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2002-03-14 第154回国会 参議院 総務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年三月十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月十三日     辞任         補欠選任      高嶋 良充君     岩本  司君  三月十四日     辞任         補欠選任      岩本  司君     高嶋 良充君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田村 公平君     理 事                 景山俊太郎君                 世耕 弘成君                 谷川 秀善君                 浅尾慶一郎君                 伊藤 基隆君     委 員                 岩城 光英君                 小野 清子君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 南野知惠子君                 森元 恒雄君                 山内 俊夫君                 岩本  司君                 高橋 千秋君                 内藤 正光君                 松井 孝治君                 木庭健太郎君                 八田ひろ子君                 宮本 岳志君                 松岡滿壽男君                 渡辺 秀央君                 又市 征治君    国務大臣        総務大臣     片山虎之助君    副大臣        総務大臣    佐田玄一郎君        総務大臣    若松 謙維君    大臣政務官        総務大臣政務官  山内 俊夫君        総務大臣政務官  河野 太郎君        総務大臣政務官  滝   実君    事務局側        常任委員会専門        員        入内島 修君    政府参考人        総務省人事・恩        給局長      久山 慎一君        総務省行政評価        局長       塚本 壽雄君        総務省自治行政        局長       芳山 達郎君        総務省自治行政        局公務員部長   荒木 慶司君        総務省自治行政        局選挙部長    大竹 邦実君        総務省自治財政        局長       林  省吾君        総務省総合通信        基盤局長     鍋倉 真一君        厚生労働大臣官        房審議官     鈴木 直和君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○行政制度公務員制度地方行財政選挙、消  防、情報通信及び郵政事業等に関する調査  (行政制度地方行財政消防行政情報通信  行政等基本施策に関する件)  (平成十四年度人事院業務概況に関する件) ○参考人出席要求に関する件 ○地方自治法等の一部を改正する法律案(第百五  十一回国会内閣提出、第百五十三回国会衆議院  送付)(継続案件)     ─────────────
  2. 田村公平

    委員長田村公平君) ただいまから総務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、高嶋良充君が委員辞任され、その補欠として岩本司君が選任されました。     ─────────────
  3. 田村公平

  4. 田村公平

    委員長田村公平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 田村公平

    委員長田村公平君) 次に、行政制度公務員制度地方行財政選挙消防情報通信及び郵政事業等に関する調査を議題とし、行政制度地方行財政消防行政情報通信行政等基本施策に関する件及び平成十四年度人事院業務概況に関する件について、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 内藤正光

    内藤正光君 おはようございます。民主党・新緑風会の内藤正光でございます。  先々日の大臣所信に対して、今日は郵政事業公社化を始め情報通信、さらには放送事業にわたって何点か質問させていただきたいと思います。  まずは郵政事業公社化、特に郵便事業への民間参入ということで何点か質問をさせていただきたいと思います。  私の手元にワーキンググループの中間報告、昨年の十二月に出されたものがあるわけなんですが、これを見てみますと、郵便事業への民間参入、いろいろな手法が検討されたと。一つ条件付ながらも全分野への参入、これが一つ。そして部分的な自由化、そして三つ目段階的自由化、大きく言ってこの三つ検討をされてきたわけなんですが、最終的には条件付分野への参入ということがうたわれているわけなんです。  この経緯について説明をしていただけますでしょうか。なぜ、それに最終的に決まったのかということでございます。
  7. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 郵政事業公社化につきましては、これは御承知のとおり中央省庁再編基本法で決まっておりまして、十五年中に公社化を図れと。そして、公社化する場合にはこうですよと、国営公社ですけれども。そういう一種のフレームを基本法で決めてもらっておりますので、我々はそれを受けて公社化を図ろうと。そこで、役所だけでは検討がいかがかなと思いまして、昨年の八月に郵政事業公社化に関する研究会を作りまして、そこで有識者の方に御議論いただきまして、今、委員言われましたように、十二月末に中間答申を出していただいたわけであります。  そこで、いろんな議論公社化研究会の中でもありまして、一方、総理のいろんなお考えの提示もありまして、そういう中で公社化研究会としては、今お話しのように条件付全面参入部分参入段階的参入、こういうふうな御答申をいただいたわけでありますが、その三つの中では、やはり競争の促進あるいは低廉な安定したサービスなんという面からいえば条件付全面参入がベターではないか、こういう感じでございましてね。  それから、小泉総理は御承知のように全面参入の強い御意欲をお持ちでございますので、我々も検討し、研究会の御意見もそういうことだということでございますので、ユニバーサルサービスを確保した上での全面参入というのは一つ方法としてはあるなと、こういうふうに考えまして、現在法案を作成中でございますけれども、その中では条件付全面参入、こういうことで法案をまとめたいと考えておりまして、現在関係方面と調整をいたしております。
  8. 内藤正光

    内藤正光君 全面参入といいますと、いかにもよくやったというふうに思えてしまうんですが、よくよく考えてみると果たしてそうなのかということなんです。  同じく、この中間報告の九ページにこうあるんですね。「ユニバーサルサービスを確保するために参入事業者クリームスキミングを行わない形の参入とするとともに、競争導入のメリットをできるだけ幅広い国民利用者が享受することを可能とするため、全国業務区域としてあまねく公平送達サービス提供させることが適当と考えられる。」、こういう文言があります。これは言ってみれば、クリームスキミングは駄目ですよということなんですね。全国ばっとやるような形態での参入じゃなきゃ駄目ですよという意味なんですね。  私は、電気通信分野ではクリームスキミングを認めておきながら、なぜ郵便分野ではクリームスキミングを認めないのか。私は、ちょっとこれ納得しかねるんですが、いかがでしょうか。
  9. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 郵政事業公社化に関する研究会中間報告書においても、電気通信事業信書送達事業では以下のような事業的な差異があると。電気通信におきましては大規模設備が必要な装置事業であるということがまず第一点ですね。それとまた、利用に際して事前加入契約が必要であるということ、技術革新により高い成長性が期待される、こういうふうないろんな要素があるわけですね。それは先生がもうよく御存じのとおりであります。  そしてまた、信書送達分野におきましては、これからの話でありますけれども、初期投資参入可能な労働集約的産業であるということと、利用に際しては事前契約が不要であり、事業者の選択が容易である。いわゆる、言い換えるならば非常に参入がしやすい、そういうことを考えたときに、やっぱりクリームスキミングがなりやすい。しかし反面、非常に公共性が高いものでありますから、しかも全国ベースということになりますと、これはユニバーサルサービス公共性から考えてもやっていかなくちゃいけない、そういうことを考えましてこういうふうな形になったということでありまして、もう一点では、電気通信につきましては非常にクリームスキミングになっている部分もありますけれども、先ほどの話で前に戻りますけれども、非常に設備投資がしづらい、こういうことも含めて、一部の会社にのみ課している、こういう状況であります。
  10. 内藤正光

    内藤正光君 まず、公共性が高いということなんですが、これは電気通信事業電話事業も同様に公共性が高いわけでございます。あと、設備投資を要すとおっしゃるわけなんですが、第二種という形でどんどんどんどん電気通信分野設備投資をしなくても参入できるわけなんです。私は、余り公共性だとか設備投資に多額のお金を要すとかいうのは、余り私は電気通信事業郵便事業とを違うものですよというふうに主張する理由にはならないんじゃないのかなと思うんです。  更に言えば、ここに、同じく四ページ辺りに、仮にクリームスキミングをしてしまった場合、「ユニバーサルサービスを担う公社財政に影響を与え、」云々というふうに書いてあるんですが、同じことだって今NTTに対して言えていると思うんですよ。クリームスキミングされて、なおかつNTTユニバーサルサービス提供義務を、責務を負っていると。絶対もうけがないようなところまでユニバーサルサービスやらなきゃいけない。大変に、財政的には今大変な厳しい状況を迎えている。それを考えると、私はどうも余りにも、電気通信事業に対する総務省さんの対応郵便事業に対する総務省さんの対応が余りにもちょっとバランスを欠いたものになってはいないかというふうに思うんです。  更に言いますと、参入がしやすいと。私はむしろ参入をどんどんどんどん促してこの分野サービスの質を高めていく、こういう必要があるんじゃないかなと思うんですが、全国規模での参入しか認めていないわけですね、原則。これ正に副大臣おっしゃったように、これは参入障壁になっちゃうんじゃないのか、新規参入を抑制してしまうものになりはしないのか。これは基本的な考えがどちらにあるかによって随分変わってくるんですが、むしろ総務省さんとしては余り新規参入をさせたくないというお考えですか。
  11. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 地域参入ということではなくて、その前に先生に申し上げたいのは、この信書に関しましてはこれからいろいろ議論をいただくわけでありますけれども、全国参入をすることによってユニバーサルサービス、また公共性と言うと、また先生が御異論があろうかと思いますけれども、やはり田舎の方まで一通一通を運ばなくちゃいけない、そういうことを考えますと、これはやっぱり全国ネットで一通でも配達ができるようにしていくということは非常に重要、いわゆるユニバーサルサービスが重要になってくるわけです。もちろん、先生の言われるとおり、電気通信においても、これはユニバーサルサービスも重要であります。  そういう中において、NTTのみが課されているというのは特殊だなというふうに言われますけれども、これは、ですから、したがって、これから電気通信が進展する中におきまして、先生御存じのとおり、これからは電話だけじゃありませんから、いろんな情報通信ができてくるわけですね。そういう中において、ファンドもいろいろ考えて、できるだけこれは平等にしていかなくちゃいけないと、こういうふうに、この間の電気通信事業法でもファンドを設けてできるだけユニバーサルサービスを行っていかなくてはいけないと、こういうふうになっておりますので、その辺の御理解いただきたいと、かように思っています。
  12. 内藤正光

    内藤正光君 どうも基本的に考えが違うのか、どうも納得しかねるものがあるんです。  もうちょっと同じようなことを繰り返さしていただいて恐縮なんですが、電気通信分野ではだれがユニバーサルサービス提供責務を負っているかというと、NTT一社のみですよね。ところが、今回のこの法改正がもし通ったとすると、ユニバーサルサービス提供責務を負うのは、公社ばかりか新規参入事業者もまた同様にユニバーサルサービス提供責務を負うことになるわけですね。何でなんですか。  私は、新たにまた郵便事業でもファンドという形式を設けて、公社ユニバーサルサービス提供責務を負えばいいだけの話じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  13. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 大変もう見識のある委員でありますから、私がつべこべ言う筋合いではありませんけれども、先生、是非御理解いただきたいのは、信書送達分野につきましては、正にこれは委員会でこの議論をされましたけれども、委員会議論されましてもこれからの議論ということがあります。  それと同時に、また繰り返しになって恐縮ではありますけれども、本当にあまねく全体的にやっていくということが非常に重要なことでありまして、一方において、やっぱりNTT関係というのは、やはり非常に元々基盤がありまして、それに対してどうのこうのじゃありませんけれども、それにつきましては、これからいろんな分野が広がってくるわけですね、先ほども申し上げましたとおり。ただ、郵便事業のような形で集配をするというだけではなくて、先生ももう御存じのとおり、これからは電話だけじゃなくて、電話だけじゃ生き残れないわけでありますから、いろんな電気通信分野でやっていく、光ファイバーも引かなくちゃいけない、ADSLもやらなくちゃいけない。  そういう中において、今の状況では不平等ではないかということで、ファンドを設けてやっていこうということでありますから、そういうふうな形で、じゃ、今からこれを郵便の方だってやるべきだと。これはこれからの議論でありますから、是非その辺は、決して不平等にするというふうな考えで言っておるわけではありませんので、是非御理解をいただきたいと、こういうふうに思っております。
  14. 内藤正光

    内藤正光君 ちょっと観点変えまして、今、郵便局全国二万四千七百の郵便ネットワーク、これインフラとも言うべきものがあるわけですね。かなりしっかりしたインフラだと思うんです。民間参入に際して、このインフラをどの程度開放されるんでしょうか。
  15. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 研究会報告書におきましては、民間事業者による郵便ネットワーク利用を可能とすることにより、ネットワーク利用効率競争導入効果を高めるという効果のある一方で、公社ユニバーサルサービス提供に過度の負担となることを避ける必要があるという留意点も指摘されておりまして、そういう指摘はありますけれども、まだこれから、郵便局であるとかそういうものをどのように利用していくか、また他業者がどういうふうに利用していくかというのはこれからの議論で、まだやっているわけではありません、これからの議論になると、なろうかと思います。
  16. 内藤正光

    内藤正光君 じゃ、具体的にちょっと一つだけ教えてください。  アクセスポイントとも言うべき、ユーザーにとってはアクセスポイントとも言うべき郵便ポスト全国に十七万あろうかと思いますが、これは開放されるんですか。
  17. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 郵便ポストにつきましても、それは、開放されるされないということはまだ議論はされておりません。
  18. 内藤正光

    内藤正光君 一部には、電気通信と違って、一つポストに何社かの郵便物が入ったら仕分が大変だという、だからこれは現実的ではないという話もありますが、であるならば、郵便ポスト、それこそ二つぐらい窓口付けて、公社郵便はこちら。これね、笑える話じゃないんですよ。電気通信でも同じことやっているんですよ。そういうシステム改良義務付けているんです。これは郵便ポストの話をすると、何をばかげたことを言っているかと見えるかもしれませんが、電気通信の話をすると、全く同じことをやっているんです。全く同じことをやっている。  だから、全国十七万のポストを、それこそ、今、口が二つあるようなポストというのはたくさんあるわけですから、私はそういうことをやっても。で、言ってみれば、仮にNCCと言っておきましょう、NCCはそれなりに、一緒に投函されても工夫をして分ける仕組みなんて当然作るでしょう。  そういった意味で、私は、全国十七万のポストも、一つこれ重要なインフラ、共有、すべての人が、新規参入事業者が使える共通のインフラとして私は開放すべきものだというふうに考えますが、御所見を伺います。
  19. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 委員の言われることはよく理解できると思います。  また、その言われているのは、いわゆる線で、先生もう、委員なんかプロですから御存じのとおり、通信放送でもハードだけを貸していくということもありますし、卸の問題もありますし、そういうことを言われているんだと思いますけれども、やっぱりこれから、私も、それは今、委員の言われたとおり、いろんな工夫があって私はいいと思いますよ。  ですから、そういう意味におきましては、是非これからの議論の中で、そういうことも一つの、議論一つとして考えるべきではないかなというふうに思っております。
  20. 内藤正光

    内藤正光君 郵政公社化についてはこのぐらいにしまして、また今後の議論にゆだねていきたいというふうに考えております。  続きまして、私、一昨年、インド、シンガポール、フィンランド等々、いわゆる世界IT立国を回ってきました。こういった経験を踏まえて、何点か質問をさしていただきたいと思うんです。  まず、私は、今注目したいのは韓国なんです。韓国は、御存じのように、今、世界で一番のブロードバンド先進国。人口四千七百万のうち、今、加入者は二割近くまで行っているというふうに聞いております。ですから、二割近くというのは、九百万近くの人がブロードバンド、数メガ単位級ブロードバンドを活用しているというふうに聞いております。  私も実際、昨年、二度ほど韓国に行ってきましたが、若い人たちインターネットゲームに興じたり、あるいはまた家庭の主婦は家でインターネットを使ってテレビを見たり映画を楽しんだりあるいはまた株取引を楽しんだりと、いろいろ活用されているというふうに聞いております。  そこでお伺いしたいのは、なぜ韓国ブロードバンドがあれだけ普及したのか。それも短期間のうちなんです。昔から韓国ブロードバンド先進国であったわけではなくて、私の知る限りは、二〇〇〇年の一月時点ではたかだか三十万行かなかったんです、加入者数が。それが二〇〇〇年の十二月には四百万、二〇〇一年の八月には六百万、そして今日、九百万近く行っているというふうに聞いています。かなり急激な普及の仕方だと思います。  で、よく言われているのは、インターネットゲーム、これがかなりはやったと言われています。これはあくまで需要側理由だろうと思います。では、供給側理由、言ってみれば通信事業者等々ですね、供給側要因は何であるというふうに分析されているのか、御所見をお伺いします。
  21. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 韓国におきましては、一九九五年に超高速情報通信網構築計画、又は一九九九年にサイバーコリア21を発表いたしまして、これは積極的なIT化政策を推進しておるわけで、現状であります。  韓国におきましては、DSLの急速な普及要因としましては、当面、光ファイバーよりも容易に普及が可能であるDSLCATV等の活用によりまして、地域に、実情に応じたブロードバンドの要するに形成を行っておるわけでございます。  実は先生、私も先般、韓国に行ってまいりまして、これはもう先生御存じだという、集合住宅が林立しまして、日本みたいな一戸建てとは全然違うんですね。集合住宅がずっとありまして、そこにADSLを引くと、こういうふうな状況があるわけでありまして、その中においていろんなその、何というんですかね、アプリケーションが行われていると、こういうふうな状況になりまして、そういう状況がありまして、DSLが急速に普及した理由は前述のようでありまして、また、政府の積極的なIT政策その他、様々な要因が組み重なりまして、ハナロ通信のような事業者参入一つの原因になっておりますけれども、かなりこれ進んだような状況が今現出しておると、こういう状況だと思います。
  22. 内藤正光

    内藤正光君 いろいろお答えいただきました。私も、やはり一つ一つうなずきながら聞いていてそうだと思います。  ただ、私は、やはり一番大きいのは、副大臣おっしゃったハナロ通信の役割なんだろうと思います。御存じのように、日本NTTがあるように、韓国には何があるかというと韓国通信があると。通話通信事業をずっと営んできたと。もしそれだけだったら、私は韓国は決して今ブロードバンド先進国にはなっていなかったんだろうと。やはりハナロ通信が、二番手のハナロ通信が果敢に、それこそ最初、こんなんで本当にもうけが出るのと思われるぐらいの値段で世界に先駆けてADSL事業参入をしたと。そして、これがうまく当たって、半年遅れで韓国通信が慌てふためいてADSL分野参入をした。その後、何社かが参入をして、この電気通信事業者同士の大変な争いになったと。これが私は一番大きな原動力じゃないのかなというふうに思うんです。  実際、聞くところによれば、ハナロ通信自ら回線を引いたというんです。私は向こうの、行って、会長に聞いてみました。何で光ファイバー自分で引いたんだと、韓国通信から借りればいいんじゃないのかと言ったら、いや、当時は韓国通信には回線開放義務は負わされていなかったと。しかし、仮に回線開放していたとしても、やはり自分で引いたと言うんです。何でなんだと聞いたら、いや、韓国通信は、あれは通話事業を営むために引いた回線であり、うちは、ハナロデータ通信サービスを営む会社なんだと。やはり品質で差を付けるためには、もう直前まで光ファイバーを引いて、一軒家だったらばそこから小分けにする。おっしゃったとおり、確かに向こう集合住宅志向が強いので集合住宅が多い。だから引きやすさもあったんでしょうが、そういうハナロのやはり果敢な挑戦。本当は、ハナロ通信参入時点で、韓国お金で五千円もらわなければ絶対ペイしないと言われていた。しかし、マーケット調査によると五千円じゃ絶対普及しないと、四千円を切らなきゃいけないと。そこで、三千八百円でがんと市場に参入したと。当然三千八百円じゃペイしないわけです。しかし、ハナロはそれをやってのけたんです。  私は、今、日本を振り返ってみますと、どうも何か政府頼りの、お上頼りの、何か低次元の争いばっかりが目に付いて、こういう果敢な挑戦というのが余り見えてこないんです。是非、私はこの韓国の、特にハナロのこの気概を日本の情報通信事業者NTTに限らずすべての情報通信事業者に学んでいただきたい、そんなふうに思います。  これは私の意見でございますので、別段御所見はいただく必要はございませんが。  あともう一点、世界を回った中で一つ質問をさせていただきたいと思うんですが、世界IT立国と言われる国々、いろいろなIT立国の発展の仕方はあれど、共通して言えるものが幾つかあります。その一つは、やはり産学官の連携なんだろうと思います。それも国、一国全体の産学官の連携ではなくて、地域それぞれの産学官の連携、大学に眠るいろいろな知的財産、これを産学官の一体となった取組でビジネスへつなげていく。  例えば、フィンランドなんてそうだと思います。大臣も昨年行かれたと思います。私はちょうど同じ時期にフィンランドに行ってきたんですが、フィンランドでは、御存じのように、一九八〇年代までは主産業は何であったかというと木材パルプだったわけなんです。有名なところではアーリッカという木材加工メーカーがあるわけなんです。水と森のきれいな国、これがフィンランドだったわけなんです。  ところが、フィンランド、一九八〇年代から、このままじゃ駄目だと、やはりフィンランド、自国を引っ張っていってくれる力強い経済が必要なんだということで、八〇年代以降この新しい産業育成に乗り出した。具体的には、全国にある大学を十四指定して、その近くにハイテクパークというものを全国指定したわけです。そのハイテクパークを拠点として産学官でいろいろな産業を育てていった。あるところはIT、あるところはバイオ、いろいろな形で育てていった。そうしたら、あれよあれよという間にフィンランドの産業構造が転換して、今では御存じのように世界で一番国際競争力を持つ国、ハイテク立国、これがフィンランドなんですね。  これを言うと皆さん驚かれるんですが、あのノキア、フィンランドの会社です。今でこそ世界の携帯電話会社。あれ一昔前何の会社だったかといえば、あれ長靴作っていた会社なんですよね。あれが今日、今、世界の携帯電話会社になったと。この劇的な転換というのは、正にフィンランドの変遷を物語る象徴的な出来事だったろうと思います。  要は、何を言いたいかというと、地域がそうやって国に頼らず一生懸命こうやって頑張っていった。こういった姿がフィンランドにも見られるし、またアメリカにも見られるわけなんです。また、インドにも見られるわけなんです。そういった観点で日本を振り返ってみますと、私は日本、可能性を持った地域ってかなりあると思うんですが、しかし、一部、福岡県だとか、麻生知事の旗振りの下、頑張っているところは見られますが、必ずしもそれが多くない。  そこで、地方自治体を所管される大臣にお尋ねしますが、こういったフィンランドだとか諸外国の頑張りようを見て日本はどうなのか、ちょっと御所見を伺いたい。このままでいいのかどうか。交付金だとか補助金に頼るような、このままでいいのかどうか、こういった御感想も踏まえて御所見をお伺いしたいと思います。
  23. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 去年の秋、私もフィンランドへ行かせていただきまして、政府関係者といろいろ話し合いましたし、ノキアにも行きまして、社長にお会いして、言われたとおり、内藤委員、今の携帯電話に進出するまではゴム長やホースですよね。その前は木材ですから。木材からゴム長になって、ホースになって、今は携帯電話。それが二、三十年で変わっているんですよ。だから、そろそろ次をお考えになったらと私ノキアの社長に言ったんです。いやいやもう、しばらくこれでやりますと。ノキアは今世界で一番ですからね、携帯電話で。  そういう意味で、いろいろ私も勉強させていただきましたし、今、内藤委員言われますように、やっぱり産学官の連携をやって、地域地域で、地域を単位に新しい地域産業を起こして地域経済を活性化するということが私は日本全体の経済の再生につながるということをいつも言っているんです、経済財政諮問会議やその他で。  そこで、産学官の連携では、総合科学技術会議というのが今、内閣にありまして、そこが中心になりまして、ブロックごとに産学官の会議をずっとやっている。去年、全ブロック終了しまして、今度は少し趣を変えてまたやろうと。今度はむしろ地方を中心に、今までは国のいろんな考えというのを分かってもらうというような産学官の会議だったようですけれども、今度は地方中心にしてそういうことをやろうと。私は、大変結構なことなので、総務省も全力を挙げて応援しますと、こういうことを言っておりまして、この関係で、地方財政措置としましては、ソフトの面で百五十億円、それからハードの面では、例えば貸工場だとか貸研究所だとか、人材育成のためのいろんなことをやるとか、研究開発のためのそういう予算を取るとかというようなことを含めまして、ソフトで百五十億円、ハードで八百億円、地方財政措置を取っておりますので、こういうことも是非活用してもらいたいと、こういうふうに今お願いしております。  韓国の話もありましたが、私、年明けに韓国行きまして、韓国はやっぱり政府も熱心だけれども、民間が熱心ですね。それから、若い人が熱心ですね。聞いてみると、あれは平日の昼間は地上波のテレビ休んでいるんですよ。それで、みんなインターネットやっているんですよ。いやまあ大変なもので、私も大変びっくりしました。やっぱり、ああいう韓国のチャレンジ精神を日本の我々も、あるいは関係の業界の方も是非持ってもらいたいと私も感想を持った次第であります。
  24. 内藤正光

    内藤正光君 どうもありがとうございます。  では、続きまして、ちょっとこれ具体的な話に入っていくんですが、長期増分費用方式、二年前も議論させていただきましたが、これについてお話をさせていただき、何点か質問させていただきたいと思います。  御存じのように、今年の十月には再び日米の接続料交渉が始まると。その前段として、長期増分費用方式なるもののモデルが決定されるわけなんですが、そこで、まず質問させていただく前に、二年前でしたか、この絡みで事業法の改正が行われました。その附帯決議に、衆参ともに同じ内容でこう書かれています。「長期増分費用方式は、諸外国においても実施例の少ない方式であることから、この規制方式自体の有効性については、今後十分な検証を行い、必要な見直しを行うこと。」。これは参議院の方の附帯決議ですが、衆議院の方についても同等な内容のものが付されているわけです。これは当然、いや、まあ往々にして附帯決議というのは単なる気休めだというふうに、余り重要視されないことも多いんですが、これは十分尊重されるものなんですね。
  25. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 先生、実は、二年前のあの二二・五%決めたとき、私は総括政務次官やっておりまして、この結果がどうであったかどうかというのはこれからの課題でありますけれども、附帯決議で、法律の運用におきましては、先生これは、やっぱり附帯決議というのは非常に重要なことでありますから、十分に最大限尊重していきたいと、こういうふうに私は思っております。
  26. 内藤正光

    内藤正光君 じゃ、尊重される、これは当然のことです。やっぱり附帯決議というのは国会の意思ですから、これは行政が法律の運用に当たっては最大限というか決して破ることがないようにしていただかなければならない内容なんですね。  ところで、ちょっと話をアメリカの方に移させていただきます。  二年前の話なんですが、二〇〇〇年の七月十八日にアメリカの連邦控訴裁判所、日本でいえば高等裁判所に当たるかと思いますが、長期増分費用方式に関する判決が出ていると思います。これはどういうものであったのか、教えていただけませんでしょうか。
  27. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 米国の方には通信法がありまして、接続料が料金に基づいたものであるべきことが規定されているだけでありまして、これは、要するにそういうことが規定されているだけでありまして、長期増分費用方式で算定すべきか若しくは実際費用方式で算定すべきかは規定されていないわけであります。  したがって、本件はこの米国通信法の解釈をめぐりFCCと地域通信会社との間で闘われた訴訟であります。そしてまた、その結果としまして、平成十二年七月十八日、米国連邦高裁は、長期増分費用モデルを用いて接続料を算定するべきとするFCC規則が米国通信法により授権された範囲を逸脱しており、無効であるとする判決を下したというふうに聞いております。
  28. 内藤正光

    内藤正光君 無効だということですね。その後も引き続きその関連で、連邦高裁ですか、最高裁ですね、日本でいえば、で長期増分費用方式の違憲性といいますか、これは財産権を侵害するものではないかといった趣旨の内容で審議されていると聞きますが、判決はいつぐらいに出るんでしょうか。
  29. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) そういうことでありまして、平成十三年一月二十二日に米国の連邦の最高裁はFCCによる上訴を承認しまして、審理を開始したものと聞いております。  また、平成十三年十月十日に口頭弁論が終結いたしまして、今後判決が下されるものと考えるが、その時期につきましてはまだちょっと私は聞いておりません。
  30. 内藤正光

    内藤正光君 日本が二年前になぜ長期増分費用方式を導入したか、採用したかといえば、言うまでもなく、もとはアメリカがごり押ししたわけです。アメリカのごり押しによって日本が長期増分費用方式というものを導入した。ところが、当時からも私、申し上げていたとおり、そのごり押しするアメリカはどうかというと、実はほんの一部分にしか長期増分費用方式を採用していない。トラフィックでいえば、せいぜい三%か五%しか採用していない。さらに、そのアメリカでこの長期増分費用方式が問題ではないのかという裁判が行われていると。他方、日本だけが、ちょっと言い方が悪いかもしれませんが、お人よしにも淡々とその作業を進めているというのは、私はこれはおかしいと思うんですが、どういう御所見をお持ちですか。
  31. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 今そういうことで訴訟中であるということでありまして、先生が言われるとおり、二年前に長期増分費用方式を入れてああいうふうな形になった。また逆に、米国においてはそういう訴訟が行われていると。したがって、日本におきましても、先ほども申し上げましたように、基盤局の方でモデルの見直し等を今議論をしておるところであります。
  32. 内藤正光

    内藤正光君 恐らく、副大臣日本とアメリカは長期増分費用方式とはいえモデルが違うから関係ないよということをおっしゃりたいと思うんですが、大枠は同じなんです、長期増分費用方式という考え方、コンセプトは。  そこで、一つお伺いしたいんですが、万が一、アメリカで違憲判決が出た場合どうするのか。あるいはまた、十月がこの日米交渉の時期だと言いますが、判決が十月以降にずれ込んだ場合どうなるのか、どういうふうに対応するのか、お尋ねします。
  33. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) 米国による長期増分費用方式に係る訴訟は今係争中でありまして、FCCが敗訴した場合を前提に申し上げることはちょっと難しいことでありますけれども、これからの要するに先生が言われた十月の交渉の問題、これはあくまでも決まっていることではありませんから、これからしっかりと交渉をしていきたいと。  先生御存じのとおり、バーミンガム・サミットにおいては、要するにユニバーサルサービスを確保するであるとか、そしてまた、破壊的経営にならない、NTTが破壊的経営にならないと、いろいろな条件が付いておるわけでありますから、そういう中においてしっかりと議論をしていきたいと、こういうふうに思っております。
  34. 内藤正光

    内藤正光君 一応日米交渉の時期は十月というふうになっておりますが、先ほど、話をし続けているように、当のアメリカですらこれは違憲じゃないかという議論がなされていると。その判決が出る前に日本だけが、はい、分かりましたと進めてしまうのは私はおかしいと思うんです。少なくとも日米交渉を、そんなのはアメリカがまずちゃんとした結論を出してから、その後にすべきだという、こういう私は姿勢で臨むべきだと思うんですが、いかがですか。
  35. 佐田玄一郎

    ○副大臣佐田玄一郎君) ですから、要するに、アメリカのその訴訟を見ておるわけでありますけれども、二年前にそういうふうな形で下げてきておるわけでありますから、その辺の、例えば日本の、先生が言われる、基本的な考え方は変わりません、確かに。長期増分費用方式で、減価償却の問題であるとか、どういうものを設備をやるかということは、これは違わないと思います、確かに。ただ、その中で、やってきた一つの流れの中で今があるわけでありますから、そのモデルが日本にぴったりするものをやはり考えていかなくちゃいけないと、こういうふうに思っております。
  36. 内藤正光

    内藤正光君 約束約束と、バーミンガムで約束されたとおっしゃるんですが、こういう言い方も失礼かもしれませんが、アメリカが果たしてちゃんと約束を守っている国なのかどうか、京都議定書でも何でも。そんなの、約束なんかとらわれることはないんです。これは国益なんですよ。何もアメリカがすべてじゃないんです。日本の国益を守るためにどうすべきか、どう対応すべきかと、私はそう、毅然とした対応で臨むべきだと思うんです。アメリカとの約束だから決して破れない、これは私はよくないと思います。私は、日本としてちゃんと毅然とした考え方を示すべきだと思います。是非そういった点で御所見をお伺いします。
  37. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 内藤委員のお考え、お気持ちもよく分かるんですが、アメリカの場合には、今の連邦通信法の規定が費用に基づくと書いているんですね。ところが、それは理論値でやっているじゃないかと、これが争点でしょうね、実際の費用じゃなくて。ただ、日本の場合には、あれ、平成十二年の五月の電気通信事業法の改正で長期増分方式でやりますよと法律を規定したんですね、明確に。そこはひとつ御理解賜りたい。  それで、いろんな意見がありますけれども、私は、長期増分方式も一つの方式だとは思いますよ。だから、これを直ちに、アメリカの訴訟がどうなるんで、それに影響されて我が国が直ちにどうこうということにはならないと思いますが、今、委員が言われるように、国益は考えにゃいけません。何でも、言われたら、はいといって聞く必要はないんで、そういう意味では、三年で見直しすることになっておりますから、十分今議論して、研究会でもこの前御答申をいただきましたし、いろんな御意見を踏まえて十分な検討をいたしたいと、こういうふうに思っております。
  38. 内藤正光

    内藤正光君 誤解を招かないように申し上げておきますと、私は何も実コストがいいと言っているわけじゃないんです。あれは効率化のインセンティブが確かに働かない。だが、やはり何らかの違う方式が必要なんだろうと。しかし、長期増分費用方式というのは余りにも投下した資本を回収できないですね。これがどうなるかというと、結果としては、これは国がやる事業だったら別です。しかし、民間がやるからには、民間が設備投資の主体であるからには、資金回収できなかったら喜んで設備投資しませんわね。だから、設備投資インセンティブ、設備投資意欲を結果としてうせさせてしまうものだと思うんです。  更に言えば、ますます、採算の取れる地域はまだしも、採算の取れない不採算地域と言われるところの設備の劣化が進んでいっちゃうんだろうと思います。ですから、そういった意味で私は、安ければいいというものではない、やはりそこに民間事業者設備投資しているんだということを絶えず念頭に置いて、どうあるべきかという視点が必要なんだと思います。そういった観点で、私はNTTがどうのこうのと言っているわけじゃないんです。これからは、やはり喜んで民間事業者設備投資をしてくれるような、そういう要素を通信政策の中に盛り込んでおかなければ駄目になってしまうというふうに思うんです。  こういった観点から、ちょっとこの長期増分費用方式に対する御所見をお尋ねしたいと思います。
  39. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 言われるとおり、長期増分費用方式は実際に投資した費用を回収することを保障するものじゃありませんよね、一種の、何度も言いますけれども、理論値ですから。ただしかし、その理論値はある程度努力、工夫によって可能だという前提に私は立っていると思うんですね。  だから、長期増分費用方式だと全く実際の回収とは無縁だと、こういうことには私はならないんで、そこは何らかの経営努力や経営上の工夫やそういうことを加えていただきたいと、できるだけ回収に努力していただきたいと。現に、一種の何というか、収益的なものも見込んでいるわけですから。しかも段階的にやる、三年で見直すということも、私はそういう配慮で決まったんだろうと思います。  しかし、言われる点はよく私も分からないでもありませんので、先ほども言いましたが、いずれにせよ、大きな国益を考えながら十分な研究、検討をいたしたいと思っております。
  40. 内藤正光

    内藤正光君 公社のときにもユニバーサルサービスという話が出ました。これは大事なことだと思います。やはり、完全に民間事業者同士の競争にゆだねていると、当然採算の取れない地域というのは絶対サービス提供というのは途絶えてしまうと。ユニバーサルサービス、それは大事な観点だと思います。  そこで、第二次答申の中でも電気通信にかかわるユニバーサルサービス基金の在り方が出ているわけなんですが、その基金の在り方についてちょっと何点かお尋ねしたいと思いますが、そもそもユニバーサルサービス基金を新しく設けることの目的は何なのか。原点の話なんですが、お尋ねします。
  41. 山内俊夫

    大臣政務官山内俊夫君) このユニバーサルサービス基金については、特に内藤委員の、三年前から私も一緒に、交通・情報通信委員会の時代から一緒にやらさせていただいておりますが、この辺りの的確な御指摘というのは非常に鋭いところがありますので、十分な答えできるか分かりませんが、述べさせていただけたらと思います。  このユニバーサルサービスの基金については、今回、二次答申の中で三つの方式が考えられたわけですね。その中で、相殺方式というのがございます。この相殺方式というのは、不採算地域の赤字と採算地域の黒字とを相殺した上で賄い切れない額を交付金として出すという一つの方式のやり方。そして、これはアメリカで採用されておりますが、ベンチマーク方式というものがございまして、全国平均の費用を一定以上上回る地域の、その上回る費用を合算した額を交付金として出すというやり方。そして、三つ目には積み上げ方式というのがございまして、これは不採算地域の赤字部門のコストを積み上げた額を交付基金として出すという、この三つのやり方があるわけでございます。  したがって、その三つの中から、この第二次答申は、地域通信市場における競争の進展に応じて基金を稼働させることが適切であるという観点から、競争の進展とかかわりなく基金が稼働する方式を採用したという、言わば安易にこの基金を稼働させちゃならないというところをバランスを取りながらやろうということで日本方式を採用したということでございます。
  42. 内藤正光

    内藤正光君 交付金の配分基準ですね。相殺型、積み上げ型、ベンチ方式型、この三つがいろいろ御説明していただいたように検討されて、最終的には相殺型から入って速やかにベンチマーク方式へ移行すると。  それを作ったそもそもの目的はでは何なんでしょうか。そもそも論ですが。
  43. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 先生承知のとおり、今まではNTTユニバーサルサービスということで、採算の合わない赤字地域は黒字地域で補てんをしていたということだと思います。ただ、ここでも御議論ございましたように、競争が激化をして、都市部門ではやはりなかなか競争が激化をして稼ぐ割合というのが少なくなってきているということになりますと、赤字部門については従来どおりユニバーサルサービスということでNTTは適切なサービスをする必要がございますので、その差が逆転をしてくると。要するに、競争が進展をすればするほど差がなくなって、ついには逆転をするということだろうと思います。  そういう状況を踏まえて、それならば黒字から赤字を補てんできなくなった時点においてユニバーサルサービス基金を導入をして、そこは赤字部門でも便益を受けているほかの事業者からも負担をしていただくということで、今回、スムーズな移行ということも踏まえて相殺方式というものを採用したということでございます。
  44. 内藤正光

    内藤正光君 ユニバーサルサービス基金をまずどういう形態にせよ設けた目的というのは、やはり競争環境の中でユニバーサルサービスというものをどうやって維持していくか、これが一番の目的であったというわけですね。それで、いろいろ昨年から議論が始まってきたと。で、最終的には相殺型ということなんですが、ちょっと局長おっしゃったことは後からまた議論をさしていただくとして、じゃ、三つの方式が検討されたと。  各国いろいろな方式、ファンドを作っている国々、いろいろな方式採っていると思うんですが、どの方式を採用しているのか御説明していただけませんでしょうか、ヨーロッパはどういう方式なのか、アメリカはどういう方式なのか。
  45. 山内俊夫

    大臣政務官山内俊夫君) 諸外国においては、ユニバーサルサービスを維持するためのコストを既存の業者のみに課するということはこれは不公平だという考え方の下に、日本でいえばNTT、これは既存の業者、ユニバーサルサービスをある程度義務付けられておりますね。そういったものがございますが、この段階で実は基金制度を導入しておりまして、二〇〇一年、これは十一月に出されましたEUの委員会広報ですね、これには、EU十五か国のうち、現時点で基金制度を導入しているのはフランスとイタリアの二か国でございます。両国とも不採算地域の赤字部分のコストを積み上げる方式、先ほども言いました積み上げ方式にて採用しております。これは、イタリア、フランス、テレコムがやっておりますが。また、二つ目にはイギリスですね。イギリスは、不採算地域の赤字部門のコストを積み上げる方式を採用しておりますけれども、まだこの基金は稼働はさしておりません。  そして一方、先ほどアメリカ方式と言いました、アメリカの連邦制度は、全国平均の費用を一定額以上上回る地域、これの平均を出しまして、その平均から費用平均の一三五%というラインを超した段階においてはこのベンチマーク方式によって交付金を支給するという方式を採っております。
  46. 内藤正光

