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2001-06-07 第151回国会 参議院 環境委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年六月七日(木曜日)    午前九時三十分開会     ─────────────    委員異動  六月五日     辞任         補欠選任         阿南 一成君     真鍋 賢二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉川 春子君     理 事                 清水嘉与子君                 末広まきこ君                 堀  利和君                 岩佐 恵美君                 清水 澄子君     委 員                 石井 道子君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 橋本 聖子君                 真鍋 賢二君                 岡崎トミ子君                 藤井 俊男君                 松前 達郎君                 但馬 久美君                 中村 敦夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君    参考人        独立行政法人国        立環境研究所循        環型社会形成推        進・廃棄物研究        センター長    酒井 伸一君        愛媛大学名誉教        授        立川  涼君        東京農工大学教        授        細見 正明君        独立行政法人国        立環境研究所統        括研究官     森田 昌敏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理推進  に関する特別措置法案内閣提出衆議院送付  ) ○環境事業団法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 吉川春子

    委員長吉川春子君) ただいまから環境委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五日、阿南一成さんが委員辞任され、その補欠として真鍋賢二さんが選任されました。     ─────────────
  3. 吉川春子

    委員長吉川春子君) 理事辞任についてお諮りいたします。  福山哲郎さんから、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川春子

    委員長吉川春子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 吉川春子

    委員長吉川春子君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事堀利和さんを指名いたします。     ─────────────
  6. 吉川春子

    委員長吉川春子君) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理推進に関する特別措置法案及び環境事業団法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、参考人として独立行政法人国立環境研究所循環型社会形成推進廃棄物研究センター長酒井伸一さん、愛媛大学名誉教授立川涼さん、東京農工大学教授細見正明さん及び独立行政法人国立環境研究所統括研究官森田昌敏さんの四名に出席をいただいております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、大変御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の会議の進め方について御説明いたします。まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず酒井伸一参考人にお伺いいたします。酒井参考人
  7. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 国立環境研究所循環型社会形成推進廃棄物研究センターを預かっております酒井でございます。  私自身は、廃棄物リサイクル問題と化学物質とのかかわりに関しまして主に研究をしている立場の者でございます。主には環境工学という立場から研究をさせていただいております。  きょうは、お手元の方に資料といたしましてPCB処理地球環境保全という形の資料を用意させていただきましたが、主にPCB処理が求められる背景につきましてまず最初に述べさせていただきまして、あと、処理技術とモニタリング、そして今後の循環型社会形成におきますこういう化学物質の制御の必要性、こういう点から話を進めさせていただきたいと思います。  一ページ目のところでは、PCBに関する主な経緯ということで一覧表にしてございますが、これは後の先生方に歴史的にも非常に詳しい先生がおられますので、ちょっとここでは割愛させていただきます。  二ページ目を開いていただきますと、よくPCBポリ塩化ダイオキシン類、いわゆるダイオキシン類というものが関連づけられて議論をされます。ただ、この両者には大きな違いがございまして、その点をちょっと絵にして書いてございます。上の方にポリ塩化ダイオキシン類化学式等も書いてございますが、下の方にPCBまとめてございます。  ここでまずごらんいただきたいのは、左側に意図的生成という形で書いている部分が、ダイオキシン類の方はペケ印をつけてございます。そして、PCBの方に関しましては、主に化学反応生成として絶縁体とかカーボン紙等に使ってまいった。  すなわち、この両者の大きな違いは、PCBは過去に一定機能を求めて化学的に生産をしてきた物質であるということに対しまして、ポリ塩化ダイオキシン類の方は、これは非意図的な副生成物、よく言われますのがごみ焼却過程での非意図的な副生成、あるいは農薬等化学反応の不純物と化学反応生成物ということで存在するもの、ここに大きな両者の違いがございます。  ただ、この両者毒性的な評価の面で関連づけて評価されねばならないということがここ十年来の研究でわかってまいり、そしてそれが国際機関で、そして我が国の方ではダイオキシン対策特別措置法の中で、この下の二ページの表のような毒性等価換算係数という形で両者が統合して評価されるようになってまいった。これは、今後処理を進めていく中でも一定の配慮をしなければならない事項でございます。ただ、原則的には、過去につくったPCB、これが一定機能を求めて使われた時期があり、そしてその後、環境汚染視点から、あるいは生体蓄積という視点から処理が求められるようになってきた、こういう文脈にはひとつ注意が必要かと思います。  それで次、三ページに参りまして、PCB処理が求められる背景ということで大きく四点を整理させていただきました。  まず一点目は、大気環境を初めとして、さまざまな環境におきまして微量ながらPCBが検出される、そしてかつ、これは重要な点でございますが、生物においては塩素化ダイオキシン類よりPCB毒性等価量の方が多く検出されるという事実でございます。  この点に関しましては三ページの下の方のグラフに提示してございますが、これは、私どもが京都の方で大気とかあるいはごみ焼却排ガス、そしてまたごみ中のいろんな成分中のPCBを計測した事例でございます。これは、いろんな種類PCBには全部で二百九種類ございますが、その中の十二種類程度異性体を取り上げましてその濃度をはかり、それをグラフにしているものでございます。  このグラフを見ていただきますと、右側にPCB製品と書いて示しているグラフがございますが、そのPCB異性体パターンとこの大気中のものを見比べていただきますと極めて類似しているということがおわかりいただけるかと思います。これは、今の一般の我々が住んでいる都市の大気中のPCBパターンでございます。上の方の四つのグラフは、ごみ中に含まれるいろいろな紙とかあるいはプラスチックとかそういう成分、あるいは厨かい、野菜くずといったような成分でございますが、それと見比べていただきましてもかなり類似しているということがおわかりいただけるかと思います。量的にはそう大きな負荷にはならないんですが、ごみ焼却排ガス中にもこういったある種のPCB異性体というのは検出されるんですが、そのパターンとは大分異なる。すなわち、実際に今一般環境中で検出されるPCBパターンというのはPCB製品に近いということがここでごらんいただけるかと思います。  そして次、四ページに参りまして、環境中のPCB、これがいろんな環境中でこういった濃度で検出される。これは平成十年に環境庁の方でおはかりになられたデータでございまして、今回もこの環境委員会の参議院の調査室の方でおまとめになられた資料にもこのデータが含まれてございますが、それの重要な点は、コプラナPCBの総TEQに占める比率、この総TEQというのはダイオキシンPCB毒性をすべて評価して合算した量、その中でPCBがどの程度の割合を占めるか、すなわちこの横のパーセンテージが大きければ大きいほどPCB毒性負荷が多いということになるわけです。  そういうことで見ていきますと、大気ではこれが五・七%、すなわち大気中では圧倒的に塩素化ダイオキシン類毒性負荷の方が大きい。しかし、水生生物の方にいきますと逆にPCB負荷の方が高くなってくる。すなわち、このあたりでいわゆる発生源の影響なりあるいはその間の生物濃縮の違いといったようなものがあらわれてくるということになるわけでございます。  まず、これがPCB処理が求められる背景ということで、一点目で御指摘をした点でございます。  次に、二点目といたしまして、極地イヌイット母乳海生哺乳動物からPCBが検出され、そして低緯度地域の検出より高い場合があるという例でございます。  これは四ページの下の方のグラフで示してございますが、これは九〇年代の初めにカナダの方の研究者がおはかりになられたデータ、これを拝借しているわけでございますけれども、ケベックと極地イヌイット、それぞれの女性母乳中のPCB濃度、これをはかった結果でございます。  これを見ていただきますと、そのイヌイット女性母乳中のPCB濃度の方が低緯度地域の方に比べまして三倍程度高い。これは、イヌイット方々PCBを過去使ってきたというわけではございません。これはひとえに、地球上でこのPCBが移動していることの一つのあかしでございまして、かつイヌイット方々のいわゆる魚の消費量がやはり非常に多いと、日本人は大体一日に百グラム程度魚を食しますが、イヌイット方々は三百グラム、欧米人の方は大体数十グラムといったような、そんなところでございます。そのあたりにこういう傾向の違いというのはあらわれてまいる。  そういう意味で、低緯度地域、主に産業国で使ったPCB、これが極地に移動をし、そしてそこで濃縮されていると、こういう事実。  この辺のところが、その次、五ページの方でお示し申し上げておりますが、つい先日、残留性有機汚染物質条約というのがストックホルムで締結されましたけれども、その中で、PCBを含めて国際的に対処をしていこうという世界の決意に、英断に至ったということでございます。  この条約の中では、意図的な生産に対しては製造、使用を禁止して、そしてどうしても使わざるを得ない場合に限って使用を認めていこう、そういう方向で今後運用されていくということになってまいったわけでございます。このPCB処理に関しては一定の年限を切ってそして世界的に処理を求めていくということになってまいったわけです。二〇二五年までに使用禁止、そして二〇二八年までに処理することというふうに求められてきたわけでございます。  それと、もう一つは非常に重要な点でございますが、政府の方の調査で、使用中の高圧トランス・コンデンサー、約四十万台弱でございますが、そのうち約一万台が紛失、不明ということで、こういう紛失不明分環境汚染源となっている可能性は高いということ。このあたりが、まさに今PCB処理を求められる背景ということが言えようかと思います。  次に、ちょっと、処理技術の方に関して少し簡単に触れさせていただきます。六ページのところでございます。  六ページの上の表は、現在利用可能になっている開発済み技術として、大きく廃PCB等といわゆる固形物を含めてPCB汚染物ということで分けて、どういった技術が適用できるかということで分類をしてきたものでございます。  これ一定技術評価を受けて、現在、使用可能になっているものということで分けられると思いますが、かつてはこのPCBに対しましては、高温焼却高温分解するという方法、これが主に用いられてきたわけでございますが、ここにそのほかの技術分解技術といったものが使用可能になってまいったということでございます。  そこを粗く申しますと、六ページの下の方にまとめで書いてございますが、廃PCB化学処理や超臨界水酸化法など、このあたりは既に実用レベルとして使用できる状況になってきているのではないかという判断、それと高温燃焼分解という方法は、これは欧米の方では確立済み技術として日夜、廃PCB処理使用されている、ですから、この技術オプションもそういう意味では我が国もとり得る。そういった中で今後どういうような展開をしていくかということがまさに技術的にも求められている状況ということが言えようかと思います。  そういったことで、最後にちょっと一点だけ、この循環型社会をつくっていくということと化学物質コントロール、この両者を今後求めていく必要があるのではないかというところを少し、ちょっと七ページに事例を含めてまとめてございます。  これはちょうど一昨年、ベルギー産食肉のダイオキシン汚染問題というのが伝えられました。これは実はPCB汚染問題であったということがその後わかってきたわけではございますけれども、やはり鶏肉とか鶏卵中のPCB汚染ということが見つかってまいったということでございます。その汚染過程がどうも、えさ、飼料動物性脂肪を供給する過程PCBオイルがまざったようだと、そういう経緯でございます。  ここで、そもそも飼料に対してはいわゆる動物性脂肪をまぜていたわけでございますけれども、これがいわゆるリサイクル油、油のリサイクルという非常に重要なある種の循環物質循環社会として行っていたわけでございますが、その過程一定量PCBが混入したのではないかということが原因として言われております。  すなわち、ここでPCB社会からうまく対処する、コントロールする、そして処理をしていくという方向を取り入れていきませんと、こういういわゆるリサイクルを進めていく中でまた別の問題を引き起こすということ、可能性をまさに示しているわけでございます。  これは、欧州の方では非常に重要な問題として彼らは今取り組んでいるものでございまして、どうモニタリングするか、どうやって水際でチェックするか、こういったことを含めて、研究サイドも、あるいは行政サイドも非常に悩んでいる問題でございます。  こういったことは、循環型社会をつくっていくという方向とこういうPCBを初め化学物質を適正に制御する、そして過去のこういう残留性汚染物質に関しましては一定の的確な処理をしていくということの必要をまさに示しているわけでございまして、七ページの下の方の図では、循環型社会形成、そして化学物質コントロール、この両者を求めて初めてこの生命系地球系保全が図れるのではないかということをまとめたものでございます。  大体お約束の時間でございますので、私の方からの話は以上にさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  8. 吉川春子

