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2001-04-02 第151回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年四月二日(月曜日)    午後二時一分開会     ─────────────    委員異動  四月二日     辞任         補欠選任         筆坂 秀世君     畑野 君枝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         角田 義一君     理 事                 有馬 朗人君                 鹿熊 安正君                 長谷川 清君                 渡辺 孝男君     委 員                 久野 恒一君                 国井 正幸君                 保坂 三蔵君                 山下 英利君                 山下 善彦君                 江本 孟紀君                 福山 哲郎君                 弘友 和夫君                 緒方 靖夫君                 畑野 君枝君                 三重野栄子君                 石井 一二君    事務局側        常任委員会専門        員        舘野 忠男君    参考人        財団法人地方自        治研究機構理事        長        石原 信雄君        東京大学空間情        報科学研究セン        ター教授     八田 達夫君        株式会社三菱総        合研究所取締役        人間環境研究本        部長       平本 一雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国会等移転に関する調査  (派遣委員報告)  (国会等移転に関する件)     ─────────────
  2. 角田義一

    委員長角田義一君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、筆坂秀世君が委員を辞任され、その補欠として畑野君枝君が選任されました。     ─────────────
  3. 角田義一

    委員長角田義一君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日の委員会参考人として財団法人地方自治研究機構理事長石原信雄君、東京大学空間情報科学研究センター教授八田達夫君及び株式会社三菱総合研究所取締役人間環境研究本部長平本一雄君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 角田義一

    委員長角田義一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 角田義一

    委員長角田義一君) 国会等移転に関する調査を議題といたします。  まず、本委員会が先般行いました委員派遣について、派遣委員報告を聴取いたします。鹿熊安正君、お願いいたします。
  6. 鹿熊安正

    鹿熊安正君 去る一月十六日及び十七日の二日間、角田委員長和田理事渡辺理事国井委員佐藤委員三重野委員、そして私、鹿熊の七名は、栃木県及び福島県において国会等移転に関する実情調査を行ってまいりました。  栃木福島地域は、平成十一年十二月の国会等移転審議会答申において移転先候補地として選定された地域一つでありまして、今回の調査では、まず栃木県の那須地域視察後、概況説明会において両県知事並びに関係者から説明意見表明を聞き、意見交換を行った後、福島県に入り、石川北部地域福島空港西白河東部地域視察いたしました。  以下、その概要を御報告申し上げます。  まず最初に、視察先概要を申し上げます。  那須地域は、那須野ケ原と呼ばれる那珂川と箒川に挟まれた扇状地で、約四万ヘクタールにも及ぶ広大で平たんな地域であり、新しい日本を切り開いた明治の開拓精神がしのばれる歴史と品格のある地域であります。  このうち、東北自動車道西那須野塩原インターチェンジに隣接して、約四百ヘクタールの一団国公有地が存在しております。その上、民間企業一社で所有している牧草地がその北側に隣接しており、この一団国公有地にこれを加えますと、千代田区の面積を超える約一千二百ヘクタールの一団の平たんな土地を確保することができます。  石川北部地域及び西白河東部地域は、広大な開発可能地を有する阿武隈地域の一部で、そのほとんどが里山と豊かな森が織りなす日本の原風景とも言うべき景観を持った地域であります。  福島空港は、現在、二千五百メートルの滑走路供用中でありますが、県が二〇一〇年を整備目標としている滑走路長三千メートル級化について、第七次空港整備七カ年計画にも盛り込まれ、閣議決定されております。  なお、本年三月には、東北自動車道矢吹インターチェンジから福島空港周辺までの自動車専用道路供用開始となり、この道路の完成で、西那須野塩原インターチェンジから空港まで三十分程度で結ばれ、地域一体性はさらに増すことになります。  次に、概況説明会について御報告いたします。  まず、福田昭夫栃木県知事からは、国会等栃木福島地域移転する意義について、四つの観点から説明がありましたので、順次御紹介いたします。  第一は、バランスのとれた国土構造実現であります。  栃木福島地域は、高速道路新幹線などの広域交通網に恵まれており、北海道東北地方はもちろん、日本海側西日本地域との連携も可能な位置にあることから、これまで十分に人口産業等集積が進んだ地域ではなく、新たな集中を招くことがない同地域国会等移転することで、バランスのとれた国土構造実現することが可能である。  第二は、災害対応力の強化であります。  栃木福島地域は、移転先候補地の中で地震災害に対する安全性が最も高く、また、その恵まれた交通条件から、大規模災害時の主要都市間の情報交通の確保にも最もすぐれた地域であるため、国家の司令塔の安全性を確保する上で最適な地域である。  第三は、円滑な移転実現であります。  新都市建設開始から移転完了までの間の円滑な国政の運営を確保するためには、新都市東京が緊密に連携し合える関係にあることがぜひとも必要であり、こうした状況を想定すると、新都市位置は、基本的に東京との連携が密接にとれる距離関係にある栃木福島地域への移転が最も望ましい。  第四の観点は、自然環境との共生であります。  国会等移転する新都市では、国内はもちろん、世界における都市づくりを先導していける都市として、是が非でも自然環境との共生実現しなければならないが、栃木福島地域は、自然環境との共生可能性に関して、移転先候補地の中でも群を抜く高い評価を得ており、その課せられた重要な使命を果たすことができるとの説明がありました。  さらに、栃木福島地域移転先地に決定した上で、栃木福島地域の大自然を破壊しないこと、小さな中央政府実現すること、地方分権実現すること、この三点を前提とした移転あり方等について、国会においてより活発な議論が展開されますよう要望がありました。  次に、佐藤栄佐久福島県知事からは、福島地域について、新幹線を初め空港高速道路といった高速交通体系が既に整備されており、これらの高速交通インフラを利用すれば、最小のコスト最大級利便性の高い都市をつくることが可能である。また、移転先候補地の中で空港を持っているのは本地域のみの特徴であると説明があり、さらにその上で、北東地域連携について述べられましたので、御紹介いたします。  宮城山形福島茨城栃木北東五県は、審議会答申がなされる前から連携した取り組みを行ってきており、県議会連絡協議会や五県知事会議を設立し、他の広域的な団体とも連携を図りながら、各種活動を積極的に展開している。  北東地域では、既存都市との多様な連携と適切な機能分担が可能であり、東京から仙台へ向かう二本の軸上に既存都市が適度に分散しているとともに、それを結ぶ高速交通網により有機的なネットワークが形成されている。  北東地域の高い開発可能性について、本地域では、全般的に地価の水準が低く、平たん地や緩傾斜地が連続的に分布する地形であり、森林や農地などの未利用地が広がっており、新都市をデザインする際のゆとりと自由度が高く、恵まれた環境の中に首都機能を効果的に配置することが可能となる。  栃木福島地域中心とする北東地域こそが首都機能移転実現する上で最も適した地域であり、美しい国土の創造を目指す新しい国土づくりを先導していく地域であると確信しているとのことでありました。  次に、栃木県議会郡司征夫国会等移転対策特別委員会委員長からは、本県議会は、移転促進に向けた県民合意形成に努め、国会政府に対し意見書を提出するとともに、節目節目決議を採択し、県内外移転促進をアピールしてきた。中でも、昨年九月の扇国土庁長官移転反対論については、これまでの移転に関する論議の積み重ねを全く無視するものであるとして、いち早く特別委員会抗議文を送付するとともに、県議会でも長官発言に強く抗議する決議を行った。最近、政界やマスコミの一部には、この国家百年の大計を単なる大規模公共事業や財源問題に矮小化する論調も見られることから、国民がその国家的意義を見失うことがないか、大いに懸念している。  さらに、那須地域には御用邸があり、天皇陛下が国事行為の際に滞在される施設の整備には最もふさわしいとの発言がありました。  福島県議会鈴木武男首都機能移転等対策特別委員会委員長からは、本県議会は、これまで首都機能移転促進に向け積極的な活動を展開してきており、今後は栃木県との連携をさらに密にするとともに、北東国土軸形成に向け、首都機能移転北東地域県議会連絡協議会の一員として、この協議会を構成する宮城山形栃木茨城及び本県の五県議会以外の北海道を初め、青森、秋田、岩手の各道県議会との連携を深め、北東地域が一丸となって全国栃木福島地域優位性を積極的にアピールしていくとの発言がありました。  両県それぞれの移転促進県民会議会長でもある簗郁夫栃木商工会議所連合会会長及び坪井孚夫福島商工会議所連合会会長からは、国会等移転は、我が国成熟社会を迎え、二十一世紀にふさわしい新たなビジョンを内外に明確に示す、国としての戦略的なプロジェクトであると認識している。  栃木福島地域は、東京からの時間距離関係で、金融・経済文化中枢である東京の存在と両立しながら、政治・行政機能を担い、新しい都市機能を創出することが可能な地域である。  移転を中止して東京の大改造を選択した場合、一極集中の弊害を助長する以外の何物でもなく、土地バブルの再現が懸念される等の意見が述べられました。  次いで、関係者の方々と派遣委員との間で、移転論の原点に帰る必要性、国民的な合意形成方策国際交流に不可欠な港湾へのアクセスなどについて意見交換が行われました。  以上が調査概要であります。  最後に、栃木福島の両県知事を初め、調査に御協力いただきました皆様に厚く御礼を申し上げて、報告を終わります。  以上であります。
  7. 角田義一

    委員長角田義一君) どうもありがとうございました。  以上で派遣委員報告は終了いたしました。     ─────────────
  8. 角田義一

    委員長角田義一君) 次に、国会等移転に関する件につきまして参考人から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人皆さん方におかれましては、大変御多忙のところ当委員会に御出席いただきまして、心から厚くお礼申し上げます。  本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考といたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ十五分程度意見をお述べいただきまして、その後、二時間程度委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  どうもお待たせいたしました。  それでは、石原参考人からお願いいたします。石原参考人、どうぞ。
  9. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 石原でございます。  私は、平成八年十二月に国会等移転審議会委員を委嘱されまして、同月十九日に、審議会として橋本総理大臣から国会等移転先候補地選定及びこれに関連する事項について意見の提出を求められました。  当時の状況について申し上げますと、国会等移転に関する国会決議が行われました平成二年十一月の時点、あるいは国会等移転調査会が発足した時点すなわち平成五年の四月、このころと比べまして、国会等移転審議会審議が始まりますころは、経済情勢が大きく変わりまして、地価高騰は既に終わりまして、財政状況も次第に悪化してきたと、こういうような状況にありました。そのために、審議会として候補地選定審議に入るに当たりまして、委員の中には、このような状況変化を踏まえて首都機能移転必要性そのものについて改めてこの時点論議し直すべきではないかというような意見もございました。  しかし、審議会大勢は、政府候補地選定について諮問をしてきたわけでありますから、国会等移転調査会報告をベースとして国会等移転先候補地選定を行うのが審議会としてとるべき態度ではないかということで選定作業に入った次第であります。  その後、審議会審議が継続される中で、経済情勢は一層深刻になり、また、都心部を含めまして全国的に地価下落傾向が激しくなり、財政状態も国、地方を通じまして一層悪化してまいりました。  このような状況から、審議会として全国九カ所で行われた公聴会の場でありますとか、あるいは新聞論調の中には、この際、このような状況変化を踏まえて国会等移転先候補地選定作業は見合わせてはどうかと、こういうような意見もあった次第であります。  しかし、審議会としては、国会等移転に関する国会決議は何ら変更されておりませんし、また政府からの対応も全く変わっておりません。しかも、首都機能移転という問題は二十一世紀以降の我が国あり方にかかわる、文字どおり国家百年の大計でありますから、目先の経済情勢財政状態が変わったからといって既定方針を変更するのはいかがなものか、これはこの際、候補地選定作業既定方針どおり進めるべきであるという審議会大勢に従いまして作業が進められたところであります。  国会等移転審議会は、平成十一年十二月二十日、移転先候補地選定し、政府答申を行いました。その答申後も経済情勢の厳しさは変わらず、財政の悪化はむしろ一層深刻の度を増しているという状況でございます。  このような状況下国会等移転を行うか否か、これはまさに我が国のこれからのあり方にかかわる大問題でありますし、また、そもそも国会等移転論議が起こりました論拠となりました東京一極集中傾向は今日でもなお続いております。  例えば、地価の動向などにつきましても、都心部の一部では既に地価が下げどまったと言われながら、全国的にはむしろ地価下落傾向はさらに進んでいる。このように、東京への経済情報文化やその他の一極集中傾向というのは引き続き続いておりますし、またもう一つ移転論議の根拠となりました首都圏直下型地震危険性については、全く変化はありません。  こういったことから、この首都機能移転の問題、国会等移転の問題につきましては、時間をかけて地道な検討を継続し、適正な結論を出していただきたいと私自身は考えております。  移転先候補地選定された地域関係者は、先ほど御報告を拝聴しておりましても感じたことでありますが、私ども審議会委員のところにも候補地皆さんは、移転問題についてその後どうなるのか、政府はどうするのか、国会はどうされるのかということで、大変な、一方では期待を持ちながら、一方で大きな不安を抱いておられます。  私は、このような状況のもとで、一刻も早く、政府並びに国会におかれましては、この問題の取り扱いについて今後の御方針を決めていただきたいと、このように考えます。  以上、御報告させていただきます。
  10. 角田義一

