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参考人(
岡田恒男君)
岡田でございます。スライドを使って御説明申し上げます。(スライド映写)
このスライドと同じものは、少し小そうございますが、お手元に一ページに六枚入れてお配りいたしております。全部で十六枚ございます。
私は、一九七七年以来、
東海地震対策のうち、専門が建築でございますので、
静岡における建築、建物の対策についていろんな形で関係してまいりました。本日は、それらの
現状あるいは今後の課題などについて私の考えを申し述べたいと思います。さらに、今年に入ってからでございますが、私、中央防災会議の
東海地震対策専門
調査会の座長をお引受けいたしておりまして、
最後にその辺につきましても若干触れたいと考えております。
静岡県におきまして、これは
静岡県だけじゃないんですが、これまで行われてまいりました建物の
地震対策というのは三つプラス一と申し上げていいかと思います。
まず、既存の建物、造ってしまった建物が
地震が来たときに大丈夫かどうかという診断をして、危ないものは補強をします。これから造る建物、新築の建物は危ないものは使わない、造らないということで、
静岡県におきましては、あるいは
東海地震の強化
地域内の建物につきましては、一般の建物より少しレベルの高い設計基準を作りまして、造ってまいってきております。三番目は、不幸にして被害を受けた建物の対策であります。一〇〇%の対策はできませんので、被害が起きたときにどうするか、いち早くその建物が危険であるかどうかというのを判断し、危険な建物から逃げる、それからまた、直せるものは直していくと。例えば応急危険度判定などがございます。それに加えて、全体の被害を
予測し、しかるべく対策を立てるための被害
予測あるいは被害想定というものがございます。この辺について簡単に申し上げたいと考えているわけでございます。
ちょっと細かくなりますが、図が小さくなりますけれ
ども、この辺の対策が今申しましたように行われましたのが、こちらが国全体の
動きであります。それから、こちらが
静岡県の
動きだとお考えください。一九七七年に
静岡県には
地震対策課というのができまして、いろんな対策を始め出した。私もちょうど、このころ耐震診断基準というものを作ろうという
動きがございまして、私がこの鉄筋コンクリートの建物の診断基準を作る責任者だったもので、これができたのも七七年でございました。早速これを応用するといいますか、適用する第一号として
静岡県の建物を診断して、危ないものを見付け出して改修したらどうだということを当時の
山本知事に申し上げましたら、県の対策として取り上げていただきまして、これがスタートいたしました。これが現在も続いております。
静岡県におきましては、七八年に既に第一次の被害想定というのを発表しております。それから、新しい建物に関しましては、ここになりますけれ
ども、七九年でございます。既に、八一年に建築基準法が変わりますが、耐震基準が厳しくなったんですが、その準備がこの辺からされておりました。いろいろ
研究とかいろんな準備がされて大体
方向が見えておりましたので、
静岡県に申し上げて、
静岡県特有の建築の設計基準、特に耐震の問題を国の建築基準よりも格上げする。さらに、八一年に基準が変わるであろうと。新耐震設計法というのが八一年、通称、採用されたわけですが、これを先取りしてやろうということで、数年前から、新しい建物については
静岡県には一般の地区よりはいいものを造るということがスタートいたしてきておりました。
それから、その次、その辺の改定をしたりしまして、一九九二年には応急危険度判定士の登録制度というのができまして、
地震が起こりますと、登録されている建築士が現場に行って、その建物、住んでもいいかどうかとかいう判定をするという制度をいち早く取り入れたわけでございます。これにつきましては、一九八一年から国の方でいろいろな準備が進んでいたんですが、なかなか普及しませんでしたが、九二年に
静岡県と神奈川県でこの制度ができたわけであります。
