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2002-11-27 第155回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年十一月二十七日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月十九日     辞任         補欠選任      神本美恵子君     郡司  彰君  十一月二十日     辞任         補欠選任      鈴木 政二君     田村耕太郎君      郡司  彰君     神本美恵子君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      池口 修次君     山根 隆治君      神本美恵子君     藤原 正司君  十一月二十七日     辞任         補欠選任      和田ひろ子君     齋藤  勁君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         勝木 健司君     理 事                 魚住 汎英君                 北岡 秀二君                 中島 啓雄君                 内藤 正光君                 松 あきら君                 西山登紀子君                 森 ゆうこ君     委 員                 加治屋義人君                 小斉平敏文君                 山東 昭子君                 田村耕太郎君                 伊達 忠一君                 月原 茂皓君                 藤井 基之君                 山内 俊夫君                 齋藤  勁君                 藤原 正司君                 円 より子君                 山根 隆治君                 渡辺 孝男君                 畑野 君枝君                 島袋 宗康君    事務局側        第二特別調査室        長        村松  帝君    参考人        独立行政法人経        済産業研究所上        席研究員     鶴 光太郎君        株式会社日本総        合研究所調査部        長        高橋  進君        日本商工会議所        全国商工会議所        青年部連合会直        前会長      古泉 幸一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活経済に関する調査  (「真に豊かな社会構築」のうち、地域社会  の活性化課題について)     ─────────────
  2. 勝木健司

    会長勝木健司君) ただいまから国民生活経済に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十日、鈴木政二君が委員辞任され、その補欠として田村耕太郎君が選任されました。  また、昨日、神本美恵子君及び池口修次君が委員辞任され、その補欠として藤原正司君及び山根隆治君が選任されました。  また、本日、和田ひろ子君が委員辞任され、その補欠として齋藤勁君が選任されました。     ─────────────
  3. 勝木健司

    会長勝木健司君) 国民生活経済に関する調査を議題とし、「真に豊かな社会構築」のうち、地域社会活性化課題につきまして参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、独立行政法人経済産業研究所上席研究員鶴光太郎君、株式会社日本総合研究所調査部長高橋進君及び日本商工会議所全国商工会議所青年部連合会直前会長古泉幸一君に御出席いただき、御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様におかれましては、御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、本調査会が現在調査を進めております「真に豊かな社会構築」のうち、地域社会活性化課題につきまして忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方でございますが、まず鶴参考人高橋参考人古泉参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、二時間半程度、午後四時三十分までの間、各委員からの質疑にお答えいただく方法で議事を進めてまいりたいと存じます。  この質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行いたいと存じます。  また、時間が限られておりますので、質疑答弁とも簡潔に行っていただくようお願いをいたします。  なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、鶴参考人からお願いいたします。
  4. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいま御紹介にあずかりました経済産業研究所の鶴と申します。よろしくお願いいたします。  本日は、当調査会にお招きいただき、意見を申し上げる機会を与えていただき大変光栄でございます。私の所属いたします経済産業研究所は、昨年、自主独立な政策研究、提言を行う独立行政法人として生まれました。既に議員の先生方にはお手元にアニュアルレポート、パンフレット等をお配りしておるかと存じます。お手すきのときにごらんいただければと思っております。  私どもの研究所では各研究者個人責任において研究を行っており、研究所経済産業省意見を必ずしも代表するものではないということを大きな特色としております。本日もそのような立場から意見を申し上げさせて、お話をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、私の研究分野といたしましては、主に銀行問題、金融システム、コーポレートガバナンス、企業組織といった分野中心でございます。しかし、こうした分野におきましても、最近、政策プロセスを解明していこうという政治経済学的なアプローチがますます重要になっております。こうした観点から、私自身構造改革特区の問題に特に興味を持ちまして、お手元にもお配りしておりますようにコラムなどで発言をさせていただいたところ、本日、参考人としてお呼びしていただくような機会を設けていただいたと理解しております。私自身地域経済活性化ということにつきましてはやや門外漢の部分もございますけれども、構造改革特区視点中心にいたしまして、少し異なった視点からいろいろ見方を御提供できればと考えております。  やや前置きが長くなりましたけれども、お配りした一枚紙、「地域社会活性化課題 構造改革特区視点中心に」というこの一枚紙に沿ってお話を申し上げたいと思います。  まず、構造改革特区理念ポイントでございます。これは、推進本部ができたときに、特定地域成功事例全国波及させていく、それから地域特性を生かした産業集積新規産業の創出という二点が明記されております。  なかなか全国レベル規制緩和をやっていく、これはなかなかいろいろ難しい部分がございます。それをある地域実験的にやり、それがうまくいったら全国波及させていくという、そういう考え方。もう一つは、ある特定地域にいろんな産業でもいろんなことを認めることによって、そこに企業などいろんなものが集まって集積効果を出していくという、この二つポイントでございます。  特区ということを申しますと、諸外国でも、途上国なんかを中心にフリー・エコノミック・ゾーンとか申しまして、いろんな特区がございます。具体的な最も多い例といたしましては、やはり外資の導入とか貿易の自由化を行うという特区というのがまず思い浮かび上がります。また、最近、市場経済移行国において、特に中国成功とそれからロシアの失敗というのを対比させながら、なぜ中国改革はうまくいったのかといったものを理解するときの考え方として、地域実験成功弾み車として全国波及させていくという、言わば芋づる式の漸進的な改革と、その基点として最初特区存在があるといった考え方が結構強調されている部分もございます。一応この二つを比較してみると、現在の構造改革特区というのは、私が今申し上げた後者にやや近い存在ではないのかなと思っております。  今の日本経済、やはり構造改革を推進していかなきゃいけない。しかし、それで全国ベースでやるのはなかなか難しい面もあると。この構造改革特区一つの大きな弾み車、力になるというのは私自身も非常に期待をしておるところでございます。しかし、それがうまく機能をしていくためには、やはり幾つかの問題点というものに正面から目を向けて明確に考えていく必要があると思っております。  まず、問題点として考えておりますのは、今回のように各地方公共団体などに一斉に要望を出させて、それを具体的に認めるか認めないかと判断していくやり方、これが若干幾つか矛盾を抱えている問題があるんではないかと思っております。  まず第一は、特例措置を認める地域、認めない地域をどのような基準で選ぶかという問題でございます。もちろん地域特性を考慮して選んでいくということが重要になるということはそうでしょうけれども、そこにやはり裁量の余地があるため、これは非常に政治的な陳情合戦が行われたりとかレントシーキング活動、こういうのを非常に活発化させて、非常に混乱を生んでしまうということがやはりやや懸念されております。また、突き詰めて議論していくと、ある地域である特例措置が認められるならば、なぜ全国レベルで認めることができないのかという議論に容易になっていくんじゃないかということが予想されます。この問題は後ほど議論としてまた戻らさせていただきたいと思います。  第二点としては、最初に申し上げた構造改革特区理念でございますね。つまり、最終的な全国波及、それと産業集積効果でございますけれども、これが、この理念が必ずしも両立しないんではないかという懸念を持っております。  例えば、ある新規事業特区としてある地域に認められたと考えましょう。他の地域企業はその地域まで進出してその新しい新規事業を行うか、又はその規制緩和全国波及するまで待ってから自分地域で行うのかという判断をしなければなりません。その際に、全国への波及がもし非常に迅速かつ確実に行われていくと、それで他の地域へ進出するというコストが非常に高い場合、この企業は少し今待ってみて、すぐその特区に、場所に進出するのではなく、自分地域でもその新しい事業が行われるまで待ってみようという考え方になるというのは容易に想像されると思います。そうした場合、やはりその特区にどんどん企業が集まってくるという状況になるのは少し難しいと思います。こうなると、二番目の理念産業集積という効果が十分やっぱり得られない状況が発生するのではないかということを懸念しております。  一方、今度、特区地域限定を非常に厳しくする、例えば非常に狭い地域でしかその特例措置を認めない、なおかつ、それは全国的に波及させるのにある意味で非常に時間が掛かるだろう、なかなか全国波及には届かないだろうというような状況になった場合、企業がどういうような行動を取るかということをちょっと考えてみます。その場合は、やはり幾ら待っていても自分地域で新しい産業を行うことは非常に難しいということになります。そうすると、今すぐその特区場所にその企業が進出して新規起業を行う、新規事業を行うということが非常に重要となってきます。そうなると、むしろ産業集積効果というのは非常に高くなってくるということがございます。  つまり、構造改革特区理念全国への波及という話と産業集積の話、やはり二兎を追う者はなかなか一兎も得られないなと。やはり、どちらかを重点にするということをしっかり見極めてやらなければいけないんじゃないのかなというふうに考えております。例えば、全国への波及をもし重視するのならば、各地域から要望を集めるというよりも、最初にその実験を行う地域選定というのはむしろ作為や裁量を排した形で行う、それがうまくいけば全国に発展させていくといった考え方が必要ではないかなというふうに考えております。  以上が基本的な考え方構造改革特区に関する基本的な考え方に関する問題点でございますけれども、これまでのプロセスを見ておりますと、やはりこれも少し問題があるのではないかというふうに考えております。  まず、八月の末に地方公共団体からいろいろなアイデアが吸い上げられました。その後、関係省庁といろんな折衝ということが行われ、それぞれの関係省庁が認めるものだけを一覧として作ったと。それから、その一覧の中から地方公共団体がその中から選んで、また計画申請するという現在の流れになっております。また、そこで取り入れられなかった要望というのはもう一度復活折衝してもいいですよ、また新しいアイデアが出れば出してくださいということで、第二次募集というものも行われるというような状況でございます。  しかし、このようなプロセスを見ますと、私が最初に指摘させていただいた問題がもう一度クローズアップされることになるのではないかなと思っております。つまり、一覧性、こういうものはどこの地方公共団体でも検討対象として考えてもよろしいですよという、この一覧性が確保されるのであれば、なぜまた全国レベルでできないのかという問題が、すぐやはりそういう疑問が起きてきます。また、今度も、ある地域に認めてある地域に認めないという、そういった線引きというのをどのようにやっていくのか、これは非常に深刻な問題だと思っております。  それに加えて、もう一つやはり問題になると思われるのは、せっかくそれぞれの地域が出したアイデアを、それが吸い上げられてどの地域でも利用可能ということになりますと、それぞれの地域創意工夫、革新的なアイデアを出していくやはりインセンティブがなくなってしまう、これが非常に大きな問題ではないのかなと。だから、自分が出したアイデアというものもむしろ自分がそれの利益を受ける対象ということにならない、ほかの人もそのアイデアを使っていいことができるということになってしまうと、なかなかそもそもいいアイデアを出してくるというインセンティブがなくなってしまうということがございます。ということを考えますと、第二次募集そのものが機能するかということも少し難しいのではないかという懸念も持っております。  それで、それでは一体地域活性化の問題というのをどういうふうに考えたらいいのかなということで、最後、ちょっと一般論を述べさせていただきたいと思います。  やはり、私は重要な視点というのは地域創意工夫実験を可能にするような徹底した地方分権化ではないかというふうに考えております。やはり地方分権化というのは徹底しないと、それぞれみんなアイデアを持ってもそれを必ずしも生かしていけない状況がやはり発生すると考えておるからです。  現在の日本経済が抱える問題、やはり将来展望がなかなか見えない、それからこれまでの定石というものはなかなか通用しないと。生活者企業政府ともやはり共通して必要なのはトライ・アンド・エラーとか、実験をしながらいろいろ手探りでどういうモデルがいいのかということをやはり見付け出していく努力というのが非常に重要だと考えております。やはり地域もいろんなアイデアを出していって、ほかの地域といかに違ったことをやるのか、そういうことで地域同士が競い合っていくということが可能になるような地方分権化というものが非常にやっぱり求められると思います。  もう一度ちょっと中国の例に戻りますと、七〇年末から御承知のように改革というのはどんどん進んでいったんですけれども、この改革は割とスムーズにいける背景として、実はずっと前の一九五〇年代から徹底した地方分権化ということが行われていたと。これがむしろ中国成功のかぎを握っているんじゃないかということで、結構学術的な研究的にも進められております。  それから、日本の場合も、これはやや大きな話になって恐縮ですけれども、日本幕末期というのをもう一度振り返ってみると、やはり現在よりも地方分権化が非常に進んでいた時代ではないかと思います。私も地域活性化の中でいろんなポイントがあると思っているんですけれども、特にこの場で強調させていただきたいポイントとして教育の問題があると思います。やはり幕末の時期も教育の点ということで非常に分権化が進んでいたということで、ある意味中心よりも遠いところで非常にユニークな人材を生み出すようなシステムがあって、それが明治維新の原動力になったと思っております。やっぱりそれを考えると、現在の日本というのは非常に画一的なことが行われていると。  今回の構造改革特区においても、幾つ教育のことで非常にフレキシビリティーを増すような政策が導入されております。これは私、非常に期待をしておるんですけれども、やはりこういった面でもっとどんどん地域間の競争が高まっていくと。教育という点で、むしろやっぱりいい教育をできるんだったらその地域に行きたいというふうに考えている国民というのも非常に多いと思います。こういうものが非常に日本経済活性化ということで、やはりこれから二十年後、三十年後を見据えていく上において非常に重要なポイントになっていくのではないかと考えております。  一応、簡単ではございますが、以上で意見陳述ということで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  5. 勝木健司

