○井上哲士君 そういうこともありますので、一定額ということの要求がされていると思うんです。特に、今問題になっているのはやはり金融機関が押さえている抵当権でありまして、金融機関は、実際、融資に当たっては経営状況を、
情報を深く持っていますし、経営に直接参加もしている。しかも、今は経営改善に金融機関に公的資金も投入をされておるわけですから、大変恵まれておるわけですね。
神奈川県の工作機械メーカーの池貝が昨年、民事再生
手続をしましたが、二十一億円の退職金が未払状態で、主な資産である工場にはすべて金融機関の抵当権が付いて払えないと、こういう状況になっております。これに関して、任命をされた監督委員である清水建夫氏が昨年の八月に、再生計画案に対する意見書というのを出されておりますが、大変重要な
中身だと思うんですね。
この任意の売却代金について、金融機関のみが全額を回収をするということは公平公正を欠くという指摘をされております。従業員の退職金債権は退職後、とりわけ老後の
生活資金として重要なものであり、これが支払われないときは老後の
生活に深刻な影響を及ぼすことは必然であり、現に、
本件において多額の未払退職金を有する労働債権者は、四十年前後再生債務者に一筋に働き、退職金を退職後における最大の蓄えとして
生活設計を立ててきたと。五十歳を過ぎて突然解雇をされ、再就職もままならない状況である。再生債務者の再雇用の対象からも外されている。解雇された以降に死亡したり病に倒れた労働債権者もあり、家族は途方に暮れていると。こういう指摘をした上で、ある金融機関から昭和三十年代より昭和五十九年まで役員が派遣をされてきた。多くの労働債権者はこれら役員の在任
期間中にその指揮下で働いており、この時期に退職金債権の保全策が施されていれば今日の事態は回避することが可能であったと。主たる金融機関に限らず、
一般に金融機関は再生債務者の財務状況を把握できる立場にあって、適宜担保設定を行い保全策を講じることができたが、労働債権者は自らの退職金債権を保全するすべがなかったと。こう述べた上で、資産の売却代金を金融機関のみに配分するのは公平公正でないと。
こういう指摘をして、大変すばらしい私は指摘だと思うんですが、
法務省はこの意見書については承知をされているでしょうか。また、例えば法制審の論議などでの
参考にされていますか。いかがでしょうか。