    内藤正光君 日本が採用することとなった相殺型を採用している国はあるんですか。
  47. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 私どもが知る限りでは、日本だけだろうと思います。
  48. 内藤正光

    内藤正光君 相殺型、もし日本がこれで採用するとなったら、日本のみということになるわけですね。  で、相殺型、ぶっちゃけて言えば、東日本、西日本NTTがあると。東なら東、とにかく赤字のところもあれば黒字のところもある、それを全部足し合わせて、マイナスだったらばその分ファンドから拠出しましょう、プラスだったらば出しませんよということですね。つまり、内部補てんをして出せということですね。  私は、これをやると、正直言いまして、さっきの長期増分の話じゃないですが、不採算地域設備投資が進まなくなってしまう、もっと言えば老朽化が進んでしまう、そんなふうに私は危機感を持っているんです。なぜかといえば、仮に例えば東日本だったら、東京がある程度収益を得ているとします、東京で黒字を得ている。一方、不採算地域があったとします。そこは、ユニバーサルサービスの維持のために設備投資をしなきゃいけない、あるいは設備更改をしなきゃいけない。しかし、もうけはないというのは分かっている。しかし、義務があるから設備投資しなきゃいけない。しかし、設備投資したところで、東京の方で十分な黒字が積まれているからファンドからは一銭も出ないわけです。分かっていながらやらなきゃいけない。普通、民間事業者というのは喜んでそういうことをやるのかどうか、私は大いに疑問に思うんです。  ファンドのそもそもの新設の趣旨というのは、不採算地域においてユニバーサルサービスをしっかり維持していこうというのが本来の目的だったわけなんです、元々の。ところが、この相殺型というのはこのファンドの趣旨に合致しないんじゃないのか。  この中にもいろいろな地方から選出された議員おります。本当は東京から選出された議員もいらっしゃるんでしょうが、神奈川とかそういったところ。不採算地域から選出された方々も多いと思うんです。そういった方々は考えていただきたいんですが、相殺型を導入すると必ずその地域設備の老朽化が進んでいくんだろうと思います。なぜかといえば、相殺型、決してファンドがちゃんと拠出されないから、民間事業者としては喜んで設備投資しっこないんです、絶対に。  私は大きな問題だと思うんです。そもそものファンドの設置の目的と大きくずれた拠出方法が相殺型ではないのかなというふうに思いますが、いかがお考えですか。
  49. 山内俊夫

    大臣政務官山内俊夫君) 委員、おっしゃっておりますのは、確かにこの相殺方式でありますと、赤字地域を補てんするという、それはもう事業者がかなり補てんをしていく、ですから新しい設備に対するインセンティブが行われないというような不安があるということなんですが。  昨日も、たしか世耕議員の方から質問がございました。二重に事業者が負担するんじゃないか、特に日本の場合、この方式だとNTTが二重に負担するんじゃないかという心配がある。だから、事業者としては非常にその辺りは一生懸命やれなくなってしまう、地方の切捨てになるじゃないかという意見だったと思うんですが。  今回、この基金制度を導入することによって不採算地域の赤字が採算地域の黒字を上回れば基金から補てんされるということになります。従来のに比較して、ユニバーサルサービス提供事業者の負担はかなり私は軽減されるものと考えておるわけなんですが。    〔委員長退席、理事景山俊太郎君着席〕  それと、これは少しブランド的な名前で、観念的なことになりますから、東西NTTは、これは全国的にサービス提供しておりますから知名度とかブランド力というのはかなりあると、こういったことも一応配慮もして、考慮しておるということも御理解をいただけたらと思うんです。これは、イギリスはこの費用に対して、じゃ、ブランド力をどの程度数字を出すんだというようなことを言っておりますが、七、八千万ポンドぐらいは、そのぐらいのブランド力はあるんじゃないかと言われておりますが。  それと三つ目になりますけれども、これは、基金は電話ネットワークを維持していくものでありまして、決して今から行いますブロードバンド関連サービスのように今後大幅な、膨大なお金が掛かるというものではないという認識がございますから、この相殺方式を採用したというところにもなっております。  また、この地方と都市との競争進展の違いを考慮すべきだという点でございますが、これは地域間補てんができなくなった時点をこれ稼働時期ということにしておりますから、地方と都市間の、都市の競争進展度の違いを踏まえたものでこの相殺方式を取っております。ですから、先ほど、冒頭申し上げましたように、安易には稼働しないけれども、確実に補てんはしていきますよというメッセージと受け止めていただけたらと思います。
  50. 内藤正光

    内藤正光君 昨年の、当時、小坂副大臣議論させていただいたときに、やはりこのファンドの設置目的というのは不採算地域においてユニバーサルサービスの維持を実現するものだから、だから都市部とは切り離してファンド設計しますよといった趣旨の答弁がちゃんと出ているんです。私は、都市部と地方を合わせてプラスだったら出しませんよとかマイナスだったら出しますよとかいうのは、私はその答弁に大きく反するものだというふうに思います。  それこそ、何度も言ってくどいようなんですが、東京、例えば、西だったら大阪の方で仮に十分な黒字が出ている。で、不採算地域。普通、民間事業者だったらこう考えますよ。本当だったら五年で設備更改を進めていかなきゃいけない、だけれども設備更改したところでお金は絶対損するに決まっているわけだから、五年を六年に延ばそうとか七年に延ばそう、あるいは十年に延ばそうと更改周期を延ばす。これは普通の民間事業者の行動ですよ。そうなると、設備の老朽化というのはますます進んでいく。ましてや、最新の設備を投下しようなんという、インフラ整備をしようなんというインセンティブはどこにもなくなっちゃうんです。  であるなら、私は、少なくともヨーロッパ諸国が採用を決めているように、積み上げ型というのが一番私は素直な方式なんだろうと思います。あくまでファンドというのは不採算地域をどうするかという、そのために作られたものなんですから、都市部でもうかっているかもうかっていないか関係ないんです。不採算地域でいかに設備投資を進めるか、これがファンドの設立趣旨だったわけですから。実際にヨーロッパ諸国ではそうしているわけなんです。都市部は関係ない、地域で赤字だったらその分補てんしましょうと、黒字だったらばという。私は、どうも東、西それぞれ合算してプラスだったら出しませんよとかマイナスだったら初めて出しますよというのは、私はおかしな話だと思います。  そして、時間もありませんので、次、もう一つ言います、ベンチマーク方式。  先ほど、アメリカの方では一三五%を掛け合わせていると。つまり、各地域設備投資コストを長期増分費用方式に基づいて算出する。東京のようなところは効率いいから多分少ないでしょう、北海道のようなところは広いから多くなるでしょう、凹凸がある。しかし、その平均値を出して、平均値にある一定の値、アメリカだったらそれが一三五%、掛け合わせる。これで、この線の上に来た分だけを足し合わせてそれを拠出しましょうということなんですが、この一三五%の算定根拠は何なんですか。なぜ一三五%を掛けたんですか。
  51. 山内俊夫

    大臣政務官山内俊夫君) このアメリカのベンチマーク方式というのは、実はもう既に一九八五年にスタートしておりまして、かなりの歴史があります。ですから、全体の平均というのがある程度数字的に出てきておりますから、それに対して平均値を取って、それから一三五%という一つの区切りを付ける、それ以上については交付金を出していくというやり方ですから、かなりの歴史があるわけですね。  ですから、今回の第二次答申においてもそういう方式もいろいろ検討をいたしましたけれど、まだ日本はその辺のデータが、データベースがありません。ですから、二年ごとに大体見直しを掛けながら、ある程度それが蓄積されればその時点考え方というものは、日本もベンチマーク方式に移行すると非常にベターじゃないかというときには検討していくという考え方にはなろうと思いますが、今、当初、制度発足当初においてはこのベンチマーク方式はなかなかまだ採用は少ししにくいかなというところです。
  52. 内藤正光

    内藤正光君 いずれにしても、相殺型は取りあえず導入しておいて、できるだけ速やかにこのベンチマーク方式に移行すると。  で、ベンチマーク方式に移行するからには、その平均値に掛け合わせる値が必要なわけですね。アメリカの方では一三五%。聞いてみると、一三五%の根拠、十分な説明できないんですね。はっきり言えば、今となっては全然論拠がないわけなんです、なぜ一三五なのか。一二〇といっても、別にそれはそれで説明できないんです。一二〇と一三五、どっちがいいかって説明できないんです。これが実は問題なんです。  なぜ問題なのかというと、いろいろな事業者間のいろいろな駆け引きで余りファンドからお金を配分してほしくないとなれば、総務省がこの一三五という値をそれこそ二〇〇%に上げたらこれだけこの平均値は上がるわけですから、この上に来るグラフがなくなる、少なくなる。ということは、すなわちファンドからの配分額が少なくなっちゃう。それこそ、この掛け合わせる値を一〇〇〇にも二〇〇〇にもしたら、それこそ一銭も払わなくてよくなってしまう。かといって、この掛け合わせる値が論拠がない。根拠がないわけですから、何が正しいとか何が間違っている、大き過ぎる、小さ過ぎるということが議論できないわけなんです。    〔理事景山俊太郎君退席、委員長着席〕  これは何を私は言わんとしているかというと、ここは裁量が入り込む余地がかなり大きいということなんです。余りファンドからお金を出したくないとなれば、この掛け合わせる値を大きくして、ベンチマークの値を大きくしちゃえばいい。これは私はいかがなものかと思うんです。  私は、ベンチマークという方式、仮に採用するにしても、だれもが皆納得できる値を、算出式をやっぱり提示しなきゃいけないと思うんです、私は、同時に。後から逆算するのではなくて、今のうちから、ちゃんと論理的に計算するとこうなるんですよという計算式というものを出さなきゃいけないと思うんですが、それをちょっとお尋ねします。
  53. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 正に先生おっしゃったことで、今回ベンチマーク方式を採用できなかったということでございます。  審議会の中でもいろんな方々、業者を含めましてヒアリングございました。そこでベンチマークという話も出たんですけれども、そのベンチマークを採用できない最大の理由は、じゃ、そこの一三五にするのか一二〇にするのか、そこは何の根拠なんだと、正に今、私どもデータはございません、ということでベンチマーク方式というものを見送ったということでございます。  ただ、今後、相殺方式においていろいろな計算をしてデータがそろってまいります。そうした場合には、おっしゃるとおり、私ども裁量でやるつもりはございません。デュープロセスをはっきりして、その算出根拠あるいは算出のその根拠になるデータ等をお示しをして、で、ベンチマーク方式の算定方式はどうなるのかということを決めていきたいというふうに思っております。
  54. 内藤正光

    内藤正光君 私は、相殺型は言うまでもなく、ベンチマーク方式もやりようによっては、先ほどの繰り返しではございますが、いわゆる不採算地域において設備投資インセンティブが全くなくなってしまう。結果として、設備の老朽化は進むし、技術革新はその地域においては進まなくなってしまう。私は、こういった問題を指摘をさせていただきたいと思います。  ですから、やはりファンドの設置目的は何なのか。それは言うまでもなく、いかに不採算地域と言われる地域にちゃんと設備更改をしてもらってユニバーサルサービスを維持してもらうか、競争の環境の中で、これがそもそもの目的なんです。この原点に立ち返って、本当にこの拠出基準がいいのか、配分基準が正しいのか、妥当なのかどうなのか、私はいま一度検討を深めていってもらいたいと思います。  私は、設備投資インセンティブをうせさせるような通信政策というのは絶対私は維持できないと思うんです。やっぱり、民間主導と言うからには、やはり民間が喜んで積極的に設備投資をしてくれるような環境が必要なんだろうと思います。くどいようでございますが、こういった原点に立ち返っていま一度御検討をしていただきたい、このことを申し上げて、最後の放送事業に関しての話をさせていただきたいと思います。  三月八日でしたか、NHKのインターネット利用に関するガイドラインが出されました。私は、今までも議論しておりますから、私の言わんとすることは分かる、理解していただけるかと思いますが、やはりブロードバンド時代、これはNHKに限ったことじゃないです、放送事業者が持っているコンテンツの二次利用というのは貴重なものなんだろうと思います。そしてまた、これというのは私たち国民が待ち望んでいることなんだろうと思います。  私もよく、本当は毎週毎週欠かさず大河ドラマを見るようにしているんですが、やっぱり仕事の関係で地方に行ったりすると見れない。妻に録画しておいてねと言っても、まともに録画しておいてくれない。そういうことが結構多い、結構見逃してしまうということが多いんです。それで、もう妻にはよくちゃんと今度こそは録画しておいてねとお願いするわけなんですが、やはりそこでインターネットで見られるとなれば、これは私は大変喜ばしいこと、うれしいことなんだろうと思います。  NHKに限らず、民放でもすばらしい、二度見たい、三度見たいという番組ってたくさんあるんです。やはり私は、昔は放送、インターネットなんてそんなになかった、ブロードバンドもなかった。だからこそ放送事業者が電波をばあっと放出してそれを見るしかなかった、リアルタイムで見るしかなかった。しかし、今ではブロードバンドインターネットというのが普及しているわけですから、普及しつつあるわけですから、こういった技術の進展を踏まえてやはり考え方も変えていかなきゃいけない、そういうふうに思うんです。  それで、ブロードバンド時代、この放送コンテンツの二次利用を下手に抑制してしまったら、私は、ブロードバンドを作ったはいいけど何を通すのなんてことになりかねないと思います。  そういった観点でこのガイドラインを見てみますと、どうも事業者側の論理だけで何か決めてしまっていることが多いな、二次利用を抑え込んでしまっていることが多いなというふうに思うんです。  例えば、NHKがこういった二次利用をするに当たっては十億円を上限とするとか、あるいはまた、一週間程度載せてもいいけど、それを超えたらもう削除しなきゃいけないとか、私はこれ、利用者の利便を全く考えていない内容だと思うんですが、このことに対するちょっと御所見なりお考えを求めたいと思います。
  55. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今言われますように、ブロードバンド時代におけるコンテンツの、いいコンテンツの二次利用というのは私も大変重要なことだと、こう思っております。それは、一番いいのをたくさん持っているのはNHKですよね。そこで、NHKのこのインターネット利用についてのいろんな議論がありまして、いやこれはやかましいんですよ、民放連さんや新聞協会その他。そこで、中を取ったような今のガイドラインなんですけれども、NHKは公共放送でしょう、受信料でしょう、それから今チャンネル三つありますから、民放にとっては大変な脅威なんですね。そういうことで、何でも手を出すのか、受信料でと、こういう議論があるわけです。  一方、ブロードバンド時代ですけれども、これからもっともっと技術革新が進みますよね。そういうことになってどうなっていくのかということもまだ今定かでない段階で、我々としては取りあえずのガイドラインを関係者のほぼ合意の下に作らせていただいたんですが、私は見直したらいいと言うんだ、幾らでも。今後見直すと。それから、おかしいことがあったら是正を求めると、当方が。こういうことをしてガイドラインをこの前発表させていただいたんですが、あれでもやっぱりけしからぬという意見がかなりあるんですよ。十億円も一週間もですよ。だから、しかしそこは、今言われたようなコンテンツの有効利用という観点から御理解を賜ろう、こう思っておりますので、今後とも十分見直してまいります。
  56. 内藤正光

    内藤正光君 私は、NHKに限らず、放送事業者の持っているコンテンツというのは私はブロードバンド時代に不可欠なものだろうと思います。そういった観点に立って、決して事業者の論理に立つことなく、ユーザーの立場に立ってどうあるべきなのか、こういった観点で是非とも見直しを行っていただきたい。  そして、確かにNHK大きい、ほかが小さい。でも、これを守り続けると結局護送船団になっちゃうんです。護送船団の行き着くところは何なのか、金融業界を見たって明らかなんです。私は、この二十一世紀の日本を引っ張っていく情報通信分野を護送船団でもって駄目にしていただきたくない。是非、これは片山大臣を始めとする賢明な皆様方のお知恵、お考えでもって見直すべきところは早急に見直していただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。
  57. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。  これまでも取り上げてきましたNTTのリストラ問題がいよいよ大詰めを迎えております。そこでまず、大前提からお伺いします。  小泉総理は、昨年十一月十六日、衆議院本会議で、この件について、転籍に関する最高裁の判例を踏まえて適切な対処がなされると答弁いたしました。また、今年二月十四日の衆議院予算委員会で、坂口厚生大臣は、法令に違反をしていることがあれば厳しく指導すると繰り返し答弁いたしました。  そこで、総務大臣も、総理と同じく、転籍に関する法理を踏まえて適切な対応がなされるべきだと、これはよろしいですね、総務大臣
  58. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 確認いたしておりませんが、議事録に残っておればそのとおりであります。
  59. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 是非その点しっかりと踏まえていただきたいと思うんですが、既に春名議員が明らかにいたしましたが、この一月に雇用形態選択通知書なるものの提出がNTT東西会社の労働者に強要をされました。議場に配付いたしました資料の①にそれが付けてございます。  これを見ると、繰延型、一時金型、六十歳満了型の三つから一つを選ぶことになっております。ところが、今の会社に残れるのは六十歳満了型だけで、他の二つはどちらも新会社に移って、給与は一気に二〇%から三〇%もダウンすると。しかも、「本通知書の雇用形態の選択欄に○がない場合、並びに、本通知書の提出が期限までにない場合は、満了型を選択したものとみなします。」と下から二行目に書いてあります。かといって、六十歳満了型を選ぶと、全国の事業所において勤務事業所を変更されると書いてあります。  これは、あからさまな不利益変更を複数提示してその中からどれかを選べというもので、こういうことが許されるかと私は思うんですが、大臣、許されないと思いませんか。
  60. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 御承知のように、NTT東西を取り巻く環境が大変厳しゅうございまして、かなりの赤字も出ている、こういう段階で、どう構造改革をやっていくかということで悩んでおりまして、そのためにいろんな知恵を出して労使の間で御議論いただいているということは承知いたしておりますが、労使間の問題に私どもの役所が直接、ストレートに入っていく、こういうことはいかがかなと、こういう認識を持っておりまして、雇用形態選択通知書について今お話しございましたが、これがいいとか悪いとかどうだとかということをコメントする立場にはないということを御理解賜りたいと思います。
  61. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 選択の自由はきちっと守られるべきだとお考えですか。
  62. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 済みません、何ですか。
  63. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 選択の自由は守られるべきだとお考えですか。
  64. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 選択の自由。
  65. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この選択。
  66. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) それは、そういうことで選択のためのあれを出しているわけじゃないでしょうか、というふうに私は思っております。
  67. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 これが本当に選択の自由、保障された形での真の意味での選択なのかということを私は問題にしたいと思うんです。  私は、この間、八田議員と一緒に各地、現場を調査してまいりました。私は、地元大阪で生々しい実態をこの耳で聞いてまいりました。例えば、西日本会社の大阪支社、パーソナルユーザー営業部のある女性社員は、選択通知書の満了型に丸を付けて上司に提出した。ところが、この上司は、満了型を選ぶと将来この会社を辞めなくてはならなくなる、満了型を選んだ人間は変なグループと一緒に見られる、会社は今度こそそのグループは見せしめにすると言って、満了型を選ぶことをあきらめさせたと。女性社員が、変なグループというのは通信労組のことかと聞くと、そうだと答えたと。こういう証言がございました。  こういうことになってきますと、明らかな、事実上の強制ということになるんじゃありませんか、大臣
  68. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 先ほど言いましたように、これは基本的には、何度も同じことを繰り返すことになりますが、労使間の問題でございますし、我々は事実も詳しく存じ上げませんし、所管する関係の法規も違う、立場にもありませんので、いいとか悪いとかどうだとかということのコメントは、そういう立場にないということで御理解賜りたいと思います。
  69. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 そういう逃げは許されないと思うんですよ。  NTTという会社は、NTT等法によって法律できちっと規制が掛かっている会社なんです。NTT等法の十六条には、総務大臣、あなたがこの法律の定めるところにより監督するとなっておりますし、十六条の二では命令まで出せる、十七条では報告を徴取することもできると。つまり、あずかり知らないという会社ではないんですよ。  しかも、冒頭確認したように、総理も、転籍に関する最高裁の判例を踏まえて適切な対応がなされるべきであると。その立場に総務大臣も変わりがないと言っているわけで、事実上の強制はないという説明だったじゃないですか。事実とすれば問題だ、そういう事実は確認できないということはおっしゃるかもしれないけれども、強制があるとすれば具合が悪いとはお答えになると思うんですが、いかがですか、大臣
  70. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) NTT法は、業務や組織やいろんなことについての一般的な監督権はありますけれども、基本的には、この雇用条件というのか、この問題は労使自決ですよね、もう釈迦に説法で、今更宮本委員にそんなことを私が申し上げるのもあれでございますが。  だから、これは労使で十分御相談して合意に達して事を進めていただくと、こういうことでございまして、十分な労使の御相談の上の合意と、こういうことを私は申し上げておりますので、それがもし仮に若干でも欠けるということがあるなら更なる努力をお願いしたいと、こういうだけのことであります。
  71. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 労使が合意しても、法令を踏みにじるような労使合意は許されないんですよ。ましてや、今話に出ているのは、それは特別の労働組合との関係はどうか知らないけれども、別の労働組合のことについてはこういう言明がなされているということを今紹介したわけですからね。  それで、同じ大阪支社の設備ネットワーク高度化推進プロジェクトチームのある職員には、複数の上司による面談が繰り返され、五回目で遂に満了型をあきらめざるを得なかったという証言も得ました。  そもそも、この問題、東西会社の社員でどれだけの人数がこの対象となり、事前の意向調査ではどの選択肢を何人が選んで、提出された通知書でどう変わったと、こういうリアルな実態を総務省は把握しておりますか。これは局長にお伺いします。
  72. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 大臣が御答弁されておりますように、私ども、そういう個々の数字については把握をいたしておりません。
  73. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 十一万人という労働者の正に身分にかかわる、これアウトソーシングなんですよ、私たちはリストラだと思いますけれども。  その中で、本当に今労働者の間で不安が広がっている。その中身をつかんでいないというのは、私は実に問題だと思うんですけれども、総務省にお尋ねしたら、二月の二十二日付けで私のところにお答えがありました。資料②に付けました。先ほどの答弁どおり、つかんでいないと。そして、現在NTT東西においては、退職、再雇用となる社員数については集計中だという、こういう答えでありました。これは総務省からいただいた答弁ですよ、資料の②というのは。  これは、しかし同時に、私ども資料の、今日、③に付けましたけれども、「雇用形態選択に伴う課題と対処方針」、これはNTTの企画部業務運営改革プロジェクトチームが一月三十日にまとめた報告書です。この報告書を見ますと、既に一月の三十日時点で、③の2を開けていただけば、東日本会社の全体で六十歳満了型を選んだ人数が八百二十四人、一番下の段ですね、三%。そして、退職、再雇用を選択した方が二万五千五百三十四人と、支店の別まで詳細に把握しているわけですよ。  これは総務省に、これ、二月の二十二日時点でもまだ集計中だというけれども、ちゃんと会社はこうして既に掌握している。これは事実と違う報告を総務省にしたということではないですか。
  74. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 私ども、繰り返しになりますけれども、そういう個々の数字は聞いておりません。  ただ、退職、再雇用の人数につきましては、共産党の方に御提出しました、この資料の②にありますように、従来聞いておりました。十一月、これはNTTあるいはNTT東西が発表した数字でございますので、その退職、再雇用の対象となる社員が五・五万人というのはその時点で発表されたものですので、共産党さんの方に御提出をしたということでございます。
  75. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この数というのは、いいですか、今までNTTの職員だった方が退職して、そしてこの別会社に、二割、三割給料下がって働くという、こういうことが今やられているわけですよ。そしてその選択がずっとやられてきたわけです、選択通知書を書かせてきたわけですよ。これ、一体どういうふうに進められているか。  国会では繰り返し、大臣総理大臣も、きちっと本人の意思あるいはその選択の自由ということは保障されるべきだと言いながら、これが現場では、事実上九七%まで結局退職、再雇用になっているわけですよ、これは。その中身をやっぱり一つ一つつかんで、法令に違反するようなことがやられないか、本当にきちっと社会的な責任を果たした形で進められているかということをつかむのが当然だと私は思います。ここまでして退職、再雇用を労働者に押し付けたということだと思うんです。  ところが、その行く新会社というのはどういう会社御存じですか、皆さん方。NTTを退職して今度行く会社、資料の④に、私、今度設立される新しい会社の設立登記の謄本をお付けいたしました。その目的に掲げられた業務内容を見ていただきたい。  例えば、④の1とした資料では、十八、宅配便、クリーニング取次ぎ、十九、くじ、チケットの販売と、こうなっております。また、④の3に付けましたが、設備系の会社、こちらはもう一つの、静岡県内のこれは会社ですけれども、十一番、とび・土木工事業、十九番、古物というんですか、骨とう品の売買業。そこまで新会社はやると、こうなっているんですよ。  このくじとか骨とう品とかというのは一体だれが販売することになるとお考えですか。局長でもいいですけれども。
  76. 鍋倉真一

    政府参考人鍋倉真一君) 繰り返しになりますけれども、私ども、こういうことにつきましては、労使関係の問題でございますので、一切コメントする立場にないと思っております。
  77. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 驚きですね。  こういうことがやられていて、しかもNTTという、あなた方が所管する職場で何がやられようが知ったこっちゃないと、そんな態度はないでしょう、それは。  大体、NTTというのは元々電電公社で、逓信省じゃないですか。民営化されたJRだってもう少し国土交通省、運輸省は中身に注意を払いますよ。本当に、何をやってもいいというその態度は本当に許せないと私は指摘せざるを得ません。これは偶然に起きていることじゃないんですよ、こういう会社になってきているというのは。  昨年十二月六日付けの読売の紙面でNTT持ち株会社の宮津社長は、このアウトソーシング計画についてこう言っているんです。「スリム化で東西は食べていけるようになる。」、「心配なのは、東西から人員が移る地域別の新会社だ。」と。新会社が最初から赤字になると分かった上でこういうことをやっているんです。宮津氏は今年の二月六日の記者会見で、新会社の社員が従来の仕事だけで給料をもらおうとするのはどだい無理な話だと言い放っております。  最初の選択通知書では、従来の仕事を続けたかったら退職、再雇用を受け入れなさい、満了型を選んだら今までの仕事続けられませんよと言って退職、再雇用を選ばせる。選んでアウトソーシング会社に行ったら、今までの仕事で給料をもらえると思ったら大間違いだと。それこそ、くじでも骨とう品でも何でもやれということになっております。  これは約束違反ということになるんじゃないですか。こんなことが本当にまかり通っていいとお考えですか。政治家として大臣、政治家としてこんな話がまかり通っていいとお考えになるか聞かせていただけますか。
  78. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) やはり、東西NTT、生き残りのためにいろんなことを考えているのでしょう。そういう中で、労働組合といいますか、そういう関係のところと十分協議をしながら、いろんな案を出して、それを実施しているんだと私は思いますよ。新しい仕事をやるからおかしいということはないと思いますよ。そういう需要があるんなら新しい仕事をやられてもいいんで。  だから、一概にそれはおかしいんだということではなくて、やっぱり企業として、企業体としてどうやって生き残って、この厳しい競争の中でやっていくかということを私は考えているので、そこはそこで我々も認識してやらなければならないのではないかと、こういうふうに思っております。
  79. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 生き残りのためにいろんなことを考えることは別に勝手ですけれども、だからといって詐欺のような、だまし討ちのようなことを考えることは許されないんですよ。  それなら初めから、こういう仕事になりますよ、くじの販売、骨とう品の販売などなどやってもらいますよ、いいですかといって選んだんだったらいいですよ、違うじゃないですか。今までの仕事をやりたかったらこれを選べと言っておいて、そして選ばなければ、満了型、残ると言ったら今までの仕事できないよ、全国どこでも配転がありますよと言っておいて、そしてやむなく今までの仕事が続けたいからと選んだ人に対して用意されているのは、今までの仕事ができると思ったら大間違いだと公言するような仕事になっていると。確かに、会社登記の中身を見たらそういう項目が入って、お弁当屋さんとかというのが入ってきていると。こういうことが問題だということを言っているんですね。これは実は、そういうことはきちっとあらかじめ準備されて進められてきたんです。  NTTの福岡支店では、選択通知書の終わった二月下旬に職場単位で新会社についての説明会が行われた。そこでは担当者が、今までの仕事ができると思ったら大間違いだと。支店で作った「営業系OS北部九州地域会社の運営に向けて」という資料を出してきたと。資料の⑥の2に付けてあります。これは福岡支店ですよ。ここでの資料を見ますと、はっきりお弁当屋さんとか各種イベント委託ということが出てきますし、その下には墓地の清掃、献花、管理等と、こういうものまで業容拡大の中に入っているわけですよ。  しかも、こういう仕事を一体どういう方々にやらせていくかと。それも資料の、いいですか、③の6を見てください、最初に私が挙げたNTTのプロジェクトチームの文書ですよ。これ、全国の選択した方々を一覧にしているんです。下から四段目、「必要人員に対する過欠状況」、つまり今までの仕事で進めていく上で人員がどれだけ多いか少ないかという、これが過欠状況ということですね。最初から七つについては三角が付いていますから人が足りないと。首都圏、茨城、栃木は人が足りないんです。しかし、群馬から北海道まで見てごらんなさい、全部三角ないでしょう。人が余っているんです。つまり、首都圏の一部以外は、この方々はさっき言ったお弁当屋さんとかあるいは墓地の清掃とか、そういう仕事をさせようということになっているんですよ。  これは本当に最初の説明、裏切りになると、そういうふうにお考えになりませんか、大臣大臣、どうですか。
  80. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) いや、大変難しいことを言われますけれども、しかしそれはいろんな労働組合の方も十分労働組合に入った方の利益を考え議論して私は結論を出されると思いますよ。それは全く職を失うよりは、いろんな新しいことをやるということもあるのかなということじゃないでしょうかね。かなりの方はやっぱり従来の仕事をやると、こういうあれですから、一々その個別についていろいろ委員から指摘をされても、それ私に答えろというのはなかなか難しいですね。  私は何度も同じことを言いますけれども、労使が十分な協議等の上に立った合意を実行することではないかと、こういうふうに考えております。
  81. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 こういう転籍という問題についての合意というのは労働組合だけで取り結んでも、最終的には個々人の意思が大事なんですよ。そして、その個々人の意思を選択するときのその説明にうそがあれば、これは事態は変わってくるわけです。  それで、転籍に関する判例を踏まえてと、総理もおっしゃった、総務大臣もお認めになったので、ひとつ、ちょっとこのまま話ししていても、どだい法律論というのがどこかへ行ってしまいますので、今日は厚生労働省に来ていただいていますので少しお伺いしたい。  それで、転籍に関する最高裁の判例を言うならば、日立製作所横浜工場事件についての一九七三年四月、第一小法廷判決がリーディングケースだと思います。この判決は労働契約の一身専属制を理由に、転籍には労働者本人の同意が必要と明確に示したものだと思うけれども、間違いございませんか。
  82. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) 今、御指摘の最高裁判決におきましては、転籍につきまして、御指摘のように労働契約の一身専属的性格にかんがみ、労働者の承諾があって初めて効力が生じ得るものと判断しておるものでございます。
  83. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 この判決をよく読んでみると、この日立製作所の事例というのは、いったんは本人が転籍を承諾していたという事例なんですよ。転属の承諾の有効性について、このケースで最高裁はどのような判断を示したか、簡潔に御説明いただけますか。
  84. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) このケースにおきまして最高裁判決では、原判決、東京高裁の判決ですが、ここにおきまして被控訴人がその転属先会社で就労させてもらえるものと信じて転属を承諾したのに、当時既に転属先の会社ではその就労拒否を決定したものであるから、その承諾は要素に過誤があり、無効と言わざるを得ないという判断した点につきまして正当という判断をしているものでございます。
  85. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 つまり、一度そういう条件で承諾をしたとしても、その後、その前提となっていた会社説明が事実と違っておれば、社員はやはり事実と違う、さっきの承諾は撤回するという権利を持っているということがこの最高裁の判例でも示されているんです。  その点をわきまえて、この説明に無理があった場合、うそがあった場合、その場合はやっぱり改めて本人がその考えを改める、そのことは尊重すべきだと、大臣、これ一般論としてはそう思われるでしょう、大臣
  86. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) それは事実認定の問題ですね。やり取りの問題もありますから、それがそうだとかこうだとか、ちょっと私が言うのは差し支えがあると思います。
  87. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 最初の質問のところで、特定の労働組合に対する報復が職場で公言されたと私先ほど言いました。  資料の①をもう一度見てください。繰延型、一時金型、六十歳満了型の三つから選ぶんですが、今の会社に残れるのは六十歳満了型だけなんですね。しかも、繰延型及び一時金型を選択する方は本通知書をもって退職、再雇用願に代えると。この通知書を出したら、もう退職願を出したも同然と、そういう断り書きまであるわけです。  このようなものの提出を拒否したからといって、見せしめに全国どこにでも飛ばすというようなことがあってはならないと私は思うんですけれども、ましてや労使の間でと総務大臣繰り返し答弁されますけれども、先ほど話題に上った通信労組というのも労働組合ですよ。その特定の労働組合の職員を丸ごと敵視するというような発言は、これは適切でないと、これぐらいは総務大臣、お認めになっていただけるでしょう。あったとすれば。
  88. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 何度も言いますけれども、労働組合の方は労働組合法所管のところに聞いていただく方がいいと思いますが、NTTにおいては関係の法令を遵守して適切に労働組合等との対応が行われているものと私は考えております。
  89. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 これは現場で特別な管理者が口にしたという問題ではありません。  先ほど紹介したNTTのプロジェクトチームが作った内部文書、資料③の4というのを開けていただきたい。会社自体がそのような方針を持っていることをうかがわせる記述があります。  資料③の4のこの「具体的課題」、これは「雇用形態選択結果に伴う課題」というところですけれども、AからGまで課題が挙げてあって、最後のGというのを見てください。Gとして、「特に、組織的選択者の対策必要」だと、こう書いてあります。つまり、同じような職場で同じ選択をした約三百八十人のうち、百十人については組織的に満了型を選んだんだから他の労働者とは違う対応が必要だということをここで検討しているということがはっきりしているんですね。  厚生労働省、お伺いしたいんですが、ある特定の労働組合、これを取り上げて、それにこういう見せしめ的な対応をするというのは、これはもう明瞭な不当労働行為に当たりますね。
  90. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) 御指摘の問題につきましては、労働組合法におきまして不当労働行為制度というものを設けております。これは使用者が労働組合員であることをもって不利益な取扱いを行うことを禁止して、この違反に対して労働委員会制度による救済制度を設けているものでございます。  ただ、この救済制度、これは申立て主義を取っておりまして、労働組合から具体的な申立てがあって初めて労働委員会が必要な調査を行い、そういった不当労働行為があったかどうかというものを判断するものでございます。
  91. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 事実の認定は確かに労働委員会でしょうよ。しかし、私が述べたようなことの事実があったとすれば、明確な法令違反であることは論をまたないと思います。  資料⑦、最後にこれをお付けしましたけれども、これは千代田化工建設事件に関する横浜地裁、昭和六十三年(ヨ)四六五号判決の判決理由からの抜粋です。少しこれを読み上げさせていただきたい。  そもそも、移籍についてはそれが雇用契約の解除と新たな雇用計画の締結であるところから、新契約が従業員にとって有利か不利かにかかわらず、当該従業員の同意、承諾がなければ、これをなし得ず、使用者が一方的になし得るものでないことは債務者も自認しているところである。  そうだとすると、移籍に同意せず、これを拒否することは当該従業員の自由であって、このことを理由として当該従業員を不利益に扱うことは許されないものと言うべきである。まして、移籍による新契約の内容が旧契約に比し、その賃金が三〇%も減少するということであれば、なおさらと言うべきである。  また、この移籍を組合が了承しているということは、移籍が右のような性質で個別的労働関係の問題、すなわち雇用契約の解消と新契約の締結であるところから、それ自体には何らの影響を及ぼすものでなく、せいぜい移籍拒否が組合の決定に従わなかったということで統制違反の問題になるにすぎないと言うべきものである。  この事件は最高裁まで争われて既に確定していると思うんですが、間違いないですね、厚生労働省。
  92. 鈴木直和

