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2001-06-12 第151回国会 参議院 外交防衛委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年六月十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月十一日     辞任         補欠選任         佐藤 道夫君     川橋 幸子君      齋藤  勁君     長谷川 清君  六月十二日     辞任         補欠選任         高野 博師君     木庭健太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         服部三男雄君     理 事                 佐藤 昭郎君                 鈴木 正孝君                 海野  徹君                 益田 洋介君                 小泉 親司君     委 員                 須藤良太郎君                 月原 茂皓君                 森山  裕君                 矢野 哲朗君                 山本 一太君                 依田 智治君                 今井  澄君                 川橋 幸子君                 長谷川 清君                 広中和歌子君                 木庭健太郎君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外務大臣     田中眞紀子君        国務大臣        (防衛庁長官)  中谷  元君    副大臣        防衛庁長官   萩山 教嚴君        外務大臣    杉浦 正健君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    政府参考人        人事院事務総局        総務局総括審議        官        吉藤 正道君        警察庁刑事局長  五十嵐忠行君        防衛庁防衛局長  首藤 新悟君        防衛庁運用局長  北原 巖男君        外務大臣官房長  飯村  豊君        外務大臣官房審        議官       林  景一君        外務大臣官房参        事官       森元 誠二君        外務大臣官房文        化交流部長    横田  淳君        外務省総合外交        政策局長     谷内正太郎君        外務省アジア大        洋州局長     槙田 邦彦君        外務省北米局長  藤崎 一郎君        外務省欧州局長  小町 恭士君        外務省経済局長  田中  均君        外務省条約局長  海老原 紳君        水産庁次長    川本 省自君        海上保安庁長官  縄野 克彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 〇二千一年の国際コーヒー協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) 〇文化交流に関する日本国政府ロシア連邦政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) 〇税関手続簡易化及び調和に関する国際規約の  改正議定書締結について承認を求めるの件(  内閣提出衆議院送付) ○外交防衛等に関する調査  (外務省改革に関する件)  (外相の発言記録に関する件)  (米国ミサイル防衛構想に関する件)  (化学・生物テロに関する件)  (台湾海峡での中国軍演習に関する件)  (大使への民間人登用に関する件)  (駐留米軍に対する我が国法令の適用に関する  件)  (PKOと集団的自衛権に関する件)  (ブッシュ政権の対北朝鮮新政策に関する件)     ─────────────
  2. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、佐藤道夫君及び齋藤勁君委員辞任され、その補欠として川橋幸子君及び長谷川清君が選任されました。     ─────────────
  3. 服部三男雄

  4. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 二千一年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、文化交流に関する日本国政府ロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び税関手続簡易化及び調和に関する国際規約改正議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  三件の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 今井澄

    今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  後ほど目下の非常に重大な案件について質疑させていただきますが、とりあえず三協定について質問させていただきます。  外務大臣は、コーヒーはお好きですか。私もコーヒー大好きで、とにかくまず起きるとコーヒーを自分で入れるところから一日が始まるので、今度のこの三協定のうち特にコーヒー協定については関心を持って勉強させていただきました。もうこれだけでいろいろ議論をすると一時間やそこらかかりそうなぐらいおもしろい。イスラムから始まってどういうふうにしてヨーロッパに入っていったか、またヨーロッパがその植民地栽培をさせていった歴史とか、それからヨーロッパ最初コーヒーハウスが盛大にできたのはイギリス、ロンドンだったんですけれども、ロンドンはその後コーヒーハウスがなくなって紅茶になっちゃったんですね。逆に、パリでコーヒーハウス、カフェが盛んになっている。  こういう歴史を見ると、男女共同参画の話まで出てくる。非常におもしろい歴史だなと思っておりますが、そういうことはきょうは時間がありませんので省略するとしまして、この三協定のうち、特に国際コーヒー協定ですけれども、最大コーヒー消費国アメリカですね、断トツでアメリカ最大消費国。ところが、この協定にはアメリカは加盟していないというか脱退したわけですね。  それで、その理由は何なのかということ。それからまた、今度の新たな協定では、民間部門代表や非加盟国参加者等を含めた世界コーヒー会議を開催するということになっているようですが、この非加盟国には当然アメリカ参加してもらえるのだろうかということですね。それからまた、民間部門代表者参加に何を期待するのかということ、このことを最初お尋ねしたいと思います。
  7. 田中均

    政府参考人田中均君) まず、なぜアメリカ脱退をしたかというお尋ねでございますけれども、もともと協定につきましては、輸出割り当てという制度が含まれていた。これは市場介入をして価格を安定させるという仕組みでございますけれども、米国はこれに対してやはり過剰な市場への介入であるということがございまして、特にその条項にかかわって反対をし、脱退をしたということでございます。  それから二番目に、民間でございますけれども、委員指摘のとおり、世界コーヒー会議というのが協定で新たに設けられております。実は、これは現在の加盟国の総意に基づきまして、既に国際コーヒー会議というのが現実に実現をいたしました。ここには米国も、米国民間でございますけれども、参加をしているということでございます。  それから三番目に、民間にどういう役割を期待するかということでございますが、この新しいコーヒー協定自身、やはり民間役割というのを非常に大きく考えていて、まさに実際にコーヒー栽培あるいは流通、輸出入に従事している人から意見を聞くべきではないかということが民間役割でございます。
  8. 今井澄

    今井澄君 こういういわゆる商品に関する協定、特にこういう産地の限られている、あるいは発展途上国が物をつくる、生産地であるものについては、結局、生産国消費国との間で価格をめぐって、あるいは安定供給をめぐっていろいろな対立がある。それを、協定を結び会議をやってうまく需給調整をしながらお互いに満足のいくところでいこうということなんだろうと思うんですね。  ところが、アメリカ脱退した。ただ、調べてみますと、実はこのコーヒー協定というのをつくる音頭を取ったのがアメリカだったという話ですね、一九六二年。実は、国連のコーヒー会議アメリカが積極的にやってきた。それは今から四十年前ですから、中南米の国々ブラジルなどは最大輸出国ですが、そういう国のコーヒー価格を安定させることでその国の経済、政治を安定させたいという、そういうアメリカの思惑が強く働いてできたと聞いております。しかし、その後外れていったんですよね、率先してアメリカが外れていった。  つい最近も、六月四日の読売新聞にキッシンジャーが「ブラジル挑戦状」という題の、NAFTAとか、今度FTAAという全米の自由貿易圏をつくろうというアメリカ考えに対して、メルコスルという南米四カ国の結束を図って対抗していこうというブラジルの国なんかに対してちょっと論評を寄せています。  そういう点でもちょっとアメリカが最近は国益、自国の国益を重視して、こういう協定やなんかからも脱退する。後で時間があったら述べたいと思うんですが、ユネスコからも脱退したり、いろいろな傾向見えるんですが、ぜひここは民間レベルだけではなく政府レベルでもアメリカ国際コーヒー会議参加するように、やはり日本としても働きかけるべきなんじゃないだろうかというふうに思うんですが、大臣、その辺、何かお考えありますか。
  9. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 今井委員とはいずれコーヒー歴史についてお話をさせていただいて、うんちくを傾けていただければありがたいと思っております。  そして、今の御質問に対するお答えですけれども、結論からいうと、直接その質問お答えするとすれば、やっぱり情勢が、一九六二年にアメリカ主導でこういう協定ができたといっても、時代の推移の中で、アメリカの国情、国内情勢も当然変わってきておりますでしょうし、それから生産者消費者価格の問題というのもあるのではないかと思います。  ですから、経済というのはやっぱり生き物だと思います。そして、以前は価格調整というものをしていたそうですけれども、現在はしていないというふうなことを考えますと、情報お互いに交換するというメリットはあったというふうに思いますけれども、今現在から将来を考えますと、民間政府意見交換をして、民間意見を聞くことができるようになったということはプラスであるというふうに考えてよろしいのではないかと思います。  あらゆる会議に全部の国が参加するということはなかなか難しいと思うし、アメリカにはアメリカの事情がやっぱりおありになるだろうというふうに思います。
  10. 今井澄

    今井澄君 確かに、今、大臣言われましたように、こういう商品協定、何か世界に六つあるそうで、オリーブについては日本は入っていないけれども、その他穀物とか熱帯雨林の木材とか、そういう商品協定日本は他の五つは全部入っているようです。このコーヒー協定にかかわらず、今、大臣も言われたように、当初は経済的な目的で在庫調整なり価格調整だとか、輸出量輸入量調整だとか、先ほども外務省政府参考人からもお答えがありました、そういういわゆる経済条項というものが中心になってやってきた。ところが、経済条項が外されていくというのは、自由貿易市場原理重視という傾向からいえば、私はある意味で当然のことだと思うんですね。  そうしますと、こういう協定というのは将来余り意味がなくなってくるのかなと。逆にまた、だから今、大臣も言われたように、情報交換あるいはそこを通じてのいい関係をつくる、そういうことが今後は経済条項より大事になるような気もするんですが、この経済条項を欠くこういった国際商品協定の将来像については、外務省としてはどうお考えでしょうか。
  11. 田中均

    政府参考人田中均君) 委員指摘のとおりでございまして、現在の国際商品協定の中にはいわゆる経済規制というものがない、これはまさに市場メカニズムを大事にするというのが基本でございますけれども、さはさりながら、これらの産品の輸出国のほとんどが開発途上国であるということもございまして、市場万能主義でもだめであろうと。  そういう意味で、できるだけ市場透明度を高めるために、いろんな統計を整備することであるとか、あるいは消費振興プロジェクトをやるとか、あるいは先ほど大臣もお述べになりましたように民間との協力関係を進めていく、こういった形で、従来のように大規模な商品協定というのは徐々になくなっておりますし、これからもいろいろ重複する機能を持つものは統合していかなければいけないというのが基本的な考え方でございますけれども、引き続き、こういう形の商品協定というのは意義を持っているというふうに考えております。
  12. 今井澄

    今井澄君 済みません、あと一問だけ簡単に。  もう一つ、日ロ文化協定の方に関係してなんですけれども、三条約とも私ども賛成ですし、これはこれでいいことだと思うんですが、旧ソ連邦に含まれていたCIS諸国との間はどうなるのかということですね。  私も、特に中央アジアCIS諸国関心がありますし、まだ行ったことないんですが、あとベラルーシとかウクライナとか、あるいはチェルノブイリも昔行ってきたことがあるんですが、特に中央アジア国々日本に非常に熱い視線を向けているんですね。そろって日本にお見えになったり、もうしょっちゅうお見えになる。  けさの朝日新聞を見ると、上海ファイブというのがあるんだそうですね、中ロと中央アジア。やっぱりここに対しても、文化交流なんかをきっかけにしてもっと日本は温かい目を向けるべきだろうと思うんですが、いかがでしょうか。
  13. 林景一

    政府参考人林景一君) ロシアと同様、これらのいわゆるCIS諸国中央アジアの国を含めまして、基本的には旧ソ連との文化交流協定というものを承継してございます。  政府といたしましては、旧ソ連邦との協定が承継されました国々との友好関係及び相互関係というものを一層増進させるために、文化交流が今後ますます重要となるというふうに考えておりまして、その促進に一層努力する所存でございますけれども、まずその交流の実績、そういったものをどんどん積み上げていくということが先決事項かなというふうに考えております。
  14. 小泉親司

    小泉親司君 コーヒー協定日ロ文化交流協定及び税関手続に関する協定の三条約については賛成です。  日ロ文化交流協定に関連しまして、領土問題と、それに関連する漁業問題について質問をさせていただきます。十分という限られた時間ですので、少しまとめて質問いたしますので、お答え願いたいというふうに思います。  一昨日、私も根室市に参りまして、旧島民の皆さん、住民の皆さんとこの領土問題についていろいろ懇談をしてまいりました。やはり多くの皆さんが、この問題というのは、一日も早く領土問題の解決を図りたいという非常に悲願を込められた言葉が次々と寄せられてまいりまして、一体いつになったら解決するんだという本当に焦燥感も非常に漂っているという状況だというふうに思います。  私たちは、この領土問題の解決というのは、そもそも旧ソ連スターリンカイロ宣言領土不拡大方針に反して奪い取った領土でありまして、このスターリンの大国主義的な誤りを正して、日本歴史的な領土である歯舞色丹及び国後択捉を初めとする全千島の返還を求めることが大変重要だというふうに考えております。政府は四島返還という立場ですが、私たちはまず北海道の一部である歯舞色丹の二島の返還早期に実現すること、そして必要ならば友好協力に限った中間条約を結んで、平和条約については最終的に領土問題が解決した時点で結ぶという段階的な解決も図られる必要があるんではないかというふうに考えております。  田中外務大臣は、所信表明で、日ソ領土問題について、イルクーツク首脳会談までに得られた成果をしっかり引き継ぐというふうにされている。そこで、私、このイルクーツク声明について幾つ質問をさせていただきたいと思います。  今回の声明では、一九五六年の日ソ共同宣言基本的な法的文書であるということを確認したと明記しております。政府はこれが成果だというふうに大変宣伝をしておられますが、そもそも日ソ共同宣言というのは日ソ両国で批准された文書であって、政府はこのことは国会でも繰り返し表明されていることであります。じゃ、なぜ今回の首脳会談でこの日ソ共同宣言基本的な法的文書としてわざわざ確認する必要があったのか、これが第一の質問で、欧州局長お答え願いたいと思います。  第二の質問は、日ソ共同宣言は九項で、ソ連歯舞色丹日本国に引き渡すことに同意するとして、ただし、これらの諸島は日ソ間に平和条約締結された後に引き渡されるというふうにしている。つまり、平和条約締結前には歯舞色丹は返らないというようなニュアンスなんですが、私たちは、先ほど申し上げましたように、歯舞色丹北海道の一部と考えております。政府もそう説明してきた。そうであるなら、当然、平和条約前に歯舞色丹返還をするということも必要だというふうに考えますが、日本政府平和条約の前の返還という道を閉ざしてしまうのかどうなのか、この点、外務大臣にはっきりとお答え願いたいと思います。  第三の問題は、プーチン大統領は、日ロ首脳会談の後の記者会見で、今後の交渉について、いわゆる先ほど申し上げました九項について、統一した解釈には追加的な作業が必要だというふうに記者会見で言っておられる。となると、この日ソ共同宣言の九項の解釈を変えるということを言っておられるわけで、これをどう変えるのか。  例えば、五六年の日ソ共同宣言では、松本全権大使は、ソ連歯舞色丹のみは平和条約締結された際には返還するけれども、国後択捉はどうしても返還できないという態度を堅持して譲らなかったんだ、こういうふうに答弁しておるわけで、一体ロシアはこの解釈においてどのようにしているのか。私たちは、歯舞色丹の二島先行論が今まことしやかに議論されているけれども、やはりこのような歯舞色丹返還だけで国境を画定する平和条約締結は絶対あっちゃならないというふうに考えております。その点、外務大臣にも欧州局長にもお尋ねしたい。  最後に、この領土問題は二〇〇〇年までに国境を画定する平和条約を結ぶというクラスノヤルスク合意での目標が設定されたわけですが、これがほごにされて新たな見通しが立っていない、大変私は厳しい局面にあるというふうに思います。イルクーツク声明は、歯舞色丹早期返還に道を閉ざすと同時に、国後択捉施政権を事実上放棄するに等しかったいわゆる川奈会談での一方的な譲歩の提案だけ残ったという幾つかの問題点が残っているというふうに思います。  私たちは、今後の交渉では、やはりこの立場を継承するのじゃなくて、ヤルタ秘密協定を初め、スターリン誤りを是正するという日本の大義を示して交渉すべきだというふうに考えておりますが、田中外務大臣は、領土問題の交渉を含むいわゆる平和交渉を具体的にどのようにこれから進めようと考えておるのか、日本政府としてどのような立場を示すべきだというふうに考えておるのか。  以上四点、お答え願いたいというふうに思います。
  15. 小町恭士

    政府参考人小町恭士君) お答えいたします。  まず一九五六年の日ソ共同宣言について、なぜそれを再度確認する必要があるのかという点でございますけれども、五六年共同宣言は、両国の議会の承認を受けて批准された国際約束でございまして、政府としては一貫してこの宣言は有効なものであるとの立場をとってきております。しかしながら、これまでの日本ソ連日本ロシア関係歴史の中で、ソ連ロシア側はこの共同宣言有効性を否定していた時期があり、またその有効性につきましても対外的に明確に表明するには至っておりませんでした。したがいまして、イルクーツク声明におきまして、この宣言本件交渉出発点たる基本的法的文書と位置づけられたことは意味があるものと考えております。  それから、第二点の御質問でございますけれども、五六年の日ソ共同宣言は、第九項におきまして、平和条約締結後の歯舞色丹日本への引き渡しとともに外交関係回復後の平和条約交渉を継続することを規定しております。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、これまでの日本ロシアの間の合意交渉成果を踏まえつつ、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約締結するとの一貫した方針もと交渉に取り組んでいく考え方に変わりはございません。  それから、プーチン大統領共同宣言第九項について発言したこととの関係でございますけれども、五六年共同宣言におきましては、平和条約締結後に歯舞群島色丹島日本に引き渡されることが明文で規定されております。この宣言が義務的なものであることはロシア側も認めております。  他方、ロシア側は、五六年宣言に規定されております歯舞群島色丹島引き渡しの条件は交渉の対象であるとしておりますけれども、この趣旨は必ずしも明確ではありません。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、四島の帰属の問題を解決して平和条約締結するとの一貫した方針もと交渉に取り組んでいく考えでございます。  それから、今後の進め方でございますけれども、政府といたしましては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約締結するとの一貫した方針もと交渉に取り組んでいく考えでございます。
  16. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 今、小町局長が言ったことですべてはもう如実にあらわれておりますけれども、あえて私の口から復唱いたしますと、これまでの日ソ日ロ関係歴史の中で、ソ連ロシア側がこの共同宣言有効性を否定していたような時期もありまして、その有効性についても対外的に明確に表明するには至っておりませんでした。ですから、イルクーツク声明において、この宣言、五六年の宣言のことですけれども、これが本交渉出発点たる基本的法的文書として位置づけられたことには私は意味があるというふうに思います。  そうして、じゃ、日本スタンスはどうかというお尋ねでございますけれども、それは北方四島の帰属の問題をまずはっきりする、帰属の問題ですね、そしてその後に平和条約締結するということで、これは政府はずっと一貫したスタンスでおります。
  17. 小泉親司

    小泉親司君 委員長、もう一問だけ。
  18. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 時間ですから。
  19. 小泉親司

    小泉親司君 じゃ、終わります。     ─────────────
  20. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、高野博師君が委員辞任され、その補欠として木庭健太郎君が選任されました。     ─────────────
  21. 田英夫