そうこうしているうちに阪神・淡路大震災が起こってまいりました。
静岡県の方では
地震対策三百日アクションプログラムというのをお作りになって、全体のそれまでの対策が正しかったかどうか、抜けはないかというチェックをされました。さらに、第三次の被害想定、阪神・淡路大震災の結果も踏まえまして被害想定の見直しをやると同時に、いろいろなものの見直しが進んでおりますが、特に、本日、少し時間を掛けて申し上げたいのは、
最後のTOUKAI—〇プロジェクト、これは
静岡県の方がお考えになって、TOUKAIというのは
東海地震の
東海と建物がつぶれるの倒壊を掛けて、それをゼロにしようと。これは、阪神・淡路大震災におきまして、木造住宅が倒壊して人が亡くなったということが一番大きな
災害を引き起こす原因であったということから、死者をゼロにしようと、
東海地震が来ても建物の倒壊をゼロにし死者をゼロにしようというプロジェクトが開始されたわけであります。
さて、このような対策、私自身もかかわってまいりまして、それでは、
東海地震が来たら
静岡県の地面はどう揺れるか、建物はどのくらい揺れるのかということをある
程度想定をしなきゃいけません。学問的に
研究段階でございますので、余り細かいことまでは分かりません。そこで、私
どもが
静岡県における建物の耐震化の目標というのはどのくらいにすればいいだろうかというのを七七年、八年ごろ決めさせていただきました。これが県の指針や何かにいまだに使われている基本の概念でございます。ただし、余り細かいことは分かりませんので、大ざっぱな議論だとお考えください。
これは、縦軸は耐震の度合いであります。1というのが基準です。この基準は何かというと、東京に今普通に造られている建物の耐震の、
地震に対する強さです。実際はこんなにぴしっとそろっておりませんで、強いものもあるでしょうし、これよりちょっと弱いのもあるかもしれません。ざくっと1ぐらいだと思ったときに、東京に建っている超高層はどのくらいだろうかと。これもかなり無責任な推定でありますが、いろんなことを考えると五割増しぐらいだろうと。
静岡県の建物をどうしようかということで、
静岡県におきましては、
東海地震がもし来たとすれば、それは従来考えていた
地震よりはちょっと大きそうだと、地面の揺れがですね。そこで、
静岡県の一般の建物に関しましては、例えば東京の、あるいは全国の普通の建物の五割増し、さらに公共建築につきましてはそれの二五%増し、
静岡県の超高層はもうちょっとということでこれ二・二五倍と、細かく計算すれば出てまいりますが、というぐらいのグレードを付けながら造っていったらどうだろうかというのが今日まで続いている考え。これは、新しい建物を建てるときもそうでありますし、既存の建物を補強するときの補強の目安もこういうものを使ってきております。つまり、国の基準よりは上乗せしてやってきたということであります。
しかしながら、阪神・淡路大震災の経験も踏まえまして被害想定というのをやってみますと、まだまだ被害は深刻な被害が出る
可能性があるという
予測が出てまいります。これは、阪神・淡路大震災とそろえまして、大体、午前五時ごろ
地震が起こったらどうだろうかと。ほかの、いろいろ条件あります。被害想定というのはいろんな仮定を積み上げて計算、コンピューターをわっと回してやるものですからそんなに細かいところまで当たるはずがないんですが、大づかみには大体の見当が付くだろうという数字だとお考えください。それに、赤は阪神・淡路大震災のときの実際の数を、概数を入れてみました。人口は
静岡県が大体三百八十万ぐらい。阪神・淡路大震災のときの震度五地区にいた人たちが二百万ちょっとぐらいです。オーダーはあったぐらいだとお考えください、マグニチュードはちょっと違いますが。
さて、
静岡県の予想では、
予知できなかったら、
東海地震が、死者が五千九百人。もし
予知できれば千五百人ぐらいに減るんだろうか。
島崎先生のお話でなかなか
予知が難しいということは
理解しておりますが、これ
予知していただければ
災害はこんなに減るんではないかという期待感はございます。阪神は六千四百三十二人であります。
