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2000-11-08 第150回国会 衆議院 法務委員会司法制度改革審議会に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    小委員会平成十二年十月六日(金曜日)委員会において、設置することに決した。 十月二十日  本小委員委員長指名で、次のとおり選任された。       太田 誠一君    笹川  堯君       杉浦 正健君    武部  勤君       山本 有二君    横内 正明君       佐々木秀典君    野田 佳彦君       日野 市朗君    漆原 良夫君       藤島 正之君    木島日出夫君       保坂 展人君    上川 陽子君 十月二十日  太田誠一君が委員長指名で、小委員長に選任された。 平成十二年十一月八日(水曜日)     午前十時開議  出席小委員    小委員長 太田 誠一君       笹川  堯君    杉浦 正健君       武部  勤君    横内 正明君       佐々木秀典君    野田 佳彦君       日野 市朗君    上田  勇君       藤島 正之君    木島日出夫君       植田 至紀君    上川 陽子君     …………………………………    最高裁判所事務総局総務局    長            中山 隆夫君    政府参考人    (法務大臣官房司法法制調    査部長)         房村 精一君    参考人    (司法制度改革審議会会長    )            佐藤 幸治君    参考人    (司法制度改革審議会会長    代理)          竹下 守夫君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 十一月八日  小委員保坂展人君十月二十七日委員辞任につき、その補欠として植田至紀君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員武部勤君及び日野市朗君十月三十一日委員辞任につき、その補欠として武部勤君及び日野市朗君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員漆原良夫君同日小委員辞任につき、その補欠として上田勇君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員上田勇君同日小委員辞任につき、その補欠として漆原良夫君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員植田至紀君同日委員辞任につき、その補欠として保坂展人君委員長指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  司法制度改革審議会に関する件     午前十時開議      ————◇—————
  2. 太田誠一

    太田委員長 これより司法制度改革審議会に関する小委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  今般、小委員長に選任されました太田誠一でございます。小委員皆様方の御協力をいただきまして、公正円満な運営を行ってまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。  司法制度改革審議会に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として司法制度改革審議会会長佐藤幸治君及び司法制度改革審議会会長代理竹下守夫君に御出席をいただいております。  この際、両参考人小委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人におかれましては、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  なお、議事の順序についてでありますが、まず佐藤参考人から三十分程度司法制度改革審議会審議状況について報告を聴取した後、小委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、佐藤参考人にお願いいたします。
  3. 佐藤幸治

    佐藤参考人 司法制度改革審議会会長を務めさせていただいております佐藤でございます。日ごろ先生方には、私どもの活動につきまして何かと御高配を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。  それでは、先ほどの委員長のお言葉に従いまして、三十分ほど少し説明をさせていただきたいと思います。  司法制度改革審議会審議状況等につきまして、お手元に配付した資料に従いまして簡単に御報告させていただきたいと存じます。なお、お手元の資料は、その詳細な内容や事細かな文章につきましては、当審議会の各委員の了解を得て作成したものではございません。当審議会を代表しまして、私と竹下会長代理の責任において、当審議会審議状況等について整理したものでございます。あらかじめお含みおきいただければ幸いでございます。     〔小委員長退席、横内小委員長代理着席〕  それでは最初に、これまでの審議状況、三十六回会議まででございますが、配付資料一ページ以下にございますけれども、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。  当審議会においては、平成十一年七月の発足以来、これまでに三十六回の会議を開催したほか、本年八月七日から九日にかけての夏の集中審議を行ったところであります。各回ともおおむね三時間半から四時間程度の時間をとって審議を行いまして、また、夏の集中審議では終日集中的な審議を行い、さらに、本年四月以降は毎月三回、月によっては四回もの会議を開催するなど、各委員には相当な御負担をお願いしておるところでありますが、毎回真摯に熱のこもった御議論をいただいているところでございます。なお、もう御承知かと思いますが、議事録も公表しておりますし、審議会の模様などは、報道関係者にモニターを通じてごらんになっていただいているところであります。  委員の構成でございますけれども、別紙一として配付してございますが、御承知のとおり、当審議会設置法の国会における御審議の趣旨を踏まえまして、委員数十三名の半数を超える七名の方々がいわゆる非法律家委員として選任されております。  当審議会設置法概要等につきましては、別紙二としてございますけれども、御承知のとおり、同法の国会における御審議の結果、所掌事務に関しましては、「審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民司法制度への関与、法曹在り方とその機能充実強化その他の司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する。」というようにされておりまして、当審議会では、その趣旨を重く受けとめて、司法制度利用者である国民の視点を常に念頭に置きながら審議を進めてまいりました。  審議経過等でございますけれども、昨年七月から十二月にかけては、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割についての議論、各界の有識者等からのヒアリング意見交換、これを踏まえた論点項目整理に向けた議論などを中心審議を行いました。そして、昨年十二月には、「司法制度改革に向けて 論点整理」、これは別紙三として配付してございますけれども、論点整理として決定、公表したところであります。  本年一月から四月にかけては、各論点を大くくりにまとめましたテーマ、これについては資料の一ページの中段に米印を付して掲げております、テーマごとに選ばれたレポーター役委員によるレポートをもとに行う審議を行ってまいりました。  本年四月末から五月初旬にかけての連休期間には、今後の審議参考に資するということを目的としまして、委員が三班に分かれて米、英、独、仏を訪問いたしまして、これらの国々における裁判官任用制度、陪審・参審制度法曹養成制度等実情司法制度改革の動向などを中心に各国の司法制度に関する調査を行ったところであります。その日程等につきましては、配付資料の六ページの下段に掲げております。  それから、海外実情調査の後、本年五月以降は、これまでにレポーターとなったいわゆる法律専門家である委員のほかに、経済界消費者労働界など、主としていわばユーザーの立場の委員によるレポートをもとに審議を行ってまいりました。  こうした審議のほかに、各地において、国民意見をお聞きするなどにより司法制度を利用する国民の視点をより深く理解するための取り組みとして、本年三月から七月にかけて全国四都市において地方公聴会を開催いたしました。また、地方の司法関係機関実情視察を行ったところであります。その日程等配付資料の六ページの中段に掲げてございます。  今後、十一月二十日に決定、公表を予定している中間報告取りまとめに向けた審議を行うこととしております。  概要、以上のようなことでございまして、そういう段取りで審議を進めてまいりましたが、次に、各テーマごとに、審議の結果を踏まえて取りまとめられた事項等中心に簡単に御説明申し上げたいと存じます。  まず第一は、「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法在り方」についてでございます。配付資料の一ページに記載してございます。  第十一回会議、一月二十八日でございましたが、この会議において、竹下会長代理レポーターとなって報告を行い、これに基づく意見交換を行った結果、司法機能充実のためには、まずもって人的基盤拡充が必要であるということなどについて意見一致したところであります。  その後、ユーザーの立場の委員によるレポートとこれに基づく意見交換、それから塩野宏東亜大学通信制大学院教授からの司法行政に対するチェック機能のあり方についてのヒアリング、それから法務省最高裁、日弁連による説明とこれに基づく意見交換などを行った次第であります。  こうした審議を経て、第二十五回会議、七月十一日でございましたけれども、その会議において、これまでの審議結果を取りまとめたところでございます。司法へのアクセスを容易にする観点から、民事法律扶助制度充実人事訴訟事件家庭裁判所への移管、民事訴訟充実迅速化のための計画審理の定着及び証拠収集手続拡充専門的知見を要する事件への対応強化、ADRの拡充活性化などについて意見一致を見たところであります。配付資料の一ページの下段に掲げております。  それからさらに、第二十四回会議、七月七日において、日本司法書士会連合会弁理士会、日本税理士会連合会、日本行政書士会連合会及び全国社会保険労務士会連合会関係者から、既に当審議会からの調査嘱託を受けて各会から提出していただいた結果報告を踏まえまして、隣接法律専門職種に関する説明が行われたところであります。  第二に、「弁護士在り方」についてでございます。配付資料の二ページでございます。  第十二回と十三回の二回の会議、二月の八日それから二十二日でございましたが、そこにおいて中坊委員レポーターとなって報告を行い、これをもとに意見交換を行った結果、法曹、特に弁護士人口大幅増員が必要である、それからまた、法曹弁護士の質、量をともに充実させる見地から、法曹養成制度の抜本的な検討が必要であることなどについて意見一致を見たところであります。  その後、夏の集中審議でのユーザーの立場の委員によるレポート隣接法律専門職種についてのレポート、それから日本弁護士連合会による説明、これまでの各委員提言内容等に基づく意見交換を行いました。  こうした審議を経て、第三十三回会議、十月の六日において、これまでの審議結果を取りまとめた次第であります。弁護士について、質、量ともに抜本的な拡充を図る、公益性に基づく社会的責務実践等充実強化を図る、活動領域の拡大をするということなどについて意見一致を見たところであります。配付資料の二ページの中段でございます。  第三番目は、「法曹養成制度在り方」についてでございます。  第十四回と十六回の二回の会議、三月の二日と四月十一日でございますが、ここにおいて井上委員レポーターとなって行った報告、それから第十五回会議、これは三月十四日でございますけれども、ここにおいて行った法曹養成関係者からのヒアリングなどをもとに意見交換を行いまして、その結果、現在の法曹養成制度は、二十一世紀の司法を支えるにふさわしい法曹を養成するという点で抜本的な改革が必要であるということ、法科大学院、仮称でありますけれども、以下仮称でありますが、法科大学院構想は、なお検討すべき点が多々あるものの、新しい法曹養成制度として有力な方策の一つであるということについて意見一致を見ました。  さらに、同構想の具体的な内容につきましては、その設置形態や法学部での教育との関係入学者選抜の方法、教育内容・方法、教育体制司法試験司法修習との関係などに関しまして専門的、技術的検討を行う必要がある、けれども、それらの専門的、技術的細目のすべてを当審議会審議することは、限られた期間内に司法制度全般にわたる多くの事項を審議する責務を負う当審議会としては極めて困難であるということから、例えば文部省大学関係者法曹三者から成る検討機関に対して協力を依頼し、その検討結果を受けて当審議会においてさらに審議を行うということにいたしました。  その後、法科大学院構想に関する検討を依頼するに当たって、その基本的な考え方等について審議を行った結果、検討依頼先等については、文部省に対して、法科大学院構想に関し、入学者選抜の方法、教育内容・方法、教育体制等についての基本となるべき事項等について専門的、技術的検討を依頼することといたしまして、その検討に際しては、当審議会から複数の委員が参画することにいたしました。そういうことで、当審議会の意向が反映される体制検討が進められるということとしたわけでございます。  こうして、当審議会からの依頼を受けて文部省に設置された法科大学院構想に関する検討会議からの検討結果の報告及び質疑応答、これらに基づく意見交換などの審議を経て、第三十五回会議、十月二十四日でございますが、ここにおいて、法科大学院を中核とし、法学教育司法試験司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備すべきことについて意見一致を見たところでございます。  さらに、第三十六回会議、十月三十一日でございますが、その会議において、これまでの審議結果を取りまとめた次第でございます。法科大学院制度設計に当たっては、公平性開放性多様性を旨とすること、資力が十分でない者が経済的理由から入学することが困難となることのないように、奨学金教育ローン授業料免除制度等整備すること、司法試験法科大学院の修了を要件とする新たなものに切りかえるとともに、やむを得ない事由により法科大学院への入学が困難な者にも法曹資格取得を可能とする適切な例外措置を講ずること等につきまして意見一致を見たところでございます。  第四に、「国民司法参加」についてでございます。三ページになります。  海外実情調査の前にあらかじめ問題点を含め実情を把握しておくことを目的としたレポーター役委員による説明が行われた後、第三十回会議、九月十二日では法曹三者からのヒアリング、第三十一回会議、九月十八日ではユーザーの立場の委員によるレポートなどに基づく意見交換を行いました。  その後、引き続き意見交換を行った結果、第三十二回会議、九月二十六日において、「国民司法参加」のうちの訴訟手続への参加について取りまとめを行ったところであります。  こうした審議を経て、第三十六回会議、十月三十一日において、これまでの審議結果を取りまとめたところでございまして、訴訟手続への参加につきましては、国民裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、訴訟手続において裁判内容決定に主体的、実質的に関与していくことが必要であり、主として刑事訴訟事件の一定の事件を念頭に置き、我が国にふさわしいあるべき参加形態検討するということなどについて意見一致を見たところであります。  第五番目は、「国民の期待に応える刑事司法在り方」についてでございます。配付資料の四ページでございます。  海外実情調査の前にあらかじめ問題点を含め実情を把握しておくことを目的としたレポーター役委員による説明が行われた後、第二十五回会議、七月十一日において、非法律家である委員によるレポート法曹三者からのヒアリング、これらに基づく意見交換を行いました。  こうした審議を経て、第三十二回会議、九月二十六日において、これまでの審議結果の取りまとめを行いました。刑事裁判充実迅速化の観点から弁護体制等整備争点整理手続整備証拠開示拡充等を行うべきこと、一定の条件整備を前提として公的費用による被疑者弁護制度を導入すべきことなどについて意見一致を見たところでございます。  第六は、「法曹一元」についてでございます。  海外実情調査の前にあらかじめ問題点を含め実情を把握することを目的としたレポーター役委員によるレポートの配付と各委員による検討が行われた後、夏の集中審議において、法曹一元その他関連する問題について意見交換を行いました。その結果、これまでの法曹一元かキャリアシステムかという概念にとらわれることなく、いわば法曹一元をめぐる議論の根底にあるものを目指そう、つまり国民が求める裁判官像を描き、そのような裁判官をいかにして確保していくべきかという広い視点に立って、さまざまな方策について検討すべきこと、裁判官の給源の多様化多元化を図ること、裁判官の任命に関する何らかの工夫を行うこと、裁判官人事制度透明性客観性を付与する何らかの工夫を行うことにつき意見一致を見たところであります。  さらに、この夏の集中審議の結果を踏まえ、第三十六回会議、十月三十一日において、給源の多様化多元化裁判官任命手続見直し及び裁判官人事制度見直しの三つの課題について、改革のための具体的な方策の検討方向性などを中心として意見交換を行いました。この結果、これらの課題について、それぞれ、これまでの議論の経過の整理などを行いまして、給源の多様化多元化については、裁判所法の運用の実際においては判事補が判事の主要な給源となり、裁判所法想定外の事態になっていることを改め、判事となる者一人一人について経験の多様化を制度的に担保する仕組みをどのようにしてつくっていくかを今後検討すべきことなどといたしまして、これまでの議論整理等を行って了承されたところでございます。  それから七番目に、「法曹人口」についてでございます。  夏の集中審議の第一日目及び第二日目の会議、八月の七日、八日でございますが、ここにおいて意見交換を行った結果、現在検討中の法科大学院構想を含む新たな法曹養成制度整備状況等を見定めながら、計画的に、できるだけ早期に、年間三千人程度の新規法曹の確保を目指していくという方向で意見一致を見たところでございます。  第八番目は、「裁判所法務省人的体制」についてでございます。配付資料の五ページでございます。  第十三回会議、二月二十二日において、司法人的基盤充実の観点から審議を行った結果、裁判官検察官等の人員の増加の必要性について意見一致しました。  そして、第十七回会議、四月十七日において、法務省及び最高裁判所のおのおのから、裁判所法務省人的体制についての説明が行われまして、これをもとに意見交換を行った結果、司法制度の直接の担い手である弁護士裁判官検察官の大幅な増員が必要であるという認識に加えまして、裁判所及び検察庁については、裁判官検察官だけではなく、裁判所書記官等裁判所職員及び検察事務官も増加させ、その体制を質、量とも充実強化しなければならないことなどについて意見一致を見たところでございます。  最後に、九番目に「中間報告」についてでございます。  第三十三回会議、十月六日において、中間報告に盛り込むべき内容に係る中間報告項目整理案について意見交換を行いました。そして、三十四回会議、十月十六日においてもさらなる意見交換を行いまして、この項目決定をしたところであります。なお、同日の会議後、中間報告項目決定を受けた会長談話を発表いたしました。  談話の中では、こういうことを申し上げたわけであります。  国民により利用しやすい司法制度を実現するには、司法制度を運用する質、量とも充実した人的基盤が必要であるとの認識から、中間報告項目としても、まず「法曹の質と量の拡充」さらに「弁護士制度改革」「裁判官制度改革」を掲げたこと、その次に、司法を支える制度的基盤拡充として、「利用しやすい司法制度」「国民の期待に応える民事司法在り方」「国民の期待に応える刑事司法在り方」を掲げたことなどに触れました。それからまた、「分かりやすい司法の実現」という項目を掲げたことに関しまして、司法制度国民に利用しやすいものであるためには、司法制度自体改革のみならず、片仮名文語体現代社会に適応しない用語を現代化するなど、基本法内容自体国民にわかりやすいものにする必要があることにも触れました。この項目の中には、用語等現代化にとどまらず、基本法内容社会経済の変化やそれに伴う新たな国民のニーズにも的確に対応したものとしていくことも含まれているというように考えている次第でございます。  さらに、談話の中では、中間報告において示す事項のうち、例えば司法人的基盤拡充基本法制の所要の整備など、早期に着手すべき事項については、当審議会として、内閣を中心とする関係諸機関において積極的かつ早期の対応をしていただくことを希望する旨、触れたところでございます。例えば、人的基盤拡充については、最高裁法務省さらには弁護士会において御尽力をいただく必要があると考えております。そしてまた、基本法制整備についても、法務省中心とする関係省庁に御尽力をお願いしたいというように考えている次第でありまして、その趣旨を申し上げたわけでございます。  今後の審議日程でございますが、配付資料の六ページに触れておりますけれども、冒頭にも申し上げましたけれども、今後、第三十七回、十一月十四日、それと第三十八回、十一月二十日の二回の会議にこの中間報告案をかけまして、十一月二十日に決定、公表を予定している中間報告取りまとめに向けた審議を行いたいというように考えている次第であります。  るる申し上げましたけれども、この司法改革の要点を最後にごく簡単に申し上げれば、こういうことではないかと私なりに理解しているところであります。  御承知のように、政治改革行政改革、地方分権推進等さまざまな諸改革が行われてまいりました。そういう諸改革は、要するに、憲法で言う個人の尊重と国民主権をベースに、活力のある自由で公正な社会を築こうということではないかというように理解しております。国、行政に依存しがちな体質から脱却して、豊かな公共性の空間を築こう、そういう考え方が一連の諸改革の根底に流れているのではないか。  比喩的に申せば、行政改革等の諸改革というのは、余分の付着物を取り去って、身体に例えれば心臓と動脈の機能を強化する、そういうことにこの行政改革等の諸改革のねらいがある。その比喩を使うならば、司法改革は人体にとって不可欠の静脈の強化。静脈を太くし、その機能を強化する。静脈をしっかりしたものにする。そして、その心臓、動脈、静脈を強めることによって、日本の国の力を高めるということにあるのではないかというように考えている次第であります。  改革の眼目として、先ほど幾つか申し上げましたけれども、司法改革改革の眼目は三つの柱から成り立っている。  一つは、人的基盤拡充であります。二番目に、制度的基盤整備でございます。そして三番目に、司法国民的基盤の確立、その三つに要約されるのではないか。先ほど申し上げた幾つかにわたる点もこの三つに集約されてくるのではないかというように思っている次第でございます。  早口で申し上げて、あるいはわかりにくいところがあったかもしれませんけれども、一応冒頭の審議経過等についての説明とさせていただきます。(拍手)
  4. 横内正明