    委員長角田義一君) どうもありがとうございました。  次に、八田参考人にお願いいたします。
  11. 八田達夫

    参考人八田達夫君) 八田でございます。  私は、首都機能移転の問題について当初から反対してまいりまして、いろいろなところに物を書いてまいりましたので、きょうは首都機能移転の是非について述べさせていただく機会を与えてくださり、大変ありがとうございます。  東京という都市日本という国全体から見てその機能を最大限に生かす、そういうためには、この首都機能移転をどう判断したらいいんだろうか、そういう視点からきょうはお話し申し上げたいと思います。  まず、首都機能移転の目的として普通挙げられますのは、まずは、東京自身のために移転が望ましいということであります。混雑がなくなる。第二に、地方分権が促進されるだろう。第三に、地震対策になる。こういう三つが主たる理由であるかと思います。  これらの理由背景には、三つ前提があると思うんです。  第一の前提と申しますのは、首都があるから東京一極集中しているという事実認識です。規制が強いために民間企業東京本社を置かざるを得ない、これが一極集中原因だというわけであります。  第二の前提は、一極集中東京にとってよくない。これは混雑をもたらすし、地価高騰をいずれかのときにはもたらす。したがって、よろしくないということであります。  第三は、首都東京に置くことは日本全体にとってよくないというものです。まず、先ほどのように地方分権を阻害するし、それから地震が起きたときにはこんな大都市首都を置いておけば首都機能が麻痺してしまう、そういうわけであります。  これらの前提がある一方で、東京がこれから上海や香港やシンガポールと対抗していかなければならない、そういう視点がこの移転論には全く欠けていると思います。  さて、東京一極集中原因ということをまず考えてみたいと思います。  普通、東京本社があることが問題だと言われるわけですが、しかし、それほど規制がどんどん進んできたんだろうか。東京一極集中は進んでまいりましたが、それは規制が進んだことに裏づけられているのだろうかということをちょっと提起してみたいと思います。  私が学生だったころに比べますと、大体貿易が自由化されましたし資本は自由化されました。それから、金利も自由化されましたし為替も自由化されました。この自由化背景には、官庁の権限の喪失ということがあります。要するに、規制は大幅に緩和されてきたわけであります。  私が学生のころには、通産省鉄鉱石輸入割り当ての権利を持っていました。したがって、例えば製鉄会社通産省の意に反して高炉を建設したいというと、では輸入割り当てをしないぞとおどすことができました。そういう権限はなくなってしまったんです。  だから、基本的には規制が緩んできた。それにもかかわらず東京一極集中しているというのは、これはどういう理由であろうか。  まず、アンケートで直接聞いたものが幾つかございますが、一つは、経済企画庁が一九八九年に、東京本社を置く会社にどういう理由で置いていますかということを聞いています。そこでは、なかなか東京首都があるからという答えが出てこない。まず第一に出てまいりましたのは、市場や顧客の情報の収集に便利だという理由でした。二番目は、仕入れや販売などの取引が楽である。三番目は、優秀な人材を手に入れやすい。いろんな理由がありまして、東京政府があるからだという理由は、実に六番目に挙がってきたのであります。  それから、三菱総研の調査というのが一九九三年にございまして、首都機能移転した場合に本社移転しますかという質問に対して、本社を分割して一部を移転する、あるいは全部移転すると答えたのは、四百四社のうち三十五社でありました。本社を全部移転すると答えたのは、四百四社のうちたった二社でありました。このように、東京本社を置いている企業の大部分は、首都が仮にどこかに移っても、東京から本社移転しようとは思っていないのであります。  では、どうして東京一極集中したのか、この問題をまず考えてみたいと思います。  きょう配付させていただきました資料で、「首都移転反対論」という論文がございます。これは、論文というよりも一般向けにわかりやすく書いたものですが、これの五ページに、各政令指定都市の昼間人口増加数グラフにしたものがございます。これをちょっとごらんいただきたいと思います。  このグラフは、一九六五年、高度成長のピークのときから九〇年までの間にそれぞれの都市の昼間の人口がどれだけ伸びたか、就業者だとか学生だとかの数、それがどれだけ伸びたかということを示すものです。  これが示しますことは、北九州大阪を例外とすると、ほとんどすべての都市が成長した。したがって、よく一極集中と言われますが、実は東京は多極集中の一翼を担ったという面があります。要するに、日本は第三次産業化したわけで、その間に都市中心社会になっていった。これは東京に限ったことではなくて、名古屋も神戸京都も千葉もみんな伸びていった、そういうことの一環であったわけであります。  さて第二に、これは東京特殊の事情もございます。それは、東京だけがほかの都市に比べて伸びたということがございます。それは、基本的には、結論から言ってしまえば、都市間の交通費が低下して大阪が衰退し、大阪が持っていた本社機能東京が吸収したことであります。このグラフで衰退した都市というのは北九州市と大阪市でございますが、北九州市というのは鉄鋼の町ですからこれは衰退したのはやむを得ないし、ある意味で福岡とより大きな都市圏形成したということが言えます。  そうすると、結局、大阪だけが減っているわけですね。関西の都市が減っているわけではない。京都神戸もふえているけれども大阪が減っている。  これはどうしてかというと、大阪高度成長の初期までは西日本経済圏中心でありました。その理由はなぜかというと、結局は、九州から東京まで行くというのは、例えば私の子供のころでも十八時間かかった。そうして必ず夜行で行かなければいけない。そういうときに、大阪ならば八時間で済む。夜行で行ったとすると、もう翌日仕事をしてまた夜行で帰ってくれば日にちがむだにならない、そういうことがありました。したがって、四国や九州中心地として西日本経済圏というものができて、大阪がその中心であったというのは当然であったわけです。  ところが、交通費が低下して、何もわざわざ大阪でストップする必要はない、もう東京まですぐ日帰りができる、そういう事情になった。それで大阪本社機能東京に移っていった、そういう事情があると思います。したがって、多くのいわゆる中枢都市が伸びて、それと同じ理由大阪も伸びたに違いないのに、それを相殺するほど大きな減少要因があった。これは大阪からの本社機能移転であります。  そうして最後に、東京がこれだけ伸びた理由というのは、これは当然のことながら、ある程度都市が伸び出すと集積の利益が働くということです。そうして、都市がそもそも都市として存在する理由というのは、結局、人にフェース・ツー・フェース・コンタクトで会えるということですから、それのコストが安いということであります。  そうして、例えば渋谷と大手町とを比べますと、オフィス賃料が大体倍します。それにもかかわらず大手町オフィスを設けようという会社は、なぜそういう賃料を払うのかというと、それによって時間が節約できるからです。要するに、一日に会えるお客さんの数がはるかに多い。地下鉄は五本ある、歩いて回れば幾らでも会社に訪問できる、そういうことがメリットだからオフィスの賃料が高くなる。だから、オフィスの賃料が高いとか地価が高いということを文句言うけれども、そのときセーブできているものというのは、何よりも貴重な人間の時間であります。それが都市機能であり、そうして、ここでフェース・ツー・フェース・コンタクトできる人の数がふえればふえるほど集積の利益というのは高まる。  香港に行ったときに、香港三菱商事の社長さんとお会いしたことがあります。そのときに大変おもしろいことを伺った。東京では夕食の後、パーティーに行くといったら大体一件だ。二件目からはちょっとお断りして、先約がございますと言えば大体それで済む。ところが、香港の場合には夕食の後、四件パーティーに行くんですよとおっしゃった。それはなぜかというと、あのセントラルというところにオフィスがみんな集中しているものだからすぐ行けてしまうというんですね。歩いてもうどこへでも行ける。だから、夕食の後、四件パーティーを兼ねるということはもうごく当たり前。実は、そこで社長さんがおっしゃったのは、昼も同じような調子でビジネスするんです、移動の時間が大変短い、したがって一日に会えるお客さんの数が非常に多いと。  香港というのは、香港自身で見れば大した後背地もないのにあれだけの町を構えている。その秘密というのはそういう集中にあると思います。東京がそれに競うためには、やはり東京集中しなければだめなんです。それが都市の命ではないかと思います。  そうして、そういうふうに一遍集積の雪だるまが膨らみ出すと、そうすると例えばオフィスサポート業というようなものがどんどん進みます。もちろん簡単なところではエレベーターの保守というような業種が独立しますが、さらには国際的な法律問題を扱う弁護士の事務所、あるいは国際的な税法を扱う会計士の事務所、そういうものが東京では採算に乗る。もちろん大阪にもあるんですが、本当の専門的なことを全部できるのはみんな東京にいて、大阪まで出張して出かけるということになる。こういうオフィスサポート業が東京にはできるというメリットがあります。  そうして、言ってみれば政府もそういうオフィスサービス業の一種であります。要するに、政府が横にあるというのは、あたかもコンサルティング会社や弁護士会社があるように、こういうビジネスにとってはなかなか便利な存在なのであります。  こう見てまいりますと、東京一極集中した理由東京の成長した理由というのは基本的には技術的な理由にあります。すなわち、交通費が低下した、あるいは集中するとますます集積の利益が得られる、こういうことにあります。したがって、その根本原因は取り除かれないんですから、首都移転しても一極集中をとめるということはできません。それが一極集中原因を考えると、首都移転というものが一極集中を阻止するには役に立たないという根本原因であります。  それでは、東京問題と言われる幾つかの問題を解決するのにどうしたらいいのかということをまず考えてみたいと思います。  まず、地価のことはもし後で余裕があればお話しいたしますが、ちょっと今はやはり通勤の混雑のことが中心かと思いますので、通勤の混雑のことを申し上げたいと思うんです。  これは、例えば六十万の人口東京から移したって東京の通勤問題が解決するわけではありません。通勤問題の本質は、例えば三十分、一時間のラッシュのときの混雑をどうするかということであります。そうして、それへの解決策は、その時間帯の運賃を高くして、オフピークの時間の運賃を安くすることであります。  今は、企業に時間差通勤をお願いしても、どこの企業もそんなものをするインセンティブがない。ラッシュのときには、通勤手当で普通の料金の半額の料金で皆さん通勤していらっしゃる。そういうときに、わざわざラッシュの時間帯から始業時間を動かそうという動機が企業にはない。  ところが、例えばワシントンでは、ピーク時は地下鉄は高い料金です。フランクフルトもそうです。そして、ワシントンの場合にはプリペイドカードで取られますから自動的に済む。東京も当然そういうことができます。東京も、極端な話をいえば、五分置きに値段を変えて、ピーク時には非常に高くして少しでもオフピークに動かすというようなことが可能であります。  これが、基本的な混雑時間というのは三十分なんですから、これによって大変に多くの通勤客が混雑なしに、混雑なしということはありませんが、ひどい混雑を避けて通うことができるようになるだろうと思います。そうして、それが通勤鉄道の建設のための大きな資源になります。財政収入になります。その料金収入をこれからの都市交通の財源として使うことができます。  さて、日本全体にとってこの首都移転というのはどうでしょうか。  まず、地方分権に役に立つという話があります。それは突き詰めると、地方のお役人が東京に来て東京の中央官庁の方と会うのがかなり時間もかかるしコストもかかるようになる、だから自分で勝手にやるだろう、そういう話です。  私は、公平に言って、そんなことはあるはずがないと思います。そんなに地方政府はやわではないと思います。要するに、今の例えば地方交付税のシステムをそのまま残したまま、ただ首都移転しただけで地方分権が進む、そんなことはとても考えられない。やはり、そもそもその根源にさかのぼって地方交付税のシステムを改めるとか、その他の地方分権の制度を改善すべきであります。  もし、お役人に会うことが面倒くさくてコストがかかるから、移転したらば地方分権が進むだろうというのならば、同じことを、例えば新首都に行くための新幹線が往復少なくとも五千円かかるとすれば、役人面会料というのを役所の入り口で取ればいい。五千円の役人面会料というのを取って、お役人に会うためには五千円払いなさいということにする。そうしたら、恐らく地方の公務員は余り来なくなるだろう、そんなようなことを言っているのと同じだと思います。そして、それに何兆円もの金をかけて、そういうことでもって地方分権をやろうというのは全くやり方がむだな方法だと思います。  そして、最後地震であります。  地震になったら東京をどうするかという話がありましたが、もし神戸に新首都を移していたらばどうなったでありましょうか。どこの町も地震は襲います。そして、そこの町が襲われたら、そこに首都移転していて、移転した町が襲われたら首都機能は崩壊します。したがって、この地震対策の一番大切な方法というのは、バックアップ機能をつくることです。もし東京がやられても必ずどこかのほかの都市で、例えば大阪で、名古屋で、大宮でバックアップをとっておく、資料もバックアップをとっておく、人材的にも最低限の人はそこに残しておく、そういうバックアップ機能を用意しておくことがこれへの最大の対策であると思います。  結論を申し上げれば、東京が成長した理由というのは非常に技術的な理由によっています。そうして、それを首都機能移転によってとめることはできないと思います。  それから、東京都市としての命というのは、やはりフェース・ツー・フェース・コンタクトを容易にできるということで、それはある意味では円滑な集中を援助することによって達成可能です。それをやることによってのみ、上海やシンガポールや香港と日本が競争することができると思います。  どうもありがとうございました。
  12. 角田義一

    委員長角田義一君) どうもありがとうございました。  では、最後になりますけれども、平本参考人にお願いいたします。
  13. 平本一雄

    参考人平本一雄君) 平本でございます。  私の立場は、若干、八田先生と異なります。首都機能移転をすべきという立場でございます。  その際、首都あり方として、将来、二つの首都制を考えております。東京経済首都として世界都市化を目指す。大都市としての集積のメリットを生かして目指す。また、新しく首都機能移転する場所につきましては、政治・行政首都として都市を育成するという考え方であります。  それで、まず第一点、私は首都機能移転国家再生の最善の方法ではないかと考えております。  現在、ちょうど世紀をまたがりましてドイツと日本でこの首都機能移転という問題が起こってまいりました。ちょうど、東京、ベルリンというのは十九世紀末に両方とも初めて正式な首都となったということで、非常に類似した都市であります。  ドイツはそれ以降、約半世紀前に国土が分割されまして、非常にばらばらな地域の集まりのようになりかけてまいったわけですが、東西統合ということで国土に求心力を求めるために、今回ベルリンに首都移転いたしました。これは国土を統一するという形でドイツは首都移転をやったわけです。いわゆる国家の再生ということだったかと思います。  日本の場合、これまでいろいろな首都移転の目的が論じられてきております。日本の場合は、ドイツと違いまして、首都東京から移転しておりませんので、ますますここ半世紀の間、戦後も一極集中がどんどん進んできております。その結果、何が起こっているかというと、大都市問題もありますけれども、日本国におきます東京以外の地方が衰退してきたということではないかと思います。地方の活力を東京が吸い取るような格好で東京が成長したということではないかと思います。これは、明治以降強化されました中央集権と、それがもたらす一極集中というもののなせるわざだろうと思います。  また、この中央集権につきましては、行財政システムが次第に硬直化するというようなこともありまして、各種規制の温存ですとか中央依存の財政といったような行財政あり方が、これからの新しい世紀における国の発展を阻害してきているのではないかと思っております。  こうした国政のあり方につきましては、行政改革、規制緩和、地方分権、ともにいろいろ対策がこれまで打たれてきております。しかし、なかなか十分に抜本的な改革というのはなし得ていないのではないかと思っております。そういう意味では、いまだ新しい世紀になりましても展望が開いていかない。いわゆる抜本的に国政の改革を、政治、行政の改革を行っていくには日常的な改革方法ではなかなか進まないのが我が国の実情かと考えております。  それで、日本の歴史をこれまで見た場合、抜本的な国政の改革というのはどのようになされたかといいますと、近くは外圧、黒船ですとかまた敗戦とかいったものでありました。それ以外ではといいますと、かつては、歴史的には首都移転というものがありました。この二つしかなかったのではないか。いわゆる非日常的な環境下でないと抜本的な改革というのはどうもできないのが我々日本民族ではないかと考えております。  そういう意味で、外圧というものは今後ないだろうと思っておりますので、我々日本国民が自分たちみずから改革をするため、中央集権の環境を築き上げてきた東京というその場所から抜け出て抜本的な改革を行うということが今必要ではないかと思っております。いわゆる国政の改革のための環境づくりが首都機能移転イコールであると考えるわけです。  それでは、二番目になりますが、移転社会経済効果というもの、これはあるのかどうか。なかなかそれはないという意見も今出ておりますが、まず移転に関します費用につきましては、これはそれほど高額のものではないと私は思っております。  といいますのは、小さな公共投資で大きな効果ということを書いておりますが、国会移転と同時に国政の改革も行うという、そういうプログラムが首都機能移転であると考えますが、この場合、首都機能都市というものの構想が審議会等によって計画がなされておりますが、首都機能都市全部が完成しなくても、実は国会都市という十万人の都市を建設していくだけでも、その効果は十分に出てまいります。といいますのは、国会移転は国政改革と一体的に行うという前提で考えておるということからでございます。  そうしますと、十万人の都市というのは、現在、審議会の数字では四兆円、公共投資二兆三千億、民間投資一兆七千億でございますが、これによって実は可能になりまして、これは十年間仮にかかるとして年間二千億円台でございます。これは、昨年の補正予算と比べましても非常に小さな額でございます。そして、こうした結果、公共投資二兆三千億によって国家の再生が可能になるとすれば、これは大変な大きな効果でありますし、そしてこの効果というのは、単なる数字であらわされるものでなくて、かなり膨大な定性的な効果も持つものだろうと思います。これは、明治維新とか平和国家になったときの効果というものが大変なものであったのと、それに準じるものではないかと考えております。  それからまた、あえて経済効果を数量的に見ていく場合に、私が試算したものがお手元に数表のような形でございます。少し見づらいので簡単にその要点だけ口頭で申し上げますと、この十万人の都市を建設します場合、官民を合わせまして四兆円が投下されますが、これは最終的に十兆七千億円の経済効果となってあらわれます。これが十年間で投下されますと、年間一兆円ぐらいの効果が出てくるということです。それで、非常に経済効果があるとこれを見て言う人もいますが、私の試算でございますが、こうしたもので経済効果を判断するのはいかがなるものかと思っておりまして、これは単なる従来型の公共事業として見た場合にこういう効果があるというだけで、これは当たり前の話でございます。  こういう観点から首都機能移転の効果を見るのではなく、もしここで新しい都市をつくるとすれば、単純な公共事業としてのこういう計算方法でなくて、戦略的に都市づくりを行う。例えば次世代IT都市として新首都をつくるとなると、これは壮大な研究開発事業になります。そうしますと、マレーシアなどでは既にそういうことをやってきておりますが、現在、日本情報化の民間投資は年間十兆円でありまして、また、情報通信産業のGDPは年間百十三兆円と言われておりますが、こういったものをIT都市建設という壮大なRアンドDプロジェクトを立ち上げることによってかなり刺激をしていくことができる。そうすると、年間数十兆ぐらいの刺激増幅効果というものを呼び起こすのではないかなと考えております。  そういう戦略的なプロジェクトとしてこれをとらえると、社会経済的効果というのは我が国全体に対して大変なものになってくるのではないかなと考えます。そういうプロジェクトとしても見る必要があるのではないかと思います。  また、最後に三点目、東京でございますが、東京に対しては、やはり経済首都として今後ともあるべきでございますので、いかに世界都市化を目指して成長させるか。先ほどのシンガポールとか香港と競争してまさる都市にする必要がございます。  その場合に、日常的な都市整備策だけではなかなか東京改造というのはこれまで効果が出てきておりません。例えば、東京都は八七年から九六年の十カ年の間に一般会計の投資的経費というのは十六兆円を既に投下してきております。これは年一兆六千万円でございます。しかも、特別会計の都市開発プロジェクトとか地下鉄というものへの投資費用を除いて、これだけ投資しているわけです。しかし、残念ながら目に見えた効果は出てきていない。  そういう意味で、首都機能移転費をそのまま東京改造に使用したらという意見もありますが、首都機能移転程度では目に見えた効果は出てこないという状況であります。  そうしたら、東京を再生するのにどうしたらいいかということですが、東京に同額の公共投資を私はやるべきではないかと思っております。といいますのは、東京改造には刺激剤が必要でありまして、その刺激剤はまず二つございます。  まず、改造のための土地が必要である。土地が非常に高価でございます。そのために、移転跡地をその改造のための土地に活用すべきである。震災対策でありますとか国際都市化のために使おう。またもう一つは、首都機能よりも世界都市であるべき東京には大型のハブ空港が重要でございます。ハブ空港建設を進めるべきである。そのために、移転跡地の活用とハブ空港建設のために首都機能移転と同額の投資をやれば、東京の改造プログラムというのは描けるのではないかなと考えております。  それから、何よりも東京経済が停滞している原因というものは、抜本的な経済自由化を許さない日本の政治・行政システムではないかなと考えております。この首都機能移転政策というものが、これが抜本的な国政の改革というものを可能にしてくれれば、日本経済ハブであります東京からまず我が国は浮上していくのではないかなと考える次第でございます。  以上でございます。
  14. 角田義一