    委員長吉川春子君) 次に、立川涼参考人にお願いいたします。立川参考人
  9. 立川涼

    参考人立川涼君) 愛媛大学立川でございます。  私は、六〇年代の終わりごろから、いわゆる人工有機化合物地球規模での汚染とか、あるいは生物への蓄積をやってきたものですから、その経験を踏まえて若干の私見を申し上げようと思います。  ただ、ここに御出席の御三人、それぞれ第一線のサイエンティストだものですから、むしろ僕は、社会的な存在としてのPCBとか人工有機化合物にどちらかといえば力点を置いてお話をさせていただきます。  まず、POPsでも話題になっておりますけれども、やはり重要なものはPCBダイオキシン、それからDDTなんですけれども、僕個人は、今後は、やはり世界的に最も共通な大きな課題はPCBだと考えております。  ダイオキシンはほとんどが陸域汚染ですね、沿岸は別にして、ほとんど陸域。しかも、いろんな性質からいって、地球的な規模で拡散することは余りありません。主として北半球を中心にする陸域汚染と考えてもよろしい。  それからDDTは、特に最近はそうですけれども、熱帯発展途上国中心に、かなり使用領域が狭められてまいりまして、環境レベルも次第に低下しております。  ところがPCBは、陸上、海洋を問わず、それは南極から北極まで、あるいは大西洋もインド洋も、日本の近辺もそうですけれども、極めて世界的に均質な汚染がある。特に海洋においては、海洋生物に異常な高濃度でたまっております。  人間のPCBは一ppm程度と言われているんですけれども、海洋の鯨には数百とか、地中海などでは三〇〇〇ppmなんというとんでもないものまで出てくるわけですね。ですから、そういう意味から、地球生態系ということを考えますと、なおさらPCBの問題は非常に大きいというふうに僕は思っております。  ところで、このPCBに関しては、もう皆さん承知のように、一九七三年に化審法ができまして、そこで附帯決議として、国は処理方法をちゃんと開発しろと書いてあるわけですけれども、ここまで来たわけですね。  なぜここまでかかったのか。僕も、最初のころはかなりのケースに実はタッチいたしまして、通産の外郭団体である電気絶縁物処理協会が各地にロケハンに行ったわけですね。民間企業はオーケーされる。そうすると、そこの首長さんは、余り歓迎するものではないけれども、町にお金が落ちるであろう、あるいは雇用の機会があるだろうというようなことで合意される。ところが、多分、四年ごとの選挙で大抵は拒否されたり、また首長がかわったりする。いわば、そういうことを終始繰り返してきた歴史だと言ってもいいと思います。  結局、ここで問われているのは、科学技術中身ではなくて、やはり企業なり行政なりと、国民なり地域住民との間のコミュニケーションがなかった、そこが実は大変僕は大きな問題だと思います。  当時でも、PCB焼却することにそれなり技術があったと僕は思っています。今のレベルから見れば問題は多いんですけれども、当時としては結構我慢できるそれなり方法があったというふうにむしろ考えております。  だけど、問題はそうではありませんで、科学技術中身ではなくてそれを社会的に受容されなかったということがあるわけですね。そういう意味では、今もある意味でそれほど違いがないかもしれません。ですから、今後新たにスタートするに当たっても、そういう意味では情報公開国民参加とあるいは国民理解地域の支援というふうなものがどうしても必要になってくると思います。これはむしろ、科学技術皆さん理解していただく以前に大変必要な前提条件として僕はあると思っております。  結局、地域住民なりあるいはいろんな階層の方に入っていただく中で議論をし意思決定をすることは、その過程皆さんが実態をちゃんと理解できる、事と次第によってはある種の妥協線だってそこから見つけてくるわけですね。ところが、どこかで秘密裏にそっと決めてぽんと落としたら、これは住民の側は反対する以外することがないというふうに、大変稚拙なやり方なわけです。ですから、早く合意を得て具体的に事が進むためには、どうしてもそういう情報公開と多くの社会セクター参加が大変大事になってまいります。  もともと、こういうデリケートな問題は、批判勢力存在は極めて大事なんですね。釈迦に説法ですけれども、情報公開法の第一条の「目的」にちゃんと書いてありまして、国民の的確な理解批判のもとに民主的な行政をやるんだと書いてあります。つまり、批判が必須なものとして情報公開法でも書いているわけですね。こういうデリケートな問題は満場一致はあり得ません。そうである以上、当然批判勢力がある。しかし、それを抱え込みながらどうやって説得し、あるいは妥協点を見つけていくか、それはもう専門家集団の中ではもともと無理なわけです。  ちょっと言葉の遊びになって申しわけありませんけれども、専門家というのは特定の領域が詳しいから専門家でありまして、いろんなことがおわかりになったらこれはむしろ専門家じゃないかもしれない。ところが、ここで問われているのは学会でもないし研究会でもない。こういう化学物質社会的な存在としてそれをどう我々は受容するのか、どう採用するかということになりますと、いわゆる科学者専門家以外の専門家がたくさんいるはずです。  最近はNPOその他が非常に水準が高くなっています。驚くべきことでありまして、行政や我々研究者よりはるかにホットなニュースをITその他で御存じの方がいらっしゃる。アメリカではいろんなことを決めるときに、御承知のように学界、アカデミアと行政産業市民運動の方がイコールパートナーとして専門性レベルでみんな議論ができるんですね。日本では残念ながらまだそこまで水準は行っていないと思います。しかし、急速に成長しておりまして、この実力は驚くべきことがあると思います。  僕は、こういう存在を抜きに大事な社会的な意思決定をこれからできなくなるだろうというふうに思っております。そういう面では、さまざまな意思決定専門家からもう少し広い国民の各セクターの意向が代弁できるような方法をとるべきであろうというふうに考えております。  もう一つ、今まで余り議論されていないことは、コストの問題ですね。これは当然相当なお金がかかります。かつて三十年の間に何回かPCB処理の問題を行政が動き出しますと、民間の方もそれにつれていろんな対応をとります。若干の方が僕のところにいらっしゃって、数千億だろうと、場合によっては一兆円だとおっしゃっていた方があるんですね。今回はそういう金勘定は全く出てこないんですけれども、やっぱりトータルのコストは変わらないと思います。もちろん、それは民間もおやりになるしいろんなところでおやりになると思うんですけれども、やっぱり合法的に市販されたものについてどこまで民間の負担でやってもらえるかというのは法的な強制力ないわけですね。  それと、この種の問題ですから当然やはりいろんな意味条件整備なり制度づくり行政がかまなければいけない、これも当然です。ところが、行政主体でやりますとどうしてもコストを下げるというふうにインセンティブが働きません。その辺はこれからいずれにしても社会的にコストとして、特に税金も使うとしたら、やはりこれを合理的に使うような仕組みはどうしても要ると思います。  そのときに、処理方法としていわゆる化学処理高温焼却燃焼処理とがあるわけですけれども、最近の議論の推移はほとんど化学処理一本やりで来ていると思います。僕はここでどちらがいいとは申しませんけれども、やっぱり双方の得失をきっちり客観的な数字を出して皆さんに見ていただきながらある種の判断と選択をしていただかなければいけないだろう。  コストを考えたときに、焼却の方がはるかに安いのは多分ここの参考人の方はみんな御同意されると思います。燃焼法というのは過去に鐘化でもやっております。その後、廃棄物処理いろんなことをやったものですから、日本は大変高い技術水準があります。これはほぼ完成された技術と言ってもよろしい。したがって、コストの見積もりも比較的正確です。  ところが、化学処理はやったことないんですね。しかも、なかなか連続的な処理は難しい。したがって正確な見積もりは難しいんですが、こういうものは当初見積もりよりもふえるというのはまず常識だと思った方がよろしい。  そうしますと、大変粗っぽいことを言えば、焼却処理の方が化学処理の多分十分の一とか数分の一のコストだろう。あるいは時間もはるかに短期間、例えば十分の一ぐらいの期間で済むと思います。  常時廃棄物焼却するというのは、僕は循環型社会をつくるという意味で賛成ではないんです。ですけれども、これはもう使用禁止になった物質を緊急避難的に国際的な責任もあって短期間にやる必要があります。そのときに圧倒的に早くやれてコストが安いのは燃焼法なんですね。たまたま化学処理が今出てきているのは、燃焼処理をするとダイオキシンができる、したがって国民の支持が得られないから化学でいこうという話です。  コストばかりじゃありませんで、多分、多分ですよ、これはやってみなきゃわかりませんけれども、燃焼法はほぼ完成した技術だけれども、化学処理というのは多分実施の途中でいろんな事故を起こす可能性が確率的には絶対高いと思います。これは場合によっては専門家にきっちりした類推をしてもらったらいいと思いますけれども、僕は事故の起きる確率はるかに高いと。つまりそれは未完成の開発段階の技術です。そういうことになりますと、コストもかかるし時間もかかるし、場合によっては安全性さえ保証されていないときに、なぜ化学分析だけに今こだわるのか。  僕は、燃焼処理をやれとは言いません。しかし、改めて利用者の得失を厳密に提示した上で国民の判断を待つべきです。僕は国民をばかにしたらいけないと思います。やっぱり民主主義ですから良識ある国民を前提にするんですね、当たり前ですけれども。政治家や我々だけが良識があるわけじゃありません。国民も同じく良識あるわけですから、そういうところの理解と支持がなければこの問題は進みません。そういう意味では、僕はもう一回フランクに、端的に言えば化学処理燃焼処理の得失、さまざまなものを一回国民の前に出して選ぶべきだと思います。  僕は処理を進めることは大賛成でありまして、ぜひとも迅速にやるべきです。しかし、今の流れは化学処理にほとんど盲目的に傾いている。意図的に焼却を消しているというのは僕はすこぶる問題だと思います。そのことは結果として多分何がしかの税金を使うわけですけれども、国民の負担としてはね返ってくることはもう間違いがないと思います。  このときに、細かいことですけれども、環境事業団がおやりになるんですが、やはりマーケットメカニズムもききにくいし、さまざまな国のこういう組織というのが全貌とても我々にはわかりませんけれども、さまざまなむだ遣いをしていたという歴史は山とあるわけですね。  そうすると、ある程度国がやる必要があるけれども、僕はやっぱり仕事を仕分けしながらできるだけマーケットメカニズムが働くようなところで処理をすべきだろう。そうでありませんと、結果としては、大変大きな国民の税金をむだ遣いにして、多分役人はしかられませんけれども、政治家は政治的責任をとらされるんだと思います。ですから、僕はこのことはやはりちゃんと申し上げておいた方がいいかと思います。  それから、あとはもう駆け足なんですけれども、やっぱりいろんな世界や国民の安全、地球の安全を考えるときに、もう今は人と医学だけで考える世界ではないんですね。人も医学も含む人間の生存環境としての地球生態系、そういうことが極めてこれから人間の生存にとって必要です。そうなりますと、生物多様性なんということはこれからの環境研究技術開発の大きな柱の一つになるわけですけれども、そのあたりも含めてやっぱり地球生態系に対するPCBの影響と、それをどう防除していくか、あるいは特に途上国に対してキャパシティービルディングといいましょうか、専門家を養成していくとか、そういうことが大変必要だと思います。  もう一つ、カネミ油症の研究は、これは日本がやらなければいけない国際的責任があると思います。人体実験は許されませんけれども、不幸にして極めて大規模な人体実験をしたわけです。これだけ有機塩素化合物で貴重な人体実験は世界に皆無だと言ってもいいんですね。しかし、残念ながらカネミ油症のときの経緯は、率直に申し上げますけれども、医学界と患者との間にさまざまなそごがありまして、きっちりした研究をやられていないという経緯があります。  これは、最近セベソなんかでは大変おもしろい、おもしろいといいましょうか、女の子がたくさん産まれる、ダイオキシンに暴露したら。しかも、それは女性ではなくて、性成熟以前の男の子がダイオキシンに暴露した場合に、その男の子が成長して成熟過程に入ったときに子供に女が多いんですね。ちょっと今まで考えられないようなことが起きてきているわけです。毒性とか生理影響はそれだけ今多面化しているわけです。  そういった、いろいろ動物実験ではわからない、今まで許されたような人体実験ではわからないさまざまなことがカネミ油症からまだまだわかる可能性があります。ただ、注意しなければいけないのは、この研究をすることによってカネミ油症の方の毒性が低減するとか、カネミ油症の方の健康が回復するというのはないんですね、はっきり申し上げて。そこは、だから我々としてはきっちりした受けとめ方をしておきませんと、やっぱり患者側の協力が得られないことがあると思うんです。これは何としても国としては誠意を尽くして、世界のいわば最も貴重な人体影響がわかるケースとして、国際的にやる責任と義務が僕はあると思っております。  大体時間です。
  10. 吉川春子

