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2002-07-11 第154回国会 参議院 財政金融委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十四年七月十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  七月四日     辞任         補欠選任      中島 啓雄君     片山虎之助君      今泉  昭君     櫻井  充君      山根 隆治君     勝木 健司君  七月五日     辞任         補欠選任      片山虎之助君     中島 啓雄君  七月八日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     今井  澄君      大門実紀史君     井上 美代君  七月九日     辞任         補欠選任      今井  澄君     櫻井  充君      井上 美代君     大門実紀史君  七月十日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     今泉  昭君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山下洲夫君     理 事                 入澤  肇君                 林  芳正君                 若林 正俊君                 円 より子君                 山本  保君     委 員                 上杉 光弘君                 尾辻 秀久君                 鴻池 祥肇君                 清水 達雄君                 中島 啓雄君                 溝手 顕正君                 山下 英利君                 今泉  昭君                 大塚 耕平君                 勝木 健司君                 峰崎 直樹君                 浜田卓二郎君                 池田 幹幸君                 大門実紀史君                 平野 達男君                 大渕 絹子君                 椎名 素夫君    国務大臣        財務大臣     塩川正十郎君        国務大臣        (金融担当大臣) 柳澤 伯夫君    副大臣        内閣府副大臣   村田 吉隆君        財務大臣    尾辻 秀久君    事務局側        常任委員会専門        員        石田 祐幸君    政府参考人        内閣府政策統括        官        安達 俊雄君        外務省経済協力        局長       西田 恒夫君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        日本銀行総裁  藤原 作彌君        日本銀行理事   三谷 隆博君        日本銀行理事   小林 英三君        日本銀行理事   白川 方明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四日、山根隆治君が委員辞任され、その補欠として勝木健司君が選任されました。     ─────────────
  3. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会内閣府政策統括官安達俊雄君及び外務省経済協力局長西田恒夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁速水優君、同副総裁藤原作彌君、同理事三谷隆博君、同理事小林英三君及び同理事白川方明君出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 中島啓雄

    中島啓雄君 おはようございます。自由民主党の中島啓雄でございます。  本日は、速水総裁柳澤金融担当大臣始め、早朝から御出席をいただきましてありがとうございます。  まず、金融市場調節方式について若干伺わせていただきたいと思います。  デフレ状況が継続しているという状況の中で、日銀金融政策についてもいろいろ御苦労があろうかと思いますが、昨年の三月から、従来のコールレートを上下させることによって調節するという方式から、量的な調整ということで日銀当座預金残高をコントロールすると、こういうことに踏み切られまして、昨年三月の段階では五兆円ベース、それから五月の段階では六兆円に増額されて、さらに十二月の段階で十ないし十五兆円ということでマネタリーベース拡大をしてこられたと。  最近では、大体対前年で三〇%弱ということでございますので、それによって何月危機とかちまたに言われていた状況が回避されたというような効果があったのかと思いますが、その辺の、金融調節方式量的調整に変更されたということによる効果についてどのように把握をしておられるか、お聞かせいただければと思います。
  9. 速水優

    参考人速水優君) 中島先生の御質問にお答えいたします。  昨年来、内外の中央銀行の歴史にも前例を見ない思い切った金融緩和措置を実施いたしました。この結果、一つには、オーバーナイト金利あるいはやや長め短期金利もほぼゼロにまで低下してきております。また第二には、マネタリーベースの前年比、私どもの方から直接出しています金は、前年比で三割弱の高い伸び、六月末でも二七・五、四月には三六%前年比伸びて、八十五兆円といったような数字になっております。  このような金融緩和、これは、一つにはIT分野の世界的な調整とか、また米国のテロ事件の発生とか、金融システム不安の高まりなど、我が国経済に大きなストレスが掛かる中で、金融市場の安定を確保していくことを通じて景気底割れを回避できたというふうに思っております。  しかし、我が国経済が様々な構造問題を抱える下で、企業の投資や家計支出、これらは十分活発化するには至っておりません。金融緩和が力強い効果を発揮していくためには、金融システムの強化や経済産業面での構造改革を進めて民間需要を引き出していくということが不可欠なことではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  10. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  景気底割れを防いだということでは効果があったということでございましょうけれども、なかなか家計支出まで及んでいないと。  マネーサプライで見ますと、六月は対前年で三・四%というふうなことでございますから、昨年のベースは大体二%台ぐらいでございましたから多少増えているのかなという気もいたしますけれども、郵貯のシフトなどというのもあるらしいんで、なかなかマネタリーベース拡大マネーサプライの増加に結び付いていない、したがって、国内金融機関の貸出しという面も依然としてマイナスが続いている、こういうようなことでございますが、そういったマネーサプライがなかなか増えていない、国内の貸出しにも結び付いていないといった要因がどこにあるのか、その辺についてお考えがあればお聞かせをいただければと思います。
  11. 速水優

    参考人速水優君) お答えいたします。  銀行貸出しは、御承知のように、ずっとこのところ減少を続けております。マネーサプライの方は、経済活動との対比で見ますれば相応の伸びを維持しているということが言えますが、日本銀行が供給しておりますマネタリーベースが大幅に増加しているのに比べますと低めの伸びにとどまっております。  これは、基本的には、銀行不良貸出残高を持って、なかなか新しい貸出しに手を伸ばしていく、リスクを取っていくというような、いわゆる仲介機能を活発に機能させていくというふうにまだなっていなかったということ。そして、借りる方の企業も、全体としては過剰な債務を抱えてその調整が進行中であるということに加えまして、その両者、企業金融機関も積極的にリスクを取っていくことについては極めて慎重な態度でここまで来ているといったようなことが背景になっていると思います。
  12. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  貸出しの問題が一つでございますし、もう一つの側面は物価の問題だと思います。  日銀法でも、日本銀行の使命として、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展を図るということが述べられているわけでございますが、残念ながら、物価という面で見ても、デフレ解消への展望というのが余り見えてこない。消費者物価指数では、ここ数か月、対前月比では若干のプラスということでございましょうけれども、相変わらず対前年ではマイナス一%前後であると。卸売物価についても同様なことになっていると思います。  やはり、日本銀行政策としても、あるいは政府一体になってということかと思いますけれども、このデフレ解消ということは重大な問題でありますので、先日の総裁概要説明の中では、「当面、物価は緩やかな下落傾向をたどるものと見られます。」と。確かに、客観的にはそうかもしれませんが、もう少し日銀としての積極的な姿勢というものが見られてもいいのではないかという気がいたします。  政策委員会のいろいろな御議論の中で、当座預金残高を二十兆ぐらいにしたらどうかとか、あるいは外債の購入をしたらどうかとか、そういうような御提案もあったようでございますが、もう少し積極的な対策ということを今後考えられるかどうか、その辺についてお聞かせいただければと思います。
  13. 速水優

    参考人速水優君) 物価が継続的に下落することを防止していくという断固たる決意を持ちまして、思い切った金融緩和措置を講じてきたわけでございます。  その結果、金融市場におきましては強力な緩和効果が生じております。金利の方はやや長め短期金利までほぼゼロに低下しておりますし、マネタリーベースも、先ほど申し上げましたように、現在、前年比三割弱の高い伸びを示しております。マネタリーベースの対名目GDP比率も、過去百年間で、第二次世界大戦を除きますと、現在は最も高い水準になっております。今後とも、金融市場安定確保緩和効果の浸透に向けて、中央銀行としてはなし得る力を続けていく方針でございます。  物価お話がございましたけれども卸売物価のことは先般概要を申し上げたときにも御披露させていただきましたが、二月から五か月間ほぼ横ばいでゼロ、前年比はまだ一%前後のマイナスでございますけれども前月比はずっと横ばいになってきておるというのは新しい変化の一つであると思いますし、CPIの方も、もとより需給ギャップということもあるわけですけれども、主として輸入品の価格、輸入品関係の引下げが機能しているということを、私はCPI物価がなかなか変わっていかない背景にあると思います。これも前年比で見ますると、御指摘のように一%前後のマイナスでございます。  デフレを克服してまいりますために、金融システム面で、あるいは経済産業面構造改革などを通じて、家計金融機関の前向きな活動を引き出していくことがまず先決ではないかというふうに考えております。
  14. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  確かに、卸売物価前月横ばいになっておるというんで多少希望が見えてきたのかもしれませんけれども、まだなかなか国民から見るとデフレ解消にはほど遠いと。  そこで、いわゆるインフレターゲット論といいますか、私は、インフレターゲットというのはちょっと用語として余り適切でないだろうと、むしろ物価水準ターゲットというような言い方をすべきではないかと思いますが、そういったことで、望ましい物価水準ということについては、政府日銀一体となってやっぱり強い意思を示すということは意味のあることではないかというふうに思います。  特に、やっぱり今の状況では、心理的にアナウンスメント効果というのもあるわけでありますから、この物価水準ターゲットを設けるということは、我が党内でも議員立法をしようかというような動きもあるわけでございまして、景気が底入れしたということで、ややデフレを解消するという力が、手が抜けているのではないかなというような気もいたしておりますけれども、やっぱり物価水準というのはある程度プラスを目指すということが大事ではないかという気がいたします。  そういう意味で、いわゆるインフレターゲットというか、インフレターゲットと言いますと、世間的にはインフレによって国債の償還を楽にしようではないかというようなあらぬ誤解も受けますので、私は物価水準ターゲットと言うべきではないかと思いますが、これも政策委員会の御議論の中で、中長期的には意味があるかもしれないと、目標達成に向けた手段として意味があるかもしれないというような御議論もあったようでございますけれども、今までデフレ状態というのはなかなか経験がない領域なんで、私は、やれることは何でもやってみる、それはアナウンスメント効果という意味でも、物価水準ターゲットというようなことをやってみるべきではないかというふうに思っております。  これがオーバーシュートしてインフレのような状態になったときに、インフレを防止するという意味では、金利操作なり、量的な規制なり、財政の節度なり、これは今までの経験でもかなりコントロールの手段というのは整備をされているわけでございますので、今までもかなり量的規制緩和というようなことで未踏の領域に踏み込んでいるんだというお話がございましたけれども、更にもう一歩踏み込んでいただけないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  15. 速水優

    参考人速水優君) 日本銀行は、先ほども申し上げましたように、昨年来、日銀当座預金という量を主なターゲットとする思い切った金融緩和枠組みの下で潤沢な資金供給を実施しているわけでございますが、現在は短期金利がゼロであり、これ以上低下し得ないということに加えまして、様々な構造問題のために金融緩和効果経済全体になかなか浸透していかない状況でございます。こうした状況の下で、インフレターゲティングであれ、物価水準ターゲティングであれ、単に数値目標を発表しても、それだけで物価上昇期待が生まれるわけではなくて、かえって政策への信認を損なう危険が大きいと思います。  インフレターゲットというのは、申すまでもなく、多くの国々でインフレを抑えるために設けられたターゲットであると思います。日本銀行は、CPI上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで現在の思い切った金融緩和枠組みを続けるという形で、物価下落の防止に向けた決意を表現しているところでございます。
  16. 中島啓雄

    中島啓雄君 物価水準ターゲットについて、手段がないと政策への信頼が揺らぐのではないかというようなお話もございましたけれども、毎年予算のシーズンには内閣府の方で経済見通しというのを出されていると。この経済見通しの性格というのは、誘導目標であると同時に予測でもあるというようなことだと思いますので、やはりそんな意味も込めて、物価水準ターゲットというのは一つ検討課題ではないかと思いますので、是非前向きに御検討をいただければ有り難いと思っております。  では次に、金融機関再編の問題について金融庁にお尋ねしたいと思いますが、七日の新聞でございましたか、塩川財務大臣がASEMに行かれて、その中で金融機関再編、特に地域金融機関再編について積極的にやっていくというような姿勢を示されたという報道がなされておりました。これは例の第二骨太の中にも含まれておる話でございますから、それを積極的に何か、それ以上に出るものではないのかもしれませんが、昨日でございますか、その辺の再編についての具体的な素案というような形で、合併を促進するために公的資本注入とか、あるいは税制上の優遇とか、若干の新聞報道がなされておりますので、その辺の考え方について聞かせていただければと思います。
  17. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) いきさつ的に申しますと、四月の十二日であったかと思うんですけれども、私ども特別検査の結果の概要を公表させていただきました。そのときに同時に、金融のこのシステムをより強固なものにするための施策ということで三つばかり新しい施策考えていることを発表させていただきましたが、その際の一つとして、合併等促進策というものを今後検討させていただくと、こういうことも入れさせていただいたわけでございます。それから若干の時日、現実に事務方検討させていただきまして、言わば検討状況の中間的な報告ということで、昨日晩方でございましたけれども、「地域金融機関を中心とした合併等を促進する施策について」と題する対外発表をさせていただきました。  今、先生から再編というお言葉をいただいたわけでございますが、私ども何かアプリオリに、地域金融であれ大手の金融機関であれ、何か一つピクチャーを描いて、そのピクチャーなりビジョンなりというものを実現するためにいろいろ施策を展開していこうと、そういうように、ちょっと再編ということで言われますとそんな感じを与えるんじゃないかと思いますが、私ども決してそういうことを考えているわけではありません。  むしろ、これからいろいろな面で厳しい経営環境というものが現出してくる中で、個々の金融機関が、自分たち金融機関というものを、本当に預金者等から信頼される高度な健全性を持ち、また十分の収益力を持ったそういう金融機関としていくために一体どうしたらいいか、こういう経営戦略をお考えになるときに、それを単独でずっと進めていくのがいいか、あるいは周辺の、あの人と、あの機関と一緒になればシナジー効果もあって今言ったような健全性収益性の面でプラス効果が期待できるなというようなところと例えば合併というようなことを考えると。そういうときに、それを言わば邪魔したりというようなことはもとよりのこと、少しでもそういうようなことであれば支援をしてやるような、そういう施策というものをあらかじめ用意しておくべきではなかろうか、こういう考え方に立っているものでございます。  具体的に、私どもが昨日、これからよく詰めて検討させてもらうということで公表させていただいたのは、四項目ばかり大くくりしますとございますが、それは一つには、合併の手続の面の円滑化のための環境整備というようなものがございます。  それから第二番目には、システム統合などをいたしますとこれはもうコストが掛かるわけでございますが、これをいかにコストが最小限のもので済むようにしてやる施策、そういうものはどういうところで模索できるんだろうか、こういうようなことが第二番目でございます。  第三番目に、経営戦略の実現に必要な自己資本の充実のための方策、こういうことをうたわせていただいているわけでございます。  それから第四番目には、合併等に伴う預金保険上の経過措置というようなものについてどういうことが考えられるだろうか。  これらの項目について今後中身をよく詰めて検討して、できるだけ有効なものをまとめさせていただいて、今申した合併を促進すると、あるいはその環境整備をするということに資そうと、こういうようなことを考えているというものでございます。
  18. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  今回の促進策というのは、金融機関側経営判断を尊重するというお言葉だろうと思います。それはおっしゃるとおりだと思いますが、金融機関合併等によってずうたいだけ大きくなってもこれは余り意味のない話なんで、合併をする際に公的資本注入などということも私は考えていいと思うんですけれども、やっぱり経営健全化というのを第一に考えていただきたい。地域金融機関健全化ということと、それからもう一つ地域経済活性化ということに資するものでないと意味がないと思いますので、合併等地域経済活性化にも資するような御指導を是非お願いしたいということで、時間もございませんから要望にとどめておきたいと思います。  じゃ、三つ目に、ちょっとコンピューターシステム障害について、みずほの件もございましたので、若干日銀にお尋ねいたしたいと思います。  四月に御承知のとおりみずほシステム障害ということがありまして、その原因が二つほど、口座振替プログラムというのにミスがあったということと、対外接続系システムがうまく働かなかったというようなことのようでございますが、対外接続系システムというのは当然全銀システムにつながっておりますし、ひいては日銀システムも関係するんだと思いますが、幸い四月の場合はみずほ影響日銀システムにまでは及ばなかったと聞いております。  現在、日銀さんでは、当座預金決済国債決済リアルタイムにすると、RTGSという難しい名前で呼んでおられるようでございますが、そういうことをやって、金融機関の破綻といったようなシステミックリスクには対応できるような措置をした、こういうことでございますが、逆に、リアルタイムにすると、システム障害が起こった場合には影響が大きいというようなこともございますので、そういったシステム障害というようなことが発生した場合に対する、あるいは発生しないようにというか、そうしたことに対する備えということで今どのようなことを、措置をしておられるか、お聞かせいただければと思います。
  19. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) お答えいたします。  日本銀行では、コンピューターシステム障害対策としまして、私ども自身では、電算センターのホストコンピューターとか通信制御装置その他の主なセンター機器、それから本支店を結ぶ回線、さらには本店及び主要支店回線を収容します電話局といったようなところも含めまして、重要な部分はすべて二重化しております。  また、大阪にこれとは別にバックアップのための電算センターを準備しておりまして、災害等何らかの理由で東京にある電算センター機能障害が発生した場合であっても、直ちに大阪バックアップセンターを立ち上げて、日銀ネットを通じた決済など、資金決済の円滑と金融市場の安定に必要な業務を確実に行う体制を構築しております。
  20. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  当然、日銀システムと各取引金融機関とのCPU接続というような範囲が広がってくると思いますので、日銀システムだけでなくて、取引金融機関側システムの改修なり変更という場合に、やっぱり日銀さんとしてもその中身についてはよくチェックをしていくという体制が必要なんだろうと思います。コンピューター側でいえばシステム監査ということかもしれませんが、その辺について、日銀考査の中にも入っているのかもしれませんが、今後どのようにかかわっていくお考えなのか、聞かせていただきたいと思います。
  21. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 例えば、今御指摘になりましたCPUで接続しているような先につきましては、私どもの支店などと同様、通信制御装置等並びに回線も二重化しているというふうな対策も講じております。  それから、今御指摘の考査等においてどういう対応をしているのかという点でございますけれども、私どもは、考査やモニタリングにおきまして必要に応じて、私ども自身のIT部門で培った人材というもの等活用しながら、第一に、システムが提供する機能、情報というのがきちんと正しいものが作られているのかというふうな点。それから第二に、いわゆる情報セキュリティー。例えば外部からの侵入であるとか内部の不正事件であるとか、そういうものが発生しやすいようなシステムになっていないかどうか。第三に、システム障害。例えばハードの機器であるとか、災害が生じた場合にきちんと適切な金融サービスの提供を継続できるかどうか、いわゆるバックアップ体制整備。  そういった点を中心にシステムの安全性、安定性、信頼性というものを確認するよう努めております。  また、このほかにも、金融機関経営統合や業務提携に伴うシステムの統合、共同化等に際しまして、銀行間の決済に支障を生ずるなど不測の事態を招かないよう適切な対策が取られているかとか、さらにはIT技術の革新に伴って、システム面でその技術革新に応じたいろんな適切な対策が取られているかという点についても留意しつつ、これからも十分チェックしてまいりたいというふうに思っております。
  22. 中島啓雄

