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国務大臣(
遠山敦子君) 今後の
日本の高等
教育の
在り方についての大変
基本的な御質問をちょうだいいたしました。随分多岐にわたっておりまして、いずれからお答えすべきかと思うところでございますが、まず、高等
教育全体のグランドデザインいかんという
お話でございます。
グランドデザインが大事だということについていろいろ論議されるわけでございますが、なかなかその定義、概念というものは論者によって違っているところがございます。
ざっと戦後の高等
教育機関の
日本の推移、
日本における推移を見てみますと、戦後は国公私立大学がそれぞれの役割を果たしながら、むしろ量的な拡大を目指してやってきたように思います。それは、
国民が経済的な
発展も
背景としながら、大学への進学を希望する率が次第に高くなっているというような
背景、あるいは全国的にどのように、どのような分野の大学を配置していくかというようなことについての配慮の必要性、あるいは産業界を含めた
日本の
社会が要請している人材養成にこたえるなどのいろんな角度から、それぞれの
時代におきまして大学の
在り方ないし設置の仕方について検討した上で今日に至ってまいっていると思います。それは具体的に申しますと非常に時間が掛かりますので今は省略いたしますけれ
ども、
社会の進展に伴って起きる多様な要請にこたえて大学設置を重ね、今日に至ってきていると思います。
それぞれのときに、それぞれの時点におきまして計画的な整備を図ってまいっております。高等
教育の計画的整備ということは折々に出されてまいりまして、それに従って出てまいったと、今日の状況があると思っております。その
意味では、進学希望の動向とか全国的な適正配置についての配慮というものはこれまで行われてまいったとも思っております。
二十
世紀の最後の辺りになりますと、
日本の高等
教育機関は量的には十分に発達をしたといいますか拡充が遂げられたわけでございまして、これからどのように質的に向上させていくかということが高等
教育についての大きな課題になってまいったわけでございます。
そのようなことから、
平成三年以降、大学
審議会における熱心な
議論を
背景としながらたくさんの答申なぞが出ましたが、そういうそこで示された方向性をベースにしながら、
教育研究の高度化、高等
教育の個性化、あるいは組織運営の活性化という観点から大学
改革が進められてまいったと思っております。
そんな中で、国立大学というのは今後ともどのようにその役割を
考えていくかということでございますけれ
ども、国立大学は、やはり
日本の
学術研究と研究者養成の中核としての役割をこれまでと同様、あるいはこれまで以上にしっかりと担っていく必要があると思っておりますし、全国的に均衡の取れた配置によって、それぞれの大学の特色に応じながら
地域の
教育、
文化、産業の基盤を支えて、大学
教育の機会均等に大きな役割を果たしてきましたし、またこれからも果たすべきであろうかと思っております。同時に、今後は、より
地域社会及び
日本の
社会に対する貢献という角度が非常に重要になってくるのではないかと思っております。
では、何のためにそういう役割を持つ国立大学について再編・統合を行おうとしているのかという御質問かと存じますが、これからの新しい
世紀において
日本が人材大国、
科学技術創造立国を目指していきます上で、国立大学が国際競争力のある大学、魅力ある大学として活性化していくことは極めて重要でございます。もちろん、私立大学、公立大学においても同じような使命、同じような目標も大事でございますけれ
ども、殊に国費が投入されている国立大学においては、
日本の将来の経済
社会の
発展の基盤を支えるために、国際競争力を持つしっかりした大学にしていく必要があるわけでございます。
そのようなことを前提にいたしますと、それぞれの大学の実績を踏まえながらも、各大学・学部の枠にとらわれずに、限られた
日本の資源、予算、定員等の有効活用を図って、将来にわたっての
教育研究の
発展とか、あるいは
教育研究基盤の強化を図る必要があると認識しているところでございます。
再編・統合はそうした基盤強化ということの必要性をバックにいたしまして、それぞれの国立大学の個性と特色を生かした
発展を願ってのものでございます。これは単に数減らしを目標とすることではございません。むしろ、
教育研究等の豊富化とか高度化、あるいは新たな学問領域への展開、人材の流動化、資源の重点的投資などを可能にするような実りある再編・統合でなくては私は
意味がないと
考えているところでございます。
今日、私
どもといたしましては、そういう再編・統合の必要性とそのねらいというものが本来大学が持つべき
教育研究の高度化あるいは
社会貢献の重要性といったことを目指してやってもらいたいということを折に触れて話をしておりますし、またその目標を達成するための統合・再編に向けての
努力がそれぞれの大学で今行われつつあるというふうに
考えておりまして、今はその方向に向けての
努力を見守りながら、今の
構造改革を必要としている
日本の
在り方にマッチした再編・統合がなされるように、私
どもとしても各大学の
取組を促し、かつ支援をしていくという現状でございます。
もう
一つの御質問の点は、私学と国立のバランスをどのように
考えていくかということであったように思います。
各国の高等
教育制度といいますのは、それぞれ固有の
歴史的、
社会的
背景の中で種々の経験あるいは実績を重ねながら今日まで発達し定着してまいってきていると思います。
日本におきましては、戦後の高等
教育の量的普及・拡大を私学の
発展に大きく依存して実現してまいったということは確かでございます。その経緯もありまして、今日、大学数、学生数のいずれも私立大学が全国の、全体の七〇%以上を占めるという先進国の間では極めて特異な
実態になっているわけでございます。欧米主要国におきましては、高等
教育は国又は州が
責任を持って
実施するということになっているわけでございますが、そういう状況に照らしましても、
日本における国立大学の役割は今後も大変重要であると
考えているところでございます。
現状で数が多いから、だから再編・統合ということではなくて、そういう大事な任務を担っている国立大学というのが更にしっかりとその
機能を果たしていく必要があるということで今日の
取組に至っているわけでございます。
私立大学が非常に重要な役割を果たしているということも確かでございまして、国公私立が競争的な環境の中でそれぞれの個性を十分に発揮しながら全体として
日本の高等
教育機関を強化していくということは大変大事だと
考えている次第でございます。