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参考人(
小沢義博君) 本日は、私、OIEを代表して
出席ということではなしに、ヨーロッパで長い間
BSEを担当していました経験を
もとにしていろいろ御
意見を申し
上げたいと思います。
じゃ、OHPをお願いします。(OHP映写)
最近の新聞その他の記事を見ていますと、かなり誤解をしている、この病気に対する
認識が非常に間違っているんじゃないかという心配があります。それがこのパニックを引き起こした一つの
原因ではないか、まずそれを正すべきではないかと思います。
それは、この病気は実は伝染病ではないんです。御存じと思いますが、トランスミッシブルという伝達性疾患ということで、どうも皆さん、新聞、一般の方は伝染病と誤解をしている。ですから、例えば屠場に一頭
発生するとみんな伝染してしまうのではないかという心配があるようで、極めて遺憾です。そこで、これをまず払拭する必要がある。
この病気は、ここにも書いてありますように、実は
肉骨粉を通して、牛、そして食肉その他の製品を通して人にかかる、直接牛から人間にはかからない、また人間から人間にもかからないということがはっきりしています。したがって、CJD、バリアントCJDと言われているものは、人から人へはうつりません。また、狂牛病も、牛から人にもかかりません、直接はかかりません。
もう一つよく言われることは、これはHIV、エイズと同じように非常に怖い病気であるという印象を与えられていますが、これもかなり誤解がある。HIVというのは伝染病、人から人へうつります。しかし、狂牛病とは違います。もちろん、プリオンという病原体も違いますけれども、そういった伝染病と伝達性疾病との違いというのは全く違うもので、これをはっきりメディアも伝えてもらいたいということが一つあります。
それから、HIVの場合は今までに約三千三百六十万人ですか、そういう患者が出ているわけですけれども、CJDは今のところ百十一人という、比較にならないほど
発生した人の数は少ない。これをHIVと同じように扱うというのはちょっとオーバーではないかと思います。もちろん、類似点はあるんですが、その類似点というのは、潜伏期間が非常に長い、それから免疫抗体ができない、したがってワクチンがないということはありますけれども、その他二、三の問題はありますけれども、HIVの方がはるかに私から見れば怖い病気であるということが言えると思います。
それから、この病気は非常に広がりが遅い。そういう意味では、
日本にこんなに早く来るとは実は私も思っていませんでした。それが早く見つかったということ自体がむしろよかったのではないかと私は思っております。これがおくれますと、もちろんますます広がってしまうという問題があります。
次、お願いします。
よくテレビなどでも使ったんですけれども、牛の臓器の問題です。牛そのものは怖くない、さわってもうつりません。屠場の人は一人もかかっていません。それから、一番問題は脳と脊髄、この部分が、脳は約六四・一%のプリオンがたまっています。危険なものがたまっている。それから、脊髄には約二五・六%がある。合計すると約九〇%がこの二つの臓器にまとまっているというわけで、そのほかよく言われるのは回腸遠
位部、「回腸」と書いてありますけれども、遠
位部の約三・三%、それから目と言われますけれども、この目はごくわずかで〇・〇四%しかプリオンがたまっていないというわけで、この四つを取り除けばほとんどの病原体は取り除かれるということなので、特に脊髄とそれから脳、この二つを確実に除くということがこの病気の
安全性を保つ最も重要な点だと思います。
次に、英国でそれじゃなぜあんなにたくさん出てしまったのかということは、もう皆さん御存じだと思いますけれども、一九八九年に
危険部位が決められて、それを除去して、もう与えないということが決まるまでは例えば今の脳だとか脊髄が使われて、ハンバーガーなどにかなりたくさん使われていた。例えばハンバーガーですと、一つのハンバーガーに約三グラムの脳が入っていたということもみんな知っています。
そういうわけで、そういうものを食べた人が今かかって出てきているんだと。それを取り除いてしまった後食べた人は、肉そのものを食べた人たちはそれほど、まだ
発生がほとんどないんではないかと思いますけれども、そういう意味では何を食べたかということが問題で、肉が危ない、あるいはミルクが危ないということではないんです。これをはっきりやはりメディアも
認識していただきたいということがあります。
それから、その他、部位をきちっと分けること、九九%以上の正確度でこれを取り除くということがこの病気の
安全性を保つ、食肉あるいはその他の製品の
安全性を保証するという上で最も重要なことであると思います。
次、お願いします。
今、
世界じゅうで狂牛病の
発生国といいますと、ほとんどがヨーロッパ、
日本は十六番目に
発生したと。その後、スロバキアも
発生がありました。そういう意味で、今のところヨーロッパ、特に西欧、東欧は二カ国ですからまだこれから、実はこの次に大
発生が起こると思うのは東欧系統、その次に起こると思われるのが中近東、その次に起こるのがアジアだという順番に
考えられていたのですが、
日本は特別早く
発生がつかまったというわけで、そういう意味では、これから
日本も先進国としていろんなことがわかってくる。アジアのリーダーシップをとる上で、将来はいろんな問題が出た場合に
日本の
意見を聞くということもあると思います。
次、お願いします。
これは英国の場合、
発生数は、既に一九九二年、三年以後落ちてきていますけれども、実はまだ一、二%の割で英国の牛に残っているということはほとんど疑う余地がない。にもかかわらず、今まで、一九九六年以後、ことしの初めにかけて約五百万頭の牛が殺処分されました。