    委員長吉川春子君) ありがとうございました。  次に、細見正明参考人にお願いいたします。細見参考人
  11. 細見正明

    参考人細見正明君) 東京農工大学の細見でございます。  私、個人的にはPCB分解技術研究開発を九〇年代から進めてまいりました。また、このPCB処理を進めるに当たって、私としては、環境庁で設立されましたPCB混入機器等処理推進調査検討委員会、これが多分PCBのいろいろ化学的な処理技術などを評価し始めた大きなきっかけではあったと思います、そういう委員会参加させていただいています。それから、POPs条約の政府間の交渉化会合、これ五回ございましたけれども、そのすべてに参加させていただきまして、その中でPCBの問題というのが、もちろんダイオキシンもそうですが、大きな問題であったということでございます。それから、東京都のPCB廃棄物適正処理検討会のまとめ役もさせていただきましたし、より身近な例としましては、八王子市の小学校の児童がPCBを浴びたという事件で、今そのリスクについて検討を進めております。そういう国の立場、それから都、それから八王子市といったような立場でそれぞれ参加させていただいて、その中から少しPCB処理に関する意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、お手元に資料が行っていると思いますが、もうこれは既に多くの先生方が述べられていることですが、PCBは特性から、魚とか鳥だとか泥、底質ですが、そういうところにPCB蓄積しやすくて、そういうモニタリングデータから見ますと、同じくDDT使用禁止になったものと比べますとPCBはなかなか減らないということがございます。これは、DDTは非常に急激に減少しているんですがPCBは減っていないということは、何らかの形で環境中に漏れ出ているんではないかということが考えられるわけです。  こういうPCB汚染された汚染物とかPCBを含む機器というのはどのように保管されているかといいますと、トランス、コンデンサーのような閉鎖系で使用がされているわけです。こうした使用というのは現在も認められていますが、耐用期限が過ぎれば保管されていく。すなわち、これからも保管がふえていくことになります。保管がふえていくということは、それだけ保管に対するコストがふえていくということになります。  どういうところで保管されているのかといいますと、電気を利用している事業所というのはもうすべて考えられるわけです。こういったところは我々の身近なところにある。例えば、大きな工場だけではなくて小さな事業所を初め公共的な施設であるような浄水場だとか下水処理場だとか、さらには小中高といったような学校、あるいは私どもの大学でもございますが、そういう大学、さらには地方自治体の市庁舎、県庁舎、そういったところでは必ず使われていたわけですね、そこで保管されていると思われます。  なぜ三十年間も保管され続けたのかということですが、従来、処理技術として高温焼却処理が認められていたわけですが、多くの反対でなかなか建設が進まなくて処理体制が未整備であったということです。平成四年だったと思いますが、PCB廃棄物が特別管理廃棄物というふうに、またこれも処理、処分についてはより慎重にならざるを得ないような状況になったわけです。  こうした長期にわたる保管がどのような問題を引き起こしているかについてはさまざまなデータが出ておりますが、厚生省のデータによりますと、紛失、不明の高圧トランス・コンデンサーというのは一万一千台ぐらいある。この十年間ぐらいを考えますと毎年千台ぐらいがなくなっているのではないかと。こういう高圧トランス・コンデンサーというのは非常に高濃度PCBが含まれていますので、不明、紛失というのは環境中に漏出していく可能性が最も大きなパスではないかというふうに考えられます。さらには、保管されているはずですが、まだ未報告だということも考えますと、十分管理されているかというと、疑わざるを得ない状況ではないかと思います。  さらに、小規模な事業所の保管量が多いということが非常にこの場合特徴になってきます。そういう小規模な事業所というのは、やはり現在の経済的な状況から考えますと倒産とかそういうところの確率が高く、そういう状況になりますと不法投棄されやすい、あるいは保管の責任が非常にあいまいになってくるという問題があります。  先ほど立川先生高温焼却処理ということについて申されましたけれども、従来、これは私の意見でございますが、なぜ反対されてきたのかというと、技術的に効率かどうかという問題ではなくて、住民の合意がいかに得られるかというのが問題ではないかと。その際に問題として指摘されているのが、ダイオキシン類などの有毒物質生成があるんではないかとか、それから、多くのPCBが一挙に集中して処理される可能性がある、そうすると我々地元のPCB以外の物もそこに集中されて処理がされるということに関してはなかなか合意が得られにくいとか、そしてもう一つは、焼却の場合、最終的には排ガスとして大気中に、環境中に出ていくわけですが、これは非常にボリュームとしては大きく、それの管理に対しては処理施設が膨大になってくる、常時監視というのはなかなか難しいということでございます。  では、なぜ化学処理なのかというと、これを逆をいけば、一ついっているというふうに考えればよろしいかと思います。  例えば、多くの化学処理は脱塩素化反応という塩素を引き抜く反応でダイオキシン生成がない、さらには、多くの場合、液相系、液状の中で反応が起こりますので排ガス生成がほとんどない、焼却に比べるともう全く無視していいという量であります。ということはモニタリングがやりやすい。それから、もしうまく処理がされていなかったとしてももう一度やり直しがきく。保管といいましょうか、貯留が可能だということですね。それから、特徴的なのは、焼却処理の温度だとかに比べると温和な条件、マイルドな条件である。ということは、制御も容易である。その結果、移動型化だとかあるいは小型化が可能になってくるのではないか。  処置技術の性能については、既にPCB汚染した油の卒業基準である〇・五ミリグラム・パー・キログラムという非常に厳しい値を満足できる十分な能力がある。もちろんコプラナPCBダイオキシン分解できるという特徴がございます。  しかしながら、こういう化学処理焼却処理についてもですが、全くリスクがゼロかと申しますとそうではなくて、七番目に書いてございますように、現在、そのまま保管しておくと十四トンから百四十トン・パー・年漏れ出ている可能性があるのに対して、処理を進めるということで、これもゼロのリスクではありませんが、〇・一キロから四キログラムというふうにはるかにリスクが軽減される可能性が高いということで、処理推進を図っていかないといけないと考えております。  もう一つの問題は、PCBは、酒井先生おっしゃったようにコプラナPCBとかジベンゾフランを含んでいる。特にコプラナPCBを含んでいる。これはダイオキシンと同じような毒性ということですので、PCBというのはダイオキシンとしてもとらえるべきであろうと。その図についてはちょっと時間がないので詳しくは説明できませんが、最後のページにグラフ二つで示しております。これから言えますことは、PCBはその二万分の一から五万分の一ぐらいのダイオキシンを必ず含んでいるということです。  先ほど、紛失不明分がすべて環境中に放出されているというふうに考えますと、ざっとこの関係式から見積もりますと、年間一ないし三キログラムのダイオキシンとして環境中に放出しているということが見積もることができます。これは、現在、ダイオキシン類対策特別措置法によって環境中の放出量が約三キロ弱ぐらいになっていると思いますが、全くその量と同じ量であるということでございます。  ダイオキシン対策に対しては多くの費用が私は投じられてきたのではないかと思います。焼却処理に対してもいろんな面でコストが投じられてきた。しかしながら、PCBの例えば化学処理技術に関しては余り政府の大きな経済的な支援がなかったのではないかと思います。ですから、技術にしても、今民間レベルで開発された技術というのは開発経費がすべてこの中に盛り込まれているというふうに考えますと、当然コストとしては高くなる可能性はあると思います。しかし、ダイオキシン対策というふうに考えればまた別の見方もできるのではないかと私は思います。  それから、グローバルな視点からは、先ほど申しましたようにPOPsの条約の中で採択されたわけですが、PCBが最もPOPsの特徴を持っている物質で、これについては、立川先生がおっしゃられたようにもう世界じゅう広がっておると。このエリミネーション、根絶、廃絶を目指すというのが最終的な目標ですので、PCBもそういう形でなくしていく、廃絶していくというのが我々に課せられた責務だろうと思います。  その際、この条約の採択に当たりましてはNGOが多くの役割をしてきたというふうに私は思います。五回参加させていただきましたけれども、いずれの会合においてもNGOが果たす役割は大きかったと思います。  それから、処理計画について少し意見を書いてございますが、ちょっと時間が少しあれなので、私としては三枚目の十四番目のところで、これにかえたいと思います。  東京都におけるPCB無害化の取り組みをPCB廃棄物適正処理検討委員会で行ってまいりました。その際に考えましたことは、処理推進を図らないといけない、これは多くの人が理解していただけるというふうに思いますが、しかし十年ないし十五年かかるかもしれないということになってきますと、同時にPCB、保管されているものを適正に保管していく、これを徹底しないといけないのではないかという、両輪のごとく対策を進めていかないといけないのではないかというふうに考えております。  そういう意味で、適正保管の徹底ということで、使用中の機器も含めて登録制度を必要とするのではないかと、これは東京都の場合でございますが。それから、保管状況調査、公表、立ち入り指導、これも行うと。さらに、不適正な管理の場合には事業者名を公表するといったように非常にちょっと厳しい対応も考えてございます。  それから、実際に設備、施設を整備したり安全の確保をするためには、PCBの運搬の安全の基準だとか、今現在法令の基準がないものについても独自に基準を設定してやろうとか、特に都民の参加による協議会、ここでいろいろな技術あるいは安全性について議論をしていくというような仕組みをつくっていきたいと。  それから、都有地の貸与も含めた公共の関与として処理施設の整備を図っていくべきではないかと。  それともう一つ、これまでPCBの管理についてまじめに回収命令を受けて保管をずっと行ってきた業者、事業者と比べて、行方不明だとか紛失したという業者との差が余りにも不公平ではないかと。そういう意味で、行方不明のPCB機器の追跡調査というのも必要ですし、現在、事業者、特に小規模な事業者が保管されているものについては何らかの支援が必要なんだろうというふうに私自身は思います。  最後にですが、二つございます。  一つは、行政の役割ではないかと思いますが、三十年間このPCB処理が進まなかったということに関して、多くは行政の責任がどちらかというと問われてきたのではないかと思いますが、逆に今、現在こうしてPCBの関連法案が検討されているということは、現在担当されている行政官の人がかなり努力された結果であろうというふうに私は評価していきたいと思います。  この評価をさらに高めるという意味では、立川先生も御指摘されましたように、カネミ油症の問題があろうかと思います。特に、国あるいは公共が関与してPCB処理推進していかないといけない。これは多くの賛同が得られると思いますが、その際に、より国の信頼性を高めるためには、何も罪もなかった、落ち度がなかったカネミ油症の患者さんたちに対して、精神的にもあるいは医学的にも、さらには経済的にも何らかの支援をしていく責務があるのではないか。そうすることによって国の信用が高まって、より国が関与した、公共が関与した施設整備も進んでいくのではないかというふうに期待しております。  以上でございます。
  12. 吉川春子

    委員長吉川春子君) ありがとうございました。  森田昌敏参考人にお願いいたします。森田参考人
  13. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 過去二十五年ぐらいこのPCBの問題に汚染の現状の把握とかそういったことを含めまして携わってきまして、そこでの経験みたいなものをここで少しお話をさせていただきたいと思います。  お手元の資料では、PCB処理対策を考える上でのいくつかのポイントというふうにしておりますが、主なことは二つあります。  一つは、PCBの有害性についての認識が過去四十年間の間に大きく変わってきていると。そして、そのことはもちろん人の健康あるいは生態系への影響という側面もありますし、またもう一つは経済的な側面もあるという点で、その推移についてまず御報告をしたいと思います。  それから二番目には、PCB処理というのは、その毒性がわかってきた時期に応じましていろいろと試みられるんですけれども、それがどのようにして推移してきたか、そして今回それを全部消去するようなプログラムを実行しようとしてきておりますけれども、そこに至るまでのプロセス、苦労、そういったことについても少しお話をさせていただきたいと思います。  まず最初に、PCBの有害性についての認識の時間的な推移でありますけれども、一九六〇年代におきましては、PCBは無害で安定で非常にすぐれた性質を持った物質だというふうに認識されておりました。この結果として、最盛期、ほぼ一万トン近い量が年間使われるという時期がございます。そのようにして使われた用途というのは、一つにはトランスなどがありますし、また紙の上に塗りまして、そしてノンカーボン紙として使ったということもあります。いろんな多目的な用途に使われてきております。  それが暗転いたしますのは、それが徐々にわかってきましたのは、少しずつ職業病の発症みたいなものがPCBのせいではないかということが六〇年代の後半に見え始めてきております。それから、野生生物での蓄積が、特にスウェーデンのグループが最初に報告しますが、やはり六〇年代の後半にPCBがたまってきておるのではないかということが観察されておりました。  PCBのことが暗転いたしますのは、カネミ油症の発症、それからその前に発生しましたダークオイル事件の発生によって起こっております。  この事件というのは何かといいますと、米ぬか油をつくる、そのときに真空蒸留するんですが、そのときに油の側を加熱するためにPCBを熱して循環させておったということであります。そのパイプに穴があき、やがてその穴からPCBが米ぬか油の方に移行し、それを食べたまずブロイラーが次々と死んでいった。それがなぜかいつの間にか食用油の方にも回されていて、そして大量の患者さんが発生したというのがカネミ油症の事件であります。  このとき、比較的早い時期にPCB汚染だということが九大のグループによってわかりまして、そのときからPCB毒性というものが注目され始めてきたわけであります。  一九七二年になりまして、通産省の行政指導でPCBの対策が始まり、引き続いて七三年から化審法が制定されてPCBのようなタイプの物質についての規制が始まりますし、関連する環境法も整備され始めたということが起こっています。  同時に、一九七二年に、イタリアの研究者研究で、PCBというのはやはり毒性が弱くて、そしてその製品の中に含まれている毒性というのはそこにあるごく微量の塩化ジベンゾフランによって起こっているのではないかという報告が出されます。  私のこの種の研究も実はここにありまして、カネミ油症というのは、PCBの中毒ではなくて、PCBが熱媒体として使われている間に変性してできたジベンゾフランによるものではないかという研究を七五年ぐらいから開始しております。現在では多分そういうことであろうというふうに認識されてきていると思いますが、いずれにしてもPCBといわゆるダイオキシン類との間のかかわりがこの線上にあったわけであります。  一九七八年に入りまして、日本で起こったカネミ油症と全く同じ事件が、台湾油症と言っていますが、やはり米ぬか油の製造で起こっております。  やがて一九七〇年代の後半から八〇年代にかけてPCBの対策が打たれ始め、かつまた処理技術なども開発されあるいは処理へ進もうとするのですが、これについてはちょっと後で述べます。全体的に世界的にもなかなかうまくいかなかったという歴史があります。  一九九〇年代に入りまして、PCB毒性学が徐々に徐々に広がりを見せ始めまして、やがてPCBは非常に微量で特に猿のたぐいに対しては強く影響が出るということがわかってきまして、PCBはいわゆる環境ホルモンとしての作用が一番低いレベルで発生するのではないかという認識に達しつつあるところであります。  また、関連いたしまして、米国の五大湖周辺の住民のうち、魚をたくさん食べる人の間の児童の知能指数が少し低下しているのではないかという議論がありまして、これも環境ホルモン作用との関係であります。  一九九七年に入りまして、WHOは、PCBの中に入っておりますコプラナPCB毒性が高く、それについてはダイオキシンと同じような評価の枠組みに入れるべきだというふうな方向で進んでおりまして、これにつきましては、ダイオキシン特別措置法の中でコプラナPCB我が国においては仲間に含まれるという方向で進んでおります。  一九九九年にベルギーの鶏の肉の汚染が発生いたしました。これは比較的少量のというと変ですが、一言で言えば、ちょっとしたトランス一個分のPCBが鶏肉用のえさに混入したということであります。えさに混入したという点では、実はダークオイル事件と極めて類似した出来事が三十年後に発生したと言えるかもしれません。ここでは当然鶏の生育が悪いとかそういったことが発生して、そこで露見するわけですけれども、全体としてはEUの中での農業戦争の色彩を帯び、したがってここで猛烈なコストがかかりました。つまり、わずかトランス一個分のPCBが混入したということのために数千億円の出費が強いられたということが起こっています。  このような一連の流れの中で、つまりPCB毒性はそれほど怖くないというふうに考えていらっしゃる、PCBを保管している方の多くは多分そんなふうに思っていらっしゃると思います。これはいろんなところで保管しておりますけれども、そこでは昔からPCBは使っていて怖くない、そこではそれほど非常にシリアスに受けとめられていない。しかし、一方でPCBダイオキシンの仲間で非常に怖いものだと思っている消費者の方々存在する。その間がかなり大きく隔絶しているということがあります。  それから第二に、もう一つありますのは、食品汚染がもし発生するとするならば、その損失は極めて甚大で、そういう意味では私たちは今非常に高い潜在的なリスクの中で生活をしている、そういう感じがいたします。  次のページをめくっていただきまして、それでは、そのようなPCBはリスクがあるということはわかるんですが、どのようにして処理をすべきか。  それを消すべきだということはもう七〇年代の半ばぐらいから強く認識されておりまして、いろんなところでアプローチがされております。焼却処理が一番安い方法だということで、いろんなところでトライアルが試みられるということがあるんですが、多くの場合はうまくいっておりません。それから、船の上で焼く分には立地の問題がないだろうということで、PCB焼却する船もつくられた時期がありますけれども、それも漁業関係者の反対もあり、そんなに許容されることではないという状況になってきました。  あるいは、私が二十五年ぐらい前にカナダでPCB処理の話を担当者としたときも、彼はセメントキルンで焼くのが一番よさそうであると、しかしながらセメントキルンをセメント工場まで運ぶ周辺住民の輸送上のリスクの問題、あるいはそのキルンの周辺住民の合意がなかなかとれないといったことがありました。  したがって、全体としてPCB処理をやるべきだということの総論はだれしも賛成であるけれども、しかしながら個別の立地になりますとたちまち反対の中で消えてしまうということが過去三十年間に起こった出来事であります。特に、一九九〇年代に入りまして、ごみ焼却場を初めとしてその焼却過程からダイオキシンが出るということが世界的に心配される出来事になる過程で、焼却処分といったものが相当困難になったという背景があります。  一方、我が国におきましては、高砂におきまして鐘淵化学が、これが日本PCBの最大の供給者であったわけですけれども、そこに回収して保管されておりました五千五百トンのPCB処理するということで、これは住民の合意を得て処理が円滑に進行いたしました。  ここのロジックは何かといいますと、そこに積み上げられた五千五百トンのPCBがもし周辺に漏れたときには、そしてそれは必ずさびたりいたしますので漏れるリスクがいつも存在するんですが、それは壊滅的な環境影響を及ぼすであろうと。そういう意味で、そのリスクを軽減するということについて地元も賛成されたと、そういう関係であります。  それは非常にうまくいったケースでありまして、その後、五年前に兵庫県南部地震、神戸震災がございましたけれども、あのときに相当大きな揺れが実は高砂でも発生したんですが、そのときにタンクが倒れて漏れるというようなことがもし発生していたならば、瀬戸内海の魚介類は少なくとも商品的には壊滅的な打撃を受けた可能性がある。そういう意味では、早目に処理されたというのが大変よかったケースであります。  いずれにしましても、国民全体のリスクの低減が必要だということがありますし、また潜在的に食品の商品価値を含めまして大きなリスクを抱えたまま一方である。しかし一方では、それを持っていらっしゃる特に中小の事業体は、例えば仕事場の片隅に置いている、あるいは学校の変電室の片隅にPCBが置かれている、そんな状態が現在もなお続いておりまして、全体的なリスクを軽減するということについては多分だれも反対はないということであります。  それで問題は、それではそれを処理するような工場を立地するときにどのようなアプローチが可能であるかということでありますが、オーストラリアの例を少し申し上げますと、オーストラリアにつきましてはトップダウン型の立地を計画しました。しかしながら、それは各地域でたちまち反対運動の中で消滅していきまして、そして方向を変更いたしまして、住民合意型で、住民参加する形でやってはどうかというアプローチに切りかえたわけであります。その切りかえる過程で、焼却という選択肢がほとんど消えまして、化学処理中心にして進んでいったということがあります。これが一九九〇年代に入ってからの一つのトレンドになっておりまして、日本もその延長線上で今、化学処理中心に動いていると。もちろん、先ほど立川先生がおっしゃったように、焼却ないしは熱過程による処理というのは、多分コストは安いということがありますけれども、そういう意味ではクリアしなきゃいけない部分があるということであります。  そして同時に、PCB処理の問題というのは、先ほど輸送過程の話もしましたけれども、全システムの問題になってまいります。一つ一つ技術については結構いいものもあります。しかしながら、それを集め、そしてその集める手元のところでは結構乱暴に扱われているということもあり得るということも含めますと、全システムで安全性を確保するということが必要になります。また同時に、周辺の住民の方の御心配ももっともなところがありますので、相当しっかりとした公的関与の必要性があるだろうということであります。  例えば、私は東京電力のプログラムを少しお手伝いしたことがあります。それは非常に薄いPCBです。薄いというのは、柱上のトランスがあるんですが、柱上といいますと電柱に乗せてあるトランスですが、それが、中にある油をリサイクルしている過程で微量なPCBによって汚染されてしまったという、そのような柱上トランスが非常にたくさんありまして、一説によると三百万個の柱上トランスがあったということなんですが、その油をどうしようかというときです。  当初、電力側が考えていらっしゃったのは、それはPCBも薄いことであるし、五〇ppmかあるいはそれ以下ですが、薄いことであるから、そのまま発電炉で燃してしまいたいというのが最初のアプローチでありますけれども、それはいささか乱暴ではないかとか、あるいは法律的な整備の上でそれができるかどうかという議論があります。  そうすると、どういうふうにしようかということになりますと、一つは、化学処理をすることによってまずPCB濃度を小さくする。例えば二ppm、あるいはもっと下にまで下げてしまって、どこにある油、あるいは人体にある油の濃度PCB濃度、そのぐらいまで下げたものについては別のところで焼いてもよろしいということになるのではないか、そういうロジックの上で化学処理のトライアルがされました。技術的にはよさそうだということで、環境庁の方からもこれはいいんじゃないかということで進みつつあったんです。  次に、東京都の方、担当者は地元の方にまずお願いに行って、それで東京都の許可を得るという作業に入ります。そうすると、また東京都はさらにいろいろと上積みの御注文をされるということがあります。続きまして、板橋区の方へ行きまして、板橋区の方でまた区の御指導を受ける。  結局、そのプロセスの過程で、つまり住民のいろんな御理解を得る過程で、非常に少量のPCBのパイロットプラントを動かす、試す、そしてそれを電力の変電施設の敷地の中でやる、そういうプロセスですら約一年半の時間がかかって計画が非常におくれたという経験があります。  このようにしてPCB処理というのは周辺の方の御理解を得るということが非常に重要で、そのために少しコストがかかるのも避けられないというのが現状ではないかと思います。  なお、PCB処理コストというのは、もちろん保管している方が実際は使ったわけでありますので負担すべきだということに一方で当然なりますが、しかし一方では、膨大なトランスの保管などが非常に小さい業者さんの中に存在いたしまして、そこのところではそういった危険に対する認識も実はそれほどないかもしれない、それをとにかく集めて処理をしなければPCB処理は進まないと。そしてまた、PCBは無色透明でありまして、目で見えませんので、それがどこかに捨てられてもだれも検知できないということを考えますと、この中小事業者のPCBをとにかく集めて、政府がある程度負担した形で展開をしないとこのリスクは下げられないだろうというふうに認識しております。  以上であります。
  14. 吉川春子

