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2000-10-24 第150回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十月二十日(金曜日)委員長の指名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  司法制度改革審議会に関する小委員       太田 誠一君    笹川  堯君       杉浦 正健君    武部  勤君       山本 有二君    横内 正明君       佐々木秀典君    野田 佳彦君       日野 市朗君    漆原 良夫君       藤島 正之君    木島日出夫君       保坂 展人君    上川 陽子君  司法制度改革審議会に関する小委員長                 太田 誠一平成十二年十月二十四日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 長勢 甚遠君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 山本 有二君 理事 横内 正明君    理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君    理事 漆原 良夫君 理事 藤島 正之君       岩屋  毅君    加藤 紘一君       河村 建夫君    後藤田正純君       左藤  章君    阪上 善秀君       笹川  堯君    竹本 直一君       武部  勤君    西川 京子君       平沢 勝栄君    森岡 正宏君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       日野 市朗君    肥田美代子君       平岡 秀夫君    山内  功君       山花 郁夫君    上田  勇君       木島日出夫君    保坂 展人君       上川 陽子君     …………………………………    議員           麻生 太郎君    議員           杉浦 正健君    議員           谷垣 禎一君    議員           漆原 良夫君    議員           高木 陽介君    議員           松浪健四郎君    法務大臣         保岡 興治君    法務政務次官       上田  勇君    最高裁判所事務総局家庭局    長            安倍 嘉人君    政府参考人    (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    政府参考人    (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君    政府参考人    (法務省保護局長)    馬場 義宣君    政府参考人    (文部省初等中等教育局長    )            御手洗 康君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     竹本 直一君   河村 建夫君     西川 京子君 同日  辞任         補欠選任   竹本 直一君     加藤 紘一君   西川 京子君     阪上 善秀君 同日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     河村 建夫君     ————————————— 十月二十三日  犯罪捜査のための通信傍受法の廃止に関する請願石井一紹介)(第一六四号)  同(辻元清美君紹介)(第一六五号)  同(細野豪志君紹介)(第一六六号)  同(横光克彦紹介)(第一六七号)  同(横光克彦紹介)(第一八六号)  同(長妻昭紹介)(第一九六号)  同(横光克彦紹介)(第一九七号)  同(佐藤観樹紹介)(第二〇七号)  同(牧野聖修紹介)(第二二四号)  同(後藤斎紹介)(第二六四号)  選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願前田雄吉紹介)(第一八五号)  治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願木島日出夫紹介)(第二一四号)  同(北橋健治紹介)(第二一五号)  同(穀田恵二紹介)(第二一六号)  同(葉山峻紹介)(第二一七号)  同(日森文尋紹介)(第二一八号)  同(細川律夫紹介)(第二一九号)  同(牧義夫紹介)(第二二〇号)  同(牧野聖修紹介)(第二二一号)  同(松本龍紹介)(第二二二号)  同(山村健紹介)(第二二三号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第二六五号)  同(伊藤忠治紹介)(第二六六号)  同(石井郁子紹介)(第二六七号)  同(植田至紀紹介)(第二六八号)  同(小沢和秋紹介)(第二六九号)  同(大島令子紹介)(第二七〇号)  同(大幡基夫紹介)(第二七一号)  同(大森猛紹介)(第二七二号)  同(木島日出夫紹介)(第二七三号)  同(北橋健治紹介)(第二七四号)  同(桑原豊紹介)(第二七五号)  同(玄葉光一郎紹介)(第二七六号)  同(古賀一成紹介)(第二七七号)  同(児玉健次紹介)(第二七八号)  同(穀田恵二紹介)(第二七九号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二八〇号)  同(志位和夫紹介)(第二八一号)  同(塩川鉄也紹介)(第二八二号)  同(瀬古由起子紹介)(第二八三号)  同(中川正春紹介)(第二八四号)  同(中林よし子紹介)(第二八五号)  同(中村哲治紹介)(第二八六号)  同(春名直章紹介)(第二八七号)  同(不破哲三紹介)(第二八八号)  同(藤木洋子紹介)(第二八九号)  同(保坂展人君紹介)(第二九〇号)  同(松本善明紹介)(第二九一号)  同(松本龍紹介)(第二九二号)  同(矢島恒夫紹介)(第二九三号)  同(山口富男紹介)(第二九四号)  同(吉井英勝紹介)(第二九五号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願木島日出夫紹介)(第二六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  少年法等の一部を改正する法律案麻生太郎君外五名提出衆法第三号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 長勢甚遠

    長勢委員長 これより会議を開きます。  この際、視察概要について御報告いたします。  去る十月十八日、少年法等の一部を改正する法律案審査に資するため、多摩少年院及び川越少年刑務所を訪れ、施設概要、最近の変化、動向処遇内容等について詳細な説明を聴取いたしました。その後、施設視察し、現場方々に対し活発な質疑を行いました。両施設とも、職員の方々科学的方法を活用しながら更生に意欲的に取り組まれており、その矯正現場の生の声は大変有意義なものでありました。  少年法国民の関心が深い問題であり、その内容委員各位にお知らせして、今回の視察を今後の審査の糧といたしたいと考えております。  詳細につきましては、お手元の印刷物のとおりであります。  以上、御報告いたします。      ————◇—————
  3. 長勢甚遠

    長勢委員長 麻生太郎君外五名提出少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君、法務省保護局長馬場義宣君及び文部省初等中等教育局長御手洗康君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 長勢甚遠

    長勢委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所安倍家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 長勢甚遠

    長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 長勢甚遠

    長勢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  8. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 民主党佐々木秀典でございます。  かねてからの懸案になっておりました少年法改正問題、こうして当委員会審議がなされることになりました。  どなたも御案内のように、少年法ができましてから、その精神少年については将来のある身であるから、仮に非行を犯した者であるにしても、その更生保護ということを主眼にしながら、そのような再犯がないようにしていく。そして、それを通じて子供たちの健全な育成を図っていくということが主眼になっている少年法。その精神を体して、家庭裁判所での保護処分中心にしながら、あわせて、起きた事案の真相も解明をしていく。そしてまた、それに応ずる処遇についても、それぞれに応じた施設が設けられ、そうした仕事に従事する方々は、この長い間非常に努力をされ、研さんを積まれて、大きな成果を上げてきているということが言えるのだろうと思います。  他の先進諸国に比べても、日本少年犯罪の場合、決してその数の点では多くない。むしろ非常に少ない。皆さん努力の結果ではないかということも言われているわけであります。  しかし、少年法も万全なものではない。そういうことから、手直しということがかなり以前から言われてはおったわけでありますけれども少年法の全面的な改正ということで形が出されたのは、さき通常国会政府少年法改正案を出されて、国会では初めてこれが審議の対象になったということが言えるのではないかと思います。  さき国会、本年の五月に閣法としての少年法改正案が出され、本会議趣旨説明が行われ、質疑が行われました。私も、民主党代表として代表質問に立ちました。しかし、その後に、選挙間近というようなこともあって、本委員会での質疑というのはほとんど行われなかったわけであります。  選挙が終わりまして、この臨時国会が始まりましてから、今度は、政府が改めてこの改正案提案するということではなしに、与党三党間の協議を経て、与党案としての少年法改正議員立法として出された。私ども野党としては、前の閣法も本会議提案されて質疑を経ているわけでありますから、この議員立法についてもやはり本会議での趣旨説明質疑というものがあった後にこの委員会にかけられるべきだと考えておりましたし、また事前には内々与野党間でその了解もあったはずだと思うのであります。しかし、それが本会議の議を経ずして、いきなりこの委員会に付託をされることになりました。  そして、この委員会においては、不幸なことに、例の参議院比例代表制度改正の問題がにわかに浮上いたしまして、これをめぐって国会が紛糾する。その結果、残念ながら、私ども野党としては、すべての審議に応ずることができないということになったわけでありますけれども、にもかかわらず、当委員会では、そうした私どもの意向が顧みられないで、与党皆さんだけでこの大事な少年法改正という問題の審議が進められたということは、まことに私どもとしては遺憾だったと思っております。  これまで与党皆さんだけによる質疑、そして参考人質疑というようなことが行われて、しかし、幸いなことに国会正常化が図られて、本日ここに私どもとしても質疑に参加することができることになったわけであります。  少年法改正については、不幸な、幾つかの異常な子供たち犯罪が相次いだなどということも加えて、国民の多くの皆さんから大変に注目をされております。しかし、できましてからいわば初めての改正ということでもあり、私どもとしては慎重の上にも慎重を期さなければならないと思っております。私ども質問はきょうから野党として始まりますけれども、十分にこの点を提案者としても、また政府としても御理解をいただきながら、この質疑の実を上げて、本当にいい法律改正ができますように私ども考えていきたいと思いますので、その点についてどうか御理解をちょうだいしたい、こんなふうに思います。  そこで、質問に入りますけれども、申し上げましたように、政府がこの国会では前の通常国会に出された閣法提出をなされなかった。まず、この理由は一体どういうことなのか。  私どもとしては、この少年法前回国会での提案については、法制審議会でも長年議論をし、この法制審議会では、各方面からの有識者の方々委員として入って、そして非常に充実した慎重な審議が行われた上で、閣法としてまとめられて提案されたものだと了解をしております。  この問題については、私はやはり政府が第一に責任を負うべき法案改定だと思うのですけれども、それをこの国会政府がなされなかったというのは一体どういう事情によるものなのか。これについて、しっかりと、国民皆さん理解ができるように御説明をいただきたいと思います。
  9. 保岡興治

    保岡国務大臣 本改正案については、解散前の国会通常国会において、最終段階だったと思いますが、立法措置を含む幅広い視野から真剣な検討をすべきであるという少年非行問題に関する決議がございました。そういった委員会決議を踏まえたり、最近の年少少年犯罪動向等を踏まえて、さまざまな角度から精力的に議論を重ねてこられまして、極めて多くの国民が早急な少年法改正を求めている実情も考慮して、与党三党において立法府に属する議員として提案されたものであると承知しております。  その際、与党という立場で、御指摘廃案になった政府提出法案内容をも考慮して取り入れていただいて、今度の改正の柱にもなっております年齢問題とあわせて法案内容にしていただいている点も、私たちとしては評価をしておるところでございます。
  10. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今の御答弁だけでは、なぜ政府政府として提案しなかったかということの御説明にはなっていないと思うんです。与党三党がやると言ったからやらせたんだというように聞こえるんだけれども政府として、なぜ閣法として出さなかったのか、そこのところを聞いているんです。もう一回答弁してほしい。
  11. 保岡興治

