○
加藤参考人 加藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
もう
委員の
皆様方にはこんなことは先刻御承知かと思いますが、
道路公団の何が問題なのかということからさっとおさらいをしておきたいと思います。
ちょっと
ページ数が多かったんですが、まあきょうの
委員会だけじゃなくて、こういう資料をどこかで御利用いただければと思いまして、少し多目に、
数字も含めてつけておきました。
一
ページ目からざあっと申し上げていきたいと思います。
まず、
道路公団の何が問題かということです。これはもう言うまでもないことですけれども、まず、
赤字事業の理由というのは簡単なことなんですね。
一つは過大な
需要見通し、もう
一つが
コストの
過小見通し、これが続けば、
会社であれば毎年毎年
赤字がかさむのは当たり前の話なんです。まさにそういうことが現に起こっている。いい例が、例えばアクアラインであり、あるいは第二
東名であるということだと思います。
二番目が、ではなぜその
事業が続けられるのか。当然、
企業であれば続かないんですね。ところがなぜ続けられるのか。それがそこの(1)から(3)までです。
まず、不十分な
情報開示。あえて
粉飾というような、
道路公団にとっては申しわけないような
言葉を使ったんですが、
粉飾を可能にするような
財務諸表がつくられているということ。それから、
需要見通しの根拠が明確にされていないということ。それから、後で申し上げますが、やはり
償還主義と
プール制、これは両方とも
どんぶり勘定と言っていいんですが、こういう
仕組みがとられていて、毎年毎年の
収支、あるいは個々の
事業ごとの
収支計算がわからない。加えて、本来は官と民のいい
とこ取りの
仕組みだったものが悪い
とこ取りになっている、
国会の
チェックも受けないし、
市場の
チェックも受けないというような。その結果、
責任の所在が明確でない。いえいえ、
公団は言われたことをやるだけなんですというようなことになっている。大まかに言ってこんなところです。
今の
財務諸表について、次の二
ページ目に、ごく簡単に
構想日本で試算したものをつけてあります。これは、
平成十二年度の決算、
道路公団発表の
数字に基づいたものです。
償還準備金方式で発表されているものが、
道路公団、
首都高以下四
公団、それからその
合計を並べてありますけれども、左側の二列です。いわゆる
損益計算書と
貸借対照表に当たるものです。それは、
企業会計方式で洗い直しますと、
合計が九千四百億の利益があるものが
マイナスの三百三十二億になりますし、十兆円ほどの資産があるはずのものが一兆五千億円の
欠損金になっている。さらに、けさも、日経でしたかのトップ
ページに、
減損会計を二〇〇五年に導入という記事がありました。
時価会計というのはもう世界的な流れですけれども、これは
時価会計ではありません。
時価に直していくと、これはもう相当に悪い
数字になると思います。
ですから、この
数字の洗い直し、どういうスタイルが
民営化としていいかというのはいろいろ
議論があるんだと思います。それは大いに
議論すべきだと思いますが、すべての
前提がきちんとした
数字の洗い直しにあるんだと思います。
構想日本は、とにかく、公表された
数字を山のように積んで、それを
専門家に分析させてこういう
数字を出してみました。ですから、いや、そんなことはない、破綻することはないということであれば、ぜひ、その破綻しないんだということの立証をしていただきたい。これは私は、
道路公団あるいは
国土交通省の最低限の責務であると思います。まさに、そういうことを
チェックしていただくのが、この
委員会、あるいは広い
意味での
国会の場の
役割だと私は期待しております。
ちなみに、これはいいかげんな
計算をしたのではありませんで、例えばその下の注にありますように、
減価償却は
大蔵省令に基づいてやればこうなるといったような、今でも、
箱根ターンパイクほか、
日本にはたくさんの私営の、
企業としてやっている
有料道があるわけですね。それは、まさにこういう
企業会計方式でやっている、それと同じことを適用しただけであります。
次の
ページに参ります。
先ほど、
