○松島
分科員 予算委員会で初めて質問させていただきます自由民主党の
松島みどりでございます。
まず最初に、年金積立金のことしの四月から始まります自主運用のことについてお伺いしたいと思っております。大きく分けて二つ、危険なんじゃないかという、その部分のことについては
局長さんで結構なんですけれども、責任のとり方とか、どういう方が担当されるのか、そのあたりはできれば
大臣にお答えいただきたいと思っております。
それで、この自主運用、これまで、財務省の資金運用部に預託されて、財政投融資の原資として使われてまいりました厚生年金と
国民年金の年金積立金ですけれども、ことしの四月から、
厚生労働省が全額金融マーケットで自主運用することになりました。厚生保険特別会計によりますと、
平成十二年度末におきまして、資金運用部に預金、現金で預託してありますのが、百三十六兆八千二百八十六億円でございます。この預託は期間七年でございますから、順次七年かけてこれが毎年戻ってくる、七年後に全部自主運用ということになるんだと思います。
この二月二十七日に
社会保障審議会が答申をされました。厚生年金保険及び
国民年金の積立金の運用に関する
基本答申という答申が出ているんですけれども、これによりますと、七年後、
平成二十年度の資産配分が
基本ポートフォリオという形で目標値が定められております。
これで見ますと、もちろんそれぞれについて許容される乖離幅が示されてはいるんですけれども、一応の基準といたしまして、国債や財投債など国内債券が六八%、そして国内株式が一二%、外国債券七%、外国株式八%、こういったような
基本の数字が示されております。
この中で、年金給付に使う資金でありますことを考えますと、国内外の株式と外国債券に三割近くを充てるということは、この運用は大丈夫なんだろうかと素朴な疑問を感じる次第でございます。運用がうまくいくかどうかというよりは、最低限、安全確実な運用となるんだろうか、そういうようなことを非常に危惧しております。
そこで、幾つか質問があるんですが、この答申の方には
基本ポートフォリオが載っていまして、そして目標の利回りを全体で四・五%とするという形しか載っていないんですが、何らかの形で発表がされましたのか、朝日新聞のきのうの記事によりますと、それぞれの期待収益率というのを出されております。
委員の方も、若杉
分科会長もそれを大体認められているようなので、これにのっとって質問させていただきます。
例えば、国内債券の期待収益率を四・〇%というふうにしています。これは過去二十七年間の実績をもとに計算しているとこうなるということなんですが、現在の十年の長期国債の利回りは一・四%程度だと思いますので、余りにも差が大きい、こんなふうに大きく見積もって安全なんだろうか、そういうふうに思えて仕方がありません。全体できちっと運用結果が目標四・五%にならなきゃいけないという前提のもとに組み合わせて数字をつくり上げたポートフォリオじゃないか、そういう気がして、非常に危険なことを私は思っている次第でございます。
そしてまた、年金資金運用
分科会の若杉会長は、国債も償還時までずっと持っておくのじゃなくて、ずっと持っておきましたらそれはそれなりに安全なんですが、そうじゃなくて、市場原理を活用して売買もするべきものである、財投改革というのはそういうものだ、そういうふうにおっしゃっています。これはやはりちょっと危険なんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
もちろん運用の話は、単に
厚生労働省だけの問題じゃなくて、これまで財投という経緯があるわけですから財務省、さらには簡保の運用とか、総務省のこととか、いろいろ広がる問題ではございますけれども、年金の基金のことだけで伺わせていただきますと、やはり年金積立金の運用というのは絶対にハイリスク・ハイリターンであってはいけない、安全確実なものでないと
国民全体の将来にかかわってくるものだ、そのように考えております。
その中におきまして、国内の株式というのは、長く持っていれば株が上がるというのはこれまでの幻想であったことは、この何日か、今の
現状を見ていると明らかでございます。そして外国の債券、これは米国債などはもちろん為替のリスクもございます。そして外国の株式に至りましては、為替リスクプラス株価が上がった、下がったのリスクがある。こういうものを合わせて三割近くポートフォリオを持つということは正しいんだろうか、そういうことが非常に心配になる次第でございます。
アメリカでは二年ほど前に、一九九九年の初めに、クリントン大統領が公的年金積立金の株式運用の解禁を提案されました。それについていろいろな議論が起こりまして、FRBの議長ですがグリーンスパンさんが、
政府が市場に介入するのは好ましくない、また株価が下落すれば年金財政が不安定になるというふうに反対して、結局見送られた経緯があります。
例えての例でございますけれども、自分の老後に置いておくお金がぎりぎりでかつかつで、絶対安全でなければいけないと思う個人の場合に、三割近くも国内の株だとか外国の債券、外国の株式に充てないのじゃないか、国債だとか国内の電力債だとかそういう安全なものにしか使わないのじゃないだろうか、私はそんなふうに思います。これは、年金の運用について、こういう経済学者の市場原理を大事にする理論にのっとったままでいいのだろうかという疑問でございます。
これと関係があるのですけれども、今回の審議会の答申の中にも、責任体制の明確化、そしてまた情報公開の徹底、この二つの項目があります。これについてですが、責任体制に関しては、「運用に関わるすべての者について、受託者責任(忠実義務及び善良なる管理者としての注意義務の遵守)を徹底する」というふうになっております。
厚生労働省の職員の方、公務員でございまして、善良な方だとは私も信頼しておりますし、義務に対して忠実な方だとも信頼しているのですが、
厚生労働省におきまして、優秀な、有能なファンドマネジャーなどという方が養成されているのでしょうか。これだけ莫大な資金の運用というのをどういう方が担当されて、どんな判断と責任でなされるのでしょうか。
これは
厚生労働省の人が全部やるのじゃなくて、民間の金融機関に投資信託とかいろいろな形で任せられるというのかもしれません。その場合は、どういう基準でこの会社が安全だとかそういうことの見きわめを立てられるのか。これまでと異質な、何といいましても公的な部分がこういう運用をするわけですから、そのあたりの担い手というものが非常に気になりまして、質問させていただきたいと思います。
そして、この情報公開、これも大事だと答申は述べているのですが、情報公開というのは、どういう投資をして利回りはどうだったのか、目標に対して許容される範囲だったのかというようなことは、どれぐらいの頻度、つまり年に一回とか半年に一遍とか、どういう頻度でどういうような方法で公開、ディスクロージャーされるのでしょうか。
そしてまた、損失が出た場合には、これは
国民全体の損失になるわけですけれども、どなたがどういう形で責任をとられるのか。民間の会社ですと、恐らく特に外資系はそうですけれども、こういうファンドを取り扱う方は、これが非常にもうかれば、ボーナスも上がるし非常にいい処遇を
受ける。一方、さんざんなできばえだったら、左遷されるとか降格されるとかボーナスがほとんど出ないとか、会社自体も危なくなるし、本人も危なくなります。ずっとプロの
先生が隣にいらっしゃるのですけれども、そういうことになると思います。
それを考えましたときに、
厚生労働省の役人の方がどういう形で責任を持ってなさるのか、そのあたりのことを伺いたい、かように思います。