○森
参考人 本日は、このような場で発言をする機会を与えていただき、ありがとうございます。
エネットは、二〇〇〇年三月の
電力小売自由化に伴い
電力小売事業に
新規参入した、
特定規模電気事業者でございます。NTTファシリティーズ、東京
ガス、大阪
ガスの三社の出資により、二〇〇〇年七月に会社を設立いたしまして、二〇〇一年四月より関東地区及び関西地区において
営業を開始させていただきました。
これまで約二年の間、非常に厳しい
事業環境の中で
事業を行ってまいりましたが、本日は、これまでの実業の経験に基づきまして、
新規参入者の
立場から、
電気事業分科会で主張してきた内容のうち、特に重要と思われる点について
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、本
国会に
提出されました
電気事業法改正案につきましては、これまで一年以上議論して取りまとめを行った
電気事業分科会の答申内容を反映したものでありまして、全体として賛同いたします。
しかし、今回の
制度改正の趣旨を踏まえ、
制度を実効性あるものとするために、詳細設計や運用面において、今後確実に実施していただきたい
ポイントがございます。それらの
ポイントも織り込みながら、託送
制度の見直し、
電力の
広域流通の
活性化、市場監視・紛争処理機能の
整備、
小売自由化範囲の
拡大のそれぞれの項目ごとに御説明させていただきます。
資料をお配りしておりますので、御参照いただければありがたいと思います。
二ページでございますが、まず、託送
制度の見直しの中でも極めて重要度の高い託送料金の透明化、低廉化について申し上げさせていただきます。
現行の託送料金は、届け出制という緩やかな
規制がとられておりますが、算定根拠として公開されている
情報だけでは料金設定の妥当性が検証できないため、私
どもからいたしますと、本当に料金が公正に設定されているのかという大きな懸念がございます。
また、
電力会社各社さんは、昨年の四月から十月にかけて料金改定を実施されましたが、その際の値下げ率を見てみますと、例えば、
競争領域となっている特別高圧業務用の
小売料金については一四、五%の値下げが行われているにもかかわらず、託送料金は七%程度しか値下げされておらず、託送コストの
効率化はまだまだ不十分であると考えます。
この点につきまして、
送配電ネットワークは独占でありますことから、託送料金の
規制方式を届け出制から認可制に改めること、そして託送料金の計画的、政策的な低減を図る
仕組みとして、プライスキャップ
規制を導入することを私は主張してきました。今回の
制度改革案では現行の届け出制を維持することになりましたが、
透明性向上を図るために、行政による変更命令発動基準を明確化し、さらに
会計分離を実施し、その結果の公表を義務づけることとなりました。
今後、実効性を上げる上では、
電力会社さんによる
情報開示や説明
責任の徹底と、実質的に計画的かつ十分な水準での託送料金の低廉化を期待いたします。
三ページでございますが、
同時同量ルールの見直しについてでございます。
現行の
同時同量ルールは、
需要量と
発電量とを三十分単位でプラマイ三%以内に合わせなければならないという非常に厳しいルールになっています。この
同時同量ルールを遵守するために、PPSは、
需要家一件一件にリアルタイムの
需要量を監視する端末を設置しておりますが、この端末を設置するために、一件当たり約百万円もの費用を要しております。今後、
小売自由化範囲の
拡大に伴って
規模の小さな
需要家がふえることを考えますと、これらの
需要監視コストは社会的に無視できないものとなります。
私は、これを改善する方法として、実
需要量ではなく、事前に
提出する計画値どおりに
発電量を合わせるという計画値同量の採用や、三十分ごとの実計量は行わずに、サンプルデータや統計データから時間単位ごとの
需要量を類推するプロファイリングの導入を提案してきました。
制度改革案では、三十分
同時同量変動範囲の弾力化、事故時バックアップ料金の
廃止、プロファイリングの適用
検討を行うこととなりましたが、さらには、
需要量と
発電量との差分に適用される料金であるインバランス料金が適切な水準に設定されることが極めて肝要でありますので、この点は確実に実行されることをお願いしたいと思います。
