運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2001-04-17 第151回国会 参議院 外交防衛委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年四月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十二日     辞任         補欠選任         今井  澄君     松崎 俊久君  四月十三日     辞任         補欠選任         松崎 俊久君     今井  澄君  四月十六日     辞任         補欠選任         山本 一太君     脇  雅史君      齋藤  勁君     千葉 景子君      吉田 之久君     長谷川 清君      高野 博師君     風間  昶君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         服部三男雄君     理 事                 佐藤 昭郎君                 鈴木 正孝君                 海野  徹君                 益田 洋介君                 小泉 親司君     委 員                 須藤良太郎君                 月原 茂皓君                 森山  裕君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 脇  雅史君                 今井  澄君                 千葉 景子君                 長谷川 清君                 広中和歌子君                 風間  昶君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君                 田村 秀昭君    国務大臣        外務大臣     河野 洋平君        国務大臣        (防衛庁長官)  斉藤斗志二君    内閣官房長官        内閣官房長官  上野 公成君    副大臣        防衛庁長官   石破  茂君        外務大臣    衛藤征士郎君        外務大臣    荒木 清寛君    事務局側        常任委員会専門        員        櫻川 明巧君    政府参考人        防衛庁防衛参事        官        中村  薫君        防衛庁防衛局長  首藤 新悟君        防衛庁運用局長  北原 巖男君        外務大臣官房審        議官       林  景一君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     高須 幸雄君        外務省北米局長  藤崎 一郎君    説明員        会計検査院事務        総局第二局長   関本 匡邦君        会計検査院事務        総局第四局長   有川  博君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 〇国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネ  ーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百  九十四年京都)において採択された改正)及び  国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネ  ーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百  九十四年京都)において採択された改正)の締  結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) 〇全権委員会議(千九百九十四年京都)において  改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十  二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会  議(千九百九十八年ミネアポリス)において採  択された改正)及び全権委員会議(千九百九十  四年京都)において改正された国際電気通信連  合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正す  る文書全権委員会議(千九百九十八年ミネア  ポリス)において採択された改正)の締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○外交防衛等に関する調査  (李登輝台湾総統への査証発給に関する件)  (歴史教科書問題に関する件)  (米中両国軍機の接触・墜落事故に関する件)  (自衛艦の検査・修理契約に関する件)  (国連憲章及び憲法第九条に関する件)  (自衛隊の任務に関する件)  (要人輸送用ヘリ(スーパー・ピューマ)の更  新に関する件)     ─────────────
  2. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、山本一太君、高野博師君、吉田之久君及び齋藤勁君委員辞任され、その補欠として脇雅史君、風間昶君、長谷川清君及び千葉景子君が選任されました。     ─────────────
  3. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  現在、本委員会に付託されている条約の審査及び外交防衛等に関する調査のため、本日の委員会外務大臣官房審議官林景一君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君、外務省北米局長藤崎一郎君、防衛庁防衛参事官中村薫君、防衛庁運用局長北原巖男君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。  両件の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 森山裕

    森山裕君 おはようございます。自民党の森山でございます。大臣、毎日本当に御苦労さまでございます。  ただいま議題となりました国際電気通信連合憲章及び条約改正文書に関し、三点伺います。  国際電気通信連合は、ITUと略称され、由緒ある国連専門機関一つであり、日進月歩の通信技術を国際的に実用化するため重要な貢献をしていると理解をしております。我が国で開発された技術世界的規模で実用ないし標準化することは、我が国産業経済の発展に死活的な利害をもたらすものであります。  そこでお尋ねいたしますが、一九九四年改正文書と一九九八年改正文書を同時にさかのぼって承認しなければならない理由とともに、その改正目的及び理由についてまず簡潔に御説明をいただきたいと思います。  次に、将来の電気通信市場競争において、自国の民間企業ないし関連の機関や大学が開発した先端的な電気通信技術を実用化し世界に普及させていくためには、いかにしてデファクトスタンダードを確保するかということが求められているように思います。我が国はせっかく先端的な電気通信技術を開発しながらデファクトスタンダード化におくれをとったため、欧米の後塵を拝するしかなかったケースがあるように思われます。  この点、二〇〇一年からサービスが始まります次世代携帯電話通信規格ITU標準一つとすることに成功したことは、まことに喜ばしいことであります。ついては、今後もこうした熾烈な競争が続くはずであり、外務省技術外交戦略の展開として今後ITUの場においていかなる取り組みを考えておられるのか、御説明を願いたいと思います。  最後に、技術外交戦略を確保するためには、何よりもITU我が国職員をどれほど送り込むかにかかっているように思います。そこで、ITUにおける日本人職員の数及びそのポストについて教えていただきたいと思います。さらに、民間企業ITU組織に人材を出すことができるというふうに伺っておりますが、現在どういう状況になっているかについても御説明お願いいたします。  以上三点であります。
  7. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今回の改正は、いずれも通信技術進歩各国における電気通信民営化進展など、ITUを取り巻く環境変化に対応するITU組織改革目的として採択されたものでございます。  我が国は、九四年改正採択後、ITUのさらなる改革動き参加し、その成果を注視していたところ、望ましい方向で九八年改正採択されたことから、今般これらをあわせ締結することが適当と判断したものでございまして、大筋で共通改革を志向し、相互に関連するこれらの改正について一括して審議お願いしているわけでございます。  これらの改正によりまして、民間事業者ITU活動に一層活発に参加することが期待されますし、九八年改正によって会計手続が変更されたことでITU財政基盤が強化されることも期待されるわけでございます。これらの改正文書締結することは、我が国としてITU活動を通じ、電気通信分野における国際協力の一層の推進に貢献することができるとの見地から有意義であると考えているわけでございます。  次に、次の御質問でございますが、ITU電気通信標準化分野におきましてこれまで主導的役割を果たしてきておりまして、その作成する国際標準は高い信頼を得てきたところでございます。  その中で、例えばIMT二〇〇〇と呼ばれる次世代携帯電話無線伝送方式については、一九八〇年代半ばからITUにおいて各国提案をもとに検討が進められてまいりましたが、最終的に日欧方式を含むITU勧告が二〇〇〇年五月の無線通信総会において採択をされました。この次世代携帯電話サービスは、我が国におきましては世界に先駆けて本年五月末に開始される予定でございますが、この方式ITU勧告となったことによりまして、世界標準として今後世界各国においても利用されることが見込まれ、その意義はまことに大きいものと思われます。  我が国といたしましても、このようなITU標準化活動及びそこでの我が国民間事業者の積極的な参画を今後とも積極的に支援してまいりたいと考えております。  最後に、人間の問題についてお尋ねがございました。  ITUは現在のところ約三百人の専門職員を有しておりますが、そのうち内海善雄事務局長を初め、六名の者が邦人職員でございます。この六名のうち、民間企業のKDDIの出身者二名が電気通信標準化局に所属をしていると承知をいたしております。
  8. 森山裕

    森山裕君 終わります。
  9. 今井澄

    今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  ただいま議題となっております憲章及び条約締結に関して承認を求めることについては、内容的には承認すべきものだろうというふうに考えておりますが、そういう立場に立ちながら、何点かお尋ねしたいと思います。  今、森山委員の方からも質問のあったことですが、一九九四年の京都改正と一九九八年のミネアポリス改正、一括して今、締結承認を求められているわけですが、一連のものといえば一連のものですし、一九九四年の方がどちらかというと組織問題、スムーズに組織運営をするためということですから、前段階といえば確かにそうは理解できるわけですけれども、それにしても、一九九四年の方の改正は既にことしの初めの段階で百二十三カ国が締結をしているわけですよね。何で我が国は四年間というか六年間ほっぽり放しにして一括するのか、そういうことでいいのかどうか、そのことについてお伺いしたいと思います。何か不都合は生じなかったんでしょうけれども、不都合は本当になかったのかどうか。  それからもう一つ、やっぱりこういうことは少なくとも最終的には国会承認を必要とするわけですから、世界がそういう状況で、一九九四年のを各国締結していった状況で、我が国は四年後に予想されるものと一緒にやりますよということをせめて国会報告をするということは、私はやっぱり国権の最高機関として国会が位置づけられている以上、いずれ承認を求めますよということで説明はすべきだと思うんですよね。それも我々に知らされないまま、前の分も一緒締結するから承認しろというのは何かばかにされたような感じがするんですけれども、いかがでしょうか。
  10. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今回の改正は、ただいまも森山議員にお答えを申し上げましたとおり、いずれも通信技術進歩各国における電気通信民営化進展など、ITUを取り巻く環境変化に対応するITU組織改革目的として採択されたものでございます。  我が国は、九四年改正採択後、ITUのさらなる改革動き参加をし、その成果を注視してきたわけでありますが、望ましい方向で九八年改正採択をされましたことから、あわせてお願いをいたしているわけでございます。  なお、この間、今御指摘がございましたように、何か特段不都合はあったかと、こういうお尋ねでございますが、この間特段不都合は生じておりませんが、ITU発足時からの加盟国として電気通信分野における国際協力に一貫して努めてきた我が国としては、国会の御承認をいただいた上でこれらの改正文書締結することによって、引き続き国際協力に努めていくことが重要であると。  これはもう議員が今御指摘のとおりでございまして、不都合は生じておりませんけれども、締結に先立って、署名段階で何か国会に連絡をするなり御報告を申し上げるということが必要ではないかという趣旨お尋ねだと思いますが、私も調べて問い合わせてみましたけれども、従来からこのような場合に行政府権限署名はする、そして国会提案をして承認を得るという二段階になっておりまして、これまでも署名行政府権限の中でやると。  これは、つまり多数国で議論をしておりますので、合意ができればそこでまず署名をして、その合意をとめておく、ピンでとめておく、そして全体が決まれば最終的には国会で御承認をいただくと。こういう段取りになるということと私は理解しておりまして、これまでも不都合はございませんでしたし、このやり方についてこれもまた特別にこういうやり方に今回なったのではなくて、従来どおりやり方として今回お願いをしている、こういうことでございます。
  11. 今井澄

    今井澄君 いや、やっぱりそこのところだと思うんですね。だから、そういう従来どおりやり方を改めてほしいと。何もどこか委員会とか本会議報告するとかそんなことを私は申し上げているんではなくて、例えばいろいろな方向があると思うんですね。こういう外交防衛委員会理事会に、今国会ではこれこれお願いするけれども、実はほかにも昨年のこういう案件がある、署名してあるけれどもこれは次のあれを見てやりたいとか、何らかの形で情報伝達はやっぱり私は国会にはすべきだということを先ほども申し上げたんです。それに対してもう一度御回答いただきたいんですが。  あわせて、ちょっと気になるのは、再三にわたって一九九八年の改正が望ましい改正だということをおっしゃった。ということは、逆に言うと一九九八年、四年待って望ましい改正が行われない場合には、一九九四年の京都の方についても署名はしているけれども無視するんだというふうなニュアンスに受け取れないこともないんですよね。ほかの国はみんな百二十三カ国も締結しているのに何で日本だけが四年も延ばしたのかとか、その辺については納得ある御回答をいただけていないと思います。  それから、日本はいろんな条約についてもとかく批准とか何か遅いものが多いような気がするんですよね。今回は、特に国内法とか予算上の措置が必要ないとされているわけですから、そういうものについてまで何となくずるずると先延ばしにする、そういう癖が日本外交にあるとすれば、これはやっぱりちょっと日本の信用にもかかわると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  12. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ちょっと、経過について政府参考人から御説明をさせていただきます。
  13. 高須幸雄

    政府参考人高須幸雄君) 九八年の改正と九四年の改正関係でございますけれども、大きな流れとしましては電気通信民営化している、規制緩和しているということで、民間事業者をもう少し作業の中に組み込んでいくというのが大きな流れでございます。  九四年の時点で、第一歩の改革ということで、民間事業者を幾つかできております研究委員会参加できると……
  14. 今井澄

