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参考人(
高橋宗治郎君)
近畿商工会議所連合会の副
会長をいたしております
高橋でございます。
まずもって本日は、
特別委員さんが近く
結論をお出しになります大変重要な時期に
発言の
機会をちょうだいいたしまして、厚く御礼を申し上げます。
先ほど
北川知事さんから御
発言がございましたが、その
考え方につきましては、私
ども経済界も全く同感でございます。
ここで、
経済的な側面を少し追加して
説明をさせていただきます。
首都機能移転問題は、
国内の
課題でありますと同時に国際的な
観点も重視する必要があろうかと存じます。
世界経済では、今や一国では解決できない
課題が余りにも多く、
世界の中の
日本という位置づけで対応していくべきだと考えております。この場合、
首都機能移転問題はその
観点についても十分参酌されることが望ましいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
説明をさせていただきます。
まず、二十一
世紀以後の
世界経済との関連を申し上げます。
二十一
世紀の
世界経済はかなり大きな
変化が生じてくるものと考えております。その
変化は多種多様でございますけれ
ども、大きな
二つの
潮流があるかと存じております。
一つは
世界各国の
グループ化でございます。もう
一つは
グローバル化でございます。
まず、
グループ化の方から
説明をさせていただきます。
日本といたしましては、
貿易立国の
立場から本来
世界各国との
自由貿易が望ましい、これは当然でございます。ところが、
各国におきましては、自国の
産業を保護すると、こういう目的のために、
貿易上の
障害と申しますか、関税だとかその他の
障害を設けておるわけでございます。
一方、
世界経済全体を考えますと、
各国の
貿易がスムーズに行われることは望ましいということで、御高承のとおり、
WTO、
世界貿易機関を設けまして
各国の
参加を求めておるわけでございますが、
途上国等の
参加も少のうございますし、またその中でも
各国の事情がいろいろございますので、なかなかその効果が上がらないという
状態でございます。
そこで、
先進国を
中心に
関係国が、これは
二つの国だとかあるいは数カ国寄りまして
自由貿易協定を結びまして、その
域内の
貿易上の
障害をなくしていこうやないかと、こういう努力をしておりますし、現にもう実行しているわけでございます。
一つは
アメリカでございますが、御
承知のようにNAFTAと申しまして、
アメリカ、カナダ、メキシコ、この三カ国が組みまして、この
域内はいわゆる
自由貿易でございます。税関もない、いろんな
障害もないというような
状態でございます。これはいずれ南米の方にも望んでいきたいと、こういうことだろうと考えております。
一方、
ヨーロッパでございますが、EUとして、ことし一月から
自由貿易だけじゃなしに
通貨統合まで入ってまいりました。これも、将来は
東ヨーロッパからさらに言うならばアフリカの一部までも包含したいと、こういうような
状態でございます。
そう考えますと、
世界の
空白地帯というのは、中近東から東へ向かいまして
アジアまで、この間がちょっと
空白になっておるわけでございます。
アジアにおきましてもその
動きが出てまいりました。御
承知のように、
日本とシンガポールの間で、十月十二日、先月でございますが、
合意をいたしまして、来年の四月に発効すると、こういうことで
自由貿易協定を結びました。
中国の方も、御
承知のように、ことしの十二月に
WTOに加盟するということは決まったわけでございますが、一方、今月の初めから
ASEAN諸国との間で
自由貿易協定の
検討を呼びかけておりまして、既に
ASEAN諸国はこれに応じる構えを示しております。ただ、
実現まではかなり時間がかかるんではないか、人によっては十年ぐらいかかるんじゃないかと、こう言っておりますけれ
ども、そういう
状態でございます。そこで、
日本も
ASEAN諸国との
自由貿易協定を望みまして、
中国に劣後してはいけない、これが非常に肝要な問題だと、このように考えておるわけでございます。
いずれ、そういった
動きもございまして、二十一
世紀の
アジアというのは、
経済の面で考えますと、
日本と
中国の間で
リーダー争いになるんではないか。したがって、
日本としては、今後
アジアを重視すると、これは絶対に必要ではないかというふうに考えております。
もう
一つは、
グローバル化でございます。
これも御高承のように、
世界経済は今後とも
グローバル化が進んでいくと考えております。ところが、現在の
グローバル化は実は
アメリカンスタンダードでございます。
標準が
アメリカになっておるということでございます。現在、
ヨーロッパは
グローバル化を進めておるわけでございますけれ
ども、内心では
アメリカンスタンダードについて反発をしているという
