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2002-05-09 第154回国会 衆議院 憲法調査会地方自治に関する調査小委員会 第3号
公式Web版
会議録情報
0
平成十四年五月九日(木曜日) 午後二時
開議
出席小委員
小
委員長
保岡
興治
君 伊藤
公介
君 西田 司君 葉梨 信行君 平井 卓也君 森岡 正宏君 渡辺 博道君 筒井 信隆君 中川 正春君 中村 哲治君 永井
英慈君
江田 康幸君
武山百合子
君 春名 直章君
金子
哲夫
君 井上 喜一君 …………………………………
憲法調査会会長
中山 太郎君
参考人
(
東京大学教授
)
神野
直彦
君
衆議院憲法調査会事務局長
坂本 一洋君
—————————————
五月九日 小
委員土井たか子
君四月十一日
委員辞任
につき、その
補欠
として
金子哲夫
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。 同日 小
委員金子哲夫
君同日小
委員辞任
につき、その
補欠
として
土井たか子
君が
会長
の
指名
で小
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
地方自治
に関する件 ————◇—————
保岡興治
1
○
保岡
小
委員長
これより
会議
を開きます。
地方自治
に関する件について
調査
を進めます。 本日、
参考人
として
東京大学教授神野直彦
君に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人
の方に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御
出席
をいただきまして、まことにありがとうございます。
参考人
のお
立場
から忌憚のない御
意見
をお述べいただき、
調査
の
参考
にいたしたいと存じます。 次に、議事の順序につきまして申し上げます。
最初
に
参考人
の方から御
意見
を四十分以内でお述べいただき、その後、小
委員
からの質疑にお答え願いたいと存じます。 なお、発言する際はその都度小
委員長
の許可を得ることとなっております。また、
参考人
は小
委員
に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。 御発言は着席のままでお願いいたします。 それでは、
神野参考人
、お願いいたします。
神野直彦
2
○
神野参考人
本日は、このような席にお招きいただきまして、本当に光栄に存じております。私、
法律
の
専門家
ではございませんので、
財政学
の
立場
から
地方財政
につきまして
意見
を述べさせていただくということでお許しいただければというふうに存じております。 また、私、
網膜剥離
を患っておりまして目が不自由なものですので、失礼があるかと思います。その点についても御容赦いただければというふうに存じております。 それで、お
手元
に
レジュメ
が行っているかと思いますが、現在、
日本
でも
地方分権
が大きな
政策課題
となっておりますが、この
地方分権
は、私の
理解
では、
二つ
の大きな波がぶつかって
日本
で
地方分権
の
推進
が
政策課題
となって生じているというふうに
理解
をいたしております。
一つ
の波は、歴史的に
日本
が追求してきた
民主主義
の波だろうというふうに
理解
をいたしております。そして、もう
一つ
の波は、
日本
を初めとする
先進諸国
で、前
世紀
、つまり二十
世紀
の後半から
共通
に生じてまいりました
分権
の波。この
二つ
の波が衝突をして、
日本
で
地方分権
の
推進
が積極的に図られようとしているという認識に立っております。その点につきまして、そうした
二つ
の波の中で、
地方自治
を
推進
していくために
地方財政
がどういうように考えられてきたのかということを考えながら
参考意見
を述べさせていただきたいというふうに考えております。 お
手元
の
レジュメ
を見ていただきますと、1のところで、まず、歴史的に追求してきた
民主主義
の波ということで、「過去からの教訓」というところがございます。1—1の後に、一九二八年の二月に行われました第十六回の総
選挙
で、時の二大政党の
一つ
でありました
政友会
が掲げている
選挙ポスター
を引用してございます。この
選挙ポスター
は、
地方
に
財源
を与えれば、
地方
の完全な発達は自然にやってくるんだ、それから、
地方分権
というのは丈夫なものであって、
地方
はひとり歩きで発展することができる、それから、
中央集権
は不自由なものであって、
地方
の足をやせさせてしまって、つえをもらわないとだめになってしまう、こう訴えているわけです。この
選挙ポスター
は、恐らく現在でも通用できるような
ポスター
になっているのではないかと思います。 そして、なぜこの一九二八年に、時の最大とも言っていい
政友会
がこうした
選挙ポスター
を掲げたのかと申しますと、この一九二八年の総
選挙
は
日本
の総
選挙
にとって画期的な
選挙
でございました。つまり、第一回目の
普通選挙
だったわけです。 このときにどうしてこういう
分権
が重要な
政策課題
として掲げられたのかと申しますと、第一次
世界大戦
中の一九一八年に
日本
は
米騒動
という非常に不幸な事件を経験いたします。このときに諸物価が高騰いたしましたので、
地方財政
も破綻の危機に瀕するわけです。そこで、
義務教育
の
国庫負担
がこの年に成立をいたします。この
義務教育国庫負担
は、現在の
義務教育
の
国庫負担
と違いまして、
財政調整
、つまり現在で申しますと
交付税
の役割を果たしていたものでございまして、私
ども地方財政学
の
立場
から申しますと、現在の
財政調整制度
のはしりとして位置づけられているものです。 この一九一八年にできた
義務教育国庫負担金
の額が非常に少なかったものですので、三重県
七保
村の
村長
でいらっしゃいました
大瀬東作
という
村長
が、
全国
の
町村
に檄を飛ばしまして、
全国
的な
町村
の組織の結成を行おうといたします。
七保
村に
準備会
ができて、一九二一年に第一回の
総会
が行われます。これが現在の
全国町村会
です。 この
全国町村会
の
総会
では、
二つ
のことを
決定
いたします。
一つ
は、両
税移譲
。
国税
から
地方税
へ
税源
を移譲してほしい。この両税は、当時の
地租
と
営業税
という
二つ
の
税金
です。この両税を
国税
から
地方税
に移譲してほしい。同時に、
義務教育国庫負担金
の
増額
をしてほしい。この
二つ
の要求をいたします。現在で申しますと、
国税
から
地方税
に
税源
を移譲してもらいたい、同時に、
交付税
の
増額
を要求したということになるかと思います。 私
たち
は、この両
税移譲運動
を軸とする
大正時代
に行われたこの
全国町村会
が担ったような
運動
を
大正デモクラシー
というふうに呼んでいるわけでして、両
税移譲運動
を軸とした
大正デモクラシー
の
成果
として
普通選挙
ができ上がったわけですから、当然、第一回目の
普通選挙
では、両
税移譲
を初めとする
地方分権
の問題が重要なイシューになってくるわけです。
政友会
のこのときの
公約
は、両税、
国税
であった
営業税
と
地租
を
地方
に移譲するというのが
公約
でございましたので、そういう
選挙
として争われたということです。 その後、第二次
世界大戦
後になりまして、現在の私
ども
の
税財政制度
の基礎をつくりました
シャウプ勧告
が行われますが、この
シャウプ勧告
は
大正デモクラシー
の両
税移譲運動
を踏まえながら
勧告
をいたします。 つまり、
シャウプ勧告
は
補完性
の
原理
。
補完性
の
原理
というのは、後で御説明いたしますけれ
ども
、
市町村優先
の
原則
です。まず
市町村
に
仕事
をやらせ、その後、
市町村
ができないものを
道府県
が、
道府県
ができないことを国がというふうに
事務
を割り当てていく。そして、
能率性
の
原則
。
事務事業
は、最もその
事務
を能率的にできる
道府県
なり
市町村
なりに割り当てる。そして、そのことによって
行政責任
を明確化させるという
原則
を打ち出して、
事務
を割り当てると同時に、
財政面
では、
大正デモクラシー
の
運動
を踏まえて、両
税移譲
、
地租
と
営業税
を
国税
から
地方税
に移譲しろという
勧告
を出すわけでございます。つまり、
地租
と
家屋税
を抱き合わせにして
固定資産税
として、この
固定資産税
を
市町村
の
独立税
として設定しなさい。それから、
営業税
の方は、現在の
事業税
でございますが、
道府県
の
独立税
として
事業税
を設定しなさい、こういう
勧告
をするわけでございます。 戦前の
付加税主義
、
国税
におんぶするといいますか、上に乗っける
税金
ではなくて、独自の
税金
として
独立税主義
をとる。 それからもう
一つ
、
補助金
の整理。これは、個別の
補助金
は
原則
として認めない、
一般補助金
である
平衡交付金
にまとめて一括しろ、こういうふうに
勧告
をいたしまして、現在の
交付税制度
を
勧告
するわけです。つまり、
シャウプ勧告
は、
日本
の
大正デモクラシー
が要求してきた両
税移譲
と
財政調整制度
の強化という
二つ
のことを実現させたということになるかと思います。そして、同時にまた、
地方債
の起債の
自由化
を図っていくということを
シャウプ勧告
はうたったわけでございます。 次に、もう
一つ
の波であります、
先進諸国
で
共通
に行われている
分権
の波について
お話
をしたいと思います。 二十
世紀
の後半になってまいりまして、一九八〇年代あたりから
経済
の
グローバル化
ということが進んでまいりますと、一方で
ローカル化
という
現象
が起きてまいります。
グローバル化
と
ローカル化
と言われている
現象
です。
経済
は
国民国家
を超えて
動き
始めるけれ
ども
、人間の生活は
グローバル化
するわけではないので、
地方
に
決定権
を与えて
分権
を進めようという
動き
が世界的に生じてまいります。その象徴が
ヨーロッパ
で結ばれました
ヨーロッパ地方自治憲章
でございます。
ヨーロッパ
は、
グローバル化
に対抗するために
EU
などの
ヨーロッパ統合
を進めると同時に、他方で
ヨーロッパ地方自治憲章
を結んだわけでございます。現在、三十九カ国が署名し、三十五カ国が批准をいたしております。 この
ヨーロッパ地方自治憲章
はどういう内容をうたっているかと申しますと、お
手元
の三枚目をお開きいただければと思います。
ヨーロッパ地方自治憲章
の重要なところだけを抜粋しております。 第
四条
の
地方自治
の
範囲
というところを見ていただきますと、
四条
の第一項でもって、「
地方自治体
の基本的な
権限
と
責務
は、
憲法
またはこれに準ずるような
基本法
において規定されなければならない。」こう規定いたしております。 それから、第三項を見ていただきますと、「
公的部門
が担うべき
責務
は、
原則
として、最も
市民
に身近な
公共団体
が優先的にこれを
執行
するものとする。国など他の
公共団体
にその
責務
をゆだねる場合は、
当該責務
の
範囲
及び性質並びに
効率性
及び
経済
上の
必要性
を勘案した上で、これを行わなければならない。」 これは
補完性
の
原理
をうたっておりますし、
補完性
の
原理
の後、上の
政府
に
事務
を割り当てるときには、
能率性
の
原則
というふうに
シャウプ勧告
が説明したような
原則
に基づいて割り当てなさい、こういうふうに言っているわけですね。 これはローマ法王の思想でございまして、個人でできないことを
家族
が、
家族
ができないことを
コミュニティー
が、
コミュニティー
でできないことを
市町村
が、
市町村
ができないことを
道府県
が、
道府県
ができないことを国が、国ができないことを
EU
がという、
マーストリヒト条約
でもうたわれております
補完性
の
原理
をここで明確にうたっているということでございます。 そして、
地方
の
財政
についてはどういう
原則
を掲げているかと申しますと、九条に掲げております。 ちょっと読ませていただきますと、「
地方自治体
は、
国家
の
経済政策
の
範囲
内において、かつみずからその
権限
の
範囲
内において、自由に使用することのできる適切かつ固有の
財源
を付与されなければならない。」 一ページおめくりいただきまして、「二
地方自治体
の
財源
は、
憲法
及び
法律
によって付与された
責務
に相応するものでなければならない。」 「三
地方自治体
の
財源
の少なくとも一部は、
法律
の
範囲
内において、
当該地方自治体
がみずからその水準を
決定
することができる
地方税
及び料金から構成されるものとする。」 「四
地方自治体
に付与される
財源
の構造は、その
責務
の遂行に相応して伸長していくことができるよう、十分に多様でかつ弾力的なものでなければならない。」 「五
財政力
の弱い
地方自治体
を保護するため、
財政収入
及び
財政需要
の不
均衡
による
影響
を是正することを
目的
とした
財政調整制度
またはこれに準ずる仕組みを設けるものとする。」
日本
の
交付税
は
グローバルスタンダード
ではないというようなことをよく言われますけれ
ども
、それは私は誤りだろうと思います。
ヨーロッパ地方自治憲章
でも明確に
財政調整制度
の必要をうたっておりますし、それから、よく、
日本
の
交付税
は
財政需要
も見るというのがおかしいと。
財政
、つまり
課税力
、
税金
をかけることだけを
調整
する、これが一般的だと言われますが、カナダなどではそういうやり方をとっておりますが、
ヨーロッパ
ではそういう考え方をとっていない。見ていただければわかりますけれ
ども
、「
財政収入
及び
財政需要
の不
均衡
による
影響
を是正することを
目的
とした」ということで、両面明確に規定しているということです。 「ただし、これは、
地方自治体
が自己の
権限
の
範囲
内において行使する
自主性
を損なうようなものであってはならない。」こういうふうに規定しております。 五項めでもって、
財政
の再分配というのは必要だというふうにうたっているわけですが、六項めでもって、「
地方自治体
は、
財源
の
地方自治体
への再
配分
に当たっては、その再
配分
の
手法
につき、適切な方法によりその
意見
を申し出る機会を与えられなければならない。」 再
配分
をしなければならないけれ
ども
、その再
配分
の
手法
については、
地方自治体
がその
意見
を具申する
権限
が与えられなければならないというふうにうたっているわけです。 七番目ですが、「
地方自治体
に対する
補助金
または
交付金
は、可能な限り、
特定目的
に限定されないものでなければならない。
補助金
または
交付金
の
交付
は、
地方自治体
がその
権限
の
範囲
内において
政策
的な
裁量権
を行使する基本的自由を奪うようなものであってはならない。」こういうふうに言っております。
補助金
などは、
特定補助金
、
日本
で言う
国庫支出金
のように
目的
を限定したものはできるだけやめなければならないし、しかも、その
交付
に当たっては、
補助要綱
などで自治体の
権限
の
範囲
を狭めるようなことをしてはいけない、こういうことをうたっているところです。 八番目でございますが、「
投資的経費
の
財源
を借入金によって賄うため、
地方自治体