    会長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、高橋参考人お願いいたします。
  6. 高橋進

    参考人高橋進君) 日本総研高橋でございます。  昨年十一月にも実はこの会でお話をさせていただきました。今回、再び発言させていただくことを大変光栄に存じます。  私からは、少し総論的なお話になりますが、お手元のレジュメに沿いましてお話をさせていただきたいというふうに思います。  まず、私、申し上げたい最初ポイントは、地方経済の疲弊ということでございます。  空洞化ということが随分今まで言われてまいりましたけれども、私は、現在、地方経済というのはその空洞化が更に進展してむしろ衰退危機に直面しているというふうに思います。主たる理由は三点でございます。  一つは、元々空洞化というのはアジアとの分業体制構築の結果でございますけれども、ここに来てとりわけ中国が台頭することによって従来とは違う空洞化に直面しているという気がいたします。中国が台頭してくることのインパクトについては皆様よく御承知でいらっしゃいますけれども、とりわけ日本あるいはアジア周辺国に非常に大きな影響が出てきております。  今は、日本中国が台頭することによって日本の輸出が増えていくという形で恩恵を受けておりますが、やはり将来的には生産基地が海外に移ってしまうということで、不可逆的な影響が出てくる可能性があるのではないかと思っております。そういう意味で、日本物づくりの国境が、今は日本海にございますが、これが中国沿海部にまで広がってしまう、そういうふうに考えるべきときではないかと思います。  二つ目理由が、交通・通信手段、言わばITの発達とその帰結でございます。  全国的な均衡的な発展ということを国是としてやってまいりましたけれども、そのある意味では帰結でございますけれども、ここに来まして首都圏あるいは地域の中での一極の集中というのが加速しているように思います。東京への集中はもとよりでございますけれども、例えば九州全体を見ましても福岡に集中が進んでいるということでございまして、単に中央地方ということではなくて、地方間の競争あるいは対立ということも生じているというふうに思います。  三点目が、足元の財政状況を反映しましたことでございまして、公共事業補助金の削減、これに伴って地方経済が更に疲弊するということでございます。  公共事業について見ますと、これから財政健全化プロセスで恐らく十年余りの間に三割から五割ボリュームを減らしていかなくちゃいけないと。一方で、それを補完すべき民需はそう簡単には出てこないと。それから、公共事業の中身につきましても、都市型というふうに移っていくとすれば、特に公共事業依存度の高い地域部でその影響が加速的に現われてくるという気がいたします。  以上の三点をもって、従来にも増して地方経済というのは衰退危機にあると思います。  こういう中で、地方経済社会をどう自立させるかということが非常に大きな論点になってきているというふうに思います。  その一つ、まず第一点目は、地方経済の再生なくして構造改革なしということでございまして、地方経済衰退すればするほど、地方経済というのは結局中央依存になっていくということでございますが、しかし、地方衰退が進めば進むほど、今度は国全体としては地方を支えるためのコストが非常な重荷になっていくということでございますので、やはり地方が自立しなければいけないということが最初ポイントでございます。  二つ目でございますけれども、日本社会高齢化が急速に進んでいるということでございます。高齢化社会における行政サービスということを考えますと、看護、介護はもとより、対個人手間の掛かるサービス手間暇の掛かるサービスをいかに根気よく提供していくこと、これが結局住民の満足を得ることでございますので、当然そのサービス提供の主体は地方自治体にあると。ところが、その地方が疲弊していったのでは、そのサービス提供ができないということでございます。  三点目に、日本経済社会が大きく自己責任を強調する社会に移りつつあります。従来は、日本は皆年金、皆保険に代表されますような政府丸抱え、公的な助成の強い社会であったと。ところが、これを言わばアメリカ型の自己責任型、自助努力社会に変えていこうというわけでございますけれども、これは非常に個人にとって住みづらい社会ではないかというふうに思います。私は、公、官と自を埋めるものとしてやはりコミュニティー、あるいはともに助け合う、仮に共助とさせていただきますが、こういうシステムがないと非常に日本というのは住みにくい社会になるんではないかということでございまして、その中間の領域を膨らませていくということが課題ではないかというふうに思います。  四番目としまして、市場メカニズム活用ということでございます。民間経済世界ではもう市場メカニズム活用というのは常識でございますけれども、行政につきましてもやはり顧客中心主義への転換と。顧客というのは、すなわち住民であり納税者でございますが、これが必要になってきているということで、地方の現場を見ますと、既に三重県などは生活者起点ということで顧客を意識した行政改革が行われているというふうに思います。  五番目のポイントでございますが、更に五年、十五年先まで日本経済社会を考えてみますと、私は価値観変化というのが進むんではないかというふうに思います。そもそもシビルミニマムということでどこまで社会としてセーフティーネットを張っていくかという課題と、もう一つは、やはりこれまでの日本を見直してもっとスローな社会を作ろうということでございまして、スローという言葉が付きますとイタリアがすぐに念頭に浮かぶわけでございますけれども、イタリアの持っているようなそういう社会日本の中にも取り入れていくという考え方が強くなってくるんではないかというふうに思います。  三番目としまして、こういった日本変化世界で初めて起こっているわけではないということでございまして、三つの地域の例を申し上げさせていただきたいと思います。  まず一つは、先ほど鶴参考人からもお話がございましたが、中国の経験でございます。  中国におきます経済開発特区でございますけれども、なぜ広東省が選ばれたかということでございますけれども、これはやはり社会主義が行き詰まる中で市場経済への移行という非常に壮大な実験をしなくちゃいけないと。その場合に、経済的に辺境の地である広東省なり深センが選ばれたということだろうと思います。いきなり北京や上海ではできなかったということでございますが、結果的にこの広東省の発展が契機となって今の中国経済があるわけでございまして、そういう意味では、この特区という実験が体制移行ということでも成功しましたし、それから香港に近いとかいう地域特性を顕在化させることでも効果がありましたし、ITを中心特定産業集積するということでも非常に効果があったということではないかと思います。  二つ目、三番目の例は必ずしも特区ではございませんが、地域活性化している例でございます。アメリカがその例でございます。  九〇年代のアメリカというのはIT産業中心に極めて発展したということが常識化しておりますけれども、それでは、これを中央地方に分けて、一体どこが発展したのかというふうに考えてみますと、やはり地方経済ではなかったかというふうに思います。シリコンバレーの例は余りにも有名でございますけれども、実はその陰に隠れて、テキサスその他非常に活性化した地域がございます。  なぜアメリカで九〇年代に地域経済活性化したのか。具体的には高い成長と雇用の拡大があったわけでございますが、その背景を見てみますと、大きくは三つぐらい理由があると思います。  一つは、中央に比べて非常にコストが安かった、物価が安かったということでございますし、二つ目に、やはり交通通信手段が発達して利便性が非常に高くなったということ、三番目に、各地域に共通していますのが、産学協同が非常にうまくいったということでございまして、どこの地域でも、地域の発展を支える教育システムあるいは学校、大学があったということでございます。  マクロ的にアメリカ経済を見てみましても、九〇年代に経済全体を牽引しましたのはIT産業でございますが、一方で、雇用を拡大したのは実はIT産業ではなくてサービス業でございまして、恐らくIT産業がもうけ頭になって、その収益、利益というのが従業員を通して社会に均てんしていった、そしてそのサービス業が、個人向け、企業向けのサービス業が膨らんでいったと、そういう構図ではないかと。そして、その担い手が実は地域経済であったということでございます。  三番目の例がイタリアでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、イタリアというのは、ある意味で非常に分権化された社会、細分化された社会と言われていますが、地域経済社会が非常に元気だという気がいたします。日本にとりまして、最近特にイタリアの例で紹介されておりますのがいわゆるスローフード運動ということでございまして、ファストフードではなくてスローフードの社会を作ろうということでございまして、単に食べ物だけではなくて社会変革運動になっているという気がいたします。  もう一つイタリアに注目する例としましては、イタリア地域から起きて世界的に非常に有名になった活躍している企業、こういうものが多々あるということでございまして、かつてのオリベッティはそうでございますし、今のファッション業界などというのも、決して中央集権的な社会ではなくて、地方の豊かなバラエティーの中から生まれてきているという気がいたします。  以上、三つの地域、他国の例を取って申し上げました。日本もこういう形で活性化していくということができれば新しい社会を作れるという気がいたします。  そこで、現実に戻りまして、小泉内閣の構造改革がこういう方向に向かっているかということでございますけれども、基本的に小泉内閣というのは、地方分権の流れを加速し、そして地方を自立させると。そのために分権化地域活性化を進めているわけでございまして、正にこの二つというのは地域を再生させるための両輪だというふうに考えております。  二ページ目にお移りいただきたいと思います。  具体的に小泉内閣が進めておりますことは、国と地方との関係の見直し、そして地方分権の推進と、この一、二が広い意味では地方への権限と財源の移譲ということに当たると思います。そして、もう一つの柱が活性化の柱ということで、構造改革特区お話でございます。  特区の詳細につきましては、先ほど鶴参考人からお話がございましたので概略だけ申し上げたいと思いますが、私は、この特区を作ることで、メリットとして地域における選択と集中と、地域の中でも絞り込みが起きるということ。それから、特区ができることによって今沈滞しております企業の投資意欲が刺激されると。特区がなければ投資が出てこなかったであろうものがプラスアルファで出てくる、取り合いということではなくて、プラスアルファで出てくるということでございます。三つ目に、一つ地域でうまくいけば、何で全国でやってはいけないんだということで規制緩和の突破口になるということではないかと思います。ただし、足下の構造改革特区につきましてはまだまだ政策的な課題が大きいというふうに理解しております。  問題点は大きくは三つあるかと思います。  一つは、規制の改革ということでございますが、いわゆる経済的な規制、参入規制のようなものはかなり既に緩和されているわけでございますが、私は、特区につきましても引き続き社会的な規制というのがネックになっている。具体的には医療ですとか教育とか農業、こういったところに株式会社の参入を認めるか否かということが非常に大きなネックになっているように思います。早く議論を詰めて、私見を言わせていただければ、株式会社だからいかぬという考え方というのは突破していく必要があるのではないかと思います。  二つ目問題点は、特区成功があったときにそれをどれだけの速さで全国に広めていけるか、そういう波及のペースということだと思いますし、それから三点目には、やはり特区地域限定改革で済むわけではないということでございますので、特区議論を進めると同時に、やはり全国的な規制改革というものについての議論をもっと高めないといけないと。  以上三点がこれから更に強化すべき問題点ではないかというふうに思います。  特区のことを離れまして、少し長い視点になりますが、もうちょっと日本経済全体を考えたときに、地域活性化ということについての意味ということでお話をさせていただきたいと思います。  私は、日本経済社会全体が二十一世紀に入ってやはり新しいビジョンを模索する今ステージに入ってきているというふうに思います。そういう中で、地域というものが新しい役割を与えられるというふうに考えております。  ポイント幾つか申し上げたいと思います。  まず一つは、今、小泉内閣が非常に市場原理あるいはグローバルスタンダードへのさや寄せということを強調しておられますが、私はこういった市場メカニズム活用というのは、社会改革のツールではあったとしても、それそのものが目的ではないということでございまして、どういう社会をつくるのかというのは別途課題としてビジョンを示す必要があるのではないかというふうに思います。  そこで、じゃ、二十一世紀はどういう社会かということを考えますと、やはり二十世紀の日本が成長至上あるいは物質的豊かさを追求する経済政策でございました。この結果、日本人は本当に幸せになったのかということでございまして、物質的には幸せでございますが、本当の意味での豊かさとか生きる幸せというものを感じているかと。二十一世紀は、高い築き上げた生活水準の上にこの豊かさ、幸せを目標とすることが日本にとってあるべき姿ではないかというふうに思います。  そして、そういった新しい目標への動きというのは、もう既にいろんなところで現れてきているという気がいたします。中央改革をまつまでもなく、地域を見ますと、ボランティア活動、NPO活動、地域通貨、こういった言わば行政にもできない、あるいは営利を主体とする企業活動にもできない、そういったところのすき間を埋めて個人サービス提供するという活動の活発化ということが見られるわけでございまして、これをこれから社会の変革の力としてどう育てていくかということだと思います。  一方で、教育とか道徳、社会の荒廃、これが問題になっているわけでございますけれども、これも、今のような経済社会システムの中でこの問題を考えていってもなかなか答えが出てこないということでございますので、新しい価値観あるいはプラットホームを模索してそこで解決していくということではないかと思います。  少し気取った言い方をさせていただきましたが、要は、例えば教育であれば学校教育すべてではないと。昔の子供たちは例えば地域社会の中で隣のおやじにしかられて育ったわけでございまして、他人から今はしかられると逆切れするというような、そういう社会ではなくて、コミュニティー全体で子供を育てていく、道徳を養っていく。そのためには新しい地域というものが必要ではないか、それがプラットホームということでございます。  もう一つポイント日本経済そのものでございますが、物づくりということでございます。これが今、大量生産型の物づくりが限界に来ております。これからの日本の生きる道は物づくり自体の高付加価値化と、そして物づくり以外の言わば非製造業の拡大ということでございます。そして、この二つのことを同時に進めていく必要があるわけでございますが、そういう意味でポスト物づくりを考えますと、私は、日本の非常に高度な社会システムを作ることで、そこから出てくる価値観というものを新しい物づくりなり非製造業に拡大していくということが必要なんではないかと。  具体的に申し上げますと、例えば観光業というものがございます。これは典型的なオールドエコノミーでございますが、先進国でこの観光収支がマイナスの国は、先進国の中では日本だけでございます。観光というのはどうやったら産業として発展させることができるかと考えますと、やはりこれは地域の伝統とか社会の知恵、そういったものが地域全体に生かされて初めて産業として成り立つわけでございます。そういう意味で、決してハイテクばかりではございませんで、日本が行き着いた高度な社会の中から、医療だとか看護・介護、あるいは観光だとか、いろんな分野で新しい価値観を生み出すことができればそれを新しい輸出品として売り出すことができる、日本は外から金を稼げるということではないかと思います。  そういう中で、こういう新しいビジョンなりモデルを模索する動きというのはもう既に出てきているという気がいたします。それが六番目で申し上げたいまちづくりということでございます。  元々は社会経済生産性本部が提唱を始めたものでございますけれども、町をつくり直すということを一つ考え方地域再生の考え方の中に入れてみようということでございまして、まちづくりの観点というのはここに五つ御紹介申し上げておりますが、一つは、三重県の例にもございましたけれども、生活者起点構造改革ということで、行政の受け手たる住民の意思とか責任、これをもっと反映させた政治をしようということで、そのツールとして情報公開とか政策評価、こういったものが挙げられると思います。  二つ目ポイントがその町ということでございまして、これを一つ行政単位と考えて、この生活空間をどう変えていくかと、そういう発想をする。国とか県とかということではないということでございます。  三番目に、そういう中で、町の中に新しい産業とか雇用を作っていくということをしなければいけない。国全体としての産業振興、雇用創出ということもございますが、この町の中から新たな産業、雇用が生まれていくという仕組みを作るということだと思います。  四番目に、こういう町の中で、先ほどもちょっと申し上げましたが、教育とかあるいは教育プロセスを通じての世代間交流、こういったものを養っていくと。それによって若年層と高齢者のギャップを埋めていく、あるいはコミュニティーとして若年を育てていくということではないかと思います。  そして五番目としまして、そういうプロセスの中で、個々人が高齢者になったとしても、自分が孤立感を持たないで、社会に貢献しているんだと、あるいは社会に必要とされているんだと感じる、それが生きる意味だと思いますし、自己実現にもなっていくということで、こういったまちづくりを目指した行政というものが面白いんではないかという気がいたします。  これは中央主導で進む構造改革の受皿というふうに考えることもできますが、一方で、中央主導の構造改革とは全く別のプロセスで進んでいく下からの改革と。これが必ずしも交わる必然性はないわけでございますけれども、そういった新しい選択肢ということもあり得るのではないかという気がいたします。  いずれにしましても、地方を自立させるということが課題でございますので、最後に、そのための政策課題ということで四点申し上げたいと思います。  第一点は、分権化の徹底ということでございまして、分権化は様々なレベルで進めていく必要があると。今、余りにも行政に決定権限が移っておりますが、集中しておりますが、これを立法と司法へどんどん分権して、ある意味で三権分立を確立するということ。それから、国から地方へ、官から民へ、政府から住民、それからマーケットの自己決定へと、あらゆる場所での分権化というのを更に進めていくということ。  二つ目に、そのプロセスの中で、やはり行政の単位がある程度自立的なサイズあるいは機能を持たなくちゃいけないということになりますので、市町村合併というものはどうしても必要だというふうに思います。  三番目に、規制緩和構造改革ということで先ほど特区のところでも申し上げましたけれども、やはり地域限定ということではなくて、社会全体として規制改革を進める必要があるということ。  四番目に、既に生まれ始めている新しいコンセプトであるNPOだとか地域通貨、こういったものをどうやって新しいツールとして育てていくかという観点で、これに対する財政支援あるいは税制優遇、あるいは活動する場合には当然金が必要でございますので、今の間接金融主体の中からでは調達できない資金をどう供給していくかというファイナンス手段の拡充も含めまして、こういった新しいツールを育てていくという政策が必要なんではないかというふうに考えている次第でございます。  私からは以上でございます。
  7. 勝木健司

    会長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、古泉参考人お願いいたします。
  8. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 先ほど来、お二人の参考人から話が出ております疲弊する地方の中小企業の代表としてお話をさせていただきたいかなと思っております。  私、新潟県は亀田町という非常に小さな町から出ております。まず、話の内容に入る前に、今私が置かれている立場から先に説明をしないとちょっと分かりづらいと思いますので、まず私が所属をしています団体、日本商工会議所全国商工会議所青年部連合会、これを簡単に説明をさせていただきたいなと思います。全国商工会議所青年部連合会、長いのでこれ略して商青連とよく呼んでおりますので、商青連という言い方で御勘弁をいただきたいなと思います。  商青連という組織が実は昨年初めて日本商工会議所の定款に入りました。それで先ほど来、長ったらしい名前になっておりますけれども、商青連の前に日本商工会議所という冠が頂いております。ちょうど今年でできて二十年という節目の年に当たります。非常に難しい団体で、本来であれば、中央からこのような組織を作るという辞令が下りて初めてできる団体なんですけれども、我々の場合は、各地域日本における五百二十四の商工会議所で自発的に青年部という組織が立ち上がってまいりました。それを二十年前に一つ全国組織にしようということで立ち上がりまして、本日までの商青連という組織になっております。  私自身が昨年の平成十三年度、任期は四月の一日から本年の三月三十一日まで、この一年間の任期、再任はありません、この一年間の全国会長として全国を活動させていただきましたその内容と地域における問題点、活動を事例として本日は皆様方に発表したいなと思っております。  元々商工会議所という組織が、明治六年、当時の渋沢栄一氏によります、まず人材育成の場から入ろうというのがたしか基本理念だったと思います。本日の、本来の商工会議所が地域の総合経済団体という役割を担っておりますけれども、まず第一に地方における人材の育成、これから入らないと今後の地域はますます疲弊する一方であると我々考えておりまして、単に青年部活動が一つ自分の居心地のいい団体だとは決して思っておりません。  昔、会社が倒産するというのは、経営者の放漫な経営、または堕落した考え、事業主の、以外の事業に手を出しての失敗ということが大体重立った原因だと思います。ただ、今日は、一生懸命まじめに仕事をしていても、自分企業を本当に朝から晩まで見ても倒産する時代、それが今の時代でございます。こんな中でいかに我々が今後この地域を、そしてこの国を引っ張っていけるかということを考えますと、本当に新しい組織作りを考えていかなければならないのかなと思っております。  そんな中で、昨年私が会長をさせていただきましたときに、委員会が幾つかございますけれども、その中で、NPOを真剣に考えてみよう、そのような専門委員会を作りました。NPOというのがアメリカで最初に立ち上がりまして、今じゃ一千六百万人の雇用があると。昨年、我々のメンバー、全国の青年部の中で立ち上げましたNPOで一番大きい例としまして、新規事業で、新規雇用で四月に三十一名も雇用したという実例があります。  我々、個々の中小企業が今後活性化するためには、まず、一に雇用問題を何とかしなければ絶対に経済は良くならないと。自分自身が月々仕事がないのに物を買うわけがないし、動くわけがない。まず仕事の安定、雇用の安定から入るべきであろうというのが我々の考えです。そのために、どうして我々中小企業の経営者がNPOに手を出すか、それはひとえに、何とか雇用の機会を与えまして我々の仕事に反映をさせていただきたいという思いからボランティア活動に従事しております。  本年になりまして、会長が私の次の代に移っておりますけれども、もう一つ踏み込んで、NPOからコミュニティービジネスの方に今考え方が変わってきております。先ほど来、お二人の参考人からもお話が出ておりますけれども、コミュニティービジネスは、御存じのとおり、地域における問題点をビジネスとして構築しようというのが一つのねらいでございます。その中で幾つかの事例を私の方からお伝えをしなければいけないかなと思いますけれども、非常に、そんな難しい話じゃないんです。  日本最初にNPO法人として立ち上げたのは群馬県伊勢崎市、環境ネット21というNPO団体でございます。バックボーンは伊勢崎商工会議所青年部のメンバーが作り上げました。ここがコミュニティービジネスに目覚めた一つの原因としまして、各地域で多分同じ問題があると思うんですけれども、駅前からバスが出ると。非常にバスの便が難しくて、どこのバスに乗っていいか分からないと。だんだん高齢化によりまして御老人の方がどこに乗っていいか分からないと、非常に高齢者の方から市の方に陳情等が上がってくると。そんな中で駅前の空き店舗を利用しまして、二人の常設社員を設けまして、一人一人御高齢の方にこちらのバスでどちらまで行ったらいいですよということを丁寧にその現場まで連れていったという事例がございます。  これは本当に有り難いもので、国の緊急雇用政策の資金で賄っておりました。当然一年で打ち切りになりましたけれども、一年後に伊勢崎市の方から非常にいい事業なので継続してやるということで、この場でもう雇用が確立されました。  そして、第二点目としまして、これは今度私が地元で、ちょうど本当に今月の八日でしょうか、新潟県から認可をいただきました環境パル21と、非常に似たような名前なんですけれども、それをNPO法人として私自身が立ち上げをさせていただきました。これが地方における今一番の問題点を抱え込んでいるんではないかなと思っております。  といいますのも、亀田町というのは新潟県では新潟市から電車で八分、非常に新潟市に近いところでございます。その中で、農産物としまして梅、梅干しの梅ですね、梅が非常に県内では一番多く取れます。しかし一昨年、中国から梅が入るようになりました。その当時一キロ五百円で推移した青梅が、中国が一キロ五十円、十分の一の価格差が出ました。当然のように市場では受け入れてもらえません。本年は中国等の農薬問題で非常に、多少は回復をしましたけれども、現実まだまだこの問題は回避されておりません。そんな中で、何とかこの農産物の安定をした販売先を見付けなきゃいけないと。  我々は地域におきまして、本当に田舎と言われる我々のような地域では、商工業だけではなくて農業者団体との定期的な話合いの場も数多く持っております。その中で農業従事者からは本当につらい意見、我々が、商工業が持っているよりもっとつらい意見が上がってまいりますので、そんな中で何とか梅の需要を図ってみようと町に働き掛けまして、二年前でしょうか、二年前ですね、初めて加工品というものを作ってみました。  これを町のノベルティーとして配布をいたしました結果、非常にいい評判をいただきまして、何とかこれを町の産業に続けられないかと考えました。そのジャムは残念ながら私の、当社の一応看板で発売をしましたので、うちの一PB商品としかとらえられません。というのは、これはなかなか受入れが難しくて、やはりこのときに本当に営利を目的としないNPO法人として立ち上げなければいけないのかなというふうに痛切に感じまして、現在のNPOの発進のもととなりました。  その農業従事者の方と話をした中で、梅がなる、ただJAがもう引き取っていただけない中で、でき上がった実がぼとぼとぼとぼと落ちるのを見ていなきゃいけない、こんなばかな話はないと。もちろん我々もそう思いますけれども、どうしていいか分からない中で、先ほど言いました商工会議所青年部というのは全国に二万七千人のメンバーがいます。ふと考えまして、造り酒屋もある、販売店もある、ちょっとじゃ考えてみようということで梅酒を造りました。  昨年、梅酒を六百六十本造りましたけれども、見事一日で完売いたしまして、本年も、これは調子に乗りまして五千本造りました。今月の二十日に発売をいたしまして、午前中だけで一回目の生産二千本がすべて売り切れ。本日もう追加で三千本入る予定になっておりますけれども、そのうちの二千本はもう行き先が決まっているという非常に有り難い結果をいただきました。  本日は、一応現物を持ってきておりますので見ていただきますけれども、何てことはないんです。(資料を示す)何てことない商品なんですけれども、できそうでできないんです。これをすることによりまして、今、亀田町の梅の生産が八十トンあるんですけれども、これで二トンを今我々がこの一年間で使うことができました。これがコミュニティービジネスの一番の最大の結果ではなかろうかなと思っております。  先ほど言いましたように、我々は決して営利を目的とはしていませんけれども、ある程度の収入を得ないことには、資金がございません。そのためには、どうしても今後残るNPOというのは事業型のNPOしか残らないと、そのように考えております。  事業型のNPOを始めまして最大のネックとなりましたのが、実は経理上の問題です。市や町から委託をいただきます。いろんな事業を解決しています。市や町から来た委託事業というのは、我々はボランティアですから全く利益を取っていません。しかし、税務上はこれは課税対象になると。一つ一つの案件がすべて違うんです。これが非常に経理が複雑になってしまうという、事業型NPOの今最大の悩みです。  これは、実は一般の税理士の方もなかなか理解をしていただけずに、これをどうしようかなと考えておりましたけれども、本当に皆さんのおかげで、実は商工会議所も非常に柔らかくなってまいりまして、定款変更をしていただきまして、NPOも商工会議所の会員になることができました。その結果、我々の経理はすべて商工会議所に丸投げをしております。  というのは、やっぱり透明性を出さないとNPOというのは駄目だろうと思っておりますので、我々はある程度事業が上がることもすべて商工会議所の方に申告をして皆さんの審議をいただいているという状況でございます。  先ほど言いましたけれども、アメリカで一千六百万人のNPOの従事者がいると。日本では、今現在たしか八千ぐらいのNPOが全国で立ち上がっていると言います。そのうちの約四千、半分ぐらいがこの関東経済産業局のところに集中をしている。やっぱり東京を中心として集中をしているという現実があります。この中で本当に事業型のNPOとしては幾つあるのかなということ自体がまだ全然把握をされていない。というのは、NPOというのはなかなか、その地域には根差しているんですけれども、横のつながりがないんです。やり方を間違えますと、自己満足の世界に陥りまして長続きしない場合がある。そのために、一日でも早くNPOを横でつなげる一つの方法が必要だと思っております。  先ほど言いましたように、我々はとにかくまず雇用の安定を第一に考えております。そのためには、我々の小さな中小企業が一人一人そのカバーをすることも大事ですけれども、ただ、やはりこのNPO、コミュニティービジネスというものを確立することが何よりも最初の、先決だと思っております。皆様方には、どうかその地域の今置かれているそのNPO、コミュニティービジネスの今、現実を一日でも早く知っていただきたいなと思っております。  非常にもう本当に簡単な話なんですけれども、何よりも最後に、我々は地域を大変愛していますし誇りに思っております。もちろん、この国も愛し誇りを持っております。そんな国にできるだけ早く、今年度の我々の青年部のスローガン、「立ち止まるな!そして胸を張れ!」というような方向に皆様方のお力をもって向かっていってほしいなと思っております。  以上をもちまして、意見とさせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 勝木健司