    横内委員長代理 ありがとうございました。  以上で報告は終了いたしました。     —————————————
  5. 横内正明

    横内委員長代理 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、小委員各位に申し上げます。  質疑につきましては、一回の発言時間は二分以内となっておりますので、小委員各位の御協力をお願いいたします。  なお、質疑のある小委員は、挙手の上、小委員長の許可を得て発言を行い、また、その際は、所属会派及び氏名をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いします。
  6. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)小委員 民主党の佐々木でございます。  会長初め委員先生方、本当に、私どももその都度御報告も受けたり、また資料でも拝見したりしておりますが、精力的にお取り組みをいただいて、しかも核心的な部分についての幅広い御討議をいただいて、御努力いただいていることに心から敬意を表したいと存じます。また、二十日には中間報告が出されるということで、私どもも大変期待をしておりますけれども、ただいまの会長の御報告であらあら了解をさせていただいたところでございます。  それで、今の論点整理項目などの立て方についても、ほぼ私は同意はできます。特に、司法人的基盤整備拡充ということを非常に強調しておられる点は、全く私もそのとおりだろうと思っております。  ただ、心配いたしますのは、きょうは日弁連の会長もお見えですけれども、法曹人口を目標として年間三千人程度を確保したい、十年間で五万人ぐらい、弁護士などについても目標にしたいということを考えられているとお聞きしております。また、先般の弁護士会では、執行部からこれに沿う御提案があったようですけれども、大変な議論があって、議決についても相当弁護士会の会員の意見が割れているというようなことも聞いております。  私も実は弁護士なものですから、司法試験を経、例の司法修習の経験などもしておりますものですから、もう随分時間はたちますけれども、そういう自分の経験に照らしてみて、例えば司法試験の合格者というか法曹資格を取得した方が年間に、いきなり三千人ということにはならないかもしれないにしても、今よりも格段に多くなった場合に、司法改革の目標として掲げられている量的、質的な点で法曹人口充実を図るということになると、量的な点はともかくとして質的な点でどうなのかなと。やはり多くなれば質の面での低下ということが、司法修習をどうやって充実させていくかということも関連して、かなり心配が出てくるのではないだろうか。  そこで、法科大学院構想も考えられていますけれども、これについてはまだまだ宿題とされているようでございますので、この辺の心配などについて審議会の方ではどういう御意見が出ていたか、この辺をお聞かせいただければありがたいと思います。
  7. 佐藤幸治

    佐藤参考人 ただいまの御質問でございますけれども、法曹人口をふやさなければ、大幅に人員を増加しなければならないということは審議会委員共通の認識でございました。ただ、御指摘のように、質を維持しながらどうやって量をふやしていくのか、ここをめぐってさまざまな機会にさまざまな意見を交わしました。それで集中審議のとき、特にこの点、まさに集中的に議論したわけでございます。  なぜ三千人なのかという、まずその理由でございますけれども、この点については、現在の需要から見てどうかという発想をとるか、これから日本社会をどういう形にしていくのか、そういう長期的なスパンで見たときに司法はどういうように位置づけられるのかと見たときには、諸外国の例も参考にしながら考えたときには、やはり三千人ぐらいをまず目指そうじゃないかというところに結論がたどり着いたわけでございます。  さりながら、一気に三千人、来年からとか再来年から三千人というわけにはいきませんので、先ほど御紹介したように、法科大学院、やはりこの方策しかないだろうということでだんだん委員意見が固まってまいりまして、それで、法科大学院整備の状況を見定めながら、できるだけ計画的に、できるだけ早期に三千人の目標を達成するようにやっていこうということになったわけでございます。  ですから、これからこの法科大学院がどのように立ち上がってくるか、これを見なければいけません。やはり質の高い相当のものが立ち上がってくることを期待しておりますけれども、期待どおりになっていくかどうかはこれから見定めなければなりません。その状況を見ながら考えていこう、しかしできるだけ早期実現を目指そうということになりました。  それで、量がふえると質がどうなるのかという御懸念はごもっともでございます。私の経験でございますけれども、今まで、司法試験の非常に難しさから、相当優秀な学生も司法試験を敬遠するという傾向がかなりございました。新しい法科大学院できちっとした教育システムができるならば、いろいろな多様な人たちが法曹を目指すという可能性が十分あると思います。  それから、例えば医学部とか理学部とか経済学部とか文学部とか、できるだけ他学部の人たちからもこの法曹を目指してほしい、それを受け入れる教育システムを確立しようじゃないかということがこの法科大学院構想眼目一つでございまして、そういうように考えると、従来と違って一層多様なすぐれた人材が法曹を目指していわゆるロースクールに入ってきてくれることが期待できるんじゃないか。  そういうことで、質の維持という点については、この法科大学院がどういうように立ち上がり成長していくかがこれからのポイントですけれども、それをしっかりとやっていくならば、質の面はそう心配することはないんではないかというように考えております。  最後に、話が前後しますけれども、どのくらいの法曹人口日本社会に見合っているのかということにつきましては、御承知のようにいろいろな考え方がございますけれども、繰り返しになるかもしれませんが、現在の状況を念頭に置いて考えるのではなくて、これからの日本社会がどういう形になるのかということから考えたら、とても今の千人や千五百人で済む話ではないだろうというように考えております。  それで、これは試算もいろいろございまして確かなあれではないんですけれども、仮に三千人にしても、法曹の中に亡くなられたり仕事をおやめになったりする方もありますので、そういうのを差っ引いてあれしますと、三千人にしても十五年から二十年はかかるんじゃないかという計算さえございまして、例えば二〇一〇年までに五万人、六万人になるかというようなことはちょっと考えにくいところかというように思っております。
  8. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)小委員 ありがとうございました。
  9. 武部勤

