は避けられません。もちろん、
裁判官
だけでなく、それに伴って、検事、
弁護士
もふやさなければなりません。
裁判所
の運営にも
工夫
が必要で、今後、
刑事裁判
に
裁判員制度
が
導入
され、職業を持つ
市民
が
裁判
に参画することを考えれば、現在のように土曜、日曜、祝日に
開廷
しないでいてよいとも思えません。休日
開廷
は、夜間の
審理
とともに、検討すべきテーマと思います。
刑事訴訟
については、
刑事訴訟法
の
改正作業
が始まっていますが、
迅速化
のために、初
公判
前に
争点
を整理し、
当事者
間で立証、反証の
計画
を明らかにする
努力
が必要だと思います。 また、
否認事件
の多くで
自白調書
の
信用性
が争われている
現実
に照らせば、取り調べ室にビデオカメラを持ち込み、取り調べの
状況
を撮影して
透明化
を図るといった
工夫
も求められます。
検察庁
でもいろいろと検討されているようですが、
捜査段階
からの思い切った
改革
が不可欠です。
民事訴訟
では、
提訴予告通知制度
の新設などが検討されておりますが、
当事者
が事前に
証拠
を開示し合う
システム
や、ADR、
裁判手続外
の
紛争解決手段
の
導入
なども推進して、全体の
訴訟件数
を抑制する
工夫
も欠かせないと思います。
裁判所
の敷居を低くするためには、
提訴手数料
の引き下げ、
弁護士報酬
の
明瞭化
などもあわせて進めなければなりません。 結局、
裁判迅速化法
は、
裁判
の
スピードアップ
を図るための
基本方針
を定めたものにすぎないと位置づけられねばなりません。
刑事訴訟法
、
民事訴訟法
など
関係法令
の
改正
、
整備
、さらに、
法曹人口
の
大幅増員
などの
司法制度改革
と相まって、初めて
裁判迅速化
は
実現
へと動き出すのです。 私は、
司法改革
は
富士登山
のようなものだと考えています。吉田口、須走り口など数ある
登山口
のどこから登ろうが、登りきわめれば同じ頂上にたどり着く。
ロースクール開設
という
登山口
から登っても、
裁判員制度導入
という
登山口
から登っても、
目的
とする山頂は
裁判
の
民主化
であって、
法曹人
に専横的にゆだねられてきた
裁判
を
市民
に開かれたものに改めることであらねばならないのが
改革
の定めです。どのコースをたどろうと、
登山
中は、
裁判
を
市民
のものとするための
努力
が求められているのだと思います。
裁判迅速化法
もまた、
司法制度改革
につながるメーンの
登山口
の一つだと思います。目指すのは
スピードアップ
のようでありながら、実際に求められているものは、閉ざされていた
裁判
を
市民
に大きく開くための
努力
であると思います。 その
意味
でも、最後になりましたが、
法案
で
最高裁
が行うことになっている
検証
につきましては、
法曹人
だけにゆだねるのではなく、
一般
の
市民
の目でも、
迅速化
が
関係者
の怠慢の隠れみのにされていないか、
迅速化
をさらに推し進めるために講ずるべき手だてはないかといったことを点検する
システム
を確立することが肝要だと思います。 以上で終わります。(拍手)
山本有二
5
○
山本委員長
ありがとうございました。 次に、
杉井参考人
にお願いいたします。
杉井厳一
6
○
杉井参考人
日弁連
の
司法改革実現本部事務局長
をしております
杉井
でございます。よろしくお願いいたします。
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
外二案についての
意見陳述
ということですが、特に今申し上げた
裁判迅速化法案
に
中心
的に
意見
を申し上げさせていただきまして、あとは
質疑
に応じさせていただいて、
民訴法改正
、
人訴法
などについて述べさせていただきます。 まず第一に申し上げたいのは、この
裁判迅速化法案
につきましては、
裁判
の適正、
充実
と
迅速化
を一体として
実現
する
法律
に修正していただきたいという点であります。
日弁連
は、このたびの
司法制度改革
に当たりまして、
司法制度改革推進本部
が
審議会意見書
に基づいて行う諸
立法
を積極的に推進する
立場
で取り組んでおります。
司法制度改革推進法
は、
推進本部
の行う
司法改革立法
について、
司法制度改革審議会
の
意見書
の趣旨にのっとって行われる
司法制度改革
と基盤の
整備
と定めております。すなわち、
推進本部
の立案する
立法
は、
審議会意見書
にのっとったものであることが必要であります。 ところで、
審議会意見書
は、お
手元
の
参考資料
五号の十五、二十四ページにありますように、
民事裁判制度
については、まず適正、
迅速
かつ実効的な
司法救済
という
観点
から
民事裁判
を
充実
、
迅速化
すること、あるいは、
刑事司法
の
目的
は、公正な
手続
を通じて事案の真相を明らかにし、適正かつ
迅速
に
刑罰権
の
実現
を図ると述べています。また、同じ
資料
の二十八ページには閣議決定された
司法制度改革推進計画
がありますが、
民事司法制度
の
改革
も
刑事司法制度
の
改革
も、いずれも第一は「
民事裁判
の
充実
・
迅速化
」「
刑事裁判
の
充実
・
迅速化
」とされております。 さらに、同じ
資料
の六十四ページに
審議会会長
で
推進本部顧問会議座長
の
佐藤幸治先生
の
新聞インタビュー
が載っておりますが、「
充実
と
迅速
は表裏一体の
関係
にあり、決して矛盾するものではない。
充実
なくして
迅速
なし、
迅速
なくして
充実
なし。」と述べておられます。
充実
と
迅速
は相反するものではありません。
充実
をこの
法案
に入れたら
迅速
があいまいになるというものでもありません。ぜひ
法案
一条の
目的条項
の「
迅速化
」を「
充実
・
迅速化
」という形に修正いただくようにお願いしたいと思います。 二番目に、長期化している
裁判
を
充実
、
迅速化
するためには
司法インフラ
の
拡充
と
法制度
の
整備
、
改革
が不可欠であることについて申し上げたいと思います。 この点では、まず
裁判
の
審理期間
について正確な
現状
を認識いただいて、これに基づいて
裁判
を
充実
、
迅速化
する
方策
を立てていただきたいと考えます。 今の
三木参考人
からも御
意見
がありましたが、マスコミなどによって取り上げられる
事件
は、
社会的影響
の大きな
事件
です。したがって
長期裁判
が多いことから、
一般
には
裁判
は長いものだというふうな印象を与えています。しかし、多くの
裁判
は
迅速
に
解決
されております。
資料
の六十一、二ページにありますように、世界的に見ても決して長いということはありません。二年を超える
事件
は、先ほども話がありましたが、
民事事件
で七・二%、
刑事
で〇・四%というわずかな
事件
です。 もう一つ注目していただきたい
数字
は、
資料
の一ページにありますが、
民事事件
の全
事件
の
平均審理期間
は、
平成
十四年には八・三カ月、十年前に比べて約二カ月短縮しております。また、
人証調べ
をした
民事事件
、つまり
争い
のある
事件
の
審理期間
の
平均
も十九カ月です。
刑事事件
では、
平成
十四年の全
事件
の一
審平均審理期間
は三・二カ月になっています。つまり、すべての
事件
を
平均
しても、既に
審理期間
は二年を大幅に下回っていて、しかも
短縮化
の
傾向
にあることは間違いない事実であります。 このような
審理期間
の
短縮化
は
関係者
の
努力
や
工夫
によるもので、歓迎すべきものではありますが、他方で、
運用改善
だけによる
審理期間
の
短縮化
を図る
余り
、
裁判
の適正、
充実
や
当事者
の
納得
のいく
裁判
という点では弊害が生じていることも事実です。この点は、お
手元
にお届けいたしました当
連合会
の作成した
資料
集六ページにおいて、大阪における例を挙げて具体的に説明しております。
一言
で言えば、
事件数
はふえて
裁判官
の数は減る中で
審理期間
が大幅に短くなっているというものです。
本人尋問
や
証人尋問
をしない
事件
がふえ、
検証
と
鑑定
は三分の一になった、
裁判
の
手抜き
による
迅速化
ではないかという御
意見
であります。
裁判
の中には、どうしても時間のかかる
事件
があります。これは、
医療過誤訴訟
や
建築紛争
、
知的財産権訴訟
、そして公害や薬害、
原発訴訟
、
行政相手
の
訴訟
などをお考えいただければわかると思います。もともと多数の
当事者
がいたり、複雑、専門的な
事件
ですので、当然に多くの時間がかかります。のみならず、
証拠
が偏在しているということで実質的に
当事者
が対等でないという
状況
の中で、できるだけこれを平等に扱う配慮が必要です。これらの
事件
を一律に二年以内のできるだけ短い
期間
内に終わらせるということにすれば、
当事者
の
納得
が得られないだけでなく、正義に反する
結論
あるいは間違った
結論
を導く
可能性
があります。 私どもは、このような長期化している
裁判
をまず
充実
、
迅速化
する
方策
を具体的に定めていただきたい。この
法律
はそういう
法律
であるべきだと思います。 まず第一に、先ほど
三木
さんも言いましたが、
裁判官
、
検察官
の
増員
を初めとした
裁判所
、
検察庁
の人的、
物的体制
の
拡充
をして、
体制
的に
充実
、
迅速化
できることにすることが不可欠です。 第二に、
証拠
の偏在を正す
法制度
の
整備
、
改革
が必要です。
民事裁判
でいえば、
民事訴訟法改正
で検討されている
提訴予告制度
に基づく
証拠収集活動
に加え、
文書提出命令
の
改正
、あるいはさらなる
証拠収集手続
の
拡充
が必要です。
刑事裁判
でいえば、
検察官
の
手持ち証拠
の開示によって
争点整理
を
充実
すること、あるいは
捜査
の
可視化
による
捜査機関
の作成する
調書
に関する
争い
をなくしていくこと、
公判中心主義
に基づいた
調書
に頼らない
審理手続
に変えることなどが
法制度改革
の
中心
だろうと思います。 そういう
意味
で、この
法律
は、
裁判
を
充実
、
迅速化
するための
裁判所
、
検察庁
の
司法インフラ
の
拡充
と
法制度
の
整備
、
改革
を、少なくとも第二条の
期間目標
の施行と同時に実施していただく
法律
にする、そのための条文を法文上に明らかにしていく必要があろうと思います。 三番目は、
当事者
の責務規定の削除の問題であります。
法案
二条一項は、第一審の
訴訟
手続
については二年以内のできるだけ短い
期間
内にこれを終局させることを
迅速化
の目標としていますが、この
期間目標
をすべての
裁判
にしゃくし定規に当てはめるということでは、
審理
不十分なまま切り捨てるという大きな弊害が生ずるおそれがあります。特に二条一項の
裁判
期間
の目標が、第六条の
裁判所
の責務、第七条の
当事者
等の責務の規定に取り入れられて、これらの責務とされている点についてはさまざまな問題があります。
法案
の六条は、受訴
裁判所
は可能な限り
裁判
の
迅速化
に係る第二条第一項の目標を
実現
するよう努めるものとするとしています。他方、本日審議されている
民事訴訟法改正
案では、複雑な
事件
などにおいて
裁判所
は
審理
計画
を定めなければならないということになっています。そして、これに反した攻撃防御方法を却下できることになっています。この二つの規定の
関係
はどうなるのでしょうか。少なくとも民訴法上の
審理
計画
の運用に当たっては、
裁判所
が本
法案
六条に定められた責務を盾にして、
事件
の内容にかかわりなく、すべての
事件
に画一的に二年以内のできるだけ短い
期間
に
判決言い渡し
までできる
審理
計画
を立てるようなことがあってはならないと思います。そのための具体的な手当てをしていただく必要があります。
当事者
の責務の問題に関して
法案
七条は、
当事者
、代理人、弁護人は可能な限り
裁判
の
迅速化
に係る第二条一項の目標が
実現
できるよう
手続
上の権利は誠実にこれを行使しなければならないとしています。これは
立法
当局の御説明にあるように、刑訴規則一条二項の、「
訴訟
上の権利は、誠実にこれを行使し、濫用してはならない。」及び民訴法二条の、「
当事者
は、信義に従い誠実に
民事訴訟
を追行しなければならない。」を取り入れた規定です。 御案内と存じますが、この刑訴規則と民訴法二条の規定は
訴訟
法上の信義則規定と言われ、既にこれまで、具体的な要件のもとに、申し立てや攻撃防御方法の却下など、具体的な法的効力を認める
判決
も出されています。刑訴規則一条二項については、
最高裁
の確定した判例もあります。そういう
意味
では、本
法案
七条が、右の刑訴規則一条二項と民訴法二条における
当事者
の信義誠実義務に関する新たな要件を定めることにならないか、このような点が心配になります。この点の手当てが必要です。 なお、
立法
当局は、本
法案
七条の合憲性について、この規定は刑訴規則で既に定められているから問題ないというふうに答弁していますが、しかし、刑訴規則一条二項は抽象的な信義誠実義務を定めているだけですが、本
法案
七条は、これに「
迅速化
に係る第二条第一項の目標が
実現
できるよう、」という具体的な期限目標を
実現
することを誠実義務の中身としていますので、刑訴規則の規定をはみ出した部分があります。したがって、刑訴規則一条二項が既にあるからというのは合憲性を説明する
理由
にならないと思われます。 この規定は、
証拠
が一方の
当事者
に偏っているさまざまな
事件
の
当事者
や、
死刑
判決
も考えられる重罪
事件
で無罪を主張する
被告人
、そしてこれらの弁護人、代理人に対して極めて過酷な
裁判
を強いることになります。したがって、
日弁連
は、少なくとも
当事者
に対してこのような責務を課すということはぜひやめていただいて、削除していただくようにお願いしたいと思います。 最後に、八条の
検証
規定ですが、
検証
は今後大変重要な制度となると考えます。したがって、これは
最高裁
だけでなく、
裁判官
、
検察官
、
弁護士
、学識経験者から成る機関を設置して、しかも内容については、
裁判
の運用面だけでなく制度や
体制
面の
整備
状況
を含めて、総合的、多角的、客観的になされるような必要があります。 私たち
日弁連
も、この
法律
が成立すれば、五条によって
弁護士
の
体制
の
整備
について責務を負うことになりますから、そういう
意味
では、
検証
の
当事者
の一人としてぜひ参加させていただきたいと思います。
裁判
の独立を確保する上で
最高裁
がこれを行うのが当然であるとか、進行中の
裁判
資料
を外部に出すわけにいかないという御説明がありますが、個別の
裁判官
や
裁判
体の具体的な
裁判
の
状況
を
検証
する場合、
最高裁
であっても
裁判官
の独立を侵さない調査の仕方が必要です。逆に、
検証
の対象は現在進行中の
事件
だけでなく、制度、
体制
の
充実
度や
裁判
を利用する
市民
の満足度などに及ばなければなりません。そういう
意味
では、法曹三者はそれぞれの
立場
から、また学識経験者は
裁判
を利用する
市民
の
立場
から、
検証
に参加していただく必要があろうと思います。そういう
意味
では、ぜひ、この
検証
につきましても、今言った趣旨の
法案
を修正していただくようにお願いいたします。
民訴法改正
、
人訴法
の問題につきましては、別紙のレジュメを用意させていただきましたので、これをごらんいただくことによって御質問があればお答えすることにして、私の
意見陳述
を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
山本有二
7
○
山本委員長
ありがとうございました。 以上で
参考人
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
山本有二
8
○
山本委員長
これより
参考人
に対する
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。星野行男君。
星野行男
9
○星野
委員
自由民主党の星野行男でございます。 両
参考人
には、ただいま貴重な御
意見
を賜りまして、まことにありがとうございました。
裁判
の
迅速化
に関する問題点を余すところなく摘出をし、それぞれ御見解をお示しいただいて、質問は蛇足にすぎないという感じもいたしますけれども、何点か御質問させていただきます。 御案内のとおり、
裁判所
において
裁判
を受ける権利は憲法が保障しているところでございますが、
一般
国民
は、権利や利益が侵害されても、
裁判
においてこの救済を求めるということについては、お金とそれから時間の
関係
でしり込みをし、泣き寝入りをする場合が多いのでございます。 このうちお金、すなわち
裁判
費用
につきましては、
法律
扶助制度の
拡充
等によりましてかなり改善されていると思いますが、
裁判
に時間がかかるということは
国民
の
一般
的な認識であろうかと思うのであります。 ところで、お話のございましたように、地方
裁判所
第一審
訴訟
の
現状
は、
平成
十三年度の実績で見ますと、
平均審理期間
が、
民事事件
では八・五カ月、
刑事事件
では三・三カ月と、欧米諸国の第一審
訴訟
の
審理期間
と比較をいたしまして決して遜色はないのでありますけれども、目まぐるしく時代が変化し、あるいは
国民
の権利
意識
が高揚されている中で、
迅速
な
裁判
に対する
国民
のニーズ、期待が高まっていることも事実でございます。また、お話がございましたように、公害
訴訟
とかあるいはオウム
裁判
等々、民事、
刑事
で非常に長く時間がかかっている
事件
があることも事実でございます。 そういう
状況
の中で、
裁判
を可能な限り
迅速
にやるということについては、憲法の要請でもあり、特に
刑事
被告人
については、公平な
裁判所
の
迅速
な公開
裁判
を受けるということは、これは権利として保障されるところでございます。そういうことで、小泉内閣の構造
改革
の一環といたしまして、
司法制度改革
、なかんずく
裁判
の
迅速化
を進めよう、こういうことで、今回の
裁判
の
迅速化
に関する
法案
が提出をされ審議されている、こういう
状況
でございます。 両
参考人
にお伺いいたしたいのは、こういう
裁判
の
迅速化
の必要性、そしてまた
迅速化
を妨げている原因は一体何であるか、その二点につきまして、それぞれもう一度お話をいただきたいと存じます。
三木賢治
10
○
三木参考人
私は、もう一つ大事なことは、今実際に
日本
で起きている
訴訟件数
だけでなくて、もう少し潜在的な
紛争
の実態について検討してみる必要があろうかと思っております。 確かに今、
数値
的には欧米に比べても
裁判
が比較的スムーズにいっているような印象を受けますけれども、先ほども申しましたように、この
社会
の中に潜在的に潜んでいる
紛争
というのは、今の実際の
訴訟件数
の倍や三倍どころではない。実際には
紛争
を抱えていながら、
裁判
に頼る人が限定されている、あるいは、知り合いに
弁護士
もいないような方は、民事
紛争
を抱えても、どこへ相談していいのかわからない。 もちろん、
弁護士
会はそれぞれに相談窓口を設けて受け入れ方に
努力
をされていることは承知しておりますけれども、
一般
の人にとってみれば、知り合いのない
弁護士
事務所の門をたたくというのは、高級すし屋で時価のおすしを食べるような思いでありまして、なかなか勇気を持って
弁護士
を頼むことができない。そういった潜在的な
紛争
をすくい上げて、不幸にして起きた不幸は
司法
によって
解決
していくんだというのが民主主義
社会
の根幹の
考え方
であろうかと思います。 その
実現
のためには、やはり、まず、
裁判
というのは短
期間
で済むものである、
裁判
費用
もリーズナブルなものしか必要としないで
解決
できるんだ、間違っても
暴力団
などに取り立てを頼んではいけないんだという
社会
共通の常識をもう一度確認していくような手だても必要になるわけですが、その基本的な
努力目標
として、まず、
裁判
はスムーズに終わるんだということを印象づける、そして
紛争
の掘り起こしを図って
司法
での
解決
を広げていく、ここに
目的
があるのではないか、このように考えております。
杉井厳一
11
○
杉井参考人
先生がおっしゃられたとおり、
裁判
の
迅速化
ということは私ども大変重要な課題だと思っています。
法律
に書かれた権利も、それが
現実
にならなければ絵にかいたもちだと言われますが、そのとおりであります。しかし、また一方で、先ほど申しましたように、
裁判
は適正、
充実
してなされなけりゃいけない、この二つの要求をやはりきちっと一体のものとして
実現
する、それが
裁判制度
であろうと私ども考えております。 やはり長期化する
裁判
というのは、この
委員会
でも御議論されているようですが、類型的には大体わかっております。
最高裁
の御説明でも、民事であれば、先ほど言いましたような
証拠
の偏在している
事件
、公害とか
行政相手
の
事件
とか労働
事件
とか、そういう
事件
がありますし、
刑事
でいけば、
否認事件
の重罪
事件
であります。 先ほど
三木
さんの話もありましたが、全体としては短くなっているんですが、こういう長期にかかる
事件
というのは、やはりそれだけの制度的な、また人的、物的、
体制
的な手当てをしなければ、すぐにはいかない問題があるわけですね。ですから、私どもとしては、先ほど申し上げたように、
充実
して
迅速化
していくということと同時に、長期化している
裁判
、それに対応する制度的な、また人的、物的な
体制
をつくる、そのことが必要だというふうに考えて申し上げているつもりでございます。
星野行男
12
○星野
委員
裁判
の
迅速化
の問題につきましては、お話がございました
充実
した
裁判
を
迅速
にやるということでございますが、しかし、
裁判
の
充実
と
迅速
は一体として考えなきゃなりませんけれども、
現実
的にはやはり矛盾するような要素を含んでいる、こう申し上げても過言でないと思うのであります。
事件
は激増しております。しかもまた、非常に処理の難しい
事件
もふえているわけでありますが、そういう中で、
裁判官
、
検察官
の
増員
がなかなか思うように進んでいない。 御案内のように、
裁判官
の定員は、判事、判事補の合計で十年間で二百八十七人、増加率が一二・五九%、
検察官
も、検事、副検事合わせて十年間に三百人、増加率が一一・三一%ということであります。 こういう
法曹人口
の
増員
ということはどうしても必要であろうかと思うのでありますが、このこととあわせましてもう一つは、
裁判
の
迅速化
で、
手続
面での、今回
民事訴訟法
の一部
改正
が提出されておりますけれども、その中で注目すべき
工夫
がなされておりまして、御案内のように、いわゆる
計画
審理
、
当事者
の協議によってあらかじめ
口頭弁論
の終結と
判決
の言い渡しの予定時期を定めるというようなこと、あるいは
起訴
前の
証拠
収集を可能にする
提訴予告制度
、それから
裁判官
を補佐する専門
委員
の制度、これらを
導入
するということは極めて重要なことではなかろうか、こんなふうにも考えておりますが、
裁判
の
迅速化
のための今回の
民事訴訟法
の
改正
につきまして、御見解を承っておきたいと思います。
三木賢治
13
○
三木参考人
この間、
最高裁
を先頭に、随分少ない人数の
裁判官
をやりくりしながら増加する
紛争
に対する処理をスムーズにしようという成果は随分上がってきている、それが先ほど来の
数値
だと思います。 具体的には、知的所有権の問題とか、破産法の
関係
だとか、そういった専門部を
東京地裁
に集中させて、そこに
裁判官
を集めて処理をてきぱきとしていくような形で処理を進めてきた。これで大いに成果が上がっているわけですが、一方で、全体の
裁判官
の数が限られているものですから、例えば地方の支部の
裁判官
が一人で何百件も
事件
を抱えるというような
状況
になっている。全国的に見るとそういったアンバランスも出ていて、やはり人数をたくさんふやしていかなきゃ
解決
できないんだと思っております、基本的には。 しかしながら、
迅速化
と
充実化
というのは必ずしも相反する理念だとは私は思っておりません。というのは、今までの
日本
の
裁判
のあり方というのは、限られて特権的だと自認している法曹界の法曹三者が、自分たちででき得る限りの
裁判
だけをこなしていけばいい、
市民
のニーズよりも自分らでこなせるもの、こなせるキャパシティーが先にあって進められてきたのが今までの
裁判
のあり方だ。それを本来
市民
のニーズに合わせる形に変えていこうというのが
司法制度改革
のあり方だと思うわけで、これまで、自分らだけでこなしていけばいいというためにスピード化も重視しない、先ほども申したように、民事の
口頭弁論
の
期日
は本当に二月先になり、三月先になるような、僕らからすればスローモーな
審理
展開をしてきたところがあるわけです。その辺の
意識改革
をすることによって、必ずしも
充実化
と
迅速化
は相反しない。 さらに、
民事訴訟法
の
改正
によって、
訴訟
のあり方をやはりリーズナブルに、
市民
の目にもわかるような形にしていくことが必要であろうか。今までの
訴訟
を見ておりますと、どこか
当事者
同士がお互いに隠し球を持っている、その隠し球をどこで出そうかというような
裁判
の
争い
方をよく目にしてきました。これからはそういう時代じゃない。持てる
証拠
はお互いに、
刑事
も同じことでありますが、あらかじめ持てる
証拠
は出し合ってむだな
争い
はしない、限られた
争点
の中できちっとした
審理
を尽くしていく形に変えていくということだと思いますし、その
意味
で今回の民訴法は、まだまだ不十分だと思いますが、一つの道筋を立てる
改革
になろうかというように理解しております。
杉井厳一
14
○
杉井参考人
私も、先生がおっしゃられたように、
充実
と
迅速
というのは矛盾する要素がないというわけではないのですが、
裁判
においてはその両者をどうしても両立させる、そういう
手続
がやはり必要であって、私どもとしては、
充実
、
迅速
を本当に一体化させるためには、先ほど言った制度、それから人的
体制
、
物的体制
、こういうのも
整備
しつつ
充実
して、しかも速くやれる、こういうことをやる必要があろうというふうに考えておりますので、そういう面では、矛盾させてはならない、こういうふうに考えております。 それから、
民訴法改正
の点につきましては、今回の
民訴法改正
、先生がおっしゃられたような、かなり
証拠
収集の点でも専門
委員
の点でも、長期化している
裁判
に対する対応としてのものは持っています、前進面があると思います。 ただ、やはりこの
民訴法改正
は今回の
迅速
法を考えてつくったものではありませんので、今言われたように、一定の、まだこれからもっと進めなきゃいけない面がある。例えば、
提訴
前予告制度についても、これは
裁判所
が関与するようになったという面では前進面なんですが、もうちょっと実効性を持つ、強制力を持つという面でいえば、アメリカのディスカバリー制度なども含めて、そういう方向に向かった検討がやはり必要ですし、
文書提出命令
などについてももっと実効性を持たせることが必要だろうと思います。ですから、もうちょっと、試行錯誤的ですが、進めなきゃいけない。 それから、人的な点について申しますと、私ども、お
手元
に、
裁判官
の倍増
計画
というのをつくらせていただきました。これを見ていただければ、
日弁連
は各地裁、本庁、支部ごとにこれだけふやしてほしいというのを具体的につくっています。 私どもとしては、こういう地図をつくることによって、各地の住民の皆さん方の要望に応じた
裁判官
を各地で確保して広げていくということをやはり
最高裁
にもやっていただきたい、
計画
的に、年次的に
裁判官
をふやすということをぜひ
実現
していただきたいと考えておりますので、おっしゃるように、ぜひ御
努力
をしていただきますとありがたいと思っております。
星野行男
15
○星野
委員
どうもありがとうございました。
山本有二
16
○
山本委員長
次に、日野市朗君。
日野市朗
17
○日野
委員
民主党の日野でございます。よろしくお願いします。 今、お話を伺っておりまして、特に
三木
さんのお話を伺っておりまして、
三木
さんが
一般
の人を代表しておられるというふうに考えてみますと、これほどまでに不信は根深いのか、
裁判
に対する不信は根深いのかというふうに思ったんですね。私なんかも、考えてみますと、
裁判
をできるだけ
迅速
にということでは人後に落ちず頑張ってきていたと思います。しかし、
三木
さんのお話を伺っておりまして、とてもとても、次元が違うくらいの
考え方
の乖離というものがそこにあるという感じがいたします。 我々、随分
努力
しているんですね。例えば、
サルベージ屋
というお話が出てまいりましたが、これだって手形
訴訟
で一カ月以内に決めてしまうというような
努力
もしておりますし、それから
法曹人
の不足ということについても、
司法
書士さんにも今度は簡裁の
事件
については参入していただくとか、それからいろいろな
努力
をこうやってやってきているんですが、そういった
努力
の延長線上ではとてもこの
裁判
のおくれという問題を
解決
できないというふうにお考えなんでしょうか。 この問題については、私、非常に不満です。
裁判官
が少ない、法廷も少ない。
日弁連
でおつくりになった「
裁判官
増員
マップ」、それから
検察官
、「検事
増員
マップ」ですか、これなんかを見ると、人的な不足というのは目を覆うばかりですね。 しかし、こういうことをいろいろと問題化しながら、人もふやしていく、それから法廷なんかもふやしていく、そしていろいろな人が、例えば
司法
書士さんの簡裁
事件
への参入であるとか、いろいろな
努力
がなされておりますが、その延長線上では、
三木
さんが持っておられる問題
意識
、これを
解決
することはできないとお考えですか。
三木賢治
18
○
三木参考人
私は、
解決
できると思って、今こそこの
政府
が進めている
司法制度改革
に大いに期待しているところなわけですが、これまでの
裁判
で、
法曹関係者
が今まで例えば惰眠をむさぼっていたという印象を受けているわけではない。それなりに一生懸命
改革
を続けてこられたんだけれども、やはり権威によって裁くという印象が
一般
の
市民
にはまだまだ根強い、特別なものであって自分たちの
裁判
ではないという
意識
が根強く横たわっているのが、
裁判所
の敷居を高くしている一因なんだと思うんです。 かつて、権威で裁いていた時代はそれでよかったんでしょうが、今ちょうど過渡期だと思いますし、これまで、例えば、
裁判所
よりも
サルベージ屋
が頼まれてきた
現実
の背景には、
市民
の誤解もあったんだと思う。しかし、それにも増して、権威主義的な
司法
のあり方が、
信頼
をかち取れない最大の元凶だったように思っております。 今、この
司法制度改革
によって、民主主義国家での
司法
というのは、
市民
のためにあって、
市民
が参加するんだということが
実現
できれば、将来の展望は大きく開けてきて、
司法
関係者
の
努力
が実を結んでくるんだと私は確信しております。
日野市朗
19
○日野
委員
今、
市民
の認識というお話がありました。特に、
三木
さんはマスコミ人でございますから、
市民
の
感覚
についていろいろ我々は訴えなければならぬことはあると思いますけれども、やはり、その
考え方
がマスコミ等によって少しゆがめられているのではないかという感じを、私、持たざるを得ないんですよ。 今、これからどんどん
司法
修習生もふえてまいりますし、それから法曹界に参入する人もふえてまいります。そうすると、
市民
により身近なところで
司法
というのは営まれていくというふうに私は思っています。また、そうしていかなくちゃいかぬ。 ただ、この促進化
法案
で問題なのは、二年以内でできるだけ早い
期間
、こういうふうな決め方をされてしまうと、特に
裁判所
、
裁判官
のキャリア
システム
では、二年以内に何でもかんでも決めるという
考え方
、これが醸成されていくだろう、このことを私は非常に心配するんです。古い例で申しわけありませんけれども、松川
事件
であるとか八海
事件
であるとか、いろいろ、個人の人権をいかにして救済するかということが問題になった
事件
がありました。それは二年という時間では到底賄い切れない、そういう時間であります。そういう問題についてどうお考えになるか。特に、現在の
裁判所
のキャリア
システム
ということをお考えになりながら、ひとつお答えいただきたいと思います。
三木賢治
20
○
三木参考人
私も、今の
最高裁
による
司法
行政の中に官僚主義的なにおいが感じられないわけではありませんので、二年ということが殊さら強調されて、
迅速
迅速
ということばかりが前面になった場合に、多分、まじめな
裁判官
の
方々
が、
スピードアップ
ばかり念頭に入れた
訴訟
指揮を行う
傾向
が出てくることもあり得るだろうと大いに懸念しております。 先ほど来申しているように、これはあくまでも、
充実
しながら
迅速化
を図らなければいけないわけですし、一つは、
事件
の形態によって峻別していく、これはもう二年は到底無理だという見立てを早い
段階
でつけて、長くかかるものは十分に
審理
していくということを分けて考えていく。いたずらに
訴訟
遅延を図るような事態をなくしていくだけで、法の求めるところはかなり
実現
できていくんではないか。 本来、
審理
を十分に重ねる必要がある
事件
、とりわけ人権にかかわる
事件
は、どんなに時間がかかっても
充実
した
審理
を行っていくべきは当然のことでありますし、それを
検証
する
システム
がやはり必要になってくる。そこに、
最高裁
、これは
裁判
の独立の問題があってなかなか難しいんだと思いますが、何としても
市民
の目を入れて、そういった
拙速化
が図られるようなことがないように一方で注視していく
システム
をつくり上げなければ、きちっとした保障は、その
拙速化
を防ぐ防波堤にはならないというように思います。
日野市朗
21
○日野
委員
両
参考人
に伺いますが、この
検証
、私も、
裁判所
の中だけで
検証
させる、こういうやり方には賛成できません。では、積極的に、どういう
検証
のあり方であればいいのか、どういう人たちを入れるべきなのか、御両人にひとつ積極的な御提言をいただきたい、こう思います。