二つの
どんぶり勘定と申し上げました。
償還主義、
プール制という
二つの
言葉がよく出てきます。
償還主義というのは、
企業であれば毎年毎年の、毎期毎期の
収益を出すわけですけれども、これが、三十年あるいは五十年で返せばいいではないか、だから、ことし、毎期毎期の
収支はそんなに厳密に出さなくていいという
前提なわけですね。ところが、毎期毎期で出すと、これはとんでもないことになっているということ。
プール制というのは、
企業であれば
一つ一つの
工場単位あるいは
事業ごとに
収支を出すわけですけれども、いやいや、全国一本の
道路なんだ、それは
ネットワークということでつながっているんだ、だから全部でどうなるか。ところが、次の四
ページ、五
ページの絵にかいておりますように、五十年で
帳じりが合えばいい、あるいは全部まとめて
帳じりが合えばいいということを言っていると、どんどん
計画がその間に延びていくわけですから、いつまでたってもその
帳じりが合うときが来ない。
そこで、先ほど申し上げました、
最初は名神、
東名に始まって、
最初は大変に
採算性のいい
道路だったわけですけれども、どんどん悪くなってくると、悪くなったものは本当は
マイナス、
赤字がかさんでいるわけですけれども、それがすっぽりとその全体の中にはまって見えてこない。これを絵にしたのが四
ページから五
ページ目の表でして、これは、いや、
採算は悪いけれども、全部でひっくるめて見るとちゃんと
採算はいずれ合うんだという
かなり無理やりの説明を可能にしてしまうというところに問題があるんだと思います。
六
ページ目に参ります。
では、
道路公団の
民営化の
意義はどこにあるのかということですけれども、これももう言うまでもありません。まずは、
野方図な
高速道路建設を見直すこと。何も、今後一切、
道路建設をやめる必要はないと思うんですね。ただ、とにかく幾らでも
高速道路をどんどんつくってしまうことを見直すということになります。それからもう
一つは、
債務を
国民負担なしに返済することです。
もともと、まず
民営化ありき、それが目的ではないわけなんですけれども、今の
道路公団の
状況、あるいは今までの
道路公団、
国土交通省、あるいはそれに関する旧
国幹審、あるいは
国会の
建設委員会あるいは
国土交通委員会における
チェックでは、むだな
建設がとめられるという保証がない。実際には十分その機能を果たしてこなかったのはやはり厳然とした事実としてあるわけですから、そこに対して、
市場の
チェックを受けるという
仕組みでもって、こういうむだな
道路がとにかくつくられないようにしていこうじゃないか、あるいは、その結果としての
債務が
税金投入、
国民負担なしに返済されるということにしていこうじゃないか、それがまずは
道路公団民営化の
意義だと思います。
四月十二日に
石原大臣が答弁されている。なかなかおもしろく私は拝見いたしました。行ったり来たりでよくわからない部分が実は多かったんですが、おもしろかったのは、
償還主義というのは、返す
計画があるんだけれども、だけれども返せない
仕組みだ、こうおっしゃっているところで、
石原大臣、なかなか正直な方だな、こんなに思いながら読みました。
償還主義というのは何年、何十年たったら返すんだという
仕組みなんですが、しかし、それが実際に返せないだろうということは
大臣も認められているわけで、そうであれば、返せない
償還主義というのはもう今や成立しないわけですね。
返せないとなると、ではどうなるのか。それは、例えば五十年たった時点で
税金投入、結局、いや、実は五十兆円残っちゃいました、返すはずだったんですが返せなくなりましたので、それは
税金で面倒を見るしかないですね、こういう
仕組みなんだと思います。
五十年というのは、私ももう百歳を超えますし、恐らく、今この部屋におられる方で八十以下の方は余りいらっしゃらないんじゃないかと思うんですが、いずれにしても、やはり次、あるいはさらにその次の世代ですから、そのあたりのことは知らないねというふうには我々は言えないということではないかと思います。これについても、大丈夫だと言うのであれば、その大丈夫だということの論拠、
数字でもってきちっと
担当官庁は示すことからスタートすると思います。