    保岡国務大臣 今私が述べましたとおり、与党三党で、さき国会最終段階委員会決議、それから、選挙で示された、多くの皆様方国民の声を踏まえられたと思いますし、与党としても当然それを重大に受けとめられたということもあると思います。いろいろな各方面にその後起こった議論を踏まえて緊急に対応すべきだと与党が考えられて提案された。それに政府さき廃案になった内容も取り込んでいただいたということで、我々としては、その与党の御努力を評価しているところでございます。
  12. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今、世論の動向から急ぐ必要があったというお話、これはまた提案者に、なぜ急ぐ必要があったのかということについてはお聞きをしたいと思うんですけれども、今の再度の御答弁を聞いても、なぜ政府政府としてこの改正案をお出しにならなかったのか、その理由になっていないと私は思うんです。  確かに、前の国会では、法務委員会において最後に決議がなされました。これは少年犯罪をなくするために総合的な対策が必要だということであります。これを少年法改正だけにまつというのではない、少年法改正をしてもそうした少年犯罪抑止あるいは防止ということは万全に行われるのではないということの理解皆さんの間に一致をしていたからだろうと思うわけですね。少年法改正が仮にそのための一つの方策であるにしても全部ではない。それを、与党協議があった、あるいは与党の案の中にこの政府提案趣旨が盛り込まれているんだからといって、しかし政府がやらないことになるというその理由にはならないと私は思うんです。ですから、今の大臣の御答弁というのは、私は甚だ不満足です。  それと、今急いでというお話があった。閣法としてやるのだとすれば急いでできないということになるのか、この次の質問とも関係しますけれども。  今度の与党提出改正案は、確かに前に政府提出した改正案の大方が入っていることは私も認めます。しかし、それにはなかったもの、あるいはそれを変えたもの、そういう部分が随分あるわけですね。今の処罰可能年齢を十六歳から十四歳に引き下げるなどというのは今までの規定からすると重要な改定になるわけですけれども、これは前の政府案にはなかったわけですね。今度の議員立法にはあるわけでしょう。これは前の閣法をつくるときの法制審議会での審議でも確かに議論にはなっていたんだろうとは思うけれども、しかし閣法ではそこまでは踏み込まなかったわけですね。そういうことを含めて幾つも変わった点があるわけです。例えば、被害者の問題なんかもそうですね。  こういうことについては、本来はやはり法制審議会にもう一度戻して、法制審議会議論をして、それから閣法としてまとめて出されるというのが筋だったんだろうと私は思いますけれども、それをいわばはしょって、それで議員立法の方にゆだねているというところに私は政府としての問題があると思うんだけれども、ある意味での責任回避というか、私は責任の放棄でさえあるのではないかと思うんですけれども、その点についてどうお考えになっているんですか、これをお聞かせください。
  13. 保岡興治

    保岡国務大臣 少年法は確かに少年非行犯罪について対応するのに非常に重要な柱になる法案であることは承知しておりますが、それが必ずしも閣法で出さなければならないというふうに決まっているものでもないと思います。  先ほど申し上げたように、委員会決議を踏まえた上で、しかも選挙における国民の声も多くの議員与党が承知したところを踏まえ、最近相次いでいる、社会の耳目を集めるような少年非行事件、あるいは重大凶悪犯罪、あるいは低年齢化、こういった動向を踏まえて、緊急に措置すべきであるというふうに与党が考えられて、いろいろな各方面の御意見を踏まえて議員立法提案されることは、それで私は一つあり方だと思います。  我々としては、今委員も御指摘のように、さき提出した閣法に加えてさまざまな御提案があっている内容も評価して、この審議に参加をさせていただいているところでございます。
  14. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 重ねてお聞きをしますけれども法務省部内では、こうした与党改正提案というものがなされたときに、法制審議会でこれをもう一度考えなくちゃいけないんじゃないかというような議論は全くなかったのですか。これは大臣判断として、もう議員立法でいいということだったんですか。その点、はっきりとお答えください。
  15. 保岡興治

    保岡国務大臣 与党の中で、選挙後、少年法改正についての協議が直ちに始まりました。したがって、法務省はその推移を見て対応するということで、今日に提案がなされましたので、それを評価しているということでございます。
  16. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 そうすると、いずれにしても、法務省としてはこれを法制審議会審議をする必要はない、こういう判断だったとお聞きしていいんですね、いかがですか。
  17. 保岡興治

    保岡国務大臣 与党案提出になった以上、政府与党、こういう点では一体でございますので、改めて法制審議会にかけて提案をする必要はないと存じます。
  18. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 政府与党というけれども、私は政府与党とはある意味ではやはり違うと思うんですよ、行政府なんですから。ですけれども、今のお答えを通して推測をすると、はっきりは言われなかったけれども法務省としては法制審議会にこれらの問題についてもかける必要がないと御判断した、こういうように了解させていただきますので、いいですね、その点は。  そういう上で、次の質問に移りたいと思います。  去る十月十日のこの委員会審議、私ども出席はできておりませんけれども与党委員だけによる質疑だった、そういう安心感があるいはあったのかと言うと語弊があるかもしれませんが、法務大臣はこの質疑で、少年非行犯罪解消策として、社会全体の規範意識、あるいはけじめをつけることの必要を説いておられる。そのことと関連して、憲法改正教育基本法見直しということにも言及されておられます。  誤りがあってはいけませんから、議事録の言葉をそのまま引用させていただきます。  私は、少年法だけでこういった一連少年非行事件犯罪が解消するものということでもない。 中略ですが、  私は、戦後の日本社会の鏡がこの少年事件にあらわれている。したがって、社会全体の気質、あるいは免疫力蘇生力、こういった全体の社会のありようというものを、やはり憲法改正を含め、あるいは教育基本法見直しを含め、新しい二十一世紀日本に向かって、私は、社会全体の規範意識けじめをつけるところはきちっとつける、責任義務、個と全体との関係、こういったことを社会全体できちっと新しい日本あり方として求めていくことが我々政治家としては非常に重要だというふうに思っておるところでございます。 こう述べておられるのですね。これは議事録に従って今私が御紹介しましたから間違いないと思うんですけれども。  これは大臣国会議員もそうですけれども、何といっても憲法遵守義務憲法でうたわれております。その中でも、憲法あるいは法律遵守に第一の責任を持っておられる法務大臣だと私は心得ますけれども、その法務大臣がこうした委員会の場で憲法改正の問題に触れられたというのは極めて異例のことだと私は思っています。恐らく今までなかったのじゃないでしょうか。それが、この少年法改正問題に絡んで、ここまで保岡法務大臣は踏み込んだ発言をされました。これは私は決して軽々しい問題じゃないと思っております。  この前段で法務大臣も言っているように、少年法だけで一連少年非行事件犯罪が解消するというものではない、このことは私どもも共感いたします。総合的な対策が必要なのだと、だからさき国会のこの委員会での最終段階でも、先ほど御紹介があったような、少年非行を防止するためにどうするかということについての決議がなされている。  少年法改正だけでこれをやれるというものじゃない。御理解の上での発言だとしても、この点は共感するにしても、なぜそこで突然憲法改正だとか教育基本法改正まで踏み込むということが出てくるのか。この二つの法律というよりも、法律の上の法律である憲法のどこが少年非行の、あるいは助長といいますか、抑止に欠けるところがあるとすれば、それにどんな因果を持っているのか、その因果関係が私どもはこれからはちっともわからないわけですね。教育基本法のどこが悪いのでしょう。どういうように変えることによってどうなることを大臣としては期待しているのでしょう。そのことをはっきりとおっしゃっていただきたい。
  19. 保岡興治

    保岡国務大臣 まずお断りを申し上げておきますが、私は、森内閣あるいはその閣僚として具体的な憲法改正について言及したものではありません。一政治家として、これからの日本はどうあるべきかということをみんなで求めていくべきである、議論を尽くしていくべきであるという観点から答弁したつもりでございますが、御質問趣旨に沿って申し上げれば、それは確かに少年法少年非行犯罪対策の重要な柱ではありますけれども、問題は少年非行事件などが起こらないような社会をどうつくるかというところに根幹がある、戦後の教育の問題あるいは社会気質、風潮の問題、こういったものが社会規範というものに対して少し緩んでいるのではないかということは私は基本的な政治家としての認識として持っております。  それはやはり人間が、自分のことはかわいい、自分のことはやはり情報もある。したがって、とかく自分中心になりがちであるけれども、しかし社会を生きていくためには、国家社会が繁栄し、よくなる、あるいは地域社会や学校、家庭、こういったものがよくなって初めて社会というものは健全になっていく、そういった社会全体のあり方少年非行犯罪事件に重要な意味を持っているという認識を申し上げて、そういったことについては、当衆議院及び参議院において憲法調査会等でも日本の二十一世紀の国のあり方を求めて議論を尽くしているところでございます。  そういう観点に立って、こういった社会の自浄作用あるいは免疫力といったものが必要とされる、そういったことも、国家の一つの目標として、あり方として、議論を深めていくべきだということを政治家として重視しているという見解を述べたものでございます。
  20. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今お話しの趣旨の大半については私も了解するし、共感を覚えるのです。確かに大臣がおっしゃるように、今の世の中の風潮でいろいろ問題のあることはわかります。それをみんなでどうやって直していくか、それが少年犯罪抑止につながっていくのだということも理解できます。  しかし、その中で、具体的に大臣憲法教育基本法見直しということも言っているのですよ。今言われた風潮、これを直して日本あり方をどうして考えていくかということ、ここはわかるにしても、それと憲法改正教育基本法改正ということがどういうふうにかかわっていくのか。だったら、憲法のどういうところがいけないのか、教育基本法のどこがいけないからどうしたい、そうすれば今言ったような方向に影響していくのだということになるのだろうと思うのだけれども、そこのところをお聞きしたいのですよ。そこまで言ってもらわないと、それは幾ら政治家の個人的な見解だなんということでは済まされないのですよ、これは。憲法改正教育基本法改正見直しまで具体的に言っているのだから。  それでは、もう一つ踏み込んで言ってください。
  21. 保岡興治

