○木島
委員 真っ正面からの
答弁になっていないわけでありますが、私は、ハンセン病の熊本地裁判決が出たときにも、
法務大臣にも厚労
大臣にも、決してこれは控訴すべきではないと再三にわたって
法務委員会で
質問をいたしました。もう時間が大変限られておりますし、この提案されている
心神喪失等医療観察
法案についての審議も大変大事でありますからこれ以上
質問いたしませんが、ぜひ、もう上告しない、そういう決断をされることを重ねて要望しておきます。
こういう事件は
法務大臣が国の代理人という立場になるわけでありまして、ハンセン病のときもそうでしたが、あのときは、厚労
大臣は控訴しないという気持ちにずっと傾いておりましたが、最後までなかなかそういう立場に立ち切れなかったのは、残念ながら、
法務省の
森山法務大臣だったと私はお見受けしていますので、決してそういう立場をとられないように、これは要望だけしておきたいと思います。
そこで、
法案に関して
質問をいたします。
私からも、本
法案はまだ審議が尽くされていないと。特に、本
政府提出法案、
修正案が出ておりますけれども、我が国の大変貧困な精神
医療、福祉、保健、この根本にかかわる
法案であります。
そして、不幸にして他
害行為を行ってしまった
心神喪失者等に対する処遇をどうするか。現行法では
精神保健福祉法の
措置入院制度しかありません。全くない仕組みを導入するという
法案であります。再三、
答弁の中で刑事手続ではないとおっしゃっています。確かに刑事事件ではありません。審判という、これが裁判なのか行政
処分なのか、非常にあいまいな分野でありますが、裁判官とお医者さんとがかかわって
対象者を
治療処分に付する。
治療処分に付しますと身体が拘束されるわけであります。
通院治療処分の場合は、
通院が義務づけられ、日常監視される。まさに人権の根幹にかかわる
法案であります。それだけに、私は、疑問が一点でも残るような
状態のまま審議を終結させてはならぬと思うんです。
修正案が、特にこの審判の基本的な
要件、
再犯のおそれという問題が厳しく
指摘をされ、その言葉を
削除しました。
修正者は逃げたわけです。逃げて、その行政
処分、審判の
要件、一番根幹、キーワードの部分を、この
法律による
医療が必要な場合、そういう
要件に切りかえていったわけですね。全く一般的な、抽象的な概念です。
そして、その抽象的な概念の上に、私はきょうはもう繰り返すことをやめますが、修飾語をつけたわけでしょう。
医療が必要だ、再び同じような重大な他
害行為が起きないように、そして、
対象者を早期に
社会復帰させる、そういうためという
目的をつくって、そういう非常に長い三つの
目的のため、あなた方は二つと言っておりますが、この
法律による
治療が必要となった場合、それが
要件なんですね、この重大な
入院措置、
入院処分、
通院処分ができるというふうにつくりかえていったわけであります。
私、もう先日やりましたから繰り返しませんが、本当に、読み方によって、限定されるのか、逆に拡大されてしまうのか、法の縛りがかかっているのか、外されたのか、全く説得ある
答弁がなされないまま、きょうも同僚
委員からの質疑が続いておりましたが、審議打ち切りというのは暴挙だということを厳しく
指摘しておきたいと思っております。
それだけではなくて、この
法案を審議する土台が非常に大事だ。我が国の精神
医療全体がどうなのか、我が国の
措置入院制度がどうなのか、そういうところがほとんど審議が尽くされておりませんので、きょうは私は、質疑時間の許す限り、そういう大きな視野で我が国の全体の精神
医療、福祉、保健について
質問をしてみたいと思っております。
重大な他
害行為を行った
精神障害者に対してどのように処遇するかについて意見が分裂しております。立場や見方によって違いがあることが、さきの通常
国会以来、今臨時
国会でも審議を通じて明らかになりました。しかし、我が国の共通した認識に到達してきていると私は思います。それは何かといいますと、我が国の精神
医療は欧米に比べて非常に大きな立ちおくれがあること、そして、加害者となった
精神障害者に対して万全の
医療と
社会復帰のための対策を講じて、同人による事件の再発を防ぐための対策が必要である。どういう対策が必要であるかについては立場によってさまざまな違いがあって、それが激しく激突していると思うんですが、いずれにしろそういう対策が必要だという大きなベースでは、私は認識が共通してきていると思うんです。
そこで、私は、どういう処遇をすべきかについて意見が分裂するのはなぜかと突き詰めていきますと、その意見の違いの背景、要因の最大のものは、何といっても、繰り返しになってしまうんですが、現在の日本の精神
医療の貧困にある。そこが貧困だから、そこになかなか手をつけようとしない、手をつけたように見られない、だからこそ、具体的な処遇についてのあり方について意見が分裂してくるんだろうと思うわけであります。
ですから、まずこの点について、最初に坂口厚労
大臣にお聞きしたいと思うんです。
欧米と比較いたしまして、我が国の精神
医療の最大の特徴は何かといったら、私は、
入院中心
医療になっているということではないかと思います。
数字を挙げてみたいと思います。一九六〇年、七〇年、八〇年、九〇年、節目の年の人口一万人当たりの年次精神病床数の推移を見ても、これは明らかに浮き彫りになるんですね。もう御案内のとおりです。
我が国はどうなっているか。六〇年を出発点にして七〇、八〇、九〇と言いますと、十・一、それが二十三・八になり、二十六・三になり、そして九〇年には二十九。増大の一途を続けております。
これに対して、欧米先進国はどうか。
アメリカは、六〇年が四十、七〇年が二十五・九、八〇年が九・四、九〇年が何と六・四。急速に、
入院で閉じ込めるという
医療から地域に戻して開放するという
医療に見事に変わっています。
イギリスはどうか。六〇年の
資料がないんですが、七〇年が二十五・六、八〇年が十八・六、九〇年は十三・二。ずっと減ってきています。
旧西ドイツはどうか。六〇年、九・六、これはちょっと変化があるんですが、七〇年には二十・四になりましたが、八〇年に十九・七、九〇年には十六・五。やはり地域開放
医療の方向に向かって進んできているわけであります。
こういう余りにも対照的な
数字が出てきているというのはなぜか。私は、明らかに、国が
入院中心の政策、そして地域精神
医療、福祉、保健対策の後回し、地域ケアの後回し、そういう政策をとり続けてきた結果だと言わざるを得ないと思うんですが、このことを
厚生労働大臣はお認めになりますか。
そして、今まさにこの転換こそが求められていると思うんです。なぜ、日本では精神
医療の中心が
入院から地域
医療へ、そういう根本的転換ができないのか、那辺にその根本的要因があるのか、これは篤と
厚生労働大臣の御所見を賜りたいと思うんです。