    委員長角田義一君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これから参考人皆さんに対する質疑を行いたいと思いますが、あらかじめ質疑者を定めませんので、委員皆さんには懇談形式で自由に質疑を行っていただきたいと存じます。ただ、交通整理をする必要がありますから、委員長の許可を得ていただいて、挙手の上、指名を得ていただいてからお願いします。大体三分程度で御質問の方はまとめていただければありがたいと思います。
  15. 有馬朗人

    ○有馬朗人君 きょうは大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  まず最初に一問、石原参考人にお聞きいたしまして、その後、お三人に共通ないしは違う御質問を申し上げたいと思います。  まず、先ほど石原参考人より国会等移転審議会のお話がありましたが、私も平成十年の五月までお手伝い申し上げ、途中で逃げ出してしまいまして大変御迷惑をおかけいたしました。  そこで、まずお聞きいたしたいのは、その報告が出ました平成十一年以後に、やはり東京と比べたりする、比較が随分変わってきただろうと思います、条件が変わってきただろうと。そういうふうなことで、今新しく国会等移転に関してどういうお考えを持っておられるか、この点についてお聞きいたしたいと思います。これがまず一問。  あとはその次は、二問以下は石原参考人及び平本参考人に共通のことをお聞きいたしたいと思います。  まず、いろいろな御意見があったと思いますけれども、国会等移転した先、そこの都市の規模、十万人都市であるとかいろいろなお話があったと思いますが、どのくらいの大きさの首都が必要であろうか、ふさわしいか。それからまた、それをつくっていくためには一体どのくらいの予算が要るものであろうか。これが第二問であります。平本さんにはこれが一問になりますが、共通でありますので御了解ください。  その次は、三番目の質問は、どのくらいの時間のうちにやるべきであろうか。百年かけるのか、十年でやるのか。どのくらいの時間でやったらいいかということを御質問いたしたいと思います。  そして四番目に、もう既に平本参考人はおっしゃられておられましたけれども、東京との比較において新しい首都機能というものはどういうふうにあるべきか、東京との比較について御意見を賜りたいと思います。  次に、八田参考人にお聞きいたしたいことは、アメリカであればワシントンとニューヨーク、あるいはドイツであればベルリンとフランクフルトというふうに、政治の中心経済中心がかなり分かれている国があります。もちろんフランスのようにパリという一極集中型もありますけれども、そういうふうな二つあるときの効果、あるいは逆に問題点、この辺についてお聞かせいただければ幸いであります。  私もどちらがいいかさんざん考えましたけれども、例えば教育などというものは、例えば先生のお勤めの東京大学などというのは東京になければならないのであろうか。私も総長のときには東京になくてはならないと申しましたけれども、きょうはちょっと逆な立場から、教育というふうなものがすべて大きな大学が東京集中しなきゃならないか、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。  その次に八田参考人にお聞きいたしたいことは、確かに非常に重要なことをおっしゃっておられましたね。近辺の国々、ソウルあるいは上海、北京、香港と、こういう都市と比較して、今後首都機能を持つ日本都市に対して要請されることはどういうことであろうか。  私もつい最近ソウルに行ってまいりましたが、仁川空港ができました。すばらしい空港ですね。こういうハブ空港がソウルにできてくる。これで日本経済力が弱まってしまわないかと私は心配をしているわけですが、そういう点について、今後、首都機能を持つ都市東京であろうと新しい都市であろうと、そういうところでこのハブ空港のような役割をどうお考えであるか。  その次、これで終わります。ITがこれだけ発達してきたときに、また先生の御専門でもあると思うんだけれども、会わないといけないんでしょうか。すなわち、先ほど非常に重要な点をおっしゃられましたね。香港ですと、何カ所か一晩に行けて会えるじゃないかと。こういう人と人の接触について強くおっしゃっておられました。  しかし、そろそろもうITになればインターネットでもいいし、さらに発達すれば電話も人の顔を見ながら電話をするような時代が来やしないか。こういうときの首都機能というのは一体何になるでしょうか。  以上、御質問申し上げました。よろしくお願いします。
  16. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 私に対するお尋ねは、審議会候補地選定答申をした以後の状況変化を踏まえて、東京との比較でどう考えるかということだったと思いますが、一昨年十二月に候補地選定答申を行いました以後も、御案内のように、経済情勢あるいは財政環境は変わっていないというよりも、もっと深刻さが進んでいると思います。そういう意味において、今直ちに首都機能移転作業を開始すべきかどうかということになりますと、これは多くの論議が起こってくると思います。  しかし同時に、そもそも首都機能移転国会決議がなされた背景などを考えてみますと、我が国東京へのもろもろの機能一極集中傾向というものが、我が国の将来の国土の均衡ある発展を図る上では何らかの是正が要るんではないかという問題意識があったと思います。その点が最近の経済情勢変化によって変わってしまったのかどうかということになりますと、私は基本的には変わっていないんじゃないか。その辺、大いに御論議いただく必要がある点であろうと思います。  それからもう一つ、非常に切実な問題といたしまして、確かに平成二年に国会決議がなされた当時、私も内閣におりまして、当時はもう本当に地価がどこまで上がるかわからないという状況でございました。公共事業は当時は全くできない状態。土地を売ってくれる人がいない。それで、ようやく買えたと思ってもほとんどが土地代になってしまって、これでは必要な公共投資というものもできなくなるんじゃないか。さらには、当時、日米構造協議をやっておりまして、日本地価が余り高いということで、外国からの資本投資ができないじゃないかというようなクレームがついたほど地価が異常でありました。あの当時の状況を振り返ってみますと、どうやったら地価の狂乱的な高騰が抑えられるかということをみんな心配しておりました。  そういう状況の中で、やはり東京にいろいろな機能集中し過ぎることが地価高騰の根本原因になっているんではないかという問題意識がありましてこの首都機能移転論議が起こったわけですけれども、その地価高騰は、確かにその後状況が大きく変わりました。総量規制が行われて以降、状況は一変しまして、今はむしろいかにして地価の下落を食いとめられるかということが問題になっておるわけですから、そういう意味では、首都機能移転議論の一つのきっかけになった地価高騰というのは、これは現在明らかに変わっております。  そういう、状況が大きく変わったものとそれから変わらないものと両方を踏まえて、この問題については私は少し時間をかけて冷静な判断が必要ではないかと思います。しかし、東京への一極集中という我が国の基本的な構造というものは変わっていないのではないか。そのことを是認してかかるのか、やはりそこを何とか改善しようとするのか、その辺が首都機能移転問題の根本の問題ではないかと思っております。
  17. 平本一雄

    参考人平本一雄君) 御質問に順次お答えしたいと思います。  まず、移転先の規模についてでございますけれども、私はできるだけ小さい新首都首都機能移転都市が望ましいと考えております。これは、ドイツの首都移転日本首都移転は逆だろうと考えておりまして、ドイツは非常に地方分権が進んでおりますし、また宗教的な問題もありまして、歴史的にもいろいろな地方がばらばらにある状態でございますので、これを統合しようという形で今回のベルリンの首都移転がなされております。したがって、わずか三十万人のボンから三百五十万人のベルリンに首都機能移転がなされたわけです。  日本の場合は、東京首都圏、約三千万人ございますが、ここに余りにもすべてのものが集中し過ぎた。いろいろ私ども調査しましたら、パリも中央集権だと言われておりますが、パリに比較しても東京の方が余りにもいろいろな、すべてのナンバーワン機能が、日本のナンバーワン機能集中し過ぎております。こういう首都はどこにあるかといいますと、大体開発途上国の首都がこういうようなパターンをとっておりまして、先進国はこういうパターンを一般にはとっておりません。  したがいまして、この集中し過ぎのところをもう少し何とか、政治・行政機能は別のところへ持っていって全体に国土の均衡を図りたいということでございますから、ドイツと逆のパターン、いわゆるボンくらいの三十万人とか二十万人ぐらいとか、こういう小さな首都、すがすがしい首都に移すべきではないかなと思っております。  その場合、また予算はどれくらいでどのくらいの時間がかかるかということでございますが、これは審議会の資料で二分の一ぐらいの中央行政機能を移した場合ということで、公共投資三兆円、民間投資四兆五千億、合計七兆五千億という数字がございましたが、規模的には私はこれくらいかなと思っております。  ただ、これでも少し費用がかかり過ぎであると考えておりまして、ボンの場合は、ボンに戦後首都機能が移りました場合、そのときにはボンは十万人ぐらいの都市でございました。その後、首都になりまして三十万ぐらいになったわけです。いわゆる核となる地方都市があって、そこの郊外に首都機能を移すことによって新首都ができたわけでございますが、日本の場合も核となる小さな地方中小都市、それを使いつつ新しい首都機能移転をやればいいと考えます。そうしますと、今言いました七兆五千億もかけずに、これは金額はちょっと試算しておりませんのでわかりませんけれども、もっと軽微な費用で都市建設というものはできるのではないかと考えます。  それから、どのくらいの時間がかかるかということでございますが、まず最初の国会都市は、当初予定されている十年ぐらいの後にやはり建設すべきだと思っております。その後、二十年ぐらいでこの二分の一規模のものを概成、大まかに完成させる。そして、三十年で熟成させる、大体都市として十分な活動ができるようにしていくというものではないかなと思っております。  それから、東京との比較で首都機能をどう見るかということでございますが、先ほど発言させていただきましたように、東京経済首都として世界都市化を目指すべきだと思います。そして、そのために民間が新しい首都機能移転都市の方には行くということは考えない。新しい首都機能移転都市はあくまでも政治・行政機能中心であるべきでございます。  それと、あと、新しい都市のあるべき姿としまして、極めて高度なIT都市であるべきと考えております。たまたま私、マレーシアのサイバージャヤと呼ばれますIT都市のマスタープランづくりにマレーシアへ行っておった経験から言いまして、日本はかなりのIT都市を今回の首都機能移転でつくるべきと。そして同時に、環境共生技術をそこにフルに、これも研究開発して、両方の要素を持った都市建設を行うと。日本はいろいろな技術ですぐれた国家でありますが、それぞれの個別の技術を総合的にシステムとしてつくり上げるのに日本人は余り得意でない。個々の技術は非常にすぐれておりますので、この首都機能で、新しい都市づくりでそれを総合化するノウハウを身につけて、それをアジア各国の都市づくりのモデルとしていったり、また日本の新しい産業がこれから成長するための一つの起爆剤にすべきではないかと考えております。  以上でございます。
  18. 八田達夫