は、
法律
による制限の
範囲
内において国内の
資本市場
に参入することができる。」こういう
資本市場
へアクセスする
権限
を
ヨーロッパ
の
地方自治憲章
でうたっているところでございます。 それが2—1のところでございますけれ
ども
、
最初
の
レジュメ
の方に戻っていただきますと、この
ヨーロッパ地方自治憲章
では、
補完性
の
原理
をうたいながら、
日本
の
交付税
のような
財政調整制度
によって
補完
された
自主財源主義
、つまり、自主的な
財源
で行っている
自主財政主義
をうたっているというふうにまとめることができるのではないかと思います。 そして、
自主財源
、つまり
地方税
でもって
財政
を運営していく
重要性
というのはどこにあるのかと申しますと、これは、この後出ました
ヨーロッパ評議会
の
報告書
などを見てみますと四つ掲げられております。受益と
負担
の
関係
が
地方税
で行うようになれば明確になる、それから、
自分たち
の
税負担
でもって
自分たち
の
公共サービス
をあがなうということをすると
民主主義
は活性化する、それから三番目には、それによって
地方自治体
は
自分たち
の
地域
の
財政需要
に適した適切な
政策
を打つことができる、かつ、
地方自治
は拡充することになる、こういうふうに四つの理由を挙げております。 この
ヨーロッパ地方自治憲章
を受けて、国連を中心にして
世界地方自治憲章
を制定しようとする
動き
ができまして、昨年の秋にはこれがまとまりそうになったのですけれ
ども
、私の聞いている
範囲
内では、アメリカと中国という
二つ
の大国が反対した態度をとったために実現にまだ至っていないというふうに聞いております。 お
手元
に
世界自治憲章
もお載せしておきました。
地方自治憲章
が二ページございますけれ
ども
、その後に
世界自治憲章
を掲げさせていただいております。
ヨーロッパ地方自治憲章
とほぼ同じでございまして、第
四条
を見ていただきますと、
四条
の三では、ここでも
補完性
の
原理
を明確にうたっていて、「
行政
の
責務
は一般的に
市民
に一番近い
行政主体
によって行われるべきである、ということを意味する
補完
及び近接の
原理
に基づき、」こういうふうにうたっているわけです。 それから、九条でもってやはり
地方自治体
の
財源
をうたっておりますけれ
ども
、ここでは基本的に
ヨーロッパ地方自治憲章
と同じことをうたっておりますが、
二枚目
の五項を見ていただきたいと思います。
二枚目
の三、四、五項めを見ていただきますと、「脆弱な
地方自治体
のため、
財政
の
持続性
を、垂直的」、後で
垂直的財政調整
の
お話
をしますが、どうも
日本
の使い方とちょっと違いますので、垂直的といった場合には、国と
地方自治体
間の
調整
を意味しております。
垂直的財政調整
と
水平的財政調整
、つまり
地方自治体
間、またはこれの両方であるとにかかわらず、「特に
財政調整制度
により保護しなければならない。」こういうふうに明確に規定しているということです。あと、読んでいただければおわかりいただけると思いますので、省かせていただきます。 こういう
二つ
の波がぶつかり合いながら、現在では、
地方自治体
に
権限
を与え、
分権化
を進めようという
動き
が出てきているのだというふうに考えております。 そこで、
レジュメ
の二ページ目の、「
政府間財政関係
の
分権化
」について
お話
をさせていただきたいと思います。 こういうふうに
地方分権
の
動き
が強まってきているわけですけれ
ども
、
地方分権
を進めるためには、
財政
、特に
政府間財政関係
、国と
地方
、あるいは
地方
間の
政府間財政関係
を
分権化
していく必要があるということでございます。 この
政府間財政関係
を
調整
するのには
二つ
の
レベル
が必要になってきます。
一つ
は、先ほ
ども
見ていただきましたように、
世界地方自治憲章
でも言っているように、
政府
間の
財政関係
を考える場合には、垂直的な
財政調整
と水平的な
財政調整
と
二つ
の
レベル
を考えなければならないということです。 垂直的な
財政調整
というのは何を意味するのかと申しますと、これは、
中央政府
と
地方自治体
間の
財政関係
を
調整
することを意味いたします。何を具体的に行うのかといえば、どういう
行政任務
を
中央政府
に割り当てるのか、どういう
行政任務
を
地方自治体
に割り当てるのかということを決めるということが第一の
仕事
になります。 それからもう
一つ
は、そういう
行政任務
を
地方自治体
が遂行できたり、あるいは
中央政府
が遂行できるように、国と
地方
に
課税権
を割り当てる。この
二つ
のことが垂直的な
財政調整
になるということになるわけですね。 水平的な
財政調整
というのはどういうことを意味するのかと申しますと、水平的な
財政調整
というのは
地方自治体
間の
財政調整
を意味いたします。まず垂直的な
財政調整
を行って、こういう
行政任務
を
地方自治体
に割り当てるというふうに決めますと、つまり
地方自治体
に
行政任務
が割り当てられると、当然、その
地方自治体
には
財政需要
が発生いたします。それから、その
地方自治体
に
行政任務
を遂行することが可能になるような
課税権
を割り当てますと、当然、その
課税権
から、その
地域社会
から税収を調達することのできる能力、
課税力
が生じてまいります。この
財政需要
と
課税力
を両方考慮して
財政力
というのが決まるわけですけれ
ども
、この
財政力
に
地方自治体
間で
格差
が生じている場合にこれを
調整
するのが水平的な
財政調整
ということになるわけです。 ここで重要な点は、垂直的な
財政調整
を行うときに、
地方自治体
に
行政任務
を多く割り当てれば、当然ですけれ
ども
、垂直的な
財政関係
は
分権化
するということになるわけでございます。 ただ、ここで注意していただきたいのは、垂直的な
財政調整
を
分権化
いたしますと、
水平的財政調整
の
必要性
は強まるということですね。
中央政府
が何でも
仕事
をしてしまう、
地方政府
が
余り仕事
をしていないという状況においては、
地方自治体
間で
財政調整
、
財政力
の
格差
を是正する
必要性
は
余り
ないわけでございますので、
分権化
してくると、水平的な
財政調整
の
任務
は逆に強まってくるという
原則
をお忘れいただかないようにしていただければというふうに思います。 さてそこでもって、
中央政府
から
地方自治体
に、つまり、
地方自治体
に多くの
行政任務
を割り当てますと、垂直的な
財政調整
は
分権化
するわけですが、垂直的な
財政調整
で
地方自治体
に多くの
任務
を割り当てても、
分権化
しない場合がございます。それが、
ドイツ財政学
の方で言いますと、
二つ
の非
対応
、こういうふうに言っておりますが、
垂直的財政関係
において
二つ
の非
対応
を生じてしまうと、
財政関係
で
中央政府
が
地方政府
に多くの
任務
を割り当てたとしても、
分権化
しないということになります。
一つ
は、
行政任務
を
地方
に多く割り当てるんだけれ
ども
、
決定権
を
中央政府
が握っているという場合であります。つまり、
行政任務
は
地方
に多く割り当てているんだけれ
ども
、
決定
と
支出
が非
対応
になっていて、
決定
の方は
中央政府
が持っていて、
地方自治体
は
支出
だけをしてしまっているというような状態。言いかえれば、
決定
と
執行
の非
対応
といってもいいかもしれません。
決定
は国が行うけれ
ども
、
執行
の方は
地方政府
が行うというような場合が
一つ
ございます。 もう
一つ
は、
行政任務
と
課税権
が非
対応
になっているという場合でございます。つまり、
行政任務
は
地方自治体
に多く割り当てられているんだけれ
ども
、
課税権
の方は、
行政任務
を
執行
できるほどの
課税権
が割り当てられていなくて、国の方でもって
税源
を多く握ってしまっているという場合です。つまり、
行政任務
と
課税権
の非
対応
が起きていた場合には、仮に
地方自治体
が多くの
仕事
をしていたとしても、
分権
的ではないということになるわけでございます。 御案内のとおり、
日本
ではこの
二つ
の非
対応
が生じておりました。つまり、
行政任務
における
決定
と
執行
との非
対応
が生じていた。この最たるものは
機関委任事務
ということにございました。これは
地方分権推進委員会
の
勧告
に基づいて現在では廃止されておりますので、一定の
成果
は見ているということになるかと思います。 もう
一つ
の非
対応
が生じておりまして、それが、
行政任務
と
課税権
の非
対応
が生じている。
地方
には多くの
仕事
が割り当てられているんだけれ
ども
、
課税権
の方はわずかであるということです。 お
手元
の資料で、
世界自治憲章
が二枚ございました後に、
棒グラフ
をつくって、三つの
棒グラフ
がそれぞれの国にあるかと思いますが、
日本
を見ていただきますと、
地方
の歳出が左側のグラフでございますけれ
ども
、これは七割ないしは六割と言われているように多くあり、
地方税
と
国税
との
比率
が、真ん中になりますけれ
ども
、これは
国税
と
地方税
の
比率
が、
地方税
三ないしは四、
国税
が七ないしは六というふうに割り当てられていて、
行政任務
と
課税権
が非
対応
になっているということですね。 私は、こうした
日本
の国と
地方
の
財政関係
を
集権的分散システム
というふうに名づけております。これは、
地方自治体
が多くの
仕事
をしていれば
分散
、
中央政府
が多くの
仕事
をしていれば集中、こういうふうに考えますと、
事務
、つまり
仕事
は、
日本
の場合には
地方
が多く
仕事
をしているので
分散
型だけれ
ども
、
課税権
が与えられていなかったり
決定権
が与えられていなかったりして、
決定権
は国が握っていて集権的になっている、集権的な
分散システム
である。 したがって、
日本
の場合には、
地方自治体
に
仕事
を多くふやす必要はなくて、
決定権
を取り戻させるというようなことをすればいいのではないかというのが私の
意見
でございまして、集権的な
分散システム
を
分権的分散システム
にすれば、
日本
では
地方分権
は解決できるのではないかというふうに思っております。 その重要な
課題
は、第一の
課題
としての
行政任務
における
決定
と
執行
との非
対応
というのはひとまず
機関委任事務
の廃止で実現しておりますので、
行政任務
と
課税権
の非
対応
を解消すればいいのではないかというふうに考えられるわけです。その場合には、
二つ
の
基幹税
を見直して、
国税
から
地方税
に移譲するということを考えておけばいいのではないかというふうに思われます。 お
手元
のページで下から三枚目をちょっと見ていただきたいと思いますが、「租税収入の対GDP比」というのがございます。連邦
国家
であるアメリカとドイツと、単一
国家
であります
日本
、スウェーデン、フランス、イギリス、こう見ていただきますと、アメリカは個人所得税を中央に多く持ってきているということがおわかりいただけるだろうと思います。逆に、スウェーデンは
地方
に個人の所得税を持ってきているわけです。一六%持ってきております。 それから、消費課税のうち、一般消費税というのを見ていただきますと、アメリカは
地方
に一般消費課税を持ってきている。ところが、
日本
、これはまだ
地方
消費税ができていないときでありますので
地方
消費税は入っておりませんが、スウェーデンの方は一般消費税を国の方に持ってきている、こういうやり方をとっているわけです。
日本
の場合には、個人所得税もアメリカと同様に少なくて、消費課税もほとんど設定されていないような状態になっているということでございます。 ドイツを見ていただきますと、ドイツは個人所得税と一般消費課税を非常にバランスよく国と
地方
で分け合っているわけです。 こういうことを考えてみますと、
日本
でも、個人所得税と消費税を
国税
から
地方税
に、
仕事
に合わせて移譲していくということが重要ではないかと思います。 ただし、その際、
日本
の
国税
と
地方税
の所得課税の分配は、お
手元
、下から二番目の図を見ていただけるとわかりやすいかと思いますが、
日本
の場合には、
国税
も
地方税
も累進税率でかけるという併存型で所得課税を分けているわけです。 ところが、北欧諸国や
ヨーロッパ
諸国で
地方
所得税を導入している場合には、
地方税
を比例的にして、その上に累進的な
国税
を乗っける、こういう分配をしておりますので、
日本
もこういう形にすれば、
地方
所得税、つまり個人住民税を手厚くしても、
地方
間の
財政力
格差
、
課税力
の
格差
は広がらずに、
国税
から
地方税
に移譲が可能になるのではないかというふうに考えておりますので、所得税から住民税へ移譲する場合には、住民税を例えば一〇%なら一〇%に一本の税率、現在では五%、一〇%、一三%とかけているわけですが、一本にしてしまう。そして、
地方
消費税は、これは比例税率ですから大体
地方
に満遍なく行きますので、この
二つ
の
税金
を
国税
から
地方税
に落としていく。 そして、
地方自治体
に独自でサービスを給付するような
権限
が、独自の
財源
がふえますと増加いたしますので、
地方自治体
がそうした
財源
を利用して、
地域
住民が安心して新しい産業にチャレンジできるような
公共サービス
を、福祉、医療、それから新しい産業に挑戦するためには緊要な
課題
になっているのは教育ですから、この三つのサービスを充実させることによって、安心しチャレンジできるような、最近まで私は社会的セーフティーネットと言っていたんですが、社会的セーフティーネットというのはサーカスの綱渡りや何かで敷く下の安全のネットのことですので、安全のネットだけじゃもう足りないのでトランポリンにして、もう一度戻してあげる。教育、その他を含めた、社会的なセーフティーネットではなくて、社会的なトランポリンを
地方自治体
がつくっていくということをしていかないと、この不況も脱出できないのではないかというふうに考えております。 今御説明申し上げたことにつきましては、3−4のところでございますけれ
ども
、私、
地方分権推進委員会
の専門
委員
を務めさせていただきまして、そして最終報告の税
財源
に関する
勧告
についてまとめさせていただきましたが、その最終報告の考え方は、私の
理解
では、今私が説明してきたような、集権的な
分散システム
から
分権
的な
分散システム
に変えていこうという考え方で貫かれているというふうに
理解
をいたしております。これはあくまでも私の考え方でございますので、そう
理解
しております。 そして、そういうことによって、税
財源
の規定、
分権
推進
委員
会の最終報告を読んでいただきますと、そこには、西尾先生がお書きになったところでございますけれ
ども
、
日本
の
憲法
には
地方自治
の規定の中に
地方
の税
財源
の規定がないけれ
ども
、
ヨーロッパ地方自治憲章
などでは明確に税
財源
の規定を設けてあることを考えれば、
地方自治
の本旨を具体化することとして、今申しましたような
地方税
財源
のあり方を明確にしていくということが
憲法
の
地方自治
の本旨を具体化していくことになるのではないかというふうに結んでおります。その点もお読みいただければと思います。 時間でございますので、これにて私のつたない
参考意見