    保岡国務大臣 恐らくそういう議論は、この数年の間に議論が詰まってくると思うんです。しかし、今ここで私が憲法改正の条文に、あるいは教育基本法の条文、内容に照らして具体的に言う段階ではない、そういう状況でもないということは、冒頭に森内閣認識あるいはその閣僚としての認識を申し上げたとおりでございます。  しかし、私は先生にむしろ逆にお尋ねしたいのだが、社会全体のあり方、国家の基本的なあり方、こういうことは憲法という最も基本となる法規範、これに重要な関係がある、そしてそれと裏腹にある教育基本法にもやはり論議が及ぶだろうということは先生も認めていただけると思うので、私はそういった一般的な関係に立って政治家としての認識を申し上げたところでございます。
  22. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 ここで憲法教育基本法論争をあなたとちょうちょうとやるつもりはないけれども、しかし、今お聞きになったから言うけれども、私をして言わしめれば、今の憲法の理念がしっかり生かされ、あるいは教育基本法の理念がしっかりと生かされるような教育というものが徹底していれば、むしろ私は、あなたのおっしゃるようなことと裏腹に、そういう悪い風潮等は出てこなかったはずだと思いますよ。その理念を阻害するような事態がこの現実社会の中で日本では進んできてしまっている。だから、むしろ憲法の理念や教育基本法の理念と乖離した現状というものができている。ここをどうやって直していくかということが問題なのだと私は思っているので、憲法改正したり、教育基本法をそういう意味改正する必要なんて私はちっともないと思っている、あるいはそこで大臣との見解を異にするのかもしれないけれども。  もちろん、今、国会の中でも憲法調査会がありますし、憲法を論ずるということはタブーではないわけですから、大いに論じていきながら日本あり方を考えていかなければならない。だけれども、短絡に憲法改正だとか教育基本法改正を、あるいは大臣をして言わしめれば、今の憲法国民の基本的人権尊重というこのことを強調し過ぎているのじゃないか、だから義務の観念が薄らいでいるのじゃないかなどということを多分言いたいのではないかと憶測をするのだけれども、そういうことではないと私は思うんですよ。  そういうあり方について、これはこれからも議論は深めていきたいと思います。しかし、少なくともこの少年法改正あるいは少年非行犯罪抑止などについて憲法改正だとか教育基本法改正などということが必要だなどということは、私はこれは軽々におっしゃるべきことではないと思いますね、法務大臣たる者としては。ここのところはひとつ心得てこれから対処していただかなければ、これからもまた問題にしていかなければならないと私どもは思っております。  時間がありませんから、この程度にいたします。また、この点についてはこれからも議論をしていきたいと思いますね。  それからもう一つ大臣にお伺いしたいんですけれども、これも十日の委員会での質問に対する御答弁で、刑事処分可能年齢を十四歳に引き下げるという改正案について、「最近の少年非行の情勢に対処するための緊急の対応」というように答弁されていると思いますけれども、この十六歳・十四歳問題がそんなに緊急な問題だというのは、どういうことを考えてのことなんですか。この緊急性ということについてお答えになっていますけれども、改めてお聞きをしたいと思います。
  23. 保岡興治

    保岡国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、最近に至るもやはり、年少少年の凶悪重大な事件、大分の十五歳の六人家族の殺傷事件などに代表されるいろいろな事件がこのところずっと続いている。そういったことや、先ほど申し上げたように、国民の中に、そういうことにきちっとした対応が必要だということをいろいろな角度からの御意見を踏まえて検討された結果、緊急性を要する立法として与党が御提案になったものだと承知しております。
  24. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 与党提案したということはいいんですよ。与党提案したということはいいんだけれども、特に、大臣が十四歳に引き下げることが今度の少年法改正と絡んで緊急な課題だと言っているものだから、そんなに緊急なものですかということをお尋ねしているわけですよ。  これをやらなきゃどうにもならないようなものじゃないんじゃないですか。だって、閣法にはここまでの年齢引き下げはなかったんですよ。その閣法を出される以前にも、やはり低年齢の子供の犯罪というのはあったんですよ。それはその後に突出した事件は起こったことは起こりました。だけれども、その前だってなかったわけじゃないんですよ。それを、特にそういう事件が起こったから十四歳に引き下げる、そういう緊急性がある、こう考えたということなんですか。
  25. 保岡興治

    保岡国務大臣 これは与党提案でございますから、緊急性についてはむしろ与党提案者に聞いていただくのが筋だと思いますが、私としては、先ほど申し上げたような理解をしているということでございます。
  26. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 それは、法務大臣としてそう言われているから、法務大臣としてのお考えをお聞きしたんだけれども与党の方で必要だから、そう言っているからということだけでは、私ども本当は納得できない。だけれども、一応きょうのところはそうお聞きしておきましょう。  それじゃ、これから提案者にお聞きをしたいと思います。  少年法改正を急ぐ理由、さっき大臣にもお尋ねしたんですけれども、これは提案者にももう一回お聞きしなければなりません。  これは、次の質問の六番目、この改正案少年非行犯罪抑止にどれだけの効果があると考えているのかという質問とも絡むわけですね。これは、先ほど大臣答弁で確認されたように、少年法改正だけが少年犯罪の、あるいは少年非行抑止に唯一のものではないということは、もうだれしも言われている。この十日の委員会議事録を読みますと、提案者である麻生先生かな、あるいは杉浦先生もそう言われていますね、それについて言及されている。こうした重罰化といいますか、その傾向を強くするような少年法改正というのは果たして犯罪抑止力につながるかということについてはいろいろな議論があるわけで、むしろそうならないという意見もあるわけですね、役に立つという意見もあるけれども。  これは、きのうの毎日新聞の朝刊です、十月二十三日の朝刊ですけれども、アメリカの司法の関係者が、少年審判のあり方などについて、あるいは少年処遇について考えるということで日本に来られているという記事が出ていますね。  これによると、きのうもう既に行われたようですけれども、シカゴ少年裁判所のウィリアム・ヒブラー裁判官、それからイリノイ州クック郡の少年司法局で働いていらっしゃるというキャサリン・ライアンさんという方が来られている。そして、大正大学で、「アメリカにおける少年犯罪少年法」と題した講演をきのう行われているようです。行うと書いてありますから行われたんだと思います。  それによると、日本よりも一足早く少年の厳罰化に踏み切ったアメリカで、しかし少年犯罪の凶悪化はとどまらない、いきなり型の殺人もふえているということで、このアメリカの司法関係方々が、日本少年犯罪に対する対応あるいは処遇の状況などについて、勉強も兼ねて来ているんだということが紹介されているわけですね。  アメリカなどでは今も、私が話しましたように、少年犯罪について厳罰化の方向というのはかなり早くつくられたわけだけれども、一向にその後少年犯罪は減らないし、むしろ増加し、あるいは内容も凶悪化している。アメリカの場合には、日本と違ってまた例の銃砲による犯罪がありますね、日本の場合にはこれはないけれども。以前も、未成年者が銃砲を持って子供たちを撃ちまくったなんというひどい事件があったわけですけれども、そういうようなことからも、むしろアメリカあたりでは、少年に対しては保護処遇というか、そういうふうに改めた方がいいのではないかという議論が最近になって非常に起こっているようにも聞いているわけですね。  そういうことを考えますと、今この少年法与党改正案は今までに比べてさまざまな点で少年に対して厳しくなるのは明らかなんですけれども、これをなぜ急がなければならないのか。私は、この論議がこの国会での法案審議を通じてやっと国民的なものになっているということは歓迎するべきものだと思っておりますし、むしろ、この審議を通じて国民皆さんに、さまざまな観点から、一緒になってこのあるべき少年非行犯罪防止の問題を考えてもらう、その中で少年法がどういう役割を果たすのかということについても理解を持っていただくいい機会だと思っているだけに、この論議は決して出口をどうするなどということを決めないで、慎重に慎重に論議をしながら、ここでの論議を国民皆さんにまたお示ししていく非常にいい機会だと思っているわけです。  しかし、どうも見ておりますと、与党皆さんは、とにかく今国会中にどうしてもこれを成立させなければならないというような大変な意欲に燃えていらっしゃるようにも見えるわけだけれども、なぜこれを急がなければならないのか、十二月一日までと限られているこの国会でなぜこれを通さなければならないのか、これを通さなければ犯罪がまたふえるよということなのか、その辺について、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  27. 麻生太郎