    委員長吉川春子君) ありがとうございました。  以上で参考人皆様からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 自由民主党の清水嘉与子と申します。  本日は、参考人先生方、本当に貴重な御意見をちょうだいいたしまして、私どもの法案審議に大変参考になる御意見をたくさんいただきました。幾つかの点について御質問させていただきたいと思います。  私も環境行政を少し担当させていただきまして、そのときにこのPCBの問題は本当に深刻な、早くしなければいけない問題、しかもほうっておけばどんどん噴出してしまう、それが非常に環境を汚しているということがわかっているわけですので早くしなければならないと思っていたのですが、きょうやっとこうしてその審議に直接携われますことを大変うれしく思っているわけでございます。  しかし、この三十年もの間PCB処理が進まずに先進国の中では一番おくれてしまったという状況になったわけでございまして、この法案審議の過程の中では、やはり住民の方の反対でありますとか、なかなか処理が、立地が進まなかったというようなことで今日まで来てしまったわけでございます。しかし、先ほどの高砂のお話もありますように、ほうっておけばそれだけまた漏れて、そして環境を汚すということがわかっているにもかかわらず今日まで放置してきた。  なぜこんなにおくれてしまったのか、その辺について実際にそこに携わってこられた先生方から御意見をちょうだいしたいというふうに思うんです。そしてまた、この三十年間何にもできなかったものがこの法律をつくることによって本当に処理が進むだろうか、この辺の見通しについてもお伺いしたいと思うんです。  それでは、恐縮ですが、酒井参考人細見参考人から、この点についてよろしくお願いを申し上げます。
  16. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 三十年間処理の進まなかった理由ということでございますが、これは先ほど来、立川先生森田先生がお話しされておられるとおり、一つ高温焼却、高燃焼分解に対するやはり一定の不安感というものを社会各層が抱いたということが最大のポイントであろうかと思います。そこに対しましてその処理の不安感をぬぐいながらその立地に関して社会合意するすべを社会全体として結局持ち得なかった、そういうことに尽きるのではないかと思っております。  そういった意味で、今回こういう法案を審議いただいているということは、今後この問題に関するまずは処理必要性という部分で、やはり一人一人の認識が進むということの効果というのが、まず一点として処理の促進の方に向けてはいい方向に働くことを期待しておりますし、何よりこの間いわゆる情報の公開あるいは透明性というものと、それと処理の構想段階からの社会各層の関与というようなことの中で、基本的には合意していける力を日本社会は持っているというふうに私どもは信じたいと思っております。
  17. 細見正明

    参考人細見正明君) なぜ三十年間も保管され続けたのかという御指摘でございますが、私のメモにも少し書きましたけれども、そのほかに私が少し今考えておりますのは、確かに効率という点、そういう視点から見ると、一カ所にコストを投資して、そこにいい施設をつくって、そこで処理をすれば非常に効率よくできる、これは非常に正しいことだと思いますが、もう一方で、もう一個別の視点としては、そこの近くに住んでおられる住民の方の視点もやっぱりもう少し取り入れるべきではないかという意味で、トップダウンの方式とそれから地域で本当に今何が問題でそれをいかによくするかという視点もないと、なかなか合意が得られにくいのではないかというのが一つございます。  それから、先ほどちょっと最後に行政の方をお褒めいたしましたけれども、実は逆のことで、三十年間行政のシステムというのは二年ないし三年で交代されていくということがございまして、この問題を解決していこう、取り組もうとすると、やはり私は、長期にかかわるという決意とか、そういう行政的な組織の問題も少しあったんではないかと。今回、それに反して処理を進めていこうという法律ができそうですので、それは非常にたたえるべきではないかと逆に思います。  それから、法案ができたからといって、その処理が本当に進むのかという御指摘ですが、一応体制としてこういう法案ができて、その上で、先ほど酒井先生もおっしゃられたように、リスクコミュニケーションだとかあるいは住民の関与とか、そういういろいろな今までになかったことを踏まえていけばより進んでいくものというふうに考えています。
  18. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  この法案の実効性を上げるためにいろいろと考えていかなきゃいけないわけですけれども、これまでの三十年間進まなかった大きな理由として、住民の反対があったとかあるいは行政の怠慢があったという御指摘だったと思いますけれども、これまでにも何回か、もう三十数回、民間方々が努力をして、これを処理しようという努力があったわけですね。しかし、それができなかったということでございます。  今回の法律の中では、やっぱり民間にお任せすることの限界みたいなことで、公的関与ということで環境事業団がこの事業を担当するという仕組みになっているわけでございます。そのことに関して立川先生からも先ほど御指摘があったわけですけれども、ちょうど特殊法人の見直し論が進んでいるわけでございます。  そういう中で、この環境事業団が担当するということに対して、環境事業団の生き残りを図るんじゃないかとか、あるいは民間技術を既にもういろいろ蓄えているのにそれに公的なところが出てきてどうなのかというような議論だとか、先ほどおっしゃいましたもう少し民間に進めてもいいんじゃないかという御意見とちょっと反するのかもしれませんし、また、今環境事業団が考えているのが化学的な処理というようなこともあって、高温焼却処理ですれば非常に経済的な効率もいいにもかかわらず、そういうことを中心に考えているのはちょっとおかしいんじゃないかという先生の御指摘もあるわけでございますけれども、しかし、何分にも公的な関与というものがやはり私も必要なのかなと。  そういう意味では、環境事業団がこれを進めるのはもうやむを得ないのかなという感じもするんですが、しかし、先生がおっしゃった心配を排除するためにも、その公的関与の問題の必要性と、それからもし環境事業団が担当するとすればどういうことを注意しなきゃいけないのかという点につきまして、立川先生から御意見をちょうだいしたいと思います。
  19. 立川涼

    参考人立川涼君) 民間とか個人だけでこの仕事が進まないのは確かなんですね。制度的な枠組みをつくるのは間違いなく行政や政治の課題だと思います。この問題がここまで複雑でこじれてまいりますと、やはり何らかの形で行政の関与あるいは税金の負担というのは僕は避けられないと思っています。  ただ、同じことを繰り返しますけれども、それに対してちゃんと監視がきく、抑制がきく、あるいはコストについてちゃんと考えながら選択ができるといったことをするためには、従来のような法人あるいは政府関係機関ではやっぱり不安が残るというのが、この事業団じゃなくて、ほかのさまざまなことからいうとそうなわけですね。  そうすると、そういうものがちゃんとやられるという担保があるのかどうかなんですね。相当やっぱり高くついていることが多いんです、ほとんどの場合。今度の場合も、というのは、事業団が直接お仕事をするわけじゃありませんから、結局民間企業に最終的には基本的な仕事をお願いしますね。そうすると、企業の側もビジネスのサイズは大きいほどいいんです。ですから、そこでもコストを安くするというインセンティブはほとんど働きません。むしろ、事業団なり行政の側がそのことを明確にしておかない限り、コストはうっかりすると雪だるま式に膨れ上がるわけですね。そういう意味で僕はコスト意識というのが行政ないし事業団に極めて重要だということをむしろ申し上げたいわけです。
  20. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  それから、森田参考人にお願いしたいんですけれども、先ほど立川参考人の方からも指摘されましたけれども、これは酒井参考人からも、PCB処理技術の問題なんですが、高温燃焼分解法というのはもう既に欧米でも確立済み技術で、日本でもそういうことが確立されているんじゃないかと。しかし、それにかえて今の、平成十年に環境庁、通産省、厚生省の三省が連携して化学分解技術の実用化の検証を行って、そして最終的に廃棄物処理法への基準化を行ったということでございます。  この化学処理をする技術、これは恐らくこれからもかなりコストは高いにしても進められる。つまり、これは住民の反応等もあってということも多いと思いますけれども、これが進められるのではないかというふうに私も感じているわけでございますけれども、しかしそこでも、立川参考人が言われたように、まだこれが初めて使われる技術で本当に安全性とかなんとか、そういう点では非常に問題があるんじゃないかという御指摘もちょっとあって余計心配になってしまったわけなんですが、今開発されているこの技術は、安全性を含め既に実用化レベルに達していると言えるのであろうかどうであろうか、そしてまた諸外国ではどうなっているのかというようなことについてお教えいただきたいと思います。
  21. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) PCB処理技術というのは、最後にPCBそのものをどうするかということが一つあります。それと同時に実はもう一つございまして、それは、例えばコンデンサーなんかにたくさん入っているんですが、その中には木とか電線とかいろんなものが入っています。そういったトランスからPCBを取り出してどうするかというプロセスもありまして、実はこれが一つのシステムとしてパッケージにされないといけないということがあります。そういう意味では、実はその前段のPCBを取り出す作業のところに結構コストがかかるという側面もちょっとありますので、このコスト議論の中にはそのことも含めて考えなきゃいけない、これがまず第一。  それで、そうやってトランスからPCBを抜き出しまして、あるいは木にしみ込んだPCBも取り出してという、いろんな複雑な操作を経た後PCBのものができ上がって、最後にそれをどういうふうに処理しようかというときに、燃焼という処理もありますし、それから化学処理という処理もあります。  それで、一九九〇年代から世界じゅうで焼却反対といったものが広がってくる過程化学処理技術というのはどんどん発達をしてきまして、日本よりもむしろアメリカ、ヨーロッパあるいはオーストラリアでこれがどんどん使われるようになった技術として広がってきています。そういう意味では欧米で発達して確立してきているという側面があります。  一方で、我が国におきましても、そんな流れを受けまして、焼却の方はちょっと無理そうである、じゃ化学処理を発展させようとしていろんな民間企業が取り組まれてきました。その多くは実は技術導入だったりするんですが、同時に日本の固有の技術として開発されたところもあります。そこにつきましては、その技術そのものの評価というのを環境庁、厚生省あるいは通産省の方で少しやっていただきまして、非常にもう疑いのない技術としてあるものもありますし、まだもうちょっと成熟をするのに時間がかかるかなというのもあることはあるんですが、全体として見ますと、欧米化学処理技術に並ぶか、あるいは欧米そのものの技術をそのまま導入した形でいろいろ発展してきている。  そういう意味では、少し選ばなきゃいけない部分がまだ実用的なところでは残っているかもしれませんが、技術的にはほぼ安心できる状態になっている、ただしコストは燃焼に比べて少し余計にかかるだろう、そういうことは確かかなと思います。  ただ、コスト議論の中では、先ほど申し上げましたように、燃焼とか何かということの手前にある部分がまだ結構ありますので、そこにあります例えば銅線なんかもリサイクルをするとか、いろんな仕組みの中で全体を構成しよう、構成する必要があるということを含めてちょっと複雑ではあります。  以上です。
  22. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  終わります。
  23. 堀利和

