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龍井参考人 おはようございます。御紹介いただきました、連合の
龍井でございます。きょうは、この重大な局面で発言の機会をいただいたことに、まず感謝申し上げたいと思います。限られた時間ですので、ちょっとはしょるところがあるかもしれませんが、私
ども働く側から見て、今回の
改正あるいは
派遣労働そのものが持っている問題点について、
幾つか御
指摘をさせていただきたいと思います。
御承知のように、
労働者派遣法というのは非常に不幸な生い立ちで始まりました。八〇年代半ば、いわゆる
職安法違反という違法行為が蔓延しておった、横行しておった。それを結局、
実態を追認する、つまり
実態にルールの方を合わせてしまおうと、言ってみれば、いろいろ大義名分はつけられますけれ
ども、そういう違法の追認というところから始まった。それで、
基本的に、
雇用関係、使用
関係ということを通じて起こる問題の、特に
労働者保護の視点ということが不十分なまま、何回かの
改正の論議の中でも、私は、
実態追認の流れで来たというふうに認識をしております。
しかし、それにも増して、今回の
改正の提案はかなりひどい。一言で申し上げますと、昨日もこの場で城島議員が、この総合規制改革
会議の問題の御
指摘をされていたようですが、やはり出発点が人材ビジネスの
ニーズ、そして
派遣先、使う側の
ニーズ。これはもう端的に申し上げまして、今の厳しい競争を乗り切るためには、まさになりふり構わず。人件費コスト削減という言葉がありますけれ
ども、人件費ですらない。まさに物件費で、物扱いにし、いつでも切れる、そういう
仕事、
雇用をもっと広げよう。まさに、私
どもからすれば、なりふり構わぬ今の人事の、あるいは経営のあり方がそのまま反映している。しかも、その
ニーズが本当にそのまま法案の中身として出されてきた。率直に申し上げて、
労働者保護をつかさどるべき
厚生労働省の提案の
法律とは到底思えない内容になっております。
今、何が起きているか。
幾つかございます。
一つは、冒頭に申し上げた、不幸な成り立ちで生まれた
法律、実はそれ自体が遵守されていない。きょうは詳しく述べる時間がございません。総務省の監察でも、そうした事例は具体的にるる触れられております。そして、契約内容も守られていない。お手元の配付の
資料で、十九ページに、途中の契約打ち切りがあったかという、これは連合が行った
調査ですけれ
ども、登録型では二六・四%の人がそういう経験をしているというふうに答えられております。言ってみれば、冒頭に申し上げました、
雇用関係、使用
関係が分かれることからくる
基本的な問題が、結局、何ら解決されていない。
本来ならば、
雇用契約というものは労使対等で労働
条件を決めていく、それが
原則でございます。ところが、私
どもに相談に参る方の発言を聞いていれば、とにかく自分の名前を明かす、あるいは
派遣先の名前を明かすこと自体が、もう退職を覚悟しなければ、つまり、文句を言ったら次の
仕事が回ってこないという、絶対的な力
関係に置かれている。よほどスキルの高い人、ごく一部の方は多分個人
事業主的な交渉が可能でしょうけれ
ども、大多数の登録型の方はそうではない。
基本的なベースが保障されていないというのが今の
派遣労働の
実態なわけです。
そして三つ目に、今、松井さんからも
ニーズという言葉が使われました。今回の法案がまとめられる民事部会の
議論でも、これは
ニーズがあるからだと。使用者側、業界の
ニーズは先ほど申し上げました。じゃ、働く方の
ニーズは何なんだろう。
私は、これはいろいろなアンケートをとって、かなりミスリードされているのは、もちろん私
どもの
調査でも、
派遣で働きたいという方はいらっしゃいます。ただ、これは、二十六ページをごらんになっていただくとわかりますように、ずっと
派遣でとおっしゃる方は全体のわずか五・六%。つまり、
正社員で働こうとしてもその
仕事がない、あるいは、今の不払い残業も横行しているような、超長時間残業が強いられる
正社員じゃ嫌だと。言ってみれば、超長時間残業か、不安定
雇用か、非典型
雇用かという負の選択肢の中で辛うじて選んでいるものが、
ニーズと語られてしまっている。
そして
派遣期間の問題でも
ニーズということが
指摘をされます。当然、有期契約
労働者は、