    今井澄君 ちょっと時間が余りないんで、そういうことはわかっているんですよ、わかっている。
  15. 高須幸雄

    政府参考人高須幸雄君) 簡単に、それじゃ簡潔に。
  16. 今井澄

    今井澄君 一連のものだと私は言ったんです。そうじゃなくて、ほかの国がやっているのに何で日本だけがやらないのかということを聞いたんですよ。
  17. 高須幸雄

    政府参考人高須幸雄君) 簡潔に申し上げます。  九四年の時点で既に、一部の改正にとどまらず今後引き続き改正を続けていこう、作業をしようということですぐ続きが始まったわけでございます。そういう意味で、九八年の改正につながっていったという一連改革の中で民間事業者をどういうふうに参加させるかという作業だったということを申し上げたいということと、それから九八年の改正については十六カ国でございます。  そういうことで、九四年の改正は一部改正で、民間事業者、さらにそれをより大きな参加にさせるというのが九八年の改正ということで、そういうことで確かに二つ大きな、改正では別ですけれども、民間事業者参加させるという流れとしては、作業として継続してやったということを御説明したいと思います。
  18. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 条約扱い方についても議員から御意見がございました。  今の議員の御意見を十分踏まえて、条約扱い方といいますか、私ども実は衆議院でも少し条約がたまっているんではないかという御指摘をいただいたこともございまして、これらについて、条約をどういうふうに処理するかということについては研究をさせていただきたいと思います。
  19. 今井澄

    今井澄君 済みません、あと一問ちょっとお尋ねしたいんですが、憲章の一六五で、これは財政上の予算分担ですね、分担等級を勝手に二段階以上減少させてはならないという規定が入ったということなんですが、実際、どの国が勝手に分担を減らしてITUのお金を出さなかったのか、そういうことは余り好ましいことじゃないと思うんですけれども。  それと、今度はコストリカバリーのための費用徴収基準を決定したということなんですけれども、そうすると、今まで分担等級で出していたものからいわゆる受益者負担の方へ振りかえる部分があると思うんですが、どのぐらいの比率がそっちになるんでしょうか。
  20. 荒木清寛

    ○副大臣荒木清寛君) 分担金の件につきましては、過去、英国が分担等級を三十単位から十五単位に大幅に減少させたということがありました。  こうしたことを放置しますと、途上国を含めて他の加盟国が選定した分担等級が変わらなくても分担単位当たりの金額がふえる結果、実際の負担額が相当に増加するおそれがあるという問題意識の中で今回の改正になったわけでございます。  それから、コストリカバリーの件でありますけれども、この費用回収原則、いわゆるコストリカバリーは、従来、構成国部門構成員からの分担金で賄われていた費用の一部を受益者負担とすることを可能にするというものでありまして、このITU財政基盤強化のために九八年の改正導入をされました。  この原則の具体的な適用基準につきましては理事会で決定されるということでありますが、これまでのところ、衛星の軌道、周波数の調整のための費用についてこの基準が決定をされました。コストリカバリーにつきましては、導入が開始されたばかりであり、これ以外の費用についての基準検討中であるということです。  今後、コストリカバリーが適用される部分が年間約百十五億円のITUの歳入のどの程度を占めるかということについては、まだ確たる予測は得られておりません。
  21. 今井澄

    今井澄君 ありがとうございました。
  22. 益田洋介

    益田洋介君 外務大臣お尋ねを申し上げます。  一九八〇年代の後半から先進各国通信事業民営化規制緩和が急速なテンポで進みました。その結果、そうした通信事業を取り巻く情勢の変化が今回の憲章条約改正に具体的にどのように反映させられているかということが一点。  それから、IT革命森総理は盛んにおっしゃっておりましたが、IT拡大する、事業拡大する、それからまた介護とか福祉の産業拡大することによって雇用の創出、拡大が図られると思うわけでございますが、我が党としましては、この二年間で百万人の雇用者拡大というのを目指しております。雇用の問題というのは、非常にこのIT産業の発達と拡大に密接な関係があって、さらに財務大臣は、雇用と民需の拡大、これがやはり景気を下支えする一番大きなエレメントであろうというふうにもおっしゃっているわけでございます。  政府としては、この雇用拡大IT革命というのを密接に結びつけた上で両方とも進めていかなきゃいけない、そういうお立場にあると思うわけでございますが、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  23. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) まず、民間電気通信事業者ITU活動への参加につきまして、これを促進するため、例えば参加手続簡略化というような規定が設けられて、さらに一層参加が促進されるだろうということをまず申し上げておきたいと思います。  電気通信事業民営化などに伴います各国政府財政収入の減少を背景として、分担金以外の収入を確保してITU財政基盤を強化するため、例えばITUが各加盟国民間事業者などに提供する各種サービスのコストを受益者から回収するなどの制度が新たに設けられるという事態も発生をしておるわけでございます。  今、議員からお尋ねになりましたIT雇用と申しますか、あるいはIT革命そのもの社会活動あるいは経済活動全体に及ぼす影響というものは極めて大きいということは、漠然とだれでも感じていると思います。  しかし、それが具体的にどういう分野でどういうふうになっていくかということについて、今関係当局が具体的な数字をもってお示しするべく努力中でございますが、これによって、従来はIT革命がむしろ失業者をふやすのではないかというような意見さえございましたけれども、最近に至ってそういうことはないと。むしろ雇用チャンスというものは広がっていくという具体的な例も出てきたし、そういう議論は多くなってきたというふうに考えております。  もちろん、政治にとって最も重要なことは、働く場を提供することができるということが極めて重要であると考えておりますので、そうした点に十分注意をしながらITの促進という事業を進めていかなければならぬというふうに考えます。
  24. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。
  25. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私も、この改正法案には賛成です。  国際法学者の書いているものを読んでみますと、現代国際社会の特質の一つ国際社会組織化だということを書いております。事実、多数の国家が、政治経済社会、文化、交通・通信など各分野共通のいろいろな組織をつくっており、このITU国際連合を中心とする代表的な国際組織一つだとされております。その国際組織が絶えず改善を行い、活動を充実させていくことが当然必要なことだと考えるからであります。  ですが、その際、このITUはやはり国家を構成員とする組織体であります。国際組織と国家との関係、また、この法案の重要な内容になっている民間事業者参加との関係、こういう点がどういう関係になるかということについてははっきり説明をしておいていただきたいと思います。  まず、その点、お答えをお願いします。
  26. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 確かに、議員がおっしゃいますように国際機関でございますから、主権国家がこれに参加をしていろいろ議論をし、ルールを決めて進めていくということがそのスタートの時点であったと思います。  しかしながら、近年になりまして電気通信民営化進展が著しいと。技術開発、標準化の分野を中心に民間電気通信事業者やメーカーなどの役割が大変増加をし、これらはいずれも例えば国境を越えるというような状況になってきているわけでございまして、今回御提案を申し上げております九四年、九八年の改正案はこういう環境変化、とりわけITU活動に対する民間事業者参加ということを念頭に置きまして、無線通信でございますとかネットワーク技術標準化といったような分野民間技術、ノウハウ、そういったものを効率的に活用することによって全世界の利益と申しますか、そういうものを考えるということがあると思うんです。  他方で、九四年、九八年の改正後におきましても、民間事業者などのITUにおける活動には一定の制約もございます。例えば、技術標準などについて定める勧告につきましては、民間事業者などが勧告案の作成過程に関与はしても、ITUとしての最終的な意思決定は加盟国政府にゆだねられるということになっております。  このように、今回の改正は、民間事業者などの参加を促進することによって民間技術などをより一層活用して組織全体としての機能をさらに強化し、効率化を図るものでございまして、ITU政府機関としての基本的性格を変更するものではないということでございます。
  27. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今の点、説明は了解いたしました。  もう一点は、改正のたび、九四年にも、今回のでも留保の宣言というのが行われている。これだけ見ると、形の上ではあたかも何か留保宣言しておかなきゃいかぬ大問題を抱えた改正かなという印象さえ受けたんですけれども、内容を読んだり説明を受けると、そういうことでもないというふうに了解しております。  その中で、日本が留保宣言の中で問題にしている赤道諸国の主張については国際法の解釈としてはどうなっているのか、日本政府はどう解釈しているのかという点を、宇宙空間に関するこの条約で示されている連接するということは何を意味するかということとあわせて御説明願いたいと思います。
  28. 林景一

    政府参考人(林景一君) お答えいたします。  今、委員指摘のとおり、我が国は今般の憲章条約改正採択に当たりまして、米英独仏など多数の諸国とともに若干の赤道諸国が行いました声明につきまして、いわゆるボゴタ宣言や静止衛星軌道の部分に対して主権を行使するという赤道諸国の主張に関する限り承認できないという立場を確認までに宣明したところでございます。  これは、これら赤道諸国の主張と申しますのが、宇宙空間につきまして基本原則を定めました宇宙条約の第二条に見られますような、宇宙空間について地上国の領域主権は及ばないという広く受け入れられております国際法の考え方に合致していないためでございまして、我が国といたしましても、国際法上、宇宙空間については地上国の領域主権は及ばないという考え方に立っているものでございます。  それから、その連接という言葉は、まさにこの一九七六年のボゴタ宣言に使われておる言葉でございますけれども、これは静止衛星軌道が地球の現実と連接した、リンクという言葉を使っておりますけれども、物理的事実であるという言い方で使われておるわけでございます。この言葉の意味自体は実は我が方として認めがたい主張の根拠になっておるものでございますから、これについてちょっと解釈するのはなかなか難しいわけでございますけれども、地上からの見かけ上、静止衛星がその衛星軌道で赤道諸国の真上にあるということでその真上にある空間を占めているかのごとく見えるということを、そういう事実をもってあたかも領域主権と静止衛星軌道が結びついているかのごとく主張を行おうとしているということではないかと思いますが、いずれにせよ国際法上の根拠を欠くものというふうに申し上げざるを得ないと思っております。
  29. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 終わります。
  30. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  31. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  32. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  34. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 次に、外交防衛等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  35. 森山裕

