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新井参考人 読売新聞の
新井でございます。
私はジャーナリストなものですから、
十市さんが精緻に全域に触れるような
お話をしたと思うのですが、私は、
考え方といいますか、今回の問題になっている
石油開発部門の問題の
あり方みたいなことをちょっと
お話をしてみたいと思います。
現在の
エネルギー問題の置かれている
状況というのは、私は、非常に複雑化していて、かつ、
エネルギー政策という
意味合いでいいますと、不透明であるなというふうに思っています。
ことしに入りまして
石油業法が
廃止になりました。それから、一月末には
石炭産業が
日本から消えたわけです。さらに言えば、電力の
自由化というのが、小売につきましては
全面自由化の
方向が打ち出されるというようなことがありまして、今回の
石油公団の問題もその中の
一つかなと考えております。
これはもう釈迦に説法的になりますけれども、
日本は、第一次
石油危機の後、私は、
エネルギー問題については
三つの
キーワードを得たのかな。
目的と言ってもよろしいのでしょうが、
一つの
キーワードは、脱
中東ということがありました。それからもう
一つは、脱
石油であったかな。さらに言いますと、これがきょうの問題になろうかと思いますが、
日の丸原油の
確保、やや大時代的な
言葉ではありますけれども、そういう
目的があって、この
三つを軸にしてずっとその三十年間をやってきたのかな。なかなかうまくできた
言葉だと私は思っております。今でもこの
三つの
言葉はそれぞれに生きているのかな。
ただし、その後、新しい
状況が加わってまいりまして、これは私が勝手につけているんですけれども、
経済性、
自由化問題もそれに入るかと思いますし、あるいは
効率化という
言葉で言ってもいいのですが、こういう項目がある。もう
一つは、これも周知のとおりで、
環境問題という
側面から
エネルギー問題を見なければならない。さらに言いますと、これは私の発想なんですけれども、
社会性といいますか、そういう問題があるかな。一番わかりやすいのは
原子力なんかの話でして、
住民投票によって拒否されるとか、あるいは、プルサーマルなんかもなかなか首長さんの
反対などで、
住民の
反対などでできない、こういうような社会的な問題がある。新
エネルギーといいますと、これは非常に受けがよくて、ポピュラリティーが高いというようなことがありまして、この
三つの要素がその後新しく加わってきているのかなと思います。
脱
中東につきましては御
承知のとおりで、一度
成功したかに見えましたけれども、今、九割
程度、
中東に
依存するような形になっております。
脱
石油につきましては、七割
程度から五割
程度までの
石油依存度の低下ということで、これはある
程度成功したかなというふうに考えております。これは、
天然ガスあるいは
原子力の
存在というのが大きかったわけでありまして、それである
程度成功したのかなということ。
最後の問題、これがきょうの問題になるわけですが、では
石油開発部門はどうだったのかといいますと、私の考え、判断ですと、やはりこれは
成功ではなかった。失敗というふうに言ってしまってはきついのかもしれませんが、余り大きな成果を上げなかった。
日の丸原油の
確保ということなわけですけれども、あるいは、
言葉をかえますと、
和製メジャーをつくり上げるんだということで考えられてきたわけですけれども、これにつきましては、さまざまな工夫がこれまでにはあったわけですけれども、どれもこれも見事に失敗してしまったかなというふうに思います。
その
原因等につきましては、多分この
委員会でも相当突っ込んだ
議論が行われたでしょうし、先ほど
十市さんの方からも
指摘があったと思うんですが、
新聞等で私は拝見することがあって、
新聞記者でありながらそうであるのは申しわけないんですが、今回の
議論を見ておりまして、若干欠けているんじゃないかというふうなことをちょっと触れてみたいんです。
それは、
日本の
石油開発部門というものをどうするかということが余りしっかりとは
議論がされていないんではなかろうかというふうに思うんです。確かに、
石油公団の巨額の負債問題というのがありまして、堀内さんの
指摘によって問題が発生したというふうに
承知しておりますけれども、非常に鋭い
指摘でして、そのこと
自体は大変結構なことだったというふうには思うんですが、その半分の
側面の、では一体
日本の
石油開発という
分野をいかなる形に置くのかということです。
これは、
経済産業省の
総合資源エネルギー調査会になるんですか、今の
石油分科会などで、
精製分野あるいは
開発分野という形で