    堀利和君 民主党・新緑風会の堀利和と申します。  本日は、大変お忙しいところ、貴重な御意見を伺うことができまして、本当にありがとうございました。  私のような素人ですと不安だけが先立つということがございまして、その意味では、専門家方々の御意見を十分お聞きしたいということがございます。しかし同時に、立川先生が言われたように、何か専門家だけに任していていいのかという、言うなれば、市民参加型の社会なり自己責任という昨今の社会を私たち自身がつくっていくという観点から申し上げますと、やはり専門家住民、素人が一緒になって協力し合って解決していくというのが今日の風潮だろうと思います。  そういう中で、この三十年間なぜ進まなかったということについては、先ほど来、住民ともども十分な理解をお互い得ながらやってこなかったということがあるわけですけれども、今高温焼却方法と化学的処理方法ということが私の前に提示されているわけですけれども、そうなりますと、いわゆる技術論的に、もちろんコストも考えなきゃならないわけですけれども、果たしてどうなんだろうかということを大変私自身も考えさせられるわけです。  化学処理ですべて可能なのかといいますと、私自身のにわか勉強では、やはり高圧コンデンサーにしても、PCBそのものは化学処理ができても、じゃその容器はどうするという話、あるいは低圧コンデンサーの場合はどうするんだと。さまざま低含有量の、あるいは容器というものを含めた場合には恐らく最終的に焼却処理ということも考えざるを得ないと思うんですが、そういう点でまず立川先生細見先生にもう一度、化学的処理技術論的な面、社会的な面を含めての問題と、焼却処理についての評価を改めてお伺いしたいと思うんです。
  24. 立川涼

    参考人立川涼君) 森田参考人が大変重要なことをおっしゃったんですけれども、私が申し上げた化学処理燃焼処理というのは、いわばトランス、コンデンサーの油をみんな集めてきて、大量の均質の油があったときにそれを大量処理する技術として議論したわけです。ところが、実際には、各地にばらまいてあるトランス、コンデンサーを処理地まで持ってまいります、あるいは工場でそれから油を抜きます、あるいは残った箱をどうするかと、いろんなことがあるわけですから、当然のことながらそのコストもそういうものをみんな含めて考えなければいけません。ただ、その辺のコストはある意味で共通といってもいいんですね、どの方法であっても。ですから、専らコストの差が出るのは最終的な溶液になったPCB処理だろうという気がいたします。  ただ、どちらがいいかという問題は、本当に最終的には技術論であると同時に、僕はある種の国民の選択でもあり得るかと思っているんですけれども、そのために必要な情報をできるだけお出しする必要があるけれども、残念ながら最近は化学処理データが圧倒的に多いという社会的な状況はございます。ただ、化学処理一定水準は当然あると思いますから、今後の進歩、改良も含めて、いずれの方法それなりに僕は可能だと思う。日本は大変高い科学技術水準があるわけですから、基本的には、レアケースとしてのトラブルは別ですけれども、ヒューマンエラーは。それ以外ですといずれにしてもそれなりにこなせると思います。  したがって、そうであるならば、コストというのは利用者が判断するときに大きな差になるというのが僕の立場です。
  25. 細見正明

    参考人細見正明君) コストの話がずっと出ておりますけれども、PCB処理の問題というのは、容器からPCBを取り除いてそれを分解していくという二つの大きなプロセスに分かれるわけですが、そのトータルのコスト評価すべきであろうという意見です。  その化学的な処理技術焼却処理技術との比較というのは、どちらかというとその後者のプロセスで、すなわち液状のものになったものをどのように分解するかということでもし仮にそういうふうな比較をするとすれば、効率あるいは速度という観点からすれば、高温焼却の方がはるかに速いというふうに思います。ただ、違うのは最終的な形態だろうと思うんですが、化学処理の場合は、多くの場合液状で排出されますので、これは管理がしやすい、あるいはモニタリングがしやすい、あるいは住民の方からも見やすいわけですが、ガスの場合というのは、これを焼却しますと大量なガスになりますので、それを常にモニタリングしていくということはなかなか難しいですし、一たん大気中に出てしまうと回収はできませんので、そういう意味住民の方に理解されやすいのは化学的な処理技術ではないかというふうに私は考えています。
  26. 堀利和

    堀利和君 ありがとうございます。  時間も少ないものですから全員の方にお聞きすると時間がちょっと心配なんですけれども、今回のPCBの特別措置法では、五年間でプラント、処理施設を整えて、その後十年間で処理するということなんですけれども、今回、化学的処理によることも含めて、果たして十年間ですべて保管されたものを含めて処理できるのかどうか。これについて、四人の方から御意見をお伺いしたいと思うんです。
  27. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 非常に難しい御質問でございますのでちょっとどう答えていいのか迷ってございますが、そのプラントの能力といいますか、どういった規模のものを何基全国に配置できて、そしてそこに手際よく運び込めるかという、そういうシステムをつくり上げることができるかどうかにまさに尽きる話であろうかと思います。そういうことでまいりますと、先ほど焼却化学処理かという技術評価の部分とも少し絡んでくる話になろうと思いますが、少しプラントのつくり方がやはり変わってくるのではないか、そこの影響が大きいように思います。  といいますのは、やはり化学処理というのは、それほど大きな大量処理のシステムにはならないというふうに思いますし、これまでの開発経緯からすれば、一定規模のものを幾つか複数系列重ねて処理を進めていくということになりましょうし、それから仮に焼却を選択するとすれば、かなり一カ所に集中型のものを選択する、それがもし立地できれば後は非常に効率的に進むということになろうかと思いますので、このあたりは今後その地域地域での技術の選択性とその後の運用にまず尽きるものになろうかと思います。  ただ、規模的なことも含めてやはりその十年間というのは、目標としてぜひなし遂げていきたい、あるいはいっていただきたい期間であろうというふうに思っております。
  28. 立川涼

    参考人立川涼君) 化学処理の方の正確な予測はもともと難しいわけです、やっぱり実施例もありませんし。したがって、そちらの方はある程度の、だろう話の上で比較をするんですけれども、やはり化学処理の方が十年あるいは十五年、相当長期間かかります。それから、処理する施設も多数要ります。そうしますと、焼却法は短期間に一気にやれますから、つまり、その間保管しておいたり、あるいは運転することのトラブルまで含めますと、本当に化学処理はトータルで安全なのかどうかは、僕は改めて厳密に焼却法との対比をしてほしいと思っております。間違いなく短期間に一気に焼却法なら済むんですね。  ですけれども、それこそ十年先に地震があったらどうするんだなんということまで議論したときは、やっぱり世界的な責任もあるものですから、できるだけ僕は早く処理できるということは選択をする場合に大事な判断基準だと思っております。
  29. 細見正明

    参考人細見正明君) 私は、このPCB処理を進めていく上で、リスクコミュニケーションだとか、そういうものを通じて理解を得られながら進めていかないといけないというプロセスがありますので、その時間というのはかなりかかるのではないか。それを含めますと、効率の問題なのか、理解が得られやすい方がいいのか、それは評価の仕方で分かれるのではないかと思います。私は、前者のプロセス、情報公開を含めまして、そういうプロセスがいかに大事かというふうに考えています。
  30. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 私の個人的な希望といたしますと、こんなのろのろやっていていいのかという感じはどうしてもあります。二年で建設して五年で終了するぐらいのプログラムが組めないかというのは常にいつも意識としてはあるんです。  ただ、一方で、住民の合意とか、実はPCB対策で一番時間がかかるのは処理のところじゃなくてその周辺のところにあるものですから、それが少し多目に見積もられているのかなという感じでありまして、できることならば前倒しでなるべく早く並列して処理を増強してでもやっていただくのが一番いいかなという感じは持っています。
  31. 堀利和

    堀利和君 今後の参考のためにもお伺いしたいんですけれども、これは時間がありませんので簡単に四人の方にお伺いしたいんですけれども、当然化学物質については人体、生物に対しての悪影響がございますけれども、こういう毒性なり長期残留、そして環境に対しての温暖化ということで、さまざまな結果的に悪影響を与える化学物質がございまして、それが結局環境中に放出されていくわけでございます。  こういう場合にスクリーニングをかけるなどさまざまな体制というのをきちんとしておかないといけないかと思うんですけれども、現在、現行制度では化審法中心になっているんですけれども、果たしてこれで十分なのか、POPs条約を今後批准していく際に一つ一つ特別措置法をつくっていくようなことしかないのかを含めて、その辺のことについて、短い時間ですけれども四人の方からお伺いしたいんです。
  32. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 数多くある化学物質のスクリーニングをどうやっていけばいいのかという御質問と理解させていただいたんですが、まさにおっしゃられましたとおり、非常に莫大な数の化学物質の中をどう判断していくかということになろうかと思いますが、丁寧にいわゆる毒性評価を重ねていくというプロセスというのも一方非常に重要であると思います。あわせて、やはり環境中の残留という視点はまた試験的にはかなり早く効率的にできる視点でもございますので、そのあたりを若干予防的に、プレスクリーニング的に進めていきながら丁寧な後の調査をしていく。  すなわち、まさに残留性有機汚染物質に対して懸念が示され始めていますのは、最終的にはやはり毒性影響ということが確認されませんとその条約の中でまた認知されていくということにならないんですが、その前段の移動性とか生物濃縮性それから環境残留性というところ、これはそういう意味で比較的モニタリングといいますか試験がしやすいということを考えますと、そちらをスピードアップするような、そういうシステムというものを今後社会としても考えていく必要があるのではないかと思っております。
  33. 立川涼

    参考人立川涼君) 毒性というのは大変大事なんですけれども、これはある意味でエンドレスでありまして、研究するに従って新しい毒性がわかってきたりする。あるいは、アメリカなんかでもそうですけれども、専門家が集まって十年間も議論してやっと結論が出たり、また先送りになったりするんですね。我々は、何百とか何千の化学物質の安全を社会的に保障しなければいけないときに、極めて完成された、なかなかかわりの方法がないようないい方法に見えるんですけれども、従来のような毒性をベースにして規制をするという考え方は、やっぱり国民のもう少し早くやれという要求にとても合わないわけですね。  そうすると、もちろん毒性データを無視するわけじゃありません、必要なんですけれども、むしろ酒井参考人もおっしゃったように、化学分析によって得られる数値、つまり環境生物への残留性蓄積性、これは的確にすぐ数字が出るんです。ですから、まずは最初は、環境に出たらたまらない、生物にたまらない、そういう基準でもってある種の規制をしたり、あるいは使用禁止をするということでまずは一次スクリーニングができるだろう、その方がはるかに広く国民の安全を早く僕は保障できると思っております。  しかも、化学物質は幸いにして大変な技術があるものですから、かわりのものは幾らでもできるんですね。絶対これでなければ困るというものはほとんどありませんで、それなりに改良された代替品はいつでも出てまいります。  したがって、僕は、やはり残留量とか化学存在量によるある種の使用禁止規制をまず先行すべきだというふうに考えております。
  34. 細見正明

    参考人細見正明君) POPsの条約に関しましては今十二物質が決まっていますが、そのほかに新規物質については徐々にこれからレビューしていくことになっています。  その際にとり得る方法としてプリコーショナリーアプローチ、予防的なアプローチをもって判断していこうというふうな、これが世界的な動きだろうと思います。それに応じて、先ほど来出ておりますように、一次スクリーニングだとか幾つかの項目でもってあらかじめ、毒性がすべてわからないけれども、対応をとっていくという仕組みが必要なんではないかと思います。
  35. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 化学物質をコントロールするような法律のネットワークというのは、各省庁が持っているいろんな中でつくり上げられてきているんだろうと思います。化審法もそのうちの一つでありますし、例えば劇毒法のように厚生所管の法律もありますし、それから食べ物の側では食品衛生法があり、水では水濁法、水道法などがあって、そういうふうないろんなものが一方の側であり、しかし一方で、そこから新しい毒性学的な知見が出るたびにそれをどういうふうに修正するかというふうなアプローチをずっととり続けているんですけれども、私の感想といたしますと、もうちょっと製造者の視点ではないような、生活者の視点に立つような化学物質のコントロールのメカニズムが全体としては要るかなと。それを法律的な規制でやるのか、それとも情報開示のような形でやるのか、いろんなやり方があるのかもしれませんけれども、それは痛感しております。
  36. 堀利和

    堀利和君 ありがとうございました。
  37. 但馬久美

    ○但馬久美君 公明党の但馬久美でございます。  きょうは四人の参考人先生方、大変貴重なお話をありがとうございました。  まず、これまでPCB処理については、昭和五十一年の廃棄物処理法の処理基準、いわゆる高温焼却方法しかなかったようでありました。平成十年の六月以来、環境庁、厚生省、そしてまた通産省の三省が連携して、PCB廃棄物の新処理技術評価を進めて、処理基準に化学分解法やまた脱塩素化分解法、この四つの方法で追加してきたということを伺っております。一部では自社処理も開始されていると伺っておりますけれども、民間事業だけでは、先ほどからお話もありますように、費用負担の問題などが困難であるということと、また国が責任を持って処理に当たるべきであるという声が上がっております。  今回、環境事業団を活用してPCB処理に乗り出す方針を固めて、このPCB処理関連法二法案で根本的な処理推進することとしておりますけれども、国及び地方公共団体の役割分担など細かい枠組みを決めましたけれども、そうした枠組みに対してどのように評価されておられるのか、まず酒井参考人細見参考人にお伺いしたいと思います。
  38. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 今回の法案でもって、これまで保管者が保管を続けなければならないという状況から一歩脱して、それで一定処理が進む方向が見え始めているということが最大の機能ではないかというふうに思っております。  ひとえに、そこでの公的な関与ということの意義というのは、事業の信頼性ということにそういう意味では尽きるのではないかと思いますけれども、それはいわゆる技術に対する信頼性云々というところもあるんでしょうが、ある種やはり市民との接点という意味でのいわゆるモニタリングとか運転情報でありますとか、そういったところの情報の媒体者としての役割が非常に強く求められているんだと思います。  そういう意味では、的確な通訳者に国あるいは地方がなっていただくことでもってこの処理に対する信頼感が上がってまいる、そういうことでの役割を期待しておるような次第でございます。
  39. 細見正明