    中島啓雄君 ありがとうございました。  システムの問題というのは、単にシステム部門の技術的な問題だけでなくて、やはり経営幹部が関心を持っていないといけないというのが恐らくみずほの教訓なんだろうと思いますが、そのようなことも踏まえて、今後とも日本の金融システムが少しでも信頼されるようにシステム構築に努力をしていただきたいと思います。  以上で終わります。  ありがとうございました。
  23. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党・新緑風会の大塚でございます。  今日は日銀総裁財務大臣金融担当大臣、お忙しいところをおいでいただきましてありがとうございます。  今日は日銀報告についての質疑ということですが、私も当委員会に所属させていただいてこれでほぼ一年たちますので、一年間議論させていただいたことを少し概観する意味も込めて包括的な質問をさせていただきたいなというふうに思っております。  まず最初に、御承知の方も多いと思いますが、六月にFRBが、日本の金融政策の九〇年代の失敗について、一体どういうことだったのかというレポートを出したわけですが、日銀自身も整理しておられますが、その中には四つほどポイントがあって、一番目には、持続的なデフレ局面の予想は難しいということをそのレポートは述べておりまして、二番目は、デフレを予防する金融緩和が大切だということを述べておりまして、三番目は、物価上昇率が低く金利がゼロに近づいた状態では伝統的な金融政策効果は低下するということを言い、そして四番目には、金融政策効果を上げるには財政一体化した政策が不可欠と、こんなようなポイントを述べておるわけですが、このレポートについての日銀のお考えをお伺いしたいと思います。答弁者はどなたでも結構です。
  24. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  今、大塚先生指摘のFRBのレポート、これは、一九九〇年代前半の日本経済を分析いたしまして、低インフレの下の経済におきましてどのような経済政策運営を行えばデフレを未然に防止できるのか、そういう問題意識で教訓を引き出そうとしたものでございます。  そのレポートの要旨でございますけれども、今、大塚先生がまとめられました四点に尽きているというふうに思います。デフレの原因、あるいはそのデフレからどうやって脱却するのかということにつきましては学界でもいろんな意見がございまして、必ずしもコンセンサスがあるわけではございませんけれども、ただ、このペーパー、いずれにしてもそうしたデフレ状態にならないようにすることが大事であるということを指摘しているという、そういうふうに理解しております。
  25. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。  FRBが九〇年代の日本の金融政策についてこうやって改めてペーパーをまとめるということは、九〇年代の日本において相当変わったことが、特異なことが起きていたということを表しているわけでありまして、私自身、確かに、株価が四万円近くになるような状況、そういう異常な状況で、背後で今日の不況の遠因となりますバブルみたいなことが起きていたというのは、そのときは、私もここまでのこととは思っていなかったし、多分、政策当局の御関係者みんなそうだと思うんです。  だからこそFRBも、一体日本でその当時何が起きていて、その後の政策として一体どういうことが間違いだったのかということを改めて分析をしようとしているわけですが、翻って、去年から私も一年間この委員会で、量的緩和であるとかゼロ金利政策、ほかの委員の皆様方も含めて、その功罪あるいは是非についていろいろ議論をさせていただいたんですが、これほどの量的緩和を行ったり、あるいは事実上のゼロ金利政策がこんな長期間続いているというのは、やはりある意味で非常に異常な状態、普通ではないわけです。  そうすると、九〇年前後のあの株価が四万円に届こうとしたときのことを振り返ってみると、そういうことが起きるときには、その背後でやはり現時点では予想も付かないようなことが何か起きているんじゃないかなというふうにどうしても考えざるを得ないんですが。  そこで、まず日銀総裁にお伺いしたいんですが、この長期間、量的緩和と事実上のゼロ金利政策を取っておられるわけですが、現時点における量的緩和並びにゼロ金利政策についての日銀の御評価をお伺いしたいと思います。
  26. 速水優

    参考人速水優君) 先ほども申しましたように、昨年来、内外の中央銀行の歴史に例を見ないような思い切った金融緩和を実施してまいりまして、その結果、金融市場においては強力な緩和効果が生じております。短期金利長めのものまでゼロに低下してきている、マネタリーベースは前年比三割弱の極めて高い伸びになっている、こういうような措置は、金融市場安定確保を通じて景気底割れを防止するという点で大きな役割を果たしてきたと思います。  しかしながら、経済が様々な構造問題を抱える下で、企業家計経済活動は十分に活発化するには至っていないのが現状だと思います。金融緩和が力強い効果を発揮するためにも、金融システムの強化や経済産業面構造改革を進めて民需を活性化させていくことが不可欠ではないかと思います。  私どもも随分金融を緩め、その都度申してきたことは、私どもはできる限り流動性を供給している、しかしこれが本当に効いてくるのは、構造改革等が効果を発揮して民間需要が、企業の設備投資にしてもあるいは民間の消費の仕方にしても、もう少し前向きになって需要が出てくるということが起こってきて初めて私どもの緩めていた金融というのは、そういうものの動きをサポートして本当の意味での金融緩和効果が出てくるのではないかというふうに考えております。そのことは私どもも、緩和の都度ステートメントで、やはり構造改革ということが実を結んでいくことがない限りなかなか効果は出ませんよということを申してきたつもりです。  ただ金を出すだけでは、これはそんなに効果があるものではありませんし、ここまで緩んでおりますと、ある外国の中央銀行総裁、非常に親しくしている人ですが、これ以上中央銀行が金を出すということは、ひもは引っ張るものであって、ひもの先に風船が付いていて、幾らひもを押してもこれは動かない、そんなものになっちゃいますよということを言った総裁がおります。そういう感じもしないではありません。そういうことを考えながら、小泉政権が早く構造改革一つ一つ作っていく。  構造改革という場合もいろいろ項目があると思うんです。ただ構造改革といったら、またかと国民も思われる方が多いのかと思いますけれども、私ども地方の支店を通じて調べたところではかなり進んできているように思うんです。そのことは諮問会議でも発表させていただいたんですけれども、何といってもやはり規制の緩和・撤廃をもっともっと続けていくこと、それによって民間の競争原理というものが自由に働き、グローバリゼーション、東西南北が一つの市場になっているわけですから、日本だけがそういうものを規制やあるいは補助でやっていったんではこれは相手にされなくなっていくわけですから、そういうものを同じ市場の同じ土俵の上に乗るように早く持っていく必要があると。その過程においていろんな競争が行われていくということが、企業家に刺激を与え、また消費者に新しい需要を作り出していかせることになっていくんじゃないか。また、民間でやれることは官はなるたけ手を引くようにしていく、これも小泉さんがよくおっしゃることですけれども、このこともまだまだやる余地は十分あるように私も思います。  あるいは、技術面で産学協同のようなことをもっとやってもらうというようなこととか、企業家にとってはやはりイノベーションといいますか、産学が協力して新しい技術なり需要のクリエーションをやっていくといったようなことがまだまだ行われていく必要があるように思います。その点は民主党の方からもひとつよろしく御協力いただきたいと。  それが出ていかないと、幾らお金を出しても経済が成長していかない。小泉さんがよく言われるように、改革なくして成長なしと。成長なくしてまた物価が正常化していくこともないというふうに私ども考えております。
  27. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。  これまでの量的緩和と事実上のゼロ金利政策の御評価として、景気底割れ防止にはなったけれども、しかし本当に経済を稼働させるような状況には至っていなくて、そのためには今の改革路線が必要で、しっかりそちらの方も、政治を含めてやるようにという日銀総裁からのメッセージだと受け取らさしていただきますが。  さて、先ほども申し上げましたように、今現在の評価はそういうことであったとしても、やはりこれだけ、あえて申し上げるとアブノーマルな金融緩和をやっている以上、その水面下では、今ここにいる皆様方、僕も含めて、想像も付かないことが起きている可能性があるなと。起きていないかもしれません、それは僕は分かりません、現時点では。  そこで、是非これは日銀総裁財務大臣にお伺いしたいんですが。といいますのは、今お手元に配らしていただきました参考資料、ちょっと一部出典が付いていなくて恐縮ですが、一枚目と四枚目は私が作りましたが、二枚目は、後で申し上げますが、これは朝日新聞の広告です。昭和十八年の広告です。三枚目は財務省さんの資料ですが。  一枚目をごらんいただくと、何か日銀総裁の風船のお話を聞いてちょうどよかったなと思ったんですが、ここにいらっしゃる委員の皆様方には釈迦に説法ですから多くは申し上げませんが、国債市場からいろんなルートで、下に向かっている太い線ですね、国債がどんどんどんどん流れ出てきていると。その代わり金として、白抜きの大きな矢印、これは資金が財政当局とそして歳出官庁からどんどん出ていっていると。これによって、その歳出官庁の先っぽには民間経済があるわけですから、民間経済が浮揚していけばいいわけですが、総裁おっしゃるように民間経済というものが風船だとすると、もう日銀が幾らオペでひもを上げても民間経済が浮揚しないという、ちょうどこんな絵になっているわけなんですが。  そこで、日銀総裁と、その後是非塩川大臣にもお伺いしたいんですが、三重野さんの時代も、当初は平成の鬼平と言われて、大変バブル退治に御貢献されたという御評価だったわけですが、今日に至っては、その後半はややその対応が過剰過ぎたんではないかという御評価もあり、それが今日の冒頭御説明したFRBのレポートなんかにもなっているわけなんですが。  総裁もあと任期一年余りを残すばかりとなられましたが、速水日銀総裁時代の日本経済一体何が起きていたのかというふうに評価されるとお考えになっておられるか。それは日銀だけで決められることではなくて、財務大臣、当然その裏には財政があるわけですから、財務大臣のお立場でも、一体この速水日銀総裁時代の五年間は日本経済にとって何が起きていたのかというふうに言われると予想されるか。これについて御両人に御意見をお伺いしたいと思います。  じゃ、総裁からお願いします。
  28. 速水優

