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松原仁君
松原仁でございます。
私は、
民主党・
無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました両
法案につきまして、
関係各
大臣に御
質問をいたします。(
拍手)
今日の我々の
政治形態は、
民主主義と呼ばれております。この
近代民主主義が産声を上げたのは、十七世紀の
イギリスであります。その
イギリスにおいて
民主主義の一つの
思想的背景をつくり上げたのが、
名誉革命の
理論的指導者でありました
ジョン・
ロックであります。
ジョン・
ロックは、彼の
著書「政府二論」の中で、一人一人の
人間は、生まれながらにして持っている
権利として
自然権を持つと主張し、具体的なその
内容として、
生命、自由、健康、
財産、こういったものを挙げました。そして、こうした
国民の
自然権を守ることこそ国家の基本的な権能である、このように説いてきたわけであります。この考え方は、今日でも、
近代民主主義を考える上で基本的なこととされております。
東洋においては、中国の
春秋戦国時代、斉の国の名宰相であった
管仲、諸子百家の一人でありますが、この
管仲の
著書と言われる「
管子」の中に、「倉廩実つれば則ち
礼節を知り、衣食足れば則ち栄辱を知る」と説かれております。これは俗に、衣食住足りて
礼節を知る、こういうことで表現されております。
つまり、
政治が
国民に対して守るべき重要なものとして、衣食住の充足が挙げられております。そして、洋の東西のいずれも、住や健康は
国民に対して
政治が守るべき大きなテーマとされてまいりました。
しかし、こうした
生命、健康、自由、
財産、食、住、こういった
自然権の守られるべき具体的な
内容は、そのときの
社会環境や
文明のあり方で大きく変わっていくものと言えます。
今回の
法案についても、二万年の長い
人間の歴史の中で初めての
石油化学文明と言われる、多くの
生活必需品がさまざまな
化学物質等によってつくられている今日の
社会状況の中で、従来考えられなかったような形で住及び健康の不安が発生し、
現代人の
自然権が侵されようとしていることについての新たな
自然権の
回復を目指すものと言えます。
また、
ハートビル法については、かつて
人類が経験していなかった、ある種、
人類のフロンティアとも言える
長寿社会、そして、一人一人の人生は大切だという福祉の
思想の発展の中で、
高齢者や体の不自由な方が一人の市民として十全に生活できる
環境をつくり上げよう、この
意味において、
現代人の
自然権のさらに一層の
拡充を目指すものだ、このように思われます。(
拍手)
このことを考えたときに、この両
法案に盛られた新しい住と健康の
自然権の
回復、そして
拡充、これは新しい
文明における新しい
自然権の確立という大きな
意味を持つものであります。こうした
文明観に立ち、
質問をいたします。
まず第一に、今回の
法案において、
化学物質過敏症を、新しい
社会環境において生まれた新しい病気として認めるべきではないかと思います。
厚生労働大臣にお伺いいたします。
シックハウス対策としての
建築基準法改正についてお尋ねいたします。
現在でも、
建築基準法を守らない、構造的にも欠陥のある
住宅の建設が後を絶ちません。
シックハウス対策として
建材を
規制した場合でも、これを守らない
悪徳業者がいることは当然予想されます。今でも、コストを下げるために、指定された
建材を使わずに
建築された
住宅に入居した人の
被害が多数あり、多くの場合、このようなケースで
被害が発生しております。しかし、建物が完成した後に
建材規制が守られているかをチェックするのは至難のわざで、特に、建て売り
住宅を購入者がチェックするのは不可能であります。
政府案の考え方では、
建築段階から
建材が指定どおりかを何度もチェックしなければならないと思いますが、どのようなチェック体制でチェックをする予定なのか、国土交通
大臣の御見解をお伺いいたします。
そう考えると、最も有効なやり方は、有害
化学物質の室内での濃度基準を設定し、結果責任をとらせることが重要だと考えます。少なくとも
建築事業者などが結果責任を負わないことになれば、健康
被害を受けた
被害者が裁判で争うことになり、多大な負担を負うことになります。
建築物由来の有害
化学物質が原因で健康
被害が生じているのか、それ以外の例えば家具などが原因なのかを判断するためには、建物完成時にしっかりとした濃度測定を行うことが必要で、それを行わないと責任追及も難しくなると思いますが、現代における住の
自然権としてこの点をどのように守られていくのか、守っていくのか、国土交通
大臣の御見解をお伺いいたします。
家庭内の
化学物質は、
建材だけではありません。家庭用防虫剤、殺虫剤、抗菌グッズなど、