さらにつけ加えて、今申し上げたこととちょっとダブりますけれども、七
ページが、
民営化する際の基本的な
考え方です。
これは、まず
高速道路建設を一たんストップする、これも、全く全部やめるということではなくて、毎日毎日
建設を続けているとその分
赤字がかさむのは間違いないわけですから、とりあえず一たんストップした上で、
償還主義というものをやめて、毎期の
収益を明確にするということ。
それから、先ほど
岡野参考人のお話にもありましたけれども、
上下一体方式。
上下分離、上の
道路の管理だけを
民営化するというのは私は
民営化というものではないと思います。これは、
企業経営に携わった方であれば、ほとんど十人が十人同じことをおっしゃると思いますし、JRのときにもその同じ
議論が繰り返されて、土光さんはそれを退けたわけですし、さらにさかのぼれば、戦後間もなく行われました電力
民営化のときに、松永安左エ門氏がやはり同じような分離策を退けて、そういうものは
民営化と言わないということで今のような形になった。これは有名な話です。実際に、
上下分離をすると、英国国鉄のように破綻を来してしまったという例があるわけです。
上下分離というのを違う言い方で言いますと、資産と負債を別々の
会社にしてしまうということなんですね。ですから、資産を持っている
会社と負債だけを抱えてそれの返済だけをする上側の
会社に分けるということですから、これではどう考えても、きちんとした
企業経営に対するインセンティブもあるいは経営判断もできないということになります。
ちなみに、もう
一つ、よく無料化ということが言われますが、無料の
道路というのは、あえて言いますと、これは全くうそなんですね。
道路というのは、もちろん、このあたりの
有料道路でないところも毎年の維持管理に大変な
コストがかかっているわけですし、
高速道路に限って言いましても、
道路公団が担当している
道路では、年間六千億円の維持改良費が払われているわけです。ですから、これをだれが
負担するのか。有料で取らないのであれば、それは
国民が広く
税金で
負担するというだけの話なんです。ですから、無料というとちょっとよさそうに聞こえるわけですけれども、全くのただではないということはよく考えておかないといけない。
あるいは、
道路についても、私の知り得る限りでは、
アメリカでもヨーロッパでも、受益者
負担の
考え方をもっと取り入れていこうではないか、
日本でも、
道路に限らず、今まで政府あるいは政府に属する機関が担っていた公的な
サービスあるいは提供するものについても受益者
負担を入れていこうというのが流れですから、私は、あえてここで無料化というのは違うのではないかという感じがしております。
八
ページ目は、加えて、実はここが非常に大事なわけですけれども、むしろ政府を支えている与党の
方々にもここはぜひお考えいただきたい。過去の清算がもちろん第一のターゲットですけれども、それに加えて、きちんとした
民営化をすれば、いいかげんな
民営化を言っているわけではありません、きちんとした
民営化をすれば、これは
日本経済に対する非常に大きいカンフル剤になるわけです。
これは、ことしの文芸春秋の一月号に、HSBC証券の山田晴信氏が分析をされております。これによりますと、大体二十年間で配当と納税額を含めて九兆円余りの収入が国家に入ってくる。もう
一つは、次の九
ページ目の絵にもかいておりますが、売上高が二兆円、
時価総額三兆円、これは、規模でいきますと、少し後の十一
ページにありますけれども、JR東海とJR西
日本を合わせたぐらいの規模の
会社です。それが突如出現するわけですから、このことの
経済効果は非常に大きい。
さらにもう
一つ、これは意外と見過ごされていることですが、国の機関が例えば二十兆円借金を持っていれば、それは必ず二十兆円返さないといけない。ところが、
民間企業というのは、どんな優良
企業でも借金を背負って
事業をしているわけですね。ですから、二十兆円のうちの十一兆円返して、あとの九兆円ぐらいは持っていけるわけなんですね。
ですから、これはトリックでも何でもないわけですけれども、きちんとした
民営化にすれば、二十兆円の借金を、
