○林紀子君 私は、日本共産党を代表して、
教育職員免許法の一部を
改正する
法律案について、
文部科学大臣に
質問いたします。
すべての
子供たちに
基礎的な
学力を保障することは、
国民の願いであり、憲法と
教育基本法が要請している
教育の
基本任務です。
学習内容を
子供の発達
段階に即して系統的なものとするとともに、真に
基礎・
基本的なものについては、すべての
子供が分かるまで教える
教育への転換こそが今求められているのではないでしょうか。すべての
子供が人間として
自分が大切にされていると実感できる
教育を実現することです。
ところが、この四月から
学校五日制とともに新しい
学習指導要領の下での授業が始まる中、
学力をめぐって、
子供の
学力は大丈夫か、塾や私立
学校に行く余裕のある
子供とそうでない
子供との
学力差が広がるのではないかなどの不安が大きく渦巻いています。こうした不安を招いた原因はどこにあるとお
考えですか。系統性を欠いた断片的
知識の押し付けや、
基礎的な科目に時間を保障していない新
学習指導要領にこそその原因があることは明らかです。抜本的に見直すべきではありませんか。
今こそ、国が
学習指導要領で
学習内容を統制し、
現場を縛ることをやめるべきです。学者や専門家、
学校現場などの
国民的英知を集めて
学習内容を大まかに決め、試案とし、各地で独自のカリキュラムを作り、交流できるようにすることを提案いたします。
大臣の
見解を求めます。
文部科学大臣は、
国民的不安の前に、朝の読書、宿題、家庭
学習など、「
学びのすすめ」を発表しました。その上、新
学習指導要領が
実施され、来週の時間割のめ
ども立たないなど、
学校現場は混乱しています。朝の始業時間が早まり、下校時間の延長で、
子供たちはくたくたの状態です。また、十分に教師を増やさず、少
人数授業などを進めた結果、教師の持ち時間数は大幅増となり、教材研究の時間が取れない、
子供と触れ合う時間がないなど、各地で教師の悲鳴が上がっています。こうした実態をどう認識されているのか。教師の持ち時間の過大な増加などの実態を調査して対策を講じるべきではありませんか。
今、
地方自治体では、国が
実施しないために、三十人
学級など、少
人数学級に踏み出しています。少
人数学級に踏み出している
自治体数はどれだけになっていますか。
大きな流れとなっている三十人
学級を実現し、更に少
人数学級に進むことが国の
責務として求められているのではないでしょうか。
文部科学大臣の決断を求めます。
次に、
法案について具体的にお聞きします。
学校教育においては、教師の果たすべき
役割が決定的です。ですから、教師には、
教科についての高い
専門性と、
子供、青年の発達についての専門的
知識が不可欠です。これをすべての
教員に求めているのが現在の
教育職員免許制度です。
ところが、今回の
法改正は、この原則を崩して、
小学校教員の免許を持たない
中学校や高校の
教員に小学生などの授業を任せようとするものです。これについて、全国連合
小学校長会は、幅広い発達
段階の
児童生徒を
指導できる
能力を有する
教員の
育成は非常に難しいと
指摘しています。
国立大学協会も、結果として
教員の専門的力量の低下につながりはしないかということが危惧されると警告しています。これらの
指摘に耳をかさず、なぜ
小学校に
中学校や高校から
教員をあくまで派遣しなければならないのでしょうか。高校の
教員からは、小学生の気分、感情は分からない、高校生しか教えたことがないのに、小学生にどう教えていいのか分からないなどの声が届いています。
大臣はどう
考えますか。
今やるべきことは、このような
法改正ではなく、極端に門戸が閉ざされている新卒者を大量に採用して、専科
教員の
充実、少
人数授業、少
人数学級のための十分な人員配置をすべきではありませんか。
大臣の
見解をお聞きいたします。
さらに重大なのは、今回の
改正で、
小学校や
中学校の免許を持たなくとも、
中学校と
小学校、高校と
中学校といった具合に兼任を可能としたことによって
学校間兼務が進み、
子供たちの
教育に重大な
支障を来そうとしていることです。
現に、
小学校免許を持つ
中学校の
教員に
小学校の専科担任を兼務させたある大都市の例では、兼務した四十一人のうち二十六人は
学級担任であり、その約半数が進路や進学
指導で多忙な中学三年生の担任でした。このため、先生に相談したいとき
学校に先生がいない、ホームルームの時間なのに担任の先生がいない、こういう事態が起こっています。安易な
学校間兼務は、先生たちの
負担が増えるだけでなく、
学級経営も困難になります。とりわけ
子供たちへの悪
影響が危惧されます。
子供たちや
現場を無視したやり方ではありませんか。
大臣はどのようにお
考えですか。
今回の
法案の最大の問題点は、
中学校や高校の
教員を
活用して、
小学校低学年からの習熟度別授業を進めようとしていることです。
日本共産党は、すべての
子供たちに主権者として必要な
学力を保障するために、
学力差が大きい場合には、進んだ子、後れた子、それぞれの
生徒の
学力をどちらも発展させるために、グループ
学習、到達度別
学習、個別
指導と
集団指導との結合など、様々な試みが自主的に行われるべきだと
考えています。
しかし、今、政府の
推進しようとしている習熟度別
学習は、できない子はできないままでいいという
考えに基づくもので、多数の
子供を低
学力のままに放置するに等しいものです。このことは、新
学習指導要領の原案を作った当時の
教育課程審議会の会長が、できぬ者はできぬままで結構、これからはできる者を限りなく伸ばすことに労力を振り向けるとあけすけに述べていることからも明らかです。
習熟度別
学習を常態化させれば、人間同士が協力し合い
人間性をはぐくむという
教育の大切な
営みが破壊されます。既に習熟度別授業が
実施されているところでは、
子供たちが授業に後れたクラスに対して侮辱的な言葉を使ったり、親もPTAに行きたくないといった雰囲気が作り出されています。さらに、分からない子がつまずいている問題をみんなで一緒に
考えることでより深い理解に到達する
教育の奥深い
営みを、習熟度別
学習は乱暴に踏みにじるものです。こうした習熟度別
学習を
学校に押し付けることは一切やるべきではありません。答弁を求めます。
また、
法案は、
免許状取上げの範囲を拡大し、
教職員への管理統制を強化するものです。
私立
学校の
教員についても、新たな規定を設け、国
公立と同様に
懲戒免職の場合に免許を取り上げることとしています。不当解雇は、九九年一月以降、全国私立
学校教職員組合連合の調べでも二十件に達しています。経営難によるリストラの下で更に増えることも心配されます。私立
学校の
教員について不当解雇による免許取上げはしないと明言できますか。
大臣の答弁を求めます。
本
法案は、これまで述べた問題点のみならず、
特別免許状の要件
緩和を進めて
社会人教員を拡大し、
教職の
専門性を大きく崩すなど、様々な問題点を抱えています。
大臣が国連子
ども特別総会の場で述べたように、
子供たちに最善を尽くすというのであれば、
小学校、
中学校、高校への
教員をきちんと配置し、ゆとりを持って
子供たちの
教育に当たれるようにすべきではありませんか。このことを
指摘して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣遠山敦子君
登壇、
拍手〕