    武部委員 自民党の武部勤でございます。  私、商工委員会の理事も兼ねておりまして、今の法科大学院の話、もう少しお話ししたかったんですけれども、どうしてもお尋ねしたいと思う一、二点、先にお話をさせていただいて、御見解を御説明いただいて失礼することをお許しいただきたいと思います。  私は、北海道の網走番外地の周辺から出ている代議士なんですが、今、法曹人口をふやすということもさることながら、弁護士過疎の地域であるだけに、我々国会議員がさまざまな相談を受けることが多いんですね。その内容は、これは弁護士さんに相談しなければならないことなのかなと思うことも多々あります。例えば、これは市役所に行って担当の専門職の方に相談すればおおむね解決できるということもあります。  そこで、いわゆる隣接法律専門職種に関して、司法書士会とか弁理士会とか税理士会とか行政書士会あるいは社会保険労務士会、こういった方々に意見を求めたということですが、この点についてどういう議論があったのか、また、会長もとでさまざまな議論があったかと思うのですが、この辺についてどんな意見があったか、その辺のところを御説明いただければありがたいと思います。
  10. 佐藤幸治

    佐藤参考人 お答えいたします。  隣接法律業種につきましては、何回かにわたってこの問題について議論いたしました。弁護士のあり方、あるいは弁護士人口が現在非常に不足している中で、国民に対する法的なサービスが十分でない。長期的に見た場合は、さっきの法科大学院が順調に育っていってそこから多くの者が輩出されるようになってくれば、また別のいろいろな考え方があるのかもしれませんけれども、当面、既に法的サービスが十分にこたえ切れていない、そこは委員の皆さんは大体共通の認識かと思います。御承知のように、弁護士さんがいないゼロ・ワン地域とか——きょう、これは弁護士会がおつくりになったマップを持ってまいりましたけれども、「弁護士0〜4マップ」、こういうのが用意してございますので、御関心ある方はまた後で拝見していただいて結構かと思います。こういう非常に弁護士が不足しておる状況を現状のままで放置するわけにはいかないだろう。当面どうするかということも非常に緊急な課題であるということで、ここは審議会委員の皆さんも大体またそこは共通の認識でございました。  それで、先ほど御紹介しましたように、司法書士、弁理士、税理士、行政書士あるいは社会保険労務士のそれぞれの関係者に来ていただきましていろいろ実情を伺った結果、それぞれの訴えておられる主張内容についてもごもっともなところがある。そういうことを踏まえて、国民の法的需要にできるだけ速やかにこたえるためには、この人たちの仕事の意味というものを受けとめて、生かすという方向で前向きに検討すべきではないかというところで委員の皆さんの意見は大体一致しているのではないかというように考えております。  それをやるにつきましては、もちろん、その法的サービスの能力の面での担保とか、さまざまなことを考えないといけませんけれども、そういうことをやりながら、できるだけ速やかに国民の需要にこたえるために、そういう職種の方々の仕事を生かすという方向で前向きに考えるべきではないかというところで一致を見ているというように思います。
  11. 竹下守夫

    竹下参考人 会長代理をいたしております竹下でございます。いろいろ私どもの審議状況について御関心をお持ちくださる先生方の前で、本日、審議の進みぐあい等についてお話しできる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。  ただいまの武部議員の御質問に佐藤会長は既にお答えになっておられますけれども、私から若干補足的に申し上げたいと思います。  御指摘の隣接法律業種にどのような法律事務を処理する資格を認めるかというのは、私どもの審議会の中でも大変関心の高い問題の一つでございます。佐藤会長も言われましたが、この隣接法律職種と言われる人に対する国民期待というものがかなり高いということについては審議会委員はほぼ意見一致していると思いますが、他面においては、同じ国民の利益というものを考えた場合に、果たして適切に国民の利益を保護できるかどうかという側面の検討も必要であろう。そのためには、これまでの実績とか研修、そういう担保措置というものも必要なのではないかということもまた指摘されているところでございます。  そのようなことを申し上げますのは、決して消極的な意味で申し上げているわけではなくて、この問題も、国民立場から見て一体どう考えるのが最も適切なのであるか、重要なのであるか、そういう視点から私どもとしては考えて、今後なお検討を続けてまいるつもりでいる、そういうことでございます。
  12. 武部勤

    武部委員 ありがとうございました。
  13. 日野市朗

    日野委員 民主党の日野市朗でございます。  きょうは、おいでをいただきましていろいろお聞かせをいただいて、本当にありがとうございました。それから、大変なスピードでいろいろ御論議をなさっておられること、心から敬意を表します。大変お忙しい方々がこんなにやっておられるということ、その情熱がちゃんとこっちにも伝わってきているような思いがあります。  ただ、先ほど佐々木委員の方から法曹人口の問題について話がありました。それに関連をして、法科大学院構想についてちょっと私の意見を述べさせていただきたい。または、ちょっとお話も伺いたいと思います。  この文書によりますと、「法曹養成制度として有力な方策一つ」というふうにお書きになっているのですが、今佐藤参考人がおっしゃったこと、それからその後に続く法科大学院についての記述のぐあいからして、大体既定の路線のように私としては感じておりますが、そういう見方でよろしいのかどうかということをお答えいただきたい。  それから、私、この法科大学院構想ということが取り上げられるに至った経緯について、若干の不安感を持っております。といいますのは、この法科大学院構想というのはかなりフィーバーだったような感じがするのですね。みんな熱に浮かされたように法科大学院法科大学院、ロースクールと、あらゆるいろいろな方々からこの問題の提起がなされました。それはそれなりにそういう提起が出てくることは決して意味のないことではないと私は思いますし、それに、そういうフィーバーができる素地はやはりあったと思うのですね。  ただ、私、いろいろ考えてみまして、いろいろな方々の御意見も伺ったのですが、これは百家争鳴でございますね。どのようなふうにこの法科大学院構想していくか、これはいろいろな方々がいろいろなことをおっしゃっている。そういうのを見まして、私、すとんと胸に落ちないのですね、一つも。やはりアメリカのように、ロースクール、それからビジネスの方ではビジネススクール、こういうものがずっと歴史的に積み上げられてきたところとは違いまして、日本の場合はそういう積み上げがないわけでございますから、これは百家争鳴になるのも当然だろうというふうに思うのです。  ただ、この法科大学院構想というものをいろいろ伺って、私としては、どんな形をとるにしても、これだけ多くの方々がこれだけ多くのことを言って、そしてそれぞれの下にはまた組織がいろいろありまして、そういう議論がずっと闘わされているわけですが、果たしてこれでうまくいくのかなというような感じが一つしております。  それよりは、むしろ従来の伝統的な法学部というもの、これはもう現状を見ると、これは日本の法学部の伝統なんでしょうが、それぞれお偉い学者の先生方がそれぞれに専門化された学問のところをいろいろ研究して教える。そして、実務とは全く関係のない教え方をしているわけですね。ここのところをきちんと改めることによって、今までの制度からそう大きく離れることなしに法曹養成ができるのではないか、むしろその方がいいのではないかというような感想をこのごろ抱くようになっています。ですから、思い切って司法試験ももっと易しいものにして司法修習をもっと厳しくするとか、いろいろ方法はあろうか、こんなふうに思うのですが、いかがでしょう。  ほかにも伺いたいこともありますが、それはまたこの次の順番にやらせていただきます。
  14. 佐藤幸治

    佐藤参考人 まず第一点でございますけれども、先ほど御紹介しましたように、四月の段階でこの法科大学院構想というのは一つの有力な方策として検討しようということになりました。それで、それについて我々として結論を出すについては専門、技術的な細部にわたる検討も必要であろうということで、先ほど御紹介しましたように、文部省にお願いして検討会議というものをつくっていただき、私どもの審議会委員も複数そこに出席しているわけでございますけれども、そこでいろいろ検討していただいて、夏の集中審議のときに中間報告をいただき、そして九月の末に検討会議報告をいただきまして、それを受けて十月に審議したわけであります。その結果、やはりこれしかないなということで、審議会としてはこういう法科大学院構想でいこうというように決めたということでございます。最初は一つの有力な方策ではないかということから始まって、最終的に結論として今申し上げたようなことになった、審議会審議経過としてはそういうことでございます。  それから二番目の話でありますが、フィーバーであるということは、確かにそういう面もあるのかもしれません。なぜそうなのかというと、私はやはりそれは従来の法学部における法学教育の危機感のあらわれだというように思っております。日本の場合は、なかなかシステムが変わらなくて、ある時点に来るとどうにもならなくなって、それでばっと動くという傾向は日本社会の特質としてあるとよく言われますけれども、この法学部の教育については、実は当初から相当問題をはらんでおったということを御理解いただきたいと思います。  法学教育をするについては、本当のあの終戦直後、間もなく新しいシステムを発足させるころ、やはり医学部と、お医者さんと同じような教育システムをとるべきじゃないかという意見もあったやに聞いておりますが、御承知のような新制大学のシステムになり、従来に比べて一年減っているわけです。四年間で一般教育もやろう専門教育もやろうということに、そういう中で初めからかなり無理なものがありました。それが次第に、二十年代、三十年代に入ってきまして、法学も非常に分化してまいりまして、判例も蓄積ができてくるとなりますと、とても教養をやり専門をやるというのは無理だということで、既に四十年ころ、五年制にしようという考え方も出てまいりました。けれども、これも学園紛争とかいろいろありまして、なかなか思うに任せませんでした。  それでやってきているうちに、片っ方では高校の進学率が九八%ぐらいになってきました。そうすると、高校の教育のあり方も相当変わってきている。それを受けて大学の法学部の教育の仕方というのも、一般教育もやり専門もやりなさいというととても無理な状況になってまいります、学生にしても。そこで、司法試験が難しいものですから予備校というものに行って、いわゆるダブルスクールとかそういうものがだんだん顕著になってきたわけであります。  ですから、御指摘のように、今の法学部のあり方を変えたらいいのではないかというお考えもごもっともなところはあるのですけれども、今申しましたようなところからいうと非常に無理がある。そこで教育もやりなさい、教養も身につけなさいというやり方では非常に無理なシステムだ。ならば、学部の方は基礎的なものをやっていただいて、あるいは教養的なものをきちっとやっていただいて、その上で専門的な、法曹として自分がプロとなるという意識のもと教育を受けるそういうシステムをつくるべきではないかという考え方がこの法科大学院構想根底にあるのではないかと思っております。  ちょっと余談になりますけれども、私は一九六〇年代の後半、アメリカで二年ほど勉強する機会がありました。そのときに、ビジネススクールとか、ロースクールは昔からありましたけれども、プロフェッション、プロを教育する教育システムが、あの一九六〇年代、アメリカにおいて非常に真剣に取り組まれております。私はそのとき、なぜアメリカはこういうことをやるんだろうか、どういう意味があるんだろうと思っておりましたが、今振り返ってみますと、やはりあの時点でのアメリカのあの取り組みが今のアメリカを支えている根底にあるんじゃないかという思いがするわけです。  日本においては、プロをプロとして教育するというシステムが日本の従来の教育システムの中では十分でなくて、なかった。これをきっかけに、特にこの法科大学院をきっかけに、日本においてプロをプロとして、教養の豊かなプロとして養成するというその突破口になる可能性、あるいはできるだけそれを追求すべきではないかというように考えております。  最後ですけれども、さはさりながら、先生御指摘のように、いろいろ、自分のところも法科大学院と、皆そういうふうに熱心に手を挙げておられるわけですけれども、プロを育てるにふさわしい教育のシステム、教育内容を確立しなければいけません。したがいまして、この検討会議報告にもうたわれ、また私どももそういう認識なのでありますけれども、これからの法科大学院とはどういう教育内容のどういう教育システムでやるのかという第三者的な評価機関を早急にどこかにつくっていただいて、そこで法科大学院にふさわしい認定基準を考えていただいて、それをもとにして設置の認可をする。そして、それと連動する形で新しい司法試験のあり方を考える、そういうやり方をしなければいけないのじゃないか。  そしてできれば、私どもの任期は来年七月までですので、最終報告の出る段階では大体こういう内容のこういうシステムのものだということを公にして、そしてそれに合う形の法科大学院が輩出してくるということを、準備が必要でしょうから、それを見た上で検討していただいて、体制を整えて法科大学院教育の中に参入していただく、そういうことを考える必要があるのじゃないかというように思っているところであります。そういう方向で進めていかなければいけない。  ですから、法科大学院がいつ、どのように、幾つ立ち上がってくるかということは、今の段階では確たることは申し上げられませんけれども、できるだけ基準を早く明確に示して、それに合うようにそれぞれ考えていただく。そして、法科大学院構想として、先ほども紹介しましたけれども、公平性開放性多様性と言っておりますので、その基準を満たしたところはどんどん法科大学院として入ってきて、つくっていただくという考え方を持っております。そしてさらに、これは都会に集中しないように、全国的にこれが均等にできるようなことも十分配慮していかなければいけない、そういうように考えております。  お答えになっているのかどうか、何しろ新しくつくるものですから、この辺はどうなるだろうか、あの辺はどうなるだろうかといろいろ考えますと不安が非常に出てくるのですけれども、ここはさっき申し上げたような意気込みで、本当の新しいプロの教育の場をつくるんだという意気込みで取り組む中で、そういういろいろな問題を克服していくしかないのではないかというように考えている次第です。
  15. 竹下守夫