    参考人速水優君) 今、よく九〇年代のことを失われた十年と、皆さんそう思っておられるんだと思います。私もそうだと思いますけれども。  こうやってこの十年間の経済成長を四半期ごとに取ってみますと、九二年ごろから下がって、それが九五年、六年と、四半期で見ますと年率四%から三%台で伸びているんですね。それが一年半近く続いて、それがまたすとんと落ちていく。  落ちていくのは、やっぱり山一とか、九六年、七年、金融システムが不安になっていくとか、あるいは、これまで公共投資や金利の急速な引下げで資金が出ていったのが、先ほど申し上げたように、資金は潤沢に出ても、それを使う民間の需要、企業家やあるいは消費者というものが先を見てなかなか新しいことをやっていこうとしない。もうベルリンの壁が崩れて東西南北は一つの市場になっているにもかかわらず、それを、規制の撤廃・緩和というのもスピードが遅かったということもあるのかもしれませんけれども、実体経済の方でなかなか改革が行われていっていない。こういうところへちょっとしたことが起こってきますと、これがまたすとんと落ちてしまうんですね。  これは九七年、八年とまたすとんと落ちたんですけれども、九九年になってまた上がったんです。四半期で見ますと、例えば二〇〇〇年一—三月は四%のベースで上がっているんですね。二四半期続いて、またすとんと落ちているんですけれども。今度が三度目の底をついたということになるのかどうか、まだアメリカの動きがよく分かりませんからあれですけれども、数字で見る限り、日本の経済は少し明るさを加えてきていることは事実であると思います。  二度目のときにも、やっぱりIT過剰というのは、これまた世界の市民にとっても企業家にとっても初めての経験であったと思うんですけれども、あれだけIT、ITと作って売りまくって、それが、気が付いてみたら過剰生産であり過剰在庫になっていた。それが二〇〇〇年の暮れに分かって、アメリカが慌てて金利を下げる。それがまた全世界に広がっていって、下げてしまったと。  私どもも二〇〇〇年の夏にはゼロ金利解除したんですね。これはずっと上がっていくだろうと思っておったわけですけれども、不幸か、ついてなかったというのですか、暮れになってそういうアメリカも予想していなかったようなIT生産の過剰ということが起こって、それが貿易を減らし、輸出を減らし、世界全体が不況になってしまった。そしてまた、それが少し終わろうとしているときにまたテロ事件が起こってしまったといったようなことで、二〇〇一年ずっと悪化していたのが、ここへ来て少し持ち直し始めたかなというのが現状でございます。  これから一年どうなっていくか分かりませんけれども中央銀行としましては、こういう流れの中で、中長期的な視野に立って経済の背後に流れる大きな変化をとらえることは適切な金融政策運営上極めて重要なことだと思います。  ここ数年の世界的な経済環境、今申し上げたようにIT分野を中心とした急速な技術革新が行われているということ、また経済の一段のグローバル化が進んだということ、そして金融の自由化の更なる進展といったような点が挙げられると思うんです。日本経済もこういった環境変化に直面しておるわけですけれども、更にここに不良債権問題というのが認知されて、いわゆるバブル時代の負の遺産が残っている、解決すべき課題がなお多く残っているということがはっきりしてきたわけでございます。  私としては、こういった環境変化やその下での課題を念頭に置きながら、物価の安定と信用秩序の維持という日本銀行の使命を達成すべく最大限の努力を行ってきたつもりでございます。今後もその姿勢を貫く方針であります。  ただ、その際に、現在の超金融緩和の背後で生じつつあるかもしれない企業家計の行動変化、これらについてはよく目を凝らして政策運営に誤りなきを期していきたいと思っております。金融面でも、流動性は潤沢に供給されていても、これが一面では市場の機能を一部低下させている、コール市場が小さくなっているというのはその一つの現れかもしれませんし、言い換えれば金利機能が若干後退しているということも言えるかもしれません。こういったことが長く続いていくということは余りいいことではないと私は思っております。  そういったのが今の、まだ終わっておりませんので、あと何か月か残っておりますけれども、私の考えていることであり経験してきたことでございます。  少し長くなりましたけれども、お許しください。
  29. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) お尋ねの趣旨はもう一つ私、分からぬのですけれども、まず日銀はどういうふうに変わってきたか、そして日銀政府との関係はどういう具合に現在なっておるか、日銀政策についてどう思うかと、こういうお尋ねだったと思っております。  私の感じで申しますと、まず日銀の変わりましたことは、この数年間の間に日銀の独立が法律によって保障されたということでございますからして、これは従来、政府日銀の関係は変わってきたということはこれは当然でございますが、しかしそれは、現在の役所並びに政治家の感覚からいいましたら、その点がもう実に明確にそうなったということはなかなか私は判断できないような、一種の過渡期のようなことでございますが。しかし、日銀当局としては独立性を維持しようということで必死になってその努力しておられることはよく分かりまして、我々もその努力を尊重していかないかぬという気持ちを持っております。  ついては、政策についての独立は、これは確保していくのは当然のことだと思いますが、いわゆる国策の方針といいましょうか、経済に対する国の方針という、基本方針というか流れといいますか、これにはかなり協力をしてもらわないかぬし、また現にそれは協力をしてもらったと、現在もしてもらっていると、私はそう思っております。  しかし、一方におきまして、日銀に対する政治家なり役所の認識というものは、先ほど言いましたように若干まだ、完全なヨーロッパ的な中央銀行としての認識とはちょっと違うような感じがしておるのでございまして、その間の切替えは十分にできていないような感じがしております。  それから、日銀の功績についてでありますけれども、私は今、日銀さんは非常にやりにくいだろうと思っておるんです。それはなぜかというと、こんなに低金利になってしまって金利ゼロとやったら、もう日銀中央銀行として金融政策を、日銀の使命の下において行うところのいわゆるプロパーな金融政策というのが行えないんじゃないかと思うのでございまして、それはこの低金利からくるところの必然的な状態なんだと思っておりますが。  ついては、オペレーターの方をうまく操作して、できるだけ金融機関との、破綻処理、いや、破綻の懸念ないように十分な対応を取っていただくと。これは私はもう非常にしっかりとその措置をしてもらっているということを私たちも認識しておるのであります。  しかし、一方におきまして、先ほども言った政治家の考え方が、どうも国債発行してどんどん景気刺激やったらいいじゃないかという安易な考え方に傾いておりますので、国債発行が湯水のように発行されてまいりました。その結果、私が非常に心配しておりますのは、国債の貨幣化というものが起こってきて、この図にございますように、これ、だれが書かれたのか、よく書いてあるなと思っておるんですが、国債がどんどんどんどんと下へ下へ下りていっておるという状況ですね。したがって、日銀金融緩和というのも、それがいずれは国債へ転化されていって国債の貨幣化という現象になってきておると。私はこれは非常に経済的に見てまずいなと思っておりますけれども、この是正はやはり我々も努力しなけりゃいけないんじゃないかと、こういうことを今痛感しておるようなところなんですが。  日銀としては、今この低金利の時代になって、速水さん、低金利のときに、一番気の毒な総裁だなと私は思うんですが、けれども、非常に一生懸命、日銀としては低金利の中におけるいわゆる中央銀行としての機能を行使するのに一生懸命やっていただいておると、私はそう思っております。
  30. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。  大変、本当に今後の議論あるいは日銀総裁時代を来年以降振り返るときに参考になる話が幾つかあったと思うんですが、総裁は、この金融緩和背景でひょっとしたら企業や消費者の行動パターンに変化が生じているかもしれないとおっしゃいました。そして二番目に、金利機能が低下しているかもしれないとおっしゃいました。塩川大臣は、日銀政府の関係が大きく変わった時期であったと。そして四番目には、日銀が、プロパーのとおっしゃいましたけれども、伝統的な金融政策はひょっとしたら行えなくなっている局面かもしれないとおっしゃいました。そして最後に、塩川大臣からこういう言葉が出てきて大変私はうれしいんですが、国債の貨幣化という現象が起きているかもしれないと。この国債の貨幣化というのは、恐らく次の日銀総裁、どなたか知りませんけれども、次の日銀総裁の任期においてはキーワードだと思います。国債の貨幣化、もう既に起きていますけれども、もっと端的な形で起きてくると思います。  そこで、この後は、財務大臣柳澤大臣にそれぞれのお立場でお考えをお伺いしながら、また日銀総裁に後でお伺いしたいんですが、いつも硬い話ばっかり聞いていますので、ちょっと今日はお楽しみいただこうと思いまして。(資料を示す)  大臣大臣は当然お名前御存じですよね。紀香さんですね。  ここに「国債って、いいかも。」と書いてあるのを御存じですか。「国債って、いいかも。」と書いてあるんですが。この「国債って、いいかも。」ってどういう意味ですかと財務省の方に聞きましたら、財務省の方が、それは、「いいかも」の「かも」はネギ、カモのカモですと言っているんですよ。いや、これは僕が言ったんじゃないですよ。財務省の方がそうおっしゃったんです。半分冗談でしょうけれども。でも、国債っていいカモだと。カモは出す方の国ですか。それとも買う方の人ですか。
  31. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 買う方ですよ、それは。これは平安言葉で、いいかもということは、いいじゃないかという意味ですよ。
  32. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いろんな解釈はあると思いますので別にとやかくは言いませんが、やっぱりこれから例の個人向け国債を出すために、個人に買ってもらいたいということでこれをお出しになったということですが、個人に買ってもらうためには、例の金利スワップのときの議論でも申し上げましたけれども、マーケットを本当によく財務省も理解しないと商品を売ることができないと、そのセールスマンとして売ることができない。  この間、地元の主婦の会合に行きましてこの話をしましたら、結構財テクやっているおば様方だったんですが、財務省はマーケットが分かっていないと言っていました。それはなぜかといえば、個人向け国債、買うのはだれだと思っている、それはだんなじゃなくて主婦だと。主婦に財布のひもを緩くさせたいと思ったら、紀香じゃなくて、キムタクという芸能人がいるんですけれども、キムタクを使えと。個人向け国債買ったらキムタクのカードが付いてくると言ったら主婦は一杯買うぞと言っていましたね。そんなことも、これは理財局国債課が男ばっかりで考えているからこういうことになるんですね。だけれども、これはこれで大変楽しませていただいているので私はいいんですけれども。  お手元に資料の(2)というのをごらんいただきたいんですが、これは昭和十八年の七月から八月の朝日新聞に載っていた国債の広告です。ちょっと一番大事なものを付けるのを忘れてしまいましたので、もし委員長のお許しがいただければ財務大臣に見ていただきたいんですが、もう一つ見付けてきた広告があって、後でお渡ししますけれども、「上野松坂屋 国債売場 一階」といって松坂屋のマークが入っているんです。この赤いところです。(資料を示す)
  33. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) はい、どうぞ。
  34. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いいですか。じゃ、ちょっと回していただければ。  それで、今日の新聞記事に、藤原紀香さんをコマーシャルに使ってまで国債を売らなくてはいけなくなった日本というのは本当に大変なことだということを、これはイタリアの新聞経済面で大きく取り上げていたと。女優、藤原紀香さんは同胞たちを国債投資に駆り立てなければならない、こんなことになってしまったのは大変なことだと言って同情するような記事が載っているんですよ。  そこで、財務大臣にお伺いしたいんですが、藤原紀香さんを動員してまで宣伝しないと、この資料(1)に戻りますけれども、風船が上に上がらないような状態国債をマネージしなくてはいけなくなっているこの状況について率直な印象をお伺いしたいんですが。
  35. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私は、藤原さんというこの方、好きで、これいいなと思って、それでこれにしてくれと言って頼んだんですが、人気いいですよ、これ。それで、非常に各紙の論評も、非常にさわやかで現在の日本の経済の苦境を忘れさせてくれるような感じがあると、こういうことを書いてあって、非常に良かったと思っておるんです。  それで、私は、これについて、何が何でも国債を売り込まにゃならぬという、そういう意味でこれをやっているんじゃないです。私は、一般国民の皆さん方に、郵便貯金も結構です、それから農協の預金も結構です、けれどもいろんな預金があるよと、いろんなお金の貯蓄があるよということをやっぱり知ってもらいたいという、そういう動機をひとつしておるんです。  それと併せて、今、個人が国債を持っておる、個人が所有しておる、二・五、六%なんですよ。これはほかの国に比べましても物すごく少ないんですね。というのは何でかといったら、国債を持つということが面倒くさい、どないしたらええのか分からぬと。どないして買うたらええのか、またどないして売ったらええのか、そういうのが分からぬと、市場が育っていないということ、いわゆる扱い方が育っていない。  このことをきっかけにして郵便局等に、国債をもっと簡単に、定期貯金と同じように、売った、買うた、簡単にしたらもっとこれはなじんでくれるんじゃないかと。金利、今一番いいですよ。ほかの定期貯金なんかよりこの方がうんといいんだから。そういうことも知ってもらいたいというので今キャンペーンをやっているんです。  ですから、大塚さんおっしゃるように、何が何でもこれ買ってくれなきゃ、戦時中のこんな、「撃ちてし止まむ」時代のことと違うんですから、だから私は、もうそういう認識でもってこれ見ないようにしていただきたいと思います。
  36. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 表面的には、金利が高くていい商品でっせと、こういうことになるわけですが、しかし大臣、昨日本会議でどういう御答弁されたか御記憶にあるかどうか分かりませんが、郵貯と国債は重大な関係があるんですというふうに本会議でおっしゃったんですね。だから、大臣、今、いや国債というのは、郵貯もある、銀行預金もある、いろいろあるけれども国債もいい金融商品なんだとおっしゃいましたけれども、この図(1)を見ていただければ分かるように、郵貯と国債は重大な関係があって、郵貯と国債は代替商品ではなくて、郵貯に回ったお金は結局国債を経由して上に上がっていくわけですよ。だから、銀行預金とかいろいろあって国債もいい商品ですという御説明は、私は、冒頭質問させていただいた、この異常な金融緩和背景で何が起きているかという構造部分については触れられなかった御答弁だというふうに感じております。今のお話。  大臣には、これは禅問答ですから、ずっとこれ以上やりませんけれども、確かに小泉総理も塩川大臣も軽妙で、非常に答弁はお上手で、ぱっと切り返されるのはもう本当にさすが大ベテランの大先輩であると思いますけれども、今の日本の経済状況は、そういう言い回しで事の本質を述べることを回避していては私はいけない状態だと思っています。  したがって、そうはいっても国会も多少は楽しくやらなきゃいけませんので、切り返していただくのは結構ですけれども、是非日銀総裁財務大臣も、この超金融緩和の数年間の間に背後で何が起きているかということについては是非よくお考えいただければ有り難いなと思っております。  そこで、ちょっと次の質問に移らせていただきますが、その国債のマネージをめぐって、今度国債課長の村尾さんがどうも替わられたみたいですけれども、村尾さんの時代に、一年間の間にいろいろ改革をされましたが、シ団引受けをやめてプライマリーディーラー制度を導入するなんということもいよいよ新聞に出るところまで来ましたけれども、これは私は、金融界から聞いていると、要するにシ団ももう引き受けたくないと、余力がないと、だからシ団の引受けシェアが下がっていると。そこに今度はプライマリーディーラー制度で、一定の比率を引き受けないとプライマリーディーラーから外すぞと、おまえたちはマーケットではスモールプレーヤーなんだというレッテルを張るぞといって、言わばブラフを掛けているのと一緒なんですよね。  これはだから、プライマリーディーラーとしてマーケットの地位を確立したいと思って、プライマリーディーラーになりたいというインセンティブがある、例えばアメリカのマーケットとは全然逆なんですよ。ならないと痛い目を見るぞと言っているのと同じで、競争原理を導入しているようで、実はかつての官から民への、高圧的とは言いませんけれども、上から下に向かった金融行政と何ら変わりはない。表面がプライマリーディーラー制度だというだけであってですね。  そこで、大臣ないしは副大臣にお伺いしたいんですが、プライマリーディーラー制度を含めて、この国債管理政策についてどういう御方針で今、運営しておられるのかについてお話しいただきたいと思います。
  37. 尾辻秀久

    ○副大臣尾辻秀久君) 御専門の先生に大変示唆に富んだ御質問をいただいておるところでございますし、また、ただいまの御趣旨は三月二十六日の御質問でも承っております。そうした中で、大変型どおりの答弁になりますけれども、お答えさせていただきたいと存じます。  国債管理政策におきましては、国債の確実かつ円滑な消化を図りますとともに、長期的な調達コストを抑制することが重要だと考えております。こうした観点から、市場のニーズ、動向を踏まえました年限構成、発行条件の設定、保有者層の多様化等に努めておりますほかに、先般成立させていただきました証券決済システム改革法におきましても、ストリップ債の導入や弾力的な買入れ消却の実施等を措置したところでございます。  そこで、今お話ございましたシ団制度の廃止や、これに代わります安定消化の仕組みとしてのいわゆるプライマリーディーラー制の導入につきましては、一部の報道は、今お話しのように具体的に二〇〇三年にもうシ団制度廃止とかそういう報道もございましたけれども、現時点では私どもは具体的なスケジュールを念頭に置いて検討を行っておるものではございませんことを改めて申し上げておきます。  いずれにいたしましても、引き続き市場の動向を十分踏まえて国債の安定消化に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  38. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 プライマリーディーラー制度の是非や仕組みについては今日は余り深く立ち入りませんが、この間の金利スワップも含めてマーケットオリエンテッドな国債管理政策をやりたいというお気持ちは分かりますが、よほど本当に細心の注意を払ってやらないとかなりゆがんだものを作っていくことになると思いますので、それだけお願いしておきます。  そこで、今度は資料(4)を、ちょっと(3)が飛んでいるんですが、(3)は後でお配りしますが、(4)をごらんいただくと、これは財務省がお作りになっている資料なので大臣もよくごらんになっていると思いますが、要は、歳出がどんどんどんどん増えていると。税収がバブルのころをピークに落ちていると。  今朝もうちの部会で、財務省の方がいらっしゃって、やはりだから増税をしなきゃいけないんだということを一生懸命言っておられたんですね、財務省の事務方の方がですね。  しかし、私は、ここは塩川大臣や竹中さんと意見は一緒なんですけれども、これは、歳出がこんなに、税収が下がるほど景気が悪い中でこんなに歳出が右上がりになっている。ちょっと今下がってきていますけれども、これが問題なんであって、歳出を削減することによってむしろ税負担を軽減するというような方向を目指していくべきだと私も思っています。だから、先行減税論大賛成で、まあうちの党内でもいろいろ議論はありますので、個人的な意見ですけれども。  そこで、歳出に関してちょっとお伺いしたいんですけれども、今日は内閣府と外務省に来ていただいているんですが、内閣府は、皆さんも御承知のとおり沖縄振興計画が新しくまとまりまして、この十年、新しい沖縄振興計画をスタートさせようとしています。  そこで、内閣府に、この沖縄振興計画で沖縄に幾ら財源を投入しようと希望しているのか。そして、非常に大きな話題が幾つもありますけれども、大学院大学を今度作ると言っていますけれども、この大学院大学に十五年度で幾ら予算を付けようとしているのか、この辺について内閣府に御答弁をお願いします。  簡単でいいです。
  39. 安達俊雄

    政府参考人安達俊雄君) 昨日、内閣総理大臣決定がされまして、新しい沖縄振興計画がスタートいたします。新計画におきましては、引き続き社会資本整備を進めるとともに、雇用の創出が最大の課題になっておりまして、産業の振興、人材育成等が重視されております。そういった計画の示す方向に沿って来年度の予算要求、今後の予算についても検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  従来の、復帰後三回にわたりまして十か年計画が進められてまいりましたが、いずれも十年間で幾らというような予算の決め方はしておりません。年々の財政状況の中で所要の要求をさせていただくという形で進めておるところでございます。  大学院大学につきましては、この立ち上げのための先行的なセミナーでございますとか、あるいは将来参画する研究者が先行的な共同研究を行うというような点を中心にしまして、そういったものを中心とした所要の予算要求をさせていただきたいというふうに考えております。
  40. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 資料(3)、配っていただけますか。  現時点での御答弁はそういうことになると思うんですけれども、私、塩川大臣、沖縄、今年何回も行っているんですけれども、おとといの夜も那覇にいまして、沖縄県庁の方と沖縄の地元の経済界の方と夜懇談していまして、沖縄振興計画で十五年度の予算にいよいよまた予算が付き始めるけれども、今どういう状況ですかというふうに聞きましたら、僕が言ったんじゃないですよ、県庁の人が言ったんですよ、予算がこれから配分されるので、とにかくアイデアがないと困るから、何でもいいからアイデアを出すように、一人二本とか言われて、それに予算を付けると言っているんですよ。そんな状況ですよ。  それに加えて、大学院大学については、六月二十九日、つい二週間前ですが、尾身さんが現地で講演をした資料の中には建設費八百億円と書いてありますよ。勝手にこういうものが、これは財務省、相談受けていますか。年間運営費二百億。  そして、今お配りした新聞記事、日刊ゲンダイさんですからいろいろ正確じゃない部分もありますが、泡瀬の干潟という大変重要な干潟を埋め立てるのに五百億円掛けると。もうこれ大はしゃぎしているわけですけれども、現地は。これは、そこを埋め立てて工場団地にすると言っていますけれども、私、現地を見てきましたけれども、全然埋まってない工場団地ってほかに幾らでもあるんですよ。新たにまたそこを埋め立てるのに五百億円と言っている。  それから、鳴り物入りでスタートしたフリー・トレード・ゾーンという那覇空港のすぐそばも見てきましたけれども、もうほとんどがらがらですよ、中。そこ、元々だれの土地だったか知りませんけれども、そこにそういうものを建てて大変な歳出を付けたわけですけれども、こんなことをやっていたら、さっきの資料(1)に戻りますけれども、歳出がどこかに抜けていっちゃって、幾ら日銀金融緩和やっても、国債を最終的にファイナンスしても、どこかに消えていっちゃうんですよ。  だから、私は、歳出についてはもっともっと、前から申し上げていますけれども、切り込む余地はあって、意味のある公共事業とか本当に経済効果のあるもの、あるいは国民の皆さんがその歳出によって安心が高まって財布のひもが緩むような、こういうものはどんどんやっていけばいいと思いますけれども一体どうして泡瀬の干潟を、泡瀬と急に言っても大臣もお分かりにならないと思いますが、要は大変自然の豊かなところなんですよ。そこを埋め立てて五百億掛けて、大学院大学を今度一千億とか言って尾身さんが勝手に紙配っている。こんなことを歳出官庁が勝手にやっているから日本の国はまずいことになっているわけですよね。  そこで、外務省にもちょっとお伺いしたいんですが、小泉さん、この間のサミットでアフリカに何か経済支援するというふうに約束してきたらしいですが、どういう内容を約束してきたんでしょうか。
  41. 西田恒夫

    政府参考人西田恒夫君) お答えをいたします。  先般のサミットで総理が発表していただきましたイニシアチブは、本年度より五年間、ODA予算の中で二千五百億円以上を低所得国における教育、具体的には、校舎を建設する、あるいは機材を供与する、教員、専門家の派遣、研修員等の受入れなどを今後実施していくという内容でございます。
  42. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 総理大臣が外遊してそういう口約束をしてくることは過去の日本においては日常茶飯事だったわけですが、これは財務省は了解しているわけですか。国庫債務負担行為ですよね。  外務省でもいいですが、お答えは。
  43. 西田恒夫