を終わらせていただきます。 どうも、御清聴ありがとうございました。(拍手)
保岡興治
3
○
保岡
小
委員長
以上で
参考人
の御
意見
の開陳は終わりました。
—————————————
保岡興治
4
○
保岡
小
委員長
これより
参考人
に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤
公介
君。
伊藤公介
5
○伊藤(公)小
委員
神野
先生、大変貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございました。
地方分権
のこれまでの歴史、また
日本
の税体系というものを大変わかりやすく御説明をいただきまして、ありがとうございました。
日本
の税体系が集権的な
分散システム
、こういうものを、
行政任務
と
課税権
というものを見直していくべきだというような
お話
がございましたが、私は、つたない自治省の政務次官で、実は
全国
の三千二百
市町村
に
補助金
をつけるという
仕事
を担当したこともございます。その後、国土庁の
仕事
などやって、今振り返ってみますと、やはり、先生が御指摘をいただいたように、
日本
の税体系というものが、ある意味では
日本
のそれぞれの個性というものをむしろ失わせてきているのではないか。 北海道から沖縄まで、三千二百を超える
市町村
の顔がだんだんみんな似てきた。それは、
全国
画一的なルールで
一つ
一つ
の公共事業に対して
補助金
をつける、国の決められたシステムあるいは計算にのっとっていろいろなものをつくっていけば、
日本
全国
同じような顔になっていくのは当然でございまして、私は、まさに
地方分権
というものを今本気で考えなければならないときが来たし、また、何と言っても、先生御指摘をいただきましたように、
課税権
の問題が最も根本にあるんだろうというふうに思います。御指摘をいただいたとおりだと思います。 そこで、最近、東京都の銀行税問題ですね。私は、この銀行税問題そのものについて先生にどうだということをお聞きするということよりも、自治体の課税自主権の確立に関して
一つ
の問題提起をしたのではないかというふうに思います。そのこと自身のよしあしや、また、それは法的な問題にもなっていくんだろうと思いますけれ
ども
、自治体が独自に創意工夫をした
課税権
を行使できるという状況に私
たち
は大胆に変えていかなければならないというふうに思うわけです。 今回の東京都のこのような試みが、こういうことによって、せっかくの提言が方向づけを見失うことのないように、むしろ、その方向が評価されて、
課税権
というものが積極的に拡大されていくという方向に行くべきだというふうに思いますが、まずこの点について、少し先生の御感想を含めてお伺いしたいと思います。
神野直彦
6
○
神野参考人
それでは発言させていただきます。 まず、課税自主権については、私は全く先生のおっしゃるとおりだと思います。もちろん、課税自主権を
執行
するに当たっては、
地方自治体
は、課税の平等とか本来守らなければならない
原則
がございますので、それを考えて実行すべきだというふうに思いますが、自主権を損なうような制限を行うべきではないというふうに考えております。 東京都の銀行税問題というのは、これは御案内のとおり、新しい
税金
ではございませんで、
地方税
法の七十二条の十九で、
地方自治体
が独自の判断でもって、事業の状況に応じて、外形標準を適用して構わないという条項の発動なわけですね。この七十二条の十九というのは発動されたことがないものですので、どういう場合にこれを発動できるのかということがわかるような判決を下してもらいたいというのが私の期待でございました。 ところが、残念ながら判決は、
事業税
を、通常これは応益
原則
で課税される
税金
だというふうに学界の方でも
理解
しておりますし、それから、国会で改正をされたときの説明文書でも応益
原則
とうたっておりますし、前回出されました
政府
の税制
調査
会の中間報告でも明確に応益
原則
に基づくものだというふうにうたっているわけですので、国民は応益
原則
で課税されるものだというふうに
理解
しているだろうと思いますけれ
ども
、判決は、これを応能
原則
で課税される
税金
であるというふうに判断し、銀行側の勝訴にしたわけですね。私は、どっちが勝訴したということではなくて、完全にこれは
理解
を間違えているのではないかというのが私の印象でございます。 そうなってまいりますと、
地方自治体
の方では、
自分たち
が新しい
税金
をつくったり、あるいは課税自主権を発動するときにどういう基準で行ったらいいのかという判断ができなくなりますので、先生ちょっと御心配のように、私も同じように、この判決は新しい
税金
を
地方自治体
が課税すべきかどうかというようなことに関連しているわけではないのですけれ
ども
、このことによって、
地方自治体
が
自分たち
の課税自主権を発動する際に、いわば後ろ向きになってしまうということについては非常に心配をしております。
伊藤公介
7
○伊藤(公)小
委員
もう一点伺いたいと思いますが、先生の御指摘をされたグラフの中にもございましたし、いろいろな資料を見ますと、それぞれの国にはそれぞれの税体系があるわけです。 国のシステムによって非常に税のあり方が違うわけでして、
日本
は、
地方
の歳入に占める
自主財源
の割合が四割だ、
国税
は六割。
地方
が丸く数字で言えば四割、それが
補助金
をつけて逆になっていくということで、先ほど先生も御指摘をされましたとおり、
地方
は非常に
仕事
をやっている、しかし税
財源
は国が持っていて、それが
補助金
で戻ってくる。そういうシステムに
日本
はなっているわけですが、イギリスは、
国税
が何と九五%、
地方税
は五%ぐらいなんですね。それから、フランスもまた、
国税
が何と八三、四%、
地方税
は一六、七%、こういうことですから、イギリスとフランスは圧倒的に
日本
よりも
国税
が多いわけですね。 アメリカとドイツは、先生御指摘もいただきましたように州制度、連邦制ですから、その間に、例えばアメリカの場合には、
国税
は約六〇%、しかしそこに州があって、州が二五%、
地方
が一五%ぐらいある。ドイツの場合も、
国税
が約五〇%、そして州が割合高くて三七、八%ですか、そして
地方
は一三、四%ということです。 国の形によって税体系が違うのは当たり前ですけれ
ども
、
日本
がこれから
地方分権
を進めていく上で、どういう税体系にしていくかということは、国のシステム、つまり、国と県と自治体としていくのか、あるいはこの州制度、連邦制度のように、例えば今いろいろ御議論もあります道州制といいますか、そういう問題をどうするのか。 あるいは、私
ども
がこの
地方分権
を進めていくときに、税
財源
の問題を大きく変えていっても、三千二百の
市町村
の中には、どこまでいっても非常に
自主財源
が少ないところがあるわけですね。圧倒的に少ない。例えば、私
たち
の東京ですら、あの一番奥の檜原村では、
自主財源
が多分十数%だと思います。きょうはたまたま私のふるさとの高遠町の町長さんお見えいただいておりますが、私の村も過疎でございますので、多分一五%とか、
自主財源
は非常に少ないだろうと思います。
保岡
委員長
の地元も、前回の質問のときに私ちょっと御指摘させてもらいましたけれ
ども
、
財政力
指数の非常に低い
市町村
があるわけですね。 そういう問題は、これからの、
課税権
の問題も改革していかなきゃならないけれ
ども
、最終的にはそういうものをどうするかということを考えなきゃならないと思いますが、そういうことについては先生どんなふうにお考えになるのか。
神野直彦
8
○
神野参考人
まず、確かに国によって異なった税体系をとっておりますが、世界の流れを見てみると、
ヨーロッパ
では大体
地方自治体
の
仕事
というのは教会がやっていた
仕事
ですね。教会税を取ってやっていた
仕事
でございまして、先ほ
ども
申しましたように、医療とか福祉とか教育とかというようなことに限定されているわけですね。 ただ、二十
世紀
から十九
世紀
にかけて、そういう対人社会サービスが非常に需要がふえてまいりましたので、イギリスでもフランスでも大きな
動き
が出てまいりました。 これは、イギリスではレイフィールド
委員
会という
委員
会をつくって、先ほど申しました
地方
所得税を、スウェーデンのまねをして入れよう、こういう結論を出したところでございます。ただ、これは実現しませんで、御案内のとおり、
コミュニティー
チャージを導入して、ちょっと混乱をしているというのがイギリスの状態でございます。 それから、フランスも
地方分権
の改革を行いまして、ミッテランのときに、自動車の登録
関係
税含めて、
国税
から
地方税
に移譲しながら
対応
していこうということを行っているところです。 伊藤先生が御指摘のように、しかし、そうはいっても、
地方
によって、自主的な
財源
が少ないところがどうしても出てまいります。先ほ
ども
言いましたように、できるだけ自主的な
財源
でできるように税体系を変えて、自主的な
財源
でもできるようにしておく。どうしてもできなければミニマムを保障するというようなことをやるのが順序だろうと思いますので、現在の
地方税
の体系をまず改めるというのが先かと思いますが、その上で、どうしても小さいところ出てまいります。 これはどういうふうにやるのかということについては、
二つ
やり方がございまして、
一つ
は、合併をするというやり方ですね。もう
一つ
は、合併をしないで協力をする、連合をするというやり方だろうと思います。 前者の方の合併をさせたのはスウェーデンでありまして、これは強制合併させております。一方の連合をとったのはフランスで、これは
日本
で言うと広域連合ですが、連合制度をとっていますが、この連合体にもフランスは
課税権
を与えております。 したがって、いずれにしても同じことだと思います。つまり、小さな自治体でできない
行政
を、できるだけ協力し合いながら、
地方自治体
が
自分たち
でできないことを少し大き目な団体をつくって実現させていくということをやっていくことしかないのではないかというふうに考えています。
伊藤公介
9
○伊藤(公)小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
10
○
保岡
小
委員長
永井
英慈君
。
永井英慈
11
○永井小
委員
民主党の永井英慈でございます。
神野
先生には、きょう、二回目、
お話
を伺いまして、前回はセーフティーネット論、それできょうはトランポリン論というようなことで、大変関心を持って伺いました。 きょうは、先生、
財政
の御専門なので、その視点から
お話
を伺いたいと思うんですけれ
ども
、私は、
地方分権
は待ったなし、すぐにでも実現しなければいけないこの国の緊急かつ最大の
課題
だと思っております。これは、今、構造改革、構造改革ということが叫ばれておりますけれ
ども
、究極の構造改革とは何かと私なりに考えてみますと、統治構造の改革が何よりも先、その核心が
地方分権
であると思っております。
日本
は大変ゆゆしい事態になっております。例を挙げれば、学校崩壊、学級崩壊、授業放棄、教育の現場の荒廃は、もう目を覆うばかりであります。金融機関を初めとして、
経済
界、財界、産業界もこれまた大変なモラルハザードを起こしていることは、私が多くを申し上げる必要はないと思うんです。さらには、法曹というか司法の世界でも、まさに耳を疑うような出来事が報道されておるわけでございます。さらに、恥ずかしながら、
日本
の国政における疑惑の噴出、そのモラルハザードというのは、もう言語に絶する状態で、まさに政治不信の極に達していると思うんです。 そのようなことで、
日本
のあらゆる分野でモラルハザードが起きてしまって社会が大変な混乱に陥っていることは、私が多くを強調する必要はないわけでございます。 その一番の根源的な問題は何かということで、私なりに考えてみました。それは、極度の
中央集権
であります。
中央政府
に
権限
と
財源
を徹底的に集中させて、富国の
政策
、国力の増強、そういうことを中心に、明治以来一
世紀
以上にわたってこの国の形ができ上がってきたと思うのです。 そこで、どういう
現象
が起きたかというと、すべて国への依存、国へお願いする、国へ頼む、これが各自治体、
地方
に蔓延してきたことは事実です。同時に、
地域
の住民も
行政
に依存する、
行政
に頼むということで、
地方自治体
にしても国民にしても、自立心とか自己責任というような最も大切にすべきモラルの根源が失われて、依存心のみが肥大化してきてしまった。そこにモラルハザードの最大の原因があると思っております。 したがって、この巨大な
中央集権
こそ諸悪の根源であって、このすばらしい
日本
を立て直すには、徹底した
地方分権
によって、
地方
の自立を促す、
地域
の住民の創意工夫を生かしていく、そういう社会の構造にしていかなければならぬ、あるいは統治の構造にしていかなければならぬという基本的な考え方を持っておりまして、これから質問でございます。 今
お話
がありましたように、三千三百
余り
の
市町村
があります。その上に四十七都
道府県
があります。そして
中央政府
、国というような三層の構造になっておるわけでございますが、この
地方分権
においてどういう
地方
制度、どういう統治構造が理想的なのか。今伊藤先生からも
お話
が出ておりましたけれ
ども
、道州制をしいて、思い切って
市町村
という基礎自治体を統合していく、そこに
地方
、
地域
の自律性、能力というものを高めていく、そして広域自治体としての都
道府県
の合併等々も積極的に行っていく、州制度ですね、そういう道州制のような考え方について、先生のお考えをいただければと思います。 さらに、それに付随して、
財政
の面でも
お話
をいただければありがたいと思っております。ありがとうございます。
神野直彦
12
○
神野参考人
ありがとうございました。 道州制論は、私は非常に弱いところでございまして、前半の
お話
につきましては、全く先生のお考えに賛成させていただきます。 私の恩師の言葉で、人間は自由なるがゆえに連帯するという言葉があります。人間は自立して初めて人と協力できるんだというのが社会を構成する
原則
だろうと思いますので、自立をするということは、協力をしないということではなくて、自立しているがゆえに私
たち
はお互いに手を携えて生きていくんだということが、先ほど来言っております
補完性
の
原理
などの中心になるかと思います。 道州制論ですが、
分権
に実は
二つ
の考え方がございまして、
一つ
の考え方が、今説明申し上げました
補完性
の
原理
という考え方です。もう
一つ
の考え方は、これはカナダとかオーストラリアがそういう考え方をとっているのではないかと思いますが、強い
中央政府
に対抗するためには強い
地方政府
でなければならないという考え方で、州の力を非常に強くするという考え方です。そうすると、今度は
市町村
よりもむしろ州を重視していこうという考え方が出てまいります。これは
補完性
の
原理
とは対抗するような考え方だろうと思います。 先生がおっしゃった道州制論というのは、ちょっとそれとは違う観点だろうと思いますが、道州制論は幾つかパターンがございまして、国のやっている
権限
とか
仕事
を道州に移していこうというような考え方と、逆に、
道府県
ではもう既に広域化してできなくなっているような
仕事
を、道州をつくることによって下から上に上げていこう、こういうような考え方があるかと思います。 私は、そこら辺をきちっと整理した上で、もう
一つ
都
道府県