    森山裕君 現在、大きな外交問題に発展をして、関係各国我が国民も大変重大な関心を持っております李登輝氏に対する査証発給にかかわる問題について御質問をいたします。  本件については、新聞はもちろん、テレビなどマスメディアが大々的に取り上げ、さまざまな角度から報道がなされております。私の質問もその報道に基づくものであることをまずお断りをしておきます。  私は、外交防衛委員会の一員としてこの問題に強い関心を持ってフォローしてまいりましたが、まず印象として、政府部内が李登輝氏の査証申請処理について大変混乱をしているのではないかというふうに思えてなりません。  次に、中国の反発と申しますか、横やりを恐れて外務省がその意を酌むのにきゅうきゅうとしているという印象がぬぐえないのであります。この私の印象が間違っているのであれば幸いでありますが、一般の感覚として日本は中国の顔色をうかがい過ぎるのではないかという印象は否めないように思います。もちろん、極めて高度な外交的配慮に基づく国益擁護の観点から政府部内で見解の対立が生じているのであれば、それはそれなりに理解をしなければなりません。  この李登輝氏の来日にかかわる査証問題は今に始まったことではありません。在任中から何度か問題になり、今回またその延長線上にこの問題が起きているわけであります。つまり、問題を先送りするばかりで、外務省が集めた情報と衆知を駆使し、決断をせずにいたことが今日問題をますます複雑にしてしまったと私は考えております。  そこで質問でありますが、事実関係を確認したいのでありますけれども、外務大臣はこの問題の経過をどのように把握しておられるのでしょうか。まず、国際交流協会台北事務所に李登輝氏の代理人から査証申請があったのに、これを受理していないという見解はどこから出てきたのか。先日のニュースでは李登輝氏自身が記者会見をされ、日本政府から査証申請を取り下げるよう圧力があったと厳しく抗議をしておられるニュースに接しました。この事実関係についても御説明をいただきたいと思います。  もう一つ気になることがあります。報道によれば、外務省内部でも本件をめぐり慎重論と積極論が対立をして、中国に関係の深いグループが強く反対しているという報道もありますが、このことについても御説明をいただきたいと思います。
  36. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) まず、前段の御質問の事実関係だけ申し上げたいと思います。  十日に李登輝氏の代理人が査証申請書類を交流協会台北事務所に持参したのは事実であります。我が方としてこれをいわゆる正式申請とはしかしとらえておりませんで、また受理したということも私どもは承知しておりません。このことは先方にも同日伝えてあるというふうに報告を聞いております。また、李登輝氏が記者会見で日本政府より査証申請を取り下げるよう働きかけが行われていると述べておりますが、そうした事実はないと承知をしております。  二つ目に、外務省内部で両論が対立しているのではないかという御指摘でございますが、外務省内部にはこの問題に対してできる限り情報を収集すべしという指示を出しておりまして、さまざまな角度から情報収集を行っておりますが、最終的に外務省意見を代表して公にすることは私がその役割を担っているわけでございまして、外務省意見外務省の判断はただ一つであるというふうにぜひ御認識をいただきたいというふうに思っております。  閣内におきましても、外交問題でございますから、これは仮にさまざまな意見があったとしても、外交問題に対する責任を担う私がこの問題については意見を述べ、最終的には総理の御決断ということもあるかもしれませんが、おおむねそれぞれのつかさつかさの判断ということになっているわけでございまして、そういう意味で、外交というつかさを担っております私が責任を持って判断をしたい、こう考えているわけでございます。  また、さらに中国に対して気兼ねをしているのではないかという御指摘がございましたが、私は気兼ねをしているつもりはございません。ただし、日本と中国との間には日中共同声明というものがあって、その日中共同声明に基づいて日中両国は国交を正常化したわけで、この日中共同声明という両国の国交の正常化をいたしますときの前提といいますか土台といいますか、そういうものが揺らぐようなことがあってはこれはいけない。  これは、中国側がいいとかどこがいいとかということではなくて、我が国にとってもそうした国際的な共同声明とか共同宣言とか、そういう国際的な二国間の合意というものを揺るがすような判断はすべきではないと。ただ、この問題がそれを揺るがす問題になるかどうかということについては、十分な分析が必要だというふうに考えておるということだけ御理解をいただきたいと思います。
  37. 森山裕

    森山裕君 そうしますと、大臣外務省の見解としては、李登輝氏の査証の申請というのはなされていないし、なされていないから受理もしていないという見解であるというふうに理解をすればよろしいですね。
  38. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) この申請、先ほど正式な申請とか正式な受理とかという言葉を使ったわけでありますけれども、正式な申請というのは、ではどういう意味があるか、どういう状況であれば正式な申請であるかということになると、必ずしも明確になっているかどうかということに多少私も不安なしとはいたしません。  しかし、一般的に申しまして、査証の申請手続とは、有効な旅券、査証申請書、その他必要な資料などを我が国在外公館などの査証窓口に提出し、査証官が申請のための形式要件を具備していることを確認してこれを受理するということがいわゆる正式申請であり、正式受理というものだと思います。これが、一般的にといいますか、正式受理あるいは正式申請という場合にはそういうことだというふうに私どもは理解をいたしております。
  39. 森山裕

    森山裕君 査証の代理申請というのはどういうケースで認められますか。それと、代理人というのはだれが認めるんですか。申請者がこの人を代理人だと言えばすべて代理人で認めるんですか、それはどうですか。
  40. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ちょっと、大変申しわけありませんが、担当者も連れてきておりませんし、非常に機微な問題でございますから、正確を期したいと思いますので、ぜひきちんと担当者を呼んで説明をさせたいと思いますので、今回はお許しいただきたいと思います。
  41. 森山裕

    森山裕君 今の質問は、また後日機会を見て質問をさせていただきます。  次の質問に移りますが、査証申請に係る経過や外務省内の動向はともかくとして、当面する問題の核心は李登輝氏に査証を発給するかどうかということであろうと思います。  報道を通じてしかわかりませんが、発給に強く反対をしている中国の言い分の本当のところはどういうことを言っているのでしょうか。それと、李登輝氏に査証を発給する場合、日中関係にどのような事態が発生をするのでしょうか。
  42. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) こうしたことをこの席で申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、お尋ねにお答えをする材料として、四月十六日に中国外交部のスポークスマンが発言をしておりますので、その発言を引用させていただくことをお許しいただければ、中国外交部のスポークスマンは、今回特に注意すべきは台湾当局が公然と前面に飛び出していることだと。李登輝氏は元元首であり、訪日できるか否かは国家全体の問題である、台湾当局にはこれを全力で実現させる義務があるなどとして李登輝氏を応援していると。つまり、台湾当局が国家全体の問題だと言って訪日をバックアップしている、あるいは訪日について強いサポートをしている、これが問題だということを一つ言っております。  陳水扁氏本人も公然と李登輝氏訪日を認めるよう日本側に求めている、これらのことは今期の李登輝氏の訪日は決していわゆる普通の私人の訪日というふうには思えない、こういうことを言っているわけでございまして、台湾問題は日中関係政治的基礎にかかわるものであり、一つの中国という原則を堅持することは日本政府が履行すべき義務である、我々は日本側が日中共同声明と日中共同宣言にある原則をしっかりと守り、明確な態度でこの問題に対応することを希望する云々と、こういうことを言っていることを御紹介しておきます。
  43. 森山裕

    森山裕君 そうしますと、今回の李登輝氏の査証の問題というのは今までと大きく違うところがあるように思います。  一つは、李登輝氏自体がまだ台湾政界の重鎮として相当な政治的影響力を持つ人物であることは間違いありませんけれども、現在は民間人になっておられるということが一つあります。また、報道によりますと、今回の来日の目的は持病である心臓病の治療ということである、こう言われております。まさに人道上の問題としての査証の発給をどうするかという判断が迫られてきているというふうに思うんです。  一方、中国との問題は、教科書問題にいたしましてもセーフガードの問題にいたしましても、いろんな問題があることもまた承知をしなければなりませんが、人道的な問題としてどうとらえるかというのは我が国外交にとっても大変大事なことだなというふうに思うんです。  大臣、どうなんでしょうか。一定の時期に一つの決断、結論をお出しになるんでしょうか、そのあたりについてのお考えがあれば少しお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 外交責任者としてこれは結論を出さなければならぬ問題だというふうに思っております。
  45. 森山裕

    森山裕君 終わります。
  46. 海野徹

    ○海野徹君 外務大臣にお伺いさせていただきたいと思います。  森山委員からも質問がありました李登輝台湾総統のビザの発給の問題についてお伺いさせていただきたいんですが、この訪日の目的が外科医の診断を受けると。大変今体調がよろしくない。ゴルフもやっているじゃないかという話もあるんですが、健康管理上それは医師からの指導でやっていると。現実には健康上は余りすぐれている状態とは言えない。だから、どうしても再診を受けたいということで、関西空港から外科医のところへ行くだけだから、それ以外の目的はないというようなことも李前総統は言っているんですよね。  どう考えてもビザの発給を拒否する理由には当たらないじゃないかと思うんですが、その点について、大臣、どうお考えなんでしょうか。
  47. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今、森山議員に御答弁を申し上げたとおりでございまして、私はこの問題は非常にいろいろな問題を含んでいるというふうに考えます。いろいろな問題を含んでいるし、日中関係の根本にかかわる問題でもあるというふうに思いますが、それはそれとして、人道問題というものはまた別の考え方も持たなければならぬものだというふうにも思っているわけでございます。したがいまして、この結論を出すのに私が若干慎重に情報を集めているということを御理解いただきたい。  例えば、李登輝氏の訪日について私が承知をしておりますことを申し上げれば、この訪日は、岡山だけではなくて京都にも行くというような予定も入っているというふうにも聞いた時点もございました。これらの予定がどういうことになっておるか、直近の御予定を確認しているわけではございませんが、岡山の病院に行くというだけではなくて京都にも行くというようなことになると、それはなかなか病院だけだという説明にはならないというふうにも思いますし、申し上げましたように、さまざまな角度から情報を集めて判断する必要があるというのが私の感じでございます。
  48. 海野徹

    ○海野徹君 慎重にさまざまな情報を集めて判断するというお話がありました。しかしながら、先ほどの答弁の中に、ここで発言するのがいいかどうか非常に疑問だけれどもということで、中国外務省のスポークスマンの談話、あれはあくまでも中国側の談話でありまして、我々は日本ですから、日本が国益を考えていろんな政治的な判断をしなくちゃいけないと思います、判断するべきは我々日本でありますから、主体は。だから、余りそういう例を出されると、慎重といっても、非常に私は後ろ向きに結論を出すために慎重ではないかなというような気になってしまうんですが、そういう理解をしてしまうんですが、私は発給すべきだと思っているわけなんです。  しかしながら、仄聞するところによりますと、申請すら前段階でそれをやめさせろと、その説得が失敗したから、じゃ今度は、きのうは官房長官が急に非常に前向きな発言をマスコミにしたとかというような報道があるわけなんですが、いつまで前総統という、あるいは元国家元首というのにとらわれなければいけないんですかね。あくまで私人でありますから、既に。私は李登輝さんは私人であると思うんです。  その私人が、まさに今大臣がおっしゃる人道的な問題を有するような外科的な手術、その後の経過を診ていただくために来られる。それは京都におられるかもしれない。本人はとにかく空港から岡山へ行くんだというような公式的な記者会見もしているわけですから私は何ら支障はないと思うわけなんですが、重ねて大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
  49. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) まず、私が先ほど中国外交部のスポークスマンの話を引用しましたのは、森山議員から、中国は一体なぜ反対しているのかというお問い合わせでございましたから、私は、中国の意見をここで申し上げることは適当かどうかと言いながらも、中国の意見を御紹介することが一番中国がこの問題をどう考えているかが明確になると思って引用したのであって、判断は、それは議員がおっしゃるように我が国が主体的に判断すべきものであることは当然だと思っております。  それから、確かに今議員は非常に大事なことを二点おっしゃいました。私人じゃないかという問題と、人道的な問題じゃないかと、この二点を御指摘になったわけですが、確かにこれが、まあ私人と受けとめるか受けとめないかというのは、一つ議論のあるところだと思います。  確かに、総統時代とは、肩書きもございませんし、総統としての肩書きはないわけでございますから、それはもう明らかに違いがあるということは当然私は認めております。ただし、先ほどこれも御紹介申し上げましたように、いかにも今回、台湾の外交部であるとか陳水扁総統が前面に出てきて、これは国家の威信にかけて云々と言われると、いわゆる私人についてそこまでやるかなという感じがしないではございません。そうした点は我々注意深く見なければなりません。  それから、確かに肩書きはなくなられましたけれども、政治的な影響力というものはまだ隠然と持っておられるというふうに日本の多くの人が見ていることも事実だと思います。しかし、この隠然と力を持っているというのはなかなか計量できるものではございませんし、どこまでをよしとし、どこまでをもういい、余り考えなくていいやとするかというのはなかなか難しいところであることはもうおっしゃるとおりだと思います。  それから、人道問題は我々にとっても決して軽々に考えるべきことではない、極めて重要な問題だというふうに私は思っております。この問題を決して無視してといいますか、考慮の中に入れないなどということを私は考えてはおりません。
  50. 海野徹

    ○海野徹君 今、外務大臣は人道上の問題は考慮に入れるということでありますから、非常に私はそれは前向きな御答弁として受け取らせていただきたいと思うんですが、一つの中国という中国の姿勢に非常に配慮して慎重にやってきたというのは過去の経緯にあります。そういう中で日中友好というのがずっと進んできています。進めようとしているんです、お互いに。そういう必要性があるということで、数年来というか直近の要人、いろいろ朱鎔基さんにしても江沢民さんにしても訪日の中で大変なメッセージ、対日重視のメッセージを送っている。そういう中で友好関係というのは、やはりこれは一方的な友好関係だけじゃないはずなんです。  これは通告をちょっとし忘れていましたが、ずっと長く外務大臣としていろいろ交渉をやっておられましたからお聞かせいただきたいんですが、外務大臣のお考えになっている友好という言葉の定義は、外交上どういうふうな定義をされていますか。
  51. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 外交上の友好ということを定義づけろとおっしゃられても、そう一言で私、申し上げるほどの知識がございませんが、例えば日中両国における友好という場合には、少なくとも双方が理解し合う、そして好ましい方向に進むということだろうと思います。
  52. 海野徹