    麻生議員 なぜ少年法改正を急ぐかという点につきましては、さき国会で、五月、当委員会、当時は武部委員長だったと思いますが、武部委員長を通じて、時の法務大臣、臼井日出男大臣に対して提案がなされておりますのは御存じのとおりであります。その中において、「その健全育成を図る見地から、年齢問題、少年に関する処遇の在り方等を含め幅広く早急に検討すること。」と書いてありますので、これが、まず当委員会としてというか、この国会といたしましてのいわゆる決議をしておられますので、そういう意味での背景の一つです。  もう一つは、これはもうこの衆議院の選挙を通じて、佐々木先生初めここにお見えの委員方々は、それぞれに選挙期間中いろいろなところで有権者の意見を聞かれたと思いますし、事実また新聞等の世論調査を見ましても、少年法改正につきましては事を急いでおられる、早く成立させるべきだという意見の方が多いということも御存じのとおりだと思っておりますので、それが背景であろうと思っております。  事実、少年犯罪というのは、決議がされました後も、先ほど大分の話が出ましたけれども、いろいろ出たことも間違いない。しかも、あれは都会の話だと言っておりましたけれども、大分が都会でないと言うと大分の人でひねる人もここになきにしもあらずかもしれませんけれども、なかなかああいったところでも、ああいったところと言うとまた何か言われそうですけれども、大分でもそういった、隣の顔見知りの人であって、全く隣の人は何する人ぞではない、よくよく知っている、子供のときから知っている人を相手にああいった事件が起きておるという事態は、これはゆゆしき事態になっておると理解しないといかぬのではないか、ここらが多分背景だと思います。  その次に、では、そういったものを受けて直ちにこの少年法改正したからといって少年非行が減るかと言われれば、私どもとして、少年犯罪というものの背景はそんな単純なものではないということは、少年法関係のことを勉強された方々、これは一様に皆さんよく御存じのとおりだと思っておりますし、その内容も随分異なってきているとは思います。  少なくとも、少年法ができました当時、これはいわゆる占領中の話でありまして、まだ日本が独立する前にこの法律はできているんですが、その当時の少年犯罪内容というのは、いわゆる飢え、腹が減っているためにパンだミカンだかっぱらったという話、そのような感じの少年法の感じと、少なくとも今、いわゆる飽食の時代に対して、殺す経験をしてみたかったから殺してみたとかいうような、私どもの常識とはかなり逸脱したようなことが平気で言われるような時代になってきている。そういった状況下において、この法律が今のままで正しいのであろうかという点も改めて考えなければいかぬところだと思っております。  しかし、だからといって、法律改正ができれば直ちに少年犯罪が減るかといえば、先ほど申し上げましたように、そのようなことは私自身も考えておりませんが、少なくとも、社会的規範というものを守らなければ罰せられるという事実をきちんと知らしめるということは大変大事なことだと私は思っております。  少なくとも人の命を、いわゆる過剰防衛とか過失によってあやめたのではなくて、故意に、意図的に、確信犯として人を殺すということは、やはりこれはしかるべき罰が与えられて当然なんであって、現行法においては、いわゆる十四歳、十五歳というのは全くその対象になっておりませんから、いかな重大犯罪を犯そうともそれは全く対象にならぬというような状況というのではいかがなものかということであります。  また、アメリカの点に御指摘もありましたけれども、アメリカも確かに、十七歳を十八歳に引き上げたりしているという点も見れば、そこだけを見れば確かかもしれませんが、その他の法改正につきましては、一九九三年以降、いわゆる重大、殺人以外の犯罪に関しても十歳以上に引き下げたりしておりますので、そういった意味では、いろいろなところで少し状況が、いろいろなものを考えてやっておられるところだと思いますが、アメリカの場合も試行錯誤の最中であろうと思っております。  ただ、凶悪な点につきましては、NRA、ナショナル・ライフル・アソシエーションと思いますけれども、全米ライフル協会という巨大な協会がありまして、これが銃規制に反対の団体としては多分一番のものだと思いますが、ここら等々の関係から、アメリカにおきましては、銃というものに関する規制に関してはなかなか日本とは意見が違います。こちらは豊臣秀吉以来の刀狩りの歴史ですけれども、向こうはとにかく駅馬車初めすべて自分のことは自分で守るという歴史で、背景が全く違いますので、そういった歴史的な背景を含めましてこの問題は検討されねばならぬところだと思います。  御指摘のように、法律ができたことによって直ちにとは思いませんけれども、しかしこれは重大な一助になることだけは間違いない、そう思っております。
  28. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 麻生議員の御説明、非常に共感する部分はたくさんあるんです。  ただ、最後の、私がお尋ねしている結論のところで、なぜ急ぐのかということについて、おっしゃるように、これが一助となるものであっても全部ではないとすれば、それじゃ急ぐ必要はないんじゃないの、むしろ、このことを契機にしてみんなで考える、慎重にやっていく、討議を深め広めていくということの方がずっと意義あることではないのかと私は思うものですから、そうお慌てになる必要はないのではないだろうかということを申し上げているわけなんですけれども、それについては共感されましょうか。
  29. 麻生太郎

    麻生議員 ふだんの生活態度を改めたら直ちに成績が上がるかといえば、なかなか子供の勉強もさようなわけにいかないのと同じで、直ちにあれが出るとは思いませんけれども、少なくとも、こういった規範を大事にするという意識というものは、子供にとってはきちんとした、おっという感じは出るだろうと思います。これは、今までとは少し違ったなという状況だけははっきりすると思いますので、直ちに、ほら見ろ、こんな効果がということを申し上げることはできないと思いますけれども、少なくとも、こういったものをやれば、社会環境が悪かった、家庭環境が悪いためにこういうぐあいになったという子はきっといっぱいいるんだと思います。しかし同時に、そういった家庭環境でもまともにやっている子がいることも確かであって、まともにやっている子供の方が被害に遭っていてというような状況が今のままで置いておかれるという状態はいかがなものかということから、これが多分世論の共感を得ている背景だと思いますので、私としては、これは急がれるべき問題だと思っております。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  30. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 私は、子供たちにしても、規範意識がないとさっきおっしゃるけれども、何がよくて何が悪いかということぐらいはわかっていると思うんです。人の物を黙ってとってきたら悪いということはわかるんです、小さな子供だって。まして、人の命をとることがいいことじゃない、これは責められるべきことだってわかっていると思うんです。わかっているけれどもやるんですよ。大人だってそうじゃないですか。  死刑廃止論があります。死刑を廃止したら、そうしたらもっと殺人罪がふえるのか、あるいは死刑があることによって殺人が抑止されているのか、そうじゃないでしょう。人を殺したら自分も死刑になるということは単純な理屈で、みんなわかっているんですよ。それはケース、ケースで、人を殺したって死刑にならないで無期以下の懲役で済むという場合だってある。それにしたって、少なくとも正当防衛だとかそういうことでなければ、理屈がなければ、殺人をすればその報復として現在の刑法上死刑という処罰があることはみんな知っているんですよ。知っていてもやっているじゃないですか。殺人罪は減らないんですよ。  子供だって同じことなんですよ。殊に、今の子供は大人以上に複雑だというのは、議員も御指摘のように、さまざまな要因がこの社会の現実の中で絡んでいるからだろうと思うんです。御指摘があったように、私はある意味では子供たちは大変不幸な世代に生きているのではないかと思います。  私は、保岡法務大臣よりもやや年も上ですけれども保岡大臣少年時代はまだ戦後の時代を経験されたから、あの物なんかの窮乏の時代を覚えていらっしゃると思う。私などは、小学校時代は戦争中でした。戦争が終わってから新しい中学の制度になりました。何にもなかったですよ。教育の環境だってないんですから。だってそうでしょう、中学になっていきなり英語を教えられるようになったんだけれども、英語の先生がいないんですから。ついさっきまで英語なんていうのは敵性語だったんですからね。教える人がいないんです。そして物がないんです。  僕は、ある意味ではそれが幸せだったと思っているんですよ。物がないから、それは貧富の差というものを子供たちの間で余り感じられなかった。もちろん、そんな中でも金持ちの子供と貧乏人の子供なんていたわけですけれども、物がない。例えば、私は北海道ですけれども、ゴム長なんというのは必需品なんですけれども、それがみんな買えないんですから、店でも売っていないし。学校で配給なんですよ。一クラスに何足ということで来るんですね。それで抽せんなんですから。お金出したって買えないんですから、当たらないと。そういう平等性があったんですよ。  それで、食い物だって何だってなかった。だから、みんなで分け合ったんですね。そういう連帯感がその当時はあったと私は思うんです。来週もその当時の中学の仲間で同期会をやるんですけれども、私なんかは、集まると、ないもの同士の連帯感ということを言うんですけれども、そういう連帯感みたいなものが今の子供たちにはないんじゃないでしょうか。余りにも物が満ちあふれていますね。そして、お金がなくても物が手に入るような仕組みになっていますね。ローンなんという制度も私は決して好ましいものではないと思っているんです。モラルハザード、これは法務大臣がよく言われることだけれども、これが欠けるんですね。大会社が次から次からここのところ火だるまになっていますけれども、そごうなんかもそうですね、銀行もそうですね。何千億という金を債権放棄しろとか、まことに無責任な状態でしょう。  こういうことが横行している中で、金さえあれば何でも物が手に入るというような状況の中で、子供たちは、何が大事で、何がとうといもので何がそうでないのかというような価値観についても、なかなかしっかりと理解し切れないという状況がそこにあるんじゃないかと私は思うのです。  子供たちの異常な犯罪指摘されますけれども、大人だって異常な犯罪が随分起きているんじゃないですか。保険金詐欺などというのはひどいじゃないですか。自分の親しい人に保険を掛け、あるいは自分の会社の社員に保険金を掛け、それを殺すなんという、こんな殺人のタイプだって昔は考えられなかったのじゃないですか。ここのところ、子供の親殺しもありますけれども、逆に、親が子供をせっかんして責め殺しちゃったというのもありますね。  事ほどさように、子供だけが異常なんじゃないでしょう。大人の社会が異常だから、子供も異常になっているんじゃないですか。そうだとすると、子供たち少年非行だとか少年犯罪防止のために一番心すべきことは、大人社会をきちんとすることじゃないですか。政治家だってそうじゃないですか。随分ここのところ不祥事件があります。残念ながら私の党でもちょっとありましたけれども。  総じて、私は、今二十一世紀を前にして、日本社会というのはいろいろな意味で総点検の時期に来ているんじゃないだろうかと思うのですよ。それこそ大臣言われるように、あるべき日本というのはどういう国なのか。その中で、国民というのは何を生きがいとしていくのか。自分一人で生きているんじゃない。他人と一緒に共生し、あるいは自然と共生し、物を大事にし、自然を大事にしていくということがどんなに大事なのかということを子供たちにわからせるためには、まず大人が手本を示さないとどうにもならぬじゃないですか。私は、子供は大人の鏡だと思いますよ。大人の方がきちんとならなくて、どうして子供だけ責めることができるんですか。  まして、こういう手続を改正して、法律改正して、処罰可能の年齢を引き下げたからといって、それが他の子供たちにとって見せしめになると私はとても思えないし、法務大臣が主張されるような規範意識を醸成するようなことになるとも思えない。そのためにはもっともっと本当にあらゆる意味での総合的な対策が必要なのであって、少年法改正などというのは、私はその一角にすぎないと思っております。  それだけに、決してこれを早く仕上げなければならないということに性急になるべきじゃない。むしろ、この議論を深めて、みんなであるべき姿を求め、少年法にしても、どういうような姿が一番いいのかということを考えていく。そういう意味で、私どもとしても、改正に絶対反対というのではありませんけれども、よい改正をしたい、そのためには本当に慎重であってほしい、こう願っているから申し上げているんだということをぜひ御理解をいただきたいと思います。  次ですけれども、これも提案者にお伺いをしたいと思います。  私が今手にしているのは「法学セミナー」という雑誌の十一月号ですけれども、ここに、神戸の家庭裁判所で現に少年事件に非常に一生懸命に取り組んでおられる井垣康弘判事が論考を寄せておられます。この中で、井垣判事は、この少年法改正に絡んで、厳罰化の方向に向かう法改正というのは、その中でも特にいわゆる原則逆送は少年の心を萎縮させ、かえって少年犯罪を増加せしめることになるのではないかということを指摘しておられます。  具体的に申し上げますと、セミナーの六十二ページですけれども、「厳罰化方向での法改正により、」「検察官から「原則逆送」の法令に違反するとして抗告受理の申立がなされ、破棄差し戻しされたら、少年担当の裁判官や調査官は落ち込む。」「少年事件担当裁判官は、やがて原則逆送のケースについては、調査命令を出さず、捜査記録を読んだだけで逆送を決意し、その言い渡しをする運用になると考えられる。」つまり、調査について、従来一生懸命やっていたけれども、今度はどうせ逆送になるんだからそっちへ任せちゃうしかないというので、自分らは調査をしないでそっちに送っちゃう、こういうわけですね。これを、自分の実体験の上から述べられているんだと私は思いますよ。決して観念的なものじゃないと思うんです。  その上で、「調査官の実務能力はやせ細り、間もなく家庭裁判所への信頼は低下していくとともに、次代を担う少年たちに対するわが国の教育力も低下し、世界一安全な国から犯罪大国へ向かって確実に歩み始めるだろう。」ということで警鐘を鳴らしておられます。  また、別に、「自由と正義」、これは日本弁護士連合会の雑誌でありますけれども、この中で、やはり少年事件を数多くやられ、また少年犯罪被害者の権利救済の仕事もなさっておられる児玉勇二という弁護士が、自分の経験からしても、今度の改正案にあらわれているようないわゆる必罰化あるいはそれによって管理を強めていくというやり方では、加害少年のゆがんだ気持ちをますますゆがめて、再犯防止にはつながらない、むしろそれを助長するようなことになるのじゃないかということを心配しておられるわけでありますけれども、こうしたことについて、提案者としてはどういうようにお考えになっておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  31. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 今佐々木委員が御指摘になりました井垣判事の論文につきましては、実はけさ目を通させていただいたのですが、「自由と正義」の方の論文は私の机の上に置いたままで、まだ不勉強で読んでいないのです。  それで、井垣論文の方ですが、委員がお読み上げになりましたところ、私もまだ眼光紙背に徹するほど読んでいないせいか、やや理解しがたいというか、少し論理の飛躍もあるのではないかなという気がしております。  佐々木委員にはもう釈迦に説法ですけれども、原則逆送と申しましても、今回の改正案では、もちろん原則に対して例外というのがあるんだ、保護処分でやった方がいい場合もあるんだということを認めておりまして、当然、家裁においてそこのところは十分調査しながら、では、これはやはり原則で逆送だということを決めていくわけですね。  それから、改正法案で、抗告受理の申し立ても、処分不当を理由として申し立てをするということはできない仕組みになっておりますから、要するに、原則逆送に関する法令違反であるといって抗告が受理されるというような例は考えにくいのではないかな、私はこう思っているわけでございます。  そしてまた、検察官が抗告受理の申し立てをしたからといって、これはもう言うまでもございませんが、そこで抗告権が与えられて、すぐ抗告に移行するという形でもございませんので、やや井垣裁判官、今まで家裁の裁判官として長い経験をお持ちで、我々しっかりやっているんだからという責任感からそういう危惧をお持ちになるということは理解できないわけでもないのですが、ややちょっと危機意識が膨らんでおられるかなという気がするわけでございます。  それで、先ほど、こういうものをなぜ急ぐ必要があるのか、規範意識を覚せいするというけれども、大人も悪いところがあるじゃないかと委員がおっしゃいまして、御意見は私も共感するところはあるわけでございますし、総合的な施策が大事であるというのは私もそのとおりであろうと思います。  この法務委員会だけではなくて、我々、あらゆるところで、やはり世の中の状況をよくし、青少年が健全に育って、非行犯罪が起こらないようにするにはどうしたらいいかというのは議論しなきゃならないのはもちろんでございますけれども、やはり規範意識を覚せいさせて、そして抑止をやっていくというのは、こういう問題に対する人類の経験の一つの柱だと私は思っておりますので、やはりこの法案をここでじっくり、じっくりというとちょっと言い過ぎかもしれませんが、積極的に御議論をいただいて通していただきたいものだ、こう思っております。
  32. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 大分時間が迫ってまいりましたが、今の井垣判事、確かにお書きになった最後の結論部分はもう一つ説明が足りないかなというところもないではないのですね。ですから、できれば私は、井垣裁判官にここに参考人に来ていただいて、自分の実際のお仕事との絡みでこれをお話しいただいたらもっと理解できるのじゃないかと思っているのですが、これは後ほど協議させていただきます。  それで最後に、済みません、裁判所が来ておられるものですから。  もしこの改正案が成立した場合に、裁判所、裁判官は対応していけるのですか。特に事実審理の点ですけれども、いわゆる刑事訴訟法上の証拠原則、伝聞排除だとか、そういうことについては今度の改正案は全く配慮がされていないですよ。この中で裁判官は非常に戸惑うんじゃないかと思うのだけれども、裁判所はどうなんですか。対応していけるのですか、これは。  それと、今ちょっと私、申し上げましたけれども、井垣裁判官が参考人においでいただければいいなと思うのだけれども、現職裁判官をこういうところへ参考人として呼ぶことは差し支えないものでしたか、そのこともあわせて。
  33. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  ただいま委員指摘の事実認定手続について、今回の法案におきましては、現在の職権主義構造の枠組みを維持した中において、検察官が審判の協力者という立場において関与をすることによってより適正な事実認定を図ろう、こういう御趣旨だと理解しているわけでございます。  もとより、厳格な証拠法則が入っているわけではないという御指摘でございますけれども、ただ、これまでも、家庭裁判所におきましては、証拠法則を置かないにいたしましても、適正手続の保障でございますとか、あるいは証拠調べにつきましては、いわゆる流山決定という昭和五十八年の最高裁決定を踏まえまして、合理的な裁量のもとで証拠調べを行うという運用が定着しているところでございまして、今回この法案が成立した場合には、そのようなこれまでの運用というものを十分踏まえて、立法趣旨を踏まえた適正な運用がされるものと理解しているところでございます。  なお、参考人関係につきまして、私から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  34. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 実際には、そうおっしゃるけれども、言うことと行うことは違うんですよ。今までと違うんですからね。運用が変わっちゃうんですからね、この改正が行われると。そんなに簡単にいくものじゃないと思う。恐らく私は現場の戸惑いは大きいと思います。そういうことを考えても、この改正には慎重であるべきだと私は思っております。  時間がなくなりましたので、最後の十一番の少年犯罪被害者の権利保障についてお伺いする時間がなくなりました。この辺については、それからまた改正案の具体的な内容については、この後、同僚委員からまた御質疑があろうかと思いますので、どうかそれについてのお答えをお願いしたいと思います。  以上、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。     〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 長勢甚遠