    政府参考人西田恒夫君) ただいまの御質問ですが、このような形で対外的にコミットをする際、もちろん財務当局、それから今般でいいますれば文部科学省と十分協議をしまして、その下で発表させていただいております。
  44. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 十分に協議をしたというお話ですので、協議の証拠について資料を要求します。どのような協議をして二千五百億の約束をしてきたのか、資料を出してください。  委員長、資料要求します。
  45. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 理事会で協議をいたします。
  46. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 財務大臣に、協議を受けていたかということについて。
  47. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 個々の問題については協議を受けてはおりませんけれども、要するに、発展途上国でございますか、あるいは新興国に対する今後の経済支援、主として貧困対策、そして教育対策、それから保健に対して各国とも協力して取り組んでいこうと、この約束はできておりまして、ついては、個々の中身についてまだ具体的なものは決めていない。  したがって、小泉総理の方も、国際的世論としてそういう枠組みが作られていくであろう、まだできておりませんが、できていくであろうその枠組みに対しては積極的に日本として、分に応じたということは言っておりますが、分に応じた協力はしていくことは当然であると、こういうことを言っておるので、個々の予算の、これはどれだけ使いますかと、したがって幾らの見積もりをしろという、そういうことの話はまだ来ておりません。
  48. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いずれにしても、塩川大臣、本当にお願いしたいんですけれども財務大臣がしっかりしていただかないと、もう、ざるのように歳出は、笑っていただいているんですが、笑っている場合じゃないと思うんですけれども、ざるのように国民の税金はどこか行っちゃいますので。是非、財務省は税務当局、主税と主計がありますけれども、主税の皆さんが税収確保のために増収だなんて頑張らなくていいですから、その分の人員は主計局に配置してがんがんに査定するということをやっていただかないと、結局、伝統的な金融政策をやっている場合じゃない、そういう局面じゃないかもしれないというふうに塩川大臣さっきおっしゃいましたが、日銀総裁速水総裁のあと残り一年ないしは次の日銀総裁時代に、そういう変化の下で非常に極端な金融政策が行われる羽目になるのではないかというふうに懸念するものでありますので、是非財務大臣に頑張っていただきたいなと、こう思っております。  さて、時間もあと十分になりましたので、柳澤大臣、大変お待たせして恐縮でございました。  ちょっと金融の話に戻りますが、この数年間の超金融緩和時代に背後で起きてきたことの一つとして、この資料(1)でごらんいただいてお分かりのように、柳澤大臣の御担当はここの金融機関の部分ですね。柳澤大臣にマクロのお話をお伺いしても、多分、マクロは私の所管ではないという御回答になるだろうなと思いましてあえて今までお伺いしなかったんですが、ミクロの金融機関の産業政策をどうするかということが非常に大きな、この五年間、十年間の大きなテーマであることは皆さん特に異論はないと思いますが。  ちょうど昨日、地域金融機関合併促進、またその合併促進に向けて公的資金投入するということについて記者発表されましたが、どういう御方針なのかについて簡単にお伺いしたいと思います。
  49. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) ちょっと御質問の何というか要点がつかみ切れなかったわけですけれども、第一点の、金融機関企業への融資を十分疎通させていないとバッテンが書かれたわけですけれども、この問題は、私、やはり構造的な面がそこに存在しているというふうに考えても実はおります。  それは要するに、たまたまそれが同時期に起こってしまったわけですけれども企業がバブル期に大変な過剰債務を負って過大な投資をしたと。その後始末をしなきゃいけない。これが金融機関にとっての不良債権ということになったという面も当然あるわけですが、加えまして、この機に、要するに伝統的な日本の得意とする分野の産業が中国を始めとするアジア諸国の急速な追い上げを受けて、やっぱり空洞化という現象に一番端的に表れているように、なかなか存立が難しくなったということが一つあろうと思います。  そこで、企業としては新しい産業に進出をしなければならないわけですけれども、新しい産業という場合には、これは要するに本当に新しい、全世界的に見ても新しい分野ということになりますので、従来、日本がキャッチアップの段階にいたときの新しい分野と違って言わばモデルがないわけです。そういう意味で、非常にそこもまたリスクの大きい分野になっている。つまり、バブルの後遺症、加えて伝統的な日本の比較優位の産業が今やその優位性を脅かされているという現象。それから、新規の分野は当然のことながら本当にワールドワイドにフロンティアでございますのでリスクは非常に大きい。そういう環境の中に企業が置かれていて、これに対して金融がどういう形で資金の疎通を実現していくか、こういう問題になっているんだろうと私は思っております。  そういう意味合いで、金融機関が今までいわゆる産業銀行モデルというようなビジネスモデルで言わば企業リスクをほとんど背負ってしまう、こういう形でやってきたという構造、これに限界が生まれてきているということが、今日、日本の金融が非常に企業との間でなかなか難しい状況に立ち至っている根本的な構造問題ではないのかと、こういうような考え方をいたしております。  加えまして、今、後半部分で大塚委員から御質疑のあった、昨日晩方発表した、特に地方の金融機関合併等促進策でございますけれども、地方の銀行につきましては、今言ったような同じような問題が率直に言ってあるというふうに私ども思っておりますけれども、同時にそこに、従来の産業銀行モデルと申しますか、そういうリレーションシップ型のビジネスモデルというものはなお有効に働く分野が私どもはあるだろうと、存続するだろう、このように考えておりまして、そういうようないろんなことを勘案する中で、しかし、それにもかかわらず地方の金融機関ももっと強くなっていかなきゃいけない、そういう強くなっていく一つの方策として、ここにありますように、合併等というものが選ばれる場合も当然あるだろうと。  それに対しては、それが選ばれる場合には、できるだけそれが円滑にできるように、そういう施策の面でこれから、昨日メニューを一応発表させていただきましたので、これからまた当委員会などの御議論ども参考にしながら最終的な詰めをやっていきたい、こんな考え方を持っているということを答えさせていただきます。
  50. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 そうすると、今のお話ですと、地域金融機関を中心に経営力強化をしなくてはいけない余地がまだあるので、ペイオフについては、大臣は再延期賛成ということでよろしいですか。
  51. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) 私は、ペイオフはやはり金融機関構造改革を迫っていくものだというように思っております。したがって、構造改革の一環だと。つまり、預金者までが言わば非常に強い監視の目を金融機関に向けるわけでございまして、そういう中で、そうしたある種半ば猜疑心を向ける預金者に、いや、そんなことないです、我々の金融機関、信頼ができる金融機関なんですというふうに答えていくためには、一体金融機関はどういう方向に自分たち経営戦略を展開していくんだということを考えざるを得ない。そういう場合にもです、これは。別にそこのところ関係させて考えたわけではないわけですけれども、そういう場合にもこの政策をやっぱり用意しておくということが必要だろうと考えておりまして、私は、これまでも非常に厳しい中を、定期性の預金のペイオフに踏み切るのだってやっぱり相当の決心が要ったわけですが、ここは構造改革の中でやろうと、こういうふうに決断しましてやらせていただいたわけです。  私どもはしかし、これはそういうペイオフで、テーマがペイオフであろうとなかろうと関係ないんですが、しかしながら我々はやっぱり金融システムの安定ということは常に念頭に置かなきゃいけないという意味で、私どもこうした問題を論ずるときには、我々もやはり預金の動向というのはしっかり見させていただいていますよということは付け加えて、いたずらな不安を、ただもうやみくもでやるというようなことで不安になるというようなことはないように、しかし、金融危機なんて起こさせないという固い決心持っていますけれども、そういうことは言い添えるということにさせていただいておると、こういうことです。
  52. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 柳澤大臣はペイオフ解禁再延期には反対で、来年からやるという御方針だったと思いますが、今のお話お伺いしているとちょっとトーンが後退したようにも聞こえますが、一応ちょっと私なりの考え方を最後、資料(5)に基づいて意見を述べさせていただいて、質問を終わらせていただきます。  大臣、今そのペイオフは構造改革の一環だとおっしゃいましたが、再三この委員会でも申し上げていますように、政策は目的に合った手段を選ばなくちゃいけなくて、ペイオフというのは私は必ずしも構造改革、まあ遠い意味では構造改革かもしれませんけれども、要は、金融機関の破綻についてある程度預金者も自己責任を負ってくださいというシステムを作ると。そういう意味では構造改革かもしれませんが。  そこで、この資料(5)の上のマトリックスを見ていただくとお分かりのように、ペイオフを解禁するかしないかということと、今特に与党の重鎮の先生方がおっしゃっているように、今解禁したら金融機関経営が危なくなるぞと言っている話は、これは全然考える軸が違っていると思うんですね。金融機関経営健全化するのは、ペイオフを再延期してやることではないんです。それは、再三この委員会でも議論になっているように、公的資金を投入しても何してもいいですよ、要はきちっとした金融機関経営健全化をして図るものであって、ペイオフは軸が違うということを申し上げます。  そこで、そうすると二掛ける二の四通りの政策の選択肢があるんですが、与党の重鎮の先生方がおっしゃっているのは、金融機関経営についてここで余り抜本的なメスを入れることなく、そういう状態だからちょっと全面解禁を延期してくれというこのBに入るところの主張をしておるんですね。ところが、私ども民主党は、ややその金融機関経営も一気に健全化させて、大臣がおっしゃるようにペイオフはきちっと解禁して、国民にもそういう構造改革を知らしめるべきではないかという意味でCのところを言っているわけです。  ただ、うちの党の中でも多分いろいろこれから議論が出てくると思いますので、民主党というふうには言えないと思いますが、小泉さんに言っておいていただきたいのは、小泉さんはこのAのところを言っているんですよ。金融機関健全化については余り詳しいことをおっしゃらずに、あるいはどれだけ情報をお持ちになっているか分からないけれども、そこについてはわしゃ知らぬと、柳澤さんが大丈夫だと言っているんだから大丈夫だろうと、ペイオフについては解禁すると言ったら解禁するんだと言ってこのAのところを言っているわけですけれども、Aというのは論理矛盾ですね。  Dのところはある意味意味があります。これは、経営健全化はちゃんとやりますと、やった上で、ペイオフはちょっと今は時期尚早だから延ばさせてくださいという意味では、僕はDは意味があると思います。小泉さんの言っていることがちょっとおかしいということを是非柳澤大臣も小泉さんに言っていただきたいと。  あと一つ表が残りましたが、またこれは次の機会に質問をさせていただきます。終わらせていただきます。
  53. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 最初に一問だけ日銀総裁にお伺いしたいと思いますが、御報告を先週聞かせていただきましたが、景気は下げ止まりに向けた動きが見られると。しかし同時に、設備投資が引き続き減少している、個人消費も全体として弱めの動きが続いていると、ここは注意しろということをおっしゃっておられます。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  結局、外需が少し回復の方向にあるために、日本経済もそろそろ下げ止まりかなというのが詰めて言えば御判断だと思いますが、ここが今日本の一番の問題だと思うんですね。他方、アメリカ経済については、ちょっとどういうふうに議論が定まっているのか分かりませんけれども、かなり先行きに対する不安感もあるわけでありまして、それに引っ張られて株価も方向を定めない展開をしているというのが今日の状況だと思うんです。ですから私は、やはり個人消費が回復をする、それから設備投資も、引き続き減少ではなくて、設備投資も出てくるという状況までいかないと、本当に次の手が打てない。  先週は、先々週でしたか、私も税の議論をさせていただきまして、これ以上の財政の問題というのは放置できないという議論をいたしましたけれども、その議論をするにせよ、経済というこの足下が定まらない限り本当の議論ができないということであります。これは私ども質疑をする立場でも大変思い悩むわけですから、それはもう政策当局、責任のある皆様方は本当に悩んでおられると思うんですね。ですけれども、しかしどの問題を取っても、不良債権の処理の問題は今日取り上げませんけれども、やはり基本は、景気が下げ止まらない、デフレが止まらない、土地と株の値段が底を打たない、そこにどうしてもすべて帰着していくわけですから、私はやはり、今の政策の優先順位として、個人消費の回復、それから国内の設備投資の回復というところをどうしても最優先事項として取り組んでいくべきではないかと思うんです。  そこで、日銀総裁は、そういうこれからの景気に対する取組についてどういうお考えを持っておられるか、今までの質疑でほぼ明らかにはなっておりますけれども、私は総裁にもっと頑張ってほしいという意味でもう一度伺いたいわけです。  といいますのは、金融政策はもうこれ以上やることがないという御判断だと思うんです。あえて言うとすれば、今朝の議論でも、物価安定ターゲット論ですか、が出てインフレターゲット論が出ておりましたが、私もまだそういう政策があり得るのかという疑問はないではありません。物価水準がゼロないしそれ以上に安定的になるまでは量的緩和を続けるというのは一つターゲットの設定だと思いますけれども、あと何があるのかといえば、例えば、これを一年以内にやりますとか、二年以内にやりますとかいう期限の設定等、もう少し、ゼロないしそれ以上の安定したレベルというのを、二%というか、一・五%というか、そういう話になるのかなという気はいたしますけれども、いずれにせよ、日銀としてはこれ以上の政策を取る気はないと、もうこれは金融政策はここで限界だということであれば、それならば、今この日本の経済が直面している問題に対して、これは金融政策の問題じゃないということで突き放されるんではなくて、やはり日本の経済動向に基本的には共同責任を持っておられる日銀総裁として、もう一歩踏み込んだお考えなり対応なりを取っていただけないかという希望があるわけであります。  先ほど、構造改革なくして景気回復なしとおっしゃいました。ある意味ではそうだと思うんですけれども、しかし、経済の当面の状況に対応するのに構造改革だけを持ってくるというのは、いかにも無策という感じを受けざるを得ないわけでありまして、それが例えば、一年余裕がある、二年余裕があるということであればいいわけですけれども、もうちまたには、これから株価が暴落するよと、そして十月は金融危機の再来だという話だってかなりまじめな議論として出てきているわけですから、別にそれにくみするわけではありませんけれども、やはり消費が出てこない、投資が出てこない、つまり国内がまだその気になっていないという状況に対して、景気に責任を持たれる日銀総裁として、ひとつ踏み込んだ対応をお願いできないか。それは財政当局に対する注文でもいい、あるいは内閣全体に対する注文でもいいわけですけれども、いや、それは構造改革だよという言い方は余りにも一般的過ぎて、具体的な注文にはなっていないというふうに思うものですから、あえてその一問だけお伺いしたいと思います。
  54. 速水優

