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最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 最高
裁判所の民事
局長をしております千葉でございます。
私の方からは
配偶者の
暴力の
防止及び
被害者の
保護に関する
法律施行後の
保護命令手続の運用
状況、これを
中心に御
説明をさせていただきます。
まず、
保護命令手続の流れについてでございます。
法律で定められております
保護命令手続の主な流れは、お
手元の
資料の三枚目の概念図がございます。「
配偶者暴力に関する
保護命令の発令まで」というこの図のようになります。
保護命令事件を担当する各地方
裁判所では、この流れに沿って適切にかつ迅速に
保護命令手続の審理をすることができるように取り組んでいるところでございます。
まず、
裁判所は
被害者からの
申立て書を受理して審査を始める、審理を始めるということになりますけれども、実際には、
申立てに先立って窓口で
保護命令手続に関する
相談に応じるということが少なくありません。
申立人に弁護士が付いていない事案は全体の約六割と、
被害者本人の
申立ての方が多いと、こういう
状況でもあります。
相談の際には、
申立て方法等について分かりやすく
説明をしたり、
申立人の
状況や必要に応じて、例えば個室などで
相談を受ける、
被害者の
保護やプライバシーに
配慮するように努めております。ここの図と
説明文は、
被害者が
裁判所によりアクセスしやすいように最高裁の
ホームページに掲載をしているものでございます。
また、法は、
申立て書に
警察やDV
センターへの
相談等の事実の記載若しくは
宣誓供述書の添付を求めております。これは
保護命令の速やかな
処理のために必要とされることでありまして、
警察等に
相談等をした事実がある場合には、
裁判所は受理後速やかに
相談時の
状況等について記載した
書面の提出を
警察にお願いをしているわけであります。
加えまして、
保護命令を発する場合には、原則として
加害者からも事情を聴く、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を開くことが必要とされておりますので、
裁判所は相手方
加害者を呼び出して期日を開くということになります。そして
申立て書、それから
警察等からの回答、期日での当事者の
説明内容等を総合した結果、
被害者が更なる
配偶者からの
暴力により、その生命、身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるときは、
裁判所は
保護命令を発するということになるわけでございます。
保護命令を発令した場合には、取締りの実効性を確保するために、
裁判所書記官は速やかに
警察にその旨を連絡するというのが
手続の流れでございます。
この
保護命令事件の
処理状況でございますが、
施行以後の
保護命令事件の
処理状況は、お
手元の
資料一のとおりでございます。最初に、これは各庁からの報告に基づく概数であるということをお断りしておきたいと思います。
平成十三年の十月の十三日から同年十二月末日までに申し立てられました
保護命令事件は百七十一件、終了した事件が百五十三件、十八件が未済、つまり十二月末日現在審理中というものであります。終了した百五十三件のうち
保護命令が発せられたものが百二十三件、そのうち
接近禁止命令のみ発せられたものが九十一件、
接近禁止命令と
退去命令の双方が発せられたものが三十二件になります。ほかは
申立てが却下されたものが四件、取り下げられたものが二十六件あります。
保護命令が発せられた事案について
申立てから発令までに掛かった日数の平均でございますが、これは九・〇日でございます。
なお、
資料三は、法
施行後初めて
保護命令が発せられたと思われる事件について報道された新聞記事、これを参考までに配付してございます。
次に、適切な
処理のための
裁判所の
取組でございます。
保護命令に関する
手続は、当事者の
申立てにより相手に対して刑罰の根拠となる命令を
裁判所が発令するという、我が国ではこれまで同様の制度がなかった初めての制度でございます。また、
法律上、速やかに裁判をすることや、