災害の
程度を御想像いただければいいと思います。例えば、木造住宅は十万戸近くが崩れるのではないかという
予測があります。阪神の場合が大体五万戸ぐらいであります。鉄筋コンクリートの建物にしましても四千棟ぐらい。阪神で大体三千棟ぐらいが壊れております。というような被害があります。これをこれから何とかして減らしていかなきゃいけない。
この被害
予測については、前の一次、二次を比べますと、二十五年間対策をやっている割には余り減っていないというふうにお考えではないかと思いますが、実はいろいろ
調査が進むと新しいタイプの被害などが出てまいりまして、対策で減らしているんだけれ
ども、何か今まで気が付かなかったのが出るんじゃないかという
予測で、なかなかこういう数字が減ってこないというのが悩みであります。
その中で、今一番、TOUKAI—〇プロジェクトで急がれているのは木造住宅の耐震化でありまして、大体、
静岡県に一千万戸ぐらいの、これ失礼、百万戸ですね。ゼロが一つ多いな、ごめんなさい。一千万、これは全国の値だ。ゼロ一つ外さなきゃいけません。百十万戸ぐらいのうちの六十万戸ぐらいはとにかく診断してみないとどうも気になるよということでありますけれ
ども、これがまだ一〇%ぐらいしか進んでおりません。
それから、鉄筋コンクリートにつきましては、大体四、五万棟あるんですが、そのうちの三万棟ぐらいはちゃんと健康診断をしてもらわなきゃ心配だというものでありますが、そのうち八割以上が民間の建物です。二〇%弱が公共の建築です。
公共の建物については、この二十五年間で診断はほとんど終わったと言うと言い過ぎがあるが、かなりの
部分進みました。しかしながら、その中から危ないものを見付け出して補強した率は、県有の建物でも五〇%
程度でありますから、市町村を含めますとこれよりは低くなっております。
民間の建築につきましては、これなかなか
データが、細かい
データが取れませんけれ
ども、ほとんど進んでいないと申し上げていいのではないかと思います。数が一番多いものが遅れているというのが気になるところであります。TOUKAIプロジェクトでは、これまた間違えています、済みません。千百じゃありません。百十万戸でありますが、今申しましたように、それを耐震のうちの六十万戸を対象にして木造住宅をとにかく強くしようと。これは、確かに
災害を減らす一番手っ取り早い方法ではないかと思います。
そこで、五か年計画で一万戸を補強して一万戸建て替えようということで、そういうことのできる技術者を育成したり県の費用で派遣したり、あるいは安くできる、簡便にできる補強工法の開発、収集、普及と言っておりますが、と同時に、これはどうも、こういうものを進めるのに一番の難しい面が費用の面でございまして、これにつきましては、県の方で木造住宅に一軒三十万まで補助しよう、それに市町村の補助を足してほしい、さらに国から補助が出るならそれを足そうということで進めましたが、幸いに、今年度から国土交通省住宅局の方で新しい制度を作っていただきました。住宅の耐震改修に関する支援措置の創設ということで、木造住宅、これは私有財産に公費を投入することに対する議論が長年続いておりますが、私有財産であっても町中の建物というのは、例えば阪神のときには道路に倒れてまいりました。そのために救援活動が一切できなくなった例とか、あるいは火事が止まるはずだったのが、倒れた住宅を橋にして隣のブロックまで火事が行ってしまったとかいうようなことがございまして、これは公共的に何かをしなきゃいけないということで、若干の国からの補助も出るようになりました。その辺を合わせ技で何とか減らそうというのが今
静岡県で行われている
状況でございます。
一般のビル物、鉄筋コンクリートなどにつきましては、時間が迫ってまいり余り細かく申し上げませんが、先ほど申しました
静岡については、一般の地区よりも五〇%は少なくとも
地震に対して強い建物を造ろうではないか、あるいは強い補強をしようではないかということで進めてまいりましたが、阪神・淡路大震災のときにその辺が若干検証できました。
これ、一言だけ申し上げますと、