    ○田英夫君 三条約賛成でありますから、今、ロシアの問題、同僚委員も取り上げられましたが、私もロシア問題を取り上げようと思います。  その前に一つ、お知らせしてありませんでしたけれども、報道によると、きのう十一日、外務大臣はカンボジアのフン・セン首相とお会いになったということで、その内容も報道されておりますけれども、一つお願いしたいことがあります。  日本とカンボジアのかかわりの中で非常に重要な部分で、地雷の除去について、既にODAを発動して日本の四台の地雷除去機がカンボジアで動き始めています。カンボジアの実態は、私も何度か行きましたけれども、地雷を除去しなければどのぐらいの数があるかわからないほどのことですけれども、以前は米を輸出したほどの農業国ですが、今は全くそれができない。カンボジアの復興は地雷を除去しなければ始まらないと言っていいと思うんです。日本の除去機は旧来の地雷を除去するやり方と全く違って、対人地雷に限りますけれども、道路工事用のショベルカーのような機械ですけれども、それで完全に除去できるという実験もしております。フン・セン首相もこのことを私も何度か会って話しましたからよく知っています。  現在四台がテストのような形で行っているんで、専門家の話によると、二十台なり三十台投入すれば全カンボジアで十年後には地雷がゼロになるだろう、こういうことを言っております。戦争のときは別ですが、ああいう平和になった国を完全に復興させるためには地雷ゼロにしなければいけないということで、このODAは非常に重要な問題だと思います。経済協力局長はもう既によく御存じだろうと思いますが、この問題については答弁は要りませんから、ひとつ大臣も頭の中に入れていただきたいということをまずお願いをしておきます。  ロシアの問題も、今既に私の申し上げたいことを同僚委員からも話が出ましたが、第一に日ソ国交回復の交渉というのは、日本側からではなくてソ連側から申し入れがあって始まったということをまず第一に思い出さなければならないと思います。本来なら、いわば日ソは、ソ連が戦勝国、余り戦争をしたとは思えませんけれども、戦勝国側から申し入れてきたわけですね。しかも、吉田内閣から鳩山内閣にかわった直後をねらって、代表部の一参事官が時の総理大臣に会談を申し入れたという非常に異例な形で始まったと思います。実は、私はそのとき霞クラブにいましたので、ソ連のドムニツキー参事官という人が私どもの同僚記者に鳩山さんに会えないものだろうかということを相談したのがそもそも始まりなんですね。時の総理大臣と国交のない国の一参事官が会談をするという非常に異例な形で始まって、その後、松本俊一さんなどが全権大使になられて五六年の共同宣言ができた。その最初の接触は五五年の十二月だと思います。  なぜそうなったのかというと、当時保守合同でできたばかりの自民党の中で、いわゆる吉田派はソ連との国交回復に必ずしも賛成ではなかった、そういう状況。それから外務省との関係でいうと、外交問題であるにもかかわらず、重光外務大臣は蚊帳の外だったという状況がかなり続いていたと私は新聞記者として承知しております。そういう変則的な始まり方をした、それでわずかな時間に五六年共同宣言に到達しているわけで、私はしたがって、日本側のコンセンサスが、しかも政府・与党側のコンセンサスが十分でなかったのではないかということをずっと感じております。それをやはり乗り越えていかないと日ロ交渉というのは進まないんじゃないかな、こういう感じを持っています。  特に北方四島の問題というのは、五六年には明らかに歯舞色丹を先行させる、四島のうちの歯舞色丹を別にするということを合意しているわけでありまして、その辺をきちんと日本側が今後も意思統一をしていかないと交渉が進まない、足元を見られるといいますか非常に難しい問題だと思います。地理的、歴史的に絡んでこの四島、歯舞色丹国後択捉を区別するという考え方が一方にどうしても出てくるものですから。  外務大臣、その問題だけで質問を終わりますが、このロシアとの交渉について、四島とのかかわりでどう思っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  22. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) その前に、触れずにいいとおっしゃいましたけれども、あえて。  きのうカンボジアのフン・セン首相とお目にかかったんですが、私もきのうは、地雷のお話はベトナム戦争やそのほかのアフリカのケースも知っておりますので、地雷のお話が出るかと思いましたけれども、むしろもっとその後の援助の問題ももちろんございますけれども、それによってもっと活性化していくという、もっと明るい将来についての見通しとか希望をおっしゃっておられました。  ただ、私は、世界じゅうこういう戦火の跡、最近はこの地雷の、ランドマインズの問題が大変ありますし、閣僚にしていただく前に民放のストップ・ランドマインというようなキャンペーンに参加した経験も自分でございますので、この問題は必ず日本のODAの中で生きた形としてやらなければいけないと思っておりましたので、今極めて現実の一番直近の問題を御提言いただいて、さすがと思いました。  次に、ロシアの問題、これはもう歴史の証人として当時霞クラブにいらして、その進行状態を時系列的にしっかり教えていただいてまことにありがたいというふうに思いました。こういう機会はなかなかありませんで、外務大臣職になってつらいことはたくさんありますけれども、やはりこういう貴重な御意見をじかにアドバイス、そして事実として、ファクトとして教えていただけることは政治家として大変貴重なことだというふうに思っております。  お答えでございますが、やはり基本はジグザグいろいろあったかもしれません。それから、ソ連になって、ロシアになってという、やっぱりこういう外交交渉というのは先方の立場というものもありますし、先ほど吉田内閣から鳩山内閣に移行する時期であるとおっしゃったわけで、こういう政権交代をするときでありますとか、あるいは国の体制が変わるとき、これは政治にとって、外交にとって極めてデリケートなときであるというふうに私は政治家の家庭に育ちながら見ておりました。それを常に見ていないと、相手があることであるし、世界が動いているんだと、生き物だということですね。  その中で、経済はもちろんそうですが、経済とは違って、経済が理系とすれば外交は文系でありますが、そういう仕切り方がいいかどうかはまた議論があるかと思いますが、その中で外交は極めてデリケートであって、ですから何でもかんでもべらべら右から左へしゃべれないという問題もあると思います。  しかし、私の基本認識は、日本固有の領土である四島、これの帰属の問題ですよ、これがまず一つ、これはぶれちゃいけないと思います、領土問題は決してぶれちゃいけない。いかなるときにあってもどんな体制であってもぶれないこと。そして、この帰属の問題がはっきりしてから日本は一貫して、もう耳がタコに皆様なっておられるでしょうけれども、平和交渉締結ということに至るべきと。そのプロットは決してどんなことがあっても踏み外してはならない日本の対ロシア外交基本であるというふうに認識いたしております。
  23. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  24. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、二千一年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  25. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、文化交流に関する日本国政府ロシア連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  26. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、税関手続簡易化及び調和に関する国際規約改正議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  27. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  29. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 次に、外交防衛等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  30. 森山裕

    ○森山裕君 おはようございます。自民党の森山でございます。  田中外務大臣、毎日本当に御苦労さまでございます。  私は、毎週末地元の鹿児島に帰りまして、国政報告のためのミニ集会を催すことを慣例としておりますが、小泉内閣発足以来、我が鹿児島におきましても政局に関する有権者の関心というのは異常に高いなというふうに思います。私どもが催しますミニ集会にもたくさんの方々に御出席をいただきます。その中でいろんな意見があるんですけれども、一番話題が多いのはやはり田中外務大臣の話題であります。その内容を一言で言いますと、外務大臣にぜひ頑張ってほしいという一言に尽きるんだなというふうに思います。  一方、外務省では一体何が起こっているのかという素朴な疑問が投げかけられてまいります。疑問の最たるものは、松尾事件と申しますか官房機密費横領事件に関するものであります。多くの発言において、事件の解明がおざなりであり、外務官僚はその大罪について反省が足りないのではないかという鋭い指摘があります。また、田中外務大臣外務省幹部とのあつれきといいますか、そういうふうに受け取っている人も多いと思いますが、そのことはそもそも機密費横領事件の解明が不十分であることが原因であって、もし外務大臣が官僚の抵抗に屈服するようなことがあれば、外務省が抱えているいろんな問題というのは永久に解明されないのではないかというような意見が鹿児島の地方でもあります。  中央行政機関の不祥事にこれほどの関心と疑問が寄せられているということはよくよくのことであり、我々はこうした国民の声を軽く扱ってはならないんだろうと私は基本的に思います。  そこで、まず田中外務大臣お尋ねをいたしますが、大臣外務省を伏魔殿と表現されました。とすれば、これから展開をされる改革によってどのような外務省に生まれ変わるのでしょうか。まず、大臣のお考えをお聞かせください。  次に、この委員会でも訪米のことについてその意向を強く示してこられましたが、これは通告をしておりませんが、昨夜からの報道によりますと、訪米がほぼ決まったかのような報道がありますが、そのことについても、現状どうなっているかについてお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 先に森山委員に二つ目の質問からお答えをさせていただきたいと存じます。  訪米につきましては現在調整中でございます。調整と申しますのは、国内のといいますか、国会の方の調整をさせていただいております。アメリカ側からは早い段階から複数の日にちの提示がございましたけれども、これは先方さんの御都合が、アメリカ側の御都合がもちろんあるわけですし、外交日程や国内日程がおありになって、すべて何でも物事はそう思いますけれども、それでこちらはお待ちをしておりましたのですが、具体的な提示がございました。後は、今連立でございますし、それから野党の先生方、要するに国会としてオーケーのサインをいただくという段階で調整をいたしております。それを御報告いたします。また最終的に決まりましたら、もちろん国会に、当委員会に御報告させていただきたいというふうに思っております。  それから、最初の点でございますけれども、これは、私は自分の就任のときのあいさつで言っていますが、私がよもや外務大臣を拝命するなどとゆめ思っていなかったのですが、客観的に見ていたこと、それから自分が省内に入って見せていただいたことで一番感じることは、外務省に関して申しますと、上から下まであらゆる方たちが、全省員がすごいジレンマを抱えているということを感じましたし、またそういう発言、行動を目にし、耳にいたしました。  すなわち、あの松尾事件をきっかけにしてというふうに申し上げた方がわかりやすいと思いますけれども、長い外務省歴史の中で機能不全に陥っていた面もあると思いますし、また大変誇りを持たなければいけないし、事実、実績もたくさん積んでこられた方々もいらっしゃいます。目立った実績ではなくても、日陰においても非常にきめの細かい仕事を実直に積み重ねていらした方、そういう皆様方のプライドというものもあると思います。    〔委員長退席、理事鈴木正孝君着席〕  それが自分たちが幾ら言っても世間に十二分に通じないというもどかしさとか、それからまたそういうことを平気で引きずっている一部の人たちに対する反発とか、そういうものが複合的にある状態で、この八〇%を超す小泉内閣というものが誕生して、その閣僚として私が送り込まれてきたということについて、やはりもう上から下まであらゆる方たちが、在外もそれから本省内もそうですけれども、たじろいだんだというふうに思います。  すなわち、なぜ八〇%もの支持を国民の皆様が小泉内閣に寄せられたかということに答えのすべてはあります。何かというと、今までのようなシステム、意思決定の方式、やり方に対するノーという国民の皆様の意思がこの八〇%以上であると思うんです。しかし、じゃ大きな体を持った、五千人以上もの従業員のいる、長い伝統のある、しかも外交問題を同時に待ったなしで解決しながら自己改革もしていく、そういう車輪を二つも三つも大小回しながら解決していかなければいけないということは、それは並大抵の努力ではできません。  私は、大きな意味で、メディアがどうこう言うことは気にもしないで、むしろ長い目で、あのときつらかったんだろう、でも正しい方向に来ているじゃないかと後に評価していただくことがベストだと思って、私自身は覚悟を決めておりますので、特別もう弁明とかしない方がいいということは気づいておりますけれども、トータルで見て外務省がどうなるかといいましたならば、一人一人がそれぞれの職場で生きがいを持って能力を発揮できる、そして振り返ってみて、一人一人が自分の人生は外交に携わってよかったと自分なりに思っていただけるような職場にすること、それはポストの異動もありますでしょうし、そのほかいろいろあると思います。  ただ、長い目で見て、トータルで方向性が間違ってなかった、ポジティブな前向きなエネルギーが発揮されたことによって世界の平和と安定、そして人類の、私たち日本人も含めた幸せ、幸福追求に自分の仕事ぶりが貢献できたという評価につながれば、そういう職場にする、そのために今私は、言ってみれば産みの苦しみの一端を担わせていただいていると思いますが、政治家としてこれは、結果として見れば、今つらくても必ず勉強になるというふうに自分自身も前向きにとらえようと努力中でございます。
  32. 森山裕

    ○森山裕君 ありがとうございました。  それでは次に、去る六月六日、発表されました外務省改革要綱に関連をして、これは政府参考人お答えは結構でございますが、お尋ねしてまいります。  まず一点目でありますが、松尾室長は、要人外国訪問支援室長在任中の平成五年から十一年にかけて、公金横領の事実が発覚するのを恐れて、会計事務に詳しいベテラン職員を二年程度の期間で交代させていたという報道があります。こうした人事工作に関して、室長は、幹部人事責任者に働きかけて専らアルバイト職員を配置するように手配をしたと伝えられておりますが、この事実は捜査段階でつまびらかにされているのかどうかということがまず一点であります。  その次に、外務省の改革要綱は、「人事における公平性、客観性、透明性、予測可能性の向上」の項で人事異動の定期化及びポストの任期限定を掲げております。しかしながら、上司の都合や幹部の思惑で人事に介入することが予想をされるわけですけれども、これを阻止するためのチェック機能はどうなっているのかについて御答弁をいただきたいと思います。  次に、松尾事件について、その在任期間中及び横領が発覚した当時の幹部に減給処分等の処分が行われました。しかしながら、その後も数回にわたって再逮捕されているわけでありますけれども、横領金額も逮捕当時に比べて相当な金額に増加をしているものと認識をしておりますが、国家公務員法が定めるところにより、法律的には一事不再理の原則で関係責任者に対する追加処分は不可能だという意見が一部にあります。  そこで、次の点について御答弁をいただきたいのでありますが、まず一点目は、人事院はこの点で国家公務員法の解釈について相談を受けたことがあるのかどうか。受けたのであれば、人事院は何らかの見解を内々に伝えているのかどうか。  第二点は、国家公務員法上一事不再理についてどういう解釈が可能であるのか、一般論として御説明をいただきたいと思います。  以上、御答弁をお願いいたします。
  33. 杉浦正健

    ○副大臣(杉浦正健君) 松尾容疑者が部下の人事を壟断したかどうか、その点については後ほどまた官房長の方から話してもらいますが、松尾事件については目下捜査中でございます。次々と起訴がされておりますが、まだ捜査が終了したというふうには聞いておりません。  したがって、その捜査の内容も明らかでございません。単独の犯罪なのか、あるいは場合によったら共犯者といいますか、よしみを通じた者がいるかどうかとか、それはどういうような経緯で行われていったのか。必ずしも、必ずしもというか全く、捜査中でございますので明らかじゃございません。百数十名という外務省職員が事情聴取を受けておりまして、まだ現在も行われております。したがいまして、その点についてはこの捜査が終わってすべてが公訴提起をされ、公判にさらされまして、記録が明らかになっていくという過程の中で明確になることでございますので、現時点においてはちょっと何も申し上げる資料がないということをあらかじめ御理解賜りたいと思います。  二番目の人事の問題ですが、これは第一の質問とも関係するわけでございますが、この間発表いたしました改革要綱におきまして、外務省が、松尾事件を起こした背景の一つとして人事体制の問題があるという改革会議の御提案を受けて、私どもの具体的施策を打ち出しておるところでございます。  今までの外務省は人事異動が定期的に行われていなかった。サミットの後比較的大きな異動を行っておったわけですけれども、五月雨式にやってまいったという現実がございます。  それから、一つのポストについても、松尾室長は五年を超える長き間同じポストにいたということがあるわけですが、外務省の場合そのポストについての期間の原則の定めがない。ポストによっては長くいていいポストもあると思うんですが、当然二年とか三年で交代すべきポストもそれ以上在任されるという人も多かったわけでございまして、そういったことが人事にとって最も重要でございます事務の滞留と申しますか、汚職というか、腐敗を生む根本でございます。  それから、外務省員のみんなの士気を高めるという点、つまり一人一人がそれぞれのキャリアパスを持って、一生懸命働けばこういうふうになっていくという目標設定ができて、人事の透明性とも言えますが、将来に目標を持って働けるという道を阻害しているんじゃないかというふうな点を考えまして、定期異動早期に実施しようと。これから準備を始めまして、来年度ぐらいからはきちっと年一回定期異動をやると。  そして、それぞれたくさんポストがあるわけですが、大使について、あるいは局長とか課長とか、それぞれのポストで大体原則としての在任期間を設けて、定期異動でそれぞれの人の状況を見ながら、モチベーション、大臣のおっしゃるそれぞれの人たちの士気が上がるような方向で人事を回していくということでございますとか、あるいは評価についても、上からの評価だけではなくて下からも評価できるようにシステムを考えるとか、これはこれから検討してまいります。  あるいはポストについて省内からの公募制、つまり私はあのポストをやりたいんだという人を定期異動に合わせて申し出てもらいまして、それで適切にそれを評価してポストにつけるとか、あるいは幹部ポスト、主として大使を念頭に置いておりますが、民間からの起用を今までもやってまいったわけですが、もっと積極的にやろうとか、あるいは外務省職員に他省庁との人事交流をやるとか、あるいは民間へ行って勉強してもらうとか、例えばキャリアの人には領事業務を一年ぐらいきちっとやってもらうとか、もう少しそれぞれの人が多様な経験をし勉強をして省内で働いていただけるようにしようじゃないかとか、さまざまな改革を盛り込んでおるところでございます。  競争原理の導入とか公平性、客観性、透明性、予測可能性の向上とか、人事管理制度の強化とか、研修の拡充とか、大きな項目で挙げておりますが、人事並びに管理体制をきちっとやると。世間でいろいろ言われておるわけですが、この外務省の人事はとかく何といいますか、人事を動かす偉い人たちがおって、きちっとした統一的な人事が行われていないんじゃないかという批判もあったわけですが、そういうものにきちっとこたえて改善していくことが大事だということで要綱をまとめたわけでございます。
  34. 吉藤正道

    政府参考人吉藤正道君) お答え申し上げます。  関係責任者の追加処分と一事不再理との関係につきましては、人事院としては、一般的には、一事については再び処分できないが、処分後に新たな事実が判明した場合に、それらを含めて一事か否かが判断の分かれ目であるという考え方をとっております。国家公務員法上の懲戒処分につきましては、一事不再理の原則が当てはまるものと考えております。  この一事不再理の原則によりますと、具体的には、任命権者が懲戒処分を行った場合に、処分の対象となった同一の非違行為について重ねて懲戒処分を行うことはできない。また、一連の事件であっても前の懲戒処分の対象となった非違行為とは異なる非違行為について、問責の対象として懲戒処分を行うことは可能である。さらに、例外的に処分に一定の瑕疵が存する場合に限って、前の懲戒処分を一たん取り消して改めて懲戒処分を行うことができる場合があり得ると解されているところでございます。  本件のような部下職員に対する管理監督の責任を問責して懲戒処分がなされた後に、この者に対して再処分が可能かどうかにつきましては、すべての事実関係が判明した後に、以上申し上げたような一事不再理の原則を踏まえ、当初の懲戒処分の対象とは異なる者が問責の対象であるかどうかなど、個別具体的な事実の認定を行った上で判断することが必要となるものと思料しております。
  35. 五十嵐忠行