    政府参考人鈴木直和君) 御指摘のような判決があることは承知をしております。
  93. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 別の会社に移れと言われて、大臣、移るか、受けるか受けないかは自由なんです、それは。しかし、しかも受けなかったからといって会社は不利益な扱いをしてはならない。たとえ労組が同意していようが関係ないんだということも、この判決は示しているというふうに思うんですね。  今、NTTの職場で、正に脱法的なやり方と私は思うんですけれども、また場合によっては明確に違法な手段を使って、不当労働行為も含めて、労働者への正にこの退職、新会社への再就職の強制攻撃が進められている。それを許さないために、正に私ども日本共産党は、全国の労働者の皆さんと一緒に頑張っていきたい、追及していきたいということを決意をしております。  同時に、これが法廷に持ち込まれれば、今日の質問で指摘した観点によって、必ずや裁判所の判断が下されるであろうということを、私は所管する政府の皆さんにも、総務省の皆さんにも、またNTTの経営当局にも警告をさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  94. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 徳島県で現職の知事が逮捕されましたし、茨城県では石岡の市長、下妻の市長、東京都では多摩市の市長と、現職の知事、市長が逮捕されているわけであります。こういう現象ですね、国においても今、外務省をめぐる様々な議論が展開されているわけですね。こういう政官業の問題、もうずっとロッキードから始まってリクルート、KSD、今回また私設秘書をめぐっていろんなこういう疑惑が出てきておるわけでありますけれども、この事実を総務大臣としてはどのように受け止めておられますか。
  95. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 特に地方の首長さん方がこういう一連の事件で逮捕まで至ったことは、私は大変遺憾だと、こういうふうに思っております。地方分権を推進しようと、こういう風潮の中で我々も努力しておりますけれども、そういうことに結果としては水を差すような行為であるわけでありまして、大変残念に思っております。  特に、地方の首長さんは大統領ですからね。国は議院内閣制ですから国とは違うと思いますが、大統領というのは独任制の執行機関で、すべての権限が集中するような格好になっておりますから、教育や警察は違いますけれども、そういう意味で私はより慎重の上にも慎重でなければならない、身を持するに厳でなければならないと、こういうふうに思っております。  また機会があれば、全国の首長さんにそういうことを私の意見として申し上げようと、こういうふうに思っております。
  96. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 現職の知事では、平成五年に茨城県と宮城県の知事が逮捕されておりますよね。国レベルでも、先ほど申し上げたようにロッキードから始まって様々な問題が起きながら、それがこうきちっと反省につながっていないといいましょうかね、そこに今、我が国が抱えている一番の病根があるんじゃないかと思うんです。  それで、すっと時間がたっていけば皆もう忘れてしまう、こういう過去の物すごく厳しい痛い経験というものに対して、日本人が非常に鈍感になってしまっているという部分があると思うんですけれども、鈴木議員とその介入に応じた外務官僚、それのやり取りにもこう見えておるわけですけれども、どうもその当事者たちが自分たちの行為が少なくとも通常の倫理といいましょうか、倫理的にこう非難されるものではないというふうに受け取っておる部分があるだろうと思うんですね。  例えば、今度新しく出てきた殴った、けられたとかいう問題ですね。これは官房長官が肯定されておられるわけですけれども、これなんかも上司がもう少ししっかりしておれば、その段階で普通の倫理観があれば、やっぱりこれはまずいという対応ができたと思うんだけれども、逆にこれ抑え込んじゃっている。これにやはり一番の問題が私はあるんじゃないかと思うんですね。そういう政治家と秘書の問題、そしてこういう高級官僚が持っているいわゆる倫理観と社会通念がこう隔たり過ぎちゃっている、一般の国民たちから見て。  タイは頭から腐るという言葉がありますけれども、それはもう頭の方から腐っていって、身の方はたまったものじゃないですよ。やがて自分たちも腐るんだ。ここを大臣、少しきちっとしないと日本の再生はできぬのじゃないかと私は思うんですね。いかがでしょうか。
  97. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 政治倫理あるいは行政倫理とでも言うんでしょうか、こういうことのやっぱり徹底ということは私も必要だと思いますし、政と官の関係というのは大変最近取り上げられて議論されておりまして、総理も政と官の関係についていろいろ検討しようと、こういうことでせんだって、できるだけ大臣なり副大臣なり政務官が、その官の、官の防波堤という意味じゃないんですが、政との窓口になって、官側で、そこでいろんな調整をやるべきだろうと。こういうことで、具体的にどうやるかについては検討しようと、こういうことになっておりますから、今までの政と官の関係を含めて今後どうあるかについては、私は十分な見直しと検討が必要じゃなかろうかと、こういうふうに思っておりますし、特に地方の場合には、議会、地方議会ですね、あるいは内部監査、外部監査、そういうことをやるようになっておりますから、その機能を強化していく。それからやっぱり情報公開、それから、この四月から国の機関では政策評価、行政評価やりますから、こういうものの総合的な運用によってやっぱり透明度を上げるというようなことも必要ではないかと、こういうふうに思っております。
  98. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 大臣言われるように、本人の倫理観それから緊張感というものが大事ですけれども、やはり議会のチェック機能、そういうものも大事ですし、今透明感出されると言いましたが、情報公開をきちっとしていくと、あらゆるそういう手だてを講じていくべきだろうというふうに思うんですが、なかなか引き出しの中にしまってしまうという部分があるし、大体議会の運営というのはほとんど総与党化しちゃうわけですから、その辺の緊張感がない、チェック機能が十分に機能していないということ、これはやはりかなり、今の外部監査の話も出されましたけれども、厳しく今後チェックしていく必要が私はあると思うんですね。  ある面では、例えば長野の田中知事ですか、知事室をガラス張りにしたと、それが観光名所になっているということでありますが、これは確かに一つ考え方だと思うんですね。だから、今度外務省がいろいろと宗男問題に関連して今までの内部文書を公表し出していますね。これは、やはりいろんな議論はこれはあるだろうと思うんだけれども、こういうやり方は、やはりこれだけの非常事態になってくれば、私は国、地方を通じて必要なことじゃないかと思うんですね。  だから、内部の資料をある程度出していくということを他省庁や地方自治体にも、これをやはりある程度その方向で進めていくということも一つの私は方法であろうと思うんですが、いかがでしょうか。
  99. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今、政と官の関係の見直しで、政治家の皆さんの方からいろいろ御注文や御要請があった場合にメモを残してと、こういうことの議論がされておりますけれども、全部メモを残すというのも大変ですし、メモに主観的要素が加わればまた問題ですから、いろんなやり方があってもいいと思いますけれども、政の方からの御要請等については、何らかの形で大臣、副大臣、政務官に上げてもらって、そこで対応をきっちりしていくと。  しかし、私は、個人的にはやっぱり役所の主体性だと思っていますね。ややそういう意味で外務省にそういう点での問題があったかなという気がいたしておりますけれども、総務省の方は皆さんとよく相談して、いろいろな御注文、御要請があるのはもう十分お聞かせいただきますけれども、やっぱり役所がある程度主体的な判断の下にいろんな意思決定や行動をしてもらいたいと、こういうふうに考えております。
  100. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 やっぱり私は、政と官の問題は非常に過去の歴史的な積み上げがあるし、吉田総理から始まって、やはり有能な官僚出身の政治家がたくさんいた、そういう点での一つの流れもあったというふうに思うんですよ。  しかし、ここらでやはり政治家と官僚との役割、分担を明確に分けていかないと、あくまでもやはり政治というものは国民の立場に立って政策を立案していく、それを実行していくのは官僚ですよね。ところが、実際はそれが逆転していたという部分がこれあるわけですよ。  そうなってくると、今、副大臣制度を設け、それから政務官制度を設けて、それぞれ皆さん頑張っておられるけれども、今度のような問題が出てきて、具体的にそれでは対応しようとするときに、やっぱり官僚に対する窓口は大臣と副大臣と政務官ということになると、じゃ、今のような人数で大丈夫なのかなという疑問が若干あるわけですよ。この前、ちょっと私、予算委員会かテレビ討論か何かで申し上げたんですけれども、この辺はどのように総務大臣はお考えですか。
  101. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 議員の先生方、政治家の皆さんからいろんな御要請等があるときには、大臣、副大臣、政務官にまずやっていただく。しかし、それだけじゃ数が限られていますから、賄い切れませんですね。そういうときは官僚の皆さんに言っていただくのも一向構わないわけですが、官僚の皆さんはそれについては報告してもらう、大臣、副大臣、政務官に。そこで対応については、きっちり相談して対応させていただくと、こういうことじゃなかろうかと思いますね。  今以上に大臣、副大臣、政務官を増やすことは、これは中央省庁再編あるいは行政改革の観点からいかがかなという気がいたしておりまして、運用上どれだけの工夫ができるかと、こういうことでございますけれども、まだ各省庁でそれを中心に検討しようという段階でございまして、まだ政府としてこういうことでいこうということが決まっているわけじゃございませんで、メモを取った方がいい、そのメモを情報公開した方がいいという意見もありますけれども、それはそういうことなのかなという私はやや考えを持っておりまして、なお十分相談してまいりたいと思っております。
  102. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 やはり重要な職務におられる方々は常に国民から見張られているという緊張感が私はやはりなきゃいけないと思いますね。そして、それをチェックする機能というのがやっぱり絶対に必要だと。だから、やはり議会においても、地方議会の方々も改めて自分たちの職務についての責任感といいましょうか、これをやはりきちっと持っていくということが私は大切だと思いますし、その点、やはり総務省の方でも地方団体に対して適切なひとつ指導、助言をしていただきたいというふうに思います。  それで、先ほど大臣、外部監査の話をされました。官官接待とか空出張とか、過去においてはいろんな問題があって、これじゃいかぬよということで、たしかあれは、もう何年前ですか、外部監査導入について、地方自治法の中で外部監査制度が導入されたわけです。それがうまく機能しているのか、その監査の実績とか概要について、この際お伺いをしたいというふうに思います。
  103. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) ただいま御指摘ありましたように、外部監査制度は平成十一年度から本格的に導入をされまして、地方制度調査会の御答申を受けまして、当時の地方分権の進展への対応、また官官接待なり不正経理というのに的確に対応するという意味で制度が設けられたわけでございます。  それで、平成十二年度における外部監査制度の運用状況の現時点での把握の状況でございますけれども、平成十二年度におきましては、法律により義務付けられておりますすべての都道府県、指定都市及び中核都市、これが義務付けられておりますが、そのほか、東京都八王子市、東京都文京区、豊島区、三重県四日市市及び岡山県倉敷市という五団体において行われております。任意に包括外部監査契約に基づく監査を行っている団体というのはただいま申した五団体ということで、十一年度に比べまして三団体増加をしてきております。  また、個別外部監査契約に基づく監査でございますけれども、十二年度におきましては、すべての都道府県、指定都市、中核市のほか、二十七の市区町村が条例を制定しております。住民、議会又は地方団体の長から請求がありました場合にはいつでも実施できる体制ということでございまして、十一年度に比較して十六団体増加をしてございます。  それぞれの団体におきまして、外部監査制度について中身の充実を図っていると。我々としても、今後とも制度の周知徹底を図ってまいりたいという具合に考えております。
  104. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 従来からやっている内部監査はあるわけですよね。そうすると、その内部監査と外部監査とのダブルチェックというんでしょうか、その辺の連携というのはどのようになっているんでしょうか。
  105. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 御指摘のとおり、監査委員における監査と外部監査人の監査という点での相互の連携というのは重要だろうと思っております。  監査委員につきましては、地方団体全体として、財務監査、行政監査、各種の要求監査など、監査全般について責任を有しておりますし、また一方、外部監査人の監査につきましては、専門的知識ということで、弁護士、公認会計士又は税理士等が選任されておりますけれども、それぞれの専門分野に基づく専門的知識に基づいて、地方団体の組織に属さない第三者の立場から外部監査を行うということでございます。  今、委員御指摘がありましたように、監査委員の監査、また外部監査人の監査、両方が連携しながら監査の実効性を高めるということが非常に重要だという具合に考えていまして、それぞれの実施に当たって、相互の連絡を図る、また相互に支障を来さないように配慮するというような条項も盛り込まれておりますので、それぞれ各地方団体において連携、この法の趣旨にのっとった運用、連携が図られているものと承知をしております。
  106. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 外部監査の主眼がどうも事業監査の方に置かれているような印象も受けるんですけれども、不正の摘発ということになるとやはり出納監査の方に重点を置いていくべきだろうというふうに思うんですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  107. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 御指摘ありましたように、出納監査でありますとか契約の監査、行政執行の確保のための監査と、非常に重要なものという具合に認識をしております。また、先ほども申しましたように、それぞれの立場から、両方が役割を果たすということが重要と感じております。  平成十一年度におきます、先ほど申し上げました包括外部監査のテーマは外部監査人が選択をするわけでございますけれども、ただいま申し上げました入札・契約事務などの予算執行に係るものを選定した団体、これが三十九団体に上るということでございまして、地方団体におけるそういうような取組もなされるという具合に考えています。  今後とも、そういう制度を有効に活用しながら適正な行政執行の確保が図られるということを期待をしております。
  108. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 今、衆参両院の議運辺りでぼちぼちと歳費の問題、議論が出ているんですよね。私は、そういうことでもっと基本的に衆参両院の役割をきちっとすべき、あるいはかつての自自公合意で議員定数の削減があったわけですから、そういう問題に取り組むべきじゃないかという議論を実はいたしておるんですけれども。この一〇%カットした場合に、今までの特別職を下回らないことという前提が崩れてくるんじゃないかと。そうすると、やはり確かに今の日本の置かれている状況から見て、何らかの形で我々国会議員として国民に対して一つの姿勢は示すべきだろうと私も思うんですよ、それは。ただ国、地方を通ずる報酬体系というものが崩れていく、それをどういうふうにするんやと。  昨日辺りはIMF―JCもベースアップはゼロと。むしろ毎年賃金は下がっていきよるわけですね。だから、全体の方向としてはそれはそういう方向だろうと思うし、既に知事さんや市長さん方も報酬カットしているところもありますよ。しかし、全体的にこういうものをバランスを取りながらきちっと議論していくことも私は必要だというふうに思うんですね。  それから、今ちょっと申し上げた全体との報酬、これからやはり我々の国、地方を通ずる、特別職も含めて公務員の報酬として、どういう姿勢で大臣としてはそれを見詰めて実行されようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  109. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今お話しのように、議員さんの歳費削減案がいろいろ検討されておりまして、お話によると歳費の一〇%を一年間、十四年の四月一日から削減すると。こういう話でございますと、もしそれをやりますとやっぱり一般職と逆転いたしますですね。  ところで、その一般職の給与というのは、これは御承知のように労働基本権制約の代償ということで人事院が勧告をして、それに基づいて我々が措置すると、こういうことになっておりまして、勝手にやれないんですね。ただ、しかし特別職と一般職は給与体系上バランスが必要なものですから、逆転するのはいかがかなと、法律の規定からいいましても。こういうふうに思っておりまして、いずれにしろ、八月に人事院が勧告すると思いますので、こういう実態を踏まえて、議員さんの方の歳費の方が低くなるという実態を踏まえて。そこで勧告を受けましたら、それに基づいて一般職の方の措置をやっていくと。  そうやりますれば、地方団体の方は国に準じてと、こういう原則でございますので、地方団体の方も人事委員会の勧告その他があると思いますけれども、国に準じて措置すると、こういうことになるのではなかろうかと私は考えておりまして、それが一番妥当ではないかと。我々が一方的に一般職の給与法を改正しまして一般職の給与をカットするというのは、これはいかがかなと、こういうふうに思っております。やっぱり人事院というものの勧告を受けてという方がベターだろうと、こういうふうに思っております。
  110. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 いろいろ調べてみましたら、もう既に各県の知事さん方とか三役の方、それから市町村長、三役の方々も自発的に、御存じのように特別職も報酬審議会で決まった報酬をさらにカットするということをずっとやっておられるんですよね、かなりの市町村で。この実態は御存じですか。
  111. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 実態は存じておりますし、知事さんや特別職の場合には自分で条例でお決めになればいいわけですから。ただ今、特別職の報酬審議会というのを大体の都道府県等は持っておりまして、そこの審議会の議は経ていると思いますけれども、これは一般職じゃございませんので、労働基本権云々ということの制約はないと、こういうふうに考えております。
  112. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 せんだって例の農林水産省の事務次官が辞められたことについて、八千九百万でしたか、退職金、マスコミ辺りで一部取り上げられておりました。民間を見てみますると、大体やはり四十年ぐらい勤めて、まあ二千万から二千六百万退職金、そうなんですよね。どんどんこういう形でベアゼロという状況になってきている。退職金の格差が官民が余りにもあり過ぎるのではないかという一般の国民の受け取り方もあるわけですよね。  それで、その中で本当にまじめに働いておられる方々、たくさんおられるわけで、そういう方々が、やっぱり人事院勧告もこの三年間もうずっとマイナスで来ている。そういう厳しい状況にあることは非常に胸が痛む思いがするわけですけれども、この退職金の問題について、一九八一年に一〇%引下げを是正したんですけれども、それ以降、全然、この二十年間、退職金については触れられていないわけですね。  しかも、ああいう上の方々というのは、いわゆる天下りした後の退職金の数も、それこそ週刊誌とか新聞を見れば物すごい金額が出ているわけですよ。国民から見るとどうしてこういうことなんだという疑問がやっぱりあると思うんですね。そういう素朴な疑問に対して、今の私が指摘申し上げた人勧ですね、これはどのように御説明をいただけるでしょうか。
  113. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 退職手当は、あれは給与的なんですけれども給与でないという解釈で、これは私どもの方が所管しているんです。人事院に権限はないんです。そこで、私どもの方は、退職手当の水準については五年ごとに官民の比較調査をやっておりまして、それによって直してきておりまして、今、委員が言われたように、昭和五十六年ですね、五十六年、八一年ですかに水準是正をやってから、なるほどいじっておりません。ということは、全体としては官民のバランスが取れているんです。ただ、今、公務員の方が、この前の次官みたいに長いんですよね、勤務年数が。  それからもう一つは、民間にも制度があるんですが、公務員の場合には勧奨、定年の前で割増しをする制度がございまして、それと公務員としての在職年限が大変長くなっておりますから高い数字になっておりますが、全体としては、今、官民のバランスが私は取れていると思っております。  そして、調査を五年ごとにやるのは、我々の方から人事院にお願いして人事院にやってもらうんですよ。だから、いずれにせよ、五年ごとにやっていますから、お願いすべき時期が来ると、こういうふうに思っております。
  114. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 私は、どうも今のグローバリゼーションの中での我が国の経済の状況、将来を展望すると、やはり当面は景気回復第一だと、こう言っているけれども、実際にそういう状況になるんだろうかという疑問がもう出てきているんですよね。考え方、いろんな考え方があると思うんですけれども、やっぱり国民所得とか所得水準とか、あるいはGDPとか経済成長率とか、そういうものだけが豊かさの物差しと今まで我々はもう取ってずっと来たわけですけれども、そうじゃない別の豊かさを求めなきゃいかぬ時代に入ってきているんじゃないかなと。  私は、非常に人心は荒廃しているし、経済の行き詰まり感、それから政治の混迷、タイは頭から腐っている、国民はやりきれない気持ちで私はいると思うんですよね。だから、その中で、やはりそろそろそういう考え方も模索しながら、官民の構造改革、これはいかにあるべきかという点も視野に入れて、やはり担当大臣としてしっかりした指針を持って臨んでいただきたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか、今の考え方について。
  115. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 言われるとおりだと思います。そういうつもりで、今度、今の退職金を含めまして、退職手当を含めまして対応してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  116. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 後に譲ります。
  117. 又市征治

    ○又市征治君 社民党の又市です。  大臣は、十二日の所信表明で、市町村合併については今年は正に正念場だ、合併の推進に更に積極的に取り組んでまいりたいと、こういうふうに述べられて、地方自治法等の一部改正案の早期成立を要請をされたわけです。これは大変重大な問題を多く含んでおりますので、午後からその法案審議ということになるわけですけれども、それに先立って、今国会冒頭の総務委員会で、市町村合併と住民投票の制度について大臣の見解を伺いたいというふうに思っています。  住民が合併協議会の設置を発議をしたけれども議会がこれを否決したときは、六分の一以上の住民の連署による請求があれば住民投票に付すことができ、その投票で過半数の賛成があれば、議会が合併協議会の設置を議決したものとみなすと、こういうのがこの合併特例法の改正案ですね。  そこで、お尋ねをするわけですが、議会が議決もしていない、いやむしろ否決したものを住民投票の過半数によって議決したものとみなすということになるわけです。これは憲法九十三条で議会制度、つまり代表制民主主義を取ると規定をしておるわけですが、この憲法の規定、総務省が最も大事にされてきたところだと思いますが、この原則を否認する法改正になるんじゃないですか。
  118. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今の地方自治制度が代表制民主主義、間接民主主義であることは御承知のとおりでございますが、合併の住民、合併の前提となる協議機関である合併協議会を住民が発議して、発議が成立して出たものを議会が放置するなり否決した場合に、住民発議制度の手続の一環というか延長としましてもう一遍、住民が元々発議したんだから、住民の皆さんに協議会を行うか、いいのかどうかだけ住民投票で決めてもらおうと、こういうことでございまして、それ以上のものじゃないんですね。  したがって、合併そのものを決めるかというと、これは議会の権限です。協議会を住民が発議したものが議会によってアウトになった場合に、もう一遍住民投票で置くか置かないかをチャンスを与えようと、こういう考え方でございまして、いろんなこれは評価があると思いますが、地方分権改革推進会議が、地方分権推進委員会が、そういう提言をしたものですから、それを受けて我々は今回の地方自治法の改正でこれを制度化したいと、こう思っているわけであります。
  119. 又市征治

    ○又市征治君 既にこの問題、衆議院でも相当突っ込んだ論議をされております。例えば、十一月二十九日の我が党の重野委員大臣とのやり取りですけれども、その中で大臣は、この改正案は、今もありましたが、地方制度調査会の答申に沿ったものだとしながらも、調査会は場合によっては合併そのものもという感じがあったんですけれどもと、つまり住民投票に、合併そのものも住民投票に掛けるということの文意でおっしゃったんだろうと思うんですが、その後、協議会の設置は住民投票でやるということまでは、憲法の中では許されるのではなかろうかと。しかし、これも大変論議があるところです。だから、立法府において大いに議論をしていただいて、ちょっと中飛ばしますけれども、最終的にはやはり立法政策というか、国民の選択だ、このように思って、今回は答申の趣旨を生かしてこういう制度に云々と、こういうふうに述べておられるわけですね。  大変謙虚で民主主義的な提案ぶりですけれども、言い換えれば、合併協議会の設置に限ってこのような措置を取ることに大臣としてはちょっと無理があるのかなと、そんなふうに思いつつ国会で論議をしていただこうというのが大臣の本音じゃないかというふうに私はこれ読ませていただいたんですが、ここのところの真意、どうですか。
  120. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) この住民発議による合併協議会を置くか置かないかのこの議会で否決された場合の再度の住民投票は、これは地方分権推進委員会の意見なんです。  地方制度調査会は、第二十六次ですけれども、これは市町村合併そのものについて住民投票制度の導入を図ることが適当であると、こういうことを言った上で、制度化に当たっては、関係団体の意見を十分聴取の上、円滑な運用が図られるものとすることが適当だと。考え方としては、合併そのものに住民投票をと、しかしそこは円滑にやってくれと、制度化に当たっては。こういうことなんで、そのことを衆議院の総務委員会で申し上げたと、こういうふうに思います。  ここでいろんなそれこそ見方、議論があるんですけれども、私は、住民が発議した合併協議会が否決されたり放置された場合に住民投票にもう一度掛けてみるということは、それは今の代表制民主主義の中では許容範囲だろうと、そこまでは認めてもいいんではなかろうかと。ただ、合併そのものを住民投票で決めるというかつての昭和の大合併のようなやり方はいかがかなと私は思っております。
  121. 又市征治

    ○又市征治君 憲法で規定をする代表制民主主義の原則がそういう意味では脅かされる。議決していないものを議決をしたとみなすというのは、ちょっとこれは余りにも無理、むちゃですよ。そういう意味で、住民投票が合併推進のための抜け道作りに矮小化をされるというこういう見方、非常にやっぱり学者の中にもあるわけですね。そういう意味では、大変御都合主義の法改正の見本だという批判は、私はやっぱり一方では免れないのではないかと。  なぜこんなに無理して、そういう意味ではまだまだいろんな意見が様々あるんですが、慌ててこういう無理を承知で提案をされたのか、これがよく分からない。そういう意味では、どうも合併特例法が十七年の三月までにという期限、こんなことがあるものだから、これは無理してでもということになっているんではないのか。やはり、本来はもっと様々な関係方面の意見を聞いてやらないと、私は、これは制度的には大変に無理がある、こんなふうに思うわけですが、改めてお聞きをいたします。
  122. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) この合併協議会は合併をするためのものじゃないんですね。合併をするかしないか、そこで議論をしてもらう、要するに入れ物を作るだけなんですね。合併をするかしないかを最終的に決めるのは議会なんですよ。議会の権限なんですよ。ただ、入れ物を作って議論ぐらいしたらどうかというのが地方分権推進委員会の意見でございまして、地方制度調査会がそれ以上に合併そのものも住民投票でどうかと、こういうことを言っておられるので、そこまでは、先ほども言いましたがいかがかなと、合併そのものを住民投票で決めるのは。ただ、合併がいいか悪いかを議論する協議会を作るのはこれは住民投票でも、推進委員会が言っておりますし、許容されるのではなかろうかと、こういうふうに思っております。  無理をしているんじゃないかということですが、合併特例法が十七年の三月末までですから、我々は合併を進めたいと、こういうことで、平成十二年十二月の行政改革大綱で与党三党がやる千を踏まえて、千にしろという意見を踏まえて合併を推進するということを正式に政府として決めたわけですね、行革大綱で。それに基づいて合併支援本部を作り、合併支援プランを作り、都道府県でも同じようなことを今お願いしているわけでありますから、合併に消極的じゃありません。  我々は合併を推進した方が二十一世紀の地方分権のためにいいと、こう考えておりますが、何度も申し上げますけれども、かつてのような半強制的なああいう合併じゃなくて自主的な合併をやろうと、こう思っておりまして、そういう意味で合併というのは市町村長さんと議会だけで決めればいいという意見もありますが、私は、やっぱり住民参加というのがあってもいいので、その住民参加は合併協議会を作るところまでの住民投票ではないかと、こう思っております。
  123. 又市征治

    ○又市征治君 いや、私も言っている意味は理解しているんですよ。住民投票がむしろ合併推進のための抜け道作りにされているんじゃないかというふうに申し上げているので。  そこで大臣、せっかく、いや、これは立法政策だ、最後は国民の意思だと、こういうふうにおっしゃっているわけですから、憲法に規定する間接民主主義の原則、これを否認をしないで、尊重しながら、同時にやはり直接民主主義、住民自治の原則も尊重し生かしていくということが今求められてきているのではないかと。大臣の方は、いや、合併そのものは住民投票はいかがかと、こうおっしゃるけれども、むしろ住民の意思を尊重して議会で再議をする方法をむしろ取るべきであって、この住民投票の問題、直接請求を議会が否決をした場合は住民投票にかけることこそむしろ制度化をすべきだというふうに私は考えるんですよ。そこら辺の考え方はどうですか。
  124. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) それが地方制度調査会の意見なんですよ、第二十六次の。合併そのものも議会でなくて住民投票で決めちゃえと、議会がそれを否決したりなんかする場合には。昭和の大合併がそうだったんですね。内閣総理大臣や知事が勧告をして、勧告を聞かない場合には住民投票で決めると、一気に。  そういう意見もありますが、私は、この地方分権の二十一世紀の時代はやはりそうでなくて、それぞれが代表制民主主義の下で意思決定をしてもらうのが正しいんじゃなかろうかと、こう思っておりますが、権威ある第二十六次の地方制度調査会が合併そのものも住民投票で、こういうことですから、そういう意見があってもいいと思いますし、もしこの国会でそういうことが多数の御意見なら、私はそれはそれでも、憲法に違反しているとは必ずしも思いません。
  125. 又市征治

    ○又市征治君 いや、私も憲法に違反していると言っているんじゃなくて、逆にそれをゆがめてしまう、それも生かしつつ、そういう意味では直接民主主義も生かす努力をやっぱりすべきだと、こう申し上げているわけです。  そこで、この住民投票について、私たちはちょっと政府とは違ってもう少し一般化をすべきだと、こういうふうに考えています。既に御案内のとおり、地域の具体的な要求から出発をして条例化の盛り上がりだとか幾多の創意ある条例、事例の積み上げが行われてきているわけですね。  そういう意味で、やはり私は、もう法制化の機は熟してきたのではないのかと。これを見過ごして合併協議会の設置に限定をして住民投票制度を導入をする、こういうことは本当にいかがかと。そのことが逆に合併をごり押しをする御都合主義ではないかと、こういう批判をあちこちから招いているわけでありますから、そういう意味で更にこの住民投票だけを、いったん住民が発議したものが否決されたからまたそれは住民投票にかけるんだという、こんな例というのはほかにないわけですよね。したがって、こうしたごり押しは御都合主義だという批判を更に受けてくるのではないか。  今、大臣もおっしゃいましたが、国会の中でそういう論議が多数であればと、こういうお話ですから、是非この院の中でも、総務委員会でも今日の午後からさらに十九日まで論議をすることになるんだと思いますが、やはりこうしたもう少し整合性を持たせていくという、こういう立場でしっかりと論議をすべきなんだろうと思いますけれども、大臣、もう一遍改めて、そういう意味で整合性を持たせて間接民主主義と直接民主主義、そして今の情勢の中でそういう意味では合併そのものも住民投票にやはりかけていくという、そういう考え方はございませんか。
  126. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 先ほども言いましたが、住民投票そのものを法制化したらどうか、こういう意見は前からあるんですね、いろんなことの意思決定を、今は議会、市町村の議会が意思決定をやるんですけれども、その全部じゃなくて分割をして、あるものについては住民投票で、こういう意見がありますけれども、これはやっぱり憲法で言う今の間接制民主主義、代表制民主主義を取っている以上、私は、私個人はいかがかなと、こう思っておりますし、恐らく私どもの役所も同じ見解に立っていると思います。  しかし、今の地方自治制度は大統領制ですから、国と違いまして直接制民主主義も部分的に認めているわけです。リコールだとか条例制定だとか、特定の公務員の解職請求だとか。そういう中で、私は、住民が合併協議会の発議をした場合に、合併協議会を置くことについての住民投票はやはりその範疇に属することなので、部分的には直接制民主主義があってもいい。ただ、合併というものはその団体の将来を決する最大の意思決定ですよね。それを議会でなくて住民投票でやるというのは、私は今の段階ではやはり疑問を持たざるを得ない、こう考えておりますが、しかしそれは正に立法政策の問題で、国会でお決めいただければそれはそれで私は一向に差し支えない、こういうふうに思っております。
  127. 又市征治

    ○又市征治君 先ほども申し上げましたとおり、この議論は本格的には今日の午後からということになってくるわけですが、今日は、今の段階では住民投票制度の問題について絞らせていただきましたが、どうも合併の進め方、大変期限を区切って、非常にあめとむちのような随分とやられ方があるんじゃないのかということについて地域で大変に混乱、いやあるいは自治の破壊につながるのではないかと危惧されることがたくさんございます。今日の午後からの質疑でその具体例を申し上げながら総務省側の慎重な対処を求めたいというふうに思っております。  以上で私の質問を終わります。
  128. 田村公平

    委員長田村公平君) 午後一時まで休憩といたします。    午後零時二十分休憩      ─────・─────    午後一時五分開会
  129. 田村公平

    委員長田村公平君) ただいまから総務委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、岩本司君が委員辞任され、その補欠として高嶋良充君が選任されました。     ─────────────
  130. 田村公平

    委員長田村公平君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  地方自治法等の一部を改正する法律案の審査のため、明十五日午前九時に参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 田村公平

    委員長田村公平君) 御異議ないと認めます。  なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 田村公平

    委員長田村公平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  133. 田村公平

    委員長田村公平君) 次に、政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  地方自治法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会総務省行政評価局長塚本壽雄君、総務省自治行政局長芳達郎君、総務省自治行政局選挙部長大竹邦実君及び総務省自治財政局長林省吾君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 田村公平

    委員長田村公平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  135. 田村公平

    委員長田村公平君) 次に、地方自治法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は第百五十三回国会において既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  136. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 自由民主党の森元でございます。  質問の機会を与えていただきましたこと、まずもって御礼を申し上げたいと思います。  また、今回の地方自治法の改正は非常に内容が多岐にわたっておりますけれども、わけても、住民訴訟に関する件あるいはまた中核市の指定要件の緩和に関しましては地方団体等からも非常に強い早期成立を求める声が今までもございました。そういう中で、きょうから本格的な審議が始まることにつきまして、関係の皆さん方のこれまでの御労苦を多としたいと思います。  特に、私は、住民訴訟と市町村合併を中心としてお聞きしたいと思います。  まず、住民訴訟でございますが、この制度は戦後の地方自治法の改正によって日本に導入されたわけでございますが、その後、三十八年でしたか、一部改正され、今日に至っております。特に、平成に入りまして、中でも特に四号訴訟を使っていろんな住民の方々からの訴訟というものが提起され、それによって、かつて問題になりました官官接待であるとかあるいは裏金作り、そういうものがただされてきた。そういう意味では大変その本来の目的を果たす機能が上がってきた、効果が上がってきたんじゃないかなと私も思っております。  ただ、同時に、この四号訴訟の多くのケースを見てみますと、形は公金支出の違法性を争うということでありますが、その前提となっておる実体行為をむしろ争点にしておる。わけても、それが違法かどうかということであれば、私も政策的な判断で当不当を問うと。地方団体が議会の議決を経、しかるべき法的な手続を踏んで執行しておるにもかかわらず、そういう施策に対して個人として反対だという方々が、それに伴って行われた公金支出を違法だという形で争った、争っているケースが非常に多いわけでございます。こういうことになりますと、地方団体の職員としては、例えば横領だとか背任だとか、要するに明らかに自ら違法なことをやったことによって責めを負うならそれは当然のことでありますけれども、普通の組織の一員として、長にしてもそうですし、一般職員はわけてもそうですけれども、組織の一員として仕事をしておるのに、そのことを訴えられ、しかも個人としての立場で受けて立たなければいけない。その間、精神的、時間的、経済的、様々な面で負担を伴うわけでございまして、これでは安心し、落ち着いて、腰を据えて仕事ができない、こういう思いになるのもむべなるかなと思うわけでございます。  私自身も三十年間役人生活を送ってまいりましたけれども、その半分ぐらいを地方団体で過ごしました。自分の経験からしましても、自分としては精一杯与えられた仕事を住民の方のため、世のため人のためと思ってやっていることがいつどんなことで訴えられるかもしらぬ、安心できないと、こういう思いでございました。幸いそういう経験を経ずに卒業さしていただきましたけれども、しかしやっぱり自分のそういうことからしましても、やっぱり何とか今の制度をしかるべき形に、本来の目的を達成できるような形で、しかし個人が余りにも不当にと言っては語弊があるかもしれませんが、訴えられるような形にならないように改めてもらいたい、こういう声が関係者から出てくるのは当然ではないかなと。  地方団体の方からは本当に悲痛なそういう声がいろんなところから寄せられておったわけでございまして、そこでまず局長にお聞きしたいと思いますが、ごく最近のケースで結構でございますので、実際にこの住民監査請求あるいは住民訴訟がどのぐらい行われておって、それによってその職員あるいは長が敗訴といいますか、そういうケースがどのぐらいあるのか、実態をまずお答えいただきたいと思います。
  137. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) お答えいたします。  住民訴訟について、平成六年度から平成十年度までの五か年間に提起され、判決、和解又は取下げによりまして訴訟が終了した五百八十四件のうち、住民側が勝訴したものは一部勝訴を含めて三十七件、六・三%でございます。これを経年的に見てみますと、五十八年度から昭和六十二年度までの五か年間に判決、和解又は取下げにより訴訟が終了した百二十九件のうち、住民側が勝訴したものは一部勝訴も含めて五件、三・九%でございます。この十年間の、十年前と最近を比べますと、住民訴訟の場合はやや上昇して勝訴率が上がっているというような状況でございます。
  138. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 原告が勝訴したケースはごく一部だというふうに伺いましたけれども、もし分かれば、もう少しどういうケースだったのか、五件だというふうに聞きましたので、もし分かればで結構ですけれども、教えていただければと思います。
  139. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) ちょっと後ほど報告します。
  140. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それでは、次にお聞きしますが、この住民監査請求でありますとか、あるいは住民訴訟の制度は、御案内のとおり国にはないわけですね。地方団体に特有の制度としてこういうものが設けられておるわけですけれども、なぜ国にはなくて地方にあるのか、公金の支出の違法性を争うというケースは国にはあり得ないということはないわけで、そこの理由について御説明を、これは政務官にお聞きしたいと思います。
  141. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 住民訴訟制度は、森元委員も最初に御指摘されましたように、昭和二十三年の自治法の改正で入ってきたわけでございますけれども、当時はアメリカの地方自治体で一部行われていた制度をそのまま導入したと、こういう経緯があるようでございますけれども、その理由は、国家ですね、当時のアメリカの連邦政府あるいは州政府、そういう主権を持つ国家は損害賠償の責めに任ぜず、責めを負わないと、こういう論理があったようでございまして、そういう意味日本の場合にも、国にはなかったわけでございますけれども、アメリカの自治体で採用されておった制度をそのまま輸入したというのが当時の経緯のようでございます。
  142. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それではお聞きしますけれども、今お話しのようにアメリカのその制度をそのまま輸入した、導入したということですが、具体的に中身についてもう少し細かいその制度の仕組みあるいは運用のされ方について、もしこれも分かればで結構ですけれども、アメリカと日本の間で違いがあるのかどうか、あるいはまたアメリカ以外の欧米の国でこういうような同じような住民監査請求あるいは住民訴訟というようなものが設けられておるのかどうか、これは局長にお聞きしたいと思います。
  143. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 我が国の住民訴訟制度でございますけれども、ただいま政務官から御答弁ありましたように、米国の納税者訴訟を参考にして二十三年に地方自治法の一部改正で導入されました。  現在の状況は、全体の住民訴訟のうち、長や職員個人等に対して損害賠償を求める四号訴訟が全体の四分の三を占めております。  米国の状況でございますけれども、我が国における文献等をひもときますと、米国の納税者訴訟は違法行為の事前差止めを求める訴訟が一般的だという具合に書いてございまして、個人に対する賠償を求める訴訟は余り利用されていないという具合に聞いております。  違いは定かではございませんけれども、両国の法体系の違いとか、訴訟手続の違いとか、いろいろ背景があるのだろうという具合に思います。  なお、米国以外の同様の制度があるかというお尋ねでございますけれども、我が国、すべての国について調査をしておりませんので分かりませんが、正確には分かりませんけれども、現在のところ同様な制度を採用している国はないのではないかと思います。
  144. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それでは、政務官にお聞きしますが、この住民訴訟は法律二百四十二条の二に規定されていますが、四号あるわけですね。四つのタイプが規定されておりますけれども、一号から三号に規定されているものは執行機関又は補助職員を対象とするという形になっておりますが、この四号が少なくとも現行の形態は個人を対象にしております。なぜ四号の方は執行機関、補助職員ではなくて個人を対象にしたのか、その理由について御説明いただければと思います。
  145. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 四号訴訟でございますけれども、なぜというと、よく分からない点も実はあるわけでございます。これは、昭和三十八年に自治法改正をいたしました際に、それまでの訴訟の条文の書き方が漠然としておってほとんど損害賠償事件というものが出ていなかった、そういうことを踏まえた上で、やはり当時の商法の民事法における株主代表訴訟、そういうような一つのパターンを参考にしながら、三十八年の改正の際にこういう類型というものを入れたというのが経緯でしょうから、どういう理由でというと、必ずしも突き詰めたところはあるのかないのかよく分からないところがあるんですけれども、とにかくそういう民事法の世界のパターンをここへ導入して規定をし直したというのがその経緯だと存じております。
  146. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 よく分からない、必ずしもよく分からない点があるという今のお話でございますが、それでは副大臣にお聞きしたいと思いますが、現在のこの住民訴訟、特に四号訴訟についてそれが果たしている機能あるいは実態について、副大臣としてどう見ておられるのか、考えておられるのか、その点の御見解をお聞きしたいと思います。
  147. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) この住民訴訟制度でございますが、違法な財務会計行為の是正や防止を目的とするものであることは委員も十分御案内であろうかと思いますし、また情報公開制度と相まちまして、違法な食糧費支出等の是正については一定の役割を果たしてきたものと認識しております。  一方、現行の四号訴訟制度におきましては、職員の個人責任を追及するという形を取りながら、財務会計行為の前提となっている地方公共団体の政策判断や意思決定が争われている実情にあることによりまして、その主体である地方公共団体が直接訴訟の当事者とならずに、地方公共団体の説明責任が必ずしも十分果たされないという、こういう基本的問題が存在すると、そのように認識しております。
  148. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 私は、個人的に思いますのは、冒頭にも申し上げましたように、背任とか横領とか、要するに職員個人が犯罪行為的な違法なことを行って、それに伴ってその賠償責任を負うというのは、これはもう議論をまつまでもない、当然のことだと思うんですね。  しかし、本来の役割、与えられた職務を法令あるいは条例、議決というものに従い、あるいは決裁もきちんと踏み、しかも上司の了解を得、上司の指示の下に仕事をしているにもかかわらず、そのやっている事柄、具体的には、例えばこのケースとして挙がっていますのは、廃棄物の処理場に反対だとか、そういうイベントをするのは無駄だから反対だとか、こういうところへ道路を造る必要はないから反対だとか、要するに地方団体の事業に対して反対をする、その意思を表すために個人を相手取って、職員を相手取ってお金の出し入れについて賠償しろという訴えをするというのは、その組織の中で働いている職員にとってはたまらないと思うんですね。  ですから、その辺について、これが、訴訟にそういう人が巻き込まれてしまうというようなことに今までの制度がなっていたということについて、重ねて大臣に、どう思われるか、見解をお聞きしたいと思います。
  149. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) 先ほどの、この住民訴訟のいわゆる法律の改正につきましては滝政務官からその歴史的な経緯の説明があったところでありますが、私自身も、今回の様々な住民訴訟の、いわゆる個人として受けるべきか、又は機関の長として、また機関として受けるべきか、これが大きな論点になるわけでありますが、この議論をしますと、正直言ってこれは神学論争というか百年論争であろうかと思います。  しかし、御存じのように、これだけ高度な地方自治制度が今存在する、そしてその中での機関としてのやはり決定上様々な政策が施行されると、そういった観点から、今までの経緯によります現在の住民訴訟の制度はやはり機関としてしっかりと対処すべきではないかと、その方がかえって住民の様々な要求等に対処できるのではないかと、そういうふうに理解しております。
  150. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それではお聞きいたしますが、今回の改正について反対だという立場の方々は、今、副大臣がおっしゃられたように、個人から機関に替えても何ら変わらない、むしろ目的を達成することにつながるんじゃないかということではなくて、相手が切り替わることによって、住民サイドからすると訴えがやりにくくなるんじゃないかと、こういうふうに見ておられる方が多いわけですね。  それはなぜかというと、幾つか理由がありますけれども、挙げられておりますが、一つは、住民と地方団体がもろに争う関係になる、そうすると、地方団体の方は書類とか資料とかそういうものを余り出さない、自分を守る側に立ってしまう、そうすると、そういうものを十分持ち合わせていない住民の方は、争いが自分に好都合のようにいろんな証拠を出したり証明をしようとしても、なかなかそれがうまく運ばなくなってしまうのではないか、そういう心配を一つはしておられる。  あるいは、住民の方はやっぱり個人の負担で訴えるということになるわけですけれども、地方団体の執行機関側は地方団体の費用で弁護士も雇えますし、すべてその人に任せて裁判を進めるということができる、そうすると、余り急いで事を進めなくても、十分慎重にというようなことで裁判が行われてしまう。そうすると、住民側としては、なかなか決着が付かないだけじゃなくて、その間の負担が今までよりも重くなってしまうというようなことを挙げたりしまして、それでこのことが現在の住民訴訟制度の機能、役割を縮小してしまうんじゃないか、減退させるんじゃないかと、こういう心配といいますか、そういうことを論拠に反対をされておられる方がいるわけであります。  この点について、役所としてどういうふうに考えておられるのか、副大臣に御見解をお聞きしたいと思います。
  151. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) 今回の住民訴訟制度の改正でありますが、正に今、委員も御指摘のとおり、住民訴訟上の住民の権利を縮減されることはないと私どもは理解しておりまして、住民の監視機能の更なる充実を図るために行っていくものであると考えております。  具体的には、従来四号訴訟で追及することが可能でありました長、職員等の個人としての実体責任を軽減したり訴訟の対象となる違法行為の範囲を狭めたりすることなく四号訴訟の再構成を行おうとするものでありまして、住民としては、新四号訴訟等を活用することによりまして、これまでと同様に長や職員の財務会計行為の監視を行うことができるものとなっております。  これに加えまして、住民監査請求における監査委員の審査手続の更なる充実、住民訴訟時の弁護士費用の公費負担の拡大や違法な財務会計行為の差止めを求める一号訴訟の対象範囲の拡大等の措置も行っていることから、今回の改正によりまして住民の地方公共団体に対する監視機能は更に充実されるものになると理解しております。
  152. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 次に、政務官にお聞きしたいと思いますが、この点も先ほどちょっと申し上げましたが、現行の四号訴訟の場合には、被告となる職員についてその範囲が法令上は別に明示されておりません、限定されておりません。したがって、原告は、だれを訴えるかというのは、その原告の判断、裁量に全面的に任せられている、ゆだねられているというふうに思いますが、先ほどもこれも申し上げましたように、上司の命令に従って単に仕事をしているだけの職員含めて被告になるというふうなことは、管理職以上にやっぱり一般の職員にとってはきついことではないかなと、こういうふうに思うんですね。  この点が、今回の改正によって執行機関というふうに対象、相手方がなった場合に、この辺の扱いが変わるのか変わらないのか、政務官にお聞きしたいと思います。
  153. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 基本的に、今まで個人が訴訟の対象になるわけでございます。しかも、その中身が、現行の自治法で規定しておりますように、公金の言わば支払事務の違法、不法という問題を超えて中身の議論をしているわけですね、なぜそういうような支出というものが予算上なされたか。そういう、単純に窓口での支払の際の違法とかなんかということよりも、その元にさかのぼって、その事業そのものの政策的な当不当というところにまで踏み込んで訴訟対象になっているものですから、個人の訴えられた職員は、それを今度は自分の立場を説明する資料にも事欠くというのが今までの実態でございます。要するに個人で訴えられているわけでございますから、組織としての役所側の協力を得られない。資料を出すにしても、全部自分で、言わば公開されている、情報公開されている資料によらなければ訴訟係属ができない、こういうような問題があったわけでございます。  しかし、本当に中身の議論をしてもらうためには、役所側の協力を得て、その事務事業を決定した際の背景の資料、そういうものを役所側から出してもらう必要があるわけでございますけれども、今度のこの改正によって、機関としての立場での訴訟対象になりますから、そういう事務事業の決定の資料が出してもらいやすくなると、こういうことでございます。  したがって、今度、これによってまず訴訟の議論の中身が正確になってくると、こういうことが大きな違いだと思っておりますし、それがやはりこの訴訟を本当に実のある、中身のあるものにしていく、そういうことになるんだろうというふうに理解をいたしております。
  154. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 今の、資料を出すことについては個人の立場で受けて立つのに比べて執行機関という公の立場の方が対応しやすくなると、それはよく分かりました。  私がお聞きしたかったのは、それじゃなくて、むしろ訴えられる人の範囲は変わるのか、要するに、従来ですと、個人でしたからだれでも相手にしようと思ったらできたんじゃないかと思うんですね。今度は、執行機関という位置付けになりますと、その範囲はおのずと限定されてくるんじゃないか。極端に言えば、長であったり各種委員会であったりというようなことが原則になるんじゃないかと思うんですが、そこの範囲は変わらないんでしょうか。そこの点をお聞きしたいと思います。それじゃ、局長さんに。
  155. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 現在の個人に対する損害賠償請求等でございますけれども、個人であります対象ないしは相手方に対する訴訟が現在の訴訟でございます。  今回の地方公共団体の執行機関の長に対する、被告は執行機関の長でございますけれども、訴訟の中身が、長に対して対象たる個人から、個人に請求しなさいという請求訴訟になるわけでございますから、その中身の、確かに被告は執行機関であります長でございますけれども、請求せよという相手方については、これまでと同様、長であり職員であり、また相手方ということでございます。ただ、あくまで被告は執行機関でございます。  それと、先生、お許しをいただいて、先ほどの訴訟、過去平均、近い六年から十年までの五百八十四件のうち三十七件が住民勝訴というお話をしましたけれども、その主なものでございますが、食糧費、官官接待のこと、また議員野球大会ないしは第三セクターへの派遣問題というのが主でございました。失礼しました。
  156. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 分かりました。今のように、直接対象になるのは執行機関であるけれども、中身によって実際に責めを負うべき職員まで当然含まれると。分かりました。  そのことに関連してでございますが、今回の改正に対する反対の理由のもう一つ理由として、要するに、訴訟が今までと違っていったん執行機関を相手にして争うということになるものですから、本当の目的を達成するためにはもう一度当該行為をした個人を訴えないとそこまで責任追及が完結しない、要するに、訴訟が二段構えになってしまうということについて問題じゃないかと。  特に、一段目は住民が直接争うことができるけれども、二段目の訴訟は執行機関と当該職員との間の争いになってしまうと、直接そこに住民がかかわっていけない。そしてまた、そうなると、執行機関は職員をかばってしまって、身内の争いだからそんなに責任を追及しなくなるんじゃないか、本来の目的が果たせないんじゃないかと、こういう声がございますけれども、この点について副大臣はどうお考えか、お聞かせいただければと思います。
  157. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) いわゆる二段訴訟というんでしょうか、この訴訟告知による二段訴訟のことを御指摘だと思うんですけれども、今回の改正案では、新四号訴訟におきまして、長や職員また相手方に訴訟告知、これをすることとしているため、被告となる機関の判断と訴訟告知を受けた職員や相手方の判断が異なる極めて例外的な事例を除きまして、この判決の効力が二段目の訴訟にも及ぶという仕組みになっております。したがいまして、二段目の訴訟が提起されることは実際問題としてはかなりあり得ないんではないかと、そう認識しております。  仮に、二段目の訴訟が提起されたとしても、一段目の訴訟の判決と異なる主張は裁判において採用されないために、二段目の訴訟が長期化することはないと考えておりまして、裁判に要する費用や時間が増大するとの懸念が時々出されるわけですが、それは当たらないと認識しております。
  158. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 分かりました。  それではお聞きいたしますが、今のお話のように、訴訟告知がなされるとその効力が個人である職員の方にも及ぶというお話ですけれども、そうであれば、その一段目の訴訟の段階で個人の方も弁明できる機会が与えられないと職員の方の今度は権利救済という面で不十分ではないかなと、こういうふうに思うんですけれども、ここの点について改正案はどういう扱いになるのか、これは局長にお聞きしたいと思います。
  159. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 御指摘のとおりでございまして、訴訟告知を今回の場合義務付けております。そういうことでございまして、訴訟告知を受けた先ほどの長、職員、相手方は、地方公共団体の執行機関との間で判決の内容を争えないという参加的効力が及ぶという具合になっております。  そういうことによって紛争が早期に解決するということでございますが、今御質疑がありましたように、それでは訴訟告知を受けた職員、相手方等につきましては、自らの利益、法的利益を主張するために訴訟参加をするということができるということになっておりますので、その面で、第一回目の訴訟において個人として参加をして個人の権利義務の面について主張するということで、問題ないという具合に考えております。
  160. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 第一回目の、一段目の訴訟で長が被告になるケースの場合に、仮に長、執行機関が敗訴しますと、それで応ずればそこで問題は片付きますが、仮に長がそれに従わないということになりますと、改正案では監査委員、代表監査委員ですか、が個人としての今度は長を相手取って執行を求める訴訟を起こすと、こういう形になっているわけですけれども、現実問題として、代表監査委員は長に任命された立場にあるわけですね。  その人が自分を任命してくれた長を相手取って訴えるというのがうまくいくのかなという気もいたしますし、それは割り切ってやるのは当然だというふうにしても、もし忍びないということで放置するというような場合が出てきたときに、果たしてその一段目の訴訟の結果というのがどういうふうにして実行されることになるのか、その辺、これは政務官にお聞きしたいと思います。
  161. 滝実