日本でいうと
日本の全体の牛以上のものが殺されたと。余り御存じのない方もおられるかと思いますけれども、こういう仕事は
畜産業にとってまさに破滅という
状況でありまして、その上、今英国は口蹄疫が
発生していますので、また四百万頭殺したというわけで、こんなことが
日本に起こったら、
日本の
畜産は完全に滅亡してしまうということですので、この病気の恐ろしさは、後でも御説明しますけれども、打つ手を打つだけではだめ、要するに、法律あるいは行政、立法を立てて、それから、通達を出してもそれを守らなきゃ意味がないということではないかと思います。
次、お願いします。
現在、この順番で
発生したわけで、アイルランドとかポルトガルで、スイスは割に早くから
発生があった。これはなぜかというと、EU諸国が
肉骨粉を使わないということを決められましたら、EUの国ではないスイスに流れ込んでしまった。というわけで、スイスは非常にそういう意味では痛い目に遭っているわけで、この業界は非常に
連絡網が発達していまして、一カ国で売れなければ次のところへ持っていく、翌日には東から西の隅まで行ってしまう。もちろん国境はありませんので、そういう意味ではフリートレードというわけです。
次、お願いします。
それから、最近になって、ヨーロッパでまたポジティブ、陽性のものがかなり見つかっています。これはなぜかというと、去年あたりから新しいプリオンの検査方法というのができまして、
日本でも始めたばかりですけれども、この方法を使って調べると、症状が出ていなくても
感染しているものが見つかってきたわけです。
ドイツは、二〇〇〇年、昨年かなり頑固に絶対にないと言い張ったんですが、この検査方法によって新しく症状のない狂牛病にかかっている牛が見つかってきた。かなりの数が今ふえておりまして、現在ドイツでは百十二ポジティブ、陽性というふうになっています。
これから
日本はどうなるかということは、来年になってみないとわからないと思いますけれども、ことしの暮れまでにある程度の予測はできると思います。
次、お願いします。
ヨーロッパでとられた今までの
対策をごく大まかに整理してみますと、一番上の反すう獣由来の
飼料の反すう獣への
使用というものを禁止した。それが英国では一九八八年、スイスで一九九〇年、それからヨーロッパ連合、EUでは一九九四年にそれぞれ
対策がとられました。そのほか、牛の指定臓器の
使用禁止も、一九九〇年英国で、それからスイスが一九九六年、それからヨーロッパ連合が二〇〇〇年。そういったわけで、一番重要なことは、一番下のすべての動物由来の
飼料の
家畜への
使用禁止、英国が一九九六年、それからスイスが二〇〇一年、ことしの一月一日から、ヨーロッパ連合もことしからというわけで、これでスタートラインに達したわけです。すべてのヨーロッパの国が検査を始めた。
日本もこの検査が始まりまして、そういう意味では
日本もヨーロッパ並みに始まったということになるわけです。
次、お願いします。
肉骨粉を含む
飼料の全面的な禁止というのはイギリスが一番早くて、その次フランス、二〇〇〇年ですね、それからその次にスイス。それから、特定臓器
危険部位、これの
使用禁止をしたのが英国が一九八九年、それからスイスが一九九〇年。結局、屠
畜場における検査が始まったのがスイスで一九九九年、フランスが二〇〇〇年、それからドイツが昨年、それからその他のEUはことしからというわけで、大体皆スタートラインがことしから始まったと。
ヨーロッパの幾つかの国の例も御
質問があれば御説明いたしますけれども、大体皆さん、どの国も同じようなことを現在やっております。
日本もこれからいろんな仕事を始めるわけですけれども、それについては御
質問に従ってお答えしていきたいと思います。
日本でとられた
対策としては、プリオンの検査
体制と
肉骨粉の全面禁止というのはヨーロッパ並みであって、これはこれから確実に進めていけばヨーロッパ並みの結果が出てくるとは思いますけれども、難しいのは、いかにその後の
対策、いろいろな
対策をどういうふうに進めていくかということではないかと思います。
それからもう一つ、やっぱり食肉や牛乳の
安全性の
情報キャンペーンというものをもう少し活発に行う必要がある。
それから、一番重要なことは、この病気の
対策の重要なポイントは、ただ単に法律や規則をつくるというだけではなしに、これを監視する、監督するという、そういう
システムをきちっとしておかないと、裏口から流れ出すという心配があります。
では、最後のOHPをお願いします、
BSEの検査
体制の種類という。
幾つか重要なことは、検査
体制で八つの検査方法がありまして、その検査方法をこれからどうやってきちっと進めていくかということがこの病気の撲滅の成否を決めるポイントだと思います。
一つは、農場での症状検査、これはやっていますね。これもずっと続けていく。それから、屠
畜場の生体検査、これもきちっとやっていかなきゃいけない。それから三番目がプリオンテスト、これも始まりました。それから四番目が食肉製品の検査、これもこれからやっていかなきゃいけない。脳、脊髄等の神経組織が実はいろんな食肉にまざる、まざっている、そういうものを検出していくということが重要ではないかと思います。それから陽性牛の追跡
調査。
肉骨粉の検査方法、これはエライザ法その他の方法で着実に検出していく、検査を厳しくすると。それから、加工食品、医薬品それから医療品、化粧品等の
生産国のチェック、どこでつくったかということを調べる。それから
環境汚染の監視。そういったものをこれからきちっとやっていく必要があるかと思います。
では、時間も過ぎましたので、あとは御
質問にお答えすることといたします。