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水口参考人 おはようございます。ただいま紹介にあずかりました
水口でございます。本日は、こういう形で機会をいただきまして、大変光栄に思っております。
僣越ですが、お
手元に配付させていただきました書類に基づいて、少し私の
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、
結論から申し上げます。お二方の
参考人の方が非常に明確に、また細部にわたって御説明をしていただいておりますので、私はむしろ大局というか、マクロ的なところでこの問題についての
結論を出させていただければと思っております。
ありきたりの
結論になってしまうんですけれども、グローバル化されていく
国際社会の中で、
国家の
枠組みや
既存の
国際法、
既存の
国連憲章等において、
秩序とかそういうもので
対処できない
状況が起きています。こういう問題をどういうふうに考えるかというところが非常に大きな問題になっていくわけですけれども、やはり
国際協調という形で第三の道というものを今このとき考えなければいけないのではないかということが私の
結論になります。
では、お
手元にあるテーマについて、紙に沿って少し
お話をさせていただきます。
まず一番初めの
テロへの
対応の
姿勢ということで、
二つの項目を列挙させていただいております。
これは、先般
社会学学会の方で
議論されたものでございまして、一のところは、むしろ理想という
社会を描くことによって、そういうものを描き続けることによって
テロはなくなるんではないかというような、割と理想主義的な発想をした
議論だと思います。二番目のところが、
現実というものに即し、
テロは壊滅しないんだ、少しずつ減っていくだけだ、そのためには、その都度その都度、実際的な効果を上げる
政策をとらなければいけないんだ、こういうような形の
議論が
学会ではなされています。
両方、非常に重要なことだと思います。長期的な展望、そして短期的な
対応というものを
両方とも書き切っているんだと思います。
では、なぜ
テロというものが今こういう中で注目されているのかということで、その二のところをごらんいただければと思います。
御案内のとおり、既に
近代国家というものが達成されたところ、それから
発展途上国というところ、そして、そういう
近代化にも及ばないというような
状況、また、
近代化をなし得ても、そのものが現在
統治できていないというような状態の
国家、このような
三つのグループに現在の
国際社会は分かれていると思います。むしろ二の、
近代化推進国家というんでしょうか、そういうものを描いている以下の国の方が多いと思いますね。
こういう中で起こってくる
脅威というのは、
近代国家として建設されたり、または
推進をする
国家の間では、
戦争というような形、国と国という既成の、ある
程度の
秩序というものが働く
部分で
ルールはつくられ、また
対応できるわけですけれども、
テロというような形、
国家というものの
枠組みが見えない、そういう
組織から起こる
脅威というのは、やはり国の
ルール、それから
既存のものでは
対応できない。正対称の
戦争とかいう表現になっておりますけれども、そういうものに対して、
近代国家を建設した国々はどういうふうな
対応をしていくのかという問題が出てきているわけです。
主権ということを
主張するならば、それに応じて、少なくとも
義務があるんだということだと思います。
内政不干渉というならば、少なくとも
自分の国の中で
テロ組織その他をしっかりとした
統治をするということが大事なことだと思います。そういうものができない限り、では
国際社会は、その
体制に対して変革を求めるということが常識としてあるのではないかという
議論が今起こっているわけです。
次に、三番のところで、それをちょっと見ていきたいと思います。
過去、歴史的に見ますと、その
統治ができない
国家に対しての
対応、
国際社会は
三つのものしか行っておりません。
一つとしては、三無主義というか、無関心、無視、無
行動というようなことです。この結果として、あのルワンダの大虐殺が起こっているわけです。そして、今回
アフガニスタンで見るように、二番目のところとして、
軍事介入という形で
一つの
正当性をつくる
努力がなされたというのもあります。もう
一つが、北朝鮮等で見られるように、赤十字等を通しながら食糧援助をし、人道介入という形でその破綻
国家を救っていくというような形が見られるわけです。
だから、ここで出てくる問題として、
既存の主権
国家というもののつくっていく国際
秩序、規範、そういうものでは
対処できないということがある。ここは先ほど申し上げたようなところの繰り返しになりますが、この点は押さえていきたいと思います。