    竹下参考人 若干私から補足をさせていただきたいと思います。  日野議員が御指摘になられました問題点、つまり、一国の法曹を養成するという非常に重要な課題を、短期間に前のめりになって議論をするというようなことに対する御懸念というのが根底におありなのではないかというふうに思います。  そのような御懸念というものには十分理由があるというふうに私も考えているところでございます。一つは、この問題が登場してから、私どもの審議会でともかく法科大学院というものを法曹養成制度の中核に据えるという結論を出すまで、期間が全体として非常に短いということ、それから、昨年の夏から本年春にかけて、多くの大学が相次いで、先を争うようにシンポジウムというものを開いて次々といろいろな意見を出した。そういう状況をお考えになられて御心配をされたのだというふうに思います。  私どもの審議会も、そういう重要な問題について短期間のうちに結論を出すということに対する懸念は表明されておりました。ですから、決して、そういった審議会外の動きというものに審議会の内部の議論が引きずられて結論を急いだというものではないというふうに御理解賜りたいと思います。  冒頭佐藤会長経過説明でも申し上げましたように、文部省検討依頼を出すまでに三回議論を費やしました。それから、夏の集中審議のときには一日これにかけました。それから、その間、文部省検討会議審議状況というものも毎回のように報告を受けてまいりました。さらに、十月になりましてから三回議論を重ねたところでございます。その間にほかの可能性、法曹養成制度を、現在のままではいかぬ、しかしどういう方向に改めていったらいいのかというので、委員の御指摘になられた、法学教育を変えたらどうか、あるいは司法試験のあり方を改めたらどうか、司法研修所の充実ということで対処できないか、そういう選択肢をすべて検討いたしまして、結局、委員全員が、これからの新しい日本社会というものを考え、そこにおける法曹役割というものを念頭に置いたとき、この法科大学院構想以外には解決の方法はないのではないか、そういう結論に達したということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  16. 野田佳彦

    野田(佳)小委員 民主党の野田佳彦でございます。  御説明をお伺いしまして、大変熱心に、かつ有意義な御審議を重ねられていることに心から敬意を表したいと思います。  全体的には本当にすばらしい議論が行われているなという印象を持ちましたが、私の場合は、佐々木委員日野委員と違いまして、法曹界出身ではなくて、どちらかというとユーザー立場でこの資料を拝見していました。特に教育問題にずっと関心を持ってきましたので、その流れで今回のこの資料を拝見しますと、なぜこの法科大学院構想を安直に文部省検討依頼をしてしまったのかなという感じがいたします。昨今、学力低下とか教育の荒廃とかいろいろ言われている中で、戦後教育の根幹を見直さなければならないような時期にあって、私は、行政の中でも最も存在意義が問われている官庁だと思っているのですね。その中で、二十一世紀司法のとても重要な要素であるこの法曹養成にかかわる問題を下請に出してしまうということに、この短い文章だけでありますけれども、私は弊害を少し感じました。  例えば、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上入学させる。これは、そんな比率なんかをつくらなくても、当然のごとく、各学部とか社会人が来るような、あるいは入れるようなものでなければいけないし、あるいはこの文章には出ていませんけれども、全国適正配置であるとか、国公私立に公的資金だとか、極めて統制経済的な、中央集権的な発想が出ているというふうに私は思っていまして、それで本当にプロを教育するシステムというか魅力ある法科大学院になれるかどうかという懸念を率直に言うと持っているような次第であります。だから、学校教育法上の大学院という位置づけで本当に国民期待にこたえられる機能を持つことができるかどうか、率直に言って懸念を持ちました。これについて懸念をなくすような何か御説明があればと思います。     〔横内委員長代理退席、小委員長着席〕
  17. 佐藤幸治

    佐藤参考人 御指摘のような御懸案はこれまでもいろいろ伺ってきたところでありますが、私どもとしては、この法科大学院というものが教育機関として十分に成長していくためには、やはり学校教育法上の学校として位置づける必要があるということが大前提にあります。そういうことで文部省にその検討会議ということを依頼したわけですけれども、その審議のあり方につきましては、先ほど御紹介したように、文部省だけにあれしたわけではなくて、その検討会議の構成メンバーとしては、法曹関係者から入っていただく、実際にきょうお見えになっている房村部長もその検討会議に御出席でございましたけれども、そういうことで法曹関係者からそこに入っていただく。それから、私どもの審議会からも複数、四名そこに参加していただきました。そこで審議会考え方基本的な司法についての制度設計と見合うようなものを考えてほしいという私どもの意向が絶えずそこの検討会議に反映されるような工夫もいたしました。  そして同時に、教育ですから、どういう方法があり、どういう方法が有効で、そしてそれに見合う教員組織としてはどういうものがなければいけないかというような技術的な問題もいろいろあるものですから、そこで集中的に詰めて議論していただいたものを私どもが受けて、私どもとして判断しようということにしたわけであります。一時、丸投げではないかという御批判もあったのですけれども、それに対しては決してそうではない、私どもからちゃんと行っていますと。そして、審議会としても審議状況を時期に応じて絶えず報告を受けておりました。フィードバックしながら、そしてさらに、この夏の集中審議で、先ほど御紹介申し上げたように、座長とお二人の委員に来ていただきましてるる説明していただいて、半日近くをこの質疑応答で費やしたところであります。そういうわけで、私どもの意向を十分に踏まえてそこの検討会議で御検討いただいたというように思っております。  ですから、九月末に最終報告をちょうだいしたときに、それをめぐって議論して、私どもの審議会委員は、いろいろ質疑応答をやった結果やはり基本的にはこういうことだろうなということになったわけでありまして、そちらに全面的に依頼して、それに乗っかって結論を出したということでは決してございません。そこは会長として自信を持って申し上げたいと思います。  ただ、さりながら、先ほどの御指摘にもお答えしたところですけれども、むしろ問題はこれからだと思います。法科大学院教育内容についてどういうものであるべきかという基準、教育内容からスタッフから、そういう基準を明確につくらなければいけない。それをつくって、そしてそれをもとにして設置の認可とかいろいろなことが展開していくわけですから、まず第三者機関、そこには単に法曹関係者だけではなくて一般の国民の人たちからも入っていただく必要があると思っています。そこで十分に基準を考えていただいて、それをもとにして法科大学院というものが具体的に設計され、立ち上がっていく、そういうように考えておりまして、繰り返しになりますが、決して御懸念のようなところはなかった、私としてそういうように申し上げたいと思います。
  18. 木島日出夫

    ○木島小委員 日本共産党の木島日出夫です。  きょうは会長会長代理がお見えですから、司法改革の根本問題についてお聞きしたいと思います。  なぜ今司法改革が叫ばれ、求められているのか、一言で言ったら、私は、今の日本裁判所司法体制全体が国民期待にこたえられなくなっている、もっと言いますと、国民から遊離しているということにあるんじゃないかと思います。国民立場によって司法に求めるものはいろいろ違うと思うのですが、基本は、やはり国民にとっては基本的人権をしっかり守ってもらう最後のとりでだ、そういう憲法的な立場だけじゃなくて、個々の国民の権利、民事でも刑事でも、それをしっかり守ってもらえる司法になってもらいたい、それが見えないということが一つだと思うのです。  経済界の方からも今の司法のあり方では使い勝手が悪いということが指摘されているのも、その一つのあらわれだと思うのです。どちらにウエートを置くかによって姿形が変わってくるので、私どもは二つの潮流があるんじゃないかとも指摘していたんですが、それはともかく、いずれにしろ今の司法が、佐藤会長静脈を強めるんだとおっしゃられましたが、そのポンプのところが制度疲労を来してしまっているというところにやはり根幹があるのじゃないかと思います。  私は、その原因として二つ考えているんです。  一つは、明治以来百年の日本司法の容量が小さ過ぎる、ポンプが小さ過ぎる。このままじゃ期待にこたえられないのは明らかだ。  今数字を持っているのですが、例えば裁判官の数、現在、人口十万人に対して日本は二・三人ですよ。ドイツは二十五・六人、アメリカが十一・六人、イギリスが六・〇七人、フランスが八・四人、そういう数字ですね。それから、法曹全体の数でも、出発時の明治二十三年は三千三百五十七人、弁護士が千三百四十五人、裁判官が千五百三十一人に対して、今日、平成十一年で、法曹人口二万二千四百五十五人に対して、裁判官の数がわずかに二千九百四十九人、弁護士が一万七千二百八十三人。こういうところに一つあると思うわけで、その背景、率直に言って、明治以来百年の日本政治が法曹を小さいものに抑え込んできた、そこの徹底的な分析、論議が求められているんじゃないかと思うのです。  もう一つは、容量が小さいだけじゃなくて、やはり官僚法曹、官僚司法、これが国民から遊離した今の裁判所が形づくられている根本だと思うのです。  二つの事件だけ挙げますが、一つは、最近京都の裁判官がタクシー運転手を雲助と呼んで判決書に書き込みました。本当に異常な判決すら生まれている。もう一つの例は、仙台の裁判官でしたか、通信傍受法に参加しただけで、それが最高裁から懲戒を受ける。これは一つの突出した例だと思うのです。しかし、こういう例に見られるように、日本最高裁を頂点とした官僚裁判官体制が硬直化して、国民期待にこたえられなくなっているんじゃないかと思うのです。  私は、今回の改革審議会の皆さんの論議が全部情報公開されまして、全部国民の前に明らかになってガラス張りになっている、大変すばらしいことだと思っております。私はあれを全部読んできましたが、そういう根幹部分についての深めた論議が足りないんじゃないか。非常に、言葉は恐縮ですが、論議が薄っぺらじゃないかと思わざるを得ないので、そういう問題について、私の率直な印象です、それを基本にして三つの問題を質問します。  一つは、法曹人口問題ですが、養成三千人という数字を出してきました。これは入り口の問題なので、出口の論議が足りないんじゃないか。では、今皆さん方は日本裁判官の数は何人くらいが必要なんだと考えているのか、検察官の数は何人くらいが必要なんだと考えているのか、あるいは弁護士の数は日本社会の中で、このような状況の経済社会の中で何人くらいの弁護士が必要なのか、その出口のところ、幾ら読んでも数字が出てきていないんですね。  ですから、フランスやアメリカとの対比をさっき私は言いましたが、出口のところでどのくらいの法曹人口が必要なんだということをもっと真剣に数字まで出して論議して、よって入り口のところでは毎年三千人が必要なんだ、そういう論議が必要だと思うので、その出口のところについてどんな論議がなされ、あるいは、会長個人の考えで結構ですが、今の三千人もいない日本裁判官の数についてどうお考えか、率直にお聞かせいただきたい。  二つ目は、法曹一元の問題です。先ほどありましたように、「これまでの法曹一元かキャリアシステムかという概念にとらわれることなく、国民が求める裁判官像を描き、」こういうことでおおむね一致した、そして「裁判官給源多様化多元化を図ること。」ということですが、私はこの文章を見まして、「法曹一元かキャリアシステムかという概念にとらわれることなく、」というのは、これが官僚法曹かそうじゃないかの根本問題なので、そこら辺の問題の認識がどうなのかという点が二つ。  そして……
  19. 太田誠一

    太田委員長 木島小委員、二分でまた分けて御質問いただければありがたいと思います。一応二分というルールとして、今もう六分くらいたっているので、ちょっと分けて話をしていただきたい。
  20. 木島日出夫

    ○木島小委員 司法参加の問題で、「参加形態検討する」とありますが、その検討というのは、改革審議会検討するということですか、それともこれから検討してほしいという意味なんですか。  その辺、三つちょっと質問します。
  21. 佐藤幸治