    大臣政務官(滝実君) そういう心配の声もあることは承知いたしておりますけれども、今も御指摘のとおり、監査委員というのは基本的に身分が保障されているんですよね。いったん監査委員として任命した以上は長といえども簡単には解任できない、そういうふうに身分保障をされているのが第一点です。  それからもう一つは、これはこの法律でも、その場合には敗訴した方が損害賠償に応じなければ監査委員が第二段目の訴えを提起すると、これが義務付けられているわけでございますから、そういう、法律上、今回義務付けをしているわけでございますから、それを踏まえれば情に忍びないとかということで監査委員が手加減をするということは、この今の法治国家の下であり得ないというふうに考えた方が自然だろうと思います。
  162. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 実際問題としては、恐らく多分そういうことだろうとは思うんですけれども、あり得ないことも考えるのが法律を制定するときのいろんな技術であるべきことではないかなと思うんですね。  それは、現実に問題が起こっているわけではありませんからそれ以上お聞きしませんけれども、もう一点、改正について反対だとおっしゃる方々の反対の根拠の一つに、いわゆる談合事件と言われているものについて、それはその地方団体にそういう業者は損害を与えたんだから不当利得分は返還せよという争い、今までですと、直接疑いのある業者を相手取って住民の方から訴訟を起こせたわけですけれども、これが今回の改正になりますと、地方団体の執行機関ということになりますから直接業者は訴えられないと。そうなると自治体は、これは変な形ですけれども、争いになるということは、自分はそういうことでないという主張をするわけですから、ある意味では、談合の疑いありとされている業者を擁護するような論陣を張って争うということになってしまうわけでありまして、そのこと自体が不自然ではないかなという気もいたしますし、そうすると、談合事件のような場合には、訴訟の形を変えることによって、住民サイドからすると目的が達成されにくくなるということに見られてしまうんじゃないか。  この点について、いや、そうじゃないんだということであれば、きちんとその点を分かりやすく説明する必要があるんじゃないかと私も思うわけでございます。この点について、副大臣にこういうことだという御説明をいただければと思います。
  163. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) 今、委員の談合に関する住民訴訟の場合の御質問でございますが、まず地方公共団体の執行機関としては、既に企業等に対して損害賠償を請求しないという判断に立っているわけでありまして、この状態によりますと、住民から問題があるという指摘になると思います。したがいまして、改正後の四号訴訟におきましては、被告としての執行機関は、その判断が正当であり損害賠償を請求をしないという自らの意思決定に違法性はないと、こう主張するわけであります。  一方、談合に関する住民訴訟におきまして、談合を行っていると主張された企業も訴訟告知を受けるわけでありますので、この新四号訴訟の参加的効力が及んでまいります。そこで、企業自らの利益を保護すべく、当然この企業もこの訴訟に参加してくると、こういうことが予想されるわけであります。  ということは、談合行為の有無につきましては、地方公共団体の機関とその企業ですね、疑われている企業はそれぞれの立場で主張を展開するということになりますので、地方公共団体が談合行為の存在が疑われている企業を擁護するために訴訟の被告となるものではないと。いや、それぞれの立場でしっかりと主張するわけでありますので、かえって事実が法廷で明らかになると、そのように理解しておりまして、先ほど委員が御指摘になったいわゆる反対の立場からの懸念は当たらないのではないかと考えております。
  164. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 今のお話ですと、要するに業者も訴訟参加という手続を経て当事者になってそこで争うことになるんだから、十分目的は達成できるし、従前と余り変わりませんよと、こういうようなお話かと思います。  私はそれで分かりましたけれども、それじゃ仮に談合の事実がありと、こういうふうに認定を裁判でされたという場合に、具体的に地方団体にどれだけ損害を与えたのか、この点はなかなか技術的に額をきちっと客観的に算定するというのは簡単ではないんじゃないかなという思いがいたします。  裁判で争っているんですから、裁判所がそれをどう判断するかということに尽きるのかもしれませんが、これは一般論としてでも結構でございますが、この種の談合疑惑がありと疑われるようなケースについて、地方団体としてはそういうふうなことにならないように一般的にふだんから注意をし、厳正に入札を執行していくというのは当然のことでありますけれども、もし地方団体の方が進んで談合業者を、地方団体に損害を与えたじゃないかというようなことを争おうとする場合には、やはりそういうことがあるということだけじゃなくて、これこれの額の損害を与えたという形で訴えることにやはりなると思うんですね。  その場合に、地方団体としては何を基準にどういうふうに賠償額を出して訴えたらいいのかということでございますが、この点について、役所として何か地方団体に基準的なものを示すというお考えがおありかどうか。これは政務官にお聞きしたいと思います。
  165. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 地方団体の側から基準を示すというのはなかなか難しい問題だろうと思うんですけれども、今の御指摘のように、これは結局は裁判所が御判断をする話だと思うんです。ただその際に、談合ということで損害賠償を仮に裁判所が求めるとすれば、これは独占禁止法の違反事件になるわけでございますから、独占禁止法ではそういう際には公正取引委員会の意見を聞くことになっているんですね。どの程度の損害額があるかというのは裁判所が公正取引委員会に意見を聞かなければならない、こういう規定がございますから、そういう裁判所と公正取引委員会を交えての損害額の判定、こういうことになるだろうと思います。  ただ、それをあらかじめ地方団体が、それじゃその場合に仮に訴えを出すときに、どの程度のというのはなかなか難しい問題だろうと思いますけれども、そこのところを簡略した方法としては、地方団体によっては契約条文に、談合の場合には契約金額の一割をもらいますとか二割を請求しますよということを書いた契約書も作っているやに思いますけれども、基本的には地方団体の方があらかじめ基準を突き付けて訴訟を起こすというのは、それはケース・バイ・ケースですから、なかなかこの基準の作り方は難しいというふうに言わざるを得ないと思います。
  166. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それではちょっと別の点ですが、監査請求についても今回の改正で暫定的な停止制度が創設されております。事が起こってから事後的に救済措置を求めるよりも、そういうことが起こらないように事前に手当てをする方が基本的には望ましいんじゃないか。先ほどのアメリカの例でも、実際の争いは事前の差止め的なものが多いという御説明だったかと思いますが。  そこで、お聞きしたいのは、住民訴訟の方で監査制度について、今回求められたと同じような設けられたと同じような措置が、制度が取られたのかどうか。あるいはまた、そういうことについて今後どういうふうに考えておられるのか。この点について副大臣にお聞きしたいと思います。
  167. 若松謙維

    ○副大臣(若松謙維君) 住民訴訟のいわゆる前置手続と言われます住民監査請求制度でありますが、これは、職員の違法、不当な行為によりまして住民全体の利益が害されるような事態が発生した場合には、まず監査委員による監査の機会を与えることによりまして事件を自主的に解決させることが地方自治の本旨からも、また裁判所の負担を軽減するからも好ましい、このような考え方からこの住民監査請求が導入されているところであります。  そこで、住民監査請求から住民訴訟に移行する割合でありますけれども、おおむね三割ですか、そのくらいの比率で住民訴訟に移るわけでありますが、その際、監査委員の審査に対する信頼性を更に向上させるためには、審査活動の透明性の向上とか審査能力の強化等、審査手続の更なる充実を図る必要があると考えているところであります。  そして、今回の改正で、住民監査請求において暫定的な停止制度が創設されているという、この差止め請求ですね、これについて委員は更なる改善の余地はないかと。恐らくアメリカの例等もお考えになりながら質問されているんではないかと思いますが、この違法な行為につきましてはできる限り事前に是正されることが望ましいとすると、一号訴訟におきます差止め請求の実効性を確保するという意味で何らかの暫定的な差止め制度を新たに創設することは大変意義があると、そのように考えております。  しかし、裁判所による暫定的な差止め制度の創設は地方公共団体の行政活動に与える影響が極めて大きく、また慎重な検討を要すると認識しておりまして、さらに行政事件訴訟法におきましては、行政行為の効果の保護に重点を置く観点からも一定の厳しい要件の下での執行停止制度のみが認められていることでありまして、さらに現在、行政事件訴訟法の改正論議がなされているところでありますので、その導入の可否につきましては、行政事件訴訟法の改正論議と併せて今後引き続き検討すべき課題ではないかと考えております。
  168. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 それでは、住民訴訟関係質問は以上にしまして、次に、市町村合併について少しお聞きしたいと思います。  現在、政府の方では、市町村合併特例法を延長し、あるいはその内容を拡充して、平成十七年三月までの期限を目途に精力的に市町村合併を推進しておられるわけであります。  今回の地方自治法の改正の中でも、合併協議会の設置について、これを議会の判断だけにゆだねるんじゃなくて、ケースによっては住民投票で協議会の設置そのものを決められるようにしようと、こういう改正案が盛り込まれております。  その意図するところは、私なりに考えますと、その背後にある考え方というのは、住民の思いと議会の意思が少しずれがあるケースが間々あるんじゃないか。そうであれば、住民の方に直接その判断をゆだねた方が適当ではないかと、こういうことではないかと思うんですが、果たしてそうか。もし、そういうことであれば、この今回の改正によって合併が促進されることになるとお考えかどうかということについて政務官にお聞きしたいと思います。
  169. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 平成七年の改正によりまして合併についての住民発議制度が導入されたわけでございますけれども、その改正後、本日までに五十一地域で大体百件ばかり住民発議が行われてきているわけでございます。その中で本当に合併協議会が設置されましたのが十五地域の二十七件と、こういうことになっているわけでございまして、そういう意味では、四分の一程度、住民発議の四分の一程度が具体的に、合併協議会の設置という具体的な成果が、成果として現れている、こういう意味ではこの種の制度改正がそれなりに効果を持ってきたと、こういうことが言えるんだろうと思います。  そして、もちろん議会が否決する場合、度合いもその反面であるわけでございますから、これだけで成果が上がったか、あるいは促進されたかということについての疑問のあるいは見方もあるかもしれませんけれども、少なくとも合併協議会の設置ということに進んできたということではかなり成果が上がってきているんだろうと思います。  ただ、あと残された、平成十七年の三月が期限でございますから、その期限というものを念頭に置いてこれからの推進策を考えた場合には、もっとPRというか、周知徹底を図っていくということは当然考えていかなければならない問題だろうというふうに認識をいたしております。
  170. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 ちょっと趣旨を十分のみ込めなかったんですけれども、私がお聞きしたかったのは、住民投票によって協議会の設置ができるようになることによって、今回の改正によって更に合併が促進する方向に向かうでしょうか、それをどういうふうに考えていますかということなんですけれども。
  171. 滝実

    大臣政務官(滝実君) お尋ねのとおり、今までもそういう住民発議でやってきたわけでございますから、今度、住民投票というものによって合併の協議会を設置せよと、こういうような動きが現実問題として出てきた場合にはそれなりの成果は上がってくるだろうというふうに思っております。
  172. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 この点は午前中も少し質疑があったわけでございますが、今回の改正の住民投票はあくまで合併協議会の設置に関するものでございます。そうすると、そこでいろいろ検討がされて、いよいよするか、合併するかしないかというのはあくまで議会の判断ということになりますと、今までの協議会の、住民発議による発議があったにもかかわらず協議会が余り、必ずしも全部設置されていないということとの兼ね合いで考えますと、やはり最終段階での議会の意向というものの方が前面に出て、必ずしもそんなに進まないんじゃないかなという見方もできるんじゃないかなというふうに思うわけですね。  それで、過去の昭和二十八年とか、あれは三十何年でしたか、の町村合併促進法等に盛り込まれておりました、合併そのものを住民投票で決するということについて、大臣は、それは立法政策の問題だと、立法府がどう判断するかということの御答弁であったわけですが、私はやはり、それは代表民主制、間接民主制が基本とはいえ、やはり市町村の存立そのものにかかわる、それであれば、その主権者である住民の総意、意思によって決定するということが一番民主主義にかなったやり方ではないかなというふうに私自身は思うわけでございますが、改めて、合併そのものを住民投票によって決めるということについて大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
  173. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 我々は今、地方自治法の改正案を出していまして、それは合併協議会の設置について住民投票と、こういうことでございますので、もし今、委員が言われるようなことが我々も正しいと思えばそういう法案を出すべきなんですね。  これは、我々はやっぱりあくまでも、受け身ということはないんですが、地方分権改革推進委員会の御提言をそのまま法案化いたしたわけでありまして、午前中も言いましたが、地方制度調査会や、むしろそこまで踏み込んだらどうかという意見もあったんですが、具体化についてはよく関係のところと相談してと、こういうことでございまして、地方六団体と相談しましたら、合併協議会の設置等についてなら許容できる、合併そのものについてはちょっとと、こういう御意見が圧倒的な多数でございまして、そういうこともあってこういう提案をさせていただいておりますので、委員のような御意見が、有力な意見が多々あることはもう十分承知いたしております。
  174. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 私は、ただ、住民の意思によって決めれば合併が促進する方向に行くか、必ずしもそうでないんじゃないかという思いを多少持っています。といいますのも、全国的な市町村長さんの御意見をいろいろ伺っていますと、おおむねの傾向ですけれども、市は合併促進派の方が多い、しかし町村の方は必ずしもそうでもない。それは単に町村長さんだったり議員さんがそうかというと必ずしもそうでない、住民の方自体が余り積極的でないというケースがかなりあるんじゃないかというふうに聞いております。  それはなぜかというと、町村は今でも寂れ掛かっている。全国的に人口が減る中で、特に町村部の人口減少が全体としては大きいわけですね。それに合併が加わってくると更にそういう傾向に拍車が掛かる、合併することによって、将来に明るさ、夢が、展望が切り開けるか、そういう絵が頭の中に浮かんでこない、こういう声が非常に強いわけです。ここが一番問題ではないかなというふうに思うわけであります。  昨年の十一月に、そのような声をいわば凝縮、凝集したような形がここに表れていると思うんですが、全国町村長大会で市町村合併に関する緊急決議というのが行われました。端的に言えば、要するに、まず、国がそれほど市町村合併を推進するというなら、将来の地方団体の在り方を含め、市町村合併の理念、目的をはっきりと示してもらいたい、ただやみくもに合併しろ合併しろと言われても困るということが一つ。それから、数値目標を明確にそこへ持っていくというのはいかがなものかと。それから、強制的にはしないこと。そしてまた、交付税の算定等で合併強制につながるような見直しは行わないことと。この四つの決議が行われておりますが、こういうことが行われたということについて、大臣としてどうこれを受け止めておられるのか、お聞きしたいと思います。
  175. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 恐らく森元委員がいろいろお会いになったり感じられたよりは状況は幾らか私は変わってきていると思いますけれども、今の町村長さんや議員さん、あるいはその町村の住民の皆さんは、今で一つも不都合はないと言っているんですよ、もういろんなことはやれるし。だから、何で変えにゃいかぬと、こういうことになる。変えると場末になるとか寂れるとか、今までの例だと、そういう議論なんですね。今のままで、税はたくさん取れませんけれども、交付税でかなりな補てんをしてもらって、だから新しいことをやって変わることについてやっぱりどうしても消極的になると思うんですね。  それじゃ、今のままでいいのか、もっと町村で小さくなった方がいいのか。私はそういう議論じゃやっぱりないと思うので、これからの地域社会や大きな範囲でどういうふうないろんな施設配置をやり、サービスを、福祉や保健が、環境や都市計画やそういうことをやっていくかということを考えにゃいかぬので、それだけのやっぱり力がなきゃいけませんよね。いつも権限と財源と人間という話をしますけれども、今の町村でそれじゃ相当な人が希望して集まっているかというと、必ずしもそうでないですよね、場所によって違いますけれども。もっと、よしやろうと言って人が集まるような、やろうと思ったことはある程度できる行政能力や財政力がどうしても要るので、私はやっぱり現状追認というわけにはなかなかいかないなと。  ただ、なるほど、四つや五つが一つになれば、やっぱり中心のところ以外が寂れるという現象は今までもありました。だから、そのためには旧町村単位でどういう地域の振興を図るか、そこにそれなりの拠点性を残すか、そういうことは本気で考えていく必要がありますので、地域審議会だとかあるいは旧村単位のいろんな意思の吸い上げだとか、そういうことを少し考えたらどうかと、形を変えた小さな連邦制でもいいじゃないかと、そういうことを私は言っているわけでありまして、現状を変えるという私は勇気を持ってもらう必要がまずあるんじゃなかろうかと、そう思っておりまして、そういうことの今啓蒙を一生懸命しているわけであります。
  176. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 合併に対して、町村も一切反対だと言っているわけじゃないんですね。もっと夢や展望が開けるように、在り方を含め理念、目的、そういうものを明確にしてもらいたいと。やはり、だから、合併すればこれ良くなるんだというような絵がかけるような環境をやっぱり国として作っていく必要があるんじゃないか。今も既にいろいろな面で財政的な特例手当てをしておられるわけですけれども、更にその辺を町村の意のあるところを酌んで手当てを充実していただければなというように私は思うわけでございまして、この点は要望をしておきたいと思います。  全体としてその合併を進めていく中で、しかし地理的にどうしてもなかなか気持ちはあっても難しいという地域もあるんじゃないかと。具体的には離島でありますとか、その離島も小離島で一島一町みたいなところであるとか、あるいは山間部で面積は県よりも大きいけれども人口は極めて希薄だというような地域、こういうような、合併をしようという意欲があっても、意思があってもなかなか物理的に難しい条件にあるというような地域について、こういうところを将来どういうふうに位置付けていこうとされるのか。  経済財政諮問会議では、例えば人口三十万以下のような市町村の権能について少し差を設けたらどうかという話が出ておりまして、今の地方制度調査会でもその辺の議論がなされているんではないかと思いますが、そういうことを踏まえて大臣としての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  177. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 離島は、まとまって早くやるところと大変条件が悪くてというところがありますね。今、広島県で江田島市というのが間もなくできるんですけれども、これなんか一島一市ですよね。そういうのが幾つかできつつあるんですけれども、長崎県でも例えば対馬だとか壱岐とか、そういう動きがありますね、一島一市。ただ、極めて小さくて条件の悪いところも確かにあるんで、そういうところは特別に、別にどうしても合併しろなんていうことを言うつもりはありませんし、それぞれの状況に応じてお考え賜ればいいと思います。  それから、経済財政諮問会議でのいろんな議論は、今の市町村が大きな市から小さな村まで同じ制度である必要があるのかなと、こういう議論でございまして、今はもう既に政令市、中核市、特例市、普通の市と、こういうふうに今の我々の方の制度でもそうなっているんで、もう一遍町村について合併再編やって、どうしてもできないところはどう考えるか、考える必要があるんじゃなかろうかと。昔、北海道に似たような、市制でありましたよね。そういうことを含めて考えたらどうかと。  今、過疎や山村には、下水道や道路ができないところはこれは県が代行するという制度がありますよね。そういうものを含めてどう考えるか検討いたしたいと思っておりまして、今、局長のところの研究会でそういうことを含めて議論してもらっております。地方制度調査会でもやりたいと思います。
  178. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 もう一点。  合併特例法の中では、特に議員の身分についていろいろ特例措置が講じられております。それから、一般の職員については、これは身分保障があるわけですから、当然合併がされても基本的には身分はそのまま新しい団体の方に引き継がれるわけですけれども、市町村長さんあるいは助役さん等の三役について何も手当てが講じられていないと。そこのところは非常に何といいますか、そういう割り切っておられる方はいいんですけれども、そうでない方の場合にはやっぱりつらいものがあるというふうな御意見もございました。  この点について何か配慮をするような余地があるのかないのか、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  179. 滝実

    大臣政務官(滝実君) おっしゃるとおり、議員については経過措置が設けられるわけでございますけれども、町村長、助役、収入役、いわゆる三役についてはそのような手だてありませんから、基本的には失職をすると、こういうことになるわけでございます。  ただ、これは事実問題でございますから、一般的に内々いろんなことを言っておりますのは、お互いに市長にならなかった人は副市長になろうよとかそういうようなことを、お互いにやっぱり合併後の地域運営をうまくするためにはそういうような人的な配慮というのはこれは一番大事なことでございますから、事実問題としていろんな位置付けをしていくというのが今までの例でございますので、これは法律上の問題じゃなくて、地域を総合的に経営するための知恵というものをそれぞれが出していただくということだというふうに思っております。
  180. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 最後に、大臣に一点お聞きして終わりたいと思いますが、市町村合併の促進策の一つという位置付けかなと私は理解しますが、政令指定市の要件を現在事実上人口百万の見込みがあることということで扱われておりますけれども、これを七十万ぐらいでもいいんじゃないかというような方向だというように承知しておりますけれども、そういうことなのかどうか。それから、もしそうであれば、大阪の堺市は、現に一つの現在の市でも七十万を超えているわけですね。そういう扱いはどうなるのかについて、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  181. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 政令市というのは、政令で指定するから政令市なんですね、政令指定市、もう名前のとおりなんで。これは、法律上は五十万以上なんですよ。ところが、今まで伝統的に百万以上と、こうやってまいりまして、このところ、まあ百万未満でも近い将来百万になるんなら結構だと、こういうことに運用してきておりまして、今百万を切っておるのは仙台市だけだったと私は思います。みんな百万を超えている。百万ちょっとだった札幌が百七十万になり、福岡が今百四十万になっていますからね。かなりみんな政令市になることによって人口増えておりまして、そこで今、静岡と清水市がかなり秒読みの段階に合併がなっておりまして、強い希望が政令市昇格なんですね。  私は、二十一世紀の地方自治はやっぱり市町村中心主義で、都道府県よりも市町村だと、こう思っておりますから、政令市になることによって合併が弾みが付くし、それによって大きな拠点性を持つんなら、それは検討してもいいんじゃなかろうかと。そういうことで、合併支援本部でそこは弾力的に考える、ケース・バイ・ケースでと。こういうことにしておりまして、もし静岡市と清水市が合併したら七十数万になると思いますので、やり方によっては百万に限りなく私は近づくと思いますので、そういう場合には政令市の指定を弾力的に考えてまいろうと、こういうふうに思っております。
  182. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 堺市はどういう扱いでしょうか。
  183. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 済みません。今、百万を切っているのは、私、仙台市と言いましたが、仙台市に怒られます。仙台市は百万八千人。千葉市です。約九十万人。済みません、そういうことでございます。
  184. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 堺市の扱いをお聞きしております。
  185. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) それから、堺市につきましては七十万ぐらいですね、今。
  186. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 七十八万ぐらいだと思います。
  187. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 七十八万。  ただ、この政令市になる場合には県の了承が要るんですよ、都道府県の。そこで、恐らく堺市の場合に、大阪府の議論としては、私、詳しいことを聞いておりませんが、やっぱりベッドタウン市的で中枢管理機能というか拠点性がないという議論が私、あると思いますが、それでは千葉市や川崎市や横浜市がどうだと、こういう議論もありますので、正式な申出があれば十分検討してまいります。
  188. 森元恒雄

    ○森元恒雄君 終わります。
  189. 松井孝治

    ○松井孝治君 民主党・新緑風会の松井孝治でございます。九十分というお時間をいただきましたので、多少じっくりと質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、基本的に、せっかく、地方自治も、地方行政、総務省の行政にも通暁しておられる片山総務大臣、お忙しいところ、ずっと張り付いていただけるようですから、片山総務大臣に基本的に全部お尋ねをしたいと思います。部分的には、私が申し上げた部分政府委員に、局長さんから御説明いただく部分もあろうかと思います。特段申し上げない限り、総務大臣にお答えをいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事景山俊太郎君着席〕  まず最初に、この法案なんですけれども、審議の在り方は当然委員会の事項でございますが、この法案の内容というものを見ますと、住民訴訟制度のような非常に住民自治の根幹の部分、これはある意味ではじっくり議論をしなければいけない部分。それと、政府が非常に政策的に推進しておられるような市町村合併、これは正に総務省さんでこの法案を日切れ扱いにしてほしいという要望を出されたという部分はそこにあるわけですが、そういうある意味では時間との争いになっているような部分がある。  当然、地方分権であるとか住民自治という大きな目的のくくりでいえば、それは共通する事項はあるんですが、こういう改正内容の緊急性、あるいは制度的な問題、その内容において相当異質な部分を抱える法案を一本に束ねて、それを地方自治、住民、自治体合併の方を急ぐから、個別の事例があるからというような形で、非常に、日切れ扱いで審議してほしいというような方針というのは、やはり国会における審議の在り方、ここは大臣に御答弁いただくべきものではないかもしれませんが、それを踏まえて考えると、参議院議員である片山大臣でいらっしゃいますから、やはりこれも政治家として、あるいは以前には正に国会対策というものを束ねておられたお立場もあるわけですから、場合によってはそういう政治家としてのお考えも含めて、今回の法案、これを束ねてこういう扱いで審議されるということについて、行政の長という立場のみならず政治家としてのお考えも含めて、御見解を賜りたいと思います。
  190. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 法案をどういう形で出すかというのはいろんなこれは考え方、議論があると思いますけれども、私も国対委員長やらせていただきまして、とにかく法案が多いものですから大変審議日程が窮屈になるもので、国対的な考え方で言うとできるだけ似たような法案はまとめてほしいと、こういうことになるんですね。  それで、地方自治法の場合には、今まで地方制度調査会から御答申をいただいたものを制度化するというのが普通だったんですね。そこで今回も、第二十六次の地方制度調査会から御答申いただいたものがそのほとんどの内容になっていると。それ以外にも若干あるのかもしれませんが、そういうものを含めて法案をまとめさせていただいたので、今、松井委員が言われるように、何でも入っているじゃないかと、ややそういう感じはあると思いますけれども。  いろいろ考えまして、私のところの方は、特に総務省法案が多うございまして、三省庁が一緒になっておりますから、だからいつも国対からできるだけ法案をまとめて少なくしろと、こういうふうな御指摘もいただいておりますので、そういう万般のことを考えまして今回のこういう地方自治法等の一部改正に、市町村合併特例法の一部改正もやっておりますけれども、そういうことになったわけでございまして、大変苦しいところでございますので、御事情を御賢察の上、御理解を賜りたいと思います。
  191. 松井孝治

    ○松井孝治君 余りこれを議論をしていても中身に入れませんので、今の御見解を賜ったということで、中身の議論をさせていただきたいと思います。  まず最初に、私の方は、市町村合併の部分から議論をさせていただきたいと思います。  この合併推進に当たって、先ほどから森元議員も御質問をされました、午前中の一般質疑でも又市議員も御質問されましたけれども、住民投票制度の導入。これは、昭和五十一年の地方制度調査会で答申がなされて、二十五年掛かってやっとこの住民投票制度というものが部分的に導入されたということだと思います。その中身を見てみますと、先ほど来議論に一部出ていますように、住民投票制度の導入というのは合併協議会の設置に限定していると。しかも、その内容は合併推進のための一方向のものなんですね。  これは森元議員が今お話をされましたけれども、住民の意思というのはいろんな意思があるわけですが、その一方向に限定して、しかも合併自身についての意思決定に直接かかわる部分ではなくて合併協議会の設置に限定していると、こういうことになっているわけですけれども、これは一般の方々にはちょっと分かりにくいもので、何で合併について住民の民意を問わないのか、そうすれば賛成、反対、両方の議論がきちっとフェアに出るじゃないかというのが一般の方々の率直な思いじゃないかと思いますが。  まあ二十五年掛かって、しかもこういう部分的に導入、しかもそれは合併の方向にのみ住民の意思が働くというような形で導入されたことについて、これは、私の見解はまた別に申し上げますけれども、まずはその経緯とか趣旨、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、御説明いただけますでしょうか。
  192. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) ちょっと経緯につきましては後ほど自治行政局長から答えていただきたいと思いますけれども、とにかく今、合併協議会の発議が百ぐらい出まして、実際、それが議会で異議ないと言われるのは二十七だっていうんですよね。住民発議を、そういう仕組みを作って、それが全く生かされないで葬られるというのはいかがかなと。  だから、住民発議として合併協議会を作るという発議は出たんですから、それが議会が嫌だと、あるいは議会がとにかく放置すると、こういう場合にはもう一遍住民投票で、協議会ですから、置くということを住民の判断に任したらどうだろうかと、こういうことでございまして、今回地方分権、同じことを何度も繰り返しますけれども、推進委員会の意見もございましたので、そこまで制度化させていただいたわけであります。  経緯についてはちょっと自治行政局長から。
  193. 松井孝治

    ○松井孝治君 それでは、行政局長さんにお尋ねをしたいんですが、その経緯も含めてお答えいただければ有り難いんですが、今の大臣の御説明を伺っていても、あるいは巷間言われていることを聞いても、住民の合併に対する意思というものがあったとしても、それはいろんな議論がありますでしょう、個別、ケースによっても違うと思います。やはり、議員や首長さんというのは合併によって自らの地位を失う可能性がある、そういう意味でどうしても、住民から、合併したい、住民サービスの向上を求めてそういう要望が出ても、言ってみれば、抵抗勢力というと最近のはやりの言葉ですが、利害関係人なわけですね、その合併に伴う。自らの地位が失われるかもしれない、そういう立場の方々がやっぱりブロックしている、そういうケースが多々ある。  それに対して、むしろ住民の発意というものをもう一回確認することによって、そういう首長や議員さんが自らの立場を守るために抵抗しているとすれば、そこをオーバーライドする、そういう制度として位置付けられているように思うんですが、先ほど、二十五年前の経緯、この二十五年間の経緯と、それから私が今申し上げたこと、これは大臣も大体その答弁でおっしゃったと思いますが、そういう趣旨の今回の住民投票制度の導入というふうに考えてよろしいかどうか、局長さん、お願いします。
  194. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 先ほど御指摘がありました五十一年の地方制度調査会でございますが、住民の自治意識の向上に資するための方策に関する答申ということでございまして、その中で、住民投票制度について、住民意識醸成の見地から、例えば地方団体の廃置分合、特定の重要な、重大な施策等々について住民投票制度を導入することを検討する必要があろうということで、しかしながら、この住民投票制度は補完的な制度として採用されるもので、議会等との機能との関係というのに深く配慮をする必要があるということで従来御論議をされました。  それで、先ほど、その後、二十六次の地方制度調査会でございますけれども、引き続き一般住民投票制度についての御論議がなされたわけでございます。その中で、やはり論議として、住民投票の対象とする事項でありますとか議会等の権限でありますとか投票結果の拘束力の在り方でありますとか、種々の検討について正論を得なかったと。メリットのあるという御意見の人もあればデメリットもあるという御意見で分かれたわけでございますが、ただ、市町村合併については、限定的に住民投票制度の導入をすることが適当であるということが、御答申を受けたわけでございます。  その後、地方分権委員会の御答申も踏まえて、今御指摘がありましたように、住民発議の制度の中で、例えば、ある町では五〇%以上の署名を集めたというところを、あとはまあ三〇%、四〇%というところで議会にお出ししたら、その五〇%のところで議会で否決をされたというようなこともありまして、一番高い得票、署名を集めたところで合併の協議会の否決がなされたものですから、全体として合併協議会が設立できないというような状況でございました。  そういうことも含めて、先ほど大臣から御答弁ありましたように、五十一地域、百件の発議のうちに十五の地域、二十七件しか発議をされておらないと。その他については議会が否決をしたか長が付議をしなかったというようなことでございまして、そういうこともありまして、今、先生御指摘ありましたように、住民の意思と議会の意思ないしは長の意思との間に乖離がある場合がある。その点を、そのそごをどうにか解消したいということもありまして、住民発議の一環として引き続き署名を集めていただいて、それも要件を厚くした署名要件でございますが、していただいて、それで住民投票にお掛けするという制度を導入した次第でございます。
  195. 松井孝治

