○
森本参考人 当
委員会に
参考人としてお招きいただき、大変光栄です。
時間が限られておりますので、
鈴木大使が当面する日朝
関係の外交あるいは
外交交渉の側面から
お話をされましたので、私は、特に
北朝鮮及び当面する日朝
関係を
日本の
安全保障という側面から、幾つかの点につき所見を述べてみたいと思います。
言うまでもなく、現在の
北朝鮮の金正日体制は、大変困難な
状況に直面しつつも、依然としてその体制の生き残りを最優先に掲げていろいろな
政策を進めているのではないかと
考えますが、その持っている性格からして、大変軍事力に依存した体質あるいは権力基盤というものを保持しながら体制生き残りを確保しようとしているのではないかと思います。
北朝鮮の核開発については、どのような動機でいつごろから始まったのかということについては必ずしも定かではありませんが、
推測するに、七〇年代の末、韓国朴政権が末期に韓国として
核開発計画を有していたことをアメリカが察知し、朴正熙大統領暗殺後に誕生した全斗煥政権を支援、
支持する見返りとして、韓国の
核開発計画を断念させた経緯があると
理解しています。これを
北朝鮮は素早く察知し、
北朝鮮としても韓国に対抗するため、特に経済的には、七〇年代、既に
北朝鮮は韓国経済に追いつかないということが明らかになっていた時点で、通常戦力のバランスを核開発という手段によって相殺するという方法を
北朝鮮としてはとったのではないかと
考えます。
もしこの推論が正しいとすれば、
北朝鮮の
核開発計画は八〇年代の初頭から始まったものであり、しかもそれは、
北朝鮮の現在の権力基盤とその体質からして、
北朝鮮の体制が生き残るために不可欠のプログラムであったに違いないと
考えます。
ところが、この
北朝鮮の
核開発計画をどこかの段階で察知したアメリカが、
情報を分析した結果、
北朝鮮に
核開発計画の放棄を迫り、
北朝鮮が九三年、NPTから脱退しようとして起きた米朝
交渉が、翌九四年十月、米朝枠組み
合意に達するまで、一度、九四年の五月から六月、国連安保理で必要な安保理決議が創案されたことがあり、それが我々の俗に言う
北朝鮮危機というものであったと
承知します。
この枠組み
合意は、
北朝鮮から見て今日どういう
意味を持っているかということは必ずしも定かではなく、依然として、
北朝鮮から見て、枠組み
合意の中で軽水炉の供与とそれから五十万トンの
重油の供与というのは
北朝鮮にとって魅力があるのか。あるいは、この計画そのものが今や魅力がないものになっており、したがって、プルトニウムではなく、ウラン型の核開発を進めることが
北朝鮮にとって何らか必要な
状況が出てきたということも
考えられます。
ということは、
北朝鮮は、いわばアメリカと
交渉するためのてこをつくるためにウラン型の
核開発計画を進めているのでは必ずしもなく、
北朝鮮の体制が生き残るために、いずれにしてもウラン型かプルトニウム型のいずれかの
核開発計画というものは不可欠な手段であるともし
考えているとすれば、これを放棄させるということはなかなか難しい手段になるのではないかと
考えます。
我々は、よく、
北朝鮮の
核開発計画というのは
交渉のてこに使う、あるいはつくるという理由で
説明をしますが、もしこの理屈が正しいとすれば、
交渉が成り立って
核開発計画を放棄する用意があるのかということについて、私の答えは、どうもそうではないのではないかと
考えます。
ミサイル開発についても同様で、外貨を獲得するために一連の
ミサイル開発を進めてきたという
説明は、すべての内容あるいは理由を
説明していることでは必ずしもなく、
北朝鮮としては、いずれにせよ、核兵器の開発計画と
ミサイルの開発というのは体制が生き残るために不可欠な手段であると
考えている節があると
考えます。
そうしますと、結局、今アメリカがイラクというものをどのようにするのかということはなかなか予断を許しませんし、これはイラクが安保理決議一四四一に基づく査察をどのように誠実に履行するかによりますが、仮にアメリカがイラクに将来軍事
行動を起こすということになった場合、これが
北朝鮮の
対応にどのような影響を与えるかということを
考えた場合、今回、KEDOのプロジェクトを一応は凍結し、
重油の供与並びに軽水炉の工事をストップさせるということが
北朝鮮の
対応にどういう影響を与えるかということを
考えた場合、
北朝鮮は、現在
かなり追い込まれて逃げ道のない状態になっているのではないかと
考えます。
したがって、この逃げ道のない
北朝鮮が、周りの国に、いわばおどかしといいますか威嚇をかけてくるのか、あるいはアメリカが
交渉のテーブルに着くまでじっと待つのか、その
北朝鮮の出方を我々は見きわめなければならないのですが、しかし、どちらの方法をとるにせよ、来年前半に北東アジアというものがある種の緊張
関係になるということは我々として十分に念頭に置く必要があり、その
意味において、将来においてイラクにいろいろな
協力をするという場合に、
日本の周辺を含む北東アジアの安全を同時にどのように確保しながら
日本が国際的な貢献をしていくかということをトータルで
考えなければならないという
状況に今日あるのではないかと思います。
したがって、
北朝鮮というものを
日本の
安全保障から
考えるときに、
北朝鮮だけを
考えるわけにはいかないわけで、アメリカがグローバルに進めようとしている大量破壊兵器の開発問題あるいはテロとの関連をトータルで勘案しながら
日本の
政策、
日本のあるべき方向というものを模索する必要があるのではないかと
考えます。
以上が、現時点で私が
北朝鮮の現在の政権の体質を
日本の
安全保障という側面から見た場合の問題提起でございます。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)