○池田幹幸君 私は、日本共産党を代表して、
財政政策について
総理及び
大蔵大臣に
質問します。
二〇〇〇年もあと一カ月余りとなりました。二十一
世紀を目前にして、
我が国経済は、自公保政権のもとで、
国民にとって明るい希望の持てる状態にはありません。今なお九〇年代不況から抜け出せていません。しかも、
財政危機はますます進行しています。
個人消費の
回復、
国民生活優先の
景気対策と
財政再建の方向への政策転換は喫緊の
課題となっています。
先月、
森内閣が発表した
日本新生のための新
発展政策も、
我が国経済が
自律的回復に至らない原因が、なお厳しい
雇用情勢と一進一退の消費の
動向にあると分析しています。
このことを本当に認識して
景気の
回復を図るというのであれば、なすべきことは、なぜ失業者があふれ雇用が
改善しないのか、なぜ
個人消費が
回復しないのか、その原因を明らかにして的確な
対策をとることではありませんか。見解を求めます。
ところが、新
発展政策と
補正予算に盛られた政策では、肝心の雇用
対策、
個人消費拡大策については何一つ具体的な手だてをとらず、依然として
景気対策効果のない従来型
公共事業のばらまき、そのための
財政赤字の拡大であります。これでは
景気、
財政をともに悪化させ、日本
経済のゆがみを一層拡大させることにならざるを得ないのではありませんか。
以下、具体的に
伺います。
まず、
森総理が新
発展政策で
景気にいま一押しの
活力を加えると称して打ち出した政策重点四分野への
公共事業です。
補正予算の社会資本
整備費二兆五千億円のうち、一兆七千億円が
IT対策、環境
対策、高齢化
対策、都市基盤
整備対策として組まれております。ところが、この
中身は表題だけで、実際は、これまで物流効率化と称して進めてきた国際空港、港湾、自動車専用道路などの大型
公共事業に聞こえのよい看板をかけかえただけではありませんか。
関西空港はその典型です。
今、関西国際空港の増設、二期工事について注目が集まっています。日本共産党は以前から、一兆五千六百億円もの巨額
資金が注がれ、有利子債務も八千七十億円に上る二期工事の中止を求めてきました。
宮澤大蔵大臣も、このままでは累積赤字がたまるばかりだとして、二期工事の計画の見直しを求めたと伝えられておりますが、大きく狂った需要見通しにより、利子の支払いだけでも毎年四百数十億円の巨額となり、運営主体である関空会社の経営が悪化し、破綻が明白になっています。総務庁の行政監察でさえ、経営をめぐる環境条件にはかなり厳しいものがあると
指摘しているではないですか。その上、地盤沈下
対策費なども必要となり、
現状をリアルに見れば、二期工事を単に延期しても問題は解決しません。国と
関係自治体の
財政をますます泥沼に引きずり込むことは明らかです。
大蔵大臣、無謀な関空二期工事は中止すべきではありませんか。
IT革命関連
公共事業に至っては、これまで進めてきた道路、下水道等に光ファイバーをおさめる箱を埋め込む工事を促進するものです。しかし、光ファイバーケーブルの敷設では、日本は九八
年度末でアメリカの一・六倍、既に全人口の三分の一、県庁所在地などの都市部では半分以上をカバーしています。ファイバー・ツー・ザ・ホームの名のもとに光ファイバーを敷設しましたが、余りにも料金が高いために、家庭では全くと言っていいほど使われていません。既に
世界最高
水準にある光ファイバー網が使われていないという問題にメスを入れずに、やみくもに光ファイバーを入れる空間だけつくっても、
ITの推進になるどころか、むだな
公共事業を新たに
追加するだけです。
総理、看板をかけかえて従来型
公共事業を進めようというこそくなやり方はやめるべきではありませんか。
次に、
個人消費、雇用
対策です。
失業率が史上最悪の高
水準を続けている中で、勤労者の
給与総額は二年連続で減少し、ことしに入ってもふえていません。
個人消費の低迷の大きな要因がここにあることは明らかです。
総理、大企業の収益が