    佐藤参考人 三番目の方は、陪参審についてですか、法曹一元についてですか。
  22. 木島日出夫

    ○木島小委員 陪参審です。「参加形態検討する」とありますね。その検討というのはだれがするのか、いつまでにするのか。
  23. 佐藤幸治

    佐藤参考人 ただいまお考えを拝聴しましたけれども、日本における明治以来の司法の位置づけ方、歴史的にどういうように理解するかということについてはさまざまな見解があるだろう。今木島先生のおっしゃるようなお考えも十分あるだろうし、また別の考え方もあるかもしれない。そこは歴史的な解釈でございまして、審議会としてそれについてどうだということは、審議会というものの性質上なかなか難しいところがあると思いますが、それはそれとして——そう言うと、いや、それはそれじゃないんだとおっしゃるかもしれませんけれども、それはそれとして、お説のように、日本司法が小さ過ぎたところに、司法の力不足といいますか、静脈に例えるならば静脈として十分機能していないところがあったんじゃないか。  その辺は私も同感であり、また審議会委員も、法曹裁判官、検察、弁護士を含めて大幅な増員を図る必要があるというように、これは一致したわけでありまして、そういう認識に至る背景においては、日本司法がやや小さいんじゃないか、容量が小さいんじゃないかというところについては、皆さん共通の理解を持っておられたと思います。だから、先ほど申し上げたように、集中審議において法曹人口三千人を目指そうじゃないかという結論に達したのは、まさにそういう理解が根底にあったということだろうと思います。  入り口と出口というお話で、出口があって、そして三千人が出てくるんじゃないかということでございますけれども、出口といいましても、ではどのくらいを出口で算定するのかというのは、これまた非常に難しゅうございます。  例えば、一つ考え方として、フランスはああいう体制の国でありますが、フランスで三万六千人の法曹人口であります。日本の人口の半分だから、せめてフランス並みにとするならば五、六万人くらいは必要じゃないかというような考え方もありました。五、六万人にするためには、年幾らくらいかというような考え方もいろいろありました。  けれども、いつまでにどういうように出口を設定するかということはなかなか難しいところもありまして、まず三千人を目指して、そして法科大学院の立ち上がりとかいろいろなことを考えて、まずこの辺を目指そうじゃないかというように落ちついたというところであります。  検察官の数は現在千三百人ぐらいでございますけれども、これは公聴会のときに、大阪で検察や裁判所の人たちと懇談する機会がございました。そのときに、検事正の方だったと思いますけれども、今までは検察官は人口十万人に一人というように考えてきた、実際そういうあれになるわけですね。けれども、犯罪が複雑化し、いろいろな種類の犯罪が起き、非常に複雑になっている。そういう中で、とてもやっていけません。たしかそのとき、大阪だったら十倍ぐらい必要だとおっしゃったように記憶するのですけれども、きちっと法を遵守してもらう、それをやるためにはとても今の体制ではできませんという話が私には非常にインプレッシブでございました。検察としてどのぐらい要るのかというのは、具体的に審議会としてそこまで審議したことはありませんけれども、大幅な増員が必要だということについては皆さん一致しているわけです。  それから、裁判官につきましても、さっきお話しのように余り変わっていない。簡裁を除きますと現在二千人。弁護士の方は人口に応じて少しずつふえてきているわけですけれども、裁判官の数は変わっていない。これが裁判の充実迅速化という点でかなり問題があるのじゃないかということで、裁判官についても大幅な増員が必要だ。これも審議会の皆さん、意見一致したところであります。具体的な数字のところまではまだ詰めておりませんけれども、大幅な増員が必要だということでございます。  それから、二番目の法曹一元の話でございますけれども、これも最初の、司法を歴史的にどう位置づけてどう評価するかということにかかわっております。  それは、その歴史解釈に我々が立ち入ると、さっき申し上げたように、これは審議会の性格上、そういうところに立ち入って結論を出すというわけにはいかない。むしろ、現状がどうか、現状が問題があるとすれば、どうやってそれを直すか、そこに我々の関心を向けるべきである。むしろ従来の議論に、あの議論はどうだった、この議論はどうだったということに余りとらわれると話が非常に難しくなるものだから、現在がどうなのか、それに対応するためにどうするのか、そこから考えようじゃないか。それが法曹一元をめぐる議論根底にあるものを目指そうという趣旨であります。決して排除するのじゃなくて、それぞれの委員がそれぞれの考えをお持ちでしょう。お持ちでしょうけれども、その中で、余りとらわれないで、現状にどう対応するか。  そういう観点から、いい裁判官をいかにして安定的に確保するか。法曹中心はやはり裁判官です。司法中心は、中核は裁判所です。すぐれた、そしてたくましいといいますか、そういうすぐれた裁判官をいかにして安定的に確保するか。そこで考えようじゃないか。その観点から見ると、例えば現在の裁判所法は御承知のように既に多元性なんですね。多様性、多元性を前提にしております。いろいろな経験の持ち主が裁判官になるように、そういう趣旨でできておりますが、実際上は判事補からなる、大半はそういう形になっております。これはやはりあるべき裁判所法の姿からしてぐあいが悪いのではないかということで、もっといろいろな経験の人たちが裁判官になるようにいかにするか。それから、特に判事補について、多様な経験を持っていただくようにするためにはどうするか、そういう議論をしました。  具体的にどうするかというのはこの中間報告後でありますけれども、この間の十月三十一日では、研修の仕方として、いろいろ弁護士事務所に出すということもあるじゃないかとか、いや、研修ではなくて、本当にもう弁護士として何年かなってもらう必要があるのではないか、いろいろな提言がございました。そういう提言を、こうすべきじゃないかという方向は、中間報告後、出したい。現在の段階、中間報告の段階では、給源多様性、多元性、任用についての工夫、それから人事のあり方についての透明性客観性というものを確保するような仕組みを考えようということでとどまっておりますけれども、では、具体的にその中身は何かということは、中間報告後、審議会でさらに議論して、国民の皆様に具体的な姿をお示しできればというように考えております。  それから、第三番目の陪参審のことでありますが、これは結論から申しますと、当審議会で行います。もちろん、陪審制か参審制かにとらわれないで、何かもっと日本にふさわしい、いいものがあるのではないかというのが私どもの審議会の結論でありますけれども、では、具体的にどういう仕組みのものをつくるのかということについては、中間報告後、審議会制度設計を考えたいと思っております。  ただ、これを導入するについては、刑事訴訟法とか従来の制度の手直しが必要になってまいりますので、その辺の細かなところまでについては、私どもの審議会としてはそこまではとてもやる余裕もありませんし、そこまでは入りませんけれども、基本的な骨格についてはこの審議会審議をして国民の皆様にお示ししたい、しなければいけないというように考えている次第です。
  24. 竹下守夫

    竹下参考人 ただいまの木島議員からの御質問のうち、法曹一元の問題について若干補足をさせていただきたいと思います。  大前提として、議員御指摘のように、日本司法全体が国民から遊離しているという問題点は私どももよく認識しているところでございます。  この法曹一元の問題を議論いたしました夏の集中審議取りまとめが不十分ではないかという御指摘をいただきましたが、私どもといたしましては、議員が御指摘になられた冒頭国民に近い司法というものを実現するというためには、やはり法曹全体が国民から信頼をされ、近づきやすくするということが必要なのではないか。ところが、これは評価は人によって分かれると思いますけれども、従来の議論は、いわば法曹三者の中で、お互いに、キャリアシステムはこういう欠陥がある、いや、あるいは法曹一元にしてもこういう問題点があるというようなことを国民の前でやっている。これでは、法曹三者の間ではそれぞれ理由がないわけではないかもしれないけれども、国民の目から見たら、それは結局内部の争いにすぎない。法曹全体が国民の信頼を失うというようなことになってはいけないというのが一つ私どもが持った認識でございます。  その上で、具体的な制度構築の方向ということを考えたときに、現在の判事補制度というものに全く問題がないわけではないということについては共通の理解が得られている。確かに、司法研修所を出て、場合によればまだ二十代の裁判官が、決定とはいえ単独でできる場合もあるということには、やはり判断の未熟さというものを否定できない面もあるだろうし、また裁判所の部内だけでずっと生活をしているということからくる限界もあるだろう。  しかし、だから現在の制度はトータルにだめなんだという意見は多数ではなかったと私は思います。やはり現在のシステムにもメリットがあるのではないか。我が国裁判官の公平さ、廉潔さというものは国際的にも高く評価されているし、これはやはり若いときから裁判官として養成されてきたということと決して無関係ではないだろう。それからまた、判断の安定さ、それから、これは必ずしも肯定的な意味でばかり使われるわけではございませんけれども、精密司法と言われるような判断の緻密さ、これは専門家として当然そうあるべきものであって、そういう司法というものを実現するについてはやはり現行制度というものが持っているメリットがあるのではないか。  ただ、先ほど申しましたように、現在のままでいいというわけではございません。そこで、裁判官の経歴の多様化ということを考える必要があるだろう、それからまた、任命方法あるいは人事のあり方ということについても検討すべきところがあるかもしれない、そういう議論の流れになったということでございますので、その点、御理解いただければと思います。
  25. 木島日出夫

    ○木島小委員 ありがとうございました。
  26. 笹川堯

    笹川委員 自由民主党の笹川堯でございます。  御質問というよりは、私も幾つかの考えがありますので、ぜひ何かの機会に御参考にしていただきたいと思うんです。  実は今、日本社会の中で、司法の問題だけ現在やっておりますけれども、司法も経済も、それぞれの分野で日本は先進国と競争していくわけですから、そういう意味で、アメリカのように、司法資格を持っている人がビジネスマンに一番多いんですね。ところが、日本じゃ司法資格を持っているビジネスマンなんてほとんどいない。ここは非常に是正していかなきゃならぬことだと思うんですね。  やはり法律を知っているということは、私も経済人として長く活動しましたが、非常に得をしました。ところが、日本社会はどうしても、法学部に入ると弁護士になるんだという、それだけしかない。あるいは、医学部に入るとお医者さんだけだ。医学博士を持って経済人として会社で活躍すれば非常にプラスがあると私は思うし、また司法資格を持っている人がビジネスマンになれば、今のあのバブルの崩壊じゃありませんが、ああいうことも随分私は防止できたと思うんですね。  そういう意味では、必ずしも弁護士になるということに限らないんだから、司法試験をやはり易しくしていただきたい。五回も七回も落ちて受かっても、言葉は悪いけれども、法律ばかになっちゃう。これは私は、言葉は悪かったんですが、法律の知識と教養、そしてやはり一番最後に大事なのは人格者じゃなきゃならぬと思うものですから、そういう意味を込めると、日本の上級職試験じゃないですけれども、いろいろな分野でまろやかな人格者をひとつ司法制度の中で育成していただきたいと思うんですね。そうしないと、専門だ、専門だといっても、ほかの分野に行ったらまるっきり使い物にならない、それで果たして日本社会のニーズにこたえられるかどうかというと非常に問題があると思います。  それから、先ほど野党の先生も言われたんですけれども、何かすぐ学校をつくる話。私も、それぞれ法学部が各大学にあるわけですから、これを拡充するとか充実すれば十分にそれは対応できるんじゃないのかなという気がいたしておりますので。その点についてはお任せをいたします。  それから、国民期待にこたえる刑事裁判、民事裁判、これは言葉は大変きれいなんですが、その期待するものは何かというと、私も経済人だったんで、要はスピードですよ。  訴訟してもいつ判決がおりるのか全くわからない、これじゃ判決もらったころに会社がつぶれちゃうなんということは往々にしてあるわけですね。ですから、まずやはりスピードアップ。経済人の中では、物を売ったら、お金はいつ払う、手形なら六カ月以上はないというのはもう社会の慣行ですから。ところが、司法だけはいつだか全く期日がない。失礼な話だけれども、ちんたらちんたらとなっちゃう。これじゃ国民期待になんか全然こたえられないし、国民期待していること、僕はその一点だと思うんですね。  例えば、少年法でも右と左じゃそれぞれ期待するものは違うと思いますから、これは議論の別に置いて、全体に言えることは、刑事も民事もスピードが余りにも現代社会の中で遅過ぎる、これをどうやったら早くできるんだということをぜひひとつお示しをいただきたい、こう思います。
  27. 佐藤幸治