    参考人八田達夫君) まず第一の御質問で、諸外国には政治の中心と商業の中心が別なところがある、それについてどう考えるかという御質問でしたが、まずヨーロッパでいえば、ロンドンもパリも政治の中心と商業の中心が一致しております。それから、ベルリンは特殊な政治的な理由によって分けられていましたが、今やこれも一致しようとしています。  それで、分離しているのは、例えばオーストラリアですが、これはメルボルンとシドニーの確執のあげく政治的な妥協としてキャンベラを選んだという事情がございます。それから、アメリカは、もちろん連邦政府として南と北のちょうど中間につくるべきだという、これも非常に政治的な理由からほとんど何もないところに人工的につくったという背景がございます。  したがって、ある政治的な理由で最大の都市から離れたところにつくるということはあるけれども、自然発生的にそれがいろんなメリットがあるから、政治的以外のメリットがあるからという理由でつくられたことというのは余りないと思います。  それで、ニューヨークとワシントンでありますが、私も家内がニューヨークに住んで私がワシントンに住んで毎週行ったり来たりということをやったことがございます。それで、三十分置きにシャトル便が飛行機で出ていて、そしてそれを見ていますと、結構テレビのキャスターとかそういう人がいっぱい乗っているんですね。要するに三十分置きに行き来している。そして、もう膨大な数の人間が油を使って時間を使って行き来している。これはむだ以外の何物でもないと思いました。  それで、しかもフェデラル・リザーブ・バンクでも実際のオペレーションは、買いオペや売りオペのようなことはニューヨークでやっているわけですね。それをワシントンから指令を出してやって、その連絡にも結構大変な努力を払っている。これはもうニューヨークにつくった方がはるかに能率がいいと思います。  それから、教育でありますが、これは話をもうちょっと後ろから引きますと、とにかく東京というところは都市圏の大きさでは、大体人口の大きさがニューヨーク、コネティカット、ニュージャージーの倍あります。東京の一都三県と同じ面積を向こうでとるとこっちの方が人口が倍です。それから、ニューヨークの方がパリよりも大きいですし、ロンドンよりも大きいですから、東京は圧倒的な大都市なんですね。これがそういうことが可能なのは、やはり我が国が誇るべき大量通勤交通機関が発達している。それによってこれだけの人口首都圏はサポートしている。  ところが、残念なことに都心の集積度はほとんどない。これはいろんな計算がありますが、私のちょっと古いデータでは、東京の都心の就業者密度というのはニューヨークよりも低い。それから、夜間人口に至っては七分の一である。千代田区で皇居を除く地域とニューヨークの都心とを比べると七分の一だ。だから、夜も昼も東京の活用度は低い。全体が大きいのに真ん中が利用されていない。これはやはり東京のポテンシャルを十分生かしていないと思うんです。  それで、日本じゅうの人が東京の大学で勉強したいと思っている、あるいは東京にある国立大学で勉強したいと思っている。それで、東京にある国立大学は非常に難しい。それならば、いっぱい東京につくればいいじゃないかというふうに思う。そうして、地方に大学をつくるということも、地方でもっていい大学があったらそれはそれでメリットがあるわけですが、東京に来たいという人もいる。そうして、学生のときにいろんな外資系の会社でインターンや何かをやりたいというような人もいる。そういう人はどんどんやらせればいいじゃないかと私は思います。そこに需要があるのなら、いろんな選択をしたい人にその自由を与えたらいいと思います。  それから、他国の都市、例えばソウルなんかがハブ空港を持って、それからいろいろなアジアの国がハブ空港を持とうとしている。東京だけがハブ空港がないのはちょっと困るのではないかというのは確かに一つの問題だと思います。しかし、ハブ空港があること自体が私、そう言われているほど大きいことかなという気はしています。そこを素通りしますから。  むしろ、アジアと競争するときには、やはり先ほどみたいに都心の利用度が低い、土地の利用度が低いというような町ではだめで、ここを十分に立体的に活用できる。そうして立体的に活用しても混雑をきちんと制御できる。それで、余りに人がいっぱい来るような会社じゃなくて、人が来ないような会社が十分来る、そういうようなシステムを先ほどの混雑料金のような形でやるということが必要だろうと思います。そういう都市機能としてきちんとした機能を持つかどうか。建築のさまざまな制限を緩めて、そうして交通を十分充実させる、そういうことができるかどうかによっていると思います。  最後に、じゃ、そのための一応基本的な手段として、やはり土地収用法をきちんとすべきで、時間が短いところで余り言えませんが、補償金を私は三割ぐらい市場価値よりも高めて、そうして土地収用のプロセスを早めるべきだろうと思っています。当初からそういうことをやって早めて、東京の公共投資を高めるべきだと思います。  それから、何といっても羽田と東京都心を結ぶ鉄道が一本で二十分で行けるというものがないということは、地方の人にとってこんな不便なことはないと思います。これを改善して都市機能を高めるべきだと思います。  最後に、ITについてですが、ITが発達することによってフェース・ツー・フェース・コンタクトの重要性がかなり減るのではないかという議論です。そして、実はそのとおりだと思います。それはしかし、物によるんですね。例えば、今まで役所に行って資料を下さいという、それをわざわざ行ってたくさんもらってきた、そういうことはもう一切必要なくなる。もうインターネットでもってできるようになる。ところが、実際に、例えばこういうところで多くの方とお話しするとか、それから相手の人と交渉するとか、ブレーンストーミングをする、そういうこと、あるいは夜一杯飲みながらいろいろ天下国家についてしゃべる、そういうようなことというのはどうしてもフェース・ツー・フェース・コンタクトが必要になる。  そうすると、これからは、ITが進めば進むほどどういうことが起きるかというと、今までのようにフェース・ツー・フェース・コンタクトでなくてもよかったものは東京からどんどん外へ出ていく。郊外へ出ていくかもしれないし、ほかの町に出ていく。そうして、東京には本当にフェース・ツー・フェース・コンタクトでなければならないもの、ブレーンストーミングであるとか本当に議論をして知恵を絞る、そういうことが残るというふうに思います。そして、あたかもワープロが発達したら我々は書く時間がどんどん減ったのではなくて前よりももっと物を書くようになったのと同じように、知恵を絞る仕事に東京は特化して成長していくだろうと思います。
  19. 有馬朗人

    ○有馬朗人君 ありがとうございました。
  20. 長谷川清

    ○長谷川清君 お三方、本当にありがとうございます。  先ほどの質問を聞いておりまして大分わかってきましたけれども、石原参考人にまずお聞きしたいのは、東京一極集中のいろんな弊害とか問題はまだ残っていると、こういうお考えでしたね。そのこととその後の、これが答申されて以降の変化等々は直接関係があるわけではなくてそれはそれと、こうなっているというような解釈でしたが、石原さん御自身として、東京の課題は東京として解決がされると考えるのか、いわゆる多極多心型や規制緩和やいろんなことの策で。そういうふうにお考えか、あるいはやはり国会移転等なくしては、これが伴わなくしては東京の課題は解決しないと、こうお考えか、いずれに軸足があるか。都知事にまで出られたお方ですから、東京は恐らく自力で変わり得る、こういう視点もあるのではないかと、こう思いますが、その辺が一つです。  それから、平本さんにお伺いしたいのは、先ほどのお話での費用と効果という点がございました。それで、約十万人ぐらいのということで、四兆円使ったとしても効果では十兆を超える効果があると、こういうお話でありましたが、一方においては、費用と効果という点においては、例えば、定義としまして移転をする対象としては国会と行政と司法、その中核的なものということになりますと、対象の人員は大体五十六万人ぐらいになるのではないか。先生は先ほど十万人というお考えがありましたが、その辺の数字のとり方と、それから、開発面積は大体八千五百ヘクタールぐらいが必要である、そういうことを前提にした総費用が大体十二兆三千億とか四千億という試算があります。  これを適用してまいりますと、いわゆる費用と効果という比においては、それぞれの、今答申が出されております栃木福島地域においては効果としてはマイナス四兆五千億と出ている。岐阜・愛知の地域においてはマイナス六兆二千六百億と出ている。三重・畿央の地域においては六兆三千三百億。つまり、費用と効果という点においてのその比の効果はマイナス、逆に。先生のお話では十兆プラスだという効果。これはえらい差だと思うんですが、そこら辺の問題について、これはどういうものか。そういう点、もう一つの方の極端ないわゆる試算ですね、それをどのようにお考えか。  そのことと比較をいたしまして、八田参考人は、先ほど首都集積の利益という、例えば、さっきのような効果という中に、首都圏の三つの環状道路、これが大体九・一五という数字が出ております。それから、高速道路の中央線の新宿、王子、あの線ですね、これが三・四三。ところが、これをそれぞれに置いた場合、栃木福島の場合は〇・四ぐらいですね、岐阜・愛知は〇・三、三重・畿央が〇・三。これまたえらい違いですね。恐らく八田参考人が言われていたのは、いわゆる集積的利益というのはこういうことをも言っているのかなと、こう感じるわけでありますが、例えばの話ですよ。  そこら辺の、お二人には同じ質問なんですが、費用と効果と、こういう点について大分イメージ、数字が違いますので、お答えをいただきたい。
  21. 石原信雄

    参考人石原信雄君) その後の経済財政状況変化等を踏まえまして、東京改造というものが、いわゆる首都機能移転しなくても状況変化によって改造が可能かどうかというお尋ねだと思います。  今回の首都機能移転論議が起こった背景には、先ほど申し上げましたように、東京への諸機能が余りにも集中し過ぎる、そのことによって首都東京においていろんな問題が起こってきている、と同時に全国の各地が衰退していく。いわゆる一極集中の結果として他の地域が衰退する。こういう傾向を改めるには、首都機能東京以外の地域に移すことが必要ではないかというのが今回の首都機能移転論の出発点だと思います。  そこで問題は、東京自身機能改造というものが首都機能移転なしにでもできるのではないかというお尋ねではないかと思います。  確かに、地価の動向などは、いろいろな事情があるにしても、とにかく現在はかつてのような高騰という事態は全く消えてしまいまして、むしろ地価の下落がいろんな問題を起こしているということでありますから、その限りにおいては、現状では首都機能移転論の一つのきっかけになった現象がなくなったということは言えると思います。  しかしながら、先ほど八田参考人の御意見などにもありましたけれども、やはり一つ都市の規模の利益がさらに企業集中を呼ぶ、それによって企業がより企業経営がやりやすくなるという、そういうメカニズムが実はあるんだろうと思います。そういうこともあり、また政府機能が引き続き東京に存在するということもあって、私は、地価動向は変わりましたけれども、もろもろの機能東京への集中傾向というのは決して変わっていないんじゃないか、スピードが速いか遅いかはありますけれども、基本的な流れは変わっていないんではないかと思います。  というのは、最近でも、大阪に本店を持っておった企業東京本社を移しているというところは結構少なくありませんし、そういう傾向を是とするのか、何とかこれを食いとめるというか、全国の各地域が、できることならなるべく均等に発展するような方向を志向するのか、そういう基本政策、基本的な政策理念というものがあると思いますけれども、いずれにいたしましても、私は、その後の経済情勢変化はありましたけれども、東京企業とかあるいは文化とか情報とかいろんな機能集中する傾向は変わっていないと思います。  そうした中で、この傾向をそのまま続けた場合には、やはり東京と他の地域との発展の格差というものは一層広がっていく可能性があると思います。そういうことに何らかの変更を加えようというのであれば、やはり首都機能移転という問題は、これからも引き続き検討の必要性のある課題ではないかと思います。
  22. 平本一雄

    参考人平本一雄君) まず、先ほどの移転規模の問題でございますが、四兆円という話、これは十万人の規模とそれから五十六万人の規模との相違でございますが、審議会の方で想定しております十万人といいますのは、国会及びかなり多くの行政施設、これを中心移転するものが十万人でございます。そして、五十六万人はそれに対するサービス人口やいろいろなもろもろの都市活動に必要なものもひっくるめて、都市として成熟させていった場合が五十六万人ということでございます。  それで、十万人の場合は先ほど約四兆円と申しましたが、五十六万人の場合は……
  23. 長谷川清

    ○長谷川清君 十二兆三千億ぐらいです、試算はね。
  24. 平本一雄

    参考人平本一雄君) はい。それで、それにつきまして経済波及効果を別途試算しておりますが、その場合には三十二兆二千億でございます。そういう規模でございます。  それで、この面積等も大体この三つのケースがございますが、そのレベルで私、考えておりまして、既存の都市を利用することによってそれ以下にとどまらせるのがいいのではないかと考えております。  それから、移転効果のマイナスということでございますが、この移転効果のマイナスにつきましては東京都が分析したものではないかなと思いますが、この分析の仕方につきましては、極めて都市計画的なレベルの問題でありますとか、それから計量的な計算が可能なものに限って分析しておりまして、そこでプラスの効果とマイナスの効果の相殺を行った結果、出ている数値ではないかと思います。  これはすべて必要な効果、いわゆる定量的な形で計算できない定性的なものがかなりございますが、それもひっくるめて考えた場合には、マイナスというよりもかなりのプラスになると私は考えておりますが、これは定量的な試算というのはできない部分がかなりございますので、一概にこの数字がどれくらいに結果としてなるかということは言いづらいところがございます。  先ほど私、お話ししましたように、国政を改善させる、改造するような効果というのはなかなか定量化できないというところに分析のネックがあるのではないかなと思っております。  以上でございます。
  25. 八田達夫

    参考人八田達夫君) もし長谷川委員の御質問からちょっとずれたとしたら御指摘いただきたいと思いますが、まず道路の、例えば圏央道について投資額が非常に大きいということがございますが、東京の場合には、今の道路公団の建てたものの料金というのは、場所によって値段に差をつけるということはできないわけですけれども、やはり東京全体、基本的には混雑のあるところは料金は高く、混雑のないところは安くというのが道路の料金制度の本当は基本であるべきだと思います。そうすると、東京道路は確かに非常に高い公共投資がかかりますが、その後、これを回収することも可能であると思います。  それから、集積のメリット自体についてなんですが、国土の均衡ある発展ということはよく言われるんですが、これは私が思うには、要するに産業構造を均等に発展させるということと同意義だと思うんです。  先ほど、全国各地が衰退しているというふうにお二方ともおっしゃいましたけれども、先ほどの統計でお示ししたように、決して地方中枢都市が衰退しているわけではございませんで、札幌も仙台も福岡も基本的には大発展いたしました。そして、この傾向というのは東京地方じゃなくて、大都市とそれ以外です。そしてこれはやっぱり産業構造が一次産業、二次産業、三次産業となって、三次産業で大都市が今伸びている、そういうことの反映にすぎないと思います。  したがって、それを否定しようと思えば、結局は産業構造が変わることを否定する。いつまでもずっと農業でいようよ、いつまでも農業と工業だけでいようよということになる。したがって、国土の均衡ある発展を促すということは、最初から目標として間違った考えだと思います。  そして、これは私、一時、これを言い出した理論家はだれだろうと思って、それで反撃してやろうと思って探したことがあるんです。要するにいろんな人に言われて、やっぱりこれは国会議員の先生方だろうと。各地方でもってバランスよく発展していかないと困るということなんだろうと、それでなるほどというふうに思ったわけです。  もう一点だけ申し上げておきますと、地方が発展する手段として一つ何があるかというと、例えば新横浜とか新大阪とかをごらんになったらわかるんですが、物すごい発展をするわけですね。元来の横浜駅よりも新横浜の方が発展が激しい。大阪も新大阪が大変な発展です。要するに、東京に結びついているということは地方を非常に発展させる。  したがって、例えば空港が、今のように羽田に行くのに、行くのは車でも行けますが、帰りはもう本当にリスクをとらないといけないというような状況じゃだめで、やっぱりこれをなるべく速く行けるようにする。それから羽田も増強して全国各地に大変な頻度でもって行けるようにする。そういうことが実は東京のためにもいいけれども、地方にとってもいい。東京に来る費用が時間費用の面でも金銭費用の面でも安くなる。そうやって東京地方が一緒に発展するということがこれからの望ましい姿じゃないかと思います。
  26. 長谷川清