    参考人速水優君) 先ほど来申しておりますように、今、日本経済は確かに輸出がかなり伸びを示して、生産も持ち直しております。経済が様々な構造問題を抱える下で、企業の投資とか家計支出といったようなものがまだ十分活発化していないということも先ほど申し上げたとおりでございますし、また海外情勢、アメリカが一時かなり明るくなってきたわけですけれども、最近の動きを見ておりますと、アメリカの株が下がったりあるいはドルが全面的にドル安になってきたりしておりますところを見ますと、これからどういうふうに向かっていくかというのは、この時点でなかなか見極め難いところだと思います。  したがいまして、景気の本格的な回復を実現していくために、今私どもは、民間活力を引き出すような税制の改革とか、先般政府が作成された経済活性化策の具体化とか、こういった経済産業面での構造改革を力強く進めていっていただくことがまず第一だと思います。それと同時に、不良債権処理を通じて金融システムの強化・安定を図っていくこともこれは急ぐべきことだと思います。  これらが具体的に言えることかもしれませんけれども、私どもは、先ほど来先生もおっしゃいましたように、構造改革ができて、進んで初めて民間の需要が進んでいくんであって、そのときに私どもの十分に供給してきた流動性緩和というものが、これが実を結んでいくんだろうというふうに期待をしておる次第でございます。
  55. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 先ほど大塚委員が取り上げられましたFRBの分析の一番最後に、このFRBのシミュレーションによると、追加的な財政支出で、これが何か九三から九五年の三年間でGDPの〇・五から一%があればということでしょうけれども、それでもデフレを回避できたという分析があります。  これは、FRBというのはやはり日本銀行と同じように金融政策を所管しているところだろうと思いますが、やはり財政についても発言は、発言というか、少なくとも分析をしてそれを外に出しているわけでありまして、私は、税の話をすると歳出の話がしにくくなるわけですけれども、同じ公共事業費でも、あえて地方の名前は言いませんけれども、例えば埼玉県であれば幾らでも社会資本の不足している分野というのはあるわけですし、もう通勤地獄もあれば、物すごい交通ラッシュがあるわけでありまして、私は、例えば公共事業費でも、配分の問題をもっとまじめに考えれば、これを活用していく方法だってあるわけですから、構造改革速水総裁がおっしゃる中にはそれも入っていると思いますけれども、それを同時的に進めながら、基本はやっぱりこの経済の安定というところにあると思いますので、ひとつ総裁のより一層の御発言なり行動なりを御期待申し上げたいと思います。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕  それから次に、地元の中小企業の現場からの要請が幾つも来ているものですから、その中から柳澤担当大臣に御質問申し上げたいと思います。  大塚委員が同じくペイオフについてお触れになっておられまして、健全化断行、全面解禁反対というのはあり得るということを御指摘されましたが、私の選挙区の中で川口市という中小企業の典型的な町がございます。そこに青木信用金庫とそれから川口信用金庫という二つの信用金庫がもう長い歴史を持ってしのぎを削ってきたわけでありますが、これが大同合併をするということになりまして、合併のお互いの合意が完成したわけであります。  その二人の理事長がそろって私のところに参りまして、合併報告ですということなんですけれども、しかし、その主眼はペイオフを何とかしてくださいということでありまして、定期性預金のペイオフ解禁後、定期性預金から普通預金、決済性預金へのシフトが止まらないと。かなりの金額を両行とも全く同じ傾向で示しておりましたけれども、これが全面解禁になるとどうなるかといいますと、彼らの予測でありますけれども、やはり都市銀行、大銀行にシフトしていくであろうと。とすれば、この中小金融機関の資金量、預金量そのものが減っていく、これは町に対する中小企業金融の量的な枯渇にもつながると、そういう危機感を表明しておられたわけですが、昨日の金融庁の発表では、一つ対策として、合併を推進しながら構造改革といいますか経営の強化を図っていくというお考えが出ておりますが、ここは正に、この二つが合併をするという前提でも、預金の流出、預金のシフトというのが止まらないと。彼らの心配は、これが今度は外に出ていくことだということに相なるわけでありまして、よって、まだ早いですと。じゃ、いつまでこのペイオフ解禁を延ばせばいいんですかという質問には、いや、そこが一番の問題で、どこまでか我々も見当が付きませんと。  ですから、それは彼らからすれば、金融状況が安定して、不良債権処理だとかペイオフだとか、そういうことがもう毎日毎日話題に上らないような状況になってからということだと思うんですけれども、しかし金融庁からいえば、経営の問題が安定してからということなのかもしれません。私も答えを今持っているわけではありませんが、このペイオフというのが構造改革の一環だというのは私も賛成なんですけれども、賛成した上で、大いに悩みながら、今日はこの質問をぶつけて大臣の御見解を承ってみたいということであります。よろしくお願いいたします。
  56. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) 浜田先生も悩みながらということでございますので、先ほど私がちょっと答弁をしたら、大塚委員の方は、何か決意が揺らいでいるんじゃないかなんという、少し、何というか、先読みというか深読みというか、そういうようなお話でありましたが、決してそういうことはございません。  私は、定期性預金もやったわけですよね。それでみんな緊張して今の合併お話も出てきているわけですね。でございますから、私はやっぱり、金融機関はもっと、不良債権の処理等の措置を終えて、そういうところから脱却をして、もっと強い頼りがいのある金融機関になっていくというこの努力を強烈にやってもらいたいと正直言って思っております。  そういうことでございまして、何というか、ほどほどと言っては、これは本当正直な話がなかなか言えないんでございますけれども、あんな、この間も冷然と何とか、中小企業に対する金融などは、どうでもいいと言ってはなんですが、余り重要視していないかのごとき発言があったというような論評もいただいちゃったりしていますので、私、そんな冷然なんというようなことを心掛けているわけでも何でもないんでございますが、要するに、我々、本当に中小企業金融地域金融というものが今後とも存在する、こういうように思っているわけでございまして、それをきちっと存続していくためにもやっぱり強い金融機関になっていただきたい、こういうことを望んでいるわけでございます。  そのためには、率直に言って、やっぱり早々と政府保証が欲しいよということを、そういうことをやっていたんでは、そういう真剣な努力というのをやっぱりする気持ちというのが緩んでしまうというのは、これは人情だろうと思うんですよね。私は、やっぱり徹底的に努力をしていただいて、その中から曙光を見出していただくようにお願いしたいということを申しているというのが率直な私の今の気持ちなのでございます。
  57. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 金融検査マニュアルに中小金融向けの別冊をお作りになったというのは、私は大変いい施策だったと思っておりますし、それを評価する声はちまたにたくさんございます。やはり、大銀行とそれから本当の零細個人企業を相手にしている中小金融機関とでは、いろいろと実態に即した取扱いの相違があってもおかしくはないというふうに思っておりますので、合理化努力を進めつつ、それをうまく誘導しつつ、是非実態をよく御判断いただきたいということを申し上げたいと思います。  次に、埼玉県議会で中小金融に関する決議がなされまして、これが金融庁にも届いていると思いますけれども、私どもに要請がございました。要するに、自殺が増えておる、中小企業者の主のですね、それはそのようであります。埼玉県も本当の零細中小企業の多い都市でありますから、県議会の方々もそれはひしひしと感じているんだと思います。  それでその中で、事業主保証というのを必ず取る、それは金融庁が奨励しているのかと。金融検査が入ったときに、事業主の保証もない、そういう保証の十分でないやつは不良債権に見られちゃうんじゃないか、まあそういうことはないというふうに私も言っておりますけれども、そういう心配もあります。  私の身近に起きた例でも、長年の支援者が、文房具屋なんですけれども、土地と家を取られちゃうよと、どうしたんだということで私のところへ泣き込んで来られました。息子が企業を起こして倒産をしたと。株式会社でした。それで、第三者保証をその文房具屋のおやじがさせられているわけです。それでも足らないものですから物上担保を、その土地と家を取られているわけですね。そして、倒産した金額、大した金額じゃないんですけれども、これを三年以内で返せという話になって、保証人にですよ。息子はもう取り立ててもしようがないということでしょうからみんなおやじに来ているわけですが。それで、三年で返すんだったら土地と家を処分せざるを得ないというような状況だということで御相談がありました。そういう話というのは身近にあります。それがもっと追い込まれていくと、本当に自殺するんですよ。  ですから、私はそういう、少なくとも中小企業であれ零細企業であれ、これは有限会社であれ、有限責任というシステムを通じて事業の遂行を円滑にしようという、そういう会社法の考え方に基づくわけですから、少しその辺りは、何といいますか、今の金融慣行、そうじゃなかったら貸さないと言われりゃそれだけになっちゃうわけですけれども、もうちょっと、情のあると言うと言い過ぎですけれども、やり方はないものか。破産法を適用されますと、何ですか、全部取って、一月分の生活費ぐらい、つまり二十万円ぐらいまでは勘弁してくれる。だから、もう本格的に全部身ぐるみはがれるんですね。  だからそれが、企業経営というのは、やっぱり経済活動というのがなかったら世の中成り立たないんですから、どういうリスクをどういう形で取るかという問題だと思いますけれども、今のこの県議会からの要請について、どういうふうにお受け止めいただけるか、お聞かせいただきたいと思います。
  58. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) 個人保証の徴求というのが画一的に行われているんではないかということに関連いたしましては、確かに、全国銀行協会、全銀協が制定しました銀行取引約定書ひな形の中に、保証人の記名捺印の欄を設けて、債務者本人と保証人が連帯して保証を負うというような規定があったわけでございますが、これにつきましては平成十二年の四月に廃止をいたしております。したがって、個別の判断ということになっておるということでございます。  そういう上で、しかしそれにもかかわらず、個人の資産というもの、法人を持っていても個人の資産というものがバックアップとして勘定に入っているということについてどう考えるかということですが、ここは大変難しいところで、この前の検査マニュアルのときには、皆さん、背景にある個人の資産もよく考えて、会社の債務の状態だけじゃなくひとつ考えろということで我々そっちの方に行ったわけでございますが、今度は、いざ保全だとか回収だとかということになったらそれは別と考えろと。ちょっといいとこ取りをされるような感じもなきにしもあらずでございまして、やっぱりそれですとなかなか難しいということだろうと思うんです。  要するに、ビジネスモデルにこういうのがあるんだそうですが、人的なリレーションシップを非常に重視したビジネスをしていく、そういうビジネスモデルがあるということですが、そういう場合には、有限会社であるとかあるいは小規模な法人の場合にもやっぱり経営者の資産というものもよく考えてやる。  したがって、例えばその事業の業況が少し当然景況で波を打つわけですけれども、その悪い場合には、それだけだったらもう資産の査定を変えたり引き当てを変えたり、あるいは金利を上乗せしたりということをすぐそこに直結していくんだけれども、そうすると、資産というものを考えると、そこはやっぱりある程度長い目で見ていけるというような、ずばりそういうパターンがあるというまでは私言い切れませんけれども、しかし考え方としてそういう考え方があって、そういうのはリレーションシップを重視したモデルということでございまして、やっぱりリレーションシップビジネスモデルの場合には、そこはそういう格好で、リスクであるとかあるいはリスクを計った債務者区分であるとかというところに、それが勘定に入るということなんですね。そのことによって、いろいろ今言ったような局面での扱いが少し配慮された形になる、こういうことでございます。  その背景には、最後のとどのつまりのところではやっぱりそれが物を言うということでないと、やっぱりそこはちょっと金融機関としての健全性ということに問題がまた戻ってきてしまうということがあるわけでして、是非いろいろと今後とも御教示はいただきたいわけですが、委員におかれましても、その辺りの我々の方の一つの筋ということについても御理解を賜りたい、このように思います。
  59. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 それは、いいとこ取りであるというのは分かった上で申し上げているわけでありまして、いいとこ取りでいいんですよ。一番中小企業者にとっていい形を、やっぱりいろいろな矛盾を乗り越えながら考えてほしいということでありますので、お願いいたします。  それで、一つの方向として、今、金融庁の方でもいろいろお考えのようですけれども、保証を取る、物的保証、人的保証を取るとはほかの形でリスクを取る、金利ですよね。だから、今の場合ですと、担保もない事業者でもお金を借りられるというのは、事業の内容をよく吟味してもらうわけですから、その事業の内容の吟味の仕方で、リスクがどのぐらいあるかで、それを金利で表現してもらう。だから、別に二、三%の金利じゃなくて、六、七%の金利だっていいという事業者はあり得るわけでありまして、一般の金融機関が駄目ならばいきなりあとは二九%の世界になるというのが、そして最後は自殺に追い込まれるというのが現状ですから、その辺りは、金融庁がどこまでおやりになれるかという権限の問題もありますけれども、中小企業金融の在り方ということで、そういう金利による多様な貸付けを実現させていくとか、いろいろ御工夫いただきたいというふうに思います。この質問はこれだけです。  最後に、あと四分ありますから、昨日から郵政三事業の公社化法が審議が始まったわけですけれども、私は、議論が十分なされていないなというふうに思うのは、郵便貯金とそれから簡保資金の扱いでありまして、あれを財政投融資制度から切り離すという法律の改正案のときにここで議論いたしました。  あんなばかげた制度はないよということを私は口を極めて申し上げたわけですけれども、郵便局長さんに一生懸命貯金を集めさせて、それがすさまじい巨額なものになっている。それを何に使うんだと言ったら、自主運用ですと、しかもそれは総務大臣の自主運用ですと。そんなばかげた制度がありますかということをここで、宮澤大臣でしたけれども、口を極めて申し上げた。  そのときの御答弁が振るっていまして、私ちょっと落選していましたから、あなたのいないときにいろんな変なことが起きたんですというのが宮澤さんの御答弁でありまして、それは極めて無責任なことになるわけでありまして、だからそれを放置していいということにはなりません。  ですから、私、二百四十兆プラス百二十兆ですか、三百六十兆円もの巨大資金が目的なしに、安定、安全を旨として、ファンドとして、しかも国が管理している、そんなばかげた制度ないですよね。だから、日本の金融マーケットというのは一体どういうマーケットなんだと。それをよく平気な顔で柳澤さんは見ていらっしゃるなと、あるいは日銀総裁も見ていらっしゃるなというのが私の思いなんですよ。  それをせめて財政資金として財政投融資に使っているというんならまだいいですよ。それは別の良しあしで判断すればいいわけだけれども、それは財政資金じゃありませんと言っているわけですから。  そしたら、昨日の答弁、昨日もちょっとその問題が出ました。本会議の答弁を伺っていましたら、安全、安定に運用しますと。安全、安定に運用したら何を買うかというと、やっぱり国債が一番多いでしょう。その後、塩川大臣が名答弁をしておられまして、郵便貯金は国債を買うために使えば一番いいんだとおっしゃっていました。そういう話なんです、これは。  そしたら、企業から見たら、貸付けに回るお金がそれだけぼかっと空いちゃうじゃないですか。安定、安全に使う金をリスクマネーとして企業に貸し出してくれないでしょう。だから、要するに日本の金融マーケットは、個人資産が千四百兆円もありますとかなんとか言いながら、実際意味のある資金の流れとしてはこの三百六十兆というのがぼかっとすき間になっちゃうんですね。  そういう現状に対して、金融担当大臣としてどうお考えなのか、それをどう是正させていくお考えがあるのか、その点を伺って、質問を終わります。
  60. 柳澤伯夫

    国務大臣柳澤伯夫君) 郵貯にしても簡保にしても、長い経緯の下でこういうふうな形に現在なっているわけでございます。それを、そういう現状の上に立って今回財投の預託という制度を廃止したわけでございまして、したがってその運用については今委員がおっしゃられるような形になると、これはもうそのとおりでございます。  ただ、それでは事柄の実態が物すごく変わるのかといえば、やはり安定、安全だというようなことでございますので、国債を、フローの運用先ですけれども、八〇%ぐらい運用先として考えるとかいうようなことでございますので、今、財投が相当国債を持つというような形になっているのと、金融的な側面でデシジョンメークをする人は確かに変わるわけでございましょうけれども、何か資金の流れにおいてすごい大きな変動が起こるかというと、どうも今、外から見ていてもそんなにすごい変動が起こるということではないんではないか。  私どもは、したがってどういうことを今申させていただいているかというと、やっぱりイコールフッティングにしていただきたいということを申しているわけでございます。そうしますと、やはりイコールフッティングということであれば、やはり安定的な運用先というのは当然利回り的にはある程度低いものになるでしょうし、そういうような形で余り公的な支援というものが、余りというか、もうなければ、我々は十分全体として市場メカニズムが働くということが期待できるんではないかと。  したがって、そこのところはすべからくイコールフッティング、条件がイコールフッティングでなきゃ困ります。例えば預金保険について、預金保険料を相当民間金融機関は負担しているわけでございますが、やっぱり政府の保証が付いているというのだったらその保証料をやっぱり取ってもらいたいということを当然のことながら申しているわけでございまして、そういうイコールフッティングであれば、それなりにそれがいろいろマーケットメカニズムの働くところにつながっていくんではないかと、こういうように私は考えておると、そこで今言ったようなことを要望しておるということでございます。
  61. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  62. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  63. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査を議題とし、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  総裁は、この間の四日の当委員会での趣旨説明で、六月中旬より、米国株価の下落などを背景に株価がやや軟調に推移しているほか、為替相場もひところに比べてドル安・円高の動きとなっていますという、そういう説明をされました。表現としてはかなり、私、のんびりした表現だなと伺ったんですが、六月の二十八日に、サミットの終了した翌日、委託介入をされました。欧米に委託介入を依頼して介入されたわけですが、その規模はどれぐらいのものだったんでしょうか。従来と比べて相当大きなものだったんでしょうか。
  65. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 程度はちょっと、またマスコミの関係もございますので、ひとつ後でまた個別にお話ししますけれども
  66. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日銀財務省の指示で介入なさったわけですけれども日銀としても、この介入は当然だという、そういうお考えの下にやられたんだろうというふうに思うんですが、こういう介入せざるを得ないような事態に至った原因ですけれども、それについて日銀がどういうふうに考えておられるのか。私は、今度のやつは、はっきり言ってアメリカ側の要因によるドル安だと、ドル安による円高だというふうに見るんですが、総裁のお考えを伺いたいと思います。
  67. 速水優

    参考人速水優君) 為替介入につきましては、これは財務省の所管に属する事項でございますので、私の立場からはコメントすることは差し控えさせていただきますが。  今御質問のアメリカをどう見るかということと関連して、今度は円高でなくて、私の長年の経験からいいますと、やっぱりこれはドル安、ドルの全面安なんであって、実際問題として百三十四、五円から百二十円を割っておりますから十円以上の円高になっているわけですけれども、実効レートでいえば、日本の輸出の五二%がドル建てなんですね。あと、ほかのヨーロッパのユーロもアジアの諸通貨もやっぱりドルに対して強くなっているわけですから、これは実効レートでいえば十数円の半分ぐらいのところではないかと。これは私の感じですけれども、それはそう考えていいんじゃないかと思います。  それにしても、やっぱり急激に円が強くなると関係者はかなりびっくりしますから、そういう意味でのドルが安くなった分、急激に損益が出るのも良くないというようなことで、介入が入るのは悪いことではないと思います。  しかし、この原因が何なのかというのは私もよく分かりませんが、私の感じで言わせてもらえば、六〇年、七〇年とドルは非常に安い時期が、不安な時期があったんですね。そのときとちょっと似たような感じがするのは、今また二つの赤字という、ツイン・デフィシットということがあのころはありましたですね。ちょうど私、六四、五年、六年、ニューヨークにいたんですが、ベトナム戦争が始まるし、国内では人種問題でそれを公平に扱おうという、国内でも随分大きな金を使った時期で、財政は赤字、それから経常収支も赤字、しかも海外でドルをたくさん持っていたと。今も、御承知のようにアメリカの対外債務超過というのは二兆二千億ドルぐらいあるんですね。日本は逆に、日本の方は一兆二千億ドルぐらいの黒字ですけれども。  ということは、海外、アメリカ以外の人たちが二兆ドル以上のドルを持っているということですから、それが値打ちが下がるということになると、やっぱり動かすであろうことはある程度想像が付くと思うんですね。そういう事態が起こりつつあるのかどうなのか。そこへもってきて、今の実体経済の方も、双子の赤字というのが一九九八年になくなったんですけれども、今年は恐らく双子の赤字にまたなるという話ですから、そういうようなことを考えますと、ドルを海外で持っている人は、これは強くならぬかもしらぬ、むしろ弱くなるんじゃないかといったような思惑が出て世界的にドル売りが起こるというようなことは十分考えられることだと思いますね。  そういうことを私はこれまでの体験から、私の感じとして、これからどうなっていくか、市場をよく見ていく必要があるというふうに思っております。
  68. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 中長期的に見たドル安の傾向ということを言われたわけなんですが、短期的に見まして、今盛んに報道されておりますのは、何といいましても、アメリカの大企業のスキャンダルといいますか、そういったものが直接的な大きな原因になったというふうに言われています。  これは、六月二十八日付けのウォールストリート・ジャーナルなどはこういう見出しになっているんですね。「市場の偶像としての輝き失うアメリカ──企業スキャンダルの続出で、世界のビジネス界はアメリカ・モデルから離反しかねない」という、こういう状況ですね。具体的に、エンロンだ、イニクローン・システムだとかワールドコム、その他その他ずらずらとウォールストリート・ジャーナルは名前を挙げています。それぐらい企業スキャンダルが続出したわけなんですけれども、こういうことが、言ってみればアメリカモデル、グローバルスタンダードと言われたその実態がどんなにひどいものだったかということが現れてこういう状況になったんだと。  そういう点で言いますと、今総裁がおっしゃったように、日本だけではありません、ヨーロッパでもドルを相当多く所有しているということがあるわけですから、急激なドル安の影響というのは全世界に大変な影響を与える。特に日本は中でもひどいんだと思うんですね。  そういったことをちょっと今日は伺いたいと思うんですが、その前にひとつ介入のことについて、言葉説明で申し訳ないですけれども、単独介入と委託介入と協調介入というのがあるんですけれども、それぞれ一体どう違うのか、ちょっとお教え願えますか。
  69. 尾辻秀久

    ○副大臣尾辻秀久君) 御指摘のとおりに、為替介入には、我が国の通貨当局が単独で行う場合、これが単独介入でございます。それから、我が国政府の勘定で他国の中央銀行に実施を委託する場合、これが委託介入でございます。それと、複数の通貨当局が同時に介入を行う場合、これが協調介入でございまして、この三種類がございます。  したがいまして、単独介入と委託介入は我が国政府の判断だけで行えますけれども、協調介入になりますと、当然、他の主要通貨当局と介入実施について合意することが前提になるわけでございます。
  70. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 そうしますと、財務大臣、伺いたいんですが、今度の場合、委託介入だったわけですが、そうではなしに、全世界大変な影響を受けるわけですから、ヨーロッパ諸国をも説得し、当然アメリカに対して、一番最大の要因を作っているアメリカはもちろんのことですけれども、欧米と協力しての協調介入をすべきだという形で提案し、やるべきじゃなかったんでしょうか。
  71. 尾辻秀久

    ○副大臣尾辻秀久君) 協調介入になりますと、当然、G7各国との協調、こういうことに相なります。そこで、為替政策につきましてはG7各国の通貨当局とは常日ごろから緊密な連絡を取り合っているところでございますけれども、今のそうしたお話を含めまして具体的なやり取りについては、どうしても為替のことでございます、相手の国との信頼関係もございますし、また、今の状況をごらんいただいてもお分かりいただくとおりに大変微妙な話でございまして、何か言いますと市場への不測の影響というのが出ますので、コメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
  72. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 このことに関して、コペンハーゲンでの塩川財務大臣の発言をめぐっていろいろと報道もありました。一昨日か、一昨日に日経新聞などはかなり詳しくそれを報道しておりますが、このときのいろいろ言葉遣いというのは新聞によって違いがありますからなんですけれども新聞のある報道では、百十五円まで行くのは避けたいという表現をコペンハーゲンで先週末記者に語ったという報道がなされております。  一ドル百二十円にまで上昇するかと言われていたこの時期なんですが、今日はもう既に百十七円だそうですが、こういった状況の中でこういった発言をするというのは、やっぱり、百十五円までは容認すると言った、そういうふうに言ったに等しい発言じゃなかったかと私は思うんです。九日の記者会見では、いや、そうじゃないんだと、百十五円という水準を容認しているわけではないんだというふうに釈明しておられるようですけれども、やはりこれは、その真っただ中での発言としては、財務大臣の発言としては非常に不用意な発言であったんじゃなかったかと思うんですが、財務大臣の御答弁を伺いたいと思うんです。
  73. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 確かにおっしゃるように、言い方を、もう少し言い方があったと思っておりますが、私が発言しましたのは、どうも昨年の九月の十一日のあの事件当時、あの直後のような水準、その水準は百十五、六円の水準だと、そういうところまで絶対に戻してはいかぬということを言ったのがそういう取り方になってしまいまして、ですから、為替の問題とか株価の問題ということは、マスコミはこれは商売として取り上げますから、ちょっとこの発言を、私はもうこういうところでは、公式ではひとつ言い方が難しいとつくづく感じておるところであります。
  74. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 結局、真意じゃないように取られちゃったというお話なんですけれども。  先日の四日の本会議で私、総理大臣にこの問題について質問したんです。要するに、協調介入を欧米に呼び掛けてやるべきじゃなかったかという質問をしました。何らかの発言をこのことでしたのかというふうに質問したんですけれども、結局は、協調介入の提案はおろか、何もこのことについて発言しなかったと、答弁がありませんでしたからそのように解さざるを得ないんですけれども、そういった状況がありました。  サミット終了の二十八日は委託介入を実施したわけですけれども、そうしますと、日本政府は、日本だけで十分対応するんだと、委託介入で十分、協調介入まで呼び掛けるような情勢だとは判断しないと、そういうふうに受け取られても仕方がない、そういう情勢下にあったと思うんです。片一方でそういう動きがある中で、財務大臣が百十五円までという具体的な数字を出せば、当然そこまで容認するというふうに思われてしまったんじゃないかというふうに私は思うんです。  このことについて重ねての御答弁はいいですけれども、非常にその点では反省していただかなければならぬ発言だったというふうに私は重ねて指摘したいと思います。  そこで、日銀総裁に伺いたいんですけれども政府景気の底打ち宣言をしました。ところが、底打ち宣言したんですけれども、子細に見ると結局その最大のよりどころは輸出ですよね。内需は回復していないと。  今、輸出大手企業の社内レートの設定、採算レートと言ってもいいんでしょうが、それは百二十五円台だと伺っていますが、そうしますと、今日の百十七円ということになりますと多くの輸出企業はこれは利益が出ないと、こういった状況になってくる。こういう状況が続けば大変だということになると思うんですが、もしこういった水準が続けば一体日本の景気はどうなるというふうに見ておられるでしょう。
  75. 速水優