三木賢治
22
○
三木参考人
私は、今の
考え方
だと
法曹人
プラス有識者というようなことになっていますが、むしろ、
一般市民
の代表が入っていくような
システム
をつくらなければいけないんじゃないか。それと、片や、
司法改革
で、
刑事裁判
に対しては
裁判員制度
の
導入
がある、そこで
市民
が加わっていくことによって、また今までの
訴訟
指揮のあり方とは違ったものも出てくるというように期待しておりますし、あくまでも、
一般市民
の目にさらすということだと考えます。
杉井厳一
23
○
杉井参考人
私どものレジュメにも申し上げておりますが、一つは、
法曹関係者
としての
裁判官
、
検察官
、
弁護士
、これが参加する必要はあると思います。しかし、それだけでは十分でない、利用する
市民
の
立場
に立った、やはり
市民
が参加するということが重要だろうと思っております。言葉としては学識経験者という言葉になっていますが、
法律
用語としてはこういうことがいいんだということで書いています。 ただ、この言葉としては、本来、マスコミとか、あるいは
裁判
を利用する
一般
の
市民
の
方々
が入って、
裁判
の満足度などについて
意見
を出して
検証
していく、そういう
市民
も参加した制度によって、
最高裁
からは一定程度の独立を持った機関をつくっていただく。これが、先ほど申しましたように、単に
迅速化
しているかどうかという時期だけの問題ではなくて、制度も
整備
されているか、人的、
物的体制
も
整備
が進んでいるかどうかという、そういう
体制
の
整備
とか制度の
整備
ということも含めて
検証
していく、そういうことにしていただけたらありがたいと思っております。
日野市朗
24
○日野
委員
どうもありがとうございました。
山本有二
25
○
山本委員長
次に、漆原良夫君。
漆原良夫
26
○漆原
委員
公明党の漆原でございます。きょうは大変ありがとうございました。 まず、両先生に共通の話をお伺いしますが、
三木参考人
の方から、先ほど、長い
裁判
として、オウムの
裁判
七年、リクルート十四年、こういう例が挙がりました。この長い原因は一体何なのかな。
弁護士
の方が何かめちゃくちゃな
訴訟
をやったのが原因なのかな。あるいは、本人が無罪を争っているわけですから、ある
意味
では、もし無罪であれば、これは大変な人権問題になるわけですね。無罪かどうかは
判決
をもらなきゃわからない。そうすると、弁護人としては、最大限の
争い
をしなくちゃならぬ、最大限の
努力
をしなくちゃならぬ。 こういう
観点
から見てみますと、この二つの
事件
、確かに、長いということは
裁判
なきに等しい、そのとおりだと思うんですね。ただ、無罪をかち取るためには、
検察官
が膨大な
調書
を持っているわけですから、それに対して、それを打ち砕いていかなきゃならぬ
弁護士
さんの
努力
というのは物すごいものがあると思うんですね。まず、
訴訟
も、
開廷
日もどんどん何日も前に決めていますから、
一般
事件
の受理もできないぐらいの御
努力
をされていることだと思うんですね。
余り
長い長いと言うと、悪いやつなんだから早く処罰すればいいじゃないかという声をよく聞くんですね。そこにやはり一種の人権闘争がなされているわけですから、今回、七年、十四年という二つの
事件
を挙げられましたが、どんなところに長引いた原因があるとお考えなのか、どんなふうにすればいいというふうにお考えなのか、その辺を両
参考人
にお尋ねしたいと思います。
三木賢治
27
○
三木参考人
松本被告
の
裁判
では、最初に私選弁護人を解任したり、いろいろトラブルもあった。それから、片や、冷静に見詰めれば、
被告人
は視覚障害者ですし、普通の健康な人以上に人権上配慮しなければならないところがあるので、あの
事件
をもって
迅速化
法にのっとって二年以内でやれなんという暴論は到底考えちゃいけないわけで、
充実
した
裁判
を行わなきゃいけないんですが、やはり、最初から
訴訟
のそれぞれの
当事者
に最終的な目標値が、
判決
をどのくらいの
期間
で言い渡すか、早目に出そうという
意識
があれば多少変わったんだろうと思いますし、
証拠
の不同意も、これも一つの
被告人
の防御権だとは思いますけれども、本来争わなくてもいいところでまで不同意が随分あったのではないか、あらかじめ
争点
の整理がなされていたならば、もう少しスムーズにいったんではないか、事前の
訴訟
計画
をどう打ち立てるかという準備が足りなかったんではないかというような気がしております。しかし、弁護団もそれなりに反証の
期間
を短くしたり、
努力
されていることは認めますけれども、もう一
努力
が必要だったんだろうと思うわけです。 江副さんの方の
事件
も同じですが、当然の防御権の行使という言い方もできましょうが、私は、例えば
リクルート事件
の場合には、江副さんという有能な経営者が十四年も
裁判
に時間を費やしてしまった。もしこれがスムーズだったならば、もっと違う形で
社会
にまた貢献していただくこともできたのにと思うと残念なわけで、もう少し
訴訟
を速めるという出発点があったならば違う展開になったんだろうというように思います。
杉井厳一
28
○
杉井参考人
個別の、現在進行中の
事件
ですので、
日弁連
としての正式な
意見
の表明は差し控えさせていただきますが、感想的に、あるいは弁護団からいろいろ出されている今の問題について申し上げます。 一つはオウム
事件
ですが、やはり私ども考えますに、地下鉄サリン
事件
だけでも三千人から四千人の
被害者
がいるわけで、これに関する
調書
は膨大な数になるわけですね。そうすると、これ一つ一つを検討して、
被害者
一つ一つやるというようなことをやるとなったら、やはりかなり時間がかかる。そういうことについて、やはり我々弁護人としては、仮に
社会
的に人道に外れたと言われるとしても、やはり憲法や法に基づいた
被告人
としての権利をきちっと守ってあげるというのが民主主義
社会
の弁護人の役割と考えていますので、そういう面では、幅についてはいろいろな
意見
があると思います。そういうことはあるにしても、やはり弁護人として
努力
しているという点については御理解いただきたいということと、もう一つ、やはり
被告人
と弁護人の
信頼
関係
というのは、我々は、弁護人というのは網を隔てて
被告人
と最初から会うわけで、形成するのが大変難しいという
状況
もあります。そういう、外から見ている問題ですが、やはりそういうことについて十分考慮した
審理期間
というものが得られなければいけない。
リクルート事件
についていえば、私どもの調査では、やはり証人や
被告人
の
調書
の
信用性
ということが非常に長時間争われています。こういうことがやはり
裁判
全体を長引かせる原因になっていて、やはり
被告人
や証人の取り調べということをできるだけビデオなどで
可視化
していくということで、
争い
をできるだけ
透明化
して見やすくしていくという
努力
をするなどが必要だろうと思います。 そういう面でいいますと、今、
争点整理
をもっときちっとしろというお話がありましたが、
争点整理
をするというためには、
検察官
の
手持ち証拠
を事前に出していただかないと、弁護人としてはやはりどういう点に
争点
を絞って争っていくかということが決められなくなりますので、そういう面では、
争点整理
ということも含めて、これらの
事件
ではやはり
事件
を長引かせる原因になっている。 例えば、ちょっと時間がかかりますが、和歌山の
カレー事件
は三年七カ月、埼玉の本庄の保険金詐欺
事件
は一年半で初
公判
から済んでいますが、いずれの弁護団も、
検察官
の方が
証拠
開示をしてくれたからこれだけの
期間
で済んだんだということを言っております。 やはり、そういう格好で、
証拠
をきちっと出していただくということによって、
争点整理
もされ、
審理
も速くなるということができるんではないかと思っております。
漆原良夫
29
○漆原
委員
先ほどお二方とも申されておりましたが、
迅速化
と
充実化
というのは、これはもう大変重要な話でして、どっちか一方だけ追求しちゃいけない、私もそう思っております。 この
法案
では、二年以内のできるだけ早い時期に終局をさせるというふうになっておるんですが、
三木参考人
おっしゃったように、
刑事
では〇・四%が二年を超えている、民事でも七・二%にすぎない。これは、二年以内のできるだけ早い時期というと、もうほとんど二年以内に終わっているにもかかわらず、さらに
裁判所
、
当事者
、
訴訟
代理人に責務を課するということになりますと、
充実化
という点について、
裁判官
は速くやらなきゃいかぬという気持ちだけが先立って、場合によっては
検証
の対象になるのかもしれないというふうなことで、
充実
した
審理
というよりも、早く終わらせようというところに
意識
が走るんじゃないか。 したがって、私は、ある
意味
では二年以内のできるだけ早い時期なんて言わないで、二年をめどにというふうに言った方が弊害がないんじゃないかなという率直な気持ちを持っているんですが、両
参考人
の御
意見
をお伺いしたいと思います。
三木賢治
30
○
三木参考人
文言の話になると、ちょっと私、今迷いますが、私も先生と同じように、意図するところは二年をめどにということだと思います。大多数の
事件
は二年以内に終わっていることも踏まえれば、とにかく速く
裁判
をしなきゃいけないという
意識
革命を促すことにつながればよいのではないか。もちろん、そのかわりに
拙速化
を招いちゃいけないわけで、二年をめどというのが法の趣旨だと理解しております。
杉井厳一
31
○
杉井参考人
私たち
日弁連
も全く同じことを考えております。 やはり、二年以内のできるだけ短い
期間
内にということになると、限度がないわけですよね。当初の
推進本部
の案は二年以内ということになっていたんですが、どうも私どもの方ではできるだけ二年以内にというふうに申し上げたら、二年以内のできるだけ短い
期間
にと、こう変わっちゃったというような経過もありまして、ちょっと何かやぶ蛇だったようなこともありまして、本当に私どもとしては、今言われたように、この二年以内のというのが
裁判
の期限になってはいけない。
裁判
はやはり
迅速化
されなければいけません。しかし、
裁判
に期限を設けて、それができなかったら権利の
実現
はもう終わりだよというようなことはあってはならないと思うんですね。 その点はやはり、目標というものは定めてもいいかもしれませんが、期限にしてしまって、それで切っちゃうよというようなことは、やはりやってはいけないわけであって、そういう
意味
の期限ということでなくて、
努力目標
。しかも、
努力目標
についてはやはり、
現実
の
裁判
を見て、できるだけ二年以内という格好に修正していただけたらば、私は本当にありがたいと思っております。
漆原良夫
32
○漆原
委員
以上で終わります。どうもありがとうございました。
山本有二
33
○
山本委員長
次に、
石原健太郎
君。
石原健太郎
34
○石原(健)
委員
本日はどうもありがとうございます。 既にお話、十分されたわけでありますけれども、改めて、今回の
改正
の全体的な評価をどうされておるのかということと、いろいろ御要望とか御指摘もあったわけでありますけれども、ここはどうしても改めなければいけないなというようなことをお感じになっている点、二、三お聞かせいただけたらと思います。両
参考人
にお願いします。
三木賢治
35
○
三木参考人
先ほども申しましたように、私、
裁判
の
迅速化
というのは、
司法制度改革
という大きな、百年に一度の
改革
の大きな
登山口
、一つのアプローチの仕方だと思うんです。 この
迅速化
をきわめていくためには、
法曹人口
をふやしていかなければならないということになりますし、
市民
を参加させて
拙速化
に陥らないように留意しなければならないということにもなる。これは、別の
登山口
である。例えばロースクールの開設から始まっても、同じように
法曹人口
の増加だとか、あるいはそれに伴う
訴訟
手続
の改善といったものにつながってくる。結局同じことに結びついてくると思うんですが、目指すところは、要は、
裁判
は民主主義
社会
の中で
市民
に開かれたものでなければならないということでありまして、
国内
外で
紛争
が起きたら、それはできるだけ
司法
での
解決
を求める、
司法
に頼らない人たちをなくしていけるような
改革
につなげていかなければいけない。 真に
市民
のための
司法
を
実現
するために結びついていくための中で位置づけていきたい
法案
だと思っておりますし、
スピードアップ
を図るということが
市民
には一番理解しやすい具体的なアプローチになろうかというように考えております。
杉井厳一
36
○
杉井参考人
私どもが修正をお願いしたいと考えていますのは、先ほど申しました、一つは、第一条の
関係
で、「
迅速化
」あるいは「
迅速
」という言葉が三カ所出てきますが、これをぜひ「
充実
・
迅速
」「
充実
・
迅速化
」という格好に改めていただきたいというのが第一点です。 二番目は、この
法律
を、
充実
、
迅速化
のための
司法
のインフラ
整備
、それから制度
改革
ということを
実現
するための
法律
であるということを法文上明記していただきたいというのが第二点であります。 第三点は、先ほど申し上げました、
当事者
の責務という規定はやはり
当事者
に大変過酷な規定になります、二年以内に済まないということもありますので。そういう面では、これはやはり外していただいて、我々弁護人は、本当は本人との間で矛盾が起こりますから困るんですが、
法曹人
として協力しましょう、しかし、
当事者
とかこういう
方々
に対して責務を課すことはぜひ削除していただきたい。 第四点は、
検証
の問題であります。
検証
について、ぜひ
市民
も参加し、我々も参加した機関を設けてやっていただきたい。 この四点でございます。
石原健太郎
37
○石原(健)
委員
検証
等につきまして、あるいは
裁判
について、
市民
に開かれたもの、
市民
に溶け込んだものというような御
意見
だと思いましたが、先のことだとは思うんですけれども、
裁判員制度
というのが検討されていると思うんです。 そういうふうになりますと、さらに一層
市民
に開かれたものになっていくと考えますけれども、両
参考人
はこの点についてはどうお考えになっているか、お聞かせいただけたらと思います。
三木賢治
38
○
三木参考人
刑事裁判
に
裁判員制度
を
導入
すれば、今よりも
市民
に開かれたものになるのは当然なんですが、
迅速化
法も
裁判
員の制度を
導入
することを前提に考えなきゃいけない。 例えば、今のように七年、十年かかっている
裁判
に
一般
の
市民
が
裁判
員になってずっとつき合ってくれるものなんだろうか。もちろんこれは
国民
としての責務だから責任は果たさなければいけないというのは建前でありますけれども、民間の
企業
で、例えば毎週一日、あるいは集中審議で一日、本庄の保険金殺人
事件
は一週間にたしか二回
期日
が入って
迅速化
が果たせたんだと思いますが、週に二回も
裁判
員を集めるということが
現実
的に可能なんだろうかと考えますと、ただ単にそういった詰め込みで
迅速化
を図ったんではだめだ。今回の
迅速化
法をもとに、
訴訟システム
全体の見直しを進めていくということを伴わないと、
裁判員制度
もうまく機能していかない。
裁判員制度
も、
市民
に開かれた
裁判
を
実現
するために何としてもなし遂げなければならないとしたら、この
迅速化
法との関連において、ただ
迅速化
だけを決めるんではなくて、この
迅速化
法を基本に据えながら諸
整備
を進めていく、そのための大前提としてとらえるべきだというように思います。
杉井厳一
39
○
杉井参考人
私どもも、今回の
司法制度改革
の中で、
司法
をやはり
市民
に開かれたものにしていくという制度をつくっていくということが非常に大きな課題だと思っています。
裁判員制度
はやはり、
裁判
というものを
市民
が自分自身主権者としてやるということでありますから、大変大転換であります。それだけではなくて、やはり
裁判所
の中のいろいろな活動についても
透明化
する。我々
弁護士
会の中の諸活動もやはり
市民
に中に入っていただいて
透明化
していく。そういう
意味
では、すべての
司法
というものが
市民
の目の中にさらされて、その
意見
も反映しながらいくという制度をつくっていくということが大変重要だと思います。 そういう面では、今回の
検証
の制度につきましても、やはり
最高裁
だけが、言っては悪いですが、お手盛り的にやっては困るわけで、やはり
市民
の、利用する
方々
も参加してやる制度をぜひつくっていただきたいと思っております。
石原健太郎
40
○石原(健)
委員
どうもありがとうございました。
山本有二
41
○
山本委員長
次に、
木島日出夫
君。
木島日出夫
42
○木島
委員
日本
共産党の
木島日出夫
です。 お二人の
参考人
の先生、大変ありがとうございました。
迅速
だけをいたずらに求めて
拙速化
になってはいけない、
充実
、適正な、かつ
迅速
な
裁判
が今求められているという点ではお二人の
参考人
の
意見
は一致していたと思いますし、私もそれが一番必要なんだろうというふうに思うわけであります。 そこで、
現状
をどう見るかということなんですが、一部には大変、御指摘された
リクルート事件
の
裁判
その他その他、
余り
にも長いではないかという
国民
の批判がある一方、
裁判
を実際に受けた、
裁判
を利用した
当事者
の気持ちがどうかということを調べてみますと、例えば大阪
弁護士
会の調査があるわけであります。 大阪地裁では、
民事事件
がこの十年間で二割増加したけれども、
裁判官
の
手持ち事件
は減った。それはなぜか。
裁判
が速くなったからだ。どうして速くなったか。
証人調べ
を行う
事件
が減少した、
証人調べ
を行う場合でも証人の数が減った。
検証
と
鑑定
に至っては十年間で三分の一に減ってしまった。大阪高裁でも、
民事事件
が一・五倍になったにもかかわらず、
証人調べ
が急減した。
検証
はほとんどゼロになったという
状況
がある。そのために一
審判決
の質が落ち、誤判が多数生じている、一
審判決
のうち二割の
判決
が間違っているという恐るべき大阪高裁
裁判官
の指摘もあるという
状況
があるわけです。そして、こうした
裁判
の
現状
に関して、
裁判
を利用した
当事者
のうち満足と答えたのはわずか一八・六%。
審理
の
充実
度については、否定が四三%、肯定が三五%、こういう
状況
だ。 そうすると、今の
日本
の
裁判
の
現状
は、一部非常に長期化して
国民
の批判が集中しているものがある、それがマスコミに載って、ほとんど
日本
の
裁判
がそうじゃないかというふうに誤解をされている面がある一方で、圧倒的多数は、
裁判
当事者
から見ると、
拙速
だ、まともに証人も調べてもらえなかった、
鑑定
、
検証
もやってもらえなかった、誤判もあるんじゃないか、そういう、圧倒的多数の部分は、むしろ
充実化
がないがしろにされているというところにこそ今の
日本
の
裁判
の問題点があるんじゃないかというふうに私は思います。 そうしますと、この
法案
で
迅速化
だけがどうも前に出てきたんじゃないかと思えてならないわけであります。私は、
現状
はむしろ
充実化
こそがまず前面に出てこなきゃいかぬと思ってならないんですが、その心配が大変あるんですが、それについてのお二人の
参考人
の率直な御
意見
をお聞かせください。
三木賢治
43
○
三木参考人
先生おっしゃった、調査だと思いますが、そういった批判、指摘があることも承知しております。 この間、
最高裁
を先頭にかなり従前から
迅速化
に努めてこられた、一部でその弊害が出ているという指摘はかなり
弁護士
会からも聞こえてまいります。これはもちろん、
迅速化
を図って、
証人調べ
が十分でない、
鑑定
も少なくなっているというような事態が起きてしまったら元も子もない。
迅速化
、すなわち
充実化
を伴っているものであるかどうかは自明の理でありまして、今まさに
日本
の
裁判
が
国民
の
信頼
を回復するかどうかという試金石としてこの
迅速化
法案
を御審議されているわけで、それは当然にして
充実化
を伴っていなければ
国民
の
信頼
の回復はあり得ないわけでありますし、今後、
検証
制度によって、
市民
の目を入れていくことによって
拙速化
はある程度は防ぎ得るんだろう。 やはり、
市民
とは遠いところで
裁判
が行われてきたことが、指摘されるような
拙速化
の
側面
も引き起こしていた面は否めないんだろうと思います。少なくとも、
市民
に全部さらけ出したときに、
証人調べ
を手を抜いていくというようなことは断じて許されないわけだろうし、食いとめることは可能だし、食いとめていかなければいけないことだと思っています。
杉井厳一
44
○
杉井参考人
これは、我々
法曹関係者
の中の運用
努力
として、従来、
民事裁判
においても
刑事裁判
においても、
迅速化
の
努力
はしてきた。例えば、
裁判所
は、昭和六十二年ごろからだと思いますが、
裁判
充実化
方策
というものを出しました。
充実化
と言っていますが、実は
迅速化
のための
方策
だったんですね。例えば、
争点整理
をするとか集中
証拠調べ
をするとか陳述書を使うとか、そういう格好でずっと全国でやられ、我々
弁護士
会もそれと協議しながらやってきたんですが、本来これは
充実
のためにやるはずだということだったんですが、どうしてもそれが
裁判官
の
感覚
になると、
迅速
の方に力が向いてしまう。その中で、今回のようないろいろな問題が全国で起きているということがあります。 一番の問題は、この
法案
もやはりちょっと心配を感じるんですが、
当事者
とか
裁判官
とか我々
関係
人を、責務を課して、しりをひっぱたくという形でやるというのは、運用
努力
としては必要です。しかし、それだけに頼った
迅速化
、
充実化
では、やはり本来的に
拙速
になってしまう危険がある。やはり制度を
整備
し、人的
体制
を
整備
するということによって
充実
、
迅速
をやる、そういう
基本方針
に立つ。我々は、制度の
整備
、
体制
の
整備
それから運用の改善を三位一体のものとして進めなければ
裁判
は
充実
し
迅速
にならないよということを申し上げてきたんですが、そのあたりのところが、やはりこれまでの我々も含めた
法曹関係者
の
努力
が足らなかったというふうに考えています。 そういう面では、この
法律
が今言ったような
迅速
だけに偏った運用
努力
による
法律
にならないように制度を
整備
していただく、
体制
を
整備
していただくということをぜひお考えいただけたらありがたいと思っております。
木島日出夫
45
○木島
委員
ありがとうございます。 そういう面で、前提たる
充実化
のための
方策
がまだ我々に提示されていない。特に
刑事裁判
については全く、まだ
司法
審で審議中、民事についてはこの国会に
民事訴訟法
の一部
改正
案として提示はされてきたんですが、私はそれを見ますと、
裁判
提訴
前の
証拠
収集制度の
導入
ぐらいなもので、逆に、
計画
審理
化、そして一定の時期に
証拠
申請をしないと時機におくれた
証拠
方法として却下されるというようなことが入り込んできているわけですね。そうすると、この
迅速化
法とこの民訴法の
改正
案がドッキングすると、私は、
証人調べ
申請が却下される、
拙速化
につながっていくんじゃないかということを大変心配しておるということだけ指摘しておいて、もう一つの心配は、やはり
検証
なんですよ。 特に、今度の
法案
は、最高
裁判所
による
検証
でしょう。私、
裁判
というのは、民事でも
刑事
でも、基本は事実認定だと思うんです。事実認定と
法律
の適用で
判決
が下されるわけですが、圧倒的多数の部分は事実認定ですね。真実の発見ですよ。特に、
刑事事件
で真実の発見ができなければ、それは冤罪になるわけです。
民事事件
で真実の発見ができなければ、権利者が権利救済されなくなるわけです。そういう面で、私は、
裁判官
が一番苦労しているのは真実の発見だと思うんですね。 そうすると、
刑事
でも民事でも、もっと
証人調べ
をやりたい、もっと
鑑定
、
検証
もやりたい、そういう
段階
のときに、二年以内のできるだけ短い時間に
判決
を下せというふうなことがありますと、微妙なところで
証人調べ
をしないで終わりにせざるを得ない。それが、
最高裁
による
検証
という形で本当に入り込んできましたら、私は、
裁判
の独立が根幹のところで崩されてしまうんじゃないかと思わざるを得ないんです。 ですから、私は、
最高裁
による
検証
から、法曹三者プラスアルファによる
検証
でも危ないんじゃないかと思えてならないんです。そういう本当に微妙な事実認定について第三者が入り込めるのかどうなのかという根本のところにも疑問を持っているわけなんですが、少なくとも今度の
法案
は、
最高裁
による
検証
は本当に危ないと思わざるを得ないんですが、それについてお二人の
参考人
の率直な
意見
を聞かせてください。
三木賢治
46
○
三木参考人
検証
が大きな役割を果たす、かといって、一方では
裁判
の独立を脅かすような事態があってはいけないというなかなか矛盾する中で何とか
市民
の手による
検証
を
実現
させなければならないと考えているわけですが、
法案
の中に、先ほども私申しましたように、学識経験者という言葉を使っていますと、これは僕らの認識だと
法曹関係者
ということになろうかと思いますが、やはり
法曹人
だけで独占していたのでは、今のようなその懸念は払拭できない。やはり
一般
の、広い
市民
の代表が参画した
検証
が行われていくことによって、
充実化
の道筋を促していくことが初めて可能になるんだというように理解しております。 御懸念は、私も同様に懸念しているところであります。
杉井厳一
47
○
杉井参考人
今おっしゃられたように、最高
裁判所
による
検証
というのは、一番の問題は、やはり最高
裁判所
が
裁判官
に対する人事権なり処遇を決めていく権限を持っていて、これと連動する格好になるという危険があったらだめだと思うんですね。そのあたりが一番問題であって、私どもとしては、やはり
裁判
を
迅速
、
充実
にやるということの
検証
は、
裁判所
が
現実
にやってくれないとできないという面があって、
裁判所
がやってはいけない、
最高裁
がやってはいけないということまでは申し上げにくい。 しかし、今申し上げた
意味
で、
最高裁
の人事権等と連動させない独立した制度として機関を設けてやっていただくということをきちっと
裁判官
にもわからせる。
裁判官
にわからせるといっても、
裁判官
の方は自分の方から心配しちゃうわけで困るわけですけれども、そういう面でいったら、今のような手当てをしながら、やはり
最高裁
のもとに独立した機関としての
検証
機関を設けていくという格好でやるのが適当ではないかというふうに考えておりまして、先生の御心配は、大変私どもとしても共感する部分はあるんですが、そういう制度として設計していただくのがいいのではないかと思っております。
木島日出夫
48
○木島
委員
終わります。ありがとうございました。
山本有二
49
○
山本委員長
次に、保坂
展人君
。
保坂展人
50
○保坂(展)
委員
社民党の保坂展人です。 私は、
民事裁判
の実は
当事者
として少年時代から青年時代の終わりころまでを過ごしたという、終わりというんですかね、十六歳から三十二歳までで、十六年かかる
裁判
をした
当事者
でございます。 お二人の先生方のお話を聞きながら、さすがに長かったなという思いと、特に
当事者
として、十六歳の少年が高校に入る際の内申書に、思想、信条等々、政治活動という、触れることを書かれたことが憲法違反に当たるかどうか、
裁判
を支援する皆さんは、これはもう大問題だ、徹底的にやろうということでございまして、本人の方は、早く決着をつけてくれという思いもあったんですね。それで大変悩んだ時期もあることを思い出しました。 結果として、七年後に
東京地裁
判決
が出て、これは私の方が全面的に勝ったものですから、さらに長引いたわけですね。そして、八二年に逆転敗訴
判決
が高裁で出て上告をしたところ、またこれが
最高裁
も延々とやっていまして、八八年、これは上告棄却ということで、この上告棄却の
判決言い渡し
をぜひ聞きたいものだと。いや、そのときは棄却とはわかっていなかったわけですけれども。まさに不親切なところでして、いつあるかわからないと言うんですね、当時の
最高裁
は。週に二回紙を張り出すからそれを見に来い、三十分後に出す、こういう対応でありまして、意地でも見てやろうということで、その三秒の、本件上告を棄却するというのだけを聞きに行った。民事
判決
の言い渡しに本人が入ったというのは、
最高裁
のあの法廷ができて以来のことだ、あの新しい建物では、そういうこともございました。 確かに長かったんですけれども、今振り返ってみると、幾つかの重要な論点が提出されました。それは、子供の側の学ぶ権利、学習権ということは、一体この国の憲法上の位置づけはどうなっているんだろうか、新しい概念の提起です。あるいは、内申書という個人情報はだれに帰属するのか。このために、弁護団は、アメリカまで派遣しまして調査をしてまいりました。それで、
意見書
を出しました。また、憲法学者、教育学者などさまざまな専門家が次々と法廷に出て
意見
を開陳するということがございました。 ただ、こういった行政
訴訟
の場合は、常にそうだと思うんですが、争う
当事者
間に、まず議論はかみ合わないんですね。訴えている側は大事だと言い、訴えられている側は、何のことはない、普通の評価だということで、重要度の認識が違うということもあります。 このような
裁判
、つまり今、今後将来にわたって、これまで議論されたことのないような
裁判
が提起されたとき、あるいは今のお話をお聞きになって、この
迅速化
、二年を基本にということの枠からはみ出すのか、それとも、それでも二年で議論すればよかったというふうに思われるのか、お二人にちょっと体験者として御
意見
を伺いたい。
三木賢治
51
○
三木参考人
私は
裁判所
クラブにおりましたときに先生の
事件
も取材させていただいた経緯がございまして、教科書
訴訟
、今思い起こしておりました。 先ほど来申しているように、二年というのはあくまでも
努力目標
の
数値
で、本来速やかに終わるべき
裁判
をだらだらと引き延ばすところに問題がある。もともと論点の多い、先生が起こされたような
訴訟
の場合は到底二年で終わるはずもないと常識的に判断できますし、その判断をやはり
市民
の目で点検していく
システム
が担保されれば無用な
拙速化
は避けられるのではないか。二年というのは目標だというように私は心得ます。
杉井厳一
52
○
杉井参考人
私どもとしては、先生のような
事件
こそもっと
迅速化
して早く出すと。二年でやれという趣旨ではない、しかし、行政に対するいろいろな責任追及の
事件
などは長期化しまして、これはやはり
証拠
収集を
原告
側にできるようにするとかそういうことで、もっと速くしなきゃいけないと思います。 ただ、先生もおっしゃられましたけれども、実質は、
裁判官
も新しい法理論を研究しなきゃいけない、我々
弁護士
の方も今までやってきていない教育の分野の問題とか先生がおっしゃられた問題を勉強しながら、また外国の文献とか外国の学者とか、
日本
の中でもいろいろな、国会へ行ったりあそこへ行ったりという格好で調べなきゃいけませんので、そういう面では、やはり新しい分野の法形成に
裁判
が役立つという面では一定の時間が必要になる。 それの上で、やはりできるだけ速くやるということを私どもとしては
努力
していくことが必要だと思いますので、単純に二年という格好ですべての
事件
を一律に決めるような格好ではいけないのではないかというふうには考えております。
保坂展人
53
○保坂(展)
委員
この
最高裁
の
判決
が出るころになって子どもの権利条約がいよいよ
日本
の国会でもそろそろ議論になり、この中には
意見
表明権などの概念があって、逆にその辺から始まったのであればもう少し議論も整理されたろうというふうには思いますけれども、これからも思いも寄らなかった
訴訟
というものが、特に行政を
相手
に、非常に情報を持っている行政機関を
相手
に民間一個人が行う。私の場合は、応援をしてくれた方が五百円単位で総額三千万円の
訴訟
費用
をみんな基金で賄うという大変すばらしい
体制
が組まれたんですが、なかなかそういうことは一個人には難しいだろう、大変幸運だったと思うんですけれども。 専門
委員
の制度が
民事訴訟
の中に出てきますよね。お二人に伺いたいんですけれども、真っ先に危惧するのは、恐らく医療などの場合に、どうしても業界のギルドといいましょうか、特に地方都市に行けば、大体名前も顔も知っているというような世界の中で、どうしても専門的に知見を持っている者の仲間が
事件
として訴えられるというようなケースの場合、公平性を担保できるのかどうか。あるいは公害の
事件
などでも、例えば化学物質過敏症でシックハウス症候群が学校に出たといってきょうニュースでやっていました、子供が教室を移動しています。そういうことを訴えた場合に、建築の専門家というのは、えてしてやはり業界の利益の中で生計を立てておられる。この辺の公平性の担保について、お二人に伺いたいんです。
三木賢治
54
○
三木参考人
先生がおっしゃるとおりに、複雑な問題が
訴訟
の場に待ち込まれる事態になったときに、専門家と呼ばれる人がどういう形で選ばれたら公平な判断ができるのか。 今回の
考え方
では、
訴訟
の
争点
を整理するに先立っての
知識
を専門家から教授されたいというところに趣旨があるんだと思いますが、やはり忌避だとか、
裁判官
忌避に似たような制度で、不審な点があった場合には、公平性に疑問が生じた場合にはやはり別の方にかわっていただくような制度をきちっと担保しておかなければいけないし、登録される専門
委員
の方もなるべく複数の方をあらかじめ登録しておいて、公平性に疑問が生じ次第、次々に多くの方の
意見
を聞いていくというようなことが行われなければならないでしょうし、それもまた
検証
の対象にしていかなければ公平性が担保できないというように思います。
杉井厳一
55
○
杉井参考人
先ほど申しましたように、現在の
裁判
で長期化している
事件
はやはり専門性がある
事件
が多いので、専門家の協力をいただくということが必要なんですね。そういう面でいうと
