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参考人(
佐々木健三君) 私は、
農民運動全国連合会の
会長の佐々木でございます。福島市で、四
世代家族十名、酪農をやっております。そういう
立場から報告したいと
思います。
私は、この提案されています
法案の
改正に対しては
反対の
立場でございます。
私もかつて
農業委員の経験がございます。この
年金は国の
制度だから安心して
加入してほしい、そう言って
農家の
方々に勧めてきた
経過があります。
老後をこの
年金で安心して暮らそうと思ってきた多くの皆さんの心を裏切る、そういう
状況になったということを率直に
指摘せざるを得ません。私はむしろ今、
年金を削るのではなくて、もっと拡充して安心して
老後を暮らすことができるようにする、これこそが大事なんだというふうに考えております。
少し私の具体的な最近の活動についてお話をしたいと
思います。
実は私、
昭和三十四年に
地元の農学校を終わりまして、それ以来
農業に従事しております。
昭和三十五年に
農業基本法が制定されましたから、私の
農業人生はこの
昭和三十五年以降の
農業基本法と一緒に歩んできたというふうに言ってもいいと
思います。そして、この間の
農業人生というのは、ちょうど高度経済成長にも寄与しましたし、また
農業生産に対して一生懸命やってきた、つまり新農基法に至るまでの間を文字どおり
農業に打ち込んできた、そういう人生であります。そして、ようやく今、
農業者年金を受けようと
思いまして窓口に行ったらば、いざとなったらば
カットだというふうになったわけであります。
そして、同級生の中で集まりまして、これはどういう
状況なんだということで勉強会をやりました。みんながそれぞれ地域の中で頑張っている、議員さんもおりますし、教育
委員もおりますし、それぞれもう私
たちの
年齢ですから地域の中の中堅でございます。しかし、いざ窓口に行っていろいろ聞いてみると、全然わからなかったことが今進行しているというふうになりまして、みんなで集まって勉強会をやりました。
その中で仲間はこう言っております。我々の苦労に対するこの仕打ちは決して容認することはできない。政府を信頼して掛金を払い続けてきたのに、これは国家的詐欺ではないか、そういうふうに言っている人もおります。何回も集まって勉強会をして、どうも
農業団体からの説明は何が何だかさっぱりわからない、ここに来て初めてその実態がわかったというふうに言っております。
そこで、こういう
状況はやっぱり
自分たちで勉強しただけではだめだということで、近隣の農協、それから
農業委員会にも行きました。議会にも行きました。それぞれのところに行って、私
たちはこういう今進められているような
状況については
反対なんだというふうなことを伝えました。
それぞれの団体、
農業委員会も農協も、いわゆる中央では三者合意によって
賛成の
立場をとっておりますが、
地元の末端に行きますと、不安や不満を口々に出しておられます。担当者は、
農家の皆さんに何と言って説明していいかわからない、新しい
加入などとても勧めることはできない、このように口々に言っておられました。
つまり
現場では、この
状況では遠からずもっと悪い内容になってしまうんではないかという不安があります。そしてまた、
後継者はこれでますます離れてしまうだろう、そういうふうにも言っております。
私もこの
現場の活動を通じまして、こうした不安の声には全く同感でございます。同時に、今度の
年金の問題は、公的
年金の削減という、ほかの
年金にも悪い影響を与えるのではないかという心配も私はしております。私
どもは、そういうことを踏まえて、今後とも地域での具体的な活動を進めていきたいというふうに思っております。
同窓会の
会長さんにお会いしましたら、これは大変いい活動だから同窓会の役員会でも話をしよう、たまたま県内の同窓会の
事務局になっているので、じゃこの話を大いに宣伝しようというふうに言っておられました。
さて、今度提案されました
法案は、新しい
状況の
変化、つまり
年金受給者七十五万人、
