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川本参考人 川本でございます。
最初に、
委員長初め
委員の
方々に、私どもの
意見をこの場で陳述させていただく機会を与えていただきましたことを大変感謝いたしております。ありがとうございます。
私、
日本乗員組合連絡
会議の代表、議長を務めておりますが、
日本乗員組合連絡
会議は、
日本の定期
航空に働く五千四百人の機長、副操縦士、
航空機関士等、いわゆる運航のプロフェッショナルであります運航乗務員で構成する団体でございます。私も現在、ボーイング747の現役の機長でございます。そういう
観点から、今般、改正が予定されております
航空・
鉄道事故調査委員会の
改正案につきまして
意見を述べさせていただきたいと考えております。
清水参考人とダブります点はあえて省略して
意見を述べさせていただきますが、今般の法律の改正で、
事故の
兆候、重大な
インシデントが新たに
事故調査の
対象に加えられたことは、私どもの年来の要望でありまして、大変大きな評価をいたしたいと考えております。しかし、その他の部分につきましては、従来の
事故調査委員会をそのまま踏襲するという形になっておりまして、種々の点で私たちは
不足点を感じておりますので、その点について
意見を陳述いたします。
本年一月二十六日、扇国土交通大臣あてに、
航空事故調査委員会設置法改正についての要望を提出いたしております。要旨については、
独立性の確保、
委員会の機能の
充実並びに
警察庁長官と
運輸省の事務次官の間で取り交わされた
覚書の撤廃、この三点になっております。
なお、さかのぼりまして、約三年前になりますが、一九九八年にも、当時の川崎運輸大臣あてにもほぼ同
内容の提言を提出いたしております。
現在、
世界の空には、いわゆるジェット旅客機が約一万一千数百機飛行しているわけでございますが、あるデータによりますと、二〇一五年にはこの機数が約二万五千機程度になるのではないかと言われています。ジェット機の導入以来、
事故の
発生率が大変減ってきたわけでございますが、この十年前後は、その
発生率は減っておりません。これは百万回当たりに一回前後という極めて少ない割合でございますが、減っておりません。
そういう推移を考えますと、二〇一五年ぐらいには、
世界じゅうで一
年間に約五十回前後の大
事故が
発生するのではないかという予測が出されております。そういたしますと、単純に計算いたしますと、これは一週間に一回、
世界じゅうのどこかで大変大きな
事故が
発生するという計算になるわけでございます。したがって、いわゆる
事故調査並びに
事故の
防止というのが国家的なプロジェクトとして取り組まれなければならないというふうに考えておりますが、具体的に、
米国では、前ゴア副大統領を中心とした
委員会が提言を出しまして、約六百数十億円の予算をかけてNASAでその
研究がなされているというふうに私どもは聞いております。
現在の趨勢はそういうことでございますが、次に、具体的に、私たちは扇大臣に提出した提言をもとに当
委員会でぜひ具体的な
事故調査の改善をしていただきたいと考えておりますので、その要旨について説明させていただきます。
まず、
事故調査委員会の機能を
充実させていただきたいという点でございますが、これについては五点の具体的な提言がございます。
まず第一点目については、
事故調査能力を高めるために、
専門委員または
専門委員に準ずる者として、
航空の実情または
事故調査に精通した者を加えるようにお取り計らいいただきたいということでございます。
我が国航空事故調査の過去の事例を見てみますと、運航の
現場における実態等に精通した
専門家が不在であったため、
調査の過程で
基本的な誤りを犯した例が散見されております。こうしたことを
防止するためにも、何らかの形でパイロット、
航空機関士、客室乗務員、運航管理者、
整備、
管制、気象等の
専門家を
調査の実務に参加させていただきたいということでございます。ICAOのアネックス十三には、
事故調査官の資質について非常に具体的に触れておりますが、いわゆる極めて
専門的で、いわゆる
訓練を受けた人がその
調査に当たらねばならないとなっておりますが、現在の
事故調査委員会、いわゆる
運輸省の中のいわゆるローテーション
制度の中では、そういう
経験を積む機会が大変少なくなってまいります。そういう意味でも、
専門家の養成もぜひ図っていただきたい。
二つ目といたしまして、
事故調査委員会の予算を一層
充実すること及び臨時の予算執行が可能な
制度を新たにつくっていただきたいということでございます。
航空事故調査委員会の
年間の予算は約六、七千万円と聞いております。現在では、大型ジェット機のエンジンを一台分解するのには二千万円程度かかると言われておりまして、例えば四発の飛行機のエンジンですと、これらの検査だけでもほぼ