    会長勝木健司君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑はおおむね午後四時三十分までをめどとさせていただきます。  なお、時間が限られておりますので、発言は一回当たり三分程度でおまとめいただくようお願いいたします。また、各委員におかれましては、質疑時間が質疑及び答弁を含め全体で十五分以内となるよう、質疑は簡潔にお願いをいたします。追加質問がある場合には、この十五分の範囲内で行っていただくようお願いいたします。質疑の御希望は挙手をもってお知らせいただくこととし、質疑会長の指名を待って行われますようお願いいたします。  それでは、質疑を希望される方は挙手をお願いいたします。
  10. 藤井基之

    ○藤井基之君 自由民主党の藤井基之でございます。  今日は、三人の先生方、お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。これからの活動の参考にさせていただきたいと存じます。  時間が限られております。早速質問をさせていただきたいんでございますが、先生方に今回お願いいたしましたのは、会長からお話がありましたように、地域社会活性化課題ということでお話をいただいたわけでございまして、これは私、今聞いておりまして、これ本来こちらから言うべきかもしれないんですが、その地域という言葉が持つレンジのぶれといいましょうか、もすごく感じました。  お話の中で、例えば高橋参考人が言われた、まちづくりと言われたら町だよと、その代わり、行政単位としては市町村合併もしてという話になって、どちらも地域を言われているわけですね。  もっと広い意味でいいますと、鶴先生がおっしゃられた、中国という特区の話をされたというと、世界経済から見たら中国というのは一つ地域かもしれない。世界から見ると日本一つ地域かもしれない。その中における活性化の話ということで、その辺で私は、我々の問題意識の持ち方として、地域という言葉の持つある意味のあいまいさといいましょうか、そういったものをどういうふうに政治の中で位置付けたらいいかということについて、御意見最初にお三方から聞きたいと思いますが。  その前に、一点、スペシフィックな話を、ちょっと高橋先生にお話を伺いたいんです。  実は、私、薬学という学問をやりまして大学を出たんです。つい先日、今年の文部省の数字から、理工系の卒業生が就職した一番多いところが製造業じゃないんだ、いやサービス業になっちゃったよと、こういう話を聞きまして、どう言っていいのか、何ともいわく言い難いと言うと言葉は悪うございますけれども、私もその、理工系と言っていいかどうかは別ですけれども、そういった技術の端くれの方にいまして、私自身今こういう商売をしておりまして、時代の流れがこうなったのかなと思っております。  これは日本だけじゃございませんでして、世界的にその就業人口を見てみますと、当然のことながら、第三種に圧倒的に多くの人々が就業されている実態がもう欧米において明らかになっている。これは日本でもそうなっているわけですが。  そういった中で、先ほど実は高橋先生が言われた、実はアメリカの例のところで、九〇年代のITがそのリーダー役で、実際の新しい雇用はサービス産業がその雇用を増やした。私もそのとおりだと思っておりまして、これは九〇年代、先生御案内のとおりでございますけれども、アメリカにおいても、一次産業、二次産業というのは雇用減少したわけでございまして、その代わり三次産業で千六百万人程度の雇用が増えたと、こういうふうな統計も出ているわけです。  ところが、このアメリカにおける雇用のこのサービス産業の就業者が増えたと、これをもう少し中を見ますと、すべてのサービス産業がこれ増えたわけではないわけですね。この中においては、増えたところ、非常に特記されるところといったら、例えば医療・福祉サービスであるとかビジネスサポートサービスであるとか、あるいは情報関連サービス、こういう部分が特出してこの雇用というものを支えてきた、こういった経緯があるわけです。  それで、戻りまして、先ほど先生のお話にあった、日本特区の話をしたときに、社会規制のあるところにおいて特区がどうも少し、もう少し、何というんですか、力をもう少し強めに、そういう規制緩和という新しいビジネスチャンスを起こすようにしたらどうかというお話がございました。  先ほど言いましたように、特区の中で特に医療等についてかなり社会規制というもので今回残っておりますね。そうすると、アメリカにおけるサービス産業が雇用を増やしたことに対して、その分野が同じように日本においてもその雇用をこれから二十一世紀の少なくともこのディケードの中に、アメリカに匹敵する、あるいはそれに近い形で増やすためには、政策的に例えばどういうことをやったらいいというふうにお考えかということ、これについてまず高橋参考人にお伺いしたいと思います。
  11. 高橋進

    参考人高橋進君) 御指摘の点は、正にそのとおりではないかと思います。私は、やっぱりアメリカで医療産業あるいはその周辺領域が膨らんでいった、そこで雇用が増えていったというのは事実でございますし、一方で、例えばオペレーターですとか、そういう割かし単純な業種というところでの雇用が減っていったと。そういう意味で、社会全体が個人向けサービスを高度化させていく中で、高度な技術とか意識を持った人たちの職場が増えているということだと思います。  翻って日本を見てみますと、今の医療というのはある意味では二十世紀型の医療で、これから高齢化社会の中で医療というものを考えていきますと、やっぱり高齢者をいかに病気から救うかということだけではなくて、病気にならないかとか、あるいは心のケアまで含めて非常に高度な医療を産業として育成していく必要があるというふうに思います。そう考えましたときに、今の例えば営利法人の医療への参入を止めているような規制、これでは私は医療を健全な産業として拡大することはできないんではないか、あるいは雇用を拡大することはできないんではないかというふうに考えております。  したがいまして、医療というものをあえて産業としてとらえて、どうやったらこれからの国民のニーズを満たしていけるかという観点から、規制を思い切ってどんどん外していくということが必要なんではないかというふうに思います。
  12. 藤井基之

    ○藤井基之君 質問が後先になりまして申し訳ございませんでした。  お三方の先生にお伺いしたいんですけれども、先ほどちょっと申し上げましたが、今回お願いしている地域社会活性化ということでお話をいただいたときに、先生方のイメージする地域というものを我々はどう考えたらいいのか、あるいはそれは別に一定の定義があるわけでは当然ないわけでございまして、ある意味でやれるところはやればいいし、実現可能なところからやればいいんだと私は思っております。  地域というものをどういうふうにとらえたらいいのかということに対してアドバイスがありましたら、お三方の先生にお伺いしたいと思います。
  13. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) 今の御質問でございますけれども、私自身構造改革特区の問題を考えるときに、今の正に御指摘した問題というのは非常に大きな問題だと考えました。  というのは、当初どういう地方公共団体要望を出すかということで、別にそれは県ベースでも市ベースでも、もっと、町ベースでも構わない、出せるところは出していこうというような話で構造改革特区の問題も始まったと思います。  しかし、そういうようなやり方をした場合に、例えば同じ県の中で認めるところと認めないところが出てきた場合にどういう対処をするのだろうかとか、何かいろんな疑問が出てくる状況がありまして、やはり、一つ私はイメージを持っていたのは、例えば都道府県ベース、一番大きいですけれども、そういうものを一つのベースとして考える方が分かりやすいのかなというイメージはございます。  ただ、この問題、特に最近市町村の合併の問題も結構出てきて、これはちょっとまた話が別になりますけれども、やはり財政基盤の弱いところがどんどん合併しなきゃいけない理由というのも分かるんですが、例えば一方、民間企業の方を見ますと、必ずしも合併というのがなかなかいい経済効果を発揮しているとも限らないという状況がございます。  だから、どういう境界で考えていくのかという問題、実はなかなかすきっとした答えはないと思いますけれども、実は今いろんな問題を考えていく上で非常に大きな問題だというふうに認識しております。
  14. 高橋進

    参考人高橋進君) 申し訳ございません。私は多分二つ意味で別々の概念を申し上げたと思います。おっしゃる、御指摘のとおりだと思います。  一つ考えましたのは、目的意識を持った地域、同一目的を持った地域ということでございまして、例えば特区というのはそういうことだと思います。あるいは、市町村合併につきましても、漫然と合併するんではなくて、何かをやろうということで、それを一つの目的として合併をするようなケースというのがあるんではないかと、これが一つ考え方。  それからもう一つは、自立する、自立できる単位ということでございまして、例えば私の念頭にございますまちづくりといった場合には中学校ぐらいを一つの区とする単位ではないかと。そのぐらいの単位ですと、非常に住民の自治、あるいは行政への働き掛け、あるいは行政の主体への働き掛けということも含めてスムーズにいくんではないかということで考えております。  それから、更に申し上げますと、地方地域ということがあると思うんですが、私は例えば東京であってもまちづくりは必要だと思いますので、あえて地方という言葉は使いませんでした。  以上でございます。
  15. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) いささか、ひょっとして質問の意図と違う答えになるかもしれませんけれども、お許し願いたいと思います。  まず、地域におきまして我々が一番本当に思うのが、よく言われるのが、例えば青森県という一つの県を取ったときに、あそこはねぶたもあるしリンゴもある、非常にいいところですね、観光にも恵まれていますねという話がよく出ますけれども、それは青森県が元々あったわけじゃなくて、昔から先人がいろいろ苦労をして作り上げてきたものでございますから、地域の本来の特性というのはやはり人が作り出すものだと思っております。  残念ながら、今、新潟県、一つの例を取りますと、大して何もないんです。ただ、今は何もないんですけれども、これから五十年後、百年後にびっくりするものを作ろうというふうに今我々地域でいろいろ考えておりますけれども、地域という一つの位置付けはそういうものだと思っております。  一番最初に間違いがあるなと思うのは、やはり、例えば先ほどから出ています農業政策にとりましても、米さえ作っていれば取りあえず何とかなるような一律的なそういうような政策をしますと、やる気があろうがなかろうがすべてに同じやり方で通していくと、これが一番地域の特性を壊す最大の理由だと思っております。  その中で独自色を出すというのは非常に難しいと思いますので、今後の我々の考え方は、その地域地域のやっぱり特性をいかにその地域住民が作り出すか、地域住民というのは我々がまとめてまとまるものじゃなくて、自然発生的に必ずや一つの志に向かって方向性が分かれば一緒になってできるものだと思っておりますので、是非そういった政策等は、画一的なものじゃなくて、その地域の特性を生かしたものにしていただきたいなと思っております。  以上です。
  16. 藤井基之

    ○藤井基之君 ありがとうございました。  一つ、今お話を伺いまして私もある程度イメージがわいておりまして、ただ、それについてこういう、これはたまたま昨日の日刊紙の新聞なんですが、あるいはごらんになられたかもしれませんが、これ四国の経済の話にちょっと触れておりまして、何かというと、いわゆる地域住民地域住民という言葉じゃございません、四国の方々の経済活性も目的とするし、あるいはお住みになっている方々の利便性も高めるということで、いわゆる本四橋という三本の橋を建てた、造った、それによって非常にある意味で便利になったと、こう言われているんですね。ところが、交通ネットワークをこれだけ整備したことによって、逆に実は消費が大都市に吸い上げられるという、ストロー現象と、私、こういう言葉は知りませんでしたんですが、ということで、実は特に愛媛県でありますとか香川県、徳島県の経済は逆に疲弊してきているんだと、こういう記事の内容でございました。  私は、こういうことというのは、そういうことも起こるのかなと、こういう感じを持っておったんですね。先ほどの地域特性というのは、例えば愛媛であるならば道後温泉がありますよとか、それこそ香川でしたら金刀比羅宮がありますよという地域特性というのは私はあるんだろうと思う。でも、こういう環境を整備したことによって逆に、実際には、先ほど高橋先生がおっしゃった、例えば関東地区における、東京地区におけるどこかに集中するという、そういうことをある意味で加速してしまう、そういったことが出ているんじゃないかという感じがしてならないんですね。逆に言うならば、もしもこういうことが、利便性でこういうことができるなら、逆に言うならば、構造特区の特性を逆な形で手段として何か使えないんだろうかと、そういう感じもしました。  時間が限られておりますので、最後、これについて、ストロー現象についてどういうふうに考えられるか、お三方にもしも可能でしたらお答えいただきたいと思います。
  17. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問でございますけれども、やはりそういう交通面での部分が非常に整備されて物や人の移動が非常にスムーズになりますと、やはり双方向のことが起こり得ると。今、先生がおっしゃられた、これは逆方向の動きですよね。いわゆる中央の方に戻ってしまうような動きと。これは当然出てきます。  しかし、逆に中央の方から地方に動くというのも、そういうスムーズ性が増していけば当然起こり得ると。そうした場合に一番重要なのは、やはりそれぞれの地域がどんな魅力を持っていくのか、引き付けるものがあるのかと。先ほど先生、道後温泉の例とか、また高橋参考人から観光のお話が出ました。やっぱりこれまで、従来と同じ発想でそういう地域特性、温泉がありますよと、ただそれだけで人を集められるようなもう時代ではないんだろうと思っております。  そこで、やっぱり何らかの創意工夫、先ほど私が申し上げたように、いろんな創意工夫をして新たな魅力をそこに付加して、そこで引き付けていくということを考えていかなきゃいけないと。  そういうことになりますと、やはり、先ほど農業とか医療とか教育分野で株式会社形態というのは非常に重要だよという高橋参考人お話がありましたけれども、正にそれはそういう魅力のある創意工夫、人とは違ったアイデアを出して何とか人を引き付けていくと、やっぱりそういう点にも関係があると思います。  やはり、そこは、それぞれの地域がいろんなアイデアを出してきてやれば当然違った動きは出てくると。昔ながらの地域特性に依存するというところから離れていって、もう少し考え方というのを発想の転換をしていくことがやっぱり今非常に求められているんではないかと思います。  以上でございます。
  18. 高橋進

    参考人高橋進君) 基本的に、今、鶴参考人がおっしゃったとおりだと思います。  具体的な事例だけ申し上げたいと思いますが、先日ちょっと九州に参りましたけれども、九州はやはり交通網の発達につれて、熊本だとか、そういう地域から消費がどんどん博多に行ってしまうということで、熊本経済空洞化が進んでおります。  ところが、一方で、博多に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたちがウイークデーにどこに行くかといいますと、黒川温泉にすさまじい勢いで流れ込んでいるということは、結局これは、先ほどのお話にございましたように、黒川温泉がなぜじゃ発達したのかと考えると、あそこはやっぱり温泉を挙げてまちづくりをやった、その結果だそうでございまして、そういう意味で、やはり地域発の魅力というものをいかに作れるかということができれば、作ることができれば相互交流ができますので、一方的なストロー現象には終わらないというふうに思います。
  19. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) うちの新潟からこの東京までは日帰り圏内でございます。一泊すると税務署から怒られるんです。その中で、しかし、我々から観光目的で東京に入った場合は必ずや一泊をすると。よく観光目的の最も、最たる例がディズニーランドというのがあるんですけれども、やはり、これからは地域がソフトをしっかり持たないと確実に観光の面では乗り遅れると思っております。自然環境だけで売っている観光地がもう全国多々疲弊をしているというのは、やっぱりそこにあるんじゃないかなと思っております。これからはそこに、その地域で生活をする人間のソフト、頭の切替え、また人材育成に懸かっているんじゃないかなと思っております。  以上です。
  20. 藤井基之

