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大塚耕平君 私自身は、
経済政策というのはできるだけ科学的であるべきだと思っていまして、御
承知のとおり、
経済学というのは社会科学の女王と言われるほど、つまり科学性があるからそう言われているわけでありまして、客観的なデータに基づいて御
判断されること、並びにそのデータと
政策の因果関係というのは過去の行動ときちっと整合性がとれているということが必要だと思っておりますので、この点については、私もとりあえず六年の任期をいただいたので、変なことをしない限りは六年働けますので、その間しっかりチェックをさせていただきたいなと思っております。
次に、先ほど循環
要因と構造
要因ということを申し上げましたが、構造
要因に関して、若干持論も述べつつ、それに関連した
質問をさせていただきたいと思います。
先ほど申し上げました
植田審議委員の
ペーパーですけれ
ども、その中で
植田委員は、
短期金利がゼロ近傍にあるもとでさらに
金融を
緩和したいと
考えるなら
三つの
政策手段があると、こういうことを言っておられるわけです。
第一に、
短期金利が低いとはいっても完全にゼロではないとすれば、ベースマネーをふやすことで
短期金利を限りなくゼロに近づけることができる。第二に、現在は
金融緩和を追加的に行う余地が少ないことを踏まえ、将来の
金融緩和を約束すること。ちょっとわかりにくい
言葉ですが、いわゆる時間軸
政策によって
経済主体の期待に働きかけるという
意味ですが、それができる。第三に、中央
銀行が通常購入している短期
国債などとは異なる資産を購入すること。いわゆる非伝統的な中央
銀行の
オペレーション、こうした行動によって資産価格に
影響を及ぼすことである、こういうふうに整理されておられるんですね。
非常に私も共感できる整理でありますが、簡単に言えば、伝統的な
金利操作、そして第二番目に人々の期待感に働きかける
政策、三番目に従来の
日銀、中央
銀行では
考えられない非伝統的な
オペレーション、こういうことを言っておられるわけです。
昨今の
景気情勢は、まさしくこの植田
ペーパーがまくら
言葉に使っておられるように、
短期金利がゼロ近傍にあってさらに
金融緩和したい、こういう
状況なんですが、私なりに思いますと、第一の
金利操作という
意味ではもう現に限界までやっておられるわけであります。そして、第二の人々の期待に対する働きかけというのも、現在の
金融緩和の
枠組みを消費者
物価上昇率が安定的に〇%以上となるまで続けるというふうにもう公式に宣言しておられるわけですから、これも十分にやっておられるわけであります。そして、非伝統的な
手段についても、これはヨーロッパの一部の国のように株や外債を購入するということにはなっておりませんが、私自身はそうするべきだとも思っていませんが、
国債の購入額を随分ふやすという格好で、買う対象は従来からのと同じものですが、そのボリュームとしてかなり非伝統的なことをやっていらっしゃる。とりわけ
国債については、
金融市場を通じてそのマネーが
国債のファイナンスに回っているということがよく言われていますので、これも十分に行っていると、こう
考えているわけであります。つまり、
植田委員が整理しておられる
三つの
手段それぞれにもう目いっぱいやっておられる。
そこでお伺いしたいんですが、現在、先ほど
入澤先生の御
質問にありましたが、
インフレターゲティングの議論が行われているわけであります。
インフレターゲティングというのは、私はその二番目の期待に働きかける
政策だと思っていますので、先ほど申し上げましたように、既に十分に期待に働きかける
政策は行われている、したがって
インフレターゲティングを採用することは現
時点では適当ではないと私は
考えております。
あれこれ申しませんが、
日銀も、中長期的に望ましい
物価上昇率の数値化が難しいとか、あるいは実現するための
手段がないとか、それから先ほど
総裁もおっしゃいましたが、
インフレを抑制するためのターゲティングはあっても、
デフレを上げるためのターゲティングはないというような、いろいろ言っておられますが、現
時点ではもっともな御主張だと思います。ところが、最近私なりにメディアを通して、半年前までは生で聞かせていただいていたわけですが、最近はメディアを通して
日銀の御主張を伺っていますと、最近の
政策決定会合に関する資料や、正副
総裁や
審議委員、理事の御発言を聞いておりますと、ちょっと揺らぎが出てきているんではないかなと、こう思うわけであります。
例えば、
日本銀行は既に現在の
金融緩和の
枠組みを消費者
物価上昇率が安定的に〇%以上となるまで続けると宣言しており、これは
デフレを許容しないという
日本銀行の強い姿勢を具体的な数値で示したものであり、事実上
インフレターゲティングと同じようなねらいを持っていると、こういう表現を使い始めておられるんですね。こういう展開になると、これまでの中央
銀行の歴史を、特に
日銀の歴史を振り返ると、先々、事実上
インフレターゲティングと同じことをやっていたのだから、実際に導入しても問題はない、この際導入しますということになりはしないかなと、そういう感じがしているわけであります。
先ほ
ども申し上げましたように、
幾つも
理由を挙げて導入に反対しておられるわけですから、
市場関係者や国民がなるほどなと思えないような理屈で、これまでの反論の論旨を言ってみればほごにしてさっと導入して、
方針を百八十度変えるというようなことがないようにぜひしていただきたいなと。中央
銀行の信頼性を著しく損なうわけでありますし、信頼性を失った中央
銀行ほど厄介なものはないと、こう思っております。
そこで、ぜひ
総裁にお伺いしたいのは、
インフレターゲティングを導入することはないと
考えていいかということでありますが、それとあわせてもう
一つお伺いしたいので、ちょっとお待ちいただけますか。
インフレターゲティングについては、グリーンスパンFRB議長も、先週、あちらの連銀の
会議でよくないとはっきり発言しておられますので、ぜひこの点については
総裁のお
考えをお伺いしたい。
あわせてもう一個お伺いしたいのは、先ほど整理した第三の
政策手段のうち、購入資産の多様化という
意味で、これまで慎重であられた
審議委員の一部の方もちょっと発言の内容が変わってきておられる。例えば、田谷
委員が十月四日の静岡での講演で、大胆かつ柔軟な
政策に踏み出す
局面というような御発言をされておられるわけであります。大分様相が変わってきたなと。
総裁にもう
一つお伺いしたいのは、
国債購入の増額に対して、これ以上の増額はないというふうに
考えていいかということであります。結局、
日銀の
金融緩和によるマネーは、私もかなりの部分がマネーフロー的には結果として
国債のファイナンスに回っているというふうに思っておりますので、
国債購入額の増加には極めて慎重であるべきだと、こう
考えているわけであります。
したがって、ぜひ
総裁に
お答えいただきたいのは、
インフレターゲティングに対するスタンスと、それから
国債購入総額の増額に対するスタンス、この二点について御回答いただきたいなと思っております。