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福島委員 大臣、大変御苦労さまでございます。
私の持ち時間の三十分は、専ら
精神医療の話について聞かせていただきます。
本日の朝日新聞の社説では、「
精神医療 質の向上を急げ」という論説が掲載をされておりました。本
法案の
質疑ということを踏まえて書かれているんだというふうに思いますが、
結論として、「
精神医療の
底上げこそ、不幸な
事件を減らしてほしいという願いにこたえるための本道である。」このように書かれているわけでございます。
本
法案に盛り込まれておりますところの新しい処遇システムの御提案、これはこれで、私は、我が国においては必要なことだというふうに思っておりますし、先ほど
後藤田委員からもお話ございましたように、司法
精神医療の確立とともに、着実にそれは実施していかなきゃいかぬ。また一方では、この社説にありますように、
精神医療、そしてまた
福祉の
充実ということ、このことは、車の両輪として進めていかなければならないのであろうというふうに思っております。そもそも、本
法案の名前も、
心神喪失等の
状態で重大な他
害行為を行った者の
医療及び
観察等に関する
法律案ということで、その両方の領域というものが掲げられているわけでございます。
一方、日本の
精神医療、そしてまた
福祉の実態はどうなんだということを振り返りますと、
精神医療のあり方を問う声というのは今までもずっとあったわけでございますけれ
ども、その改革というのは、やはり非常に遅い、遅々としてしか進んでいないんじゃないかという
指摘があるわけでございます。
思い起こされますのは、アメリカでは、一九六三年に、
精神病、
精神薄弱に関する大統領教書というものが出されまして、改革が進められました。このことは、当時のケネディ大統領がみずからの親戚を見舞ったときに、その環境が劣悪であるということに大変驚いて、そして大統領のリーダーシップのもとに改革が進められた。日本でもさまざまな
事件が起こったわけでございますけれ
ども、ケネディのような
役割を果たす指導者がいなかったのではないかというような
指摘もあります。
この
法案の
提出に当たって、さまざまな
議論がなされてきたわけでございます。また、諸団体からの要請もいろいろとありました。例えば、自治体
病院協議会では、
精神保健・
医療・
福祉施策を一層推進するための新たな計画というものの策定が必要であるということを提言いたしております。具体的には、新たな
精神科地域医療計画の策定、
精神科救急
医療体制の整備、
精神科入院医療改善計画、
精神障害者のための
地域支援長期計画、
偏見と差別を解消する長期計画、こういった五つの内容の計画をつくるべきである、こういった提言もあるわけでございます。こうしたものを踏まえてお尋ねをさせていただきたいと思っております。
まず初めに、
精神医療の
充実ということでございます。これは、先ほど申し上げました社説におきましても、こんな書き方がされております。「日本は
入院患者数が減らず、三十万人強で横ばいが続いている。この中には、
治療の必要がないのに
入院している人が七万人以上いると厚労省は見ている。
入院が減らない一因は、
精神科は一般
病院より
医師や看護職員が少なくて構わないとする政策にある。」というような、政策によってこうした
精神医療の貧困というものが起因しているのではないかという
指摘があります。
私は
精神科医ではありませんので、
精神科の実情というものを身をもってよくわかっているわけではありませんが、
精神科医の和田秀樹
先生が、昨年、さまざまな
議論がなされていた中で雑誌に投稿されておりますのが、「
精神医療の貧困を憂う」というような原稿がございます。その中でも、さまざまな
指摘がなされております。
若干御
紹介しますと、
平成十二年の第四次
医療法の改正で
精神科特例というものが廃止をされたけれ
ども、実態としては、
精神科の
医師一人で五十人の患者を診るという実態は解消されていないという
指摘もあります。そしてまた、
社会復帰をさせるためには大変なエネルギー、またマンパワーが必要であるけれ
ども、それを支えるのに十分な
体制とはなっていない、裏返せば、
社会復帰がされないということが長期の
入院に結びついている、こういう御
指摘だろうと思います。そしてまた、どうしてこういうことになるのかといえば、
精神科における診療報酬の評価の低さ、こういうものがマンパワーの投入を不可能にして、悪循環を引き起こしている、こういう
指摘も和田
先生はいたしております。
こうしたいろいろな御
指摘があるわけでございます。昨今は、
医療費が増嵩して、何とか抑制をしなきゃいけないという
議論ばかり起こるわけでございますけれ
ども、まだまだ十分な資源配分がなされていない領域があるということも我々はよく
理解をしなければいけないんだろうというふうに思っております。
そしてまた、先ほど来の
政府からの御説明の中でも、薬物療法が非常に進歩したと。このことは事実であろうというふうに思います。しかしながら、薬物療法だけで
治療ができない、そういう患者もふえているということも事実でございます。具体的には、例えばPTSDでありますとか人格
障害の患者さんでありますとか、そしてまた神経性の無食欲症の方であるとか、こういった人手をかけなければいけない患者さんもふえているわけですから、こういうことも踏まえなきゃいけないと思います。
昨年の
議論の中で、私
どもは、二十一世紀の
精神医療ビジョンというようなものをつくるべきであるということを提案させていただきました。現在、
厚生労働省の
社会保障審議会において、
精神障害者の
医療福祉計画づくりが進められているというふうに伺っておりますけれ
ども、こうしたさまざまな
指摘を踏まえて、どのように新しい
精神医療の
体制というものをつくっていくのか、
厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。