    ○藤井基之君 ありがとうございました。  終わります。
  21. 内藤正光

    ○内藤正光君 民主党の内藤正光でございます。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。  私は、構造改革特区について鶴さんと高橋さんにお尋ねしたいと思います。  まず、私が申し上げておきたいのは、やはり、構造改革特区というのは地域活性化を促すものとして、きっかけとして大変重要なものであるし、またやるべきであるんだろうというふうに思います。認めます。それを認めた上でなんですが、一方で、本当に私たちが今期待する効果を、本当にこの構造改革特区という発想で、本当に期待を上回るような成果を上げ得るんだろうかという一抹の不安がそこに見て取れるわけなんです。  実際、私も今、世界、いろいろなところを回ってきました。例えば、高橋さんもおっしゃったように、私、アメリカのデンバーだとかあるいはまたテキサス、回ってきました。中国の各、ITで成功したいろいろな都市も回ってきました。インドのバンガロールも回ってきました。フィンランドも行ってきました。これらは皆この十年、ITでもって大変成功を収めた都市、国ではなく都市なんだろうと思います。そういった都市を一つ一つ見ていくと、やはりそこには自立があり、そしてまたあるときは競争意識があったり、あるときはもう財源等の問題で頑張らざるを得ない、もう自ら雇用を作り出さなきゃいけないという、そういう思いで各、国ではなくて都市が必死になって頑張っている姿がそれらの都市には見て取れるわけなんです。  ところが、翻って日本のいろいろな地方都市を見てみますと、残念なことながら、交付金、補助金というもので甘やかされてしまっている都市が少なくはないわけなんです。鶴さんのレジュメの最後にも「創意工夫実験を可能にする」という地方分権化が必要だとか、高橋さんもそういうようなことを書かれておりますが、私は逆に、もう地方創意工夫をしなければ生きていけないんだというようなやはり仕組みがなければ、もうこの何年間か、もう何十年間と日本、いろいろある言葉を誤解を恐れずに言うならば、甘やかされてしまっているから、やはりそういう発想の転換が必要ではないか。  その最たるものとして、やはり今の国税と地方税。やはりちょっと国税主体ですから、もう十年間掛けて、例えば、向こう十年後にはもう国税ではなくて地方税を中心にするんだ、十年間掛けてそのために地方は頑張ってくれ、いろいろな産業誘致だとか雇用創出のために頑張ってくれと、そういうような仕組みを作っていかなければ私はこの日本の将来というのは余り期待できないんじゃないかなと思うんですが、その点、いかがお考えなんでしょうか。
  22. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問でございますけれども、私も全く同じように考えております。  やはり、ちょっと財源の問題には、先ほどの意見のときには申し上げませんでしたけれども、やはり交付税交付金の話があめとむちということで、中央とそれから地方との関係、やっぱり甘やかしの関係というかそういうのを持ってきたんではなかろうかというふうに思っています。  やはり創意工夫とか実験ということになりますと、そういうことをやるためには、もし自分が新たなアイデアでやったときに、成功したらやっぱりそれはその地域の利益になる、しかし失敗したときには、やはりその地域もある程度責任を取っていかなきゃいけないという自己責任の問題があるわけでございますけれども、それが、やはり財源の問題がしっかりしていなければそういうことというのはなかなかやっていけないんではなかろうかと思います。  そういうことにおきましても、今、先生御指摘したそういう部分はやっぱり変えていく、変えていくという意味での徹底した地方分権化で事を行っていくということが、やはりそれぞれの地域が本当に競争したり生き延びていくというところまでさらされるというか、本気にそう考えるようになるというきっかけになるんではなかろうかと思っております。  以上でございます。
  23. 高橋進

    参考人高橋進君) まず、特区がうまくいくかどうかということについて、私は、先ほど鶴参考人が冒頭の陳述のところでおっしゃいましたが、それ以外にあえて言わせていただければ二つの疑問を持っております。  一つは、やはりまだ、いまだに地方自体もハード作りを主体に考えていると。特区を作るから、じゃそこにハードのものを何か作って企業を呼び起こそうと。これは従来の発想と同じでございますので、それでうまくいくんだろうかと。やはり、相当ソフトの部分を組み合わせないといけないだろうということと、もう一つは、やはりどの地域も、地域特性を生かしてと言いつつも、実は画一性のわなにはまっているんではないかと。例えば、日本海側の沿海都市へ行きますと、皆さん海の幸を生かしてとおっしゃるわけですが、海の幸はどこにでもあるわけでございまして、それは果たして売りになるのかという。そういう意味での、本当の意味での独創性というのがまだまだ、出てくるまで、育つまでには時間が掛かると思いますので、本当に私はその特区ということについては、地方自体がどれだけハード偏重をやめるか、それから独創的な考えを作れるかというところに懸かっているというふうに思います。  それから、創意工夫しなければ逆にやっていけないようにしむけるということについては、私も正にそのとおりだと思います。分権化を進めるということは、逆にやはり地方が、国と地方との間の資源の再分配機能というのが落ちるということでございますので、それはすなわち地方が自立しなければいけないということになるかと思いますので、そういう意味で、今の小泉内閣がやろうとしている分権化を更に推し進めるということが、逆に地方を自立させていくということになると思います。  しかしながら、私は、今の分権化のペースは余りにも遅いんではないか、むしろ分権化によって、しむける前に地方自体がもう疲弊してしまうんではないか、そちらが先かなという気がいたします。もう既に地方は、やはり信用度に応じて資金調達の面ですとかそれから企業の進出という面でかなり差が付いてきておりますので。もう地域地方によっては金の切れ目が出てきている、金が切れたところはすなわち経済活性化しない、衰退するということでございますので、私は、国と地方との間の分権化が進む前に、もう既に市場の観点から地方はやっぱり再生を迫られるという方向に追い込まれていくんではないかというふうに理解しております。  したがいまして、その辺の危機感を強く持っているところが逆に独創性が最近出始めている、どんどんやろうとしている。そうでない旧態依然としたところもたくさん残っているということではないかと思います。
  24. 松あきら

    ○松あきら君 今日はお三人の先生方、当委員会にお出ましをいただきましてありがとうございます。公明党の松あきらでございます。  中でも、高橋先生は、ちょうど一年前の十一月二十八日に当委員会にお出ましをいただきまして、そのときのお話と今日のお話も伺わさせていただきまして、特区という話が出ているんですけれども、しかし、その中で私は、昨年の話の中でと今回のお話の中で、やはり成長とかあるいは、経済政策の在り方を成長とかあるいは産業振興ということに加えてまちづくりという観点から見直してみるというふうにおっしゃいまして、生活者を、いかにして人生を楽しみ豊かにしてもらうかという観点から政策を作り替えていくか、あるいは都市空間を作り替えていくか、そういう観点に立てば、従来の公共事業とか福祉、教育等々の政策についてもいろいろまだ見直しの余地が大きいんではないかと、こういうようなお話をいただきまして、それをしっかりこの間から読ませていただいて、今日お話を伺って、正にそうだという思いなんですけれども。  私は、実は特区という問題に関しましては、鶴先生も、先行実施とあるいは産業集積、どちらかというような点、あるいは、どこかの地域だけがこの特区をやって、ある地域の提案が吸い上げられて、それが良かったとなるとほかの地域でも利用可能となる、創意工夫して斬新的、革新的なアイデアを出すインセンティブがなくなってしまうのではないかというふうにおっしゃっておられますけれども、私は、もしどこかの地が、特区ということでなくても、創意工夫をしてある何かいいことをやった、それが非常にうまくいった、それをどこかがまねしてもそれは大いに構わないんではないかと。特に今この時代ですから、まねをされて嫌でまた次のことを考えるんなら考えるでもいいし、あるいは、日本も狭いといえども日本全国ですから、同じようなことがまた違う地方で受け入れられるということも考えられる。もちろん創意工夫をして失敗をするということもあるんですけれども、ですから、どちらにしても私はやれることはやってみるということがまずはいいことではないかというふうに実は思っているんですね。  そして、今構造改革特区ということが問題になっておりますけれども、しかし、これ今、地域社会活性化課題ということを考えますと、正に今、先ほども出ておりましたけれども、首都圏、都心部も地域ですし過疎の地方もこれは地域、つまり都市部も田舎もという言い方をしてはいけないけれども、地方も同じ、みんなそれぞれ違う問題を抱えている地域であるわけでございます。ですから、例えば特区ということだけで地域活性化ということを考えると、これはちょっと違ってきちゃうんじゃないかな、やはり高橋先生がおっしゃったような、一般的に日本全国を考えると、やっぱりまちづくりなどが一番どの地域にしても当てはまることではないかなという気がするわけでございます。  そして、私は、高橋先生が共助というお話をなさいまして、非常にこれは共感をしているところなんですね。つまり、政府丸抱えの公助と自己責任の自助の間を埋める正にコミュニティー、共助システム構築という。  実は私の地元の横浜の神奈川区というところなんですけれども、そこで、例えば町会会館が古くなっちゃって、市の土地を借りて建設を新たにしようということになって、借りられたんですけれども、建設費が足りなくて会館が思うとおりに建たないと。そこで、会長さんがどうしようかと考えた末に、百円だか二百円だか、皆さんと相談をして町会費を上げたんですね。それで実は立派な会館が建ったんですね。  それからもう一つ、ここは実は、これはまだ解決付いていないんですけれども、火葬場がある土地で、火葬場があるということで安いんですね、土地が。それで、一杯人が入ってきまして、かなりいい住宅地になったんです。そうしましたら今度は、火葬場で煙突から煙がもこもこ出ている、これじゃ嫌だ、何とかしてくれないかということで、例えば、今何か煙を水槽に通しますとこれが蒸気になって、公害も出ないし煙ももちろん煙突もないという、こういう非常にいい新しい火葬場ができているそうなんですけれども、これはそれで今の火葬場は民営なんでなかなか、公営ですとまたいろんなやり方もあるんだけれども、じゃ民営だと町なりなんなりがお金を出してこういう新しいことにするから替えてくれないかということにもならないとこれが替わっていかない。でも、もしかしたら、こういう新しい煙突もないそうした火葬場になって、周りに桜の木とか何か大きな木でも植えれば非常にいい環境になって、また町としての価値が上がり、さらに例えば町の地価が上がるかどうかは知りませんけれども、やはり更にいいコミュニティーができると。ですから、そういうところであるいはまた町会なりが皆さんで御相談してそのお金をどうしようか云々ということは例えばあると、そういう、私これも実は共助というふうなことにつながるかなと思うんです。  それで、お三方の先生に共助ということに対して、例えばいい例は、高橋先生は共助ということをお話しになりましたけれども、例えばこういういい例がありますよ、あるいはどういうふうにしたら共助というシステム構築が促せるか、これをお三方の先生にお伺いしたいと思います。
  25. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問の共助というお話なんですけれども、私自身その問題についてもう少しちょっと考えさせていただければなということで、逆に、先ほど御質問のあった、御指摘のあった点で、特区を、アイデアを出したときに、先生御指摘になられたように、そのアイデアをほかの人も使ってもいいんじゃないかという御指摘をされて、その御指摘は私は正に御指摘どおりだと思います。これは特許の問題なんかもそうでございまして、もちろん最初は保護しなきゃいけないけれども、その後はやはりみんなが使えるようにしていくということで、私もその方のやり方がいいと。つまり、全国波及させていくというやり方をやっぱり取っていくということが非常に重要だと考えております。  だから、私が考えておりますのは、いいアイデアが出て、ほかのところでもちろんそれを使うということは構わないんですが、むしろそのアイデアを出したところに最初の一年若しくは二年ぐらい、どういうふうにそれがうまく実際上機能するのかなというところで見ていってもいいんじゃないのかなと。それでうまくいくんであれば、みんなそのアイデアを使ってほかの地域でもやっていくということが非常に望まれているんじゃないのかなと考えています。  若干、ちょっと共助そのもののお話に対する答えになっていなくて大変恐縮でございますけれども、私の方からは以上でございます。
  26. 高橋進

    参考人高橋進君) 私が共助の必要性を一番真っ先に感じましたのは、私は東京都に住んでおりますので、ごみの分別収集が始まりましたときに、要するにごみの分別収集が徹底いたしません。なぜ徹底しないのかというふうに地域を見回してみますと、要するにお上の言うことを聞かない老人、外国人、独身者がいて、家庭の主婦は皆さんやるんですが、そういう人たちが言うことを聞かない。昼間いないとか、いろいろ事情が分からないということは当たり前だと思うんですが、そういう人たちをどうやって説得し、やるかというのは、これは行政ではできない、町内会長さんが一生懸命ボランティアでやるわけですけれども、やっぱりそういったところから、町の問題点一つ一つ解決するためにコミュニティーなり共助の考え方がないと駄目なんだなと感じました。  そういう意味で、先ほど会館を造る、火葬場のお話が出ましたが、私は、やっぱり町というものを考えたときに、皆さん、住民が、これがなくなったらいいとか、これをやりたいとかという、そういうアイデアなり要望というのをどんどん吸い上げていく。それは都市によって要望違うと思うんですが、そして、それを例えば寄附だとか会費で賄う場合には、私はそれを例えば税優遇すると。NPO設立の場合の寄附金の問題もございますけれども、NPOまで大げさでなくても、例えばそういう寄附については免税にするとか税額控除をするとかという形が必要だと思いますし、加えて、そうやって住民のお金が出てきた場合には、そこにプラスアルファで行政から補助金を付けていくということも一つの手ではないかと。公共事業に代わるものとしてそういうところに金を使っていく、それがその地域を良くし地域の厚生を高めるということですので、私は従来型の公共事業以上に効果があるんではないかというふうに考えております。
  27. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 私自身、共助というのは余り聞き慣れていないものですから、後ほど高橋さんからじっくり聞かなきゃいけないかなと思っておりますけれども。  今ほど話がありました例えば葬儀の問題ですね。全国で実は倒産件数の結構多い部類に葬儀社というのがあるんですね。これは、実は町の中心部でもう葬儀社は作れないと、住民の反対に遭ってということがあります。やっぱり葬儀社というのは、当然のように社会生活上は必要なものでございますから、ないわけにいかない。しかし作れない。やはり非常にこの問題の根深さがあるのかなというふうに思っておりますけれども、私どもの地元では火葬というシステムが公共のものだとばっかりずっと思っていましたので、民間であるんですね。今煙が出ないものですから周りからは一応全然クレームも出ないという、地方においては葬儀とかそういったものに関しての余り抵抗感がないのかなというのを私自身が思っておりましたので、今本当に違った話を聞いて、ああ、そういうものもあるのかなと今思っておりました。  共助におきましては、本当にとにかくやはり我々一生活している者が、すべてこれはもう行政責任行政にすべてお願いをしてきたというあしき前例があるということがそもそもの問題で、街灯の電気一つ消えたからすぐ市役所、町役場へ電話をして替えてくれと、どぶ板が外れたから替えてくれと。まず自分たちでやろうということを考えない、その意識の低さが、これは私が言うのもなんなんですけれども、まずそれをやはり日本国民の皆さんには分かっていただきたいなと。これから必ずそういう時代が来ると思っております。そういうふうにまた持っていきたいなと思っております。  以上です。
  28. 松あきら

