○五十嵐
委員 李下に冠を正さずという言葉がございます。これは、権力を持つ側は
最大限の注意を持って公正な運営がなされるように気をつけなければならないということだろうと思います。これらの問題については引き続き調査をさせていただきたいと思います。
次に、パネルをちょっと見ていただきたいと思うのですが、経済問題に移ります。
実質GDPの成長率なんですが、よく見る図であります。この波は当然需給によって起きてくるわけですけれども、この波だけが注目をされますけれども、実際には、この帯全体の流れが私は重要だと思うのです。
このそれぞれの帯の中で波があるというのが当たり前のことでありますけれども、これは需要の追加によって上がりますし、公共
事業の追加によっても数字は動きます。しかし、この帯は一貫して下り坂であります。この長期的な成長率のトレンド、これは供給側の要因で決まるというのが今の経済学の常識であります。この長期的なトレンドは供給側の事情で変わる、それは供給が需要をつくり出すということであります。
例えば、ディズニーランドを御存じだろうと思いますけれども、常に新しいアトラクションを、今度ディズニーシーというのができましたけれども、次々につくっていくというようなことで新たな需要を引き出すから、この不況の中でもかなりな集客能力を維持し、また発展をさせているということがわかる。
あるいは、昔のこと、三Cというのがありましたね。クーラー、カー、カラーテレビ。こういったものを供給側が提供し、イノベーションによっていいものにし、あるいは努力によって価格を下げるということによって需要が生まれるという形で、全体的な成長率のトレンドというのは供給側の要因で決まる、これが今や常識になっているわけです。
日本以外の国で、景気対策のために公共
事業で、フィスカルポリシーといいますけれども、財政出動をするという国はもはやないんです。公共
事業というのは社会の基盤をつくるということでありますから、長期的な視野に立って、計画に立って、国家百年の計に立って計画的に整備を進めていく、優先度をつけて整備を進めていくべきものであって、そのときそのときの景気の道具に使うというのはもうやっていない。むしろ、それは基本的な経済の成長にマイナスに働くというのが世界の常識であります。
私、なぜ構造不況が起きるかというのをよく考えてみたんですよ。(パネルを示す)大もとには、環境として経済のグローバル化というのがあります。そして、この経済のグローバル化が全体に影響しているんですが、構造不況というのは結局何か。
一つは、先ほど言いました供給の質の問題、競争力の低下が日本は起きているということですね。
去年も、一年前に
説明をいたしました。かつて日本は第二位だったんです。経済の競争力が二位だった。一方的に落ち続けて、今や二十六位であります。大変な競争力の低下が起きている。これは供給側に問題があり、生産性の伸びが低い分野に人や物や財が停滞していて、生産性の高い分野に移行していない、非効率的な資源配分があるということが原因になってくるわけであります。
もう
一つは、デフレの問題があります。当然ながら、デフレの問題があります。
この二つが構造不況をもたらしている。だから、循環的には確かに需要はあるけれども、需給のバランス論があるけれども、それは一時的にしかきかない。特に、財政がこれだけ逼迫してくると、ほんの一時的にしかきかないんです。ですから、基本的にはこの構造問題が片づかなければだめだという御認識を
総理も持っているから、聖域なき構造
改革というふうに言われているんだろうと思います。
では、この供給の質の問題、競争力の低下とデフレがどこから出てくるかというのを私が考えますと、これは
一つは、先ほどその辺でありましたが、明らかな需給ギャップという問題があります。もう
一つは、金融仲介
機能の低下という問題があるわけでございます。
そして、では需給ギャップは何から生まれるかという問題がありますが、ここにも、先ほど申しましたように供給の問題が出てくるんです。供給の質と強さの問題が出てくる。先ほど言いましたように、需要というのは供給側が生み出すという要素が非常に大きい。それからもう