    参考人細見正明君) 基本的には、国の立場として処理計画を策定して、それに基づいて地方自治体がそれぞれの地域に応じてつくっていくという方針は、それはそれで私はいいと思いますが、地方自治体の役割としては、参考例として東京都のPCBの無害化の取り組みとして挙げましたように、国は国の必要最低限のレベルで、さらに一歩進んで幾つか使用中のものを登録するとか、そういう管理も進めていくべきではないかと思います。
  40. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。  それで、PCB処理が進まなかった理由に、処理施設の建設に対する地元の反対とか、また地元の住民理解が大きな問題、課題になっていると思うんですけれども、環境事業団の事業も含めて、PCB処理施設の立地に当たって地域住民方々理解を得るためにはリスクコミュニケーション、手法ですけれども、これが必要になってまいりますけれども、この方法に何かいい手だてはあるんでしょうか。その辺をお聞きしたいと思います。  立川先生森田先生にお伺いしたいと思います。
  41. 立川涼

    参考人立川涼君) 多分これは公的負担のとき、漏れ聞くところによると、国と地方自治体が半分ぐらいずつ負担するとか聞いているんですけれども、先ほど僕は情報公開とか参加の中で国民という形で申し上げたんですけれども、実は地方自治体がこの中に入ることは大変大事なんですね、経費の負担も相当あるだろうと。  実際に処理施設は、国という抽象的なものではなくて、どこかの地方自治体にできるわけです。そうしますと、事実上の地域に対する了解、説得その他は地方自治体が努力しなければいけません。そうなりますと、このプログラムを国がつくるときに、やはり相当積極的に地方自治体の参加を求めながら意見を徴収していくということをしませんと、費用負担についても今後苦情が出るでしょうし、あるいは地方自治体の協力を得る場合にもさまざまな問題が出てくる。そういう面では地方自治体に対する情報の公開と参加が多分大変大事だと思っております。
  42. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 先月、二回ほど北九州の方へ参りまして、住民方々との意見交換会に出席してまいりました。ポイントは何かといいますと、総論としてはもちろんよくわかる、しかしながら、なぜそれを私たちのすぐそばでやるのかということに対してどう答えることができるかというところでありました。これは非常に難しい問題であります。  もちろん、その時点その時点で考えればそういったこともある程度理解していただけると思うんですが、例えばそれまできれいな海岸がどんどん埋め立てられて、いつの間にか汚い工場団地みたいになってしまっている、それをどう考えるのかというところまで深く入り込みますと、つまりスナップ写真だけでなくて流れでずっと考えていきますと、一体こういう線上にあることがよいのかという住民の方のもっともな感想も多分あったと思います。しかし、全体としては、地方の産業育成とかそういったことも含めまして地元の、例えば自治体の御理解をいただいていくということになるのかなと、そういう感じがいたしました。
  43. 但馬久美

    ○但馬久美君 貴重な御意見ありがとうございました。  環境事業団が処理技術を選定するに当たりまして、企業が開発した幾つもの化学処理技術がありますけれども、それぞれ特色があると思うんですけれども、具体的にどのような観点で選択していくべきであるとお考えであるのか。酒井先生、そしてまた森田先生にお伺いしたいと思います。
  44. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) まずは、当然のことではございましょうが、PCBに対する処理の効率性といいますか、十分に処理はできる、これはもう言うまでもないことで、これまでの評価一定になされているということだろうと思います。  その上でということになってまいりますと、基本的に技術の適用性というものが、先ほど来話のある油状の形態のものに対してという技術と、それとあとシステムを組むための、いわゆる容器とかその前の固形物に対する処理技術と、ある組み合わせ、あるいはシステムとしての評価に今後はなっていかざるを得ないというように考えております。ですから、油の処理化学処理でやるか焼却処理でやるかということもこれは一つの観点かと思いますが、システムとして組むために、いかに容器からPCBを分離させてやるかという段階の技術も必要でございましょうし、また残った残渣を最終的にきれいにどうしてやるかということの技術、そういった意味でのシステムとしての評価の観点が一つ出てこようかと思います。  それともう一つ重要なのは、連続処理か、あるいは立ちどまって行うことのできるバッチ処理かということの視点でいきますと、やはり最初処理に乗り出す当初、市民との対話ということも含めて、処理の確認性を持ちながらやっていけるかどうか。すなわち、出てきたものが、これは処理ができています、そのときに、環境にはそう影響を与えていませんといったようなことを逐次モニタリングしながらやっていけるということも一つ視点として入ってこなければならないと思います。それがすべてというわけではもちろんないと思いますけれども、そういったところがコスト論に加えてちょっと必要な視点ではないかと考えております。
  45. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) どういう手法を選ぶかという視点は三つだろうと思います。一つは、それが一番安全な技術であるかどうか。第二は、コストが十分に安くて、税金を投入するにしてはそれが一番効率がいいではないか。それから第三は、住民の合意が得られるかどうか。この三つであります。  その中で、今一番シリアスになっているのは、むしろ住民の合意がどういう形であれば得られるかというところになっているかなという感じがしますので、もちろんそれは安全を含めてですけれども、少しコストのことを犠牲にしてでも、住民が選択してくださって、それである種の参加してくださる方法を選択するということにせざるを得ないかなという感じを持っています。
  46. 但馬久美

    ○但馬久美君 もう一点、同じ先生方にお伺いいたします。  海外では、特に欧米では既にPCB処理が完了したと言われております。それはどのような方法処理されたのか、また海外では化学処理技術による処理のプラントの実績はあるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  47. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 海外の状況でございますが、私の知る範囲では国によってその状況がかなり違うんではないかと理解してございます。例えばドイツ、スウェーデン、デンマーク、こういった国々では高温燃焼分解中心処理をしているというふうに理解をしてございます。それらの国々でも決して処理が完了したわけではなく、現在、廃トランスが出てくればそれを受け入れて処理するということを積み重ねている時期ということで、決して全部、一〇〇%完了したとは理解をしてございません。  あと化学処理に関しましては、欧州の中ではフランス、あるいはアメリカ、カナダといった、あるいは先ほど来オーストラリアという名前も出ておりますが、そういったところで実用プラントが動いているというふうに理解をしてございます。  以上です。
  48. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) まだ世界的に終わったという状況には多分ないというふうに思っています。まだぼそぼそ続いているという状況です。  それから第二は、それじゃどういう手法になってきているかというと、最初に始められたところは焼却です。したがって、それが一番効率がよくて前へどんどん進んでいった。しかしながら、九〇年代に入ってから立地が難しくなってきて化学処理が併用されているようなところが多くなってきている、そういう状況だろうと思います。そういう意味では、両方の選択肢が今のところあり得るかなという感じがいたします。
  49. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。  ちょっとこちらの認識がなかったと思います。欧米では既にPCB処理は完了していると伺ったものですから、まだちょこちょこやっているということですか。──はい、ありがとうございました。  四人の参考人先生方にもう時間がありませんのでお伺いしたいと思います。  このたび、ストックホルムでPOPs条約が採択されたということでありますけれども、この条約では二〇二八年までに処理完了を目標としておりまして、今回、環境省は二〇一五年末までに処理を終えるという目標を掲げているんですけれども、この環境省の目標をどういうふうに評価されておられるのか、お一人ずつお伺いしたいと思います。
  50. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 現実的な今からの立地そして処理ということを考えれば、この二〇一五年というのも非常に高い目標であろうというように理解してございます。  ただ、一番重要なことは、やはりゼロオプションといいますか、何も手を打たないで知らず知らずのうちになくなるということが最大の我々にとってのリスクという認識を持つ中で、いかに前倒しで早く処理ができるかということが、やはり基本的には全世界を考えた上での一番重要なポイントであろうというふうに理解してございます。
  51. 立川涼

    参考人立川涼君) 欧米では七〇年代の後半から八〇年代の前半にかけて、当時熱媒とかあるいはトランス、コンデンサーのPCBはほとんど回収しまして、ほかのものに入れかえたりなんかしました。だから、大量の廃PCBが出たのはそのときでありまして、それはともかく高温燃焼ですべてやったと言ってもいいと思います。ただ、そのときの技術は今から見れば必ずしも万全ではなかったかもしれません。現実にはそういう形で処理されました。したがって、今欧米で続いておるのはぽろぽろ出るものなんですね。  ところが、日本は実は、最初からまるで処理をしていないという現実がありますから、大量の廃PCBがあるんです。そうすると、これは国際的な約束というよりも、日本だけが圧倒的に大量PCB処理はおくれていますから、これは十五年、二十年というのではなくて、国際的には、あるいは地球環境保全意味でもできるだけ早く大量、迅速の処理をすることが望ましいというのが僕の判断です。
  52. 細見正明

    参考人細見正明君) 二〇一五年を目標にするというのは非常に私は合理的だと思います。  もう一つは、二〇二八年のPOPsの条約ではそういうふうな規定がございますけれども、POPsの条約が批准されるには一応五十カ国が必要ですので、五十カ国が批准しないといけませんので、そのレベルを想定したものですので、我が国はどちらかというと、カネミ油症事件だとかそういうものを踏まえて考えると、より早くやらないといけないという高い目標を持つというのは必要なことだろうと思います。
  53. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) この種のものはある種の負の遺産ですので、できるだけ早く処理してしまった方がいいということでは多分共通をしてくるんだろうと思います。二〇一五年というのは遅過ぎないし、早過ぎないのかもしれませんが、妥当な線で選ばれているかなという感じはします。国際条約というのは、一般的には非常におくれてくる国があるということも前提に目標を後ろ側に設定する傾向がありますので、そういう意味では二〇一五年というのはいい線かなと、そんな感じを持っています。
  54. 但馬久美

    ○但馬久美君 どうもありがとうございました。
  55. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 日本共産党の岩佐恵美でございます。  本日は、お忙しい中、参考人皆様方には御出席をいただき、また審議の参考になる貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。  最初に、私はPCB毒性の問題について伺いたいと思います。  先ほど、森田参考人からカネミ油症、ダークオイル事件の発生、そしてこのことと同じことが台湾油症の発生、一九七八年に起こり、そして一番近い時期でベルギーの鶏の肉の汚染、そういうところにつながっていくというか、同じような事件が繰り返されているわけですけれども、私はカネミ油症事件について国の対応が当時事件が発生して多くの人々が不安におののいているときに的確でなかった、あるいは被害者への対応も的確でなかったということを記憶しております。ですから、先ほど細見参考人からカネミ油症事件についての問題がある、患者へのいろいろな対応が必要だ、国の責務があるのではないかという指摘に対して、私も本当にそうだなということを再度実感いたしました。  そこで、改めて参考人皆様にこの問題についてどうお考えになっておられるか、伺いたいと思います。立川参考人細見参考人森田参考人に伺いたいと思います。
  56. 立川涼

    参考人立川涼君) カネミ油症に関しては、先ほど申し上げたことが基本ではあるんですけれども、繰り返しますけれども、この研究をすることによって油症患者の身体的、精神的な被害が低減することは実は余りないという厳しい現実は承知しておかなければいけないと思います。  しかし、日本として、世界に対する責任として、これはきっちりした学問的な調査をする必要が必ずあります。そうすると、その辺のギャップを患者の方にどういうふうに理解をしていただいて、それはもちろんさまざまな経済的なサポートもあるんですけれども、それ以上に、もっといろんな意味での社会的なサポートなり支援なり、共感とかそういったものがついていかないと、なかなか患者の方の協力が得られないだろう。  結局、幾ら研究しろと言っても、患者の方が協力してくださるかでこの話は始まるわけですね。そこをどうほぐすかというのが、これからは行政にとっても、あるいは医学や専門家にとっても大変重い課題になるというふうに僕は受けとめております。
  57. 細見正明

    参考人細見正明君) ただいまの立川先生からのお答えに加えて、私としては、先ほど申し上げましたように、PCB処理を進めていく上でやっぱり国あるいは公共の関与というのはぜひとも必要である。その際に、やはり国の信用力というんでしょうか、それは非常に大きなものがあるだろう。それを確保する意味でも、このカネミ油症の患者さんたちというのは何の罪もない人たちです、そういう人たちが、今、身体的にも精神的にもいろんな苦痛を持たれているわけですので、それに対してちゃんとケアをしていくということが、それは研究の面でもそうですし、経済的にもケアをしていくということが国の一つの責務だろうと、改めてもう一度申し上げたいと思います。
  58. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) カネミ油症というのは、御存じのように食品の汚染事故であります。そういう意味では、PCBで起こっておりますけれども、例えば森永の砒素ミルク事件とか、過去に起こりました多数の食品汚染事故の一つとしてこれを理解するのかなという感じがします。  ただ、カネミ油症のケースというのは、PCB汚染という、いわばベースには、例えば私たちはPCBを魚からたくさん体に取り込むんですが、一たん使われた化学物質がブーメランのように再び食物連鎖を通して私たちに戻ってくる、そういうPCBによって起こっているというケースでもありますので、したがって、このカネミ油症のことをよく知るということは、PCB環境汚染の影響というものをよく知るということにすごく役立つだろうというふうには考えています。そういう意味で、カネミ油症の問題というのをもう少し掘り下げて勉強してはどうかという立川先生の御意見には基本的に賛成です。  ただ、一つだけ少し気をつけておかなければいけないというふうに私どもも考えておりますのは、この種の事故が起こりますと、その被害者の方というのは二重の悲劇に見舞われます。というのは、一つはもちろん中毒としての病気ですけれども、もう一つは、ある種の差別とかそういったものの壁にぶつかってくる、もう忘れたいと思っていらっしゃるような方もいらっしゃるかもしれませんし、掘り出すことにかえって御本人のつらい思いが出てくるということもあります。そういう意味で、少し慎重にやらなきゃいけないということももう一つあるかなという感じがいたします。
  59. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございました。  私も、黒い赤ちゃんが産まれるとか、いろいろ伺うと、それだけでは済まなくて、いろいろ後、孫にあるいはひ孫にどういう影響が出るのかなんというところまでも心配がされている。そうなると、やっぱり個人としても余りいじっていただきたくない、研究ということで勝手に一方的にやっていただきたくないという思いもあると思います。  ですから、慎重にしなきゃいけないと思いますけれども、先ほど森田参考人から、七五年からカネミ油症の研究を始めて塩化ジベンゾフランが寄与している、そういうことについていろいろと突き詰め、いろいろ究明されていかれたなどということを伺って、やっぱりきちっと本当に誠意を持ってこの問題を見ていかなきゃいけないし、対応していかなきゃいけないんじゃないかということも改めて思いましたので、今後何らか国としてやっていかなきゃいけないんじゃないかと思っています。  次に、化学処理過程で労働安全について何らか問題が起こらないのかどうか。といいますのは、ダイオキシン焼却炉、能勢町の問題ですけれども、解体過程で労働者の方が解体前の血液濃度とその後の血液ダイオキシン濃度が一千倍ですか、汚染値が高くなったというようなことがわかりました。それで大きな問題になったわけですけれども、その処理過程、先ほど伺ったところによると、トランスだとかいろいろなPCB汚染のものを前処理するというところで大変お金がかかるということが言われましたけれども、多分そこのところの安全ということも問題になってくるのではないかというふうに思います。  労働安全の問題について、改めてちょっと伺いたいと思います。この問題については、酒井参考人とそれから立川参考人に伺いたいと思います。
  60. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 極めて重要な問題かと思っております。  引き合いに出されました能勢町の解体での血液中のダイオキシン濃度の上昇というのも、そういう意味でなぜ防ぎ得なかったのかということを含めて今検証されているという段階というふうに聞いてございますので、そういったところの事例も参考にしながら、防ぎ方といいますか、そういう意味では個人的な防護のあり方、そしてそれをどうモニタリングしていくかという手法の問題、この両側面から同時に考えていかなければならない重要な問題だと思っております。
  61. 立川涼