の上に公共空間をつくる必要があるかどうかということを慎重に見きわめてコンセンサスをとる必要があるかと思います。 道州制みたいにもう
一つ
上を、
道府県
の上にこの
分権
の過程でつくった国はございます。イタリアもフランスも、デパルトマンという
道府県
の上にレジオンという自治体をつくっておりますし、ここには職業訓練とか高等教育などをやらせるためにつくりました。それからイタリアの場合には、医療を中心とした業務はレジオンでないとできないということでその上をつくっておりますので、どういう観点で道州をつくるかどうかということを含めて議論をして煮詰めていく必要があるだろうというふうに思っております。
永井英慈
13
○永井小
委員
財政調整
の機能というのは極めて大事だと思います。 私が描いているのは、国と
地方
との
財源
調整
、それから
地方自治体
間の
財源
調整
ということを、透明性を高めて、基準をしっかり定めてやっていく必要があろうと思うんです。 それで、ちょっと飛びますけれ
ども
、ドイツでは共同税という制度を導入していると聞いておりますけれ
ども
、先生のお考えでは、我が国における共同税の導入、あるいは共同税徴収機構というような制度はどういうものでしょうか、ちょっとお伺いできればと思います。
神野直彦
14
○
神野参考人
ドイツは協調的連邦主義と申しまして、州に課税高権、
税金
をかける
権限
があるのですけれ
ども
、アメリカのように州が連邦に対して強い自律権を持つのではなくて、連邦と州が共同して
任務
を果たしていこうという
原則
のもとに共同税というのをつくったというふうに私は
理解
をいたしております。そういう意味で、いわば垂直的な
政府
が連帯といいますか、協力し合ってつくり上げた制度が共同税だというふうに
理解
しております。 これは、共同税に一長一短ございますので、これも慎重に議論をすべきことだろうと思います。ドイツの場合には徴収権は州が持っているわけです。徴収権で申しますと、フランスの場合には全部国が持っております。スウェーデンの場合には独法化されておりますので、国の機構なのか、
中央政府
の機構なのかちょっとわからないのですが、独立した機関がとにかく徴税を一括して行うというやり方をとっております。 この共同で徴収をするという機構をつくったときの問題点は、取れなかったときどうするかということなんです。山奥に取りに行くのは非常に大変だから、全体で数が合えばいいので取らないというようなことが起きたときに、その山奥の大変にコストがかかるところを一元的に徴収をすると取られない可能性があるので、そのときには、フランスの場合には、
中央政府
が、取れなかった場合には全部予算どおりのものを
地方政府
に補償することにしているわけですね。 ですから、徴収ができなかった場合などについてどこがどういう責任をとるのかという問題が生じてまいりますので、私
たち
の
財政学
では、徴収権と、
税金
をつくる立法権と、それから
税金
をもらう
権限
、これはできれば三位一体にしていた方がいい。しかし、さまざまな場合がございますので、共同税という場合には立法権をどこが持つのかというのが問題になるわけです。 ドイツの場合には、
中央政府
と
地方政府
の共同の意思
決定
機関として参議院が位置づけられておりますので、そういう共同立法ができるということになっていますから、では立法権はどうするかと。徴収だけ共同にするのか、
配分
の方は今度は別々にするのか、こういう問題が出てまいりますので、そこら辺の状況を考えて、また
税金
によって異なる場合もございますから、共同税になじむ税とそうでない
税金
もございますので、慎重にこれも考慮して検討していく必要がある問題で、にわかに結論はなかなか出し得ないんではないかというふうに思っております。
永井英慈
15
○永井小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
16
○
保岡
小
委員長
江田康幸君。
江田康幸
17
○江田小
委員
公明党の江田康幸でございます。 本日は、先生、貴重な御
意見
をいただきましてありがとうございます。 幾つか質問をさせていただきたいと思っておるんでございますが、まず、先ほどからも議論に出ておりますように、
日本
全体が非常に
経済
が厳しい状況に至っております。これは
地方
においてはさらに厳しいわけでございまして、
地方
の
経済
の活性化ならずして国の
経済
の活性化もないと私は思っております。そういう
経済
の活性化に限らず、二十一
世紀
に
対応
した教育とか環境、福祉、医療、介護といった大きな問題がまた横たわっております。こういうようなものに
対応
して、
地方
の活性化をしていく上においても、やはり本来の意味での
地方分権
が、
地方自治
が進まなければそれはあり得ないと私
理解
しておるところでございます。 先生の著作の「
分権
改革の
推進
へ向けて」というのを前もって読ませていただいてきょうお聞きしたんですが、先生は非常に興味深いことをこの中でも冒頭から言われておりまして、都市再生
一つ
とっても、人間の生活の場としての都市の再生で
経済
活動までが光ってくる、「人間の生活の「場」として都市が再生すれば、人間が集住するだけでなく、人間が交流し始めるからである。」こういう考えは非常に私も大事と思っておりまして、それがまた
地方
の特色、活性化に結びつくということではないかなと思っております。 これまでこの小
委員
会で、
地方分権
並びに広域化という、
市町村
合併等を勉強してきたわけですけれ
ども
、
地方自治
の確立には
地方分権
が必須であって、そしてその
地方分権
の中ではやはり、先ほどからも議論されておりますように、
市町村
においては体力を、また受け皿として、その体力をつけるという意味から広域化が必要であろう、それが二十一
世紀
型の介護、医療、環境、教育といった問題にも
対応
でき得るものになる。 そして、もう
一つ
の大事な柱が、税
財源
の移譲でなければならない。今回は三回目の小
委員
会でございますが、これで一通り
地方分権
における大事な要点を先生方からお聞きしたことになるかと思っております。 この税
財源
の移譲について幾つか御質問しておきたいと思うんです。 先生が申されましたように、平成十三年七月の
地方分権
一括法によって、先ほど
二つ
の非
対応
のうちの、それこそ
決定
と
行政任務
の非
対応
といいますか、そこのところは解消してきているようだ、しかし、
支出
と
課税権
の非
対応
が残っているということでございました。この
課税権
の中に、
基幹税
として所得税と消費税を
地方
に移譲していくということについて
お話
がありましたが、たしか、
地方分権推進委員会
の中でもこういうような
意見
があったかと思います。
国税
の所得税と消費税の一部を
地方税
に移すように具体的な数字が挙がった。例えば所得税の基礎税率、これは今一〇%であると思いますが、その半分の五%分を
地方税
である個人住民税に回す。現在、消費税五%のうち一%は
地方
消費税となっているのでありますが、これに、さらに、国の一%分を削って、それを
地方
消費税に上乗せするというような構想もあったということを聞いております。そうすれば、個人住民税が三・二兆円、それから
地方
消費税が二・五兆円ふえることで、国と
地方
の税収
比率
が現在の六対四から五対五に近づいてくる。
国税
収入が減る分は国からの
地方
交付税
や
補助金
を減らす。こういうような構想が言われているかと思うんですが、具体的な、こういう税
財源
の移譲において、
地方
所得税、
地方
消費税をどういうふうにやっていくか、それはまた一律にやって成功するのか、そういうようなところにおいて御
意見
をひとつまずいただきたいと思うんです。
神野直彦
18
○
神野参考人
分権
委員
会の議論の中では、今、先生がおっしゃったような数字は飛び交っておりましたが、最終的にまとめたものではございません。それで、私などが試算をいたしますと、先生が今おっしゃったような形でもって、一律の一〇%に所得税をいたしますと三兆円行きますし、
地方
消費税の方でも、先生がおっしゃったような数字で二・五兆円行きますので、それをやれば五対五という数値になるということになるかと思います。
地方財政
学の方では、昔から割と五対五にしようという案が多かったのは、五対五にするといわゆる
国庫支出金
の分だけが行くだけでもって非常にうまくいく数値になりますので、そういう五対五にするという
意見
が昔からございましたので、それが
一つ
の案かというふうに思います。 ただ、段階的にどうやるかというお尋ねかと思いますが、これについてはなかなか難しい問題がございます。つまり、移譲すれば、必ずどっかの
地方自治体
に多く行ったり、どっかの
地方自治体
に少なく行ったりいたしますので、これをどうにか
余り
現状と変化のないようにしようとすると、なかなか難しいテクニックを使わなければならないということになります。 これも私の学生などに説明をすると、なぜそんな、現状と変わらないようにする、激変緩和をしなくちゃいけないんですかと質問を受けるんですね。激変緩和をするのであれば改革しなきゃいいじゃないですかとよく素朴に質問されますが、それはいっても、さまざまな利害
調整
をするという意味で激変を緩和していくということで考えていきますと、一挙に五対五に持っていく中間段階として三兆円ぐらいの移譲を考えていくということであると、どうにか特定の
地方自治体
に税が集まるということを回避しつつ移譲することが可能になるということですので、私の個人的な考え方ですけれ
ども
、まずステップはそこかなということは思います。 先生がおっしゃった五対五にするということになってまいりますと、これは
交付税
とか、ほかの全体の、現状の仕組みの骨格をなしている部分にも手をつけないと、現状とかなりかけ離れた、特定の
地方
に
税源
が集まるという結果になってしまうということだと思います。ですから、まずできるところからステップでやっていくというのが現実的なのではないかというふうに思います。
江田康幸
19
○江田小
委員
ありがとうございました。 時間が参りましたので、残念ですが、どうもありがとうございました。
保岡興治
20
○
保岡
小
委員長
武山百合子
君。
武山百合子
21
○武山小
委員
自由党の
武山百合子
でございます。 先生、きょうは貴重な
お話
ありがとうございます。 早速ですけれ
ども
、国民は、
地方自治
、
地方自治
と言われているけれ
ども
、ほとんど
権限
がない、三割自治だ、その程度に思っているわけです。この一九二八年、総
選挙
用
政友会
ポスター
で、本当に、今言われてもおかしくない、そのまま私
たち
にお返しされているような状態ですけれ
ども
、なぜ進まなかったのか、
地方自治
。国の責任、
地方
の責任、
市町村
の責任、国民の責任を先生ぜひ
お話
ししていただきたいと思います。
神野直彦
22
○
神野参考人
この一九二八年あたりから
地方分権
の
動き
が出てまいりまして、それがなぜ進まなかったのかという歴史的な教訓は、今にも当てはまるわけですけれ
ども
、その後、
日本
は、非常に不幸なことに、大恐慌という不況を経験いたします。そうすると、国の
財政
も破綻し、もちろん
地方
の
財政
も破綻し、現在と同じような状況になっていくわけです。その過程の中で、結局、
税源
移譲とか
分権
とかという問題がないがしろになってしまった。結局、御案内のとおり、不幸な戦争の道を歩みつつ、集権的な構造をむしろ強めてしまう、戦時
財政
をやっていくためにはどうしても集権的な
財政
にせざるを得ませんので、強めてしまうという不幸な結果になってしまったということだと思います。 ですから、そこから教訓で引き出せることは、
分権
が叫ばれるときというのはいつも不況なんです。逆に、不況だから
分権
が叫ばれるのかもしれませんので、この不況をどうやって乗り切るのかというのは、先ほど来諸先生方の御
意見
にもありましたように、国民がこの不況の中で不安にあえいでいくと、戦争に入っていったりなんかした歴史を考えてみると、将来不安をできるだけ早く払拭する意味でも、
地方自治体
から人々の生活をちゃんと保障できるようなサービスを出していくということが必要だろうと思います。 それから、もう
一つ
重要な点は、私
たち
はどうしても、
日本
で
民主主義
が育たない、育たないということを繰り返しいろいろな場所でお説教されてきたのですが、この間ちょっと
ヨーロッパ
に行ってびっくりしたんですけれ
ども
、
ヨーロッパ
では
民主主義
を育てようという
政策
を
政府
がやっているんです。私
たち
は、そういう意味で、
民主主義
というものも、
日本
は
民主主義
が育たないねというふうにあきらめるのではなくて、どうしたら
民主主義
というのは
日本
で育つのだろうかという仕組みを諸先生方にも考えていただいて、そういう
政策
を打っていくということが重要ではないかと思います。
武山百合子
23
○武山小
委員
ありがとうございます。 それから、アメリカなんかを見ますと、先ほど
お話
にもありましたように、州の
権限
、それから
市町村
の
権限
が大変強いものですから、教育
一つ
をとりましても、先生の採用を
市町村
でやっているわけです。教育
委員長
も、なりたい人が自分が立候補して
委員長
になるというような状態です。
日本
の場合は、校長先生をされた方が教育
委員
会に入られて、教育長になったりするわけです。 確かに、そこが大変大きな違いがありまして、ある町は、
自主財源
をつくるために、大きなショッピングセンターを誘致するとか、住宅をたくさんつくって、例えば
固定資産税
というものが、アメリカもそれぞれいろいろな凹凸ある州ですけれ
ども
、例えばコネティカット州とかですと、高級住宅街というものが各
市町村
にありまして、そこの
固定資産税
というのは大変高いんですね、五千ドルから五十万から百万、それ以上のところは半分以上あるところが大変多いわけです。そういうふうにして
固定資産税
を多くふやすことによって
自主財源
がふえる。また、
固定資産税
が教育の学校税になっていくということで、私の町は教育が非常に熱心だということで、またそこに住宅を求めて人が移動したり入ったりするわけなんです。
日本
もそういうふうなインセンティブを与える。 そういう意味で、
自主財源
を求めるには何に求めたらいいか。恐らく国民は、今合併の方向で走っておりますけれ
ども
、ごみ処理の問題は広域事業でやっておりますけれ
ども
、合併化、合併化ということで、今私の地元でもそういう
お話
が出ておりますけれ
ども
、意外とシビアで反対なんですね。そのネックになっているのは、
地方分権
してどんな
地方自治
が描けるかという絵がはっきりと示されていないと思うのです。その絵というのは
権限
と
財源
だと思うのです。それで、
財源
をどこに求めたらいいか、例えばの話を
お話
ししていただきたいと思います。
神野直彦
24
○
神野参考人
私は、基本的に住民税だろうと思います。
選挙
権を持っている住民がお互いに
負担
し合う税に求めるべきだろうと思っています。 先生の比喩は大変すばらしい
お話
で、私も、
地方税
というのはいわばマンションの管理費のようなものだ。マンションの自分の家の中だけがきれいでいいんだと考えれば、お互いに
負担
し合う管理費は少なくして外は汚くていいという、そういう
地方
に住めばいいわけですね。それから、いや、むしろ管理費は高くても周りがきれいなところに住みたいというふうに思えば上げればいい。 先生が
お話
