○羽田雄一郎君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました
農業経営の改善に必要な
資金の融通の
円滑化のための
農業近代化資金助成法等の一部を改正する
法律案及び
農業法人に対する投資の
円滑化に関する
特別措置法案につきまして、武部農林水産
大臣に
質問をいたします。
法案に関する直接の
質問に先立ちまして、先般、農林水産省から発表されました「「食」と「農」の再生プラン」について伺いたいと思います。
この中で本
法案と密接にかかわる箇所が、第二章にあります「ビジネスチャンスとしての新規就農者への支援」、「
農業経営の株式会社化等による多面的戦略の展開」の部分です。
そこには、このような文言があります。「次代の
我が国農業を担う若い人材を
確保し、農村の豊かな地域資源を活用したビジネスの
可能性を引き出す多様な人材を呼び込むため、Uターンや農外からの新規参入者等をも
対象に実践的な
研修、
資金の融通、農地のあっせん、
農業法人への就業の
促進等を行います。」、「
農業法人の自己資本の
充実を促進するための出資の
円滑化措置を講じます。また、
農業法人等に対して売れる商品企画、販売戦略等の高度なノウハウを提供する
取組を支援します。
農業経営の株式会社化等による多面的戦略を展開するための
措置を講じます。」というものであります。
今、農業の現場での一番の問題は、次世代の
担い手が全く不足しているということです。なぜ後継者が育たないのか。一つには、将来の展望が見えない中で、農業に従事しようと考える後継ぎがいない、子供に後を継がせたいという農業従事者がいないということであります。もう一つは、農外からの新規参入、就労には大きな壁があるということです。
最近、書店の農業のコーナーには、定年を迎えたサラリーマンが農業に従事するためのガイドブックが数多く見られるようになりました。一つのブームになっているようです。自然に囲まれて農業をしながらゆったりと暮らしをしたいと考える人が増えることは大変喜ばしいことであると思います。しかし、定年世代に頼る形でこれからの日本の農業生産体系を組み立てることはできません。少なくとも私たちの世代が新たに就農する道も広く開放されることが必要であり、そのための具体的な
施策が必要になってきていると考えます。
さきに引いた「
農業経営の株式会社化等による多面的戦略」に注目すべき文言があります。「農地法の見直しに着手します。」という箇所です。二〇〇〇年の臨時国会に提出された農地法の一部改正案に、
民主党は、五年以内に農地の転用制限の
在り方について検討し、必要な
措置を講ずるという修正を盛り込みました。農地の転用
規制の見直しは新たな
担い手づくりのかぎとなるものだと考えるからです。
今ある
農業経営は、家族を中心とした経営体であり、それを法人化させていこうとするのが政府の示す法人経営の姿です。この法人化の手段では、新たな農業参入者にはハードルが高いのではないでしょうか。もっと開かれた形で、農業に従事するのではなく、農業を行っている企業に就職する、就農するのではなく就職するということもできるように一般企業の農業参入の道を開いてみてはいかがでしょうか。安定的な収入が
保障され、また定期の休暇を取ることもできる農業従事者がいてもよいのではないでしょうか。一般の企業ならばそのような環境を提供できるのではないでしょうか。
「「食」と「農」の再生プラン」の終わりには、「企画・実行・評価を政策のマネジメントサイクルとして確立し、農林水産
行政を
国民本位の効率的で質の高いものにしていきます。」と書かれています。是非、これまでに
実施されてきた農林水産政策のプランを評価した上で、新たなプランをお示しいただきたいと思います。
まず、農林水産
大臣に、評価を含めた新たなプラン及び農地法の見直しの方向性と、農業への新規参入者はどのような就業体系を考えておられるのかをお伺いをいたします。
さて、衆議院の農林水産
委員会の場でも、
民主党の議員から農業金融二
法案の新たな
制度について種々
質問をいたしました。
農業近代化資金助成法等の一部改正案では、それぞれの
制度資金の融資実績が激減しているのにもかかわらず、それに係る融資枠すなわち予算枠が見直されることがないことを再三指摘してきました。これに対する答弁の中で、今年度の予算は見直しを行っている旨の説明がありましたが、それは
対象である三つの
制度資金のうち一つにすぎません。
農業近代化
資金と農業改良
資金は、融資実績がそれぞれ二四%と一八%でしかないにもかかわらず、その実績に合わせた形で融資枠を根本的に見直すことを怠っております。なぜ借り手が減少しているのかと問われると、昨今の農業の情勢から投資意欲が低迷している、一般
資金との金利差が縮まって魅力が薄まっていると答弁されています。
本
法案によって
制度資金を使いやすくするとされていますが、それが
実施されたとしても、現在設定されている融資枠の八割、九割までに
資金需要が上がるものなのでしょうか。分かりやすく使いやすい