    ○松井孝治君 これはもう大臣にお尋ねしたいんですけれども、先ほど大臣が御発言、御答弁で、形を変えた新たな連邦制的なものがあってもいいんじゃないかと。これ、おっしゃったのは、都道府県と市町村との関係で連邦制という言葉をお使いになられたと思うんですけれども、非常に重要な発言だったと思うんです。同時に大臣は、非常に現場の声で、今のままで不都合はないというような現場の声もあるというふうに御紹介、現場の声を紹介されました。  私も思うのは、現場で、確かに市町村長さんからいえば、今の地方交付税の仕組みの中で生きていくというのは非常に、ある意味では楽なこと、むしろそれを守っていきたいという気持ちが出てくるのは今の制度でいうとやむを得ない部分があるんじゃないか、合理的に考えれば。  ただ、本当にその地方自治体の在り方がそれでいいかどうかということは、地方財政のこれだけ赤字が累積してきて、地方交付税依存型の自治体運営ということではもう中長期的に将来がないという危機感は恐らく大臣の下にもおありだと思うんですね。そういう状況の中で市町村中心主義と、都道府県というよりは市町村が地方自治の実体をもっとより大きく担っていくべきであるという大臣の御意見があったわけですね。  そこまであって、そこまでの認識があって、なおかつ地方の首長さんやあるいは地方議員さんが必ずしもその住民の意向を正面から取り上げておられない、この市町村合併についてですが、そういうエリアが非常に多いということも今局長からも御紹介があったわけですが、そこまでの現状認識があるんであれば、正に地方制度調査会の提案、提言のとおりに、むしろ市町村合併自身をある意味では住民投票に掛からしめていくというような発想があってもいいんではないか。  繰り返し申し上げますが、大臣がおっしゃった議会制という、この日本は議会制民主主義の国ですけれども、他方で、地方自治制度を見れば、それは大統領制的な部分もある。しかも、大臣がおっしゃったように、その都道府県と市町村の関係考えていくときに、むしろ連邦型の関係にしていくべきではないかという御発言も考え合わせますと、この住民投票についても、若干今回の住民投票制度の導入については中途半端、そういう印象が残りますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  196. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 私が先ほどの答弁で連邦的なとか連邦制的なということを申し上げましたのは、例えば五つなり六つなりの市町村が合併すると、一つの町村になった場合に地域審議会というのを旧町村単位で置いてもいいということを今の法律は御提案、今の法律はそうなっているんですね。そこで、その地域審議会が旧町村、合併前の旧町村単位ですから、そこである程度限定的な意思決定ができ仕事ができるような仕組みを考えて、大きな市町村が連邦で、個々のその合併前の旧町村が連邦の中の邦みたいなことを考えてもいいと。こういうふうなことが一つありますのと、もう一つは、これは松井委員言われましたように、府県が、例えば今七十や八十ある、一つの県が六つなり七つなり大きな単位にまとまるとすれば、それまた県と大きくなった市町村との関係は連邦的であってもいいと。こういう二つの意味で使わせていただいたわけでございます。  それから、なるほど、今、やっぱり規模の小さな町村では今が大変楽なんですね。税は取れませんけれども交付税がきっちり補てんされますから、一人当たりの一般財源からいうとむしろ人口が少ない方が、得ということもないんですが、額が多いんですよね。それから、やるべきことはかなりやられてきていますから、そういう意味で、何で変えないかぬかというところはあるんですが、ただ、それについてはいろんな方面から意見ございまして、特に経済財政諮問会議なんかで民間からの委員さんから大変な指摘がありますので、そこで段階補正については現状がと見て、それが適正な財源補てんかどうかについては御意見があるんで、我々の方では実態を見て一部適正化、健全化しますと、こういうことで、今のままだと、とにかく努力しようという、あるいは税収を向上しようというそのインセンティブが働かないですね、税が取れれば交付税が減るんですから。それはどっちでも同じなんですから。税収は上げなくても交付税は来ているんで、税収を取ったら交付税を減らされるんで。だから、そこのところで段階補正を見直しまして、一七%ぐらいカットしようと、段階補正全体を。ただ、一遍にやると大変ですから三年ぐらいでなだらかにやろうと、こういうことにいたしたわけでございまして、今の地方財政状況からいうと、今のような財源補てんはもう大変です、そりゃ。もう今、地方財政全部で百九十五兆の借入れの累積高がある上に、交付税会計だけで四十六兆ですか、何かありましてね。そういう意味でも、今のようなことでずっと財源を補てんするというのは大変無理なので、やっぱりそこはいろいろ皆さんに私は考えていただかねばいかないんじゃなかろうかと、こういうふうに思っております。  そこで、それじゃおまえ、合併に住民投票入れたらどうかと。これは大変議論があるんですね。地方制度調査会が、それは適当だと言いながら、それは関係団体と制度化については十分議論しろ、相談しろと、こういう御指摘がありまして、関係団体に相談したんです。そうしたら関係団体は、やっぱり今の代表制民主主義ならそこまで行くのはどうもと、まあ合併協議会設置の住民投票なら、それは委員会も言っているし、その辺までは許容範囲かなと、こういう御意見が多数でございましたので、私も、合併そのものの意思決定を昭和の大合併みたいに住民投票にかけるのはいかがかなと私も考えまして、今回はこういう形にさせていただいたわけでございまして、今後とも、しかし合併の進展によってはいろんな議論が私はあっても当然だと。いろんな意見を、もちろん国会での意見が中心でございますけれども、それ以外いろんな会議でいろんな御議論いただいておりますので、その対応については我々も十分心してまいりたいと思っております。
  197. 松井孝治

    ○松井孝治君 今の大臣の御見解で、私も方向性においては共感できる部分が多いと思います。  ただ、先ほど森元議員からのお話もございましたが、実際の中には、合併の先に何が見えるのか、夢が見えないというような意見があるという議論を御紹介いただきました。  それは私は、本来そういう現場の声というのは本末転倒であって、夢を総務省に求めてもそれは全くビジョンがないわけでありまして、むしろ自分たちがどういう展望を切り開くのかというのを自治体側が考えていかなければいけないんじゃないかと。それを市町村合併措置を用意しておられる中央官庁、総務省に求めるというのは全く本末転倒で、そこら辺も、今の交付税によって、大臣が正におっしゃったように、非常に安易に運営されていると言うと、いろいろ御苦労されている自治体も多いですから、そういう自治体には失礼かもしれないけれども、やっぱり制度的にはややぬるま湯につかっている部分があるんじゃないかと。もっと創意工夫を持って、自らがどういう地域を作っていくかというビジョンを持った自治体を増やしていくような、そういう制度を作っていくべきではないか。  そのためにも、私は、やっぱり市町村合併についてはもう少し、まあそうそうある波ではないと思うんですね、今回の、正に明治、昭和、平成の大合併と言われるようなこの大きな波をとらえて、もう少し私は、国自身が大きな方向性を出してもいいんじゃないかと、そういう意見を申し上げておきます。  さて、先ほど都道府県と市町村の関係について大臣がある程度の方向性をおっしゃいましたけれども、これは端的にお答えいただければいいんですけれども、大臣は、今後の地方自治制度について、この市町村合併は推進されるわけですが、都道府県と市町村、この二層制というものについては基本的に現状のとおり維持していくべきとお考えかどうか、端的にそこはお答えいただけますでしょうか。
  198. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今、松井委員御指摘のように、地方制度は都道府県制度と市町村制度の二層制になっております。  ここで、現在、都道府県をなくして国と市町村だけにしますと、これはもう圧倒的に国が強いですから、市町村が押しつぶされてしまうんですね、いろんな意味で。だからそういう意味で、私は二層制が意味があると思いますし、今の市町村の狭い範囲なら、これはいろんなことできません。その意味では、中間的に広域的な都道府県があることはいいことだと思います。  ただ、我々が考えているように、これから、今後の進展次第ですけれども、市町村が今の三千二百二十三ですか、が千になる、あるいは千以下になった場合に、それじゃ今の四十七の都道府県制がそのまま維持すべきかどうか、二層制の維持はあっても、もっともっと大きな広域的な団体になった方が私は適当ではなかろうかと、そういうことの議論はもうそろそろ始めてもいいんではなかろうかと、こういうふうに思っておりまして、総務省の中に研究会も作らせていただき、特に地方制度調査会や地方分権改革推進会議での御議論もお願いしておりまして、だから、市町村の再編、その再編を仮に千なり何百にした場合に、その上に立つ広域的な団体である都道府県はどういうものになるのか。それこそ、連邦という意見もありますし、道州という意見もありますし、あるいは合併でもいいじゃないかという意見もありますし、あるいは組合を強化したような連合でもいいというような制度もありますので、そういう今までのいろんな議論を踏まえながら、あるべき都道府県制度のビジョンを描いていかなければならないと、こういうふうに思っている次第でございます。
  199. 松井孝治

    ○松井孝治君 分かりました。  今正に、少し私がこれからお伺いしようということを先取りしてお答えいただいたような感もありますが、まず順を追ってお尋ねしますと、基礎自治体の数、これは裏返していえば大まかな規模ですね、それについて、今、基礎自治体の数、市町村については、これは与党の方針だったかもしれませんが、千というものを目標にして統合を進めていこうということだったと思います。それを基本的に踏まえて今回の措置も取られていると思います。  大臣のお考えとして、基礎自治体の数、これは今、千を恐らく当面の目標にしておられると思うんですけれども、それでいいのか。あるいは、今少し御答弁の中でも先に触れられましたけれども、もう少し更に中長期的に統合を進めていくべきなのか。これは基礎自治体の適正規模、これはひょっとしたら合併という議論だけじゃなくて、基礎自治体として余りにも大き過ぎる場合に、分割した方がいいのかどうかという議論もあるかもしれませんが、適正規模あるいは数についてどの程度のイメージをお持ちなのか、御答弁願いたいと思います。
  200. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 与党三党が言われる千に私は余り具体的な根拠があるとは実は思わないんです。昭和の大合併のときが一万ちょっと、一万一、二千あったものが大体約四千になったんですね。だから、三分の一ぐらいになったということが一つあるのと、今が三千二百幾らですから、そういう意味で三分の一というと、千という丸い数字ですし、大変分かりやすいと、こういうことで与党の関係の方が千という数字を示されたんじゃなかろうかと、こういうふうに思います。  そこで、都道府県にそれぞれの都道府県内の合併の一つのたたき台、パターン、たたき台を作ってほしいと、こういうことをお願いしましたら、一番大きなのが千二百、それから少ないのが七百ぐらいですか、千二百から七百ぐらい、いろんな案がありますから。多い案だと千二百、少ない案だと七百幾ら。平均するとちょうど千なんですね。  そういうことで、都道府県自身がたたき台としてお考えになっているのも平均的には千なのかなと、こういうふうに我々も思っているわけでございまして、ただ、そのパターンどおりに必ずしも合併が進むかどうかというのはこれは分かりませんけれども、そういうふうに実は考えているわけでございます。  昭和の大合併のときは、松井委員も御承知のようにやっぱり新しい学制に対応する市町村の規模、能力ということで、最低八千だったんですよ、あのときは、一つの。実際は八千よりもうちょっと行っていると思いますけれどもね。  今回、それじゃ一つの理想的な人口規模を出すというと、これが難しいんですよ。今回、新しい自治制度になる、新しい学制改革に対応するという明確なあれがありましたが、やっぱりこれからの二十一世紀の地方分権の在り方で市町村の役割といいますと、そんなに具体的で数字につながるようなことにはなかなかならないんですけれども、これからは福祉だとか保健だとか環境だとか都市計画だとか、そういうことを私はやっぱり市町村が中心になっていくべきで、小泉総理が言われますように、地方でできることはできるだけ地方にと、その地方は市町村だと、まず。市町村にできないものを都道府県が補完的にやると、こういうことではなかろうかと考えている次第でございます。
  201. 松井孝治

    ○松井孝治君 今なかなか適正規模というのは出しにくいというふうにお答えになられましたが、ちょっと言い方を換えて言いますと、よく一人当たりの行政コストのカーブを見ていくと、U字型になるとかL字型になるという話がありますね。U字型というのは、ある規模以上の人口、都市の人口になると、逆に集積し過ぎて行政コストが掛かっていく、L字型の場合は、恐らくある段階まで低減していって、それ以上多くても別に特段行政コストは掛からない、ここら辺によっても考え方が違うかもしれませんが。  逆に大き過ぎる基礎自治体というものについて、これを分割するというのはなかなか合併以上に難しい部分はあるのかもしれませんが、その適正規模、適正規模が何万とは言いませんけれども、大き過ぎる基礎自治体について、大臣は、基礎自治体の単位として、それは場合によってはもう少し小さい方がいいという、そういう部分のむしろ分割促進的な発想をお持ちなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  202. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 大きいものを分割するという考えは今持っておりません。  ただ、東京都の二十三区は昔は東京市だったんですよね、御承知のように。昭和十八年に戦時体制下で府と市を一緒にして区を作ったんですね、東京都の二十三区は。そういうことで、東京市の分割だと言われれば分割ですけれどもね。  それ以外では余り分割という例はないんですが、今の市町村の制度では、言いましたように政令市というのがある。中核市があって特例市があって、それぞれが所掌する権限事務が違うんですね。もう政令市になりますと、ほとんど警察と教育以外はほとんど政令市ですよね、政令市で。それから、中核市になると政令市ほど多くありませんがかなりの部分、特例市も普通の市より多い、それから普通の市と、こうなっておりますから。  これからは、市町村制度の差別化というんでしょうかね、そういうことの研究が私は要るんじゃなかろうかと、こういうふうに思っておりまして、特に政令市の府会議員さん県会議員さんというのは、担当の府、その政令市を持つ府県の担当の事務が少ないものですから、そういう意味では、今のままでいいのかなという議論はもうかねがねからあるんです。  例えば、大阪府と大阪市を例に取りますと、大阪市の中の府会議員さんの仕事というのはかなり限定的ですよね。ほかの府会議員さんより少ない。あれだけの数が要るのか、その辺の役割をどうするのかというのはもうかねがね議論されているわけでございまして、そういう意味で、市町村の再編が進んできたら、そういうことを含めて、私、考え直す必要があると思います。  ただ、今、一つになった市を、おまえら、別れろと。これは、今の自治法の手続だと自分で決めなきゃいけませんから、当該市がですよ、自分で、大き過ぎるからそれじゃ分割しますと、こういう意思決定をして手続を取るかどうかですね。私は、そういうことはまずないんではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  203. 松井孝治

    ○松井孝治君 今のお話、またちょっと、これ済みません、通告してない質問で申し訳ないですけれども、お話を伺っていまして思いましたのは、大阪においても、大阪都と言うと、そういう名称を使っておられるかどうか分かりませんが、正にその政令市と都道府県の関係というのが非常に大阪などで問題になっていて、むしろ東京都的に、政令市と都道府県を大阪の場合に関して一緒にしてしまったらいいんじゃないかという議論が経済界などに根強くございますね。  これは、政令市を抱えるところのその当該政令市とその当該都道府県の政令市部分の事務の重なりについては、もうどこの政令市を抱える都道府県でも必ずと言っていいほど地域の経済界あるいは地域住民から何とかしてほしいという声が上がっていますよね。  これは、ある意味では、さっき大臣も少しおっしゃいましたけれども、市町村合併を進めていった先にある都道府県と市町村、私も二層性は維持するべきだと思います。さっき大臣がおっしゃったのと全く同じ理由で、国との関係で市町村と国というふうに対峙させてしまうには余りにもやはり国の力が大き過ぎる。逆に言うと、国の役割をもっと地域が担っていかなければいけないけれども、その中間単位としてやはり何らかの、第一層目というか第二層目というか、国に近い方の自治体というのは存在が必要だと思うんですが、ただ、基礎自治体の単位が大きくなっていく、そうすると、今の政令市、正に大阪府と大阪市が抱えているような問題にどんどん近づいていくわけですね。  これをどう考えていくのか。下から勘定すれば、基礎自治体の次の第二層目の自治体の規模というものをどう考えていくか。言葉を換えれば、いわゆる道州制の検討というものをどう考えていくのかというのを、やはりこの市町村合併の議論を、促進措置を議論するときに併せて考えていかなければならないのではないかと思うんです。  そういう意味で、いわゆる道州制ですね。道州制といっても、いろんな方々がいろんなパターンでおっしゃっていますから、やや定義があいまいな部分はありますが、その第一層目の自治体を基本的に大きくしてその自立性を高めていこう、その行財政基盤を確立させていこうという今発想があるわけですね。それに対応して、じゃ、第二層目の自治体について、今の都道府県というものをもう少し大くくりにしていくのか。  そこについての大臣の、これは今正に地方制度調査会で議論をお願いしているところですというふうに御答弁されるというふうに思うんですが、そういうもう答弁は抜きにしていただいて、大臣の見解ですね。これは、大臣自身、地方行政に本当に、岡山県の副知事もやられていますし、ずっと自治省で地方行政に携わってこられた、地方自治に携わってこられたわけですから、大臣自身のある種個人的な見解でも結構ですので、ビジョンをお述べいただきたいと思うんですが。
  204. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 近畿圏で今政令市は大阪と京都と神戸ですよね。これに、堺もありますし、候補としてはいろいろあるんで、そういう政令市がたくさんできる、中核市的なものができる、特例市ができると。それで、合併がどんどん進んで、一つの県のそういう市町村の数が一けたになると。そういうときに、今のあれだけの都道府県を、近畿圏の府県を維持する必要があるのかどうかという議論が必ず出てきますね。  その場合に、先ほども言いましたが、道州制というのは二つありまして、自治型の道州と官治型の道州と。昔、ずっと前に議論されたのは官治型の道州なんですよ。ブロック官庁を総合して、国の総合出先機関を作るような発想だったんですね。  ところが、今は、今の道州は自治型の道州で、やっぱり今の府県を拡大したような感じで、知事さんというんでしょうか長官というんでしょうか、知事、長官は公選で、議会があって、意思決定機関が、それも公選でと、こういうことですね。できるだけその権限は市町村に下ろして、残った広域的なことだけやると。国の方からも権限をもっともらうと。国のブロックの出先機関なんか全部吸収すればいいわけですから、その新しい道州に。国のブロック機関、今いろいろありますけれども、国土整備局だとか農政局だとかありますですね。あるいは、今経済産業局と言うかどうか知りませんけれども、財務局だとか。そういうものを吸収したものを作っていく道州。  それで、連邦といったら、それを更に徹底して、一つの国になるということですね。近畿共和国とか、中四国共和国か何か知りませんが。これはもう連邦ですから、限定的主権があって、場合によっては裁判所があって、軍隊があって、軍隊と言うてはいけないのかもしれない、自衛隊的なものがあってと。こういうアメリカの、あるいはドイツやオーストラリアと、ああいう連邦制になると、連邦政府は極めて限定的なことをやると、外交だとか通商だとか、通貨だとか。それが連邦で、道州制で。  それから、昔議論があったのは、例えば阪奈和合併というのがありまして、大阪と奈良と和歌山が合併する。中京三県の愛知県と岐阜県と三重県が合併する。これは、今の市町村合併と同じようなことで合併をして再編すると、こういう議論もありましたし、それから、それに代わる連合という、今市町村に連合制度というのがありますけれども、それを府県単位でそういう連合を作っていこうと、こういう案もありまして、それはどれがいいか分かりませんけれども、そういう議論をもうそろそろ私は始めた方がいいんではなかろうかと。  ただ、市町村の再編が一つも進まぬ段階で府県の再編をやろうなんと言っても、何言っているんだと、こういうことになりますから、私は、合併がもう少し進度を増した段階で、府県制度についても本格的な議論を始めていく方が、それが二十一世紀の我が国のグランドデザインになるんではなかろうかと、こういうふうに考えておりまして、個人的にはやはり道州、自治的な道州がいいのかなと。  そうなりますと、道州の知事さんというか長官は、大臣は強くなりますよ、権限次第ですけれども。例えば九州の知事さん、近畿の知事さん、東海というか、どういう区切りにするかというのはありますけれども。  そういう意味では、その方が日本全体としてはかえって効率がよくなるんではなかろうかと、こういうふうなことも考えておる次第でございます。
  205. 松井孝治

    ○松井孝治君 基本的に御見解に私も賛成でございまして、是非、市町村合併を進めるときに、さっき正に森元委員が紹介された地域の声、要するに合併の先に何があるんだというものが見えない、そういう意見に対して私はさっき批判的なことを言いましたが、もしそれに対して国なりが答えるとしたら、合併の先に我々が抱いているこの国の形というのはこういうことじゃないかと。今、例えば大臣がおっしゃったことというのは私の考えていることと非常に近いんですが、そういうことを何らかの形でビジョンを示していく。そうすると、基礎自治体も、ああそうかと、我々が担う役割はそういうふうに変わってくるんだと、今の都道府県と市町村というそういう分担関係でなくて、もっと都道府県は合併して大きくなって、国の役割を相当担うんだ、その中で基礎的な業務は我々が全部担っていくんだというその展望が見えるんじゃないか。  今の市町村合併は、残念ながら、今、大臣は相当従来からいえば思い切って御発言されたと思いますけれども、そういう部分が、やっぱり地方自治ということで余りにも国がそういうビジョンを示すことが適切ではないんだということで、本当は皆さん、総務省のお役所の方だって、それぞれ個人的に、夜の席でどうぞビジョンをお話しくださいと言えば結構いろんなことをおっしゃるにもかかわらず、一切公的にはそういうことをおっしゃるのを控えてこられたんじゃないか。それが、やっぱりそういう感覚が、やっぱりもっと思い切ってそのビジョンを述べていただくというような、今そういう時期なんじゃないかな、そんなふうに感じる次第でございます。  大体、本来私どもの、民主党の道州制の考え方も申し上げようと思っていたんですが、今の議論で大体論点は明確になったので、それは控えさせていただきます。  ちなみに、ちょっとこれ確認的に、行政局長の方からでもお答えいただければ結構なんですが、これも通告していないんですが、今のお話との関係で、市町村合併が経済圏と都道府県の境界というのが違う場合というのはたくさんありますね。    〔理事景山俊太郎君退席、委員長着席〕  市町村合併が都道府県、複数都道府県をまたがるような話というのは、そういう構想というのは私自身も聞いているんですけれども、そういうものは当然今回の市町村合併の対象になるのかどうか、確認的に御答弁を求めます。
  206. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) お答えいたします。  都道府県境をまたがる合併構想はしばしばございます。それで、協議会等も、具体的には長野県と岐阜県の県境で具体的に協議会が設けられておりまして、構想、協議が進んでおるということでございまして、当然入るわけでございます。
  207. 松井孝治

    ○松井孝治君 正にそれが実態だと思うんですね。実態の、地域の実情だし経済実態だと思うんです。それはどこで線を引いたって、経済活動にそんな線があるわけじゃないですから。  だから、そういう意味では、やっぱり今後の市町村と都道府県の関係、あるいは一層目の自治体と二層目の自治体ということを考えたときに、是非、市町村を大きくする、そういう場合には、二層目の自治体についてもより大きな範囲で国の事務を積極的にそこが受け皿になっていく。しばしば中央官僚は、総務省はそうではないかもしれませんが、地方分権するといっても受け皿である都道府県では到底こんな事務は担えないんですというのが正に地方分権に対する抵抗勢力のエクスキュースになっているわけですね。これをやっぱりエクスキュースにしないためにも、将来的な都道府県の再編というべきでしょうか、道州制の検討というものについてより具体的な検討に入っていただきたいし、大臣からよりリーダーシップを持ってそういう構想の検討を地方制度調査会なりに下ろしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  さて、大分時間を取ってしまいましたので、今回の法案の住民訴訟制度についての御質問に移りたいと思います。  住民訴訟制度についての我々の基本的な見解は、現状のいわゆる四号訴訟、これはいろんな問題を抱えているということは我々民主党でも十分認識をしております。乱訴と言われるような一部の実態があるということも分かっておりますし、それによって地方行政の萎縮が生じているというようなケースも認識しているつもりでございます。  しかしながら、この住民訴訟制度、先ほど同僚議員の御質問の中で、その趣旨、何で四号訴訟で個人を訴求対象にしたのかという趣旨についての御質問があって、それに対して滝政務官の方から、その制度導入のときの趣旨はよく分からないという話がありましたけれども、ちょっとこれは私はそういう答弁は、経緯が分からないという、不明確な部分があるという意味でおっしゃったのかもしれませんが、やはりこの理念というのはある正当性を持っていると思うんですね。それは、住民訴訟、これは株主代表訴訟とパラレルな制度であって、会社のガバナンスに対して株主が物を言う、それと並行した感覚で自治体のガバナンスに対して住民が物を言っていく、直接的に個人を追及していく、責任ある立場の人間を追及していくという制度であったと思うんですね。  我々は、問題点は解消していかなければいけないけれども、この四号訴訟のそもそも設けられた趣旨というものを考えていくときに、今どんどんどんどん分権で首長さんなりの責任あるいは権限というのが大きくなっていくし、もっと大きくしていかなきゃいけない。それに対して、きちんと住民がその不正なりを追及していける一つの手段、これを本当に葬り去ってしまっていいのかということについては、強く反対の問題提起をするというのが我々の立場であります。  そうした我々の立場をまず明確にさせていただいた上で、これはもう簡単で結構ですけれども、大臣は率直に、この四号訴訟制度が果たした意義、特に私が申し上げたいのは、官官接待、あるいはさっき野球大会というような話も、事例もありました。あるいは空出張のような問題もあるでしょう。そういう自治体における不正ですね、あるいは談合、こうした問題に対して四号訴訟制度というものが果たしてきた意義、役割というものをどういうふうに判断しておられて、今回それを、訴訟類型を変更するということによって住民側にとってどんな利益があるのか、逆に言うとどういう制度改正といいますか制度改変によるデメリットがあるとお考えなのか、大臣から端的に御答弁をお願いしたいと思います。
  208. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 私も、現在の制度が異様な財務会計行為の是正や防止に一定の役割を果たしたと思いますね。特に、情報公開がかなり進んできましたんで、それと相まって、今言いましたように空出張の問題だとか官官接待の問題だとかについてはそれなりの役割を果たしたと思います。  ただ、これは最初に入れるときから、委員も御承知だと思いますが、大変な議論があって、入れてからもいろいろ学者を中心に議論があった制度なんですね。とにかく個人に着目しているんですよ。個人が地方団体の中でやるということは、それは極めて限定的でございまして、やっぱり予算が組まれて一つの方針が決まった中で、財務会計行為というのは氷山の一角みたいにあるわけですね。その下に予算だとか手続だとか意思決定だとか、これが全部捨象されて、この上の財務会計行為だけが、個人の財務会計行為だけが問題になるんですね。それはやっぱり団体の意思だとか機関の意思だとかがあるわけで、それを併せて問題にしないと私は仕組みとしてはおかしいんではなかろうか、こう思うわけでありまして、今回のこの制度も、地方制度調査会で御答申をもらった制度でございますけれども、個人をそれじゃ外さないんですよ。個人もひっくるめて団体の責任、機関の責任を正面から問うと、こういうことにいたしたわけでありまして、私は今までの制度も一定の役割を果たしてきたと思いますけれども、今回の制度の方がよりいいものではないかと考えております。
  209. 松井孝治

    ○松井孝治君 そこら辺になってくると見解が違いまして、今、大臣ちょっとお答えいただいていないんですけれども、住民の立場で考えたいと思うんです。  今、大臣がおっしゃったことがすべて私理解不能だというわけではありません。もちろん、その政策判断を組織として行っている、より組織を追及した方がいいという場合もあると思うんですね。しかし、やはり個人的に不正を働かれるケースというのは、首長さんにしても、あるいは職員にしてもあるわけですね。これを、住民がその不正について、これは後で一号請求の問題と四号訴訟の問題との議論もちょっとさせていただきたいと思っていますけれども、こういう不正を住民が事前に差止めするということは事の性格上難しいと思うんですね。制度とか事業で、ある事業を行う、ある公共事業を行う、これがいいかどうかを差止めする、しない、この議論というのは、ある程度行政の中身がオープンになってくれば、アメリカのような行政体系の中ではむしろ差止めで処理しようじゃないかということは十分可能だと思います。そのためには行政の在り方をもっと変えていかなければいけないと思いますけれども。  ただ、今までの四号訴訟が明らかにしてきた問題は、いろんな組織的な不正、こういうものを納税者がきちんと追及していくんだと。その役割というものが、これは本当に組織としての判断だといってすべてそれを、組織を相手に納税者が訴訟するんだということで本当に実現できるかどうか、私はそこに非常に大きな疑問があると思うんですが、その点、住民サイドに立った場合の問題点、特に私が申し上げているのは、首長やあるいは機関職員の汚職であるとか不正、これを歯止めを掛けていく、そういう不正が行われないように抑止的な効果を持つような制度という意味で、今回の四号訴訟の訴訟類型の変更というのは、本当におっしゃるような、あるいは総務省説明でおっしゃるようないい面ばかりをもたらすのか、あるいはそこは若干ある部分の弊害を救うために本当に本質的に重要な部分を葬り去ってしまうようなそういう制度改変になってしまわないかということについて御見解を賜りたいと思います。
  210. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 私は、個人の方は変わらないと思っているんですよ。今までは、例えば片山という個人を訴訟で訴えたわけでありますけれども、例えば私が、どこでもいいんですが、東京都、仮に知事としますと、今度は東京都知事を訴えるんですね。だから、それは訴える対象が違いますけれども、私は、住民の立場からいうと訴えることは変わらない、不正な財務行為、財務会計行為をこれは訴えることも変わらない。ただ、今までは片山個人だったものが、今度は知事を訴え、個人は訴訟参加するわけですから、場合によったら二人訴えるようなものなんですね。  だから、端的に個人を訴えるのと団体の長を訴えるというのは感じは違うかもしれません、そこは。しかし、今までが個人で何かやったということはほとんどないんで、機関の長としてやる、あるいは出納長としてやる、何とかの部長としてやる、何とかの職員としてやったわけでありまして、そこのところをほっておいて、個人だけつかまえてやるという方が、私は少し今までの訴訟が無理があったんじゃなかろうかと。  それは、アメリカなんですよね、この納税者訴訟というのは。それは、アメリカの場合には財務行為をやる人が、その人がその職だけやるんですよね。そういうところも私あるんじゃなかろうかと、こう思っておりまして、日本の場合にはみんな替わるんですから、選挙の人は別ですよ、それは副知事からみんな替わるんですからね、一官一職じゃないんで、一個人が一つじゃないんで、その辺が私はやっぱり日本の制度としては少し違和感があるなと昔から思っておりまして、今回、地方制度調査会からこういう御答申いただいたもんですから、こっちの方がいいのかなと私個人は考えておりますし、住民の方からいって、これで大変訴えにくくなるとかわかりにくくなるんだろうかと。個人じゃなくて今度は両方訴えられるんですから、機関の長を訴えて、機関を訴えて、同時に個人も訴えることになって、もしこっちが負けたら、この機関と個人の関係は求償行為が発生しますから、訴訟をもう一つ起こすんですけれども。  そういうふうに私は思っておりますので、いろんなこれは御意見が片やあるのかもしれません。
  211. 松井孝治

    ○松井孝治君 一見、分かりやすい御説明なんですけれども、ただ、私が申し上げているのは多分こういうことなんですね。  首長さんが不正を働きましたと、あるいは談合企業がありましたと、これが例えば刑事訴追されるというケースが典型的にありますね。これについて今の制度でいいますと、個別名を挙げて言うのは適切じゃないかもしれませんが、何とかさんという例えば知事さんが非常に不正を働いたと、疑惑を持たれていると。これを個人がその知事何とかさんという、AさんだったらAさんとしましょう、Aさんを従来は訴えていたわけですね。ところが、この不正を働いたあるいは汚職を働いた、それによって自治体の財政に非常に損害を与えたという人を訴えるときに、今後のこの改正法であれば、その組織を訴えてくれと、A知事というのが所属するB県という県を訴えてくれということなんですよね。機関としてのA知事ですから、それは県だというふうに言ってもいいと思うんですけれども、それを訴えてくれと。  これは、もちろんA知事はそのB県の訴訟に対して、住民が訴訟したというときにもちろん訴訟参加をされるというケースが多いのかもしれませんが、現実にはその訴訟参加も担保されてませんが、これを、この訴訟経費はだれが持つのかというとB県の公費で持つわけです。  これは、まずちょっと大臣にお答えいただく前に行政局長にお答えいただきたいんですが、B県のAさんという知事、この方が例えば汚職をした、あるいはその県財政を私物化した、それに対してそれこそ刑事的な訴追も行われる、そういうような事態を想定しましょう。そうしたときに、仮に、このA知事さん、その住民訴訟で、A知事さんにかかわる住民訴訟で、この県が、住民との間で訴訟になって県が負けましたと、住民の損害賠償請求が通りましたというときに、この訴訟経費、この県は正にその知事が働いた不正行為について住民に損害を与えたわけですね。  この訴訟経費というものは、その個別の知事さんから県は請求するんでしょうか。要するに、その知事を弁護する、機関として弁護したその結果としてその知事が負けた、その知事側、県側が負けたときに、やっぱり不正があったと、住民に損害を与えたというような裁判の結果が出たときに、この裁判費用、公金によって応じた裁判費用というのは県側が敗訴したときにきちんとその知事から請求されるんでしょうか。局長さん、お願いします。
  212. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) ただいまの事案で、一つは談合企業ないしは長の刑事事案というような場合にどう考えるんだと、敗訴した場合にどう考えるんだというような御指摘だろうと思います。  一つは、今度の四号訴訟におきましては、地方公共団体の執行機関を訴えるわけですけれども、執行機関自身は自らの職務行為は正しいという主張をしておるわけでございます。自分としての立場で、機関としての立場で判断をしているということで、その訴訟費用については、当然、地方公共団体が負担すべきものだと思います。  それで、談合企業、いわゆる談合をしていると住民から見てそう思われている事案でございますけれども、談合の企業につきましても、先ほど来御指摘がありましたけれども、訴訟告知を受けて訴訟参加をするということでその参加的効力が当該企業に及びますものですから、参加をするということで、当然、企業として自らの立場で訴訟参加をして弁護士を付けて臨むという具合になると思います。そういうことで、企業自身は自分の立場で訴訟参加者となるということでございまして、今言われた意味での企業に対して求償をするということはないという具合に思います。  ただ、先生が今御質疑ありました、例えば長が横領とか背任とかいう犯罪行為を行ったと、結果的に敗訴したと先生言われましたけれども、そういうような事案を仮に考えた場合には、当然に刑事手続によって処罰をされる事案だろうと思います。なおかつ、辞職や不信任等によりましてその地位を退いて新たな長の下で適切に刑事、民事責任なりが追及されるというようなことだろうと思いまして、そのような場合には、今言われた意味での新四号訴訟というものは提起されることは想定され得ないという具合に我々は思います。
  213. 松井孝治

    ○松井孝治君 やや、ちょっと焦点をずらされたような答弁だったと思いますし、恐らくこういう議論をいろんな形で国民の方々が聞いておられるときに分かりやすくお伝えするのが僕らの責任だと思うんですが、要するに、談合企業やあるいは不正を働いた首長さん、この方に対する住民の訴訟を機関が受ける、要するに県なら県が受ける、府なら府が受けるその訴訟経費、府が負担した分の訴訟経費は、仮に敗訴した場合でも、談合企業やあるいは不正を働いた首長さんの訴訟において府や県が敗訴した場合でもその公的支出というのは後でその企業や不正を働いた首長さんに請求するということはない、すなわちその訴訟経費、少なくとも機関として受けた訴訟経費は請求しないということですね。端的に、するしない、ほかの問題を混ぜずにお答えいただきたいんですけれども。
  214. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 訴訟の段階の場合は、その前に監査請求があるわけでして、住民の皆様は当然、職務行為が適正でない、談合行為があると住民は判断されると。金を出しなさいというのを住民が判断する。それに対して、多分、監査請求の方ではそういう事実はないという判断が前置では成り立っているだろうと思うんです。そして、住民の方はそれは不満だということで住民訴訟になっているというような構図だろうと思います。そういう構図の下で、機関である地方団体の方は、これは談合行為はないという判断をされる。そして、企業の方は企業の方として訴訟告知を受けて訴訟参加をすると、そういう場合には、先生が言われた意味でいいますと、私が理解するに、機関としての首長はその段階で弁護士をお付けになる、企業の方は企業の方として弁護士をお付けになるということで、住民との争いの構図になっているということだろうと思います。  そして、敗訴を仮にした場合においては、企業としては当然自分の雇用した弁護士の費用を払うと。そしてまた、先生が言われる意味でいいますと、機関の部分も払うというと二重に払うことになるという具合になるわけでございますから、当然、機関としての立場で争っている、企業としての立場で争っていると、こういう構図だろうと思いますので、それぞれの立場で弁護士費用は払うものだという具合に基本的には思います。
  215. 松井孝治

    ○松井孝治君 これは、非常に厳密なようで論点をちょっと混ぜてお話しになられているので、こういう議論を聞いている国民の方々は誤解があるといけないんですけれども。  少なくとも公的支出、県なら県、自治体なら自治体が機関として支出している。それは住民サイドから見れば、その談合企業を、談合はなかったんだといって裁判を争っているその公的支出がなされているわけですね。その公的支出というのは税金から出ているわけですね。その税金から出て談合企業を、談合はなかったんだというふうに争って、裁判所は結局談合があったんだというふうに認めた場合に、本来であれば、その談合企業を守るために公的支出をしているわけです、税金使っているわけですよ。この税金はどういう理屈で住民の方々に説明するんですか。おかしいんじゃないですか。  普通に国民の方々が個々に聞いておられるとして、多くの方は、国会テレビ見ておられる方もいらっしゃる、インターネット見ておられる方もいらっしゃる。そういう談合企業を守るために機関が、いやこれ談合ありませんでした、官製談合なんという言葉は一杯あるんですよ。談合企業を、いやそれは談合なかったんだといって住民と争ったときに、それを、それでいや裁判所は談合があったんだと認められたような場合に、何で談合企業を守るための訴訟経費、それは実質、機関としての自治体が支出するわけですよ。どうしてそんなものまで請求できないんですか、税金で面倒見なければいけないんですか。これは全く国民は理解できないと思います。  大臣、聞いておられていかがですか。恐らく大臣は、局長さんのおっしゃっている非常に技術的な説明もお分かりだと思います。私が申し上げていることの意味も分かっていただけると思います。おかしいと思われませんか。
  216. 田村公平