鑑定
制度というものが今ありますけれども、やはりそれだけではちょっと硬直的で、もう少し柔軟に専門家の協力を得たいというこの制度自体は、私ども、必要だというふうに思っています。 ただし、今言われたように、
医療過誤
事件
などは例えば患者さんと病院側ということで、お医者さんが専門
委員
に選ばれる場合が多いでしょうから、やはりそういう面で公平性の問題がある。そういう面では、この
法律
にも書いてありますが、一つは、
当事者
の
意見
をやはりきちっと聞いて採用を決めていく。それから、中立性、公平性をちゃんと確保して
当事者
とも協議しながら
裁判官
が人選をしていく。さらに、専門家の
意見
を聞く場を、
裁判官
が自分だけわかる場所でやっては困るわけであって、どういう
意見
があって、それが
裁判
にどう影響を持つかということを両
当事者
にきちっと公平に伝わるような透明性がある
意見
の収集をしていただくとか、そういうことを含めてきちっと制度をつくっていく。 もう一つ、最後に言いますと、
裁判官
はどうしても専門家が入ると専門家に頼っちゃうんですね。よくわからないし、それの方が楽ですから。だから、そういうことにならないように、
裁判官
自身が専門家の御
意見
もきちっと聞きながら、自分自身も主体的な判断ができる
体制
をつくっていただく。そういう面では、運用的に公平を担保し実行する大変重要な制度だと思いますので、そういう
努力
は必要であろうと思っております。
保坂展人
56
○保坂(展)
委員
ありがとうございました。終わります。
山本有二
57
○
山本委員長
以上で
参考人
に対する
質疑
は終了いたしました。
参考人各位
におかれましては、貴重な御
意見
をまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
参考人
の
方々
は御退席いただいて結構でございます。
—————————————
山本有二
58
○
山本委員長
引き続き、
内閣提出
、
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
、
民事訴訟法等
の一部を
改正
する
法律案
及び
人事訴訟法案
の各案を議題といたします。 この際、お諮りいたします。 各
案審査
のため、本日、
政府参考人
として
内閣官房内閣審議官
兼
文化庁長官官房審議
官森口泰孝君、
司法制度改革推進本部事
務局長
山崎
潮君、
警察庁警備局長
奥村萬壽雄
君、
法務省大臣官房司法法制
部長寺田逸郎君、民事
局長
房村精一君、
刑事
局長
樋渡利秋君、
公安調査庁次長
栃木庄太郎
君及び
特許庁長官
太田信一郎
君の
出席
を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
山本有二
59
○
山本委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
山本有二
60
○
山本委員長
次に、お諮りいたします。 本日、最高
裁判所
事務総局中山総
務局長
、
園尾
民事
局長
兼行政
局長
及び
山崎
家庭
局長
から
出席
説明の要求がありますので、これを承認するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
山本有二
61
○
山本委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決しました。
—————————————
山本有二
62
○
山本委員長
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
佐藤
剛男君。
佐藤剛男
63
○
佐藤
(剛)
委員
自民党の
佐藤
剛男でございます。
裁判
迅速
法、これは小泉内閣の
改革
の大きな柱になっておるわけでありまして、ここまでまとめていただきました
関係
各位に敬意を表する次第でございます。 思いますには、ここに一番我々
市民
、
国民
が感じますのは、オウムの問題があったはずであります。そのオウムについての
求刑
、松本に対します
求刑
があったときに総理は、いかにも七年は長いぞと、
求刑
で。これから
判決
があり、さらに上訴という
手続
がある。あるいはまた、
最高裁
まで行きますれば、まさしく時効の十五年ぐらいまでいっちゃうというような話では、これは
国民
の
信頼
というものを損なうわけであるわけであります。 そういう
意味
で、私は、この
迅速
というものは、富士山の
登山
で吉田口から上がる、あるいはロースクールから上がっていく、しかし、最終的な頂上というのが
国民
に開かれた
司法
である、こういう
意味
を私は持っておると思っておりますし、また、そういう
意味
において、これからインフラの
整備
であるとか、それから
当事者
の正当な権利、利害を害さないよう、人権も、私は人権尊重派の
政治家
でありますが、そういう
当事者
の防御権も損なうことのないよう十分な配慮を加えたり、あるいは
裁判官
、
検察官
、
関係
職員の
増員
、それから
裁判所
の施設の
拡充
、こういうような人的、物的のインフラストラクチャーの
整備
促進の必要な予算措置を講ずる、これは国を挙げての重要なる課題であると思います。 そして、この二年間について、二年以内に事実の
関係
を決めるということについての最高
裁判所
の指揮権といいますか、
検証
する場合においては、当然、法曹三者の協力に加えて、先ほど来
委員
の
方々
からありましたが、外部有識者の関与を認める、こういうようなことは私は必要な措置であると思っているわけであります。 それと同時に、重要なることは、やはり犯罪というようなものを未然に防いでいく、犯せないように。あのオウムの
事件
というのは、これが一番私は、あのときにもう少し早く、坂本
弁護士
の家族が殺された、そういうようなことについてスタートをして
捜査
の端緒というものが出ていたら、あれほど、五千人に余る
被害者
というサリンの問題というのは出てこなかったはずだというようなことで、非常に残念なわけであります。 それに関連しまして、ここ、今連休のところで、テレビをあけますと出てくるのが、あの白装束の団体ですね。山梨のドームの施設を目指すという、千乃裕子さんを会長といたしますいわゆるパナウェーブ研究所、こういう問題について私は関心を持たざるを得ないわけでございます。 それで、このパナウェーブの研究所につきましては、もともと、会長といいますか、開祖さんが宇宙を支配する法則の伝道者、こういう信奉をするメンバーで組織された集団なんですね。これは宗教法人でもない、任意団体でありまして、これは福井にあるんですね、住所が。そして、今、何なのかというと、教祖の体が悪くなった、これは何なのか、有害の電磁波によって攻撃を受けた、こういうところから、防御のためのキャラバン活動が動いているというのが実態である。 それで、いろいろなケースがあるんですね。四国の香川で、何か電柱が倒れちゃった。僕はそれを聞きたいと思っているんですが、これは、電柱とかあるいはガードレールとか、これを白い布で覆うという特色を持ってキャラバン活動がなされている。それから、岡山県では、往来妨害罪というふうなことで捕まっているんですね、捕まって罰金を受けているんですね。 それで、私は、こういう流れを見ていますと、テレビなどを見ていますと、一体何で現行法できちんとしたことができないのか。できなかったら、これは
法律
を直さなきゃいかぬ、
法律
をつくらなきゃいかぬ、これが我々の仕事だと思うんですね。一人一人が、一人が例えば駐車違反だったときには、あるいは偉い人が成田から着いた、そうすると、車をとめる、後ろまであけてくださいとやるでしょう。なぜそういうようなことが、集団になって白いものが集まってくるとできないのか。 私は、そういう
意味
において、
警察庁警備局長
、まず本件について、なぜそういう一つの行為、あれだけのものについて、私は人権擁護派ですよ、人権尊重しますよ。しかし、問題は、あのオウムのときにも、オウムの体質が、毒ガスの攻撃を受けた、こういうところから始まったんですね。そして、
一般
社会
との対決姿勢を示したのがオウム真理教だった。そういう
意味
においては非常に何か似ているところがあるんですね。 電磁波が来た、スカラー波というんですな、そういうところでキャラバンに行って、さらには場所がもう決まっていまして、スポンサーの、ファッションをやっている社長の森谷栄太郎さんというのは、自分でみずから言っているから公表していいと思いますが、LRという出版を出している社長さんが、本年六月に山梨県の、今建設中になっておる、こういうふうな問題に、もし会長さんが、この会長さんというか、さんをつけさせていただきますが、体のぐあいが悪かった、もし死んでいるかもしれない。
新聞
によるとだれかインタビューしたというんだけれども、あるいは、そうじゃなくて文書で、ここまで言っているんですね、私、見て驚いているんだけれども、タマちゃんの会というのがあるんですね、タマちゃんのことを想う会、これとの
関係
があるというんですね。本当ですか、それ。 そこで、こういうふうな問題について、公安調査庁、どのような調査をしているか。
警察庁警備局長
、いらっしゃっていますか。それで、この問題についてなぜ
捜査
のあれが動かないのか、そういうことについて、あるいは
法律
の欠陥があるならどこに欠陥があるのか、そこのところの問題をまずお聞きしたいと思います。これは、私は、
裁判
迅速
の問題について欠かせない問題のことであるから御質問するわけであります。
栃木庄太郎
64
○栃木
政府参考人
公安調査庁といたしましては、破壊活動防止法、それに、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する
法律
に該当する疑いのある団体を
中心
とする諸動向につきましては、幅広い関心を持って情報を収集している次第でございます。 このパナウェーブ研究所につきましては、
平成
五年に福井市に設立されましてから、
平成
七年四月以降、車両を連ね、あるいは白装束で全国各地を転々としたりいたしまして、先ほど先生が御指摘のように、公道を占拠するなどの特異な団体行動を繰り返しておりまして、オウム
事件
等の教訓にもかんがみまして、将来公共の安全を害する
可能性
も認められたため、その当時から動向については重大な関心を持って見守ってきていたところでございます。
奥村萬壽雄
65
○奥村
政府参考人
お答えをいたします。 御指摘の団体につきましては、御案内のとおり、白装束で非常に異様な外観の集団でございまして、これが十数台の車両に分乗いたしまして、岐阜、長野等の山中の道路に駐留をいたしまして、地域住民の
方々
が大変不安を感じられまして、一一〇番通報が寄せられるなどのトラブルが生じているところであります。 警察におきましては、五月一日にこの集団のメンバー九人に対しまして、道交法違反で反則告知を行ったところでありますし、また、検問も行っておるところであります。この団体につきましては、過去にも各地で同様のトラブルを起こしておりまして、
平成
三年以降、警察といたしましては、三件の
事件
で逮捕等、強制
捜査
を行ってきたところであります。 警察といたしましては、まず何よりも住民の
方々
の不安を解消するということが第一と考えておりますし、また、御指摘のとおり、過去、オウムのように、トラブルを起こしておりました団体がテロ組織に変質した例もありますので、この団体につきましても今後とも十分に注意を払っていきたいと思いますし、そして、違法行為につきましては厳正に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
佐藤剛男
66
○
佐藤
(剛)
委員
私は、何か現行のあらゆる
法律
が適用されないような感じであるなら、きちんとした
法律
をつくらなきゃいかぬ。一人の場合にはできていて、多数が集まると何もできないで。しかし、そんなもの、私は人権擁護ですよ。しかし、死んでいるかもしれないですよ、会長さん。そのときにどうするんですか。そういうことをやったら保護するとかということだって大義名分が立つだろうと私は思っております。きょう、この問題は、後ほど、常に引き続きまして注視いたしますので、本件についてはここまででございます。 それから次は、時間がありませんので、
民事訴訟法
の問題について質問をいたします。
民事訴訟法
の
改正
で、
関係者
の
努力
によりまして、このたび、知的財産について、東京と大阪の
裁判所
というのがなった。そして、専属管轄で、あらゆる地域から東京に来る。これは、
関係
各位、それから、私は小泉内閣の非常に大きな功績であると思っております。なかんずく、
太田
特許庁長官
、らつ腕の長官でありますし、そういう中で今回のあれが入ったということは、私は高く評価するわけであります。 しかし、形式だけじゃだめなので、これは、実際には実体法というのが僕は必要なんじゃないかということを考えます。それは、なぜそういうことを説明するかというと、
裁判官
をふやそうといったってなかなか限りがありますから、その
意味
において、できるだけ
裁判
に件数が上がらないようにするという
意味
で、例えばオリンパス問題というのがありましたね。研究者、
日本
に研究者は二十万人いる。その研究者が、
企業
の中で働きながらやっている間に、出るわけですね、発見するんですね。ところが、それが非常に高いものであったときには
訴訟
問題としておりて、オリンパスの場合には会社が負けたわけですね。 そういうふうなケースというのがあるわけで、私は、それは、特許法三十五条に書いてある問題は削除すべきだという論でありまして、なぜ削除するべきなのかというと、アメリカもそうなっているし、それから文化庁、文化庁は長官官房審議官の森口さん、来ていますけれども、お聞きしますけれども、これは著作権法にはないですよね、そういう規定。 だから、私は、ここら辺は、内閣の知的集団の事務局ができているわけですから、そこら辺調整をとって、しかるべきことをやってもらいたいと思います。アメリカがこういう問題はないわけですから、私は、日米というのは、著作権についても特許についても、もうできるだけ同じようにするということが知的戦略の国家戦略で重要な課題だと思っておりますので、そういう問題について御質問したいと思っているんですが、あのオリンパスと同じようなものが、
最高裁
、おられますか、最高
裁判所
、どのぐらいの件数が係属されていますか。
園尾隆司
67
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 お答えいたします。 特許権に関する
民事訴訟
事件
の一年間の新受件数は、
平成
十四年には百六十五件となっております。その中に、特許法三十五条に関して争われた
事件
がどの程度あるかにつきましては、正確な
数値
は現在把握しておるわけではございませんが、幾つかの
裁判所
に問い合わせるなどして調査いたしました結果によると、少なくとも数件程度は係属しておるという
実情
でございます。
佐藤剛男
68
○
佐藤
(剛)
委員
特許法につきましては、このたび、
民事訴訟法
の
改正
で、いわゆる合意管轄、あるいは東京と大阪にできた。 それから、著作権の
関係
で、今どういうふうな
状況
になっていますか、
訴訟
の
関係
。それから、当然、著作
関係
で
紛争
問題というのが起きていると思いますけれども、そのあたりについてお答えください。
森口泰孝
69
○森口
政府参考人
お答え申し上げます。 著作権に関しましては、いろいろな
紛争
、当然あり得るわけですけれども、大きく分けまして、高度なコンピュータープログラムに関する
訴訟
、そういった専門的な対応が必要なものと、それから、いわば日常的に起こるコンピューターとかインターネットでの利用に係る小規模な
紛争
、そういう二つございます。 前者につきましては、今回、今御審議いただいております
民事訴訟法
の
改正
の中で、プログラム著作物については専属管轄ということでお願いしておりますが、後者の方の、いわゆる日常的な小規模な
紛争
につきましては、全国各地で起こり得るということもございますので、それぞれの所管の
裁判所
で御審議いただく、そういう方向になってございます。
佐藤剛男
70
○
佐藤
(剛)
委員
後者の問題なんですが、私は、そういう
意味
で、
司法改革
の中に、
裁判
外の問題についての、これは来年の国会に出てくると思いますが、例えば弁理士とか行政書士とか、あるいは家屋調査士とか、あるいは
司法
書士の
方々
の活動を広げて、そして、いわゆる隣接の分野についてやるということで、こういう地域のような、キャラクター商品とかいろいろな問題は、私は、ADRにちょっと先に、よりももっと近接的な、お話しする、御相談ですよ、弁理士のところに行って、あるいは行政書士のところに行って、どうなんですか、嫁しゅうとの御相談みたいな話なんだ。そういうようなことを私はやるべきだろうと思っておりますが、そこら辺について、
司法制度改革推進本部
の
山崎
局長
、どのようにお考えになっていますか。
山崎潮
71
○
山崎
政府参考人
ADRの
充実
につきましては、現在、私ども、今検討会で詰めている
段階
でございます。個別のADRについてどうするかという検討というよりも、ADRに共通したいろいろの
手続
とか、そういうものを今構築しようということで考えておりますし、また、隣接の職種の
方々
、これの活用の方法、これも今検討中でございます。来年には御承認を得たいというふうに思っています。
佐藤剛男
72
○
佐藤
(剛)
委員
そのような形のADR問題、それからADRよりも一歩手前、前の方、そういうふうな問題を
拡充
することによって、
余り
裁判所
に負担をかけないような形を持ってくる。和をもってとうとしとなすというのが
日本
の原則なので、何もグローバルスタンダードばかり従うことはない、ダブルスタンダードだって私は構わないと思っておりますし、そういう面で、そのときに、弁理士だとか行政書士とか
関係者
を、内閣で審議会なり
委員会
なりやっておると思いますから、その中には極力入れるように、そして、そういう中において、そういう審議の過程から通じてやっていただくことをお願いしまして、時間でございますので、私の質問を終わります。 ありがとうございました。
山本有二
73
○
山本委員長
漆原良夫君。
漆原良夫
74
○漆原
委員
公明党の漆原でございます。 本
法案
、
裁判
の
迅速化
という命題そのものに反対する者はいないと思います。本
法案
は、
裁判
の
迅速化
を図って、二年以内のできるだけ短い
期間
内にこれを終局させるというものであります。 しかし、十三年度の民事、
刑事裁判
における
審理期間
の
現状
を見ますと、その
期間
が二年を超えた割合は、民事では七・二%、
刑事
では〇・四%にすぎない。数量的に言うと、二年以内という本
法案
の
目的
は既に達成されているんじゃないか。そういう
意味
では、本
法案
の
立法
事実はないのではないかという疑問を感じます。 その点について、
立法
事実は何なのか、また、本
法案
提出の意義は何なのか、お答えいただきたいと思います。
山崎潮
75
○
山崎
政府参考人
ただいま御指摘の、現在の民事、
刑事
の
裁判
の
状況
はそのとおりかと思います。 私ども、全体として、
日本
の
裁判
、
迅速化
が図られているというふうに考えておりますけれども、例えば、
当事者
間に
争い
があって、
人証調べ
をするような
事件
、それから複雑、専門的な
事件
、あるいは
国民
が注目をいたします重大
事件
でございますけれども、こういうものに関しまして、やはり依然として長
期間
を要するもの、これがあるわけでございまして、少なくないという
状況
でございます。 それと、そういう点について、必ずしもやはり
国民
の
納得
が得られていない。ここ最近の
新聞
、テレビ等の論評とかそういうものをお聞きいたしておりましても、やはり
納得
がされていないという
状況
があるわけでございます。 そこで、この
法案
は、このような
事件
を含めまして、第一審の
訴訟
事件
を初めとする
裁判
の一層の
迅速化
を図ろうということでございまして、その基本的な枠組みについて規定をするというところに意義があるというふうに考えております。
漆原良夫
76
○漆原
委員
裁判
の
迅速化
と
裁判
の
充実化
というのは、この二つは
司法
に対する
国民
の
信頼
をつなぐという
意味
では、私は車の両輪だというふうに思っております。 しかし、この二つの命題は、
迅速化
すれば形骸化していく、
充実化
すれば長期化という、ある
意味
では二律背反の
関係
にあるんじゃないかと思います。
裁判
の
迅速化
の大前提として、私は、
裁判
の
充実化
が図られていなきゃならないというふうに思っているんですが、この点はいかがでしょうか。
山崎潮
77
○
山崎
政府参考人
ただいま御指摘の点、そのとおりでございます。私どもも、そういう点を考えて、この
法案
の二条一項及び六条、こういう条文においてこの趣旨を明確にする、
充実
な
手続
を行わなければならぬというその前提をきちっと法文にうたい上げているというところで御理解を賜りたいと思います。
漆原良夫
78
○漆原
委員
本
法案
の二年以内ということ、この
数値
目標の設定自体がいささか唐突の感じがしております。
裁判
の
充実化
という
観点
から、どのような
検証
がなされて二年以内という目標が設定されるようになったのか、その辺の経過を、どのような
検証
をされたのかどうか、また、二年以内ということに決めたというその
理由
をお尋ねしたいと思います。
山崎潮
79
○
山崎
政府参考人
この問題の最初のきっかけでございますけれども、私どもの顧問
会議
、その顧問のアピールというところで二年という目標が提示されたということでございます。それに伴いまして、小泉総理
大臣
も二年という目標をアピールされたわけでございます。これに伴いまして、私どもの方で、これを端緒といたしまして検討をいたしました。 それで、二年というのは本当に妥当なのかどうかということでございますけれども、まず二つポイントがございまして、
国民
が
納得
できる合理的な
期間
内に
裁判
が行われなければならないという、
国民
の
納得
というものが一つございます。それと、制度、
体制
、これの
整備
を通じても
実現
可能な
期間
でなければならない、こういう二つの要素がございます。そういうところからいろいろ勘案していきますと、やはり二年というのが妥当であるという
結論
に達したわけでございます。 御存じのとおり、この
法案
は第一審の
裁判
、これについて二年ということを申し上げておりまして、本当の
紛争
の
解決
が最初から最後までどのぐらいの時間がかかるかということは、もう少し時間がかかるということになるわけですね。これは一審の話でございますから、例えばこれが控訴審に行ったときにどのぐらい時間がかかるか、それから権利行使のための強制執行でどのぐらいの時間がかかるか、こういうことを全部トータルして考えますと、一審としてはこの程度の
期間
で行うことがやはり
国民
の
納得
が得られる
期間
である、こういう
結論
に達したわけでございます。
漆原良夫
80
○漆原
委員
民事でも、
証拠調べ
が行われた
事件
では十九・二カ月、それから、
刑事裁判
では
否認事件
でも九・七カ月で終局しているわけです。 二年以内のできるだけ短い
期間
内にというふうになっているんですが、まあ時に長いのもある、ほとんど二年以内に終わっているわけですから、何も二年以内のできるだけ短い
期間
内、それは一年か半年かわからないけれども、そこまで対象にしなくても、二年以内を目途に終局するようにというふうな
法律
構成にできなかったんでしょうか。 私なぜこんなことを言うかというと、普通に行われている
裁判
でも、一年ぐらいで行われている
裁判
でも、
裁判官
の
意識
としては速くやらなきゃいかぬという、この
数値
目標が頭に、目に見えるわけですから、また場合によっては
最高裁
の
検証
の対象になるんでしょう、二年以内の
事件
でも。そうすると、何とか速くしなきゃいかぬ、自分の能力が問われるみたいなことで、早く終わらせよう終わらせようというところに
裁判所
の
訴訟
指揮が流れていきやしないのかなという心配なんですね。 したがって、二年以内であれば
国民
が
納得
するということであれば、何も二年以内のことについてまで言う必要はない、二年以内を目途に終局するようにというふうな規定ぶりでもよかったんじゃないかなというふうに今思っているんですが、この点はどうなんでしょうか。なぜ二年以内のできるだけ短い
期間
内というふうにしたんでしょうか。
山崎潮
81
○
山崎
政府参考人
ただいま御指摘の点でございますけれども、
裁判
の
迅速化
をするに当たって、それでは二年以内であればあとどのぐらい時間がかかっても問わないという形をとりますと、これは本当に
国民
の期待にこたえているのかなという問題点もございますし、それではとにかく二年以内におさまればもうあとはゆっくりやってもいい、二年以内ならということにもなるわけでございまして、果たしてそれで
国民
の期待にこたえられるのかということでございまして、やはり、
充実
した
手続
を行って、それなりの合理的な
手続
を行って、速く進むんだったら速い方がいいというのが
国民
の希望だろうというふうに私ども思います。 そういう点から、これを、二年以内のできるだけ短い
期間
というものを入れさせていただいたわけでございまして、これによって、では
裁判所
はそれでいろいろ、それがあることによってどういう影響を受けるかということでございますが、この
法案
の六条、これは受訴
裁判所
の責務でございますけれども、ここでも、
充実
した
手続
を実施することにより、可能な限り
裁判
の
迅速化
に係るその目標を
実現
するように努めるということをはっきりうたっておりまして、可能な範囲でやりなさいということでございまして、不可能なやり方をしろということを言っているわけではない。ここはきっちりその
法案
の趣旨を周知いたしまして、そういうような運用にならないようにしていただきたい、そういうふうに期待をしているというところでございます。
漆原良夫
82
○漆原
委員
一年で終わるものを無理無理二年に引っ張っていく
裁判官
もいないし
弁護士
もいないのであって、二年と決めたから二年まで引っ張られるということはまずないだろう。むしろ私は、二年以内ということ、二年以内のできるだけ短い
期間
ということによって、
関係
当事者
の責務、全部かぶってくるわけだから、それによって
裁判
の
充実
という点が損なわれる心配があるという、むしろそっちの方の危険度の方を危惧しているわけですよね。 逆な言い方をしますと、
裁判
によっては、
当事者
が多いとか事案が複雑だとか、いろいろなケースがあると思うんですね。そういう
意味
では、一生懸命やっても、とても二年では終えられないというケース、これはあると思いますね。 したがって、
充実
した
裁判
をやるためには、
裁判官
は場合によっては二年を超える
裁判
をする勇気を持つことも必要だというふうに思うんですが、この点はこれでいいですか。
山崎潮
83
○
山崎
政府参考人
まさに御指摘のとおりでございまして、必要なものはやるということでございますので、二年を超えても必要なことはきちっとやるという勇気は必要だというふうに思っております。
漆原良夫
84
○漆原
委員
次に、
当事者
の責務、七条に規定されておりますけれども、
民事訴訟
の
当事者
あるいは
刑事訴訟
の
被告人
については正当な
手続
上の権利の行使、これを妨げるようなことがあってはならないと考えますが、この点について確認のため御答弁を願います。
山崎潮
85
○
山崎
政府参考人
七条の趣旨につきましては、後段で「
手続
上の権利は、誠実にこれを行使しなければならない。」ということをはっきりうたっておりますので、
当事者
の正当な権利利益が害されてはならないということになります。
一般
的には二条の三項にこの規定がございまして、この規定の趣旨が当然ここにも適用になるというふうに考えております。
漆原良夫
86
○漆原
委員
裁判
の
迅速化
については、これまでも
裁判官
の
訴訟
指揮で随分頑張ってこられたわけですね。今後は、
訴訟
指揮だけにゆだねるということではなくて、
充実
した
手続
を実施することが大変重要だというふうに思いますが、どんなことを今、今後の課題として考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
山崎潮
87
○
山崎
政府参考人
この
法律
は
裁判
の理念をうたっているわけでございまして、個別の
手続
については、それぞれの
手続
のところで制度を
改正
していくということでございます。 民事
関係
でいえば、今御承認をいただこうとしております
民事訴訟法
の
改正
、人事
訴訟
法の
改正
、こういうものがその制度に当たるわけでございます。
刑事
につきましては、現在、私どもの検討会の方で、
裁判員制度
とそれから
裁判
の
迅速化
について検討を重ねております。この点について、来年の通常国会には
改正
案を御承認いただこうという手はずで今鋭意検討中でございます。そのように、各
手続
等については各個別の
法律
で
改正
をしていくという考えでございます。 それ以外に、では、
体制
の
整備
をどうするかということでございますけれども、これも八条に
検証
の規定がございますけれども、こういうような
検証
を経て分析をして、それによって
手続
を変えてみる、変えても、まだそれでも十分に
期間
が短縮できないという場合には、それは人の問題、あるいは施設の問題とかを含むそういう人の問題、これが足りないということであれば、そこの
充実
を図っていく、こういうようなことになるわけでございます。
漆原良夫
88
○漆原
委員
最後に
最高裁
にお尋ねしますが、
検証
については、そもそも
最高裁
がなぜ
検証
するんだという問題点があります。なぜ
最高裁
が
検証
しなきゃならないのかということが一点。それから、
検証
に当たっては、法曹三者あるいは学識経験者などの協力、関与が不可欠ではないかというふうに私は思っておりますが、この点についての
最高裁
のお考えをお尋ねしたいと思います。
中山隆夫
89
○中山最高
裁判所
長官代理者 お答え申し上げます。
検証
の結果、いろいろな施策が必要だということになってまいりますと、それは予算をとって実行していかなければならない、そういった実施責任というものがございますし、また、それがなぜ必要かということについての
国民
に対する説明責任という
観点
もございます。そういうことを考えますと、やはり
検証
の最終的な責任主体は国家機関である最高
裁判所
、こういう位置づけでこの
法律
はできてきているのではないかな、提出されているのではないかなというふうに私どもとしては受けとめております。 しかし、この
検証
というものは
最高裁
だけでできるというものではございません。仮に、
最高裁
が自分たちだけで
結論
を出したにしましても、他の
検察官
、弁護人の、法曹二者の協力がなければ
迅速化
というものは絵にかいたもちになってしまうわけでございます。 例えば、
データ
の収集をどうやっていくか、
検察庁
、
弁護士
会にも協力を求めなければなりませんし、分析の仕方、視点、そういったものについての
意見
も聞かなければならないと思っております。また、分析の結果についてどう見るかといったところも、またこれも
意見
をお聞きしなければならないだろうと思っております。さらにはまた、統計の専門家といった学識経験者からの御助力も必要であろうと思っておりますので、そのあたりの適切な仕組みというものをきちんと考えていきたいというふうに思っているところでございます。
漆原良夫
90
○漆原
委員
以上で終わります。ありがとうございました。
山本有二
91
○
山本委員長
午後一時から
委員会
を再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時十三分休憩 ————◇————— 午後一時一分
開議
山本有二
92
○
山本委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。
質疑
を続行いたします。日野市朗君。
日野市朗
93
○日野
委員
きょうは、
迅速化
法、これを
中心
にしながらいろいろお話を進めてまいりたいというふうに思います。 まず、
裁判
の
目的
というのはいろいろあると思うんですね。主な
目的
の中には、それを
迅速
にやろうという
目的
は
余り
古典的なものじゃないんですよ。それが大問題になってきたのは、最近になって、
余り
にもおくれがひどいじゃないかということをマスコミに取り上げられるような
事件
、例えばオウム
事件
であるとか、それとかまあいろいろありましたが、そういう
事件
で、特にオウム
事件
なんかはこれは
余り
にもちょっとひど過ぎる、こういう話がありました。 しかし、気の毒なんですね。たしかオウム
事件
は、あれは弁護人さんたちは国選弁護じゃなかったかな。どう、わかりますか。わかったらちょっと教えてください。
中山隆夫
94
○中山最高
裁判所
長官代理者
被告人
松本智津夫の
事件
についてお尋ねかと思いますが、国選弁護人が十二人でございます。
日野市朗
95
○日野
委員
国選弁護人というのは本当に嫌な
立場
でして、国選弁護で手を抜いたと言われるのが嫌だからみんな一生懸命やらざるを得ないんですよ、国選弁護というのは。私もその経験がありますけれども。松本智津夫の
事件
なんかは、手を抜いたと言われたくない、そのために一生懸命やる、そうするといろいろな問題点が出てくる、それを一つ一つつぶしていくともう大変な時間がかかる、こういうことにならざるを得ない。弁護人さんたちには非常にこれは気の毒な話だな、私はこう思っているんですね。 それで、国選弁護人の話が出たついでにちょっとお話ししておきますが、今
刑事事件
なんというのは特殊な
事件
を除いてはほとんど国選じゃありませんか、特に地方なんか。どうですか。
最高裁
、答えられたら答えてください。私の地方なんかは全部国選だ。私選なんか頼む人はいない。
中山隆夫
96
○中山最高
裁判所
長官代理者 突然のお尋ねで正確なところではないかと思いますが、地裁
事件
でありますと、約七〇%が国選弁護人であったというふうに承知しております。
日野市朗
97
○日野
委員
この話に深入りするつもりはないんですが、
訴訟
費用
をやはり
被告人
にもあれは負担させなきゃだめだ。
