○
藤井(裕)
委員 ちょっと逆の混同だと思うんですよ。
さっきいろいろ
議論に出ていた中に予測というのがありましたね。予測は直接、攻撃じゃないのですね。私
どもは
周辺事態法のときに、私
どもの党が言って直していただいたのはそれは何だというと、自国が直接攻撃されたのでなくても、そのまま放置すれば間違いなくやられてしまうというのをあえて入れていただいたわけですね。そこまでが私は個別
自衛権のぎりぎりの
範囲だと思っているんですよ。ところが、今度の予測というのは、きょうはその
法律の中の
議論はしないことにしていますからやりませんけれ
ども、予測というのはもっと上の話なんですね。だから、その大前提として、
自衛権はもうここまでだと言えば、予測がどうだとかおそれとどう違うかという話のもう一つ前なんです、本当は。それをしっかりやっていただかないと困るという意味で私は
自衛権の話をあえてここで申し上げているわけなんですね。
日本だって戦争のとき、
自衛権と言ったのですよ。しかし、僕らの小学校のときに軍歌がありまして、「断固膺懲堂々と」というのがあったのですよ。膺懲というのは懲らしめですよ。日本は、戦争を始めるときには
自衛権と言って、僕ら子供にはこれは懲らしめで今やっているんだと教えているわけですよ。そういうのが
現実なんです。だから、
自衛権は本当に厳格に
考えないといけないということをもう一度申し上げておきたいと思いますね。
それから次に、
自衛権というのはそういう意味で、さっきちょっと
総理も言われましたけれ
ども、非常に
限定的に解釈し、抑制的に解釈しなければいけない。そして、それは我々は
法律をつくるべきだということを申し上げておりますが、もう一つ、
自衛権そのものの定義がまだはっきりしていないのですよね。それは何から来ているか。日本の
憲法の由来と、その
憲法の文字がなかなか難しいというかわかりにくいから解釈をふらふらするんですね。この両方だと思いますよ。
きょうは
憲法改正の
議論を正面から言いませんけれ
ども、マッカーサーというのかな、GHQが原案をつくったわけでしょう。GHQがつくった原案のうち、日本で変えてもらったのは二つしかないのです、大きなところで。一院制というのを二院制にしてもらったことと、土地及び天然資源は国有とすると書いてあるのを、余りにひどいじゃないかといってやめてもらったのがありますが、あとはほとんどそのままできているわけですね。
それで、マッカーサーの三原則の第二項目には、あれはイエローペーパーというんだね、イエローペーパーというのには何て書いてあるか。難しい言葉は使いません、
自衛の戦争も侵略のための戦争も、ともにだめだとマッカーサーのイエローペーパーには書いてあるんですよ。それをケーディスという実際にこれを仕切った人間が、これはちゃんと日本の調査団が言っていますよ、ケーディスがそれは余りに非
現実的だと言って、自己の責任で消しちゃったんですよ。
ですから、これまた本当は難しい言葉だけれ
ども、日本の
憲法九条には、学者ならわかるという、国際紛争解決の手段としての戦争は放棄すると書いてある。ところが、前文に何て書いてあるかというと、全然違うことが書いてあるわけでしょう。全然違うことが書いてありますね。これも
総理の言葉で言えばすき間なんですけれ
ども、すき間じゃなく、おかしいと言っていただきたいのですね。だって、諸
国民の公正と信義を信頼しでしょう。前文というのは
憲法の全体像を出すのですから、少なくともそこに一言、日本はまずみずから自分を守るんだ、その上に立って諸
国民を信頼するんだ、これならわかるんですよ。一つも書いていない。ということは、マッカーサーの思想がそのまま出ているんですよ、これは。そのまま出ているんですね。
だから、あのときに、
昭和二十二年、僕は中学三年なんですが、ニューヨーク・タイムズにはこう書いてあるんですよ。これはユートピアの社会だ、日本が悪いことをしなけりゃ世界は平和なんだねと皮肉たっぷりにニューヨーク・タイムズは言っているんですよ。
僕らは教わりましたよ。同じことに、もうこれからの世界の国々は日本を攻めてくるなんてあり得ないんだから、日本は無防備でいいんだと教わった。しかし、僕らの先生は立派な方ですから、本質はわかっていたと思いますよ。本質はわかっていたけれ
ども、そう言わざるを得ないんです。だって教科書がみんなそうなっちゃったから。つまり、そこに物すごいギャップがあるんですよ。
九条の言葉だっておかしいでしょう。あれは普通の日本人じゃわからないんですよ、九条の言葉というのは。「国際紛争を解決する手段」というのは、どこから持ってきたかというと、
昭和三年の不戦
条約から持ってきているわけですね。不戦
条約から持ってきたけれ
ども、その不戦
条約を、実際中心になったのはアメリカとフランスですわな、ケロッグ・ブリアン
条約。戻ったら、これは何だ、これは
自衛権もだめなんじゃないかとフランスとアメリカで怒っているんですよ。わからないんです。それをまた翻訳しているんですから、ますますわからないんです。現に、
昭和八年には、この侵略定義
条約をつくらないとこれはもう不戦
条約はもたないというところまで行ったけれ
ども、結局そんな話になると、だめになっちゃったんですね。というぐあいに、非常に難しいことなんですよ、まず。
そこで、今の前文は、もうあれは無防備の前文ですよ。そして、九条というわかりにくい不戦
条約から持ってきた文章を日本語に翻訳していますから、あそこもわからないんですね。
日本の普通の方に聞いてください。あれは
自衛権も否定しているんじゃないかと言う方が結構いますよ。なぜならば、日本に攻めてくるのだって、おまえの国が欲しいよと来るんじゃないんですよ。何か理屈がついているんですよ。何か理屈がついて押し寄せてくるわけでしょう。今はそういうことはない、ほとんどあり得ないと思いますけれ
ども、何か理屈がつくんですよ。そうすると、これも国際紛争解決じゃないのと思っている方は、日本人の普通の良識のある方に意外にいらっしゃいますよね。
ですから、非常に
憲法の文言が悪いということはまず申し上げておきます。どうか、すき間じゃなくて、おかしいと思うとそれをまず言っていただけますか。