    委員長田村公平君) 芳山自治行政局長、ちょっと僕も聞いていてあなたの答弁よく分からないから、分かりやすく。B県のA知事さんがという具体の例で言っているわけです。当然私自身もそういうことを想定できると思う。もっと明確な答弁、せっかく、時間が限られていますから、明確に答弁してあげてください。
  217. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 済みません、御説明足りませんで。  私は、今まで、今までの例で申しますと、住民が談合企業と思われる企業に直接訴えるわけですよね。そのときに県の知事が出てくるわけじゃないわけです。そうしますと、談合と言われる企業と住民との間で争いになるということでございます。それで勝ったり負けたり。そうすると、地方団体の発注者の責任の論議は全くない、今までの訴訟の場合には、発注者である地方団体なりの責任は全く論議されていないというのが今の訴訟の体系であります。  ですから、我々、今の訴訟の体系で心配しますのは、その事案については確かに直るか、修正されるかもしれませんけれども、その背後にあります地方団体の発注者責任なり、ほかの企業を含め、ほかの工事を含めての団体のそういう談合的な体質というのは直らないという具合に思うわけです。  今回の訴訟の体系は、執行機関である地方を訴えると。これはどういうことかというと、談合行為をすると住民が思っているということは、契約を結んでいるわけです、談合企業と執行機関とが。発注者としての契約を結んでいる。その発注者の責任が当然当局の方にもあるわけです。そして企業の方にももちろんある。ただ、訴訟の体系のときにはまだ争いになっているわけですから。争いになっているわけですから、それぞれの立場で、先ほど来ちょっと分かりにくいと思いますが、それぞれの立場でそれぞれの立場の正当性を主張しているという限りにおいては、弁護士費用というのは当然当該団体の負担だろうという具合に思います。  それで、例えば、これちょっと表現が悪いかもしれませんが、表現が悪いかもしれませんが、国家賠償法の世界で申しますと、国を住民は訴えるわけですよね、国民は訴えるわけですよね、国民は、国家賠償。そのときに、個人である公務員の公権力の行使を、行使が違法、過失だということで訴えるんだけれども、国を訴えるんですよね。国を訴えるんですよね。そのときの弁護士費用というのは当然国が、行政事件訴訟で、訴訟ですから、当然国が持つということが原則でございます。
  218. 松井孝治

    ○松井孝治君 かえって話が分かりにくくなるので、局長が正確に答弁をしようとしておられるし、ある意味では今回の制度改正を何とか正当化しようとしておられるのはよく分かるんです。それはお立場ですから、分かるんですけれども。  例えば談合があったと。で、監査委員もあるいは首長も、首長といいますかその自治体もその談合を見抜けなかったと。極めて巧みに談合されていたと。したがって、監査人は住民の監査請求が来たときに、それは却下したと。で、住民はおかしい、これはやっぱりあるといって裁判で争った結果、談合はあったと、やっぱり。こういうときに、どうしてその住民が払った税金でその裁判の費用を賄わなきゃいけないのか。  訴訟参加とかいろんなことをおっしゃるけれども、そんな訴訟参加なんというのは、どこまでやるか、どれだけの金を使ってその談合企業がやるかなんというのは、ある意味では格好だけ付けて全然やらないなんということはあるわけですよ。全部自治体にやらせておいて談合企業はぬくぬくと裁判費用も持ってもらって、結局負けましたと。そういうときに、そういう案件なんというのは一杯起こり得るわけですよ、現実に。そういうものについて、何で住民の税金を使って談合企業を守る形になっている、それに対して請求も行えないという制度は僕はおかしいと思います。もう局長さん、答弁結構です。  大臣、こういうことについて国民に分かりやすく説明していただかないと、やっぱりこれ不信が生まれると思うんです。御答弁願います。
  219. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 前は個人なんですね。今度は機関を訴えるんですよね、団体の機関を。機関が訴訟当事者になりますから、その訴訟当事者は自分の訴訟費用を自分で払うのは当たり前なんですよ。  そこで、負けた場合にはですよ、負けた場合には、その団体に与えた損害については求償するんですよ、談合企業なり、あるいは知事なりその機関の長に、今度は機関が、団体が。団体が、県が、知事なり談合企業に、与えられた損害については求償できるんです。それは御承知だと思いますけれども。  そこで、訴訟費用だけは訴訟当事者、県が払うんです、県の機関が。それから、訴訟参加している談合企業はもちろん自分のものは払います。それはもう当事者として当然なんです。こういうことでございます。
  220. 松井孝治

    ○松井孝治君 基本的に局長大臣も同じ答弁をされているんです。大臣の方は政治家ですから明快な答弁をされていますけれども、やっぱり結局は、この機関訴訟というのはある種のコストなんだと、これは、そういうふうに割り切っておられると思うんですね。要するに、談合であるとか不正首長の追及、それを機関としてそれについて一義的に判断をして、あったかなかったか判断をして、判断をした上で住民と争う以上はそのコストはもうある種税金で、そういうシステムに、そういう訴訟制度にしているんだから、それは税金で持つんですということなんですが、これがやっぱり現実の住民の方々とお話ししていると非常に分かりにくい。  何で不正をした、これはある種の政策判断の問題じゃないんですよ。さっき自民党の森元委員がおっしゃった、何で背任、横領までこういう四号訴訟制度的なものから除外してしまうのか。要するに個人を追及できない。本来、背任とか横領とか、個人を追及できるんじゃないかというふうに与党議員も素朴な疑問を投げ掛けておられますよ。そういうようなものについても結局公金で、公金で裁判の肩代わりをする。これはやっぱり理解が得られない。  しかも、裁判の肩代わりをするということだけ、公金で裁判費用を持つだけじゃなくて、結局、住民側から見たら、相手が県になる、相手が大きな組織になる、こうしたときに、やっぱりそれは裁判で争うときに次から次と組織を動員して、単に弁護士費用とかそういうことだけじゃなくて、県庁には優秀な人がたくさんいるわけですから、その人たちがありとあらゆる理屈で、とにかく組織としてのこけんに掛けて、いったんこれは談合なかったと監査委員が判断したんだと、自治体が判断したんだということになったら、組織としてメンツつぶされたくないから一生懸命守りますよ、その談合企業や不正を働いた疑いのある首長さんを。そういう組織として物量を動員して守る。しかも、その裁判費用も全部税金で払われる。人件費も、県庁の職員さんの人件費も全部税金で賄われている。場合によっては、その首長さん、今の現職の首長だ。ほら、おまえ、何とか変なことにするなよなんて職務命令が下るかもしれない。  そういう状況の中で、住民から見たら何でそんな背任、横領のような、政策判断の問題ではなくて、おかしい不正行為に対する追及というものをそういう形で組織が守る形にするのか、ここの一点だけは理解できないというのは率直な声だと思います。大臣、どう思われますか。
  221. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) この四号訴訟というのは団体に対する損害を補てんする制度なんですよ、納税者として、納税者というか。妙なことをやって、不正な財務会計行為をやって団体に損害を与えているものを補てんしようと、こういう制度なんですよ、基本は。  そこで、今、委員が言われるような背任、横領は、これは刑事事件ですから、刑事事件として処理される、これはもう当たり前の話です。この四号訴訟は、基本的には今言いましたように、団体に対する損害を与えたことについて補てんしろという制度なんです、制度そのものが。だから、その点が一つ御理解を賜りたいと思いますし、訴訟費用については御意見ありますよ、確かに。ただ、訴訟当事者を個人から切り替えるものですから団体に、団体というか具体的には執行機関ですけれども、そこでそれは団体が持つと。しかし、そのいろんな補てんは、今度は団体と個人の関係で求償すると。もちろん談合企業から取り上げると。これは四号訴訟でもそうなるわけですよ。  背任、横領はこれはまた別個の議論で、これはもう一つ刑事事件として処理されると、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
  222. 松井孝治

    ○松井孝治君 そもそも刑事訴訟と行政訴訟というのは、じゃ何のために二重にあるのかということなんですね。それは刑事事件だから刑事訴訟でやってくださいというのなら行政訴訟要らないんですよ、私が申し上げたようなことは。  例えばもう一つ事例を挙げましょう。  例えば、よくありますね、首長さんが逮捕される。例えば送検される前だとか係争中だと、談合企業でもいいですよ。そういうときに、さっきいみじくも局長さんおっしゃったけれども、恐らく今回の新四号訴訟では、それを行政訴訟として受けるということができなくなると思います。受けないだろうとさっきおっしゃいました。従来であったら、それは個人が個人を訴えるんだから、刑事訴訟と並行してやれるんですよ。行政訴訟として納税者としての権利を発動できるわけですよ。  ところが、今回、組織として自治体を訴えるということになると、恐らく自治体は、正に局長さんさっきおっしゃったと思いますが、それは刑事係争中ですから、我々としてはその裁判を受ける受けない、言えない、留保ということをせざるを得ない立場に追い込まれると思うんです。  これはまず端的にちょっと局長さんから、端的にで時間もありませんので結構ですが、お答えいただいて、大臣のちょっと御見解を賜りたいと思います。
  223. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 先ほど申し上げましたように、一般的にそういう刑事事案、横領とか背任という事案の場合には、先ほど大臣も申されましたが、刑事処罰に基づいて、訴訟がこういう訴訟は少ないです、ほとんどないです、横領、背任の住民訴訟はないです。ないですが、一般的にはなぜないかというと、辞職や不信任で辞める、辞めますと、当然新しい首長さんの下に的確にその責任が追及されるというようなことになっておりまして、四号訴訟というのは起こっていないというのが過去の事例です。  ただ、先生が想定で今言われた意味で申しますと、そういう住民から見て横領と思われる、背任と思われると、住民から見てですよ、そういうふうに思われる事案のときは、その前に住民監査請求が出ているわけです。そして、それはこういう不正を働いたから、不正を働いたと思うから、地方団体がその職員から金を取りなさいという住民監査請求していると。監査請求したけれども、監査委員の方はそういう判断をしなかったと。それは不服だということで住民訴訟に打って出ているような構図なわけですね。そういうような構図でございますので、実際問題、確定として横領、背任の場合には、当然地方団体がそういうことを追及すべきであるわけです。  それで、今回の訴訟の被告を執行機関にするということは、そういうような追及もしないような執行機関の説明責任を訴訟として新四号訴訟でやるんだという意味においては実益があるという具合に思っていまして、私が言っているのは、横領、背任の場合と先生言われますものですから、住民から見て横領、背任と思っても、まだそういう確定していない段階においては当然争いがあり得るという具合に思うんです。結果的に、先生が確定した場合どうだ、確定した場合どうだと言われたら、結果論としてそういうこともあるかもしれませんけれども、確定する前については住民の判断と地方団体の判断、監査委員の判断が争われている構図の場合があるということを言いたかったわけでございます。
  224. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 背任、横領というのは分かりやすいのですけれども、これはケースとしてはちょっと変わったケースでございまして、この場合には地方団体が告発するんですよ。告発して、これは与えた損害は弁償してもらうと、こういうことになりますし、それについて住民の方がそれについても訴訟を起こしたいというのならそれは起こせばいいわけで。  それで問題は、本来の四号訴訟は、例えば要らない物を買ったじゃないかとか、こういうことに何で補助金出したんだとか、何でこの建物を作ったんだとか、こういうことなんですね、そもそも。これは個人が決めたんじゃなくて、その団体の政策判断なりいろんな予算の策定なり予算が成立するなり、そういうことに基づいてその執行の責任ある者がやったわけでありまして、そういうものを個人として言うのはそれは大変酷なんですよ、個人がやったんじゃないんですから。個人は執行しただけなんで、それは団体の意思として決まり、機関の意思として決まり、命令があってやるんですから。  だから、そういうことについて訴訟を起こす場合に、個人が対応するというよりも団体なり機関が対応していくと、こういうのが筋ではないかと。背任、横領は分かりやすいですけれども、これは背任、横領はもう刑事事件の一つの仕組みの中で損害も取り上げますし、それは罰もされるし、告発もするんですから、そこを一緒にしていただかない方が私はいいと思います。(発言する者あり)
  225. 松井孝治

    ○松井孝治君 今やじも飛んでいますが、私も与えられた時間がありまして、この問題ばかり。若干、大臣局長がおっしゃるのは、それは特殊な事例を挙げて言っているけれども、本来の趣旨、制度からいうと、言ってみれば端牌だというようなふうにも取れますけれども、ちょっとこれは今後の議論もありますので、また同僚議員の質疑にもゆだねていきたいと思います。  一つ伺っておきたいのは、自治体を機関とする方が、自治体自身が政策判断だと、自治体の意思として決定しているものが多いので、今、大臣が正におっしゃいましたけれども、資料も豊富に出されるし、ある意味では制度の根幹の議論がなされるというようなことをおっしゃったと思うんですが、例えば今の第三者としての位置付けでは資料がじゃ出せないのかと言われれば、現行制度でも訴訟参加という制度はあるわけで、これは別に資料を出せるわけですね。  それから、もっと言うと、正に自治体の意向が自治体の組織としての決定なんだ、政策判断なんだということであれば、そういうものに、例えば自治体に訴訟参加義務というものを義務付ける、個人への追及というものはきちんと制度的に残しながら、しかし自治体もこういうケースについてはきちっと自ら説明責任を果たすべきだというふうに義務付ける。要するに本末転倒で、全部個人を救済してまず組織はブロックするというのじゃなくて、個人を追及するという道筋を残しながら自治体も訴訟参加しなさいという義務付けを掛けるというような形で、逆転の発想で問題を処理できないんですか。  どうもお話聞いていると、まあ首長さんとか職員の方とか、あるいは発注を受けた企業とか、それをまず一義的に自治体で守ってやろうというふうに、そういうふうに、別に聞こうと思って聞いているわけじゃないんですが、聞こえてしまうんですね。そうじゃないんだと、むしろそこはきちっと追及の手は残しておく、だけれども自治体が訴訟参加をするということをきちっと義務付けて自治体も資料を出しなさいという、そういう逆転の発想は問題の解決としてはないんでしょうか。大臣大臣いかがでしょうか。ちょっと時間がないので、済みません。
  226. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 訴訟参加を義務付ける場合と当該当事者の被告になる場合と全く違うわけでございまして、今回の場合、当該被告となった場合には地方団体の有する資料を当然資料としてお出しすると。これまでは一定の裁判の手続に基づいて嘱託送付手続等々の手続を取るわけでございますけれども、今回は当事者になるわけでございますので、資料が提出になるということでございますし、仮に不利益文書が存在しながら文書提出命令に従わない場合には、その不利益な効果は地方団体に及ぶわけでございます。  訴訟、今、先生言われた意味での義務付けをしたと仮にしても、敗訴の場合の効果というのは全く違うわけでございまして、文書の提出をしない場合には敗訴の責めを負うというのが当事者の被告の場合でありまして、訴訟の義務付けではそういうことは起こらないということで、全く違うと我々は思っております。
  227. 松井孝治

    ○松井孝治君 正に、そこで例えば資料の出し方にしても、訴訟当事者になるということになると、これは私自身の個人的経験で言っても、組織というのは絶対不利な資料を出さないんじゃないか、これが多くの住民訴訟を経験してこられた住民サイドの意見なんですね。  何で当事者になったら資料が出るのか、実態が明らかになるのか。むしろ組織的な隠ぺいが行われるんじゃないか。今、情報公開というものが非常に重要性が叫ばれていて制度もどんどん整備されてきていますが、その中でも、やっぱり組織的に首長がやった、例えば現職の知事や市長さんが何らかの不正を働いたという可能性がある、そのときに、その市や県が、府が訴訟対象になったときに、本当に組織としてきちっと情報提供をするんでしょうかね。これについて、むしろそうやって引っ張り出すことによって真相を明らかにするんだという議論をされるんでしょうけれども、しかしながら住民サイドから見ると、そこに対する不信感があるんですね。だから、それに対してきちんと情報提供をさせるというような制度的担保なり国としての意思が働いているんならいいんですけれども、そこが見えない。したがって、恐らく多くの住民の方々が、あるいはマスコミの方々が、これが組織的隠ぺいになってしまうんじゃないか。  公金を使って訴訟をやって、しかも職員を使って徹底的に訴訟に臨むと。そうなってきたときに、住民と、やっぱり県とか市とか大勢の職員を抱えているようなところとは力の差がありますから、物量の差がありますから、そうすると本当に逆に真相究明になるのかどうか。あるいは、緊張感というもの、その職員あるいは首長さんが持っている緊張感というものがなくなってしまわないか。そこの弊害に対していろんな指摘が行われているわけでありまして、もう時間が余りありませんので、これから後、大臣に基本的に御答弁をお願いしたい。端的に、大臣、見解をお述べいただけますでしょうか。
  228. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今は個人ですから、資料を出すまいと思えば出さずに済むわけですね。そこで、裁判所では一定の手続をやらないと出してもらえない。しかし、今度は当事者になりますから、当事者が資料の提出命令を拒否するということは、私はなかなか心理的な問題を含めてできにくいと思うんですよ。より直接的になるんですよ、個人の方がクッションですから。  だから、そういう意味では、そこは委員はそういうお考えですけれども、私どもの方は、ずっと資料の提出が容易になる、こういうふうに考えております。
  229. 松井孝治

    ○松井孝治君 時間がありませんので、後の質疑にここら辺の問題、論点は譲りたいと思いますが、一つ、私、重要な問題だと思っていますのは、政策判断の問題なんですね。  住民訴訟の法律的な対象というのは、財務会計行為に基本的には法律的には限定されている。ただ、大臣自ら先ほども答弁でおっしゃったように、財務会計行為といったって、その背景にはいろんな制度がある、予算措置がある。それはいろいろ議会で決めた、あるいは場合によっては国と連携した施策である場合もあるわけですね。ある意味では、それを個人に、個人の責任で説明させるというのは酷だろうというお話があったと思います。これについては、僕らは逆に訴訟類型の変更というのは若干行き過ぎだと思っていますが、しかし一般的な政策判断について個人に全部責任追及するのは酷だということは分からなくはないです。  そうだとしたときに、現実にこの四号訴訟の訴訟類型を変更したときに、今後はむしろ政策判断については、組織としてそんな財務会計行為というようなことでぎりぎり狭い範囲でとらえずに、最近の判例もそこの政策判断に相当踏み込んできていますけれども、その政策判断自身に対して、今後は組織としてきちんと住民の訴えに対して争っていくんだ、それを土俵に上げていくんだというふうに基本的な考え方を変えておられるというか、判例の方向に沿う判断をしておられるというふうに考えてよろしいでしょうか。大臣、お願いします。
  230. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) いやいや、正にそうなんで、団体としての説明責任を表からちゃんと取らせるということなんですよ。今は個人ですから、個人の行為に矮小化ということもないけれども、そういうふうに形が変わっているんですよ。今度は一種の政策判断をやり、そういう予算を作りということの説明責任を団体に問うんですよ、あるいは機関に問うわけで、私はこの方が住民から見るとずっと分かりやすいと思いますよ。  個人でやれることなんというのはもう知れていることなんで、それは今言いましたように、団体なり機関なりが意思決定をして予算に組んで、それを財務会計行為という形で表れるわけですから、金を出したとか物を買ったとか、それについての団体の責任を問うんですよ、個人の責任というよりも。ただ、個人の責任も併せて問うんですよ、何度も言っていますように。訴訟告知をやって訴訟参加させて、個人の意見も問うし、個人が悪い場合には団体から求償させるんですから。だから、こっちの方が私は仕組みとしては整っている、こういうふうに思っております。
  231. 松井孝治

    ○松井孝治君 明快な答弁をいただいたと思います。恐らくこれは、今後の住民訴訟の訴訟の対象をどこまで読むかというときに、ここでの議論というのは当然裁判所においても参考にされると思いますので、ある意味では政策判断自体を、財務会計行為を伴う政策判断自体が今後住民訴訟の対象になるという見解を大臣から明快に示していただいたということを私はこの場をかりて確認をしておきたいと思います。  さて、それに関連をするんですけれども、今正に申し上げましたように、四号訴訟の類型変更によって政策判断が今後の住民訴訟の対象になってくる。そうしてきますと、地方自治体が担っておられる事務、政策、非常に多くの部分が、法定受託事務とか、国からの補助金を受けている、一〇〇%補助金が自治体としての政策判断になるのかどうかは微妙なところかもしれませんけれども、そういう国策、国の政策自身を地域が担っておられるというものに対する政策判断、この政策が正しいのかどうか、これが住民に損害を与えているのではないかという判断が訴訟対象になってくるということになろうと思います。  国の政策について、これは正に片山大臣の下で行政評価制度、政策評価制度というものが出てきています。しかしながら、政策評価制度について言うと、制度ができたばかりでまだまだ実効性という意味では、私も去年に道路公団問題等質問させていただきましたが、なかなか、総務省の行政評価局においても、まだ各省を向こうに回して政策評価が本当に核心に切り込めているかというとなかなか切り込めていない現状だと思います。  それは、一つには、いろんな情報等において各省の方が、例えば国土交通省とか、そういうところが圧倒的な情報を持っている。それに対して、いろんな各省が持っている政策に対して、こういうところはおかしいんじゃないかといういろんな情報が届いていないと思うんですが、国の政策評価、行政評価を行う意味で、例えば地域で監査委員の方々など、あるいは外部監査委員の方々、そういう方々は住民からいろんな請求が出てきているわけですね、監査請求が出てきている。そういう住民のいわば実体経済に根差した、現場に即したいろんな国の政策に対する疑問あるいは問題提起、そういったものを外部監査委員、地方の監査委員の方々はお持ちなわけですね。  そういう情報をもっともっと吸い上げて、具体的に国の政策でもおかしい、あるいは地域が悲鳴を上げているような政策というのはたくさんあると思うんです。税金の使い道としておかしいんじゃないかと。そういうものを、政策評価を実効性上げるためにも是非もっと活用して、国の政策評価制度に地域の自治体の監査委員、外部監査委員の方々の知見、経験、いろんな住民からの声、これを活用していくべきではないかと考えるんですが、大臣、御見解いかがでしょうか。
  232. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今の答え、今の御質問にお答えする前に、三権分立ですからね、委員、統治行為は裁判所の判断になじまないですよ、高度の政治判断です、統治行為は。その点は、特に国の場合にはいろいろありますから、御留意いただきたいと思います。  そこで、今の国から補助を受けたり委託を受けた事業、その執行について政策評価をやらなきゃいけません。その場合に、地方の監査委員さんやあるいは外部監査の関係の方や、そういう方と事実上の意見交換をやったり連携をすることは私は大いに結構だと、こう思っております。
  233. 松井孝治

    ○松井孝治君 時間ですから終わりにしますが、恐らく今までそういったことを、連携を行っておられないんではないかと思うんです。ですけれども、そこはある意味では総務省の、地方自治というものを担当される、それと行政評価、行政改革というものを両方担当している部局が合わさって総務省というのができたわけですが、それのシナジーの一環としても、地方の現実のいろんな声を、私は別に安全保障政策についてそれをやれとまでは言いませんけれども、是非現場のいろんな住民の声を拾い上げていって、無駄な政策あるいは実際の地域が悲鳴を上げているような政策の見直しというものに活用していただきたいということをお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  234. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 野党の御協力によりまして、参議院で今日からこの地方自治法の改正の審議ができているわけでございます。今日を開始として何回かこの改正の問題点を論議をさせていただく機会を設けさせていただいております。  そこでまず、今回のこの法案提出の趣旨についてお尋ねをしておこうと思うんです。それはやはり、なぜ、今回のこの改正の中で住民監査請求制度、住民訴訟制度、大きな変更の法案を出されてきたわけでございますから、その意味で、これまでの住民監査請求制度、住民訴訟制度について現状をどんなふうに大臣として御認識をされて、その上で今回どうしてもこれを改正する必要があるという意味でもちろんお出しになられたんだろうと思います、政府としては。ただ、今御議論があっていたように、いろいろ問題点もあるようでございますから、まず冒頭に、なぜ今これを出さなければならないのかと、それの御説明をいただいておきたいと思います。
  235. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) この制度についてはいろんな御意見が今までもあったわけですね、制度を導入して以来。そこで、どうするかということは地方団体の意見も聞き、我々も研究してまいりましたが、今回は地方制度調査会からこういうふうに改めたらどうかという正式な御答申をいただきましたので、それを受けて直すということでございまして、先ほども松井委員始め質問された方に申し上げましたように、私は違法な財務会計行為の防止や是正については一定の役割を果たしてきたと、こういうふうに思いますけれども、個人の責任を追及するというのは限界があるし、やはり地方団体の説明責任を明らかにする意味でも今回仕組みを直した方がよりいいんではなかろうかと。そこで、情報公開制度や政策評価制度やあるいはその他の住民監査請求や直接請求制度と併せて、全体としてこれを整えた方がいいんではなかろうかと。こういう判断でこういう形に直したわけでございまして、直す契機は、今言いましたように地方制度調査会の答申でございます。
  236. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もちろんそのとおりなんですけれども、今の議論も、お聞きしておりましても、どうもこの改正をやるときに、地方公共団体とか首長さんたちの言うことは聞いて法改正を出してきたけれども、一体訴訟する側の住民の意見というのは聞いてくれたのかというような意見、御批判も結構あります、この問題については。その辺についてどう、いわばこの改正そのものは地方公共団体側に有利な改正だという御批判なんですよ、批判の一番大きい点は。この点について政府の見解を求めておきたいと思います。
  237. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 今回の改正に当たりましては、もちろん地方制度調査会、第二十六次の調査会の審議を経た上で提案をさせていただいているわけでございますけれども、その調査会でも審議のたたき台になりましたのは、行政監視のあり方に関する研究会、ここにおきまして各方面の意見を十分に聞いていただいて、しかも度々ヒアリングやアンケート調査を交えながらやった研究会報告書がその審議の基本になっている、そういうようなことを申し上げておきたいと思うんです。  そして、何より一番大事なことは、今回の改正は地方公共団体側に有利とか不利とかと、そういうもんじゃございませんで、個人の、度々大臣からも申し上げておりますように、個人の責任、実体責任というものは今回の改正によっては何ら変更がないという立場で私どもはこの改正を考えておりますことを申し上げたいと存じます。
  238. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ですから、いろんな意見を聞くと見解の分かれるところも随分これあるんですよね、それぞれの立場で見ていくと。その辺はもちろん国会のこの審議の中で明らかにしていって政府側が答弁していけばいい話でもあるんですけれども、その辺は逆に言えば、こういうオンブズマン始めいろんなことで住民訴訟に加わってきた方たちも随分いらっしゃって、真っ正面から声を上げて反対もされているところもあります。そういったところに対する説明責任は政府としてまだまだ残されているんじゃないかなということを思っているわけです。その辺は十分この法案が上がるまでにも、また法案上がりました、上がりましたって、まだ上がることを決めておりませんが、その後でもやっぱり説明していくことが非常に大事なことだろうと、このように思っております。  さて、それぞれ個別の問題でお聞きしていきます。  まず、住民監査請求制度についてまず伺っておきますが、これ、今回、監査委員は六十日以内という比較的短期間に結論を出すことになっております。今後、この監査委員による監査に対する住民の信頼が高まっていって、それが、住民がその結論を受け入れてくれるようになるならば住民訴訟に移行することなく本当は無事に片付くわけでございまして、本当はこれが一番メリットがあるわけです。したがって、こういう改正を考える上で最も重要なのは、いかにこの監査委員による監査を充実させていくかという点に私は本当はあるんだろうと思うんです。  現在、先ほど御答弁ありましたけれども、この住民監査請求制度から住民訴訟に移行する割合はおおむね三割だということが、おっしゃっておりました。この割合をどう低下させていくかということが必要なんだろうと思いますし、そのためにこの住民監査請求制度をどのように改善をしていくことが住民の信頼向上になるのかと、こういった点についても見解を伺っておきたいと思います。
  239. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 今回のこの制度では住民監査請求制度というものも、おっしゃるように信頼性を高める、こういう観点からの改正を行っているわけでございまして、審査の際に透明性を高める、あるいは関係者の意見を十二分に聞く、こういうことから、監査請求の請求人を、この審査の際に立ち会ってもらうとか、そういうふうな改正をいたしておるのが最大のポイントではないだろうかなと、こう思っております。  そしてまた、有識者あるいは専門家の意見なども求めることができるようにすると。従来、監査請求制度につきましては、監査委員、その中の、監査委員の制度の中でしか審査をしていないわけでございますけれども、そういうような透明性を高める、あるいは専門家の意見を聞く、そういうような改正が基本的にあるということを申し上げておきたいと存じます。
  240. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ大きいのが、今回、この監査委員による暫定的な停止勧告制度というものも今回創設をされております。これ、事前の差止めを求める住民監査請求の実効性を担保するというようなことだろうという思いでございますけれども、ただ、私、これを見ていて、停止を勧告できる要件として三要件というのを掲げていらっしゃるようでございます。一つは、当該行為が違法であると思料するに足る相当な理由がある等、三つの、三要件でございます。  ただ、取り方によっては、この三要件の解釈によってその発動が大きく制限されるということがあるんではなかろうかと、それも考えられます。ですから、この三要件というのをどういうふうに解釈を考えていくかというのが極めて、せっかく創設した制度が生きるのか生きないのかというののポイントになると思っておりますし、これをどう考えればいいのかということを是非御答弁をいただきたいし、また、勧告という制度で執行を停止する効果としては十分とこれでお考えなのか。逆に言えば、監査委員の権限を更に強化した仮差止め命令というようなことまでしなかったのはなぜなのかと、併せて御答弁をいただいておきたいと思います。
  241. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) ただいまの暫定的停止の制度でございますけれども、あくまで暫定的かつ予防的な措置でありますことから、当該行為が違法であると断定できないまでも違法であると思料するに足りる相当な理由があればよいというその一方で、当該行為により地方団体に生ずる回復困難な損害を避ける緊急の必要がある。  また、一定の限定的な場合でございますが、今御指摘がありましたような場合に限りできるというようなことでございまして、「人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれ」、この概念でございますけれども、非常に限定的に考えております。当該行為、会計行為を差し止めた場合に人の生命に危険が及ぶおそれがある場合、身体に重大な危害が生ずるおそれがある場合、またそれに匹敵するような重大な利益が害されるおそれがある場合という極めて限定的な場合を指すという具合に考えておりまして、行政事件訴訟法でも同じような表現がございますけれども、それより厳格に考えております。  また、財務会計行為が違法である場合に監査結果が出るわけでございますが、現在の監査委員が必要な措置を勧告することができるという具合になっておりますので、それの均衡上、今度の暫定的停止制度も同じ勧告制度にしております。ただ、勧告がなされた以上、当局においては勧告を尊重する義務が生ずるわけでございますので、我々は重く受け止めております。
  242. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それから、先ほど政務官おっしゃったように、今回の改正で、この監査委員が監査を進める上で、審査手続を充実させる観点から、専門家への意見聴取、それから請求人等の立会いを認めると、こういうことでございました。  ちょっとここで確認しておきたいんですけれども、この意見聴取の場での請求人等の立会いについてでございます。これは立会いだけで、その場での反論はできるのかできないのか、これをまず教えていただきたいし、その場で反論ができるならば、それに対し再反論というか、そんな仕組みを持ったものなのかどうか。これは技術的なことですけれども、局長に教えていただきたいと思います。
  243. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) そのとおりでございます。  現在、請求人の意見陳述について、現行制度でも明文で認められております。  今回、改正しましたのは、監査委員の判断によりまして、関係機関の意見聴取の際に請求人が立ち会った上で意見陳述することも可能という文章を入れたわけでございます。今御指摘がありましたように、その場での反論又は再反論につきましては、監査委員の判断によりまして意見陳述の聴取を行うことを通じて可能になるという具合に考えております。
  244. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 分かりました。  それから、やはりこの住民監査請求制度の信頼性を高めていく上で一番大事なことは何かといえば、監査委員とそれを補佐する事務局、これが本当に迅速、適切に監査を執行し、着実に信頼をかち得ていっているかどうかという観点であると思うんです。  しかしながら、現状、監査委員というのは、今午前中も御質疑がありましたけれども、首長が議会の同意を得て選任して、当該団体の職員経験者と議員というのが多く選出されているのも現状であって、いわば首長さんの息の掛かった人物が選任されているというようなことも感じざるを得ないような面もあって、特に身内に甘いというような御指摘も実際にマスコミ等であることも事実でございます。  こういった点から、やはり監査機能を充実するためには、今回の改正に加えて監査委員の定員、選任方法、選任資格等の見直し、こういったことに取り組むことも大事ですし、事務局体制の充実や組織自体の独立性、専門性というようなものを強化していくことが不可欠だと私は思いますが、この点についても御見解を伺っておきたいと思います。
  245. 滝実

    大臣政務官(滝実君) おっしゃるとおりであろうかと存じます。  やはり、まずは監査委員に適任者を得るということが最大の出発点になるわけでございますので、その辺のところはこれからの問題ということもあるだろうと思いますけれども、現在までに、都道府県あるいは市段階、町村段階、それぞれ監査委員全国組織がございまして、そういうところを通じてこういった点の向上に意を用いているというのが実態でございますし、そして自治大学校におきましても、平成十二年度から監査委員のあるいは監査委員事務局のいわば専門家研修、こういうことをやってまいっております。  したがって、選任あるいはその資格の充実ということとともに、監査技術といいますか考え方をマニュアル化していくか、そういうようなことを中心にして今取り組んでいるのが実態でございます。
  246. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、そういう点を進めていただきたいと、このように思っております。  今日、余り議論されていない点も少し議論しておきたいんですけれども、一号訴訟の問題で少しお尋ねをしておきます。  今回、一号訴訟につきましては、訴訟の提起が今までは「当該行為により普通地方公共団体に回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合に限る」とする要件が今回は撤廃されております。いわば、より広範囲に差止め訴訟の請求ができることになっているわけでございます。  もちろん、これは住民による監視機能の充実を図る観点からは事前の違法行為の是正を図ると。先ほども御説明があっておりましたけれども、そういう点ではいいことだろうと思うんですけれども、じゃ、一体今回のこの改正で具体的にどんな行為がこの差止め訴訟として請求できるようになるのかと。ちょっと余り見えにくいものですから、どういったものが請求できるようになるのか、具体的にお示しをいただいておきたいと思います。
  247. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 御指摘がありましたように、一号訴訟につきましては、現在、現行では回復困難な損害が生ずるおそれがある場合ということで限られております。しかしながら、事前差止めが望ましいと我々は考えておりまして、今回、この限定を外すということにいたしました。一号訴訟の対象範囲を拡大したわけであります。  どういう事例かということでございますが、補助金の支出が違法でありましてもその金額等が多額でない場合等については、直ちに回復困難な障害が生ずるおそれがあるとまでは言えないという具合な解釈になっておりまして、現行制度では差止めの対象にならないと思われております。  そういうことでありますから、今回、この条項、条文を取ることによりまして対象範囲を拡大したという具合に解釈しております。
  248. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その一方で、その要件は削除されたわけでございますけれども、今度は新たな要件が別の面で入っております。それは何かというと、「当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるとき」は訴訟を提起できないと、こうなったわけでございます。  これは逆に、この要件、これもどう解釈するかによって随分変わってくると思うんですけれども、これを幅広く認めてしまいますと一号訴訟は提起できる場面というのはかなり制限されてしまうんじゃないか。これは、市民団体からの御批判の中には最も大きな点としてこの一号訴訟の中にはある問題でございます。  どうこれを見ていけばいいのかと。住民の監視機能の充実という観点であるならば、これはやはり限定的に限定的にやっていかなければならないと、このように思いますが、いかがですか。
  249. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) ただいまの条項につきましては、委員御指摘のように、非常に厳格、限定的に考えております。  当該差止めの対象となる財務会計行為の内容によっては、当該会計行為が違法であるということであったとしても、なお重大な不都合が生じる場合には一定の要件の下でそういうように認めないという余地を残すということでございますが、このことについては非常に厳格に考えております。  「当該行為を差し止めることによって人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるとき」という具合に書いてございまして、当該財務会計行為を差し止めた場合に、人の生命に危険が及ぶおそれがある場合、身体に重大な危害が生ずるおそれがある場合、これに匹敵するような重大な利害が、害されるおそれがある場合という極めて限定的な場合にしか適用されないという具合に考えております。  先ほども御議論ありました行政事件訴訟法の特別事情による請求という条項ございますけれども、それよりも限定的に解釈しております。
  250. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、これはともかく、一号訴訟の改正というのは差止め請求を提起しやすくする。違法行為を事前に是正しようとしようと、こういう趣旨からもちろん提案されているわけですけれども、この差止め請求の実効性を確保するために、一号訴訟が提起された場合に暫定的差止め制度を導入する等、言わばこれは保全手続の充実ですよね、これを図る必要があるというような意見もこの問題では幾つかございました。  いろいろ、これも私もいろいろありますけれども、とにかくこういう意見もありますけれども、これについて政府としてどう考えていらっしゃるのか、見解を承っておきたいと思います。
  251. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 御指摘のとおり、違法な行為につきましてはできるだけ事前に是正されるということが望ましいわけでございまして、そのためには何らかの実効性ある差止め請求といいますか、暫定的な差止め制度というものが考えられるということでございますけれども、問題は、これはやっぱり行政事件全般の問題にこうなってくると絡んでくる問題でございます。  したがって、この問題はやっぱり行政事件訴訟法の改正論議というものをできるだけ速やかに進めると。こういう今司法制度改革の議論が併せて進行しているさなかでございますので、この問題はその問題と軌を一にしてやっていくべき問題ではなかろうかというように考えている次第でございます。
  252. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 さて、一号訴訟について少し御議論させていただきましたけれども、一号訴訟で一番批判が強いのは何かというと、確かに制度としては広げられたと、やれるようになったんだと、いろんなことが。事前のことまでやれると。  ところが、現実はどうかというのを、この予防的請求を実行しようとしても、この財務会計上の行為がなされる以前に住民にどれだけの情報が伝わっているとかということになると、今、全然駄目じゃないかというような御批判があるわけですよ。だから、結局、制度はできているけれども、その前の部分のことができ上がっていないわけですから、そうなると幾ら一号訴訟だと言われても実質的にはできないんじゃないかと、こういう御批判が一番強いんですよ。  だから、この問題やるとき一番大事なことは何かといえば、地方公共団体がどれだけその財務会計上の透明化とか、もう情報公開とか行政評価とか住民に対する説明責任ができていなければ、改正ってこれ意味がなさないわけです。正にこの一号をやろうとするんであればどれだけ、そういった住民に対してこういった情報公開等を含め行政の説明責任というのがどこまでできるかが勝負だと思っているんですけれども、もちろん大臣もそうお考えだと思うんで、御意見を賜っておきたいと思います。
  253. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 地方分権一括推進法が一昨年の四月から施行されて、地方団体が前よりは仕事が広がり、権限が増えたわけですね。国の関与も減ったと。やっぱり自己責任ということが、自己決定、自己責任ということが大変大きなものになったと、こういうふうに思いますね。  そういう意味では、今、木庭委員言われますように透明性ですね、チェック機能というのが求められるわけでありましてね。だから、こういう仕組みの改正はもちろん必要なんだけれども、それ以前に情報の提供、あるいは情報の公開、それを大いにやらないといかぬと思いますが、最近IT時代で、相当そういうことはみんな競争してやるように前よりはなったと、こういうふうに思いますし、政策評価がこの四月から本格的に法律の施行になりますから、国の方は、これは地方団体にも是非まねていただくように、そういう意味での、我々の方から情報をお示しして、是非政策評価やってくださいと、行政評価、監視もやってくださいと、こういうことにしようと思っておりまして、全体としてやっぱり今言いましたように、公明性、透明性、公正性、これを確保しながらやっていくと。こういうことでなければ、この制度の仕組みだけでは、それじゃそれで十分かというと十分でないと、こういうふうに思っている次第でございます。
  254. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、先ほどからもうずっと議論が続いております四号訴訟の問題でございます。  幾つか質問通告していますけれども、一つ二つ飛ばしまして、まず最初にこの四号訴訟の問題について伺っておきたい点は何かと申しますと、これ、先ほどから話が出ている論点の一つですけれども、被告が地方公共団体の執行機関になるという問題でございます。このことによって、組織的に証拠隠しが行われ、住民側が不利になると、これが批判の主な、こういう問題、いわゆる執行機関となることでそういう問題が起こられるんだと。政府は、地方公共団体が訴訟を受けて立つことになるので、団体の有する証拠や資料の活用が容易になると先ほどから何回もおっしゃっております。審理や、真実の追求に資すると。ただ、もうこれ両者の見解というのは全く離れたような感じだと思いますが。  いずれにしても、この点について再度、個人から団体へ変わった点についての見解をきちんと整理して答えておいていただきたいと思いますし、仮に組織的な証拠隠しなどを行おうとしてもできないような制度的仕組みというものがどう担保されているのかというのも大事なんだろうと思うんです。今それに当たるのは、多分情報公開制度とか民事訴訟法の文書提出命令等がそれに該当するんだと思うんですけれども、それだけで本当に十分なのか、そういった点も併せてこの論点について改めてお答えをいただいておきたいと思います。
  255. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 現在の個人を被告とする四号訴訟でございますけれども、長や個人、職員が個人となって被告となっておりますので、実際問題として個人の手元には資料がないわけでございまして、現実には情報公開制度を活用しながら請求をして資料を出すということも間々なされておるということでございます。  また、地方公共団体が当事者じゃありませんものですから、実際問題、地方団体の持っている資料を裁判で活用するということになりますと、一定の手続を具体的に踏んで、手続を経てから提出をできるものをするという具合になりますので、種々障害が存じておるというのが現実の姿でございます。  今回の四号の訴訟で地方公共団体の執行機関が被告となるということになりますと、地方公共団体が正面から被告になるわけでございまして、その有している資料等が活用できるという具合に相なるわけでございます。現実に、民事訴訟法の方で、当該団体が、地方公共団体が当事者になるわけでございまして、不利益の文書が存在しながら文書提出命令に従わないで文書を提出しない場合、その場合には被告である執行機関に不利益が生ずると、敗訴の責任の責めを負うというわけでございますので、むしろ文書提出の効果を促すものと我々は理解をしております。
  256. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つのこの四号訴訟についての論点は、訴訟が二段階になるということでございます。  この二段階になることについて御批判する方々の論点を整理してみますと、一つが訴訟が長引くという点を挙げられております。二つ目が、第一段訴訟と第二段訴訟で判決矛盾が生じるんじゃないかと、これが批判の第二点。第三点は、第二段訴訟で、低額の和解等住民訴訟制度を骨抜きにすることが行われるおそれがあると。これが主な二段階になることへの御批判だろうと思います。  一方、政府側の話をこれまで一応聞いて整理してみますと、これは訴訟告知を行うんだから、また第一段訴訟の効力が第二段訴訟に及ぶので、二段階と一段階というのは矛盾することなくすぐ終わると。これももう全く見解離れるわけですよね。  その辺もどう両者が理解できるところまで行っているのかなとか思う点もあるんですけれども、ともかく、この点についても是非御説明を再度きちんといただいておきたいと思います。
  257. 滝実

