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大塚参考人 JR東日本の
大塚でございます。
本日は、当
委員会におきまして私
どもの意見を表明させていただく機会をちょうだいいたしまして、大変ありがとうございます。
当社といたしましては、
国鉄改革の最終目標でもある完全民営化ということが一日も早く実現できますよう、これまでも強くお願いをしてまいったところでございます。
このたび、
JR会社法の適用を除外するという法案を御
審議いただく運びとなったわけでございますが、この点につきましては、
国土交通大臣を初めといたします関係の皆様方の御尽力に対しまして、心から感謝申し上げたいというふうに思います。
本
委員会におきましても、迅速に御
審議を賜りまして、本法案を早期に成立させていただくことをお願い申し上げる次第でございます。
きょうはよい機会でございますので、
国鉄改革以降私
どもが重点的に取り組んでまいりました
経営課題並びにその成果というようなことにつきまして具体的に
お話し申し上げるとともに、本法案に関連いたしまして若干の意見と要望を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず、
JR発足後の成果でございますが、もともとこの
国鉄改革というのは、
鉄道事業を再生させるという目的を持って行われたわけでございまして、
JR各社が極めて競争の激しい交通市場におきまして、お客様のいろいろなニーズにこたえられるように、あるいは企業性を発揮した活力ある
経営を行えるようにということで、
民間企業と同様の
経営の自由と自主性というものを持つことが必要とされたものであります。
当社は、
会社発足以降の十四年間にわたりまして、この
国鉄改革の
趣旨というものにのっとりまして、自主自立の
経営、あるいは健全で安定した
経営基盤の確立ということに向けまして、全社一丸となって努力をしてまいりました。この間、特に
JRがスタートした数年間というのは、経済情勢にも大変恵まれましたし、また、お客様を初めといたしまして関係の皆様からの温かい御
支援というものもちょうだいいたしまして、おかげさまをもちまして堅調な
経営実績を積み重ねることができました。
少し具体的に
お話しさせていただきたいと思いますが、まず、安全性の問題でございます。当社にとりまして、この安全性の維持向上というのは、
経営の最も根幹をなすものという認識のもとに重点的にこれまで取り組んでまいりました。
鉄道運転事故件数について申し上げますと、発足初年度に比べましておよそ六割の減少という形になっておりますし、また、踏切事故につきましても三分の一程度にまで減少をしております。
また、サービスの向上にも力を注いで、列車の増発あるいはスピードアップ等を
実施してまいりました。
首都圏で申し上げますと、民営化後、およそ三〇%程度の輸送力の増強をいたしました。これはなかなかイメージがわきにくいんではないかというふうに思いますが、実はこの量というのは、関東の大手私鉄二社を新たにつくったのと同じぐらいの規模に相当いたします。こういう形で、利便性の向上、あるいは混雑緩和ということに努めてまいりました。
混雑緩和について申し上げますと、首都圏の朝通勤のピーク時の混雑率というものにつきましては、
会社発足時、スタートは二四〇%程度ございましたけれ
ども、現在では、およそ二〇〇%程度にまで低下をしておるという実情であります。
また、列車のスピードアップを進める、あるいはまた、山形や秋田、こういったところに新在直通の新幹線、いわゆるミニ新幹線というものを開業させることによりまして、東京から地方の主要都市までの
所要時間というのを大幅に短縮しております。
このように、安全性の向上でありますとか、お客様へのサービスアップというものに取り組むという
経営姿勢は、当社だけではなくて、これは
JR各社に共通したものでございまして、実際に
JR各社とも大きな成果を上げているというふうに考えております。
また、
国鉄改革時には毎年運賃値上げをするという
計画でございましたけれ
ども、この運賃値上げにつきましても、本州三社は、消費税に伴うものを除きまして一度も
実施をしないできております。また、三島
会社につきましても、
平成八年の一月に一度運賃値上げを行いましたけれ
ども、それ以外は行っておりません。当社といたしましては、これからも現行の価格水準をできるだけ維持していくということが、お客様のサービスにとって非常に大事なことであるというふうな認識を持っております。
地方ローカル線についてでございますけれ
ども、この地方ローカル線につきましても、
国鉄改革の際に、
地域に密着したきめ細かい営業
施策を展開するということによりまして、
地域の交通機関にふさわしい効率的な
経営体制を確立することとされておりました。当然、私
どもとしても、この考え方に基づきまして、健全
経営の維持というものに向けまして、それぞれの線区の活性化あるいは徹底した効率化といった努力を行ってまいりました。
JRのほかの
会社につきましても、同様の方針によりまして、地方ローカル線の
経営状態の改善ということに努めているところでございます。
なお、当社につきましては、廃止を前提に