    ○松あきら君 ありがとうございました。  正にもう地方分権にならなければおかしいと、そしてそれぞれの地方がそれぞれの実情に合わせて考えていったときに、正に先ほどの高橋先生のように、それで税控除なり税額控除なりあるいは補助金なりというのが後から付いてくる、本当にそうだなというふうに思います。  そして、もうその意識をしっかり、私どもが地方分権を進めていき、もちろんそうした分権ということはもちろんお金、税額の、このお金とともに、権利とともに地方に渡さなければいけないと、これは私どもがしっかりとやはり議員としてそれをかち取っていかなければいけないという思いでございます。  ありがとうございました。
  29. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  今日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  実は、お三人の参考人の皆さんに同じ質問をさせていただきますけれども、お答えをもしいただけないテーマがありましたら、それは飛ばしていただいて結構でございますので、よろしくお願いをいたします。  私たちの調査会は、「真に豊かな社会構築」ということをテーマにして、三年間という調査期間を持っている調査会でございます。今、とりわけ今年度からは地域社会での住民の、あるいは国民のライフスタイルが一体どのようになっていけばいいのだろうかという、軸足をうんと下に置いたようなテーマを選びながら調査を進めているところです。  まず第一にお伺いしたいのは、日本経済大国と言われているんですけれども、日本国民は本当に真の豊かさというものを実感できない状態にあります。ですから、参考人の皆さんに、真の豊かさとは何かということについてのそれぞれのお考えをお伺いしたいというのが一点です。  それから、今、国会では構造改革特区という法案が衆議院から回ってまいりまして参議院で質疑がされておりますけれども、この法案については私たちは非常に大きな問題を感じております。  この法案の目的というのは、地域に特別な区域を設けて、特例措置として各分野の規制を緩和、撤廃して経済活性化を図るというものなのですけれども、一つ大きな問題意識を私は持っておりますのは、この法案というのは、今もう二十一世紀になっているわけですが、二十一世紀というのは、例えば長野のあの田中さんの脱ダム宣言、知事が再選をされましたように、もうやっぱり国から何か大きなプロジェクトを押し付けて、あるいは大型の無駄な、私は無駄な公共事業と言っておりますが、大型な無駄な公共事業を押し付けて地方自治体をそれに縛り付けて、正に開発会社、営利会社のように変えていくという、この間、長い間続けてきたその政治が、そうじゃなくてやっぱり地方から、地方の自治、住民の自治によって自分たちが住んでいていいというような地域に変えていこうというのがやっぱりこの二十一世紀の流れじゃないかと思っているんです。その大きな流れにこの改革特区構想、小泉改革特区を作っていくという構想というのは、私は時代に逆行している、まずこの問題意識を持っています。  もう少し具体的に言いますと、片山総務大臣もこういうふうに言っているんですが、まずこの規制改革実験をやってみるんだ、それを規制改革全般の突破口にするのだと、こういうふうに御答弁しているんですね。特区全国的な規制緩和のてこにしようというお考えです。  まず、私は、このお考えが時代逆行じゃないかと思います。全国的に規制緩和の突破口として特区を設定し、まず実験をやってみるんだ。つまり、地方全国的な改革の踏み台にする、こういう考え方、これは非常に誤りじゃないかというふうに思っています。  今必要なことは、例えば長野だとかあるいは徳島だとか鳥取だとか、県レベルでも、宮城だとか、自分たちの地域に合ったような、そういう大型の無駄な公共事業にはやっぱりメスを入れながら住民本位の地方自治を作っていこうという動きがあるわけですけれども、県レベルだけじゃなくて、私の地元は京都でございますけれども、例えば美山町というとても、水も緑もとてもすばらしい地域がございます。正に山村なんですけれども、カヤぶきの伝統的な建造物群というものをきちっと保存をいたしましたところ、とても観光客がたくさん来ていただいて地域が非常に活性化するというか潤ってきていると。自分たちのそういう財産をきちっと守りながら、しかも町として立ち行くという方向は、住民自身がしっかりと、町長さんも交えながら考え出したその方策です。  ですから、そういう地方自治をしっかりと、むしろ国はお金を出すけれども口は出さないという形で援助をしていく方向こそ、本当の意味でこれからの地方活性につながるんじゃないかと思います。ですから、今進めようとしている小泉特区構想というのは、正に新しい芽をむしろ摘み取ってしまうことになる、時代逆行じゃないかというこの私の問題意識についてどのようにお考えになるかというのが二点目です。  それから三点目は、実はこの特区の中に、私は本当にびっくりしたんですけれども、至る所に株式会社の参入を認めていこうという規制緩和が、項目、メニューがありますね。医療や、それこそ幼稚園、それから農業にも株式会社よろしいよというふうなことになってきている。  これは、この規制緩和というのは、例えば医療に株式会社がどんどん参入するということになれば、今、小児科や救急医療が非常にコストが掛かるということで少なくなって事故まで起こっていることなんですけれども、こういうふうな、本来、株式会社の参入は駄目だということでむしろ規制をしてきた部分に、いいですよということで株式会社を参入させていくということに対する弊害はどのようにお考えかということと、それから、そういうことをやりますと、憲法二十五条、それから地方自治法に決めている地方自治体の使命である住民の福祉や健康や安全を守るということについての責任はどのようになっていくのだろうかと。この点についてのお考えがあればお伺いしたい。  それから、最後ですけれども、私たち当委員会は海外の視察もやりまして、この間、ニュージーランド、オーストラリア、視察をさせていただいて、私も行ってまいりました。  びっくりしたのは、ニュージーランドは五時になったらみんな帰っているんですが、働いていらっしゃる方が。五時になって帰ったら何をしているかといえば、家事もやれば、それからヨットに乗ってスポーツもやれば、ガーデニングもやると。土日は休みだと。バカンスは一か月はもちろんある。こういう生活をやっていらっしゃるわけですね。人口四百万の小さな国なんですけれども、随分日本と違うなと思います。  何かそういう特区を作るというのであれば、一度、この五時に帰ると、みんな、その地域の人は。そういうふうな地域を作って一回試してみたら日本国民の生活はどんなふうになるかなというふうな、そういう一つの夢のようなものを私も描いているんですけれども、そういう社会についてはどのように思われるか。  参考人の皆さんの、余り堅くならないで、御感想でも結構ですから、その点について触れていただければ有り難いです。
  30. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問ですけれども、一番最初の御質問の点、真の豊かさは何かということと、一番最後の四点目のお話というのは非常に共通しているんだと思うんですけれども、私自身も、やはりこれまで日本状況、特に戦後ということになるのかもしれませんけれども、例えば働いている人にとって人生というのは、やっぱり自分の職場というのは人生にとって非常に大きな存在である、それが人生そのものであるということで、なかなか高度成長期、家庭を顧みることもなくとか、そういう方々は例えば引退してから自分は本当に何をやったらいいのかということで、家ではもう邪魔者扱いされる場合もあるというような話というのはよくあるわけですけれども。  そういった意味で、真の豊かさということを考えると、今、先生御指摘になったように、やはり自分の職業人生というものと、あとはもう一つ部分、裏と表という言い方は余り良くないのかもしれませんけれども、やっぱりその二つを非常にうまく維持していくということが真の豊かさにつながっていくと。  多分、職業以外のもう一つのところというのは、これまで何度もお話出ていますけれども、やはり地域との交流ということで、私自身もそういうものは非常にあるという方ではないのかもしれません。ただ、例えば子供がいろんなスポーツをやっていると、そのスポーツのクラブというのは地域ベースでございます。そういうところでいろんな、お父さんやお母さん方、いろんな方々とお知り合いになっていろいろ交流する機会が増えるということもございます。そういう二つを維持していくということにおいて、やはり地域の役割というのは非常に大きなものがあるんじゃないのかなということです。  あともう一つは、やはりヨーロッパ、私はちょっとフランスに住んだ経験があるんですけれども、先ほど先生おっしゃったように、非常にバカンス、最近一か月はなかなか皆さん行かないんですけれども、近く取るということでも、非常にそういう休みというのが日本みたいに観光地へ行けばどこへ行っても泊まるだけでも非常に高いとかいうことじゃなくて、非常に安く、ふだんの生活と同じように、そういうバカンスへ行っても楽しめるような状況。それは、バカンスを取る人の数が多いということでそういう状況になっているんだと思いますけれども、やはりシステム自体、全体的に変えていかないと、そういうことはなかなか難しいのかなというふうに考えています。  それから、特区の件でございますけれども、やはり地方が、先生がおっしゃるように、実験台になると。何か中央から無理やりこれやれと、おまえがその実験台になって、失敗してもそれは中央は知らないよと、そういうことではやはり私はそれは駄目だと思います。  しかし、今回、やはり地方から提案を上げて、うちはこういう特色を持っているのでこういうことをやりたいと、そういう提案ならばやはり一生懸命それをサポートしていくべきじゃないだろうかと。少々いろいろ難しい点、先ほど実は医療の問題で、今回いろいろ地方が提案した提案がなかなか盛り込まれなかったという問題がございます。そういう問題というのは非常に慎重にやっぱり考えなきゃいけない問題だと思いますけれども、でも、何か地域が独自性を出していくときに、そういうその地域のいろんな考えた提案というものをやはり最大限に尊重できるような仕組みというのは必要かなということです。  それと、株式会社参入の御懸念という、これも私、先生のお考えというのは非常に理解ができるんですけれども、ただ、株式会社と言っちゃうとちょっとやや語弊があるんですが、むしろ頑張ったら、知恵を出したら何かそれだけうまくいいものが返ってくるよという考え方ですよね、株式会社の考え方。株式会社は違う形態であれば、やってもやらなくても要は結果は同じだと、そうすると、そういう新しいアイデアとかやる気というのはやっぱりどうしても出てこなくなってくる。うまいアイデア、人と違ったものを出せれば、それがやっぱり返ってくるシステム、そういったものとして株式会社形態というのを考えていくと、やはりこの前と違ったようなものが出てくるんじゃないのかなと。  例えば、最近よく田んぼの中で養殖をやると、ヒラメの養殖をやるという話がございますけれども、そういうのも全く通常の発想を覆すような考え方でございますよね。有機バクテリアなんかを使って、非常に公害も出さないということをやっていらっしゃるという話なんかを聞くと、やっぱり正にそういうアイデアがどんどんどんどん出てくる仕組み、そういうアイデアを生む仕組みとしてそういう例えば株式会社形態、一つの形態として考えてもいいんじゃないかな。  ただし、それを悪用していろんな問題がやっぱり出てくるというのは当然ございます。やっぱりそういうのに非常に目を光らせていかなきゃいけないんじゃないのかなと考えています。  以上でございます。
  31. 高橋進

    参考人高橋進君) まず、第一点でございますが、真の豊かさと。私はやはり物質的豊かさではなくて精神的な豊かさというふうに考えるべきではないかと。そして、精神的な豊かさというのは二つのことから出てくると思います。  一つは、やはり自分に悩みとか問題があったときにそれを手間暇、時間を掛けて解決してもらえる、そのための助けが要るということではないかと。例えば介護、看護、教育といったものについて、金で済まされるのではなくて、それをちゃんと見てくれる人なりサポートする人がいるということなんではないかと。ヨーロッパなどは、余り給与も高くない人たちがそういうサポート役になって一人の人を支えてくれると、そういうシステムが非常によくできているというふうに思いますので、私はそういうケアをしてもらえるということ。  それから二つ目に、やはり社会に貢献しているという実感を持つことだと思います。金のある方が有料の老人ホームに入って社会を顧みないということでは幸せになれないと。金があろうがなかろうが、やっぱり人の役に立っているという意識を持つことでその人は自己実現できるということ、これが正に精神的な豊かさを生むと思いますので、その二つ意味で満たされる社会になるということではないかと思います。  それから、二点目の特区でございますけれども、私は特区はベストのソリューションではないと思います。ただ、実際問題として分権化、規制改革、これが遅々として進まない。せんだって、オリックスの宮内さんは逆に遅々として進んでいるとおっしゃっていましたけれども、要はなかなか進まないと。こういう中でほっておきますと、分権化、規制改革が進みませんから、日本経済変わらない。であれば、特区というものを作って、セカンドベストの解決ではありますけれども、やってみようと。それによって、もしいろいろな特区一つでも成功体験が出てくれば、そのことが日本人を奮い立たせることになるんではないかと。まねであってもいいと思うんですけれども、私は今の日本人にはそういう新しいことをやって成功するという成功体験が必要なんではないかと思いますので、それがその突破口になればというふうに思います。  三点目の株式会社でございますが、私は、やっぱり株式会社経営を容認するということの意図というのは、患者イコール顧客と、顧客のためになる経営をするということがポイントだと。顧客のためになる経営をしない団体、企業というのは、結局、顧客の評判が悪くなって廃れてしまうわけでございまして、ある意味では、そういう市場メカニズムを持ち込んでくるということで今の閉鎖状況を打破していくということだと思います。もちろん、安全だとか最低限の基準というのは別途必要だと思いますけれども、私は株式会社経営イコール無責任経営ではないというふうに思います。  四番目のポイントでございますが、私は、例えば五時に帰るという運動をする場合に何か規制があってできないということであれば、それをネタにした特区というのを作ってもよろしいんではないかというふうに思います。あるいはそれ以外に、もっとユニークと言うと語弊がございますが、人が考え付かないような非常に面白いアイデア特区を作るということ自体が逆に新しいことにつながっていくんではないか。  ですから、そういう面白いユニークなアイデアがどんどん出てくるような特区、そこでもし規制が問題になったときにはそれが特区という話になるわけですが、でも別に規制の問題に引っ掛からないんであれば特区という名前を付けないで、特別区でも何でもいいと思うんですが、私は町と申し上げましたけれども、そういうものを作ってみると、そこから変えていくということではないかというふうに思います。
  32. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) まず、豊かさでございますけれども、私の考える視点でございます。  豊かさにおきましては世界基準、日本基準とございますけれども、世界基準で考えれば、当然屋根のあるところで三度三度の食事ができるというのがやはり世界における本当に豊かさの一つの原点だろうと思っています。ただ、日本においてはなかなか、昔私が子供のときに言われた、国民総中流家庭と言われた、それが基準なのかどうかは分かりませんけれども、週四十時間の労働時間で終わり、年何回かの旅行ができ、そして持家を持ち、車を持ちというのが本当に皆さんが多分豊かさを感じるということなんだろうなと私は思っておりますけれども。  ただ、本来、地域における豊かさというのはやはり福祉社会の充実だと思っています。福祉というのは、ただそれは単に高齢者福祉だとか介護福祉じゃなくて、子供の教育も福祉だと思っております。本年、日本でワールドカップが開催されましたけれども、例えば地方でいいますと、プロ野球一つ見るにも東京、大阪へ行かないと見れない。なかなか私のように、新潟ではプロ野球の選手と接する機会がない。そういったものをやはり日本のどこでも体感できるような形で持っていくと、非常にこれが本当の豊かさではないのかなと、私はそういうふうに感じております。  二番目に、特区云々の話でございますけれども、もうちょっと突っ込んで、先ほど美山町の話をされておりました。私も見たことがございます。本当にいいところだなと思っております。カヤぶきの屋根で残すと本当に確かにいいんですけれども、ただ、何もなく残すとそこに住んでいらっしゃる方は非常に不便なんですね。天井は高いですから暖房費はかさむ、すき間風はびゅうびゅう入ると。これを個人の、個々の、個のものとして考えると非常に無駄が多くてなかなか生活環境としては適さない。それはやはり地域で考えて本当いってもらわないと、こういった問題というのはクリアにならないのかなと思っております。  あと、株式会社化ですけれども、私はどちらかというと賛成論者でございます。特区という話がありますけれども、やはり農業一つ取ったときに、今まで農業に従事した方というのは買われる方の顔が見えていないんです。ただ生産性だけ求めて取っているものですから、なかなか我々が求めているものは来ない。  例えば、作ったジャムにしましても、梅というのは取ってから一週間以内に色が変わるんです。同じ木から取ったものをジャムにすれば、千個作る量で千個できるんです。いろんな木から取って生産性だけやっていきますと、途中で色が変わったのがありますから、これをはねるだけでもえらい時間が掛かると。これというのが、今の農業者の方が果たしてそこまでやっていただけるかといったら、私はちょっと不可能なのかなと。  こういったものを考えますと、ある種、物事というのは常にいいものと悪いもの、その人の考え方次第で、善かれと思ったことが非常に悪用される例がございます。ただ、総合的な観点から我々が本当に農業の方にもある程度参画をしてみたいという気持ちを持っておりますので、是非これについては前向きに考えていただきたいなと思っております。  最後に、五時に終わりたいと、これは我々、中小企業をやっている人間はみんなそう思っております。私はでっち奉公行ってきましたときには大体夜九時まで働いておりました。自宅に帰りましたら五時半に終わるんです。何にもないと金だけ掛かるんですね。飲食店に行ったりとか遊びに行ったりすると非常にお金が掛かる。やはり五時に仕事が終わった場合には、ある程度自分が何か目的を持てるようなものを考えないと、ひたすら豊かさの上塗りだけで、お金だけ掛かってしまうのかなという意識があります。  以上です。
  33. 西山登紀子

    西山登紀子君 ありがとうございました。
  34. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 今日は、三人の参考人皆様、ありがとうございます。  鶴参考人高橋参考人からは専門家としてのお立場からの様々な話をいただきました。また、古泉参考人からは地域活性化の実践者としての貴重なお話をいただきました。ありがとうございました。  まず最初に、古泉参考人に一点だけ伺いたいんですけれども、コミュニティービジネスという、それをNPOがやるのか、又はまた別の組織、事業体がやるのかは別としまして、コミュニティービジネスの様々な可能性というものがあると思うんですが、先ほどは梅酒造り、商工業の経営者とそして農業者が共同して農産物に新しい付加価値を付けた地域の特産品というのを作り出したという例を実物を示して見せていただきましたが、ほかにもコミュニティービジネスの可能性というものは様々な分野であると思います。教育、先ほどもお話ありましたけれども、高齢者の福祉ということで、具体的にコミュニティービジネスの可能性、そしてまた、全国商工会議所の青年部連合会の直前会長ということで、全国でもいろいろな実践例があると思いますので、それらの具体例などを是非お聞かせいただければと思います。
  35. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 御質問ありがとうございます。  まず、コミュニティービジネスの可能性なんですけれども、やはり地域においてNPOコミュニティービジネス、先ほども言いましたけれども、コミュニティービジネスは、その地域問題点をビジネスとして考えよう、創出しようというのがそもそもの基本でございます。今、地域においての問題点というのは非常に多うございます。  例えば、教育一つ取っても、皆さん方も御存じのとおり、近ごろの高校生等は、髪の毛の色が変わっているというのは百歩譲って許すとします、ピアスをして学校に行くという問題に対しても非常に我々は関心をしております。というのは、体に傷を付けるということは、将来は例えば入れ墨をしょった高校生が現われるんじゃないか、そういった拡大解釈まで考えております。多分十年前にこのような状態になるというのはだれも認識をしていないと。多分、我々この先十年後というのはどうなるか全然見当も付かないという中で、やはり教育問題なんかも今後はコミュニティービジネスとしてとらえていきたいなと考えております。  さて、実践の例として一点だけ、一点ぐらいですかね、一点をまず言いますと、古紙のリサイクルというのは全国で多々盛んになっておりますけれども、ただ古紙のリサイクルではなくて、我々企業家というのは、実は株式会社、有限会社とも決算書類というのは取っておくんです。三年、七年と取っておかなきゃいけないんですけれども、さてそれをいざ廃棄しようといったときに、じゃどこに捨てるか、捨てる場所がないんです。これは、民間のごみの回収業者に渡しますと、実はそれを売られるんですね、同業他社に。前々からあそこの会社のごみが出たら幾らで売ってくれという話があるんです。非常にこれは実は大きな問題なんです。じゃ、それをどうしているか。今までは焼却処分にしたんです。ただ、今、各地で焼却というのは非常に難しいものですから出す場所がないと。じゃ、そういったストックフォームとかをじゃ我々で古紙として回収しましょうと。そのときも、ただ持って帰るんじゃなくて、その現地でシュレッダーに掛けましょうということで、車にシュレッダー一台載せまして、現地ですべて処分をしたものを回収しましょうという事業を来年から始めることになっております。  そういった、各生活や仕事をする中で問題点が絶対出てくるんですね。そういったものを一つ一つ我々はビジネスとして変えていこうと。我々NPOがすることによって非常にその信用度、その信用がいただけるような方法を今後考えていきたい、そういうふうに思っております。それが一番のいい例。  あと、ついでにですけれども、例えばこういったラベル等なんですけれども、これはすべて地元の知的障害者に仕事委託を出しております。障害者の方というのは本当に一生懸命仕事をされまして、こういったシールを張る作業というのは本当に喜んでやってくれるんです。そういった方の本当に一助になればいいなという形で、障害者雇用という面で何とか地域として考えていきたいなと思っております。  以上です。
  36. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  今、新しいコミュニティービジネスの可能性について具体的にお伺いしたわけですけれども、そういうお話も受けまして三人の参考人に伺いたいんですけれども。  新しい日本経済モデルというお話もありました。地域活性化というだけではなくて、新しい日本経済モデルへの転換という点でも、今ほどお話のあったコミュニティービジネスというようなものを社会の、先ほど高橋参考人のお言葉をおかりすれば、社会を変革する力としてコミュニティービジネスなり新しい事業形態をする市民の活動を支えていくべきだと思うんですが、それを進めるための、今障害になっているものもあるかと思いますが、その障害を取り除く方法、新しい政策誘導ということで具体的にどういうものが必要なのか。規制緩和の面でもそうですし、税制の面でもそうなんですが、それぞれできるだけ具体的に、こういう政策が図られるべきであろうというお話をいただきたいと思います。
  37. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問でございますけれども、私自身、どういう例えば税制とか具体的な政策というものがどうやったら利いていくのかというのは、これはやっぱりいろいろ考えていく必要があると思います。  その前に、私自身、コミュニティービジネスといったものを考えた場合に非常に有利な点は何だろうかということを考えた場合に、やっぱり作り手とそれから実際にそれを受容するものの人たちが、顧客というのが非常に近い存在であると。そこの間の情報のやり取り、つまり、企業でも何でもビジネスということを考えた場合に、どれだけ顧客要望を取り入れながら、またそれを取り入れて企業としてそしゃくして、それでまたその要望に合ったようなものを作り出していくかというその循環がどれぐらい速いスピードでできるかというところがやっぱり非常にポイントだと思います。  そういう意味で、コミュニティービジネスというのは非常に大きな利点を持って、そこで、これも先ほどの特区の話も非常に関係しているんだと思うんですけれども、そこでうまく成功した事例ができれば、必ずそれは、その地域だけじゃなくてもっと全国レベルでも必ず例えばその商品というのは非常に受容されるんじゃないのかなということがあると思います。そういう意味で、ある意味特区とやや似た考え方かもしれませんけれども、コミュニティービジネスというものの持っている非常に何というか、可能性というか、というところというのは非常にやっぱり大きなものがあるのかなと。  そうした場合に、何かうまく、行政がそういうものにうまく手助けして、やっぱり最初の規模が小さいものだと思うんで、最初の第一歩というところがやっぱり大変だと思うんですよね。それはいわゆるベンチャービジネスとかスタートアップとか、そういう問題と全く同じ問題があると思います。だから、やはり税制の問題とかいろいろできる面あると思いますけれども、むしろそういう特色を生かしてうまく、ただ余り過保護になり過ぎると、ベンチャービジネスの場合もよく議論されるんですけれども、余り効果が出ないということがございまして、その手助けの仕方もある程度限定したやり方で、うまく軌道に乗らせるところでそういうものを例えば補助なんかを切っていくとか、いろんな配慮の仕方があると思います。ただ、そういうコミュニティービジネスの本質論というか、そういうところをやっぱり見極めながら、うまい手助け、サポートというのをすることが重要だと思います。  具体的な政策まで申し上げられなくてちょっと恐縮なんですけれども、以上のように思っております。
  38. 高橋進