一つは、量の問題もあります。それは、供給過剰の問題もあるし、あるいは価格決定力が生産者側にないという問題があるわけであります。しかし、供給の質の問題というのがここにも出てくるということが私は大変重要な問題だと思います。
それから、これらはどうして起きるかという原因を探ると、土地本位制が崩壊をしてしまった、土地に対して与えられていた信用の大幅な収縮が起きている。それから、もともと日本が高コスト体質を維持してきた。維持できたのは実は土地本位制が維持をしてきたわけですけれども、高コスト体質というものは持っている。それがこの供給の質の問題や量の問題に反映している。
もう
一つは、全体の人口もこれから数年先には減少しますけれども、もう既に労働人口の減少は起きております。このこと自体も影響しているけれども、大事なのは、実は供給の側の問題、供給の質の問題、競争力の問題、それと、あちこちに影響している金融仲介
機能の低下というものがむしろポイントなんだ。だから、金融
機能を早く改善することがデフレの解決にもつながるし、あるいは供給の質の問題、競争力の低下を逆
方向に、引き上げる
方向に持っていけば、このデフレ問題もこの競争力低下の問題も解決をしてくるというふうに私は考えるわけであります。
そこで、競争力の向上を図る政策にすべて
考え方を戦略的に集中していくということが極めて重大な問題だと思うわけですが、政府側がおやりになっていることは、相変わらず、竹中
大臣にしましても、今言った構造的な問題が大事だと言いながら、一方で、いや需要も大事だということを常におっしゃるわけですよね。しかし、公共
事業による単なる量的な需要追加というのは、先ほども言いましたように、先進国ではやっていませんし、逆にマイナスの効果が大きいんです。
なぜならば、これだけ財政が悪くなってくると、これから先、それは単に後で借金が積み増すんだ、税金が高くなるかもしれないという予測を
国民に与えますから、いわゆる非ケインズ効果と言われる効果が生まれて、単なる量の需要の追加、本来ならば成長率のアップに貢献すべきその効果が大幅に減殺される、ないしマイナス
方向に働くという効果があるわけです。
と同時に、公共
事業を景気対策に使いますと、そこで技術職員を例えば雇わなきゃいけないというようなことが官の側、役所側に起きてまいります。これは人件費を下方硬直的にしますし、また、それらの雇った人たちを日本の構造では簡単に少なくすることはできませんから、これがいろいろな要因になってくる。そして、その人たちのためにむしろ仕事をつくって、またさらに新たな需要追加をしなければいけない、そして赤字がふえるということになってしまうわけであります。
ですから、公共
事業の追加策というのをもういいかげんにやめなきゃいけないというふうに私は思うわけですけれども、それが相変わらずされているということに大変大きな危機感と問題をはらんでおります。特に十三年度の第二次補正予算、大変無理をした予算が組まれました。これは泥縄式である、しかも効果がないということを今申し上げましたけれども、それだけでなくて非常に重大な問題を含んでいるんです。
資料の中にあると思いますが、NTTの株式の売り払い収入を国債整理基金に入れるわけです。そのうちの一部を運用して無利子貸付
事業というのをやっているわけですが、この第一条の
法律には、「国債整理基金の資金の一部を運用し、」とはっきり書いてあります。ところが、
皆さんがおやりになった今回の措置は、売り払い収入十・一兆円、六十一年度から六十三年度にありました。これまでに七・六兆円貸し付けていますから、残りが二・五兆。この二・五兆を全部使ってしまったわけです。そうすると、基金の一部を運用しという
法律に違反しているじゃないですか。
時間がありませんから言いますけれども、第二条の二には、これは別の話ですけれども、全部または一部を運用するという言葉があるんですね。つまり、
法律はきちんと見分けているんです。認識しているんです。全部または一部というのが必要なときは、全部または一部と書いているんです。一部と書いてあるのは、あくまでも一部でなければならないという思想が込められている。単に
法律ではなくて、思想が込められている。それを破って全部使ってしまうというのはどういうことなんですか、
財務大臣に伺います。