    参考人立川涼君) 先ほどから燃焼法とか化学処理が大きな話題になっているんですけれども、処理作業をされる方にとっては、事故があれば別ですけれども、普通にはむしろ前処理の影響の方がはるかに大きいわけです。トランスを運んでくる、あるいはトランスやコンデンサーから油を抜きます。当然、相当なガスが出まして、そこにはPCBだけではなくて、コプラナPCBなども必ず出てまいります。そういう暴露があることを前提に、さまざまな作業をする方の防御を考えなければいけません。建屋を陰圧にしておけば外に出ることは比較的防げるかもしれませんけれども、作業者はそういう濃厚なPCBダイオキシン環境の中でお仕事をされるわけですから、それについては事前に十分な僕は配慮が要ると思います。  具体的にはまた専門家が御検討されると思いますけれども、作業に入る前後でのPCBとかダイオキシンとか、さまざまな生化学検査みたいなものは、最低限やはりこれはもうマニュアル化してやっておく必要があるというふうに思っております。
  62. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございます。  次に、PCB汚染がなかなか減らない、それは漏れがあるという御指摘がございました。問題は、保管あるいは輸送、そうしたところでの漏れだと思います。例えば中小零細事業者が現在保管をしているわけですけれども、この保管の仕方、テレビを見るとベランダに置いてトランスの上にシートをかぶせるだけとか、あるいは自分の物置にぽんと置いてあるだけとか、そういう保管の仕方もわからないままにしているという方が多いと思うんですね。  この間、八王子の市役所の保管状況を見たのですけれども、これは電気器具から出るものですけれども、それはもう非常に厳重で、ちゃんと保管の容器に入って密封して、そして建物でちゃんと密封しているというようなことなんです。その容器が幾らするのですかと言ったら、ドラム缶が幾らするのかというのは、一つ四千円だそうです。中小零細業の方々はトランス一つずつぐらいだからと言われるんだけれども、そうじゃない方もいらっしゃると思いますし、今不況の時代ですから、四千円するドラム缶を十個だったらかなりの金額になると思うんです。  そういう意味で、中小零細業者への支援というのが、保管あるいはその処理に対して今度輸送ということが出てくると思うんですけれども、そうしたことがきめ細かくちゃんと行われていかなければいけないというふうに思うんですが、その点、先ほど細見参考人とそれから森田参考人からそういう中小企業者への支援のことが、支援というか、そういう問題が出されておりましたので、それぞれ御意見を伺いたいと思います。
  63. 細見正明

    参考人細見正明君) まさしくPCBの今大きな問題の一つは、中小の小規模な事業者が保管されているPCBが今後本当にどのように保管され続けるのか、処理せられるまでに、それが一つの保管管理を徹底させる意味でも非常に大事なポイントだと思います。  その際に、何らかの支援も必要ですし、それと、一歩踏み込んで実態がどうなっているのかというのを調べていくという、二つ必要なのではないかと思います。
  64. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 今保管されている中小の事業者は、今までもPCBをたくさん使っていて、あるいは時にはトランスの中に自分の手を突っ込んでいたような仕事をされていたことが結構多いだろうと思います。そういう意味では、余り毒性が怖くないというふうに認識をされているケースがあって、少しずさんになりやすい傾向がちょっとあります。しかし、そうはいっても、どんどん漏れてくるのは気持ちよくありませんし、起こるのは次世代への影響ですので、母親、お子さんの方にそれが移らないようなメカニズムが要りますので、きちんと管理しなきゃいけない。  その管理の場所なんですが、一つは、日本全体から一カ所に集めてそこで管理して、そしてすぐに処理の方へ持っていくというシナリオが書ければいいんですけれども、しかしそれはそれで、また運び込んだところの住民の方が何でこんなものがたくさん集まってくるんだというふうに言われるということもあって、ある程度分散型に分布しているものを維持しながら、しかしできるだけ早く漏れるのを防ぐためにも集める必要があるかな、そんなふうに考えています。
  65. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございました。  最後になりますが、ちょっと一言。  日本は、製造されたPCBのうちの一割ぐらいを海外に輸出しているんです。今アジアの処理というのが非常におくれていて問題になっていますけれども、私はそうしたアジアの諸国に対する支援をすべきだというふうに思いますが、立川参考人から伺いたいと思います。
  66. 立川涼

    参考人立川涼君) 事実関係からいいますと、東南アジアも含めてトランス、コンデンサーを僕は大分現物を見て歩いたことがあるんですけれども、オーストラリアとかヨーロッパのものが意外に多くて、日本は思ったよりありません。  ただ、それは別にして、PCB汚染は途上国で今依然として続いている。場合によってはもっとひどくなる可能性もあります。だけれども、それをモニタリングしたり対応したりするための協力、技術その他が大変おくれているということがあります。  そういう意味では、我々として、国際的な貢献としてキャパシティービルディング、そういう国に対する協力や技術の援助というのは大変重要だと思います。これはお金は余りかからないんですけれども、きめ細かく人手が要るんです。ですから、今までのJICAの大型土木援助なんかとは違うノウハウ、マニュアルをつくっていかないと、お金は要らぬけれどもやたらと手間暇がかかる、それをだれがこなすか。  少し長くなりますけれども、行きたい人はたくさんいるんです。ところが、今は制度的に保障されていないものですから、例えばある試験研究機関で行ってくださいと言う。個人はオーケーと言うんですけれども、その組織は三人しか人がいない、係長は仕事しません、二人のうち一人が抜けたのでは戦力は半分だ、やめて行ってくれという話になる。ところが、組織全体としては、十分一人ぐらいを出す余裕はあるんです。  僕は、だから、国際貢献するのであれば、いろんな公的あるいは民間機関も含めて、例えば定員の一%とか、そういったものをフリーに、そういう形でできるような定員管理をするとか、そういう制度づくりをしませんと、一本釣りで個人の熱意だけに頼っていては、とても日本としてサポートすることはなかなか難しいと思います。
  67. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございました。
  68. 清水澄子

    ○清水澄子君 社民党の清水です。  参考人皆さん、ありがとうございました。  まず、酒井参考人に、先ほど立川参考人化学処理にのみ偏らないで焼却の方の特質と両面の特質を考えるべきだ、国民に選択を求めるべきだとおっしゃったんですが、それについてはどのようにお考えになるかということ。それと、化学的な処理の場合に、やはり事故も起きる可能性というものは絶えずありますね。そういう場合を想定したときの対応というのは何をここできちんと決めておくべきか、どのようにお考えになりますか。
  69. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 焼却化学処理の特質という意味では、両者ともメリット、デメリットをやはり持っているという認識が一番重要かと思います。処理の効率性、早く処理できる、大量処理できるという意味での焼却の有利さと、それとやはり一たん排ガス環境に排出してしまえば、後の回収はきかないということの意味合いでのモニタリングの難しさというデメリット、これはやはり焼却が抱える基本的な問題。  一方、化学処理というのは、一回一回の処理をやはり確認しやすいということのメリットというのは非常に重要なポイントとしてあるわけですが、いかんせん、最終的にそれはきれいに無機化しているわけではない。そういう意味で、PCB処理できているけれども、後の油のまた管理あるいは処理といったようなものも場合によっては求められる。そういう両者の特質というのがございますので、それを理解しながらやはり基本的に今後選定していくべきだろう。  ただ、これまで処理は進まずに、その次に、一たん乗り出すときには、我々一人一人が処理ができていること、あるいは周りの環境に影響がないことをやはり一歩一歩確認したいという気持ちはやまやまですので、そういった時期では、そういう意味で、これは化学処理も大事にしながら進めていかざるを得ないのかなというような認識を持ってございます。  ただ、一方、急がねばならないという側面もございますので、ぜひ将来的にはそういう一つの選択のミクスチャーといいますか、ちょっと両者のいいところをとっていくような、そういう方向も模索していったらいかがかなというふうに思っております。  事故に関しましては、確かに化学処理、例えば金属ナトリウムを使うということでの事故の可能性、これはそういう意味では当然基本的にはあるわけでございまして、それを基本的にはどう未然防止するかという意味で、例えばそういう化学物質を使う場合には、いかに分散させて、効率といいますか、安全性を担保しながら技術をよくしていくかということも重要でしょうし、またそれを検知するといいますか、事故が起こったときのマニュアル化ということも非常に重要な視点かと思います。
  70. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に細見参考人、先ほどちょっと時間がなくて飛ばされたんですけれども、罰則規定の整備とか、それから環境事業団が果たして主体的に処理事業を進めることができるのかという問題を提起していらっしゃるんですが、その点についてちょっと御説明ください。
  71. 細見正明

    参考人細見正明君) まず、罰則規定の整備というところでございますが、私、以前NHKの「クローズアップ現代」に出演させていただいたときにも、いろいろビデオを拝見させていただいて、モザイク状でしたけれども、ある人が倒産してビルを建てかえるときにはもうどこかに行ってしまったという発言をされているという一方で、倒産した会社の社長さんがベランダにそれこそそれを引きずって置かれているという状態を見ますと、余りに公平性に欠けるんではないかと。わかっていたけれどもどこかに行ってしまったと言える人と、常にずっと持ってきている人との差というのは、何らかの差が必要だろうという意味で、不適切な処分に対する罰則強化というのはやっぱりある程度必要なのではないかということを書いてございます。  それから、事業団による事業でございますが、基本的な公共関与がやはりこれは必要である、これがまず大前提だと思いますが、その際に、トップダウン方式でいった方がいいのか、一つ一つボトムアップ方式でいった方がいいのか、これはどちらもメリット、デメリットがあって一概に言えないんですが、私が今考えているのは、今、酒井参考人が言われたように、一つのモデルプラントを仮につくって、それを住民の人も踏まえて、安全だとかいろんな確認しながら前へ、割と一歩一歩最初は進まないと、一挙にどんとつくるというのは、少し身近なもの、例えば自治体に所有されているものから始めていくとか、そういうのがまずあった方が今後進みやすいのではないか。最終的に広域的な処理というのは多分なっていくんだろうと思うんですが、最初のスタートアップが非常に大事だと思います。
  72. 清水澄子

    ○清水澄子君 先ほど、カネミ油症患者のこういう不幸にも人体実験がされた、そのことについてやはり疫学調査なりが必要だというのは私もずっと主張し続けているんですが、先ほど立川参考人細見参考人森田参考人がおっしゃっておられるんですけれども、患者が協力してくれるかどうかがポイントというところの前に、環境、厚生、これは食品汚染であって環境問題じゃないというのが前提にあって、そうすると厚生省はこれは農林水産省の問題だという縦割りの責任転嫁で、これを何年間主張しても、皆さんが今後の日本PCB環境汚染を疫学的に調査していく重要な参考になるとおっしゃっているんですが、なかなかこれはそういうふうになりません。  ですから、今カネミの人たちが非常に差別されいろんな苦労をしていますけれども、むしろ患者たちは協力したいという人たちもいるけれども、政府はやらないんですね。そういう点では、やはりこの問題は非常に私、日本としては、さっき立川参考人もおっしゃったように、国際的にもこれは非常に研究する必要があると思うんですが、私どももやっていきますけれども、皆さんたちの研究者立場からもぜひこういうことはもっと主張していただきたいと思います。何か要請になっちゃって済みません。  そこで次に、皆さんたちに共通にお伺いしたいのは、この行方不明になっているPCB、これはもう問題外と言ってしまえば、行方不明だから仕方がないになるんですけれども、しかしこれがどこかで放棄されていて、またどこか食品汚染などになったときは大変な被害なんですけれども、この行方不明の問題というのはどのように調査、追跡をしていけるものなのか。  ある程度努力を私はすべきだと思うんですけれども、何の努力も今回の法案にもないですし、それからこれが食品汚染にどこか環境の中で起きたとき、もうどこか土壌の上で起きたとき、そういう場合に汚染が発生したときはどういう対応をすべきかというときも、またこれは因果関係がどうのこうのになっちゃうと思うんですけれども、どういう方法があるとお考えでしょうか。  そのことを皆さんに一言ずつ言っていただきたいのと、あわせて今回の法律についての要望というんですか、もし問題点とか要望があれば一言ずつお答えください。
  73. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 行方不明のPCBということでございますが、非常に追跡自体が難しい問題という認識は私どもも同じでございます。  そういう中でできることということで考えますと、環境側からの丁寧なモニタリングというところがやはり重要ではないかと思います。特に、海洋あるいは湖沼関係の底質でございますね。次への移行経路を考えますと、そういう場の海底の泥とかといったようなところは一番重要な環境媒体というふうに認識いたしますので、そういった場でホットスポットといいますか、非常に高濃度地域が仮に見つかってまいりますと、そこにはそういう意味では行方不明のPCBが関係している可能性は高いという認識、それで次にどう手を打てるか。そういう意味ではそのものずばりの仮にトランスが見つかったとすれば、それは早急に除去すべきでしょうし、またその周辺範囲、どの範囲を修復すべきかというようなことも考えていく必要があろうかと思います。  いずれにしても、こういった手法を含めて、今後、やはり研究開発がそういう意味では必要な課題ではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  74. 立川涼

