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参考人(
北川美千代君) ベネッセコーポレーションから参りました北川と申します。よろしくお願いいたします。
私
どもベネッセコーポレーションは、旧名を福武書店というふうに申しておりまして、一九九九年度にファミリー・フレンドリー
企業表彰というのを
労働省の方で始められたときに、第一回優良賞ということで受賞させていただいたというような経緯から、本日は、
女性の
活用、それからファミリーフレンドリーな実態を、どんな
状況で
企業活動をやっているかというふうな現場からのお話ということでさせていただければというふうに思います。
私
どもがファミリーフレンドリー
企業ということで表彰いただいたわけなんですけれ
ども、
制度とかあるいは
施策というところに関しましては、むしろ私
どもよりももっとほかの
企業さんで非常に進んでいらっしゃるところはたくさんございます。ただ、私
どもの場合は、
制度があるだけではなくてそれが使われているということ、それから
女性の中でも、例えば管理職も使っていたりですとか、あるいは
男性も
介護休職を利用したりする実績があったというような形で非常によく使われていることと、それから
企業風土の中に根づいているというようなところで御表彰いただいたというふうなことでございます。そういったところの経緯とか、それから
状況についてをまず御紹介するところから始めたいと思います。
実は、それをお話しするに当たりましては、私
どもの会社の特徴といいますか、特色のところからお話しさせていただければと思います。
私
どもの会社は、一九五四年設立ということで、本社の方は岡山にございます。今も岡山市の方にあるんですが、地方から出てきた会社ということで、特に教育、語学、文化、生活、福祉というような事業を領域として活動の方を行っております。具体的な商品といたしましては、進研ゼミ、それから「こ
どもちゃれんじ」、進研模試、
出産、
育児というような「たまごクラブ」、「ひよこクラブ」という雑誌、それから託児
サービスのチャイルドケア事業、
介護サービスを行っております。
今御紹介しましたように、教育、
家庭、それから
女性に非常に縁の深い事業活動をしているというところが私
どもの会社の特徴になります。
従業員構成の方は、現在
正社員が千七百五十八名なんですが、そのうちの千三十一名が
女性と、大体六割が
女性社員で占められているというふうな、ちょっと変わった会社というふうに言えると思います。
女性が多い会社ということで今活動を行っているわけなんですが、なぜ
女性が多いかと言いますと、
女性優遇の
施策をとってきたわけではございません。特に
女性だからとか、
女性をポジティブアクションというような形で引き立てようと考えてきたわけではありませんで、岡山という地方の
企業だったものですから、事業が発展していく段階でいい人材を採りたいというふうに考えたときに、なかなかいい人材が採れないというふうな時代がございました。これは大体一九七〇年代の終わりから一九八〇年代の初めぐらいだったんですが、その当時、なかなか
職場がなくて困っている女子大生ですね、大学卒の
女性たちを採用していくというところに目をつけたわけです。そのころに
男女均等待遇ということで、同じ
処遇で採用する、しかも
男女というのは分けずに採用するという
施策をとったものですから、大学を卒業して働きがいのある
仕事をしたいと考えていた
女性たちが非常に多く志望していただいたというふうな次第です。
この時期に非常に
女性がたくさん入ってきた、入り続けたということで、ある意味でいい口コミも広がりまして、女子大生の人気
企業のベストテン入りをしたりというようなところから、
企業としての認知度も非常に高まっていったりというふうな回路に入っていきました。
そうしまして、
女性が戦力として非常に前面に出てきたわけなんですけれ
ども、そういたしますと今度は、当時は
女性の場合どうしても、入社して
仕事をして、
結婚、
出産という形でやめていくというふうなことが
社会通念上当たり前の時代でしたので、三年から五年ぐらいでやめていく社員の方が多く出てきてしまったというふうなところがあります。
これを見ていて、三年ぐらいたちますとようやく
仕事も覚えてきて、非常に貴重な戦力になった段階でやめていってしまう社員が多いということで、ここを何とかしたいというふうに経営側も考えました。それから女子社員の側も、
自分がせっかく覚えてここで
仕事をしようと思っていたのに、そういう
結婚というふうな理由でやめていかざるを得ないといったところは残念である、
結婚、
出産の後も続けていけるような
施策はしてもらえないだろうかということで、
自分たちでいろいろな提案をしていくというようなところから、当時で言いますと再
雇用制度ということになるんですけれ
ども、一たんやめた後でも三年以内であれば戻ってこれる
制度というのが始まりました。これが昭和六十一年に始められたというような次第です。
こういった形でいろいろな
制度が始まりまして、最初のころは利用者も非常に少なくて、しかも利用するときにも周りに前例がないものですからいろいろ戸惑いもあったんですけれ
ども、一人、二人というふうに利用者がふえていったところで、ある意味で
職場にも定着し、
出産しても続けられるから大丈夫ということで、女子社員の中に浸透していったというようなところがあります。
あわせて、
育児休業法が施行された
関係で、再
雇用という形ではなくて
育児休職の
充実というふうな形で現在は行っております。現在はお子さんが満一歳になった年度の終わりまで休職延長可能というふうな
制度にしておりまして、復職率は九七%を超えるというような形で推移しております。おかげさまで、