    ○長谷川清君 ありがとうございました。
  27. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  三人の先生方、本当にありがとうございました。  私は、初めから首都移転には反対という立場で考えてまいりました。国会で決めたのだから移転ということではなくて、今の時点でやはり是非論ですね。これを議論して、そしてやめるなら国会が決めてやめる、それを早くやった方がいい。そうでなければ、候補地が自分たちの宣伝のためにどんどんお金を使う。東京だって使っている。そういうことで、これまたむだだということを主張してまいりました。ですから、きょうのような機会は大変いい機会だなということをつくづく思っております。  一つは、国会で決めたことだけれども、今どれだけ国会の中に熱意があるのか。もともとあったと思いませんけれども、かつて賛成されていた議員の方々もやはり考え直しているという状況もあると思います。特に、今日の財政状況のもとでこれでいいのかということがあると思うんですね。それからまた、東京にとっていいことなのかどうか。何しろ東京自身が反対だというふうに述べているということもあります。それからまた首都圏の県あるいは主要都市、ここも反対しているということもあります。  それからまた、国政の改革のために契機になるという意見もあると思うんですね。しかし、そのことのために移転を契機にということが果たして妥当なのか、まじめな議論なのかということも言えると思います。ですから、こういうことを考えたときに、私は相当非現実的だと思っているんですよ。  例えば、かつての国土庁が示した案の中には、政党本部がその中に移転するとあって、そこの移転に伴う職員が何人ということも書かれているわけですよね。しかし、一つ一つの党に聞いてみると、移転するつもりは全くないわけですね。それから、大使館だってそうなんですよ。大使館に一つ一つ聞いたって、イタリア大使は私たちは絶対動かないというし、アメリカ大使館だって動くつもりもないと。そうすると、大使館で動くというところは一つもないんですよね、聞いてみても。大臣に聞いても、確認されているのは一つもありませんという。そうすると、非常に非現実的な話なわけですよね。  ですから、私はこうしたもとで石原先生と平本先生にお伺いしたいのは、やはりこういう状況のもとにやっぱり移転が必要だという強力な論理ですね。これだから移転は必要だというそこのところを、これまで言われていると思いますけれども、改めてお伺いしたいと思います。  それから八田先生には、今日的な反対論の強調点は何かということ、それをお伺いしたいと思います。  以上です。
  28. 石原信雄

    参考人石原信雄君) まず、今、委員御指摘の点ですが、私、先ほど申し上げましたように、候補地として選定された地域皆さんは、この国会等移転の議論がその後の状況変化で、国政の場でもまた一般の論調の面でも大きく変わってきているということで、非常な不安を抱いておられます。  そういう意味で私は、もともとこの問題は、現在の財政危機ですとか地価動向とかいうことだけではなくて、これから百年先、二百年先、この国の首都というものはどういう形が望ましいのかというロングタームでの議論が基本だと思いますので、そういう意味を踏まえて、いずれにしてもこの問題の扱いをどうするのか、やはり政府及び国会として一つの方向を示していただくということが非常に必要ではないか。  私は、移転審議会委員として現地調査も行い、いろんな現地のヒアリングも行った一人として、どうもどっちに行くのかわからない状態で置いておくということは、何とも候補地選定に御協力いただいた地域皆さんに申しわけないという気持ちにさいなまれております。そういう意味で一つの方向づけを、進むにしても退くにしても、方向づけをしていただくということが大切じゃないかと思います。  そういうことを念頭に置きながら、この首都機能移転論議というものをもう一度思い起こして、この時点で今後を展望して、そもそも首都機能移転の議論というものがこれからもやはり議論に値するのかどうかというお尋ねだと思いますが、私自身は、この国のいろんな構造、社会的な構造、経済的な仕組み、いろいろなものを考えますと、どうも今のまま東京にいろんな機能集中し、もちろんそれとの関連で地方の大きな都市がそれなりにその地域集中しているという現象、この流れがそれでやむを得ないんだ、それがいいんだというふうに割り切っていいのだろうか。例えば関西のその後の全体的な地盤沈下、あるいは九州とか北海道とか東北とかの状況、こういったものを見ていますと、この国土の流れというものをそのままにその流れに任せていいのかどうか、どうも疑問を感じます。そういう意味で、私は、首都機能移転の議論とこの国の国土構造のこれからのあり方の議論は、やはりここで少し長期の視点で御議論をいただきたいと思います。
  29. 平本一雄

    参考人平本一雄君) まず、国政改革自体は本当に今必要なのかということでございますが、地方分権一つとりましても、分権委ができましてかなりやってきておりますけれども、非常に不十分なものであると思います。財政の問題は一切手がつけられておりません。かなり抜本的な地方分権等の諸改革を進めるためには、まだこれからやるべきことがかなり残されておりまして、そのためには、こうした首都機能移転と同時に改革すべきであると考えております。  それと、東京都周辺及び周辺市町村も反対ということでございますが、これは例と言えるかどうかわかりませんが、例えばある都市から、そこで非常に活発な活動をしていた企業がよその地域に出ていくとすればどこの都市でも反対するわけでございますから、常に地元というのは反対するのは当たり前でございます。  それから、これはドイツの場合も、ボンも大変反対いたしました。そのため、ボンからベルリンへの移転決議というのは本当に小差でございました。しかし、現在、ベルリンがどうなっているかといいますと、当初、大使館も余りベルリンに移らないではないかということもございましたが、実はベルリンに当初予定された以上に各国の大使館がどんどん移転をしております。それと同時に、ボンとベルリンの首都機能施設自体も、できるだけフィフティー・フィフティーということが当初考えられておりましたが、ベルリンに移転して以降は、フィフティー・フィフティーがだんだんベルリンの方にどんどん新たに移転する機関がふえてまいりました。当初、参議院はボンに残ると言っておりましたが、参議院もベルリンに移っていきました。したがって、これは、こういったものは一たん決定いたしましたら、大使館にしましても当然移っていくものと考えておりますので、そういったところは問題はないのではないかと思います。  以上でございます。
  30. 八田達夫

    参考人八田達夫君) 今のは、やはりベルリンじゃなくてどこかまた別な小さな町に移ったとしたら、どこも移っていかなかったんじゃないですか。やっぱりベルリンの魅力でさまざまな大使館が移っていったので、それと同じ魅力は東京が持っているんだろうと思います。  さて、御質問は、要するに首都機能移転反対論という今日的な意義は何かということですね。  私は、実はバブルの真っ最中に、東京一極集中何が悪いというのを日経新聞の「やさしい経済学」で書いたような人間ですので、今不況だから移転反対というのではないので、今日的というのはなかなか言いにくいんですけれども、強いて言えば、今やむだな公共投資はやめようという時代である、それなのに首都移転をしてどういう示しがつくんだろうか、ほかの地方で公共投資を節約するときに、どういう言いわけができるんだろうかというふうな点が大きな問題だと思います。  それから最後に、このことに関して、私も石原参考人と全く同じように、後で経済がまた回復すれば東京地価は上がると思います。そうして東京への集積は続くと思います。その地価が上がるということが最大の集積抑制のブレーキだと思います。自然のブレーキです。そうして、その地価を払っても来れるというところが来る、そしてそれではとても耐えられないという重厚長大の会社は出ていく、そういうメカニズムがきちんと機能すると思います。それを政府がいろいろやるとろくなことがないと思います。  それから最後に、地方の衰退、発展のことですが、例えば福岡が発展したというのはこういうことだと思います。一つ理由、私は北九州の小倉出身なんですけれども、北九州の小倉でソケットや何かをつける配線の工事をやる会社の社長が友達にいるんですが、その人なんかは、今は鹿児島でも工事をする。そうすると、それの契約関係、それから仕事を見つけること、全部それを福岡でやるというわけですね。これは昔では考えられなかった。福岡に各社が支店なり本店を置いて福岡で全部やる。ということは、通信費が安くなって交通費が安くなったので、地元の北九州だけではない、要するに勢力範囲が九州一円に広がった。そのときに、各地点でばらばらにやるんじゃなくて、九州中心地、福岡でやる。要するに、これはまさにミニ東京なんです。  そうして、仕事によって九州の範囲がちょうどふさわしい最適な営業規模である場合もある、ある業種については日本全体がふさわしいときもある。そうして、そのような地方でもって交通費が低下したり通勤費が低下したために、地方中枢都市が伸びていった。それが仙台だとか札幌だとかの成長の根本原因だろうと思います。したがって、これは、成長したら東京だけが発展して向こうは消えていくんだろうというふうには私は考えておりません。
  31. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 御三方の先生方にちょっとお尋ねしたいと思います。  国会で決めただろう、あるいは政治家が言い出しただろうと、その起源を探る御発言がございましたけれども、今私ども、たまたまこの国会等移転特別委員会出席している議員の大半は、やっぱり率直に言って関係者なんですね。賛成、誘致をする地域の方々と、それから、私は東京ですから反対をする立場というように、もろに関係者だけの委員会になっているんですね、ここずっと。  そして、率直に言って、私は国会移転論というのは国会の中では冷えていると思っていますよ。私は、もっと冷えているのは国民じゃないだろうかと。要するに関心は、誘致をするところの方だけ、それから持っていかれそうな東京だけ、こんなような感じがどうしても思えるんですね。しかし、それでもこの問題がずっと続いていますから、石原参考人のおっしゃるとおり、やはりタイムリミットに来たならばというところはどうしてもお尋ねしなくちゃいけない、こう思います。  それから、過去の歴史を見ましても、やっぱり長い日本の歴史の中で、首都移転というのは、考えてみれば当時は遷都。皇居もしくは天皇陛下のおわしますところの同時の移転ということだったんでしょうが、理由はいずれも、疫病がはやったりあるいは縁起が悪いとかというような禁忌といいましょうか、そういう理由だとか、あるいは権力の移行とか、そういうものがきっかけで移されているので、人為的といえば人為的ですけれども、今日のような平穏無事のときにいきなりすぱっと首都を変えるような議論というのは、日本の過去の歴史にはなかったと、こう思うんですね。  ドイツのベルリンのお話が盛んに言われますけれども、あれはもともとベルリンに首都があったということからいいましても、先祖返りではありませんけれどもごく自然に私たち見えますが、しかし、さりとてそれぞれの国の事情、歴史、やっぱり違うと思うんですね。  私は、東京がずっと過去、特に戦後にかけて、もう明治百年、やはりすべてのナンバーワンが集中してきたという話もございましたけれども、やっぱりきっかけは人口集中だったように思うんですね。田中角栄先生の国家改造論みたいなああいう全国総合開発計画を打ち出したように、人口集中東京への集中を防ぐというところから発したように思うんですけれども、その後、とにかく財力、情報、教育、もろもろのもの、集中してナンバーワンが東京にあり過ぎるという反論が出てきましたけれども、そのあたりから僕は、どうしても東京に対するアンチ東京東京のおかげでうちは弱くなった、東京のために私たちは得べかりし利益を失っているというような被害者論、感情論というのは結構根深いと思うんです。  ですから、東京が余り発言しないで、むしろ国民の総意に任せようというのが東京の識者の今統一的な認識のように思うんですけれども、これも私の考えにすぎません。  同時に、今はもう展都という部分が行われていまして、例えばさいたま新都心にかなりの部分の首都機能の一部分が移転をしました。こういうことは現にもう実験的に行われておりますし、横浜新都心にも同じようなことが行われているわけですから、このあたりは知恵の出しどころじゃないかと思うわけです。  そこで、先生方にちょっとお尋ねしたいんですが、共通でお尋ねしたいのは、一つは、きょうお話しになっておりますけれども、今回の国会が、あるいは審議会が議論してきたことは首都移転とお考えでしょうか、首都移転。となると、首都とは先生方にとってはどういうものを指すとお思いでしょうか。首都機能と言っているんですね。あるいは国会等と言っているんですけれども、国会が移れば、三権の機能国会にかかわる機能は同時に移らなくちゃいけないというところから首都機能と言っているようですけれども、私はどう見ても首都だと思うんですけれども、この首都というのはどういうふうにお考えなんでしょうか。  それから、ほかの国との比較というのはどれだけ意味があるものなんでしょうか。日本の歴史、日本のアイデンティティー、いろんなものを含めて、首都というものは何か、外国との比較はどういう意味があるのか。これをまず三先生からお尋ねしたい。  それから二番目に、八田先生にお尋ねしたいんですけれども、結局、石原先生が審議会に入って議論したときも、番たびその時点での経済的な展望というのをしっかり見られている方々がいて、土地が上がり過ぎたからやるべきじゃないとか、あるいは景気が後退したからやるべきじゃないとか、そういう議論があったと。しかし、それを超えて、百年という長期、二百年という長期のタームで見て国家的な戦略からやるべきだという議論がありましたけれども、それまた、考えてみると、経済的なメカニズムの中で物を考えられているようなんですね。  平本先生がおっしゃったように、跡地を利用してとおっしゃいましたけれども、跡地を利用すればなお一層東京地価は下がりますね。そういうことからいえば、今資産デフレを何とか食いとめようというような現時点のTPOにはそぐわないような気もするわけですけれども、そこで、経済メカニズムでこれを考えていいのか。要するに、投資をすればその倍の投資が返ってくるというような費用対効果であるところの経済効果を見るということは、イコールもう公共投資ですね。  それから、さっきお話がありましたけれども、公共投資というんなら、今は文字どおりデフレの危険性がなおありながら財政構造改革をしなくちゃならない日本経済情勢の中で、一体この論をいつまでもしていていいんだろうかと、こう思うわけです。一たんは橋本総理が提案し、また橋本総理はみずからが財政構造改革法を凍結して、このプロジェクトも一たんは凍結されているんですね。しかし、それをまた凍結を解除してにわかに蘇生させていいんだろうかというのが意見なんですが、この首都機能移転経済メカニズムの中で見るべきなのかどうか、このあたりをちょっと教えていただきたい。  それから、もう閉じますけれども、平本先生にお尋ねしたいんですけれども、地震対策東京には同額投資をすべきだというお話がありましたけれども、まあ二兆とか四兆という額ならば考えられないわけではありませんし、単年度で二千億というんなら考えられないものでもありませんが、今政府が考えている究極的な移転はやっぱり十四兆と考えられているんですけれども、それで計算すると七十年かかるんですね、六十年かかるんですね。  ですから、そういうことを小出しにやっていくのが本当の首都機能移転の建設でどれだけ実効性が上がるんだろう。ちなみに申し上げますと、二千億というと都庁舎一個の建設費です、土地が入らないで。その点だけは私はぜひお尋ねしたい。  それから、地震対策は、八田先生からも御指摘がありましたし、また石原先生からもお話がありましたように、阪神にできたらどうだったんだろうと今思うんですけれども、そうなると東京に、やっぱり首都機能移転にかかわらず首都機能移転と同じぐらいのとは言わないまでも、相当の地震対策費を投入しないと、そしてまたバックアップ機能でそれをカバーしないとならないと思うんですけれども、このあたりの御意見をいただきたいと思います。  済みません、長くなりました。  それから、三先生にもう一つ最後に共通でお尋ねしたいんですが、石原参考人は先ほど早く結論を出してやらなくちゃいけないとお話がありました。私もそう思うんですね。タイムリミットにやはり来ていると思うんです。さすれば、現下でこの国家百年の計を論ずるのならば、しばらく国会移転あるいは首都移転論議は凍結すべきじゃないかという、私は凍結宣言を政府は出すべきじゃないかと思うんですね。ましてや、扇国土庁長官が誘致にお金をかけるとは何事だというお話をしましたけれども、私もそう思うんです。  総論で、あるいは大義で東京から絶対に移さなくちゃならないというお考え方が共通の認識ならば、その方々の御協議で一本にまとめるべきですね。あっちがだめだ、こっちがだめだと言わないで、むしろ共通項でまとめて、国は、審議会三つに絞ったけれども、私たちは岐阜が正しいと思うんなら東北の方々は岐阜に賛成すべきだし、それからまた関西の方ですね、近畿の方も岐阜に絞るとか、そのぐらいの知恵を働かさないと、それを一本に国会で絞れと言われましてもできない、関係者だけで、今ばらばらですよ。強いて言えば共産党さんだけが尊敬に値するんですけれども、党を挙げて反対されている。私のところはばらばらですし、民主党さんは公共事業は反対だと言うけれどもこれは賛成なんですね、賛成の方も大勢おいでになると聞いています。  そこで、今お話し申し上げましたように、凍結宣言はどうだろうか。それから、結論を出す時期が来たんじゃないか。それから、出すならば東京との比較考量というのがあるものですから、いっそのこと国民投票にされたらどうでしょう。国民投票ならば、もう全部の、机の上にメニューももうそろったんですね、反対論、賛成論、現地調査も終わって、後は選ぶのは国民ですよ、よかれあしかれ。利根川を越えようと越えまいと、甲子園の旗じゃないんですから、どこへ行ったっていいですよ。北海道結論出たら、私たちは国民が選ぶのなら潔く北海道へ行こうじゃないですか。それを東京を含めて自分たちで決めろと言うから決まらないんですよ。ですから、申しわけありませんが、その国民投票について、どう思うか。
  32. 角田義一