加入者二十九万人となって、
年金制度が維持できないという理由で
改善するんだというふうに言われております。
しかし、この議論は肝心な基本的な点が欠落しているというふうに私は
指摘しておきたいと
思います。その第一は、今日の
農業と
農村の現実です。第二は、今日の
農業の
現状をつくってきた
責任が全く論じられていない、結果
責任を
加入者である
農民にしわ寄せしているという点であります。
戦後、私
たち農民は、食糧難を打開するとともに増産に貢献をしてまいりました。まさに
農民の苦労や奮闘なくして今日の経済はなかったというふうにも自負しております。しかし一方で、政府は工業の発展を軸に置いた
政策を遂行して、食料を外国から輸入して賄うという
政策を選択し、農産物の輸入自由化
政策を一貫して進めてきました。
その結果、どうでしょう。古い農基法が制定された一九六〇年時には約八百万の
農家戸数がありました。今日、三百二十万に減少し、食料自給率はカロリーベース四〇%を割るという、そういうところまで低下しております。
とりわけWTO協定以降の六年間は、今日四割にも至る米の減反、さらにはミニマムアクセス米やSBS協定米の輸入などで、米価は五千円とも六千円とも言われる下落を続けて、政府が今育成しようとしている大規模
農家ほど大変苦しい
状況に置かれております。野菜や畜産も輸入の急増によって価格が
低迷して、
農家経営は大変な
状況でございます。
今日、
農業者年金をめぐる問題の中心は、こうした農政によってもたらされているということが明らかであります。その
責任を明らかにしないで、農政を転換する方向を示さないままで結果
責任を
農民にもたらすということでは、多くの
農家の
方々から怒りを訴えられるのは当然であります。
次に、
法案の問題点について触れてみたいと
思います。
まず、
受給額の平均九・八%
カットについて。
加入者は長年にわたって苦しい
経営の中から掛金を払い、
受給を心待ちにしております。これまで議論があった三割
カットに比べて九・八%、これは仕方ないというふうな議論があります。しかし、私はこれは容認することはできません。先ほど
指摘しましたように、農産物の価格の暴落による
経営の実態、さらには長引く不況によって
農村経済は非常に疲弊し、その中での
受給額の削減でありますから、
農家の暮らしと営農、
農村経済は大きな影響を受けることは必至でございます。
新しい
加入者に対する
政策支援の選別、限定についても重大であります。
法案によりますと、
政策の集中を認定
農業者及び青色申告者に限定するとしています。政府統計によっても認定
農業者数は十六万弱、青色申告は七万三千、認定
農業者と青色申告はダブりますから、この数は単純に足すわけにいきませんが、この数でいきますと、大多数の
農家の
方々をこの支援の外に置いてしまうという心配があります。
昨年制定されました新農基法は、その基本計画で自給目標を四五%としています。圧倒的多数の
農家を事実上
農業者年金から締め出して、将来の暮らしの展望を奪ってしまう。どうしてこの自給率の目標を達成することができるのでしょうか。甚だ疑問であります。
農業に意欲を持つ人、これはすべてが対象であるというふうに強く求めたいと
思います。
今回の
農業者年金の
改正をめぐって問われているのは、実は
農業の基本にかかわる内容であります。今、小泉内閣が誕生して高い支持率だというふうに言われております。農政ではどんな影響が生まれるかと期待する向きもありますが、しかし、今回の
受給者への削減などを見ますと、この改定の内容は実は弱い者いじめの政治そのものであるというふうに断言したいと
思います。
本日、
参考人質疑を行っているわけでありますが、重大な内容を含む、この内容については早々に採決するのではなくて、じっくりと
農業のあるべき方向を見て
審議を行うべきであります。
最後になりましたが、私
ども農民運動全国連合会は、
農村と
農業の復権を目指し
全国で活動しております。
農業者年金が本当に役立つ
年金となるよう、今後とも全力を挙げて取り組んでいくことを述べまして、私の
意見といたします。