    参考人速水優君) 先ほども申し上げましたように、日本は輸出の五二%ぐらいをドルで決済しております。だから、こんなに円が強くなったからといって、あるいはドルが安くなったからといって、そのままそっくり損が出るというものではないと思いますね。恐らく半分、実効レートからいえば恐らく半分以下だと思っておりますが。これはいつまで続くか、その辺は分かりませんけれども、今の相場水準というのは二〇〇〇年の終わりぐらいまでは続いた、テロ事件で一回百十六円になって、それからずっとドルが強くなり円が安くなってきているのであれですけれども、今後とも、為替相場の動向、その経済への影響については十分注意をしていく必要があると思います。  それともう一つ、先ほどちょっと申し落としましたけれども、やはり協調介入するといっても、相手国がうんと言わない限りできるものじゃないですからね。  それから、ほかの国はみんな自国通貨で輸出するのが多いんですよ、七割、八割。日本はそれをやっていないんですね。だから、もっと円で輸出をしていくようにみんなの空気が変わっていかないと、為替相場が動くごとに、やれもうかった、やれ大損したという大騒ぎになるんですね。この点は私どもがもっと早くから、もう私などはかなり早くから言わせてもらっていたんですけれども、円を使うようにしてくださいと。そうすればそんなに急激に損得が出ることないんですから。日本は特異なんですよ。ほかの国はみんな自国通貨で輸出するのが多いんですからね。七割とか八割とか、そういうことをやっているんですから。それを日本はドル依存だけでやってきたというところに一つの問題があるので、そういうことは中期の問題としてこれから円建てでもっとやろうじゃないかと。円を向こうに持ってもらってもいいんだし、その辺のところは中期の課題として考えていくべきことだと私は思っております。
  76. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 その点は私も賛成なんです。私も若いころ、貿易していたころから当然円建てを増やすべきだというふうに考えていた一人なんですけれども。  次の問題にちょっと移りたいと思います。  金融政策のことなんですけれども概要説明では、マネタリーベースの前年比が三割前後高い伸びになっているということをお示しになって、こうした日本銀行金融政策運営は、IT分野の世界的な調整や、米国テロ事件の発生、金融システム不安の高まりなど、我が国経済に大きなストレスが掛かる中で、金融市場の安定を確保することを通じて景気底割れを防ぐという意味で大きな役割を果たしてきたと思いますと言われました。  要するに、こういうふうにじゃぶじゃぶにお金を供給してきたということが景気底割れを防いだというんですけれども、しかし三割も増やしたけれどもマネーサプライは三%しか増えていないということですよね。一体このお金どこへ行ったのかと。大体、何を根拠に底割れを防いだということが言えるんでしょうか。底割れが免れたということは事実かもしれないけれども、何で金融政策によってそれが免れたと言えるのか。何かこれ証明できるんでしょうか。
  77. 速水優

    参考人速水優君) 証明するとすれば、何事も大きな変革がなかった。破綻するものは破綻してきましたけれども、それがほかへ移って、いわゆる金融システム崩壊というようなことが起こらないで済んでいる。  三月のときにも株価が下がって、二月、三月どうなっていくかと思っておりましたら、幸い株が上がって、三月決算も何とかやれたし、金融庁はかなりの償却もリード、指導されたといったようなことでありましたし、六月にも何か起こるかもしれぬという心配がありました。しかし、それもなくて済んだと。特に、四月の初めの大銀行決済ミスというのが大きな問題になりましたけれども、あのときも前もって合併に備えて大量の当座預金が日銀に預けられておりました。したがって、あれ問題なく過ぎているんですね。そういうことを、具体的に言えといえばそういうようなことは申し上げられると思うし、結果として金融システムの崩壊というところまでは行かないで済んでいるということは、それなりの私どもの流動性の豊富な供給というのが役に立っているというふうに思っていいと思っております。
  78. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日銀資金供給するというのは、要するに実体経済を回復させる、景気回復させるということをひとつ期待して当然やっておられるというふうに思うんですね。ところが、これだけ供給したけれども銀行の貸出し実績を見てみますと、これ五十三か月連続してずっと減少していっていると。対前年同月比ですけれども、そういう状況があります。だから、結局、設備投資も減少しているし、個人消費も減少していると。これは伸びなかったと言うんでしょうか。そういう中で、今言ったような貸出しが減少している状況が起こっているわけです。  こんな状況、もちろん今度の報告書も分析しています。片一方では底割れを防止したと言いながら、やっぱりいろいろと逡巡した物言いがその中に私うかがえると思うんですけれども、民間企業の資金需要が減少し続けたということを今度の報告書で分析した後、こう言っているんですよね。「このように、企業金融を巡る環境については、総じてみれば、緩和された状況が継続した。しかし、企業破綻の増加などを背景に、民間銀行や投資家の信用リスク・テイク姿勢は慎重化した。このため、信用力の低い企業、とりわけ中小企業では、資金調達環境が徐々に厳しさを増した。」と言っているわけですね。  だから、幾ら金融緩和しても資金需要を喚起することができなかったということを認めているわけです。このことは、今の経済情勢下で幾ら金融緩和してもどうも動いてくれないと、この経済情勢下では金融政策による景気対策の余地がないということを示しているんじゃないかというふうに思うんです。  ところが、そうじゃないんだと、こういう分析をしながら、なおかつやっぱり、金融緩和すれば、一層金融緩和すれば景気回復にも役に立つんじゃないかというふうなことを言っていると。そこにはやっぱり相当私は無理があるなというふうに思います。要するに、景気底割れしていないということをもってこの金融緩和効果があったというのは今さっきいろいろ伺いましたけれども、私はどうも納得いかないんですよね。  やっぱり今のこの状況下では、もうじゃぶじゃぶに資金供給したけれども、こういう金融緩和政策ではもう役立たないんだと、景気対策としては、実体経済の回復には今もうできないんだということをはっきりさせるということ、これがむしろ日銀としての責任じゃないかと思うんです。やるべきは政府の責任だということですよね。日銀がやるべきことじゃないんだということを明らかにすることこそが本当は日銀の責任じゃないかと私は思うんですが、いかがでしょう。
  79. 速水優

    参考人速水優君) 日銀がかなり思い切って金融緩和をしているのに実体経済が明確に回復していかないのはなぜかと。これは午前中にも大分言わせていただきましたけれども、やはり本当に市場に出した資金が景気を盛り立てていくためには、やっぱり民間の需要が上がってこなきゃ駄目なんですね。民間の需要を上げるということは私どもの力だけでは、先ほどプッシュ・オン・ア・ストリングという、ひもを引っ張るのは機能するけれども、ひもを押し上げても風船は動かないんだというようなことが今当てはまるのかもしれません。  それで、やっぱりやるべきことは二つあると思うんですけれども、早く構造改革、それは税制の面でもそうですし、先ほど中身も少し言わせていただきましたけれども一つ一つを早く実らせていくということが必要だと思いますし、もう一つのことは、やはり不良貸出しの償却ということを早くしていかないと銀行はいつまでたっても、今、前向きにかなり貸出しを増やそうとして努力をし収益を増やそうとしておりますけれども、これまでの歩みを見ている限りではやっぱり不良貸出しが多い、これを消していかなきゃいけないということがあってなかなか思い切った貸出し政策が取れないということがあったと思いますし、企業のサイドも、債務超過でなかなか新しい設備投資を増やしていくという気分になっていけなかったといったようなことがやっぱり響いているんだと思うんで、そういうことが、私どもも、さっきも申し上げましたけれども、地方で支店を通じて調べさせますと、かなりやっぱり動きが起こっているんですね、構造改革プラス要因というものが。  だから、もうちょっとこれを集中的にやっていけば、規制が撤廃され、自由競争が起こり、民間の設備投資需要と民間の消費需要というのが伸びていくことが起こり得ると思っているんです。それを早くやっていただきたいということは、もう繰り返し私ども金融緩和の都度言わせていただいておるんです。そのことが早く進まないと駄目だということと、もう一つはやはり不良貸出しを早く減らしていかなければ駄目だということが当面の課題ではないかと思っております。
  80. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 民間の需要を喚起していくという、私は、やっぱりもう政府が直接そういったことに乗り出さなけりゃいかぬときに来ていると何度も私たち主張してきたんで、後でまたこのことを改めて主張したいと思いますが。  その前に、ひとつ私も大塚委員や浜田委員が取り上げたFRB論文のことについて伺いたいんですが、これは、今の米国の経済状況が九〇年代半ばの日本と似ているということで、その経験を分析しようとして出されたものなんですね。  それの中で、一度デフレになり短期金利がゼロに近づくと金融政策経済を安定化させる能力を失うというふうに分析していますね。これはやっぱり非常に大事なことなんだと思うんです。デフレになってしまってから短期金利がゼロという、これも正に日本の経験そのまんま言っているわけで、短期金利がゼロに近づいてから更に金融緩和、量的緩和ということで政策を取られたわけですから、そういう点、日銀はこのFRBの指摘をなかなか認めにくいだろうとは思うんですけれども、しかしやっぱり冷静に見なければいけないと思うんです。  私は、この指摘はやっぱり当たっているだろうと思うんですね。要するに、マネーサプライ伸びない、銀行貸出し残高は減り続けている、それから、じゃぶじゃぶの資金供給したのに物価は低下傾向だし、もし、日銀がこれだけ資金供給してこの金が何らかのきっかけで投機にでも向かえばどうなるんだと。先ほど来の、日本の国債というのはもう六百兆超えたんですか、国債だけでも。国債だけでは超えないですか、国の債務が六百兆超えている、こういう状況の中でもしそんなことが起これば大変なインフレになってしまう。今すぐインフレに向かうというおそれは、そういう状況にはないにしても、そういった危険な爆薬を抱え込んでいるということは言えると思うんです。  結局、私は何度も言うんですけれども、もう今、日銀が何らかのこういう形で量的緩和をすれば、それでじっと我慢していると、そのうちに何らかの民間需要が起きてきて経済が回復するんだというふうなことを言っている段階じゃないだろうと。政府がきちんとやってもらわなければ困るんだということを私は言うべき時期に来ているだろうというふうに思います。  もう時間がなくなってきましたので、最後の意見だけ申し上げたいと思うんですけれども、要するに九〇年代の初めごろから日本の経済発展パターンが変わってきたということの中で、私たちは、大企業の身勝手なリストラ等々、こういったことを規制しないと駄目だという、民主的規制という言葉で訴えてまいりましたけれども、最近そういったことについてはかなり同じような意見が見られるようになってきました。  最近、七月一日から日経が連載しておる「不安漂う日本経済」というのがございますけれども、それの中を見ましても、大企業はリストラで業績の回復をかち取っているが、その下請を始め中小企業は逆に赤字だと、倒産に追い込まれていると、こういうことをるる示しまして、こう言っているんですね。大企業が回復しても下請企業に恩恵はない、企業業績が回復しても雇用や設備投資は伸びない、景気が輸出主導で少し上向いても従来のような経路での景気回復は期待できない、企業のリストラはこれまでの日本の景気循環の常識を覆し始めている、こう言っているんですね。  ですから、こういう状況下で、幾ら供給サイドの強化という形で大企業に力を付けさせる、輸出競争力を付ける、国際競争力を付けさせるようなそういった政策を取っても、決して需要は伸びていかない、個人消費は伸びていかない、こういう実態になっていると思うんです。  ですから、私は経済財政諮問会議の議員として参加しておられる財務大臣の見解を最後に伺いたいんですけれども、こういった政策、供給サイド強化だ、国際競争力強化だといって、法人税率の引下げだとかいう形で大企業に恩恵を与える、片一方では、課税最低限の引下げとかいって、あるいは消費税増税といって、国民の消費を押さえ込むような税制を取る、大企業に力を付けさせるような税制を取る、こういったことはやっちゃならないときにあるんじゃないかと、そういうふうに考えるわけですけれども、最後に、そういった財務大臣の見解をお伺いして、終わらせていただきたいと思います。
  81. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) おっしゃるように、税制だけで景気の回復を図るということはもう非常に難しいと思っております。  どの程度効果があるか分かりませんが、しかし、税制は往々、経済の方向付けをするのに重要な機能を発揮すると思いますね。したがって、企業活性化のために何がいいかということを目下検討しておるところでございまして、ただ、それが先行してしまって財政の基本を崩すようなことがあっても困りますしいたしますので、その間のバランスを慎重に取っていきたいと思っております。
  82. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 終わります。
  83. 平野達男

    ○平野達男君 国会改革連絡会の平野でございます。  今日は日銀に何点か基本的なことをちょっとお伺いしたいと思います。  まず一番目は、景気動向との関係でございますけれども、午前中からの議論がありますが、底打ち感が出てきた、要するに底打ち宣言をしているということがありますけれども、実態はもう外需頼み、個人消費は横並びで横伸び状態でありますし、最も問題なのは、企業の設備投資が落ち込んだままであるというような状況であります。  この、企業の設備投資が落ち込んでいるということの状況にちょっと絞って議論を進めさせてもらいますけれども、この理由はいろんな見方があると思いますけれども、大きく私なりに整理すれば二つあるのかなと。  一つは、まだ過剰債務をたくさん抱えていると。幾ら稼いで利益を上げても債務の返済に追われなくちゃならないんだというのが一つ。それからもう一つは、やっぱり将来、自分たちが作っているもの、あるいは新たなものに進出しようとした場合の需要が本当にあるのかどうかという将来に対する不透明感。あと、そのほかに規制緩和がまだまだ進んでいないとか、いろんな見方があるかと思いますけれども、今言った中では、これだけ不良債権の処理が進みましたから、企業の過剰債務についてはそろそろ先が見えてきたんじゃないかと。  データ的に見ても相当減ってきているというようなデータがありますが、日銀としては、今この企業の設備投資が伸びない、落ち込んだままだという最大の原因、逆に言えば、何をすれば刺激になるのかということの質問になるかもしれませんけれども、そこに対しての見解をちょっとお伺いしたいと思います。
  84. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 私からお答えさせていただきますと、先生指摘になりました二つの原因、理由のうち、まず過剰債務問題ですけれども、GDP比で見た企業の債務残高は、バブル期には大きく上昇しまして、九〇年代後半以降は幾分低下していますけれども、引き続き水準は高いという、そういう状況になっていることは御承知のとおりだと思います。こうした状況の下では、企業は債務の返済をどうしても優先しがちになるために、企業収益の改善が設備投資につながりにくいということになってしまいます。  一方、もう一つ景気の先行き不透明感ですが、そういう点では、現在は輸出と生産の増加という基調が続いておりますけれども、これが続いていけば先行きには企業収益も回復して設備投資の持ち直しにつながっていくと、そういうことが展望し得るかと存じます。
  85. 平野達男

    ○平野達男君 過剰債務の解消はまだまだだというような、そういう趣旨ですね。  じゃ、その過剰債務の解消とこれ関係すると思うんですけれども、いわゆる労働分配率の問題があるかと思います。つまり、日本の場合は、九〇年代を通じてずっと労働分配率が高くなってきたと。一時高止まりして、これがやっぱり企業の収益そのものにも圧迫要因になったというようなことが言われています。アメリカでは、もう御承知のように、アメリカの経済が回復したのは一時的に労働分配率が相当落ちたんだというような分析もありますし、日本でも最近ではやっぱり、これはサラリーマンにとっては非常につらいことでありますけれども、労働分配率が徐々に下がってきているというような状況もあるやに聞いておりますけれども、今の日本の労働分配率の状況についてどのようにとらえておられるかと。逆に、もっと言えば、具体的に言えば、適正な水準というのがあるのかどうか分かりませんが、どの程度まで日本の企業状況からいくと労働分配率というのがあるのが適正なのかというところまで、もし見解があればちょっとお聞かせ願いたいと思うんですが。
  86. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 労働分配率といいましても様々な定義がありまして、厳密な議論をすることは難しいかと存じます。  国民所得統計に即してお答えしますと、我が国の労働分配率は、これは国民所得に対する雇用者報酬の比率として見ているわけですけれども、それを計算してみますと、九〇年代にはかなりの上昇を見ております。具体的には、七〇年代は平均六五%、八〇年代には平均六八%で推移しておりましたが、二〇〇〇年にはこれが七四%となっておりまして、歴史的には高い水準にございます。  なお、労働分配率がどのぐらいが適正かという適正ですが、何しろ先ほど言いましたように労働分配率の定義自身があいまいでして、国際比較についても一応なされておりますけれども、自営業者とかそれから家族従業者の所得をどういうふうに把握していいかという統計上の難点等もありますから、完全なことは言えないでおります。  失礼します。
  87. 平野達男

