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小泉参考人 ただいま御紹介をいただきました
小泉でございます。
本日、
萩野委員長を初め
委員各位と
関係する皆さんの御高配により、
北方領土に居をともにした者を代表して、
意見陳述の機会をお与えいただきましたことについて、厚くお礼を申し上げますとともに、日ごろ、私ども元
島民に御厚情、御
支援を賜っておりますことに、まずもって心から感謝申し上げます。
私は、元
島民の一人としての
立場と、
社団法人千島
歯舞諸島居住者連盟の
理事長としての
立場にもございます。本日は、主として組織の長としての
立場で
発言させていただきたいと考えておりますが、私も元
島民でありますから、元
島民としての心情が主になることがあろうかと
思います。その点は御容赦を賜りたいと存じます。
最初に、当千島連盟の発足の経緯と
事業について若干申し上げ、その後に
意見と
要望について述べさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
当千島連盟の発足の経緯ですが、
北方四島の元
島民は、さきの大戦の終結に伴い、旧
ソ連軍が
北方領土に上陸するとの報により、二つの決断を迫られたのであります。
一つは、隣接する北海道本土への決死の脱出であり、その様子は、
平成十二年の当
委員会でも申し上げましたが、多くの
人々が死との
対決という悲壮な覚悟で脱出したのであります。二つには、先祖代々の墳墓の地を去りがたく残留を決意した者、しかし、残留者もまた、旧
ソ連軍政下において、言葉に言いあらわせない過酷な労役に服することになりましたが、
昭和二十三年十月を最終として、全員が
日本本土に
強制送還されたのであります。
北方四島からの脱出者も、また
強制送還された者も、それまでに築き上げた生活の
基盤のすべてを島に残し、裸同然の引き揚げであり、その後の生活は、住む家もなく、教育の機会も失われ、不安定なその日限りの職業を余儀なくされ、極めて厳しく、まさに苦難の一語に尽きるものでありました。
こうした中で、元
島民たちは、時の経過とともに、極寒の地で荒波に挑みながら、世界屈指の
漁場を築き上げた開拓者精神をよみがえらせ、劣悪な生活環境の中、元
島民は、出身別の島の会などを組織し、励まし合いながら、再びふるさとに戻る日を誓い合うようになったのであります。
昭和二十五年ごろから、サンフランシスコ
平和条約締結の盛り上がる機運を背景に、現在の
根室市や札幌市を
中心に、
北方領土返還要求
運動を主たる目的とした任意団体が次々と結成されましたが、その後、
北方領土元
居住者団体の大同団結が図られ、
昭和三十三年七月に、内閣
総理大臣認可の公益法人として、全国唯一の元
島民による団体である
社団法人千島
歯舞諸島居住者連盟が設立をされました。
以来、当千島連盟は、父祖伝来の地であり、懐かしいふるさとへの帰島を熱望する会員の総意を結集して、
北方領土一括返還を連盟の基本に掲げ、
返還要求
運動の
先頭に立って活動を続け、現在、道内外十五支部を
拠点として諸
事業を積極的に展開しております。
主たる
事業として、
北方領土返還に関する
運動、私有財産権の確保とその補償に関する
運動、元
居住者に関する実態
調査などの
事業を
中心として実施し、今日に至っております。その
事業の中でも、
北方領土返還要求
運動の核とも言える署名
運動は、
終戦二十年を経た
昭和四十年八月に、
国民世論の喚起とふるさとの早期祖国復帰の悲願達成を目的として、当連盟の会員数人が、画板を肩に街頭において署名収集を実施したのが最初であります。
当時、
国民の関心は沖縄
返還問題に向けられ、
北方領土問題に対する関心が薄く、
返還要求の署名収集は先行き多難が予想されましたが、その後、この草の根
運動の展開は、全国各地の自治体や青年団体、婦人団体など
各種団体等の
支援、
協力と共感を得ながら、急速に全国
規模の
運動に展開、拡充、発展をしたのであります。
その署名数は、
平成十一年九月に七千万人に達し、現在さらに継続されております。この
北方領土の早期
返還を要求する
国民の署名の意思が一日も早く達成されるよう、国会法第七十九条の規定に基づき、毎年、多い年には四百万人を超える署名を携えて衆参両院に請願していることは、御承知のとおりであります。
さて、前段が長くなりましたが、本日は、当特別
委員会において
意見陳述の機会を与えていただきましたので、さきにお配りしてあります千島連盟の
要望書に基づき、私たち元
島民の
要望について申し述べさせていただきます。
私たち元
島民は、苦難の道を歩みながら、五十七年間という長い年月、ふるさとの一日も早い祖国復帰を願いながら、国の
外交交渉を
支援する
立場で
北方四島の
返還要求
運動に邁進してまいりました。この間、
日ロ両国間の
外交交渉のたび、その結果に大きな期待を抱き、そして失望を味わうということの繰り返しの中で、そのたびに、さらに奮起して
北方四島
一括返還に向けての
取り組みをしてまいりましたが、次第に疲労と焦燥の感が増幅してきているのも事実であります。
御承知のとおり、私たち元
島民も、逐年
高齢化が進み、現在では
平均年齢が七十歳を超えております。ふるさとの祖国復帰に
思いをはせながらも、再びその地を踏むことなく他界する同胞も近年ますます増加し、