状態でございます。
アジア、特に
日本におきましても、
文化、
伝統、企業の
あり方、例えば永年
勤続制の問題だとか雇用問題とか、いろんな問題の違いがございまして、果たして現在の
アメリカンスタンダードに乗っていっていいのかどうか、そういう思いを持っております。
御
承知のように、またせんだっての
同時テロに見られますように、イスラムとそれから
欧米社会以外の
世界につきましては、
経済的な面でも
文化的な面でも、西洋的に今の
アメリカンスタンダードにはなじまないと、こういう風潮がございます。
結局、考えまするのに、二十一
世紀の
グローバル化というのは、
各国各
地域の
伝統文化を尊重しつつ、その上に
標準化を設けていくと、こういうことに進まざるを得ないと考えておるわけでございます。
こういった
観点から考えましても、
日本は
アジアの一員として、
東洋文化、
哲学に裏づけられた
スタンダードを主張していくべきだと考えております。こういう点から考えましても、
経済的に
日本の
アジア重視ということが絶対必要な問題であると、このように考えているわけでございます。
以上、
世界経済の
二つの大きな
潮流のいずれをとりましても、
日本は今申しましたように
アジア重視が最も肝要だと、このように考えておるわけでございます。
一方、
アジア諸国の
日本に対する期待でございます。
従来、
アジア諸国は、
日本が
近代化経済の
発展に成功した
モデルの国としてまいりました。今こういった
変化が出ておりますので、今後はやはり
各国各
地域の
文化、
伝統、
哲学を土台にした、その上に立った
近代化経済の
発展を望むように
変化をしてきておるというふうに感じております。その点についても
日本に期待しているわけでございますが、しかし、最近の
中国の目覚ましい
経済発展を見るにつけまして、
ASEAN諸国は多少
中国の方に目を向け始めているんではないかというふうに感じております。この傾向は
アジアの
経済の
中心が
中国に移る
可能性も示しておりまして、将来の
日本経済を考えますときにゆゆしき問題ではないかというふうに存じております。
国際経済はまさに
政治と表裏一体の
状態でございまして、
日本の顔として、
首都機能の
移転先は
日本独特の
文化、
伝統を踏まえた
地域が望ましいんではないかというふうに考えております。
こういった
観点から、多少我田引水がございますけれ
ども、
三重・
畿央を考えますと、
アジア諸国は
古来から
日本の中で最も親しみを感じていただいている
地域でございます。言うならば、心理的に最も近い
地域であるというふうに考えます。そして、今申しましたように、
京都、
奈良、
滋賀、
三重は
日本の
伝統文化を最も多く保有している
地域でございます。また、
古来から
経済的にも
発展している
地域でございます。
以上の三点から考えまして、
国際経済的にも
首都機能は
三重・
畿央が望ましいと、このように考えている次第でございます。
次に、
国内問題として申し上げます。
先ほど
三重の
知事さんがおっしゃいましたこの同じ
資料でございますが、「
首都機能移転先候補地「
三重・
畿央地域」の
概況」というのを、一ページから三ページまでございますので、ちょっと
ごらんをいただきたいと存じます。
三重・
畿央は地理的に見まして
日本の
中央に位置しております。最近の
国内移動につきましては航空機がかなり利用されておりますので、地理的な隔たりと申しますか偏りは余り考えなくてもいいんではないかと、こういう
意見もございます。しかし、
交通には飛行機のほかに自動車、鉄道、その他いろんなものを利用することが望ましいと、このように考えておりまして、やはり地理的には
中央に位置していることが
経済的にはよろしいんではないかというふうに考えております。
そこで、ちょっと脱線をいたしますけれ
ども、
日本は地理的に狭い国であるから
政治経済の
中心は一カ所でよいと、こういった説がございます。人呼んで
東京一極
主義と申しますか、そういう説がございます。さらに今、最近の
IT革命によりましてその
考え方が強まってくるものと思われます。
しかし、
アメリカのせんだっての
同時テロでもおわかりのように、
政治経済の
中心を一カ所に置くということは、国家の安全を考えますときに大変大きな問題であるというふうに存じます。殊に、
経済におきましては、国際的な
金融機能というのは
日本の
国内に限らず全
世界に同時に通じているわけでございます。一日の二十四時間をニューヨーク市場、
東京、ロンドンと、三つのマーケットがくるくる回っておるような
状態でございます。
したがいまして、もしここで万一、
東京で混乱が生じましたときには、全
世界の
金融機能を麻痺させると、こういうおそれがあるわけでございます。せんだっての
アメリカの場合は、幸い
政治が離れておりましたために被害を少なくされたのではないかと、こういう思いがございます。そういったことで、私