制度資金に改めるという
趣旨を否定することはいたしませんが、その融資枠すなわち予算を大胆に見直し、農林水産予算の透明性を上げることは、
国民から
信頼を失った農林水産省に対する
信頼を回復する第一歩にもつながるのではないでしょうか。一度予算を削減すると二度とそれを取り戻すことができないから削減できないという考えがあるのであれば、消費者、
国民に軸を移した農林水産
行政を進めると口癖のように言ってきた武部
大臣の決意は、単なるお題目にすぎなくなるのではないでしょうか。
なぜ融資枠の見直し、予算の見直しが農業近代化
資金と農業改良
資金で行われていないのかについて、農林水産
大臣の御答弁をお願いいたします。
次に、
農業法人に対する投資の
円滑化に関する
特別措置法案について伺います。
先ほど、企業の農業参入について触れました。現在、農業に一般企業は参入できませんので、代わりに、農業に極めて近い事業を行っている食品製造企業の例を使いたいと思います。
現在、株式を上場している食品製造業者があります。メーカーとしての知名度も高まり、業績も安定しています。この成功は、企業としての企画力、生産工程の管理、営業力の
充実が進んでいることにあるのではないでしょうか。勤める側のメリットもあります。日々の生産物のでき、ふできで収入が上下することがなく、休暇等の待遇もしっかりと決まっています。一人の
人間が付きっきりで生産物を見回り、休みなく従事するのではなく、生産の過程をローテーションを組みながら育成を行う、そのような
取組が農業の中にも入れられるのは画期的なことだと思われないでしょうか。
今、農林水産省は酪農ヘルパー
制度を
推進しています。一年三百六十五日、早朝から夜遅くまで牛の世話をする生活ではなく、定期的に休暇を取ることができるようにすることが
目的です。このような生活ができる農業が広まるのは良いことだと思います。
広く一般から
資金を募って企業の運営を行っている食品製造業は
存在するのであります。農地を取得しないがために参入を許されたからこそ、この企業はこの
分野で成功を収めたわけです。つまり、農業生産を採算の取れる産業であると考える企業が参入することを妨げることは、日本の農業の発展を閉ざすものであると考えられるのであります。
農業法人投資育成会社を設立し、農業への投資を広めていきましょう、投資育成会社には十年ほどの期間を見ながら採算が取れるようにしてもらいましょうというのも一つの方法ではありますが、農家が農地と労働力を企業場運営
資金を提供する形で企業化を進めることを認めていくことを御提案し、このような農業形態についての御
見解を伺います。
両
法案に共通する問題についてお伺いいたします。
法案説明資料を読むと、農業近代化
資金助成法改正案の想定する融資窓口、そして投資
円滑化特別措置法案の想定する投資育成会社の出資者ともに農協を意識したものとなっていると感じるのです。農協の窓口に融資を申し込めば、農協の
制度資金を勧められるのは当然ではないでしょうか。また、投資を受けるとなると、投資会社の出資者である農協の意向が強く働くのではないのではないでしょうか。両
法案ともに農協の業務拡大を
行政がサポートしているのではないかと感じられるのであります。この点につきまして、農林水産
大臣の御所見をお伺いいたします。
最後になりますが、我々野党四会派が出した武部農水
大臣に対する問責決議案は、公明党の神崎代表による人心一新の掛け声もむなしく、公明党の欠席、自民・保守の反対によって否決されました。しかし、
国民の声は、いまだに武部
大臣の責任、農林水産省による失政について厳しく指摘をしております。先日も、国産牛肉の冷凍保管助成をめぐり、本来は必要のない予算が五十億円にも上っていることが指摘されました。
大臣の御
見解をお伺いいたします。
今、
大臣が何を言われても信じることができない悲しい状況にあります。
大臣は、口癖のように、就任時から消費者に軸足を置くべきと認識を持っていた、役人任せではなく政治主導で改革に取り組んできたと言われております。では、なぜ、
国民から
信頼と安心を得られないのでしょうか。それは、消費者である
国民の声を聞き入れず、リーダーシップが取れずに混乱に陥れた責任を
大臣が一切取っていないからにほかなりません。
食品の安全をいかに確立していくかについては、まず、
民主党の求めている熊澤前
事務次官の証人喚問を含めた原因の追及、
解明が必要であると考えます。農林水産
大臣はいかがお考えでしょうか。
そして、我々が昨年から準備を進め、予算の組替えも要求し、二月二十二日、衆議院に野党四党共同で提出済みの狂牛病対策緊急
措置法案についても、多くの
国民の皆様から署名をいただき、早期成立を求められていますので、やっと出てきた与党三党案とともに、与野党の枠組みを超えてより良いものとし、
国民の期待にこたえていかなければなりません。そのためにも、
大臣の真摯な御答弁を期待し、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣武部勤君
登壇、
拍手〕