    ○海野徹君 双方が理解をそれこそ昂進していくということで友好関係はさらに深まっていく。これは二十一世紀、今二〇〇一年になったわけなんですが、二〇五〇年を目指して中国はいろんな政策をこれから展開していく、そういうのが発表されています。そういう中で、日本というのは必要にして欠くべからざる国だと思うんですよね。そのぐらいの国でありますし、向こうにとっても大変な重要な国だということになる。であれば、この問題というのは解決できない問題ではない、十分に議論して解決できる問題ではないかなと思うんですよ。  今までの友好というのは、ある意味では中国側にとって独占的な定義づけをさせられて非常に政治的に使われてきたんではないかなと。そうじゃなくて、我々日本人が主体的に、友好というのはこうあるべきだ、その中で李登輝前総統のビザの発給についてはこうあるべきだという議論をしていく必要があるんではないかなと思います。  斉藤防衛庁長官にお伺いしたいんですが、これも仄聞するところでありますから事実を確認させていただきながらその理由を述べていただきたいんですが、ビザを発給すべきだというのを閣議で発言したというような報道がされております。防衛庁長官、その辺、ちょっと事実確認をさせていただきたいと思います。
  53. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 私、今回の李登輝さんの医療行為を受けるために訪日したいという希望、それがおありになるというのは承知しておりました。そんな関係で、基本的に私はこのように考えておるわけでございます。  御本人は御高齢でもあるし、またその医療そのものが何か緊急性がかなり高いものだ、定期的に受けなきゃならないものだということも聞いておりましたし、お立場として公人の立場を離れられて、現在、私人であられるということ、そんなことを総合的に考えますと、政治目的ではなくて医療、病気の治療というのがまさに目的であって、その範囲であるなら人道上の判断というのがポイントになるのかなということを考えております。  最近の出来事として、米中における軍用機の衝突事件がございました。二十四名の米軍兵が勾留をされたというか中国内におったわけでございますが、その後、先週になりますが、解放をされたという経緯、その直後の李登輝さんの話だったので、タイミングでございましたものですから、中国も今回の二十四人の解放については人道上という理由をたしかつけていたかなという記憶がございましたものですから、人道上の理由ということは最優先に考えなければならないのではないかというような、そういうような趣旨で私、考えを持っておったものですから、発言をさせていただいたところでございます。
  54. 海野徹

    ○海野徹君 ありがとうございました。  重ねて、これは外務大臣に御要請申し上げているわけなんですが、台湾との関係というのは民間の交流が主体になっている、今現在は。あくまで私人であり民間人であるわけですから、それは今まで政治的に非常に高い地位におられた、その後も何らかの影響力があるというような評価はされるかもしれませんが、あくまで今は私人であり民間人である。民間交流を主体としている、台湾とは。  そういった意味では、今度の訪日問題でビザの発給というのは、査証の発給というのは私はすべきだなというふうに思っております。また、もしそれができないということになれば、私は国際社会の中で日本というものの評価というのは大変マイナスの評価を受けていくのではないかな、国益にとって大変な損失を免れないのではないかなと思います。それだけに、先ほど外務大臣が友好というのはこうあるべきだというお言葉を述べられました。そのことを根底にしながら私は凜とした対応をしてほしいと思います。ぜひ発給のことを要望して、この点の質問は終了させていただきます。  次の質問なんですが、教科書の検定の問題であります。  日本は検定制度ですが、外国には国定教科書をやっている国があります。その国定教科書の中で、要するに日本に対するいろんな記述があるはずです。その記述に対して今まで日本政府として何か発言したことはございますか。
  55. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) さまざまな国の教科書の中には、日本について事実を誤認したものがございます。そうした場合に政府として申し入れをするということではなくて、現在我が国としては、外務省認可の公益法人でございます国際教育情報センターというのがございまして、この国際教育情報センターは、いわば世界じゅうのあらゆる教科書を集めてきて事実関係を確認する。それなりの専門家もそこにいて、それなりの何といいますか翻訳者もそこにいて、そして事実関係をきちんと突き合わせて、間違いがあれば申し入れをする。これは外務省が直接するわけではございませんが、外務省認可の公益法人が調べて、間違いがあれば、ここは間違っておりますので正してほしいという訂正を申し入れる、こういう仕組みを使っております。
  56. 海野徹

    ○海野徹君 そういう事実誤認に基づく記述について訂正を申し入れる、要するにある意味では抗議をしたことはあるわけですね。それは抗議という言葉を使っていいような発言か、要するに訂正を求めたか、それは私は現場で聞いていませんからわかりませんが、確かにそういうことを、もし抗議に当たるようなことを我々が言ったとしたら、外国政府から当然それは内政干渉だというような反発があると思うんですが、その点について、大臣、どうでしょうか。
  57. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 内政干渉という言葉が一体何を指すかということについては、これはいろいろ議論があるところのようでございます。  私どもが承知しておりますことを申し上げますと、内政干渉に当たるか否かについては、国際法上、内政干渉とは他の国家が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って強制的にその国を自国の意思に従わせようとすること、これが内政干渉だというのが、国際法上言われているわけでございます。  一般的に、特定の国の事柄について関心を強く持つとか、懸念を表明するということでは、今申し上げた国際法上の内政干渉というのに当たると言い切るのには少し無理があるんじゃないかというのが公式見解でございます。
  58. 海野徹

    ○海野徹君 いろいろ中国とか韓国からメッセージが来た、あれは内政干渉ではないと我が外務省職員は言っているわけなんですが、本人たちは内政干渉をしないよという言葉を使いながら言っているんですよね。内政干渉をするつもりはないと中国の代表なんかは言っているわけなんですが、それは要するに内政干渉するつもりはないよという言葉を使いながら、こちら側では内政干渉に当たらないと言っているわけなんです。その辺が非常に私どもはわかりづらいんですよね、非常にわかりづらい。内政干渉をするつもりはないよということを言っているということは、内政干渉ということはもう認識の背景にあるわけですよ。それをこっちの方が人がよくて、内政干渉されているつもりはないよと言うことはないんじゃないかなと私は思うんです。  たった一つの教科書によって教育が統制されている国から、いろんな教科書の内容があって、それから採択されている教科書を使っている、そういう国の実態というのは、一体実際の問題として相手国はわかっていらっしゃるんでしょうか。その辺については、大臣はどういうような印象を持っていらっしゃいますか。  相手国は一つしかないんですよ、国定教科書なんです。我々は何種類かあるんです、その中から採択している。その採択のときにいろんな問題があるという報道もありますが、それはさておいても幾つかの選択肢がある。そういう国の、要するに国情の違い、教育の違い、それを相手国は我が国のことを本当に理解した上での発言だと思いますか。
  59. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) これは中国、韓国を指して恐らくイメージしておっしゃっておられるんだと思いますから申し上げますと、私どもは中国、韓国に対しては、検定制度というものがどういうものであるかということについては繰り返し説明をしているわけでございまして、このことは広く国民すべてにこの理解が行き渡っているかどうかということになりますと自信がございませんけれども、少なくとも関係者、この問題に関心を持たれる方々に対しては、日本の教科書制度というものが検定制度という制度のもとにある、しかも種類は何種類もあるということについてはその都度説明をしておりますから、理解は進んでいるものというふうに思っております。
  60. 海野徹

    ○海野徹君 理解は進んでいるという大臣の答弁なんですが、にもかかわらずこういうような問題が生じてくるというのは、結果として、やはり日本の検定制度に対するある意味では非難というか問題点を指摘しているということであって、これは内政干渉には当たらないんでしょうか。他国の検定制度を誹謗中傷するということは要するに内政干渉じゃないかと、そういう意見があるんですが、そのことについては、外務大臣どうなんでしょうか。
  61. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先ほども申し上げましたように、内政干渉というのは強制的に自国の意思に従わせるという行為であるという国際法上の定義に照らして言えば、私はまだ内政干渉だと断定するというところまでは申し上げられないと思います。
  62. 海野徹

    ○海野徹君 再修正を求めるというような言葉も入ってくるもので、非常に私としては気になることなんです。  先ほどの中国の問題でいうと、非常に中国は抑制的に報道をして抑制的な対応をしているように私は印象として受けているんですね。韓国の方が先へ進んでいる。中国は非常に抑制的に、その後を追ったかのように、先ほど言いましたように、いやこれは内政干渉をするつもりはないし、こういう問題で日中の友好関係、良好な関係が損なわれることはないだろうというようなコメントも出しているわけですから、中国の対応というのは日本にとって、今回、教科書問題について非常に抑制的であるというふうに私は印象として思うんですが、外務大臣、その私の認識をどう評価するか。それと、そういうふうに中国が今抑制的な対応をしていると大臣はお考えになっていらっしゃるか、それについてお考えをお伺いしたいと思います。
  63. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) この問題について、中国と韓国の対応を並べて単純に比較するということはできないと思います。  中国の態度が抑制的であるかどうかということまで、私はまだこの段階では申し上げられないという感じを持っております。中国はさまざまな問題を抱えておりますから、そのさまざまの問題にいろいろな対応をしているという状況の中でございますだけに、私は、この問題について今度は中国は非常に抑制的だなというふうに今の段階で言えるかどうか。あるいはまた、理解されているなら、それは抑制的であるなしではなくて、正当な評価をしていてもらえるんだというふうに評価をすべきだと思いますし、ここの評価は、まだちょっと評価をするのは早いように私には思えます。
  64. 海野徹

    ○海野徹君 外務大臣、先ほどのビザの発給の問題については慎重にいろんな情報を集めて対応すると。こういう問題についても、相手国からのいろんなメッセージが正面からも来ますし、横からも、斜め、上からもいろんな角度から来ると思うんです。いろんな層から来ると思うんです。そういうものをすべて情報を集めて、それを分析して、その本質はどの点にあるのかということをやはりつぶさに点検していただいて対応していただきたいと思います。  というのは、七〇%の方々が、あるテレビ局の調査だと、歴史教育に非常に疑問を感じているというのが直近の調査で出ました。これは大臣もその数字は聞いていると思うんです。私は、やっぱり歴史というのは主役は人間ですから、その人間に大変深くこだわっていくということが感性を磨くことになっていくんだろうと思いますし、日本人としての生き方、あるいは日本としてのあり方に深く関与していくんだろうと、そう思います。そういう人間の日常生活の累々とした蓄積というんですか、その大きさが私は歴史だと思っているんです。そういうことを日本人は今まで積み重ねてきましたし、いろんなほかからも文化とか歴史とかそういうものを受け入れてきた国だと思うんですよね。  七〇%も今の歴史教育に疑問を感じるという数字を含めて、外務省として歴史教育観というのは、やっぱり外務省としての歴史教育観というのを持って外交政策をいろいろやっているかと思うんですね、省としての。これは、外務大臣を含めて、ずっと外交政策上この歴史観というのはやっぱりあると思うんです。歴史認識の共有というのは、これは無理だと思うんですが、認識の違いをお互いに理解するということは必要だと思うんです。  そういった意味で、外務省の歴史教育観というものを大臣にお答えいただければ今お聞かせいただきたい。
  65. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私は、今、歴史教育について何かお尋ねにお答えをするのは少し僣越なような気がいたしますし、私自身にもそんなに深い知識がございませんが、日本外交にとって、あるいは今日の近隣諸国と日本との関係について言えば、私は、教科書の問題もありいろんな問題がありますけれども、やっぱりその一番の根本は歴史認識だと思います。その歴史認識、どういう歴史認識に基づくかということを、外務省としては外交政策を進める上で間違ってはいけないのではないかというふうに私は思っております。
  66. 海野徹

