○笹島
参考人 おはようございます。
日本弁理士会会長の
笹島富二雄でございます。
本日は、
参考人としてお招きいただきまして、
日本弁理士会から
意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
それでは、
日本弁理士会の見解を表明させていただきます。
日本弁理士会は、
知的財産基本法案を支持し、本
基本法案が
早期に成立することを強く希望いたします。
その理由と申しますと、
小泉首相を座長とする
知的財産戦略会議は、本年七月三日に
知的財産戦略大綱を策定されました。今後、
我が国の
国富の源泉となる
知的財産のあらゆる面での
環境整備に向けた
改革断行が必要でありまして、この
改革が二十一世紀型の文明構築に向けた国家的
事業であると宣明をされました。そして、
知的財産立国の実現に向け、具体的な
改革工程を付して、太い道筋を示されました。本
基本法案は、この
戦略大綱の高らかな精神にのっとっておりまして、必要にして十分な
内容であると高く評価する次第でございます。
とりわけ、
知的財産の定義を
我が国で初めて明らかにした
意義は深いものがあります。また、基本
理念として、国民経済の健全な
発展、豊かな文化の
創造、
我が国産業の
国際競争力強化と持続的
発展を図るための
知的財産に関する基本的
施策が十分に唱えられていると考えます。また、国、
地方公共団体、
大学、
事業者等の
責務を明らかにしまして、その連携
強化が唱えられていることは大いに評価できるものであります。
法案は、続いて、基本的な
施策を定め、
知的財産基本法のもとで具体的な
目標と達成時期を定める
知的財産推進計画を作成しまして、これを推進するための
知的財産戦略本部を
設置するといった取り組み方も明示しております。
短期間にここまで本
基本法案を取りまとめてこられた
知的財産基本法準備室ほか関係者の皆様に衷心より敬意を表するものでございます。
ところで、
戦略大綱策定後も
我が国経済
社会の
環境は必ずしも芳しからず、また、科学技術の面では、
我が国への大いなる勇気づけとなりました小柴、田中両氏のノーベル賞受賞にちなんでは、
発明者保護のあり方が議論され、あるいは、
我が国の小中学校における理数科
教育が欧米との比較の上で低位にあるという統計も明らかになりまして、
知的財産の柱となる科学技術の未来への警鐘も示されております。さらには、中国におきましては明年春に
世界の
知的財産関連の首脳
会議が開催
予定でありまして、ここで
知的財産専門家の
強化策も打ち出されると聞いております。
したがいまして、
戦略大綱で示された道筋の実現に一刻の猶予も許されないのが
我が国の現状であると考えます。本
基本法案が今臨時国会においてぜひとも
早期に成立されるよう、国
会議員の
先生方の絶大なる御協力をお願い申し上げますとともに、関係官庁の皆様の今後の積極的な取り組みに期待申し上げる次第でございます。
ここで、
戦略大綱の精神に沿った
日本弁理士会の対応につきまして述べさせていただきます。
弁理士は、知的
創造サイクルに一貫して関与することによりまして、
我が国の科学技術振興、
産業の
発展に貢献するという使命を有する
我が国唯一の
知的財産専門資格者でございます。本
基本法のもとで
弁理士はこの使命を存分に果たす国民の期待と責任を強く認識しておりまして、
戦略大綱の目指す国家的
事業の実現に向けて、日々奉仕の精神を持って協力することを惜しみません。
とりわけ、次のような
課題を例示させていただきまして、これらの
課題に積極的に取り組んでまいる所存であります。
まずもって第一番に、私ども
弁理士自身のサービス能力向上への取り組みを積極的に行います。
弁理士会
研修所を
改革し、
特許庁、
大学、
裁判所、
日弁連等の協力を得まして、知財
創造サイクル関係の知識、実務の習得、とりわけ先端科学技術分野、紛争解決、
知的財産ビジネスを含めた
弁理士の能力の
拡充と
知的財産の
研究活動を行います。あわせて、倫理意識の徹底も図ります。
第二に、
弁理士は国際的な
活動を特徴とする資格であります。したがいまして、国際協力への取り組みを
強化します。まず、日米欧の三極協力
体制への支援を図ります。また、中国の台頭を背景にしてもなお
我が国がアジアにおいて名誉ある地位を確保するための抜本的方策の確立に取り組みます。この
活動の一環として、東アジア地域における
弁理士制度の構築に向けて、現地への働きかけを強力に展開してまいります。また、
海外現地代理人団体との提携により
