○原田(義)
委員 大臣が着任されて既に二月がたとうとしております。
思い起こせば、小泉総裁を当選させるのに同志として全国を駆けめぐったわけであります。
田中さんが本当に全力投球をしておられた、そのことを私
どもも仰ぎ見るような
思いで、しかし地味なところでしっかりと支えて、おかげで小泉内閣が成立したわけであります。あわせて
田中外務大臣の就任になったということであります。
おかげさまで小泉内閣の支持率も大変高いところがございます。また、
田中外務大臣の
国民的人気もすごいものがあるわけでありますけれ
ども、カラスの鳴かない日はあっても
田中外務大臣の話題がない日はないというぐらい、
新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌、月刊誌に載っておりますが、ただ、それが手放しで喜べるかどうかというのはまた別でございまして、私はいろいろな論評を見ていますと、こういうことにまとめられると思っております。
一つは、
田中眞紀子外務大臣は極めて人気がある。しかし同時に、
外務省が完全に機能不全になっておる。三番目に、
田中外務大臣の
外交感覚に危機感を持っておる、本当に
日本の国益を守れるのか。こういう論調でほとんど統一されているんです。これは決してマスコミばかりの問題じゃなくて、私自身も、政治家として、また議員の同志として本当に深刻に思っておりますし、また、同僚の議員も、これは口に出す出さぬは別として、本当に
日本の国益は今の
外務省、
外交で大丈夫だろうかということを真剣に心配をしているのが現状でございます。
きょうは非常に活発な
議論が行われましたけれ
ども、しかし、事務局にちょっと調べさせましたら、この二カ月間、
田中大臣が一番露出度が高いんですけれ
ども、彼女の答弁のうち、大体一〇%から一五%しか
外交政策の
議論がないんですよ。残りの八五%から九〇%、大事なことなんですよ、大事なことだけれ
ども、ただいまの
鈴木委員のあれもそうだったかもしれませんけれ
ども、機密の問題、人事の問題、
外務省との確執、こういうことばかりが実は
議論の中に出てきておるわけであります。ここが実は、
日本の
外交、国益というのは大丈夫かと心配を与える
一つのあらわれではないか、こういうふうに思っております。
もとより、
外務大臣に着任して以来、まずは
外務省の改革をする、こういうことを打ち出されました。私は、この
外務省改革というのは絶対に必要である、こう思っております。
多くの
言葉はもう要りませんけれ
ども、例えば機密費問題
一つとりましても、あれだけの犯罪とも言える大事件を、最終的には松尾某という一人の、個人の犯罪に帰せしめた。一人として、上から下まで、職を辞して、職を賭して責任をとろうとした人は出てきていない。私は、そういう
意味では、
田中さん以外にこの
外務省改革をできる者はいない、また、それをきちっとやってくれているからこれだけの人気になっているのではないかなと。そういう
意味では、私は心から
田中外務大臣にフレーを送る人間ですけれ
ども、しかし、あわせて、
国民が心配しておるのは、それでは
外交の方は大丈夫かという心配をぬぐい去ることができないわけであります。
例えば、きょう朝の
委員会の質問の中でも、
土田さんが
中国の
調査船のテーマを取り上げました。さらには
ロシアと韓国の漁業
協定の問題を取り上げました。これについて、これほどの国益の問題はないと私は
考えるにもかかわらず、まず
大臣も、私は失礼ながら十分
認識ないようだし、後ろにはだれも来ていない。それで本当に私
どもは国益というのは守られるだろうか、こういうことをひそかに心配するわけでございます。世が世なら、極端に言えば、こんな
委員会を押しのけてまずは韓国と
ロシアに飛んでいって、その問題について机をたたいて抗議するぐらいなことをしなければならないぐらいの大きな問題なんです。
そういう
意味では、国益が本当に心配だというのは、私は偽らざる
国民の心配、不安なことではないかと思っております。
私は、結論から言いますと、こういう内務の問題、今
鈴木委員の話もそれになるかと
思いますけれ
ども、内務の問題というのは一日も早くきちっと処理をしなければいけないと思っています。
大臣の力でできるものはすぐにでも処理をして、そして持てる力、エネルギーをすべて一〇〇%、国益追求のための
外交に持っていかなければ、私はおかしいと思っております。だらだらだらだらそういう案件を引きずりながら、国益追求の
外交政策になかなか乗ってこられないというのは、私は大変心配をしておるわけでございます。
外交というのは、
大臣が何度にもわたって言われます。国益を追求するためにあらゆる英知を結集するのが
外交だ、それをつかさどるのが
外務省だ、こういうふうなことを言われるわけでございます。
私は、
外務大臣は
認識しておられるかどうかわかりませんけれ
ども、
大臣は、これはもうすさまじいプール、すさまじい資産、資源を今
自分で持っておられるわけであります。これは言うまでもありません。先ほどから出ましたよ。
日本には百八十七の在外出先機関がある、大使館とか領事館とか。まして五千二百七十九人の
外務省
外交官がおります。偉い人からそれほど偉くない人もおるでしょう。しかし、この人
たちをいかに活用するかが
大臣の仕事であって、私は、それをうまく活用すればすさまじい大きな効果に結びつくと。しかし、これをうまくやらなければきっと得るものは少ない、場合によってはマイナスになる、こういうことではないかと思うわけでございます。
そういう