    ○海野徹君 時間がありませんからその点についてはまた後日議論をさせていただくということで、防衛庁長官にお伺いしたいんです。  今度海南島の周辺でアメリカの偵察機と中国の戦闘機の事故がありました。あそこはそういう事故に至るような状態が頻繁に起こっているというようなことを聞いております。一体、その海南島あるいはその周辺がどういうところでどんな意味を持っているのか、あそこで何が米中で行われているのか、そして今回の米中の摩擦が日米安保あるいは日米同盟にどういうような影響を与えていくのか、非常に抽象的な質問で本当に時間がないものですから申しわけないんですが、まずその質問をさせていただきたいと思います。
  67. 石破茂

    ○副長官(石破茂君) 委員指摘のとおり、極めて重要な地域だという認識は持っておるところでございます。それは、海洋資源もそうです、天然資源、漁業資源もそうです。それから南沙群島が非常に近いということ、そのようなことで地政学的にも極めて重要な地域であるというふうな認識を持っております。  そしてまた、今回おりました海南島には中国の海軍基地が存在をしておる、艦艇、航空機ですね。そしてまた、情報収集も非常に高い頻度で行っているというふうに考えるのが自然であって、アジア全体の平和ということを考えれば、我が国にとっても極めて重要な関心事であるというふうに思っておるところでございます。
  68. 海野徹

    ○海野徹君 この問題、偵察機が嘉手納、沖縄の米軍基地から出たと。日本も同じ偵察機を持っているということになると、しかも中国側が機体から一部何か取り出した、いろいろ分析を始めたんではないかというような新聞報道もあるわけなんですね。これは、いろいろ聞くところによるととにかく情報の宝の山の偵察機だということになっております。そうなると、その辺のシステムそのものがある意味では解析されていけば、日本にとって大変、あるいは日米にとってこの問題というのは今までのシステムを全部やりかえなくちゃいけないというようなところまで行ってしまうのではないかという懸念があるんですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  69. 石破茂

    ○副長官(石破茂君) 御案内のとおり、同じEP3ではございますが、米軍のEP3と私どものEP3は機体だけが一緒のものであって、中のシステムは全く異なるものを使っておるわけでございます。  したがって、今回、中国がそれを手に入れ、それを分解し、いろんなものを把握したとしても、それはかなりの部分が消去され、破壊されておるというふうに推測はするわけでございますが、そのことが日本の情報収集に直接の影響を与えるというふうには私どもは考えておりません。ただ、米軍のEP3を精密に調べました結果として、中国の情報収集能力がある程度上がるということは推測をするところでございます。  日本とアメリカとのEP3同士の共通の運用ということも事の性質上行っておりませんので、直接日本に対して何か影響があるかと言われれば、その懸念は少ないというふうにお答えをするところでございます。
  70. 海野徹

    ○海野徹君 通告をさせていただいた質問まだありましたが、時間がございませんですから、これで終了させていただきます。  ありがとうございました。
  71. 益田洋介

    益田洋介君 会計検査院にお尋ねいたします。  公正取引委員会は、九日、海上自衛隊が発注する護衛艦などの修理の入札をめぐって九六年度から九九年度まで談合が行われ、造船八社と言われておりますが、その結果、一社だけが残って他社がみんな入札を辞退した、結果的には競争入札が行われないで、言ってみれば随意契約が結ばれたということがありまして、これについて独禁法の違反であるということで警告を出しました。公正取引委員会動き始めた原因としましては、九九年十一月に会計検査院が競争性が十分確保されていないという指摘をして、入札が適正に行われ、つまり競争入札が行われて、随意契約でなければ年間約十五億円は節約できたはずだと、国費のむだ遣いを防衛庁と造船八社が共同して調整をし合ってしているんだと、こういう指摘がありました。  この経緯について、検査院、御報告願います。
  72. 関本匡邦

    説明員(関本匡邦君) お答え申し上げます。  防衛庁では、平成十年度に自衛艦の検査、修理、百三件を指名競争入札に付して契約を締結することとしておりましたが、これらについて検査いたしましたところ、すべての契約におきまして入札前に一社を除く指名業者のすべてが辞退しておりまして、防衛庁では辞退しなかった一社と随意契約を締結していたということでございます。このため、本件契約は競争性が確保されず、国は競争入札による利益を得られない状況となっていたということと、また予定価格につきましても、指名競争入札を前提とした算定方法を明確にしていないなどの事態が見受けられたわけでございます。  このため、検査院では、指名業者のすべてが入札を辞退する原因を究明するとともに、事態解明の方策を検討し、実行するなどして、指名競争入札制度本来の機能を十分発揮させる必要があるとして改善の処置を要求したものでございます。  これに対しまして、防衛庁では、平成十二年三月に標準指名基準を定めて指名可能な造船所を明確化するなどいたしまして、競争性の確保を図る措置をとっておりまして、その後の契約はこれに沿ったものとなっていることから、指摘の事態は是正されていると考えております。  なお、公正取引委員会との関係でございますけれども、本院では平成十一年に本件につきまして検査報告に掲記いたしますとともに、その後、公正取引委員会に対しまして本件の指摘内容について説明を申し上げたということでございます。
  73. 益田洋介

    益田洋介君 防衛庁長官、この点どのようにお考えでしょうか。  やはり、順番に仕事を回していくようにしないと業界内での調整ができない、そういうことで、場所の問題ですとかドックの設備の問題ですとかいうふうな議論もあるようですが、特殊な艦船はごく一部だと。通常はどこの業者でもこの八社であれば、佐世保重工だとか石川島播磨、NKK、三井造船、三菱重工、そういった一流の、本当に世界的にも技術力また資金力を持っている会社ですから。やはり、順番に回していくような調整を防衛庁が主導的にしなきゃいけないものなんでしょうか。──長官に聞いているんだよ。
  74. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 御質問ございました件でございますが、ただいま会計検査院からもお話しいただきましたけれども、平成十三年四月九日に公正取引委員会から、自衛艦の検査、修理の入札において、遅くとも平成八年度以降十一年度ごろまでの間、入札参加企業八社に独占禁止法に違反するおそれがある行為があったとして、今後同様の行為を行わないよう当該八社に対する警告が行われた、御指摘のとおりでございます。  私どもは、それに対しまして謙虚に受けとめまして、平成十二年一月に取りまとめました改善措置の着実な実施に現在努めておりまして、平成十二年度以降、入札状況の改善が図られてきているところでもございます。  防衛庁としても、本件入札において関係企業に独占禁止法に違反するおそれがある行為があったと、この指摘されたことを深く受けとめまして、今後さらに事態の把握に鋭意努めるとともに、再発防止に万全を期し、さらに一層の改善に全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。私からの長官指示というのを一両日中に、また再発防止のために出したいというふうに思っております。
  75. 益田洋介

    益田洋介君 長官、御案内のとおり、NECの調達の水増し問題、それから自衛艦の油の談合問題、それから機密の漏えい問題とか、次々にこういう不祥事が出てくるわけですよ、防衛庁。  長官、どのようにお考えですか。改善されるお考えはお持ちですか。
  76. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 私も、御指摘いただいたこともございますが、御案内のように、昨年の十二月に就任して以来、鋭意その内部というものについてあらゆる角度から勉強もさせていただき、また検討も重ねてまいっているところでございます。  そんな中で、今回御指摘いただいた公正取引委員会からの指摘、また昨年の十二月には総務庁の監察からの御指摘等々、数多くそのような御指摘をいただき、大変申しわけない気持ちでいっぱいでございます。  特に、防衛庁におきましては国の大事な税金を使わせていただいているという観点の中で、一層公明にして公平、そしてさらに透明度を上げながら、さらに一円でも安くして調達をしていく、そういう競争性を高めていくという努力を一層重ねていかなければならないというふうに思っているところでございます。  加えて、一月六日の新たな省庁再編成のその時期もございましたので、調達本部を改組いたしまして、従来に比較してより牽制ができる、またチェック機能が働くような組織の改善もとり行わさせていただいたところでございます。  いずれにしろ、私としても責任を持って、後ろ指を指されることのないような、そういうような対応に努めていきたいというふうに思っております。
  77. 益田洋介

    益田洋介君 会計検査院の、毎年正当な入札が行われていたら十五億円ずつ節約ができたという指摘があります。検査院はこれ試算をしたんだと言っています。  要するに、税金のむだ遣いについては防衛庁としてはどのように対応するおつもりですか。
  78. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 防衛庁に関してそのような指摘が出されました。私どもは、防衛装備品の調達におきましても、特別な設備や技術を要するなど競争原理が十分に機能しにくい一面があるために、発注者側においてもより一層競争環境の整備に積極的に取り組まなければならないというふうに思っているところでございます。原資は納税者たる国民の負担ということでございますので、独占禁止法等関係法令の周知徹底を図りまして、厳正かつ公平にこれを行いたいというふうに思っております。  なお、今回の事案につきましては、おそれがあるという判断で御指摘をいただきましたものですから、より一層の改善に努めていきたいというふうに思っておりますし、また防衛庁全体のごく一部でございますが、先般、別の案件に関しましては控訴させていただきまして、私ども防衛庁が当然お戻しいただく金額がまだ不足しているというような案件もございましたものですから、少しでも国の方に戻すような、そういう努力を重ねているところでございます。
  79. 益田洋介

    益田洋介君 この会計検査院の十五億円の損失という毎年の試算については、それでは了承されるわけですね。国庫に返還されるわけですか。具体的にどういうふうな処理をされるのか伺っているんです。
  80. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) ただいま、十五億円は節約できた試算があるという御指摘でございます。私どもの調べをいたしましたところ、平成十一年十一月の会計検査院の平成十年度決算検査報告におきましては、御指摘のような点の記載はないものと承知いたしているところでございます。
  81. 益田洋介

    益田洋介君 じゃ、この会計検査院の試算については賛同できない、しかしそういうふうな指摘をされている、であるならやはり対応はまたしなきゃいけないじゃないですか。どうされるおつもりですか。──長官が答えればいいじゃないか、そんなことは。国の税金をむだ遣いしているという話をしているんだよ。局長なんかに聞いていないよ。責任を持って長官、答弁してもらわなきゃ困りますよ。
  82. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 今、委員の御指摘は、平成十一年十一月の時点における会計検査院の平成十年度決算検査報告について言及されておられるのではないかというふうに私、理解しているわけでありますが、この点につきましては御指摘のような点の記載はないというふうに私ども理解をいたしてございますので、その点御理解をいただければというふうに思っております。
  83. 益田洋介

    益田洋介君 検査院、これについて御意見をお述べください。試算をしたんですね。結果として幾ら出たんですか。
  84. 関本匡邦

    説明員(関本匡邦君) 今御指摘の十五億円の試算ということでございますが、これにつきましては検査報告に掲記はしてございませんで、先ほど申しましたように、防衛庁の方で指名競争入札を前提とした予定価格の算定方法を明確にしていなかったということでございますので、艦船以外、支援船等の修理の場合の算定方法に基づきまして試算したものでございまして、これは全く仮の計算ということでございまして、この金額が即国損というようなことで指摘したものではございません。
  85. 益田洋介

    益田洋介君 もう一回、それじゃ試算をし直すおつもりはありますか。ぜひ私はしていただくべきだと思いますよ、これだけの疑惑が生じているんだから。検査院、責任を持って、防衛庁に任せておけないんだから。よろしいですか。答弁してください。
  86. 関本匡邦

    説明員(関本匡邦君) お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、仮に全部の指名業者が入札に入ったということを前提としておりますので、全く仮の姿ということでございますので、正確に幾らということはここでちょっと正確にはじくということはできないだろうと思っております。
  87. 益田洋介

    益田洋介君 何で検査院が検査できないんですか。そういうお立場なんでしょう。違うんですか。税金のむだ遣いについてきちっとした検査をするのがお立場じゃないんですか。何でこの場で検査しますと言えないんですか。
  88. 関本匡邦