国鉄から引き継いだ特定地方交通線以外の線区のすべてを存続しております。
長期債務の問題についてちょっと申し上げたいと思います。
この
長期債務につきましては、
国鉄改革の際に処理すべきとされた総額が三十七兆一千億ございました。そのうち、
JRが負担したもの、これは本州三社と貨物
会社が負担をしておりますけれ
ども、これは負担
能力ぎりぎりの範囲で負担させるということで、十四・五兆を背負ってスタートいたしました。
その後、この債務縮減に懸命に取り組んだわけでございますけれ
ども、
平成十一年度までに、
JR全体でおよそ三・六兆円、当社だけでもおよそ二兆円の
長期債務の返済を行っております。
これは仮定の話になりますけれ
ども、もし仮に
国鉄改革が行われていなかったとすれば、
国鉄のままでずっと存続したとすれば、この
長期債務というのはどの程度になっただろうかということを試算してみますと、恐らく三十七兆円の
長期債務は優に六十兆円を超す規模に膨らんでいたのではないかというふうに想定をされます。
そういう点で、国家財政の観点から申しますと、
国鉄時代は、俗に言う金食い虫といいますか、非常に国家財政にとっての大きな負担となっておったというふうに思いますが、改革後は、逆に、国家財政に何がしかの貢献ができるようになったということでございます。
数字で申し上げますと、
国鉄時代は、特に
国鉄時代の末期につきましては、毎年六千億円程度の補助金をちょうだいいたしておりました。しかし、
JRになりましてからは、逆に、毎年全体で約二千億円の納税をしております。当社だけをとりましても、一千億円程度の納税をしておるという形に、さま変わりになっておるということでございます。
また、この間、
JR株式の売り出しが行われましたけれ
ども、これによりまして、国には、全体で二兆七千億、当社の株だけでも一兆七千億の収入がもたらされております。
このように順調な実績を上げておるという観点から見ましても、完全民営化を
実施する条件というものは既に十分に整っておるというふうに考えております。
また、
JRの本州三社の
株式が上場された際の売り出し目論見書というのがございますけれ
ども、この売り出し目論見書の中にも、「できる限り早期に純
民間会社とする」という政府方針が記載されているところであります。
そういう
意味で、各社の株主の皆様方は、早期の完全民営化ということを前提に
株式を購入しているということも言えますし、実際に、国内外の多くの投資家の
皆さん方からは、完全民営化に対します強い期待というものが寄せられているところでございます。
国鉄改革は、言うまでもなく、二十世紀中の日本の行政改革の大きな柱であったというふうに考えます。一日も早くこの大改革の最終目標であります完全民営化を実現させていただきたいというふうに思います。
ここで、今回の法案にかかわる話を少し申し上げたいと思います。
一つは、今回の法案に定められております
指針についてでございます。
完全民営化に当たりましては、私
どもは、一切の規制を撤廃していただくということが原則であるというふうに考えておりましたが、この間、いろいろな方の御意見があるということも十分承知をしております。そうした御意見があるということを踏まえた上で、
JR会社法の適用除外と
株式の完全売却ということを最優先させる必要があるという観点から、今回の法案の枠組みについては、基本的にこの方向でぜひ法案を通過させていただきたいというふうに考えたものでございます。
指針で定めるとされている
事項につきましては、まだ具体的なものがあるわけではございませんが、一応考えられております内容につきましては、私
ども、当社といたしましては、あるいは
JR他社も同様であると思いますが、従来から十分な配慮をしながら
事業運営を行ってきているところであります。当然今後もこういった配慮をしていく所存でおります。
今後、具体的な
指針の内容が検討されていくというふうに思われますけれ
ども、これからの
利用者へのサービスというようなことを考えますと、こういったことに、より柔軟に対処していくというためにも、
指針で定める内容は必要最小限のものにしていただくようにというお願いをしておきたいというふうに思います。
最後に、
株式の完全売却についてお願い申し上げたいと思います。
今回の法
改正によりまして
JR会社法の当社に対する適用は除外されるわけでありますが、これとあわせまして
株式の完全売却が
実施されて初めて本当の
意味での完全民営化というものが達成されるのではないかというふうに考えております。したがいまして、現在、日本
鉄道建設公団が保有しております当社
株式五十万株につきまして、極力早期に売却していただくようお願い申し上げる次第でございます。
完全民営化が実現されました暁には、自己責任の原則に基づきまして、より一層の自主自立
経営を貫徹することが当然求められます。今後予想されます厳しい競争社会の中で、これまで以上に
経営努力を重ねまして、スピード感のある
経営を実現して、お客様、
地域社会、そして株主の皆様、それぞれから信頼をかち得ていくように努力するという強い決意を表明させていただきまして、私の意見表明を終わらせていただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。(拍手)