四ページでございますが、
送配電部門の
中立性、
公平性、
透明性の
確保についてでございます。
送配電ネットワークは、現在
電力会社さんが所有されていますが、
競争の基盤となる公共インフラと位置づけられますことから、私は、
送配電部門の構造分離もしくは分離相当の厳格な
規制を要望してきました。この点、
制度改革案では、構造
規制は行わずに、
情報遮断、内部相互補助の
禁止、差別的取り扱いの
禁止を行為
規制により担保すること、及び
中立機関を設立し、
送配電に係る公平なルールの策定、監視を実施することと整理されました。
ここで実効性を上げるためには、行為
規制の厳格な運用、確実に
公平性を担保し得る
中立機関のガバナンス、そして系統利用に係る紛争処理に関して、
中立機関が迅速かつ適切に対応していただくことが重要であると考えます。
以上が、託送
制度の見直しに関する
意見でございます。
続きまして五ページでございますが、
電力の
広域流通の
活性化についてでございます。
まず振替料金についてですが、
供給区域外からの
電力調達の容易化、
全国規模での
電力取引の
活性化という
観点から、これを
廃止することに賛成いたします。
続きまして、
全国規模の
卸電力取引市場の
整備についてでございます。
現在の相対
取引のみのスキームでは
余剰電力の調達が困難であり、今回
制度改革案に織り込まれた
全国規模の
卸電力取引市場の
整備は、
電源調達手法の多様化という
観点から、PPSとしても大変大きな期待を寄せております。
取引市場を有効に機能させる上では、流動性の
確保や需給バランスを適切に反映した
価格形成が非常に重要であり、これらの要件を満たすためには、
電力会社さんに対して一定割合の
電源の市場への投入を義務づけることや、市場支配力行使を防止する
仕組みの
構築が必要であるとこれまで主張してまいりました。しかし、
制度改革案では、
電源投入の義務は課さずに、
電源投入の
考え方を
電力会社さんが自主的に表明し、それを事後検証することとなりました。
今後は、この自主表明と事後検証の
仕組みをいかに有効に機能させるか、あるいは価格操作等の不正な
取引行為防止のチェックをいかに行うかといった点を具体的に詰めていく必要があると考えます。
六ページでございますが、市場監視・紛争処理機能の
整備についてでございます。
現行
体制において紛争処理に約一年もの期間を要することがあるわけですが、
事業者の
立場からすれば当然、もっと早期の解決を望んでいます。
そこで、私は、紛争を未然に防ぐために
競争環境を
整備し、また紛争が起きた際には迅速かつ適切に処理する役割を担う、政策立案機関とは独立した専門性を有する
規制機関の設置を要望してまいりました。
制度改革案では、外部有識者の積極活用等による専門性の
強化等、行政の市場監視・紛争処理
体制の
整備充実を図ることとなりましたが、独立
規制機関を設立した場合と同等に機能する市場監視・紛争処理
体制を
構築していただくことを強く要望いたします。
引き続きまして、
小売自由化範囲の
拡大についてでございますが、
全面自由化を最終目標に置きつつ、
需要家選択肢の
確保状況を検証しながら、段階的に
自由化範囲を
拡大していくという
制度改革案に賛成でございます。
最後でございますが、今後、詳細設計を行うに当たりまして御留意願いたい点について述べさせていただきます。
まず一点目は、託送
制度の見直しや
中立機関の設立、
卸電力取引市場の
整備といった各
制度が有効に機能することによって、実質的に
需要家の
利益増進につながるかどうかが重要であり、そのような
観点からの詳細
制度設計をお願いしたいと思います。
二点目は、PPSや
発電事業者、
需要家な
ども含めて、オープンかつ透明なプロセスでの詳細設計をお願いしたいということでございます。
そして三点目は、新
制度の運用開始後も
制度が有効に機能しているかどうか継続的にチェック・アンド・レビューを行い、時間の経過や
環境の変化などによってうまく機能しなくなった場合には、迅速かつ柔軟にルールの見直しを行う
仕組みの
構築をお願いしたいということでございます。
以上で、私からの
電気事業法改正案に関する
意見についての説明を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)