    ○平野達男君 そうすると、日銀さんとしての労働分配率の定義というのは持っていないということですか。
  88. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 日本銀行が労働分配率を議論する場合は、先ほど言いましたように、国民所得統計にございます分配国民所得に占める雇用者所得という数字を基礎にして議論しております。
  89. 平野達男

    ○平野達男君 じゃ、その定義に基づいた今の状況についての日銀の評価をお伺いしたいと、こういうことです。
  90. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) どういうふうに推移してきたか、それから国際的に比較するとどうかと言いますけれども、適正か否かというその価値判断は一概に、申し訳ございませんが、できないという状況です。
  91. 平野達男

    ○平野達男君 なかなかそういったところでの評価というのは難しいというのは分かるんですが、ちょっと話が変わりますけれども、この報告書の中の六十ページに「経済物価の将来展望とリスク評価」という、これは二〇〇一年の十月の二十九日に日銀が出されているものであります。その中で、「経済物価情勢の将来展望に関するリスク評価」というふうな項目がありまして、全体で四つのリスク要因があるというふうに整理されております。  私は素人ですからなるほどなと言うしかないんですが、ただ、よく読みますと、例えは悪いんですけれども、天気予報に例えたら、あしたは晴れ又は曇りで、所によっては雨又は小雨、場合によっては一時雷雨というふうに言っておって、リスクの羅列はしていますけれども評価をしていないんじゃないかと。リスク評価と言っておきながら、そのリスク評価をするリスクを取っていないというような、そういう報告書に見えてしまうんですね。もう、これが本当にさすがは日銀さんの報告というふうに言いたいんですけれども、どうもちょっといかがなものかなという感じがしたという、これは私の感想であります。  そこで、この四つのリスクの要因としての二つについてちょっと具体的にお聞きしますけれども、三番目の「不良債権処理の進み方とその影響」というリスク要因ですが、御承知のように、昨年というか、平成十三年度一年間で約十兆、これは主要行だけですけれども、約十兆の不良債権が発生しまして、特別金融検査が入って、後半だけで、下半期だけで六・九兆円、約七兆円の不良債権が、いわゆるこれは破綻懸念先以下の不良債権ですね、出てきたと。そういう中で、オフバランス化を進めるということで柳澤大臣は、五割、八割、十割だ、新規については三年で処理するんだというような状況で今進んでおりますけれども、この状況が、この文脈で言う第三のリスク要因としての不良債権処理の進み方とその影響というこの項目に照らし合わせると、これはどのような状況だと。不良債権処理としてはこれはこれでいいんだ、好ましい状況だ、あるいは新規不良債権の発生の状況もそんなに大したものではないというふうに判断されるのか。具体的にその評価をちょっとお聞かせ願えれば有り難いと思います。
  92. 速水優

    参考人速水優君) 不良債権処理の景気への影響、これは次の三つのことを考える必要があると思うんです。  一つは、短期的には倒産とか失業の増加などを通じて景気を下押しする可能性があるということ。それから二つ目は、やや長い目で見ますと、金融機関の前向きな融資行動や資源の有効活用を可能にすることによって持続的な経済成長に貢献するものであるということ。三つ目は、加えて、金融機関の信認回復につながっていけば、株価上昇などを通じて比較的早めに景気への好影響が期待できるということだと思います。  金融機関はこのところ不良債権問題への取組を強めております。処理は相当に進みつつあると思います。しかしながら、金融機関健全性に対する内外市場の評価は依然として厳しいものがあると思います。景気への良い影響をなるべく早く引き出していくためにも、金融機関の一層の取組に期待したいと思います。
  93. 平野達男

    ○平野達男君 具体的なことで申し上げれば、例えば不良債権の処理の仕方によって、例えば、「金融仲介機能の回復が期待されるようになれば、」云々という書き方をされていますし、「既存の不良債権の処理が遅れる場合には、」云々というような書き方をされているわけです。だから、今のその数字を見た場合に、この金融仲介機能の回復が期待されるような状況になっているのかどうか。それからあるいは、「既存の不良債権の処理が遅れる場合には、」と書いていますけれども、遅れるような状態になっているのかどうか。そういったことの判断が実は日銀さんには求められているんじゃないだろうかと。  今の答弁をお聞きしても、やはりちょっと抽象的な表現の域を出ていない。これは相当難しい御答弁になりまして、塩川財務大臣なんかむにゃむにゃむにゃとおっしゃった答弁でよく逃げてしまうんですけれども。  そういった答弁をちょっと期待したいんですけれども、やはり答弁はやはり同じかと思いますし、時間がちょっとないので、今日は二十分しかないので、次の質問に移りますけれども。  同時に、その下の「経済財政構造改革影響」というのがありまして、そこに投資家の信認が低下するようになればというふうにあります。財政規律が非常に大事だというふうに言っておりますけれども、これもやはり同じ質問になるんですね。現在の状況というのは投資家の信認に足るような状況になっているのかどうか、あるいはもうこの際これ以上国債を発行すれば投資家の信認はがたんと落ちるような状況になっているのか。そういったことについての日銀としての見方ということなんですが、かなり質問としてはきつい質問かもしれません。
  94. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 先生が御指摘リスクは私どもの展望リポートの中の第四のリスクに言及されていると思いますけれども、その展望リポートでは、御案内のように、財政規律に対する投資家の信認が低下した場合の長期金利上昇リスク指摘しております。  国債残高の対GDP比率が先進国最高水準に達している中で、財政規律に対する投資家の目は非常に厳しいものがございます。ですから、仮に財政収支の悪化が続きまして、国債残高が経済規模に比べて際限なく増加していくというふうに予想される場合には投資家の信認は低下するわけです。今度逆に、先行きの持続的な経済成長への道筋が明確に示されるならば、足下の国債残高がたとえ高水準であっても投資家の信認が崩れることはないわけです。  じゃ現在はどういう状況かというお尋ねですが、このところの国債の流通利回りは一・三%前後で安定的に推移しておりまして、その点から判断しますと、財政規律や国債に対する投資家の信認は維持されているというふうに考えられると思います。
  95. 平野達男

    ○平野達男君 そういう答弁だと思いますけれども、もうちょっと今の状況を踏まえて日本の経済の先行きみたいなものに対する突っ込んだ見解がいただけないかなという感じは強くします。  それで、今の点に関してもっと言えば、やっぱり日銀さんというのはそういう経済金融の本当に日本の最高のスタッフが集まっているところじゃないかなと私は思っているんですけれども、遠慮なくそういった分析、今の日本の状況についての突っ込んだ見解がもっともっと出てくるようになれば、国会での議論ももっともっと面白くなるんじゃないかな、いい方向へ向くんじゃないかなという感じがちょっとします。  それで、次の質問に移りますけれどもマネーサプライが緩やかに伸びているということなんですが、その内訳を見ますと、いわゆる流動性から定期性、失礼しました、逆ですね。定期性から流動性への移動が見られると。大量の移動が見られるということで、今、手元に日銀さんからいただいた資料がございまして、これは日本全国だと思うんですが、預金量全体も増えておるんですが、この間、これを見ますと二十四兆円増えていまして、流動性預金が大体六十七兆増えていると。その一方で定期性預金が四十一兆減っているということで、はっきりと定期性から流動性に移った、推移したということがデータ的にも見て取れます。  ただ、問題は、日本全国はこうなんですけれども、業態別に見た場合、つまり、大手銀行、地銀あるいは信用金庫、そういったもので見た場合に、いわゆる下の、失礼しました、例えば信金から大手銀行への預金の移動が大量に起きていないかどうか、そういったことについて、もし把握しておりましたらちょっと御紹介願えれば有り難いと思います。
  96. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 今、先生指摘の業態別に見た預金シフトの動向ということでございますが、確かに、この三月時点のその数字を去年の三月時点と比較してまいりますと、都市銀行の預金が非常に高く伸びております。都市銀行全体で言いますと、十三年度末の前年比が約一一%程度の増加になっております。  ただ、一方で、地銀、第二地銀、信用金庫といった業態のケースを見ますと、それに匹敵するほど減っているわけでは必ずしもございません。業態によって若干の違いはありますけれどもプラスマイナス一%から二%程度のところでとどまっているわけでありまして、この点を見ますと、何がしか都市銀行、大手業態のところに預金がシフトしていることはあるにせよ、その規模そのものは、この三月末時点まででいきますと、それほど大きなものではなかったということは言えようかと思います。
  97. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ、定期性から流動性への移動というのは、やはり例のペイオフの解禁の影響があるということは、これはだれが見ても明らかであろうと思います。  問題は、次の、来年の四月に予定されているところの一般預金のペイオフの解禁でありますけれども、その今の定期性から流動性への移動が起きているという実態からすれば、今度は流動性預金がどこへ行くのかと。やはりいい銀行に行くんじゃないかという、これは午前中の議論にもあったと思うんですが、こういったものに対しての日銀としての分析がされているかどうかということなんですが、あるいはその見通しということも絡めてちょっとお聞かせ願いたいと思うんですけれども
  98. 三谷隆博

    参考人三谷隆博君) 先々の見通しということはなかなか難しいわけでございますけれども、確かに今年の三月に掛けまして定期性預金から流動性預金に大きなシフトが全体として起こったと、これは業態にかかわらず起こったということはそのとおりでございます。  ただ、定期性預金の動きということだけで見ますと、以前からこれはずっと減り続けておりまして、その減り方は格段に小さいわけですけれども、それは一つ金利環境、定期預金にしても普通預金にしてもほとんど大した金利も付かないという中で、預金者が定期預金してもしようがないというふうな動きもあったやに思われる部分もございまして、正直申しまして、それなりのインパクトが出るかもしれませんけれども、その辺の状況につきましてはもう少し様子を見てみたいなと。少なくともこの四月以降は定期性から流動性へのシフトはそんなにまた大きくはなっておりませんので、その辺の動きをこれからも注目してまいりたいというふうに考えております。
  99. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ、注目してまいりたいということなんで、来年の四月に予定されていますので、是非その動きは、これは金融庁さんの仕事でもあるかもしれませんが、日銀さんの方でもよく注意深く見ていただきたいというふうに思います。  それで、時間もあとわずかですので最後の質問ですけれども日銀報告の中にもありますけれども、いわゆる金融機関がいい機関、いい企業についてはどんどんどんどん貸すという姿勢が見える一方で、やはり財務内容がしっかりしていない、あるいは財務諸表をしっかり整理していない、特に中小企業が多いと思うんですけれども、そういったところに対する貸し渋りの傾向が目立ってきて、いわゆる二極分化という言葉を使っておられます。こういった傾向が顕著になってきているというふうに整理してございますけれども、この二極分化の是正の方向について何か御提案等がございますれば、是非これはやっていただきたいと思うんですが、御紹介願いたいと思います。
  100. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) お答えします。  金融機関が借り手のリスクに応じて利ざやの設定などに努めるということは経営健全化に必要でありますし、長い目で見れば資源の効率的な配分や経済の成長にも資するものだと考えます。しかし、こうした貸出し姿勢が行き過ぎて健全な企業の資金調達が難しくなるような事態は回避していく必要があることは先生指摘のとおりです。  日本銀行は、流動性に対する不安からそうした事態が生ずることがないように、現在、潤沢な資金供給を行っているわけです。これは、金融市場の安定を確保して、貸出しのベースとなる市場金利を低位安定させていくということを通じて、金融機関健全化に向けた取組やそれから企業金融をサポートしていくということにもつながるかと存じます。
  101. 平野達男

    ○平野達男君 いずれ、今日の議論でもやっぱり同じことを感じたのは、日銀さんのいろいろな答弁は、一面分かりやすいんですけれども、本当に今の現状の分析をお聞きしても、なかなかきっちりとした答えが返ってこない。きっちりとしたというか、分析らしき答えが返ってこない。そういう傾向がちょっと強いんじゃないかなという感じがしました。  是非日銀さんには、日銀さんの発言は恐らく相当影響力ありますから、軽率な発言はできないというのはよく分かるんですけれども、どうもこういった議論を続けている限りにおいては、余り日銀さんに質問してもしようがないのかなという感じにもなってまいりますし、そう言うと、じゃ、こういう答弁を続けようというふうに取られると困っちゃうんですが、是非、どちらかというと明快なというか、一歩も二歩も踏み込んだ、時には答弁をしていただきたいというお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  102. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 御苦労さまでございます。  今日は、新聞各紙を開きますと、日銀の理事が替わったという報道が各紙で取り上げられています。それでその中いろいろ見てみますと、面白いですね。毎日新聞は「「ポスト速水」にらみ 大幅交代」、「日銀幹部人事」という見出しが付いていますし、日銀、考査局重視の人事、ペイオフ全面解禁を控えて銀行経営を注視というような見出しもありますし、今回の理事の大幅な入替えについて、せっかく今日は関係者が皆そろっていられますから、どういうところに注目をしながら人事をなさったのかということを直接聞いてみたいなと思いましたので、まず、冒頭にそのことを聞かせていただきたいと思います。
  103. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) 予期せぬお尋ねですが、総裁からお答えするのが一番いいんですが、その前に、非常に物理的な問題ですので私から答弁させていただきますと、理事それぞれに任期四年といういわゆる締切り時間があります。その時期が到来したので替わったというのが今度の異動のほとんどのケースでして、それをどういうふうに見るか、新聞に書くかは、記者さんの自由だと思います。
  104. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ペイオフの全面解禁をにらんで考査局の強化を図ったとかいうことがまことしやかに、私たちもああそうかなというふうに思うわけですけれども、その反面、次の総裁と目されていた方がIBMの最高顧問になっていくというようなことも書かれてあったりして非常に面白く読ませていただいているわけですけれども、今、答弁はそのぐらいでしょうね、言えることは。分かりました。ありがとうございます。せっかく、新しく理事になられた白川さんですか、お見えになっていらっしゃいますのでちょっと聞いてみたかったものですから。済みません。  今日の質問はちょっと同じようなことで大変失礼になるかと思って申し訳なく思いますけれども、平成十一年二月にいわゆるゼロ金利政策に踏み切ってから、途中半年ばかり中断はありましたけれども、ずっと超低金利政策が続けられてきました。十三年の半ば以降は、日銀当座預金残高を必要額の三倍から四倍に引き上げるという量的な緩和も並行してやられてきたということがございます。  金融緩和によって景気をこれ以上悪化をさせないということには役立ってきたというふうに思いますが、あるいはまた金融システムの不安も和らげてきたということは認めざるを得ないというふうに思いますけれども、しかしその一方で、これだけの超金融緩和政策を長期にわたって続けてくると、何らかの副作用というのは出てくるのではないかというふうに思うわけですね。だから、こうした取られてきた金融緩和政策プラス面、マイナス面を含めて、この三年余りにわたる超金融緩和政策の総括というのをこの辺りできちっとして、切り替えるべきは切り替えていく必要があるのではないかというふうに思いますけれども、そこからまずお伺いをいたしたいと思います。
  105. 速水優

    参考人速水優君) 午前にも申し上げたこととまた重なるかもしれませんけれども、これまで内外の中央銀行の歴史に例のないような思い切った金融緩和を実施したわけです。その結果、短期金利長めのものまでほぼゼロに近いところまで低下してきているわけです。こういった思い切った金融緩和というのは、金融市場安定確保を通じて景気底割れを防止する上で大きな役割を果たしてきたと思っております。  他方、長引く超低金利の下では、家計等の利子収入の減少、また年金など機関投資家の運用難などが副作用として指摘されております。家計の収入や投資家の運用環境を改善させるためには、まず経済活動全体を活発化させて、我が国全体として貯蓄主体による多くの金利が支払えるような経済状態を実現していく必要があると思います。こうした経済活動の活発化を目指して粘り強く努力してまいりたいというふうに考えております。
  106. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ちょっともう少し具体的に総括していただきたいなというふうに思うんですけれども、じゃ、超低金利とかあるいは量的緩和を続けて金融政策を取ってきたにもかかわらず、日本経済デフレには歯止めが掛からない、消費者物価は、平成十一年度では〇・三%、十二年度が〇・七%、そして十三年度では〇・七%とマイナスを示していまして、また今年になっても下落傾向は変わらないわけで、このままだと四年連続物価下落ということになってきますね。  金融の量的緩和物価の上昇に結び付かないのはどこかにその関連を断ち切るような要因があるというふうに思うわけですけれども、その要因についてどんなふうに分析をされているのかというのを答えてくださいますか。
  107. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) お答えします。  先生指摘のとおり、物価上昇に量的緩和が結び付かないという指摘はございますけれども、その物価ですが、物価というのはよく経済活動の体温というふうに比喩で言われております。ですから、これは様々な過去の経済活動の結果として数字の形で表れるものだと思います。  それで、中長期的に振り返りますと、過去を振り返りますと、平均して、経済成長率が上がってから一年ないし二年たってから物価が連れて、ちょっと遅れて上がっていくということが統計的にも言えるかと思います。  私どもの昨年来の思い切った金融緩和措置は、金融市場安定確保を通じて景気底割れを回避することには寄与してきたと自負しております。しかし、御指摘のとおりに、我が国経済は、十分その活性化といいますか、景気回復に結実するような形になっておりません。これは、我が国経済が様々な構造問題を抱える下で、企業の投資や家計支出が十分活発化するに至っていないからだと思います。その結果として物価は前年比で見て下落傾向が続いているわけですが、私どもはその緩やかな下落が続いているというふうに見ております。
  108. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 将来不安、国民が生活に将来への不安というのをすごく抱えているというふうに思うんですよね。そういう中で消費が低迷をする、あるいは企業が先行きが不透明なので設備投資が十分になされないというようなことで、物価が上がっていかないというような要因になるんだろうというふうに思うんですけれども、その国民の不安の中に、やっぱり来年四月のペイオフの全面解除ということが含まれてくると思うんですが、日銀の審議委員に中原眞さんとおっしゃる方がいらっしゃいますか、その方が十日、長崎市内の講演で、「来年四月のペイオフ全面凍結解除について、「スケジュールどおりの解除が望ましいが、流動性預金に対する解除は大きなインパクトを与える。資金が流入する銀行や市場にも不安定をもたらすおそれがある」と指摘し、完全凍結解除に慎重な姿勢をにじませた。」というような記事が今日は目に付いたわけですけれども、そのペイオフの実施について、延期というのは多分考えないんだろうと思いますけれども、これから先、その四月までの間に何らかの対策を講ずる必要があると考えておられるのかどうかということをお聞きをしたいと思います。
  109. 速水優