    佐藤参考人 スピードの問題につきましては、竹下代理中心におまとめいただきましたので、竹下代理の方からお答えいただきたいと思うんですけれども、その他の点について私の方から申し上げます。  今までの司法試験は、言ってみれば、試験に強迫されるような感じで勉強するわけですね。法学部に入って、ゆったりして怠けてはいけませんけれども、ゆったりとした気持ちで教養を身につけ、人生を考え、自分の将来を設計する、そういう余裕というものが今の法学部教育の中にはないんじゃないかと私は思います。  さっき御指摘のように、法学部はみんなが法曹をねらうわけじゃありません。むしろ、企業に行ったり、官庁に行ったり、自治体に行ったり、さまざまでございます。そうすると、法学部の教育の焦点の合わせ方が非常に難しいんです。法曹になりたい、司法試験を受けたい人たちに焦点を合わせてやるのか、そうでない人たちは、余りそんな細かなことをやらなくても、大きなところを教えてもらえればいい、経済学やそのほかの方もいろいろ勉強した方がいいという学生も結構いるわけです。そうしますと、今の法学部のシステムの中では、すべての人に対して満足のできる教育というのを樹立するのは非常に難しい。  ですから、法学部は存置して、法学部は法律を中心にして基本的な教養を高める場である。私は、そういう人たちも社会のいろいろな需要にこたえ得ると思います。その中で、自分は法曹として身を立てたいという人は、法曹のプロとしての教育をプロセスとして受けて、ゆったりというとちょっと語弊があるんですけれども、プロとして長いスパンをかけて教育を積み重ねて、そして法曹になっていく。そして司法試験というのは、そこのプロとしての教育をきちっと受ければ、あとは研修所でしかるべき研修を受ければ、それで法曹としてなれる、そういう司法試験というものを設計しなければいけないんじゃないか。  ですから、さっきの御説明の繰り返しになりますけれども、今の法学部をそのままにして、いろいろな人を育てろ、それでまた法曹人も育てろ、プロも育てろと言われてもなかなか困難であるということを申し上げておきたいと思います。  そして、私の経験ですけれども、司法試験で五回も六回も七回もというのは、私は学生を見ておって非常にかわいそうに思います。いっとき、司法試験は六・五、六回で一番通るという、試験として異常だと思っておりました。そして、通ればいいんですけれども、数%しか通らなくて、結局転向できなくて、非常にその人の人生が、ある意味では気の毒な結果になるという学生も多く見てまいりました。  そういう一種の、非常に狭めて、試験目指して、点を目指して勉強するという体制ではなくて、さっき申し上げたように、自分はプロとして生きるんだというプロセスとしての教育の仕組みをこれから考える必要があるんじゃないかというのが法科大学院構想根底にあるものだというように思っております。  十分なお答えになったのかどうか、もう一点つけ加えるならば、法曹、特に弁護士が、今までの世界だけではなくて、企業それから自治体、私は情報公開関係でさまざまな自治体と関係してきましたけれども、そういうのを見ておっても、自治体に法曹資格者がもっと入っていくということが自治体のいろいろな能力を高める一つの大きな動力になるというように思っておりまして、自治体に限らずさまざまな分野で法曹資格者が活躍する場というのが多いんだろうと思います。それを開拓することによって、先ほどの木島先生のお話ですけれども、もっと司法のプレゼンスが社会に高まって、法の支配が日本でより根づいていくということになるんじゃないかと考えております。
  28. 竹下守夫

    竹下参考人 ただいま笹川議員から御指摘のように、国民が訴訟に期待するものというのがスピードであるということは、私どもも全く同感でございます。  民事訴訟と刑事訴訟と若干事情が違うかと思います。民事訴訟につきましては、御案内のように、平成八年に新しい民事訴訟法ができました。平成十年一月一日から施行されたところでございます。この新しい民事訴訟法をつくる過程でも、訴訟を充実させて、かつ迅速にということを最も中心的なねらいの一つにしたわけでございます。  その結果、現在のところ平均的に申しますと、通常の事件の審理期間は九カ月をやや上回るというぐらいになってまいりました。かつては一年を超えるというような時代もあったわけでございますけれども、九カ月ぐらいになってきた。もちろん、それでもなお十分迅速ではないという御評価もおありになるかと思いますけれども、他方、訴訟は国民の権利の存否を左右するものでございますから、その適正さ、また審理の充実というものを無視するわけにはまいりませんので、なお一層の努力は必要かと思いますけれども、平均的に言えばかなりいい線に来ている。ただ問題は、これはトータルで、すべての事件の平均でございますから、では、実際に争いがあって、証人を二人、三人調べなければならないというような事件ではどうかと申しますと、残念ながら、現在のところ二十カ月ぐらいの時間がかかるというふうに言われております。一年半をちょっと超えるぐらいということでしょうか。  そこで、私どもといたしましては、今回、審理を計画的にする、つまりいつまでにこういう手順で審理を終えるという計画をあらかじめ立てて、それに沿って、もちろん個々の場合に一たん立てた計画を修正する必要は出てくることはあり得ると思いますけれども、原則はその計画どおりにする。そうなりますと、非常に難しい事件に時間がかかることはやむを得ませんけれども、見通しがついておりますから、これは当事者としては十分それに対応できるのではないかというふうに考えております。現在は、大規模訴訟と言われるような、当事者も証人もたくさんいるというような事件についてだけ最高裁判所の規則でそういう審理計画というものを立てなさいということになっておりますが、これは何もそういう事件だけに限らないわけでございますので、今後は一般の事件についてもそういう審理をする。  もう一つは、そういう計画審理というものを実現するためには、やはり計画が狂わないように立てなければなりませんから、そのためには両方の当事者があらかじめ証拠なり事件に関連する重要な情報というものを得られるようにしなければいけないだろう。それも、なるべく早期に得られるようにしなければいけないというところから、証拠収集手段というものを一層充実させていこうということを考えているわけでございます。証拠収集手続充実ということも、新しい民事訴訟法の一つ眼目でございましたけれども、なお一層、とりわけ事件の早い時点で証拠の収集ができるように考えようということを議論しているところでございます。  それから、とりわけ問題になりますのは、医療訴訟とかあるいは知的財産権訴訟というような専門的知識を要する事件でございまして、これが争いのある事件全体の平均審理期間を長いものにしている非常に大きな要因であるということが既に裁判所等からも言われているところでございまして、現に実験的にはいろいろ工夫をしておられるようでございます。  私どもとしましては、やはりこういう専門性のある事件については専門家に手続に入っていただく。従来は鑑定という方法だけしかなかったわけでございますけれども、場合によっては専門参審という形で裁判官席の方に入っていただく、あるいは裁判官そのものになるわけではないにしても、専門委員というような形で、裁判官の補助者として専門家に入っていただくということを考えようとしているわけでございます。  ただ一方では、専門家が裁判官の側につくということについての懸念というものもないわけではございません。裁判官が、ついた専門家の言いなりになってしまうということでは困りますので、その辺は専門性の内容、種類と、それから選択する制度というもののミスマッチが起こらないように、十分なお今後検討を進めていこうというふうに考えているところでございます。  それから、刑事司法につきましては、私どもの審議会では、やはり刑事裁判充実迅速化というものを検討一つの柱にいたしまして、具体的には弁護体制整備、やはり弁護人が引き続き具体的な刑事事件に専従できるような体制ができませんと、どうしても期日と期日の間隔が長くなるということになりますので、そういう体制を公的弁護制度の充実ということともセットにして考えていこうというふうに考えております。  なお、刑事についても、争点整理手続というものを見直す、あるいは証拠開示についても明確なルールをつくって証拠の収集を弁護人側も十分できるようにして審理の促進を図ろうということを考えているところでございます。  少し長くなりまして、恐縮でございます。
  29. 太田誠一

    太田委員長 小委員長の方からお願いを申し上げますが、委員会冒頭に、一回の発言は二分ずつということにお願いしておりますので、一問一答ということで何回もお願いするということでお願いをしているわけであります。そういうことでもって御協力をお願いいたします。  何度も申し上げておりますように、毎回二分ずつで何回もということでお願いをしておりますので、ぜひ参考人皆様方にも御協力をいただきたいと存じます。
  30. 植田至紀

    植田委員 社会民主党の植田至紀です。よろしくお願いいたします。  一点、先ほど来からも話題に上っております法科大学院構想にかかわってお伺いしたいのですけれども、今のお話を伺いましても、新しい法曹養成制度としての有力な方策一つであるということについては一応認識はさせてもらいつつも、若干疑問に思う点をお伺いしたいのです。  審議取りまとめの中に、この法科大学院にかかわって第三者評価認定の仕組みについて述べられていると思うのですが、新たな法曹養成制度の中核的機関としての水準の維持、向上を図るというために第三者機関をこしらえるということですね。  それで、やはり私自身が素朴に疑問に思うのは、いわゆる大学の自治、学問の自治というものが、第三者機関によって、言ってみれば介入といいますか、大学のそうした学問内容を第三者に引き渡すようなそういうことになりはしないのだろうかという危惧を持たざるを得ないわけでございます。  ですから、そういう意味で、今のロースクール、法科大学院における第三者認定の仕組み、また、その機関と自治とのかかわり、大学自治、学問の自治との整合性についてどのようにお考えなのかということについてお話を伺えますでしょうか。
  31. 佐藤幸治

    佐藤参考人 非常に大事な御指摘だと思います。  大学の自治というのは、申すまでもなく非常に大事な事柄でありますが、大学も社会の中でぽつんとあるわけではありません。かねて私が思ってきているのは、大学はやはり社会とともにあるのです。これはちょっと余談で、余計なことを言うのかもしれませんけれども、戦後占領軍が日本に来たときに、日本の大学の状況を見て、それぞれざんごうに閉じこもっているというように評価したといいます。この評価については、またさまざまな理解の仕方がありますから、私はそれは絶対だとは言いません。そして、日本の大学の自治は、御承知のように、戦前からのさまざまな状況の中で先人が非常に苦労して築いてきたものです。ですから、これは非常に大事なものでありますけれども、さりながら、大学はやはり社会に扉を開いて、社会とともに、社会の評価も受けとめて、受けとめ方がまさに自治なんです、こう思います。  話はあちこち行きますけれども、この間のノーベル賞のあの話のときに、江崎さんが、新聞の記事でありますが、今度、日本でようやく評価が大事だということをわかってもらったのじゃないかと。私は、これから日本で一番大事だと思うのは評価だ、客観的にどう評価するか。もちろん、客観的といっても簡単ではありません。けれども、いかに正確に、正しく評価するように努力するか、そしてその評価をそれぞれの立場でいかに真剣に受けとめるか、これがこれからの日本にとって非常に重要な、それは個性的な学問も育て、あるいはそれぞれの職業人として個性を育てる上でも、この評価こそこれからの最も重要なポイントだと思っております。  ですから、この第三者評価も、決して大学の自治に手を突っ込んでいくのではなくて、あなたのところがやっているのは我々から見るとこういうことですよ、この点に問題があるのじゃないかということをやはり第三者的な立場で指摘する。その中には法曹関係者も入っておられるでしょう、あるいは大学人も入っておられるでしょう、一般の国民も入っておられるでしょう。権威は持っていただかないといかぬのです、正確な評価をしないと権威が出ませんから。そういうところでちゃんと評価していただく。そしてそれを大学はどう受けとめるか、これはまさに大学の自治です。  ですから、決して大学は社会で孤立したようなものではない。これは大学に限らないと思います。日本社会のさまざまな自治的な団体も私はそういう状況にあるのじゃないかと思います。ですから、そういう角度でこの第三者評価というものを受けとめていただきたい。決して大学の自治の侵害というレベルではなくて、むしろ大学の自治を高める観点から、こういう第三者評価というものを大学人として生かす方向を考えなければいけないのじゃないか、そういう思いでおります。やや私の個人的な思いが入っているかもしれませんけれども。
  32. 横内正明

    横内委員 自民党の横内正明です。  両参考人、きょうは御苦労さまでございます。  今回のこの中間報告といいましょうか審議会検討で、国民が利用しやすい司法というのを柱として掲げておられる、大変結構なことだと思うのですが、同時に、私は、国際社会が利用しやすい日本司法という観点をぜひ検討して盛り込んでいただきたいというふうに思います。  先月の文芸春秋に、国際的に活躍している弁護士さんが最近の国際ビジネス紛争の実態みたいなものを書いておられました。参考人もお読みになったと思うのですけれども、私は非常に感心をし、同時に心配になったわけなんです。グローバリゼーションに伴って国際的な企業の紛争というのは増加をしてきているわけなんですけれども、それの準拠法だとか準拠裁判所というのは英米法が圧倒的にこの数年優位になってきている。法律も英国か米国の法律を使う、それから裁判所も、アメリカ、イギリスに関係のない紛争についてもアメリカかイギリスの裁判所を使うというのが圧倒的になっていて、日本法と日本司法というのは全く日本国内だけのものになっている。日本企業がこれだけ国際的に活躍しているのに、日本司法というのは全くローカルなものになっているということをいろいろ言っておりましたけれども、これは非常に重要な視点じゃないかという気がいたします。やはりもっと国際的に使われるような日本司法であってほしいというふうに思うのですね。  そのために、具体的には、もう既に指摘しておられますけれども、商法を初めとする基本法はできるだけわかりやすく直さなきゃいかぬということは当然あると思いますし、それから司法サービス、いろいろな判例検索とかそういうものも、外国人がうんと使いやすいような司法サービスをしてもらいたいと思います。  それから同時に、その本にも書いてありましたが、例えばアメリカの州の裁判所というのはその州に関係ない人の訴訟でも、何か二十五万ドル以上の訴訟であれば受け付けるんだそうですね、どんな人間であれ。非常に使い勝手がよくなっているというようなこともあります。  そういう国際的なビジネス社会が使い勝手がいいような日本司法というものをぜひつくっていただきたいと思っているのですが、その点についてお考えを伺いたいと思います。
  33. 佐藤幸治