    長勢委員長 平岡秀夫君。
  36. 平岡秀夫

    ○平岡委員 私、民主党の平岡秀夫でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  この少年犯罪の問題について考えてみますと、現在、少年を取り巻く社会の環境というのは非常に厳しいものがあろうかと思います。実は私も十四歳と十七歳の男の子を二人持っておりまして、まさにこの少年法改正において論議の中心となっている原則逆送になっていく年齢あるいは刑事罰適用年齢の引き下げの対象になっていくという年でございます。そういう意味で、私もその二人の親としても非常に強い関心を持っておりますけれども社会全体としても、現在ありますところの青少年をめぐるさまざまな問題についてどのように対応していかなければならないのかということについて非常に深く心配しているというふうに思っております。こうした青少年のさまざまな問題については、家庭、学校あるいは地域社会においても、社会全体として取り組んでいかなければならない複雑で大きな問題であろうというふうに思っているわけであります。  その中で、青少年犯罪の問題としてのこの少年法改正があるわけでありますけれども少年犯罪の現状を見てみますと、犯罪がいろいろな形で行われているという多様化の問題、原因がよくわからないといったようなこと、共犯関係、集団化による犯罪、事件の複雑化あるいは少年をめぐる環境の複雑化といったようなことで、非常に難しい問題ではあろうと思いますけれども、現状がこのままでいいと思っている人は多分ほとんどおられないのではないかなというふうに思います。  そういう中で、この被害者の権利をどう守っていくのか、あるいは少年に対してどのような対応をとっていくことがこれからの少年の健全な育成にとって必要であるのか、こうしたことについて我々も真剣にこの少年法改正の中でも考えていかなければならないというふうに思っております。  ただ、こうした議論は、やはり関係する人々も含めて国民的にも十分な議論をして行うべきであって、拙速な対応は行うべきではないというふうに思っております。特に、今問題になっております刑事罰適用年齢の引き下げ、原則逆送あるいは検察官関与の問題、こうした点については極めて慎重でかつ十分な議論が必要であろうというふうに思っております。  今回与党案提出されております法案の中にも、我々として評価し得るものもあるということで、例えば、必ずしも十分ではないにしても、被害者に対する配慮を充実していこうということであります。この点については、民主党もかつて犯罪被害者基本法ということで、少年犯罪被害者だけではありませんけれども犯罪被害者に対するいろいろな配慮をしていかなければいけないということで法案提出した経緯がございますけれども、こうした法案についても今度提出させていただくようなことを検討させていただいております。  それから、もう一つ評価すべき点としては、保護処分終了後における救済手続の整備ということで、これまで非行事実のなかったことを認める明かな資料が新たに発見されたような場合でもこうした保護処分の取り消しが手続上できないといったような点について今回手当てをしていこうということについては、私どもとしても十分に評価できるものであろうというふうに思っているところであります。  しかし、先ほど申し上げましたような刑事罰適用年齢の引き下げ、原則逆送あるいは検察官関与といった点についていえば、これまでこうした少年犯罪に直接携わってこられた方々の中に非常に多くの批判があるということも皆様方は多分御承知だろうと思いますし、こうした批判についても十分に耳を傾けていただきたいというふうに思っているわけであります。  そこで、私は、この質問におきましては、今私が申し上げたようなこれから慎重に検討してもらいたいという点について、どちらかというと条文でどんなような表現になっているか、あるいはその条文の考え方の背景にあるものは一体何なのかというような点を通じて、与党案についてのいろいろな問題点を指摘させていただきたいというふうに思っているわけであります。  そこで、まず第一番目の、刑事罰適用年齢の引き下げについてであります。  条文的にいいますと、第二十条の第一項が改正されるという形で今回出されているわけであります。この点については、確かに少年犯罪の多様化ということに対応して、実情に応じた多様な対応を家庭裁判所あるいは少年院、少年刑務所で行っていくというようなことを可能にしていくというような視点に立てば、一つの検討するに値する大きな課題であろうと思います。  ただ、今の与党案を見てみますと、単に、今まで十六歳のところで仕切られていた区分というものを取っ払っているだけという非常に粗雑な案になっているというような気がまずするんです。仮に刑事罰適用年齢の引き下げをするということに国民的な議論の中でなったとしても、果たしてそうした単純な法律改正だけでいいのかという問題があるのではないかというふうに思っているわけであります。  そこで、提案者の方に御質問申し上げたいと思うんですけれども、今、この改正案の考え方の中では、十六歳以上の少年と十六歳未満の少年との間で、逆送を決定する場合に、何らかの基準といいますか、こういう場合には逆送するんだ、こういう場合は逆送しないんだということについての違いというのは考えられているんでしょうか、いかがでしょうか。
  37. 麻生太郎