化学物質による
被害を
拡大しそうな製品が多数はんらんいたしております。このような製品の人体に対する有害性を国はどの程度把握しているのか、また、これらによる健康
被害について、どの程度把握して、どのような対策を講ずるつもりか、
厚生労働大臣にお伺いいたします。
オフィスや学校の
シックハウス対策についてお尋ねいたします。
オフィスや学校など、定期的なメンテナンスでワックス、殺虫剤の散布、塗装などを行うような施設については、
建材規制だけでは不十分であると思われるが、いかがでしょうか。やはりビル管法においても有害
化学物質の定期的測定を位置づけるべきであると考えますが、
厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。
シックハウス症候群や
化学物質過敏症により学校に通うことができない児童がどの程度いると認識しておられるか。通達は出ておりますが、現場が余りにも
化学物質の影響や
化学物質過敏症に対し無理解で、通達だけでは不十分だと思いますが、いかがか、文部科学
大臣の御見解をお伺いいたします。
また、学校におけるワックス、殺虫剤、殺菌剤などの
使用状況をどの程度把握しておられるか。学校での有害
化学物質の
使用により子供たちに
被害が出ている可能性があるということをどの程度認識しておられるか。
化学物質過敏症によりキレる子供や不登校児が発生すると思いますが、学校に通えない子供たちに対する教育支援体制をどのように考えているか、文部科学
大臣にお尋ねいたします。
なお、新しくできた総理官邸でありますが、そこに行ったある議員が、官邸内において目がちくちくした、こういった話をしておりました。まさにそういった
意味では、我々にとって、このシックハウスの問題は極めて身近なものと言えますし、よもや、そのようなことによって小泉総理の
政治上の御判断に支障が来されるとは思いませんが、極めて心配しているということを申し上げます。(
拍手)
今回の
ハートビル法改正では、二千平米以上の
一定の
建築物の新築、増改築の際に、バリアフリー対策の義務づけがなされているところであります。しかし、二千平米以下の建物であっても、公共の
建築物においてはこの義務づけを行うべきと思います。特に、今後の
長寿社会における
高齢者の
地域社会における役割や体の不自由な方の社会参加を考えたとき、公共
建築物をバリアフリー化の対象とすることは必要不可欠だと思いますが、御所見をお伺いいたします。
ホテルなどは、客室がバリアフリー化の対象と考えられておりません。ロビーまでがバリアフリーでも泊まることができないホテルなど、何のためのバリアフリーか、極めて
意味があいまいになってしまいます。すべての客室をバリアフリー化の対象とすることが難しいというのであれば、
一定割合の客室につきバリアフリー化する。このことについて今後どのように進めるつもりか、国土交通
大臣の御見解をお伺いいたします。
さらに、
バリアフリー対応の義務づけ対象施設として学校が位置づけられていない。今、たくさんの地震が起こったり、災害が起こっているわけであります。こういった
状況の中で、この災害のまさに避難所である学校について、なぜバリアフリー対策の義務づけがないか、国土交通
大臣はどのようにお考えか。また、学校のバリアフリー化について今後どのように進めるつもりか、文部科学
大臣にお尋ねいたします。
既に冒頭述べましたように、
人類の社会は、この何十年かで、平均寿命の延び、非常に延びております。また、就労の形態、生活様式、また福祉のあり方、それをめぐる物質
文明のあり方が大きく変わってきております。
その新しい時代のニーズが、
化学物質の利用によって発生した
化学物質過敏症、シックハウスの問題であり、
人類が今まで経験していなかった
長寿社会の到来、すべての人々の社会参加の意欲が、
ハートビル法案の必要性を今
国会においても生んだわけであります。
そして、こうした新しい時代の問題と要請とを解決することこそ、思いやりのある社会をつくるための喫緊の
課題であるにとどまらず、国際的に見た
我が国文化と社会のクオリティーの高さの証左となり、次代に誇りを持ってバトンタッチをする日本社会をつくり上げるための必要条件ではないでしょうか。そのためには、中途半端ではなく、本来の
趣旨を貫徹するべく、踏み込んだ議論がさらに必要であります。
そして、
民主党は、二十一世紀の新しい
人類の
自然権の確立、これこそ健全な
民主主義の最も重要な点であるとの鉄のごとき確固たる信念を持ち、その具体的な政策の一環として、
化学物質過敏症対策、バリアフリーに、赤道直下のごとき熱い情熱を込めて全力で取り組むことをお誓い申し上げ、私、
松原仁、
質問を終わります。
以上であります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣扇千景君
登壇〕