被告人
は、
訴訟
費用
を負担しなくたっていいと思うから、私選弁護を頼むよりは国選弁護を頼む。国選弁護人の方が一生懸命やる。これは
被告人
にとってみれば、それは国選でやった方がいい。どうですか。ここまでわかるかどうか。わかったら答えてください。国選弁護で
訴訟
費用
を
被告人
に負担させている
事件
はどのくらいありますか。大ざっぱなところでいいです、ここらになったら。
中山隆夫
98
○中山最高
裁判所
長官代理者 後ほど訂正させていただくかもしれませんけれども、記憶では、有罪を受けた
被告人
のうち二五%が
訴訟
費用
負担であったと思っています。
日野市朗
99
○日野
委員
それ以外は
訴訟
費用
負担なし、こういうことですね。 この点は、ちゃんとしないと、本当に世間の疑惑を招きますよ。松本智津夫の弁護人なんというのは、あれは一体何だ、と極悪人みたいに言われる。それから、著名
事件
の弁護人、それも恐らくは国選でやっているに違いない。そういうのは極悪人であるかのように世の中やマスコミからののしられる、ののしられる。こんなばかな話ないんですから、これはきちんとやはり
被告人
に
訴訟
費用
を負担させて、こういうものなんだということをちゃんとわかるように、
一般
の人たちがわかるようにしておかなくちゃいかぬです。どうも、ちょっと済みません、別の話に飛んでしまって。 結局、一番大問題は何なのか、
裁判
における重大問題は何か。それは、きちんとした事実認定、実体的な真実、それが何かということ、これを認定していくこと。具体的な、実体的な真実の発見、これが
裁判
の非常に重大な役割であったし、重い重い課題だったんですね。ところが、私は、この実体的真実を発見していくというためにはある程度
裁判
に時間がかかる、これはしようがないなと思うんですよね。
大臣
、いかがですか。
森山眞弓
100
○森山国務
大臣
おっしゃるとおり、事実の確認ということが重要な要素でございまして、そのためにある程度の時間がかかるということは
現実
であり、やむを得ないことかと思います。 しかし、それが
余り
にも長くかかりますと、仮に後で事実が長い間かけてやっとわかりましても、その結果
余り
実益がないというようなこともあることもあるんじゃないかというようなことがありまして、世の中が大変忙しくなっておりますので、非常に
結論
を急ぐという人が今はふえてきているのではないかというふうに思います。
日野市朗
101
○日野
委員
まず、問題を
刑事事件
に限ってみようと思いますね。 昔の話で恐縮です。でも、
大臣
はこの
事件
のことは知っていると思う。松川
事件
なんというのがありましたね。それから、八海
事件
なんというのもありましたね。いずれもこれは再審で無罪になっています。これが再審で無罪になるためには、再審以前の
裁判
、一審、二審、三審、これは非常に時間をかけて、非常に丁寧な
審理
をやった。これが、最終的に再審が認められて
被告人
たちが無罪になっていったということと
関係
があると私は思うのですよ。やはり、二年というような決め方というのはいかがなものか、こう私は思わざるを得ないです。 大体、
司法
というのは回顧的なものです。
司法
というのは回顧的です。少なくとも、リアルタイムで
裁判
が発生するなんということは、これはないわけでありまして、ある
事件
が起きる、しばらくしてそれが発覚をする、民事でいえば問題化してくる。そういうことですから、どうしても後ろ向き、回顧的であること、これは
司法
の宿命だ、そう私は思っておりますが、こういう回顧的なもの、しかも、それが個人の人権にかかわっていき、世の中の正義にかかわっていく、そういうことになると、これはもう時間がかかる、
事件
によっては時間がかかっていく、これはしようがないことだと思いますが、
大臣
もそうは思いませんか。
森山眞弓
102
○森山国務
大臣
おっしゃるように、事実を解明して確認をするということが何よりも大事であって、そのために、いろいろな方向からいろいろな証人を立て、いろいろな
証拠
を調べて調査をする、
審査
をするということになりますと、時間がかかるのはある程度はやむを得ないことだと思います。
日野市朗
103
○日野
委員
そのある程度が問題なんだな、そのある程度というのがね。どこをもってある程度とするのか。 この条文の決め方を見てみましょう。二年以内のできるだけ早い時期に、こういうふうになりますわね。条文によりますと、「第一審の
訴訟
手続
については二年以内のできるだけ短い
期間
内にこれを終局させ、」となっている。これを「目標として、」というふうになっていますが、そもそも、これはどういう
意味
です。
日本
語の通常の用語例から見ると、二年以内に決めなさい、しかもできるだけ早く決めなさい、こういう読み方ができるのですよ、これは。そう思いませんか。
山崎潮
104
○
山崎
政府参考人
この二条一項の
意味
でございますけれども、二年以内ということがまず目標でございますが、その中でも、なるべく、できる限り短い
期間
ということでございまして、
委員
御指摘の
意味
合いと同じでございます。
日野市朗
105
○日野
委員
私は、この第二条の読み方というのは、とにかく二年以内は、二年というのは最高限度ですよ、それ以内に決めなさいよ、こう読めますよ、こう言っているのですが、事
務局長
、今の答えでいいのかな。
山崎潮
106
○
山崎
政府参考人
これは目標でございますので、まず二年以内という目標、これが一つの目標でございます。その中でもできる限り短くしなさいという目標でございます。
日野市朗
107
○日野
委員
目標にしなさいということですな。この目標という言葉の
意味
ですが、二年を目標にしなさい、それより先は認めませんよというふうにも、目標という言葉はとれませんか。どうでしょう。
山崎潮
108
○
山崎
政府参考人
目標は、それを目指せということでございます。ですから、ほかの条文のところでも、「可能な限り」とかそういう文言を使っていると思いますけれども、目標はあくまで目標でございます。
日野市朗
109
○日野
委員
目標はあくまでも目標だ。じゃ、この目標というのは、容易に、簡単に動かすことができるのかどうか。どうですか。
山崎潮
110
○
山崎
政府参考人
これは、それを目指して目標にしなさいと言っているわけですので、そう簡単に動かすということではないというふうに理解をしています。
日野市朗
111
○日野
委員
そうすると、二年以内のできるだけ短い
期間
、これを目標とすべきだ、こういうふうに読めるんですね。それとも、二年が目標なんですか。二年以内のできるだけ短い
期間
が目標なんですか。
山崎潮
112
○
山崎
政府参考人
まず、二年を超えるような
事件
が仮にあったとして、まず第一の目標は、二年以内におさまるように
努力
をする、これを目標にしなさいということでございます。 その目標を達したら、じゃ、二年ぴったりでやればいいのかということではございませんで、その中でも
努力
してできるだけ短い
期間
でやるようにと。 それからもう一つは、今、二年以内におさまるであろうという
事件
もあるわけでございます。こういうものに関しましても、
充実
した
手続
をすることが前提でございますけれども、その中でもいろいろ
努力
をしてなるべく短い
期間
でやってほしい、こういう二つ、目標が掲げられているということでございます。
日野市朗
113
○日野
委員
今ずっと
山崎
事
務局長
の言われた答弁というのは、私を
納得
させていません。私はあくまでも、
日本
の通常の用語例からいって、私が今述べたように、二年というのは上限である、それ以上は許しませんよというふうにも読めますよ、こういうふうに主張している。その方が
日本
語の通常の用語例からいったら正しいと私は思っているわけですね。 まあ、それはそれとして、じゃ、事
務局長
の言われるような解釈に基づいたといたしましょう。これが
裁判官
の官僚組織、あえて私は官僚組織と言いますよ、キャリア
システム
とよく言われるものの中に取り込まれたとき、どういう
意味
を持つというふうにお考えになりますか。
山崎潮
114
○
山崎
政府参考人
これが
現実
の
裁判
に投影されたときでございますけれども、
裁判官
としては、一応この目標は二年でございますので、その二年で
審理
が十分終われるかどうか、そういうところで目標を立てるということには当然なろうかと思います。 ただ、
事件
は、じゃ、その二年以内に何でもかんでも終わらせればいいということを言っているわけではございませんので、この二条の一項でも、「
充実
した
手続
を実施すること」ということが前提が入っておりますし、また、受訴
裁判所
の責務として六条の規定もございますけれども、ここでも、「
充実
した
手続
を実施することにより、」ということと「可能な限り
裁判
の
迅速化
に係る」「目標を
実現
するよう努める」と言っているわけでございまして、そういう
意味
で、目標にはいたしますけれども、実体的な真実、その発見をきちっとやってそこに達しなかったもの、これはこれとしてやむを得ないということでございます。
日野市朗
115
○日野
委員
現在の
裁判所
の組織というのはそうはなっていないんですよね。
裁判官
は一人一人独立だといいながら、実際は上命下服。下の方の
裁判官
が上の方の
裁判官
に逆らうというようなことなんかできない。しかも、国の方からこうこうこうだよと言われればそれに右向け右で従っているというのが
裁判官
の
現状
でありますね。あなたも
裁判官
出身だからあなたもそうやっているのなんていうやぼな聞き方はしませんが、そういうものが
現実
だと私は思っていますし、皆さんそう思っておられるに違いない。だから、この第二条の文言を見れば、二年以内にとにかく決めてしまわなくちゃいかぬ、
裁判官
としてはこういう発想になるに違いない。こういう危険をあなたは考えませんか。 第六条を今あなたは引きました。第六条についてこれからまた質問しますが、二年以内というふうに決められたら、二年以内にみんな決めてしまおうということで
裁判官
は動き出すだろうというふうに私には思えるわけでありますが、どうでしょうか。
山崎潮
116
○
山崎
政府参考人
今、
裁判官
といいますか、
裁判所
についての御指摘がございましたけれども、私の認識としては、必ずしも
委員
が御指摘のような実態というふうに理解はしておりません。 それからまた、国の言い分がこうである、AならAということであればそのAの
結論
になるというような御指摘もございましたけれども、私、訟
務局長
を経験しておりますけれども、国が随分負けております。そういう実態にもございます。負けるべきものは負けるということでございまして、決してそういう実態にはないのではないかというのが私の認識でございます。 ただ、ここで今二条の問題について御指摘がございますけれども、先ほどちょっと申し忘れましたけれども、この二条の三項もございまして、「
裁判
の
迅速化
に当たっては、
当事者
の正当な権利利益が害されないよう、
手続
が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」これもございまして、
当事者
の権利も確保をきちっとしなければいけない。それから、やはり六条のように、可能な範囲でやりなさい、最大限
努力
をしなさい、こう言っているわけでございまして、目標は目標として、その目標がひとり歩きしないような手当てをこの
法律
の中できちっとしているというふうに御理解を賜りたいと思います。
日野市朗
117
○日野
委員
それで、まずここで二年という
期間
、これからこれを問題としながらずっと私の質問が続くわけだが、この二年というのを決めたのは、だれが決めたんですか。
大臣
、どうですか。二年というのを決めたのは、だれが決めたのか。非常に大事なことですよ、これは。 さっき私は言いましたね。この
迅速化
というのは古典的な
裁判
の一つの命題ではないと私は言いました。だれですか、この二年というふうに決めたのは。
山崎潮
118
○
山崎
政府参考人
午前中にも答弁させていただきましたけれども、きっかけは、私ども本部のところにございます顧問
会議
、この顧問の
方々
、八人でございますけれども、その一致した見解として、二年以内にということが提唱されました。その顧問
会議
の席上で小泉総理
大臣
も同様に、二年以内に終局するようにという御発言がございました。これをきっかけに検討が始まったということは間違いございません。 その検討していく
段階
で、これが本当に二年が適当なのかどうかということを我々事務局の方でまず判断いたしました。これに関しましては、まず
国民
が
納得
する
期間
というポイントが必要であることが第一点でございます。それから、
現実
に
国民
が
納得
するといっても、これが
実現
できないような
期間
であればこれはまた問題であるということで、やはり
実現
可能性
という問題も考えたわけでございます。 ここの審議でも再三出ておりますけれども、
民事事件
それから
刑事事件
についてはかなりの程度、これは二年以内を達成しているわけです。そういう実態から見ると、もうちょっと
努力
をすればそういうものは二年以内におさまっていく、そういうような発想でございます。 仮にこれが一年となりますと、とてもじゃないけれども一年ですべての
事件
をというのは不可能でございます。では、これを三年というふうに考えたときに、三年が、これは一審だけでございますので、果たしてそれが
国民
が
納得
していただけるかどうかというポイントがひっかかってしまうということでございます。 これが、例えば控訴されまして最終的にそこで確定をしたとしてこれが執行に移っていく、そのときの全体の長さを考えたときに、
国民
が、その
紛争
が生じて
解決
するまでにどのぐらいの
期間
が必要か、どのぐらいなら忍耐が可能であるか、こういう全体を考えながら行いますと、一審、少なくとも二年、そこを目標にしてもらわなければならない、こういう
結論
に達しまして、内閣の方でお決めをいただいた、こういうことでございます。
日野市朗
119
○日野
委員
やはり今の説明を聞いていて、私はどうかなと思いますよ。例えば手形
訴訟
なんかは一カ月。一カ月だったかな、ちょっと忘れちゃったが、非常に短い
期間
ですわな。とにかく、
日本
の
裁判
が経済の動きについていっていないことだけは間違いない。もしこれが経済の動きを追いかけての話であれば、これは一年、大体一年ということになるでしょうね。 それから、三年では長過ぎるという話がありましたが、今だって三年なんてかかっている
訴訟
というのはそんなにないんじゃないですか。どうなんでしょう、そこいらは。
山崎潮
120
○
山崎
政府参考人
三年を超える
事件
ということで、民事で考えますと、三年以上四年以内という件数が全体の一・六%ということでございます。それから、四年から五年の範囲内が〇・七%、五年以上が〇・七ということですから、全部で三%という
数字
でございます。
刑事
で考えますと、全体として〇・二%という件数でございます。
日野市朗
121
○日野
委員
お話を聞いていますと、三年以上が一・五%、四年から五年が〇・七%、こういう
数字
でございますから、三年以上だってそんなに違いやしないじゃないの、こういう感じがするんですね。 何で私、特に強くそのことを考えるかというと、よく
数字
を挙げられる場合に、二年以下の場合は何%と、こう言いますね。しかし、特に問題は民事ですね、民事でいうならば、欠席
裁判
で決まってしまうもの、それから和解で決まってしまうもの、そういった短時日で決まってしまうものも全部入っている。つまり分母は、そういうものが非常に多くて、多くの数がそういう
事件
で含まれているわけで、三年以上の一・五%だって、現在言われている何%と言ったかな、それと私はそう大差ないというふうに思いますが、どうでしょう。
山崎潮
122
○
山崎
政府参考人
パーセンテージで申し上げれば、先ほど二年以上のもの七・二%ということでございますから、その半分ぐらいという形に、半分弱ということになりまして、それは見方によっては大差がないというふうに御指摘もございますけれども、これは全体の分母で掛けていきますと、七・二%というのは一万一千四百件ぐらいでございますから、その半分弱としても結構な件数があるわけでございます。 こういうものについて、それはどんどんどんどん、じゃ四年にしたらどうかという、五年にしたらどうかという、計数上はそれほど大きな開きはないかもしれませんけれども、何か
紛争
が起こって、最終的にこれが
解決
して新しい出発をできるというために、それで一審だけで三年ということになりますと、三年かかる
事件
というのは、多分かなり複雑な様相を呈している
事件
だろうと思います。そうすると、控訴審に行ってまた時間がかかる、執行でも時間がかかるということで、現在の時代が、かなり速くなっている時代に、一審で三年ということが果たして正しいかどうかは、これはもう
考え方
の相違だろうと思いますけれども、私はそれでは長過ぎるというふうに考えております。
日野市朗
123
○日野
委員
これは
考え方
の相違というよりは感じ方の相違だと思うな。今、事
務局長
、複雑な様相を呈している
事件
、三年以上かかっているのはそういう
事件
だというふうな言い方をされましたね。私もそうだと思うんですよ。 そうすると、二年以上かかるというのもやはり複雑な様相を呈する
事件
なんじゃないんですか。それ以外の
事件
はぱんぱんと決まっていくわけだ。欠席、認諾、和解、そうやって決まっていくわけで、私はここで二年と決めることが非常に問題だというのはさっきも言いましたが、
裁判官
に与える影響、それから、代理人に与える、弁護人に与える、それぞれ二年と決めることによる影響というのが出てきます。そうすると、私は、さっきから言っている実体的真実の発見ということと二年と決めることがここでかなり衝突するんじゃないか。そのことを私は心配しているんですね。 だれですか、この二年と決めたのは。それは顧問
会議
がそう決めたというのは、これは形式です。結局は総理
大臣
のあいさつがあるわけですね。ここで総理
大臣
が、二年ということを、
数字
を言ったからそう決まったんじゃないんですか。どうですか。
山崎潮
124
○
山崎
政府参考人
先ほどもお答え申し上げておりますけれども、顧問
会議
の顧問の
方々
の発言、それから小泉総理
大臣
の発言、これがきっかけになったことはそのとおりでございます。 ただ、この問題は
司法
、いわゆる
裁判
のやはり独特の場面の問題でございます。ですから、私どもとしては、また独自の検討をいたしまして、最終的には
結論
が一致したということでございますが、この案文に関しましては、私ども事務局の方で責任を持って二年ということで内閣全体の方に御承認をいただいたということでございまして、最終的に決めたのは内閣全体だということでございます。
日野市朗
125
○日野
委員
それは、二年にその焦点を決めて、二年ということに合わせようと言えば理屈は幾らでもつくんだよね。だから、二年に決めるか、一年にするか、一年半にするか、二年半にするか、三年にするか、ここいらは政治的な判断だ、私はそう思うんですな。私は、この二年というのは非常に重いと思う。 ぜひ、これを決めた人にここに来て、そしてそれを説明してもらおうじゃないの。どうですか、皆さん。二年に決めた人に、二年と、最初にそう言った人、つまり内閣総理
大臣
だ。ここに来て、ちゃんとそれ、説明してもらおうじゃないの。これ以上、私、この二年というのは非常に大事な問題だから、ちょっとそれ、やってくださいよ。
山本有二
126
○
山本委員長
ただいまの御要請につきましては、
理事
会でしかるべく検討させていただきます。
日野市朗
127
○日野
委員
私、今何回も言ったように、二年というのは大事なんだ。しかも、これは実体的真実の発見と矛盾する、私はそう思う。だから、これは、
裁判
に携わってきた人間とすれば、実体的真実をいかに発見していくかということについて、二年と限られたら、これはたまったものじゃないんだね。 ですから、私は、二年と決めた
理由
を、ちゃんと内閣総理
大臣
にここに来て説明してもらいたいと思う。そうでなければ、私、これから先の質問できません。
山本有二
128
○
山本委員長
質問者に申し上げます。 ほぼ与野党の合意で、総理が当
委員会
に
出席
をするという方向で合意しておりますので、その旨、御了承ください。
日野市朗
129
○日野
委員
内閣総理
大臣
がこれは責任者ですよね、この
司法改革
の。だから、ここにちょっと顔を出して、顔を出して顔を立てれば事は済むという問題じゃない。これは我が党の
理事
にも申し上げたい。節目節目に来ることが大事なんだ。そして、大事な問題に答えることが大事だ。私は、この
司法改革
の問題については、節目というのは幾つかある。しかし、最も大事な問題は、この二年の問題と、もう一つは
裁判
員の問題だ、こう思っているわけね。そこに来てもらわなくちゃいかぬよ。顔を出してもらったぐらいじゃ、とても
納得
できることじゃない。ちょっと協議してください、みんな。
山本有二
130
○
山本委員長
速記をとめておいてください。 〔速記中止〕
山本有二
131
○
山本委員長
速記を起こしてください。 質問者からの御要請の趣旨を踏まえて、副本部長たる
法務大臣
が総理の意を体してお答え願いたいと存じます。
森山眞弓
132
○森山国務
大臣
先生の御疑問はよくわかります。 総理が二年という言葉をお出しになったときのことも、私もたまたま同席しておりまして、総理の考えもわかっているつもりでございます。 その
理由
は、この
法案
で申しますように、
裁判
の
迅速化
ということが非常に世間、
国民
の求めるものの重要なテーマであるということがありまして、しかし、そのために
拙速
になってはいけない。
裁判
の
迅速化
の趣旨に関しまして、
裁判
の
迅速化
に当たっては、
当事者
の正当な権利利益が害されないように
手続
が公正かつ適切に実施されるということが確保されなければならないというふうに
法案
にも書いてございますように、そのようなことも含めて総理は言われたのだと私は思っておりますし、先ほど、なぜ二年かということについて事
務局長
が御説明を申し上げました。合理的な範囲で、できるだけ内容を
充実
させたもので、できるだけ早くということで、また
国民
が
納得
できる長さというようないろいろなことを考えられ、そして
現実
に
実現
できるかどうかというようなことから二年という言葉が出たのだと思います。 しかし、その二年というのが絶対的なものであって、すべての
裁判官
あるいはあらゆる
裁判所
をこれで拘束するというものではございませんで、事
務局長
が申しましたように、できる限りの
努力
をして二年を目標として短縮するというような趣旨であると私は考えておりますし、総理の御趣旨はそのような気持ちであろうというふうに考える次第でございます。
日野市朗
133
○日野
委員
まあいいか。 しかし、私の問題
意識
は御理解いただいたと思いますから、これは
法務
省も、それから最高
裁判所
も、この
法律
の運用に当たってはしっかりした、人権を守るという
意識
、実体的真実発見のために努めるという
意識
、これをはっきり持ってもらわないと大変困ったことになると私は思いますね。 何でもかんでも二年以内に決めちゃうんだからなというようなことでどんどん
訴訟
手続
が進められては、
裁判
が
裁判
ではなくなっちゃう。
裁判
というのは、そもそも王権の横暴に対していかに人民を守るかというところから始まっているわけですから、そこが忘れ去られるようなことになる、そんなことには絶対ならないようにひとつ
最高裁
も、後でまた聞きますが、
検証
なんということもやるわけだから、そのときにこれが三年かかったのはけしからぬじゃないかなんということにならないように、ぜひともその点は心して法の運用に当たっていただきたい、こういうふうに思います。 では次に、第二条の、やっと第一項が終わりました、第二項に移ります。 これは非常に、読み上げますよ、この第二項。「
裁判
の
迅速化
に係る前項の制度及び
体制
の
整備
は、
訴訟
手続
その他の
裁判所
における
手続
の
整備
、
法曹人口
の大幅な増加、
裁判所
及び
検察庁
の人的
体制
の
充実
、
国民
にとって利用しやすい
弁護士
の
体制
の
整備
等により行われるものとする。」まあそうなんでしょう、客観的に見れば。一体だれですか、これをやるのは。責任者はだれか。
山崎潮
134
○
山崎
政府参考人
この責任者、複数ございます。 この後の三条、国の責務がございます。それから四条が、これは
政府
の責務でございます。五条が
日弁連
の責務というふうに順番につながってまいりますけれども、ここに書かれていること、全面的には、まず
政府
の責務がかぶってくるということでございます。もちろん、それから三条の「国」もそうで、国の中には
立法
府も含みますし、
裁判所
も当然含まれるということになります。ですから、国、
政府
は全面的にかぶってくるということでございます。 それとともに、
弁護士
体制
ですね、「
国民
にとって利用しやすい
弁護士
の
体制
の
整備
」。ここは、
法案
のようなものに関しましては確かに
政府
の責任になりますけれども、これができた後、実際にそれをどのように運営していくかという問題につきましては、
日弁連
の責務という問題があるということでございます。
日野市朗
135
○日野
委員
そんなことであれば、これは、三条、四条、五条、ここいらとのかかわりでもっと別の書き方があったんじゃないのという、そこいらはまあいいとして、この責任ですね。これは容易なことじゃないんですよ。 なぜかというと、今まで我々は、
裁判
を
迅速化
するためには、まず法曹をふやさなくちゃいかぬ、それから
裁判所
の建物、特に法廷、これをふやさなくちゃいかぬ、今も
裁判所
で行われている一日おきの勤務、宅調なんという制度、これをなくさなくちゃいかぬ、こういうことをずっと言ってきたわけですね。ところが、なかなかそれが前に進まないでここに来た。 これからそういった
努力
が、どうなんですか、それぞれの責任者によってしっかりと行われるという保証はどこにあるんですか。
山崎潮
136
○
山崎
政府参考人
まず、責務を
法律
で課しているわけでございますから、これを当然履行するということは、その
法律
で決められている話でございます。一つそこの問題がございます。 ですから、やらざるを得ないということと、もう一つは、後ほど出てくることかもしれませんけれども、八条で
検証
がございます。
検証
に基づいて、やはりどういう制度が足りないのか、
改正
をしなければならないのか、あるいはどういう
体制
をつくり上げていかなければならないか、こういうことが
検証
されるわけでございます。その
検証
された結果に基づいてまた責務に戻ってまいりますので、それに基づいた責務を果たすということになるわけでございまして、そういうことでその責務を果たしていく、こういう仕組みになっているわけでございます。
日野市朗
137
○日野
委員
言うなれば、ここに書いてあることは言わずもがななんですよ。随分今まで、ここに書いていなくても、
努力
はしてきたと私は思うんですよ。
裁判所
における
手続
の
整備
であるとか、
法曹人口
の大幅な増加であるとか、人的
体制
の
充実
、
国民
にとって利用しやすい
弁護士
の
体制
の
整備
、こんなことは言わずもがな、この
法律
がなくたって当然今までもやってこられなければならなかったし、これからもやらなければならないこと。そうじゃありませんか。
山崎潮
138
○
山崎
政府参考人
御指摘のように、当然やるべきことはやらなきゃいかぬ、
法律
があろうがなかろうがやらなきゃいかぬということになろうかと思います。 ここの
法律
の
意味
は、二年という目標を立てるわけでございまして、その目標を立てながら、実際に
検証
をしてみて、そこに至らないのはどういう原因があるのかということを具体的に出すわけでございまして、今までは具体的な目標よりも割合抽象的な目標でございまして、例えば人をふやそうということで、では具体的にどういうふうにふやしていくかというようなところはなかなか出てこなかったわけでございます。 これで目標はできますので、その目標に向かって何がどのぐらい足りないかということが
現実
に出てくるわけで、それに向かって具体的な
努力
をきちっと
法律
で決めてやっていきましょうということでございまして、事実上今までずっとやってきたこと、これをきちっと法的に正式なものにして、かつ具体的な目標を持って具体的に進んでいく、こういうことを可能にする
法律
だということでございます。
日野市朗
139
○日野
委員
そうすると、今まで我々は随分主張をしてきた。まず法廷をふやしなさい、
裁判官
をふやしなさい。まず、法廷がなければ
裁判
は開けないわけだから、法廷をふやしなさい、それから
裁判官
をふやさなくちゃとてもやっていけませんよと。こういうことを主張してきたが、なかなか国の予算として、法廷を新設する予算なんというのは聞いたことがない、ここのところ。それから、
裁判官
、これは定員法でちゃんと決まっていて、その定員法での
増員
も微々たるもの。これをちゃんとやっていくということを約束できるんですか、どうですか。
法務
省。
山崎潮
140
○
山崎
政府参考人
この
法律
では、八条でそういうような
検証
をしていただきまして、具体的に何がどれだけ足りないかというところまである程度出していただいて、それに伴った
実現
、これにつきましては、国、
政府
含めて、最大限の
努力
をするという
システム
でございます。
日野市朗
141
○日野
委員
いや、私も随分、
最高裁
の
方々
やそれから高裁の長官だとかそういう人たちといろいろ
裁判
の
迅速化
のための話をしてきたんですが、彼らが言うには、現在の
裁判官
の定数、法廷の数、それから下級審の
裁判官
の数、これをアプリオリなものとして、もう議論以前に決まっていることだ、ここは動かせないとして議論するのね。だから、それじゃ議論は進みようがない。 ちゃんと大胆に、
裁判官
をふやしましょうよ、法廷の数もふやしましょうよ、こういうことをこの
法律
によってできるようになるのかどうか。
検証
によってなんというと、
裁判官
、
最高裁
の
裁判官
なんというのは特におかたい、おかたいと言ったらいいのか憶病と言ったらいいのか、なかなか前に一歩踏み出そうとしないが、一歩も二歩も踏み出して
裁判
の
迅速化
のために人も物もふやしていくという
努力
ができるのかどうか。特にこれは
法務
省なんかにもぜひ伺っておきたい、
検察官
のこともありますから。いかがですか。
寺田逸郎
142
○寺田
政府参考人
おっしゃるとおり、これまでも、
検察官
を含めました国の側の
体制
の
整備
につきましては、しばしば御議論をいただきましたし、また、しばしば具体的にどう変わる必要があるのかという御指摘もいただいているわけでございます。幸いにいたしまして、私ども、この
法務
委員会
での御議論もいろいろとバックアップということに位置づけさせていただいて、今年度の予算にもかなりの人的な
体制
の
整備
としての増加を図らせていただいているわけでございます。 ただ、今までの
体制
整備
は、どちらかといいますと漠然と、人が足りない、もう少し人をふやすということになればもう少し
スピードアップ
するだろうというレベルにとどまっているわけでありまして、一体どういう構想でこれから
司法
全体の
体制
整備
をしていくかという位置づけがなかったわけでございます。 この
法案
は、強いて言えば、そういうところに非常に大きな
意味
づけを、これから私どもの人的
体制
の
整備
について与えてくれるだろうというように確信しているわけでございます。
日野市朗
143
○日野
委員
今まで漠然としていたと言うけれども、手のつけようがなかったというのがむしろ正しいんですよ、言い方として。大体もう、午前中にも話が出ていたけれども、一人の
裁判官
が何百件も
事件
を持つ、一人の
弁護士
も百何十件も
事件
を持つ、こういうことじゃなかなか手のつけようがないというのが
現状
だった。しかも、物的な施設も少な過ぎて、月、火、水はどの部が法廷を使う、火、水、木はどの部が使う、みんなこう決められていて、もうとても手のつけようがなかったというのが私は本音だろうなというふうに思います。 今度こういう条文ができたんですから、これをよりどころにしていろいろ応援しましょう、
裁判所
にも
検察庁
にも。応援していくことにやぶさかではありません。これが十分に効果を発揮することをひたすら祈ってやまないというところであります。 では、今度は第三項に行きます。 さっきから私が心配しているのは、二年という
期間
を決めることによって
当事者
の正当な権利利益が害される心配、
手続
が公正かつ適正に実施されることが確保されない心配、これを私は言ってきたわけですね。 ところで、「
手続
が公正かつ適正に実施されることが確保されなければならない。」こう書いてあるわけなんですが、さて、それを担保するものは何ですか。
山崎潮
144
○
山崎
政府参考人
この点につきまして、
現実
に
当事者
の権利利益が害されるおそれがある事態が生じるとした場合には、まず個別の
事件
で当然問題になるわけでございまして、
一般
的に問題になるわけではございませんので、まずその
訴訟
手続
内でこれを救済していく、
異議
申し立てとか不服申し立て、これは当然ございますので、まずそれを第一次的には活用していただきたいということでございます。 それで、どうしてもそれで承認が得られなかったということになれば、これは上訴しましてそこで是正をしていただくという、これがまず、
裁判制度
は三審ございますので、そういう中で救済をしていくというのが第一次的な救済方法だということでございますし、また、この
法律
で、
当事者
の権利利益を害してはならないということをはっきり書いているわけでございまして、それの周知徹底ということですね。 それで、皆様にこういう
考え方
、
当事者
の権利利益を害してはならないという
考え方
で運営をしていただくということがまず大前提になりまして、いろいろな問題が起これば、それは個々の
手続
内でも
解決
をしていただくということになろうかと思います。
日野市朗
145
○日野
委員
既存の
手続
をちゃんと使いなさいということを言われたわけですね、もちろんそれは必要なことでありますが。 ここで私も考えなくちゃいけないのは、
裁判所
が
訴訟
手続
をするに当たって、
当事者
主義というものをきちんと守っていくこと、これが大事だと思うんですが、この二年という期限を決める、一応二年というのは決まっているわけですが、さらにそれを超える
