○中村敦夫君 基本的にまあそういうことなんですが、本当のその
目的についてなぜこうなっているのかということを御存じない人はかなり多い。まず知っている人の方が少ないんじゃないかなというふうに思っております。
私は、これまでも大規模林道というものは見てきました。そして、先週の土曜日に広島に行きまして、十方山というところで建設されている大規模林道の現場というものを林業とか地質学とか生物学とかの専門家と一緒に視察してまいりました。
それで、まず、一般の林道というものは切り出した木材の搬出や林地での作業を
目的としているわけですね。ですから、国道なり県道なりから山の中へずっと突っ込んでいくということで、大体四トントラックぐらいの車一台分の幅、三、四メートルですか、一級林道、二級林道と言われるものですけれ
ども、そういうもので、大体行き止まり型になっているわけですね。いわゆる突っ込み林道ということになっています。これは要するに林業そのもののためにありますから、普通の人は使わない道ですよ。私は時代劇をやっていましたので、山の中の道でチャンバラやるときはそういうのを利用させていただいたわけですから。これは自然の道に見えるわけですね。これを拡幅してコンクリートでやったりなんかすると、大体使う車がありませんから非常に無駄ですし、大変経費が掛かってこれは合わないんですから、これは未舗装だというのがこれは条件になっているわけです。仕事が終わってしまえばそこはもうそのままにしておくとまた自然が再生するという形で、まあ余り自然に負荷掛けないで残っていく。これが一般的な林道なんですね。
ところが、この大規模林道というのは全く、全然違ったもので、幅が七メートルあるんですよ、それで二車線、大型観光バスが擦れ違っても平気だというようなところがありますが。これは舗装道路で、山地というか山脈といいますか、山沿いの非常に標高の高いところを尾根伝いにずっと長距離でつながっていくと、時々下りたりもしますけれ
ども。基本的にはそういうのが大規模林道というものの形ですね。これは全国で七路線、
北海道から九州までありまして、それぞれ非常に長い距離で、総計を測りますと全長二千キロに及ぶという大道路脈なんですね。今まで一千キロ造ってきたと。あと一千キロ残っていますが、これまでもう五千億円近くをつぎ込んできたと。ですから、トータルでいえば一兆円規模の
予算が必要だというような大変な
事業になっています。
問題は、これまでほとんど利用されていなかった広葉樹林地帯というのは、要するに標高の高いところですけれ
ども、地力というものも非常に低いんですね。ですから余り利用されないと。当然、杉やヒノキの人工林を造成しても高
生産性の林地には転換できないという特徴があるんですよ。余り林業としては適当でないそういう場所に大規模林道というものが造られているわけですね。これはもう山奥ですから、人里離れた山奥を通っているわけですから、やっぱり利用率がほとんどないと。しかも、冬は積雪のためにもう利用できないということなんですね。ですから、住民の生活道路というような主張もあるようですけれ
ども、本当に役立っているというような現実はないわけです。つまり、ほとんどふだん車が通っていない道路なんです。
私の知り合いの環境ルポライターが、ちなみに一日その大規模林道で寝ていたそうですよ、ひかれるかどうか。そうしたら、三台しか通らなかったと。それも、林業の車は全然来なくて、たまたま近くのおばちゃんがキノコ採りにやってきたというような、そういう車があるというようなのが全体的な
状況になっているということがありますね。
地域の
振興にそれじゃ役立っているのかというけれ
ども、そうやってつながっている道路ですから、例えばだれかが通っていったって通り過ぎていってしまうと。具体的にそれぞれの
地域に何にも、
産業的利益の効果もないし、一体これ何のためにあるんだというような、そういう存在なんですよね。
つまり、ですから、一般の林道とは大規模林道というものは全く異質なものですよ、同じ林道という言葉が使われているんで誤解されやすいんですけれ
ども。それが大規模林道と一般林道の基本的な違いだということがあります。
そして、要するに、あのような七メートルの大道路を山頂の近くにずっと尾根伝いにつなげていくわけですから、事実上林業できないですね。例えば、下の方の山腹を作業場にしようとしたら、またそこから林道を造らなきゃならない。そして、切った木を上へ持ち上げるなんというのは、これはもうばかげた話でして、この動力だとか費用を
考えたら全く話にならないわけですね。上で切った木を下へ下ろすというのが、これ林業の基本なんですよ。しかも、ガードレールが付いているというような話でしょう。だから、元々それはやる気がない。
それじゃ、上の方はどうなのか。上の方はそもそも林業に向かないようなもう山のてっぺんの
地域です。そして、しかも岩盤が非常に、
日本の山脈、全部弱いんですね。ですから、その側面をコンクリートで固めて工事していけば、入るといったって入れないというのが
現状ですよね。だから、これ林業と全く無縁の存在だというのが基本的にあると思います。
そこで、林野庁にお聞きしますけれ
ども、紙
委員が聞いた
質問と大分ダブりますので、
法案を
中心にお聞きしようと思います。
法案の第十一条、緑資源機構の
業務として、地勢等の地理的条件が極めて悪く、かつ豊富な森林資源の開発が行われていない
地域において大規模林道を建設するというふうになっていますけれ
ども、地勢等の地理的条件が極めて悪い
地域というのは、それだけ加工地だとか
消費地からのアクセスが困難な場所だということになっていますね。それから、国産材の需要の高かった高度
経済成長期においても豊富な森林資源の開発が行われなかった
地域なんですから、国産材需要の低迷している現在では開発の意義が薄い
地域ということになってしまうんですよ。
したがって、これから莫大な投資をしてこんな大規模林道というのを建設して、地勢等の地理的条件が極めて悪く、かつ豊富な森林資源の開発が行われていない
地域において森林を開発する意義なんというのは全然成立しないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。