    参考人速水優君) ペイオフの全面解禁につきましては、各方面からいろいろな意見が出されていることは承知しております。  我が国の金融機関は、不良債権問題の克服を始めとしてなお多くの課題を抱えております。来年四月からの全面解禁を展望するならば、金融機関としては、こうした課題に全力で取り組んで、内外からの信認の早期回復に向けていく努力をここで強化していくということがまず必要なことではないかと私は思っております。
  110. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 金融庁が中期ビジョンを作成しようとしているということが報道されているんですね。銀行が預金だけでなく株式や保険など様々な金融商品を取り扱うことができるようにするというものですね。総合金融サービスの機関にしようとするものですけれども、中期ビジョンのねらう方向は直接金融への誘導だと言われていますけれども、確かにこれまで日本は、銀行が金を集めて、そこから再分配をされていくという、間接金融という状況でお金や資金が使われてきたと思いますけれども、間接金融の在り方、あるいは直接金融の方向に変えていくというような、それぞれメリットとかデメリットというのはあるというふうに思いますけれども、我が国の経済も大変大きくなって、資金量も家計だけで一千四百兆円もの金融資産を持つようになると、その資金が銀行にだけ集中するというのはやっぱり負担が大き過ぎるというふうに思います。  私は、直接金融へ誘導することが至極当然だというふうに思いますけれども、直接金融になっていくことで、日銀の役割とかあるいは行動、態様というのが変わっていくのかどうかということをお聞きをしていきたいんですね。これまでの金融政策をそのまま継続していて十分なのか、あるいは変えていかなければならない点があるとすればそれはどこなのかということを教えていただきたいと思います。
  111. 速水優

    参考人速水優君) 金融システム金融市場、直接金融への大きな流れでありまして、こういった直接金融への大きな流れのほかに、デリバティブを始めとする様々な金融技術革新というのが、あるいは海外との資本移動の拡大といったような、常に変容を遂げている世界ではないかと思います。これらはいずれも金融政策の波及経路とか金融システムの安定性に影響を与えるものだと思います。  こういった環境の変化に対応して、金融政策の実効性を確保していく観点、これは大事だと思いますし、そのために金融政策の運営や調節手段の在り方については不断に見直しを行っておりますけれども、今後もそうした努力を続けてまいりたいと私ども考えております。
  112. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 一日の日に日銀短観が発表されましたけれども政府の底入れ宣言を裏付けるような内容になっていたというふうに思います。企業の景況感が改善されてきたことは大変喜ばしいことだというふうに思いますけれども、その改善の中身を見ると、国内の需要が盛り上がったのではなくて、輸出の増加が寄与しているという、いわゆる外需依存型で少し回復がされてきたという中身になっているというふうに思うのですけれども日銀としては今回のこの改善についてどのような判断をしていられるのか、お聞きをいたします。
  113. 藤原作彌

    参考人藤原作彌君) お答えします。  経済情勢を見ますと、先生指摘のとおり、輸出がはっきりと増加して先導し、生産も持ち直すという経路をたどっておりまして、景気は下げ止まりの方向に向けた動きが見られるというのが現状だと存じます。一方で、設備投資などの国内民需についてはまだ回復へのはっきりとした動きはうかがわれないところでございます。  先日私どもが公表しました短観も、基本的にはこうした今の情勢を裏付けていると思います。幾つかの点でそれが指摘できるかと思いますが、まず第一に企業の業況感、これは大企業の製造業を中心に改善されている。それから収益、収益も今年度はかなりの増益となる見通しというふうに表れております。もう一つは設備投資計画なんですが、これは、計画は依然として慎重であるということがアンケート調査でも出ております。  これをどう見るかですが、ここから先行きをどう占うか、非常に難しいところですけれども、まず、構造調整圧力が根強い下で、現在、製造業を中心にして見られる前向きの動きが、今後、非製造業とか中小企業の方にどういうふうに広がっていくのか、そういう点を注視していきたいと思います。  それから、為替市場も含めまして、金融・資本市場の動きが企業心理などにどういう影響を及ぼしていくか、そういう点にも注目して景気全体を注意深く見守ってまいりたいと考えております。
  114. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そうだと思いますね。外需への依存は大変、米国の景気回復もそれほどやっぱり強力なものでないことが分かってきましたし、為替レートもその変化によっては莫大な損失を被ってくるというようなこともありまして、非常に一時的なもので、この景況感も一時的なもので終わるのではないかという懸念がありますので、そこはじっくりと日銀も見定めていただいて、打つべき手は打っていっていただきたいなというふうに思っています。  最後に、さきの金融特別委員会の中でも大変議論になったというのを後で議事録を見て知ったわけですけれども、山一証券の日銀特融の焦げ付きの部分なんですけれども、千四百六十四億円が回収不能というふうに言われていますけれども、これについて、今日、塩川財務大臣に来ていただきましたので、宮澤大蔵大臣の当時、日銀にはその負担を掛けないんだということを答弁されているんですね、衆議院の大蔵委員会で。そのことを踏まえて改めて、塩川財務大臣も同じだろうというふうに思いますけれども、この日銀特融について財務省の考え方をもう一度聞かせていただきたいと思います。
  115. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 宮澤前大蔵大臣の発言されましたこと、これは現在の財務省におきましても責任持ってその趣旨を生かしていきたいと思っております。
  116. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 終わります。
  117. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 初めはペイオフのことも伺おうと思っていたんですが、今朝方から皆さんがいろいろ議論なさって、もう余りこれ以上聞いたところで仕方がないと思いますので、それは全くやめます。  一つ伺いたいのは、今、日本の経済が非常に難しいところに陥っていてどうしようかということで、政府はどうするか、日銀はどうするか、企業はどうするか、銀行はどうするか、個人はどうするかというようなことでやっているわけですが、この報告書いただいて、自分でも御苦労なことにと思いましたが、去年からのこの、政策委員会ですか、これの概要というのをずっとおしまいまで、どんなことを言っているのか見てまいりました。  そしたら、新聞などでは、その時々で日銀考えていることと政府考えていることには食い違いがあって、お互いにもどかしく思ったり、あるいは、そんなこと言ったってこっちがやることじゃないよと言っていたりして、それでどうのこうのというような記事が時々出たりして、何でもライバルを作って書くのがああいうところは好きですから、なんですが、これをずっと拝見していると、もう去年からずっとありますね、政府の方が出席して、政府からの発言というのがあります。それ見ていますと、全く、ほとんど同じなんですね。一応注文を付けるわけですが、その後で皆さんが決定をなさる。もうパターンはずっと同じなんで、お一人この間お辞めになった審議委員の方が一貫してまた同じことをおっしゃって反対をされて、八対一とかなんとかいうのがずっと続くというのは、これはどこを読んでも同じ。それから、政府の言うこともまた同じなんですね。まあ少しずつ変わっておりますけれども、とにかく潤沢にお金を供給してもらいたいというのは、これは続けてもらいたいというのは言っている。  それから、これどこを見ても、これだけあるんですけれども、全く同じでびっくりするぐらいの話ですが、簡単に言うと、要するに認識は同じであると、ほとんど。しかし、だけれども、双方、「規制緩和等による需要発掘や不良債権処理の必要性が指摘されてきたが、双方その必要性を十分認識しつつも、それぞれに難しい問題を抱えるなかで現在に至っている。」というようなことをまず言って、それで言っていることは、「政府としても新しい領域に踏み出していく覚悟であるので、日本銀行には、選択肢をできるだけ広げ、デフレ阻止に向けて適切かつ機動的な金融政策をお願いしたい。」と。これはもう毎回出てきます。それから、「日本銀行におかれては物価下落を阻止するための政策論議を深めて頂きたい」、それから、「デフレ懸念払拭のため、金融調節にあたり新たな工夫を講じることを含め、経済により効果のある政策を幅広くご検討頂きたい。」。こういうことが毎回毎回繰り返されて、と書いてある。そして採決をして、八対一でずっとこう推移をして、その間、細かい対策などは付け加えられたりしておりますが、全く同じなんですね。  おしまい、ちょっと変わっているのが、内閣府の方が来られて、「政府としては、」この不良債権の問題、「この問題の終息感が持てるような積極的な対応を行いたい。」というようなことを言っているんですが、その次に、「構造改革が遅れているとの指摘があるが、レーガン、サッチャー政権でも、大きな改革を実施するのに数年かけている。わが国の場合、既に一年目で多くの特殊法人改革を決めるなど、決して遅いわけではない。」なんというのが新顔として出てきます。だけど、あとはまた同じで、「幅広くご検討頂き思い切った対応が採られるようお願いしたい。」と。  報道にかかわらず、もしここに書かれているようなことしか言っていないんだとしたら、こういうことなんでしょうか、本当に。こういうこともどうか、ああいうこともどうかというような具体的な話というのは、こういう審議委員会では全然出てこないんですか。それをちょっと伺いたいと思うんです。これ、本当にこんな厚いんですが、大体、十ページあって以下同じと書けば大体済んじゃうようなことで。  そうすると、まずそうなっているかどうかを伺いたいんですが、その先を言いますと、どうも日本でうまくいかない、いかないという話が横行しますけれども、いろんな意味で期待値が少し上がり過ぎちゃっているようなところがある。確かに、バブルの後から景気が悪くなってきましたけれども、特に小泉さん以来、竹中大臣などがおっしゃるのに、日本の潜在的な成長力というのは大体三%から四%あるはずだから、ちゃんとやればそうなるんだというようなことをおっしゃって、そうかと思うでしょう。  それから、それにはやっぱり財政金融が大事だと。それで、政府も何かやるだろうし、日本銀行も頭のいい方がそろっておられるんだから、専門家でもあるし、何かきっといい手を考えておられるに違いない。ところが、その相談の中で、こういう非常にあいまいもこたる言葉で、適切かつ積極的な対応をお願いしたいと。それで、それを聞いて、分かりました、では採決にというようなことを続けているとすると、何か不思議なんですね。結局、みんな何か知恵が出るんだろうと思っているんだけれども、知恵を出し惜しみをしているのか、無能のために出ないのか、あるいは元々そんなものはないのかという辺りがはっきりしないために、みんなが何かうまいことあるんじゃないかというので勝手なことを言い出すと。また、経済危機突破の秘策なんというような本を書くと、名前によっちゃやたらに売れて、こういう方々だけがもうけるというような話にもなってしまう。  それ、どうなんでしょうか。こういうところには書けないけれども、いろいろ具体的な、こんなことはどうだろうか、あんなことはどうだろうかというようなことは、どこかの会議、これでなくてもいいんですけれども、でやっていらっしゃるのか、やっていらっしゃらないのか。そうでないと、ポテンヒットみたいに、両方で、あなたのところでやることでしょうと、こう言っていると、もうどんどんどんどんヒットを打たれて、ちっともはかばかしいことが起こらないというようなところにどうも陥っているんじゃないかというような感じを持ちますが、いかがでしょうか。
  118. 速水優

    参考人速水優君) 外から見ておられると、そういう、毎回同じことを議論しているじゃないか、それで少しずつ量が増えていっているだけじゃないか、それでいつも、構造改革あるいは不良貸出し整理、そういうものが早く行われることを期待しているといったことを繰り返していると。そういうものが出てきて初めて、我々が緩めている金融緩和というのが効果を本当に、民間需要がその上それを使って動き始めて日本経済伸びていくんだということを繰り返しているとおっしゃったんだろうと思うんですが、まとめて言えばそういうことかもしれません。  しかし、この一年を見ましても、やはり今の政権になってかなりの変革をやっておりますし、私どもが、地方の支店から、構造改革の進展と企業の取組についてどういう成功ができて、うまくいっているのがあるのかということを調べてもらったんですが、いろんなことを報告してくれております。例えば、規制緩和に伴う新規参入で、タクシー会社が路線バス事業へ進出し出したとか、水道管理事業へ民間の環境装置のメーカーが参入し始めたとか、あるいは環境、介護、医療、そういった二十一世紀型の新産業にいろんな循環型の経済社会対応のビジネスが工事を始めているとか、あるいはストック型会社、今まで会社の独身寮に使っていた建物を今度は老人ホームに切り替えたとか、そういういろんな変革が成功している例が報告されております。  そのほかにも、新技術の開発、燃料電池の自動車の開発の話だとか、そのほかにも、医療関係の新しい装置をどんどん開発しているとか、産学協同の協力関係が非常にうまく始まったとか、あるいは地元で大変有力なベンチャーキャピタルが設立されて、それに対して地方の公共団体が法人税、法人事業税とか不動産取得税を大幅に軽減している、そういった例が進んでいるんですね。  こういうものがもう少し本当に広まってくれば構造改革というのは実ってくると思うんです、やや遅いですけれども。しかし、それはもうそれこそ、レーガンでありサッチャーであり、そう一年で全部できるものではなかったはずなんですね。動き出しているということはやっぱり高く評価すべきだと思うし、私どもが先に量的緩和を思い切りやったと。それが民間の需要が、そういった税制やらあるいは元気を付けるいろいろな手が打たれていって、そういうもので民間需要が動き始める、それが量的緩和に支えられて経済成長ができていくと。  やはり、改革なくして成長ないというのは私も正しいことだと思いますし、成長があって始めて物価も上がっていくんだろうと思いますので、その辺はもう少し、粘り強く私どももやっていきますが、粘り強く見ていていただきたいと思います。
  119. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ちょっと私の申したことを少し取り違えられておっしゃったような気がするんですが、構造改革やってくれなきゃこっちが何やってもうまくいく限度があるとずっとおっしゃっていただいていることはよく分かっている。  それに対して、今申したのは、政府の方々が出てきて言っていることについて、同じことがずっと続いてくるねということで、そういう意味からいえば全く同じことなんですが、私も全くそう思うので、この前に、やっぱり御報告いただいたときに質問して、そのときに、幾らガソリンを積み上げても自動車のエンジンが壊れていたら何も動かないと。ですから、本当のプレーヤーがしっかりしなきゃどうにもならぬねということを申し上げて、だから余計なことはやるなと申し上げた記憶があるんですね。それは全く変わっていないわけです。  ですから、むしろ政府日銀に対して適切かつ積極的なと言うのは一体何なのかということが分からないと、実際よく分からない。それでまた、一年でそんなにできるものじゃないよと、こういったようなのも政府が最近おっしゃっていることなんですけれども。  それで、一つ思い出すんですが、私、もう大分前ですが、牛肉の輸入というのが大変問題になったことが昔ありました、中川さんが農林大臣のとき。それで、たまたま選挙区におりましたら、牛を飼っている五、六人の青年がやってきて、是非話をしたいと。牛肉の輸入阻止というようなことがはやっていましたのでこっちも身構えて会ったんですね。そうしましたら、そんな話に来たんじゃないと。みんな数十頭以上の人たちでした。政府とか政治家の方は牛肉は入れませんというようなことを繰り返されるけれども、そんなことは無理だろうということは我々に分かっている。そこで伺いたいのは、いつごろ、どのぐらいの条件で牛肉が外から入ってくるかという見極めを付けるためにそれを聞きたいと、こう言うんですね。我々だって事業家ですと。しかし、環境がどうなるか分からないところで事業計画は立てられないんで、それを教えてくれたら我々はそれに合わせて何とか成功することを考えたいということを言いまして、これは私も大変感心した。  大変仲良しになりましたけれども、そういうところがどうも今のプレーヤーたちに少しずつ薄れてきているんじゃないかというのが私の一番の危惧の念でありまして、そのいわゆるアントルプルーナーシップのようなものが薄れてきている一つの理由としては、余りにも何か、だれかがやってくれるという気分を与え過ぎているところにあるんじゃないか。こういう全く同じようなことを言って、しかし、適切かつ機動的、積極的な政策をやってもらいたいと偉い人が言っているからにはそういうのがあるんじゃないかと。余りないんだろうと思うんですけれども。ですから、その辺りもう少し物事をはっきりさせるということは難しいんだろうかという気がします。  ついでに、最後に伺いますが、この間、アメリカの財務長官のオニールさんがやっぱり同じようなことを言いましたね。日本の経済の現況について非常に不満であるようなことを言って、あるいは世界の経済の足を引っ張る要因だというようなことをどこかの講演で言った。そして、もっと積極的な金融政策をやってもらえないものかというようなことがその言葉の中に入っていたように思います。一体、もし本当にそういういい考え持っているんだったら聞きたいよというような気がするんですね。これは、ですからこの政策審議委員会だけの話じゃなしに、国際的にも日本の経済というのは非常な関心事であることは確かですが、そこ辺りは一体、アメリカにしても、あるいはほかのG7の国なんかにしても、名案があって、具体的に何かこうしたらどうかねというような話というのはあるんでしょうか。
  120. 速水優

    参考人速水優君) アメリカが日本にいろいろアドバイスをしてくれるというのは有り難い話ですけれども、私どもも十分連銀などには現状をよく話をしておりますし、分かってくれていると思います。  ただ、今までほかの中央銀行でやったことのないようなことを今やっておりますので、これは彼らにも非常に参考にはなりつつあるんじゃないかと思いますけれども、私どもとしても初めてのことですから、いろいろ周囲の市場の変化を見ながら、そしてまた内外の情勢を見ながら事を進めていくしかないと思います。こういうことがやれるんだとか、ああいうことがやれるんだというのはいろいろ中で議論はしたりしておりますけれども、そういうものを今すぐ持ち出せるものでもありませんし、おっしゃるようなことはいろいろ勉強しながら今後の内外情勢の変化に対応してまいりたいというふうに思っております。
  121. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 日本のことは十分に分からないで、いかがわしい理論か何かで、基づいて、こんなことをやればあいつらうまくいくのにというような話もあるんだろうと思うんですね、アメリカにもインチキな経済学者はたくさんおりますから。  それで、そういう話をきっちりしてもらえば、それは駄目だよとかいう話をあるいはしないと、さっき言いましたような期待感みたいなものがふわふわっと国際的にまで広がっちまうと、大変にこちらの本格的な経済回復なり構造改革なりに対するつまらない圧力になってしまう。  やはり中央銀行のお付き合いというのはおありなんですから、そこ辺りもいろいろと目を配りながら、突っ込んだ議論を時々やっぱりきちっとやっていただけると大変有り難いと思って、それをお願いしておきます。  終わります。
  122. 山下八洲夫

    委員長山下洲夫君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十三分散会