そして、現状として
サダム・
フセイン体制というものをどう見るかということになるんですけれども、やはり先ほど
大野参考人からも御指摘がありましたように、
イラクという国のある
部分しかその
統治権が及んでおりません。北緯三十六度以北のクルド地域においては自治区ができている。それから、三十三度以南のシーア派地域においての支配権は衰退しているというような状態です。そしてさらに、スンニ派の中心部においても、ティクリティーという
サダムが出身している一族の血縁による支配であって、これは民主主義ではありません。
こういうような状態が起こる破綻
国家において、どのような危険が
国際社会の中で起こったかというと、過去の事例を見ますと、実は隣国というものを二回も侵略しています。イラン、クウェートというところだと思います。そして、自国民においての
化学兵器の使用というのを行っています。
湾岸戦争のときにマスタードガスを使い、クルド人を制圧したという経緯もございます。さらには
国連憲章を踏みにじってきているということ、それから、
大量破壊兵器を継続的につくっているというような
お話もございます。こういう
国家において、果たして話し合いというような形で物が進んでいくかということが非常に心配なところがございます。
アメリカという国は普通の国になりつつありまして、
国際社会においてやはり国益というものを優先して考える国になり始めています。こういう中で、
国際協調がどれだけ大切かというものをやはりしっかりと考えていくべきだと思います。
最後になりますが、日本の方向性について、二、三
お話をして終わりたいと思います。私は、
二つの問題として方向性を考えています。
一つは短期的な問題、これには
三つあると思います。
既存の
テロ特措法に基づいてできること、例えば
アフガニスタン方面における支援ということだと思います。これは今出てきておりますけれども、船舶臨検に対する、ドイツ、フランスが動いておりますが、それに対する補給というものも
一つだと思います。
それからもう
一つが、周辺諸国における支援ということだと思います。これは、ヨルダンとかトルコとかイランという国が挙がっておりますが、もし問題が起こったとき、難民という問題が起こりますし、経済苦という問題も起こるわけですから、こういう問題に
対処できるような心構えというのが必要なんだと思います。
次に、長期的な活動ということで見ていきたいのですが、平和の構築、
軍縮ということについて言及したいと思います。
日本は、一九九一年、
国連のもとで軍備登録というものをすることに成功しております。これは二〇〇〇年の
段階で百十五カ国が軍備登録をしておりまして、重火器に関しては登録の現状がわかっているというような状態です。
ここであえて申し上げたいのは、二〇〇〇年七月に、九州・沖縄サミットにおいて、小渕首相が提案した小火器の、小型武器の登録という問題なんです。二〇〇一年の七月まで
国連でこれは
議論されておりまして、
行動方向というんでしょうか、規範というんでしょうか、そういうものを決めようという
段階に来ております。ぜひ、こういうものを確立することによって、中東地域、紛争地域に小型武器というものが入らないような状態にしていただければと思っております。
もう
一つが、
国家の再建、国づくりというところなんですが、これは
アメリカが非常に苦手なところです。こういう苦手なところにしっかりとした日本の
対応を望みたいと思っております。これは、今までは
国連と
国家というところの領域で行われていたわけですけれども、NGOという新しい動きが見られております。こういう第三の力というものを利用した形で、ぜひ行っていただきたいと思います。
フランスにおける国境なき医師団に関しましては、その活動の四八%が
国家からお金が出ております。日本においては、公益法人に対していろいろな問題が出ておりますけれども、その公益法人に対する寄附という問題に関しては、まだ税制的な処置もないというような状態があります。こういうところもぜひ御審議いただければと思います。
最後に重要な点を申し上げたいと思うのですけれども、日本
社会において国際情報の共有化というものがなされていないという現象があると思います。こういう意味では、いろいろなレベルでマスコミが問題を流すような情報が出てくる場合もありますし、
研究者のレベルも上がりません。したがって、少なくとも税金で活動し集められた情報、そういうものを一元的に管理し、共有できる、そういうシステムをつくる
必要性があるということです。これはやはり今後の
テロ対策、そして
国際社会における日本の役割というのを考える基本的な
部分になるということを申し上げ、
お話を終わりたいと思います。
御清聴、感謝申し上げたいと思います。(
拍手)