事件
があったりなんかすることは、これはいっぱいあり得るわけです。何もこれは世間の耳目を聳動する
事件
ばかりじゃなくて、もっと地味な
事件
でも、法理論的に難しい点がある、それから事実認定が非常に難しい、それから証人が遠隔の地にある、例えば外国にいるとか、そういうことによって難しいことが予測される。そういうとき、
裁判官
それから両方の
当事者
、それらの間できちんとした共有がなされるということが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
山崎潮
146
○
山崎
政府参考人
確かに、
訴訟
の進行に関して、これは
裁判所
だけが一方的に決めるという話ではございません。もちろん、民事でいえば
原告
、被告ございますし、
刑事
でいえば
検察官
、
被告人
、両方、弁護人も含めてあるわけでございまして、それぞれのいろいろな協議に基づいて、最終的にはそれは
裁判所
が判断するということになろうかと思いますけれども、少なくともそれぞれの
意見
をきちっと聞いた上で決めるというのは当然であるというふうに思います。
日野市朗
147
○日野
委員
そういう当然なことを当然のこととして行われなくなるのではないかというのが私の心配なんですね。もう二年と決まっているんですよ、あなた何言っているんですか、こういう
訴訟
指揮をやられたらたまったものじゃない。 そういう
訴訟
指揮は行われないのだということを、あなた、ここではっきり断言できますか。
山崎潮
148
○
山崎
政府参考人
今
委員
の御指摘の心配があるということから、私どももそこは
意識
して、六条の受訴
裁判所
の責務、この中に、
充実
した
手続
を実施しなければならぬということと、可能な限りその目標を達成できるように
努力
をするということを書いているわけでございまして、これは法できちっとうたっているわけでございます。まずこの周知徹底が一番重要であるというふうに私は思います。 それぞれみんなこの条文をきちっと
意識
をしていただいてその運営に当たっていただきたいということでございまして、制度をつくるときに、これを破る人たちがたくさんいるということの前提で考えるわけではございませんで、まず、つくったらそのとおり守ってもらう、こういうところからスタートをしたいというふうに思っております。
日野市朗
149
○日野
委員
私も何度も何度も言いますが、まあ何というかな、まじめ過ぎる
裁判官
のキャリア
システム
、そういうものがやはり私は気になって気になってしようがない。ですから、今の答弁のようなこと、これが本当は正しい解釈なんですよということですな。万が一にも二年以内に全部決めてしまおうということではないのですよということを、はっきりとこれは周知徹底をするということ、これが必要なんだと今おっしゃった。 それを、
裁判所
も
法務
省も、
弁護士
会もですが、これをちゃんと徹底するような
努力
をするということを今お約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
中山隆夫
150
○中山最高
裁判所
長官代理者 先ほど来からの
委員
、先生方からの議論をお聞きしておりますが、
裁判所
にとって
裁判
の適正というのはいわば生命線であります。これをゆるがせにして何の
迅速化
だと思っております。
迅速
にはなったけれども粗い
審理
であるというようなことになると、これは論外でありますので、今回の御議論あるいは法の精神というものについては、
裁判官
でそれぞれ自戒しながらきちんと認識を深めていくようにしていきたいというふうに考えております。
寺田逸郎
151
○寺田
政府参考人
かねてから
裁判
の
迅速化
ということについて、検察側も、あるいは司
法制度
をつかさどる
法務
省といたしましても、非常に関心が強かったところでございます。今回、
司法制度改革
の一環としてこのような
法案
ができたということは、全国の検察あるいは
法務
省のこぞって重大な関心事となっております。この
法案
がいかなる趣旨であるかということは、当然のことながら、私ども十分に部内にも徹底をさせたい、このように考えております。
日野市朗
152
○日野
委員
弁護士
会はおりませんが、
弁護士
会もちゃんとその趣旨を体しておやりになるというふうに思います。 それで、ちょっと
観点
を変えるんですが、
弁護士
会から
資料
が出ているんです。その中に、本人も証人も調べない
裁判
がふえているんだというようなことが書いてあるんです。私も、一体これは何のことだろうと思って、聞いてみました。そうしたら、あるんだそうですな。どういうことかと思ったら、
証人調べ
も
本人尋問
もやらないで、陳述書みたいなものを出させて、それによって物事を決める、
判決
をしていく、そういう
裁判
が何かこのごろあるんだ、こういう話なんですな。 私としては非常にこのことは理解しがたいことなんですが、このことについて、
最高裁
は御存じになっているところはありますか。
園尾隆司
153
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 ただいまお尋ねの点に関しまして、私の認識をしておるところを申し上げたいと思います。 私は、この九年
余り
東京地裁
の民事部で
裁判長
をやっておりましたが、確かに、そこでの経験によりますと、御指摘のようなお話を
弁護士
の方から聞いたことがございます。ただ、最近におきましては、
争点
を整理して、絞り込まれた
争点
について必要にして十分な
人証調べ
をするというような動きもあることも事実でございまして、その結果、
人証調べ
の人員が絞り込まれておるということもございます。 具体的な
事件
につきましては、必要にして十分な
人証調べ
の人員数がどの程度かということにつきましては、
訴訟
指揮にかかわることでございますので、
最高裁
の事務当局がこの点についてせんさくをすべき事項ではないというふうに考えておるところでございますが、今後とも、必要にして十分な
人証調べ
というのはどのようなものかということにつきまして、各
裁判
体において
当事者
との議論もよくしながらしっかりと検討されるべき内容であるというように認識をしております。
日野市朗
154
○日野
委員
今のお答えですと、やはり大事なことについては証人なり本人なり調べて、そしてそこで心証を得るということでありましょうから、今お答えになった点で問題はないというふうに私は思うんですね。 あとは、何を調べるかなんというのは、これは十分性の問題ですから、
訴訟
指揮で十分問題は
解決
できるわけでありますが、私、心配するのは、
迅速化
の問題とこの問題はかかわり合ってくるということですね。
裁判
を
迅速
にするためには、もう人証はいいから陳述書でも出しておきなさいというようなことで決まったら、これもやはり
裁判
としては非常に重大な問題を含んでいる、制度として重大な問題を含んでいるというふうに思わざるを得ない。 なぜかといいますと、やはり
裁判
が信用される、
裁判
は実体的真実の究明をやっているということが一応信じられるということにならなければ、
裁判
に対する
信頼
性というのは失われるわけですね。 ですから、実体的な真実の究明、これが行われているというのは何をもって行われているかといえば、独裁者がこれが真実だと言って真実だというふうに真実が確定される国では
日本
はないですから、そこではやはり
当事者
主義で、お互いに
当事者
主義でやっているから、尋問をし、反対尋問を行い、また最終尋問を行いというような形で
当事者
主義が守られているから、だから一応
裁判
というのは真実を追求しているということがわかるわけでして、もし
訴訟
の
迅速化
ということのためにこの人証を外してしまうなんということがあったら、これはもう大変
裁判
そのものが
信頼
を失いますので、そのことは
裁判所
には十分に認識してもらいたい、こう思います。いかがですか。
園尾隆司
155
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 ただいまの御指摘をいただいた点に関しましては、私も
裁判官
といたしまして、まことにもっともなことであるというように考えております。そのような事実の認定が、必要かつ十分な
人証調べ
が、これが相当な事案についてはそれが行われるというような
裁判
が行われるべきであるということについては、全く同じ認識でございます。
日野市朗
156
○日野
委員
そこで、今度はちょっと
民事訴訟法
がここに入ってきます。
民事訴訟法
では
計画
審理
をやる、こういうことになりますね。そうすると、
計画
審理
の場合、
争点整理
の時期、
証拠調べ
の時期、それから
裁判
の時期、
判決
の時期、こういうふうになってきますが、これに間に合わせるために、特に人証なんかで、なかなかそれまで得られなかった人証というのはあるものですよ。何度言っても証人に出るのは嫌だと言っていた人が急に、では出ましょうかと言ったりなんかするなんということは、これはざらにあることでして、特に攻撃防御方法提出の時期について、陳述書で間に合わせるというようなことが出てきたら大変だな、こう私は思うんですが、その点についてはいかがお考えになりますか。
房村精一
157
○房村
政府参考人
御指摘のように、今回の
民事訴訟法改正
につきましては、複雑な
事件
については
審理
の
計画
をあらかじめ立てていただく。それに、
計画
の中で、
争点整理
の
期間
、
証拠調べ
の
期間
、また
判決
の言い渡し時期、こういったようなものを定めることとしております。 しかし同時に、御指摘のように、
訴訟
というのは、その進行に伴って
状況
が変化するということは間々ございます。その場合に備えまして、今回の条文におきましても、一たん定めた
審理
計画
につきまして、
審理
の
現状
、
当事者
の
訴訟
追行の
状況
その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、
当事者
双方
と協議をし、その結果を踏まえて
審理
の
計画
を変更することができる、こういうことになっております。 また、最初の
審理
の
計画
についても、そういう
当事者
との協議を踏まえて
実情
に合った
計画
を立て、ただいま申し上げたように、事情の変更があれば、それを踏まえて改めて
当事者
と協議をして変更していくということによって柔軟な
審理
計画
が立てられるものと思っておりますし、そういうことによって
充実
したかつ
迅速
な
審理
が実行できる、こう考えております。
日野市朗
158
○日野
委員
民訴法の問題についてもうちょっと深入りさせてもらいますが、
計画
審理
を立てて、ずっと
訴訟
の
計画
どおりに動かしていくわけですが、これは
法律
上、この
法案
上でも、どういう
事件
ということについては、こういう
事件
は
計画
審理
になじむ
事件
だなというのは一応わかる。しかし、それ以外にも、
一般
の
民事事件
でも、事案がこれは複雑だな、立証がなかなか難しいな、こういう
事件
というのはあるものですよね。そういう
事件
についてはどうなりますか。何かそういう場合に備えて指針とか基準のようなもの、これをおつくりになるんですか。
房村精一
159
○房村
政府参考人
この条文上は、
審理
の
計画
を立てるべき
事件
としては、「
審理
すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど
事件
が複雑であることその他の事情によりその適正かつ
迅速
な
審理
を行うため必要があると認められる」、こうなっておりまして、典型的なものは大規模な公害
訴訟
とかあるいは複雑な
医療過誤
事件
、こういったものがすぐ念頭に浮かぶわけでございますが、
事件
の性質というのはさまざまでございます。御指摘のように、一見ごく平凡な
事件
に見えるものが相当複雑な事情があって、その主張の整理とか立証のために相当多岐にわたる論点が出てくるというようなこともございます。 したがいまして、
法律
では、そういった個々の
事件
の特性に応じて
裁判官
が適切に判断をしてこの必要性を認定して、
当事者
との協議を踏まえて
審理
の
計画
を立てていただく、こういうことを考えております。
日野市朗
160
○日野
委員
きょう特許庁にもおいでいただいていますが、私は、特許の
関係
で
日本
はえらく国際競争におくれた、特にアメリカとの
関係
でですね、思っているんですよね。
民事訴訟法
がこのように
改正
されるわけですから、スムーズにこれを運用していってもらいたい、こう思っているんですね。それをスムーズに運用していくための準備はどのようになっていますか。
太田信一郎
161
○
太田
政府参考人
お答えいたします。 知的財産立国の
実現
というのが国の国家的な目標になっております。そのために、知的財産権の侵害に対して適切かつ
迅速
な
司法
的救済が講じられることが、生じた損害に対する補償のみならず、侵害の予防の
観点
からも重要であると考えております。 そういう
観点
から、今回、
裁判所
の専門
体制
の強化を図る専属管轄化については、これは特許制度の利用者からも非常に強い要望がございます。そういう要望も踏まえて、特許庁としても、今回の法制審議会の議論にも積極的に参加して、その
実現
を支持してきたところでございます。今回の専属管轄化により、
裁判所
の専門的
体制
が強化され、侵害
訴訟
における判断の的確性と
迅速
性が向上し、知的財産の保護と活用が一層図られることを期待しております。 それから、
裁判所
のまさに
審理
でございますが、私ども特許庁の方からも、現在、
東京地裁
、大阪地裁、東京高裁に調査官を派遣させていただいております。技術的な
知識
等を提供させていただいておりますが、いずれにしても、私ども、先生御指摘のように、特許について、大きく負けているとは思いません。ただ、進んでいるとも言いがたい
状況
にございます。そういう
観点
も踏まえて、しっかり
裁判所
とも協力しながら取り組んでいきたいと思っているところでございます。
日野市朗
162
○日野
委員
特に、私、地方の中小
企業
、いい技術を持っているところがありますね、こういうところに対する手抜かりがないようにということを強く希望して、その点について頑張りますという
一言
を言ってください。
太田信一郎
163
○
太田
政府参考人
知財を生み出すのは、当然、大
企業
だけではございません、大学だけでもございません。まさにベンチャー的な中小
企業
が頑張らないと、
日本
の知財戦略もうまくいかないと思います。 そういう
観点
から、我々もかねてより、例えば特許の
審査
請求料について、中小
企業
のある一定の要件を満たしたものについてはそれを半減するとか、そういう措置を講じてきておりますし、現在、そういう措置をさらに
拡充
して、中小
企業
の知財戦略、特許戦略をさらに応援していきたいというふうに考えているところでございます。
日野市朗
164
○日野
委員
では、どうもありがとうございました。特許庁、結構ですから。 また
余り
おもしろくない
法律
の方に移ります。 民主主義
社会
における
裁判
というのは、信用されるというか、あそこは一生懸命頑張っているというふうに
国民
から思われるには、やはり
当事者
主義それから対立構造に基づく
裁判
の運営、こういったものが非常に大事なこと、これは言うまでもないと思いますので、それを殺してしまうような
裁判
の
迅速化
には絶対になってもらいたくないということを強く要望をしておきたいと思います。 それでは、
余り
時間がなくなってきちゃったんですな。今度は第六条に移ります。 「
充実
した
手続
を実施することにより、可能な限り
裁判
の
迅速化
に係る」云々、こう書いてありますが、
充実
した
手続
を実施する、さて、どこまでが
充実
した
審理
なのかというのは、実はこれが大問題なんですよね。
充実
した
審理手続
を実施しているかどうか、これを一体だれが判断するんですかね。
山崎潮
165
○
山崎
政府参考人
まず、個別の
事件
であれば、その個別の
事件
として足りるところまでやっているかどうかという問題は、それはまた先ほど申し上げましたけれども、上級審等、ここで是正されていくという問題だろうと思います。 ただ、
一般
的な問題として、
充実
した
手続
かどうかという問題に関しましては、これにつきましては、いろいろ
検証
の問題等がございますけれども、そういう中で、必要なものであるかどうかという点もある程度考慮に入れながらその
検証
をしていくということになろうかと思います。
日野市朗
166
○日野
委員
上級審で問題にするんだろうということになれば、上級審で破られたものは、
充実
した
審理手続
をしていなかったということになる。まことに何か答えとしてはおもしろくない答えなんですが。 ここで、そうすると、
充実
した
手続
を実施する、これは、その
手続
の正当性、このことを言っているということになりますかね。
山崎潮
167
○
山崎
政府参考人
手続
の正当性、そういうことを
意味
しているということよりも、その
事件
の
審理
として、あるいはその解明、
解決
について必要なものはやってほしい、それを前提の上で
迅速化
を図るようにということを言っているわけでして、その
事件
として必要なものはやるというのが
充実
した
手続
ということでございます。
日野市朗
168
○日野
委員
何かちょっと、私もそう開き直られると混乱しちゃうんですが、そうしたら、これは何も、
裁判所
としてはちゃんと
訴訟
法に基づいてやっていれば、そして
迅速
、
充実
した、
迅速化
に
努力
した、そういうふうに言われるようにしなさいよ、それだけの問題かな。一条上げるまでもないような感じがしますがね、これは。わざわざこれを書いた
理由
、そんなことでいいのかしら。
山崎潮
169
○
山崎
政府参考人
この条文の意義でございますけれども、三条からずっと始まります、それから七条まで参りますけれども、責務でございまして、国、
政府
、
日弁連
、それから受訴
裁判所
と
当事者
、それぞれがみんなこの目標に向かって
努力
をしましょう、そういう責務があるということをうたっているわけです。 その責務を果たすについて、
迅速
迅速
というその命題が
余り
前へ出ますと、
充実
した
手続
が行われないということになってもいかぬということを注意的に入れているわけでございまして、当然、
充実
した
手続
をした上で
迅速化
するということ、これは前提でございますけれども、それを注意的にきちっと述べている、こういうことでございます。
日野市朗
170
○日野
委員
何か
審理不尽
という言葉がありますけれども、そう言われないようにしなさいよみたいな話なのかもしれない。まあ、いいや。 それでは次に、
検証
の話に移ります。 何で
最高裁
でなければいけないのか、
検証
は。やはり、これは、もっといろいろな人を入れて、
検証
すべきじゃないんですかね。
山崎潮
171
○
山崎
政府参考人
八条の
検証
でございますけれども、これは、
現実
に進行している
事件
、こういうものがすべて対象になるということでございます。それについていろいろな調査分析を行うわけでございますけれども、これにつきましては、
手続
を実施する
裁判所
、これが一番よく収集することができるということ、それからもう一つは、
現実
に進行している
裁判
についても調査をしなければならないということでございますので、
裁判
の独立という点は十分に尊重しなければならないということになるわけでございます。 そうなりますと、やはり
裁判
の、もちろん秘密の問題もいろいろございます、非常に微妙な問題を抱えるということから、これは組織内の
最高裁
の方にお願いをする、これが適切であるというふうに考えるわけでございます。
日野市朗
172
○日野
委員
裁判所
の独立とか
裁判官
の独立とか秘密にわたることを漏らしちゃいかぬとか、こんなことは常識で、何も
最高裁
でなければこういうのは守れないというものじゃないでしょう。それよりは、この
法律案
は
迅速
をうたう、そのためにはむしろ、
最高裁
を頂点とする
裁判所
の部内にどのような問題点があるのか、これを指摘するところにうまみがあるんじゃないか、そうすれば第三者を含めた方がもっといい、私はそういう
観点
に立つべきだというふうに思いますが、いかがですか。
山崎潮
173
○
山崎
政府参考人
これを制度として設けるにつきましては、今私が申し上げましたような形から、最高
裁判所
にお願いするのが適切であるというふうに考えますけれども、運用上の問題としまして、
現実
にいろいろ調査分析を行うわけでございますけれども、これにつきましては、
裁判所
以外の法曹あるいは学識経験者、こういう
方々
の
意見
を聞く場を設けることはやはり必要になってくるだろうというふうに思いますし、調査の実施等についてもそれぞれ御協力をいただくという場面もあろうかと思います。 運用上の問題としてそういう点はきちっと配慮をしていただきたいということで、
裁判所
の方にもお願いをしているところでございます。
日野市朗
174
○日野
委員
今、私は、部外者も入れた方が、
裁判所
という一つの組織に対してちゃんとした、そういう者も入れた方が、
裁判所
だけでやっているということじゃなくて、あっちの方の見解が入ってきてベターだ、こう言った。 それにもう一つ、私は、こういうふうにしちゃいかぬという
観点
で申し上げたい。 私、さっきからずっと言っているように、
裁判所
におけるキャリア
システム
、これが変に下手に作用したら、この
迅速化
法が大変悪い方向に転んでいく、こう思います。しかも、
検証
を
最高裁
だけでやるということになると、まさにこれは
裁判官
に対する調査機関みたいな役割を果たしちゃうんじゃないか、そうするとますます
裁判官
は萎縮してしまって、
迅速化
法がますます悪い方に行く、そういう悪循環に陥るんじゃないか、こう思いますけれども、お考えを聞かせていただいて、私の質問を終わります。
山崎潮
175
○
山崎
政府参考人
確かに、御指摘のような点がもし起これば、これはゆゆしき問題であるということになろうかと思います。 私どもも、これを立案するにつきまして、
裁判所
の方にもいろいろお願いをこのごろしておりますけれども、やはりこういう
システム
をつくり、
検証
をして
国民
に明らかにしていく、そういう
システム
でございます。万が一にも先ほど
委員
が御指摘のような点があったら、それはもう
裁判
の否定につながっていく重大な問題でございます。 私どもは、この
法案
を立案したからといって、そういうことについては絶対あってはならないということで考えておりますし、また、
裁判所
の方にもそういう点については十分配慮を願いたいということで、お願いをしております。
日野市朗
176
○日野
委員
終わります。
山本有二
177
○
山本委員長
次に、山内功君。
山内功
178
○山内(功)
委員
民主党の山内でございます。 今回の民訴法の
改正
は、この作業をすることによって
裁判
の
充実
、
迅速化
を図って、より
国民
に親しまれる
司法
を目指すということだと考えているのですが、実際に使っている者にとって使いづらいものであっては、また
改正
の趣旨にそぐわない内容になると思います。 以下数点、論点を絞って聞くこととさせていただきます。 まず、この
法律
で
計画
審理
ということが挙がっておりますけれども、その対象
事件
として具体的にどのような
事件
を想定して、この
計画
審理
を推進していこうというふうに考えておられるのでしょうか。
房村精一
179
○房村
政府参考人
計画
審理
を立てる対象となるべき
事件
としては、法文上は、「
審理
すべき事項が多数であり又は錯そうしているなど
事件
が複雑である」ということを典型例として挙げておりますが、こういうものに該当する具体的な
事件
としては、大規模な公害
事件
であるとか、あるいは専門的な事項が
争点
となる難しい医事
関係
事件
あるいは
建築関係
事件
というようなものが想定されます。 ただ、もちろんそれに限定されるわけではありませんで、やはり、
当事者
の主張等からその
裁判官
が、
争点
が多い、あるいは複雑である、専門的な
知識
が要求される、そういうようなことを判断して
当事者
と協議をして決めていただく、こういうことになろうかと思います。
山内功
180
○山内(功)
委員
労働
事件
、行政
事件
、知的財産権、交通
事件
、会社
訴訟
、税務
訴訟
、消費者
事件
、こういうのも含まれるんでしょうか。
房村精一
181
○房村
政府参考人
もちろん、
事件
の種別としては、
審理
の
計画
を立てる対象となり得る
事件
でございます。
山内功
182
○山内(功)
委員
一般
の通常
事件
についても、複雑性があればこれに該当すると考えていいんでしょうか。
房村精一
183
○房村
政府参考人
法文上は特に
事件
の種類を限定しておりませんので、ごく通常の
事件
であっても、複雑な
争点
を含んでいるというようなものについては、
審理
の
計画
を立てる対象の
事件
となり得るわけでございます。
山内功
184
○山内(功)
委員
複雑な
事件
にしか適用されないということはわかっているんですが、例えばの例として、お金を貸したという
事件
があって、お金を貸したというふうに言っているのに、借りていないと抗弁するんですけれども、借りていないと抗弁していても、返したと言うときもありますね。それから、お金を請求されていて、借りていないんだけれども、もうそれは時効だと言う場合もありますよね。 そういう矛盾したようなことを言っている人に、一体どっちなんだともう一番最初の時点からぎりぎり詰めると、やはり
事件
というものは生き物ですから、だから、最初の入り口から
計画
審理
に応じなさいということでどれか一つに決めなさいというような運営をされると、やはり
当事者
としては戸惑うこともあるんじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
房村精一
185
○房村
政府参考人
例えば、ただいま御指摘のような、主張が矛盾しているようにも思える、こういうような場合は、まさに
当事者
の主張を整理するためにある程度の
期間
が必要になる
事件
だろうと思います。 そういうことも踏まえて、
当事者
の言っていること、あるいは既に出ている
証拠
等を見て、その
事件
の主張を整理するために、ある程度の
期間
をかけて準備を準備
手続
等を活用してきちんとやっていくということが必要な
事件
であれば、まさにそういう
計画
を立てて、その
計画
に従っていただく。 その
計画
を立てる、例えば主張の整理のための
期間
というのは、そういう主張を整理してきちんとしたものに仕上げるための
期間
ということですから、
裁判所
が一方的に押しつけるというようなものではなくて、まさにそのためにこそ
当事者
との協議が必要とされているわけであります。
山内功
186
○山内(功)
委員
その協議は
訴訟
のどの
段階
でやるかも含めて柔軟な対応をされないと、やはり最初から
迅速
審理
ということで、まだ
弁護士
なんかも、
当事者
も
弁護士
もなれていない
審理
計画
を立てられると大変窮屈な
訴訟
になるんじゃないかとも思って質問しているわけです。 もう一つ心配なのは、新たな攻撃防御方法の却下の規定がありますので、これもフルに使われると、やはり戸惑いが実務の中に生じるのではないかと思うのですが、運用については大体どういうふうに考えているんですか。
房村精一
187
○房村
政府参考人
まず、この
審理
計画
は、
当事者
と協議をいたしまして、
争点整理
の
期間
を定め、それから
証拠調べ
期間
を定め、言い渡し時期を定めるというのがまず最初でございますが、その後、
訴訟
の進行につれて、例えば、
争点整理
期間
を三カ月なら三カ月ととって、その中で主張を整理していくうちに、特定の
争点
についての主張は、じゃ、これはいつまでにやってくださいというような
計画
を立てることになるだろうと思います。 そういうぐあいに、
訴訟
の進行に伴って
審理
計画
もより具体化して、特定の事項についての攻撃防御方法の提出時期、こういうものまで
裁判所
が決める
段階
になる、にもかかわらず、
当事者
が相当な
理由
もないのにその時期を守らなかった、こういう場合に初めてこの攻撃防御方法の却下ができるということになっております。 したがって、単に
計画
を定めて、その時期にちょっとでもおくれたらすぐ却下するというようなものではなくて、具体的な特定の事項についての攻撃防御方法の提出すべき
期間
が定められて、しかもそれを守らなかったことについて相当の
理由
があれば却下はされないわけでございますので、そういう
意味
で、今御心配のような、これが乱用されて、
当事者
が自由な主張、立証ができなくなる、そういう懸念はないだろうと思っております。
山内功
188
○山内(功)
委員
当事者
の
訴訟
活動については
余り
懸念がないとは言われますけれども、例えば、複雑な
事件
については、多分合議
事件
になるでしょう。そのときに、右陪席の人はもちろんですけれども、左陪席のようについ最近
裁判官
になった人とも一緒になって、右や
裁判長
のやり方を見ながら、修行というか、積んでいくわけですよね。そういう複雑な
事件
であればあるほど
裁判長
から教えてもらうことも多いでしょうし、それに日々
訴訟
の中で出てくる
資料
とか、いろいろな
知識
を自分なりにも勉強して左陪席はしっかりとたくましくなっていくんでしょうし、
当事者
や
訴訟
代理人も多分そうだと思うんですね。 だから、新しい論点というのは、そういう
訴訟
の過程とか勉強の過程でまた新たに論点がぽっと出てくることもあると思うので、そういう
意味
でも、
余り
最初に、こういうことを決めます、あるいは、もう
判決
の時期を決めていますので、この時期までには
争点整理
で、攻撃防御方法についてはこの時点までしか提出を許しませんよというようなぎすぎすした
訴訟
になると、やはりそれは真実の発見からしてもちょっと遠い運用になるんじゃないかなというおそれを持っているのですが、もう一度その点をお願いします。
房村精一
189
○房村
政府参考人
御指摘のように、確かに
訴訟
というのは生き物のような面がございます。
当事者
あるいは
裁判所
が予想しないような事態が途中で生ずるということもございますので、そういう場合に備えて、今回の
法案
でも、一たん定めた
審理
計画
につきまして、
審理
の
現状
及び
当事者
の
訴訟
追行の
状況
その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、
当事者
双方
と協議をして
審理
の
計画
を変更できる、こういうことをして、
裁判所
がそういう変化に対応して柔軟に
訴訟
追行が図れるようにということを条文上もうたっておりますし、また、御指摘のような合議体であれば、ベテランの
裁判長
もいることですし、適切な運用が可能になるのではないか、こう思っております。
山内功
190
○山内(功)
委員
計画
審理
の問題にしても、あるいは
当事者
照会制度を訴え提起前にも認めるというような、後で質問するような制度を新たに設けるということ自体も、最初の、
訴訟
の初期の
段階
から
充実
した
迅速化
の図れる
訴訟
を目指そうということでとられている
手続
、採用された
手続
ですよね。 しかし、一番最初から
充実
した
双方
の攻撃防御を期待するんだったら、もっと早く
裁判所
の方で、積極的に
証拠
開示の理念を持って、積極的にもう一回目から隠さず書証は全部出しなさいよ、証人も全部出しなさいよというようなこと、書証についても、例えば行政
訴訟
にしても消費者の
訴訟
にしても、
相手
方の方がたくさんの書類を持っているわけですから、そういうものを積極的に出しなさいよというような
証拠
開示を積極的に発動するということの方が、私は、最初からの
訴訟
の
充実
という
観点
からすると、
証拠
開示という問題についてもっと積極的に法文化した方がいいと思うんですが、例えば
大臣
、どうお考えでしょうか。
森山眞弓
191
○森山国務
大臣
御指摘のように、
計画
審理
を実施する上では、
当事者
が訴えの提起前において必要な
証拠
や情報の収集を適切に行うことができるようにすることが重要であると考えられます。 そこで、この
法律案
におきましては、訴えの提起前における
証拠
収集等の
手続
を
拡充
いたしまして、
相手
方に対して主張、立証の準備に必要な事項を照会することができる
手続
や、文書の所持者に対して文書の送付を嘱託することができる
手続
などを設けることにしているわけでございます。
山内功
192
○山内(功)
委員
いや、その
証拠
開示をするということの条文化が、
民事事件
でも
刑事事件
でも今回法定化されてないんですよね。その辺はどうなんですかね、もっと積極的に
証拠
開示に取り組むというようなことは言っていただけないんですかね。
房村精一
193
○房村
政府参考人
今回の
法案
におきましては、ただいま
大臣
から答弁いたしましたように、訴え提起前の
証拠
収集の
手続
を
整備
したわけでございます。 御指摘のような、例えばアメリカのディスカバリー、こういう制度の
導入
ということになりますと、これは、アメリカにおいても、その
手続
に多大な
費用
や時間がかかるということから弊害も指摘されているところでございますので、
日本
においてそのアメリカのディスカバリー制度に倣ったような
証拠
開示
手続
を設けるかどうかということについては相当慎重な検討が必要である、こういうぐあいに考えております。
山内功
194
○山内(功)
委員
だとすると、先ほど
大臣
がおっしゃった、
証拠
開示のような規定の理念が、例えば
証拠収集手続
というか、訴え提起前の
当事者
照会制度の理念として反映していると言われたと思うんですけれども、もしそうだとしたら、
証拠収集手続
の
拡充
についてその趣旨を伺いたいと思います。
房村精一
195
○房村
政府参考人
今回、特に訴え提起前の
証拠収集手続
を
拡充
いたしましたのは、
委員
から御指摘のありましたように、
訴訟
を提起した場合に、早期の
段階
から
充実
した
審理
計画
を立てて進行するというためには、
当事者
の訴え提起前に
証拠
等を入手して十分な準備ができるようにする必要がある、こういうことから、特に訴え提起前の
証拠収集手続
についての