派遣に限りません、少しでも長く働き続けたいと、だれでもそう答えますよ。ただ、そのことと、
派遣あるいは有期契約の上限
期間の
延長とはおよそ
関係がありません。今でも、上限
期間一年というときに、じゃ実際の契約はどうなっているか。三カ月、六カ月、ぶつ切りですよ。上限
期間を
延長したことが
雇用期間の安定につながるか、何の保障もないわけです。むしろ、いつでも切れるという、働く側ではなくて使用者側の選択肢だけを拡大する、そういう内容になっているというのは極めて重大な問題だと思っています。
ですから、それが、私
ども働く側、もうちょっと譲って、
労使双方にとっての選択肢となるための基盤が今求められている。つまり、もっと端的に言えば、
派遣労働というのが、今の日本の働き方、例えばヨーロッパのようにジョブ、職務概念がないことによって、どんなに
業務限定をしても
仕事の中身はぐしゃぐしゃにされてしまう。あるいは、労働
条件についても、このジョブであれば最低こうだというルールもないまま、今、
派遣労働というのが行われている中で、本来、
派遣労働というのが成り立つべきインフラ、ルールというのが
整備されないままだというのが私
どもの
基本的認識です。
ですから、今回の
改正というか改悪というか、論議のときに私
どもが一番お願いしたいのは、今何が起きていて、そのために、そこで起きている問題を解決するために何が必要なのか、どういうルールが必要なのかという、それが本来の
法律改正で求められていることだと思います。
しかし、これも冒頭で御
指摘しましたように、総合規制改革
会議あるいは人材ビジネスの、先に改革ありき、先に緩和ありきというところから
議論がスタートをし、実は分科会、審議会の中でもそうしたそもそも論の
議論というのがされないまま、言ってみれば
労働者保護措置というのがほぼ皆無なまま、ここに至っている。私は非常にゆゆしき事態だと思っていますし、職安
行政を初めとする労働
行政のあり方そのものが根幹から問われているというふうに考えています。
そして、もう
一つの問題は、そもそも、いろいろな
派遣法のルールを積み重ねる中で、
正社員代替の防止ということが言われてきました。今何が起きているか。露骨な
代替です。
一つ例を申し上げます。一個相談があったのは、某大手の銀行で、あるセクションで女性の
正社員の方二人が配転になった。相談のあった方は、もともとそこにおられた
派遣の方。その
正社員二人分の
仕事を、
派遣の方はやっているんですね。つまり、置きかえではなくて、今いる
派遣の人にその職務が回される、任される。当然、労働
条件は極めて低い。そして残業が物すごい。これがもうほとんど、例外ではなくて、むしろ私は主流になりつつあるんじゃないかというふうに思っています。
ですから、私
どもは別に、
正社員利害とかなんとかということで申し上げているのではなくて、そもそも日本の
雇用システムが築き上げてきた、例えば労使協議、対等に協議をするというのは、労使協議を通じてです。あるいは労働
条件の底支えをしていく、そういうものの適用除外のものがどんどんふえる。言ってみれば非典型がふえる。その重要な柱として今回のものが位置づけられようとしている。つまり、トータルとして今三〇%から、ひょっとしたら四〇%になるかもしれない非典型
雇用に対して、どういう枠はめをしていくのか、どういうルールをつくるかということが本来ここで
議論していただきたいことなのに、繰り返し申し上げますように、その視点がないのではないかというのが率直な問題でございます。
そういう
意味で、やはりそれが
労使双方にとっての選択肢になるためには、既に建議で書かれていますような、専門
業務についてはきちっと特定をする、そして、臨時的、一時的
業務、まさにテンポラリーワークでございますから、これがむやみに長期化しないようなその
条件整備をきちっとする、それはもう
法律に明記していただきたいと私は思っています。
したがって、それが繰り返されるような
雇用についてはきちっと
期間の定めのない
雇用にしていく、そして違法
派遣の場合には
派遣先に対する責任をきちっとかぶせていくといったそもそも論の論議から今しなければ、今のなし崩しの不安定
雇用——
雇用がふえればいいとは思いません。
雇用の質です。良好な
雇用機会です。そのための
整備というものをぜひお願いしたい。
時間が参りましたので、個々の論点は御質問のところで触れられればと思っています。
ありがとうございました。(拍手)