    委員長角田義一君) ちょっと整理します。  石原参考人はこれから衆議院のまた別の委員会の方にお招きをいただいていますので、御答弁をいただいたら御退席いただいて結構だと思います。
  33. 石原信雄

    参考人石原信雄君) まず、ただいまお尋ね、幾つかございましたが、その一番初めの首都機能移転のその意味、すなわち首都移転なのか首都機能移転なのか、その具体的な移転の機関の範囲というか、内容いかんというお尋ねであったかと思いますが、私どもが首都機能移転審議会候補地選定する当たりまして前提とした首都機能としては、具体的に申しますと、国会、それから政府の中での政策決定部門、すなわち実施部門は外して政策決定部門の本省機能、それから司法の面では最高裁判所は移転対象にする、それ以外の司法機関は移転対象にしない。おおよそそんな前提で議論を進めました。  例えば、まず、皇居ですけれども、皇居の移転は想定しておりませんでした。それから、経済関係で言いますと、日本銀行の移転というのは議論しておりませんでした。そういう意味で、国会審議活動に直接かかわりのある政府の政策決定部門、すなわち本省の政策決定部門と、それから司法では最高裁判所が具体的な移転対象として議論をされました。人によって多少その境目のところはいろいろあると思いますけれども、私どもが議論したのはそういう範囲でございました。  そのようなものを首都と言うのか、首都移転と言うのか言わないのかという疑問もございました。具体的に皇居の移転を含んでいないというようなこともありまして、首都移転ではないと。それから、経済の非常に重要な機能はそのまま東京に残るという意味で、首都移転とは言わないというふうに関係者は一応のコンセンサスがあったように思います。
  34. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 東京首都ですか。
  35. 石原信雄

    参考人石原信雄君) 現在の東京首都でございます。  それから、私に対するお尋ね、ほかの先生方のは一応除きまして、私自身に対するお尋ねの最後のところでございますが、いずれにしても、この国会等移転問題について早く当面の扱い方針を決めた方がいいではないかというお話だったというふうに思います。  私は、一番初めにお願いいたしましたが、ぜひその点は国会としての御方針あるいは政府としての御方針を明快にしていただきたい。確かに、この問題は非常に長期の視点で議論さるべき内容を含んでおりますから、そういう意味で、これからの扱いをはっきりさせていただく必要があると思うのであります。  といいますのは、初めにも申しましたように、平成二年の国会決議がなされた当時、これは率直に言いまして非常に盛り上がったように思うんですね。国会でほとんどの政党が賛成して決議がなされ、政府部内でももう一刻も早くその議論を進めるべきだという空気が満ちていたように思います。それというのも、あの当時のいわゆるバブルの絶頂期で、地価高騰がとどまるところを知らないというようなああいう状況のもとでこの議論が起こったことは間違いありません。その点が大きく状況が変わったこともまたこれ何人も否定できない現実でございますから、そういう意味で、大きな状況変化のもとでこの問題の扱いをどのようになされるのか、私は政府及び国会で早急に方針をお決めいただいて、関係地方団体にも示していただくことが最も望ましいと、またぜひそれをお願いしたいと思います。
  36. 角田義一

    委員長角田義一君) 石原参考人におかれましては、どうもきょうはお忙しい中、ありがとうございました。後の御予定も入っているようですから。  もしほかの委員がどうしてもお尋ねしたいことがありましてまた文書でお願いすることもあると思いますけれども、本当にありがとうございました。委員会を代表してお礼を申し上げます。  どうぞ御退席ください。(拍手)
  37. 平本一雄

    参考人平本一雄君) まず、首都とは何かというところからお答えしたいと思います。  首都とは何かというのは、これは国際的に何か定まった定義があるものではございません。国によってかなりまちまちでございます。そういう意味では、日本独自で考えていけばいいのではないかなと思っております。  私は、首都を概念的に考えますと、国のセンターであるということではないかなと思います。その場合に種類がございまして、経済活動のセンター、それから政治・行政のセンター、そして精神的・象徴的なセンター、いろいろなものがあると思います。東京は現在、今申し上げました三つとも持っているのが現状だろうと思います。  今回の首都機能移転ということを言いました場合に、この中の政治・行政センターを東京から別の場所に移すということではないかなと私は思っております。そういう政治・行政センターと象徴的なもの、経済的なもののセンターが別な国というのは他国にございます。そういう意味では、非常におかしいことではないし、また日本のこれからの国情にそれが沿うものであれば、こういった形態というのもあり得ると思っております。そういう意味で、外国との比較が全く無意味ということではございませんが、日本独自でこれは考えるべきと思っております。  それから、跡地利用につきまして、私はそこにオフィスビルを建てろというような考え方を持っているのではありません。ここを極めて公共的に利用する。例えば、防災のためにも必要ですし、また非常に国際文化的な機能をそこに置く。例えば、可能であれば国連のいろいろな機能をここに集中させて、より東京を国際的にするというような活用策というのは考えられないかと思っております。  それから、地震対策につきまして、一年二千億ぐらいということでございますが、地震対策の場合、やはり問題になってまいりますのは、いろいろな避難用地ですとかまた火災の延焼を防止するためのそういうバッファーゾーンですとか、こういった土地を有するところが一番問題でございます。そういう意味では、霞が関地区も一つの大きな防災機能も持つことになると思いますが、他に官舎用地が都内にいろいろ分散しております。こういったところを利用して、そこに公共的な投資をすることによって防災用地として活用できると非常に意味があるのではないか。それから、そのためには年間二千億ぐらい、そういったものを、この移転跡地を種にしつつ活用して整備をしていくということでできるのではないかなと思っております。  あと、国民投票についてどう思うかということでございますが、今回、推進論、反対論、かなり議論がいろいろなされてきておりますので、こういったものをもう少しわかりやすく国民に周知徹底、広報いたしまして、その結果、国民投票のような場に持っていくということも、新しい民主国家あり方としてあるのではないかなと思っております。ただ、私はやはり国会機能をそのときにどう位置づけるかという問題が残るのではないかなと思います。  以上でございます。
  38. 八田達夫

    参考人八田達夫君) 国民投票に関しては私も賛成でございます。ただ、今の国会決議を白紙に戻すというのもいいと思いますけれども、どっちでも同じ結果になると思います。  それから、首都の定義ですが、私は定義よりも何をどこに移すべきかということに興味がありまして、いわゆる首都機能移転として新しい都市に移さなくてもばらばらに移してもいいんで、政府の役所が、役所によっては東京にある必要がないというものがあると思うんです。基本的には、国民がそこの役所に行く回数、それからその役所の方が国民と会う回数、結局非常にミクロなデータに基づいてやればいいと思います。  研究所でもいろんなさまざまな研究所がありますが、研究所の中だけで基本的には動いているというような場合にはもちろん地方に移せばいいと思いますし、それから裁判所の場合、私どうか知りませんが、最高裁が非常に東京の都民が結局は行く回数が多いとなれば、それは東京に置いておいた方がいいかもしれないけれども、全国で結構ばらばらであるというのならば、全く最高裁をどこかに移してしまっても構わないと思います。そういうふうに機能的に考えて、この東京の大切な土地を一番人が活用できるような役所だけに使わせる、そういうことが必要なのではないかと思います。  さて、このデフレの現在、財政構造改革との関係でどう考えるかという御質問ですが、確かに私がきょう用意してきたのと範囲を超えるんですが、実は去年の秋に東洋経済から、エコノミックスという雑誌で財政再建というのを特集いたしまして私がそれを編集しましたので、そのときの経験で東京に関連して申しますと、要するに財政再建ということは、予算を縮小するということじゃなくて、どのみち将来投資をしなきゃいけない、公共投資しなきゃいけないというものを前倒しして今やる、そうして景気をよくするということが結果的には将来の財政に負担をかけることなく今の経済の刺激をする、そういう性質のものであると思います。したがって、むだな公共投資を地方でやるということはこれは将来も要らないわけですから、そういうものを最初からやるべきじゃない。  しかし、例えば東京には長年、要するに東京の税が払われて地方に投資されて、とにかく公共投資が不足していますから、道路も足りないですし、先ほどの鉄道も足りないですし、空港もまだまだ大きくしなきゃいけない。それから、何よりも都心が活用されていないということは、やっぱりインフラがちゃんと整備されていないということです。特に交通関係のインフラが整備されていない。ここに金を投資するということは将来どっちみち必要なんですから、これは前倒ししてやればいい、そういうことだと思います。したがって、目的によって、場所によって、将来いずれ必要となるかどうかが今のデフレ下では判断基準になると思います。  その際、全国を見た場合に、やはり不良債権があるのは東京大阪が多いんですね。そうすると、不良債権のある土地地価を上げるということが非常に必要で、その地価を上げるために金融的にじゃぶじゃぶするというよりは、やはりそこの利便性を上げる、その土地利便性を上げて地価を上げるということが必要だと思います。あかずの踏切をそのままに置いておくというのは全くむだな話ですし、地下にその鉄道を埋めてあかずの踏切をなくすだけでその周辺の地価はうんと上がる。それは実はアナウンスするだけでも上がる。そういうことを今やるということは、東京の再建のために投資するということはデフレ対策としても一番大切なことで、これは全国にとっていいことだと思います。
  39. 弘友和夫

    弘友和夫君 石原参考人はおられぬようになったんですけれども、先ほど来の議論で、私も、国会がやはり国会決議をして、今進んでいるのは審議会候補地とか、ジレンマが非常に審議会の先生方もあって、果たしてこれ、決めたってどうなのかとかいうような問題があるんで、そこら辺は国会がやはりきっちりしていかないといけないという思いが一つございます。  それはそれとしまして、八田参考人、私も北九州の小倉出身でございまして、ちょっとただ意見が違うんじゃないかなという気がしておりますけれども、小倉も、新幹線が通るまでは非常に福岡と北九州だと、こういうふうになっていまして、ただ、新幹線で二十分でとなりましたら、やはり機能は支店経済というのが福岡に移った。  今やはり何でもほっておいたら、北海道でももう札幌だけだ、九州も福岡だと。私、九州をずっと回っていましても、非常にもうほとんど過疎になっていっている、福岡の中でも。これはやはり、人為的にするべきじゃないという先ほどのお話がありましたけれども、やはり私は、ある程度人為的にしていかないと一極集中というのは余り変わらないんじゃないかなという気がするんですけれども。  それで、先生のこれを拝見させていただくと、国会等が変わっても、要するに東京本社のあるのは移らないと、こう書かれていますよね。これは反対に私どもが今言っていることなんですよね。首都東京が移ったときに、国会が移ったときに、一緒になって東京はがたがたになるんじゃないかという論議があるんですけれども、いや、そうじゃないんですよ、やはり東京東京経済のあれとしてやっていけるじゃないかという。そのことからいいますと、移らないというあれはまさしくそのことじゃないかなという気がするんですよ。だから、反対に言えば、国会が移ってもいいじゃないかということになるんじゃないかと思うんですけれども、それについてのお考えをお聞きしたいと思います。  それから、平本先生の、やはり私は小さな都市にそういうものを移してやるべきだというような考え、私も賛成でございますけれども、そういう意味においてぜひ、これはなかなか先ほどの論議でも、非常に国会もどうせこれいろいろやっていったって最終的には無理だという雰囲気があるんですけれども、やっぱり日本全体のことを考えて、例えば話によりますと、ドイツとかイタリアなんかは世界的な企業がそれぞれの地方都市本社を置いていると。日本だけは東京一極集中しているというような、これはやはり税制面とかなんとかから考えていろいろ分散をしていく必要があると。その中のやはり首都機能というか国会移転じゃないかなという気もするんですけれども、それについて、時間もあれですから、二点お伺いしたいと思います。
  40. 八田達夫

    参考人八田達夫君) まず、私も福岡なんて大した町じゃないとずっと思っていまして、小倉こそが大都市であると思っていましたから、あの逆転現象というのが実に鮮やかな形で起きたわけですけれども、一つのあれは空港がきちんと福岡にはあって、そしてそれが町の近くにあって東京と結ばれていた、それが東京を通じて全国と結んでいた。北九州はそれがなかったということが一つの大きな要因であると思います。  それで、民間は移らない、やっぱり本社東京に残るから、国会が移ったって東京はがたがたにならないよと、多分そのとおりだと思います。日本はつぶれないと思います、国会移転しても。  しかし、実際問題として、例えば今の日本政府がやっていること、それまで政府はいろんな調査審議等を通じて最終的には国会議員の方の資料をつくっているということなんでしょうけれども、これは私の関係している役所で見ても、それは膨大な数の民間の人の意見を聞いて、それから学者の意見を聞いて、ジャーナリストの意見を聞いて、いつも接触しているわけですね。それがなかったらばどうなるか。そうすると、全く役所の中にじっといて世の中のことを考えるということは、本当に世の中のことが全くわからなくなることだと思います。それは、権限がどうのこうのということではない。  基本的に、何が世の中で起きているかというのは、いつも最前線のことを役人はつかんでいないといけない。そして、そのつかんだ役人の情報をもとに国会議員の方たちが意思決定をなさるというその仕組みがなきゃいけない。そこに距離を置くことに何の意味があるだろうかというのを私は思います。いつでも会える、自分の方から、役人の方から出かけていくこともできるし、向こうに来てもらうこともできる、そういう関係こそが必要だと思います。  そして、これは余りに私の限られた経験で言うのはどうかと思いますが、アメリカの政府に行って、エネルギー省にしてもそれからHUDにしても、政府の役人が何となく現実離れしているという印象を持つということは非常によくある。それはただ単にニューヨークにないからという短絡的なことはできないでしょうが、やはり日本の役人の方が民間の人たちと会っている件数がはるかに多いと思います。そして、それはやはり東京という場所にあることが有利に働いていると思います。  以上です。
  41. 平本一雄