    参考人高橋進君) 分権化と規制改革、総論としてはこの二つだと思いますけれども、コミュニティービジネスというものの位置付けを考えますと、やはり行政とそれから企業経営の真ん中に位置するものという新しいタイプの事業主体といいますか、ものだと思いますので、これが育っていくということが必要でございますので、私は、ここを育てるためには、やはり財政支援、それから税制面での優遇、それからファイナンス手段の拡充、この三つが必要なんではないかと思います。  財政支援ということにつきましては、従来、行政として支出されていたものの一部を、例えば公共事業だとかそういうものをコミュニティービジネスに向けて、直接に向けていく、補助金という形で向けていくということも可能だと思います。  それから、税ということにつきましては、こういうビジネスを支える方の、支える出し手に対する寄附行為なんかについて優遇する、それからNPO活動なんかをする場合にその認定基準をもっと緩和していくということが必要だと思います。日本の場合には、そういう認定基準が非常に厳し過ぎるということはずっと指摘されていると思います。  それから、もう一つございます。  税制優遇ということに関連して申し上げれば、例えば、今、中小企業業者などが協同組合なんかを作りまして、例えばそれを金銭的な、事業組合が金銭的な投資をした場合にはこれは税の対象にはなりませんけれども、協同組合ということで何がしかの活動をすると、それが結局営利活動とみなされて今課税対象になっていると思うんですが、中小企業が例えば事業協同組合だとかそういうものを作ったときに、これを課税対象としないとか、そういったことがあるんではないかと思います。  それから、三番目のファイナンスでございますが、私は、コミュニティービジネスといえどもこの活動が拡大していきますと、いずれ資金調達の壁にぶつかるという気がいたします。ところが、今の日本の資金調達というのは、もう御承知のように間接金融主体でございますので、既存の金融機関、銀行がこういったビジネスに金を貸すというのは非常に難しい、そう簡単にビジネスモデルは変わらないと思います。一方で、直接金融、すなわち資本市場調達ということはよりそのハードルが高いですから、いずれ資金面の壁にぶち当たるというふうに思いますので、そこでその壁を突破していくためには、税のこととそれからファイナンス手段が必要だと。今の日本には、そういうところにファイナンスをする手段というのはほとんどないように思います。  一部地域の金融機関が、こういうビジネスに対して積極的な貸出しを進めているというようなことはちょっと聞きますが、非常にまだ小さいと思いますし、逆に私はそういう活動を金融機関がするんであれば、例えばそれを国家の保証の対象にするとか、あるいは税制面で優遇するとかというところまでやってもよろしいんではないかというふうに思います。  以上でございます。
  39. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 非常にただ、今現在、日本のNPOの中には、かなり本当に、単に補助金欲しさだけにでき上がっているのも多々あると思います。ただ、そのために甘やかすだけというのが非常に適切かどうか。補助金をばらまくというのが適切かどうか、欲しいことは欲しいんです。ただ、それのやっぱりバランスというのが非常に重要になってくるのかなと。やはり、我々は真摯にやろうという、NPO、コミュニティービジネスをやろうという人間にとって、一概に福祉という名前が付くだけで補助金が出るような方法というのは余り好ましくないのかなと思っております。  循環型の社会を作り上げるということは、本当に一つの我々の、今後の日本の命題だと思っております。その中で、コミュニティービジネスはとにかくローリスク・ローリターンであるということが前提であると。資金調達が非常にやっぱり問題になってまいりまして、我々はお金を使えば本当にいいものは一杯できるんです。ただ、今現在のNPOの置かれている立場、コミュニティービジネスの置かれている立場というのは、お金を掛けずにいかにいいものを作るかということに今非常に頭を使っております。それが今現在の日本のNPO並びにコミュニティービジネスの実態ではないかなと思っております。  以上です。
  40. 森ゆうこ

    ○森ゆうこ君 ありがとうございました。  私、個人的には今、本当に新しい社会の動きとして全国各地で新たな市民活動、コミュニティービジネス、いろんなものがかなり大きな動きになってきているのではないかなと思います。そういう市民の新しい動きが、本当言うと一番に政策の決定、つまり政治の場に反映されなければいけないんですけれども、残念ながらそういう人たちは、言わば無党派層ということなんでしょうか、政治への参画というものをためらっていらっしゃる。そして、それがまた低投票率とかに結び付いてもいるということで、この政策決定の場にその市民の皆さんの声を反映するために、政治改革ということがこういうものを後押しするためにまず必要なのかなと、また改めて感じながら、質問を終わらせていただきたいと思います。  今日は本当にありがとうございました。
  41. 山東昭子

    ○山東昭子君 高橋参考人鶴参考人にお伺いしたいんでございますけれども、昔は地方の発展というものは、大きな工場を誘致し、そして雇用の安定を図るというような傾向だったんですが、最近は、たくさんの雇用ということになると外国へ出てしまうわけで、一千億投資したハイテクの工場がたとえ来たとしても、雇用の人数というのは三十人しかならないということ、むしろ五億円で買ったクアハウスには百人の雇用が生まれているというような現実があるわけでございますね。  今まで、高橋そして鶴参考人がいろいろな日本国内で、あるいは外国ででも結構なんでございますけれども、アドバイスされた、あるいはごらんになったケースで、発想の転換をしたために非常に成功したというような例がございましたらお聞かせ願いたいのが一つ。  それから、古泉参考人に対して、青年部の代表ということで、商工会議所の、お見えになったわけですけれども、これからの我が国のいわゆる社会保障というようなことを考えますと、非常にそれがある意味では経済の足を引っ張っているというような部分もあるわけでございまして、福祉はやはり進めなきゃいけない問題もたくさんあるんですけれども、古泉さんからごらんになって、国民負担率は、スウェーデンのように七五・四%なんというような国にしてはならないと思いますが、日本においてはどの程度がいいかというようなことを青年部の皆さん方が話し合っておられるのか、その辺のところを伺いたいと思います。
  42. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問ですけれども、ちょっと直接的な答えにならないかもしれませんけれども、先生のやはり御指摘されるように、現在、製造業というのを見ますと、先ほどの工場のように非常に雇用の数が少ないと。やはり雇用吸収力が高いのは、当然サービス関係の非製造業ということになっていくと思います。  それで、これまで日本の従来型というのは、私はもう今更ここで御説明するまでもなく、経済、不況になると、やはりどういうところが雇用を吸収していたか。製造業はやっぱり雇用が減るんですけれども、そういうときは、例えば建設業で、公共投資をやって建設業で吸い上げるとか、あと非常に重要なのは、やはり卸とか小売とか、そういった流通関係のところでこれまで非常に吸収していました。  そういうところが一つ日本経済のバッファーみたいになって、ただ製造業は、そういう景気の変動で非常にやっぱり雇用も振れるんですね。でも、その振れを振れさせながら、日本経済全体としてある程度失業率は高くならないようにと、雇用を維持するためにほかの業種が結構吸収していたところがあったわけですよね。それが、やっぱり九〇年代以降、状況が変わってきて、もちろん公共投資どんどんどんどん出した時期もありましたけれども、今はそういうことで雇用を維持することは当然できません。そういう形で地方という観点から支えるというのは難しいということはあると思います。それから、流通のところもやはり相当厳しい状況が続いていて、やはりどんどん人を雇用するという、むしろそういうリストラクチャリング、かなり進んでいる部分もあると思います。  やはり、そういうふうになってくると、先生もおっしゃるように、先ほどクアハウスのお話もありましたけれども、やはりもっと違った、サービス業といってももっと違った、これはいろいろ様々な業種がありますし、アイデア一つでいろんな業種というのは当然生まれてくるんだと思うんですけれども、そういうものがある意味で非常に雇用を吸収していくということは当然あると思いますし、やはりアメリカの九〇年代の雇用創出というところを見ましても、そういう新規産業とかそういうところが非常に雇用を吸収している部分もあるわけでございまして、やはりまず雇用の問題というのを考えた場合に、今はじゃどこがその受け手になるのかなということで、探してもなかなかすぐに答えが出てこないんですけれども、むしろやっぱりそういう問題を結果として解決するために、新たな産業とか、そこにまたいろんな起業家精神を持った方々がどんどん参入していくとか、やっぱりそういうものの積み重ねというのが生まれてこないと、なかなか抜本的な解決にならないんじゃないかなというふうに考えております。
  43. 高橋進

    参考人高橋進君) 発想の転換のいい例というのはなかなかすぐに出てまいりません。  製造業と非製造業ということでちょっと分けて申し上げますと、製造業につきましては、私はまだまだ捨てたものではない、雇用拡大の余地はあるんではないかという考えを持っております。  一つ二つの例で申し上げますと、最近話題になりましたのが三重県がシャープの液晶工場を誘致した例でございますけれども、これはかなり議論が出たと思います。数年間で九十億円の補助金を出すということの是非が問われたと思いますが、ただ、知事いわく、要するにその九十億という金を公共事業だとか官の事業に使った場合の雇用創出よりも、一企業補助金として出した方が結果的にその工場が三重県に来ることでの雇用の拡大というのは大きいんだということをおっしゃっていまして、そういう意味では、雇用の拡大ということを念頭に置いた場合に、私は、外に出ていく物づくりを出ないようにしていくということも一つの発想としてはいまだにまだあるんではないかと。御質問の趣旨とはちょっと違いますけれども、そういうことを感じました。  それから、もう一つは中小企業の例でございますけれども、最近、主として中小企業が大企業の後を追ってアジアに出ていくという流れがございまして、例えばアパレルなんかはその典型的な例だと思いますけれども、ある東京の工場、中小企業というのはインドネシアにアパレルの工場、ニットの工場を造るということで出ておるんですが、ところが日本のマーケットというのは非常に高度化していて、すぐに顧客の欲しがるデザインだとかそういうものが変わってしまうと。インドネシアで物を作りますと、リードタイムを含めて一か月かそこいらは製品開発から販売するまでに掛かる、日本顧客は待ってくれないと、そういうことで、結局、工場はインドネシアに造ったんですが、より先端的ないいデザインのものを作ることについてはむしろ東京に工場を置いておくということでその使い分けをしておりまして、ITを活用することで、その工場というのは顧客からこういうものを作ってくれというものが、注文が来ますと一週間で企画から製品までやってしまう、製品化までしてしまうと。そういう意味で、企業も発想の転換をすればまだまだ国内で雇用を拡大する余地、マーケットを拡大する余地はあるんではないかと思います。  それから、これも直接のお答えになりませんが、非製造業あるいは行政の領域ということで考えますと、非製造業については日本は非常に後れていますのでなかなかいい例というのが出てまいりませんが、サービスということで行政サービスまで含めて考えますと、例えば今、行政サービスの中で相当役割を終えた分野でまだまだ過剰な雇用が維持されているというふうに思うんですが、一方で、私などが感じますのは、例えば出入国管理官であるとか警察官であるとか、こういうところの数というのがむしろ少な過ぎることが日本にとっていろいろな大きな問題になってきているということだと思いますので、私は、行政の中もかなりリシャッフルをすれば、より国民のニーズが高い分野に人を移動できるんではないかというふうに思います。その方が、同じ行政コストを掛ける場合であっても、国民の受けるサービスの質、それから厚生というのは高まるんではないかというふうに考えますので、直接雇用を増やすというお話ではございませんけれども、片や行政改革という大きな流れの中でそういう考え方というのもあるんではないかというふうに思います。  ちょっと直接のお答えになっていなくて申し訳ございません。
  44. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 先ほどジャムのシールを云々というのを知的障害者の方にも張っていただくという話もしましたけれども、そういうことをやっていますと、なかなか、知的障害者並びにシルバー人材センターというところを活用すると、今既存の雇用がないんだからそっちを使ってくれとよく言われるんですけれども、高齢者福祉にとりましてもすべてが金食い虫的な意味合いを私は持つとは思っておりませんし、地方においては結構高齢者福祉にかかわる人材というのが雇用の場の創出になっているという現実があります。  ただ、それに比重が高くなると北欧のような状態になるけれどもそれでいいかどうかという質問に対しましては、やはりすべてにおいてバランスだし、無駄をなくすことが何よりも一番のいい方法なのかなと思っております。やっぱり重点をどこに置くかだと思います。  高齢者福祉、よく介護保険、私の会社が一応お菓子屋でございますので、結構そういった施設に慰問販売という形で寄せていただきます。入ったときに健全に二本の足で、御自分の足で立たれていた方が一月もすると皆さん車いすに乗って移動されている。その方が管理しやすいですし、なかなか安全だということで、やはり高齢者の方も、本当に健全な方と本当に介護が必要な方と全く同じ視点で私は福祉問題を片付けているような気がします。それをすることによって非常に無駄が大きいと。  デイサービスにしましても、本当に町の外れた方に造りますから、健全な方も閉じ込めてしまう。そうなりますと、やはり同じ高齢者数に応じまして職員の数も置かなきゃいけない。しかし、今現在、商店街は疲弊していますので、空き店舗なんぞを利用しましてデイサービスを今やろうという運動をしておりますけれども、そうなれば、健全な方であれば、日中の時間帯は御自分で買い物にも出られるし、そこで会話なり、また商店街の皆さんとの触れ合いができて、管理しなきゃいけない方を町のみんなで見ていただくということをすると、なかなかそうそうお金も掛からない。やり方一つによっては、この高齢者福祉についてはそうそう我々は予算は掛けずにできるんじゃないかなと思っています。  非常に大事なことで、高齢者福祉というのは、我々やっている側もいずれは、こんなことを言ったらうちの親に怒られますけれども、いずれはお世話になる可能性もあるわけですから、非常に重要なことだと思っていますので、是非、私どもは無駄だと思っていません、経済の一端にいる人間としても本当に重要に思っておりますので、これについては本当にどんどん進めていっていただきたいなと。現実問題、ベッドが足りません。これも本当に重々承知しております。ただ、やり方次第、重点の置き方次第によっては変わってくるんじゃないかなと思っております。  以上です。
  45. 山東昭子

    ○山東昭子君 国民負担率の問題をちょっと、若者たちがどういうふうに負担率を考えているかというような問題。  今、日本はほとんどスウェーデンの半分ぐらいなんですけれども、どの程度までなら満足と言うとおかしいですけれども、受け入れられるかということを、若者たちがどういうことを考えておられるのかなと思って、御商売をやっておられる方にそれを伺いたかったんですけれども、余りそこまでは論議をされたことはないんでしょうか。古泉さんに伺いたいと思います。
  46. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 負担率、やっぱり率という数字に置き換えての議論というのはありません。やはり先ほどの……
  47. 山東昭子

    ○山東昭子君 中身の問題について。
  48. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) そうですね。といいますのは、先ほどの質問の中にもありましたけれども、豊かさの基準と一緒で、どこまでがいい悪いというのは、これは現実問題、数字としてなかなか表せないものがありまして、ただ北欧のような状態というのは我々望んでおりません。  ただ、今現在、社会生活において不便さを感じているのは、我々の中小企業の経営者並びに後継者はもう感じております。感じておりますけれども、それは率というふうにはちょっと私どもは認識をしておりませんし、議論対象にも今現在はなっておりません。
  49. 山東昭子

    ○山東昭子君 まちづくりというものはやっぱり老壮青というものが本当に一体となってやっていかなきゃならないと思いますし、阪神の大震災のときに、やはりお気の毒だからといって、ハンディキャップを持った方たちとかあるいは高齢者の方だけをアパートに入れようというようなことになったときに、むしろそれだと何か二次災害があったときに若い人たちが助けることができないじゃないかというような問題も出てきたわけで、ですから、ただただお気の毒というような観点ではなしに、今、古泉参考人がおっしゃられたように、やっぱりいろんな角度から現実というものを見詰めて、そして活力のあるまちづくりというものを是非若い皆さん方が考えていただきたいなと思っております。  どうもありがとうございました。
  50. 加治屋義人

    加治屋義人君 高橋先生に単純に一点だけお伺いしたいと思うんですが、私は、構造改革イコール地方活性化イコール国民の意識改革というふうに、いつもそう思っているんですが、高橋先生のこの中にいわゆる昔の精神論が出てきまして感動しているんですが、いわゆる三助の考、三助の教えというんですかね、公助、互助、自助という言葉が出てきているんですけれども、どうもいろいろ議論する中で、国民の意識というんでしょうか、自助というものが非常に、まあ戦後の教育のかかわりもあるのかもしれませんが、どうもこの部分が薄れてきていると。どうも互助に頼り、公助に頼っている、いわゆるそういう、今、国民の意識の中で、この構造改革にしても、いろんな今議論しているものと国民との意識のギャップが非常にありそうな気がして、そういうことを思っているんですけれども、その国民の意識改革をだれがどういう形で、どういう手順でやっていけばいいのか、我々政治をする身になって考えた場合に非常に難しい問題だなという気持ちもあるもんですから、何かヒントがあれば教えていただければと思います。
  51. 高橋進