    説明員(関本匡邦君) ただいま申し上げましたように、あくまでも仮定ということで計算しておりますので、全く入札に入らなかった業者の分まで正確に計算するというのは困難ということもございまして、私どもといたしましては、入札の状況が不適正と、すべて辞退する状況は不適正ということに指摘の本願が、本来の目的がございまして、それに付随的に仮に試算したとすればということでございますので、改めて試算ということをいたしましても正確な数字というのはなかなかはじくのは難しいのではないかというふうに考えております。
  89. 益田洋介

    益田洋介君 検査院がそういう状態ならば、防衛庁はきちっと試算をしてくださいよ。よろしいですか。何でそれ一社だけ残してほかの造船会社が入札から辞退するようなことになったのか、経緯をあわせて報告してください、当委員会に。委員長、よろしゅうございますか。
  90. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) はい。委員長の責任において防衛庁に、追っての一般調査の際に報告するように求めます。
  91. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございます。  次に、検査院、核燃料サイクル機構の検査についてでございますが、巷間言われているところ、二重帳簿が横行していた、既に二十年に上って二重帳簿が操作をされていたと。要するに、「もんじゅ」とかそうした研究開発費に充てられるべきものが名目を変えて職員の給与であるとかパソコンの購入費、それから建築物の修理費に流用されていた。この件についてこれから検査をされると思いますが、第四局長、こういった巷間言われている疑惑について視野に入れてきちっとした検査をぜひともお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  92. 有川博

    説明員(有川博君) お答え申し上げます。  核燃料サイクル開発機構につきましては、私どもこれまでも重点的に検査をしてまいりましたけれども、例えば平成八年度検査報告では、開発機構の規定上、部内限りで予算の流用などの弾力的な運用が可能とされている場合であっても、認可された予算趣旨に沿った適切な運用が必要である旨の本院の所見を述べているところであります。  したがいまして、御指摘の今回の新聞報道の内容につきましては、八年度検査報告と同様の視点及び当時の本院の所見がその後の予算執行に十分反映されているかどうかといった視点から調査を行っているところであります。
  93. 益田洋介

    益田洋介君 私がお尋ねしているのは、そうしたことを視野に入れて、そうした巷間伝えられている疑惑を視野に入れてきちんとした検査をしていただけるんですねと、その確認なんですよ。
  94. 有川博

    説明員(有川博君) 十分なお答えができずに申しわけありませんでした。  御指摘のとおり、新聞報道にあります内容につきまして、十分視野に入れて検査を行っていきたいと考えております。
  95. 益田洋介

    益田洋介君 荒木大臣、お疲れさまでございます。もうしばらくでございますので。  昨年七月の沖縄サミットの件につきまして、フォーサイトという家具とか映像装置などを納入した業者が一般競争入札で、実にその入札金額が予定価格の九六%から一〇〇%のときもあったと。こういうことで、約一億五千万円を受注したわけでございます。社員六人の会社でございます。これは松尾被告がサミットの事務局の次長だったころで、何らかの関与があるのではないか、こういうふうな話でございますが、この点について外務省調査委員会調査をされましたでしょうか。結果を御報告願いたいと思います。
  96. 荒木清寛

    ○副大臣荒木清寛君) これまでの調査の結果、フォーサイトとの契約を含め、サミットにおける物品等の調達については会計法令に基づき適正な手続により行われていると考えます。  この予定価格の事前漏えいについて報道があったことも承知をしております。フォーサイトに対しての漏えいということでありますが、当省の調査結果ではそのような事実は確認をされておりません。  例えば、フォーサイトを含む各社が当初いずれも予定価格以上の入札価格を提示し、入札が不調に終わりまして、複数回の入札後にフォーサイトが落札をしたというようなこともありまして、事前に予定価格を承知していたとは想定しがたいということも判明しております。  また、予定価格と落札価格が近いとの指摘につきましても調査をいたしました。この点、フォーサイトが落札をした価格よりもさらに予定価格に近い値段をつけた、入札をした企業があったという例も多いわけでありまして、フォーサイトが不自然に予定価格に近い入札を行っていたという実態ではなかったという理解をしております。
  97. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) もう時間が来ておりますから。
  98. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございました。
  99. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 最初に教科書の問題でお伺いします。  私は、三月二十二日の当委員会で、今国際問題になっている新しい歴史教科書をつくる会の教科書について、その内容からいって、政府がこれを承認、合格ということになれば重大な問題になるであろうということを述べました。その理由は、この教科書の内容というのは、政府が従来発表してきた一連の歴史問題についての見解、談話とかあるいは演説等で表明してきたところ、つまり侵略戦争と植民地支配についての反省、それと反する内容を持ったからであります。また、共同声明で合意しているその合意に一方的に反する内容の教科書を政府承認、合格させたということになれば、これは相手国の抗議が生まれてくることも当然だろうと、こう申し上げました。この予想どおりの事態、これは私は解決しなくちゃならない事態だと思います。  その際、私は、例えば韓国にしても中国にしても、日本の歴史教科書にいろいろな言明を行っていますが、これは決してこの教科書の内容が日本だけにかかわる問題ではないからであると思います。日本政府の従来の見解でも、日本は加害国、そして韓国や中国が被害国としての関係があったということをはっきり確認しての反省、謝罪、こういうことが述べられてきました。これらの国から見れば、加害者と被害者との歴史的関係があった。植民地支配するものとされるものとの関係、中国への侵略戦争を行った側と行われた側の関係があるわけで、この関係というのは、日本がどう総括して教科書に書くかという問題は、これは韓国自身の歴史、中国自身の歴史にかかわる問題でもありますから、これについて物を言うことが内政干渉だというふうには私は思いません。こういう問題をどう解決していくかということは、日本外交の上でも非常に重要な問題だと思います。  例えば、私は最近新聞報道で、ドイツとポーランドは共同で教科書をつくる努力を行っているというようなのも読みました。私は、教科書問題をめぐっても、また日本と韓国や中国など近隣諸国との関係がこういう共同作業ができるような関係に持っていくことは非常に必要なことで、一つの解決への方向を示しているものでもあるんではないかというふうに思いました。  政府として、この問題は放置できないとお考えになっているかどうか、どういう方向での努力が考えられるか、まずお答え願います。
  100. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今回の教科書をめぐるさまざまな意見というものは、一つ我が国の教科書検定の手順、手続というものについて十分理解が行き届いていない、あるいはそうした手順というものを認めないといいますか、そうしたものにあるいはなれていないと申しますか、そういったところからも出ていることは一つあると思うんです。そればかりとは申しませんが、そういうこともあると思うんです。    〔委員長退席、理事鈴木正孝君着席〕  したがって、先ほどもお尋ねがございました、御意見がございましたように、我が国の教科書検定の作業、手続とか手順とかいうものについての説明をさらにきちんと進める努力というものは必要だろうというふうに思います。  と同時に、私は歴史教科書について言えば、それぞれの国の間に合意ができればそれが一番いい。現に日本と韓国もそうした作業をやろうといってこれまでも提案があって、作業をやるべく計画はしたわけですけれども、そのときの作業をする、言ってみれば専門家の人選等でいろいろ議論があって、なかなかその作業が進まなかったということがたしかあったように記憶をいたしております。非常に残念なことであります。  少なくとも、歴史的事実というものだけは確認できる限り確認をしてはっきりさせるという努力は、私は必要だと思います。そうした努力がこれから先も、民間であろうとどこであろうと、もしそういう作業が行われるとすれば、それはやはり十分注意して見なければならない作業だというふうに私は思います。
  101. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 検定の手順等のお話もありました。私は、恐らく理解しがたいことだろうと思います、相手側から見れば。というのは、検定で最終的に承認を与え、合格と認めるのが政府だからです。だから、どうしてもそれは政府の意向が反映したものだと。それからまた、過去においては不合格になった本もあるということですから、そういうふうに思います。しかし、私はここでそれについて突っ込んで論議しようとは思いません。  一つだけもう一度確認しておきたい点は、一連の談話、国会での答弁等をずっと読んでいますと、教科書に、私が言う教科書というのは新しい歴史教科書をつくる会の教科書ですけれども、この内容というのは、従来政府が表明してきた歴史認識とは一致しないもの、それと異なる認識を持ったものなんだということを一生懸命で微妙な表現でおっしゃっているんじゃないか、こういうふうに受け取っておりますが、いかがですか。
  102. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) この問題につきましては、文部科学大臣あるいは官房長官からそれぞれコメントあるいは談話が出されております。そのコメント、官房長官のコメントの中には、「我が国の教科書検定制度は、民間の著作・編集者の創意工夫を活かした多様な教科書が発行されるとの基本理念に立つものであり、国が特定の歴史認識や歴史観を確定するという性格のものではなく、検定決定したことをもって、その教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない。」、こういうふうに言っているわけでございます。  このことは、例えば中学の歴史教科書も何種類かの、今回は八種類の歴史教科書ができているということでありますから、それぞれの教育技術を考えたり、あるいはそれぞれの考え方、あるいは事実についての関係をさまざまに工夫して書いたりという部分があって、八種類の歴史教科書がすべて同じものではないということは当然のことだろうというふうに思います。
  103. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 問題を次に移しまして、私は前回に引き続いて、二十一世紀の冒頭に日本外交・安全保障政策のあり方の基本を残された時間で一、二お伺いしたいと思います。  私は、ずっと繰り返し言ってきていることですが、日本外交政策、安全保障政策の基本に据えるべきものは国際連合憲章日本国憲法、その精神だというふうに今も思っております。  事のついでに、国連憲章国際連合への加盟ということに関連して外務大臣にまずお伺いしますが、国際連盟に日本が加盟した問題に関しては、責任ある人の記録として、国際連盟加盟は衷心の満足をもってしたものではなくて、加盟を拒否した場合における国際的孤立を恐れるから加盟したんだ、本心じゃないんだと、こういう文書がちゃんと残っております。これは国会図書館にもきちんとして保存されている文書ですね。国際連合の場合にもこういうことがあるのかないのか、これをまず確かめておきたい。本心から入っているのか、入らないと孤立することを恐れるという国際連盟の延長的要素があるのかないのか。
  104. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 議員指摘の一九五二年六月に国連、すなわち国際連合に加盟申請を我が国は提出したわけでございますが、その中で、日本国民は国際連合事業参加し、かつ憲章目的及び原則を行動の指針とすることを熱望している、また、日本国民の間には諸国間における平和及び協力を助長しようとする国際連合目的に対して挙国的な共感がみなぎっていると、こういうふうに述べております。
  105. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は、戦後、日本は国連中心外交ということを繰り返し言ってまいりましたから、一応そういうふうに受け取っておきましょう。  そうすると、国際連合憲章をやはり行動の指針として貫いていただきたい。この問題について、私は十分貫かれているかどうかということについてまた改めて論議したいと思いますが、もう一つの基本と言った日本国憲法に関連して若干お伺いさせていただきます。  防衛庁長官にお伺いしたいと思いますけれども、私は憲法について考える場合に、もちろん憲法の条文が基本ですが、同時に当時の憲法制定議会で行われた論議も非常に重要だと思います。憲法調査会でこういうふうに衆議院、貴族院の審議がまとめてあります。これを読んでみますと、今の時期に改めて考えるべきだと思ういろいろな論議が行われております。その一つとして、私はよく引用するんですが、幣原喜重郎さんが、私流に一言で言えば、戦争が文明を滅ぼさないうちに文明が戦争を滅ぼさなきゃいかぬという態度が表明されております。  防衛庁長官、この言葉、どのような感想をお持ちですか。
  106. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 委員から大変格調の高いお話をいただきまして、戦争と文明、そして戦争につぶされない前に文明が戦争をつぶす、滅ぼす、こういうようなお話、大変崇高な精神が宿っているというふうに考えてございます。  御案内のように、日本国憲法というのは私は高く評価していい憲法だというふうに思っておりまして、現在、御指摘のように、国会の中におきまして衆参両議院の中に憲法調査会が設置された、これも画期的なことだというふうに思っております。第百四十七回国会からスタートしたわけでございますが、将来の我が国の基本的なあり方を見据えて幅広くまた突っ込んだ議論が行われてきておりまして、さらにこれが進むということを期待いたしたいと思っておりまして、この憲法調査会の議論を十分見守っていきたいというふうに思っております。
  107. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 この憲法制定議会の論議の中で中心になっている一つがやっぱり九条の問題です。九条論議の中で、これも衆議院における初期の論議から、衆議院の中期、後期、貴族院と、論議の中身にはいろいろな発展があると私は思っております。  私はその中で、憲法九条というのを日本は守るだけでなく、これが世界の憲法になる方向で努力すべきだという論議が行われ、当時の吉田総理はそれに全面的な賛成を述べている。例えば「新憲法第九条の精神を世界各国に徹底せしむるやうにと云ふ御意見は洵に賛成であります。政府と致しましても極力機会ある毎に九条の精神を徹底せしむるやうに努力致す考へであります。」、こういうふうに述べられています。  私は、米ソ対決も終わり、ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約も解体した、こういう時期に、こういう憲法制定当時の論議、また政府が表明した中身というのは改めて検討に値するものでもあると思います。  当時、吉田総理が表明されたこの考え方についてはどのような御感想をお持ちですか。
  108. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 委員指摘の憲法九条に係る吉田元総理大臣の答弁でございます。  これは昭和二十一年の帝国憲法改正委員会においての発言だというふうに承っておるわけでございますが、憲法の基本理念でございます民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重については、憲法が制定されてから今日に至るまで一貫して国民から広く支持されてきたというふうに考えてございまして、私もその中の柱の一つであります平和につきましては、いかにして世界の平和を構築していくかということに腐心しているところでございまして、心は同じだというふうに考えております。
  109. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 その中身はまた改めて論議することにいたしまして、そういう憲法九条に反して、日本では警察予備隊に始まって自衛隊がつくられ、今は世界でも有数の軍事力を持つ軍隊になっております。  これと憲法との関係ですが、日本の警察予備隊をつくるのに参画したアメリカのコワルスキーという人が後日このことについて、「日本再軍備」という日本で有名になっている本の中で書いております。それによりますと、こう書いているんですね、警察予備隊の発足をこう書いている。  いまや人類のこの気高い抱負は、粉砕されようとしている。アメリカおよび私も、個人として参加する「時代の大うそ」が始まろうとしている。これは、日本の憲法は文面通りの意味を持っていないと、世界中に宣言する大うそ、兵隊も小火器・戦車・火砲・ロケットや航空機も戦力でない、という大うそである。人類の政治史上、おそらく最大の成果ともいえる一国の憲法が、日米両国によって冒涜され蹂躪されようとしている。 こういうふうに書いております。  これはコワルスキーという人で、私はこれを読んで、コワルスキーという人は大悪ではなくて小悪だったから心の痛みを感じたのだなと、こう思ってこの本を読みました。これを読んで、長官、どうお考えになりますか。
  110. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) オオワルスキーじゃなくてコワルスキーということでびっくりしちゃったんですけれども、御案内のように、連合軍総司令部において警察予備隊の創設に尽力された米軍人であるということを私も知りまして、勉強させていただいたわけでございますが、個々の著作の内容について政府として見解を述べることはいかがなものかなというふうに思っておりまして、差し控えさせていただきたいというふうに思うわけであります。  自衛隊の憲法上の位置づけについて申し上げれば、憲法九条について、国際紛争を解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使は禁じておりますが、一方、我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定しておらないというふうに理解をいたしておりまして、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊、この自衛隊は憲法の認めるものであるというふうに考えており、政府も一貫してこういうふうに答弁してきたというふうに思います。
  111. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それは、このコワルスキーの本の言っていることを合理化する理論ですけれども、ここではその論議は一応おきまして、防衛庁長官が三月十五日のこの委員会での所信表明で、「今日、防衛庁・自衛隊は、我が国のみならず、国際社会の平和と安定にも責任を有しています。」と述べられたとき、私は大変驚きました。私は、時間がありませんから、端的にお伺いしておきます。  この問題について、衆議院での答弁も読みました。その上でお伺いしますが、自衛隊の任務というのは、自衛隊法三条でまた防衛庁設置法でもきちんと、我が国が外国から攻撃を受けた場合の攻撃に対する防衛というふうに非常に限定されております。この所信表明というのは、日本防衛のみならず国際社会の平和と安定に責任を持っている、自衛隊の任務が変わったということをおっしゃりたいのかどうなのか。  それからまた、衆議院での答弁を見ますと、国際平和協力業務云々というようなことも述べられております。国際平和協力業務というのは、これは自衛隊法三条の自衛隊の任務を変えるものではなく、雑則の中に書かれております。どうして自衛隊法の三条でなく雑則に書かれたかということについては、私はこの法律ができるとき、いろいろな関係者から詳しく理由を聞きました。それと三条、本則で言う任務と雑則とを並立に扱うお考えなのかどうなのかということとあわせて、自衛隊法三条の任務をどういうふうにお考えになっているかお伺いします。
  112. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 私が先般、衆議院で御答弁申し上げた内容について言及をされたわけでございますが、基本的には我が国の憲法という大前提がございまして、その中に自衛権がうたわれてございますし、また私どもは専守防衛というそういった基本の考え方にのっとって対応させていただいているわけでございます。  一方、私ども、防衛計画の大綱というのがございまして、その中で大枠を決めて対処していくわけでございますが、この大綱においても国際社会の平和と安定に資するよう努めるものということも記されているところでございます。  私は、そういう観点から考えまして、我が国世界から信頼される国家となるためには国際社会で求められている責任と役割を着実に果たしていくことが必要であるというふうに考えておるところでございまして、今後とも国際平和のために積極的に取り組んでいく、そして国際社会に対する我が国の責任を果たしていきたいというふうに考えているところでございます。
  113. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 日本が国として国際社会の平和と安全に責任を持っていること、これは私も否定しない、事実であります。私は日本の責任において国際の平和と安全にもいろいろな形で協力していく必要があると思っております。しかし、防衛庁・自衛隊がそれを担当するかどうかということはまた別です。  自衛隊というのは国際的には軍隊とみなされております。軍隊による国際の平和と安全、安定のためにこの責任を有するということは、これは簡単に国際社会が受け入れる状況にはありません。これは、例えば亀井さんが在韓米軍が攻撃を受ければ自衛隊を派遣すると言っただけで、韓国では厳しい批判が出ているということを私はきょう報道で知りました。自衛隊が海外で働く問題については、そういう厳しい国際環境もあります。  そういうときに、私はもう一度確かめます。そのあれこれの問題は別として、自衛隊法三条に言う自衛隊の任務を変える所信なのか、それはそのまま生きているということなのか、その点絞ってもう一度お答え願います。
  114. 鈴木正孝