議論を進めてきたわけですけれども、
精製分野につきましては、御
承知のとおりで、
石油業法の
廃止ということで
自由化、
効率化という
方向に行ったわけです。
私がそのとき思ったのは、そうすると、これが反転して
開発部会の
議論になりますと、
石油公団の話が明らかに問題になってくる。
自由化とか
効率化という時代の
流れに沿いますと、その
流れに沿ったままでいきますと、
公団廃止というような結論に出るんだろう、導かれるんだろうというふうに考えました。ただ、問題は、それでいいのかどうかということをきちんと
議論しておくことだというふうに思うんです。
石油業法の
廃止につきましては、昨年この
委員会でも私
お話しさせてもらったんですが、そのこと
自体は了承するとしましても、
国民への伝達という
意味では、
石油業法廃止ということを
承知している
国民は余りおりません。一人もいないというのはちょっと横暴ですが、ほとんどいないと言っていいのが
現状でしょう。
石油が普通の
商品になってしまったということが知られていない。今度は多分電気が普通の
商品になる。こういう形で
自由化がどんどん進んでいるということの
認識がないということが問題かと思うんです。そういう
観点からいいますと、
開発の
分野というのは非常に危うい
存在であって、もちろん、切り捨ててしまうということも
一つの
選択かとは思います。
しかし、これまでの
流れから見ますと、
石油業法の
廃止に並行するような形で、
日本の
石油産業というものも相当変わってきております。その変わり方がどうなっていくかということは、まだ私
自身にもよくわからないところがありますけれども、
日本には一貫した
石油産業というものはないということです。つまり、
開発から
精製・
販売分野に至るまでのきちんとした
石油会社というものは
現状一社もありません。バランスが悪いという
意味ですね。
開発分野の比重がいかんせん低過ぎる。
ですから、
メジャーなんかと比較するのはおこがましいという感じになっているわけでして、
一つの
考え方としては、それでもいいんだ、税金や何かをつぎ込んでこの
開発分野を維持するということにはもう
意味がないんじゃないか、
石油は
国際市場から買えばいいんじゃないかということも
一つの
選択のありようかとは思います。しかし、それで本当にいいのかどうかということは、きちんとした形で
メッセージとしてぜひ出していただきたい。それがこういう
立場にいられる皆さんの
役割かなというふうに思います。
では、私
自身はどうなのかというと、やはりこれがひょっとするとそうした
石油会社を生み出す
最後のチャンスかなというふうに思います。この機会を失いますと、これはよく出される例ですけれども、
日本には
航空機産業というものが事実上ないに等しいわけです。それと同じような状態が
石油開発分野にも起きてしまって果たしていいのかどうか、そういう点をぜひ
議論の中に入れてほしいというふうに思います。
これはつけ足しのようになりますが、昨年の五月十七日でしたか、
アメリカの
ブッシュ政権が
国家エネルギー戦略というものを出しました。これは、百七十ページぐらいの
英文で書かれたものです。
日本語の訳ももちろんありますけれども、これを読みますと、あの
アメリカが、
現状を
石油危機以来の最大の
エネルギー危機であるということを何度も何度も強調しておりまして、
日本はその
意味ではかなりのうてんきな国ではなかろうかというふうに感じられます。異常なくらいに
石油危機、
石油危機ということがこの
国家戦略の中に出てきております。
それから、これは、私は
英文は得意ではないんですが、非常に易しく書かれておりまして、普通の人が普通の形でこの本を読みますと、一通りのことがわかるような非常にいい
報告書になっております。
新聞記者が書いたりあるいは作家が書いたりという形で、各
専門家が参加しているというふうに聞きましたけれども、こういうものがある国があるということもぜひ
承知しておいていただきたい。ですから、そういう
メッセージをきちんとした形で出してほしい。
ですから、
開発問題につきましても同様でして、
選択は二つあると思いますけれども、その
選択をきちんとしたということを伝えておかなければいけないのではないかというふうに思います。
エネルギー危機というのが来る、来ないということが
議論になっておりまして、それにつきまして
自主開発原油がどの
程度役立つのかというような
議論もあろうかとは思いますけれども、
エネルギー政策ということから考えますと、そういう
分野にもきちんとした
国家の意思が示されるように期待したいと思います。
以上です。(
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