    参考人平本一雄君) まず、少し質問以外でも意見を述べたいと思いますが、福岡や札幌が成長した、これは八田先生、大都市、小都市の話で、大都市であるがゆえにというお話をされたんですが、やはり福岡、札幌については、都市の規模もございますけれども、東京の支店経済のそういう集積地であるというのが一番の理由ではないかなと思います。したがって、東京のネットワークに組み込まれた都市は発展するけれども、そうでない都市というのは衰退している。  そうしますと、地方経済あり方として、東京の支店経済でなく発展する企業というのが仮に起きてきて地方で発展してある大きさになったとしても、それは逆に今度は東京に出ていってしまって、またその地方はもとのもくあみというようなことになっているのが現在の日本のありようではないかなと思っております。そういう意味では、地方で生まれ出た企業がやはり地方に定着してそこで大企業に育っていくというような仕組みを日本社会の中につくっていかないといけない。それは、やはり地方分権という形で地方がある程度の自立力、自力発展力を持つような社会的な仕組みがないとこれが可能にならないということではないかなと思っております。  それからあと、世界的企業本社地方に置いているというような例ということですが、今同じようなことを申し上げましたが、これについては、これからかなりIT化が進みまして、これが地方分権と同時に進んでいった場合に、かなり地方に大企業が配置されてしかも成長していくということは可能になるんだろうと思っています。そのためには、現在日本の国の何でもすべての機能のナンバーワンが東京であるという構造でなくて、一部でもいいから東京のナンバーワンをそうでないところに移転して、東京以外のところもかなり日本で成長を示せるんだ、ナンバーワンのところがあるんだという形に日本国土構造を変えることが一番必要なんではないか。これは、地方分権の制度と、それから目に見える形で空間構造として東京以外にある機能においてナンバーワン都市をつくる、それが政治・行政首都ではないかなと思っております。
  42. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子と申します。  大変家計簿的発想でございますけれども、平成二年にこの問題が起きたときは、私が初めて参議院に伺いましてから間もなくのことでございまして、これの賛否については自分としても特に思いませんでしたけれども、昨年、二カ所の候補地、そしてことし一カ所、三カ所を見せていただきましたんですけれども、特に二十一世紀環境が重視される中で、その三カ所とも非常に環境に恵まれたいいところでございまして、そのことだけを見ましても、やっぱりああいうところに移転した方がいいのかなと思ったりしているところでございますが、今お話ございました国土の均衡的発展というのは、どういうことで均衡というかということで少し意見が違うのではないかと思います。  私も福岡でございまして、きょうは福岡県が三人もいたんですけれども、かつて福岡から東京に来ると、御存じと思いますけれども、二十四時間ことこと乗ってきた時代でございまして、今ではもう十時からの会議も福岡から飛行機で来れますし、五時に終わりましても福岡に帰れる。非常に便利がいい状況になりまして、私も今、日勤ぐらいでもできるわけでございます。  それですから、東京に対する距離感というのは非常に狭まりまして、議員もそうですけれども、各自治体の皆さんが陳情に来るとか、あるいは交渉するということも大変便利になった。一方では、余り便利になり過ぎて困ったという人もいるんですけれども、一泊ぐらい泊まりたいけれども帰らなくちゃというようなこともあるんですけれども、余談になりまして恐縮ですが。  そういうことで、大変東京が近くなった。そういうことは、国会がわざわざほかのところに変わらなくても業務というのはできるのではないかというのが一点でございます。  それから地方に、例えば福岡の場合も今や九州全部の一極集中になっておりまして、高速道路が非常に発達をしてまいりました。新幹線も、間もなくというわけじゃありませんけれども、鹿児島まで通るというような状況で、特に高速道路整備されたということで、大分あたりでも子供たちは日帰りで福岡に遊びに来るということで、大変九州全部で福岡が近くなったということもございます。ですから私は、国土の均衡的発展というのはそれぞれの特徴のところ、例えば大分だったらこういう特徴があるから大分に行こう、あるいは鹿児島はこうだというようなことで、そういうふうに均衡的発展という考え方を考え直すということはおかしいんですけれども、そういう考え方があってもいいのではないかと思ったりするわけです。  それで、国会の運営につきましても、昨年も国際会議が福岡であって、宮崎であって、沖縄であったわけでありますから、そういう意味では、日常的にはここでやるけれども、特に議論をする場合に地方といいましょうか、そういうところで政治の会議が開かれるとすれば、もっと国民の皆さんから国会の動きというのが身近になっていくのではないか。そういうことを考えられないかというのを思いますと同時に、今は先ほどからもお話がございましたように国も地方も膨大な財政負担、困難な状況でございますから。とはいいながら百年、二百年を考えて移転を考えなくちゃいけませんから、今の財政状態から発想するということはいけないかもわからないけれども、その両方考えても、なおかつ現在のまま国会移転をしないで運営できるのではないかと思うのでありますけれども、そこらあたりについて先生方の、いや、やっぱり国会というのはこんなものでということでございましょうか、そこらあたりをお伺いしたいと思います。
  43. 八田達夫

    参考人八田達夫君) 国土の均衡ある発展について、ただ比例的に国土が均衡的に発展するのじゃなくて、むしろそれぞれの地域が特色を持って発展する、そういうことならいいのではないかとおっしゃっている、もうまさにそのとおりだと思います。  それで、とにかく私が思いますには、政府が指導して、あるいは主導してある地域を開発する、これで成功した例がない。要するに、それはもう本当に地方としては中央のお金を欲しいですから、例のむつの話もそうですけれども、昔は大分でもそういうことがありました。そういう中央からできるだけお金をとってきたいという気持ちはよくわかるけれども、それらに成功した例がない。この首都機能移転というのは、まさにその一つだと思います。  それで、基本的にはそういうものから中立的にして、そして地方の自立に期待する。そのためには、私は東京都の交通機関の整備ということは非常に必要だと思います。  それから、なお地方で何も起きていないかというと、例えば九州の小倉でいえばゼンリンという地図をつくる会社はあそこが本社ですし、それからそういう大都市がなかった山口でもってユニクロができてこれだけ全国的な会社になった。決して、さまざまな大会社本社東京にあるということが地方会社の創意工夫をなくすということにはならないと思います。私は両立する話だと思います。  一番まずいのは、政府の金を使って意図的にどこかを発展させようとする、これが必ずむだ遣いを生むというふうに思います。  以上です。
  44. 平本一雄

    参考人平本一雄君) 国土の均衡的な発展といいますのは、これは八田先生と私、ほぼ同じ意見でございまして、やはりそれぞれの地域が特徴を持っているということだろうと思います。  東京はやはり世界都市として発展しなくちゃいけませんし、それから福岡ですとかまた鹿児島ですとか、いろいろな都市はその規模ごとに特徴を持っていく。恐らく福岡のような百万都市以上のクラスでは、我が国の中のこれは一番であるというものを持っていないといけませんし、それから九州の中のある中小都市であると、九州の中でうちが一番というものを持っているということだろうと思います。いわゆるすべてミニ東京化では困るということです。  したがって、今は首都機能移転、私は必要で、それを起爆剤として地方分権を進めるべきと考えておりますのは、やはり圧倒的にミニ東京化されている状況、そしてそうしていってしまう中央集権のシステムとか、それから東京の大企業地方企業を全部系列下に置いてミニ東京化していく、こういう状況を何とか変えていかないといけない。もっと地方企業が伸びやかに発展していく、そして地方に定着をしていく、そういう仕組みをつくるべきであると思っています。  今、八田先生がおっしゃいましたユニクロですとかこういったのも、今までの例ですと、どんどん発展すると東京にまた出てきてしまうという例がこれまでであったわけです、ユニクロがどうなるかはわかりませんけれども。そういうような仕組みを、やはり山口にずっと定着して、それがゆえに山口が発展していくというような仕組みに変えていくということではないかなと思っております。  特に、これから高度情報化が進みますと、その情報のハブになっている都市の方がより強くなりますので、これは分権のシステムと同時に地方も伸びやかに発展できる土壌というのをつくるべきであると思っております。
  45. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。
  46. 石井一二

    ○石井一二君 両先生にお伺いしたいと思います。  八田先生、九六年四月二十五日の日本経済新聞にあなたが物すごいおもしろい論文を書かれたような気がするんですが、その中身は、首都移転には総額二十兆円もコストがかかるが、余り効果がない、これは消費税に換算すると八%だ、だからそんなことをやめて消費税を撤廃したらいいという主張をされたと思うんですが、きょうは消費税のショの字も出ませんが、現時点でのその問題に対する、もしこの論文を書かれておれば、どうですかということが一点と、今総理官邸を建てることについてどうするんだ、移転するのであればこんなばかげたことをやめるべきだという意見が出ていますが、それについてどうお考えになっておるかというコメントです。  それから、平本先生ですが、僕は結論からいいますと首都機能移転には反対なんです。それで、推進を主張される方はやっぱりそれだけの責任があると思いますので、学者の机上論じゃなしに、実際現地をどの程度見てどのような評価をされているかということも大事だと思うんです。  それで、ちょっと以下都市の名前を言いますので、行っておられたら別に黙っておってもらったらいいですけれども、そこは見ていないんだというのがあればちょっとこれは見ていないんだと言ってほしいんですが。  ワシントン、ニューヨークですね、アメリカの。それから、ローマ、ミラノ、イタリア。それから、ニューデリーとボンベイ。
  47. 平本一雄

    参考人平本一雄君) ニューデリーとボンベイは見ていません。
  48. 石井一二

    ○石井一二君 オーストラリアのキャンベラとシドニー。カナダのオタワとトロント。それから、スイスのベルンとチューリヒ、バーゼル。
  49. 平本一雄

    参考人平本一雄君) インドのニューデリーのみ見ておりません。
  50. 石井一二

    ○石井一二君 それから、中華人民共和国の北京と上海。それから、ドイツのベルリンとフランクフルトほか、さっきから出ていましたね。それから、トルコのアンカラとイスタンブール。
  51. 平本一雄

    参考人平本一雄君) アンカラは見ておりません。
  52. 石井一二

    ○石井一二君 それから、パキスタン・イスラム共和国のイスラマバードとカラチ。
  53. 平本一雄

    参考人平本一雄君) パキスタンは行っておりません。
  54. 石井一二

    ○石井一二君 それから、ブラジルのブラジリアとサンパウロ。それから、南アフリカ。
  55. 平本一雄

    参考人平本一雄君) 南アフリカは行っておりません。
  56. 石井一二

    ○石井一二君 もうちょっとここらも見ていただいて、最終的に非常に際どいところに、だんだん時間とともにもうギブアップすべきだとかいろいろ意見が出ていますので、私はいろんな角度から反対なんですが、今ここで長い論議をすべきだと思いませんので。御苦労さんでございます。
  57. 八田達夫

    参考人八田達夫君) 総理官邸をつくっておられるのは大変いいことだと思いますし、今の総理官邸、私は何かで入ったのは十年以上前ですけれども、随分古いなと思いました。  それから、消費税に関しては、そこの例えというのは、要するに幾らぐらいの規模のものであるか、この首都移転というのは、ということで使ったわけですけれども、ひょっとしたら御承知の方があるかもしれませんけれども、私はもう消費税は最初の設立のときからもろもろの理由を挙げて反対しておりまして、それはとてもここで短い時間には語り尽くせない理由がありますので、さまざまな賛成論を逐一批判しております。それで、ただそこでは単に皆さんのわかりやすいような例として挙げたということであります。
  58. 石井一二

    ○石井一二君 ちょっと勘違いしておられるので。すぐ終わりますから。  いや、今総理官邸、古いと言われましたけれども、私がお聞きしたのは、今新築しておりますでしょう。それで、移ったらもう一個建てるという、このことについてどう思うかという意味です。
  59. 八田達夫

    参考人八田達夫君) もちろんです。だから、移る必要はないということです。
  60. 石井一二

    ○石井一二君 一緒ですね。
  61. 八田達夫

    参考人八田達夫君) ええ。最初からだれも移ると考えてもいないわけですから、そういうことを考慮して法律のとりこになってしまってつくらないなんというのはばかばかしいと思いますよ。もうどうせ移転しないわけですから、さっさとつくるのが賢明だと思います。
  62. 石井一二

    ○石井一二君 ありがとうございました。
  63. 渡辺孝男

    渡辺孝男君 今までいろんな問題になっている点、国会等移転で問題になっている点が話題になりましたので余り同じことを言うのはなんですけれども、別な観点からなんですけれども、やはり国会等移転に対して一つ私が思うには、二十一世紀になって、首都機能に関しては四百年の移転だというような、今までの歴史から見ますと四百年で移っているというような話もありますが、何か新しい国民が求めるような夢とか、そういうものがあってほしいなというふうに思うわけなんです。それが東京でもいろんな改革をしながらできるということもあるでしょうし、またほかの方に移った方が国民に対して夢を与えて、また新たな気持ちで日本をつくっていこうというような意欲が出てくるということもあると思うんですね。  今のそういう夢を与えるということに対してどうなのかとお二人にお聞きしたいということと、それから、今いろいろ経済の問題等がお話がありまして、こういう景気の状況でこういう公共投資をすることがどうかというようなお話もありましたが、やはりそういう経済的な視点だけではなくて、これから日本人口社会になる、そして高齢者が多くなって子供さんが少なくなる。子供さんの視点から見た場合にどういう国づくりというか国会等があったらいいのか。高齢者の場合に本当に東京一極集中でいいのか。  そういう人口減の社会、あるいは高齢者がふえていく、子供さんが少なくなっていく、そういう人口構成上の変化が進んでいくわけですが、そういう場合に国会等移転が何らかのインパクトを与えるモデル、こういう社会ならば高齢社会にもたえられる、あるいは少子、子供さんが少なくなってもたえられる。何か夢を与えるような、そういうことにつながってくるような国会等移転であったらありがたいなというふうに私自身は考えているんですが、その二つの点でお聞きしたいと思います。
  64. 八田達夫

