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荒木参考人 お答えを申し上げます。
まず、
自賠責保険におけるいわゆる払い渋りと言われている問題でありますが、これは、具体的に申しますと、
自賠責保険におきます
保険金支払いの基準というのがございまして、
倉沢参考人もおっしゃいましたが、
自賠責保険の
基本補償という
性格上、そして、なるべく迅速に
保険金支払い手続を済ませるという必要上、
保険金支払いの基準が国によって定められておりまして、各
保険会社はこれを守っていくという体制になっております。比較的定型的な基準になっております。
この基準に照らして、現実の
保険金支払いの額が下回っているじゃないかという御指摘がかつてございまして、当時の運輸省においていろいろ点検をなさいまして、幾つかの例が指摘を受けたことがございます。私
どもは、そのときに、その原因についていろいろ調査をいたしましたが、結局、事実の確認でありますとか、あるいは
支払い基準の解釈でありますとか、そういう点での錯誤に近い、あるいは計算ミスに近いような現象が多かったかと思いますが、いずれにいたしましても、その処理をいたします
損害保険会社の内部での点検が必ずしも十分ではなかった、あるいは自算会調査事務所の内部における点検が必ずしも十分ではなかったということが指摘できるかと思います。
こういうことを防止する上で必要なことは、結局、この担当する人たちの教育といいますか、研修ということに尽きるわけでありますけれ
ども、今回の自
賠法改正におきまして、この
支払い基準の
法律上の位置づけが明定されたことと、
保険会社の遵守義務もまた
法律上明確になるということもございますが、さらに重要なのは、
保険金支払い基準を、
保険金請求を受けた時点とそれから支払う時点において、
被害者なり被
保険者なり、
保険金を請求された方に、どういう基準で払いますよ、あるいはどういう計算でこういう
保険金になったんですよということを書面で説明をしなければならないということになってまいりました。この点が私は今回の
改正の中では大変大きいと考えております。
そういうことを一面で行いながら、基本的に
保険会社なり自算会調査事務所の担当の人たちの教育訓練をさらに徹底するということで、この種の錯誤といいますか、そういうことに基づくミスは防げる、決して故意に
保険金を少なく払うという意図的なものではなかったのではないかというふうに私は信じておりますけれ
ども、今後の
対策としてはそういうことが考えられると思っております。
それから、
死亡事故の方が傷害
事故よりも無責の割合が高いじゃないかということで、いわば、俗に言われます、死人に口なしじゃないかという御批判があるわけでありますが、
自賠責保険の調査をやっております自算会調査事務所の基本的な
考え方は、
加害者の証言だけでしか物事が判断できないというようなケース、
死亡事故の場合に時々そういうことがあり得るわけでありますけれ
ども、そのときにそれを
理由にして
被害者に不利な取り扱いをしてはいけないということを基本的な
考え方として持っておりますので、いわゆる、俗に言うところの、死人に口なしというような批判については必ずしもそういうことが広くといいますか、この
自賠責の損害調査の上で行われているとは私は思っておりませんが、なぜ比率が高いか、つまり傷害事件と
死亡事件で、無責といいますか、
保険金が払われないケースがどうして
死亡の方が多いかといいますと、これはもう
皆様方よくおわかりだと思いますが、どうしても
死亡事件というのは、例えば交差点での信号無視でありますとか、あるいはセンターラインを越えて衝突をするとか、あるいは停車中の車に追突をするとか、そういう
事故の類型が多いわけであります。傷害は件数も大変多いわけでありますけれ
ども、いろいろなケースがございますが、どうしても
死亡事件の方が比較的そういう
加害者の一方的な過失で
事故が起きるというケースの割合が傷害事件よりは多いだろうというのは容易に推定できるわけであります。
しかしながら、現実にそれじゃどういう判断で
自賠責保険の無責、有責を判断しているかといいますと、これは自
賠法の規定に基づいておりますが、運転する側に過失が全然ない、それから運転しておりました車の構造上の欠陥が全然ない、それから車を運転しておった人以外の
第三者の過失に基づく
事故であるという三つの
条件を立証しなければ車の運転者は賠償責任を免れないということになっておりますから、
自賠責保険の有無責の判断もこの三つの
条件を基準にして判断をしているということでありまして、
被害者がもう亡くなられてその
事故の
状況がなかなか再現できないという場合に非常に不利に働くということは、私はあってはならないし、またそんなに多くあったわけでもないと思いますが、今後とも、特に
死亡事故の無責の処理というのは慎重な上にも慎重に判断をしていきたい、そのように考えております。
それから、
紛争処理センターあるいは日弁連の相談センターの相談
事案との比較でございますが、実は
紛争処理センターも日弁連の相談センターも、ちょっと
性格は違いますが、いずれにいたしましても、
自賠責保険だけの
保険金をめぐる
紛争に携わるということはございません。どちらの
組織も、
自賠責保険を含めた
交通事故全体の
損害賠償に関する
紛争の処理、要するに
任意保険を含めた全体の処理ということになりますが、それをやっておりますので、事
自賠責保険についての相談などがございました場合には、自算会に対する異議の申し立ての
手続を案内するとか、今後新しい
紛争処理機関ができました場合にはその
紛争処理機関の利用についてのアドバイスをするということにとどまるのではないかと思っております。
いずれにいたしましても、年間百二十万ぐらい
自賠責保険の
事故処理件数がございますけれ
ども、裁判に行くケースあるいは
紛争処理センターに持ち込まれるケース等々はいずれも非常に個別性が高くて、割とややこしいと言っては語弊がありますが、複雑な問題をはらんでいるケースがありまして、そのケースの解決の場合の賠償額の
水準と一般の
水準とはどうしても乖離するものがあるだろうと考えております。
ちょっと時間が超過しましたが、再
保険がなくなって十割を我々がお預かりして
運用するという体制になりますので、先ほ
どもちょっと触れましたが、私
どもは、お預かりした資金の
運用につきましては、安全性、流動性ということを十分に念頭に置きながら、なおかつ安定的な収益の確保ということを目指していきたいと考えております。
損害保険会社は、
自賠責保険の資金は、それだけ取り出した
運用ということじゃなくて、
運用の効率性という
観点から、その他の資産と一緒に
運用しておりますけれ
ども、今後、
運用割合がふえるに従って比例的に
運用コストまで上がったのでは余り意味がありませんので、
運用コストの削減についても十分意を用いていきたい、このように考えております。
以上でございます。