    佐藤参考人 私の方からは一般的なことをまずお話しさせていただきたいと思いますけれども、御指摘の点はまさにおっしゃるとおりだと思います。国際化の対応に乗りおくれてきたということは、これは法曹界、司法がそうだというだけじゃなくて、あえて言えば日本の大学がグローバル化におくれたと思っています。  先ほど、学部教育と専門教育というのをちゃんとシステムとして確立しなければいけないと申しましたけれども、学部教育の大事なところには語学教育があると思うのです。そして外国について開かれた教養的な関心を持ってもらう。これをやはり基礎に、土台に据えて、語学も身につけて、そして法科大学院でプロとして法曹人としての教育を受けていく、こういうシステム。こういうことを申しますと手前勝手なことばかり言っているんじゃないかとおしかりを受けるかもしれませんけれども、今のシステムでは基本的に、根幹からそういうグローバル化に対応していく日本教育システムができていないということの結果がこういうふうになっているんだということを強調したいと思います。  そして、例えば通産省とかいろいろな人たちで、ガットとかWTOとかそういう交渉をしてきた人たちの話を聞きますと、やはりアメリカの人たちは十人ぐらい法曹関係者がついてきてサポートする、ところが日本の場合はそれが大変なんですという話をよく聞きます。これは官庁でもそうであり、企業であれば一層そういうあれがあるのかもしれません。  だから、そういうためにはやはり優秀な人材を法曹界に吸収して、教育をして、そして多様なそういう人材がまたいろいろなところで活躍してもらうためにも、法曹人口三千人というのを目指そうというのは、とりあえずそういうことを我々としてやろうじゃないかという思いを持たなければこのグローバル化に対応する日本のシステムはできていかない、個人的にもそういう非常に強い危機感を私自身は大学についても法曹についても持っております。  具体的な仲裁とか制度の仕組みについて、アングロサクソンとヨーロッパ大陸との違いというのは、私個人としてはいろいろ考え方があるのですけれども、それはここで控えておきます。
  34. 竹下守夫

    竹下参考人 ただいま御指摘の、国際取引紛争等について英米が優位に立っていて日本司法が利用されないのではないかという点でありますが、それは全体としては御指摘のとおりだろうというふうに思います。  申すまでもなく、これの遠因は、経済そのものが現在世界の中で、とりわけアメリカ経済というものの持つ支配力といいますか、そういうものが大きく影響しているということは確かだろうと思います。グローバルスタンダードというのは結局アメリカンスタンダードだというふうなことを言われるぐらいでございますので、こういう面は司法制度整備するというだけではなかなか解決できない問題だろうと思います。  それから司法制度に関連する点で、人的基盤整備をしなければならないというのは、ただいま佐藤会長の指摘されたとおりでございます。  認識の問題といたしまして、それでは日本司法制度がそれほど使い勝手が悪くて使われないのかと申しますと、全体的にはおっしゃるとおりだと思いますけれども、やはり徐々に変わりつつあるということは申せるのではないかと思います。  一般訴訟でも、判例等を見ておりますとそういう外国の企業が日本の訴訟にあらわれてくるという例もかなり多くなってきていると思いますし、それから、本来の訴訟ではございませんけれども、やはり司法の一環であります倒産事件につきましては、最近もいろいろ話題になっている大型事件について、外資が営業譲渡を受けるというようなケースは決して珍しくなくなってまいっております。やはりそれだけ日本司法制度は使われているという見方もできるのではないかと思います。  それから人の面でも、外国法事務弁護士というものがございまして、外国の弁護士も、一定の資格要件を備えて法務大臣の認可を得れば日本でも一定の業務ができるという制度も徐々に拡張してきているところでございます。  ただ、私どもの審議会といたしましては、それでは御指摘の問題にどう対応するのかと申しますと、一つは人の面でございますが、もう一つ直接の問題としては、やはり国際仲裁というものにつきまして日本の制度が十分でないというので、この点については早急に整備をする必要があるだろうというふうに考えているところでございます。
  35. 藤島正之

    藤島委員 自由党の藤島でございます。  二点お尋ねしたいと思いますが、先ほど日野委員からも御質問があったのですが、大学院構想と人の養成の問題です。  私も実は司法試験は入りましたけれども、法曹界に入らなかったのです。当時、五百人ぐらいだったのを三千人という、その三千人の論拠が何となく理解ができないのと、やはり、人数の確保と質の確保というのは、明らかにある意味では矛盾する面があるわけですね。人数がふえればそれだけ質は落ちるに決まっているわけでありまして、そういう意味で、我々の感じとしましては、いかに難しいか、大変だというので、逆に優秀な人がそこに来ていたという感じがするわけですね。  それを今度、やりたい大学が全部大学院をつくってやるということになってきますと、一定の枠組みはあるにしても、そこを卒業しないと受けられない、こういうふうになるわけです。まさに今お医者さんの制度と同じになるわけでありますけれども、人数が足りないというのでお医者さんも随分ふやしにふやしたわけですね。ところが、昔は尊敬されていた医者が、今や医者を尊敬する人は余りいないんですね。  今の法曹も、それは悪いことをする人はいるわけですね。かつて検事で正義の味方だった人も、弁護士になって悪いことをしている人もおるわけでありまして、要するに、それは大きな枠の中にそういう者が出るからといって、資質がどんどん落ちてきているわけではないのでありまして、その辺はどうも考え方がちょっと一貫していない部分があるのではないかなというのが一つ。  現に見ておっても、弁護士が足りない足りないというけれども、確かに田舎の方では足りないし、先ほど地図をあれしましたように、ないところもあるわけですけれども、東京の方で本当に必ずしもそんなに足りない足りないということになっているかどうか。逆に、むしろ弁護士の仕事をもうちょっと精査して、何でもかんでも弁護士以外やってはいかぬ、弁護士以外の者がやればすぐに法律違反だ、そういうのではなくて、弁理士だとか司法書士だとかいろいろな人がいるわけで、そういう部分をどんどん、弁護士の仕事をそういう人たちもやれるということにしていった方がいいのではないか。  そうでないと、三千人の論拠は私は余りはっきりしないのですけれども、それが余りふえてしまうと、またお医者さんみたいにちまたにあふれ返って生活もままならぬというのがいっぱい出てくると、かえって悪いことをしやせぬか、むしろ法曹界の信用を落とす方にも行きやしないかという感じがしまして、むしろ、質の向上というのはもっと違うところにあるような感じがしておるということ。  もう一つは、日本の裁判制度は全く変わっていないで、古いままずっと来ておる。それはやはり、刑事裁判ですけれども、専門家同士だけでやっている面が非常に多いのではないかということで、私はもっと国民参加といいますか、専門家でない人も入る制度、こういうのも本当に前向きに研究すべきではないかなという感じがするのですけれども、その点について触れ方がちょっと少ないのは、そういう方は余り熱意を持っていないという意味なのか、木島委員も質問されたようですけれども、その辺、どうなんでしょうか。  二点お伺いしたいと思います。
  36. 佐藤幸治

    佐藤参考人 三千人の論拠につきましては、先ほど来申していることでありまして、弁護士の仕事を今を前提にして考えると、あるいはその立場からすれば、これでいいじゃないかという考え方もあるかもしれませんけれども、さっき申しましたように、自治体へ法曹資格者がどんどん入っていく。自治体の質を高める。あるいは企業に入っていってコンプライアンスの確保に法曹人が活動する。あるいは個人的にも、例えば老齢後、高齢者になって自分の財産を処分しながら最期を全うする、そのときに財産の管理をだれにお願いするのか。そうすると、やはりすぐ目に浮かんでくるのは弁護士なんですね。  ですから、そういうように考えていくと、潜在的な需要というのは相当あると私は思っているのです。そこは、見解が違うといえば違うことになるかもしれませんけれども、潜在的な需要は多い。しかも、外国と比べましても、日本がやはり法曹人口が圧倒的に少ないということは否定しようのない事実です。にもかかわらず、日本はこういう社会だというように考えればそういう考え方はあるかもしれませんけれども、さっき申したように、もし弁護士さんが身近におれば弁護士さんに相談したいという潜在的な需要は相当あると私は思っているのです。そういう意味で、三千人というのは、明確な根拠はどうかと言われるとなかなか難しいのですけれども、決して何か現実離れした数字ではないというように考えております。  そして、大学院について御疑問が出されましたけれども、人数が少ないから、合格者が少ないから優秀な人がそこに集中している、殺到しているかというと、そこは全然別の考え方もあり得る。先ほど申し上げたように、そんな五回も六回も七回もしなければ通らぬ試験というのはもうやめておこう。私の身の回りでも、非常に優秀な人間が司法試験を受けませんでしたという方が相当います。ですから、ここはどっちがどうかというのは断定はできませんけれども、狭いから優秀な人が殺到するあるいは来ているということは、やや断定に過ぎるんではないかという感じを持ちます。  それから、専門家同士の話でありますけれども、これも先ほど代理も触れられたことですが、今回の審議会の構成メンバー自体がいわゆる非法律家が過半数を占めるような構成になっている。決して法曹三者だけで考えるな、もっと国民視点で、まさに広い国民視点で、あるべき司法を考えてくれというのがこの国会から私どもに送られたサインだというように思っております。そういう観点から審議をやってきました。  それから、二十一世紀日本社会というのは、やはりプロが非常に重要な役割を果たす。先ほどは国際化の話、グローバル化が出ましたけれども、プロが非常に重要な役割を果たしていく時代じゃないかと思うのです。しかし、それは決してプロの独善化とかそういうものでやってはいけないのであって、社会がそのプロの存在理由を十分生かすような社会になっていかないといけない。そうすると、プロと一般の国民とのコミュニケーションというのをいろいろな工夫をしながらつくっていかなければいけない。  その一つの場面が、例えば訴訟への参加。訴訟についての陪審制、参審制の話ですけれども、訴訟への参加を通じてプロと一般の国民が接触する、そういう場をつくる。あるいは、裁判所裁判官の任用のところで、下級裁判所裁判官の場合は指名権は最高裁判所にあるわけですけれども、その指名の過程に何らかの機関をつくってそこに一般の国民の代表などが参加できるような仕組みをつくって、裁判所についての国民の関心をつなぎとめるといいますか強化する、そういう工夫も必要だろう。  ですから、今まで司法といいますと、極端な言い方をすると何か孤高といいますかそういう感じのところがなきにしもあらずだったのではないかと思うのですけれども、それでは十分な静脈としての機能を果たせないのであって、もっと機能を果たすためには国民にもっと強い基盤を持っていただく必要があるだろうということで、さっき申し上げたようなさまざまな国民参加の仕組みを審議会として考えてきているところであります。
  37. 杉浦正健