しのように、管理費が高くて管理が行き届いているところは嫌われるかというと、そんなことはなくて、逆にそういうところに集まるというのが普通の考え方ですので、今の管理費みたいな考え方でいえば、累進税率じゃなくて構いませんけれ
ども
、比例税率でお互いに
負担
し合う税として住民が
負担
するというのが基本に据えられるべきだろうというふうに思います。
武山百合子
25
○武山小
委員
先ほど外国の例をいろいろ
お話
しいただいたんですけれ
ども
、
日本
がこれから
地方分権
するに当たって、どこかモデルケースを知りたいと思うのですね。どこか、この国のこういう部分をモデルにしたら
日本
の
地方分権
が進むのではないか、また理想とする、
日本
の社会にマッチするのではないかという国はどこでしょうか。
神野直彦
26
○
神野参考人
これはなかなか難しいのですが、
日本
はほかの国にはなれませんので、
日本
として考えることしかないだろうと思います。 塩崎先生が翻訳されている本で、「税制と
民主主義
」という本を著したスタインモという世界の超一流の学者が今私のところに来ておりますが、その先生がおっしゃるのには、
日本
に来て初めて
グローバルスタンダード
という言葉を聞いた、これは一体、こういう言葉があるというのはびっくりした。世界の国々では、気候も違うし風土もみんな違うはずなので、
共通
したルールというのはないはずだ、そんなことは設定できないはずなのに、なぜ
グローバルスタンダード
、
グローバルスタンダード
と言うのかほとんど
理解
できなかったけれ
ども
、どうもよくよく聞いてみるとアメリカンルールを言っているようだというような
お話
をされたことがあります。 私
たち
は、ほかの国と同じにはなれませんので、状況は確実に変わった、だから
分権
はしなければならないんだけれ
ども
、
自分たち
の国のどこをどう変えていったらいいのかという目で、
自分たち
で考えるべきだというふうに思います。 ただ、自分の姿が一体どういう姿かということを、いつも鏡で見ないと自分の顔がわからないように、自分の姿がどういうことかというのは認識しにくいものですので、
参考
にできる国ということで挙げさせていただければ、私は、
ヨーロッパ
の国々の方が
コミュニティー
などが存在していたという点で
日本
に割と似ているのではないかと思いまして、いつも私が比較させていただいているのは、スウェーデンとかフランスとかドイツなどの
ヨーロッパ
諸国を比較の対象にさせていただいておりますので、私の個人的な考えでは、我々がどうやって変えていこうかという
一つ
のモデルとして、
ヨーロッパ
が挙げられるのではないかというふうに思います。
武山百合子
27
○武山小
委員
どうもありがとうございました。
保岡興治
28
○
保岡
小
委員長
春名直章君。
春名直章
29
○春名小
委員
日本
共産党の春名直章です。 きょうは、先生、本当にどうもありがとうございます。 言うまでもなく、戦後の出発点の、
憲法
が制定されたときに、第八章
地方自治
の章ができた。このできた大きな要因が、戦前の大
日本
帝国
憲法
の中には
地方自治
の章は一切なくて、
国家
の
政策
の遂行機関に
地方
行政
制度が導入されていくという経過の中で、
日本
の
民主主義
にとって、民主化にとって不可欠であるということでこの第八章が盛られたというふうに
理解
しておりますが、この点での歴史的な意味といいますか、第八章の、そのことについての先生の御見解をお聞きしたい。 それから、その
地方自治
を体現化するために、戦後、
地方財政
制度の改革な
ども
いろいろ提案もされて、一部は具体化されてきたと思うのです。 一九四九年と五〇年に
シャウプ勧告
が出されて、そこで、
国庫支出金
を、補助、奨励金を残して全廃する、それから
平衡交付金
制度をそれにかわって設ける、それからもう
一つ
は
機関委任事務
制度を全廃する、既に四九年、五〇年でこれは提案されているわけですね。しかし、今日までそれがほとんど実現されずに来ていた。 そこで、
地方分権
一括法で三年前に
機関委任事務
の方はようやくなくなるということになったわけですが、先生も、「二〇二五年
日本
の構想」という本の中で、今回の
分権
改革の
課題
は
シャウプ勧告
の
課題
であって、戦後改革の
課題
の再設定だというような表現も使っていらっしゃると思うのです。逆に言えば、こういう
シャウプ勧告
が実現されていれば、今日もう少し違った
地方自治体
の姿があったのじゃないかなというふうにも思います。 なぜ
シャウプ勧告
が実行されなかったのか。その点についてもお聞かせいただけたらと思います。
神野直彦
30
○
神野参考人
最初
の、
地方自治
という章が
憲法
の中に設けられた、これはもちろん画期的なことでございます。 戦前は、
地方自治
の自治を、おのずからおさまる、自然におさまるんだというふうに思わせた。ただ、その場合の根拠になっていたのは、
地域
共同体、
コミュニティー
がまだ残っていたということですね。それを利用した統治が可能だったということだろうと思います。 しかし、先ほ
ども
御紹介いたしましたように、
地方自治
を目指す
運動
がなかったわけではなくて、戦前から民主化
運動
を初めとして
地方自治
を求める
運動
が根強く残っていたということだろうと思います。
シャウプ勧告
が既に
勧告
内容としているにもかかわらず、それが実現していないのはどうした理由かということでございますけれ
ども
、私は、きょうの
意見
の陳述でも申し上げたいことは
二つ
ありまして、
シャウプ勧告
が取り組まなければならなかった
課題
と、今はもう
一つ
あって、一九八〇年代から世界的に、福祉や教育や医療を充実していくためには
地方
に自治権を与えないとだめだという、この
二つ
の、つまり、現代的な
課題
と戦後改革がやり残した
課題
と、
二つ
あるんだろうというふうに考えています。
分権
委員
会がやったことは、とりあえず、まず、戦後改革がやり残した
課題
をどうにかやろうということだったのではないか。 今後残された
課題
というのは、フランスは、それこそ戦後改革はなかったというふうに私は
理解
しておりまして、フランスはミッテランのときまで、
日本
の明治時代と同じように官選知事なわけですよね。そういうことを、ミッテランは、
日本
の戦後改革が抱えていた
課題
と同時に、現代的な
課題
を両方解決したというのが私の考え方でございますので、
日本
がこれから取り組まなければならないのは、ひとしく現代的な
課題
を実現して国民の生活を安定化させることだろうというふうに思っております。
シャウプ勧告
の
課題
について申しますと、長い年月がかかったということは、これはいろいろ複雑な問題があるかと思いますが、先ほど来言っている問題で申しますと、やはり
日本
の
民主主義
に関する下からの
運動
というものが少し弱かったのではないかというふうに思います。
春名直章
31
○春名小
委員
ありがとうございました。 不可欠の
財政調整制度
の問題についてちょっと教えていただきたいと思いますが、
日本
は
地方
交付税
なわけですけれ
ども
、先ほどの陳述の
お話
の中でも、
ヨーロッパ
自治憲章でも、単なる
国税
の
地方
への分配の問題だけではなくて、需要の不
均衡
を補うということが明記されていると。非常に大事な点だと私も思いまして、この点、
日本
の
地方
交付税制度
も、
地方
交付税
法で明記されているように、国の責任で需要の補てんをする、補うということが責任として明記をされている。 ところが、最近の傾向を少し私心配しているのは、
地方
交付税
の削減先にありきというような印象が非常に強くて、一兆円を削減しようとか、そういう話が先に来る。あるいは、段階補正の見直しというのはもう既にやられている。そういうことが先にあって、
税源
移譲の話はまだ先の話になっている。このままいくと、
地方
が余計疲弊するのではないかという大変心配をしているわけなんですね。この点について、どういうお考えでしょうか。
神野直彦
32
○
神野参考人
論理的に申しますと、今先生がおっしゃったように、まず、先ほ
ども
御説明しましたように、垂直的な
財政調整
でもって
課税権
と
行政任務
をどうやって設定するのかということをしてみないと、水平的な
財政調整
に手がつけられませんので、
最初
に水平的な
財政調整
に手をつけるということは、本来、本末転倒の議論になってしまうおそれがあるというふうに思います。 ちょっと世界的に見てみますと、
交付税
というのは、もともと国が統合していくための制度なんです。ですから、
ヨーロッパ
の今現状を見てみますと、
ヨーロッパ
は各地が個性的な
地方
になろうとしていますので、独立
運動
がそこらじゅうで起きます。大体、多くの国を見てみると、貧しい
地域
が独立をするというと、
日本
の
交付税
に当たるような
財政調整制度
を強めます。逆に、豊かな
地域
が独立しようとすると、
日本
の
交付税制度
に当たるような
財政調整制度
を弱めるということをしておりますので、これは
国家
を統一していくための手段なんですね。 もともと、ドイツのエルツベルガーの改革で一九二〇年に
財政調整制度
が導入されたときの合い言葉は、ドイツは
一つ
だでございますので、実際には、
国家
の統合、いろいろな
地域
をどうやったら
国家
として
一つ
のまとまりをつけていくのかというための手段だというふうに
理解
すべきものだと思います。
春名直章
33
○春名小
委員
ありがとうございました。 少し生々しい質問で、答えにくかったらそれであれなんですけれ
ども
、
地方自治
の小
委員
会ですので、今、
地方自治
をめぐって、
一つ
の法案で私が非常に問題意識を持っているのがありまして、それは有事法制なんです。 武力攻撃事態法という
法律
が提案をされておりますけれ
ども
、そこの中身の中で、
地方自治
という角度から見てどうかなという御
意見
がもしあればということなんですが、武力攻撃事態というのが予測やおそれで認定をされるのもすべて総理や内閣がやるということになって、対処措置も全部決めて、
地方自治体
はそれに協力してもらうということになっているわけですね。協力してもらうのはいいのですけれ
ども
、なかなか戦争には、そういうのは協力しにくいなという
意見
に対しては、法的拘束力を持つ指示権、直接
執行
権、これで最強の関与をするという仕組みになっているわけですね。 私、
地方分権
一括法の議論をずっとやってきました。国と
地方
は対等、協力であるということが一貫した
政府
の説明でした。私は、それは納得しているわけです。しかし、この法体系と、今までの
地方分権
という流れが、どうもそごを来すなというイメージを持たざるを得ないわけなんです。 この点でのもしお考えがありましたら、お聞かせいただけませんでしょうか。
神野直彦
34
○
神野参考人
ちょっと私、有事立法とかこれは全く素人なので、発言ができないのですけれ
ども
、私の言えることは、いつも私が観察していますスウェーデンは、核シェルターが小学校から地下鉄のところまで全部準備できているのは御存じのとおりでございます。何分間でしたかのうちに、四百万人の国民を核シェルターに全部入れることができることになっているわけですね、人口八百万人ですので。 そういうことを考えると、自治体の役割がもしも有事においてあるとすれば、本当に国民の生命を守るということだろうと思いますが、それは、私の、素人で、観察している結果だけで、論理的にどうなっているのかというのはちょっと、私、
財政学
者なので不用意な発言はできませんが、国民の少なくとも生命をどうするかということについては、自治体が、大災害などを含めて、考えておくべきことに入るのではないかというふうに思います。
春名直章
35
○春名小
委員
どうもありがとうございました。
保岡興治
36
○
保岡
小
委員長
金子哲夫
君。
金子哲夫
37
○
金子
(哲)小
委員
社会民主党・
市民
連合の
金子
でございます。きょうは、貴重な
お話
をありがとうございました。
地方分権
の
推進
のためには、
財政
の面からの、
地方自治体
における自主
財政
といいますか、そういったものがなければなかなか進まないという
お話
をお伺いしたのですけれ
ども
、今、少しお伺いしたいのは合併の問題なんです。 この合併の問題も、
地方分権
の
推進
といいますか、
地方自治体
の力をつけるということで進んでいると思いますけれ
ども
、進め方ですね。一応、自主的な合併を
推進
する、自主的に進んでいくということで本来あるわけですけれ
ども
、しかし、一九九七年の合併特例法の改正や二〇〇〇年十二月の改正などを見ても、そのやりようというのは、どうも上から、例えば、合併をすれば
交付税
をこれぐらい延長するであるとか、やらなきゃどんどん、先ほどちょっと御
意見
も出ましたけれ
ども
、
財政
が厳しくなりますよというような感じの中で、実は、今先生の
お話
のあった、いわば
分権
を進めていくための
財政
のありようと、合併を進める際の国のやりようというのは、残念ながら逆行しているんじゃないか。 合併によって、今日の
経済
不況の中で、
交付税
がどんどんおりてきたんですけれ
ども
、ほとんどひもつきということで、むしろ、
地方
は公共事業などをやるために
地方債
をどんどん発行して、道路の拡張とかで
財政
が厳しくなったということを言われておりますけれ
ども
、今度の合併も、ある意味では、
財政
の自主権などについて触れずに、結局、
交付税
は将来減額しますよというような形の中で、結果としては、域は広くなったかもわからないけれ
ども
、
財政
確立では非常に厳しくなるんではないか。合併のために
地方債
の発行まで認めていくということになれば、それだけの負債というものを将来に抱えていく。 本来の自治体の役割である住民サービスとか、いわばセーフティーネットのための
財源
というものが、むしろ先食いされていくようなことになって、本来の意味の
地方分権
ということからいうと、このような
推進
の仕方というのは逆行しているんではないかというような、極端なことを言いますとそういうふうに考えるのですけれ
ども
、その辺についてお考えをお伺いしたいと思います。
神野直彦
38
○
神野参考人
先生がおっしゃるように、合併というのは、住民が決めることだと私は思いますので、住民が他の
地域社会
と協力していくというメリットを認識できていないと意味がないというふうに思います。愛し合わないで結婚してもしようがないということですね。協力をするメリットというのが重要だろうと思います。 合併を進める場合には、何のために合併するのかということを住民が
理解
しているということが重要で、普通考えられているのは、
地方自治体
間に
格差
が生じてしまったときに、
一つ
のやり方は、国に
公共サービス
をみんなやってもらうというやり方がありますね。それからもう
一つ
は、
格差
があるので、国に
税源
を預けて、そして配ってもらうというやり方がある。そういうやり方を
日本
はとってきたわけですよね。ところが、もう
一つ
のやり方として、
格差
が生じているときに、お互いに協力するというやり方があるんじゃないかということに気がついたときに、初めてその協力の延長線上に合併が開けてくるんだと思うんです。 ですから、
地域
間の
財政力
の
格差
を是正し、
地方自治体
の
財政力
を引き上げることができるということを住民が認識できたときに、合併を進めていくべきだというふうに思います。 ただし、合併のデメリットは、合併をすると、必ず大きな
政府
になります。大きな
政府
になると、住民から遠い
政府
になってしまうんですね。ですから、合併を進める場合には、身近な
政府