    ○理事(鈴木正孝君) もう時間ですので、簡潔にお願いします。
  115. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 委員指摘のように、国際緊急援助活動等、また国際平和協力業務の実施等、これに関しましては雑則任務というところに記載をされておりまして、私どもはこういう大きな法体系、ルールの中で対応していきたいというふうに思っております。
  116. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 三条の問題だけ。
  117. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 三条も引き続き維持し、変えないということでございます。
  118. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 終わります。
  119. 田英夫

    ○田英夫君 今、吉岡さんも言われましたが、報道によると、自民党総裁選挙の中で亀井静香さんが、在韓米軍が攻撃された場合、日本が集団的自衛権を行使する可能性がある、こういう発言をされたということに対して、韓国では、関連する国の立場を考えない軽率な発言だという強い反発が出ているということを新聞で知りましたけれども、このことは、きょうも皆さんが取り上げておられる外交的な諸問題、防衛の問題も含めて非常に重要なことだと思います。教科書問題、これももう既に同僚委員がいろいろ取り上げられましたが、私も現在の外交の非常に重要な重大な問題だと思っております。  韓国の金大中大統領も直接この問題に触れて発言をしておられますが、一つ気がついたことは、日本と韓国の報道は違うということです。同じ大統領が言われた同じ発言を、例えば日本のある新聞は、歴史問題は過ぎたことだが、韓国民にとっては重要な問題だと大統領が述べられたと、こう報道しております、産経新聞ですが。これに対して韓国の朝鮮日報は、この問題は両国国民間関係を決定づける根本的な問題と考える、こう言っておられると。重さが全然違うんです。  つまり、亀井さんの発言といい、今のことといい、本当に相手国の国民の立場ということを理解するかどうか、ここがキーポイントだと思います。先ほど外務大臣は友好ということの解釈を質問されて、お互いに理解し合うということをまず挙げられましたが、このことだと思います。友好というよりも、日本は周辺諸国と本当に友好でなければならない、どこの国とは友好でどこの国とは敵だという関係ではないはずなんですから、そういう視点をとると。  歴史教科書問題について一番大事なことは、日本が過去の歴史の中で何をしたかという真実をきちんと子孫に伝えるということ、教えるということじゃないですか、教科書の中で。  例えば、南京大虐殺ということがあった。私は一九七一年、ちょうど三十年前ですが、中国を訪問して一人で各地を歩きましたが、そのときに南京に行きました。五人の南京大虐殺の生き残りという人に一人一時間ずつ、一日かかって会ってその話を聞きました。途中で泣き出して、肉親が自分の目の前で殺される状況を話しながら、話せなくなって、しばらく休もうと言って休んでまた話を聞いていく、そんな状態の中で話を聞いたんですが、それまで既に長いジャーナリストの生活をしておりましたから、自分で言うのはおかしいですが、この人たちの言っていることが真実かどうかを判断する力が私になかったとは思いません。  また、こういう体験もしております。  今から七、八年前ですけれども、このことはこの委員会でも何度か取り上げましたが、韓国の高校生が夏休みに二十人ほどで先生に引率されて日本にやってきました。長野県の松代へ行った。その後、東京へ出てきて私のところを訪ねてくれました。  話を聞いたら、松代は学校の歴史で教わったとおり。つまり日本政府は韓国人、朝鮮の人たちを強制連行で連れてきて、そして松代の大本営をつくろうとしたあの地下ごうを掘らせた。何千人という人が死んでいった、こういう歴史の事実があります。そして、その学生たちと話していたら、非常に学校で教わったことを現地で見て感銘をした。同時に、その松代の近くの日本の高校を訪ねて高校生同士で交流をして、それはそれで楽しかった。しかし、一つ驚いたことがある。それは、松代近くの日本の高校生が、自分たちが教科書で教わった松代の悲惨な事実を知らなかったと。多くの朝鮮、韓国の人が死んでいったという事実を知らなかったと。このことを私に訴えておりました。こういうことをどう考えるかということじゃないんですか。結局、歴史教科書問題というのはそういう問題に触れてくる、結論は明らかだと思いますよ。  河野さんは今、外務大臣ですけれども、お若いころというか、もとはいわゆる文教族と言われた方ですから詳しいはずですから、どうしたらいいのか。  一つ外交的措置というのがあります。もう一つ日本国内における教科書問題の対応というのがあると思いますが、例えば再修正を求めるのか、あるいは検定制度を再検討するのか。あるいはさらに、これは私どもの仕事かもしれませんが、教師や父母の人たちと一緒になって検定を通ってしまったそういう教科書は使わないという運動を起こすか。いろんな方法があると思いますが、しかし、それは通ってしまって教科書として採用されていれば、外交問題としては消えません。  個人的な見解で結構ですから、外務大臣の、河野さんの御意見を伺いたいと思います。
  120. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 個人的な見解と問われても、やはり閣僚でまだおりますので、個人的見解を申し上げるべきでないと思います。  ということになれば、今回の教科書問題というのは、文部科学省が以前から行ってきた諸手続を踏んで教科書検定をやって、最終的に教科書としてこれはふさわしいと、修正すべきは修正して最終的にふさわしいものを検定したということでございますから、閣僚の一員としては、この教科書にはバランスのとれた間違いのないものが採用されているというふうに申し上げる以外にございません。  しかし一方で、外交的にはいろいろな考え方、いろいろな見方、それから個人の経験に基づく指摘、そういったものがあると思います。それらを、その個人の体験に基づいた事実というものを入れることが全体のバランスの中でどういうことになるかとか、教育的、教育技術的な問題でどういうことになるかとかという問題は、これは文部科学省で考えてもらいたいというふうに思いますが、私としては、教科書の問題はそういう手続によって処理がなされ、あるいは二国間関係は、戦後の問題として賠償問題その他は一切これも処理される。  そして、何らそういう問題はもうないということで我々は行き来もし、日常活動をしているわけですけれども、やはり個人の胸の中にはそうした問題が忘れられないし、そうした痛みというものはどうしても残っている。当時は言えなかったけれども今にして言いたいという気持ちを持った方もいらっしゃるんだろうと思うんです。それは韓国だけではありません、中国にもそうだと思いますし、さらにアジアの多くの国々にもそうした方がいらっしゃる。もっと言えばヨーロッパにすらそういう人たちはいるわけで、そういう方々に対して一体何ができるかということは我々が今考えなければならない非常に重要な問題だというふうに思っています。  政府としては、政府政府との間で問題はすべて処理されております。しかし、我々が人間の安全保障とか、あるいは個人に着目した問題というふうな視点を今後重視していくとするならば、やはり個人の問題としてそうした問題にどう対応するかということは考えなければならぬだろうというふうに思います。    〔理事鈴木正孝君退席、委員長着席〕  これは政府としての見解を少し離れて申し上げていることになるかと思いますが、例えばアジア女性基金の努力とか、それ以外にもあちこちの国でそうした傷を負った方、痛みを持った方々に、一生懸命その傷をいやすために日本人が努力をしているという姿も私は何人も見ておりますが、そうした仕事というものは非常にとうといものだと。少なくともそういう仕事の足を引っ張るような、そうした一生懸命努力をしておられるにもかかわらず、次々とまた違った事柄が起きるというようなことはあってはならぬというふうに思います。
  121. 田英夫