    麻生議員 基本的に、背景につきまして等々、平岡委員の方から今御発言がありました点に関しましては、これはほとんどの、大勢の方々の一致しておられるところだと思うんですね。  問題は、今年齢のところですけれども、基本的には世界じゅうで十六歳以上というのはないんですね。大体ほとんど十四歳で、アメリカは州によって違います。世界的には、いろいろな年齢制限からいきますと、ほとんどが十四歳以上。イギリスが十歳となっておりますけれども、そういった意味では、条件として随分変わってきていると思っております。  いずれにしても、十六歳以上十六歳以下というところですけれども、基本的には、現行法でいきますと、いかなる凶悪犯罪を犯しても、例えば、故意に人をあやめるなどということを考えたり、おもしろいからとか、また、人を殺す経験がしてみたかったなどというような確信犯のようなところもありますが、こういったことになったとしても現行法では刑事処分には全くならない、一応日本法律の場合はそういうことになっております。  そういった意味では、罪を犯せばきちんと処罰されますよということは社会的規範として若い子供でも教えないかぬ。むしろ、逆に言えば、少なくとも少年法改正になったら、今までとは違うのよ、ここのところよといって学校できちんと教えるぐらいしてやってもおかしくないかもしれませんよ。私は、個人的見解としてはそんなことも覚えるんですけれども。  逆送の話につきましても、少なくとも刑事処分相当と認められたときに限っていわゆる逆送の決定ができるということにしているところでして、私は、そういった意味では、何でもかんでもすべて逆送というわけでもありませんし、先ほどの御質問でいけば、その判断は変わって、これはもうというような判断をするかしないかというのは裁判官もしくは裁判所ということになろうと思っておりますが、それが果たしてこうなったらこうといって細かく決めるような話だろうかと言われると、なかなかそういった意味では、逆送基準というのを書き込んだりなんかすると十六歳以上の少年については逆送決定の範囲を広げることになりかねぬということにもなりますので、いろいろな問題を考えてこのような形でやらせていただいておりますので、裁判所の判断というものによるところが非常に大きいと私どもは思っております。  そういった意味では、きちんと決まっているかといえば、それは裁判所の判断によるところとしておるのがその背景です。
  38. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今提案者の方は、諸外国の例を挙げて、諸外国の例に比べれば日本はまだ年齢層としては高い層が刑事罰関係に区分されているんだというようなお話がありましたけれども、ここは日本でありますし、今日本では、これまでの制度としては十六歳というところで刑事罰を適用するかしないかということをずっとやってきたわけでありまして、この制度を今回改正しようというわけであります。確かに諸外国の例を踏まえて我が国としてどうあるべきかということを考えることは当然必要だと思いますけれども、今ある日本の制度をこういうふうに変えていくときに、そこで生じるであろういろいろな弊害みたいなもの、あるいは急激な変動による激変緩和的なもの、こうした考え方も必要ではないかというふうに思うわけであります。  そういう意味で、先ほどすべて裁判所の判断であるということを言われましたけれども、後で触れますところの原則逆送というふうに与党三党が言っておられるところについては、十六歳以上であってどういう事件というような区分をされている立法もされようとしているわけでございますから、今回十六歳を十四歳に下げるということが仮に国民的な合意になったとしても、やはりそこに何らかの、非常に可塑性に富んだ少年であります、これからのいろいろな教育によっては大きく変わっていくかもしれない、こうした可塑性を持った十六歳未満の子供たちに対して逆送ということがそんなに行われるのじゃなくて、こうした考え方に基づいて行われるんだという考え方を法律の中で示していくということも必要ではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  39. 麻生太郎

    麻生議員 これはちょっと見解の違うところだと思います。基本的には、先ほども申し上げましたように、きちんと余りにも細かく規定し過ぎるところの方がむしろ問題が起きやしませんかという我々の見解と、そういったものをあらかじめ決めておいた方がいいという御意見との違いなので、これは見解の相違としか申し上げようがないんだと思います。  少なくとも私どもは、今保護処分を原則としておるのであって、特に刑事処分が相当ということに限って検察官送致を行っているというところなので、そこらのところは、何でもかんでも全部逆送と言われるとそうではないのであって、個々の例が全部違いますので、ではこれまでは検察官と余りに細かくやり過ぎるところの方がむしろ問題で、その条文にちょっとでも引っかかったら全部逆送ということになるのもいかがなものかということも考えまして今のような条文にしてあるというところであります。  これは、やってみた結果またいろいろな問題が出てきたというのであれば、それはその時代時代においてまたいろいろ御意見も出てくるんだと思いますけれども、少なくとも今の段階においては大幅な変更であることは間違いありませんので、そういった意味では、まずはここから始めさせていただいて、それでいろいろまた問題があるというのであれば、それはそれなりにまた考えなければいかぬというふうになるのかもしれません。しかし、これでうまくいくことも考えなければいかぬところであって、私どもは、今の段階で申し上げれば、これで対応できるのではないか、少なくとも多くの御意見に対しての対応はこれでできるのではないかと考えておるということであります。
  40. 平岡秀夫

    ○平岡委員 もう一つ、十六歳未満に対しても刑事罰を適用するという可能性を開いていくという問題について言いますと、十四歳、十五歳という年齢は、考えてみますとまだ中学生ということで、例えば自分が行った行為に対して一体どういうふうにして説明したらいいのかというようなこともよくわからない、そういう年代であろうと思います。そういう意味でいくと、裁判官が十四歳、十五歳の子供について逆送決定をするというような場合に、この十四歳の少年に対して、十四歳が自分を守り切れない、その能力の不足の部分を補ってやるといったような配慮も必要ではないかというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  41. 麻生太郎

    麻生議員 当然考えねばならぬところであって、これは第一条に書いてありますように、いわゆる反省を求める、もしくは罰によって本人がさらに更生することを期待して、少年法というものの基本はそれで成り立っておりますし、今度の改正案につきましてもその趣旨は全く現行法と変わっておりませんので、そういった意味からいきますと、少年のそういった足りないところを補ってやるというのは当然のことなのであります。調査官等々がその役割をかなりの部分負っているのも現実ですし、検事がつきましたときにおきましては弁護人がつく等々の制度を改めてまたそこに入れているところがその背景でして、少年の足らないところを補うためのいろいろな法的な保護というものは、現行法も当然のことですが、改正案におきましてもその趣旨は十分に踏まえている、そのような法律体系になっておると思っております。
  42. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今私が申し上げたのは、少年法少年に対して全体的にいろいろな配慮をしているということは、それはそれでいいのですけれども、今回改正の対象としている十六歳から十四歳への刑事罰適用年齢の引き下げに当たって、そうした新たに引き下げの対象となる少年たちに対して、我々として、彼らの正当な権利なり、あるいは足らない部分を補ってやるというような、そうした配慮はやはり法律上もあってしかるべきではないか、そういう意味で申し上げているわけであります。  今与党案を見ますと、私が冒頭に申し上げましたような、逆送をされる基準というのが十六歳以上と十六歳未満との間で全く区別がついていない、あるいは、十六歳未満の子供に対して逆送決定をこれからできるようになった場合も、そうした少年たちに対して、少年たちの権利を守り、あるいは少年たちの能力の足らない部分を補ってやろうという発想が全くこの与党案にはあらわれていないというところに対して、もう少し与党の方でも配慮をしていただくような、そういう法律改正を考えていただけたらどうだろうか、こういう提案を申し上げているのですけれども、まとめていかがでしょうか。
  43. 麻生太郎