終戦時には一万七千余名いた元
島民も、現在では八千六百六十七名と半減をしております。
このような元
島民の
現状と心情をぜひとも御
理解いただき、
北方領土の早期
返還について、今後さらに
国民世論の啓発と国際世論の喚起に努めていただくとともに、強力な
外交交渉を進めていただくようお願いする次第であります。
また、元
島民のふるさと訪問ということで、
平成十一年から実施されております
北方四島自由訪問につきましては、参加した元
島民は、父母兄弟と生活した居住跡に立ち、懐かしさと悔しさが交差する気持ちを抑え切れずに涙しております。この自由訪問の実現に感謝しつつ、参加団員枠や訪問回数の拡大など、自由訪問が一層充実するよう
要望するものであります。
一方、
北方墓参についてですが、国は、このことは私的行為であるとしていますが、いかに私的行為であっても、やはり墓参は人道上の問題であります。元
島民のだれもが
希望するすべての墓地で実施できるよう、特段の御配意をお願いするものです。
ビザなし
交流につきましては、実施以来十年が経過しましたが、本来、この
交流事業は、
日ソ両
国民の相互
理解の増進を図り、
北方四島
返還に寄与するという目的を持った
交流事業であります。国として一層の充実強化を図るよう
要望するものです。
さらに、これらの訪問、
交流事業に使用する船舶につきましては、元
島民の
高齢化に配慮した安全性の確保など、渡航手段に万全の措置を講ずるようお願いをいたします。
次に、元
居住者の権益の保護にかかわる項目ですが、
一つには、今日まで五十七年間の空白を生んだ、元
島民に対する財産権の不行使に対する措置についてであります。
私たち元
島民は、半
世紀を超える長い期間、それぞれの島に残した財産について、みずからが行使することができないという特殊な
立場に置かれてきました。この不動産の所有権や賃借権などの不行使に対する損失は、はかり知れないものがあります。私たち元
島民は今後に残された時間が少ないという
現状から、千島連盟としても、財産権の不行使に対する補償の問題を最重点
課題として長年にわたり
政府関係省庁に
要望してまいりましたが、全く進展がなく今日に至っていることはまことに残念でなりません。
当特別
委員会におかれましては、元
居住者の特殊な
立場に置かれてきた事情をしんしゃくし、
北方領土問題等の
解決の
促進のための
特別措置に関する
法律第五条の規定がございます。それに基づき、元
居住者の
要望に沿った直接的
支援措置を一刻も早く実現されるよう、特段の御
支援を賜りたく、強くお願いを申し上げます。
また、
要望書に記載してありますとおり、「
北方地域旧
漁業権者の補償について」「残置財産の保護等について」「
北方領土における共同
経済活動等について」「
北方領土への外国企業進出等の防止について」などの項目につきまして、十分御配慮いただきますようお願いをいたします。
次に、「
後継者の育成強化に係る
要望」でございます。
北方領土問題の
解決も長期化が懸念される現在、ふるさとの祖国復帰という悲願達成の日までと
返還要求
運動の
先頭に立ってきた元
島民の意志を引き継ぎ、これからの
返還要求
運動の担い手となるべき
後継者等の若い力の結集が重要かつ緊急の
課題でございます。
後継者等が
返還要求
運動にみずから積極的に参加するための環境整備と予算措置を含めた
支援体制の確立にお力添えをお願いいたします。
次に、「北対協融資制度の改善に係る
要望」でございます。
元
居住者の
事業の経営とその生活の安定を図ることを目的とした融資制度が、
北方地域旧
漁業権者等に対する
特別措置に関する
法律によって立法措置されているところであります。この融資制度は、各会派の諸先生の特別な御配慮により
平成八年に法改正が行われ、
高齢化が進行している元
居住者等の主たる生計を維持してきた子または孫に融資資格を承継できるものとなりましたが、現行の制度においてもなお十分とは言いがたい部分がございます。
要望書に記載してありますとおり、生前承継
対象者の要件緩和などにつきまして、ぜひともお力添えいただきたくお願いいたします。
以上、当千島連盟の
要望に基づき種々お願いを申し上げましたが、これらのことにつきましては、国として真摯に受けとめていただき、国の責任において、元
島民の一人でも多くの者が生存しているうちに
要望に沿った結論を出していただきたく、
萩野委員長初め
委員各位には特段の御高配を賜りたく、元
島民を代表して心からお願いを申し上げます。
さて、最近、
北方領土問題に関しての
日ロ間の
外交交渉は停滞が懸念され、私たち元
島民は不安感と
危機感が高まっております。
小泉総理大臣が本年十二月または年明け一月に
ロシアを訪問することに
合意したとの発表がありましたが、この
両国首脳会談において
北方領土問題のさらなる進展が図られますよう強く期待するものであります。
終わりに当たり、重ねて申し上げますが、私たち元
島民としては、
高齢化がさらに進み、残る時間も少ないという中、
北方領土の
返還を求める当事者として、国の
外交交渉を
支援するという
立場を堅持し、引き続き全力を傾け
返還要求
運動の
推進に努力することをお誓い申し上げ、私の陳述を終わります。
最後に、
萩野委員長初め
委員各位のますますの御繁栄を御祈念申し上げます。本日は、ありがとうございました。(拍手)