    政府参考人五十嵐忠行君) 外務省松尾元室長に係る事件につきましては、警視庁におきまして去る一月二十五日、約五千四百万円の業務上横領の事実で外務省からの告発を受理いたしまして鋭意捜査を推進してきたところでありまして、これまでに、三月十日、四月四日、五月八日、六月一日の四回にわたりまして同人を詐欺の容疑で逮捕したところであります。  逮捕容疑につきましては、当時、外務省大臣官房総務課要人訪問支援室長であった同人が、内閣総理大臣の外国出張に伴い、随員等に支給される宿泊料と実際のホテルの利用金額との差額として内閣官房に水増し請求するなどして現金をだまし取ったというものでありまして、現在までの立件総額は約四億七千九百万円であります。    〔理事鈴木正孝君退席、委員長着席〕  お尋ねの件につきましては、現在捜査中の事件に関することでありまして、捜査の具体的な内容に関することにつきましては答弁を差し控えさせていただきます。
  36. 森山裕

    ○森山裕君 杉浦副大臣、ちょっと伺いますが、今の人事院の答弁を聞いておりますと、この問題では再度処分の必要があるという理解をしていいですね。
  37. 杉浦正健

    ○副大臣(杉浦正健君) 人事院はかたい言葉で言いましたので御理解いただけなかった面があるかと思うんですが、本件の懲戒処分は監督責任を問うたものでございます。あくまでも前提といたしましては松尾室長個人の犯罪行為であって、あの告発した時点では五千万円しかわかっていなかったんですが、松尾室長が自白した分だけ、もっと相当ほかにあることはわかっておったんですが、その金額で告発を外務省としてしたわけでございます。したがって、その金額がふえたからといって一事であること、その点については変わりないと思うんです。  ただ、これは現在捜査中ですので一切わかりませんが、監督責任の中身といっても、処分をとられた方々が松尾室長の行為にどのようにかかわってきたか、その程度問題では、個人の事件、あるいは幇助とかそういうような意味も含めてかかわり方が具体的にわかりませんので何とも申せませんが、先ほど人事院の方が申したように、その結果がすべて明らかになった時点で一事と言えるかどうか、不再理に当たるのか、あるいはこれは相当深いかかわりがあるから、この方については新しく明らかになった事実で処分ができるかどうかという判断ができる場合もあり得るかと思います。そういうことを人事院が申したわけで、現状では人事院の言われる一事不再理を超える処分の理由に当たるような事実はわからない、明らかになっていない、こういう趣旨でございます。
  38. 森山裕

    ○森山裕君 そこのところは非常に国民にもわかりにくいと思うんですね。それと、私はこの委員会に所属をしておりまして、一遍調査報告をいただきました。その後金額はかなりふえてきておりますし、まだまだふえるのではないかと言われている。  国民の信頼を取り戻すという意味からも、やはりここはきちっとした対応を外務省としてやっていただかないと、外務省に対する国民の信頼を取り戻すことというのは非常に難しいのではないかなというふうに思いますし、処分をすることが決して目的であってはいけませんけれども、責任は明確にしておかないと信頼というものを取り戻すことはできないのではないかなというふうに思っておりますので、そのことを申し上げておきます。  田中大臣、大事業をなすには天の時、地の利、そして人の和があって初めて実現をされるとよく言われますけれども、田中外務大臣というのは聖域なき構造改革を公約する小泉内閣の重要閣僚として入閣をされた、まさに天の時だなと思います。また、国民の九〇%が小泉内閣を支持し、田中外務大臣への国民の声援というのはまさに地の利であると思います。  ただ、惜しむらくは、人の和に欠けるところがあるのではないかということを少し思うところでありますが、外務大臣はこう述べておられます。私は国民の期待にこたえ、十五年後、二十年後に振り返ったとき、まさしくあのときが新生日本に向けてかじを切ったときだったと考えてもらうようにしたいという考え方を述べておられるわけであります。先ほどもそんな御意見をお述べになりましたし、そのためにはどんなことにも立ち向かっていくという強い考え方をお述べになりましたし、そのことに国民は大きな声援を送っているんだろう、こう思います。  女性の天性であります優しさと厳しさは、私は田中外務大臣の持っておられる最大の武器ではないかなというふうに思います。多くの善良な外務省職員は、不祥事と混乱に茫然自失をしているのが現状ではないかなというふうに思います。どうか優しく厳しく励ましていただきたく、まず思います。  それと、小泉内閣を成功させることができるかどうかの重要なかぎの一つを田中外務大臣が握っておられるのではないかなというふうに思うんですけれども、このことについて大臣の御感想をお聞かせいただければと思います。
  39. 杉浦正健

    ○副大臣(杉浦正健君) 人の和という御質問があったので一言言わせていただきますが、二人の副大臣、三人の政務官は力を合わせて大臣を支えようということでやっておりますし、また外務省はいろんな方々といろんな場で接触をしておるわけですが、外務省全体として、これを契機として外務省を変えていこうという機運は非常に強いものがございます。  ですから、外からごらんになっていろいろなふうにお映りになるかもしれませんが、その点については御心配は無用ではないかと私は思っております。
  40. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) では、森山委員お答えさせていただきます。今、副大臣から援護射撃をしていただきまして、ありがとうございます。  天地人というのは、これはまことに自分で考えて、予定して計画してできるものではなくて、これはまさに本当に天の配剤というか、時を得るということですから、人為的になし得ないことだと思います。そして、天地があっても人が得られていないということかもしれませんけれども、それは自分もそのことを一番感じておりますが、人の和ということもいろいろな和があって、和をもってとうとしとなすと聖徳太子が言った時代の和もありますでしょうし、今のインターネットの時代の和というものもありますし。  そういう中で、私は自分個人を見て、至らない人間ではございますけれども、逆に政治家となりましたときに、決してどんなことがあっても派閥に入らないと。これは違うことを言うようですが、本当はここが原点なんですが、グループに入ると政策も意思決定、すべてが派閥や政党にえらく拘束されてしまう。  私の今の将来に対して、今現在の時代認識、世界認識というものがありまして、それは価値観が多様化しているということなんです。国によって、国内によって、社会階層によって、年代別、男女別。したがって、その中でいろいろな価値観を吸引しながら世界に向けて情報を発信し、みずからがかじを切って進むということが政治家の基本、要諦であると私は思って政治家を志しましたので、一つの派閥とか、あるいは小泉総理も、たまたま今回ほかの政党であっても、与党外であってもいい意見であれば自分はどんどん一緒にやりますとおっしゃっている。まさしくこれが軌を一にした私の発想で、ですからこの小泉先生の発想を、前に何度も何度も候補者のときに聞いていて、今まで一度も自民党総裁選を熱心にやったことがないんですが、あっ、これは人を得たと私は思ったんですよ。それでもう総力を挙げました、私としては。人を得ていると思います。  そして私も、じゃ、ひとりぼっちであるかといったら、逆に無派閥であるがゆえに、余り自民党だけのどろどろの中に足を入れていないがゆえに、本委員会もそうですが、ほかにおいてもたくさんのいろんな議員さんが派閥を超えて、議員立法を今四本目を手がけていられるのも、それはいろんな方が世代を超えて政党を超えて、バックアップしてくださっています。今、外務大臣職についていながらも、ほかの党からも自民党内からも、この議員立法を早くやりましょうよとほかの提案もされていますし、一緒に少しずつ、微力ですがお手伝いをして進めてきております。  これはしがらみがないということです。しがらみがないということが、いかに自分を自由に、有権者、生活者、それも日本だけではなくて世界の地球の裏側にいる方たちに対しても思いをはせることができるかということなんです。  こういう状態にならないと、ですから私が小泉総理に、無派閥になってください、私が応援するに当たっては、あなたが派閥から抜けることですよと。かなり懊悩なさったようです。ですけれども、あの方は踏み切られました。したがって、私はまた人を得たなと思っています、そういう点でも。ですから、全員の方にそれを求めません。しかし、私が一議員として思っていることは、できるだけしがらみを断って冷静に客観的に、ズームをずっと引いて俯瞰図的に物事を見る。しかし、俯瞰図だけでは浮き上がってしまいますから、虫めがねでじっと細かいことも見なきゃいけない。一人じゃできません。すなわち人の和、皆様の協力、知識、知恵、そして行動が必要です。  私は、この永田町でも友達がたくさんいることに感謝していますし、ああ、やっぱり無派閥でいたこと、私の八年前の決断、志は何も間違っていなかったと思っています。有権者の方たちもそのことを十二分に理解してくださって、つまらぬことをしなくていいから自分の信念を貫いてくれ、そのために私たちはかけていると有権者が言ってくださることをまことに私はありがたいと思っていますので、私なりの考えた人の和といいますか、人のグループといいますか、そういうものがあるというふうに思っていますので、聖徳太子が言っているような人の和ではないんですけれども、自分なりに理想が、本当にそれを目指して、私が勇気さえ持てば、私さえ負けなければ政治は動くと思っております。
  41. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) もう時間ですから。
  42. 森山裕

    ○森山裕君 時間が参りましたので、終わります。
  43. 今井澄

    今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  私は、前回の当委員会、同僚の広中委員が御質問をいたしました、そのこととかなり重複する点があるんですが、その後情勢の新たな展開もありますので、質疑をさせていただきたいと思います。  まず最初に、ちょっと異例かもしれないが、委員長お尋ねしたいんですが、私は政府参考人として外務事務次官をお願いしたんですが、それで広中委員も前回お願いしたんですが、お見えになっておられない、その理由についてお尋ねします。
  44. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 前回、広中委員から同様のお申し出があり、また今回も今井委員から同じ申し出がありましたことで、当委員会の理事会で現在その取り扱いについて協議いたしているところでありますが、政府参考人制度導入の際の国会内各党派の申し合わせ事項の中に、政府参考人第四項に、今般の改革の趣旨にのっとり、細目的・技術的事項について責任を持って説明するという条項がありまして、この解釈の問題もあり、本委員会にきょうも官房長の飯村君が出席しておりますので、与党側理事から、飯村官房長で十分ではないか、事務次官と官房長とで、細目的事項について技術的事項について責任を持って説明することは同じではないかという御意見もあり、現在なお協議継続中であるということで本日の出頭は見合わせました。
  45. 今井澄

    今井澄君 私が何でこういう質問をしたかと申しますと、現在、とにかくこの事態はできるだけ早い時期に、姑息的に時間だけ急ぐわけじゃないんですが、きちっと決着をつけなきゃならないと思うんですね。決着をつけるに当たって、やっぱり国会も責任をとらなければならないと思うんです。そういう意味では、私なんかのところにも随分寄せられるんですが、現在、外務省あるいは外交問題をめぐって起こっていることの事態の一つは、いわゆる外務大臣と事務方、この対決というふうに一つは出ているんですね、それが本当かどうかは別問題として。  やっぱり国民が望んでいるのは、外務省側のいわゆる事務方と言われる側の最高責任者にはっきり堂々と見解を述べてもらいたいということというのが随分寄せられているんです。そうすると、そういう場というのはやっぱり国会しかないんじゃないだろうかと。国会としても、やっぱり責任を持ってこの決着の方向に動き出すべきだと思うんです。それは衆議院でも、外務委員会ですか、情報公開、文書を出せという要求が来ていますが、参議院のこの外交防衛委員会もどうするか。私は、この問題、後ほどちょっと御提案を申し上げたいと思っているわけです。  なお、事務方という言葉が使われて、私は実はこの言葉は余り好きじゃないんですよね。と申しますのは、霞が関の官僚の皆さんがやっていることは単なる事務じゃないんですよ、そこがいいか悪いかは別として問題なんですけれども。ですから、この事務方という言葉を使って、ある意味では官僚組織の果たしている重大な役割が何かごまかされたり、あるいはその言葉を使って責任逃れされたりすること自身が問題なので、もっといい使い方がないのかなと。官僚と言うと、またこれにもちょっと価値観があるものですから。そのことを申し上げておきます。  なお、私は医者出身で、社会保障専門でずっと厚生委員会やなんかに来たんですが、九年前に当選したときから、国会議員はやはり自分の専門以外に外交はみんなやるべきであるというふうに思ってきましたので、今回この委員会に所属させていただいたことは大変ありがたいですし、またそういう経過がありましたから、外務省には大変いろいろ教えてもらったりお世話になったり親しい友人の方が大勢いるわけで、私は、個人的には何も外務省の当局に恨みがあるわけでも何でもない、むしろ感謝の気持ちの方が多いんですが、しかしこの問題の決着はやっぱりクールにつけなければならないと思うんです。  そこで、今、何かけんか両成敗的なこととかいろんなことが言われておりますけれども、私はやっぱり、今回の情報リークが起こったときに、はっと非常に嫌な思い出を思い出しました。それは、小渕内閣のときの中村正三郎法務大臣のときのことです。私は、当時予算委員会の民主党の筆頭理事でおりましたので、爆弾質問から始まって、法務省の答弁、もう目の当たりに見ていまして、はっきり言って官僚によって一人の大臣が葬られたということを非常に、私どもは首をとった側ですけれども、嫌な思いが残っていたんです。  だから、今度のことを見ていて私はまずそのことを思い出したんですが、大臣、ぜひそこは、絶対最後までやり抜くという決意を私はお聞きしたいんですけれども。
  46. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 大変いい御指摘をいただきまして、まさしく私が申し上げたいと思っていたことで。今まで随分、着任以来時間がたちましたので、少しこういう冷静な議論をさせていただけるようになりましたけれども、今までであれば、予算委員会であれこうした参議院、衆議院の委員会でも、即横やりが入ったというふうに思いますけれども、相当冷静になっていただいてよかったな、やっと物を言える時期になったというふうに思いますので、真正面からお答えを申し上げます。  まず、その事務方という言い方、これも、私はかつてほかの役所の大臣のときに、これこれこれ省の何ポスト、官房長、事務次官というふうに私は申しました、こういう席で。そうしましたら大変、当時一年生議員であったこともありますが、しかられまして、官僚たちから。事務方と呼べ、我々のことを官僚とか、お役人とかへつらった言い方もしなくていいし、官僚もだめだと。じゃポストがあるじゃないですか、あなたはたった一人の事務次官、おっしゃるとおり責任者ですよ。大組織の大権限を持ったところの事務次官がなぜ出てこないのかと私は思います。そして、やるときには事務方と言ってほしいと。でも、あのときに言われたから私は、なるほど、今回も事務方と言わなきゃいけないのかという霞が関方式で言ったわけで。そうすると、何でもかんでも事務方のせいにするなと言いますが、顔があるし、大変な権限がある。  しかも、外務事務次官は二回記者会見をやっております。ほかの役所もそうです。私、それも精査しております。それもきのう、おとといからですか、事務次官がやっている記者会見外務大臣の前にやり、外務大臣は、火木の記者会見のときに全閣僚はやります、閣議後。その後に外務省がやる、各省庁自由だそうです。ほかの省も調べました。そこで何を言っているのか。すなわち、外務大臣が発言をする前に下ごしらえもでき、外務大臣が正式に発言した後、事務次官が記者会見でそれを消すこともできる。  そういうような機能を果たしているということを議員の皆様や国民の皆様にしっかり知らせなきゃいけない。そこでどのような発言をしているのか。しょっちゅうメディアは、ミサイル防衛についてああだ、こう言ったか言わないか、そればかり言っておられますが、そういう事務方というふろしきをかぶった中で何をやっているのか。それは、個人の責任だけではなくて、歴代です。  こういうことを言いましたらば、あるOBの方が、顧問になっている方が、とんでもない、あなたと御家族みんないいと思っていたけれども、私は戦後四十年間もこの役所にいる、今も顧問でおりますが、伏魔殿などということを言って、日本のために貢献してきたこんなすばらしい外務省のことを非難した、私も侮辱されたし外務省も全部侮辱されたので、今後おつき合いをしませんというお手紙やおしかりを受けました。そういうことを、一般の方たちがそう思っているか。一般国民やメディアの方も、一般の議員も含めて、その方の発言が正しいと思われるか。その方が最善の努力をなさり、外務省を思っていらっしゃること、それは認めます。それとは違います。  そして、外務省と私は対立してとおっしゃいますが、私は、外務省ほどたくさん個人的な知り合いが、今現在、現役の幹部の中にも若い中にもいる役所はありません。それは、個人的に皆さんわかっておられます。逆に私は忍びない思いがしています、情において。しかし、私が外務大臣として着任したからには、しっかりやることはやるということ、それが国会議員で歳費を、税金を歳費としていただいている国務大臣としての責務ではないでしょうか。  ですから、いろんな方の意見を聞きながら、私が責任をとるんです。私が責任をとるのですから、どんな非難、中傷もいいけれども、ミスリードは絶対に許されないんです、将来のために。そして、四十年間奉職したというプライドを持っていらっしゃる、外務省がこの世で一番いいと思っていらっしゃる方のためにも間違えられないんです。そういう思いがあります。
  47. 今井澄

    今井澄君 今、大変革の時代だと思うんです。国民は変革を望んでいると思います。  私は、長野県なんです。田中知事、同じ田中ですけれども。昨年、応援をして、田中知事が当選して、その後も圧倒的な支持を誇っているわけです、いろいろ問題も指摘されてはいますけれども。たまたま佐々木毅さんという政治学者、今は東大の総長をおやりになっているんでしょうか、この方が、田中知事が当選された後の状況の中で、昨年の十月二十三日、地元の信濃毎日新聞というのがあるんですが、それに定期的に論評を寄せておられる。それにこういうことが書いてあるんです。  今度起こったことというのは、二つの側面を持っていると。第一は、古い仕組みの終わりという面だと。「古い仕組みの骨格をつくってきたのは官僚制であり、これは中央から地方に至るまで統治を実質的、日常的に取り仕切ってきた。官僚制は「行政の中立性」という表看板を外すことはできず、従って、自ら政党をつくることはできなかったが、民主政治の下にあっては自らを政治的に覆ってくれる政治勢力を必要とした。自民党は長い間にわたってこの政治的覆いの役割を果たし、それによって自らの政権を維持してきた。勿論、各党相乗りの地方政治の場合、これは何も自民党だけの問題ではない。」と。  それからもう一つの側面は、それではこの変革ということで何が変わるのか、変わり得るのかということで、青島知事を経験した東京都民としてはなかなか変わらないなというのが実感だという言い方をしています。選ばれた人物が、選挙で選ばれた知事なりが、「それなりの工夫と闘志を持ち続けなければ、今までの壁を破ることは困難である。政党や官僚制はその意味では決して弱い存在ではなく、その抵抗は実に執拗である。」という鋭い論評をしておられるんですが、何か大臣、一言ありますか。
  48. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 大変すばらしいことをおっしゃっていると思いますが、できれば、今耳でさっと流れてしまいました、後ほどペーパーで拝見させていただけるとまことにありがたいと思います。
  49. 今井澄