    参考人高橋進君) 残念ながら、私も答えは持っておりません。  ただ、私も国民の意識改革というのが非常に一番根底にある問題だと思います。今、小泉改革市場メカニズムを徹底していくということになりますと、自助努力を迫られると。これは言葉の上ではそのとおり、国民にとって何となく分かるんですが、しかし、実際に例えば改革を進めていったときに、痛みが出てきた場合に、それを本当にこれは自助努力ですよ、自己責任ですよといって国民が割り切れるかどうかという意味では私はそう簡単ではないんではないかという気がいたします。  例えば、預金保険のお話一つ取りましても、最終的にあれは全部預金者の自己責任ですよと言われた場合に、やはり高齢者の方なんかを中心に、なぜあれは保険でカバーされないのかというお話になるわけでして、そういう意味では、自助という言葉を政府が言ったとしても、国民自身はやっぱり自助ということの本当の意味というのを理解していないというふうに思います。  ただ、なぜ理解しないで済んだかといえば、私は、やはりバブルが崩壊した後、サラリーマンを中心に基本的には所得が伸び続けてきたというところの問題点があるんじゃないかと思います。裏を返しませば、企業がリストラをしたと言いましたけれども、結局リストラは常に後手に回って、雇用の削減だとか賃金の引下げということが進んでいない。結果として、結果としてなんですけれども、意外とサラリーマンは守られてきた、国民は守られてきたということだと思います。  ところが、もうこれも限界に来ておりますので、サラリーマン、国民は、企業に守ってもらえない、あるいは国に守ってもらえないという事態に私はどんどんどんどん落ち込んでいくんじゃないかというふうに思います。財政の切れ目、金融の切れ目が縁の切れ目になって、国民が実際にこれから自分の生活水準の低下だとかあるいはお上に頼れないということをだんだん実感していくんじゃないかと。私、そうやって実感することで初めて国民は、今までは本当に公的な部分で依存してきたんだ、守られてきたんだという認識を初めて持つようになるんではないかと。  そういう意味で、やっぱり痛みを感じないと変わらないのかなというふうに感じております。そこまでしないで国民の意識改革ができればいいと思うんですけれども、私は、どうも日本人の中には長年の高成長の間に痛みがなくても改革できるんだというような意識が相当できてしまったんではないか、これを簡単に変えることはできないんじゃないかと、かなり悲観的に感じております。
  52. 加治屋義人

    加治屋義人君 今の日本経済大国つくってきたやはり一番の精神というのはこの三助の教えだといって私いつも思っているもんですから、これが構造改革の基本だよねと、そういう気持ちでいるもんですから、是非、先生方、いろんな講演お立ちになると思いますけれども、この三助の教えだけはしっかりと国民に理解できるような、講演等でしていただければ大変有り難いと、要望しておきたいと思います。  終わります。
  53. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 お三方、大変貴重なお時間を割いていただきましてありがとうございました。  まず、お三方に一問ずつお尋ねしますので、よろしくお願いします。  まず、鶴参考人にお伺いします。  参考人は、構造改革特区についての御見解で、地域間で知恵と工夫の競争による活性化を強調するならば、そもそも地方分権化、財政制度面がまず徹底されていることが基本であるはずだと述べておられますが、今回、構造改革特区推進本部が決定いたしました八十項目の特区推進プログラムの政策フィージビリティー、実現可能性についてどのような評価をされておるのか、まずお聞かせください。  それから、高橋参考人にお伺いします。  参考人は、首都移転問題について、移転是非論はおくとして、移転を前提として候補地を選定するに当たっては特区構想を応用することができるというアイデアを提示されております。すなわち、新首都を建設するに当たっては、新首都を構造改革特区に指定し、地域の実情に即し、かつ二十一世紀にふさわしい構想を打ち出した地域に首都を移転すべく公開コンペとすることも一つアイデアであるというふうに述べておられます。  参考人は、二十一世紀にふさわしい首都とはどのような都市であるべきとお考えであられますか、またそのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。  次に、古泉参考人にお伺いいたします。  参考人は、中小零細企業の今は試行錯誤の連続と大幅な改革を必要とされています、私たちの経営環境は出口の見えない極めて厳しい状況と言えますというふうに述べた後に、そんな中、地域期待され、地域に貢献し、地域を作っていかなければならないという決意を吐露しておられます。  そこで、今回政府が提案している地域活性化のための構造改革特区構想についてはどのように評価しておられるのか、そのお立場から御見解を賜りたいと思います。  それぞれよろしくお願いします。
  54. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問、その評価ということでございますけれども、私、当初、構造改革特区につきましては、各地方公共団体が出された案を一つ一つ検討して、その地域の特性によって検討していくんではないかということで想像しておったんですけれども、結局、各省庁の抵抗というものが非常に厳しくて、ああいう形で、一応全体として認められるものをああいう形で選んだということだと思います。  あの中には、例えば農業についても別の法人形態での話とか、あと、教育についてもそれぞれの地方教育委員会が別途教員を採用してというようなお話も入っております。そういうものの中から、私はこれまで何回も申し上げていますような、創意工夫という面が出てきたら、これは非常に面白いんじゃないのかということで期待している面もあります。  ただ、あれだけ一覧性のものというか、そのものを出した限りは、むしろあれをもう、何で全国ですぐ、やったらいいじゃないかと。あれを、この地域はこれはいいけれども、ほかの地域は駄目だよと、これからもし議論するということは、非常にちょっとナンセンスな感じがするなと。もうあれで全国ベースで広げるんだという感じでやってしまった方がむしろ非常に何かすっきりしているんじゃないのかなという考えを持っております。  以上でございます。
  55. 高橋進

    参考人高橋進君) 私は、首都移転をすべきかどうかは別にいたしまして、首都というものを考えた場合に、首都というのは様々な機能を持っているというふうに思います。国政の場ということで立法、行政、司法があるわけですが、それ以外にも例えば金融の中心であるとか、あるいは国際政治の中心であるとか、あるいは文化都市としての側面であるとか、日本の場合には余りにも首都圏あるいは東京にすべての機能が集まり過ぎていると。このことはいろんな意味でよろしくないというふうに思います。  したがいまして、例えば国際政治ということであれば、これは別に東京にいなくてもいいということで分散させるんだというふうに決めてもよろしいんではないかと。その場合に、じゃ、国際政治都市ということでコンペをしましょう、名のりを上げてもらいましょうという形で地方に分散していくという手も一つあるんではないかというふうに思います。  例えばスイスを例に取って申し上げれば、ジュネーブなんかがその例だと思いますが、これは全くスイスの首都とは関係ないわけでございまして、そうやってあえて首都機能を分解してばらすことでそれを地域活性化につなげていく、あるいは過度に集中した首都機能の、過度の集中による弊害を是正していくと、そういう考え方でございまして、それをやることによって地方というのが、中央に従属する地方ということではなくて、地方そのものが中央を通さなくてもいきなりグローバルな窓口を持っている、世界につながっていると、そういうことができてくれば非常に私は地方の独立につながっていくんではないかというふうに思います。
  56. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 今現在、政府が申しています特区構想につきましてですけれども、特区というものに関しての考え方というのは、私は非常にいいことだなと自分自身では思っております。ただ、それが地域間や、又は、本当にここで発言していいものかどうか、また政治間の綱引きにならないかという変な懸念と、それにやはり、それにおける何か考え方が、先ほども言いましたけれども、やはりいい方に取っていただければいいんですけれども、どうも何か悪い方に取られるような可能性も多々、多くあるものですから、この特区が一概にこのままいいのかなというのは、私にとってはやってみなきゃ分からないのかなと思っております。  ただ、今、何が常識で何が非常識か分からない時代ですから、私、何事におきましても、ただ一概に反論するのではなくて、どういう形で提案があったものに対して我々が受け答えられるかということについて一生懸命考えてまいりたいなと思っております。  以上です。
  57. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 高橋参考人にちょっとお伺いします。  先生の今のお話の中で、中国の広東省を中心とした市場経済の導入によって各、全体的ないわゆる市場経済がどんどん進んでいるというふうなことで、今はむしろ広東省よりは上海の方にどんどん移行しつつあるわけですね。  そういったふうな面からとらえると、やはり日本としてもいわゆるそういうふうなイメージを、やっぱり私は沖縄の出身ですので、沖縄の地域特定した経済特区を設けて、そこで活発な東南アジア、太平洋アジア関係のいわゆる経済的な交流を図っていくというのが非常に私は今の沖縄にとっても、また日本にとっても大事な選択じゃないかなと、個人的にはそう思っておりますけれども、その辺について両先生の方から、もし何か御意見があれば承りたいと思います。
  58. 高橋進

    参考人高橋進君) 中国の広東省、言わば当時の田舎が成功した事例というのは、私はある意味で、そのことによって中国の中の各地域がうちもやればできるんだということに目覚めたんではないかと。そういう意味で、今の現状というのは地域競争が非常に激しくなってきたと。したがって、元々広東省なり深セン地区が持っていた役割というのはもう終わったんだと思います、特区としての役割というのは終わったと。  しかしながら、今、深セン地区を見てみますと、特区としての役割は終わりましたが、産業集積がすさまじく進んできているということで、最初特区ということであの地域が非常に発達しましたけれども、今は産業集積の結果として世界をリードする地域になっているということだと思います。  したがって、日本の場合も、沖縄につきましても、私は当初、税の優遇だとかという形で特区を作るということの意味というのがあると思うんですが、ただし、やはりその後というのは、沖縄という、例えば何を材料にして特区を作るにせよ、その地域全体が最初日本の切り札になり、その後はやっぱり地域特性を生かして地域自体が発展していくという、そういうメカニズムが始まるということが非常に重要なことなんではないかと。  そういう意味で、沖縄は九州やほかの地域にもない、やはりアジアとの接点であるとか世界の交通路という、そういう色彩があると思いますので、私は、特区というところを一つの切り札にして始めて、あとその後、沖縄という地域が独自性を生かして特区を踏み台にして変わっていく、変化していくということが必要なんではないかというふうに思います。
  59. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) 中国の件でございますけれども、我々の研究所中国の専門家の関研究員というのがおりますけれども、その者が中国特区問題点を指摘しまして、最初インセンティブを与える、優遇策を与えると。しかし、それが非常にうまくいきましたと、それでほかにも波及させていく中で、今度はもうその役割はある程度終わってきて、インセンティブを下げるという段階が必ずやっぱり必要になるわけですよね。それが逆になかなかうまくいかないという問題が中国の場合もあるということを指摘されておりまして、これはやっぱり非常に大きな問題だと思います。  政治的に一度与えて、それでうまくいくということはそれで非常にいいことなんですけれども、やっぱり最後にはそういうのはまた引き戻していかなきゃいけないというプロセスを経るべきでございまして、それが実はなかなか難しい問題をはらんでいるということで、やっぱり特区の問題というのも、今導入するときのことだけじゃなくて、もっと長いタームで物を考えていかないと難しい問題が出てくるなというふうに感じております。
  60. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 例えば自由貿易地域特区に設けるとか、そういったふうなことも沖縄はあるんですけれども、どうも一国二制度的なものにはならなくて、やっぱり税制の関係でいろんながんじがらめがあって、自由貿易地域を指定してもうまくいかないというふうな面は御承知だと思いますけれども、それに代わるべき何か、沖縄の経済にインパクトを与えるような何かがないかというふうなことでは、やはり私たちは何か頭をひねって成功させていかなくちゃいけないなというふうなことは絶えず思っているんですけれども、何かその辺について、模索の状態でありますけれども、御意見があれば承りたいと思います。
  61. 高橋進

    参考人高橋進君) 今回出ております構造改革特区とそれから沖縄の特区とは、私は性格が基本的に違うものだと思います。  沖縄につきましては、私は、一国二制度あるいは財政的な積極的な支援というものを積極的に出していくということが必要だというふうに思います。そして、明らかにほかの地域と違うんだという、進出することのメリットなり、そこをはっきりして差別化するということがまず第一段階として必要なんではないかというふうに思います。そして、ある程度その成果が出てくれば、あとはインセンティブをどうやって引くかというお話になるかと思いますが、やはり先にインセンティブが必要なんだというふうに思います。  それに対して、ほかの、今回のいわゆる構造改革特区については、地域内でインセンティブを与えるということは自由ですけれども、国からインセンティブを与えるということはしないということでございますので、そういう意味では中国のような問題は出てこないというふうに思います。  ただ、私は、沖縄の問題につきましては、そうやって中央なり中央政府が一国二制度的なものを覚悟した上で差別化する、補助金を与えたとしても、基本的にやはり日本経済全体が非常に沈滞していますので、なかなか沖縄ばかりではなくてどこにも行かないという状況になっていますので、今非常に苦しいのかなと。今の状況をもってして沖縄だけがインセンティブを与えれば今のデフレ状況から脱却できるということにはなかなかならないのではないかと。  そういう意味で、日本経済全体として、やや地道な努力というのはある程度の期間せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  62. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) 私自身も、先ほどおっしゃられたように、国、税のインセンティブというものとか財政的なインセンティブというのはやはり非常に難しい問題をはらんでいると思います。そういうインセンティブを与える前に、例えば沖縄でもどこでもいいんですけれども、その地域としての魅力というものが、やっぱりまずそこをしっかり考えていかなきゃいけないんじゃないか。外から例えば入ってくるということを考えてみても、本当に魅力のあるものがあって、それで更にプラスアルファ、最初の手助けとして何か財政的な支援をもしやるのであればやるということだと思います。  ただ、余り財政的な支援目当てだけで例えば外から入ってきたりということが行われるとすれば、それは健全な発展ということにはなかなか結び付いていかないじゃないのかなと。だから、どちらが主でどちらが従であるかということを考えると。また、先ほど私が申し上げましたように、財政をやると、後で今度は引っ込めるのが例えば非常に大変な問題になってくる、そういう問題もありますので、その辺はやっぱり非常に慎重にやっていくべきだと思っております。
  63. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。
  64. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。本日はありがとうございます。  鶴参考人高橋参考人古泉参考人に共通して一問だけ伺いたいと思います。それは、青年の就職難の問題でございます。真に豊かな社会構築、今日は地域社会活性化課題についてということにかかわって、この青年問題について伺いたいのでございます。  総務省の労働力調査によりますと、青年の完全失業率というのはこの間ずっと伸びておりまして、二〇〇二年の五月の資料でも一〇・四%というふうになっているわけです。ですから、例えば高校生の就職難の問題などに取り組んでいる日高教や全国私教連の調査でも、九〇年代に入ってから下がり始めて、ここ四年間特にひどいと。学校現場でいいますと、生徒の学習意欲や修学意欲にも影響するような深刻な状況になっていて、経済力のない家庭の生徒はフリーターしか選べない、卒業生名簿の進路欄にやたらと空白が目に付くような状況が生まれていて、これは単に就職難ということだけでなく、青年問題、今後の日本の将来にかかわる問題ではないかと。  ですから、経済の立て直しやあるいは雇用ルールの確立と同時に、やむを得ず就職浪人になってしまっている人に対する無料の職業訓練や訓練中の手当支給、それから採用企業への補助金制度などの緊急対策が必要じゃないかと、こういうような声も伺っているところです。  また、日本青年団協議会の青年の労働実態に関するアンケートというのが二〇〇〇年にあるんですが、やはりこの間、サービス残業がどんどん増えていて、地域の青年、特にここは割と小さな事業所の労働者が多いということですけれども、労働状況が悪くなっていると。おかしいとは思っていても一人では何もできないで、結果的に現状維持という状況になっているということが今後の課題ではないかということなども言われております。  私も、少子化の問題をずっと研究、さきのこの調査会でもさせていただいていたんですが、青年の自立、つまり家庭を持つ以前に、まず、高校を卒業する段の十八歳以降、欧米などにも調査に行きましたけれども、自立するというのが当たり前になっているんですが、日本では、まず暮らしていくこと自身が自立できない状況で、仕事の中身も、高校時代のアルバイトをそのまま続けているとか、不安定な雇用になっているということですので、やはり今後の日本経済や技術の発展を考えたときに、若いころから技術や技能を習得して、それを積み重ねていって、やはり日本の未来を担っていく、そういうシステムを真剣に考えていく時期に、就職難が一〇%という状況の中で考えていく必要があるのではないかと思うんですが、今後の課題について御意見があれば伺いたいと思います。
  65. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) ただいまの御質問でございますけれども、私自身も、若年の失業者の問題というのは非常に深刻な問題だと思っています。  というのは、今の日本を見た場合に、実は七〇年代後半から八〇年代、九〇年代初頭ぐらい、前半ぐらいまで、失業問題苦労したヨーロッパの経験というのは非常にやっぱり参考になると思っています。  ヨーロッパも、当初は、最初のきっかけは、例えば七〇年代であれば石油危機、八〇年代では大きなマクロショックでの失業率の上昇というのが、これが非常に構造的な失業に変化してきました。そうした過程の中で、やっぱり若年の失業者が非常に増えると。一度若年の失業者が増えてくると、そういう若年の方はやっぱり技術やそういうのは持っていませんから、なかなかすぐまた就職するということができないわけですよ。そうすると、どんどんどんどんそういう状況が続いていくとますます就職できなくなるという、いわゆる悪循環にはまるわけですよね。それで、失業者の中でも長期失業者の割合が非常に増えていくと。これがヨーロッパの失業問題の非常に本質的な部分を占めておりました。  やっぱり日本の今の状況を見ると、最初は循環的な、景気循環的なということがいろいろ言われたんですけれども、これだけ低迷が続いていくと、やはりかつてのヨーロッパみたいに失業というものが構造化していくと。全くやっぱり同じような状況ですね。若年の失業者とか、それから失業期間が長期化するという、ヨーロッパほどではないですけれども、似たような状況が出てきているということで、やっぱりこれは非常に本当に重要な問題だと思います。  その裏で、もちろん保護されている、結局、入口が切られて中で雇用されている人、いわゆるインサイダーと言われている人たちが保護されていると、これもヨーロッパの状況と非常に似ているわけでございますけれども。その代わり、アウトサイダーの人たちが非常に割を食っている、特に若年の人たちがということで、非常にやっぱりよく似た状況が発生していると。  これは真剣にやっぱり受けとめてしていかないと、先ほどの教育の問題とともに、これがやっぱり日本の本当に二十年後、三十年後を含めて、本当に決定していきかねない大きな要因になると思いますので、これは、先生の御指摘どおり、非常に注視して、やっぱり政策的にいろいろ考えていかなきゃいけない問題だと思っています。
  66. 高橋進