静岡県内にある建物がどのくらいの耐震性を持っているかというのを、横軸に点数を付けまして、縦軸はその頻度分布を作ってみた、これ、十五年ぐらい前に作ったんですが、こんな分布をしていると。非常に強いものもあるけれ
ども、弱いものもあると。そのうち、どの辺の建物が壊れるか。当然、弱い建物が壊れるわけでありますが、一般、全国的には、今、この緑の線より右に来るように建物を造るとそんなに大きな被害は出ないんではないかといってお勧めしておりますけれ
ども、
静岡の場合はこのブルーの線よりもっと強くしようということをお勧めいたしておりましたところ、そのグラフに、茶色の縦の棒は、阪神・淡路大震災のときに壊れた建物を調べてみてプロットしてみると、
静岡ぐらいのレベルにしておけば、若干例外はありますが、阪神の震度七地区ぐらいの被害は、あのぐらいの揺れに対しては何とかつぶれるということは防げそうだということも分かってまいりました。
それから、被災建築物につきましてはこういう応急危険度判定というのをやっておりますが、先ほど申しましたように、九二年から
静岡県ではこういう対策をやっておりまして、阪神・淡路大震災が起こりましたときは三千人ぐらいの技術者が登録されておりまして、その
方々が神戸地区に出ていきましていろいろ活躍していただきました。その後、こういう対策が全国に広まりまして、これは
静岡県でも今九千人近い方が登録が終わり、訓練も行われており、私もそれの免許証を持っておりますし、ついでに東京都とか、持ち歩いておりますが、神奈川県とか兵庫県とか、文部科学省では全国の学校をチェックするというような制度を作りまして、いろんなこういうことも進んでまいりました。
しかしながら、これちょっと申し上げますが、
最後に、いろんな国の中央防災会議の下の専門
調査会で、
地震学の溝上先生が座長をされておりました
東海地震に関する
調査会では、
震源域の見直しが行われましたし、震度
予測も新しくされております。
私が引き受けました対策専門
調査会、始まったばかりでございますけれ
ども、その辺を受けまして、先ほ
どもちょっと
塩坂参考人の方からお話出ましたけれ
ども、
震源域が西の方に
動きそうだ、形も少し変わりそうだということで、強化
地域も広げる提案をさせていただいて、強化
地域の指定が見直しがされましたけれ
ども、この辺が
静岡県辺りにいろいろ
影響が出てまいります。
と申しますのは、七八年辺りからは
震源域を今度の想定よりは少し
東側だと思って、それも非常に粗っぽく、震源に近いところは今申しましたような五割増しぐらいの対策をやろうや、ただ、離れてくるとそんなことしなくてもいいだろうというようなことをやっておりましたが、今回いろいろ
調査されて、
震源域が西の方に来るとなると、そんなに強くしなくても一般の
地域並みでもいいだろうと思っていたところもまた格上げをしなきゃいけないというような対策をする必要がございます。この辺が新しい課題として上がってきております。
それから、ちょっとまとめますと、いろいろ阪神・淡路大震災の結果な
ども踏まえて新たに対策を見直してみると、いろいろ検討しなきゃいけないことも出てきておりますが、ここ二十五年ぐらいやってきた大きな基本方針、流れはそんなに違った
方向には行っていなかったんではないかと私
ども考えておりますけれ
ども、その辺が分かれば分かるほど、まだやっていない、対策をやっていない
部分が一杯出ております。
その一番が先ほど申した木造住宅の耐震化の問題でございますけれ
ども、こういう対策を、これは
静岡県を越えて、今回新しく強化
地域に入ってきた、指定せざるを得なくなった
地域辺りにつきましても、こういう同様の対策をできるだけ早くする必要があるんではないかと思います。
地震がいつ来るか、なかなか難しいようでございます。私
どもは対策をする側でございます。
地震がいつ来てもいいように、
地震が来るよりは早く対策を終えたいというふうな考えで進めております。是非、そういうことを進める上に、この
委員会の先生方、お力をかしていただければ幸いでございます。
以上で終わります。