    今井澄君 それで、私は、前回の広中委員との質疑応答をお聞きしていて、そしてその後、翌日八日に東京新聞を見てびっくりして、ある意味では自分自身もちょっと甘かったなと思って、大臣のお考えも甘いんじゃないかなと実は思った点があるんです。  というのは、ああいうリークが始まったとき、まず最初はこのリークは唐家セン中国外相との電話会談の内容から始まったと思うんですが、とにかく、もし大臣の言われたことが問題だと思ったら、すぐにどこかに漏れると思うんですよね。そのことだけに着目している人だったら、大臣がこんなことを言ったら大変だというのがどこかに漏れるかもしれない。ところが、かなりの日時を置いて計画的に出てきているというのを見て、私はこれは意図的なリークだなと思ったわけです。そして、この意図的なリークは、当然そこに同席した人しか知らないことが口頭なりあるいは簡単なメモなり、あるいは何かを見せるという形で行われたかなと思ったんです。その後のマスコミのリークの仕方も、中身の一部みたいな形でちょろちょろと小出しに出てきたから、私もついそう思っていたんですよ。  ところが、八日の東京新聞にあの三つの会談の全文二つと要約、要約というのも全文だと思うんですよ、つくられた文書の全文だと。これは本物かどうかの話は別にしまして。ああいうのがどんと出ますと、このリークというのは、外務省の中では恐らく日常的に重要な会談についてはメモをとっておられるに違いない、これは本来は絶対外に出してはならないものだと。現にあの中には、豪州との間ではこれはもう公にしないと書いてあるというのがあったわけです。本物かどうかは別としてですよ。  そうすると、私は、八日にその東京新聞の記事を見て考えたのは、ああ、絶対このリークというのは、外国を巻き込んだ、日本外交の恥ですし、日本国益を損なうだけでなく外国に迷惑をかけているんですから、これは決着をつけなきゃならないと。広中議員の質問に対してお答えになったように、私は、やっぱりこれはリークした人を処罰すべきだと思うんです。もしこれが国家公務員であれば国家公務員法なりなんなりできちっとやらない限り、これは外国に対しても顔向けできないですよ、日本的なまあまあでやっちゃったら。だけれども私は、果たしてそれだけなのかなと思ったんです。  そこで、まず大臣最初お尋ねをしたいのは、私、そこで気がついたのは、恐らく重要な会談の非公式のメモ、内部文書はつくられているんだろう、これが長い間の外交の慣例なんじゃないか。これは外交だけでなくて、ほかの省庁でも大事な会議があったらその会議の議事録みたいなものはつくられていますし、正規の議事録じゃなくてもメモはつくられているんだろうと。特に外部に明らかにすべきでないメモ、これの扱いは一体どうなっているのかということがちょっと気になっているんですね。  そうすると、当事者である大臣のところには、あの東京新聞に出たのが本当かどうかは別として、外国の大臣との会談についての要約をまとめましたが大臣よろしいですかというふうな決裁というか了解を求めたような行為はありましたか、大臣にまず。
  50. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) まずは、私がお答えをきちっとする前に、事務方に、ちょっと一通り事務的にどう言うか聞かせていただけますか。
  51. 今井澄

    今井澄君 じゃ、外務省当局にお尋ねしますが、多分これは考えて常識なんですよね。そのときの記録をとどめておこう、だけれどもこれは秘密なんだよというのはいいと思うんですが、それはどういうふうにしてつくるのか、そして守秘のレベルはどの程度の扱いなのか。また、そういうものは、もしその文書がつくられると一体だれだれの了解を得たり、どういう範囲にそういうものは回すものなのかということを、一般論としてでもいいですが、この際、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  52. 飯村豊

    政府参考人飯村豊君) それでは、一般論で申し上げさせていただきたいと思いますけれども、通常重要な二国間の外相会談がございますと、その報告書、これは通常、電報、公電の形をとることが多うございますけれども、これを出席者の一人が作成いたしまして、回覧いたします。  外相会談等の重要な会談の内容は、今申し上げましたように公電の形で、在外で、海外で行われた会談の場合は海外から本省へ、あるいは東京で行われた場合は本省から在外公館へ連絡されることになっております。そういう形で関係者に周知されるということでございまして、その内容につきましては、省内の関係者、さらにこれを知るべき立場にある省外の責任ある政府関係者にも周知、配付されるという状況でございます。  もう一点、秘密の指定の問題でございますけれども、これは通常、秘密に当たるというふうに判断されるものは秘密指定が行われております。  以上でございます。
  53. 今井澄

    今井澄君 そうしますと、今回リークされたものについては四つ、プラス橋本・ダウナー会談ということになると思うんですが、外務大臣御自身の問題は、まず最初に唐家セン外相との電話会談ですね、これは外電にする必要ないわけですね、省内ですから。次に、ディーニ・イタリア外相との会合は、五月二十五日、北京のASEMですからこれは外電の形で来たんでしょう。それから、ダウナー・オーストラリア外相との会談は、これは日本で行われたわけですよね、これは外電にしなくても外務省内でできる。それから、最後にリークされたフィッシャー外相とのは北京ですから外電になったんでしょうね。  そしてしかも、今度は大分内容が問題になっているようですが、私は内容は非常に外務大臣はいいことを言われていると思うんですよね。しかも、やっぱりアメリカと会談する前にヨーロッパやオーストラリアの人たちの感触を探るというのは、私は外務大臣として非常にすぐれたやり方だったと思うんですよね。そういう意味では私は何ら非難されることはないと思うんですが、でも非常に大変な内容だと思ったとすれば相当守秘がかかったんだと思うんですが、外務大臣には、こういうふうにまとめましたと、あるいは外電、こういうあれしましたと、決裁回ってきましたか。
  54. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 来ておりません。  それで、私はそのことを、今回ずっとこの経験をしていて、きのうの朝になりまして、週末で頭がやっと少しゆっくりしたものですから、よく全部プロットを自分で考えてみまして見直した結果、そうだと、その決裁が私に来ていないということに気づきました。  いろいろな局面がありますから、まずこのASEMの問題ですね、北京でのこと。これが一番象徴的なことでして、その中でイタリアの外務大臣と何を言い、次はドイツと何を言い、そのほかいっぱいあったわけですけれども、これを初めから、ワーキングランチというのがあります、ランチもディナーもあったんですが、そのときに、各国がミサイル防衛について、どことは申しません、相手の都合がありますから、そういう話が出ました。それに中国が答えました。  そのときに、通訳は私は必要ないと言ったのに、中国の方には女性の通訳がいましたが、あと全部、こういう円卓で御飯を食べて、お料理が出たので、二時間もおくれたんです、前の会場で機械の故障があって、バスで全員がその食事をしに行ったわけです。そして、そこで私は通訳は要らないと、食事でこの程度だったら私でも大丈夫だからと申しましたんですが、振り向きましたらちゃんと後ろにおりまして、いや、ノートテーカーですから気になさらないでくださいと。課長補佐だそうです。そのときに私は何度もいいと申しましたんですけれども、とにかく絶対要るんだから気にしないでほしいと言われて、ああ、これよくないと思ったんです。  そこで私が発言したことというのは二つしかありません。それはジョークです。ミサイル防衛については、ある国の方がおっしゃったのは、これはたまたまASEMというのは、ヨーロッパ外務大臣及びアジアの外務大臣が出ているのであって、アメリカが来ていない。そして、今回三回目でしたか、今回のASEMはたまたま北京である。この問題が、中国であるから中国の幹部もおられるので、これだけごちそうをいただいて歓待をしていただいているけれども、みんなが仲よく平和で暮らすために意見を言いたいといって複数の国の方たちが話されました。私はそこでは発言していません。  その記録を全部きのう出してくれと言いました。なかなか出しませんでした。出てくるのは、委員会があったりしますから、短い時間でもうみんなで右往左往する。私とディーニのものばかり持ってくるんです、ディーニ外務大臣ばかり。それも全部が事実じゃないんです。なぜそればかり出てくるのか、トータルのものが、ノートテーカーがいたじゃないかと。今も完璧なものは来ておりません。  大変なせめぎ合いをやっています。これはほかのだれが言ってもだめなんです。国務大臣が言わなきゃ出さないんですから、国務大臣は残念ながら私しかいないそうですから、外務大臣は。どんなに副大臣が強要しても出さないんです。相手は人数が多いんですから、ああだこうだ、ああだこうだ言って、私の政務の秘書さんも行かせて、そこでとっていらっしゃい、コピーもらっていらっしゃいと言っても、時間切れですよ、私は次の会があっていろいろ動くわけですから。  それで、見ましたら、何だ、違っているじゃないかと。それについては、ああ済みません。なぜあなたはこのイタリアのことばかりしか出さないんですか。ちょっとかわいそうだと思ったんです。事務官は若い人で、ちゃんとした若い、将来ある官僚ですけれども、その方を呼びました。顔が引きつって、かわいそうでした。その人を大臣が叱責するなんてやっちゃいけないと思いますよ、将来ある人を、かわいそうじゃないですか。私だって情がありますよ。ですけれども、聞きました。本人はもう本当に目が点になっていましたね。困っているんでしょうね、あちこちからいろいろ言われて。  それで、かなりのものは手に入れました。そして、中身が違うところもあります。ただ、私がジョーク二つしか言っていない、そこで私がミサイルについて話していないこと、それは証明されました。だけれども、相手があることですから、じゃ、それを情報開示しろと言われても、これは外交が全部吹っ飛ぶことになりますから、できないと思います。  それから、イタリアの首相も二月に──これはNHKに確認とりました、私と話をしているときに、私、彼に下がってくれと、二メートルぐらい後ろに下がってくださいと言ったんですけれども、下がっていたかどうかは私は後ろに目がないからわかりませんけれども、話をしていましたから、二月にアメリカに行って、アメリカ政府と話したときのことについて極めて熱心にイタリアが話し始めました。私もそれに返事はしましたし、これからアメリカに将来行くことになるだろうから、どんなだったかということも伺いましたし、サミットもあるし、私はニューフェースですから、ニューフェース・ウイズ・オールドネームといって雑誌にアメリカで紹介されましたけれども、ニューフェースですからいろいろ聞きたかった。私から聞かなくても、ほかの国からそういうメッセージが発信されている。バイのこの豪州についてもそうですし、ほかの場合も一々申しません。  ですから、状況が違ったことが言われたので、こちらから尋ねないのに、ロシアの問題は今お尋ねなかったですけれども、前総理のテレビでの発言に対して、五月十四日付でロシア外務省が否定をしていますね。  それから、ダウナーさんに、オーストラリアについては六月四日付であちらがすぐに反論してきていますね。アメリカに伝えるだとか、あるいは田中さんがそんな発言したなんてことを元総理には言っていないと。前総理と元総理です。  それから、次の六月七日にはイタリアから、あちらから発信してきています。そうすると、今度はメディアが、次はこの国はどうだ、この次はどうだと言うので、六月八日付で今度はドイツ側から、こちらがお願いしたらすぐ大使館からぱっと返事が来て、事実ではないと。事実ではないというよりも、かなり強硬な、外務省は優しい表現を使っていますが、英語をいろんな辞書を引いたり専門家のネーティブチェックをしますと、捏造であるとか虚構であるとか作り話だ、うそだというような激しい言い方で、日本のメディアといいながらも、そうしたことを言っている人たちに対して、それは官僚であり元総理かもしれません、わかりません、それらに対して根拠のないものであるということを明言いたしますとイタリアも言っております。  それから、ドイツに至りましては、ケストナー大使を通じて、貴国の安全保障、日本ですね、にとってアメリカが有する持続的な重要性に疑問を呈するような発言は行われなかったことを確認いたしますと。私と二人での話です。これはASEMの中で二人での会議もしています。  そこで、向こうも何人か役人がいて、こちらも役人がいて、両方の国のマスコミもいる前で大きな声で話をしているんですから、それを確認しているんです。なぜそれが、どうして違った形で行くのか。ノートテーカーがいて、通訳の仕事もしないでノートテーカーがそこで間違えているのか、それをすぐに見た所管の局長なのか、その後は先ほど官房長が言われたようにいろんな人が見るそうですから、どういう意図でマスコミに流れるのか不思議です。ですから、今後アメリカに行くについても、私は北米局長にお話ししていますよね、複数の通訳、複数のノートテーカー、それを私は提案しています。  そして、私が見なかったものは絶対出さないように今度します。そうしないと、こんないたずらをされて、日本外交が不信感を持たれるし、私はこういう国に対してすぐにお礼のファクス、それから手紙を発信しています。ありがとうございました、私の政治生命、日本外交に対する不信を払拭する手だてを打っていただいてありがとうございますということをすぐに発信いたしました。  同じことが二度と起こってはいけないし、このことを今現在、事務方なんということではぐらかさないで、責任ある立場にいる人たちがどう思うのか、どういう態度を自分がとるべきなのか、みずから。そして、これは将来日本外交を担う若い方々に対して大変失礼なことを今外務省の幹部がやっているということを自覚していただきたいし、自分から願わくば名乗り出るなり、自己処理をしていただきたいというふうに思っています。
  55. 今井澄

    今井澄君 今、大臣の言われたことなんですけれども、これは本当に他国を巻き込んじゃったわけですよね。私は、発言の中身の問題よりも、そういう外交関係において大事な、機密費の問題もそうですが、必要なものもあるというのはわかっているわけですよね。やっぱり機密がないと、機密が一定程度守られないとならないということがあると思うんです。率直に話もできないということがあるからこそ、また情報の扱いというのは重要でなきゃならないと思うんですね。  例のアーミテージ・レポートというのが去年十月十一日に出ましたね。私は新聞で、夕刊でしたか、小さい記事で、集団的安全保障の話が出たときに、これは大事な論文だなと思って、早速同僚の議員に言って原文を取り寄せて、ちょっと自分で英語を読むのも時間がかかるものですから、すぐ翻訳に出して、かなりお金がかかったので、もったいないから全部コピーして、民主党の全議員には読めと配ったんですけれどもね。  これを読んだ中にも情報の問題、これは特に安全保障に関する情報だから軍事に偏ってはいますけれども、軍事というのは外交のごく一部ですからね。この情報のことについては、アメリカがかなり大胆なことをいろいろ言ってきているわけですよね。日本が独自に情報を収集する力もあるんだから、それはやっぱり認めていいんじゃないかということ。そして、そのかわり、日本ではどうも情報が漏れると。スパイ防止法みたいなものをつくれみたいなことも書いてあるので、物騒なことも書いてあるんですが、この中には、国会の問題まで言及してあるんですよね、情報、機密保持の問題で。  私は、やっぱり漏らしてはならないものを漏らさないという体制がない限り、これは外交だけではなく、国内政治もやっぱりうまくいかない点があるだろうと思うんですね。  そこで、ちょっと政府参考人お尋ねしたいのですが、一つは、このことで外国が大分迷惑を受けて不信感を持っていると思うんですが、外国がどういう反応か、今、大臣が一部おっしゃいましたが、そのことについてお聞きしたい。  それから、先ほどの質問の繰り返しになりますが、一般論でお答えいただきましたが、今回のこの内容については、新聞に出ているのが本当かどうかは別としまして、つくった文書があるのかないのか、あるとしたらその守秘のレベルはどのレベルにしたのか。また、配付のレベルはどこまでにしたのか。それから、何で大臣にこれでいいですねという決裁を仰がなかったのか。それから、配付の範囲でそれが政治家まで流れているのかどうか。その点をちょっとお尋ねしたいんです。
  56. 飯村豊

    政府参考人飯村豊君) 何点か御質問がございましたけれども、まず外国の反応でございますけれども、今包括的な資料がございませんのできちっとしたお答えはできないのでございますけれども、大臣が各国の政府の反応は御説明になりましたけれども、新聞等でもいろいろ報道されておりまして、やはり日本で何が起きているのか、まことにおかしいことが起きているというような反応が一般的であるという印象を持っております。  それから、二番目の守秘のレベルでございますけれども、これはちょっと一つ一つケースが違いますのでにわかにここでお答えしかねますけれども、基本的には秘、もしくは非常に機微な場合は極秘という指定をしております。  それから、配付の範囲でございますけれども、先ほど申し上げましたように、一つは省内の関係者、それからもう一つは海外の大使館にも転電という形で、非常に主要な関係ある大使館には、日本大使館でございますけれども、通知をいたしております。さらに、省外につきましては、これも一般論でございますけれども、責任ある立場におられる関係者の方々には配付をしている次第でございます。  それから、四点目でございますけれども、大臣の御決裁を得ずに発信しているということにつきましては、これは通常、お忙しい大臣をお煩わせしないということから、従来より事務方にお任せいただいて、大臣の御決裁なく海外あるいは海外から東京に電報の形で通知するということになっております。
  57. 今井澄