    ○田英夫君 もっともっとこの問題を議論したいんですが、やや関連するんですけれども、今、ジュネーブで国連の人権委員会が開かれております。  人権とか人道上の問題とかいうことが最近外交とか政治でしばしば使われる。使われるというか、隠れみのになったり、あるいは国連人権委員会が駆け込み寺のようになってみたり、ある意味では乱用されているように思います。  先ほども出ました李登輝前総統の訪日の問題についても、私は個人的には、彼と初めて会ったのがもう総統の時代ですが、いきなり入っていったら、田さん、あなたは大正十二年の生まれでしょう、同い年ですよと言われた。私と同い年ですが、その言い方が大正十二年と言うんですね。一九二三年とは言わなかった。大変親しい人の一人ですから、個人的には、体が悪い、それを治しに来られるという人道上の問題として査証、ビザを出してあげるという気持ちは人一倍強いつもりです。  しかし、私人という状態であっても、かつて二国論ということで、今彼が日本に来れば政治的な影響は極めて大きいということは事実ですよ。そして、そのことが与える国際的な影響というもの、特に中国に与える影響というものがあることは事実です。私は、涙をのんでと言いたいけれども、この際は拒否すべきだと思っているということを申し上げておきたい。  人権とか人道上の問題というのを隠れみのに使う恐ろしさ、あるいは逆に、これを理由にして戦争をするということをアメリカはやりかねない。こういうことも今後起こり得ることとして考えておくべきだと思います。  例えば、アメリカは中国の人権問題を毎年のように、ダミーを使ってですが、国連人権委員会に非難決議で出してくる。キューバについても同様の非難決議を出してくるというような形であの場を使っています。同時にしかし、韓国、北朝鮮は先ほどの日本の教科書問題をつい先日、あの場で出しました。  時間が来てしまいましたけれども、外交政治を進める上で人道とか人権という問題を正しく使う、でないと大変危険なことになるということが私の意見ですが、最後外務大臣、一言。
  122. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) やはり我々は、自由主義、民主主義と同時に基本的人権の尊重というものは極めて重要な、そして普遍的な価値を持つものだというふうに考えておりますから、この人権には人一倍関心を持たざるを得ません。  ただ、その人権がどういうふうに使われるか、あるいは人権もダブルスタンダードに使われる場合も多くございますし、それらのことについてはそれぞれのレベルで慎重に考えなければならないこともある。一度に高い人権を求めるということもなかなか難しいことでしょう。さらばといって、低いレベルの人権でいいやと言っているのもこれはまた無責任のそしりは免れないと思います。その辺の状況については、その国の国情あるいは歴史的経緯、あるいは将来の方向性、可能性、そういったものを全部ひっくるめてよく判断をしなければならぬというふうに思っております。  今御指摘の中国の人権状況に関する決議案につきましては、中国の人権をめぐる諸事情、国連人権委員会における決議案の内容をめぐる調整状況などを今じっと見ているところでございます。我が国の対応ぶりについてはまだ最終的に決断をしておりませんが、慎重に検討したいというふうに考えております。
  123. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。     ─────────────
  124. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) この際、政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交防衛等に関する調査のため、本日の委員会防衛庁防衛局長首藤新悟君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  126. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 防衛庁お尋ねいたします。  自衛隊は、全般的に見て、人は古い人はいませんけれども、建物とか装備というものは新しいものと老朽化したものが混在をしているような感じがいたしております。やっぱり戦闘集団というのは均一にしなきゃいけないので、そういう立場から二、三御質問をさせていただきます。  国賓等の輸送のための特別輸送飛行隊というのが木更津にあります。そこにスーパーピューマ、これはフランス製の飛行機ですけれども、自衛隊にはフランス製というのはなじまないと私は思うんですが、このスーパーピューマというのは三機あります。非常に古い飛行機であります。  製造されてから何年たちましたか。どなたか。
  127. 首藤新悟

    政府参考人(首藤新悟君) このスーパーピューマを総理府が受領いたしましたのが昭和六十一年の一月から三月にかけてでございますので、約十五年ほどたっておるということでございます。
  128. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 総理府から移管されてから十五年で、製造されてからどのくらいですか。
  129. 首藤新悟

    政府参考人(首藤新悟君) この機体は昭和六十年に製造されたと承知いたしております。
  130. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 非常に今の自衛隊というのは現場にしわ寄せが来ているわけですが、大変老朽化しておりまして、点検整備が非常に増大して部隊に過大の負担がかかっております。それで、今や事故がいつ起きても不思議ではないぐらいの状況です。これは国賓を輸送するわけですから、そういうときにもしそういう事故が起きたら、それこそ長官辞任されるぐらいじゃ済まないんではないだろうかと私は思っております。  これはさっきも防衛局長がおっしゃったように、総理府から移管されてきた、防衛庁予算で取得したものじゃないんですね。だから、特殊な生い立ちを持っているものでありますが、このスーパーピューマ三機、もう十五年以上たってパッチを当てながら飛んでいる。このままずっとしておくつもりですか、どうですか。これ長官、どういうふうにお考えになっているのか。
  131. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) 御指摘のように、現在三機のスーパーピューマを木更津でお預かりしている状況でございます。そして、私ども、その運用に際しての一つの判断基準というのは、飛行時間がどの程度消化されているのかなということでございまして、現在約四千時間前後だというふうに理解をいたしております。  加えまして、内装の汚れ等々に関しましては、国賓等の輸送に使うということもございましたので、昨年の九州・沖縄サミットにも使うということで、これはきれいにして、内装を改装していただいております。  それで、このスーパーピューマでございますが、飛行時間での比較をいたしますと、他のヘリの更新時期というのは大体飛行時間で五千五百時間ぐらい、また同型の民間保有機の飛行時間の場合は約五千八百時間程度というふうに考えてございまして、その比較からすれば、現時点でのピューマの機体そのものには問題はないのではないかというふうに考えておりまして、即刻更新をする必要はないと今現在は考えているところでございます。  ただ、委員指摘のように、重要人物が搭乗される等々その重要度、また現在、部隊に点検とか整備等々しわ寄せがあるという御指摘については、耳を傾けなければならないのかなというふうに思います。したがいまして、現在ではなくてその後継機について、今後の飛行状況や機体状況等を踏まえまして、よく関係省庁と調整をしつつ今後検討していきたいというふうに思います。
  132. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 今おっしゃいました五千八百時間というのは、これは技術研究本部その他で、その航空機に負荷をかけて経年変化状況をきちっと技術的に確定したものについてそういうことが言える基準もありますけれども、このフランス製の飛行機をそういう基準にいきなり、従来型の事務的な基準にあてがってやるということは、私は現場を見ていない人の机上の計算値であって、非常にこういう計算値に頼るというのは、物によっては違うわけですから、もっとこういう国賓を乗せて輸送する、そういう特別輸送機というものに対しては特段の注意を払う必要があるんではないかというふうに私は思っているんですが、いかがですか。
  133. 斉藤斗志二

    国務大臣斉藤斗志二君) これは非常に専門的、技術的なことでございますので、もしお許しいただければ政府参考人の方から答弁させていただきます。
  134. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 はい、どうぞ。
  135. 首藤新悟

    政府参考人(首藤新悟君) この機体の現状、それから先ほど大臣申されたように、ほかのヘリの更新時期、飛行時間五千五百時間、あるいは民間機の場合の飛行時間五千八百とかございますが、この我が方の五千五百といいますのは、先生にはもう釈迦に説法でございますけれども、ヘリの場合、大きな整備、修理におきましてローターを取りかえ、あるいはエンジンを取りかえる、そういったことで、安全性につきましてはその都度技術的には十分安全なように更新できるわけでございます。ただ、それが古くなりますとそういった修理費が非常に高くなってまいりまして、購入費と比べて修理費がある一定以上になってまいりますと、予算の効率的使用という面からそれはふさわしくないというような考え方で、従来、我が方のヘリコプターについてはやっておるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、今までに約四千時間程度飛んでいる、私どもの定めたのが五千五百時間。あと千五百といえばそう多くはないわけでございまして、そういったこと全般を踏まえまして、今後いろいろな面から検討してまいりたいと考えているところでございます。
  136. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 大きな事故が起きる前に私は申し上げているわけで、十分にその辺御検討いただいて、長官、ぜひお願いしたいと思っております。特にこの問題は、昔の総理府、今の内閣府が取得をして防衛庁に移管したわけですから、防衛庁としては大変迷惑な話だろうと思いますけれども、予算の取得については関係省庁と御調整いただきたいというふうに私は思っております。  次に、外務大臣にこの問題もお考えいただきたい。
  137. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ヘリですか。
  138. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 ええ、ヘリです。よろしいですか。
  139. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) このヘリコプターは確かに国公賓の輸送に使うということでございますが、いずれにしても航空機の維持管理は、これは一元的に防衛庁お願いをして防衛庁でやっていただいていることでございまして、私どもがこの問題にどういうふうにかかわるかというのはよく防衛庁とお話をさせていただきます。
  140. 田村秀昭

    ○田村秀昭君 外務省も、要人訪問支援室というのはなくなりましたけれども、非常に多額のお金を詐欺されたというふうに聞いておりますので、そういう点も含めて、そういうお金があればもうこういうのを何機でも買えると思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  それから、台湾の李登輝前総統の日本に入国したいという件につきまして、私はぜひ、人が来たいと言っているわけですからどこの人でも、日本の国は主権国家ですから、もう前々から、なぜビザを出さないのか、総統のときでもいいじゃないかと。何もそういうことを、主権国家が来たいという人を拒否する必要は全くなくて、私は人道的とかなんとか申し上げているんじゃなくて、もう前々から、来たいという人を拒否するのは自由な国でないなというふうに思っておりますので、これは外務大臣に強くお願いをしておきます。  質問を終わります。
  141. 服部三男雄

    委員長服部三男雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時三十六分散会