改善しているのに雇用も賃金も落ち込んだままなのは、なぜだとお
考えですか。答えは一つ、大企業がリストラ競争に走っているからです。大幅な人減らしを強行し、残った労働者にサービス残業の押しつけ、さらには正社員を減らして派遣労働者に切りかえて実質賃金を引き下げるなど、大企業のリストラは目に余るものです。
ルールなき資本主義とも言われるこの根本問題を放置して、職場から追い出された中高年者への職業訓練に四百二十九億円
追加した程度では、何の解決策にもならないではありませんか。
政府による失業者への支援、再雇用
対策の拡大は当然ですが、同時にこれ以上失業者をふやさない
対策が求められています。今こそ
政治の責任で大企業の身勝手なリストラに対する規制、労働時間短縮の法制化、違法なサービス残業の根絶に向かうべきです。
総理の
答弁を求めます。
年金、医療、介護など
社会保障の歯どめなき
負担増が
国民の将来不安を増大させ、消費を押し下げています。
個人消費
回復のためにも、医療、介護での
負担の軽減を図るべきです。
政府の新
発展政策にも高齢化社会への対応といった言葉は見られます。しかし、
森総理、あなたが進めているのは、その言葉とは逆に、お年寄りからの介護保険の徴収、医療保険改悪によるお年寄りの
負担増など、
国民を苦しめ
個人消費を冷え込ませることばかりではありませんか。このような逆立ちした
社会保障政策は直ちにやめるよう強く求めます。
最後に、
財政の立て直しについてであります。
森総理、あなたは
我が国財政の
現状をどう認識しているのですか。借金頼みの
財政運営がいつまでも続けられると
考えているのですか。
補正予算の
財源として、昨
年度の
剰余金も今
年度に見込まれる税収増分までもつぎ込んだ上、二兆円もの
国債増発をするならば、長期金利の上昇を招いて
景気の足を引っ張り、ひいては
財政をさらに悪化させるおそれがある、それほど
我が国財政は危機的
状況にあるという認識はないのですか。
昨
年度の
剰余金一兆円については、当然、
財政法の定めるとおり、少なくとも五千億円を
国債の償還
財源に充てるべきです。また、残りの五千億円については、
公共事業ではなく、有珠山、三宅島、東海水害などの被災者支援、介護、医療の
負担軽減、失業者のためのつなぎ就労などに充てるべきです。
剰余金をすべて一般会計に繰り入れるやり方は、
財政再建の
意思が全く欠落していることを示すものと言わざるを得ません。なぜこれができないのか、
総理と
大蔵大臣の
答弁を求めます。
宮澤大蔵大臣は、
財政演説で、
財政再建の
課題を
景気回復後に先送りする旨、表明されました。しかし、
政府が
財政再建の展望すら示さず先送りしていることが
国民の不安を増大させ、消費を冷え込ませていることを直視すべきです。展望を示し、
国民に
負担をしわ寄せしない
財政再建の方向に踏み出すことこそ、
景気対策としても重要になっているのではありませんか。
本当に
財政に対する真剣な危機意識があるのなら、
財政危機をさらに促進させるような大型
補正予算は組めないはずです。
宮澤大蔵大臣自身、三月の予算審議に際して、これが最後の積極予算とか秋の
大型補正は必要ないと明言していたではありませんか。これは
財政再建の重要性を認識してのものではなかったのですか。それがなぜ変わったのか、
政治責任にかかわる問題です。明確な
答弁を求めます。
今や、
公共事業優先の
財政運営が、
景気にとっても
財政にとっても有害であることは衆目の認めるところとなっています。従来型
公共事業を拡大するために
国債を増発する
補正予算は撤回し、雇用、
社会保障など
国民生活優先に切りかえるべきです。
森総理、それもできず、やる
意思もないのであれば、もはや
森内閣の存在そのものが
景気回復にとっても
財政再建にとっても障害物となっていると断ぜざるを得ません。速やかな退陣を求め、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣森喜朗君
登壇、
拍手〕