    今井澄君 今のお話を聞いていて、私としてはこういうふうに受け取るわけですが、今回のものもそう高い守秘のレベルではなかった文書のようだなと、本物が何かわかりませんけれどもね。だから、割合に気楽に流したのかなという感じがしてならないんですね。だから、結構大勢の人が手に入れたのかなと。そうすると、その中身を見て、その中身に反対する人が、あるいは田中大臣の失脚をねらう人がそれを殊さらに利用したのかなと私は何となく思えるような気もするんです。  というのは、内容が本当かどうか知りませんけれども、私は、ごく当たり前のことだし、さっきの大臣のASEMの昼食会の話は当たり前のことだと思うんですよ。このミサイル防衛に関しては、アメリカの中でも議論があるわけでしょう。今、ラムズフェルド国防長官が議会や軍当局を説得するのにすごく困っているわけですよね。  アメリカも、今「パールハーバー」という映画が何か随分人気があるようですけれども、これも日本憎しとかいうことじゃなくて、奇襲攻撃に対して備えをという意味で、何かアメリカで今奇襲攻撃対策がはやっているみたいですね。そういうことで、例えば今のミサイルの問題も、陸海空に分かれていたものを何か空軍に統一してやっていくという組織変更もやっているようで、そういうことも含めて、軍を含めてアメリカの中がハチの巣をつついたようになっている。  そのアメリカの中の議論は、アメリカの中だけで静かに行われているのじゃなくて、ヨーロッパに行ってまで、出先でまで国会議員がぎゃんぎゃん論争してヨーロッパの人がおもしろがって聞いているという状況まであるんですから、当然ASEMの会議でこのことについての批判的な意見を含めてヨーロッパ側から意見が出ないはずがないんですよね。私は、だから極めて当たり前のことだと思う。  外務省もそういう感覚を持っているとすれば、その中でいろんな議論があったということを例えば会議のメモとしてつくって、こういう議論をされて、うちの外務大臣もこういう議論に加わったということがあれば、それをまとめて関係のところに配るというのは、私は、考えてみれば非常識ではないような気がするんですね。  ただ、文書のつくり方自身、やっぱりここまで事実があった、ないという問題になりますと、発言者は、確かに忙しいのはわかりますよ、忙しいのはわかるけれども、やっぱり了解をとるべきじゃないですかね。  一言、私も村山内閣時代、与党福祉プロジェクトで座長などをやらせてもらって取りまとめを随分やらせていただいたんです、駆け出しで本当にありがたい仕事をさせていただいたんですが。そのときに、与党の会議であっても役所の方が出てきて見事な文書をまとめるんですよね。この能力たるやすごいものですよ。本当に、自分で考えて書いている暇にぱっと来ますから、それを見ていいか悪いかと判断する。こういうふうに依存しちゃうのがいいか、疑問を持ちながらやってきたんですが、でも、なかなかこの文書というのは裏があったり、大変な経験もあるんですよ。  大臣、何か一言。
  58. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 今井先生がおっしゃったことも含めてですが、今、外務省方の発言の中で、大臣は御多忙でいらっしゃるから煩わせてはいけないと思ったと。そんな軽いことではないと思いますよ。この会議で各国、二十六カ国、中国も含めての外務大臣がフリートークをした中身を外務大臣に報告もしないで世間にまで公表すると、中身を変えた部分も含めて。これは御迷惑をかけるからなんということを言うのであったら、それはもう責任をとっていただかなきゃいけない問題だと思います。そういうことこそしっかりと責任をとる立場にある外務大臣に示すべきでありまして、お忙しそうだからなんという種類の話ではないんですね。  しかも、今もまた確認しましたけれども、本国に外電を打つときには外務大臣あてと打つと。これは私は事務次官からも聞きました、今も確認しました。じゃ、外務大臣あてなのに、何で外務大臣じゃない人が読むんですか。一人しかいないはずじゃないですか。極めて重要な情報外務大臣に知らされないと。だから、外務大臣は、大臣というのはほかの省庁もお客さんであり旅人であって、必要ないんですよ。口出さないでほしいと。幾ら政治家がどんどん入ってきたって、自分たちの方がたくさんいるわけですから。ですから、器用にいい文章も書くかもしれませんけれども、やっぱり必要ない、できるだけ知らしむべからず、よらしむべしということなんだと思います。  ですから、先ほどのような答えが大変いんぎんであって、無礼よりかも自分の責任の重さを認識していないことのきわめつけではないかというふうに思いました。  そして、今おっしゃったことなんですが、ブッシュ大統領は今ごろヨーロッパに行っておられるのでございましょうか、そういうことを踏まえて、初めて大統領がヨーロッパに来られる、サミットの前に。  そのときに、欧州でこういうミサイル防衛そのほかについていろいろと、ほかの地域紛争もございましたし環境問題もありました、それについてみんなの意見を言うべきだし、特に安全保障については中国の問題が出てくるに違いない。幸いここは中国なんです。意思決定をする幹部がおられるから話をしたいといって口火が切られたんです。  それに対して、中国は、ここでは私は申しません、言うべきではないと思いますから言いませんが、極めてクリアカットに、明晰に御自分の立場を言われました。それを、私のことを何かいろいろ言っているらしいですけれども、国内でメディアやら、それはどうでもいいんです。  そういう意見交換をすることが私はこういう会議のまさしく最高のメリットであったと思うし、そしてアメリカは大国ですし、影響力がある。その新しい大統領とどのようにして平和的に上手にヨーロッパ日本もみんながコミュニケートして世界を平和にするかという知恵を出す場だったわけですから、アメリカがいないから悪口を言うとかそんなことじゃないんですよ。アメリカがいないけれども、逆に中国だから、ここが中国という場所だから幹部の話を聞きたい、そしてアメリカから大統領を受け入れるときに自分たち意見を聞きたいんだと。私もそう思っています、ヨーロッパ意見も聞いてとても勉強になった。  ところが、何か私がアメリカ批判をしたとかそういうふうにすりかえて、そうして先ほど言ったことに戻りますけれども、大臣は御多忙でいらっしゃるから煩わせてはいけないと思ったので自分たちでやってしまったと。これは官僚のおごりであるし、やってはならないことでありますし、こういうことは、先ほど来、一事不再理ということも言われたり、いろいろ人事院の見解、警察庁の見解、それから弁護士さん、弁護士議員さんの見解、副大臣の見解も出ておりますけれども、どうやってこの官僚のおごりと暴走を。  それだけじゃないんですよ。それによって本当に外国も日本の国民の皆さんもマスコミの人もみんな振り回されたんですね。そのことだけではなくて、結果的にこのことによって不利益をこうむっていることは事実間違いないんです。この修復には時間がかかる。ですから、だれかが責任をとらなきゃだめです。  不作為の行為、見て見ぬふりをする、みんなで渡れば怖くないということはもうやめようじゃないですか。日本は文化国家ですから、一人一人が顔を見せて、顔の見える形でもって議論をして、そして、そういう資料を自分の責任において配付する。人の名前で、勝手に大臣なんという名前で絶対に外務省以外もやらないように。これこそ、国会が機能しなければならないと思います。
  59. 今井澄

    今井澄君 私も、先ほども申し上げましたが、厚生畑で九年間仕事をさせていただきました。それでいろいろやってきたんですけれども、ハンセン病のこの前の判決だけではありません。あの判決が出た日に、水俣の控訴をしているんですよね、国は。それから、その後出た在外被爆者の問題。  これは、今度は在韓の韓国人の被爆者のことだけが取り上げられていますけれども、私は前から、日本人でアメリカに行っている人が、アメリカに行くと被爆手帳を取り上げられちゃう、何とかしてほしいと。ブラジルに行った日系人が、被爆手帳をブラジルに行っちゃうと取り上げられる、これはおかしいじゃないかと。それで、厚生省を呼んで聞くと、いや、とにかく被爆手帳は都道府県知事が渡すものだから、そこに住んでいる人に渡すものだから、そこに住まなくなったら返してもらうのが筋なんですということで、はあ、そんなものかななんと私も言われてきたんですよね。  確かに、行政の継続性、あるいは特に外交の継続性、それはもうころころ変わっちゃいけませんから、それを長年積み上げてきた皆さんの努力は私は多としたいし、また明治以降日本がよきにつけあしきにつけこういう経済大国になって豊かな生活ができるようになってきた、あるいは戦後の復興から立ち直ってきた中での官僚組織の果たした役割というのは私は大きいというのを認めるんです。しかし、今、時代が大きく変わりつつあるときに、前例を積み上げてきたことが現実とあるいは現実の国民感覚と物すごい距離が開いちゃった、これをどう取り戻すかが我々政治家の使命だし、小泉内閣がそれをやろうとしている、田中外務大臣がやろうとしていると私は受け取っているわけですよ。  ですから、ここは、官僚の皆さんには、言い分はあるでしょうけれども、決着をつけるには今までのやり方というのを根本的に反省してもらわなきゃならないと私は思っているわけです。そういう意味で、田中大臣には私は力いっぱい頑張ってもらいたい。  ちょっと個人的なことを、感想を言って失礼ですけれども、私のいた大学は、私が学んだ大学はまさに官僚中の官僚をつくる大学なんですよね。私は医学部でしたけれども、学生運動をやっていたから法学部とも経済学部ともいつもつき合いがあったし、しょっちゅうそっちへ行っていたから、新聞には経済学部学生今井澄なんて書かれたこともあって、仲間は非常に多いんです。  そういう運動をやってきたんですけれども、しかも私は安田講堂に立てこもって、あのとき、何でそこまで行ったかというと、過激派の影響を受けたということもあるけれども、もう一つあったのは、我々は教授会の権威と闘っているけれども、我々が卒業して、じゃどうなるのといったら、結局国民を支配する権力者の側に立つんじゃないか、だったらそういう自分の存在をも問いながらやらないとこの闘争は貫けないというので、自己否定ということが出てきたんですよ。  それを典型的にやっているのが、あのときのリーダーの山本義隆です、東大理論物理。それで、ポケットにいつもメモを入れていて、そのメモの幾つかは恐らくノーベル賞もののアイデアだろうと言われるぐらい物すごい優秀な男です。その男が、卒業してから一切名誉とか地位とか金とか権力とかと離れたところ、予備校に行っちゃいました。今でも予備校の先生をやっています。彼が一番貫いているんですよね。ところが、多かれ少なかれ我々は結局のところ、権力に近いところで仕事をするようになったわけです。  ですから、私などはそういう経験を持ちながら、この九年間やってきても、やっぱり孫悟空がお釈迦様の手の中にあったように、結局官僚の手の中にしかなかったのかなということで物すごい残念なんですよ。ハンセン病でも在外の被爆者の問題でも、あるいは傷痍軍人の在日韓国人の問題でも全部官僚の言う解釈なんですね。  だから、そういう意味では、やっぱりわかっちゃうんですよね。物わかりがいいんですよ。あるいは仲間意識というのがあるんですよ。  私なんかは二度も退学になりましたよ。それでも、反省しなくたって戻してくれる、そういう大学なんですよ。そういう中で仲間意識でつくるんです。あえて言えば、私も一緒にやってきて、一緒に処分された江田五月がいます。今は同僚でやっていますよね。それから、かの有名な大蔵省をやめた中島義雄。そういう人でもちゃんと官僚の中に入って、結局我々、どんなに叫んでも体質的にそういうのが学生時代から仲間の中でつくられちゃっているんですね。そういう意味では、大臣に期待するところが物すごく大きいんですよ。だから、やってほしいんです。  ところで、国会の役割ですけれども、私は国会に役割があると思うんです。  今、衆議院の外務委員会情報公開のあれを出せと言っています。それから、何か学者が情報公開を言い出したらしいですね。私は、今、情報公開の時代、それとの兼ね合いで国会が何をすべきかということが非常に大事なんだと思うんです。事がここまで来た以上、私は決着はつけるべきだと。あいまいなけんか両成敗とか手打ちで、どっちもまあまあ仲よく仲直りしましょうというのは私はだめだと思う。やっぱり情報が漏れたということが国益に反した、外国に迷惑をかけたということで、日本の今後の外交のあり方という意味で、きっちりどういうふうに漏えいしたかということを調べて、私は、それは処罰すべきものは処罰すべきだと思うんです。ひょっとしたら、官僚がやっているんじゃなくて政治家がやったのかもしれない。それは調べるべきだと思うんですね。  だから、私は、この前大臣がおっしゃったように、会議に出ていた人がどうのこうのという範囲をもう超えている問題だと思うので、ぜひこれは調査委員会をつくって、日本国益を守るために、あるいは世界の平和のために、二度と起こさないための文書のつくり方の問題、配付の仕方の問題、そして今回どうなったのかということをやってもらいたい。  そしてもう一つは、先ほどもちょっとアーミテージ・レポートを引用しましたけれども、国民に対して公開すべきものは公開する、しかしできないものはできないということをはっきり言うために、私は、国会がもっと役割を果たすべきだと思うんです。どうも国会は、政治家というのはぼろぼろぼろぼろ情報が漏れ過ぎますよね。  そこで私、提案したいのは、秘密会を開いてそしてそこに情報を出してもらって、大臣にも次官にもしかるべき人においでいただいて、国会の責任において、秘密にしなければならないことと言えることとあるとすれば、それをこの際やるのがやっぱり国会の役目じゃないかという気がするんですね。私はそういう提案をしたいと思いますけれども、大臣、政治家としての御見解などおありでしたら。
  60. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 個人的な今井委員の経験を踏まえてたくさんのことを教えていただいたと思っていまして、本当に、私は余り参議院に、主人が参議院に回っていろんな先生方から御指導を仰いでいるのはわかっておりましたけれども、こんなに参議院の先生方が、特にこの外交防衛の先生方が、御自分の経験を踏まえて、そして私たち若輩にこんなに温かい目線とそれから厳しい御指導の心を踏まえて温かい御発言をくださっていること、すばらしい委員会なんだなと。  衆議院に行ったら逆に駆け引きなんかばっかりあってどたばたどたばたしておりまして、本来国会が一番機能しているのは参議院のこういう委員会だという思いを深くしております。すばらしいと思いました。やっぱりもう一回衆議院の人も来て、こういうお話をしっかり落ちついて、落ちつくときは落ちついて意見を聞くということをしないと世の中はミスリードされるなというふうに思いました。  そして、今の秘密会等、調査会、調査会というのも私は考えていますが、いつも思うんですが、何か起こると委員会というのは、期限を切って人がいればばばっとそれこそ天地人でうまくいくと思うんですけれども、そうでないと、何かいいかげんなものをまた役人が口を挟んできてやってしまって、何かものだけがぼろぼろと御都合で出てしまったりして機能しなくなるということがあるので、タイミングも合って気合いで、人を得てばばばんとやって、結論だけ追わずにぱっととると。お料理でおいしいおだしをぱっととるようなものでして、いつまでも昆布をがたがたがたがた煮ていれば苦くなっちゃっていいだしが出なくなるようなものですから、これをやるのはなかなか名人の調理人じゃなきゃできないと思うんですね。ですから、これは考えさせていただきます。  ただし情報については、何度も申しますように、私が先ほどブレーキをかける、自分自身の口にブレーキをかけたように、相手があることでございますから、何でもかんでも日本で全部、どこの国のだれが言ったということを言うとこれこそもっと大変なことになりますから、それも勘案しながら進めたいというふうに思います。
  61. 今井澄

    今井澄君 私は、大臣及び外務省の当局にお願いしたいのは、やっぱりこの問題は、要するにだれが悪いかという問題もさることながら、繰り返されてはならない情報の漏えいだと思うので、こういうことのないように、そういう文書のつくり方やそれの確認の仕方や配付の仕方についてきちっとしたことを、二度と起こらないように、そういう取り組みをしてもらいたいというのが一つ。  それから、委員長にお願いしたいんですけれども、やっぱり参議院らしさを出す意味でも、私は理事会レベルでもいいし小委員会をつくってもいいんですが、ぜひ秘密会というものを、こういうものがあるんだと、国民の皆さんにも情報公開と秘密というのがあるということを知ってもらう意味も含めて、この問題を収拾するために、参議院は単に情報を出せというんじゃなくて、参議院らしく秘密会でも開いていただいて、この問題に乗り出していただきたいんですが、この解決に、委員長
  62. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 私の所見ですか。
  63. 今井澄

    今井澄君 お願いです。
  64. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) お願いですか。  それじゃ、外交の機密の問題、それから秘密会ということですが、その秘密会で資料を提示したときの機密の保護の問題等々非常に難しい問題がありまして、新米の私ごとき委員長ではとても今お答えすることはできませんので、追って理事会においてその取り扱いについて専門の理事の方々にしていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  65. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 今の今井委員の御提案に関して私見を述べさせていただければ、これは民主主義の世の中ですから、私の意見は本当にマイナーなもので結構なんですけれども、この漏えいのリベンジとか復讐するとかそういうことではなくて、原点を見た場合に、この内閣は、私は先ほど、冒頭の質問のときに申し上げましたが、どの委員でしたかちょっと失念しましたが、とにかくこれだけの支持率は何かというと、今までのような政治の意思決定の仕方、これはだめだということを大多数の国民の方が言われているわけです、与野党の議論の仕方も含めて。官庁のあり方はもちろんです。それを痛いほど役所の、外務省だけじゃないんです、あらゆる役所の方たちが何十万といるわけですから、この人たちが、地方も中央も含めて、今までのあり方を自己否定して、もっと自分自身を簡素にして、一つのポイントは何かと、一つの点に向かってみんなでエネルギーを、いいエネルギーを出せるようなシステムをつくることです。その気持ちがないと、その御提言だというふうに私は思っています。  ですから、漏えい事件解明委員会なんと言うと何かおどろおどろしい感じがしますけれども、秘密会というのも何かえらくおっかなく秘密があるみたいですけれども、これは、外国の方に対して異論とか根本的な不信を持たれないものであれば、このことをきっかけとして何かアクションを起こさないと、ああ、やっぱり前と同じ方法で、よかったよかったと、議論だけ、委員会が終わればさあ飯食いに行きましょうとみんなが言って終わってしまうと思うんですよ。  このことは、一人ではできない、人の輪、グループ、みんなの総力でもって変えていくきっかけにしないと政治は機能しませんので、今の御提言をただ終わらせてしまうのではなくて、もっと違った形でいいと思いますが、それに役所は従わざるを得ない。従う気になれば役所は極めて速いんですよ。方向転換速いんですから。なぜかというと、彼らは責任をとらなくて済む立場です。政治家は責任をとるんです。責任をとらないから、いたずらでもうそでも何でもするんです。  ただ、彼らが一番国民の税金を、国税を食べている人たちじゃないですか。退職金を見てください。このまま次官がやめたら幾らの退職金をもらえるか調べてくださいよ。官房長がやめるときに幾らもらうでしょうか。民間と比べてください、この景気の悪いときにリストラに遭ってあえいでいる方たちと比べてくださいよ。官僚は極めて守られています、国家公務員法によって。そして、ミニステリアルコードがあることによって、大臣規範があって、我々も相当ブレーキがかけられているんです。限界があるんですよ。一般に比べて国家公務員はきついとはいうけれども、えらく守られた存在であると思います、日本の方たちは。  そうでなかったら、責任をとるなら、月給を倍にしてもいいぐらいの議論をみんなでやってみようじゃないですか。そうでないと、このことを生かさなければならないと思います。
  66. 今井澄

    今井澄君 私も国家公務員、高級官僚にも友人が随分いるんですが、働いておる割に待遇がいいかというと、私はもっとお給料よくてもいいと思うんですね。問題は天下りなんですよね。あれが不明朗なんですよね。結局、死ぬまで面倒を見てもらって、総額で物すごいお金になる。これがおかしいんですよね。働いているときにはもっともっと給料を上げたっていいと思います、私は。  それはそれとして、せっかく防衛庁長官にもおいでいただいて、しかも今度の中身が、単なる情報のリークだとかあるいは田中大臣追い落としのための策動だけじゃなくて、何か問答無用でアメリカの戦略、ブッシュ政権の戦略に従わせたいという人々の意図も働いているように思えてならないんですよ。  私は、もともとそういう経験もあるし、社会党から当選してきてやってきましたけれども、私は、アメリカというのは一面非常にすばらしい国だと思うし、民主主義とか、尊敬しています。ただ、アンバランスな国なんですよね、物すごく。例えば、医療について言えば、医療レベルは世界一高い。にもかかわらず、医療システムは世界一お粗末と、皆保険がないと。アンバランスなんだけれども非常に魅力的ですばらしい国だと思います。学ぶこともある。  だけれども、言うべきことを言わないとだめなんですよね。それで、日本はそういうことを言える立場になければならないし、すべきだと思うんです。例えば、今度、国連の人権委員会アメリカは落選しましたよね。それで、それに報復して今度は国連の分担金、来年度分は払わないなんというのを下院で議決したり、そういう何か変なのはやめさせて、日本が、例えば人権委員会アメリカが残りたいというのを落選させようとする人たちを説得したり、そういうことも、アメリカ立場に立った説得もしなきゃならないし、アメリカに対して物を言わなきゃならない。  そこで、防衛庁長官お尋ねしたいんですが、今ミサイル防衛というけれども、これはやっぱり慎重に検討すべき時期にあるんじゃないでしょうか。何かアメリカのあれに協力するのは当然だみたいに今度のことを契機にして言っているのは、私は非常に問題だと思う。  そもそもNMDとTMDとははっきり違うはずだった。しかも、アメリカには一九五〇年代以来ミサイル防衛の長い歴史があって、何回も繰り返してきている。協力するかしないか、研究を一緒にやるかどうか、それはもう既に一部始めているわけですが、何もブッシュさんの言うことにすぐ流されていくのはやっぱりちょっと問題なんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
  67. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 基本認識としましては、現在、世界に四十一カ国の弾道ミサイルを保有している国があって、非常に核も拡散している、こういう中で国の安全保障をどうするかという見地で、米国におきましてはクリントン時代からNMDとTMDの構想が出てきているわけでございますので、それはアメリカの国の防衛という見地で考えていただければ結構でございますけれども、現在、NATO諸国を回ったり、ロシア、中国等にも説明をしていくという姿勢ですから、現在やっていることについては理解をしております。  また、我が国においては、独自の国の防衛として現実にミサイルが飛んできたときにどういう手段があるのかと聞かれればまだ整備がされておりませんので、我が国としてはBMDという形で現在共同研究をしておりますけれども、そのラインでやることは必要ではないかと思いますが、まだこの構想につきましてはアメリカ自身も協議をしながら構想を固めつつございますので、よくアメリカ国内の議会の動向とか御意見もお聞かせいただいて対処してまいりたいというふうに思っております。
  68. 今井澄

