○鮫島
委員 民主党の鮫島
宗明です。
きょうは、
宮田参考人、
飯塚参考人、
植村参考人、お越しいただいてありがとうございます。私、東京の出身なものですから、個別事情を離れて、客観的な立場でお伺いしたいと
思います。
朝からお話を聞いていると、二つのことが大体まざってやりとりされている。
一つは何かというと、今の体制の中で、十年前に決まった現在の
WTOの体制の中でもいかに大変かというお話がそれぞれ三分野であって、ただでさえ大変なのに、さらに新ラウンドでおかしなことになったらもうやっていけないよ、弱り目にたたり目みたいな話なんだろうと
思います。ですから、最初の前半の、今でさえ大変ですと。これは、いろいろな行政の不備等々もあって、じわじわとそれぞれの
農業、
林業、
水産業が衰退しつつある。このことをどうするかという問題が実は大変大きい。
それから、
WTOの中で
輸出国側とどう戦うのかというのは、ちょっと別の問題だというふうに私は思うんですね。ですから、そこもちょっと分けて聞きたいと
思います。
先に、外と戦うという話からいきますと、ちょうど十年前と今とでどの辺が一番変わったか。
日本を取り巻く情勢、あるいは
日本の一次
産業を取り巻く情勢、それから
世界的な
議論がどういうふうに変わってきたかというと、先ほどからお三方もおっしゃっていますが、
多面的機能という概念が大変強く意識されてくるようになってきた。その中には
環境問題というのも非常に大きくありますし、
環境問題は具体的に言えば
地球温暖化の問題であり、
生物多様性の
保護の問題、こういうことが大変強く意識されるようになってきた。
それからもう一つ、
我が国でもそうですが、BSEの発生を契機として、食の安全、安心ということが大変強く言われている。このことは間接的には
漁業なんかでもありますし、
林業でもあると
思いますが、合法とか適法とかということも、ある意味では、この安心、安全、合法というジャンルとしてあるような気がします。
それからもう一つ、
日本の国が十年前に比べると、北朝鮮の問題もあり、
世界全体の秩序が混乱する中で、ナショナルセキュリティーというのが多分十年前より今強く意識されているんだろうと
思います。
わかりやすい方から言いますと、例えばナショナルセキュリティーということから言うと、ヨーロッパの国々で直接所得補償ができた最初の
考え方は、山岳地帯において、
一定の人口が張りついていないと
国境監視機能が不十分だ、山を越えて他民族が入ってきたときにそれが見えない、それで
一定数の山岳
地域の
農業が必要だということで直接支払いが始まったと
考え方としては
思いますが、
日本でそれは何かというと、
漁業者がやっているわけですね。
日本は、違法に民族が入ってくるのはみんな船で大体来ますから、ボートピープルや難民を最初に発見して第一報を送ってくるのは、みんな
漁業者の方々の発見。ところが、こういう二次的な国防機能に関して、今何の手当ても行われていない。こういうことは、私は、堂々と
漁業者の側が
主張していい問題だと
思います。多分、そういう
漁業者の監視がなければ、あの北朝鮮の拉致の被害者ももっと多かったに違いない。恐らく一部は事前に見つかってためらったのもあるのじゃないかと
思います。
そういう意味では、国防という意味では、
漁業者は十分
主張する論拠を持っています。
また
農業の方でも、備蓄というのが、そういう
日本を取り巻く国際
環境が若干不安定になる中では、今までの備蓄というのは過剰
対策で、あるいは十年に一回の天変不順なときにこれだけなくちゃ不安ですねということでありましたが、ナショナルセキュリティーという
観点から
日本は実は備蓄
制度が何もないわけですね。そういう
考え方もこれからは論拠としての正当性を持っていく、いかに
世界に通じる正当な
主張を積み上げていくかというのが
WTOの
交渉をしていく上で大変大事だと私は
思います。
その意味で、私は、実は
林業の方に一番
関心を持っているわけでして、今一応三・九%を
森林に
吸収してもらうということになっていますが、正当な
主張という
観点からいうと、本当はこの
国会でのやりとりでもう既にばれているんですが、
日本の
森林が本当に一九九〇年に比べて二〇一〇年、三・九%余計に
吸収するんですか、科学的根拠があるんですかというと、本当はないんですよね。
二〇一〇年の方は、
日本の
森林全体のCO2の
吸収量は科学的に言えば減ります。しかし、九〇年と二〇一〇年を比較しての話なんじゃなくて、九〇年は一応カウントしない。二〇一〇年、どのぐらい
吸収しているかということで、使えるんだというので政治的な持ってきた数字が三・九%。
だけれ
ども、それは賢明な
日本国民はわかっていますから、私は、そういうインチキな話に乗るのではなくて、このまま非常に手入れが悪い
森林とよく手入れをした
森林とで、これだけ成長量、CO2の
吸収量が変わるんだという、もうちょっと科学的な
主張。
それから、国際的にナンセンスだと私は
思いますが、
伐採すると、
伐採量イコール排出量というふうに今換算されてしまうんです。例えば、千石の
木材を
伐採すると、千石分のCO2を排出したというふうに今の
京都議定書の
ルールではカウントされてしまう。これは大体、欧米の連中が、チップにして燃してバイオマス発電とかということを想定しているのでそうなんですが、
世界に冠たる
木材文化を持っている
日本としては、
伐採しても、それを木造建築なり家具なり非燃焼的に利用した場合は排出にカウントするのはおかしいじゃないかという
主張は、
木材文化で
世界をリードしている国としては十分できるんじゃないかというふうにも私は
思います。
だから、そういう、今
政府が宣伝しているような
森林の機能にそのまま乗っかるのか、それともやはりもうちょっと科学的に
考えて、手入れをした場合としない場合にどれだけ違うのか、あるいは
木材も、山から町までといいますか、川上から川下まで一貫した
産業として充実育成していく手法としてどういうのがいいかというような
観点からの御
主張をもうちょっと聞きたいと
思います。
それから、
森林の持っている大変重要な機能、
生物多様性の維持も
森林が一番大きいと私は
思いますけれ
ども、例えば、東南
アジアの国々で違法
伐採によってオランウータンの生息地が脅かされているというようなものは
輸入しない。例えば、
漁業の方でも、マグロ船なんかでいわゆる国際
ルールに従わない違法なものは
日本のマーケットに入れないようにする、あるいは入ってきても買わなきゃいいじゃないかというので、「責任あるまぐろ
漁業」という団体があると
思いますが、責任ある
林業という分野も、ある意味ではあっていいのかもしれない。違法な
伐採を行ったようなものは
日本の卸業者が買わないというような体制も必要なんではないかというふうに私は
思います。
漁業の方でいえば、例えばエビなんかが、マングローブを次々に崩してエビのための栽培地をつくったようなところでできたエビは入れないとか。
環境問題がいかに使えるかというのは、
輸出国側、ケアンズ・グループ、
アメリカ、
カナダ、オーストラリア、こういうグループは
世界の中で
環境問題に後ろを向いているグループなんですね。だから、逆に言えば彼らの一番の弱点、アキレス腱は、この
環境問題。
京都議定書にすら批准しない、
地球温暖化にそっぽを向いている国々、これを徹底的についていくのが一つの戦略ではないかというふうに私は
思います。
その意味では、
林業というのは、いろいろな意味で、組み立て方によって
環境に後ろを向いているあの国々を攻撃できる大変いいフィールドじゃないかと思うんですが、ひとつ、
飯塚参考人、御
意見を聞かせていただきたい。