整備
をしたわけでございます。
山内功
196
○山内(功)
委員
プライバシーや営業機密について保護するというような規定があるんですけれども、ちょっと具体的なイメージは、どういう場合にそういうことが問題となって、そういう営業機密やプライバシーは守らなければいけないというようなことが出てくるんでしょうか。
房村精一
197
○房村
政府参考人
例えば訴え提起前の
当事者
照会の場合ですと、主張、立証の準備のために必要があることが明らかな事項について問い合わせをすることができることとなっておりますが、その中には、例えば
相手
方の私生活にわたるような場合、これは、例えば離婚
訴訟
等を考えればそういった質問が出てくる
可能性
もあり得るわけでございますし、あるいは、取引に関連して
相手
方の営業秘密にわたるようなことを聞くという場合もあり得るだろうと思います。 したがって、問い合わせを受けたものがそういうプライバシーに関する事項であるとか営業秘密に関する事項であるときには、その照会に応じなくてもよいということをあらかじめ
法律
で定めておくということでございます。
山内功
198
○山内(功)
委員
証拠収集手続
については、これからもさらに
拡充
していく方向で検討されているんでしょうか。
房村精一
199
○房村
政府参考人
これにつきましては、今回この
改正
をお願いしているわけでございますが、当然、その使用
状況
等を見まして、必要があればさらに検討を加えるということになろうかと思っております。
山内功
200
○山内(功)
委員
心配なのは、例えば改ざんとか証人威迫が起きやすくなるということは考えられないでしょうか。
房村精一
201
○房村
政府参考人
提訴
予告通知をしたことをきっかけに改ざん等がされるおそれというのは抽象的にはございますが、本当に改ざん等のおそれがある場合には現在の
証拠
保全
手続
が活用できますので、そういう形で、本当にその危険がある場合には、
証拠
保全
手続
を活用していただいて
証拠
の保全を図るということが可能でございます。
山内功
202
○山内(功)
委員
これは訴えを起こさなくても結果的にはいいわけですから、今度は反対に、乱用されるおそれもないのかなという心配もあるんです。照会を受けた側にとっては、
裁判
を起こされたのと同じくらいの労力を使って
相手
方の照会の文書をつくったりしなくちゃいけないときもあると思うんですよね。だけれども、一生懸命やったけれども、四カ月たっても何の返事もない。 だから、例えば乱用防止と言うと、何かできる前から言うのもおかしいかもしれませんが、そういう懸念はないんですかね。
房村精一
203
○房村
政府参考人
訴え提起前の
証拠
収集については、まだ訴えが提起されておりませんので、
当事者
間で
解決
しなければならない。そういうことから、当然、その乱用の防止を考えなければいけないというのは御指摘のとおりだろうと思います。 ただ、例えば、
当事者
照会をいたしまして、その結果を見て訴え提起を断念することもございますので、予告通知をして
当事者
照会等をしたら訴え提起を義務づけるというわけにはまいらないわけでございます。そういうことから、
提訴
予告通知をしてから四カ月にこの利用を限っております。そういうことによって、
余り
に長
期間
にわたって負担をかけることのないようにという配慮をしております。 それからまた、答える者が不相当な手数がかかるというような場合には、例えば
裁判所
からの調査嘱託等でも採用しないということができるようにしておりまして、
当事者
の負担が過重なものにならないような配慮もしております。そのほか、先ほど申し上げた秘密の保護とか、そういう乱用に対する対策も十分考えたつもりでございます。
山内功
204
○山内(功)
委員
次に、専門
委員
制度を採用することになっているようですけれども、この専門
委員
については、
裁判所
はいつの
段階
の、どのような場面で専門的知見を補完することを想定しているのでしょうか。
房村精一
205
○房村
政府参考人
これは、
裁判所
が専門
委員
を活用する場面としては、まず
争点
もしくは
証拠
の整理、その
段階
で専門
委員
の
意見
を活用するということが考えられております。それから次に、さらに進んで、
証拠調べ
をするに当たって、
訴訟
関係
あるいは
証拠調べ
の結果の趣旨を明瞭にするために専門
委員
を使うということも考えております。また、
訴訟
の過程において和解の試みをする場合に、和解の試みをするに当たって専門
委員
の専門的
知識
を活用する、こういうことも考えておりまして、以上のような、
訴訟
の進行
状況
に応じて、それぞれの場面で専門
委員
を活用するということが想定されております。
山内功
206
○山内(功)
委員
例えば内臓の手術で、背中からメスを入れる手術方法が正しいと思っているお医者さんと腹からメスを入れる手術が正しいと思っているお医者さんがいて、専門
委員
は例えば腹からの手術派で、それから例えば
鑑定
人は背中から手術すべきだったというような
事件
があったとします。そうすると、
鑑定
人は宣誓をした上で真実を
鑑定
したり述べたりしていますよね。専門
委員
は宣誓はもちろんないわけですし、そういう場合に、
裁判官
はどっちの言うことを尊重するんですか。
房村精一
207
○房村
政府参考人
鑑定
人はまさに
証拠
方法としてでございますので、
裁判官
としては、果たして背中から切る方がいいのか、腹から切る方がいいのかということについて、その
鑑定
人の
意見
等を
証拠
として判断していくことになろうかと思います。 専門
委員
に期待されているのは、どちらがいいかということを
裁判官
が知るということを期待されているわけではなくて、まさにその手術について、背中から切るという考えを持っている人もいればおなかから切るという考えを持っている人もいる、あるいは、そういうことについて、それぞれどのような文献があり、どのようなことが論争されている、そういったことを
知識
の補充として与えてもらって、
裁判官
がそのどちらの方法がいいのかということがこの
事件
の
争点
である、そういうようなことを理解する、そういう
争点整理
。あるいはさらに、出てきた
証拠
について、この
証拠
はどういう
意味
がある、その言われていることはどういうことなんだということを補充するという、まさに直接専門
委員
の説明から心証をとるわけではなくて、その
事件
の
争点
の整理であるとか
証拠
の
意味
をわかるという、そのための、知見を補うという役割でございますので、期待されている役割が相当違うということになろうかと思います。
山内功
208
○山内(功)
委員
確かに専門
委員
制度を採用すると、そういう理念は絶対に大切にしなければいけないとは思いますよ。だけれども、専門
委員
についても
鑑定
人に対しての尋問権があるわけですから、そうすると、例えば自分が学生時代から、指導教授の教えを守って、ずっとそれが正しいと思って、自分の学問として確立した、そういう人が専門
委員
となって、
鑑定
人が全く違う、非常に危険な手術方法を、これがいいとさも言う。そういう法廷の中での現場で、その専門
委員
が自分と全く違う危険な手術を推奨するような学者に対して尋問をするときに、果たしてそんな高邁な理念とか理想に基づいた尋問ができるんですかね。
房村精一
209
○房村
政府参考人
これは運用の問題ではございますが、しかし、役割として期待されているところは、先ほど申し上げたとおり、専門
委員
の説明というのは、それに基づいて
裁判官
が心証を形成するものではないわけでございますので、その説明を受ける
裁判官
も当然そういうことを念頭に置いて発言をしてもらうということになりましょうし、また、専門
委員
の
意見
は、
当事者
のいる
期日
あるいは書面ということで述べますので、これについては
当事者
も、専門
委員
がどういうことを言っているということについて直ちに反論をしようと思えばできるような
状況
でございます。 特に尋問に関しては、両
当事者
の同意を得た上で行う、こういう形になっておりますので、この専門
委員
の役割がきちんと
裁判官
、両
当事者
に理解されていれば御指摘のような懸念はないのではないか、こう思っております。
山内功
210
○山内(功)
委員
いや、民事
局長
が言われるようにそういう懸念がないならいいんですけれども、例えば、専門
委員
で尋問を聞く側がどこかの大学の助教授で、
鑑定
人が教授だったとか、それは法廷の中の現場ですからね、何であなたにそんなことを聞かれなくちゃいけないんだとか、そうでなくても、
鑑定
人の人格まで攻撃することがその
鑑定
をつぶすための尋問、テクニックでもあるわけですから、私は本当に希有なことを考えているだけだと言われればいいんですけれども、少し心配もしています。 それでは、
裁判所
の中に専門
委員
の名簿というのはどういうふうにつくっていくんですか。
園尾隆司
211
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 これからその内容について、
最高裁
の事務当局、それから高裁、地裁、そういうような
裁判
の担当者とさらに協議を続けていくということになりますが、
現状
といたしましては、できるだけ公平にかつ適正な専門
委員
を選ぶという
意味
で、専門
委員
の給源というところにも公平さを考えながら幅広い検討をしていくというようなことで、検討対象についてはできるだけ広く対象にした。しかも、その内容につきましては、これは高度な
専門知識
に関する補助を得るということでございますので、そのようなものにふさわしい、そういうような専門
委員
の推薦を受けるというような情報収集
体制
を整えていくというような検討を現在しておるところでございます。
山内功
212
○山内(功)
委員
私は、もし
最高裁
の方でそういう名簿をつくられるのでしたら、
裁判所
の中だけではなくて、今まで非常にいい
鑑定
の実績を上げたとか、世界的に認知された学問を積んでいる方だとか、最高
裁判所
の中だけでリスト化するのではなくて、
法務
省とか
弁護士
とかマスコミ
関係者
とか、そういう人たちを含めた選定
委員会
みたいなものをつくっていただいた方がいいのではないかと思っています。 法文の九十二条の二に、専門
委員
を
選任
するときには
当事者
の
意見
を聞いてとあります。これはつまり
当事者
双方
が同意しなくてもいい場合もある書きぶりなわけですから、
原告
、被告のうち、例えば被告がその専門
委員
について非常に問題である、そう思っていても、
裁判所
が決定を出せば、その専門
委員
が始終
裁判官
の補助役として出てくる、登場してくるということになって、
当事者
の
納得
ということからすると随分
当事者
の意向とずれが生じるのではないかと思うのですが、そのあたりはどう考えたらいいんですか。
房村精一
213
○房村
政府参考人
今回の専門
委員
の関与につきましては、基本的にまず
当事者
の
意見
を聞いて、その上で決めるということにしております。その中でも、特に先ほども話題に出ました、
証拠調べ
に関して専門
委員
が発問をするというような心証形成と非常に密接に結びつくような場面については、
当事者
の同意を得た上で行うとしておりますし、また、
当事者
の合意が非常に必要な和解
手続
に関与する場合にも、その同意を得てとしております。 ただ、それ以前の
争点
の整理、あるいは
証拠
の趣旨を明らかにする、こういうような
関係
で専門
委員
を使う場合には
当事者
の
意見
は聞きますが、
裁判所
としてどうしても趣旨を明瞭にするためにその専門家の
知識
が必要だという場合には、同意が得られなくても使うことも可能なような仕組みにはしてございます。ただ、
訴訟
の円滑な進行ということになれば、十分
当事者
と協議をした上で円滑に進行を図るということが期待はされていると思っております。
山内功
214
○山内(功)
委員
最後になりますが、特許権等に関する
訴訟
の管轄の問題についてでございます。 結局、
日本
じゅうを知的立国、知的財産権立国というんですか、IT国家を目指そうということで、それが東京や大阪に住んでいる人だけじゃなくて、
日本
じゅうをそういう国にしようというのが多分今の内閣の方針だと思っていたんですが、そのことと、例えば先ほど日野議員が言われましたように、田舎の中小
企業
の経営者でも、どっこいしっかりとした発明を持っている、発明家がいるよと先ほどおっしゃったんですけれども、そういう場合もそうですし、例えば北海道の航空会社からベンチャー
企業
を目指すとか、そういうベンチャーの育成ということもやはり重要な
日本
を再生するためのテーマだと思うんです。 そういうことからすると、管轄を狭めるというのは確かに専門化して特化して判断も統一になっていいことなんでしょうけれども、その一方では、そういう
日本
が目指す理想の国家のあり方とちょっと違うような気もするんですが、それはどう考えたらいいんですか。
房村精一
215
○房村
政府参考人
御指摘のように、現在、特許権等をてことして
企業
の発展を図るということは、非常に重視されております。そういう
意味
で、特許に関する
紛争
というのは、
企業
にとってますます死命を制するような重要なものになってきているわけでございますし、また、特許の性質からも、非常に早く
解決
をすることが求められている。そういう
意味
では、特許に関する
紛争
というのは、今まで以上に適正にかつ
迅速
に
解決
をしてもらうということが、特許権等を活用する
企業
にとってもますます重要なことになっている。これは東京、大阪にある大
企業
に限らず、地方の中小
企業
にとっても同じだろうと思います。 そういう
意味
で、今回、特許権に関する
訴訟
を専門的な
体制
の整っている東京、大阪に集中するということにいたしましたのは、そのような
社会
の要請にこたえて専門的な
体制
を整えたところで適正かつ
迅速
に特許に関する
紛争
を
解決
するということを目指したものでございまして、これは多分、長い目で見れば地方の中小
企業
にとってもその方がメリットが大きいだろう、こう思っております。 また、地方にあるがゆえに、東京、大阪で行うことによって
余り
にも損害が生ずるということであれば、これはその地方の
裁判所
へ移送をするという移送の規定も
整備
をして、
余り
にも大きな損害をこうむるということのないような配慮はしておりますので、この両規定、また、そのほか、電話
会議
システム
であるとかテレビ
会議
システム
というようなものを活用して、遠隔地においても
訴訟
追行が可能なような仕組みも整いつつありますので、そういったものを活用することによって、地方の
企業
が
余り
にも負担を負うということは避けられるのではないか、こう思っております。
山内功
216
○山内(功)
委員
ありがとうございました。
法律
の運用を変えていくとか、あるいは制度を立て直していくというようなことも必要かもしれませんけれども、要は、最後は、人的、物的な
体制
を
拡充
することがやはり一番
充実
かつ
迅速
な
裁判
につながるのではないかと思いますので、これからも
大臣
には積極的な対応をお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
山本有二
217
○
山本委員長
次に、
石原健太郎
君。
石原健太郎
218
○石原(健)
委員
統計を見る限り、
日本
の
裁判
が諸外国と比べて特に長くかかるというわけではないと思うんですけれども、中に七年、八年あるいは十年以上もかかるケースがあるのは、それはどういう
理由
によるものか、わかりやすく説明していただけたらと思います。
山崎潮
219
○
山崎
政府参考人
これは
一般
的に言われていることでございますけれども、まず、事案の内容が複雑である、それからかなり高度の専門的な
知識
を要する、それから
当事者
が多数であるというような、
事件
の属性に伴うものが一つ原因として考えられるだろうと思います。それから、やはりもう一つの
側面
は、
当事者
の協力がなかなか得られないという場面もあろうかと思います。それと、やはり
裁判所
の方の最初の
争点
の絞り方等、この辺のところが十分にいかなかったという、三者の原因がそれぞれあろうかと思います。 それがどういうふうに出てくるかは、個々の
事件
の性質によって変わってくるということでございます。
石原健太郎
220
○石原(健)
委員
そうしますと、今のような長期にわたってかかるような
裁判
が、今度の
改正
によってどのように処理の方法が変わっていくのか、その点について御説明いただけたらと思います。
山崎潮
221
○
山崎
政府参考人
この
法案
につきましては、二年を目標に、二年内のできるだけ短い
期間
内に
事件
を終局させていく、こういうことを目標に
審理
を進めていくということを言っているわけでございます。ただ、やはり、個別の
事件
等につきましては、やるべきことはやらなければならないということでございますが、やるべきことをやった上で、かつ能率的な、効率的な運営をやっていかなければならないということをうたっているわけでございます。 現在、かなり長くかかっている
事件
、こういうものにつきまして、それは数は多くないのかもしれませんけれども、やはり
国民
がその
事件
を見るときに
納得
できない、それから
事件
が風化してしまう、それから、やはり熱いうちに
結論
を出してそれにどういう対処をしていくかということを問わなければならないのに、長くたってしまってそれを問うということもいかがなものか、いろいろな御批判もございます。そういう点も、やはり
裁判
というのは
国民
の
納得
も必要でございますので、そういう長い
事件
についても二年を目標にやっていこうということでございます。 これにつきましては、事案によってはできないものもあるかもしれません。そういうものは、どういうところにその原因があるのか、それから、それをもっと短くすることが可能なのか可能じゃないのか。これは、
裁判所
の方の、
最高裁
の方で
検証
をいただいて、その上で、本当に可能なものは、もう少し
手続
を変えたり、あるいは人をふやしたり、そういうことで
実現
可能になるようにやっていこう、そういう
システム
化をするものでございまして、そういう
検証
とそれに伴う
現実
の制度の
改正
、
体制
の
整備
、こういうことを繰り返しまして、より理想に近づけよう、そういうものでございます。
石原健太郎
222
○石原(健)
委員
特に質問通告はしてなかったんですけれども、今理想の
体制
に近づけていくんだというお話ですが、大体何年間ぐらいを想定されておられるんでしょうか。
山崎潮
223
○
山崎
政府参考人
これは、将来予測でございますので、必ずしもどういうふうになるかということを完全に見通すことはできないわけでございますが、まず、八条で
検証
は二年ごとにお願いをするということになっておりますので、二年ごとに分析の結果が出てまいります。それを政策に投影させるということになります。これを何回か繰り返していくということになりますが、附則で、この
法律
について十年後に見直しをしていく。これは、達成していれば必要なくなるということもありますし、達成できてなかったら、またどういう手当てを加える必要があるかとか、そういうような見直しの条項が入っておりますけれども、少なくともそれが一つの目安になるというふうに考えております。
石原健太郎
224
○石原(健)
委員
検証
もその手段の一つだとは思うんですけれども、二年以内に
判決
を出すということで
審理
が十分尽くされないことが心配される、そんな考えを持つ人もおるようでありますけれども、そうした心配に対してはどのような配慮がなされているのか、御説明ください。
山崎潮
225
○
山崎
政府参考人
ただいま御指摘の点、大変重要な点でございまして、これは、私どもが政策を立案する
段階
でもさまざまなところからこのような御指摘がございまして、そういう
関係
から、例えば二条の一項でございますけれども、「
充実
した
手続
を実施すること」、そういう文言を入れておりまして、そういうことによって行われるんだよということをはっきりうたっております。それから、同じような文言は六条にもございまして、これは
裁判所
等の責務でございますけれども、
充実
した
手続
を実施することによって、可能な限り目標に近づくように
努力
をしなければならないとうたっております。 それ以外に、やはり
当事者
の正当な権利、これを害してはならないということもございますので、二条の三項に、
当事者
の正当な権利利益が害されないようにしなければならないということ、このような手当てを加えて、やることはやった上で、
手続
を効率化して
迅速
を図っていく、こういうことをうたっているわけでございます。
石原健太郎
226
○石原(健)
委員
先ほど、
民事訴訟
につきましては
証拠
の開示についてお話があったわけでありますけれども、やはり
刑事事件
なんかも
迅速
に行うには
証拠
の十分な早期の開示が必要というふうにも思われますけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。
山崎潮
227
○
山崎
政府参考人
ただいまの
刑事
の
証拠
開示の点でございますが、私どもの前身でございますけれども
司法制度改革審議会
、ここの
意見書
がございますけれども、その中で、
刑事裁判
の
充実
、
迅速化
を
実現
するための
方策
の一つとして、第一回
公判
期日
の前から、十分な
争点整理
を行うことができるよう、新たな準備
手続
を創設すべきである、それから、
充実
した
争点整理
が行われるには、
証拠
開示の
拡充
、ルールの明確化、これが必要である、こういうふうにうたわれているわけでございます。 これを受けまして、現在、私どもの方で検討会を設けているわけでございますけれども、その検討会で
証拠
開示のルールの具体的なあり方について検討中でございます。これにつきましては、来年の通常国会には
改正
案の御審議を願いたいというところで、今進めているところでございます。御理解を賜りたいと思います。
石原健太郎
228
○石原(健)
委員
次に、選挙で選ばれる人の
裁判
等はできるだけ早く
判決
が出ることが望ましいと思うんです。といいますのも、選挙民に対して正しい判断材料を提供するという
意味
からも、また税金が正しく使われるべきだという点からもそう考えられるわけであります。
起訴
されて、
裁判
が始まって確定する前に二度も有権者から認められて当選をしてくる、結果的に、最終的に有罪になって資格をなくすというようなケースもあったようですけれども、こういう点については、
裁判所
としてはどのような考えをお持ちになっているんでしょうか。
中山隆夫
229
○中山最高
裁判所
長官代理者
刑事事件
の
被告人
が選挙で選ばれているという場合に、
被告人
は国やあるいは地方公共団体の権限の行使に直接かかわる地位、
立場
にあるわけでありますし、また、
国民
の関心も非常に高いものがありますから、
迅速
に
審理
を進めて
判決
を言い渡す必要があるということは議員御指摘のとおりだと考えております。 ただし、
現実
問題として、なかなかこの種
事件
では、
起訴
から確定までかなりの
期間
を要しているといった
事件
も少なくございません。そうした
事件
は、事実認定上の問題あるいは
法律
上の
争点
というものが非常に多岐にわたる、あるいは、ロッキード
事件
でいいますと第一審だけで百九十一回の
公判
、先般の中村喜四郎元代議士の
事件
では七十七回の
公判
といったように、
公判
回数が非常に多数、ロッカーいっぱいの
訴訟
記録といったような非常に大部なものになる、そういった
事件
が多いというところが長期化の主要な原因になっているわけであります。 これに対する特効薬というのは、これはなかなか実際ございませんで、
裁判所
としては、早期に
争点
を確定して、
審理
計画
を立てて、必要な
公判
期日
をできる限り一括指定した上、
争点
を
中心
にした
証拠調べ
を集中的に行うといった、ほかの
刑事事件
にも通ずる地道な
努力
をしなければならないということでありますが、率直に申し上げまして、これでそれじゃ本当に皆いい結果が出せるかというと、現行制度のもとではなかなか難しい面があるように思われます。 先ほど
改革
推進本部
の事
務局長
からも説明がございましたけれども、今本部の方で検討されている新たな事前準備
手続
の創設、その前提として、議員から御指摘のありました
証拠
開示制度の抜本的な
拡充
、あるいはこういった弁護
体制
といいますか、連日
開廷
を可能とするような公的弁護制度といった弁護
体制
の
整備
、そういったものが絶対的に必要であるというふうに考えており、そこに期待をしているところでございます。
石原健太郎
230
○石原(健)
委員
そうしますと、今度の
改正
によって、ロッキードとかその中村前代議士のこととかリクルートのこと、そういうものも大分
期間
は短縮されるだろう、こう予測していてよろしいんでしょうか。
中山隆夫
231
○中山最高
裁判所
長官代理者 先ほど
山崎
事
務局長
の方からも答弁がございましたけれども、今回は、八条で、最高
裁判所
が
検証
するということになっております。
迅速化
を阻害している要因は何か、もちろんこれは
充実
が前提でございますが、そこのところをその隘路、問題点というものを洗い出し、そしてそれを制度の問題として結びつけていかなければならないというふうに考えておりまして、現在もう既に、ある
意味
で先行的にそういった検討作業が行われておるわけでございますけれども、そこの部分のところが新たな制度
手続
として見直しがきちんとなされますれば、今まで以上の結果が出てくるんではないかというふうに思っているわけであります。
石原健太郎
232
○石原(健)
委員
人事
訴訟
の
裁判
が家庭
裁判所
で行われるようになりますと、それに伴って、家庭
裁判所
の
裁判官
の人員の増強が必要になったり、施設の
拡充
も必要になってくると思いますけれども、どのように対応されるお考えなのか、お聞きします。 また、従来、
審理
件数の増加に比例して、十分な施設の
拡充
とか人員の
増員
が行われていたのかどうか、これまでの経緯とその
努力
などについてお聞かせいただけたらと思います。
中山隆夫
233
○中山最高
裁判所
長官代理者 人訴移管に備えた人的、
物的体制
のところからまずお答え申し上げます。 人的
体制
の
整備
としましては、家庭
裁判所
調査官について、家裁への人事
訴訟
の移管ということで新たに人事
訴訟
に関与することになりますので、今国会において三十人の
増員
をお認めいただいたところであります。また、
裁判官
、
裁判所
書記官につきましては、これは、これまで地裁で人事
訴訟
を行ってきたわけでございますから、地裁から家裁へ機動的に人員をシフトする、マンパワーをシフトするということで基本的には賄える、対応できるというふうに思っております。加えて、
裁判官
あるいは調査官、書記官等がそれぞれの
立場
でどのように人事
訴訟
にかかわっていくことが有用であるか、こういったことについても研究会等を設けまして検討を進めていきたいと思っております。
物的体制
の
整備
としては、既存の物的設備を有効に活用するための
方策
を検討するのは当然でありますけれども、必要な庁につきましては、法廷の
整備
、改修、あるいは新たに
導入
すべき設備、これは電話
会議
システム
等が考えられますが、そういったものの
整備
も早急に図っていきたいと考えているところであります。 新受
事件
の増加に対応してこれまでどんな人的
体制
をとってきたかというところでございますが、
平成
十年から
平成
十四年度まで五年間で、例えば
裁判官
でありますと、百九十五人を
増員
してまいりました。これら
増員
分は東京等の大都市部を
中心
に配置してきましたので、バブル崩壊後、一時期
裁判官
の手持ち件数が
東京地裁
で三百件になるというようなことがございましたけれども、これが今現在百七十件というところになってきております。百七十件でも非常に多いじゃないか、こういうふうに思われるかもしれませんが、実は、そのうちの三分の一はまだ
争点
が確定していないもの、始まったばかりの
事件
であり、それから、
争点整理
中のものが二分の一、残りの六分の一が
証拠調べ
、あるいは
判決
ということになります。 そういう
意味
でいいますと、三十件ほどは
証拠調べ
を行っているもの、あるいは
判決
書きを書かなければいけないものということでありますが、概して言えば、
判決
書きはそのうちの三分の一ぐらいかなというところでありますので、往時に比べると相当
裁判官
の余裕が出てきたというふうに考えております。 今年度は四十五人の
裁判官
の
増員
をお認めいただいたところでありますが、これは全国で三番目に大きいと言われております横浜地裁本庁と同規模の
増員
でございます。 そういうことで、
裁判所
の方は、これはもちろん
裁判所
書記官等についても当然でありますけれども、着実に
体制
の
整備
を図ってきているということで御理解いただきたいと思います。
石原健太郎
234
○石原(健)
委員
人事
訴訟
案件を家庭
裁判所
で
裁判
するに伴うどういうメリットがあるのかを御説明いただけたらと思います。
房村精一
235
○房村
政府参考人
今回の
人事訴訟法案
では、御指摘のように、人事
訴訟
、従来地方
裁判所
で扱っておりましたものを家庭
裁判所
で扱うということとしております。 これは実は、例えば離婚
訴訟
を取り上げますと、離婚をするためには、まず家庭
裁判所
に行きまして、調停を申し立てて調停をする。そこで話し合いがつけばいいわけですが、そこで話し合いがつかない、そうなると初めて
訴訟
を起こす。ところが、この
訴訟
は、現在は地方
裁判所
に行かなければいけない。同じ
事件
なのに、調停のときには家裁、
訴訟
になると地裁という別の
裁判所
に行かなければいけないということで、
当事者
にとっては非常に使いにくい、こういう御指摘がございました。 また、離婚
訴訟
につきましては、離婚の際の財産分与であるとか、子の監護者の指定、あるいは親権者の指定というような付随の処分がございます。これらの処分は、本来は家庭
裁判所
が審判で行っているわけです。ところが、離婚
訴訟
を起こしますと、それに伴って、今言ったような処分も地方
裁判所
で行うということになります。ところが、家庭
裁判所
ですと、家庭
裁判所
の調査官がおりまして、その専門的
知識
を活用しまして、そういった例えば財産分与とか子の監護者の指定についての判断が適切にできるわけでございますが、地方
裁判所
で人事
訴訟
とあわせてやるときには調査官が使えませんので、ある
意味
では非常に
裁判所
にとってやりにくい面がございます。 このようなことから、人事
訴訟
を家庭
裁判所
に持っていきますと、家庭に関する
事件
を調停から
訴訟
まで一貫して、まさに家庭に関する専門
裁判所
である家庭
裁判所
で扱うことができ、そこの調査官など
専門知識
を持った人が活用ができるようになる、こういうメリットがございます。
石原健太郎
236
○石原(健)
委員
それから、家庭
裁判所
で調停時に作成された調査報告書等は
訴訟
においては利用すべきではないというような
意見
もあるようですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
房村精一
237
○房村
政府参考人
家事調停の記録は、その後人事
訴訟
が起きた場合、当然に
資料
となるわけではございませんので、
当事者
が改めて
証拠
として提出をしない限りは、人事
訴訟
における
証拠
になるわけではございません。 ただ、先ほども申し上げましたように、人事
訴訟
の場合、付随処分、例えば子の監護者の指定あるいは親権者の指定などございますが、こういうものについては、今回の
法案
で、人事
訴訟
において
裁判所
はこういう付随処分については事実の調査をすることができる、こうしておりますので、その事実の調査の対象として、そういう過去の家事調停の記録を調査するということもございます。 ただ、これも、事実の調査としてどういうことを行ったかというのは記録にとどめられますので、当然に
資料
となるわけではなくて、事実の調査の対象として取り上げられた場合に初めて
資料
となる、こういう
関係
にございます。
石原健太郎
238
○石原(健)
委員
従来、家庭
裁判所
の調停により養育費等の支払いなどが決定されても実行されないケースが多くあると聞いております。こうしたことはどのように受けとめておられるのか、またどのように今後取り組んでいかれようとしているのかをお聞かせください。
房村精一
239
○房村
政府参考人
御指摘のように、子供の養育費等について
当事者
間で話し合いが調って、にもかかわらず
現実
にその支払いがなされないということが間々見受けられるようでございます。これにつきましては、現在も家庭
裁判所
で履行勧告を行うというようなことで
当事者
に履行を促すような方法も用いられておりますが、それではやはり決め手に欠けますので、今回、実は、担保・執行法の
改正
をするときに、こういった養育費の強制執行を容易にする新しい取り組みをしております。 これはどういうことかと申しますと、養育費というのは、大体月に数万円程度の支払いでございます。現在の執行法でいきますと、この強制執行をするのは、それぞれの毎月の
費用
の支払いを怠った場合に初めて強制執行ができる。したがって毎月毎月強制執行しなければならない、これでは
余り
にも
当事者
の負担が重い、こういうことから、今回の担保・執行法の
改正
におきましては、一回でも支払いを怠ったら、将来分も含めて、
相手
方の、例えば給料
債権
のような定期的に入ってくる
債権
を差し押さえてしまう。そうしますと、毎月の養育費の支払い期が来て次の月給日が来ますと、その月給の中からいわば毎月分を取り立てることが可能になる、一回の申し立てでそれが可能になる。こういう方法を新しく設けることによりまして、養育費の強制執行を容易にするということを考えております。
石原健太郎
240
○石原(健)
委員
話し合いのときは支払う能力があって約束しても、リストラに遭ってしまったとか倒産してしまったとか、これはどうしようもないことだとは思うんですけれども、そんなことはどういうふうにお考えでしょうか。
房村精一
241
○房村
政府参考人
確かに
現実
的にお金がなければこれは執行のしようがないわけですが、ただ、最高
裁判所