であり続ける仕組みをつくっておかなければならない。例えばスウェーデンの場合には、合併した後でも、
公共サービス
、例えば教育のサービスは私
たち
の地区でやらせてくれと言えば、手を挙げると、地区
委員
会をつくって、全面的に
決定権
がございます。ですから、身近な
政府
であり続けるという仕組みをつくっていく。 逆に、合併しないという選択も、不作為の責任をとらなくちゃいけませんから、合併をしないことを選択したら、それなりのデメリットがあるわけですね、
財政力
が強まらないというデメリットがあるわけですから、それを克服するということを考えなければならない。そこで、フランスは、先ほ
ども
説明しましたように、今度は広域連合でお互いに協力し合う
政府
をつくりましょう、効率的な
公共サービス
はその協力してつくった広域連合にやらせましょうということでやるわけですね。 そうすると、どっちの行き方をとっても基本的には同じことで、身近なところで決めた方がいい
公共サービス
は身近な
政府
が決めるし、少し広域で
決定
した方がいいようなサービスは上の方で決めていくということになりますので、合併の場合には、メリットとデメリットをきちっと認識した上で、しないにしろするにしろ、責任をとる必要がある。 合併のメリット、デメリットを単に指摘するだけではなくて、合併をするのであれば、合併をするデメリットを消して合併をするし、合併をしないのであれば、合併しないことによるデメリットを解消しておくという努力をするということが一番重要なことではないかというふうに思います。
金子哲夫
39
○
金子
(哲)小
委員
ありがとうございました。 現実の合併の状況を見てみますと、例えば、市域三万の市勢とかいう話がありますけれ
ども
、過疎の
地域
、私は広島ですけれ
ども
、広島でも中国山地の
地域
は、合併をしても一万そこそこ、場合によれば一万にもいかないけれ
ども
、広域の合併をしなきゃいけない、面積だけは広くなる、
財政
基盤というのは全然強化をされないという問題が実際には起こっている。にもかかわらず、なぜ合併するんだろうかという疑問を私自身は持っております。しかも、それも
地域
が広くなる。 それで、先生にちょっとお伺いしたいのは、
水平的財政調整
ということをおっしゃって、
地方自治体
間の
財政調整
という
お話
がありました。 例えば、先般、東京都がホテル税を課税するときに、鳥取県知事から
意見
が出たということも報道されておりましたけれ
ども
。この具体的なイメージとしては、
地方自治体
間の
財政調整
、特に先ほど私が言いましたような
地域
といいますのは、結局、先生の先ほどの
お話
でも、
自主財源
としては住民税という
お話
がありましたけれ
ども
、実際には、そういう
地域
というのは、高齢化率も非常に高くなっていて、住民税そのものもそんなに徴収できない。もし率を上げたとしても、ほとんど
財源
を確保できるような状況にないということがあると思うんですよ、高齢化が進んで実際収入がないような場合。それが現実の問題としてあって、高齢化率がもう二五%を超えているとか、そういう
地域
がお互いに合併するわけですから、ほとんどのケースの場合。 そうしてみますと、どういう
関係
の中で、
地方自治体
のそういう
地域
に対しての
自主財源
、そういうものをどのように考え、また、そのことと、今
水平的財政調整
と先生のおっしゃっている意味との何か兼ね合いとか、その辺があれば、
お話
しいただければと思います。
神野直彦
40
○
神野参考人
まず、合併やそのほかの手段をしても
財政力
の弱い
地域
は残るということは、おっしゃるとおりだと思います。 その場合に、
補完性
の
原理
の考え方からいきますと、
地域社会
は、今の場合には全部やらされるわけですね、こういう
仕事
を全部やりなさいというふうに言われるわけですけれ
ども
、私の
補完性
の
原理
からいえば、私のところではこの
仕事
はできませんと言う権利を持っているということだろうと思います。 そうすると、
市町村
が、自分の
任務
のうち、この
任務
はできないと言ったときにどうするかということです。その場合には恐らく
二つ
考え方があって、
道府県
がかわりにやってあげるということをするか、あるいは、近くの
市町村
でそれができるところがやるかということだろうと思います。フランスのストラスブールなんかでやっているCUSという都市共同体はむしろ後者の方になるわけで、どちらかでやっていく、クリアしていくしかないというふうに考えております。 それから、水平的な
財政調整
と垂直的な
財政調整
という意味が、一般的に使われている言葉で
理解
していただいていると思いますが、というのは、一般的に言われているのは、水平的な
財政調整
というのは、
地方政府
間で直接やるやり方であり、
垂直的財政調整
というのは、一たん国に上げてから
交付税
みたいにやるやり方を垂直的な
財政調整
というふうに先生は
理解
されていると思いますが、きょう私が使わせていただいたのは、垂直的な
財政調整
というのは、
課税権
や
行政
権を割り当てるという
調整
で、水平的な
財政調整
の中に上へ上げるかどうかというのを含めておりますので、いわゆるフィスカル・イクウェルゼーション・システムと言われている
財政調整制度
は水平的な
財政調整制度
としてここでは説明させていただいているところでございます。
金子哲夫
41
○
金子
(哲)小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
42
○
保岡
小
委員長
井上喜一君。
井上喜一
43
○井上(喜)小
委員
保守党の井上喜一でございます。 きょうは、
参考人
、本当にありがとうございます。 時間が限られておりますので、私は、
最初
に三問質問をさせていただきたいと思いますので、それを申し上げますが、多少極端な
意見
を申し上げたいと思うんです。それの方が議論がはっきりすると思います。
一つ
は、
地方
への
財源
移譲ということであります。 今、
財源
を見ますと、東京都は実に相対的には潤沢で、したがって、東京都民の
負担
は軽い。それから、サービスは非常に行き届いているわけです。保育所を初め、福祉なんかが代表的でありますけれ
ども
、非常に手厚いサービスができているということですね。 石原知事なんかが都市再生と言っておりますが、これは結構でありますけれ
ども
、その裏に
地方
都市の衰退といいますか、疲弊というんですか、大変顕著なものがあるわけでありまして、通りを通りましても、人通りがほとんどなくなってきているとか、歯の抜けるように空き家が出てきているというのは現にまだ進行しているわけですね。したがいまして、私は
地方
に
財源
を移していくことはいいと思うのでありますけれ
ども
、どうも
財源
というか、徴収権を移譲してやりますと、富めるところはますます富み、疲弊するところはますます疲弊するという
格差
が大きくなってくると思うんですね。 したがって、私は、
地方税
としては、個人の住民税とか、あるいは土地の
固定資産税
等限定したものを
地方税
にして、あとは中央が課税する税にして、それの一定額を
配分
していく。これは機械的に何か基準をつくっておいて
配分
するような、
中央政府
が何か意図的に左右するようなことをしないようなことの方がいいんじゃないかと思うんです。この点についての御
意見
を伺いたいということです。 二番目は、課税の一元化であります。 私は、
地方
でしか取れないものはそれはそれでいいんでありますけれ
ども
、できるだけ一元化していった方がいいんじゃないか、合理的じゃないかと思うんですが、これについて問題があればお聞かせいただきたいと思います。 三点目は、特別
交付税
の話です。 今、各省庁の
補助金
はずっと削減されてきて、ある意味でそういったものが特別
交付税
の方に集まってきているんじゃないかと思うんですね。つまり、特別
交付税
をある種のてこにしまして、旧自治省、今の総務省が、各県庁、都府県庁に、どんどん課長とか部長のポストに天下っていくわけですね。最近はそれをバックにして知事にまで出てくるような、そういう状況になっていると思うのでありますが、この特別
交付税
の制度についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたい。 以上、三点です。
神野直彦
44
○
神野参考人
先生がおっしゃるとおりに、
税源
移譲をしていくと
格差
が拡大するという危険性がありますので、先ほど来御説明しているように、できるだけ普遍的に、先生も今個人住民税を挙げていただきましたけれ
ども
、そういう偏在性のない、普遍的に税収が集まる
税金
を
地方
に移していくということをしていくということが重要だろうと思います。ですから、一部の
地域
にのみ集まってしまうという
税金
は好ましくないということだろうと思うんです。 今の
お話
は、東京都などが非常に潤沢に集まり、
地方
都市は潤沢ではないという
お話
でしたけれ
ども
、これも
税金
の性格によりますので、必ずしも我々が思っているほど東京都が豊かだというわけでもないんですね。 例えば、一人頭の税収で見ますと、市で一番多いのは熱海です。それから、
市町村
だと泊村になります。
固定資産税
などは、一番が松浦市だったと思います。そういうふうに税の性格によってかなり、つまり、我々が言っている
経済
的な力の豊かさと
財政
的な豊かさとは必ずしも一致しないということが存在いたしますので、それをやはり
財政調整
でやらざるを得なくなるだろうというふうに思います。 おっしゃるとおり、現在、
地方
の都市ないしは
地方
は大変危機的な状態にございます。さまざまなアンケートを見ても、次の企業の立地というのは海外に向いておりますので、
地方
経済
がいわば歯抜けになっていくような
現象
が進んでくるということを許すことになりますので、できるだけ早く、
地方
が個性に満ちた
地域
づくりをしないと無理ですから、そういうことができる体制をつくる意味でも、
自分たち
が自由に使える
財源
で、
自分たち
の、国際的な魅力でないと、もうだめな時代になってきますから、一国の中だけではなくて、国際的な魅力を高めるということは、その
地域
の本来の個性というものを生かす、先ほどから御
意見
ございましたように、そういう
政策
が打てるような仕組みをつくるということが重要だろうと思います。 それから、
課税権
の一元化というのは、先生がおっしゃった意味は、多分、徴収の一元化だろうと思いますので、徴収の一元化としてお答えさせていただきますと、先ほ
ども
ちょっと御説明しましたが、
税金
の
課税権
には、立法権と徴収権と
税金
をもらう権利ということがあるわけですね。徴収権は自分のところにはないけれ
ども
、もらう
権限
は自分のところにあるという場合に、一番問題点は、徴収努力が行われなかったときにどこが責任を持つのかというのが大きな問題点として残ってきますので、できれば徴収する
権限
と
配分
をする
権限
というのは一致していた方がいいのではないかというふうに思っています。 ただ、さまざまな理由からこれを分離するということを行うような場合には、租税の性格によって上の機関がやったり下の機関がやったりするような方法もあるでしょうし、それからルールとして、徴収できなかったときにはどこが責任を持つのかということを明確にして、独立した、つまり国でも
地方
でもない機関をつくって、そこに徴収させるという方法もあるだろうというふうに思います。 それから、特別
交付税
について言うと、本来の
交付税
の
目的
というのは、先生がおっしゃっているように、
財政調整
機能でございますので、
財政力
の
格差
の是正と、いわばミニマムの
財源
を保障してあげるという、そういうスタンダードな水準を保障してあげるという機能ですから、特別
交付税
というのは、
交付税
全体を見直す際の
一つ
の重要な見直しの事項になるだろうというふうに思います。
井上喜一
45
○井上(喜)小
委員
どうも、時間ですので、終わります。
保岡興治
46
○
保岡
小
委員長
森岡正宏君。
森岡正宏
47
○森岡小
委員
自由民主党の森岡正宏でございます。
神野
先生、きょうは、本当に貴重な御
意見
をいろいろ下さりまして、ありがとうございました。時間が
余り
ありませんので、端的に質問をさせていただきたいと思います。 今の
日本
国
憲法
におきまして、
地方自治
については実に簡単な文言になっておるわけでございます。
地方
の
財政
とか税制、また
地方
制度のあり方につきましても、
地方自治
の本旨という言葉だけで具体的なことが何も書かれていない。非常に大きなフリーハンドを与えられている状態でございますけれ
ども
、もし新しい
憲法
をつくろうということならば、先生だったら
憲法
に、例えば税
財政
のあり方など、また
地方自治
のあり方など、そういうことについてどう表現されるでしょうか。今のままでいいとお考えでしょうか。
神野直彦
48
○
神野参考人
私、
憲法
学者でないので、なかなか、先生の方にむしろ教わりたいくらいなのですが、先ほ
ども
ちょっと御紹介させていただきましたように、
分権
推進
委員
会の最終報告でも「「
地方自治
の本旨」の具体化」という項目をわざわざ西尾先生が設けて
憲法
に触れてございますので、
地方自治憲章
というのは、これは
地方自治
に関する憲章でございますから、そこの中に税
財源
のことが盛り込まれるというのは当然だろうと思いますが、
地方自治憲章
でもある程度のことをうたっておりますから、私の考えからいえば、
財政
に関するような基本
原則
を
憲法
ないしは
地方自治憲章
というような
基本法
みたいなものの中にうたい込むというのが筋ではないかというふうに考えます。ただ、これはちょっと私、素人の考えなものですので、御容赦いただければと思います。
森岡正宏
49
○森岡小
委員
神野
先生は、今、
政府
のいろいろな審議会などの
委員
を務めていただいておりまして、大変
政府
に協力をいただいている権威者だと
理解
をしております。 そんな中で、昨年、小泉政権が発足をいたしまして、聖域なき構造改革を打ち出されました。そして、
経済
財政
諮問
会議
で骨太の方針が出され、また、ことしは、六月までに国民の
負担
をどうするか、また税制の改革等取り組んでおるわけでございまして、
経済
財政
諮問
会議
の
動き
、そしてまた
政府
税調の
動き
、そして、私
たち
、それぞれ政党でも、税制改革にこれから手をつけようとしているわけでございますけれ
ども
、今の
動き
が、
神野
先生からごらんになって、いい方向に行っている、小泉改革は着実に進みつつあるのかどうか、その辺の御感想を伺いたいと思います。
神野直彦
50
○
神野参考人
私は、今構造改革をしなければだめだという認識は
共通
に持っております。ただ、小泉内閣が行おうとしている構造改革の方向性には疑問を持っているということです。 そのことは何かというと、前の家が古くなってしまって、すべてのところにいろいろな矛盾が出てきた。これはつくりかえなくちゃいけない。新しい設計図を書くときには、統一した思想で、和風にしようか洋風にしようかということを決めて設計しますけれ
ども
、それぞれ個々のパーツ、例えば、お勝手は機能的に、寝室は安らぎの場であるように、居間は団らんの場であるようにという違った
原理
が適用されるべきだろうと思います。 ところが、現在進められている構造改革というのは、どうも公共部門を小さくしたり、公共部門にも市場
原理
を導入しようとしている嫌いがあって、私の言葉を使えば、本来台所に適用すべき機能の論理を寝室にも居間にも適用してしまっている。そうすると、これは社会全体が混乱を来すのではないかというのが私の考え方です。 したがって、構造改革はしなければならないので、進めなければならないんだけれ