民営化した瞬間に返す金額は十一兆円に減っちゃうというような、なかなかおもしろい、これはうそでも何でもありません。東京電力と同じぐらいの比率の借金を抱えていいという
前提でやると、九兆円ほどは持っていけるわけですね。この点の
経済効果、この点の
民営化メリットというのは、私はぜひお考えいただきたい。
ただし、これはすべて、今のアクアラインを持っている湾岸
道路のような、あるいは関空のようないいかげんな民営
会社ではなくて、
市場がきちんと評価するという
前提があるということも申し添えたいと思います。
九
ページは、
民営化する、こういう
仕組みでというようなものですし、十
ページ目は、八
ページ目で申し上げました山田晴信氏の分析の表をここに引用したものです。十二年目で過大な部分の負債が返済されて、十八年目からはプラスに転じるというものです。
ですから、
償還主義で三十年だ、五十年だという
議論がありましたけれども、これは、きちんとしたいい経営をしていけば、早ければ十二年で返せる、もし、いやいや、返すよりも
料金を下げることを先にやれ、これは認可業種として公益性の高い
料金ということで、通行料は政府がコントロールすることは全然
民営化と反しないことですから、そこにキャップをつけてやる、あるいは条件をつけて、返済するよりも
料金を下げることを優先しろということであれば、それは、この十二年を少し延ばしていけば
料金はどんどん下げることができるということだと思います。
十二
ページ目に参りたいと思います。
では、今後の
建設をどうするかということですけれども、これは、きちんとした
民営化をすれば、むしろ、今後の
建設に結びつける手だてが随分広くなる、選択肢が広くなるんだと思います。今までは、
高速道路イコール利用者
負担イコール有料イコール
道路公団、
公団という図式でした。一方で、一般
国道イコール
税金負担イコール無料イコール国が行う。その
二つにあれかこれかというルールを変えるということになるんだと思います。
したがって、
道路整備特別措置法等の見直しも必要ですし、それをむしろやる時期に来ているのではないか。その下に書いてありますように、国による直轄、あるいは地方公共団体による
整備、これも、必ずしも国とか地方公共団体がやるからといって無料にする必要はない、若干の
有料制にしてもいい部分もあると思いますし、今の新幹線と同じように、官民連携による
整備ということも行われていいわけです。
十三
ページは、これはつけ足しですが、実は、ことしからこれをやめるということになっていますけれども、従来は毎年、
道路公団ですと、
道路公団に投入されている補助金が三千億円ほどありました。それから、A'
道路、いわゆる薄皮有料と言われているものについては、実質的に八百億円から九百億円の資金、したがって、四千億円近くの
税金がこれまでも
高速道路建設に使われてきていました。第二
東名・名神というのはいかにも筋が悪いわけですけれども、これを除いた残りの
事業費は十兆七千億円。この十兆七千億円を四千億円弱で割りますと二十九年なんですね。ですから、今までと同じだけの
税金投入をやっていけば、二十九年で実は九千三百四十二キロ全部
建設することすら可能なわけです。
こういう
数字も意外ときちんと分析されていないんですが、そういうことを考えると、私は、むしろ、きちんとした
民営化をすれば、
経済効果も含めて、あるいは借金全部返さないというようなことも含めて、あるいは今後の
建設の手法も含めて、随分選択肢が広がるということだと思います。
時間が過ぎましたのでそろそろやめますが、最後の
ページに、では、今何が必要かということを、これも余計なことながら書いておきました。
まずは、やはり公開の場での
議論です。
国会でこれはきちっと
議論していただきたい。何よりもそれが一番大事だと思いますし、それに加えて、もちろん
民営化推進委員会での
議論、それから、
最初に申し上げましたように、その
議論のための正確な資料、これはこの
法案の第六条にもそういうことが明記されております。
財務諸表等をきちんと出して、それから、必要に応じて金融関係の人、これは
民営化する場合には必ず必要ですから、あるいは、旧国鉄、JRの
民営化の御経験のある方などから
意見を聞きながら進めていっていただきたい、こんなふうに思っています。(拍手)