意味では、その責任の処理、国内のいろいろな案件を処分する過程で、私はきちっとした処分をお願いすると同時に、しかし、この五千二百七十九人の
外務省の人間は悪いやつばかりではない、一握りの松尾みたいな人はいるでしょう、しかし、むしろ圧倒的大
部分の人は、
国家国民のために日夜を分かたず、
外交の最前線に立って、体を張って、命を削って頑張っているんだというようなことを
考えますと、今の
外務省の活用の仕方がはるかに足りないのではないかな、そういうことを
大臣、私は思うわけでございます。
ところが、
大臣、大事なことは、とにかく今の
外務省はモラールが落ちている、やる気が失われている、自信を失っている、こういう声が満ち満ちておるわけでございます。私は、こんなことでいいはずがないというふうに思っております。これをいかに活性化するか。生き返らせるのはやはり
大臣の仕事ではないかな、こう思うわけでございます。
諸君は皆優秀だ、やりたいようにやれ、
大臣室のドアはいつもあいている、責任は全部おれがとる。これは弱冠三十八歳のある新任
大臣がその役所に行って言った
言葉だそうであります。その
言葉によってその役所全体が奮い立った、こういうような話を聞いたことがございます。
私は、組織というのは、すべからく
一つの個体、人間の体にも比較できるのではないかと思っております。当然、
大臣というのは頭脳でございます。命令系統である頭脳、脳髄でございます。しかし、脳髄だけでは体、人間は動くわけにはいきません。当然のことながら、心臓や肺や胃や内臓、手足、さらには目、口、鼻、こういうものがどうしてもなければならないわけであります。こういうものを全部支える無限の数の細胞、これが一糸乱れず統一されて初めて
一つの大きな役割を果たすのではないかな、こう思うわけでございます。
そういう
意味では、
外交はもちろんしかりでございます。これをいかに統一をとって、そして他の個体、すなわち
外交であれば
アメリカとか
中国とか韓国とか、そういうものにいかに統一がとれてぶつかっていくかということが、私は、これから
外交の中でやらなければならない仕事、そしてまた
外務大臣の大きな仕事ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
四字
言葉に飛耳長目という
言葉がございます。これは吉田松陰の使った
言葉であります。飛ぶ耳、長い目というような
言葉でございます。言うまでもありません、彼が開明の
日本において、とにかく情報をきちっと収集する、そして遠い将来を見詰めながらきちっとした
対応をするというのが吉田松陰のこの
言葉の教えだったわけであります。それによって、高杉晋作、
伊藤博文、山県有朋、こういうようなたくさんの俊秀を世に送り出したわけでございます。
私は、
外務大臣の仕事というのはまさにこういうような、たくさんの情報を集めて、そしてそれをきちっとした方向に導いていく、これが大事なことではないかな、こう
思います。
決して私は
田中大臣がどうというわけではありません、まだまだこれからがその仕事でございますけれ
ども、しかし、私が
考えますのは、内政というか、国内の
大臣であれば、次の
大臣が
修正したり取り消したりすれば何とかその損害は最小限に食いとめられる、ところが、
外務大臣の場合、国益を一たん害すれば、到底それを
修正する、取り返すのは不可能である、こういうようなことが言われるわけでございまして、そういう
意味では、しっかりと、私
どもは大きな期待を持ってこの国の誤りなきを期待したい、こういうふうに思っております。
国際情勢全般に対する誤りなき判断、的確な判断、これをぜひよろしくお願いしたいと思っております。
一九四〇年、古い話でありますけれ
ども、第二次近衛内閣の松岡洋右
外務大臣、彼は
国民の大きな期待を一身に集めて
外務大臣として登場いたしました。しかし、彼は最終的に大きな誤りをした。それは、当時の
ヨーロッパ戦争においてとにかくドイツが必ず勝つ、そういうような観点から三国枢軸同盟に走ったわけであります。それによって起こった結果は、言うまでもありません。
これに対して、戦後の
日本を復興、繁栄に導いた吉田茂
外務大臣、これはもう言うまでもありません。
国際情勢全般に対する的確な判断をもって対処された、私はこういうふうに思っております。今度
大臣が、
日米基軸が
外交の一番大事な分野だ、こういうことを言われました。しかしこれは、当時の吉田さんの的確な判断を今日まで私
どもが踏まえているんだということをみんな
認識しているところでございます。
いずれにしましても、いかに
外交が大事かということをるる説明させていただいたわけでございます。
これは、言うまでもない、釈迦に説法であることは百も承知でありますけれ
ども、しかし、今度の二カ月の
外交、
外務大臣としての仕事を私
どもがつぶさに、応援をしながら、支援をしながら、しかし同時に、大事なことは、持てる資産、資質をフルに活用して、そして国益を追求する、こういうものに邁進をしていただきたい。そのためには、当然のことながら情報収集、そのためには専門家とか識者の
意見を十分に聞いて、しかし最後は、リーダーというのは孤独な判断を迫られるものであります。
大臣におかれてはもちろんそういうことは十分承知の上でこれからの問題を処理していただける、そういうふうに思っているところであります。
多少時間がはしょられましたので、もっと言いたいことはたくさんあるわけでございますけれ
ども、どうぞ
大臣におかれては、これから体をいたわられて、
日本の誤りなき方向を示していただきたい、心からお祈りとお願いを申し上げます。
最後に一言
大臣にコメントでもいただければありがたい、こういうふうに思っております。