    今井澄君 つまり、TMDとBMDを統合したNMDと言われるものについてまだはっきりしていないと、まだこれから話を十分聞いて検討していく段階だと、こういうふうに理解してよろしいですか。
  69. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) そのとおりでございます。
  70. 今井澄

    今井澄君 実は私は、このアーミテージ・レポートを読んだときに非常に気になることがあったんです。それは、集団的自衛権がどうのこうのという以前の問題で、安全保障のところで、我々は米国と英国との特別な関係を同盟関係のモデルとみなしている、日本ともそうしたいと。  今度のブッシュ政権に知日派がずらっと入ったということ、逆に言えば知中国派がほとんどいないということ、これが、非常に私はアメリカとのつき合いを慎重に考えなきゃいけないところだと思うんですよ。知日派というのは親日派には限らないですよね。ちょうどアーミテージ・レポートが出たのと前後してタイソン・レポートという経済に関するレポートが出ていますが、そっちのローラ・タイソンなんというのは対日強硬派ですから、日本をよく知っているということは何も日本に優しいという意味じゃない。要するに、知っている人を配置しなきゃならないのに、何でブッシュ政権は大事な国である中国によく知っている人を入れなかったのか。日本を知っている人ばかりあんなに要所要所に配置したのか。  私は、これと結びつけて考えるとちょっと嫌な感じがするんですよ。というのは、イラクの空爆をときどきアメリカはやりますよね。何かルールの何とかに違反したといってばあっとやる。そのときにいつもイギリスの戦闘機も一緒に行くんですよね。どうしてあんな何かアメリカの属国みたいなと私は思ったけれども、でもイギリスとアメリカは同じアングロサクソンで、イギリスがアメリカを生み出したとも言える特別な関係にあると思うんですよ。日本はやっぱりちょっと違った関係だと思うんですよ、民族も歴史も違うし。それをやっぱりイギリスと同じようにいつでも行動してくれるものと思われちゃ私は困る。  私はアメリカを尊敬するし、アメリカを最も大事な、日米関係は一番大事な基軸だと思うけれども、やっぱりアメリカに対して御意見も言える、そういう関係になきゃならないと思うんですが、両大臣の御見解をお伺いして、時間が来ましたので質問を終わりたいと思います。
  71. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) まず、今度のブッシュ政権の陣容においては、まだ骨格だけで、実際に日本に対応するスタッフはまだ現在も検討中だと思いますが、だけれども、私としては、非常に日本に理解をしている人、それから日本をすごく重視していただける方が要職につくということは日本との関係を重視しているあらわれでありまして、私は歓迎をいたしております。  また、アメリカとの場合は、戦後の日米安保体制という、世界経済に及ぼす現在の地位、両国世界のGNPの四〇%を占めておるというふうに言われておりますけれども、お互いに自由主義と民主主義の価値観を共有している国としては、今後ともこの体制を非常に大事に考えて、世界のために大いに貢献すべきではないかというふうに私は思っております。
  72. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 私は、やっぱり日本の過去、今日の繁栄そのほかいろいろ見ましても、アメリカ日本関係、この日米同盟が今後も基軸であるべきということは重要なポイントであるというふうにずっと考えております。どこでどう歪曲されようとも、政治的に何を言われようと、私は個人的に信念でそう思っています。  なぜかといいますと、日本の地政学上の置かれた地位というもの、それから今、具体的にどことかいうことではありませんけれども、この島国であって、この状態で、もちろん大陸であれば大陸なりのまた悩みもおありなんでしょうけれども、とにかく地政学上いろいろな不確実性や不透明性は今だけではなくて将来にわたって起こり得る、そういうことを考えた場合に、国家の安全保障ということ、日本の国民の皆様の生命、財産を守るということがなければ国家というものの基本はなくなるわけですから、そういう関係からいって、日米の同盟は基軸であるべきですが、やはり時代が変わるということですね。  それから、アメリカも政権がかわられますし、日本もかわります。日本が連立になるなんということは、本当に戦後なら考えてもいなかったかもしれない時代ですけれども、これだけ時代が変わってくるんですよね。そういう中ですから、先ほどコーヒー協定お尋ねもございました。大変お好きでいらっしゃるそうで、私もそうですが、コーヒー協定にしろ、あるいは京都議定書の問題にしましても、あるいは経済の面なんかでも、アメリカは非常にスタンスが変わってきて、日本は振り回されているようですが、振り回しているわけじゃなくて、アメリカ自体の状態もそれだけ変わってきているということなんですよ。相手があるということは、相手も変わっていて、こちらも変わっている。  みんな生き物なんじゃないですか。生き物というのはリビングクリーチャーでして、それは個人的な生命という意味だけではなくて、政治も経済も文化も社会も動いている。予測できないことが起こる。その中でアメリカもベストを尽くそうとしているし、欧州もアジアもアフリカも私たちもそうなんですね。その中で最大公約数はどうかということについて話をして、いい方向に持っていくのが言語を持つ人間であって、それが政治なんですよ。その先兵が外交努力じゃないんでしょうか。ですから、いつか田先生がおっしゃったように、九割が外交、現場は、最悪の場合のとき戦う、戦争を未然に防ぐ、それには我々は言語を持っているんです。  ですから、何であなたはインターネットを使ってファクスをやって動かないと言っているんだ──そんなことを言っちゃいませんよ。いえ、言葉では言いましたよ、また言わないというと怒られちゃいますから、言っていますが、そういう時代であるから、何でもかんでも自分が首を突っ込んで、これだけたくさん優秀なスタッフもおられるのに、何でも自分一人で行ったらすぐつぶれちゃいますよ。そうではなくて、自分は方向性をしっかりと見出す立場に落ちついていないと、何でもかんでも自分がパーティーでも会議でも世界じゅう吹っ飛んで歩いたら、一カ月でつぶれちゃいますよ。  だから、外交基本はそこなのだということで、そのことを私は、アメリカのカウンターパートであれ、だれでも申し上げたい、一般の国民の方にも申し上げたい。それで、そういう理解者を一人でも多く得たい。そのことによって世界が幸せになれば、こんないいことないじゃないですか。ひもつきにはなりたくないですよ。相手の方の意見を聞きたいんです。こちらの意見も言いたいんです。そのことによっていい方向に動かす、それが政治であり、外交です。
  73. 今井澄

    今井澄君 委員長、一言。
  74. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 時間ですから。
  75. 今井澄

    今井澄君 私の事務所のコーヒーはおいしいという評判なんです。疲れたら、防衛庁長官もあるいは外務省の方も防衛庁の方も同僚議員の方もぜひおいでください。  ありがとうございます。
  76. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  77. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、外交防衛等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 益田洋介

    ○益田洋介君 防衛庁長官にお伺いします。  先日、六日の党首討論のときに、かなり総理はミサイル防衛構想について突っ込んだ発言をなさいました。ちょっと冷や冷やしたような部分もあったんですが、要はこういうことでございます。ミサイル構想に集団的自衛権が議論されたのは今までなかった、だからこそ研究の余地があるんだと。研究という言葉をどういう意味合いで総理はお使いになったか私にはわかりません。  ただし、日本の場合は、九八年のテポドン1号が太平洋に撃ち込まれて以降、やはり防衛体制の必要性を感じてアメリカと共同でイージス艦を利用した海上配備型上層システムの共同研究に入っております。アメリカ本土では昨年二回迎撃ミサイルの実験をして、二回とも失敗をしております。その原因は何かといいますと、本土に落下し始めた時点で迎撃ミサイルを撃った、それではもう間に合わないんだ、そうした反省に立って、今度はミサイルが発射されたらその直後に迎撃ミサイルを撃ち込む、そういう大きな転換期に来ているわけでございます。  ところが、発射直後のミサイルを迎撃するということになりますと、発射した時点ではどこの国を目指して撃っているのかわからないわけですから、日本が、もし日本の国土を守るためといいながら迎撃ミサイルが発射直後に撃たれたならば、日本に向けたミサイルでもないのにそれを撃ち落とすということは、これは個別的自衛権に当たらない。したがって、総理が研究の余地があるというその余地の中に、もしこの迎撃ミサイルが発射直後に撃ち込まれるということを含むのであれば、これはまがいもなく集団的自衛権の行使ということになるわけです。この点の見解を伺いたいと思います。
  79. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 御質問米国ミサイル防衛構想の具体的な内容につきましては、現在、アメリカ自身も検討中ということでありまして、現時点で具体的に明らかになっていない関係で、集団的自衛権との関係についてどうなのかという点につきましてもここで明確にお答えすることは困難であるという点は御理解いただきたいというふうに思っております。  しかしながら、憲法につきましての問題等につきまして、現在憲法調査会等で御議論もいただいておりますけれども、世の中の変化を踏まえつつ幅広い議論が行われるということは重要でございまして、この集団的自衛権問題についてどう考えるのか、さまざまな角度から研究してもいいのではないかと総理も御発言をしておられますが、アメリカのミサイル防衛と集団的自衛権との関係につきましても、将来の問題として研究の対象になり得るのではないかと考えております。  したがいまして、研究の具体的内容につきましては国会等での議論も十分に踏まえながら今後検討してまいりたいというふうに思っておりますが、現在日本が行っておりますBMDの日米共同研究につきましては、この点について米国とも確認をいたしておりますけれども、引き続き研究をするということは、現在行っている共同技術研究の範囲を変更することはない、また現時点でも関係ないということでございますので、現研究の継続につきましては集団的自衛権との関係で問題を生ずることはないと考えております。
  80. 益田洋介

    ○益田洋介君 この点を含めまして総理また外務大臣と意思の疎通を図り直されたというふうに伺っておりますが、当然二十一日に訪米されて、防衛庁長官はこの点についてもカウンターパートの国防長官とお話しになるんじゃないか、それほど詳しい話はまだ研究が進んでいない段階でできないでしょうけれども、どういう議論をするかという方向づけについてお話しになられるんじゃないかと思いますが、その点を含めてどうしたテーマをお話し合いになろうとしているのか、今回の訪米で、それをお聞かせ願いたいと思います。
  81. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) まず、ブッシュ政権が誕生しまして、ラムズフェルド国防長官日本防衛庁長官と一度も会っておりません。また、小泉政権の防衛庁長官といたしましても、米国の国防長官とはまだ意見交換をしたことがないという意味で、今後の日米安保体制等のあり方等につきまして話をするということが第一義でございます。  また、近年、国際情勢が変化しておりますので、アメリカの朝鮮半島の政策、また中国の情勢についてどのような見方、見識を持っているのか、こういう点についての確認及び、現在米国で行われておられます防衛戦略見直し、ラムズフェルド国防長官もとにマーシャル氏が現在研究中というふうに言われておりますが、この戦略見直しがいかなる方向であるのか、そしてまたガイドライン等、今後日米防衛協力の一層の推進等を図る上におきましてどのようなやり方で行っていけばいいのか、率直に意見交換を行ってみたいというふうなのが現在の趣旨でございます。
  82. 益田洋介

    ○益田洋介君 前森内閣以来、我が国は国を挙げてIT革命に取り組み、五年以内に世界情報技術の最先端国家に仕上げよう、そういうことで官業学こぞってIT革命に取り組んできているわけでございますが、いよいよe—Japan国家戦略と称されるものがキックオフいたしました。  ただし、このIT革命がもたらす陥穽といいますか、それは我が国ではコンピューターの二〇〇〇年問題、我が国だけに限らず経験をし、これを克服したわけでございます。ですから、サイバーテロに対しては技術面、組織面、また法整備等かなり進んできているわけですが、長官、私が心配なのは、むしろ化学テロや生物テロといった分野のことであります。  我が国は実際に九五年、地下鉄サリン事件を経験しまして、そのときに犯人と目されたオウム真理教の被疑者たちを検挙するのに日本は躍起になっていましたが、一方でアメリカと韓国はすぐさま技術者を日本に送り込んできまして実態調査を行いました。その結果として、アメリカでは対化学テロ部隊を編成し、また韓国においても地下鉄を持つ都市においてはテロ対策、またテロの訓練の実務を義務づけている。我が国ではこういうことは行われていない。実際に地下鉄サリン事件を経験した我が国が防衛面で非常にこれはおくれている、意気込みがない、そういう印象を与えられているわけでございます。  例えば怖いのは生物テロで、エボラ出血熱ウイルスとかボツリヌス毒薬といったようなものを水に混入したりあるいは空中に散布したりするということで、もうこれは手のつけようがない。例えば貯水池にこうした生物テロの薬品を混入されたらば、どこでそれをとめたらいいかわからない。そのためにフナやコイをイギリスでは貯水池に入れているわけでございますけれども、今そういうふうな悪質な、悪魔的なテロが横行しやすくなっている。なぜかならば、こういった化学テロや生物テロの材料というのは、原料というのは小さな町工場みたいなところでもできるし、それから持ち運びも携帯用の瓶だとかそういったもので簡単に持ち運ぶことができるわけです。  防衛庁は、生物兵器への対処に関する懇談会を組織して、ことしの四月に報告書をまとめました。今後、防衛庁として、これは防衛庁に限らず各省庁横断して対策を練らなきゃいけない。リーダーシップはやはり防衛庁にとっていただくべきだろうと思っていますが、どういうふうな対応策をおとりになるおつもりか、伺いたいと思います。
  83. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 御指摘のとおり、科学技術の発展によりまして、現代におきましては情報戦、また化学兵器、生物兵器など、新たな脅威からいかに安全を守っていくかということが各国の大きな課題となっております。  御質問のありました化学兵器に対する対処につきましては、現在、大宮にございます化学防護部隊等におきまして、万が一化学兵器を使用された場合を考慮して、その防護の見地から教育訓練を実施しているところでございます。具体的には、有毒化学剤等に対する防護用装備品、化学防護車、汚染除染車、それから測定機材等の取り扱いの要領や隊員の装備品の防護、一定のエリアの除染等の訓練を実施いたしております。  また、日米共同訓練の中で、化学剤の除染等につきましても、米国における研修等も実施をいたしておりますが、実際に地下鉄等で化学剤で汚染された場合の対処を想定した訓練の実施はまだいたしておりません。さきに述べた化学防護訓練は基礎的な訓練でありまして、いろんな場合に対応し得る訓練として基礎的に行っているというのが現状でございます。  もう一点の生物兵器の対処につきましても、御指摘のとおり、この対処に対する取り組みがおくれております。御指摘がありましたとおり、去る四月に懇談会の報告書が取りまとめられまして、私どもに提出をされたところでございます。この報告書にある提言は大変貴重なものがあると考えておりまして、今後、生物兵器の対処に生かすべく、庁内に関係部局から成る連絡会議を設置して、生物兵器対処の体制整備につきまして鋭意検討をしてまいりたいと思いますが、現状におきましては、御指摘のあったような生物剤等の攻撃に対してまだ十分に対応できていないというのが現状でございます。
  84. 益田洋介

    ○益田洋介君 ぜひとも鋭意努力をなさっていただいて、やはり国家の危機というのはさまざまなところから襲ってくるわけでございます、ましてや我々は地下鉄サリン事件を起こした唯一の被害国でございますので、その点、防衛庁にひとつしっかりしたリーダーシップをとっていただきたいとお願いしておきます。  前々回、五日の当委員会長官とお話をしました。台湾海峡における中国軍の上陸演習の準備、上陸部隊の作戦展開を確保しようという準備が着々と進められておりまして、それで福建省の南部にある東山島というところに既に一万人の部隊が集結している。さらに続々と広東省、福建省から支援部隊が集結してきている。  私が五日の日にお願いしたのは、我が国政府として、やはり中国政府に対して何らかの注意喚起を促すべきであろう、ウオーニングをすべきであろう、しかも日本にこんな近いところで実弾演習をされて黙っている政府はないだろう、私はそのように申し上げて、長官には快諾をしていただきました。その後、どのような手続が進んでおりますか。
  85. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 前回、九六年に、ちょうど李登輝総統が台湾の総統に就任の選挙中だったと思いますけれども、同種の訓練がございました。このときはミサイルの発射訓練、また海空軍の実弾演習、また陸海空統合上陸演習というかなり大規模なものでございまして、この点につきましては我が国の領域近海にミサイルが発射されたということもございまして、強く抗議をしたわけでございます。  現在行われている訓練におきましては、今のところ上陸演習ということでございまして、その動向を注視いたしておったわけでございますが、台湾等の発表でもこれは通常の訓練であるとの発表を行ったと伝えられております。米国もこの時期での台湾対岸での演習は珍しいことではないというようなことでございまして、我々といたしましても、この軍事演習は軍の戦闘能力を高めるために必要な措置であり、またこの演習は毎年恒例の訓練で、部隊の水準を高めることがその目的であるらしいという見方をいたしておりまして、今回の演習も定例的なものと考えられますが、演習の規模の拡大や内容の高度化が伝えられていることにかんがみまして、引き続き注視をしてまいりたいというふうに思っております。
  86. 益田洋介

    ○益田洋介君 それは演習を計画している国が定例的な訓練であると言うのは当たり前ですよ。特別な訓練だなんて事前に言う国はありませんよ。だから防衛庁としても、これは我が国の防衛にかかわることでもございますので、しっかり注視して、しかるべき手を確実に打っていただきたい、そのように重ねてお願いしておきます。  次に、海上保安庁長官、おいでですか。縄野長官。  去る七日午後四時五分ぐらいに、第十一管区の海上保安本部に、これは那覇にありますが、入った連絡によると、沖縄県の与那国島の公海上で台湾の漁船「徳発」と海上保安部の巡視船「ばんな」が衝突事故を起こした。船長は付近を通りかかった別の台湾漁船に乗り移ったけれども、漁業法違反、立入検査忌避で船長を現行犯逮捕している。この経緯とこれからの処置について説明を願います。
  87. 縄野克彦