において養育費の支払い等について調査をいたしました結果によりますと、
相手
方が、資力があるにもかかわらず、例えば嫌がらせであるとか感情の行き違い等から支払っていないという事例も相当数ございますようですから、そういう場合には、このような新しい執行方法を簡易にするということによって対処できるのではないか、こう思っております。
石原健太郎
242
○石原(健)
委員
次に、少額
訴訟
が適用される
事件
の訴額の上限を六十万円に改めるようですけれども、その六十万という根拠は何なのか、御説明ください。
房村精一
243
○房村
政府参考人
簡易
裁判所
というのは簡易
迅速
に
事件
を処理するわけですが、その中でも特に簡易
迅速
に、いわば一日で
解決
をしよう、こういうものとして少額
訴訟
を考えて、現在訴額三十万円以下の
事件
について特則を設けているわけでございます。これは非常に利用者から評判がよくて、もっと利用できる
事件
の額を上げてほしい、こういう要望が強かったものですから、今回この上限額を六十万円に上げるということとしたものでございます。 六十万にした根拠でございますが、諸外国の例を見ましても、このような簡易な
手続
による上限額というのは三十万から五、六十万までが多い、こういうことが一つございます。それからもう一つは、簡易
迅速
な
手続
ということから、例えば、取り調べられる
証拠
も制限しておりますし、さらに、控訴審での
審理
ができない。少額
訴訟
の
判決
がありますと、
異議
申し立てはできますが、
異議
申し立てで簡裁で
判決
をしますとそれに対する控訴はできない、こういう制限も課しております。 したがって、
余り
高額な
事件
についてそういう制限を課すというのは適切でないだろう、このようなことから、六十万円ということといたしました。
石原健太郎
244
○石原(健)
委員
大臣
にお尋ねしたいんです。
裁判
の
迅速化
というのも確かに必要で、いいことだとは思うんですけれども、
司法
行政の
迅速化
ということもぜひ考えていただけたらと思うんです。とりわけ、最近問題になっております刑務所の処遇の問題とか刑務所内における医療の問題とか、そういうことには早急に取り組んでいただきたいと思うんです。 そのことを御要望申し上げ、今回の法
改正
、せっかく法を
改正
するわけですけれども、どのようにこれを
国民
に周知徹底させていかれるのか、その辺についてお考えをお聞かせいただけたらと思います。
森山眞弓
245
○森山国務
大臣
御指摘のとおり、例えば、例に挙げられました刑務所の問題等につきましても、できるだけ早く対処しなければいけないと考えておりまして、早速行刑
改革
会議
を始めておりますし、また、私自身も、この五月の連休のときを利用いたしまして、現場をつぶさに視察してまいりまして、それを生かして、できるだけ早く改善に向かって前進したいと考えております。 なお、後の方で御指摘になりましたこの
法律案
でございますけれども、
民事訴訟
の
充実
とか
迅速化
を図るためのさまざまな新しい制度が設けられるわけでございます。これらは、
国民
にとってより利用しやすい
民事裁判
を
実現
するために設けるものでございますので、
国民
に知られなければ
意味
がないわけでありますので、新しい
訴訟
手続
が
国民
に十分理解されまして、円滑に実施されるようにすることが必要だというふうに考えております。
法務
省といたしましては、
法律案
の成立後は、これらの新しい制度の趣旨及び内容につきまして、いろいろな方法で十分な周知の
努力
をいたしたいというふうに考えております。
石原健太郎
246
○石原(健)
委員
どうもありがとうございました。終わります。
山本有二
247
○
山本委員長
次に、
木島日出夫
君。
木島日出夫
248
○木島
委員
日本
共産党の
木島日出夫
です。 四月十八日に続きまして、
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
について、きょうは具体的に条文に即してお聞きをしたいと思います。 最初に、第八条、最高
裁判所
による
検証
でありますが、提案者に聞きますが、調査対象となる
事件
は何なんでしょうか。すべてなんでしょうか、特定された
事件
なんでしょうか。
山崎潮
249
○
山崎
政府参考人
八条につきましてです。
裁判
の
迅速化
を推進するため必要な事項でございまして、十分にこの趣旨に沿って
事件
を行っていると思われるものは別でございますけれども、それ以外のものはすべて対象になるということでございます。
木島日出夫
250
○木島
委員
よくわからない答弁なんですが、調査対象となる
事件
をえり分けるんですか、それとも全部ですか。 では、もう一つ聞きましょう。現に進行中の
事件
もすべて調査対象か、えり分けるのか。
山崎潮
251
○
山崎
政府参考人
ちょっと不正確だったかもしれませんが、
裁判
の
迅速化
を推進するため必要な事項を明らかにするために、必要な
事件
は調べる、調査の対象になるということでございまして、これは、終了した
事件
、それから現に進行中の
事件
、その区別は問わないということになります。
木島日出夫
252
○木島
委員
そうすると、修飾がついていますから、調査対象になる
事件
と調査対象から外れる
事件
はもっと明確に、非常に大事なところですから、答弁してください。
山崎潮
253
○
山崎
政府参考人
この八条で明確に書かれておりますけれども、
裁判
の
迅速化
を推進するために必要な事項を明らかにするため、
裁判所
における
手続
に要した
期間
、
状況
、その長期化の原因その他必要な事項についての調査分析、これを行うということでございます。したがいまして、それに関連する
事件
については行うということになるわけでございます。
木島日出夫
254
○木島
委員
全然わかりませんね。 すべての
事件
、悉皆調査しなければ。今やっているんでしょう。
最高裁
はもう統計を持っているでしょう。一
審判決
の
事件
がどのくらいかかっているか、この種の類型の
事件
はこのくらいかかっているが、この種の類型の
事件
はこのくらいかかっていると、いろいろ千差万別でしょう。全体としての統計が集約されてきて、全体の何%が何年以内だという
数字
も出てくるわけでしょう。それで評価するわけでしょう、全体の評価は。今の答弁じゃ全然わかりません。 全部対象になるんじゃないですか。対象にしなければ、この法の
目的
である分析やら多角的な
検証
やら、その結果に基づく国の施策の策定、実施に当たって、適切な活用を図れないじゃないですか。
山崎潮
255
○
山崎
政府参考人
確かに、調査して分析をしていくという対象として、すべての
事件
が対象になる。しかし、
現実
にどこに問題があるかということについては全部の
事件
が対象になるわけではない、こういうことでございます。
木島日出夫
256
○木島
委員
ですから、私は、どんな
事件
が調査対象になるのかということと、調査対象になる
事件
についてどんな調査の内容をやるのか、調査の中身ですね、それはおのずと違ってくると思うんです。貸し金請求で簡単なクレサラ
事件
なんというのは数だけで結構だ、何カ月かかっているというだけの統計的な
数字
だけで結構だ。しかし、医療
事件
等については、中身にまで深く立ち入らなければ長期化の原因が判断できないわけですから、そういうことを聞いているんです。 ですから、対象は全部だ、そして、現に生きている
事件
も対象だと聞いていいですね。じゃ、もう一回確認します。そうですね。 それと、もうちょっと。一審が終わって上級審に係属中の
事件
の一審がどうだったか、長過ぎたかどうか、それも調査対象であること、間違いないですね。
山崎潮
257
○
山崎
政府参考人
係属中の
事件
すべて対象になるということは間違いございません。 ただいま御指摘がありましたように、控訴審に行っているもの、これは第一審が終わっているわけでございますけれども、これも対象になります。
木島日出夫
258
○木島
委員
では次に、調査の中身についてお聞きいたします。 先ほど私からいろいろ言ってしまいましたが、調査の中身については違うのかもしれません。一体、調査の中身は何を考えているんでしょうか。
山崎潮
259
○
山崎
政府参考人
まず、先ほど言われましたように、全般的に調査はいたします。その中で、対象外になるようなものもあろうかと思いますけれども、そうではないものについては、大体、まず、実際どのぐらいの
期日
がかかっているのか、それについてはどういうような
手続
が行われて何が原因かというところ、そこを調査するということで、それについてのまた分析を行っていく、こういうことでございます。
木島日出夫
260
○木島
委員
一応この
迅速化
法は、民事、
刑事
、二年以上かかった
事件
だけがこの
法律
の対象じゃないんですよね。二年かかっていない
事件
についてもこの
法律
の対象であって、より短くしろというのがこの
法案
ですからね。 そうすると、どうなんでしょうか、
余り
深く立ち入って調査しない
事件
と、あるいは、二年以上かかっている
事件
は特に掘り下げて、証人の採用された数とか
鑑定
の有無とか
検証
の有無とか、そんなことまで立ち入って調査することになるんでしょうか。要するに、
事件
の種別によって、
期間
だけでそれ以上突っ込まない場合と、ある種
事件
についてはより立ち入った調査をする、そういうことに、
現実
にはなるんでしょうか。まずそこを聞きましょう。
山崎潮
261
○
山崎
政府参考人
確かに、おっしゃいますとおり、
事件
の種別によっては、それから、二年以内におさまっていても、通常このぐらいの
事件
であれば普通はこのぐらいで終わる、それなのにかなり時間がかかっているというものがあれば、二年以内のできる限り短い
期間
ということがこの目標でございますので、それについてはやはり原因を調べて分析をするということになろうかと思いますし、超えているものについてはほぼみんな対象になっていくだろうというふうに思います。
木島日出夫
262
○木島
委員
そうすると、これから具体的に私から特定して聞きますから、イエスかノーかで結構です。 主に、今の答弁でいくと二年以上かかっているような
事件
かもしれませんが、個別
事件
についての調査の中身ですが、
証拠
採用の可否、内容、これは調査の対象になるのですか。
山崎潮
263
○
山崎
政府参考人
手続
について、その当否というのは……(木島
委員
「当否はともかく、事実」と呼ぶ)事実は、調べるということになります。 〔
委員長
退席、園田
委員長
代理着席〕
木島日出夫
264
○木島
委員
どういう
証拠
を採用したかは調べると。当然、どういう
証拠
申請があったが却下されたということも調査の対象になるわけですね。
山崎潮
265
○
山崎
政府参考人
私どもが実施するわけではございませんので、なかなか答えにくいところがございますけれども、それは、どういう申請があってどういう採用になったかということがわからなければ、全体としてはわからないだろうと思います。
木島日出夫
266
○木島
委員
お認めになりました。 では次には、
裁判長
による、あるいは単独の
裁判官
による
期日
指定の間隔、長いとか短いとか評価は別にして、次回
期日
の指定の間隔がどのぐらいだったか、調査対象ですか。
山崎潮
267
○
山崎
政府参考人
それも対象になるというふうに思います。
木島日出夫
268
○木島
委員
次には、今度の新しい民訴法の
改正
法案
に出てくる百四十七条の三、
審理
の
計画
、これを
事件
によっては
裁判所
は定めなければならないという条文になっておりますが、
審理
計画
が定められたか否か、当然、調査対象ですね。
山崎潮
269
○
山崎
政府参考人
審理
に伴ういろいろの
手続
、これについては当然対象になっていくというふうに思います。
木島日出夫
270
○木島
委員
それからついでに、
民事訴訟法改正
法案
の九十二条の二、専門
委員
、これを
選任
したか
選任
しなかったか、あるいは、
裁判所
は
選任
しようと思ったが、
当事者
の
意見
を聞いたら反対だということで
選任
しなかったとか、そういう
選任
したか否か、
選任
手続
の経過、これも調査の対象ですか。
山崎潮
271
○
山崎
政府参考人
専門
委員
制度、これを
導入
して
審理
をするについて、そういう
事件
であるかどうかとか、やはりその
事件
の内容とか、そういうものに関連してまいりますので、これも対象になるだろうというふうに私は思っています。
木島日出夫
272
○木島
委員
そうですね。今私が指摘したようなことを調査しなければ、長過ぎるかそうではないか、適正だったか、判断もできないわけであります。 では、逆の視点から聞きましょう。 個別の
裁判官
がどのくらい一年間に
事件
を落着させたか、あるいは地方の
裁判所
のある支部がどのくらい
事件
を落着させたかとか、今でも
最高裁
はやっているんだと思うんですが、そういう個別の
裁判官
ごとの落着の
状況
、
手持ち事件
数は当然調査の対象ですか。
山崎潮
273
○
山崎
政府参考人
個別の
裁判官
がどれだけ
事件
を決着したかということよりも、全体として一人どのぐらいの負担になっているかということですね、
裁判所
全体としての
事件
がどのぐらいで、一人頭どのぐらいの負担になるかというような点ですね。 これについては、やはり
審理
が可能かどうか、二年以内に
審理
をしていくことが可能なのかどうか、もっと人をふやさなきゃいかぬかどうか、こういう点からは当然対象になるだろうと思います。
木島日出夫
274
○木島
委員
そうなんですね。
裁判官
が足りないか多過ぎるか、あるいは
裁判所
の設備が足りないかどうか、そんな
観点
から調査をしなければ
迅速化
の施策がつくれない。そうすると、個々の
裁判官
、個々の
裁判所
の全体の
審理
状況
をつかまなければ施策に反映できないということになるんですね。そういうことになると思うんです。 そこで、全体を聞きますが、どういう調査の仕方をするか、それはこの
法律
に全然書かれていないんですが、
最高裁
が自主的に決められるという性格のものなんですか。それは
最高裁
規則で決めるんですか、それとも
法務
省がこの
裁判
の
迅速化
に関する
法律案
で政令みたいのをつくるんでしょうか。それとも、もう一切そういうことはつくらずに、この条文だけで、後は運用は
最高裁
に任せる、そういう
システム
なんでしょうか。非常に大事なところなので、お聞きをしておきます。
山崎潮
275
○
山崎
政府参考人
この八条の条文をごらんいただけばおわかりかと思いますが、これに関して例えば政令で細かいことを定めるとか、それから
最高裁
の規則で定めるという場合には法文にうたうことになろうかと思いますけれども、ここではうたっておりません。したがいまして、運用上お願いするということで考えております。
木島日出夫
276
○木島
委員
そうしますと、今私が聞いただけでも、本当にこの八条に記載された調査を本格的にやろうとしたら、ある面では、すさまじいばかりの個別
裁判
に関する立ち入った調査をしなければできるものではありません。
刑事事件
について、
調書
が否認された。そして、それを
調書
にかわる証人として採用したか、するしない、その他その他その他。民事もそうです。
鑑定
人を採用したかしないか、現場
検証
をしたかしないか、それらも全部調査の対象になっていかざるを得ない。 そうすると、まさに、個別の
裁判所
の
訴訟
指揮のあり方、
証拠
採用のあり方そのものが必然的に調査の対象にならざるを得ない、
迅速化
のためだといったらならざるを得ない、そして、それを評価せざるを得ないと私は思うんです。そんな
鑑定
採用は必要なかったじゃないか、
審理
計画
、つくるべきだったのに、つくらなかったのはけしからぬ、そういう評価をせざるを得ない。 結局は、生きた
事件
もやるというのでしょう。現に係争中の、
裁判
中の
事件
も調査の対象だと、さっき答弁しましたでしょう。そうすると、もうそのことそのものが、
裁判
そのものに対する介入とは言いませんが、調査、批判の対象になりはしませんか。
法務大臣
、こんなことを
最高裁
事務当局にやらせていいんでしょうか。
山崎潮
277
○
山崎
政府参考人
お言葉を返すようでございますが、具体的な
事件
の調査に入るということがどうしても必要になるわけでございます。したがいまして、そういうものについて
裁判所
以外のところにお任せをするというのは極めて問題があるということでございます。 こういう
システム
でやっていかざるを得ないということと、もう一つは、先ほど介入とおっしゃいましたけれども、これはただ調査をするだけでございまして……(木島
委員
「介入とは言わない」と呼ぶ)介入じゃございませんか。調査をするということでございまして、それ以上、
最高裁
の方から個別の
事件
について、ああしろ、こうしろと言うことは一切ないという
システム
でございますので、そこのところはきちっと御理解を賜りたいということでございます。
木島日出夫
278
○木島
委員
しかし、この
法案
は、当然の前提として、
裁判所
の
迅速化
に対する責務が規定されておるわけです。それから、「
当事者
、代理人、弁護人その他の
裁判所
における
手続
において
手続
上の行為を行う者」。これはもちろん
検察官
であり、弁護人であり、
被告人
であり、
原告
、被告であり、その他その他、
裁判
手続
によって関与する者の責務も書き込まれているわけで、「誠実にこれを行使しなければならない。」というのが第七条にあるわけなんです。 そういうことを全部調査して、これは長過ぎる
裁判
だ、これはよう短く頑張ったという評価をして、どこに問題があったかということを
結論
づけて、それを分析というんですが、その結果を国の施策の策定、実施に活用しなきゃいかぬというわけですね。そうすると、私は、この
システム
そのものが人事権を持っている
最高裁
事務当局によって行われたら、今答弁は介入ではないと言いましたが、そういう調査をすること自身が
裁判所
の独立、
裁判官
の独立に対する大変な介入になるんじゃないでしょうか。 昔、浦和充子
事件
というのがありまして、これは三権分立の
関係
でありますが、
刑事裁判
が適切だったかどうかを調査したこと自体が当然論評になるわけでして、それは国会がやったから問題になったわけですが、私は、人事権を持っている
最高裁
がそれをやったら、もう個々の現場の
裁判官
は萎縮するに決まっていると思うんです。
裁判官
は上を見ざるを得ないと思うんです。人事権にはね返ってくるわけですから、配置転換にはね返ってくるわけですから、大都会でやりたいと思っていた
裁判官
が小さな田舎の
裁判所
に配置転換されてしまうおそれもあるわけですからね。そういうおそれを排除できる制度的担保が、この
法律
にはありますか。
山崎潮
279
○
山崎
政府参考人
少し前提が違うのではないかと思うんですが、それは個々の
事件
でいろいろバラエティーがあろうかと私は思いますけれども、
検証
をして、最終的には、こういう
検証
を通じて、今の
手続
ではこれ以上はやっていけない、短縮も無理だ、新しい
手続
をどこかで創設しなければならないとか、そういうような施策を分析して浮かび上がらせて、必要なものは
改正
を加えていく、
改正
だけでは足りないものについては、人的、物的な
充実
を図って、
裁判
を理想的なものに近づけていこうということでございます。 そういう
意味
では将来の施策につなげるということでございまして、個々の
事件
について、それが一々どうであった、こうであったというよりも、何が足りないか、どういうところに問題があるか、そういう制度面に結びつける役割を果たすものでございますので、御理解を賜りたいと思います。
木島日出夫
280
○木島
委員
いや、だから、そういうふうに運用されるのか、あるいは、調査分析を強めていったら、どうもこの
裁判官
は
証人調べ
が多過ぎる、やたらと
鑑定
し過ぎる、現場
検証
をやり過ぎる、だから時間がかかっているんだ、いかがなものか、そういう人事評定につながらないという、つなげないという制度的保障がありますかという質問ですよ。質問に答えていないんです。
山崎潮
281
○
山崎
政府参考人
裁判
の独立に影響を与えてはならないということは、これはもう当然の前提、あるいは当然のこと、憲法上も当然でございます。そういう点では、憲法上でもきちっとした担保はあるということで、
法律
上もあろうかと思います。 ですから、それを守るか守らないかということでございますが、守らなかったら
司法
権全体の信用失墜になる話でございます。ですから、ここに具体的に書いていなくても、別の
法律
できちっとそこはうたわれておりますし、それを守らないことは
司法
の否定につながるということで、そこは当然きちっと守っていただけるということで、この
法案
を考えているわけでございます。
木島日出夫
282
○木島
委員
私がなぜこんなにしつこく制度的保障、制度的担保があるかということを問うているのは、こういう
法律
がない現在でも、事実上
最高裁
事務総局によって個々の
裁判官
に対する評価が行われている。この
裁判官
は丁寧過ぎるというようなことで、それで
審理
が長引いている、そういう事実上の評定がなされ、それが人事に結びついて絶対いないという確信がないからであります、私は。実際逆じゃないかと見ているからであります。 それが、こんな
法律
ができて、合法的に
最高裁
が調査権を与えられるわけですね。徹底して調査をやればやるほど
迅速化
に役に立つわけですから、それが人事にはね返らないはずがない。そうなったときに、恐るべき、これは
最高裁
事務総局による、事務当局による個別
裁判官
に対する、個別
裁判
に対する影響になってしまうのではないか、その疑念が今の答弁ではぬぐえないということだけ私は指摘して、次の質問に移ります。
迅速化
法案
の第七条、
当事者
の責務でございます。これまで
山崎
さんは、法的効力はないという趣旨の答弁を繰り返しております。それは違うんじゃないですか。
訴訟
手続
上の権利は、誠実にこれを行使しなければならぬという責務ですよね。既にもう論議がされておりますが、この条文がない現行法でも、民訴法二条は
民事裁判
について、
刑事訴訟
規則第一条二項は
刑事裁判
手続
において、
訴訟
当事者
の
手続
上の諸権利は、信義誠実に行使しなければならないという責務の
一般
的な規定があるんですね。 この規定がどういうふうに作用しているかといいますと、既にもうたくさんの
裁判
が集積されておりますが、
証拠
申請をしても、この民訴法二条違反、違反といいますか、民訴法二条によって、あるいは刑訴規則一条二項によって
証拠
申請が却下される、そういう形であらわれているんですよ。そういう判例はたくさんあるんです。 そういう
現状
の上に今度この
迅速化
法七条が持ち込まれて、
当事者
の責務として、やはり二年以内に
事件
を終わらす目標を与えられるわけでしょう、
当事者
も。そうなりますと、やはり
手続
法上の信義誠実の義務としてこれは具体的な
裁判
に影響を与える、そういう
意味
で法的効果はあるんじゃないですか。法的効果がないという答弁、撤回してもらいたいんです。
山崎潮
283
○
山崎
政府参考人
前にお答えした点についてもう一度繰り返させていただきますが、私、考えていることは、例えば
審理
として、この
審理
として必要な
手続
が絶対あるということで、これを二年を超えるということですね、こうなっても別に何もない、
訴訟
法上の効果はないということを申し上げているわけでございまして、これが権利乱用、あるいは信義誠実の原則に反するやり方をしたという場合、この点について何もないかということを申し上げているつもりではございませんで、それは、間接的にこの問題が
訴訟
手続
上の問題に反映されること、これは現在の
民事訴訟法
の判例でもあるわけでございますので、乱用にわたるものについてはチェックを受けるという
可能性
は当然あるというふうに考えております。
木島日出夫
284
○木島
委員
お認めになりましたが、だから、こういう条項を新たに入れることによって、今の民訴法二条や刑訴規則一条二項は
一般
規定ですよ、今度は具体的な、二年以内に終わらさなきゃいかぬぞという責務が入り込んでくるわけですから、よりこの規定は
当事者
の
証拠
申請に関して影響を与える、
裁判所
がそれを採用するか却下するかに大きな影響を与える条文になるのではないかということを私は大変危惧しているということだけ述べておきたいと思うんです。 次に、
民事訴訟法改正
法案
についてお聞きをいたします。百四十七条の三、
審理
計画
についてであります。先ほど同僚
委員
からの質問に民事
局長
が答えて、個々の
事件
の特性に応じて、この
審理
計画
をつくるべき
事件
かそうでないかは決まるとおっしゃられました。 そこでお聞きをいたしますが、行政
事件
訴訟
とか労働
訴訟
とか税務
訴訟
、
医療過誤訴訟
は恐らくそういう
事件
にはなるであろうという答弁はありましたが、この
法律
が成立したと仮定して、その後、民訴規則とかその他によって、
計画
審理
すべき
訴訟
の類型化など、指針はつくるんでしょうか。 〔園田
委員長
代理退席、
委員長
着席〕
房村精一
285
○房村
政府参考人
直接的に規則を制定するのは
裁判所
でございますが、先ほども申し上げましたように、
審理
すべき事項が多数であり、または錯綜しているなど
事件
が複雑であることその他の事情により、適正かつ
迅速
な
審理
を行うために必要があるかどうかというのは非常に
事件
の個別的な特性に左右されるところが大きいと思いますので、なかなかそういった形での基準を定めるのは難しいのではないか、こう思っております。
木島日出夫
286
○木島
委員
では、確認しますが、そういう類型化のための諸規則は
最高裁
はつくるべきではない、個々の受訴
裁判所
が決めるべき問題であるとはっきり答弁していただけますか。
房村精一
287
○房村
政府参考人
先ほど申し上げましたように、規則を制定するかどうかは最高
裁判所
において判断をされることでありますし、条文の
考え方
から、私が申し上げたのは、非常に個々の
事件
の特性に左右される性質が多いので、
一般
的な基準を定めようと思ってもなかなか難しいのではないかということを申し上げているわけでございます。
木島日出夫
288
○木島
委員
最高裁
に規則をつくることがまだ認容されているとなると、なかなか危ないんじゃないかと。 それでは、今度は百四十七条の三の条文について聞きますが、
裁判所
は
審理
計画
を定めなければならないという条文なんですね。義務規定になっているんです。 そこでお聞きしますが、その前提として、
当事者
双方
と協議し、その結果を踏まえて
審理
の
計画
を定めなければならないという義務規定になっています。そこで聞きます。
当事者
一方が、そういう
審理
計画
をつくることには反対だという
意見
を表明したときには、この義務は解除されるんでしょうか。
房村精一
289
○房村
政府参考人
この条文にありますとおり、
双方
と協議をして、その結果を踏まえて
審理
の
計画
を定めなければならないとしておりますので、その協議の結果、適正かつ
迅速
な
審理
を行うために必要があると
裁判所
が認める場合には、一方が反対をしていても、
審理
の
計画
を定めるということになります。
木島日出夫
290
○木島
委員
そうすると、なかなか厳しい条文になりますね。
裁判所
の判断で
審理
計画
がどんどんとつくられていく、そして、
争点
、
証拠
の整理を行う
期間
、証人、
当事者
尋問を行う
期間
、結審の予定時期、これなどがぴしゃぴしゃと決められていく。そしてその中では、特定の事項についての攻撃防御の方法を提出するべき
期間
も、これはもう
当事者
の
意見
は聞くけれども、その
意見
が理がないと
裁判所
が判断すれば、反対をしていてでも特定の事項について
証拠
提出の
期間
、攻撃防御方法を提出するべき
期間
が定められるということになっていくわけです。 そうしますと、この条文が、百五十七条の二、
審理
計画
が定められている場合の攻撃防御方法の却下の条文と連結をしてまいりますと、却下されてしまうんですね。そういうことになるおそれを私は感じるんですが、それを歯どめをかけるような条文はありますか。
房村精一
291
○房村
政府参考人
歯どめといいますか、基本的に、この
審理
の
計画
を定めますのは、
事件
を適正かつ
迅速
に進行させるということでございますので、
一般
的に言えば、
当事者
の協力を得ながら進めるという方向で協議がされるわけでございます。 ただ、ぎりぎりの場合、どうしても同意はしてもらえないけれども
計画
を立てて進行をする必要があると
裁判所
が判断すれば、それはそういう場合に、ぎりぎりのところ、反対をしていてもできるということを
法律
上は書いてございます。 ただ、
現実
に
訴訟
を円滑に進行させようと思えば、それは
当事者
と十分な協議をして、その同意を得ながらやるというのが通常の運用になるだろうということは、
裁判
実務に携わっている者であれば当然そう思うわけでございます。 それから、却下につきましても、当然、その
当事者
との協議をした上で、特定の事項についての攻撃または防御の方法を提出するべき
期間
を定めて、しかもその
期間
を守れなかったことについて相当の
理由
があるということを
当事者
が疎明をすれば、これは却下できないわけでありますので、この点は当然上訴審での
審査
の対象にもなるわけでございますし、そういう
意味
で、条文上もそれなりの配慮はしてございます。
木島日出夫
292
○木島
委員
私が一番心配なのは、
現状
を見ますと、
民事事件
で非常に時間がかかっているのはやはり難しい
事件
です。再々ここで
質疑
者から提起されているとおりです。行政
事件
とか公害
事件
とか医療
事件
とか、ほとんど
原告
側には
証拠
がない
事件
ですよ。被告が国、地方自治体、大
企業
、たくさんの
証拠
は被告が持っている。しかし、なかなか
証拠
が出てこない。現行
民事訴訟法
の
証拠
法ではなかなか
証拠
がとれない。それで苦労している、それで時間がかかっている。
刑事事件
でも
否認事件
でしょう。
自白調書
はつくられた、いろいろの証人の警察官
調書
がつくられた。それは否認したい、そして真実を明らかにしたい。しかし、なかなかそれがうまくいかない。そういう
事件
が時間かかっているわけですね。 そういう
事件
、これは民訴法ですから、
刑事事件
は別にいたしましても、そういう性質の
事件
が長期化しているというときに、
裁判所
の都合で
計画
審理
になり、特定の事項について攻撃防御方法の提出すべき
期間
が定められ、そして、時機におくれたといって
証拠
申請が却下されてしまうと、結局、力のない者が真実を引き出すことができないという
裁判
になるんじゃないか、そういうふうにこの仕組みが使われるんじゃないかと私は危惧しているわけですね。そうならぬという制度的保障が見つからぬので、今聞いているわけですが、次に移ります。 専門
委員
の制度と
鑑定
人の制度なんですが、ちょっともう時間がありませんから、先に事実だけ確認しておきますが、今度のこの法
改正
によって、
鑑定
人に関する条文ですが、二百十六条が変えられましたね。現行は
鑑定
人に対しても
証人尋問
の規定が準用されて、
鑑定
書を出した
鑑定
人を法廷で尋問できるわけです。
原告
なり被告なり
裁判長
も尋問できるわけです。 しかし、今度の
民訴法改正
によりますと、
鑑定
人に対する質問ができるのは、
鑑定
人が口頭で法廷で陳述したときにのみ
当事者
が質問できるという条文になっているんですね。
鑑定
人が、普通、書面ですよ、
鑑定
書というのを出したときには、今度の民訴法体系では、
改正
法案
では、
鑑定
に対する直接尋問ができない。もっと言うと、弾劾できない、直接弾劾できないような構造になっているんです。 そこで、一点だけお聞きしますが、今度のこの民訴法の
改正
で、
鑑定
人に対する証人申請はできなくなってしまうんですか、それとも、
鑑定
人に対する証人申請は
法律
上は許されるということ、現行法どおりなんですか。
房村精一
293
○房村
政府参考人
今回の
法案
の二百十五条の二で、「
鑑定
人に口頭で
意見
を述べさせる場合には、
鑑定
人が
意見
の陳述をした後に、
鑑定
人に対し質問をすることができる。」こう書いてありますが、これが想定しておりますのは、
一般
的に、
鑑定
人は
鑑定
書を出します。
鑑定
書だけでは不十分なので、口頭で説明をしてもらう必要がある。 そのときに、従来のやり方では、
鑑定
人に対して
証人尋問
と同じ形で、
当事者
が先に質問をして、しかも非常に攻撃的な質問をすることが多い。そのようなことから、
鑑定
人が十分自分の
意見
を法廷において述べられない、こういう指摘があったものですから、
鑑定
書を出したその
鑑定
を口頭で補充してもらうときに、まずはその
鑑定
人に口頭で補充する部分を
意見
を言ってもらって、その後に質問をしよう、そしてその質問の順番も、通常の
証人尋問
とは異なって、
裁判長
が先に行う、そういう形をとる。 ですから、
証人尋問
の規定を準用しなくなったのは、
鑑定
人に対するいわば反対尋問といいますか、弾劾の機会を奪うという趣旨ではなくて、形を
鑑定
人質問で行っていただく。その内容的に、
鑑定
人の口頭の
意見
あるいは文書による
鑑定
意見
について疑問点あるいは弾劾すべき点があれば、それは当然この質問の中で行うことができる。その点は、従前、
証人尋問
の形で行ったものがこの
鑑定
人質問の形になって順番が変わるというだけでございますので、そこは
法律
的な反対尋問の機会を奪うというような性質のものではございません。
木島日出夫
294
○木島
委員
いや、ですから、この二百十五条の二は、「
裁判所
は、
鑑定
人に口頭で
意見
を述べさせる場合には、
鑑定
人が
意見
の陳述をした後に、
鑑定
人に対し質問をすることができる。」ということでしょう。
鑑定
書が立派なものが出てきた、もう
意見
を聞く必要がないと
裁判所
が判断してしまったら、
鑑定
人は
意見
を述べる機会がないわけですね。そうしたら、
原告
、被告は弾劾する機会を奪われるということになりはしませんかという質問なんです。
房村精一
295
○房村
政府参考人
これは
鑑定
人におよそ聞く必要がなければ、それは改めて口頭で
意見
を述べさせる必要もないわけですが、文書だけで済む場合というのは、それは実際の実務としてはほとんどない、