    大臣政務官(滝実君) この問題は、今、木庭委員が御指摘されたように、基本的に訴訟告知を義務付けられているわけでございますから、第一段階の判決の効果というのは、当然二段目の訴訟が提起された場合にはそれに及ぶと、こういうことであります。したがって、訴訟が長引くということはまず考えられないというふうに思いますし、それから、二段目の訴訟の段階で勝手に和解が出てくるんじゃないだろうかなと、こういうような御批判もあるわけでございますけれども、少なくとも、第一段目の訴訟の効果が及ぶわけでございますから、第二段目の訴訟の段階で和解が改めて出てくるということはあり得ない、こういうように言っていいと思っております。
  258. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 四号訴訟に関してというか、今日は最後のこれ質問にしようと思いますが、四号訴訟の改正に関して先ほどから議論を聞いておりますと、やはりもう一つの批判の一番大きいところは、何か税金を使って組織的にこれから住民に対抗するんだなというような観点でこの問題が批判されることになってしまって、四号訴訟の改正の意味そのものが、ある意味では随分違った形で伝えられているような気もするところも本当はあるわけでございます。  政府はこれまで一貫して、範囲の問題、訴える範囲というのは従来と変更ない等いろいろな説明はされているんですけれども、再度この四号訴訟、組織としてやるということが今必要なんだと、冒頭にも大臣おっしゃいましたが、もう一整理して、四号訴訟を改正する必要性について、そういった論点で整理をしていただいて、今日の私の質問は終わりたいと思います。
  259. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今までは、今までの四号訴訟は個人が相手だったんだけれども、本当は組織なんですよね、組織が応援しておったんです、個人を。それで組織の責任は問われなかったんですよ。今度は組織を表面に出して、組織の責任も問うと、個人の責任も問うと。今までは個人の責任だけだったんですから。その点は今度の方が私、分かりやすいと思いますし、組織の説明責任をちゃんと果たさせる、責任も取らせる、それで個人が悪ければ個人にも責任を問うと、こういうことでございまして、まあ、今までは個人だったのが今度は組織が出てくるのか、大変だと、相手がですね、こういう感じがありますけれども、今までもそうだったんですから。そういう意味では私はずっとはっきりした、説明責任を取らし得ると、こういうふうに思っておりまして、いろんな御意見を賜りましたので、我々も今後は、大きな仕組みはこれでやらせていただいて、いろいろな運用等については、いろんな検討すべきことがあれば検討してまいりたいと、こういうふうに思っております。
  260. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  261. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。  議題となっております地方自治法の一部を改正する法律案について、とりわけ市町村合併の関連について伺いたいと思います。  私、この間、愛知県の西尾幡豆とか岐阜県の高富など、合併問題を考えるシンポジウムの幾つかに参加をしてまいりまして、合併への立場を超えて参加された皆さん方の御意見、とりわけ大きな不安や憤りの声、こういうものを聞いてまいりまして、ここずっと総務大臣あるいは自治大臣から、強制ではない、上からの押し付けではないと何度も委員会でいただいておりますけれども、実際には、こうした住民の不安の声ということに十分こたえる必要がある、こたえられていないというふうに思っております。  そこでまず第一に、合併特例債について今日はずっと大臣質問をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  合併後の町づくりの建設事業ということで認められますと合併特例債が発行できるということであります。この合併特例債、事業費の九五%が発行できて、元利償還返済金の七〇%はいわゆる普通交付税として算定をされる。非常に有利だというふうに、優遇されているんだという宣伝が行き届いています。  しかし最近は、御説明になる県とか総務省では、これはやっぱり借金だからよく考えてくださいというふうにおっしゃる例も多くなっておりますが、そこで、仮に、この合併特例債で事業を行って、合併後、交付税が不交付団体になるということもあると思うんです。そうしますと、不交付団体になった後、元利償還金、返済金、こういうのはどういうふうになるのか、非常に心配をされておりますけれども、交付団体のときと同じに考えてよろしいんでしょうか。
  262. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今のお話は、確かにそういう御心配はあると思いますが、交付団体と不交付団体が合併して全体では不交付団体となりましても、交付団体分の交付税額は合併算定替えということで十年間保障しますから、交付団体分のものは保障されるんです。それは十年間ですよ。それから後五年間激変緩和措置を取りますから、十五年間は不交付団体と合併したといっても大きな不利にはならない。  それから、それ以外に市町村合併支援プランというのを政府全体としてまとめておりまして、道路整備などの補助事業の優先採択、重点投資や、あるいは合併に際してのいろいろな不都合があればそういうものは除去する、そういう対応を取っておりますから、あれ何項目ありましたかね、相当ありますから、あれを見ていただければ、不交付団体であってもこの支援奨励措置は適用されますので、その辺は御理解賜りたいと思います。
  263. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 十年たった、また後五年、がくんがくんがくんと大変なことになるんだというのがよく分かりますけれども、だから、これをお勧めにならないという理由も非常に今の御説明でよく分かったわけであります。  普通交付税の算定の特例というのもありますね。合併算定替えにおいて、合併しなかった場合の普通交付税額、今の合併特例債と同じように十年間全額保障されるということで、これはそうしますと、合併すると交付税が減るということだと思うんですね、減る分を補てんするということですから。そうすると、どうしてそうなのか。また、合併したときに増える、こういう例はないのか。これをお示しください。
  264. 林省吾

    政府参考人(林省吾君) お答えを申し上げます。  合併をした場合に当該団体に交付されます交付税の額がどのように変動するかにつきましてのお尋ねでございますが、いろいろなケースがございまして一概にはちょっと申し上げられないものでありますが、例えば、合併をいたしまして中核市等になる場合、現実にそういう例があるわけでありますが、このような場合には事務も増えてまいりますし、結果として当該事務に係る経費に対する算定額が増加いたしますので、合併した場合に交付税額が増加する、こういうこともあります。現実にそういう団体もございます。  ただ、一般的にそういうケースでない場合には、交付税の額が減少する場合もございます。その場合に、これが合併を推進する立場から支援するための方策として制度的に設けておりますのが御指摘にもございました合併算定替えという制度でございまして、合併から十年間は合併をしなかった場合の旧市町村の交付税の合算額を保障する、こういう制度でありまして、更に五年間の激変緩和措置を講じることとして支援策を進めていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  265. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 私が参加しましたシンポジウムで、ある県の担当者の方が、これは国が作った法律で、今の制度がある限り、六百六十兆円の借金があって交付税にもそんなに回せない、市町村に回せないということで、だから合併をしなさいという一つの方向で、個人的にはできればそんなむごいことをするなよと言いたいんですが、法律がある限り合併の問題は避けて通れないということで、交付税がどうして少なくなるのかという質問に対してのお答えだったんですが、今の局長のお話でも、一般的には交付税が少なくなると。  私、いろんなケースを皆さんに教えていただいて、自分なりに勉強もしてみました。(図表掲示)  今日、一つのケースのを、これ持ってきたんですが、ちょっと見にくいですかね。一つは山梨県の例を、上の、山梨県の六町村と、これみんなモデルケースになっているところですけれども、長野県の佐久市と比べました。これはなぜ比べたかというと、地方交付税と税収、税収と人口がほぼ同じになるんですね。  この上のケース1で見ますと、大体十五億交付税が減ります。下の例は滋賀県の湖北一市十二町で、これを見ますと二百十八億の交付税が来ているんですね。ところが、同じ規模の佐賀県、人口が同じ規模のを見ますと、百二億しか交付税が来ていないんです。ここでいいますと、百十五億ですか、減ってくるわけなんですね。  だから──ありがとうございました。合併をしなかった場合に比べてケースによっては物すごく交付税が少なくなるんですね。この状態が、さっきお示しになったように十年たったらそういう地獄が待って、しかも将来ずっと続くわけです。この減少した交付税が元に戻るということはないそうで、合併によって行政を効率化し、税収が増えるということがないと、一体どうやってこれやっていくんだろうというので担当者が深刻になるというのは、本当にいろんなパターンを見まして本当にそうだと思うんですね。  よく言われるように、今お示しした県の職員も、合併しないと交付税が減るからと言っているんですが、それはよく分からないんですが、合併をしたら交付税が減るということは確実に分かるわけです。さっきの局長答弁でもそうなんです。そこで、私は、最初総務省は、合併をするとサービスは高く、負担は、何ですか低くという、今は何かどうしてだか、どこのシンポジウムにいらしてもおっしゃらないんですけれども、当初そうおっしゃっていました。  そこで、皆さんのお手元にもこういうものをお渡ししましたので、これを見ていただきたいんですが、これを私、パネルにしてまいりました。(図表掲示)  これ、皆さんのところでは、まず資料の③と書いてあるところの右上を見てください。③と書いてあるところの、これが一つなんですけれども、③の右上のところに税金というのがありますね。個人市民税があるんですけれども、これ、合併をすると負担増になりますというふうに書いてあるんですね。これは私、たまたまこれは上尾市がさいたま市に吸収合併をされる問題のときに住民投票をされて、そのときの市の公式の広報であります。  そのほかに、いろんな町に行きましても、私、この前、幡豆町というところに行ったんですが、そこで町長さんにいただいた資料を見ても、西尾市というところとここは合併を、今まだ協議会はできていませんが、考えようかというときに、税金は多くなりますというふうに書いてあるんですよね。  そういうのがありますが、そこで、私、今回の改正にあります地方税の特例に関する事項についてちょっと伺いたいんですけれども、不均一課税の期間を三年から五年に延長と、課税免除を新設すると、こういうふうになっていますよね。大臣、伺いますけれども、この特例を使って、合併直後はすぐ引き上げないとしても、引き上げてもいいそうですが、結局、合併して五年が過ぎると税金が上がっていくと、こういうことなんでしょうか。
  266. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) この上尾の例で、先生、ございますけれども、上尾市として、さいたま市と合併する場合にどうなるのかというのを上尾市側から書いたんでしょうけれども、いずれにせよ、協定項目については関係合併市町村で十分協議をした上で、どういう形でこの水準なり負担を持っていくんだということを協議をした上で水準が決まる、これは多分上尾側から見て書かれた数字で、さいたまとの調整でない数字だろうと私は思いますので、そこは是非御指摘しておきたいと思います。  それで、今おっしゃられました地方税なりの在り方の論議ですけれども、合併協定の協議の項目については、合併関係市町村が新市町村一体性を確保したい、また住民福祉の向上を図りたい、負担の公平を図りたい、行政改革の推進を図りたいというようないろいろの原則の中で、合併関係市町村が十分協議の上、税の問題、サービスの問題、御議論されるという具合に思います。  それで、今言われました合併特例法の不均一課税等のことでございますけれども、市町村の合併後、直ちに全域にまたがって均一課税をするということをした場合には、かえって合併市町村の住民の負担について均衡を欠くというような場合に、現在は合併の行われた年度とそれに続く三年間が不均一課税になっております。
  267. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 制度は分かります。
  268. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) それを今回、合併推進の見地から三年を五年に変えるということでございます。  今おっしゃられましたように、特例措置期間終了後でございますけれども、合併特例法の規定による不均一課税を行っている税目については、本来の税率に戻るという具合に思っております。
  269. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 いろいろ御説明があったんですが、一番長くても五年間は上がらないようにすることができないわけではない、この特例を使いますと。ただ、ほかで見ますと二年目に上がるとか、ここの今、上尾とさいたま市は調整していないというんですけれども、吸収合併されるときにはさいたま市にそろえますので、これはこのとおりになるから、これは上尾市さんがさいたま市さんにそろえるという形になるから、市が責任を持ってお書きになったもので、さいたま市さんが全然あずかり知らないという数字ではないんです。  現に、私が今言いましたように、私が会った町長さんも上がりますという数字をちゃんといただいているわけですよね。このパネル③の左には暮らしの問題、その下には子育ての問題というのが、④ですね、皆さんのページで言うと③と④の左側なんですけれども、暮らしと子育ての面で見ます。これ、暮らしのところの上下水道というところが平均的な使用水量の場合は負担増になります。それから住民票なども負担増になります。それから子育てのところを見ますと、保育料ですね、これも負担増になります。皆さんのお手元には介護保険なんかの資料もありますが、それも上尾とさいたまは違いますので、上尾の方がさいたまにそろえると負担増になるんです。  そこで、制度の説明はよろしいので簡単にお答えいただきたいんですが、大臣、使用料や手数料についてこういうふうに違う場合は、特別交付税で合併した市町村は三年間公共料金の格差是正に関する経費を措置すると、こういうのがあるんですが、そうすると、結局先ほどの税金と同じように三年間だけはこういうふうに特交で見るけれども、三年たったら見ないからそろえられると、こういうことでよろしいんでしょうか。
  270. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 先ほども上尾の例申し上げましたけれども、これは具体的に上尾とさいたま市が協議をした上でこうするというのを決めた数字じゃありませんので、そこをもう一回念のため申し上げます。どういう水準にするかは、合併関係市町村が合併をする場合に当たって協議をするということでございますので、申し上げておきます。  それで、サービスの水準でございますけれども、保育料、水道料などの公共料金については、当然その運営規模とか事業規模によって差があるわけでございまして、合併協定項目の中で十分、制度の統一までの移行措置について協議を十分行うという具合に相なると思います。  その場合に、基本的には負担が低い方に合わせるのが通例でございますけれども、どうしてもこの原則でいかない場合には、全体の合併のメリットを説明しつつ、住民の理解を得なければならないという具合に思っておりまして、具体的に公共料金なりサービス料が下がったという例もあるわけでございます。  お尋ねの交付税の特交の措置でございますけれども、合併関係市町村間の公共料金の格差がある場合に、合併年度及びそれに続く三か年について特別交付税の措置を包括算入の形で措置をしてございます。ということで、軟着陸をするという形で特別交付税の措置がされておる。  ただ、これも、合併関係市町村で十分その後の対応をどうするかということを知恵を絞るということでございまして、例えば西東京、田無、保谷の西東京市でございますけれども、合併十年間で百八十九億円節減になると。その節減のうちから公共料金の格差調整に五十億円余充てて維持をしたいという方向で、合併の効果は生かしながら、節減後、そういうことも対応しながら当該関係市町村で努力をされているという具合に思っていまして、各々合併関係市町村がそういう協定項目について努力をしながらサービスの維持向上につけて努力をされているという具合に私たちは理解しております。
  271. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 今の局長に、後でまた大臣とやりたいものですから局長には反論しませんが。  次に、事業所税ですね。ここも、「新たな負担になります。」というふうにここでは書いてあります。事業所税は三十万人を超える市で事業所に課税されるんですが、今回の改正によって、合併によって三十万人を超えても五年間は課税されないということで不均一ができるわけなんですけれども、五年が過ぎますと、これは当然のように課税をされるのか、それとも話し合って課税をしないということをやってもいいのかどうか、大臣、どうでしょう。
  272. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 事業所税の措置でございますけれども、今回、一方の方は課税されていない、一方は課税をされるという場合には、五年間の中で事業所税を非課税にするという措置が盛り込まれたわけでございまして、五年間の中でございます。
  273. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 課税しなくてもいいんですか。
  274. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 本則に戻って課税になると思います。
  275. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 税金が上がるということですね。  私、たまたま、これは上尾市さんが出されたものを、広報ですね、これをお示ししまして、実は上尾市さんだけではございません。いろんな町で、私、これだけ全部を網羅して計算をして住民にお示ししているというのがそれほどなかったので、部分的にはこれはいろんなデータが全部入っているものですからお届けしまして、私の地元の愛知県でも、また私がシンポジウムを開かせていただいた幾つかの県の幾つかの市、町でも、はっきりとこれ、こういうものが上がっていくんだと。税金や公共料金などすべて高いところに合わせていく。  これは、まだ合併してないところでそうやってなぜ言われるかというと、実際に合併したところでは、同じにしたり、あるいは低いところにしても、一年目とかあるいは二年目だとかに結局、新しい考え方だということで値上げがずっとされているというのが、私いろいろ見た中で、最初の年は一緒にしてないところも実はあるんですね。しかし実際にはありますので、こういった、だから特例を設けられたと思うんですけれども、特例が終わった後は上がることはもう確実なんですよね。  そこで大臣にお伺いしたいんですが、合併推進ということで、午前中もあめとむちという話が出ました。大臣は、町村会長さんの会合で、これまではあめとむちでした、今年はあめばかりだ、何かこんなことをおっしゃったそうですが、実際にどういうことをお考えなんでしょう。
  276. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今年はじゃないんですよ。今までの合併は、かなり政策的に強く誘導したり、あるいは勧告をして住民投票だとかというような措置はやったけれども、今回は恩恵、メリットを与えて誘導しますと、こういうことなんですよ。今年じゃないですよ、平成の大合併は。明治や昭和のときはそうではなかったと、こういうことを言っているわけでありまして。ただ、負担のいろんな、ありますよ、それは。ただそれは、全体の受益の方がどうなっているかという、それは検証がないと。負担と受益はある程度バランスなんで。  今、上尾とさいたまの場合を表示されておりますけれども、私は、負担もありますよ。しかしそれは、どういうサービスが、どういう受益が住民の皆さんにあるかということを総合的に考えないと。負担がちょっと重くなるからあれだと、こういうことでは、やっぱり将来の地域社会がどうあるか、そういう中でどういう高度で充実したサービスが受けられるかと、こういうことも必要だと思いますので、是非そこは総合的な御検討をお願いいたしたいと思います。
  277. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 総合的に見て、小さいからできていたいろいろなきめ細かなものが合併でなくなったとかという例がたくさん出ているものですから、全国町村会でも、午前中にも与党の委員からもお話があったように、大変な危惧の声が出ているんですね。  現実に、これは岐阜県の山県郡ですけれども、ここは法定の協議会、合併協議会が作られているんですけれども、ここで合併に期待するものというのは、保健、医療や社会保障や高齢者福祉、こういうのが充実してほしいというのが、合併に期待するものというのが一番多いんですよ。でも、シンポジウムでは、こういうものは合併の目的じゃございませんと、こういうことになっているわけなんですけれども、先ほど言われた中身そのものも下がっていくというのが問題で、じゃ、一体何のための合併なのかというのが、住民の皆さんも町当局も困っていらっしゃるわけなんです。  改正案の要綱によりますと、この合併協議会設置の請求により置かれる合併協議会が、当該請求を行った代表者を委員として加えることができるものとする、こういうふうになっていますね。昨年、この法律が出される直前に、全国の町村会の方から、「請求代表者の合併協議会への参加をさせないこと。」、こういう申入れがあったという報道があります。全国町村会が合併協議会に請求代表者を参加させないことを申し入れた理由というのは、大臣、どういうふうに御理解──大臣に伺って、分からないなら……。
  278. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 具体的に私、町村会とお話ししましたので御答弁させていただきます。  ただいま御指摘のありました住民発議の制度でございますが、地方分権推進委員会の十二年十一月の意見でもって、住民発議により設置された合併協議会においては必ずしも議論が順調に進展していないというような状況を踏まえまして、住民発議の拡充の一環として合併協議会が設置された場合は、合併協議会そのものへの参加を認めることという意見が出されておりました。それで、他方、我々、そういう地方制度調査会の答申、分権委員会答申を踏まえて今回の地方自治法等の一部改正案の作業作りをしてまいりました。その策定過程におきまして、請求代表者の合併協議会への参加については、参加の義務付けはすべきではないというようなことで全国町村会から我々の方に申入れがありました。  そういうことで、今回の改正案におきましては、合併協議会設置の協議に当たっての議会の審議においては、請求代表者又は同一請求代表者の意見陳述の機会を法定化しました。意見陳述の機会を法文上保障しました。あわせて、合併協議会について、請求代表者又は同一請求代表者を委員として加えることができるということにしまして、その判断を議会の議決にゆだねたという具合にした次第でありまして、そういう経緯の中で、今回の法律の規定をしたということでございます。
  279. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 今まででも申請人を、申請人は大体いろんな肩書も付けることができますので、入れられるのに、わざわざ、できる規定であってもなぜ入れることになったかと。結果的には、できると法定されることによって、半ば推進の人もここに参加をさせてますます推進するんだぞというような強制的な結果になると思うんですよね。合併協議会の請求者を合併協議会の委員に参加をさせないことというふうに町村会が言われたのは、そういう圧力そのものも非常に危惧されたんじゃないかというふうに思うんです。  この協議会というのは、合併の是非を含めて議論をするという建前がありますよね。だから、その建前どおりだったら、なぜ合併推進への一方的な肩入れというのをするのか。これは建前はもうどうでもいいんだというふうにもう強力に推進と、こういうことで大臣、やられたんでしょうかね。局長じゃなくて大臣に聞いています。さっき局長のお話は伺いました。
  280. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 先ほども申し上げましたけれども、地方分権推進委員会の意見の中で、合併請求者の参加をさせた方がいいという意見が出されたわけでございます。我々は、町村会と十分協議をして、義務付けはないけれども、義務付けじゃなくて、町長の判断、議会の判断でもって請求することができるということで意見の一致を見ましたので、その部分を法定化したわけでございます。  合併協議会は、先生御指摘になりましたように、合併の是非を判断するわけでございますので、その議論の中には当然合併についての推進の人もおれば合併についての反対の人もおるかもしれません。そういうようなのが法定協議会でありまして、そしてまた、住民の意見をオープンにしながら合併協議会で意見をするというのが大体合併協議会の運営の仕方でございますから、十分、集約に向けて合併の是非について御論議をするという場と我々は理解しています。
  281. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 同じ答弁を二回繰り返してほしくないので大臣と言ったんです。じゃ、局長に伺いますね。  この改正案要綱によりますと、「有効投票の総数の過半数の賛成があったときは、合併協議会設置協議について合併請求市町村の議会が可決したものとみなすものとすること。」となっていますね。住民投票によるこういう過半数の支持が議会での可決とされる、こういう制度、ほかにありますか。
  282. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 昭和の大合併のときの旧合併促進法には同様の規定がございますけれども、現行の規定の他法については存じておりません。
  283. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 そうですね、こういう規定というのは、先ほど大臣が昭和の大合併はいかんかったと言われたときに行われたもので、二十世紀の遺物というんですかね。  私、大臣に伺いたいんですけれども、市町村合併をしない宣言を決議した福島県の矢祭町ですね。この決議を見ますと、「矢祭町における「昭和の大合併」騒動は、血の雨が降り、お互いが離反し、四十年過ぎた今日でも、その痼は解決しておらず、二度とその轍を踏んではならない。」。昭和の大合併について述べているところがあります。  私、このやまいだれが固まるという痼という字が読めなかったものですから辞書を引いてみましたら、たちの悪いなかなか治らない病気と、こういう意味と載っていたんですよね。矢祭町の皆さんの思いがこもっている言葉だと思いますが。  私、長野県へ行って、幾つかの市町で町長さんやあるいは助役さんのお集まりの会にも出たことがあるんですけれども、これは合併シンポジウムじゃないんですが、たまたま合併の話になりまして、やはりこの昭和の大合併ということで、そこのうちの幾つかが合併をさせられて、結局とてもやっていけないということでまた分かれて、また今度合併をしろと言われているというお話があったんですが、この昭和の大合併というのはそれほど悲惨さというんですか、今日でも理不尽なやり方が語り継がれるほど強力で、先ほど大臣はいかんかったと言われたんですが、本当にこの昭和の大合併について反省があるのか。  なぜ今回いろいろなところで私がちょっと伺っただけでもこういう声が出て、また昭和の大合併のようにというふうにおっしゃるのか、私は大臣の認識を伺いたいんですけれども。
  284. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 昭和の大合併や新しい自治制度、新しい学制ですね、学制改革に市町村が適応できるようにという意図から、法律に基づき計画を作り、うまくいかないときは勧告を出して住民投票でやったわけでありまして、手続としては一つも強引では私はなかったと思いますけれども、とにかくある程度画一的にそろえようという合併であったことは事実ですね。  それは、合併するんですから、今まで別々のものが一つになるんだから、もういろんなことが起こりますよ。それはもう大変なあちこちで騒動が起こったんですけれども、今から思うと、それは一、二の例外はありますよ、どんなことでも。みんなよかったと今は言っていますよ。だから、そういうものなんですよ。  だから、私は、いろんな議論があるんだけれども、議論は大いにこれは検討して、直すべきは直さないけませんけれども、やっぱりこの二十一世紀の地方自治から見たときに基礎的自治体の市町村を強くするということは正しいし、市町村にいろんなことをやってもらう、自己責任で、自己決定で、そういうことも私は正しいと思っています。だから、基本的な方向は間違いでないんで、できるだけみんなの、皆さんの十分な議論と良識に基づく選択で事を進めたいと。そこだけなんですよ。  二十一世紀のこの平成の大合併も、もう少し強力にやったらどうかという意見は一杯ありますよ。マスコミの皆さんも経済界も、市町村合併支援本部でも。しかし、二十一世紀の地方分権の時代にそういうやり方はなじまないと私、言っているんですよ。やはり啓蒙して、大いに議論してもらって、みんなで、よし、やろうと、こういうことにしましょうと。それは反省じゃありませんけれども、平成の大合併は昭和の大合併とやり方が違ってもいいと、こういうふうに思っているわけであります。
  285. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 大臣、午前中にNTTの労働者に対する強要という議論があったんですけれども、私、あのNTT調査とこの合併の調査と並行していろんなところへ行くものですから、大変似ていると思うんですね。NTTも、給料は七割だと、残れると思ったら大間違いだぞと言って、残る選択もあるにもかかわらずみんなで寄ってたかってそういうことは選ばせないようにするということが大問題になっているんですよね。  この矢祭町でも、この決議をしたらすぐに総務省はお出掛けになりましたよね。私、そのビデオも見ました。何で自主的、自覚的に、今おっしゃったように、うちはもう頑張って合併しませんって言ったところにわっと押し掛けていくのかというのが私は非常に奇異に感じました。  今の議決の否決を覆す住民投票の問題ですね。これも議会が否決した場合だけに限定されているんですよね。だから、先ほど来言われているいろいろなことも、何しろまず合併をしなさい、推進と、これはやはり住民の自治だとか自治体の自治権というのも言葉だけで、やはり非常に重圧を掛けている。実際に合併だけを誘導する偏った制度というのが、さっき私がいろいろと伺った中身だと思うんですね。  そして、若干、ほんのちょっとだといっても、直接民主主義と間接民主主義、これが直接民主主義が上回るという、こういう重大な変更というのも合併推進だからと。先ほど来、この委員会でもいろいろ言われていましたけれども、こういうふうにおっしゃっていますので、重苦しいんですね。私、各地でいろんな方とお話をしているんですけれども、先ほども午前中に与党の議員が言われましたけれども、展望が持てないじゃないかと、合併した先にと。本当に私もそういうお話を皆さんに聞いてきました。  しかし、元気なところもあるんですよね。この矢祭町もそうですけれども、私、これをいただきまして、これは皆さんもお持ちだと思います。四国の高知の馬路村の本当においしいユズのジュースと、「ゆずの村」とこう書いてありますけれども、私はこれ、すごくおいしいなと思って、そうしましたら、あるシンポジウムでこの馬路村の方が元気な小さな町ということでパネリストに出ていらっしゃいまして、ああ、最初はちょっと気が付かなかったのですが、「ゆずの村」というので、ユズのおいしさですぐ思い出して、ああ、あの馬路村かなというふうに思ったんですが、現在、一千二百名人口を割っているんですね。しかし、本当に元気でして、ここのシンポジウムの中でも、やっぱり町として頑張らなくちゃいかぬということをおっしゃっていました。それで、今後の都市との交流には、物よりも人がキーワードだろうと。わっと合併が今進んでいるけれども、全国に同じような地方都市を作ってどうするんだろうと、こういうことを言われて、本当に私はそのとおりだというふうに思うんです。  どこで暮らしても生活権の保障を行うことは国の責任ですし、やっぱり、先ほど来大臣もおっしゃっていますけれども、合併が非常にうまくいくというところを私どもは合併するななんて全然思いません。それぞれ話し合われればいいことなんですよね。しかし、今これだけのたくさんの、三千二百三十九の市町村を千にしよう。これは、市と名の付くところだけでも約千ですよね。だから、その他のところはまるでそういった市町を消しゴムで消すように、何しろ千にまとめていこうという強引なやり方が問題だと思うんですね。  だから、小規模な市町村も生き生きと活動できる、そういう環境を整える。合併しなくても豊かな町を築くことは、実際に今私は二つの例を出しましたけれども、可能なんですよ。だから、そういったものが、大丈夫、やっていけるようにという、そういう応援も国は考えるべきだと思うんですけれども、どうですか、大臣
  286. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) いや、もう少し強引にやれと言われているんですよ。全然強引じゃなくて優し過ぎると、こう言われている。しかし、私はそれが正しい方法だからそうだと、こう言っているんですよ。小さければ小さい方がいい。千人や五百人の自治体が理想だと、みんなで仲良くちょこちょことやればいいと、こういうことじゃないんですよ。  やっぱり、二十一世紀の新しい国の経済社会の中で市町村は何をやるか、どういうサービスを与えるか、全体としてどうやって地域の水準を上げていくかということを考えにゃいかぬのですよ。IT時代ですよ、今。そんなときに小さく小さくまとまって、みんな桃源郷や牧歌的なことだけでいいということにならない。介護保険なんかやれますか、二千や三千で。国民健康保険だって、今度医療保険の大改革やると言っているんですよ、高齢者医療だって。そういうときに、今のままの市町村で全体を全部そのまま認めるなんということは、私はやっぱりおかしいんで、市町村自らの発意で改革してもらいたい、変わってもらいたいですと、こういうことですよ。市町村合併は地方行政のある意味では構造改革なんで、いつまでも現状がいい、変えない方がいい、こういうことじゃ私はやっぱり駄目だと思うんで、そこの啓蒙を今一生懸命しているわけですよ。  最終的な決定はそれぞれの市町村が自分の意思でやるんですよ。ただ、我々は情報を提供し、我々の意見を今お示ししているんで、いろいろな意見があっていいですよ、委員のような意見があってもいいんで、最終的にはそれぞれで決めてもらうと、こういうことであります。
  287. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 小さいことだけがいいと私は言っていない。小さいところでも元気が出るような自治体づくり。大きくなりたいという状況とその条件があるところは大きくなればいいことですから、それを上から押し付ける、今おっしゃったように、そんなことでやっていけると思うのかなんていうような、そんなんでは私はとっても脅かしみたいに聞こえるんですよ。それで、本当ひどいと思います。  この矢祭町宣言の決議では、国の目的は、小規模自治体をなくし、国家財政で大きな比重を占める交付金・補助金を削減し、国の財政再建に役立てようとする意図が明確であります。市町村は戦後半世紀を経て、地域に根差した基礎的な地方自治体として成熟し、自らの進路の決定は自己責任の下意思決定をする能力を十分に持っております。よって、合併しないことを宣言します。地方交付税についても、憲法で保障された地方自治の発展のための財源保障制度であり、その堅持をと訴えているわけですよ。  やっぱりこういうものをきちんとお聞きいただきたい。上からの押し付けや脅しや恫喝は是非やめていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  288. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 四号訴訟の問題とか合併問題、大変白熱してまいっておるわけでありますが、かなりいろんな角度から既に先行議員が論じておるわけでありますけれども、この問題はたまたま私の地元の日韓高速船判決、これがあるものですから、そういう角度から幾つか質疑を行っていきたいというふうに思います。  確かに、自治体の長や職員個人の責任を問うという住民監査請求の現行を、執行機関を被告にする、そして賠償請求等を行うという形での再構成が今回の改正の中心になっているんだろうというように思うんです。  下関市の第三セクター、日韓高速船株式会社に対して同市が支出した補助金について住民監査請求及び住民訴訟がありまして、平成十年の六月に山口地裁は、事実上破綻している第三セクターに対して、債務整理のために補助金を支出することは違法であるとして、当時の市長に対して当該補助金の返還を求めたわけです。控訴審において、広島高裁は、平成十三年の五月二十九日に一審判決を一部支持する判決を下しまして、当時の市長は、これは自治省の先輩後輩の方でありますけれども、こういう問題を熟知していたはずでありますけれども、裁量権の逸脱があったとして金融機関への返済分三億四千百万円の支払を命じられたわけでありまして、現在最高裁に控訴しているというのが実情であるわけであります。    〔委員長退席、理事景山俊太郎君着席〕  現行の自治法では、事業の着手を決めた、計画をしですね、そういう市長ではなくて、後始末で市支出を決定した市長に責任を問うているということなんです。  確かに、この下関の件は、事業として破綻した第三セクターの損害を最小限にとどめるために議会の承認を得て実施したことが個人に損害賠償として降り掛かってきたという大変矛盾した状況があるわけです。確かに、市財政への影響とか連帯保証人への負担を求めるなど、市長が慎重な行動を取ればという批判もあるわけでありますけれども、高速船事業の早期解決を行うことが市民の将来の利益になる、したがって日韓高速船の状況を理解しない法律論だけでやってしまうとこういう決定になっているという大変矛盾した状況が環境としてあるわけですね。  ただ、確かに、先ほど来議論がありましたように、ある面では安易な第三セクター、民活利用という形で、そういうものに対する大きな歯止めになったことは事実でありますが、非常に矛盾した状況下に置かれているという現実に対して今回このような改正をなさろうということだろうと思うんですが、そういうふうに理解してよろしいのかという問題が一点と、もう一つは、随分、第三セクター、各地でもつまずいていますよね。それの全体的な状況がどうなっているのか、お分かりでしたらお教えをいただきたいというふうに思います。
  289. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今、松岡委員から下関市の例をお引きになりましたが、正に補正予算として議会の議決を経て、補助金支出については必要な財務会計上の申請を得たものが市長さん個人の責任になっていると。こういうことはそれは市長さんとしては釈然としないと思いますね。どこがおかしいんだ、ちゃんとやっているではないかと。  こういうものをちゃんと団体として訴訟の相手を、この住民訴訟の相手に団体になってもらってと、こういうことでございまして、こういうケースが頻発して地方団体のある意味ではいろんな職務の萎縮というのでしょうか、そういうことをもたらしていることを我々も心配しておりまして、そういう観点から地方制度調査会も私は答申をしたと思いますので、こういうことが今回の法律改正を認めていただければ変わってくると、こういうふうに思うわけでございます。  地方団体自身に説明責任を果たさせると、こういうことで、あと市長さんと下関市の間に問題があれば、それはそこで一種の求償行為を行うと、こういうことであろうと思います。  第三セクターにつきましては自治行政局長から答えさせていただきます。
  290. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 手元に具体的資料ございませんけれども、同じように地方公共団体が絡む第三セクターの事業のなかなか難しい不振の状況というのは各地域であると思います。    〔理事景山俊太郎君退席、委員長着席〕  また、同じように、住民訴訟というのについても、具体的件数は知りませんけれども、同じようにあるわけでございまして、我々としては、今回、今、先生御指摘のように、地方団体は議会の議決を経て補助金を出しているというわけでございますけれども、過去の判例では、議会の議決をたとえ得たとしても、地方公共団体の長としての違法の責任は免れないというのが過去の判例になっておるというようなことでございまして、我々としては、そういう面で、今回の訴訟の類型を、地方公共団体の長が真正面から被告になるというようなことで説明責任を明らかにした方がいいんではなかろうかという具合に思っておる次第でございます。
  291. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 そうすると、今後、第三セクターでいろんな企画からできるような環境にはないにしても、先ほど来の議論がありますように、若干のやはり歯止めというものがこれでなくなっていくんじゃないかという危惧もあるわけですよね。  だから、一応、形では、例えば地方自治体の長と組織が今回の改正によっては当事者になるのか、あるいはもう長は、長とか個人はなくなってしまうのか、その辺はどうなんでしょう。
  292. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) これまでは、個人であります首長や職員、また相手方というのが被告でございましたけれども、今回の被告は執行機関の長でありますけれども、訴訟の請求内容は、当該長なり職員に請求せよというのを内容とする、被告は執行機関の長でございますけれども、請求せよということで、個人に責任を追及するための請求訴訟というんですか、履行訴訟というんですか、そういう内容でございます。
  293. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 午前中の、いろんな合併やあるいは政と官の問題、そういう議論があったわけですけれども、やはり今、我が国が一番考えなきゃいけないことは、私は、どうも意識改革というのはなかなか日本人、難しいと思うんですよね、いろいろああだこうだ議論はしているけれども。  だから、やっぱり組織とかシステムを思い切って変えていく以外にこの国は変わらぬのじゃないかという気がするんですよ。よく、ゆでガエルの話が例に出ますね。ずっと既得権の中でぬるま湯に入っているうちに、はっと気が付いたときにはもうゆでガエルになって死んでしまっていると。そういうことをやはりアメリカなんかも随分危惧して、日本は自己改革能力がないんじゃないかとか自己決定能力がないんじゃないかとかいう意見がいろいろ出てきているわけですね。  そういう角度で考えていくと、やはり一番分かりやすいのは、地方政治と、行政も含めて、中央政治と行政も含めて、これの役割分担を組織的にどう明快にしていくのかという問題と、やはり中央における政治家と官僚との役割分担、これは地方も似たようなものがありますね、地方政治家とやはり地方官僚との。ここがしっかりしないと駄目だと思うんですね。  そうすると、片方は、地方分権といいましょうか、道州制の導入とかいろんな議論が今ありましたね。それと、中央においてはやはりイギリス型の、いわゆる政府とそれから官僚とそれから政治家とのかかわり方をどうするかと。そういう一番大事なところをどうも議論せずにやっているというところに一番難しい問題が今あると思うんですよ。  だから、私もそろそろ、合併した先は何が見えるんかという議論がずっとありました。分かりやすいのは、やっぱりこの国の形をどうするんやと。新しい時代に合ったスリムで効率的な仕組みを国も地方も、あるいは経済も、皆それを追い続けているわけですから、社会も変わっていかなきゃいかぬ。そういう角度からの議論をすべきだと思うんですが、大臣小泉総理も一貫して、まず合併ありき、平成の大合併ですと、こういうことを言われる。しかしその割には、いろいろ立場は違うにしても、あめとむちと言われるけれども、むちなんというのは全然ないような気がするし、あめも、これは本当にあめなのかどうか分からない、結局新しい借金を増やすわけですから。だから、そういうところが全然見えない議論をずるずるずるずるしていると。  それで、いつでしたか渡辺秀央さんもここで議論していましたけれども、やっぱり市町村長は嫌がっているわけですよ、合併そのものを。そうすると、嫌がっているのに我々がまたやるというのも非常に難しいし、最後は民意だよということになると、結局何のことか分からぬ状態で時間が過ぎていって、十七年の四月のスタートなんというのはできるんだろうかという、そういう疑問ばかり出てくるわけです。  それで、そういう基本的な議論というのについては地方制度調査会とか地方分権推進会議なんかとも議論しながらやってきておられるということでありますが、この中では、この二つの会というのはどういう役割分担をして、やたら、私、ひとつ気に食わないのは、いつか予算委員会でも片山大臣ともやりましたが、審議会とかそんなものをやたら作っちゃって、それで結局国会での、議院内閣制ですから、大統領制じゃないわけですから、やっぱり市長や知事がやたらそういうものを、審議会を作るのとは意味がちょっと違うと思うんですね。非常に分かりにくくなってきている、政策の立案過程というものが。  今申し上げた地方制度調査会とか地方分権改革推進会議の中で、具体的に、今申し上げたような明日の日本をどうするんかとか、どういうシステムでやるんかとか、あるいは、一番肝心なところは、やっぱり税源を地方に渡すということが基本だろうと私は思うんですよ、交付税の話よりは。そういうものがきちっと議論されているのか、その辺をちょっとまず伺ってみたいと思います。
  294. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 済みません、足りないところがあったら滝政務官から答えさせていただきますが。  地方制度調査会というのは地方制度固有のことをやる。これはずっと長い歴史を持つ諮問機関でございまして、今は主として市町村や都道府県の在り方や地方税財政の諸問題をやっていると。これは、任期は一年ないし二年ですけれども、何度も何度も置かれていますですね。  それから、地方分権改革推進会議というのは地方分権推進委員会の後の機関でございまして、これは時限的な機関で、これは主として国と地方の在り方を中心に議論すると。今は、地方分権一括推進法が一昨年の四月から施行になりましたが、その後の更なる権限移譲や事務移譲についての検討をやっていただいておりまして、それが一区切り付きましたら、税源移譲、国と地方の税財源配分の在り方、特に税源移譲を議論していただく、こういうことになっております。地方制度調査会の方は国会の代表の先生方も入っていただいておりまして、これは大人数のいわゆる総理の諮問機関でございまして、分権改革推進委員会の方はこぢんまりした委員会と、こういうふうになっております。
  295. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 市町村合併、二千を超す市町村で合併の協議が進んでいるという御報告でしたけれども、最近の合併実績と、今年どの程度進みそうなのか、具体的にお答えしていただきたいと思うんですが。
  296. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 平成七年以降の合併件数と十四年度中に合併を予定している件数についてお答えします。  平成七年以降の合併の事例、八例でございまして、茨城県鹿嶋市、東京都あきる野市、兵庫県篠山市、新潟市、西東京市、潮来市、さいたま市、岩手県の大船渡市と八例でございます。  お尋ねのありました平成十四年中の合併件数の予定でございますけれども、既に廃置分合に関する総務大臣の告示を終えまして、十四年四月一日の合併が予定されております香川県のさぬき市及び沖縄県の久米島町を含めまして、平成十四年中の期日を合併目標時期として位置付けて今協議をしているという合併協議会の数は全国で五つございます。それと、合併に関する研究会等が行われている地域で十四年中の期日を合併の目標の期日としている事例もあります。  そういうことがありますので、これらの地域を始め具体的に合併の研究会等が、二千余りの市町村がやっておりますので、具体的に合併協議会の設置ないしは合併の実現を期待しております。
  297. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 十七年の三月というのは、もうすぐ来ますよ。一応、与党三党合意では千と、それから小沢さんたちは三百ということを言っていますが、そのときには当然、道州制とか都道府県の見直しをしたいということをこの前、片山大臣は衆議院の総務委員会で発言されたようでありますが、ここでも。ようやくそういう、先が見えぬというのは、その部分が私はあると思うんですね。さっき言いましたように、やっぱりきちっとしたシステムをやり変えるということをやらぬ限り意識は変わらないと私は思うんです。  そうすると、何が何でも十七年三月ということであれば、あめとむちではちょっと足りないんじゃないかという感じがしますし、もし、しかしとりあえずこれ第一段階でやるんだというんであるんなら、例えば目標としたやつが全然達成できぬという状態で推移しちゃうと、ずるずると、これを期限延ばしちゃうのかということをひそかに言っている人たちもいるわけですよ。  この辺はどのような決意を大臣お持ちなんでしょうか。
  298. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 今、自治行政局長が言った数はかなりもう具体化して実現の見込みがあるものでございまして、その前の段階のものはかなりありますですね、私の県である岡山県を含めまして。そういう意味で、平成十三年三月末という市町村合併特例法の延長は特に考えておりません。  ただ、合併がそこで全部終わって、あと何にもないかというと、そんなことはありません。合併というのはもう常にこれは永遠に続くある意味では話だろうと私は思っておりますが、今の我々が特例を作ってやると、こういう仕組みはもう十七年三月まで全力を挙げたい、こういうふうに思っております。そういう意味では、十四年度、十五年度が委員言われましたように一番の正念場だ、大きな流れを作り出そうと、こういうふうに思っております。
  299. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 私が申し上げたいのは、やはり新しい国と地方づくりをやるんだという、そういうものが全然見えてこないわけですよ、まず合併ありきだということだから。この平成の大合併というのは、大が付いているけれども、小合併で終わりはせぬかという危惧を私していますし、やはり本当に地方分権ということになれば、受皿がきちっとしていないといつまでたっても権限とか税源の移譲というのは行われるはずもないわけですよ。だから、その辺がどうも、取り組み方がどうもいま一つすっきりしないなという感じがするわけですね。だから、合併特例債というのはしょせんこれも借金であって返していかないといかぬものであると。国、地方も大変な借金をしている状況の中で、誠に何か本当にあめになっているのかなという部分もあるんですね。  だから、例えばドイツ辺りは連邦でやっていますから、連邦参議院というシステムがあって、二院制度でも衆参両院の役割分担がそこで、参議院はもう地域代表だという分担がはっきりできているわけですよ。イギリスの方も成文憲法を作る段階では連邦を目指そうという方向があるわけですよ。  我が国の場合は何にもないわけですよね。やっと大臣が道府県の見直しをせにゃいかぬと言われている。ここが日本がどうもすっきりしない、先が見えない、そういうところでみんな迷っているという状況なんですけれども。  先々の方向性としてそろそろ、先ほど申し上げたように、私は今、中央と地方との役割というものをきちっと明確にしていくということと、国、地方を通じて政治と官僚の、行政との分担を明確にしていく、これがやはり日本再建の一つの大きな私は柱でなきゃいかぬと、新しい国づくりの。その情熱がやっぱり国民には分からぬのですよ、何も発信されぬものですから。そこは大臣、どうでしょうか。
  300. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 松岡委員始めほかの委員先生方からも御指摘ありましたが、やっぱり全体の合併後のビジョンというんですか、デザインというんでしょうか、何かそういうものは要るかもしれませんね。我々はもう今、それはそれなりにいろいろ言っているんですけれども、まとめた形としてのグランドデザインだとかビジョンという形では示しておりませんので、今言いましたように合併を十七年の三月までに頑張って、できるだけ千に近い数字の市町村合併を行うということ、あるいは税源移譲は今の六十対四十を五十対五十にしてもらうということ、権限については一区切り付きましたが、できるだけ地方でやれることはすべて地方でやってもらうように更に考える、こういうこと。府県制度の改革に取り組むということ、あるいは市町村制度も今の画一の制度からもっと差別化したような、実態に合ったような制度も考えると。  いろんなことを単発では申し上げておりますけれども、全体としての何かのそういうものがあるいは要るのかなという感じも持っておりまして、経済財政諮問会議や地方分権改革推進会議という権威ある審議機関がございますので、そういう中でも議論しながら更にまとめていきたいと。国と地方は構造改革のパートナーという、自分で言うのはおかしいんですけれども、片山プランというのは発表いたしましたけれども、もっとあれをいろんなものを入れたものにまとめるということは必要かなと今考えております。
  301. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 昭和の大合併のときには中学校の問題とかいろいろあったんですけれども、国はかなり強制力を持って指導をしたわけですよね。それで、合併に従わない市町村には総理大臣勧告を出して計画の実現を迫ったという例があるわけですけれども、今回の平成の大合併は若干のむちというものは用意されておるんでしょうか。
  302. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 特にむちそのものを考えているわけではありません。真綿を絞めるようなといって、交付税改革と合併をつなげて考えられたり、いろんなことを言われる人はおりますけれども、これは交付税制度の改革として我々は考えているので、これをもって例えば段階補正や事業費補正の見直しをもって合併のむちにする、ペナルティーにするというようなことは全く考えておりません。  それからまた、今、松岡委員言われるようなあめとむちというんでしょうか、そういう議論がたくさんありますけれども、是非、我々はこういうメリットがあるということを明らかにし、こういう恩典を今政府としては考えている、メニューを示して、都道府県がパターンを作っていただいておりますからね、パターンを中心に積み上げ方式で合併支援組織というのを指定してもらって、それを中心にやっていきたいと、こう思っておりますけれども、十七年三月が近づいてまいっておりますので、全体のこの工程表というんでしょうかね、進行管理のための工程表みたいなものがあるいは要るのかなと。一応、大きな工程表は構造改革工程表の中に入れておりますけれどもね、そういうことも今これから議論すべきことかなと、こう思っております。
  303. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 やっぱり、合併問題は、これ一つがポイントだというものはないと思いますから、大臣が言われたように、真綿で首を絞めるというのは言い方悪いですけれども、いろんな手だてをやりながら最終的には住民がやはりきちっと決断する。その前にはやはり地域の首長のリーダーシップというのがやっぱり要るんですけれどもね。その辺が非常に今先が見えぬだけにそれを避けているという部分がやっぱりあるんですよ、首長さん方が。それも非常に大きなポイントだろうと思うんですが、現実に足下を見ると地方自治体の財政悪化が進んでいるわけですよ。  それで、二月の二十六日ですか、全国の市町村の平成十二年度の決算が総務省から発表されたわけですけれども、実質収支が赤字の団体が二十二団体、これは前年と同じですけれども、地方自治体の経常収支比率が八〇%を超える自治体が全体の八割をもう超えているわけですよね。地方の平成十四年度予算の借入金残高は百九十五兆円、国、地方合計で六百九十三兆円にもなってしまったと。自治体のその財政状況から見ると公債の償還は非常に厳しい状況にあるわけですけれども、償還のめどはあるんでしょうか。その辺をお伺いしたいと思うんですが。
  304. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 地方団体の財政状況でございますけれども、御指摘のとおり恐らく平成十四年度の年度末では借金残高は百九十五兆円と、こういうことが予想されるわけでございますし、過般の発表した決算でも経常収支比率が悪化していると、こういうことでございまして、大変厳しい状況にあることは事実でございます。  ただ、地方団体のこの百九十五兆円につきましては、毎年毎年の地方交付税の算定を通じまして地方団体の財政運営に支障がないようにこの元利償還財源を地財計画の中で考慮をしてきていると、こういうことからいたしますと、今の段階では毎年毎年それなりの努力をしてこの借金が返せないというようなことは生じないものと考えているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、借金財政から脱却するというのが当面の最大の課題でございますので、経済の構造改革あるいは地方振興を通じてこの地方一般財源を何とか確保していくと、こういう努力というのは当然この当面の最大の課題というふうに財政上は言わざるを得ない状況にあろうかと存じます。
  305. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 足下の財政自体が非常に脆弱になってきている、それをもって今回ほとんど全自治体が合併特例債乗りますよと言ってきたときに、これは償還していかなきゃいかぬわけですから、それについての償還計画というのは目算はあるんですかね、これ。
  306. 滝実