    参考人高橋進君) 若年の、青年の就職難ということについては、私は、自発的失業と非自発的失業と両方に分けて考える必要があると思います。  非自発的失業につきましては、やはり長年にわたる経済停滞が失業率の増加をもたらしている、それがやっぱり青年、若年層にも跳ね返ってきているということだと思います。とりわけ日本の場合には、学校を出てやはり会社に入るということができませんと、はなからもう既に職業訓練を受けられない、結局会社で訓練するわけですから、ということになってしまうので、長期にわたる無職の状況、それからスキルを身に付けられないという状況になってしまうと思いますので、そういう意味で、私は、職業訓練ということについて広く考えて、単に訓練するだけではなくて、それから職業を紹介する事業、それからあとは、訓練を受けて一人前になるまでの間の生活保障、そこまで含めて総合的な広い意味での職業訓練といいますか、そういう仕組みを作っていくと。今、失業対策といいますと、自治体の雇用の拡大とかそういうことに金が使われがちですが、長い目で見た職業訓練というところに金をもっと使っていく必要があるのではないかというふうに思います。  それからもう一つは、やはり労働経済が多様化していきますので、私は、パートだとかそういう非正社員型の生活の仕方というのも、これはある程度多様化していく中で認めてあげないといけない。  したがいまして、やっぱりそういう人たち、非正社員あるいは非組合員、パート、こういう人たちが正社員に比べて不利な扱いを受けない、それこそ労働の問題、労働強化だとか事案とかということになると思いますので、組織率が低下していく中で非組合員の人たち、非正社員の人たちについても同じ待遇が受けられるような仕組みを作っていくということが必要だと思います。  ただ、基本的には、やはり経済停滞ということが非常に大きいと思います。長期的には日本は労働不足ということが言われているにもかかわらずそれだけ高いということで、やはり非自発的失業につきましては経済停滞ということがそもそもの原因ですので、これをどう克服するか、デフレをどう克服するかということだと思います。  それから、若年層、青年の場合には自発的な失業が大きいということが非常に、ある意味では、非自発的なもの以上に私は問題ではないかという気がいたします。  なぜ彼らは仕事を見付けられないのかということなんですが、当然のことながら、社会の中で非常に高度な教育を受けた人たちというのは簡単に仕事が見付かると。ところが、高卒であるとか普通の人たちにとってはなかなか仕事を見付けられない、自分の気に入る仕事がないということで、そういう人たちを、あなた方は三Kの仕事に就きなさいというふうに強いることはもうできないと思うんですね。三Kの職場というのはどんどんアジアに流れていきますし、あなたは例えば学力が低いからとか高度の教育を受けていないからこういう仕事をしなさいということ自体が、そもそも今の日本社会がそうなっていますので、おかしいと。  私は、やっぱり今の青年、若年というのは豊かな社会の申し子だと思います。彼らが本当にやりたい仕事というのが今ないというところが問題なんじゃないかと。  例えば、意外と若い人たち、高卒なんかの人たちに聞くと、介護とか看護だとか教育の現場、自分たちが子供でありながら更に子供を教えるというようなことに対して非常に情熱を感じたり意義を感じている。ということは、逆に言うと、製造業ではなくて非製造業、サービス業あるいは日本が豊かな社会になるために必要な新しい雇用とか労働力、そこにそういう今の豊かな社会の申し子たちを就けてあげるということが必要なんで、決して三Kをやらせるということではない。  そういう意味では、やはりサービスの担い手といいますか、個人向け、企業向けのサービスの担い手として彼らを育てていくということが必要だと思いますので、そういう意味も含めて、いかに非製造業を大きくしていくかと。そこで全く新しいタイプの職場を作ってあげて彼らを満足させるということが非自発的失業を落とすという意味で必要なんではないかと思います。  それから、それは積極的な意味ですが、あと、消極的な意味でいえば、私はやっぱり日本の労働意欲、労働価値観というのが非常に落ちてしまっているということが問題で、これはやっぱり教育あるいはコミュニティーの問題に帰すると思います。  せんだってもあるテレビの番組で、中国の子供たちが非常に労働意欲が高いと。結局彼らは、やっぱり数十年前の日本と同じで、数が多いがゆえに非常に競争して勝たなければ自分は豊かになれないんだという意識を持っていると。ところが、日本の学生たちを中国の工場に連れていって体験させると、彼らの考え方ががらっと変わると。やっぱりいかに日本自分たちが甘やかされていたかということを実感すると、そういうツアーまであるそうでございまして、私は、そういう意味でやっぱり日本の労働意欲、価値観というのが教育のせいもあって、あるいは豊かさのゆえに落ちてしまっていると。やっぱりこれを変えていくための教育なりコミュニティーの在り方というのが別途問われるのではないかというふうに思います。  以上でございます。
  67. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 小さいながらも雇い入れる側の人の考えなんですけれども、まず、高校生を対象とした求職が減っているというのはもう理由一つだけありまして、やはりうちみたいな小さな会社ですと一回入ってきていただいた人はずっといてほしいというふうに思っております。というのは、高校生ですと、今ずっと皆さんおっしゃっているように、まだ技術を持っていませんのでこちらで教えるわけです。教えたと思ったら大体二年ぐらいで皆さん辞めていきますから、うちの会社が職業訓練校みたいな形になると。やっぱり高校生の離職率というのが非常に高いものですから、なかなか雇い入れる側としては高校生は採りにくいというのが実態でございます。  あと、高校生につきましては、大体高校を出るとサービス業か若しくは製造業ということになってまいりますので、今現在その業種、例えば製造業一つ取りましても、大きい会社であればあるほど、銀行の融資に行きますと、まずリストラ何人という話から入る。人を辞めさせなければ銀行からの融資が受けられないというのが現実問題です。これがそもそもの問題で、そうしないと銀行から融資を受けられないんですから、もう人を減らすしかない、雇い入れないという現実問題があります。  あともう一点。やはり先ほど高橋参考人さんがおっしゃいましたように、やはり教育というのは一つ大きなものがありまして、先ほど私も言いましたように、髪の毛が染まった高校生がいる、ピアスした高校生がいる。大体皆さんインタビューすると、今しかできないからやると。それが一番おかしなもので、今の、今というのは、中学、高校生というのは親の保護下にあるわけですから、当然自分で稼いでいるわけじゃないんですから自分で言うことは甚だおかしいというのが我々の考えでございます。その時期に、今しかできないというその甘えた考えを学生が持つということ自体の社会風潮というのは、私どもはやっぱりそのとおり納得できないかなと。  どうしてもそういったことを考えますと、まずやることというのは、果たして本当に我々が人を雇ってほしいと皆さんが思われているのであれば、今言った銀行の問題、そして人を一人雇うということに対してまた税金が掛かる外形標準課税を導入しろなんという、甚だ私どもにしてみれば本当に雇えと言っているのかなと取ってしまいたくなるような政策が多々出てまいります。そういうことを、まず我々が本当に、今まで私どもはできるだけ人を雇わずに自分が動いた分だけが会社の利益だと思ってやってきましたけれども、地域活性化を考えるとどうしても雇用を考えなきゃいけないというふうに今方向転換を我々もしているんです。だから、方向転換しやすいような状況を是非作っていただきたいなと思っております。  以上です。
  68. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 三人の皆さん、どうもありがとうございました。
  69. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男でございます。  三人の参考人の皆さんに、まず共通しての質問といいますか御意見を伺いたいと思うことがあります。  一つは、先ほども話の中で出てまいりましたが、シャッター通りあるいは歯抜け商店街というようなことで、町の中心商店街が大変厳しい状況にあるということであります。  ただ、私考えますと、少子高齢化がどんどん進んでいくと、やはり車社会でドーナツ形で外に発展してまちづくりが外に伸びているわけですが、逆に今度は歩いて暮らせるまちづくりがどうしても必要になってくると。高齢者、車を運転できない方も多くなってくるのではないかと。そういう意味でまた、商店街といいますか町の中に人々が集まって暮らすような方向にベクトルが変わってくるのではないかと、そういうふうに思うわけですが、その点についてのお考えと、それからもしそういう方向に流れるのであれば、前もって私たちがそういう考え方の下でまたまちづくりをする、あるいはまちおこしをしていくということも必要になってくるのかと思うんですが、その点に関して、三人の参考人の皆さんから御意見をいただければと思います。
  70. 鶴光太郎

    参考人鶴光太郎君) 商店街の件でございますけれども、私は港区に住んでおりますもので、例えば麻布十番の商店街とか武蔵小山の商店街とか非常に近いので時々参ったりいたします。非常にユニークな商店街というか、一つ一つのお店がかなり個性を持っております。そこに行かないとこのお店はないなという個性が光る商店街がうまく集まっていると。やはりそれは、それ以外のお店は昔ながらのお店も若干混じっておりますけれども、やはりそこに行きたいなという感じがします。私なんかも参りますと、やはり何となく心が和むというか、それは大きな、例えば何階建ての大型スーパーに行って、確かに買物、必要な物は全部買いそろえられるという面では非常に便利でございますけれども、何となく買物をしても余り安らぎがないというか、非常に俗な言い方をして恐縮なんですけれども。  そうすると、やっぱり商店街というものの機能というか魅力、それはこれまでの私が申し上げた話と全く同じで、やっぱり一つの、個々の例えば商店一つ一つ企業と考えて、それが集積していると。全体としていかに魅力のある物を本当に提供していくか、みんなそこに来るだけの物を提供できるかという、これも本当にやっぱり知恵比べだと思うんですよね。  それで、必ずしも商店街、もちろんある意味で古いビジネスモデルだと思いますけれども、それでもやはり成功しているところはあると。そういうところの経験なんかを見ていけばもちろん再生できる、再生したまた商店街の例も聞いたことがあります。だから、そこはやっぱりみんな共通した問題というのをはらんでいるのではないのかなと。  やはり、これまでと同じやり方で、それで持っていこうということだけで考えておればやはり地盤沈下は避けられないなと。しかし、アイデア次第で幾らでも再生できるというのは、やはりいろんな例が示しているんじゃないでしょうか。  だから、新しい商店街のモデル、商店街という考え方自体は古い考え方かもしれませんけれども、幾らでも新しくなれるんじゃないかなという考えを持っております。
  71. 高橋進

    参考人高橋進君) 御指摘のとおり、高齢化社会になりますと、私は町の考え、町の概念そのものがまた変わるというふうに思います。  おっしゃるように、今はドーナツ化現象が進んでいますが、むしろこれから先はやはり町というものをもう一回見直して、町全体を例えばバリアフリーにするとか、あるいは新しい公共交通手段を考えていくとか、そういう話になっていくと思います。そういう中で、例えば高齢者の方々が半日掛けてショッピングをしたり散策したり人生を楽しんでいく、そういう社会、私はそれはスローソサエティーじゃないかと思うんですけれども、そういうものを支えるインフラづくりということにまちづくりがなるんじゃないかというふうに思います。  例えば、よく地方で、そういうまちづくりが成功している例、成功していない例、随分ございますけれども、私が最近伺った中では、やっぱり長野の小布施ですか、あそこはかなり成功しているんじゃないかと思います。コンセプトの中にそんなにハイテクなものは何もないと思うんですね。クリであり伝統産業であり蔵であり、あるいは昔の画家でありと、そういう古いものばかりの組合せなんですが、しかし非常にビジネスモデルとして成功しているというふうに思いますので、私はやっぱり作りようがあるのではないかと。  そういう観点から見ますと、私懸念されますのはむしろ東京でございまして、東京でまた近郊から二十三区内に、特に高齢者の方のまた再流入が進んでいますけれども、そういう中で汐留だとか新しい地域の開発が進んでいますけれども、これというのは、結局再開発ではございますけれども、果たしてどこまで拠点開発とかまちづくりという概念があるんだろうかという意味では非常に疑問でございまして、何の脈絡もなく地域の中でビルが建っていくと、結果的にそこが本当に整合性のある町になればいいんですけれども、そうではなくて単なる再開発で人口集積に変わるだけではないのかと。  例えば汐留のような地域であれば、非常に狭い地域ですから、それこそ銀座なり横浜なりとの役割分担であるとか連携だとかそういうことまで含めて地域づくりを考えるべきだと思うんですが、そういう発想が余りないように思いますので、私は、都市の再生ということがまちづくりということでまた言われていますが、逆にハードづくりに偏重した再開発をしますと同じことの繰り返しなのではないかという懸念を持っております。  以上でございます。
  72. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 商店街問題につきましては、本当に私もこの数年一生懸命頑張ってやっているつもりなんですけれども、なかなか難しくて。シャッター通りと言われるのはまだいい方で、最近は駐車場通りと言われまして、店を壊してもう駐車場になっているという現実問題がございます。  まず、商店街を活性化するに当たりまして一番のネックだというのが、商店街というのは基本的に人が住んでいるんです。となると、御商売をやめても、下は空いているんですけれども二階にお住まいになっていますからなかなか貸し出すにも非常に難しいということがありまして、なかなか次にたな子が入るというのは現実問題難しいと。そういったのがまず第一点あると。  あと、商店街におきましてなぜ人が流れないか。それはもうはっきりしたことで、肉屋さんはあるんですよ、魚屋さんがないんです。肉、魚、野菜と言われるスーパーのもとであるその生鮮三品、これがあるところに人は流れるんです。うちみたいなお菓子屋なんというのは人は来ないんです、お菓子買いには。それは生鮮三品をそろえない限り人が流れるわけがなくて、これは変な話、僕、公的な資金使って何でもこの生鮮三品を商店街の真ん中に、いいところにどんどんどんと設ければ、ある種、人は流れると私は信じております。非常に、人が流れる方向に持っていけるような形で考えれば、私はある程度のものは期待できるんではなかろうかなと。やっぱり、本当に女性の方が多いですけれども、生鮮三品を買いに皆さんは移動します。毎日人が動こうと思ったら、そういうものを用意しなきゃ駄目だと思っています。商店街にはないということをまず理解していただきたいと思います。  以上です。
  73. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 高橋参考人の方からまたスローソサエティーのお話が出たんですが、こういうスローソサエティーという考え方の前に、僕らはシンプルライフというような、そういう標語といいますかを聞いていたわけですけれども、文明社会で煩雑ないろいろな機器類あるいは文明社会の製品に囲まれた生活よりも、もっと自然に囲まれて、シンプルという意味はいろいろあると思うんですけれども、自然の中で生活するようなことの方がもっと価値があるんじゃないか、生きがいがあるんじゃないかということでシンプルライフというような考え方が提示されたことがありますが、そういうものとこのスローソサエティーというのはどういうふうに違うのか。  例えば、ファストフードに対してスローフードあるいは有機農業等であると。逆に有機農業等だと、いろいろな苦労といいますか、作る苦労が多くなるんじゃないかなと思いますが、そういう意味では単純にシンプルとは言えないのかもしれませんけれども、やはり少し、シンプルライフを求める価値観とスローフード、スローソサエティーというのは少し考え方、共通のものもありますが、考え方で変わってきているものもあるかもしれないということで、その点に関して高橋進参考人にお伺いをしたいと思います。
  74. 高橋進

    参考人高橋進君) 定義上どう違うかというのは私もはっきり分かりませんが、ただ、スローというのはやはりファストに対抗する概念で出てきていると思います。  スローということとシンプルということとつながる面というのは多々あると思うんですけれども、ただ、恐らくスローソサエティーというのは途上国だとか発展途上の国では多分成り立たないお話なんではないかと。シンプルというのは途上国でもあり得ると思うんですけれども、スローというのは、恐らく高度な文明だとか高度の生産力だとか、そういうものに支えられた社会なんだろうと思います。そういう意味では、非常に高度でございますので、物事が非常に複雑でございますし、いろんな組み合わせになっていると。しかしながら、そういう組み合わせを覚悟した上でそれを克服してやっていくということなんではないかと。  例えば、正に今お話しになった有機農業なんかも、そこまで手間暇掛けてやらなくちゃいけないのかと。だけれども、その手間暇掛けることによって人間は安心できるわけですし、そこに価値観が生まれてくるわけですから、したがって、必要なところには手間暇掛けるんだと、決して金と時間の問題ではないと、それで解決できないんだと、手間暇掛けなければ駄目なんだと。それが許されるのも、片や非常に高度な大量生産の技術があるからそういうことができるわけでございまして、そういう意味で、私は、スローソサエティーというのはある意味で高度な社会、高度な消費社会の次に来るものではないかというふうに考えております。  一方で、シンプルというのは、高度な社会でなくてもシンプルというのはあり得るのかなと。別に高度な社会の場合はシンプルでないとは申しませんけれども、感覚的にはそんな感じがいたしますけれども。
  75. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 もう一問だけ古泉参考人にお伺いしたいんですが、先ほどコミュニティービジネスということでお話ありました。介護分野なんかでは結構今盛んになっていると思うんですが、やはり環境ビジネスを地域でやるというのは、なかなか採算が合わないというようなこともあって、みんなの気持ち、思いよりは意外と進んでいないなという思いがありますが、そういう意味で、これから環境ビジネスを地域のコミュニティーで進める場合に何か参考になるような点ございましたらお伺いをしたいと思います。
  76. 古泉幸一

    参考人古泉幸一君) 環境というのが、実は私ども環境パル21というNPO法人を作っておるんですけれども、これは実は兄貴分が二ついまして、当初話が出ました群馬県伊勢崎市の環境ネット21、もう一つが山形県米沢市の環境フォーラム21というのがございます。これは独自に、例えばこういった産物を作っておるんですけれども、環境に配慮したとにかくやり方をすべて考えていこうと。  例えば、この瓶に関しましても、今、全部違う瓶を使っていますけれども、今後はリサイクル可能な瓶の統一に今切り替えを、来年から図っていこうとか、あと、堆肥の問題で、とにかくせめて家庭から出る生ごみをごみとして処分しないような形にしようということを今やっておりまして、各家庭にお願いをしまして、生ごみだけ、食料品の生ごみだけを別個に置いておいていただきまして、国の緊急雇用政策お願いをした方を各家庭二日に一遍ぐらい回らせていただきまして、それを堆肥にしてもう一回市民に無料で提供するという事業もやっております。  そして、我々の環境に配慮したという一つの目的は、もうそれだけにかかわらず、何とか循環型の社会をとにかく持ち入れていかないと、先ほどの古紙リサイクルもそうなんですけれども、絶対日本は途中でおかしくなると。  皆さん方が、果たして家庭のごみを皆さんは捨てていらっしゃるかどうか分からないですけれども、これは生活をしているとごみ捨て一つにも非常なヒントが一杯あるわけです。うちの新潟では今、八分別というやり方をやっておりますけれども、この八分別がなかなか非常に大変で、これも我々の今ビジネスになるだろうと。当然、各ごみステーションで燃えるごみの日に燃えないごみを捨てられる方もいらっしゃいますから、それがだんだんだんだんたまっていくわけですね。そういったものを我々が今度独自に集めて分別をしてリサイクルに回すと。もうペットボトルや缶というのはもう当たり前の話で、それ以外のやつも、できるだけごみの量を減らすという一つの観点を持ちますと、なかなか面白いようにそれが減っていくというのが実情で、まず量を減らそうという、本当に単純な発想から今環境に取り組んでおります。  以上です。
  77. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ありがとうございました。
  78. 勝木健司

    会長勝木健司君) 他に御発言はございませんか。  それでは、以上をもちまして参考人に対する質疑を終了いたします。  鶴参考人高橋参考人古泉参考人には、御多用の中、本調査会に御出席をいただき、本当にありがとうございました。  本日お述べいただきました貴重な御意見は今後の調査参考にさせていただきたいと思います。本調査会を代表して厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会