    政府参考人縄野克彦君) お答え申し上げます。  御指摘のように、七日の午前十一時四十五分ぐらいでございますが、石垣海上保安部が日本漁船から、与那国島の南西約六マイルの領海内におきまして、台湾漁船が操業中であるという情報が寄せられましたので、巡視船を現場海域に向かわせました。  台湾漁船を発見しました私どもの巡視船は立入検査を実施すべく停船を命令したところでありますけれども、今おっしゃられました「徳発」、台湾漁船は再三にわたる停船命令に従わず、ジグザグ航行をいたしまして逃走いたしました。与那国島の南南西約十五マイルでありますが、我が国の排他的経済水域におきまして巡視船から海上保安官を漁船に移乗させようといたしました。いわゆる飛び乗りをいたそうとしたわけでありますけれども、台湾漁船が急にかじを切りまして、そのために巡視船と台湾漁船が衝突をいたしまして、台湾漁船が横転、転覆をしたものでございます。横転によりまして、台湾漁船に乗り組んでおりました船長、乗組員四名の計五名全員が海に投げ出されましたけれども、乗組員四名は巡視船が救助いたしました。  船長につきましては、今お話しあったかと思いますが、救助を拒んでおりましたところ別の台湾漁船に救助されたということで、私どもとしましては、この船長につきましては、私どもの国内法、海上保安庁法による立入検査を拒んだ、それによって逃走を続けた現行犯でございますので、救助をした別の台湾漁船の中で船長を逮捕したものでございます。  今後、この船長につきましては、一つは今申し上げました立入検査を拒んだということについての罪と、それから、先ほど申し上げましたように、領海内で違法操業をしていた罪その他につきまして、訴追の成否につきまして検討をしておるところでございます。
  88. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、外務大臣にお伺いします。  非常に私うれしいニュースをもらいました。十八日にパウエル長官とほぼ日程の調整がついて対談ができると。私は、総理と同じ時期に行って会われるのもそれはいいかもしれないけれども、やはり先に行って外務大臣がフェース・ツー・フェースで、相手のカウンターパートとそれこそひざ詰めで話をされることが一番効果的であるというふうに思っていたものですから、むしろ十八日では遅過ぎたように思う。私は、就任早々に行って、特に新政権でもございますし、向こうも新政権。それで、例えば東アジアの情勢などの意見交換をしたり、戦略対話をしたり、それからまた日本とEUの関係、もちろん日米もありますが、アメリカとEUの関係、今や三極外交と言ってもいいぐらい広がりを持っておりますので、ぜひとも意見交換を早くしていただきたい。非常にいい機会ができて、私は歓迎しております。  恐らく総理は随分と、いろいろな、言った言わないとか聞いた聞かないという議論は、これは解決しなきゃいけないことですけれども、そんなことで神経を外務大臣がすり減らしたらもったいないですよ。それなら御自分で出かけていって、直接意見交換すればそれで済むことです。イタリアだとかドイツだとかオーストラリアの外相とどういうことを言った言わないという意見は、これは内部のこともありましょうし、機密の漏えいということもあるでしょうから、それはそれで別の問題。だけれども、実際にもう外交をスタートさせていただきたい、外務大臣が行って。そういう意味で私は歓迎しております。  それで、外務大臣、とりあえずどういったテーマについて意見交換をされてくる予定か、それをお伺いしたいと思います。
  89. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 私も早くから希望をいたしておりましたけれども、先方の御都合があって、新しい内閣である、ブッシュ政権が新しいということやら、たくさんの外交日程が先方がおありになり、こちらもまた国会の日程等やASEMがありましたので、早くから実現の方向ではありましたけれども、日にちがなかなかコンクリートに決まらなかったということは御承知おきいただきたいと思います。  話の中身については今、益田委員おっしゃったとおりでして、北東アジアの問題もありますし、それから安全保障全体、これは総理や防衛庁長官ともお話をして、問題点というものは、逆に意見のすり合わせという面もありますが、それ以上に問題点を絞り込むという作業もやってきております。その中で、この安全保障の中では沖縄の問題、いつもあらゆる委員会で御指摘されていますけれども、地位協定の問題とかSACOもありましょうし、それから兵力を削減してほしいというような地元の要望、そういうあらゆる日本の安全保障トータルの日本の声をお伝えし、そしてまたアメリカの戦略やら思いというものを、政権がかわったわけですからフレッシュな意見をこちらもフレッシュな感性で伺いたい。  それから、ヨーロッパとの問題、これは極めて大事だと思いまして、一部の意見経済を除いて、この間のASEMで欧州の外務大臣から非常にいい意見を聞いたなと思って勉強になったと思っていますが、また欧州とアメリカ関係もありましょうし、貿易の問題もあると思うんですね、経済問題。それから、トータルには地球温暖化の問題、京都プロトコル、きのうの夜少し動きがあったようでございます。  そのほか、日ごろ日本の国内で発せられているもろもろの問題、それから国際社会で言われている問題、それらをできるだけ収れんして、わかりやすく問題点を絞り込んで、そしてこちらからも質問をし、誠実なお答えを引き出してくる、そしてそれを総理及び皆様にお伝えするのが自分の立場であろうというふうに考えております。  ただ、今現在これは調整中で、まだ与党内でございますので、ぜひ益田委員からも早期にこれが確定するように御努力いただきたいし、また国会としても気持ちよく送り出していただきたいものと思っております。
  90. 益田洋介

    ○益田洋介君 そういうことでしたら、ぜひ喜んで一肌でも二肌でも脱がさせていただきたいと思います。  それで、東アジア戦略の中で一番私気になっているのは北朝鮮の問題、ブッシュ政権が北朝鮮に対する政策の見直しを発表しました。その中で、日本人拉致疑惑を国際社会で懸念される人道問題だと、テロの問題解決とあわせて非常に重要視している。それは九日わかりました。  私が一つ残念でならないのは、日本政府が直接この北朝鮮に、あるいは韓国を通じて働きかけるということを今までしてきていないんです。私は前の河野外務大臣のときに何回も当委員会で議論しました。しかし、遅々として進んでいない。  この問題は、アメリカに任せっ放しにしておかないで、ぜひ我が国政府としても独自の働きかけをするべきだ。日本人が拉致されているんですよ、我が国国民が。この点について新大臣はどういうふうにお考えですか。
  91. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) これは私の地元の新潟県の方がおられるということだけではなくて、この問題は極めて、北朝鮮対策というのは安全保障上の問題、それから人道上の問題、これを踏まえていかなければいけないということは、さきのASEMの会議でも、私は欧州にもほかのアジアの国の方々にもおわかりいただきたいという思いを持ちまして、特に強調してここのところは繰り返し発言をしてきております。同じことをアメリカにももちろん申し上げ、いいアドバイスなり解決策があれば国際協調の中でもって解決をしていかなければならないというふうに思っています。  基本は日米韓でありますけれども、しかし日本がどのような手だてがあり、そしてアメリカがどのようなバックアップやら知恵をかしていただけるか、これも虚心坦懐、率直にお話をしてくるつもりでおります。
  92. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございます。  ぜひとも、このお話も非常に大事なテーマですので、進めていただきたいと思います。  それから、今の閣僚を見回しますと、竹中経済担当大臣、川口環境大臣、遠山文部科学大臣民間の起用が非常に評判がよろしいのと、実務的にも功を奏していらっしゃる。特に川口大臣は再任でございますし、それなりに、京都議定書の件だけではもちろんございませんが、御苦労されている、しかし辛抱強く大臣の務めを果たしていらっしゃる。私は、外務大臣外務省大使にもぜひ民間を登用すべきじゃないか、適材適所ということで。  なぜそういうことを申し上げるかというと、それは外務省の人事に私が口を出すというわけにいかないんですが、例えば大平正芳外務大臣のときに、民間から起用しようとしてつぶされた。それは事務方だ、大臣のお好きな言葉、外務省の事務方につぶされた。総理になられた大平正芳さんが同じような提案をしてそれもつぶされた、総理の時代にも実現できなかった。これがやはり官僚機構だ、外務大臣が言われる。私はそういうふうに思います。この点についていかがお考えですか。
  93. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 民間大使起用についてお答えする前に、私は事務方という言葉が好きだと言ったのではありませんで、そういうことを、前の大臣のときに役所側からそういうふうな表現をするべきだということを押しつけられた経緯があるということを申し上げただけですので、誤解のないようにここはしていただきたいと思います。  民間大使起用は、人を得ればそれにこしたことはありませんので、どうぞ適切な方がおられたら御推薦いただきたいと思います。考慮するにはやぶさかではありません。
  94. 益田洋介

    ○益田洋介君 大変心強いお言葉で、これもまた私にボールが投げられて、だれか探してこいということだと思いますが。  それで、話が前後しますが、ライス大統領補佐官に訪米した際お会いになりますか。といいますのは、大臣日本に直接、つまり外務大臣にミサイル防衛の重要性を説明することは非常に意義のあることで、ぜひさせてもらいたいということを言っているんです。そういう御予定はございますか。
  95. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) そういう御要望も聞いておりませんし、私がだれとお会いできるかも今調整中で、はっきり何も決まっておりません。確実なのはパウエル長官です。
  96. 益田洋介

    ○益田洋介君 お忙しいと思いますけれども、国会が開会中はもちろんそうでございますけれども、僕は外務大臣防衛庁長官に一日も早く沖縄に行ってもらいたい。さまざまな住民の生の声をじかに聞いてきていただきたい。特に普天間飛行場の返還については、これは日米両政府が五年から七年以内にという、それも期間を設けて移転に合意しようと言っていたにもかかわらず、もう既に五年が経過してしまっている。八案を提案されたそうでございますけれども、一つは桟橋型、二つはポンツーン型で、五つの案は埋め立て型だというふうに言っておりますが、この問題は後で防衛施設庁に聞くとしても、内閣府が五月に公表した結果では、沖縄県民の意識調査で米軍基地を容認する意見が反対する意見を初めて上回っている。非常に興味深いことですけれども、これは両大臣、どのように受け取っておられるか、御意見を伺いたいと思います。
  97. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) この調査に関する感想ということでございますが、近年、沖縄の米軍基地等の対処につきまして、普天間は御指摘のとおりまだまだ難航して十分に地元の皆さんの御意見を聞かなければなりませんが、これ以外のSACOの事案におきましては比較的順調に進んでおりまして、地元の皆様方の御要望にも沿った形で進んでおります。  また、沖縄の地域振興対策等におきましても、島田晴雄先生がトップになっていただいて沖縄県の要望をまとめていただいて、それに対する政府を挙げた対応をいたしたり、沖縄でもサミットを行ったりいたしまして、そういう点が米軍の存在等におきましても以前に比較すれば御理解がいただけたのではないかなと個人的には思っております。いずれにしましても、さらに御理解がいただけますように政府としても全力で最大限努力してまいりたいというふうに思っております。
  98. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) ことしの二月の調査のことをおっしゃっておられるかと思いますけれども、アジア太平洋地域で相変わらず不安定で不透明で不確実な要素があるということを県民の皆様が感じておられる。したがって、米軍のプレゼンスがまだ必要なんだというふうなお気持ちの反映がこの調査であるというふうに考えます。しかしやはり一方、米軍があってくれることによってプラスもあるけれども、またSACOの必要性が生じるような問題もあるということ、地元の方たちが一極集中によって大変な痛みを感じておられるという声も裏側にあるわけですから、その両方をいかにバランスよく保っていけるのかというふうなことについて、またどのような展開が将来あるのかということについても、まさしくこういうことも踏まえながらアメリカ側の意見を聞いてみたいというふうに思います。
  99. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。
  100. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 まず、防衛庁長官にお伺いします。  この二月九日に、大分県日出生台での米海兵隊による実弾射撃訓練の際、見学の民間人三人に百五十五ミリりゅう弾砲の発射をさせるという出来事が起こって、これをめぐって現地では日本政府の対応は今でも納得できないということで問題になっております。  というのは、この事件に先立って東富士演習場でいわゆる自衛隊の違法射撃事件というのが起こりまして、同じように民間人に自衛隊の小銃と機関銃を発射させたということが違法だということで、これを私がお伺いしたら、懲戒免職以下二十四人の自衛隊の幹部らが処分されている、こういう出来事があったわけですね。同じ民間人に演習中発砲させたと。自衛隊は厳重な処分を受けた、米軍は何のとがめも受けていないということになったらこれはおかしいじゃないか、そういうことでこういう事件が防止できるのかという疑問が出てくるのは私は当然のことだと思います。  私は、この事実の経過は文書でも詳しいものをもらいましたから、一体最終処理はどうなっているのか、米軍内での処分でも何かあったのか、今後こういうことが起こらない何らかの取り決めでもあるのか、御報告願います。
  101. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) この件につきまして、防衛庁といたしましては、沖縄での射撃訓練の軽減の一環として全国数カ所に実弾射撃訓練の移転ということを試みまして、その一カ所として日出生台演習場に移転をしたわけでございます。  そういう意味で、この目的と趣旨、特にこの訓練は米海兵隊の練度の維持を図るというのが目的でございますので、そのように民間人に対して拉縄を引かせるというような行為は適切でないと考えておりまして、今後このようなことがないように、福岡防衛施設局の現地対策本部長、施設部長から米海兵隊指揮官に対し、また防衛施設庁総括施設調査官から在日米軍司令部第三部副部長に対し、また日出生台演習場に参りまして、岩屋防衛庁長官政務官から現地の海兵隊指揮官に対してこのようなことがないような遺憾の旨を申し入れまして、この申し入れに対しまして米側から、今後このようなことはしない旨の回答を得たところでございます。  なお、この海兵隊員の処置でございますが、その後確認をいたしましたら、米海兵隊の一連の手順、特に射角の設定、砲弾の装てん、所定の装薬の選定、挿入と手順を踏んだ後、着弾地の安全を十分確認し、射撃班の責任者が最終的に安全を確認した後に実施させる最終段階のものでございまして、このような行為につきましては、米国等の慣例としては民間人に実施しているようなケース等もあるとのことで、米軍の内部規律に違反したものでなくて、本件に関連しまして米海兵隊が処分されたということは承知をいたしておりません。  なお、また自衛隊との比較ということでございますが、自衛隊の小銃射撃事案におきまして大変厳しく罰したわけでございますが、これは指揮官として民間人に小銃を射撃させる、つまり小銃でございますので、一人の人間にすべてその結果において被害があると一任させたわけでございますし、我が国の銃刀法等の法律にも違反することでもございますので、この件につきましては我が国の法律によりまして厳しく処分したわけでございます。
  102. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 二月、衆議院でこの問題が論議されたときに、政府参考人の答弁ではこうなっております。「アメリカ兵の行為につきましては、法令上正当な行為でございますので、銃刀法の問題は生じないところでございます。」というふうに答弁されております。法令上正当な行為であるとまで言って弁護しなくちゃならない理由はどこにあるのかということ、こういう答弁が政府から出るようでは、このようなことが持ち回りで各地で行われる演習の際もまた起こるんじゃないかという不安が当然出てくると思います。  今、小銃との対比でのお話がありましたけれども、小銃は自分で管理するということですけれども、しかし一方、考え方によっては、百五十五ミリりゅう弾砲の発射というのはある意味ではそれよりも大変でかい出来事だと思います。  日出生台というのは、これは自衛隊基地ですね。自衛隊基地で同じようなことを自衛隊の幹部が民間人へのサービスとしてやったら、これは問題にならないんですか、どうなんですか。米軍なら問題にならない、自衛隊なら問題になるということだとすると、これはまた大変な問題になると思います。  大体私の聞いているところでは、他国の演習場を借りて演習をやる際には、その演習場の所在する国の管理する演習場のルールに従う、これが国際的なルールだと聞いております。ですから、ドイツなんかでも米軍はドイツのルールに沿って演習をやる。  この日出生台での米軍演習は、そういう日本の演習ルールを尊重しないのか、あるいはまた知らせてもいなかったのか。もともとそういうことが起こっても構わないということではないと思いますね、適切でないということは伝えたとおっしゃっているわけですから。しかし、いずれにせよ、自衛隊で大変厳しい処分が出た後ですので、これは国民が納得できる見解を政府として示していただかなければおさまらないと思います。
  103. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 御指摘のとおり、我が国としては今回の行為は適切でないというふうに考えております。  なお、法令的に申しますと、今回の件が国内法令に抵触するかどうかにつきましては、責任ある当局において判断されることが適当であるというふうに考えますが、一般国際法上考えますと、駐留を認められた外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されない、このことは我が国に駐留する米軍についても同様であるというふうに承知をいたしております。
  104. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、この演習でも治外法権の延長であるという答弁だと思います。大体、こういう事件が起こっているときに、法令上正当な行為だとまでなぜ国会で、前の内閣の時代の出来事ではありますが、言わなきゃいかぬのか、私は大変問題だと思います。  それで、今後の問題ですけれども、口頭で申し入れて、向こうからこういうことが起こらないように答弁を得ているということですけれども、私はこれだけでは保証にはならないと思います。再発防止のためには、例えばせめて合同委員会で正式な合意を取りつけて制度的な歯どめをかけるとか、何らかのことが必要だと思います。  そういう点、これはもう改めて協議する余地もないのかどうなのか、再度お伺いします。
  105. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 今回の件につきましては、米側からは今後このようなことはしない旨の回答をいただいておりますので、それを担保に、二度とこのようなことがないというふうに信じておりますが、御指摘趣旨は大変重要なことであると認識いたしておりますので、今後さらに検討、努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  106. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 次に進みます。  防衛庁長官は、前回、七日の当委員会で、安全保障は外交九〇、軍事一〇だということを同僚議員との間の論議でも確認なさいました。私は、同時に、そういう言明があった一方で、今の政府もと防衛庁も何となく軍事的な役割を強める方向への努力が続けられているという印象が残ります。それは例えば集団自衛権の研究という問題も含めてです。  その一つが、長官、五月二十九日の当委員会で、軍事イコール悪だという思想に反論して、時として軍事も国際法を守ったり国際正義を守る上において必要なこともあると強調されました。私は、この発言が全く間違っているというふうには言いませんが、真意がどこにあるのかということだけは再度確かめておきたいと思います。  というのは、今日の世界はかつての世界と違いまして、戦争の違法化が進み、第二次世界大戦後は国際連合憲章のもとで、武力行使のみならず、武力による威嚇まで禁止されるという時代になっております。有名な国際法学者横田喜三郎さんは、最後の審判者であった戦争が犯罪者に立場が変わってしまったということをお書きになっております。そして、これは国際法の革命だとまでおっしゃっているんです。  そういう戦争あるいは武力の行使ということが非常に大きく制限されているという時代だということはもちろん念頭に置いてのことだろうと思いますが、その点、そういう時代の大きな変化はお認めになるかどうか、まずお伺いしておきます。
  107. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) この発言は、田先生のこの委員会でのやりとりと、また吉岡先生の御質疑の中でしたわけでございますが、田先生との質疑の中で、九〇%が外交で一〇%が安全保障だと言いましたら、田先生は九九%が外交で、もう一%、残りの最後の一線にこういう軍事というか安全保障があるのだというお話でありまして、私はまさしくごもっともだというふうに思っております。  しかし、どんな平和な時代にも不測の事態が起こるわけでございますので、外国からの侵略とか不法行為に対していかなる実行力を持って対処して自国の安全を図るかということは、どの国にも与えられている権利でもございます。もっとも、国際法を強化して、もっと国際ルールを強化して、その違反行為に対して取り締まりできる国際共通の警察的な実行組織ができれば、各国の軍隊というものはもうその存在を軽くすることができるわけでございますが、現実の世界におきまして国連の機能自体もまだそこに行っておりませんし、世界の安全秩序を守るための国際法というものもまだ確立していない現在におきまして、やはり各国が備えは常にという気持ちで軍事力を持つというのは必要なことではないかというふうに思っております。  そういう中で、軍隊が悪ではないという発言につきましては、例が適当かどうかはわかりませんけれども、例えばインドネシアにおきまして、非常に宗教とか民族とか昔からの地域的な問題等が起こっておりまして、これにおいて野放しにしておけば、現在インドネシア情勢が相当混乱しているようでございますけれども、やはり国家としてきちっとしたもとにこの国の秩序を保たなければなりませんが、一時的な、以前と比べて非常に民主的な国ができたということは非常に好ましいわけでございますけれども、それによって部族間の対立とか宗教の対立が起こって人が殺し合うということは好ましくもございません。  中東問題におきましても、宗教とか民族の問題は当然話し合いによって解決すべき問題ですけれども、人類二千年以上の争いの中で、いかにお互いの価値観を認めてその地域で幸せに共存できるかということを考えますと、やはり軍事の緊張によってその時期はお互いに紛争を起こすことなく平和に生活することができるという例もございますので、軍事がない状態においていかにルール違反に対して取り締まりができる機構をつくるということは大事だと思いますが、現状におきましては、各国とも国際ルールのもとに軍隊というものを置いてそれぞれの地域の安全保障を考えておりますので、こういう現実の面におきましてそのいわゆる必要性というものを説明したわけでございます。
  108. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、軍事力の行使が今の国際法ですべて認められていないということでなく、第一次世界大戦後の国際法の大きな発展があり、戦争は違法であるということが国際連盟以降進められて、国際連合憲章ではどうなっているかといえば、これは外務省に確認したいんですが、国連憲章では、武力による威嚇も武力行使も原則として禁止されている。許されているのは二つの例外。一つは国連による制裁措置。二つ目の例外として、その国連による制裁措置が行われるまでの間、個別的、集団的自衛権が認められている。こういう仕組みになっていると思いますが、外務省、こういうとらえ方でいいですか。
  109. 谷内正太郎