    大臣政務官(滝実君) 当委員会でも議論が出ております合併特例債、現在でも多額の借金の中で合併特例債、全国的に合併が進んだ段階でこの特例債の償還を果たすような財政的なゆとりがあるのかと、こういうお尋ねでございます。  元々この合併特例債は、各地域ごとに、団体ごとに人口の規模に応じて合併特例債を算出するわけでございますから、小さな合併団体に対してそれは大きな合併特例債を認めるというようなことではありませんけれども、積もり積もればそれなりの金額になることは間違いないわけでございまして、私どもとしては何とか合併特例債をできるだけむしろ確保できるような状況に持っていくことが当面の課題でございますけれども、その合併特例債の元利償還金は、七〇%を交付税で措置する、こういうようなことでもございますので、私どもはやはり現行の百九十五兆円と見込まれるこの借入残高に加えて、この合併特例債が出てまいりますれば、それについても当然地財計画の中でこの元利償還が果たせると、こういうような地財計画を当然組まなきゃなりません。その辺のところを見通しながら、頑張っていく必要があるだろうというふうに思っております。  お尋ねのように、そこのところは痛しかゆしのところがありますけれども、とにかくいずれにしたって合併特例債がそれなりに確保できるという状況を作ることがまず先決であろうかと存じます。
  307. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 先ほど県境を越えた合併の問題も議論をされたわけですけれども、大臣が言っておられるように、府県制度を見直すためには、むしろ意図的に県境を越えた市町村の合併を進める、それに対する障害を取り除いてやる、かなりいろんな面で障害を持っているわけですよ、県境を越える場合は。むしろ、それに対する、それを促進することをやられた方がスムーズに事が運ぶんじゃないかと思うんですけれどもね。その辺はどうなんでしょうか。
  308. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 市町村の合併を具体的に検討する場合に、県境があるからといってそれをやめておけということには私はならないと思いますね。経済的にある程度一体感があったり連帯意識があったり、やりたいというようなことがあったら私は認めればいいと思うんですが、これは吸収合併の場合と、新設合併の場合はちょっと違うんですよ。吸収合併の場合には、これはその吸収した方の府県域が広がるわけですけれども、新設合併の場合には、やっぱり手続が要るんですね、法律上。この辺をもしそういう具体の例が出てくれば法的な措置が要るのかなと、こう思っておりますが、県境があるからその合併はやめろとか、そういうことは全く考えておりません。  むしろ、そういうことをやりたいということがあれば、我々はそれに対応できるような措置をむしろ我々の方が検討したい、こう思っております。
  309. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 先ほど私、触れましたように、地方財政の在り方を考えるためには、国民が受ける行政サービスですね。これの平等性を確保するということももちろん大事でありますし、国と地方の役割分担といいましょうか、在り方を、これも再構築していくということがないと、やっぱりうまくいかないんだろうと思うんですね。  だから、連邦制とか道州制とか、いろんな議論はこれからなされていくだろうと思うんですけれども、その中で、やっぱり衆議院と参議院の役割分担の問題もあるいは定数の問題もいろんな形で影響してくると私は思うんですね。公務員の数の問題とか地方議員の数の問題とか、聖域なき構造改革と言うからには、日本の再構築をやっぱりやって生き残っていくんだと、それで国も生き残り、地方も生き残るんだという姿がどうも国会の議論の中でもなかなか出てこない。  やはり、これからの生き方としては、やはり私も本当にいわゆる所得水準の問題とか、あるいは経済成長率とか、それだけで豊かさを量るという時代でもなくなってきているんですね。いろんな面でのやはり見直しをしてこれ頑張っていくしかないなと。その点ではこの地方分権の問題、これは国民にとって新しい国づくりのために非常に私は大事なところだと思いますし、どうかその辺、できるだけ目に見える形でこの問題が解決されていくことを望みたいというふうに思っております。  時間も参りましたので、あと、先ほど、午前中ちょっと触れようと思って時間がなかったものですから触れなかった問題につきまして若干の質疑をさせていただきたいと思います。  平成十二年、十三年の政党交付金の状況、各党への、これを御報告いただきたいというふうに思います。
  310. 大竹邦実

    政府参考人大竹邦実君) 平成十二年、平成十三年の政党交付金につきましては、総額はそれぞれ約三百十四億円でございますけれども、各政党に対します交付額について申し上げますと、まず自由民主党が平成十二年分百四十五億三千八百万円、平成十三年分百四十五億三千五百万円。以下、同様に平成十二年分、十三年分、順次申し上げますが、民主党が七十六億五千万円、八十四億二百万円、公明党が三十一億二千二百万円、二十八億九千九百万円、自由党が二十四億五千百万円、二十億三千二百万円、社会民主党が二十二億五千百万円、二十一億五千四百万円、無所属の会が二億八千七百万円、四億一千八百万円、さきがけが二億八千万円、一億二千五百万円、自由連合が二億二千万円、三億一千四百万円、保守党が二億一千百万円、四億二千九百万円、第二院クラブが一億四千七百万円、八千六百万円となっております。
  311. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 これは、政治改革の大きな柱として国民の皆様方から一人当たり二百五十円支えていただいて、利権とかそういうものにかかわらないきれいな政治をやっていこうということで発足した仕組みであるわけでありますが、いまだに企業献金の廃止というところまで至っていない。また、あっせん利得処罰法では、私設秘書を外したことによりまして、冒頭に触れました徳島の現職知事とか市長さん方、首長たちの犯罪につながっているということを考えますと、やはり国民に対してきちっとできるところから我々も姿勢を変えていくということが望ましいことであるというふうに思います。  それから、企業献金はやはり廃止の方向に当然これは持っていくべきだというふうに私どもは考えておるんですけれども、片山大臣、この問題はどのようにお考えになっておられるでしょうか。
  312. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 平成十二年の一月から政治家個人の資金管理団体に対する企業・団体献金は禁止されましたね。問題は、政党に対する企業・団体献金はどうかと、こういうことでございますが、現行は支部に対するものを含めて認められております。これは政党活動というもの、政党の政治活動をどう考えるかということ、また企業というものを、政治活動をどう考えるかですね。企業も社会的実在で政治活動の自由があるんで、したがって献金の自由もあると、こういう最高裁の判決もありますし、基本的にはやっぱり、同じような答弁になりますけれども、各党各会派で大いに議論いただいて方向付けをしていただくのが私は一番いいんではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  313. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 最後に、総務省で行政監査を実施されておられるわけですけれども、今回の一連の外務省の問題なんか、これは行政評価としてはどういう態度で総務省としては臨まれるんでしょうか。
  314. 塚本壽雄

    政府参考人塚本壽雄君) 御指摘のように、外務省につきましてはいろいろなことが報じられ、また現実に起こっているわけでございます。  やはり国民の行政に対する信頼を回復するという上からは、そうしたことに対しまして外務省におきましても、既に昨年九月には監察監査制度を創設すると。その中で、ハイレベルな監察監査官の下で監察業務を実施するというようなことが進んでおります。また、最近におきましては、第三者によります変える会というものが設置されまして、開かれた外務省のための十の改革という川口大臣の出されましたその方針に沿った具体的措置の検討を行うということなどを進め、改革に向けた取組が鋭意行われているという認識に私ども立っておるところでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、まず外務省におきますそういう取組の状況というものを見守ってまいりたいと考えておりますが、その上で必要な対処がございましたら、どのようなことが必要か、またどのようなことができるかということについても検討してまいりたい、こう考えております。
  315. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 終わります。  ありがとうございました。
  316. 又市征治

    ○又市征治君 今日の議題であります地方自治法等の改正案につきましては、非常に多くの内容がありますし、また、我が党としても見逃せぬ問題が幾つもあるなと、こう思っております。  そこで、二日間の日程を取られておりますから、今日は、合併の持っておる問題点や、地方のやはり一部自主性を否定をする、あるいは自治体や住民の声などを紹介をしながら論議をしてまいりたい、こんなふうに思います。  初めに、大臣は二月二十八日の衆議院の総務委員会で市町村合併の財政節減効果の予測について答弁をされて、総務省の責任ある数字ではないがと、こう言いながら、四兆円から五兆円の削減の試算、これは一部の新聞が報道しているわけですけれども、このことについては否定をされなかったというふうにお聞きをいたします。これは、市町村の九九年度の決算の財政規模約五十四兆円ということになるわけですが、その約一割に当たるわけであります。正にこれが合併の国から見た本音なのかなというふうに感じるところであります。  ところで、一体何が削減をされるのか。当然予測されるのは、首長や議員の報酬、あるいは職員の給与、その他いろいろとあるだろうと思いますが、新聞などで総務省の試算によればと、こう出ているわけでありますから、その試算だとか、あるいは総務省、研究もされているんだろうと思いますけれども、合併で減る主な費目は何なのか、これは行政局長の方からお答えいただきたいと思います。
  317. 芳山達郎

    政府参考人(芳山達郎君) 市町村合併について、各県、各都道府県に合併パターンを含む合併推進要綱を作成していただいておりますけれども、合併パターンに基づいて合併が行われたと仮定すれば、合併後の市町村数が最も多くなる場合で約三分の一、最も少なくなる場合で約五分の一になるというのが各県の合併パターンの数字でございます。  しかしながら、この合併パターンはあくまで市町村の合併の検討の際の目安でありまして、先ほど先生から御質疑ありましたけれども、全国統一的に財政の支出面の効果を算出することは技術的に非常に難しい、そしてまた、それを出すならば市町村合併を強制しているような誤解を招くおそれがあるということで、この前、大臣も御答弁で財政が適当でないという御答弁をされたと思います。  それで、具体的に、しかしながら、合併節減の効果を、一月二十一日に合併した田無市と保谷市の合併で西東京市が誕生しておりますけれども、その中で合併後十年間で百八十九億円の節減効果があるということが既に公表をされておりまして、今お尋ねありましたその節減効果の主なものというのは、人件費、議員報酬、電算管理費、事務費等、これらについて節減効果が可能となる、節減が可能となるという具合に試算をされておるという具合に思います。
  318. 又市征治

    ○又市征治君 今、保谷市、田無市の話がございましたけれども、主に減るのはやっぱり人件費ですね。これ見てみますと、首長や議員の報酬や職員の人件費で約八〇%も削減されると、これは向こう十年間ということですけれどもね。こんな格好で出ています。  そこで、局長、何かゆうべ寝ておられぬそうですから、もう引かれていいです。あとは大臣、副大臣にお聞きしていますから、お願いしていますから。  それで、スケールメリットというのは聞こえはいいんですけれども、今より少ない人員で広がった地域の多くの住民にサービスをするという計算になるわけです。加えて、過疎地では議員もいなくなり、本当にサービスの維持が危ぶまれるということになるわけでありますが、そこで大臣に伺いますけれども、ポイントは、合併で減る支出分の額が住民サービスに還元をされるのか、それとも財政規模を合併前より減らすということになるのか、どうお考えになっておられますか。
  319. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 金減らしのためだけに市町村合併があるといったら、これは国民的な納得は得られませんね。だから、効率化すると、それをより高いサービスに充てると、こういうことだと思いますよ。だから、住民に還元せにゃいけません、それが合併の本来の在り方ですから。私どもはそういうふうに考えております。
  320. 又市征治

    ○又市征治君 今、ここのところが非常に大事なところですね。実際にどうも同じ額を投じて、住民のサービスの向上ということではなくて、合併後の支出の削減に充てていく、あるいは、ひいては地方財政トータルな規模の縮小というふうになっていくんだろうと思うんです。言うなれば、合併は自治体財政のデフレスパイラル、これの始まりではないかというふうに思います。その意味でも、小泉流構造改革のどうも一環のような気がしてなりません。人件費のような基本的な経費、あるいはこれを含む基準財政需要額が減れば、これは自治体に対する国の義務的な支出、とりわけ総務省としても頭の痛い交付税の不足額が減るし、交付税特別会計の持ち出しが減るわけであって、国の財政にメリットだということになるんじゃないでしょうか。  大臣に伺いますけれども、仮に先ほどの試算のベースで合併市町村の経費が減るとすると、結果として国の地方財政への補てんがどのぐらい減るというふうに考えておられるのか、ここら辺の試算はされていないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  321. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 試算は特にしておりません。合併について、大幅に減るとかということを私どもは考えておりませんので、もしそういうことなら、何で税源移譲を死に物狂いで経済財政諮問会議で議論しながら、そういうことを明記させるとか、あるいは地方税財政基盤の充実強化ということに大変なあちこちで提案をしているわけでありまして、我々はやっぱり地方にできることは地方にする。そのためには、地方で自分で決めて自分でいろんなことができるだけの財源を与える、六〇対四〇を五〇対五〇にしろと私は言っているんですから、そのことを私は単にレッテルを付け替えるだけじゃなくて、取り分を増やせと言っているんです、私は全体の。そういうことの中で合併によってお金を浮かして、それを国の財政の手助けのためになんということは全く考えておりません。
  322. 又市征治

    ○又市征治君 試算をしていないと、それから、そんなことは考えていないんだと、こうおっしゃいますが、じゃ、減るのはほぼすべて基準財政需要額の中身ということだけは、これはお認めになりますよね。だから、国の交付税必要額は大変軽くなっていくということは、これは現実でしょう。一時期増えても、特例期間が終われば、先ほど来の話ありましたように、最後はやっぱり減っていくということになるんだろうと思うんです。  例えば二〇〇二年度の地方財政の不足額に対する国の責任の分担というのは、一般会計負担分が三兆一千三百億、これに交付税特別会計の借入れの国の分を含めますと四兆一千七百億円ということですね。今提案されています。  一方、先ほどの一部新聞が報道した総務省の試算と言われるこの減額は四兆円から五兆円ということですから、ちょうど釣合いが取れてくる。これが削られるということになるわけで、そうなっていくと、国が悪者にならなくても、市町村が合併で財源的には小さくなってくれる、それで国の責任が限りなく小さくなっていく、ゼロになる、これが合併促進計画の財政的なねらいじゃないんかと、こういうふうに自治体も見ているわけですよ。だから、ここのところはそんなことはないと先ほどからおっしゃっているわけですが、明確にもう一度、大臣、そういうことを全然考えていないということをお約束いただけますか。
  323. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) そういうことは考えておりませんが、国も地方もですね、国も地方も今の歳出構造を見直そうと。慢性的に今の歳入と歳出は国も地方も財源不足なんですよ、慢性的に。国もそうですよ、地方もそうなんで、これをどうやって見直して直していくかということは国も地方も私は大問題だと、こう思っている。その点のだから見直しはやります、国もやる、地方もやる、構造改革をやる、思い切って、それはやるんです。しかし、今の合併によって浮いた金をどうにかしようなんということは全く考えておりません。
  324. 又市征治

    ○又市征治君 まあ、そういう意図はないと、是非地方を守っていきたいというお話でありますが、どうもこうした中身見ておりますと、言葉はそうなんですが、どうもあと五年、十年たってみたら、合併のあらしが通り過ぎてみたら、どうも大臣の今言われたことがそのとおりになるのかなと、ちょっと心配があるわけであります。  しかし、今、様々な一時金を目の前にぶら下げられて合併に迷っておる市町村にとっては、やはり今のことは非常に大事だし、知っておいてもらわなきゃならぬと、こう思います。つまり、合併による効率化というのは何も市町村内部のことでなくて、一方では国の地方財政への責任が非常に小さくなっていくというこういう側面もあるということも事実なんだろうと思いますし、経済財政諮問会議の基本方針では地方の歳出の削減を求めて速やかな市町村の再編を促していることもまた事実ですから、そんなふうに申し上げるわけです。こんなようなやり方だとすれば私どもはもう大変に反対であります。  このことを前提に、次に、政府の進める一方的なこの市町村合併政策が現場の自治体にどのような混乱と自治の破壊をもたらしているか、一つの県の市町村長さんたちの実例を挙げて、大臣に今後の政策展開を改めるべきは改めていただきたいと、このように思いますので、資料をお配りいただきたいと思います。  今皆さんのお手元に資料をお配りをいたしておりますけれども、北日本新聞社という地方紙が富山県の全市町村長三十五人に合併について聞いたアンケートがあるわけであります。この北日本新聞が付けた総括的なコメント、一番上に載っていると思いますけれども、合併について、首長の四割強が十七年三月までに合併すべきと考えているとあるわけですが、その後に続けて、ただ、期限を設け、特典を用意して合併を促す国の進め方には半数近くの首長が疑問や不満を抱いていると、新聞社自身がこういうふうに分析をし、合併強硬路線に注意を促しているわけです。  大臣、いかがですか、状況はどこの県でも同じようなことじゃないでしょうか。
  325. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) しかし、これで見ると、みんな賛成ですね、その他以外は。十七年の三月末までにやれというのと、できるだけ早くやれと、検討すべきだ、だが、まあ余り急ぐなと、こういうことなんですけれども。  ただ、この期限を設けずにやれと、こういうことは、やるなということにだんだん近くなってくるんですよ。やっぱり期限を設けて頑張ってもらうということが物事を進める一つのやり方ですから、いつでもだらだらだらだらやるということは、もうやるなということにつながるのではなかろうかと、こう私どもは考えておりまして、そういう意味で合併特例法で時限措置を盛り込んでおるわけであります。
  326. 又市征治

    ○又市征治君 大臣はそういうふうにお取りのようですが、その中身が違うということは今これから申し上げたいと思うんですが。  この回答は、首長さんが実名を出して回答してこういうふうに、新聞に全部載りますよということを前提にしての回答なんですね。ですから、国や県にどうにらまれるか分からない中でもなお四割の首長が国による合併の強要には公然と疑問を呈しているわけですよ。  そこで、私が重要だと思うのは、このうち合併推進派も慎重派も含めて五三%の首長が住民の意思を尊重しなきゃならぬと、こういうふうに答えられているわけですが、それぞれの自らの言葉で答えているわけです。この住民の意思の尊重という表現には、実は国や県の進め方に対する批判のニュアンスも込められている、こういうふうに思います。  例えば合併推進派でも、あくまでも住民の主体性に基づくべきものだと、あるいは地域が責任を持って行うべきもので合併特例というあめでは解決しないと、こういうふうに答えています。  また、慎重派になりますと、交付税見直しが背景にあり、国、県の指導だ、主導だということで批判的です。あるいは、住民意見を集約し自主的に判断すべきものだと。また、一律に迫るのは不賛成だ、選択肢の一つとして検討をする。さらにまた、単独でいくのが一つの選択肢だ、三十二万人では真の自治がない、吸収されるのは市民に不幸だなどと答えているわけです。  つまり、市町村長は、総論で言えば、賛否を問われると、一見、大枠では合併推進と、こう見られている市町村がありますけれども、具体的には、これから住民の意思を尊重し、データを公表し、検討を重ねていくとすれば、合併の可否はまだまだあと数年では定まらないという、こういう状況が浮き彫りになってくるんだろうと思うんです。特に、交付税の脅しとかあるいは期限切れで迫る国や県の態度が嫌われているという、こういうふうに読み取れるんじゃないでしょうか。  一寸の虫にも五分の魂というふうに言いますけれども、地方分権や地方の声をひときわ大事にしてこられた大臣ですから、これを聞いて少なくとも、さっきからはあめやむちをくれろということは言っているんじゃないと、こうおっしゃっていますが、やはり幾らかそういう意味では改善をすべき今後の政策展開にあるんじゃないか、そこらのところはどうお考えだろうか、ここのところをお聞きしたいと思います。
  327. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 合併に限らず、住民の意思を尊重するのは地方自治のもうこれは原点ですから、それは当たり前のことなんで、我々も住民意思を大いに尊重していただきたいと。住民意思という名前で市町村長さんや議員さんの意思をすり替えちゃいけませんよね。住民が反対だから、自分が反対なのに住民が反対だからと、こういうことは困るんで、本当の住民の意思を的確に私たちは聞いてもらいたいと、こう思っております。  それから、何度も申し上げておりますように、平成のこの大合併は自主的な合併なんですよ、自主的な。それぞれの地域社会の将来を考えていって、自主的な御判断をいただき御選択を賜りたいと、こういうふうに思っておりますので、是非そこは御理解賜りたいと思いますし、まあ何事も総論賛成各論反対が多いですよね。物を変えるというたら、改革といったら、みんなそうなんですよね。だから、その各論反対の人をどうやって各論も賛成にしてもらうかというのが我々の努力だと、こう思っております。  それから、交付税制度は、これは合併に関係ありません。交付税制度をこのまま持続可能で将来とも制度として残すためには見直さな駄目なんです。じゃぶじゃぶ金があるときはそういう交付税の算定が可能なんですよ、配分が。しかし、国も地方もこんな窮屈になった時代に、前と同じような配分や考え方は通らないです、これは国民の税金なんですから。だから、交付税制度の改革はやらせてもらいます、合併にかかわりなく、実態に合ったように、合理的に、適正に。それはひとつ御理解賜りたいと思います。
  328. 又市征治

    ○又市征治君 アンケートで、最後にこの分権自治には何が一番大切と思うかと質問しているわけですが、これに対する回答では、三十五人の市町村長のうち十六人、四六%が、財源の移譲とか国に依存しない財源の確保というふうに答えておられます。例えば、国の関与を少なくすること、税財源の裏付けが不可欠だと、あるいは財源の確保、公共事業でなく豊かな生活を、分権推進委員会最終報告の税財源の移譲を早急になどというふうに答えているわけです。  このように、多くの市町村長が自治体の大小にかかわらず国の干渉を受けない財源の保障があれば、分権自治は今のままでも、あるいは今のままの方が発展していけるというふうに、これはやっぱり首長として責任持って言っているわけですよ。これは合併強要路線に対する当事者たる市町村長の痛烈なやっぱり批判でもあるわけで、今どうも片山さん、余りムネオチックな話にならぬように、具体的なこうした市町村長のこういう声というものも対案だというふうに私は思うわけですが、最後にもう一度大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  329. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) 市町村長さんは地域の代表ですから、その声は謙虚に承らなきゃいかぬと思いますが、例えば今言われるように、税源の移譲と言われても、今の市町村の実態で、税源の元がないんですから、地元には。地域経済を活性化して新しい地域産業を興さないと税なんか取れませんよ、税源移譲といっても。結局は税源移譲を地方にしても、大阪や東京ばかり集まるんですよ。だから、そこを私は言っているんで、市町村を大きくして強くして、新しい産業を興して地域経済を活性化することが税源移譲の成果を受け取れるんですよ。そこを考えていただかないと、受け取るだけの、もらうだけの地方自治じゃ私は困ると思っているんです。やっぱり作り出す、自律する地方自治じゃないと。是非ひとつそういう意味での御理解を賜りたいと思います。
  330. 又市征治

    ○又市征治君 私は富山県に長年住んでまいりましたが、この富山県と岐阜県の境に平村、下平村というところがあります。大臣も御承知だろうと思いますが。名前のとおり平家の落ち武者集落が中心の村なわけです。ここでは何百年にわたり伝承されてきた歴史や伝統あるいは芸能や文化などがあるわけですが、この守り手というのは、実態は役場だとか学校だとか郵便局、農協などに働く人々が中心なわけです。広域合併で過疎化が進んでこうした守り手がいなくなり、これら芸能だとか文化だとか伝統がなくなっていくことに対して非常に年輩者の皆さんほど強い危惧の念を持っておられるわけです。  あるいはまた、こうした地域は大変雪深いところでもありまして、一晩に一メーター、二メーターと雪が積もるわけです。こういう状況の中で、こうした町村では職員は、むしろこういう時期には自らの仕事を夜に回しても、あるいは自分の家はもう後回しにしても、高齢者宅だとか公的施設の雪下ろしに走るわけです。  このようなきめ細かな住民サービスがこうした村や町ではごく当たり前のことのように行われておる。合併で大きくなってこうしたことが切り捨てられていくんではないか、住民は非常にそういう意味で不安を持っておるわけで、何か大きいことはいいことだ、こういうふうに聞こえるわけですが、こうした切捨ては絶対にさせてはならぬ、こういうふうに大臣はそういう意味では保障をされるのかどうかですね。  むしろ、こういう地域にあっては、合併ではなくて、それこそ地方の財源確保、先ほど片山プランの話も出ましたけれども、是非とも早急に五〇対五〇に改めてもらう、こういう努力をやり、そしてまた、言ってみればこうしたきめ細かな行政が行われるようにいろんな、様々な、先ほどからも大臣もおっしゃっていますけれども、介護だとか様々なやっぱり広域的にやらなきゃならぬ課題が出てきていることは私も承知しています。こういうのはやっぱり一部事務組合だとか広域圏だとかで、そういう広域行政で進めていくという、こういうことが今やられることも、しっかりとやっていくべきではないのか。どうしても合併しなきゃならぬ、こういうことじゃないんじゃないだろうか。  こんなふうに、住民のこうした懸念、危惧、こういうことにもしっかりこたえることになっているのかどうか。その点をもう一遍、繰り返しになりますけれども、いや、そんなきめ細かなサービスなどが、落としてはならぬ、そのことはやっぱり確保していくんだということをちゃんとお約束いただけるのかどうか、最後にお聞きをしておきますが。あと合併持参金の問題をもう一遍聞くつもりでおりましたが、若松副大臣、忙しいところを帰してもらったのに、ちょっと時間がありませんから、これはもう次回のところでやらせてもらいますので、ここのところで大臣の答弁で終わりたいと思います。
  331. 片山虎之助

    国務大臣片山虎之助君) そういう小さな市町村ほどきめ細かい人とのつながりのサービスが私はあるとは思います。ただ、それをもっと大きくすることによって、組織的にして専門職員がちゃんとやるようなそういうネットワーク、システムに直した方が私はベターではないかと思いますし、そういうことだから組合を作ったらいいじゃないかと。組合、今たくさんあるんです、一部事務組合が。これはやっぱり限界があるのと、やや責任の所在が不明確になるので、必要なところは組合を作ればいいと思いますけれども、やっぱり合併の方が分かりやすいし、直接的ではないかと、こう考えておりますが、委員御指摘の点は十分我々も受け止めて、検討してまいります。
  332. 又市征治

    ○又市征治君 終わります。
  333. 田村公平

    委員長田村公平君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会