    麻生議員 基本的に、少し私どもと意見が違っているのは多分そこかなと思いながら今御意見を拝聴していたのですが、少なくとも、私どもは、十六歳から十四歳に引き下げるというようになってきた背景というのは、十四歳という子供に対する考え方の違いも随分あるのだと思います。  十四歳になりますと、かなり大人びた子もいれば、大人びていない子供もいますし、いろいろ、殺人なんて考えもしない人もいれば、実に冷静に殺人が行える子供もいたりするようなのであって、同じ世代といっても個人によって随分差があるというのも事実だと思うのですね。このところ出てきているいろいろな凶悪な殺人事件等々を見ましても、それははっきりいたしております。  どれぐらい知恵があるかといえば、逮捕されて警察から出てくるとき、十分に認識した上でやっている子は、警察署の前で、ばあっとテレビやら何かで撮っても、そんなのむだですよ、だって映せないんでしょう、写真は載せられないんでしょうなんと言う子供もいるわけです。下を向いちゃっている子供もいますし、それは実にいろいろなんだと思います。  そういった意味では、私どもは、この種の話というのは随分個人差によって違うと思いますが、少なくとも、その点につきましては、検事がついた場合はきちんと弁護士というものがそこにつくことになりますし、従来、調査官というものも、かなりな部分少年側に立っていろいろやってきた調査官というのは多いと思いますので、そういった立場では、調査官などというのは、随分少年更生にその努力を惜しんでいないところなのです。  そういった意味では、十六歳が十四歳に下がったといったから、そのところについて特に配慮をしなくちゃならぬかといえば、それは二歳下がった分だけ対応能力は低いという面もあることは事実ですから、そのために弁護士がつき、調査官がさらに努力するのは当然のことなのであって、そういった意味におきましては、今言われたような御質問趣旨は私ども改正案の中にも十分に生かされていると思っております。
  44. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今、弁護士がつき何がつきとかいうようなことを言われましたけれども、ちょっと条文的に整理していただくと、どこの部分が任意的な弁護士であり、どこの部分が義務的だということが多分出てくると思いますので、今答弁されたことを踏まえて、もう一度条文の精査をしていただければというふうに思います。  そこで、次に、この刑事罰適用年齢の引き下げに関連してでございますので、通告しました質問の順番とはちょっと違いまして、十四歳に刑事罰適用年齢が引き下げられて、その子供たちが刑事罰を受けるようになった場合の話としての与党案についての質問をしたいと思います。  少年法の五十六条の第三項に、今回、懲役または禁錮の言い渡しを受けた十六歳に満たない少年についてのくだりがございます。ここを見ますと、これらの少年たちに対しましては、「十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」というふうに規定してあるわけでございます。もともと、懲役について考えてみますと、今、刑法の十二条の第二項で所定の作業を行わせるという規定がございまして、少年たりといえども、当然、懲役刑に処されれば所定の作業を行わなければいけないというふうに思うのですけれども、この点、与党案ではどういう整理になっているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  45. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 ただいま御指摘改正法の五十六条三項、これは、十六歳未満の少年受刑者については、今おっしゃった所定の作業を行わせることを定めている刑法十二条二項の規定がありますが、それにかかわらず少年院において刑を執行するということとしておりまして、また、その後段では、「この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」先ほどここも引用されました。要するに、この場合、少年院で刑を執行する場合には所定の作業は行わせない、こういう構造になっているわけでございます。
  46. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今読まれたところ、この「規定にかかわらず、」というところの、かかわっていないのは、刑務所で刑を執行するのじゃなくて少年院で刑を執行するというところが、この「規定にかかわらず、」ということであって、懲役の場合に所定の作業を行わせないというところまではこの条文ではなっていないのじゃないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  47. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 今の委員の読み方と、五十六条三項の「懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。」こういうことでございますから、十二条二項にかかわらず、少年院において刑を執行する、「この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」こう書いてございまして、先ほど私が申しましたように、少年院で刑を執行する場合には矯正教育をやるのであって、所定の作業は行わせないと読むのが正しいのではないか、私はこう考えております。
  48. 平岡秀夫

    ○平岡委員 そこのところは条文上の問題であろうと思いますので、与党案においても、少年の場合には懲役の場合には所定の作業を行わせないということで意思統一ができているという理解で話を進めたいと思いますけれども、そうなった場合には、この少年について言うと、懲役刑と禁錮刑はどう違うのでしょうか。
  49. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 十六歳に満たない間は、この条文は、矯正教育を受けるということは決めております。しかし、十六歳を超えた後どうするかということになりますと、禁錮と懲役の違いというものははっきりしてくる、こう考えております。
  50. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今の御答弁は、十六歳までは変わらない、十六歳を過ぎてから変わる、そういう理解でよろしいのでしょうか。
  51. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 もちろん、受けている刑の名前は違うことは明らかでございますが、少年院で矯正教育を受けるという意味においては共通でございます。
  52. 平岡秀夫

    ○平岡委員 その辺も、十分な整理ができているかどうかというところが若干疑問でもあるような気がいたします。もう少し十分な論議をしてみたいと思いますけれども。  さらに、問題は、少年院で矯正教育を授けるということについてなんでございます。  これもよくある批判ではございますけれども少年院の中には、基本的には、少年院での矯正教育を終えたら社会に出ていく、もとの生活に戻っていくという少年たちがいるわけですね。そして、今回の与党案でいきますと、少年院で教育を終えたら刑務所の方に行ってしまうという少年が入ってくるわけですね。そうした少年は一緒に教育を受けることになるのでしょうか、それとも、また別のやり方というのは何か考えておられるのでしょうか。
  53. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 具体的な処遇あり方につきましては、今後行政当局においていろいろ工夫をされることだと思います。したがいまして、私どもとしては、この法文の上で、懲役ないし禁錮を受けた十六歳未満の者は少年院において矯正教育を受ける、こういうところまで法律で定めて、立法府の意思として示そうということでございまして、その後の具体的な行刑のあり方に対しては行政当局の工夫に任せよう、こういうことでございます。
  54. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今、少年刑務所においてもいろいろな教育が行われているというふうに聞いておりますけれども、刑務所の中においてどのような教育が行われているのかということを法務省の方にちょっと御説明いただければと思います。
  55. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  少年刑務所におきましては、刑の執行でございますので、受刑者に対して刑務作業を科するほか、その年齢に応じまして適正な処遇集団を編成して、職業訓練あるいは補習教育等の教科教育とか、あるいは生活指導等、そういったものを取り入れた処遇を行っているというのが実情でございます。
  56. 平岡秀夫

    ○平岡委員 追加的にまた質問しますけれども、今刑務所の中で行われている教育の中では、義務教育に相当する教育というのは行える体制になっているのでしょうか、それともできない状況なのでしょうか。
  57. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 少年刑務所における義務教育の実施につきましては、監獄法令上それを行うことができるとなっておりますので、その規定に基づきまして、現在、松本少年刑務所というところに公立学校の分校を設けておるところであります。ただ、ここでは、個々の少年の履修状況と申しますか、あるいは学力の程度に応じた個別的な教科教育を実施するというよりは、むしろ、余り年齢にはかかわりがなく、これまで義務教育を受けてこなかった受刑者を集団として編成いたしまして、一年間を通じたカリキュラムをつくりまして、本校の教員と施設職員が一緒になって計画的な中学校教育を実施しているということでございます。
  58. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今御説明があったように、少年刑務所においても義務教育に相当する教育は行い得る体制にあるという事実があるわけですけれども、それにもかかわらず、懲役とか禁錮の言い渡しを受けた十六歳に満たない少年について、少年院で矯正教育を授けるという立法にした趣旨というのはどういう趣旨なんでしょうか。なぜ、少年刑務所での義務教育の実施ということが対象にならないということなんでしょうか。
  59. 麻生太郎

    麻生議員 義務教育を受けたらきちんと矯正されたような少年ができるなら話は早いのですけれども、そういった義務教育だけもしくは家庭環境等々、周りの友人等々のしつけによってきちっと社会的規範が守れるお子さんはこの種の対象にはなっていないのであって、いわゆる鑑別所等々いろいろなところに送致される結果を招いた家庭環境等々は、従来の義務教育だけでは問題があるがゆえにここになっておられるというぐあいに理解されれば、その少年の反省なり、また新しく再出発なりを期する立場に立てば、従来の学校で行われている義務教育プラスいろいろな面を補うための教育としての矯正教育というのは大変重要なものだというように私ども理解をいたしております。
  60. 平岡秀夫

    ○平岡委員 刑務所の中でも、矯正教育というふうに名前を名づけるかどうかは別として、さまざまな教育社会に復帰するための教育あるいは社会に復帰してから健全な社会生活を行っていくための教育ということもやっているということであろうと思います。  そういう意味で、まだ義務教育の年齢にある十四歳、十五歳の子供に対して刑を科するということについては極めて慎重でなければいけない。仮に、国民的な合意の中で、十四歳、十五歳に対しても刑を科するということが選択されるということであっても、その刑を執行する場合には極めて慎重にその少年に対して対応していかなければいけないというふうに思っているわけですけれども、今の刑事罰適用年齢の引き下げに関して、少年院における刑の執行も含めて、法務大臣にちょっとお聞きしたいと思います。  法務大臣、先ほどの佐々木委員質問にもありましたけれども憲法改正とかあるいは教育基本法改正といったようなことも言っておられたようでありまして、教育問題についても非常に強い関心を持っておられると思うのですけれども、仮に刑事罰を十四歳、十五歳の子供に科せるというようなことになった場合についてのそうした子供に対する教育あり方として、どういうふうにあるべきだというふうに思われますでしょうか。
  61. 保岡興治

    保岡国務大臣 今、刑務所において、先ほど矯正局長が述べたように、中学校などの教育を、受刑者の年齢に関係なく、そういう教育を受けなかった人、希望者に教育を行っておるということはあります。しかし、やはり十四歳、十五歳となりますと、義務教育を終了していない者もおるわけでございますから、そういう者に対して少年院において適切な矯正教育を行うということは非常に重要なことだ、そういった意味で、それが行えるように法的に措置しておくということが与党案に盛り込まれているものだと思います。
  62. 平岡秀夫

    ○平岡委員 要は、十四歳、十五歳の少年についての刑事罰を科するということになる場合でも、非常に詳細な検討、慎重な検討が必要であるということを私としては申し上げたいというふうに思っております。  そういう意味で、どうもこの五十六条の三項に書いてあること自体が、私にとってみれば、十分な検討がされていない状況の中でこうした規定ができているような、そういう感をぬぐえないわけであります。慎重に検討していっていただきたいというふうに思っております。  そこで次に、改正法案でいきますと二十条の第二項の改正規定について御質問させていただきたいと思います。  原則逆送ということでございますけれども、本来、原則逆送ということになりますと、家庭裁判所判断権を奪ってしまうというようなことになってしまうおそれがあろうかと思います。現に、少年法の第三条では、「次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。」というふうに書いてあります。「次に掲げる少年」の中には、今回問題となっている罪を犯した少年、こうした人たちがいるわけですけれども、こうした少年法の大きな原則が書いてあるにもかかわらず、本当の意味での原則逆送ということになれば、この少年法第三条を否定するということにもなってしまうわけであります。  そこで、与党の方で原則逆送ということを言っておられるのですけれども、その点についていろいろ質問してみたいと思いますけれども与党案で言うところの原則逆送とする理由というのは一体何なのかということを、まずお聞きしたいと思います。
  63. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 原則逆送を入れた理由は、これも原則逆送するものは相当絞られているわけですね。十六歳以上、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた、こういう罪の事件、これは非常に重要な、何物にもかえがたい人命を尊重するべきであるという基本的な考え方に立って、こういう故意の犯罪行為によって重大な結果を招来した事件については原則として検察官に送致して刑事処分を受けさせようということによって、先ほどから御議論のように、少年規範意識を育てて健全な成長を図っていく上で重要な道筋をつけようということであります。  しかしながら、個々の事案におきまして、犯行の動機とか態様、犯行後の状況、それから少年の性格とか行状あるいは育ってきた環境、こういう事情を家庭裁判所がきめ細かく検討していただいて、保護処分が適当と考えられる場合には、逆送せずに保護手続を選択することができるわけでありまして、これは裁判所において適切な処分が今後選択されていくというふうに考えております。
  64. 平岡秀夫