年間予算を消費してしまうというような予算規模でございます。極めて
不足しているのではないかと考えております。例えば、ニューヨーク沖で墜落いたしましたTWA八〇〇便という
事故がございますが、その
事故調査の過程では、残骸のほとんどを引き揚げたわけでございますが、それに費やされた費用は約三十五億円に上ると私どもは聞いております。
第三点目として、
意見聴取会を原則として開催するということに改めていただきたい、及び公述人を幅広く採用するように取り扱っていただきたいということでございます。
現在の
事故調査委員会設置法では、
意見聴取会開催の要件として、
委員会が必要と認めるとき及び
航空運送事業の用に供する
航空機の
事故であって一般的関心の強いものに限定しております。
委員会の裁量にゆだねる範囲がやや広過ぎるのではないかということで、原則として
意見聴取会は開催するんだというように改めていただきたいと考えております。
これまでの聴聞会は、搭乗者に死亡者が
発生した場合だとか機体が大破または焼けてしまう、焼損するなど比較的規模の大きな被災の場合に開催されていますが、今
改正案の眼目の
一つで、重大な
インシデントを
事故調査の
対象に加えるということになりますと、重大な
インシデントというのはそういうような事態に至らないので、今の
法案の取り扱いでは開催がほとんどされないのではないかというふうに考えております。
また、
意見聴取会に参加できる公述人を現在よりも幅広く、私どもは四点ほど考えておりますが、
事故の
原因関係者だとか遺族、被害者、それから
事故の
原因究明、
再発防止の
検討、被害の拡大
防止策の
検討などに関して
経験を有する個人、団体、それから四点目といたしまして、これら以外で
原因究明や
再発防止の
検討に寄与し得る
航空労働者や目撃者、
事故等の
現場の周辺の住民、その他の団体等もぜひ加えていただきたい。これらの手法は、
NTSBが現在でも
事故解明の手順として取り入れている手順でございます。
四点目といたしまして、
事故の再
調査の手続を法令に明記すること、及び再
調査実施の要件について、
事故調査委員会の裁量にゆだねられる部分を極力客観的な
要因となるように変更していただきたいということでございます。
現在の
設置法並びに運営規則では、再
調査の手続については明文が存在しておりません。
国際民間航空条約の第十三
附属書にはこれに関する明文規定がございます。日乗連は、過去、独自の
事故調査を行うことによって
原因究明の手がかりになる物的な証拠を提示したり、
事故調査委員会とは異なる具体的な
意見を表明した
経験を持っておりますが、これらは受け入れられておりません。再
調査手続に関する明文規定がないことが障害になっているとするならば、新たに規定を
設置していただきたいというふうに考えております。
具体的にはどういう場合かと申しますと、
事故調査報告書に記載のない、あるいは確認されていない証拠の存在が
報告されたとき、
事故報告書または
事故調査記録に触れられていない、もしくは見落とされている事柄が
指摘されたとき、三点目として
事故の
技術調査の手法や手続について異議が唱えられたとき、次に、
報告書作成後に新たな
研究の
成果として、
事故調査の過程の一部に疑問が呈されるなど、
事故原因究明の手続に
影響を与える事実が判明したとき等々でございます。
第五点目として、私どもでは現在ないというふうに考えておりますが、具体的な
航空事故技術調査マニュアルを作成していただきまして、
設置法の下位規定として位置づけていただきたいということでございます。これも、具体的にはICAOドキュメントとして第十三
附属書の下位規定として具体的に定められたものが存在しております。
以上が現在の
事故調査委員会の機能を拡充させていただきたいという中の具体的な提言でございます。
大きな二点目として、
事故調査委員会を各政府
機関から完全な独立
組織とすることということでございますが、これは先ほど
清水参考人が述べられた
意見とほぼ重複いたしますので、
内容については割愛させていただきます。
三点目については、旧
運輸省、警察庁間の
覚書を廃止し、刑事捜査が
事故調査の
支障とならないように新たな取り決めの確立を求めたいと考えております。
現行規定では、よく読みますと、警察の捜査が優先するようになっておりますが、警察本来の任務でございます
現場の保存だとか
人命の救助等に専念するような、新たな
視点での取り決めを結んでいただきたいと考えております。
時間が来ておりますので、これで私の
意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(
拍手)