被害者の人権尊重、秘密の保持が求められているものであります。加えて、事件の性質上、
被害者の安全確保にも
配慮することが大切になっております。そのため、
裁判所としても、法の
趣旨を正確に理解をして的確な運用ができるように、法
施行以前から
検討を重ねております。
例えば、東京地方
裁判所と大阪地方
裁判所、日本で大きい二つの
裁判所でございますが、法
施行前から共同して協議を重ねまして運用上の留意点などをまとめたものを
作成をしておりまして、これは
法律雑誌に発表されて
全国的な運用の指針となるような、そういう役割を果たしているところであります。
各庁ではこの法
施行、各庁と申しますか
全国の
裁判所でございますが、法
施行後にも機会をとらえましていろんな協議を行うなど、より適切な事件
処理ができるような工夫や
検討を重ねているというところでございます。
特に、
被害者に対する裁判
職員の言動等に
配慮をする、これはもう当然のことでございまして、これは当然でございます。そのほか、不測の事態を避けるために、例えば、両当事者が審尋期日に顔を合わせないように、当事者の待ち合わせ
場所とか、あるいは
裁判所に入る、あるいは
裁判所から帰る、その入庁退庁経路にも
配慮をする、それから事故などの発生に備えて警備にも意を用いるなどしております。今後も引き続き、このような
被害者の置かれた
立場とその安全に
配慮した
取組を続けていきたいと考えております。
加えて、
保護命令手続の円滑な実施のためには、
警察それから各
都道府県下の
婦人相談所、DV
センターでございますが、など
関係する各種の行政
機関との緊密な
連携が図られることが大切であると思われます。
先ほどもお話がございましたけれども、最高裁としましても、
警察庁や
厚生労働省と
意見交換をしたり、
様式の統一について
意見交換、ディスカッションをしたり、また各庁では、各地方
裁判所では、
地方公共団体が開催する
配偶者暴力に関する
研修会とか協議会とか、そういった場に
裁判所からも参加をさせていただくなどして
連携体制を図ってきております。
最後に、
職務関係者への
教育及び啓発についてでございます。
裁判所における裁判官その他の
職員への
研修等については次のようになっております。
まず、
女性に対する
暴力に関する
研修につきましては、その重要性を考慮いたしまして、司法
研修所における裁判官の
研修・研究会、ここでのカリキュラムに積極的にこの問題を取り入れるようにしております。各種研究会で
DV防止法の
趣旨及び
手続について専門的な観点から
説明をし、その際、
女性に対する
暴力の問題も取り上げていますが、これに関連しまして、
男女共同参画社会の
在り方についての講演などを行う、そういうカリキュラムも実施しております。そのほか、刑事事件、家事事件、少年事件に関する実務研究会というのがございますが、ここにおきましても広く夫婦間の
暴力の問題や
犯罪被害者の
保護に関する問題などをテーマとするカリキュラムの中で、
女性に対する
暴力に関する問題についても取り上げているところでございます。
また、裁判官に任官する前の司法修習の段階におきましても、ジェンダーの問題とか
配偶者間の
暴力などをテーマとしたカリキュラムや、
犯罪被害者の
保護に関するカリキュラムを実施しております。さらに、裁判官以外の裁判
職員を対象とする
研修につきましても、書記官
研修所とか
家庭裁判所調査官
研修所の
研修の中で、
保護命令制度の留意点及び夫婦間
暴力の問題に関する講義等を実施しております。
加えて、各地の
裁判所においては、円滑な法の実施が可能となるように運用についての実務レベルの協議や
研修などを実施しております。
例えば、大阪高等
裁判所では、管内の地方
裁判所の裁判官や書記官を集めまして、
配偶者からの
暴力の
特性とか問題点について
研修を行うとともに、
保護命令事件の
処理に当たって考慮すべき
事項等についての協議を行っておりますし、また東京地方
裁判所では、裁判官の研究会のテーマに
男女共同参画問題を取り上げまして、外部講師を招いて講演会を開いたりするなどの工夫、これは一例でございますけれども、こういった工夫をしておるわけでございます。
今後とも、各種の
研修の機会等を通じまして、法に対する理解を深めるように努めていきたいと考えております。
以上でございます。