裁判所
としても直接聞きたいと思うことが通常でありますし、
当事者
双方
からそういう申し出があれば、それは当然、
裁判所
はこの
鑑定
人質問の形で
鑑定
人に質問するということになるわけでございます。
木島日出夫
296
○木島
委員
それなら、この
法律
に、
当事者
から
鑑定
人に質問したいという申し出があったら
鑑定
質問の場をつくると、一項目書いてくれればいいんですよ。それは書いていないんですよ、書いてありますか。 もう時間ですからこれで質問を終わりますが、それがなくて、
裁判所
が、もう
鑑定
書が出たから
意見
を聞かなくてもいいと言ったときに、
当事者
の直接
鑑定
人に質問する場が奪われるようなことだったら、これは大問題ということだけきょうは指摘だけしておいて、終わりますから。
房村精一
297
○房村
政府参考人
鑑定
人に聞く申し立てですが、二百十五条の二項で、「申立てにより又は職権で、
鑑定
人に更に
意見
を述べさせることができる。」ということがありますので、先ほど申し上げたように、申し立てがあれば、通常はその必要性を認めればやる。ただ、申し立てがあっても必要性がなければやらないのは、これは
証人尋問
でも同じことですから。
木島日出夫
298
○木島
委員
きょうのところは終わります。
山本有二
299
○
山本委員長
次に、保坂
展人君
。
保坂展人
300
○保坂(展)
委員
社民党の保坂展人です。 基本的な問題なので、まず
最高裁
に伺いたいと思います。 今回の
迅速化
法案
の審議に当たって、いろいろ本
委員会
で議論されておりますが、
手続
を
迅速化
するについて、
当事者
の正当な権利利益が害されないよう、
当事者
の人権に十分配慮し、
当事者
の防御権を損なうことがないように十分な配慮をしてほしいという声が上がっていますけれども、
最高裁
としてはどういう見解ですか。
園尾隆司
301
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 お答えいたします。 その点につきましては、まず
審理
の
充実
が肝要であるということを考えております。
迅速
というのは、
充実
した
審理
の上に
迅速
にする目標を掲げていくということでございますので、
迅速
な
審理
のまずその前提として、
充実
した
審理
があるというように考えております。
保坂展人
302
○保坂(展)
委員
いや、その際に、その
充実
の中に、
当事者
の人権とか、またその権益を不当に損なうことがないようにしっかりやってくれという声が上がっているんですが、それについてはどうですかと聞いているんです。
園尾隆司
303
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 この点につきましても、
当事者
の権利を害さない、あるいは
当事者
の権利を守っていくということが
裁判所
の責務でございますので、この点については、
当事者
の権利について配慮をした運営をしていくということを考えております。
保坂展人
304
○保坂(展)
委員
それでは伺いますが、本
法案
も内閣
司法制度改革
本部から提出をされて審議をされているわけですが、最高
裁判所
としては、
司法
の世界で、国会における
法案審議
、経過論点など
質疑
そのもの、これについてどのように受けとめているのか。また、附帯決議が付されるような場合がありますけれども、その場合はどうなのか、お答えください。
園尾隆司
305
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 国会での審議それから決議というものは、
裁判所
がその後
法律
を適用する際に大変貴重な
資料
であるというように考えておりますので、これが
裁判官
に参照されるというような形で検討をしていきたいというように思っております。
保坂展人
306
○保坂(展)
委員
それでは、国会での審議もまた附帯決議も同様に
司法
の現場でも生かされているということでしたけれども、今私が冒頭にお聞きしたような、
迅速化
に当たってはまず
充実
とおっしゃいました、その際には
当事者
の人権や権益を害さないようにと。こういうやりとりの質問と答弁というのは、何か
訴訟
指揮をゆがめたり悪影響を与えたりするようなことはありますか、どうですか。
園尾隆司
307
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 もとより、それは
法律
の目指すところということでございますから、これは、
裁判所
がそのようなことを考えて運営していくということは、むしろ
訴訟
運営上必ずやるべきことというように考えております。
保坂展人
308
○保坂(展)
委員
その答弁ですと、附帯決議にこういう
一般
の原則が盛られても、何ら困惑するところではありませんね。
園尾隆司
309
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 附帯決議に関しましては、まだ、
裁判所
としまして、その点についての内容ということに関しまして
意見
を述べる
立場
にはないというように考えておりますので、その点についてはよろしく御理解をお願いしたいと思います。
保坂展人
310
○保坂(展)
委員
そういうことじゃなくて、最初に私聞いたんですよ、
迅速化
に当たって、
当事者
の人権なり権益を害することがないようにしっかりやってほしいという声が国会審議の中で上がっている、それで答弁はいただいた、同様のことが附帯決議に盛り込まれた場合に、
訴訟
指揮をゆがめたりあるいは何か悪影響をもたらしたりということが、ないだろうと思うんですが、そこはどうですかという話です。
園尾隆司
311
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 先ほど申しました原則ということであれば当然のことでございますが、なお、附帯決議の内容がどうかという点に関してお聞き及びでございますので、その点につきましては、むしろ後に
法律
が成立し、あるいは附帯決議が成立したとした場合にその運営に当たる
裁判所
といたしましては、その点については論述を差し控えたいという趣旨でございます。
保坂展人
312
○保坂(展)
委員
委員長
、ちょっとやりとりしていてもわかりませんので、ぜひこれは
理事
会で協議していただいて、国会の場で
意見
を
司法
に対して述べることが
訴訟
指揮にかかわっていろいろな害悪をもたらすなんということがもしあるのであれば、全部
法務大臣
が答えなきゃいけなくなるんですね、この審議も、
最高裁
によく言っておきますと。ですから、しっかりちょっと議論をしていただきたいと要望します。
山本有二
313
○
山本委員長
その点につきましては、
理事
会で協議させていただきます。
保坂展人
314
○保坂(展)
委員
それでは、専門
委員
についてお聞きをしていきたいと思いますけれども、専門的
知識
、知見を有する
事件
のジャンル、これは民事
局長
の方に伺いましょうか、なるべく多目に挙げてほしいんですけれども、どういうジャンルを想定されていますか。
房村精一
315
○房村
政府参考人
これはいろいろあるだろうと思います。例えば、典型例としては、
医療過誤
事件
におけるような、医療に関する
知識
というものもございますが、これも医療といいましてもそれぞれ科が分かれておりますので、細かく分け出せば、それぞれの専門ごとにということになりましょうし、
建築紛争
等についてもございますでしょうし、特許等のことになれば先端部分の科学に関する各分野ということになりましょうし、そのほか、
事件
の種類によっては、労働
関係
の
事件
でもそういう専門的な
知識
が必要とされるような
事件
もあるかもしれません。 そういう
意味
でさまざまなものがございますので、そういうある程度専門家がいて、
訴訟
が比較的起こりやすい、その専門家の
知識
を活用する必要があると思われるような分野というのは、理念的には常に専門
委員
選定の対象にはなり得るのではないかと思っております。
保坂展人
316
○保坂(展)
委員
それで、この
法案
の中に、九十二条の二のところに、事前の場合でも、「
当事者
の
意見
を聴いて、」という記述がありますよね。それから、
証拠調べ
をするに当たっても、専門
委員
が
手続
に関与するについては、「
当事者
の
意見
を聴いて、」こうありますけれども、その「
当事者
の
意見
を聴いて、」というのはどの程度聞くんでしょうかね。これは、やはりこの専門
委員
というのは、もう到底御免でございます、だめですということであれば、無理に押しつけるということはないんですか。
房村精一
317
○房村
政府参考人
これは運用の問題でございますので、
法律
上はあくまで「
意見
を聴いて、」で、同意が要件とはされておりませんが、あくまで
訴訟
を円滑に進行させる、そういうことのために専門
委員
を選ぶわけでございますので、
当事者
の対応によってかえって、専門
委員
を選んでも、およそスムーズに進行しないというのでは困るわけですから、そこら辺は、
裁判所
がしかるべく
当事者
の
意見
を聞いた上で適切な判断をして運用していただける、こう思っております。
保坂展人
318
○保坂(展)
委員
この専門
委員
について、先ほどなるべく広くというふうに言ったのは、例えば医療はこの部分この部分という
意味
ではなくて、多分
社会
的にまだ十分判明していない事実あるいは被害、公害の問題なんかでもそうですよね。例えばきょうのニュースで、午前中も言いましたけれども、新校舎に子供たちが入ったらどうも調子が悪い、それで旧校舎の方にランドセルをしょった子供たちが移動していく、これは今、シックスクールなんてニュースに出まして、なるほど、シックハウス、シックスクール、そうなのかとわかりますよ。しかし、五、六年前はまだそんな認識はそう広がっていなかったように思いますね。 これは
法律
にもなっているので大分共有をされてきたと思うんですけれども、まだ十分に
社会
的に共有されていないけれども一部の
被害者
にとっては非常に深刻、そしてまた、少数の専門家が、そういった問題について、極めてこれは深刻という
意見
を表明しているけれども、他方、こういった
訴訟
の場合、例えばシックハウスなりシックスクールでもいいんですけれども、建設の専門家ということになると、そういった問題、基本的には、業界全体としてなかなか認知をしていない。今の時代は違いますけれども、まだ最初に出だしのころは、そういう問題、その訴えている方の体質の問題じゃないかとか、言ってみれば、そういう認識が業界という側では弱い場合がございますよね。 そういう専門
委員
のジャンルなんですけれども、なるべく全体を見渡して、もう既に定立をした、先ほど言われたような、金融だとか労働だとか医療だとか、そういう分野以外にも広げていくべきではないかと思うんですが、いかがですか。
房村精一
319
○房村
政府参考人
御指摘のような、新しいタイプの問題、これについては、そもそも、まず専門家がいるかどうか、また、どういう専門家が必要かということを
裁判所
が適切に判断できるかという問題はございますが、ある
意味
では、そういう新たに起きた問題ほど、
当事者
の主張の整理等について専門家の
知識
をかりないと、
裁判所
としても適切に対応できないという問題ではありますので、それは積極的に、そういう新しい問題についても専門
委員
にふさわしい人を探す
努力
は必要だろうと思っています。
保坂展人
320
○保坂(展)
委員
それでは
最高裁
の方に伺いますけれども、例えば医療、典型的に議論されていると思いますが、医療で、しかも大都会じゃない地域で医療の専門
委員
を選ぶ場合に、係争
当事者
の、訴えている側の医師と顔見知りであったとか、先輩、後輩
関係
であったりとか、いろいろな縁でつながれているということがありますが、こういったことを配慮して、どのように公平な人材をつくり上げていくのかということについてはどう考えていますか。
園尾隆司
321
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 それぞれの専門分野に関して特色がございますので、医療の分野あるいは知的財産権の分野、それぞれの分野に関して適した検討をこれから鋭意進めていくという考えでございます。 特に、医療に関しましていいますと、御指摘のように、他の専門
訴訟
の分野とは違った特殊性がございます。特に、医療機関が被告になるという場合に、専門
委員
というのは常に医師であるということで、その被告と近い
関係
にあるのではないかということが常に問題になる特別な分野でございます。他の分野には、このように、一方の
当事者
に定型的に近しい
関係
にあるというような議論がされる分野はございません。 したがいまして、この分野に関しては、特に公正さに気をつけながら専門
委員
を選んでいかなければいけませんし、
現実
に、専門
委員
に関与していただく場合に、ある一方の
当事者
と大変近しいというような問題がありますと、その
手続
がその後うまく進みませんので、今、
裁判所
といたしましては、幅広く、広域なところから専門
委員
の候補者を選べないものだろうかとか、さまざまな、ただいまのような、御指摘のような公正さということに関して検討を重ねておるところでございます。
保坂展人
322
○保坂(展)
委員
もう一度
裁判所
に聞きますけれども、さすがに先ほどのシックハウスはもう既にこういう問題があるということをはっきり認識されていると思いますけれども、まだあるかどうかについて
争い
がある、例えば、今電磁波を逃れて白い装束で動いている方たちがいますが、確かに、欧米から来たNGOの方で、あるんですね、携帯電話、いろいろはかってみると、すごいこれは電磁波浴びますよ、健康に障害が出てきますと。
訴訟
もアメリカなんかで起こっているでしょう。それから、高圧電線下における発がん率とか、あるいは精神疾患の発生率が高いんじゃないかとか、これは例えば電磁波とかですね。 水質の汚染も最近単純じゃなくなってきた。化学物質が多様になって、これまでのはかり方じゃ検出されないようなものが、ごく微量のものが、環境ホルモン等いろいろ言われています。それから、クローン牛なんかが認可されましたよね。そうすると、その肉が本当に人体に健康被害をもたらさないのかどうかとか、あるいは遺伝子組み換え食品なども流通していますけれども、そういうもの、挙げていくと、結構、まだ議論している最中のものというのが多いと思うんですよ。 最高
裁判所
の
裁判官
は忙しいんですね。一人
平均
百七十件ですか、抱えて、
新聞
ぐらいはお読みになる、テレビぐらいは見るかもしれないけれども、とてもじゃないけれども、全領域の
社会
現象をリサーチして歩くことはできないだろう。 そうすると、最高
裁判所
は、今現代
社会
に起きている現代型
訴訟
の類型になるようなことをあらかじめリサーチする機能というのはあるんですか。
園尾隆司
323
○
園尾
最高
裁判所
長官代理者 大変分野が細かく分かれてまいりますので、それぞれについての検討というのは一つ一つ進めなければいけないという難しいところがございます。 例えば、知的財産権の分野、特許
訴訟
ということに限りましても、新しい、最先端の技術あるいはノウハウというものが出てきてまいりまして、そのような最先端部分について
裁判所
としてさまざまな
方々
からの情報提供をいただいて、鋭意、専門
委員
に
選任
する、その給源について検討するというようなことをやっておりますが、そのような一つ一つの作業を進めていかなければいけないというように承知をしておりますので、今後の課題として、そのような一つ一つの検討を進めていきたいというように思っております。
保坂展人
324
○保坂(展)
委員
法務
省の方、どう考えていますか。 要するに
裁判所
が全部やることは難しいんじゃないかと僕は思うんですね、実際のところ。ただ、そうであれば、こういうジャンルについて
司法
は備えてほしいという、あらかじめ予見できる、あるいは今
日本
では問題になっていないけれども海外で非常に問題になっている問題などについて、いわばその準備をするというか、そういう専門家とのパイプを
司法
がつなぐということを、この専門
委員
の創設に当たって、どの程度
意識
したのかというところはどうですか。
房村精一
325
○房村
政府参考人
専門
委員
の任用は最高
裁判所
の方において行っていただきますので、どういう形で行うのかということですが、私どもとしては、やはり
裁判所
においてしかるべき準備をして、ある程度幅広に専門家を確保しておく、また新しい、そういう事態が生ずれば、それに対応して準備をするということが期待されているだろうと思いますし、また、そういう方向で、現に準備をしているのではないかと思っています。
保坂展人
326
○保坂(展)
委員
もう一度、では
法務
省に聞きますけれども、九十二条の三で、音声による送受信により、まあ電話でやりとりをすることができる、こういうふうに書かれていますよね。これ、テレビ電話などはどうなんですかと聞いたら、テレビ電話も音声があるからオーケーだということなんですが。 ちょっと考えてみますと、先ほど
裁判所
側から答弁のあった、例えば知的財産権の先端部分、これはもう専門家といっても
日本
に二人しかいないとか、いろいろな細分化された分野の中で、どうしてもこの人という、そういう方は大体いつでもどうぞというわけにいかない。非常に忙しい。来週は、この一カ月、ニューヨークに行っていますというときに、では国際電話でやりとりすることもありますか。
房村精一
327
○房村
政府参考人
遠隔地という、特に限定はしておりませんので、技術的に可能であれば、その専門
委員
がたまたま海外にいる場合においても、こういった装置を使って
手続
を進めるということは可能だと考えております。
保坂展人
328
○保坂(展)
委員
今度百五十七条の二の
関係
なんですが、これはこの
当事者
が「
期間
内に当該攻撃又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の
理由
があることを疎明したときは、この限りでない。」これは、「相当の
理由
」というのはどういうことなのか。例えば、妻が倒れて、看病と家事、仕事でどうしようもなかったというときはどうなのかとか、あるいは精神的に大変うつ状態が続いてすべてに気力が起きなくて現在加療中である、こういう場合はどうなのか。いかがですか。
房村精一
329
○房村
政府参考人
ここで
期間
を守れなかったことについて相当の
理由
があると言うのは、
社会
的に見て守れなかったことについてもっともだという了解が得られるようなことでございますので、ただいま御指摘の、まさにうつ状態に陥って現に加療中である、そういう状態で準備ができなかった、あるいは家族が倒れてその看病のために間に合わなかった、こういうような場合には当然相当な
理由
があるという場合に当たると思っております。
保坂展人
330
○保坂(展)
委員
これは
法務
省の方にもう一回伺いますけれども、今度、百四十七の三の
関係
で先ほどから議論になっている、要するに、
争い
が多岐にわたってまた錯綜している
事件
について
審理
計画
を立てるということなんですけれども、実は、先ほど列挙した、電磁波もそうですし、いろいろな新しいジャンルの係争というのは、そもそも訴えている側は大変多岐にわたって複雑だと主張し、訴えられている側は、例えば行政だったとしましょう、それは従前どおりに事を行っているので全然複雑なことではないと。複雑なのか単純なのかについてやはり
争い
があるケースがあると思うんですよ。これはどういう基準で決めていくのでしょうか。
房村精一
331
○房村
政府参考人
ここは、
裁判所
がやはり両
当事者
からその事情を聞き、あるいはその主張等を見て適切に
審理
を進めていくためには、例えば主張の整理にある程度時間をかけて行う必要がある、あるいは立証の準備も立証
計画
を
当事者
にきちんと立ててもらう必要がある、こういう判断をするかどうかということにかかっているわけでございます。
一般
的には、そういう複雑な
事件
になれば両
当事者
の認識が一致するのが通常だろうと思いますが、中には、一方は非常に複雑だと思い、片方は極めて単純だということもあろうかと思います。そういう場合は、それぞれの
意見
を聞いて
裁判所
として適切な
審理
を行うために、
当事者
が非常に複雑だと言っているけれども実際の問題点はごく簡単だ、こう思えば無理に
審理
計画
を立てる必要はありませんし、逆に、片方が簡単だと言ってもやはりきちんと整理するには相当時間がかかる、実は相当隠された
争点
があるのではないか、こう思えば
審理
の
計画
を立てる複雑な
事件
として扱う。 やはり、最終的には
裁判所
がそれを判断するということになろうかと思います。
保坂展人
332
○保坂(展)
委員
山崎
事
務局長
にちょっと、専門
委員
の話をさっきずっとしましたので、総括的に伺いたいのですけれども、開かれた
司法
、
国民
に開かれた
司法
、しかも現代的な要素で非常にドラスチックに動いている現代
社会
に対応する
司法
というのが
改革
の論議の柱になったかと思うんですが、それらの問題を敏感にキャッチするのは、やはり個人だったり、小さなグループだったり、少数の学者だったり、ジャーナリストだったりするわけですね。そういう人たちがまさに
司法
システム
の場に、こういうジャンルについて準備をしてくださいよというような仕組みをつくる。 例えば、専門
委員
という具体的な制度が出ていますけれども、その前提としての議論の中に、
司法
の外からまさにこういう問題が大事ですよということをインプットしていけるような仕組みは議論されなかったんですか。どういう問題
意識
ですか。
山崎潮
333
○
山崎
政府参考人
大変残念ながら、そういう議論はございませんでした。
保坂展人
334
○保坂(展)
委員
大臣
、どのように思われますか、副本部長として。お願いします。
森山眞弓
335
○森山国務
大臣
おっしゃるように、
社会
は非常に変化しつつありまして、いろいろ今まで全くだれも知らなかったようなものが大きな問題に急になるということがございます。ですから、常にそういうものを把握して、適当な専門
委員
をお願いできるように準備しておくということが一番理想的だと思いますが、なかなか
現実
にはそこまで及ばないというところは大変残念でございますが、せいぜいこれからも
努力
いたしまして、そういう問題が起こらないようにしたいというふうに思います。
保坂展人
336
○保坂(展)
委員
それでは、
人訴法
の方に行きたいと思います。 二条の「定義」のところでちょっと伺いたいと思いますけれども、人事
訴訟
の定義について、「次に掲げる訴えその他の身分
関係
の形成又は存否の確認を
目的
とする訴え」とあるんですが、この「その他」というのは具体的に何を指していますか。
房村精一
337
○房村
政府参考人
ここで言っている「その他」の典型例は、親子
関係
の存否確認の
訴訟
でございます。 これは、従来解釈上認められていたわけでございますが、今回条文にそれを「その他の身分
関係
」ということで明示して、人事
訴訟
として扱うということにしたものでございます。
保坂展人
338
○保坂(展)
委員
それでは、参与員の問題に行こうと思いますけれども……
房村精一
339
○房村
政府参考人
ちょっと訂正いたします。 「その他」は、親子というより姻族
関係
でございますね、これの確認でございます。
保坂展人
340
○保坂(展)
委員
参与員の方に移りたいと思いますけれども、これは現在でも全国六千人、家事審判法三条一項によって参与員になるべき人たちがいますと
裁判所
から伺っております。 その人がどのように選ばれるかをちょっと
裁判所
に聞きたいんですけれども、人望があって、
社会
人としての健全な良識がある人ということなんですが、職業の例として
弁護士
、公認会計士、不動産
鑑定
士などの専門的な資格がある人や大学教授が挙げられていますね。それから、地域
社会
に密着していろいろな活動をしてきた人などと書いてあるんですね。 これは、いろいろな活動をしてきた人の具体例を、どういう方を
裁判所
が、
余り
地域に密着して
裁判官
が動いているようにも思えないので、どういう方にこれをお願いして、選んでもらっているのか。実態はいかがですか。いろいろな活動の中身です。
山崎恒
341
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者 現在の家庭
裁判所
における参与員となるべき者の
選任
につきましては、具体的には、全国の家庭
裁判所
が各地方公共団体とか
弁護士
会あるいは医師会、そういうような機関、大学も含みますが、等に幅広く推薦を依頼する、そして、その推薦を依頼された参与員候補者の中から書面で選考し、また面接でどういうような活動をしてこられたかというようなことも把握した上で、家事審判
事件
は多様でございますので、その多様なことに対応できるように職業や専門的分野、その構成が全体として適正になるように配慮して
選任
しているところでございます。
保坂展人
342
○保坂(展)
委員
平均
年齢と性別の割合はどうですか。
山崎恒
343
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者 参与員の
平均
年齢については統計がございませんが、年齢別構成については、四十歳以上が一・六%、五十歳以上が一四・〇%、六十歳以上が四五・九%、七十歳以上が三八・五%となっております。これは
平成
十五年の二月一日現在の統計でございます。 男女別の
状況
ですが、男性が、約三千五百人、五八%になります。女性が、約二千五百人、四二%というような割合でございます。
保坂展人
344
○保坂(展)
委員
そうすると、大分やはり六十代以上の人が、六十代が四五%、七十代以上が三八%ですから、八割方が六十代以上ということになりますよね。最高年齢はどのくらいなんでしょうか。まあ、それはいいですけれども。 今、例えば離婚の問題とかでいろいろ相談事が持ち込まれる。そして、家裁で、今回いろいろ、場合によっては地方
裁判所
から移って、これまでの調停そのものの
手続
から転換するというようなケースの中に、大変若い人たちの離婚だとか、さまざまなトラブルが多く出てくると思うんですが、
余り
に年齢が離れている方だと、例えば、今、この国会にも出会い系サイト規制
法案
なんというのがかかっていますけれども、何だろう、それというところから話をしなきゃいけないということになると、やはり年齢がもう少し、二十代は無理にしても、せめて三十代ぐらいからしっかりバランスをとった方がいいんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
山崎恒
345
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者
委員
御指摘のように、年齢構成が上の方に偏っていることは事実でございまして、やはり、
事件
が多様でございますので、おっしゃるとおり、年齢構成をもう少し幅広く、若年の参与員を
選任
することも今後
努力
してまいりたいと考えております。
保坂展人
346
○保坂(展)
委員
それと、家庭
裁判所
の調査官の役割が大変重要になってくると思うんですが、少年
事件
などでも大変活躍をしていますし、また、その調査官も非常に忙しいというふうに聞いています。 二つお聞きしたいんです。一つは、家裁の調査が重要になるということにおいて、
当事者
が
手続
に関与するというところは十分手当てはされているのかどうかということと、もう一つは、予算面や人員面の
増員
という必要はないのか。二点、お願いします。
山崎恒
347
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者 まず、
当事者
が
手続
に関与するということですが、
当事者
ですから、
事件
処理に当たって、いろいろな
意見
あるいは要望等を事実の調査あるいは
証拠調べ
等の中で述べていただくという形での関与が通常でございます。それから、家庭
裁判所
調査官が
現実
に
当事者
の自宅等に赴いて調査をする、その際に
意見
を聴取するということもございます。 そして、家庭
裁判所
調査官が、家裁への人事
訴訟
の移管に伴って新たに人事
訴訟
に関与することになりますので、今国会において、それも踏まえて、三十人の
増員
を家庭
事件
処理の
充実
強化ということでお認めいただいたところでございます。
裁判所
といたしましても、家庭
裁判所
における人事
訴訟
の
審理
のあり方、あるいは、家裁調査官の専門性を生かした事務処理のあり方等について検討を引き続き行いつつ、所要の人的、
物的体制
の
整備
に努めてまいりたいと考えております。
保坂展人
348
○保坂(展)
委員
法務
省の方に伺いますけれども、四条とか三十一条で、例えば家庭の中のドメスティックバイオレンスなどの件で、妻が居場所を知られたくないということに配慮をして管轄のことを
工夫
したというふうに聞いていますが、具体的に。
房村精一
349
○房村
政府参考人
管轄で、ただいま御指摘のドメスティックバイオレンス等に配慮したものとしては、まず第一に、現行法では、第二順位の管轄として、夫婦が最後の共通の住所を有した地の地方
裁判所
の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときにおけるその住所地、こういうのがございます。これを今回廃止しております。 これは、想定しております例としては、いわゆる家庭内暴力で妻がその家を出た。しかし、その出た家と同じ管轄内の別のところで生活をしている。それで、夫がやはり出てしまって、別の管轄区域のところにいる。こういう場合になりますと、現行法でいいますと、最後の共通住所地で、しかも妻がいますので、その妻の住んでいるところを管轄する地裁が管轄
裁判所
になります。 そうなると、妻は、
訴訟
を起こすときに自分の住所を明らかにして、そこに起こさなければいけない。ところが、そういうことをしますと、
相手
方に自分の住所を知られてしまう、こういうことがありますので、今回、これを思い切って廃止いたしました。 そうしますと、共通住所地で、しかも自分がいるところでないわけですから、夫のいるところの今度は家庭
裁判所
、そこに
訴訟
を起こせる。そのときには、自分の住所を明らかにしないで、例えば
訴訟
代理人の事務所を送達場所として届け出る、こういうような形によって、自分の住所を知られないでも
訴訟
が起こせる、こういうことがございます。 それから、三十一条に関しましては、やはり子供の扱いをどうするかということが非常に重要でございますので、子供の住所地を配慮して決めるべきであるというようなことをやっておりまして、これもやはり、妻が子供を連れて出てしまっているというようなときに、子供の、一緒にいる自分のところを管轄にしてもらいたい、こういう要望にこたえられるように、こういうことでございます。
保坂展人
350
○保坂(展)
委員
それでは、最後になるかもしれませんが、
裁判所
に伺います。 三十九条の履行の
関係
で、命令を出し、そしてまた、これに従わないときには十万以下の過料ということで、現行でも、家事審判等で履行の勧告とか命令、どのくらいの数が出ているのか。また、従わないというのは、ここのところ大体どのぐらいの、過料を科した件数ですね、もしわかったら、強制執行までどの程度至っているのか。
人訴法
改正
によって、その辺の扱いが何が変わるのか、運用の面でよりスムーズになるのか。それについてお答えください。
山崎恒
351
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者 現在の履行勧告の
実情
ですが、
平成
十四年には一万四千九百九十六件が履行勧告の件数としてございます。対象となった
事件
が、婚姻
費用
、財産分与、子の養育費等の金銭債務の支払い、不動産の明け渡し、動産の引き渡しなど、財産上の給付を対象としたものが合計一万四千百七十九件と、全体の九四・六%を占めております。その履行
状況
ですが、全部履行されたものは三千八百五十七件で、二五・七%という
数字
になっております。 それから、履行勧告のほかに履行命令というものが
委員
御指摘のようにございますが、これは数が少なく、
平成
十四年に履行命令が出された件数は十二件にとどまっております。 それ以降の過料の件数とか強制執行の件数については、ちょっと把握しておりません。
保坂展人
352
○保坂(展)
委員
それで、本法によってその辺の実態は変わるのかどうかというのはどうですか、運用する側として。
山崎恒
353
○
山崎
最高
裁判所
長官代理者 これまでの実績から見ますと、大きくは変わらないのではないかと思いますが、ただ、今度、担保・執行法の
改正
が行われまして、養育費については強制執行が非常に容易になるということがございますので、そちらの方で
実現
を図るという方向が示されてくるのではないかと思います。
保坂展人
354
○保坂(展)
委員
最後に
大臣
に伺いますけれども、私も前からこれは、
日本
の男性
社会
の中で離婚した場合の養育費というのは非常に水準が低いですよね、まず第一。数万円ですというふうにおっしゃるけれども、数万円ではなかなか育てられないですよ。その数万円さえ払わない人が多いんですね。今、
数字
を示してもらっても、後は知らないよという人が非常に多いわけです。そしてまた、命令まで至っているのは十二件しかない、過料についてはわからない、運用は
余り
変わらないという、このあたりは、強制執行をどんどんかけろということにいきなり飛ばないんでしょうけれども、どういうふうにお考えですか、感想を求めて終わります。
森山眞弓
355
○森山国務
大臣
私も、長い間女性の問題を扱ってまいりまして、今御指摘のようなことが非常に大きな問題だというふうに認識しておりました。 ですから、今回の
改正
は、そう目立った大幅な
改革
になるとは思えないのかもしれませんけれども、まず
改革
のための第一歩として、少しでも女性及び残された子供にとってよい方向に動いていく第一歩となればいいというふうに考えております。
保坂展人
356
○保坂(展)
委員
以上で終わります。
山本有二
357
○
山本委員長
次回は、来る九日金曜日午前九時二十分
理事
会、午前九時三十分
委員会
を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時散会