    参考人立川涼君) 行方不明になったものに関しては、文字どおり、もう後始末しかないわけですね。やはり中小企業中心技術力も資本力もありません。あるいはPCBが保管されているということも御存じないところもたくさんあるわけです。廃業したりいろんなことをするもんですから、もう事実上どこへ行ったかわからぬというのは、もうこれは過去の事実として我々は受けとめなければしようがないと思います。今後の管理は厳密にやります。  ところで、過去に意図せざるにかかわらず環境に漏れてきたものは当然環境汚染になります。これはトランス、コンデンサーに限りませんで、例えばごみ焼却だとか焼却の灰を埋めたりしたとか、全国に恐らく無数にあると思います。だから、今後、土地取引の中で土壌の浄化ないしは土壌がきれいであることが義務づけられることが必ず一般化しますね。そうすると、恐らく大変多くの土地取引でそういう問題が起きてまいりますから、当然さまざまな土壌浄化がビジネスとしても育ってくる可能性があると思います。  そういう枠の中で、PCB汚染した土壌、あるいはダイオキシン汚染した土壌をどう無害化するかというふうなことは、若干技術があるわけですけれども、まだ価格も考えたときにいろんなケースに適用できるまでは至っていないと思うので、この辺の技術は、今後PCB以外にもさまざまな化学汚染の土壌浄化というのは技術開発あるいは制度的な枠組みづくりが大変重要だと思います。
  75. 細見正明

    参考人細見正明君) 行方不明のPCB機器については、当初、台帳がございましたので、その台帳に基づいてどこまでできるか。現実にもう倒産してしまったり、幾つかそういう会社ももちろんあるとは思いますが、一応それからルートをさかのぼるというのが必要なことではないかと、最低限。それが一つ。  もう一つは、今お二人の先生がおっしゃったように、モニタリングをすることによって幾つか、私自身も経験がございますが、ダイオキシンの分析をしていきますといろいろなことがわかります。確かにお金はかかるんですが、この井戸水でダイオキシン濃度が高いといった場合、多くの場合、割とコプラナPCBによる汚染が幾つかわかっています。これは、多分その付近にそういう汚染源があるんだろうというのが推察されて、その後の調査にこれから生かしていけるのではないかと思います。
  76. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) どこかに行ってしまったPCBを後で追いかけるのは非常に困難だなという感じがします。したがって、そのトレースは必要ですけれども、今少なくとも残っているやつが決して散逸しないようにするというところに一番エネルギーをかけた方がいいかなという感じがします。  それからまた同時に、そういった漏れが発生いたしまして、そこは土とかそういうところに行くことが多いんですが、例えばトランス一つPCB処理するのには数万円とかあるいは数十万円になるかもしれませんが、その程度お金なんですが、一たん同じ量のPCBが土に行きますと、たちまちそれを処理するのに数億円、数十億円とかかりますので、この辺もう少し理解していただいて、絶対に漏らさないようにというのを意思徹底するのかなと、そういう感じがします。
  77. 清水澄子

    ○清水澄子君 さっきもう一つお願いしたんですが、御意見がある方だけでいいんですけれども、今の法律についての要望がございましたら一言おっしゃってください。
  78. 立川涼

    参考人立川涼君) 法文そのものについては、僕は基本的には賛成です。  ただ、むしろ、それを今後具体的に運用される場合に、もう少し柔軟におやりになった方がよかろうと、既定路線でまっすぐ進むという感じがちょっとするものですからね。そこらあたりは、やはり国民の合意とか参加情報公開、その他さまざまなことがあると思うんですけれども、もう少し状況の変化をにらみながら、あるいは社会も成熟しているわけですから、やっぱり国民の良識を前提にし、それを信頼しなかったら僕は事は進まないと思うんです。ですから、そういうことを配慮しながら、もう少しオープンで柔軟に実際上の運用はしてほしいと思っております。
  79. 清水澄子

    ○清水澄子君 一つだけ。情報公開のやり方というのは、どういう方法が一番いいと思いますか。
  80. 立川涼

    参考人立川涼君) いろいろな法律がみんな、男女共同参画とかみんなそうなんですけれども、コンセプトはヨーロッパ、アメリカから来まして、大変いいんですけれども、法律になる間でいろんな部内調整、省庁調整をする中でずたずたになりまして、名前はいいけれども中身はというのが大変多いんです。  ただ、我々は、法律が悪いからといって救われないわけですから、情報公開法は我々の側がそれを上手に使ってだんだん風穴をあけていく、使いやすい法律にしていく、そのことがやっぱり具体的な私どもの生活にプラスになるんだというふうに、国民の側といいましょうかユーザーの側がこれを有効な法律にしていくことの方がむしろ課題だと思っています。
  81. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 中村敦夫でございます。よろしくお願いします。  私の質問に対してどの方が一番適切な回答者か判断がつきますので、一応御指名はしますけれども、その質問に対して一言あれば、指名されなかった参考人も御自由に発言していただきたいと思います。  PCBを無害化あるいは浄化する方法は、今さまざまなものが考案されて実験されているというふうに聞いております。しかし、その場合、仮にPCBが九九%以上分解された、浄化されたということになっても、ダイオキシン類に属するコプラナPCBが残ったとしたら、これは全く意味がないと私は思うんですね。PCBというのは通常ppm単位、つまり百万分の一単位の濃度でその毒性が数値的に評価されるわけですけれども、コプラナPCBはppt単位、これは一兆分の一の単位ですよね。ですから、もう百万倍の単位の違いがあって、ここでちょっと混乱することが起きるのではないかなと思うんですね。  ですから、もし九九%以上分解されたということになっても、残りにコプラナPCBが新たに存在するということになると、汚染がまた発生するということになると思うんですね。ですから、具体的な場面で安易なPCB処理がなされていくと、また汚染が出てくるという問題が残ると思うんです。  そこで、立川参考人森田参考人にちょっとお聞きしますが、東京電力が千葉市の臨海部の資材置き場に建設しているPCB無害化プラントというものがありますけれども、そこでこの問題が起きているという情報があるんですが、そのことについて御存じでしたら、どう思うかということをお答えいただけますか。
  82. 立川涼

    参考人立川涼君) これは半分冗談みたいなことなんですけれども、PCB処理に関して、ある日本の代表的な有名な重化学工業会社が、処理するよりは絶対漏れない鉄の箱をつくる、それに封じ込めれば数百年もちますというふうなお話がありまして、本当にいろんな対応があるんです。  ただ、化学処理にしろ燃焼処理にしろ、基本的には処理効率はPCBについてもコプラナPCBについてもそれほど違わないだろうと。だから、九九%PCB処理する技術は、コプラナPCBも基本的にはその程度行くというふうに一応考えても僕はいいと思っています。  なお、鐘淵化学でやったときのPCB処理効率はナインナイン、九九・九が九つくっつくんですね、ナインナインという実証的なデータがあるんですね。  東京湾の点は、どなたかほかの方、お答えください。
  83. 森田昌敏

    参考人森田昌敏君) 東京電力のアプローチというか、電事連を初めとする電力業界のアプローチは私の方も少しは知識を持っているかなと思っているんですが。  最初にやられるお仕事は、柱上トランス三百万台の中に含まれている微量のPCB処理するというところから始まると思います。ここのPCB一般的には非常に低いレベルで、つまりリサイクル過程PCBが混入したというケースですので、したがって全体としてはリスクは非常に小さいという状況にあります。アメリカですとこれはそのまま発電炉で燃しているようなケースなんですが、日本ではちょっと、いろんな住民の感受性もありまして、それは化学処理をまずして落としてから、次に熱を回収するか、あるいはリサイクルに回すというそういう流れになっています。  そういう意味では、まず御質問の一つですPCB処理の効率みたいなものはどうかということと関係しますが、化学処理でそのときの検証実験では九九・九%以上が分解をしておると。そして、もともとのPCBが非常に薄いものですから、副生するジベンゾフランのようなダイオキシン類、あるいはコプラナPCBを含めて、それは非常に小さいレベルであったというか、はかれないぐらい小さいレベルだったというのが現状であります。  なお、多分この後、ひょっとすると本物の一〇〇%PCBみたいなものも抱えていらっしゃいますので、その処理がその次にあるかと思いますが、いずれにしても、最後の環境への放出のレベルでは、ダイオキシン特別措置法は全部かかってまいりますので、したがってごみ焼却炉と同じような非常に厳しい基準で環境への放出は規制されるんだろう、またそれが守られるような技術しか動かないだろうというふうには考えています。
  84. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 東京電力のことについてほかに御存じの方いますか。
  85. 細見正明

    参考人細見正明君) 私自身は、千葉県と同様に横浜市の方でも今現在PCB処理施設を建設されつつあります、それに少しかかわった経緯はございますが。  今、森田参考人が言われたように、低濃度から始めて途中から高濃度PCB処理をしていこうということで、この処理分解率を九九・九九とか九九%とかという場合には、もとの濃度が高ければ九がいっぱいつくわけですけれども、もともと低いトランスの油ですとせいぜい九九・九とかそういう形になってしまって、それ以上はもう多分できないと思います。ですから、その除去率だけを問題にするのではなくて、最終どこまでできているかという意味で、〇・五ppmというふうに設定されておりますけれども、この基準というのは非常に厳しい値で、十分いろんな環境毒性を考えても、PCB毒性ダイオキシンと読みかえても十分対応できる値だというふうに思っています。
  86. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 横浜市ですね、ワールドサッカー場の近くに鶴見川という川がありまして、その河川敷の土壌から高濃度PCBダイオキシンが、これは国土交通省の出先機関の調査で発見されたものなんですね。  私もその現場へ行きまして、放置されたまま子供たちが遊んでいるというような状況ですね。これはどうにかならないのかと非常に危機感を持ったわけなんですけれども、この問題に対する環境省の担当部局の対応というのは、地表五センチメートル以内でないとこれは土壌汚染じゃないと言うんですよね。ですから、つまりそれじゃ何かというと、これは廃棄物汚染なんだということなんですね。それで、住民たちに対してそういう対応しかしなかったという問題が続いているわけなんです。  私は、この地表だけが土壌汚染で地中にあるPCBダイオキシン類廃棄物であって土壌汚染でないというのはちょっとナンセンスじゃないかなと思いますが、酒井さん、細見さん、専門家としてどういうふうに思いますか。
  87. 酒井伸一

    参考人酒井伸一君) 今の法的な部分の解釈に関してはそこまで詳細に今は存じませんので、廃棄物と見るか土壌と見るか、そこを的確にはちょっとお答えはできませんけれども。  ただ、おっしゃられるとおり、汚染の実態としてはそこは両者が当然混合された形での汚染ということになって、そしてその周辺の河川域に影響がないか、あるいはその大気濃度が大丈夫かといったような、そういう意味では当然総合的な対策に参るべきだというふうに認識しておりますので、そういう方向で基本的には修復対策をするなら早くとると、それがまたワールドカップの開催とリンクするものであればぜひ急いでいただきというのがそういう意味では個人的な思いではございます。
  88. 細見正明

    参考人細見正明君) 実は、個人的には鶴見川の問題も、それから今東京都で問題になっている大田区の区道下の土壌、これは表層五センチではなくてその下の土壌ですが、これが非常にダイオキシン、実際にはPCB汚染されていて、PCB汚染されているということはダイオキシンがそこに存在しているということで、かつてない非常に高濃度ダイオキシンが検出されて、今現在、東京都ではダイオキシン類の特別措置法に応じてその対策要件、対策指定地域という形で進んでいくんではないかというふうに私は思います。ですから、五センチにとどまらずに深い方も私は対応できるんではないかというふうに思います。
  89. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 鶴見川の河川敷の問題は、非常に具体的な状況があるにもかかわらず、この汚染に関して国と神奈川県あるいは横浜市がただなすり合いをしているだけで何にも進まないというのが現状になっているんですね。このままうやむやになってしまうということですけれども、むしろ海外の方が注目しているということ、しかもワールドサッカー、すぐそばでやるわけですから、大変な日本としては見識のない物事の処理の仕方だと私は思うんです。  トランスなんかのPCBの場合は移動させて処理するというようなことが可能なんですけれども、環境中のPCBをオンサイトで処理する、無害化するという方法というのは、今どうなんですか、どのぐらいのレベルで進んでいるんでしょうか。  細見さんでいいでしょうか。
  90. 細見正明

    参考人細見正明君) これは環境省の方でも検討しておりまして、ダイオキシン汚染された土壌についての実証試験というのをプログラムを組んで、例えば能勢町にも適用しようということで、そういう技術を既に幾つか選定しておりまして、ある二つのレベルはもう実証段階にあるというふうに考えてございます。  鶴見川の事例につきましては、開催時期までの日数からして完全に無害化して浄化するというのは多分できないというふうに判断して、とりあえず技術が確立するまでそこの土地の中で封じ込め処理を行って、最終的にはこの部分は無害化するという前提で、とりあえずそのある場所に確保しよう、封じ込めておこうということで今対策が進められていると思います。
  91. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 その続きですけれども、世界的なレベルではどうなんですか、オンサイトで無害化してしまうという技術レベルというのはどうなっているんでしょうか。
  92. 細見正明

    参考人細見正明君) 環境省で議論しましたのは、オンサイトでできる技術として二つ実証段階にあると判断して、今いろいろ試験を行っている段階です。世界的に見れば、この二つの技術というのは世界的にも使われている技術と。一つは、現位置でガラス固化、熱をかけてガラス固化してしまう、塊にしてしまうというのと、PCBとかダイオキシンの塩素を脱塩素化していこうという技術で、この二つが今現在実証レベルだというふうになっています。
  93. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 立川さんにちょっとお聞きしますけれども、今回のPCB処理環境事業団が運営していくわけですけれども、こうした処理というのは民間の事業としてやって技術的あるいは採算的にも合うものなんでしょうか。
  94. 立川涼

    参考人立川涼君) 問題は、環境省なり環境事業団にその専門家は多分いらっしゃらないと思いますね。ですから、もちろん一部チェックをされる方はいらっしゃるかもしれません。だから、事実上は、やはり何らかの民間機関に結局は委託されるんだと思います。  それから、一般論的に言いますと、廃棄物処理については、民間はさまざまな技術を持っているわけですから、当然現状あるいは今後の対応の中でいい技術は幾らでもあり得ると思います。そもそも原則論として、お役所がみんな手を出せる時代ではなくなっておるわけですから、やはり民間技術をきっちり展開できるような制度的な枠組みないしはチェック機構の方を行政はむしろ考えるべきだというように僕は基本的に考えております。
  95. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ありがとうございました。  終わります。
  96. 吉川春子

    委員長吉川春子君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ、長時間にわたり極めて有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  どうもありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時九分散会