ども
、方向性はちょっと疑問なので、慎重にかじ取りをしなければならない。つまり、右にハンドルを切るのか左にハンドルを切るのかというのは今迫られておりまして、これまではレールが敷いてあって、そのレールの上を機関車が走るがごとく私
たち
は生活をしていればよかったのですけれ
ども
、今転換期ですので、右にハンドルを切るのか左にハンドルを切るのか迫られているわけですね。ハンドルをどっちかに切るという改革はしなければならないということは一致しているのですが、どっちの方向に切っていくのかということに関して言うと、これは疑問であるということですね。
森岡正宏
51
○森岡小
委員
率直な御
意見
をありがとうございました。 先ほど来
財源
調整
の問題が議論されておりまして、
地方
交付税制度
でございますけれ
ども
、
神野
先生はこの制度についての
理解
者だと私は承知しておりますが、これについて、先ほどモラルハザードという言葉もございました。自治体の自助努力を損ねておるというような議論が多くなってきたり、さまざまな批判が出てきていると思うわけでございますけれ
ども
、
地方
交付税制度
について、どう改革していけばこういう批判を越えることができるのか、先生の御感想を伺いたいと思います。
神野直彦
52
○
神野参考人
地方
交付税
というのは、言ってみれば、本来、自分の
地域社会
から上がってくる租税で
自分たち
の
地域社会
の共同の事業として
公共サービス
をやっていくわけですよね。ところが、
交付税
という制度は、いわば他の
地域社会
の
税金
を使うということになるわけです。 そこで、他の
地域社会
からの
税金
を使うということを許されるのはどこまでかというと、それは、
自分たち
の
地域社会
で少なくとも
日本
の国民の一員として享受すべき
公共サービス
が享受できていないという水準だろうと思います。 これは、普通の言葉で言うとナショナルミニマムということになるんでしょうが、ナショナルミニマムという水準だということを言うと、今度また、ではどこまでがナショナルミニマムかという問題に必ずひっかかってくるわけです。これは、私は、あくまでもここで、国民の代表たる国会で決める水準ということしか言いようがない。言いかえれば、国民全体でもって討議して、ミニマムの水準というのはどこか、つまり、どこまでは我々の、国民として共同の事業として保障するのかということを決めていくべきだろうと思うんです。 そこまでは保障するということをしないと、
ヨーロッパ
などを観察してみますと、
ヨーロッパ
は完全に独立し始めますね、
地域
が。いや、そうであれば我々は独立させてくれ、こういうふうに言い始めて、
国家
の統合ができなくなるだろうというふうに思います。私
たち
は、それぞれの
地域社会
として、住民として生きていると同時に、国民として生きているわけですから、どこに生きていようと、同じような
公共サービス
が受けられる水準はどこまでかということを考えた上で、そこまでは
交付税
によって保障するということは必要なんだろうと思います。
森岡正宏
53
○森岡小
委員
最後に伺います。
地方分権
の
推進
が停滞している結果、今の
地方財政
の危機があるんだというようなことが先生が書かれた中にあったように思うわけでございますけれ
ども
、今の
地方財政
の
財政
赤字、これが非常に重くのしかかって、各自治体、困っておられると思うわけでございますけれ
ども
、これの打開策ですね。一言で言いますと、どうやったらいいか、理想はわかるわけでございますけれ
ども
、当面どうやってしのいでいったらいいか、お聞かせいただきたいと思います。
神野直彦
54
○
神野参考人
先ほど来の先生方の御
意見
から、
地域
はやはり独立しなければだめだという御
意見
が非常に強かったと思います。
財政
は結果ですから、社会的な危機の結果として
財政
は赤字になったり、
経済
がうまくいかなくなって、
経済
的な危機の結果として
財政
は危機になるので、
財政
独自の責任で危機になったりするわけではないわけです。
地方財政
の危機の背後にあるのは、やはり
地域
経済
の衰退です。そうすると、
地域
経済
をどうしても復興させる必要がある。そのときに、その
地域
が、
地域
独自の工夫を凝らして発展させていくということが必要だろうと私も思います。
ヨーロッパ
では、ローカル・ディベロプメント・グループ、
地域
開発グループというのを
地域
住民がみずから結成をして、協同組合のように工夫し合いながら、新しい職、
仕事
をつくって、今までの工業や何かが衰退してしまったので、新しい職をつくろうというような工夫をし始めています。そういう
地域社会
がみずから行っていく
運動
に対して、
地方自治体
がそれをサポートしてあげる。そのサポートも、
補助金
とかお金ではなくて、むしろノウハウ、つまり、どういう技術やどういう組織をつくったらいいのかということで支援してあげるというような支援センターをつくって
地域
の活性化を図っているところもございます。 そうした例を見ると、
日本
の場合には、
地域
が、先ほど来個性ある
地域
と言っているときの、個性を出した
地域
づくりがなかなかできないような仕組みになっている。そうすると、それぞれの
地域
が
自分たち
の持っている伝統的な文化を武器にしながら、新しい産業を興していくということがなかなかしにくいのではないかというふうに思いますので、先生が先ほど御指摘いただいたような、
日本
は、
分権
によって
地域
、
地方自治体
に
権限
がないからそれぞれ個性ある
地域
づくりができないのだ、したがって
地域
から産業が消滅していってしまうという悲劇が起こっているのではないかという指摘をさせていただいているところです。
森岡正宏
55
○森岡小
委員
ありがとうございました。終わります。
保岡興治
56
○
保岡
小
委員長
筒井信隆君。
筒井信隆
57
○筒井小
委員
民主党の筒井信隆でございます。きょうは、大変ありがとうございます。
最初
に、
グローバル化
と
ローカル化
、これがともに進んでいるという点についてお聞きをしたいと思います。この
二つ
が一体として進んでいる、
グローバル化
が進めば進むほどまた
ローカル化
も進む、こういう
関係
にあるというふうな御説明だったと思うんですが、これがなぜ一体で進むのか。先ほどの中で、
地域
で生活するんだからという点も
一つ
挙げられましたが、なぜこの
二つ
が一体として進むのか、この理由について教えていただきたいと思います。
神野直彦
58
○
神野参考人
財政
という
立場
から見ると、
グローバル化
が進むということは、事実上、産業構造が情報化、知識化して、金融などの非常に
動き
やすい産業が産業構造の中心になっていくということだろうと思うんですね。
グローバル化
いたしますと、一瞬のうちに資本が左から右へ飛んでいってしまいます。そうすると、人々の生活を守ることをやるために、世界の国々はこれまで福祉
国家
を目指して、現金給付、つまり現金を再
配分
しながら、豊かな人に
税金
をかけ貧しい人々に戻すというような形で再
配分
しながら、人々の生活を守ってきたわけですね。これがうまく機能しなくなります。 というのは、豊かな人の所得は資本の所得である場合が非常に多いものですから、そこに
税金
をかけようとすると、一瞬のうちにフライトして違うところへ逃げちゃうわけですね。そうすると、高い
税金
を豊かな人にかけようとするとフライトしてしまいますので、今までのような、
政府
が
グローバル化
に
対応
して現金を回すことによって人々の生活を守っていくということは非常に困難になってくるわけですね。 ところが、
地方政府
が人々の生活を守ろうとしたときには、現金給付ではやりません。つまり、具体的なサービスでやるわけですね。老人ホームをつくるとか、保育園をつくるとか、病院をつくるとか、学校をつくるとかという具体的なサービス給付でやります。その
税金
は、先ほど来御説明しているように、比例税率で、豊かな人に多く
税金
をかける必要はないわけですね。マンションの管理費のようなものですので、全くかける必要がない。そうすると、そこの
地域
に住みたいか、住みたくないかということは、先ほど武山先生が御指摘になったように好みの問題、好みの問題というのは変ですが、きれいな共同の空間に住みたいのか、あるいは共同の空間はいい、つまりお互いの助けは少なくていい社会に住みたいのかというだけの選択になりますので、豊かな人だけが住むということではなくて、
公共サービス
の選択において住むようになってくる。 多くの国々が今やろうとしていることは、
地方政府
に人々の生活を、現金ではなくて現物のサービス給付によって守らせるというふうな方向に移していっておりますので、
政府
は
グローバル化
すると同時に、一方で
ローカル化
する。言いかえれば、
EU
でいえば、
EU
は、金融を国境を越えて動かすためにユーロという統一通貨をつくって動かそう、しかし、人々の生活というのは
分権化
しておいて
地方政府
に守らせよう、こういうような
動き
を始めているというので、
政府
部門が
グローバル化
、つまり上と下に分かれる、そういうことだろうと思います。
筒井信隆
59
○筒井小
委員
ありがとうございました。 今、最後に言われました
グローバル化
、
ローカル化
によって何が変わるかといったら、まさに
中央政府
、
国家
が変わるんだろうと思うんです。それが、振り返ってみれば、近代の
市民
革命以来、あるいは
日本
でいえば明治維新以来、今変わろうとしている
国家
、
中央政府
が形成されてきた。
国家
の主権が強化されて民族
国家
ができてきた。 しかし、今それが弱体化といいますか崩壊の過程、今先生が言われました、
一つ
は上に、上というのは国際機関だろうと思うんですが、
一つ
は下に、
地方政府
の方に、そちらの方に例えば主権の移譲とかという形も含めて、分解するというか崩壊するというか、そういう過程に入っていて、それが今世界じゅうの時代の流れじゃないか。
EU
というのはまさにその典型だし、
ヨーロッパ
において
地方政府
が強化されているのも、まさに
EU
が強化されているのに
対応
して、
EU
における
地方政府
が強化されているんだろうというふうに思うんです。 そういう
中央政府
あるいは主権
国家
の崩壊の過程というのは、
日本
でもやはり起こっているんだというふうに思っているんですが、
日本
でもその流れが始まっている、それがしかしおくれているんだというふうに思うんですが、その点はいかがですか。
神野直彦
60
○
神野参考人
私の考えでは、
国民国家
が崩壊するということまで入れると、ちょっと極端かなというふうに思います。つまり、
補完性
の
原理
のように、
市町村
でできないことは
道府県
が、
道府県
ができないことはやはり
国家
がやらざるを得ない。ただ、
国家
でできないこともふえてきて、環境問題とか、その上で取り組まなくちゃいけない非常に大きな問題が出てきているのでその上にも行く、こういうことだろうと思います。 ただ、先生の御議論は、学問的に言うと非常におもしろい問題で、公共空間が今後どうなっていくのかということだろうと思います。例えば、我々は、ローマ帝国という帝国というものを持っていたり、封建時代の領邦
国家
、非常に封建的な
国家
、小さな
国家
を持っていたり、
国民国家
というのをつくり上げたわけですけれ
ども
、
国民国家
の次にどういう公共空間ができるのかというのは学問的には非常に興味がありますが、ちょっとそれは、崩壊までいくのかどうかを今私の観察している限りで言えるかというと、確かに
国民国家
の機能が両極に分かれているけれ
ども
、なおかつ
国家
は国民の統合を図っていく
責務
と
任務
を負っているのが現状ではないかというふうに思います。
筒井信隆
61
○筒井小
委員
ありがとうございます。 崩壊というのは極端に言った形で、もちろん
国家
がなくなるわけではないと思うのです。ただ、今までの秩序としては、
中央政府
あるいは
国家
が主体であったと少なくとも言えると思うんですが、これからは、国際機関と
国家
と
地方政府
、その三段階が少なくとも同じぐらいの
権限
とか力を持ってという方向にいくのではないか。例えば、ドイツの
憲法
では、主権の国際機関への移譲を
憲法
上も規定しているような、そういう方向性は世界の流れではないかと考えているので、
日本
ではそれがおくれているのではないかというふうに思っているので、ちょっと極端な言い方をしたところでございます。 そして、その場合に、やはり国際機関あるいは国連を強化しなければいけないと思いますが、
地方政府
も強化をしなければいけない。
地方政府
の場合に、強化するためには、先ほどから先生が強調されております
財政面
の強化が絶対的な条件だろうというふうに思います。 その場合に、今の
日本
の
地方
交付税制度
、
交付税
の
増額
とか何かというよりも、今の制度そのものは
地方自治体
の努力をまさに否定する、こういう意味で間違いの制度ではないか。例えば、自治体が独自に税収とか収入をふやせば、
地方
交付税
の
配分
が減る結果になるわけですから、これもドイツでは
憲法
違反だという
憲法
訴訟が起こされているようです、その結果どうなったか知りませんけれ
ども
。今のそういう
地方自治体
の努力を否定するような、努力についてのインセンティブを与えないような
地方
交付税制度
そのものを変えるべきではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
神野直彦
62
○
神野参考人
現在の
交付税制度
の問題点は、
交付税
そのものはワイマール共和国のときにつくられた制度でして、これは非常に民主的な制度なんです。今の
交付税
が膨れ上がっている問題点は、これはどっちに責任があるかは別としまして、国が決めた
仕事
、義務づけられている
仕事
を
地方
公共団体
がやっているわけです。義務づけられている
仕事
がナショナルミニマムみたいに設定されていて、そこに、
行政
ができない部分について
財源
を保障する、こういうことになっていると思います。 個性ある
地域
づくりをするためにも、まずそれぞれの
地域社会
に義務づけられている
仕事
を自由にしてもらうということがないと、義務づけられている
仕事
をそのままにしておいて
交付税制度
を削減すると、結局、義務づけられている
仕事
はやらなくちゃいけませんから、
地域社会
独自でやっていた
仕事
の
財源
を全部そっちに回さなきゃいけなくなるわけです。結果として見てみると、義務づけられた
仕事
だけをやる
地方政府
になってしまうので、
交付税制度
の改革の先に、
仕事
を義務づけているということを解消していく、つまり
決定
と
支出
との非
対応
ということを解消することが先ではないかというふうに思います。
筒井信隆
63
○筒井小
委員
ありがとうございました。
保岡興治
64
○
保岡
小
委員長
平井卓也君。
平井卓也
65
○平井小
委員
ラストバッターですので、もう皆さんほとんどいろいろなことをお聞きになっていると思いますので、今まで聞いていなかったことを考えて聞いてみたいなと思っております。 先生は先ほどから、
地域
の個性づくりという言葉を何度もお使いになっておりますが、確かにここ数年来、
地域
はいろいろな個性をつくって、そしてその特徴によって
地域
を活性化させようというような努力をしてきたけれ
ども
、これはなかなかうまくいかない。 そういう中で、一方、
政府