ども、一カ所に集めるということについて一番恐れているのがこういう点でございます。これらは
同時テロだけの問題じゃございませんで、地震だとかいろんな天災においても同様でございます。
それでは、話はもとへ戻りまして、二番目に、
三重・
畿央の
経済環境、
社会的な現在持っておりますあらゆる設備の
活用が大いに望める
地域であるということを申し上げたいと存じます。
これにつきましては、先ほど御
説明がございましたのでちょっと簡単に申し上げてみたいと思いますが、京阪神、東海の
二つの大きな
経済圏を持っております上に、少し離れて北陸の
経済圏を持っております。言うならば、三角の
状態のその真ん中にあるわけでございます。これは消費地であるとともに生産地であると、こういったことでございます。
そこで、
首都機能の
移転が
実現いたしましたら、これらの
経済圏は大きな刺激を受けるわけでございまして、
日本経済の活性化に大きく寄与すると、このように存じております。
それから次に、
交通網でございます。これはもう先ほど御
説明がございましたので省略をさせていただきますが、ただ
一つ、現在の
東海道新幹線の中で、米原と
京都の間に、現在、仮称
びわこ栗東駅が予定をされております。ここから
三重・
畿央の都心まで
新幹線を引っ張り込みますと非常に便利になるわけでございまして、これは約二十キロから二十五キロの距離でございます。ちょうど
東京から
京都までぐらいの距離になるかと思います。したがって、所要時間も、のぞみ級でございましたら二時間ちょっとかな、こんなふうに考えている次第でございます。
それから、空港の問題は、先ほどお話がございましたが、そのほかに、二ページにもございましたんですが、候補地の円周部分にびわこ空港というのを計画中でございます。この空港がもしできましたら、これまた都心部まで二十キロから二十五キロぐらいの距離でございますので非常に短い時間で到達できると、こういうふうに存じております。
それから、三番目の問題でございますが、これは既に御
承知のように、
近畿一円というのは
文化財の宝庫でございますので、今お話が出ましたように、
京都、
奈良、伊勢、伊勢というのは
三重ですが、
滋賀と、この一直線の上に
日本の
文化が並んでおりまして、これによりまして
外国からの来訪者に非常に親しまれております。今後の
首都機能に大きな魅力となるのではないかと、このように存じております。
それから、四番目でございますが、
首都機能の、造成費というのは間違っているかもしれませんが、つくり上げにつきまして、コストといいますか費用は非常に安くつくのではないかと、このように考えております。規模とか
内容の大小によりましてコストが変わってくるわけでございますけれ
ども、田園風景の中の
環境共生型、そして人口が三十万から五十万ぐらいと、この
程度の
都市をつくるとしましたら、
三重・
畿央が一番安くいくんではないか。世間では、何か
東京とか
大阪のような大都会をつくるようなイメージがございますけれ
ども、そういうことではないと、このように考えております。
比較的安くつきますのに幾つかございますが、
一つは土地の値段が安いということでございます。
三重、
近畿のちょうど中間のぽかっとあいた
空白地のようなところでございまして、百五十から三百メーターぐらいの高原地帯でございます。したがって、土地の値段はかなり安うございます。
それから、
国有林が比較的多うございます。
三番目に、先ほど申しました
交通網は、少し手を入れればかなり充実したものができ上がると、このように考えております。それから、第二名
神高速道路でございますが、これはもう現在着工中でございます。
さらに、この
地域は過去、天災の非常に少ない
地域でございますので、この対策費も最小限で済む見込みでございます。
最後に、
東京よりの所要時間でございます。
東京よりの所要時間が
選定をしていただきます
一つの基準になろうかと、このように存じておりますが、
三重・
畿央は地理的には確かに
東京から遠うございます。しかし、所要時間は、
新幹線の先ほど申しました引き込み線をつくりましたら、
東京—京都間
程度で行けるわけでございます。
将来、さらにリニアの計画もございます。しかも、そのリニアはこの
地域を通っていくということでございます。それから、
新幹線につきましても、これも将来の問題でございますけれ
ども、
名古屋から現在の
東海道新幹線を外れまして、今の候補地を通りまして
大阪へ行くと、こういうバイパスもつくれるのではないかと、このように考えまして、もしこれができましたら、さらに時間が短縮されるのではないかというふうに考えております。
以上、
三重・
畿央につきまして、
経済的な側面から
考え方を申し述べさせていただきました。
国際経済、
国内経済のいずれから考えましても、
三重・
畿央は
優位性が高いと確信をしている次第でございます。
言葉足らずの点も多々あったかと存じますが、お許しをいただきたいと存じます。貴重な時間をいただきまして、まことにありがとうございました。