    政府参考人谷内正太郎君) 先生御指摘のとおり、国連憲章におきましては、第二条四項におきまして、条文は読み上げませんけれども、一般的に加盟国の武力による威嚇及び武力の行使を禁じておるわけでございます。  他方、これも先生御指摘でございますけれども、憲章第七章のもとでの国連安全保障理事会の決定に基づく場合及び憲章第五十一条の自衛権、これは個別的自衛権と集団的自衛権がございますけれども、この自衛権の行使の要件を満たす場合には武力の行使が認められるということにされております。
  110. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そこで、私は、例外中のまた例外になる集団自衛権について、最近の議論の中で若干気になるところを質問しておきたいと思います。  一つは、PKOと集団自衛権との関係ということが至るところで論議になっております。私は、PKOに派遣された部隊が何らかの攻撃を受けた場合に、これを自衛するということを含めて、PKOと集団自衛権という概念との関係は一切ないと思っております。集団自衛権というのは国連憲章の第五十一条の系列のものであり、PKOというのは全然それとは関係のないものである、私はそういうふうに思っていますが、外務省、この点はいかがですか。
  111. 谷内正太郎

    政府参考人谷内正太郎君) 集団的自衛権に基づく実力の行使は、国連自体が組織してとるものではございませんで、国連が集団安全保障制度のもとで必要な措置をとるまでの間、武力攻撃を受けた国と密接な関係にある国がそのような武力攻撃を阻止するために当該国の判断によってとることが許容される措置でございます。  他方、PKOは、国連が世界各地における地域紛争の平和的解決を助けるための手段として、実際の慣行を通じて確立してきた一連の活動でございまして、基本的に中立、非強制の立場で行われるものでございまして、このようなPKOの参加集団的自衛権の行使には当たらないというふうに解しております。
  112. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 外務省、もう一つ、私さっき一緒に質問したつもりですけれども、隊員に対する攻撃があった場合、それが同じ部隊にいる外国の隊員に対する攻撃であろうと、それに対して正当防衛権を発動するということは、これは国連憲章で言うところの、五十一条で言うところの個別的、集団的自衛権とは違った考えに立つものだというふうに考えますが、それはどうですか。
  113. 谷内正太郎

    政府参考人谷内正太郎君) 先生御指摘のように、我が国のPKO要員が攻撃されたような場合にいわゆる武器使用を行うというのは、これは自己保存のための自然的権利というふうに考えております。  また、外国人を含めまして、他人の生命等を守るための武器の使用でございましても、これは刑法に定めております正当防衛または緊急避難に当たる場合には当該武器の使用の違法性が阻却される、こういうふうに考えております。
  114. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 防衛庁長官の一連の意見との関連になるわけですけれども、私は、そういう他国のPKOの隊員を守らなくちゃいかぬというような事態が生まれるところへPKOを派遣することは、いいか悪いかという憲法上のいろいろな論議はあると思います。それはあると思いますけれども、しかし集団自衛権がないから他国の隊員を守れない、こんなことではだめだから集団自衛権を認めようというところへつながるこういう議論が、できることも、法律上ははっきりしていることを集団自衛権を認めてやろうということ自体が、私は今、何とかして集団自衛権に道を開こうとする議論のようにとれてしようがないんです。  それで、これは長官にもう一つあわせて意見をお伺いしますけれども、これは長官意見じゃありませんけれども、こういう論議もあるんですね。安保条約第五条に基づく日米の共同対処中の米軍を自衛隊が守る場合に、日本の領域外における米軍を守るのは集団自衛権であると。それから、集団自衛権を認めなければ日本を守る米軍を領域外では守れないと、そういうふうな議論もあるんです。これもこれまでの答弁から見て成り立たない議論だと思いますが、外務省、いかがですか、この点は。
  115. 谷内正太郎

    政府参考人谷内正太郎君) 先生の御指摘の御質問は、いわゆる日米安保条約第五条の共同対処のケースを考えておられるのだと思いますけれども、日米安保条約第五条は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」を対象としておるわけでございます。また、我が国に対する攻撃が行われた場合、同条に基づきまして、我が国に対する武力攻撃に対処するために行動している米軍と我が国が共同対処するということは、まさに我が国の個別的自衛権の発動と考えられます。  このように、安保条約第五条に基づく日米共同対処行動は、我が国による集団的自衛権の行使には当たらない、こういうふうに考えております。
  116. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 これは、これまでの国会で何回もその種の論議、答弁が行われているわけであって、できるという答弁になっているわけですね。そういう、できることをできない、それからまた、概念が違うものを持ち出して集団自衛権の研究ということは、私は、それはもう研究するまでもなく、答えがはっきりしているものを研究することによって、そういう論議の中で何となく集団自衛権に導いていこうとするようにとれてしようがないんです。  ですから、私、最初外交九〇、田先生は九九%という意見ですが、そこまで外交重視、武力はわずかだということを言いながら、片方でこういうことの研究が強調されることに疑問を持つわけです。  私は、今必要なことは、そういう研究ではなくて、今の世界の流れがどうなっているかというような研究、それから、二十世紀から二十一世紀にかけて国際的な動向が、特にアジアがどういうふうに動いているか、そういう研究こそ大事じゃないかと思っております。  これは七日にマレーシアのマハティール首相がやってきて、日本で講演をやったのを見ても、この講演というのは、我々がよくよく耳を傾けなくちゃならない。軍事同盟が重要でなく、軍縮の努力こそやるべきだという演説をやっております。そういう方向への研究こそ必要であって、今さら集団自衛権の研究ではないと思うんですが、長官、いかがでしょうか。
  117. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 非常にこの集団的自衛権につきましては、国会で長い議論があったということは承知をいたしておりますが、本日のこの委員会の整理におきまして、事PKO活動につきましては、国連のPKO活動に参加することも、それから他国の兵士に対して危険なときに隣にいる日本参加隊員が武器等を使って防御をするということが集団的自衛権に当たらないということが確認をされて、私も勉強させていただきました。  なお、そのほかのケース等も、国会の論戦上、非常にグレーゾーンに属して集団的自衛権に及ぶおそれがあるということで懸案になっている事項はあると思います。現在、ガイドライン法で整えた法律ということは、あくまでも個別的自衛権の範囲内で我が国のなし得ることについて整理したものであると、私も参加した人間としてはそのような整理をいたしております。まだまだグレーゾーンというものは存在をいたしておりまして、当然この法律には盛り込んでおりませんけれども、ガイドラインといった周辺事態、特に我が国の安全に重大な影響を及ぼす事態において、御質問のありましたアメリカの艦船が現実に危険にさらされた場合に何もしなくていいのかどうか。  これを守るということは当然自衛権によって守るわけでございますが、個別的自衛権とするならば、その発動の要件が非常に厳格に決められておりまして、特に三つの原則です。急迫不正とか他に手段がないとか、必要最小限の実行行為にとどまるとか、こういう場合に初めて個別自衛権が発動されるわけでございますが、これに至らない場合に、本当にすぐ隣にいる米国の艦船が危険にさらされたときに、我が国の自衛権の発動を待つために何もしなくていいのかという問題につきましては、まだまだ議論の余地があると思いますので、国会等の論戦でこういう点も御議論していただきたいというふうに思っております。
  118. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 時間ですので終わってください。
  119. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最後に締めくくりをお願いします。  私はPKO、法律論を言ったわけで、政策論は別だということを言っております。政策論について言えば、私は、アメリカのオハイオ大学のオーバビーという教授がこう言っていることを重視してもらいたいと思います。戦後、「世界のただ一人も日本軍人によって殺されたり撃たれたりしていない。これは素晴らしい記録だ。大切なことは、日本のような経済大国が武力によらない紛争解決の方法を身をもって知らせることだ。」と。これは、アメリカ日本国憲法九条を守る会というのをつくって運動している人の言葉です。私は、日本軍人によって殺される人が一人も出ないというこの記録を守り続ける方向であなた方の研究、その方向にこそ研究を進めていただきたいということを要望しておきます。
  120. 田英夫

    ○田英夫君 あした六月十三日は、いわゆる南北朝鮮の首脳会談からちょうど一周年になります。そこで、きょうは朝鮮半島の問題を取り上げたいと思うんです。  ちょうど昨年の六月十三日の金大中韓国大統領と金正日朝鮮民主主義人民共和国総書記の会談は、世界を驚かせたといいますか、ようやくまたそこに到達できたなとアジアの平和のためにみんな喜んだわけですけれども、残念ながら以後大きな目に見える進展がないままに若干雰囲気がよくなったという程度で終わっているということで、このことを外務大臣、どういうふうに今感じておられますか。
  121. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) 私も、朝鮮半島の中で和解に向けた動きが出てきたということは本当にすばらしいことだと思います。  いつも朝鮮半島問題を考えますときに、日米韓ということが基軸ではあると思いますが、さらに踏み込んでそれを分析してみますと、日本と北朝鮮は地政学上は近いですが民族が違う、アメリカは民族も地政学上も遠い。しかし、韓国の方々は本当に両方の条件を満たしているわけですから、その方たちお互いに共通の言語を有しておられて、もう私なんか小学校のころは三十八度線という話、板門店とかいうことをいつもいつも聞いていましたけれども、そういうことを乗り越えて、お互いの民族の幸せのためにまず話し合いをするという普通のことがなかなかできないでその道のりが遠かったこと、私たちが小中学校のころに聞いていたことが今実現したということ。  それで、これをやはりもっと加速化するために何ができるか、欧州が遠いとかアメリカが遠いということを超えて何ができるかということを、やっぱり愛情といいますか、幸せということが何なのかというベースで、自分の問題として考えていかなければならないと思います。
  122. 田英夫

    ○田英夫君 大変いいお考えだと思います。ともすれば、日本外交は日米基軸ということが優先をして、一番近い隣人である朝鮮半島の人たちとのことが二の次、三の次になっているんじゃないかな、こういう気もしておりますし、しかもその隣人が南北に分かれているという悲劇が今も続いている。  考えてみますと、その分断の原因をつくったのは私ども日本が原因と言ってもいい。つまり、もしあの第二次世界大戦が終わる瞬間に朝鮮半島が独立した朝鮮という国であったならば、アメリカソ連もあそこを分断することはできなかったんじゃないかと思うんです。たまたま日本が朝鮮半島を植民地としていた、その日本が敗れたから、その植民地であったところをアメリカソ連が分断してしまった、その接点が朝鮮半島になったという悲劇だと思います。したがって私は、その分断の原点を見ると、日本は無関係じゃないということが一つ重要なことだと思っています。  今度、アメリカブッシュ政権になって、新しい朝鮮政策といいますか、クリントン政権時代のを見直すということで、つい先日、それを発表いたしました。かなり内容は厳しいと思います。特に、核やミサイルの問題は以前からテーマとして出ていたわけですが、通常兵器の削減ということを新たに加えている。これは、軍事的に言えば、ある意味では当然アメリカが要求すべきことかもしれません。分断された国家の間の首脳会談があったにもかかわらず、まだ三十八度線を境にして、今三十八度線というのは間違いで、出入りがありますけれども。朝鮮戦争の結果、その境目で非常な厳しい軍事配置が行われているわけですから、軍事的に言えば当然なんでしょうけれども、北朝鮮が反発することは間違いない。  こういうことでうまくアメリカと北朝鮮との間の話し合いが進むんだろうかという危惧を持っておりますが、このアメリカの新政策について、外務大臣あるいは防衛庁長官も御意見がありましたら、お答えいただきたいと思います。
  123. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) ですから、私は、まさしくそのことを、報道ではなくて、為政者であるブッシュ大統領の外交政策を担うパウエルさん御本人に、どういうことであるのかじかに肉声で伺ってみたい。どういう見通しを立てておられるのかということ。  それから、そうはいいながらも、日本は北朝鮮問題では人道上の問題、もちろん拉致事件等ありますし、安全保障上の脅威が、ついこの間テポドンという問題が非常に近い段階であったわけですから、やっぱり国家の安全保障とは何かということなしで善意だけで残念ながら政治はできない。何かが起こった場合に、国民の皆様の生命、財産を守るということは、その観点は絶対頭からなくしてはいけないと思っていますが、それを踏まえた上で、新しい政権がどのような方向性を持っているのか、何を考えておられるのか、それをまさしく聞きたい、それが私が早く訪米をしたいと思っていた原点でございます。
  124. 中谷元

    国務大臣(中谷元君) 私も田先生の朝鮮半島に対する日本側の責任というか、認識は同じくするものでありまして、今後アメリカ交渉する際も、韓国の置かれている立場に十分配慮することが重要だと思います。というのは、朝鮮半島の統一というのは国民的な国家的な目標でもありますし、朝鮮半島の問題は、せっかく南北対話の機運が出てきておりますので、今が一番の好機だと思っておりますので、この南北対話によって解決をするように日本としてもその支援は最大限するべきだというふうに思っております。  ブッシュ政権の半島政策につきましては、当初はかなり強硬ではないかというふうに見られておりましたけれども、最近になりまして、お父さんのブッシュ前大統領、ジョージ・ブッシュからの助言も聞き入れて、より現実的に南北対話を重視してそれを支援するような形に変わって、大きな姿勢としてはそういう姿勢だと思います。  ただし、米側の見方は、北朝鮮は依然としてミサイルを大量に持ったままでもありますし、また核開発におきましても疑惑が残ったままでありますので、これの査察を完全に実施するということと、それから軍備管理の面等におきましても米朝間で話し合いをしていこうという姿勢を持っておりますが、ミサイルの問題、核の問題が依然として懸案として残っておりますので、こういう点につきましても、全体的に軍事的に緊張が緩和される方向でアメリカ政府が北朝鮮側とうまくお話し合いができるということを期待しております。
  125. 田英夫

    ○田英夫君 これは私からのお願いというか意見なんですけれども、朝鮮問題を考えるときに、やはり南北を両方視野に置いて見るべきだと。冷戦構造の名残の考え方だと思うんですが、つい私ども、東西対立、冷戦構造というものが世界の主流だった時代が長かったので、お互いについそういう考えになってしまうんですが、今やイデオロギーの対立の時代ではないということからすれば、韓国は同じ自由陣営だから味方であって北朝鮮は社会主義陣営だから敵だという、そういう考え方がどうしても残っている。それで南北を別々に見るということがいまだにあるんじゃないか。アメリカ皆さんにもあると思いますが、私は南北を両方視野に入れながら隣人として考えるべきだと思います。  同時に、そういう意味考えると、朝鮮民族の特性といいますか、私どもは文化の点でも多くの部分を朝鮮民族からいただいている。陶磁器とか、それはもちろんのことですが。そういうことも加えて考えると、朝鮮民族の特性みたいなものを、しかも植民地支配をもしていたんですから、その反省も込めてもっと考えるべきだと思うんです。  私は、一つ体験をしたことがあるので御報告をして、何かの参考にしていただきたいと思うんですが、一九八〇年ころに北朝鮮を訪問しました。小さな政党の党首をしていましたので、その代表団で行ったんですけれども。その前、私は社会党におりました。それを党がかわって小さな党になったら、社会党時代は労働党の幹部が迎えてくれると、ところが小さな党で行きましたら全く扱いが違うということに大変不愉快でありましたので、その気持ちもあったかもしれません。いつも行けば今ナンバーツーになっている金永南氏に非常にざっくばらんに話ができる関係だったんですが、ほんの十分ぐらいの表敬訪問しかできなかった。その不快感を込めたのがいけなかったのかもしれませんが、徹夜で手紙を書きました。書簡という形で金永南氏あてにこれを置いてきたんです。  内容は別に厳しいものではなくて、私どもからすればごく常識的に、もっと世界に門戸を開いて、具体的には例えば日本のジャーナリストや国会議員をもっと招くとかアメリカとの交流をするとかいうような提案をしたつもりだったんです。友人としての提案をしたつもりだったんですが、これは朝鮮の人の心を傷つけたようです。非常に誇り高い民族だということを承知していたつもりですが、それを傷つけてしまった。以後、十年ぐらい私が訪問をしたいと言っても受け入れてくれないという時代が続きました。  それで私のやったことを反省していたんですが、今から五、六年前に中国を訪問したときに、唐家セン現外相、当時次官でしたが、食事をしながら二人だけで話をする機会があったら、彼は、朝鮮問題を話している中で、朝鮮民族は大変誇り高い民族ですからその人たちの心を傷つけることは非常にまずいですねと私に日本語で言うんです。ああ、この人は私のやったことを知っているなと思いましたよ。そういうことで、中国も非常に配慮をしているということをそのとき改めて感じました。  これから日朝交渉をもっと積極的に進めなければならないと思いますよ。そのときに、別に相手の御機嫌をうかがうということではなしに、やはりその特性はしっかりつかんでおかないといけないなと。  アジア局長もおられるけれども、大臣は身近に朝鮮半島問題の専門家を秘書官にしておられますから、そういうこともひとつ勉強なさるいい状況にあると思いますので、アメリカに行かれることは私も大賛成でありますが、次のステップはやはり朝鮮半島に向けていただきたいということをお願いして、最後に一言御感想を伺って、終わりたいと思います。
  126. 田中眞紀子

    国務大臣田中眞紀子君) これは、私も外務大臣である前に、お米の北朝鮮に対する援助の問題ですとか、それから拉致疑惑の問題ですとか、毎回毎回、一政治家として北朝鮮対応はどうあるべきかというふうに思っていました。  それからジュネーブでしたか、初めからアメリカと北との会話等が始まったときも、極めて興味深くずっと、かなりしっかり自分なりにフォローして見ていたつもりですけれども、なかなかこれは国際社会に出てくるに当たっては難しそうだなという印象がありまして、ですからこそ韓国の太陽政策に応じて金大中大統領を受け入れられたのにはびっくりしたんですけれども、逆にそこまで国際社会に出たいという思いが、それもやんちゃ坊主がいたずらするみたいなものがあったのかと思いますが。  それにしてもちょっとやはり度が過ぎていて、日本に対してまず謝罪の問題でありますとか賠償の問題でありますとか、それから拉致ではなくてこれは行方不明者であるとか、いろいろな問題があるので、そういう問題についてもやはり日本国政府として、あらゆる方の、全員のコンセンサスというのは難しいんですけれども、基本スタンスを、言ってみれば一種の覚悟といいましょうか、ストラテジーといいますか、それらをしっかりと持って、でないとなかなか容易ではないなというふうに今の段階は認識いたしております。
  127. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  128. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時二十一分散会