    杉浦委員 参議院の本会議で、少年法の趣旨説明質疑に行っておりまして、重なったものですからおくれたことをお許しいただきたいと思います。  両先生、御出席いただきまして、本当にありがとうございました。  私どもと申しますか、自民党としては、平成八年ですか、前々回の選挙の直後に、当時の山崎政調会長が言い出されまして、いわば第七の改革として司法改革を取り上げるべきだということに相なりまして、今の保岡法務大臣が会長として、私は事務局長として参加したのですが、特別調査会を立ち上げたわけであります。その審議の結果、司法制度改革審議会を内閣に設置すべしという提言を当時の橋本総理にした。代がかわって小渕総理から審議会設置法が出てまいりましたが、そういう経過司法改革が広く議論されることになったわけでありまして、まことに感慨無量でございます。  当時は、これほどまでに国民各界各層で司法改革議論が盛り上がるとはちょっと想像がつかなかったわけでありますが、先生方の御尽力、各界の協力等ありまして、ほぼ願っていたとおり大きな流れとして司法改革の道筋ができつつあるということを喜んでおる次第でございます。先生方初め十三名の委員の方々の御努力に、まずもって心から敬意を表する次第であります。  審議経過等は逐一事務局から伺っておりますので、細かな点になるかもしれませんが、二点ばかり御要望と、それから二項目について御質問させていただきたいと思います。  要望としては、このペーパーをざっと拝見して気になっておりますのは、私が担当した小委員会で、国民司法参加ということで、陪参審、陪審、参審の導入を検討すべきという御提言をした。私どもの提言については、分厚いペーパーを差し上げたのでもう御存じと思います。  これを拝見しておりますと、司法参加については「今後、主として刑事訴訟事件一定事件念頭に置き、我が国に相応しいあるべき参加形態検討すること」とあるわけでありまして、刑事事件に限るおつもりはないと思うのですけれども、私どもは、民事も、最高裁が言っておられる専門参審、医療過誤とか特許だとか等の専門の参審制のみならず、例えば損害賠償請求訴訟も導入したらどうだ。つまり、損害賠償額が余りにも低過ぎる、裁判官の査定が。アメリカのケースですと、陪審制をやってからどんどん賠償額が上がってきたという経過もありますので考えておるのですが、民事についても幅広く参審ないし陪審の導入を検討していただきたい、御注文でありますが。  それからもう一つは、民間から強く私のところに言ってきておられるのですが、ロースクールについては、余り競争制限的なものにしないで自由設立といいますか、やってほしいという要望が強うございますので、その点は今後の審議の中で御検討いただきたい。  それから質問ですが、私どもの自民党の検討の中で……
  38. 太田誠一

    太田委員長 杉浦先生、まだ時間がありますので、ちょっと切って。
  39. 杉浦正健

    杉浦委員 今のは質問ですが、知的財産権とか、出発点では随分議論されたんですね。日本の国家戦略として、知的財産権、特許権を初めやらなきゃいかぬ、裁判が遅過ぎる、特許庁は問題がある、こういう問題提起があったのですが、お触れになるところが少ないようにお見受けするんですね、それが一つ。  それから、司法の前提として警察ですね。警察のヒアリングなんかはなさっておらないようなんですが、私は少年法をやっておって、警察の改革といいますか、業務の改善について御検討なさったのかをお伺いしたいと思います。
  40. 太田誠一

    太田委員長 済みません、二分ずつということで、質問をなるべく分けていただくように、お答えの方もぜひ二分以内にお願いをいたしたいと思います。
  41. 佐藤幸治

    佐藤参考人 せっかくの御質問で、陪参審の方は、専門参審は別途考えるということにして、一般的な仕組みとして陪審制、参審制をどうしようかということで議論したのです。そして、それは主として刑事訴訟事件に限って、一定のそういうものに限ってやろうじゃないかということになりましたので、決して専門参審を排除するとかそういう趣旨ではありません。それはそれとして検討していただこうということであります。  それから、ロースクールの方は、自由設立ということも、これは基準を満たせば自由に参加していただく、これがまさに我々の考え方の根幹にあります。公平性開放性多様性というその趣旨の中に入っていることであります。  それから、知財関係につきましては代理の方からお答えいただきますが、警察の改革関係は、一言だけ申しますと、今度の私どもの項目の中に検察庁の話は入っておりません。審議会委員の中で、検察のあり方も大事じゃないかという御指摘がありまして、これは中間報告後、警察の方、関係者からもヒアリングしまして、検察のあり方については議論する機会をできれば持ちたいというように考えているところです。
  42. 竹下守夫

    竹下参考人 それでは、とりわけ知財関係のことについて、どういう議論がなされたのかということについて申し上げたいと思います。  私どもの審議会では、全体の項目といたしましては、審理の迅速化を図るという文脈で、専門的知識を要する事件についていろいろ提言をしているところでございますが、とりわけ知的財産権関係訴訟につきましては、これは各国とも御指摘のように国際的な戦略の一部と考えているところでありまして、訴訟手続に関する制度的整備とあわせて、裁判所の執務体制整備強化、専門化した裁判官弁護士等の人材の育成、増強など、人的基盤強化等も考えるべきであるということを一般的に申しまして、具体的には、現在も一部の裁判所に設けられてございますが、知的財産の専門部というものを一層拡充いたしまして、専門化された裁判官、それから技術専門家である裁判所調査官を集中的に投入したり、先ほども触れたところでございますが、専門委員、それからまた専門参審制など専門家の手続関与というものを導入いたしまして、これを実質的には特許裁判所ないしは知的財産権裁判所としての機能を果たせるようにするべきであるということを申しております。  それとの関係で、ドイツでも特許裁判所というのは全国一つでございますから、東京、大阪両地裁をこの知的財産権訴訟の専属管轄裁判所ということにしたらどうかという意見もございまして、そういう方向検討しておりますけれども、これについてはなお、反対の御意見もございますので、今後も検討を続けていくことにいたしております。  以上です。
  43. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)小委員 裁判官についてですけれども、さっき下級裁判官任命について何らかの国民的な関与というお話がありまして、大変結構だと思いますが、最高裁判所裁判官任命についてはどう考えておられたのか。これは、戦後の一時期、片山内閣時代だったと思いますけれども、任命諮問委員会制度というのがあったんですね。これくらいは活用するというようなことが考えられないかという御議論がなかったか。  それと、最高裁判所国民審査、これは憲法で決まっていますけれども、具体的な実施方法は法律で決めることになっているわけです。衆議院の総選挙と一緒にということが憲法で決まっているものですから不自由なところもあるのですが、これがまことに形骸化していますね。それと、投票者の気持ちと合っていませんね、棄権の制度がないですし。ですから、そういうようなことについてどうお考えになっているのか。  それともう一つ裁判官の市民的自由、こういう議論があったのかなかったのか。  私ども、「日独裁判官物語」という映画を見て大変感心したのですが、ドイツの裁判官なんというのは、市民的な活動をどんどんやっている、ボランティア活動をやっている、中には地域の議員の活動も兼任してやっているというようなこともある。それから、組合もつくっている。そこまでというようなことは私どもは言いませんけれども、余りにも日本裁判官の場合は市民的自由がなさ過ぎるのじゃないか。  さっき木島さんから話があったけれども、市民集会に出て発言しただけで処分になるなんというのは、これはもう欧米から見たら噴飯物だと言われているぐらいですけれども、余りにもそういうことのために井の中のカワズになり過ぎているのではないかということがあるんですね、これは検察官もそうだと思いますが。そんな御議論があったのかどうか。また、これからそういう御議論をされる余地はあるのか、その点だけ。
  44. 佐藤幸治

    佐藤参考人 第一点でございますけれども、下級裁判所裁判官だけじゃなくて、最高裁判所裁判官の選任のあり方についても皆さん関心をお持ちでございます。それで、現に、戦後間もなくの諮問委員会ですか、あれについても、あのてんまつがどうだったのかというようなことも事務局を通じて調べて報告してもらったり、関心を持っております。  これは、立ち入った議論はまだこの段階ではできておりませんけれども、この最高裁裁判官の選任の仕方、それから国民審査のあり方も当然今後議論してまいる予定であります。  それから、裁判官の独立性の問題でありますが、これも既に、論点整理するときにも文書を公表しておりますけれども、あの中でも、独立性ということは重要だからちゃんと書くべきだということで、その辺は触れております。  それから、今回の集中審議のときのいわゆる法曹一元をめぐる議論のまとめ方の中で、二十一世紀司法を担うにふさわしい裁判官をいかにして安定的に確保するか、そしてその裁判官が独立性を持って司法権を行使できるようにいかに考えるか、そういう、個々の裁判官の独立性というのは非常に重要だという認識をその取りまとめのペーパーの中でも示しているところでありまして、委員の皆さんは多かれ少なかれ裁判官の独立の問題については御関心をお持ちである、いずれまたその辺についての議論が今後あり得ることだろうというように理解しております。
  45. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)小委員 拝見して、もしも足りなければ、またそのときに申し上げたいと思います。
  46. 日野市朗

    日野委員 私も、法曹一元についてお話をちょっとしておきたい、注文しておきたいと思います。  法曹一元かキャリアシステムかという概念にとらわれないで国民が求める裁判官像を描く、こうなっていますが、こう言われるとだれも反対できないんですよ。しかし、国民にはいろいろあるんですね。さっき木島委員も言われたように、現在の裁判所というのは国家の統治機構の中にしっかりと組み込まれていると私も思います。そして、そのことのために裁判官の純粋培養が行われて、現在のようなもう本当に、私に言わせてもらえば、これはどうにもならない裁判官が生まれていると思うんですね。これはちょっとどこかの企業や行政府に出向させたぐらいでこんなものは直るはずがありません。  我々は政治家ですから、いろいろな選挙民と会います。恐らく先生方よりも多くの選挙民と会って、そこで通用している常識なんというのはどういうものかということを私どもは経験しているわけですね。やたら喧騒で声がでかくて小金を持った者が威張って、そんないろいろな日本社会の中の経験というものは、そんな薄っぺらなことではとてもできないと私は思います。  それから、キャリアシステムの持っている最大の欠陥は、やはり裁判所に入って昇進をしようという意欲を裁判官が持つことだろうと私は思いますね。そうすると、上司の言うことには逆らわない。中には乱暴な裁判官がいて、無罪判決を出すときはおれに一言相談しろなんという裁判官すらいたんですからね、これは現実問題として。  こういう状態では、私は、本当の国民のための裁判というものはできないんだろう、こういうふうに思います。やはり、そういうものから断ち切って、日本の法律に従ったきちんとした裁判をやっていく、それからきちんとした事実認定をやっていく。そのためには、私は、キャリアシステムを否定することが必要だ。ですから、私、ここではやはり法曹一元かキャリアシステムかというのは二つのてんびんにかかっていると思うんですよ。  そこで、私は、法曹一元ということをきちんとやらないと、きちんとした日本の裁判というものは機能しないだろう、こう思いますので、このことについては注文をしておきたいと思います、どういう議論があったかわかりませんけれども。  それから、事実認定に関しては、やはり陪審制度をきちんとやらなければ、日本のあの無罪率の低さをよくごらんになってください。もう〇・〇四%ぐらいですか、〇・四だったかな、ちゃんと数字を忘れましたが、警察官がしっかり捜査するからなんというのはうそですよ。今よく問題になっていますよ。警察でどういう取り調べがあって、そして検察官がどのようにそれを起訴、不起訴の処分をするか。今テレビなんかで随分やっているじゃないですか、警察不祥事から何からいろいろ。  ですから、私は、ここで必要なのは、やはり事実の認定については陪審制、それから法曹一元、これは日本社会を健全化していく裁判制度ということを考えれば絶対に必要というふうに思いますので、私の意見になりましたが、そんな議論がどのように行われたのか、ちょっと簡単でいいですから聞かせていただきたいですね。
  47. 佐藤幸治

    佐藤参考人 簡単に申しますが、御想像なされるような議論は皆出ておると思います。議事録をごらんいただきますと、集中審議のときも随分激しい議論を闘わせました、それぞれの立場で、真剣な思いで。ですから、本当に、さっき申し上げた、御想像できるような議論は大体出ていると思います。  御希望は御希望として私もよくわかります。そして、今の時代として、日本のあるべきあり方として、人事の交流という、人のいろいろなところの交流が必要だ。これは大学の場合もそうでありまして、大学の場合も、かつて、その大学で卒業するとそこの大学の先生になるというあれだったんですけれども、今はもうかなりそれは流動化しております。行政改革が成功するかどうかもこの人事の交流がどれだけうまくいくかということにかかっているとさえ言ってもいいと思うのであります。  そういう意味で、この裁判官も、今のように判事補が大半が判事になっていくという姿が本当にあるべき姿なのかという点についてはやはり深い検討、反省が必要ではないか。判事補の、判事になるためには多様な経験を積んでもらうとか、そういう仕組みについては、最初に申し上げたように、今後さらに、中間報告後になりますが、議論を詰めたいというように考えております。  それから、陪審制につきましても、まとめ方としてはこれも陪審、参審にこだわらないで、あるべき日本にふさわしいものを制度設計しようと言っておりますけれども、これもそれぞれの委員は腹の中にこんなことがいいんじゃないかという考えをお持ちじゃないかと思うんです。その辺も中間報告後、しかるべき時期に具体的な制度設計について検討してまいりたいと思います。  今の御指摘の点は十分踏まえながら会議に臨んでいきたいと思います。
  48. 日野市朗

    日野委員 ありがとうございました。
  49. 太田誠一

    太田委員長 予定いたしました十二時三十分にあと一分残っておりますけれども、また中途半端になりますといけませんので……。  これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十九分散会