は、規制改革が進まないのは、やはりこれはある
地域
で実験的に始めなきゃいけないんじゃないかというような発想になって、沖縄の金融特区、要するに特別
目的
地域
という指定、その流れの中で、今いろいろな
地域
からいろいろな特区構想というのがここ数カ月出てきているんです。 例えば、福祉特区であったり、教育特区であったり、その中には税の問題も含まれて、財務省は必ずしも、一国二制度になってしまうから賛成できないというようなことも言われておると思うんですが、さっき先生が言われたように、義務づけられていることをやらない、そのことも選択肢の中にないと、
交付税
の問題とあわせて、
地域
が活性化しないというのは私もそう思うんです。この特区構想というのは、確かにその一
地域
だけにスポットが当たってしまうという意味では不
均衡
にはなるんですが、やるに十分価値がある手段ではないかというふうに私は個人的には思っておるんですが、先生の御
意見
を聞かせていただきたいと思います。
神野直彦
66
○
神野参考人
私は、特区制度を十分に
理解
していないかもしれませんので、私は発展途上国の援助をずっとやってまいりましたので、特区というと中国の特区みたいな制度をイメージしてしまいますので、ああいう意味での
経済
特区であると個性ある
地域
づくりには結びつかないのではないかというふうに思います。 ただ、先生がおっしゃったのは、むしろ……(平井小
委員
「スペシャル・パーパス・エリアというもの」と呼ぶ)先生がおっしゃったのは、むしろ私の
理解
ではパイロット自治体にちょっと近いので、
政策
実験というのは
日本
は
余り
やりませんけれ
ども
、北欧などでは
政策
実験をやって、まずやらせてみて、それがうまくいったら、ではほかの
地域
にもという
政策
実験をやっています。そういう
政策
実験の場としてパイロット自治体みたいなものを考えるのであれば、それは意味があるんじゃないか。ちょっと
日本
は
政策
実験を大胆に試みるということがないので、例えば、ここは教育を自由にやっていいよといって、そこは
権限
を与えてみて、それがうまくいったらばほかの
地域
でもやらせてみるという、
政策
実験としては意味があるのではないかというふうに思います。
平井卓也
67
○平井小
委員
政策
実験というか、要するに今考えていることは、規制改革が一気に進まなかったもので、ある
地域
からそれを実験的に進めていくというのはどうかということを検討しているということです。 ちょっと話はまた変わってしまうんですが、先生の話をずっと聞いておりますと、
市町村
合併はやってもやらなくてもいいよ、
地域
の住民の考え次第である、この
市町村
合併というものは最終的な
目的
であるべきものではないというふうに私は受け取ったんですが、それでよろしいでしょうか。
神野直彦
68
○
神野参考人
やってもやらなくてもいいというよりも、やるメリットとデメリットを明確にした上で、メリットがあるということであればやるべきだ。ただし、やらないという意思
決定
をした場合にも、やらないデメリットというのは生じてまいりますので、これについては責任をとるべきだろう。合併をするのであれば、合併をするデメリットというのは必ずあるので、このデメリットを解消した上で合併すべきだというふうに申し上げたわけでございます。 合併というのは、繰り返し申し上げますように、
中央集権
的な意味で
地域
間
格差
を是正するよりも、協力をして、合併して、
財政力
を強める方が
分権
的だというふうに考えるのが普通だと私は考えておりますので、そういう意味では、つまり合併そのものは
目的
じゃない、合併はあくまでも手段ですけれ
ども
、
地方
の
財政力
を強める手段として合併というのは
一つ
選択肢があるでしょう。しかし、その場合にデメリットが働きますから、そのデメリットはつぶすということをして合併すべきだというふうに申し上げたということでございます。
平井卓也
69
○平井小
委員
もう
一つ
、合併問題のときに、私はいつもセットで考えているんですが、今電子
政府
、電子自治体というもの、これは本気で取り組み始めました。きょう、私、昼間会合に出ておりましたけれ
ども
、
政府
は四万七千の電子手続を電子化するというような通則法でいくようですし、当然
地方自治体
にもその
影響
があるわけです。 そうなってくると、いよいよ
地方自治体
というものがバーチャルの世界、要するにネットワークで結ばれた場合に、今の
行政
単位とか
市町村
というものは果たしてどういう意味になってくるのかな。これはちょっと何年か先の話だと思うんですけれ
ども
、
日本
は国土が狭いですから、そして人口がピークアウトする二〇〇五年、六年以降から考えてみると、ネットワークで結ばれた
地域社会
の連合体としての
地方
というものが一体どういうものになっていくのかな。私、五十年先のことを想像する力はありませんが、今進めようとしている電子自治体というものは明らかに
市町村
の意味がなくなってしまう部分もあるんですよ。 それと、ある程度の規模じゃないと成立しないという現実もあります。つまり、人口三百人のところで電子化しても
余り
意味がない。ある程度の規模で連携をしていかなきゃいけないということもあるので、そのあたりのところは、これからの
地方
の自立ということを考えたときに、どのように位置づけていくのが妥当なのか、先生のアドバイスがあれば教えていただきたいと思います。
神野直彦
70
○
神野参考人
私、電子
政府
そのものについて、むしろ先生に教えていただきたいぐらいで、不勉強でございます。 ただ、先生も御存じのとおりに、今ITが一番進んでいる国は北欧でして、フィンランド、スウェーデンなどで、
政府
を含めて、人々の生活の中にさまざまなITが入り込んできているわけです。 そういたしますと、人々はむしろ動かなくなって、
地域
に根づくようになってきます。今までのようにお買い物に遠くまで車を飛ばしていく必要もなくなって、インターネットで発注をして、ユニバーサルサービスでもって郵便局の人がその家庭に品物を運んでくれるようになりますので、ITが入ることによって、タイムセービングになって、そして、むしろ人々の自由時間がふえて、その
地域社会
から
余り
動かずに生活ができるようになって、そして、
コミュニティー
がむしろ強まって、人間と人間との
関係
が強まっていくというような傾向が見られます。 そういうことを基盤にしながらスウェーデンはさまざまな自治
運動
を行っているので、ITが入り込んできてネットワークが広がっていくと、人間も動くというふうには必ずしも言えないのではないか。むしろ、情報を動かして、人は
余り
動かないようにしようという入り方もあって、どちらの方向に動くのかというのは見えてきておりませんが、どうも
先進諸国
を見てみると動かない方向に移ってきておりますので、かえって
地域社会
みたいなものが根づいて、そして、お互いの助け合い、人間と人間との触れ合いというのは必ず残りますので、そういうことが強まる方向に動いていくのではないかというふうに考えます。
平井卓也
71
○平井小
委員
時間でした。ありがとうございました。
保岡興治
72
○
保岡
小
委員長
これにて
参考人
に対する質疑は終了いたしました。 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
神野参考人
におかれましては、貴重な御
意見
をお述べいただき、ありがとうございました。小
委員
会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)
—————————————
保岡興治
73
○
保岡
小
委員長
これより、本日の
参考人
質疑を踏まえ、
地方自治
について小
委員
間の自由討議を行いたいと存じます。 一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小
委員長
の
指名
に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたしたいと存じます。 小
委員
の発言時間の経過につきましてのお知らせでございますが、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせしたいと存じます。 御発言を希望される方は、お
手元
にあるネームプレートをこのようにお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。
金子哲夫
74
○
金子
(哲)小
委員
社会民主党・
市民
連合の
金子
です。 だれしもが今、
地方分権
の
推進
ということは一様に主張されるわけですし、また、
地方
の時代ということも言われておりますけれ
ども
、きょうの
お話
をお伺いして、先ほど私も
意見
を申し上げましたけれ
ども
、いわば合併を中心にして
財政
基盤を強めるというのが何か国の方針のようですけれ
ども
、どうも
財政
のありようというものを、まずきちんと、自主的な
財政
をつくり上げていくということが抜けて進んでいるのではないかということを改めて強く思いました。 それで、私は、やはり
地方自治体
という役割はさらにこれから重くなっていくということで、住民の生活とまさに密接にかかわってくれば、福祉の時代、そして高齢社会の時代になればなるだけ自治体の役割は重くなっていくし、そして、それはまた
地域
によって非常に多様に、いわば年齢階層も含めて、住民等の階層も含めた多様性に
対応
するだけの
地方自治
の
自主性
というものをどれだけ尊重していくかということが、これからの中に進んでいかなければならないんではないかというふうに感じています。 ただ大きくなればいいということだけで本当にいいのかということを、その中では、例えば、今までの県と
市町村
との役割の分担とかが本当に明確になっていたのだろうかということも、今、もう一度、
地方分権
の時代の中で見直していく必要があるんではないかというふうに考えております。 また、同時に、その意味では、住民の最も生命と財産を守っていくということからいいますと、先ほ
ども
ちょっと
意見
の中に出てまいりましたけれ
ども
、今回の、今論議になっておりますいわば有事法制の問題も、これまた
地方自治
に直接かかわる問題として提起をされておりますけれ
ども
、実はこの問題も、
地方
のいわば直接担当する知事とかそういったところの皆さんが、この問題についてどれぐらい説明を受け、どれぐらい論議を深めて今国会でも論議をされているかということになると、
余り
にもおざなり過ぎる。 先般も、マスコミのインタビューに答えて、我々には全く説明がないというようなことの中で、今、中央と
地方
の
関係
は、これから
地方
の
分権
、
地方自治
の
推進
と言われつつも、実際にやっていること、決めていくこと、先ほどの合併の問題もそうですけれ
ども
、
余り
にも
中央集権
的なやりようで事が進み過ぎているんではないかということを改めて強調しながら、そういうところから、本当に
地方
からつくっていく政治というものに転換をしていく、今回の問題も、そういう論点の中になければならないのではないか。 ちょうど今そういう問題を論議している中で、きょうは
地方分権
ということで小
委員
会の論議をさせていただきましたけれ
ども
、
財政
問題のみならず、そういったところの論議のつくりようも含めた
地方分権
の
推進
ということにさらに進めていくことが重要ではないかというふうに考えております。 以上です。
春名直章
75
○春名小
委員
最初
に苦言で申しわけないんですけれ
ども
、国の基本という
憲法
調査
会の議論にしては
余り
にも参加が悪過ぎて、これでは期待にこたえられないということを強く私は申し上げておきたいと思います。だれが悪いというわけじゃないんですけれ
ども
、小
委員長
もぜひ努力をしていただいて、本当にふさわしい議論をするのであればするということが大事じゃないかと思うんですね。 三点申し上げます。 自主
財政
権が明記がないということについて議論になりました。
憲法
八章の九十二条から九十五条までで、
地方自治
というものはしっかり支えるという基盤があります。この九十二条の中で、団体自治と住民自治が明確にされている。そして、九十
四条
の中で、
事務
の処理、
行政
の
執行
、
法律
の
範囲
内での条例の制定、こういう
権限
が明記されている。これらを保障するために自主
財政
権があるというのは通説でありまして、明記がないから
税源
移譲ができないとか、そういう性格のものではなくて、むしろ
運動
によってこれが豊かにされてきたというのが歴史の事実です。その点で自主
財政
権の問題は
理解
することが大事だと思います。 二点目は
税源
移譲についてですが、これは
神野
さんの方から具体的な提案がされて、非常に示唆に富んでいると思います。これはすぐ検討する必要があると僕は思っていますけれ
ども
、同時に、現実の政治
課題
は、そのことは、十分正面に座ってないで、
地方
交付税
削減や、一千を目指す、年限を切った
市町村
合併によって
行政
経費を削減するということが先にありき、こういう話になっていまして、これは本末転倒です。このことは、政治にかかわる者として、私は大変大事な問題であると思っております。 三番目に、武力攻撃事態法と
地方自治
との
関係
についてですが、住民の命と安全と財産を保護するというのは、言うまでもなく自治体の最大の使命です。最大の使命であるからこそ、
憲法
の
地方自治
の章や、そして
地方自治
法の中では、それを自主的に自治体が判断するというのが一番大事なんだということを言っているわけですね。 ところが、そういう事態にもし際したときに、自治体は全くその
権限
がなくなってしまうという法体系になっているんです。この矛盾ですね。しかも、協力すべき武力攻撃事態というのは予測やおそれの段階まで入っていまして、住民に直接危害が及ぶとか安全が脅かされる事態じゃない事態でも発動されるんです。そこに疑問があるわけですよ。 そういう非常に大きな問題を持った、
地方自治
という観点から見ても、この法案は非常に重大な問題を持っておりまして、
憲法
調査
会の
調査
に値する非常に大事な問題だというふうに私は認識をしております。 以上です。
永井英慈
76
○永井小
委員
それでは最後に一言、きょうの感想も含めて申し上げたいと思うんですが、私は、昭和五十年から神奈川県議会の議員をやってきました。
地方
政治に携わってきまして、
地方分権
の
必要性
をこの三十年近く痛切に感じてきました。そして、きょう
神野
先生に
お話
を伺って、一九二八年にこの
政友会
のキャッチコピーが示されて、経過が御報告ありまして、
地方分権
の論議は、言ってみればエンドレスだなと。 政治は、決断をする、実行するということが最大の使命だと思うんです。議論も大事です。しかし、結論を出して実行していくことが何よりも今求められているんじゃないか。とりわけ、
グローバル化
され、そして、先ほどの話、ローカルのウエートも高くなっている今日、ここで政治が決断をしなければ、二十一
世紀
の初頭にこの
日本
の国の形をきちっと明確にしなければ、次の世代にどうこたえていくんだろうかという感想を持った次第であります。 以上です。
保岡興治
77
○
保岡
小
委員長
他に御発言ございますか。 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。 次回は、来る六月六日木曜日午前九時から小
委員
会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時四十二
分散
会