    参考人八田達夫君) まず、日本の夢をこういう首都移転に託せるかということなんですが、私が思いますには、やはりこれから例えば百年後というのはどうなるかというと、全世界的に都市機能が非常に重要性を増してくると思うんです。それと同時に、多くの人が地方の生活や郊外の生活にあこがれて、そういう生活をもエンジョイしたいと。ある意味ではぜいたくな話ですけれども、両方ともの生活ができる。長期間の旅行を地方にする、あるいは退職後は地方に暮らす、そういう生活をするようになるんじゃないかと思います。  それで、例えばアメリカのニューヨークで生活をしている人たちのかなりの多くが、そんなにスーパーな金持ちじゃなくても冬はフロリダで過ごして、そして夏はニューヨークにやってくるという人がとても多いです。それから、フロリダにはフロリダで、もうやっぱり御老人の方がいっぱいいらっしゃいますから、そこはそこでまたニューヨークのコミュニティーが移っているんですね。それは、例えば宮崎でそういうことができるのではないかと思います。  そういう基本的には大都市機能が行くところまで行って大発展し、そしてそれなりの生活、いろんな消費のバラエティーがある、エンジョイできると。それと同時に地方の生活もできる。それを人によってはどちらかだけでいいという人もいるかもしれません。そうしたらそういう選択の余地を与えようと。そういう選択の余地も与えられる。  それのためには、一つ非常に重要なことは、先ほどからちらちらと申しておりますが、地方東京交通をできるだけ便利にするということです。それから安くするということです。例えば、東京に子供たち夫婦がいる、そして老人が宮崎に住む。そのときに、いつでも気軽に安く東京に出てこられるということになっていれば、実にそういう生活がやりやすい。ところが、お金もかかるし頻度もないということだったらとてもじゃないけれどもできない。  それから、先ほどの繰り返しになりますが、羽田から重い荷物をしょって東京駅にたどり着くまでもう何遍も階段を上がったり下がったりしなきゃいけないというんじゃしようがないです。しかも、各駅停車のモノレールですからね。そういう状況じゃしようがない。それがすっすっと行けるようになれば両方ともの生活を選択でき、両方とも同時にエンジョイすることができるようになるだろうと思います。  それから、子供のいる社会ということなんですが、ニューヨークで見ておりましても、都心の生活というのは非常に東京よりも進んでいると思いますけれども、やはり都心に住んでいらっしゃる方というのは独身の人だとか若い夫婦でまだ子供がいないという方たちが多い。そして、子供ができれば郊外に住むということはどうしてもある。  となると、やはり今私は東京で始まっている都心居住というのは、いろんな形で今までの障害が取り除かれて起きつつあると思いますが、まだまだ建築法規の観点からもいろんな障害があると思うんです。そういうのを取り除いて都心居住を促進すべきだと思いますが、それと同時に、やっぱり郊外との通勤電車の改善というものにもますますお金を使っていくべきだと思います。そして、子供が小さいときには郊外に住んで都心に通うということができるような仕組みにすべきだろうと思います。  したがって、全般的に言えば東京の中での投資、それから東京地方を結ぶ投資、そういうものを改善することが将来の日本人の夢を実現させて都市地方の両方ともの生活をエンジョイさせる手段ではないかと思います。
  65. 平本一雄

    参考人平本一雄君) 私は、首都機能移転というものは、現在、国民の間にどうしても政治、行政に何となく幻滅しているような状態があると思いますが、それを一掃して新たな世紀での国の再出発にするための象徴としてこれは非常に有意義ではないかなと考えております。  そして、これから後どのような生活を期待するか。八田先生と同様な感覚もありますが、一つは、今まではやはり働く場所、そして特に国際的な仕事をしようとすると東京に出てこないととてもできない、機会がないということだったわけですけれども、これが東京に出てこなくても地方で、非常に広い家で国際的な業務をやる。そして、これは情報通信を使ってもできるし、また地方空港がどんどん整備されてきましたから地方に国際的な企業本社を構えていればできるというような状況に、すべてが東京でなくて、地方でもいろんなことができるという形に持っていかなくてはいけない。そのためには、地方が非常に個性のある、特色ある都市である必要があるかと思います。  そして、子供たちで言いますと、特に昔はどこの地方に行きましても何々銀座ということで必ず銀座がついたわけですが、現在では何々原宿ということで原宿の名前が必ずつくようになってきてミニ東京化してしまっているわけですね。そうでなくて、やっぱりもう少し、私たちの町はこんな特色があるというような誇れるものがあって、地域を愛して、そして地域をよくしていくような心というものが根差すような社会の仕組みにしていく必要があるなと思っております。  以上でございます。
  66. 国井正幸

    国井正幸君 自由民主党の国井正幸でございます。  私は、結論から申しますと、国会等移転は進めるべきだという考え方を持っておりますが、そういう考え方の中で二点ほどお伺いをしたいというふうに思っています。  一つは、もうこれまでも言われていることでありますが、阪神・淡路大震災の大変な災害もあったわけですね。しかし、そのバックアップ機能としてこの首都東京中枢機能を果たし得たということはやはり大きかったんではないかと思うんですね。みずからが被災をしたというときにこれは大変なことになる。そういうことからして、いわゆる国会あるいは政府中枢部分なりを含めて、やっぱりそういう災害対応力を強化するためにもこれは移動させて、何も東京が被災に遭っちゃったらいいという意味じゃないですよ。  やっぱりそういうことも、これは自然の力というのは大変大きなものでありまして、いろんな学者の先生方から聞いても、いつ起きるかというのはいずれにしても近い将来起きるんではないか、こういうふうなことを言っていらっしゃる方が多いわけでして、起きないという議論をしている方の方が私は少ないように思うんです。そういうことがもし、そういう今の状況からしていつの日か起きるであろうということであるとすれば、それに備えるやはり知恵というものを持ってしかるべきだと。起きないというならそれはそれで結構な話でありますが、起きる可能性があるということならばやっぱりそれに対して備えをすべきではないのか。  そういう観点から、いわゆるどういう形でそのときに対応し得る機能、やはりこの東京の中で私ども思うのは、これだけの過密性それから高層化、これはやっぱり物理的な問題としてあるわけですね。それに対してどういうふうな対応をしていくのか。そのためにより広大な用地の中で低層の建物等を持って、それは物理的に被災を少なくする知恵というものを人間は持ってもしかるべきではないのか、そのためにどのような対応をするのかというのが一つですね。それを両先生にお伺いしたい。  それからもう一つは、いわゆる今公共事業のあり方というものがいろいろ見直されておりまして、私どもも見直しをしているわけでありますが、その中でより効率のいい事業というものを展開しようではないか、こういうことに心がけておるわけでありますが、先日、首都高速道路の中央環状線、これが新宿から池袋ですか、ここにつくると。中央環状線、これが延長十キロだそうでありますが、かかる費用が何と驚くなかれ一兆円かかるというんですね、これは。計画にものって始まっておる。膨大な金額ですね、一兆円というのは。  たまたまちょうど今、年度末でありますから、いろんなところで公共事業が完成をしています。私は栃木県選出でございますが、ここでこの間、延長二・七キロのバイパスができた。その辺は地域が低いものですから洪水に見舞われるということで、大きな放水路を真ん中に入れた。そして両側に二車線の歩道つきの道路をつくった。それで二・七キロで工事費の総額が四十三億円。  いわゆる公共事業の中でも、特に道路等の中で用地費というものの占める割合というのは極めて大きい。それから、もちろんこれはこういう過密の中でやるわけですから、地下に道路を入れていく。地下四十五メーターだそうでありますが、そういうことでますます大変な、いわゆる資源をやっぱり有効に使っていく、そういう知恵があってもいいではないか。限られた資源の中で、財源というのも私は資源の一つだと思う、そういうものを有効に使いながら国土の均衡ある発展というものをしていく必要があるのではないのかと。  そういう公共事業のあり方等から見ても、やはりこの東京という中で、日中は工事ができぬ、地下を掘っても出る土をどこに捨てるかといってもこれまた大変なお金がかかる、これでやっていたのではなかなかやっぱり金なんというのは幾らあったって足らぬ。そんな感じを私はしているわけでございまして、そういう観点から見ても、もう少しやはり効率のいいお金の使い方、そういうものを考えるべきではないのか、そういう契機にこの国会等移転というものをひとつ使っていく必要もあるのではないか、このように思いますが、そういう観点からお二人の先生方はいかがでしょうか。
  67. 八田達夫

    参考人八田達夫君) まず地震のことでございますけれども、大阪で千里中央というところがありまして、新幹線の新大阪から地下鉄で北に上がったところですけれども、そこに幾つか損保会社のビルがあるんですね。どうせビルを持つのならば、大損保会社ですから、もっと大阪の都心に持てばよさそうなのに、そういうところに何階建てかのビルがある。これはどうしてだろうと聞いたら、要するにあそこに全部データのバックアップがあるんだよ、東京地震でやられたときのためにコンピューターが同時に動くようなバックアップがある、そういう話を聞いたことがございます。さすがに損保会社なわけですね。もういざというときのことのために備えている。  まさにそういうことを政府がやるべきだと思うんですね、まずデータのバックアップ。それがどうも厚生省や建設省のデータがどこかに同時にバックアップされているというような話は余り聞いたことがない。  それから、人材的に、いざとなったときに、先ほど申し上げましたように、神戸にもし首都移転していたらばあれで首都機能はもうとまっていたわけですから、必ずどこに首都を置いたとしてもバックアップを人材的にもしておかなきゃいけないだろう。  それは線としては二つあると思うんですけれども、第一には最小限、当座の何週間か指揮をとるために必要な人間というのは何かということを確定する必要があると思う。行政の多くの仕事というのは二週間や三週間延期したって別にどうということはありませんから、その一週間、二週間の間、とにかく災害復興のために全力を尽くさなきゃいけない。その体制を整えるためにはどうしたらいいのかというその人たちをまず第一線としては東京に確保しておく。それで、都心の公務員住宅というのは、要するにそういう緊急にすぐ出てこれる人たちに優先的にして、そしてその人たちには歩いて出てきてもらう。それから最低限、役所がどことどこがつぶれた場合にはどこの役所を使ってそういう人たちが動けるというシステムをつくっておかなきゃならない。これが第一線です。  第二に、それでも足りないぐらいに東京がやられてしまったときには、例えば大宮、例えば横浜、例えば名古屋、大阪といったところに、実際にそういう人たち、指揮をとれるような人間を置いておくということが必要であると思うんです。例えば、大阪だと近畿財務局だとか近畿建設局なんかにはもう一流中の一流の官僚がいます。それは二年とか三年とか短い期間ではありますが、後で次官になるような方たちがいらっしゃる。そういう人たちを日ごろから組織して、いざというときのために動いていただけるようにしておく。そういう体制というのは私は聞いたことがない。  それから、いざとなったら、やはり皇居の一部を災害のそういう指揮のために使う。皇居の土地を使うというようなことも余り聞いたことはない。そういうバックアップのことも聞いたことがない。そういう余地というのは幾らでもあると思います。  したがって、そういうバックアップをとるということが、仮に首都移転したとしても、その新しい首都地震でやられたときのために必要であるというふうに思います。したがって、東京に残したままでそういうことを検討することが地震対策としては何よりも重要だろう。  それから、神戸の場合にはやはり高層ビルはみんなうまくいったと思うんですね、地震でやられなかった。低層が非常に地震でもって危なかったと思うんです。したがって、もちろん東京が完全にやられたときのバックアップ体制も考えておくべきですが、一般的に言えば、高層の新しい建築基準法でつくられたものというのは割と信用できるものだと思います。  それから二番目に、東京の公共投資が非常にコストがかかる、特に日中は工事ができないとかそういう問題があるというのは、もう御指摘のとおりであります。そして、今、例えばガスの自由化をするために、例えばサハリンからガスのパイプラインを引いてこよう、そして日本全体でガスを引ければ、もう自家発電でもって非常に安い発電機を使えるという話があるんですが、それの障害も、ガスパイプラインを引くときに工事費が高い。日本土地が高いということよりも工事費が高い、工事に要する時間だとか、要するに工事プロパーにかかるお金が他国に比して突出して高い。もう御指摘のとおりであります。  そして、それを何とかしなきゃだめだと思いますね。今のやはり多くの工事絡みの規制ということを改善すべきだということは、事道路だけにとどまらず、電気の場合にもガスの場合にも日本のインフラストラクチャーの整備をおくらせている理由だと思います。  そして最後に、先ほど多少申し上げましたが、そうやって費用を下げるということはもちろんでありますが、東京高速道路混雑しているときには非常に高い料金を取るべきだと思います。それで自前でもってそういうことを採算に長期的には乗せていくということが必要だと思います。  以上です。
  68. 平本一雄

    参考人平本一雄君) まず、バックアップの点でございますが、今、八田先生の御指摘のように関西に、民間企業、特に金融機関のバックアップセンターというのはほとんどの金融機関が既につくっております。これは、かつて世田谷のケーブル火災事故がありましたときにこれが教訓となりまして、大手の金融機関はほとんど、保険会社もほとんどがこれを整備しました。そういう意味では、民間東京大阪の二つのセンター体制で動いているわけです。  それで、じゃバックアップセンターがあればいいかということですが、これは、単にデータセンターのようなものはあっても災害時にはそれだけでは機能できないわけでして、かなりの人材が必要であるわけです。神戸の震災と東京の、仮にかつての関東大震災のような規模のものが起こったときとはその被害想定は相当全く違うと思います。東京都ですとかこれまでの国土庁などが被害想定を出しておりますけれども、これは相当少な目のケースを実は紹介しているのではないかなと個人的には思っております。相当考えられないくらいの実は被害が出るのではないかなと思っております。  これに対して、迅速な復旧を行うのにバックアップセンターがあればいいということでは到底ありませんで、まず震災の復旧能力、これは関西の阪神の震災のときにわかったことですが、この三日間の間、特に最初の一日、二日が最も重要で、そのときに相当な態勢が整えられると、そのときに人命の救助とか相当被害を最小化することができます。そのためには、やはり同時被災ということは避けなくてはいけない。  特に対策は、東京規模の都市ですと、国内各地に指令をし、海外にもいろいろな連絡をし、大規模な相当な優秀な人材が相当な量、活動しないと到底それには対応できないと思います。それを東京に震災が起こったからといって、仮に大阪にヘリで順次行ってそこで態勢を整えようとしても、それでまず態勢が整うまでに一日はかかってしまう。その一日の間に被害がどんどんふえていくということになるんだろうと思います。  そういう意味では、やはり新しい首都機能都市というものをつくって、即、東京というものを見ながらそれに迅速な対応ができるという、そういう場所が必要だろうと思います。  そのときに、よく意見で出ますのは、どこでも日本は震災が起こるから首都機能都市でも同じことだというような議論が出ますが、これは間違っていると思います。  といいますのは、神戸の震災でわかりましたことは、耐震性能のある新しい基準の構造物というのはほとんど破壊されなかったということですね。特に建築物に限ってですけれども、当然ガラス張りの一見倒れそうなものほど破壊されていない。高層なものほど破壊されていない。いわゆる中層、低層でありましても耐震基準の古いものはほとんど破壊されました。それから、住宅も立派な木造住宅は破壊しまして、どちらかというとぺらぺらのプレハブ住宅はほとんど損傷がない。構造基準が新しいものは全部損傷がないわけです。  したがいまして、新しい首都機能都市に新しい耐震性能を考えた建築、それから土木工事、構築物をつくるということによって、かなり震災対応力のある都市をつくって、そこから迅速な指令を出して、そして東京の被害を最小限にとどめるということが可能でありますし、それをしないとやはり、近いか遠いかはわかりませんが、必ず起こると言われている非常に大規模な震災に対する対策としてはバックアップ機能だけでは不十分だと思っております。  以上です。
  69. 角田義一

    委員長角田義一君) ほかにございますか。──まだ御発言も尽きないかもしれませんけれども、時間でございますので、参考人のお二人に対する質疑はこれで終わらせていただきたいと思います。  一言お礼のごあいさつ申し上げます。  お二人の参考人の先生方におかれましては、大変きょうは御多忙のところ、我が委員会にお越しいただきまして貴重な御意見をいただきまして、心から厚くお礼を申し上げます。また、私どもの委員の質疑に対しましても大変丁寧にお答えいただきまして、大いに勉強になりました。今後の調査に生かしてまいりたいというふうに思っております。  きょうはどうもありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会