育児休業法が施行された後は
出産を理由として退職するというふうな事例はほとんどなくなりまして、
出産するならば休職に入るということが、休職取得が前提ということが当たり前というふうな風土になっております。
特に、性差よりも
個人差の方を重く見るということで、
職場全体といたしましては
成果主義という
考え方をとっております。ですので、
人事制度におきましても、契約の概念、パフォーマンスに対するリワードということで、休職はするかもしれない、それから、
育児中なのである程度
勤務、時間におけるハンディはあるんですが、そこの
部分は考慮しながらも、
仕事の成果で本人を評価していくというふうな形で定着をしております。
そういったような経緯がございまして、ライフサイクル上の一時的な生活と
仕事の
両立困難には積極的に
支援するというふうな
考え方をとっておりまして、
育児休職、
育児時短
制度だけではございませんで、
介護休職、
介護時短といったようなところも
制度を
拡充してきております。
現段階では、
育児休業を取得した
女性社員の数は全体で百五十名強に上っておりまして、
女性社員の一三%が
育児経験者といいますか、現在も
育児中というようなところで推移しております。
こうしてきまして、組織の中の一割程度、一割以上が
育児中の実態になってきますと、次にはまた新しい課題が出てきているというのが最近の
状況でございます。
これはどんなことかと言いますと、ある程度
出産、
育児において休職をすることはできた、しかし、その後
仕事を続けるわけなんですけれ
ども、これは
出産、
育児をする社員に限らないんですけれ
ども、キャリアアップをどのように考えていくかということ、それから
仕事をどのように
自分で深めていくかというふうな問題が、特に
育児中の
女性に関しては顕著に課題化してきているという問題がございます。
通常ですと、なかなか
仕事がはかどらない場合には長時間
労働で何とか挽回するというふうなところがあるわけなんですが、
育児中の場合ですと長時間
労働というのができかねますので、どうしても
仕事が制限される
部分が出てきます。それから、
職場の中でフォローしていく
部分も出てきます。そういった中で、じゃどういった職務でその人の成果を発揮するのか、
自分のスキルを積んだりプロとしての成長をしていくのかという点が非常に問われることになっていきます。その一方で、
家庭での
育児というのもしていく必要がありますので、
家庭でのそういった
仕事、それから会社での
仕事の
両立をどうしていくかということについて非常にせっぱ詰まった
状況になっていくというところが顕著に出てきているという
状況です。
そういった
人たちに関しまして、会社側といたしましても、どういった
仕事につけていくのが本人にとっても会社にとっても一番よいのかという点についてを考慮せざるを得ないというふうなところで、人数の
割合がふえてきている
状況で、非常に
仕事と
個人のマッチングという点で課題が大きくなってきているというのが現状です。
それから、
育児しながら
仕事を続ける
女性社員の方がふえてきたということで、最初はゼロ歳児の
保育の
ニーズが高かったんですけれ
ども、現在ではどんどんお子さんの方が育ってこられましたので、学童
保育の
ニーズですとか、あるいは今回事例として出てきましたのは、例えば中学生ぐらいになって登校拒否になってしまったお子さんがいて、そのお子さんに対しての対応ということで、家族ぐるみでやりたいので
介護休職というふうな形でとれないだろうかという事例が一件あったりしました。ということで、
子供の成長段階に合わせた形での
配慮あるいは
処遇が必要になっていくといったところも新たな課題として見えてきております。
こういった形で従業員の方が年齢を経ていけば、それに応じた形での
家庭の課題それから
社会的な課題とかも出てきます。今後は高齢化に従って、例えば
介護の課題とかといったところが今以上に切実な問題になっていきますので、そういった
部分についても対応を考えていく必要があるかというふうに思います。
また同時に、それも行いながら、
企業ですので
企業の成長自体も
両立させていかなければなりません。なかなかやっぱり
働き方が制限されるといったところでの、先ほど言った
仕事と
個人のマッチングといった課題でも今までよりもより一層難しくなっていきますので、
企業としてうまくやっていくそこの方法を見つけるというところも
一つの課題であるというふうな認識をしております。
そういったことで、これから私
どももいろいろ頑張ってやっていかなければならないと考えているんですが、現在、周囲を見まして
環境的な
部分で少し必要があるかなというふうに感じるところについて申し述べさせていただきますと、まず託児所の問題がございます。
これは以前に比べますと非常に充足してきておりまして、ゼロ歳児の
保育とかにつきましても非常に
拡充してきているというところを実感として持っております。ただ、やはり自治体による差が非常にまだ激しく、住んでいる場所によってはなかなかお子さんが託児所に入れないというふうな声を聞きます。ですので、どうしても
仕事をしたい場合には、託児所が非常に
拡充されている市を選んで、そこに住むというようなケースも最近では出てきております。
それから、これから
女性がやっていくということを考えますと、
男性の
育児参画、それから
家庭への参画といったところが非常にポイントになってくるというふうに考えます。
私
どもの会社でも、
育児と
仕事を
両立している
女性社員はほとんどが、夫である
男性の理解と協力といったところが大きなポイントになっております。ここができるかどうかが非常に大きな点ではないかというふうに考えます。
私からの
報告は以上で終わります。どうもありがとうございました。