模倣品対策に取り組みます。
第三に、
権利利用・
活用への取り組みであります。設立が
検討されている
大学関連の
知的財産本部など、
大学に期待されている産学官連携などの
社会活動に
弁理士は従前以上に関与してまいります。また、
知的財産の経済的
価値評価組織の構築を図ります。
第四に、いかなる
制度もこれを動かすのは人であります。
日本弁理士会は、人材
育成を最も重要な
課題として取り組みます。専門職
大学院、
法科大学院など
知的財産関連人材
養成システムの基盤確立を
提言し推進してまいります。また、初等、中等
教育分野におきましては、
教育関係者のみならず、今や総力を挙げて国民全体の関与が必要となっているところ、
弁理士は母校に帰りまして、
教育者、
地方公共団体指導者、学生生徒に対して
知財教育の支援
活動を行うように努めます。
これら
弁理士の
活動を推進するため、
日本弁理士会は本年九月に
知的財産制度改革推進
会議を
設置いたしました。今後、この
会議は、
日本弁理士会が
知的財産の専門家集団であるという自覚と責任のもとにおいて、
我が国の
知的財産制度改革に対して積極的に取り組み、
提言や要望を取りまとめてまいります。
それでは、これらの
弁理士の
活動を効果的に行うために、本法案の御審議に際して、特に、次の
我が国の
知的財産専門家の
充実を考慮していただきたくお願い申し上げます。
第一は、本
基本法二十二条、人材の確保に関してでございますが、
知的財産専門家の
養成組織を構築していただきたいと思います。
知的財産に携わる者に求められる能力は、知財実務、技術、ビジネス、国際紛争等にかかわるあらゆる局面に的確に対応する必要があります。現在、設立が
検討されております
法科大学院あるいは専門職
大学院等におきます
知財教育のあり方等を含めて、
我が国の知財専門家を
養成するための総合的な取り組みが行われるよう強く希望いたします。
次に、
知財教育を
強化していただきたいと思います。
大綱の
理念を将来にわたって具現化するためには、小中学生に対しまして、科学の楽しさを知る
創造教育や知財に関する
教育をより一層行うことが不可欠です。少子化が叫ばれている昨今ではありますが、逆に、人口が多い
社会人から見れば、
教育する力は多くあります。
弁理士は専門家としてこの
教育に取り組みますので、御支援、御協力をお願いいたします。
それから、
特許庁における審査
体制の
強化を図るのが喫緊の
課題であると承知しております。
審査・審判の促進には、米国に劣らない
国家戦略的な審査・審判官の適正な増員を図ることが必要であります。この点、審査・審判官が増員にならなければ、迅速的確な審査・審判は期待できません。
次に、
弁理士の
侵害訴訟代理
制度への積極的な取り組みのさらなる支援をお願い申し上げます。
今回、この春に公布されました改正法で、
弁理士の特定
侵害訴訟代理が条件つきで認められました。
弁理士がこの特定
侵害訴訟代理を行うための能力担保
研修は来年から
実施する
予定ですが、初年度から実に千三百名の希望者がおりまして、今現在、その予備的基礎
研修として、全国九
大学の協力を得て、約八百名の法学基礎
研修を
実施しております。この
制度は、必ずや
我が国の
知的財産訴訟に大いに役立つことになると確信いたします。
弁理士の今後の
努力をお見守りください。
最後に、
我が国は、明治維新、大戦後に続く大きな
改革のときを迎えております。この中で、
政府は、
政治、経済構造等幾多の
改革を実行してまいりました。科学技術を
発展させ、知財を
活用することによって経済
産業を
発展させようとする今回の知財
改革は、将来、
我が国国民が明るく心豊かであり、
我が国が
世界の中で名誉ある地位を占められるような国づくりへのさまざまな取り組みの
一つとして位置づけられます。我々
弁理士も、専門とする知財に関する知見を用いて
我が国産業発展に尽力すべき覚悟でありますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
以上のような次第で、
日本弁理士会は、本
基本法案の一刻も早い成立を強く希望いたします。一刻も早く知財推進
本部を立ち上げ、早急に
我が国の
知的財産戦略を策定し、直ちにその実行に邁進していきたいと衷心より願うものであります。
以上、
日本弁理士会の思うところを述べさせていただきました。ありがとうございました。(
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