    ○平岡委員 それでは、ちょっと具体的にお聞きしたいと思いますけれども、今御答弁がありました、例外的な場合には逆送は行われないんだということを言われました。二十条の二項の本文のところですけれども、この逆送決定をするときには家庭裁判所の調査、これは第八条で調査をしなければならないということで義務づけられているんですけれども、この調査というのは行われるんでしょうか、行われないんでしょうか、いかがでしょうか。
  65. 麻生太郎

    麻生議員 従来どおり行われます。
  66. 平岡秀夫

    ○平岡委員 行われるということになりますと、逆に第二十条一項のところを見ていただきますと、「調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを検察官に送致しなければならない。」というふうに書いてあるのと、どこがどう違うんでしょうか。今のことでいきますと、二十条二項の原則逆送という場合でも、調査の結果、こういう場合に該当するときは送るんだというふうに条文の構造としてはなっていると思うんですけれども、この原則逆送と与党が称している部分についてもまず調査は行われるんだということであるならば、一項と二項の違いは一体どこにあるんでしょうか。
  67. 杉浦正健

    杉浦議員 条文にのっとっていけば、現行の場合は刑事処分相当と認める場合は逆送、こういう構造になっていますし、私どもは、さまざまな事由に基づいて逆送せずに保護処分相当という場合はそうできるという構造にしておるわけで、その違いがあると思います。
  68. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今の御説明でもわかったと思うのですけれども、結局、今与党が称しているところの原則逆送というのは、何が違うかというと、二十条第一項の場合には刑事処分を相当と認めるときは逆送だというのが、十六歳以上について、あるいはいろいろな犯罪行為、事件がちょっと限定されておりますけれども、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき以外、つまり保護処分とかそうした処分が適当だというときには送らないんだ、そこに違いがあるだけなんですね。それを何か原則逆送だというふうに、勝手に称していると言うとちょっと言葉が悪いのかもしれませんけれども、世の中をちょっと言葉でごまかしている、そういった印象がぬぐえないのですけれども、いかがでしょうか。
  69. 杉浦正健

    杉浦議員 見方の違いかもしれませんが、原則逆送については谷垣さんから申し上げたとおりなんですが、私ども与党三党でさまざま議論をいたしました。  その背景を御説明するのがいいと思うのですが、まず、現在の少年法のもとでも逆送は大幅に可能であります。そして、五十五条でしたか、刑事裁判所で保護処分相当と認める場合は戻せるという規定になっておりますが、この五十年の家庭裁判所の運用、裁判所が余りぐるぐる変わっては困るのですが、ずっと安定した、ある意味では評価できる積み重ねの上で、逆送は非常に少ないのですね。特に、殺人事件の逆送率が二割ぐらいでしたか、落ち込んでいる。凶悪事件についても少ないという現実がございまして、私どもは、その逆送率を逆転すべきではないか、人の命を故意に奪ったような事件を逆送しないのはおかしいじゃないかという認識一つございます。  それからもう一つは、被害者方々の訴えの中で、要するに家裁の審判手続というのはいわば密室です。何をやっておられるかよくわかりません。意見も聞いてもらえない、結果も知らされないという状況で、もう少し被害者の立場を尊重してほしいという意見が強いことは御案内のとおりなんです。仮に逆送されますと、これは公開法廷です。もちろん名前なんかは公表できませんから、マスコミはA少年になると思いますが、審判は公開法廷になります。ですから、被害者は傍聴もできますし、場合によっては検察官から証人にも立てられるということもあるでしょうし、そういう被害者方々の感情にも、対審構造、刑事手続というのはオープンな手続がございますので、こたえられる内容になると思うのです。  そういった背景から、この逆送、要するに今まで家裁がやってこられた積み重ねで刑事手続から移送されるのはほとんど例がないぐらい、ゼロとは言わないけれども、非常にまれなんですね。それを社会の変化に応じて、例えば佐賀のバスジャック事件は、私はあの事件については結論が非常に不満なんですが、公開の法廷で審理してもらうという場合をふやすべきではないかという議論がこの三党協議の中で煮詰まってきたという背景があることを申し上げさせていただきたいと思います。
  70. 平岡秀夫

    ○平岡委員 どうも今の議論を聞いていますと、先ほど私が冒頭に、原則逆送とする理由、原則逆送という仕組みをつくる理由は何なんですかということをちょっと申し上げました。それについて今の御答弁を踏まえて考えますと、どうも公開法廷でこうした事案を取り扱うということを意図しておられるように私としては聞いたんです。そもそも、少年法というものについて言うと、少年に対する健全な育成をどうやって図っていくかということが中心法律でありまして、そうした中でこうした原則逆送というような考え方、これは、実は先ほど私が言いましたように、本当は原則逆送では全くなくて、裁判所がきちっと調査を行うという前提の中で、裁判所が逆送するということが認められる範囲を広げていこうというにしかすぎない、そうした内容になっていると思うんですけれども、その背景というものが、どうも公開法廷によってこうした問題を取り扱っていこうというところにあるような気がしてしまうわけです。公開法廷ということになりますと、やはりこれは少年に対してみれば非常につらい立場に置かされるわけでありまして、そういう点について、少年の保護という観点からは十分に慎重な議論が必要であろうというふうに思っております。  そこで、ちょっとこの問題は、私の理解としては、与党側は原則逆送という言葉は使っておるけれども、どうも言葉だけが先走りしているようで、実態はそういうものではないんではないか、逆送範囲を単に拡大しているにすぎないというふうに私としては理解しているんですけれども、仮にそうであれば、そうであるような法文を規定すべきである。二十条の二項を見ますと、いかにも調査が行われないで一方的に決定がされてしまうかのような印象を国民に与えてしまう。こうしたような規定ぶりというのは、やはり国民の目を欺くものになっているんではないかということをまず御指摘させていただきたいというふうに思っております。  そこで、次に検察官関与の問題について話を移らせていただきたいと思います。  法文でいきますと二十二条の二のところでございますけれども、いろいろな少年犯罪被害者方々お話を伺わせていただきますと、非常に強い要望というのは、真実がどういうものであったのかということをまずきっちりと調べてほしいというか確認してほしい、そしてその真実に基づいた処分が行われるということが重要であるということを言っておられるわけであります。それから先のいろいろな問題についてはまたいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、まずは真実をきちっと把握するということをぜひやってほしいということを言っておられました。  そこで、先ほど同僚の佐々木委員も、果たして与党案のような形で真実の発見ができるのかということを質問させてもらいましたけれども、この事実認定手続についてはまた同僚議員が詳しく質問すると思いますけれども、私は少し問題を絞って御質問させていただきたいと思います。  まず一つは、先般、十月十日に古田刑事局長がこういうことを言っております。「したがいまして、家庭裁判所の裁判官におきましては、それによって」この「それ」というのは、裁判官が記録を点検しているということですけれども、「それによって心証を形成するというよりも、やはり少年の言い分なりそういうものをきちっと確かめた上で最後の判断をするというのが当然でございまして、実際の運用もそうなっていると考えているわけでございます。そういう意味では、あらかじめ何か偏った心証を持つとか、そういうふうなことではないというふうに考えております。」というくだりをちょっとしゃべっておられるんです。  仮に今言われたことが正しいとしたならば、刑事裁判においても、裁判官が先に書類を読んでおっても、被告人の言うことをちゃんと聞けばそれはきちっとした事実認定ができるんだというようにも読めてしまうんですけれども、一体そういうことで本当に刑事手続はいいんでしょうか。
  71. 古田佑紀

    古田政府参考人 事実認定に関する法制度は、これは制度の目的あるいは趣旨との関連から、さまざまなものが考えられるところでございまして、刑事訴訟法というのは、人に刑罰を科するという目的での制度の中で今御指摘のような仕組みをとっているわけでございます。  ところで、少年の審判につきましては、これは御案内のとおり、早期に適切な処遇を与えるという観点が重視されておりまして、そのために今非常に柔軟な手続を採用しているということであるわけでございます。そこに検察官が関与する場合におきましても、その手続にふさわしい、相応した形で関与するということは十分可能なわけでございますから、今お話しのようなことだけをもって事実認定の適正化が図れないのではないかというふうな御議論というのは、ちょっと私としてはいささか違うのではないかというふうに考えているところでございます。
  72. 平岡秀夫

    ○平岡委員 それでは、ちょっと質問の角度を変えてみますと、今刑事裁判で行われているいろいろな証拠調べについては、裁判官の予断を排除する予断排除の法則とか、あるいは捜査記録の証拠能力についてどうするかといった伝聞法則といったようないろいろな証拠法則がとられているんですけれども、これ自体が、真実を発見するといいますか、真実を認定していくという上において有効であるということはお認めになるわけでしょうか。
  73. 古田佑紀

    古田政府参考人 先ほど申し上げましたように、手続によっていろいろな仕組みというのはやはり考えるところが違う面があるわけでございまして、人に刑罰を科するという手続という面で見れば、そういうふうな仕組みの方がふさわしいという判断であるものと考えているということでございます。
  74. 平岡秀夫

    ○平岡委員 この与党案におきますところの検察官関与というのは、我々から見れば、本当に被害者方々が望んでおられる、真実の上に適切な処分をしていくという点についていえば、真実を見出すという作用は余り強く働かないんじゃないか、つまり、なかなか真実が発見しにくいんではないかというふうにも思うんです。与党案が一体何を目指しているのかということを考えてみますと、実はこの前の十月十日に杉浦委員がちょっと答弁されておるんですけれども、こういうくだりがあります。  これは、佐賀のバスジャックの件ですけれども、「家裁の決定に対して少年側は抗告できるけれども国民の側は抗告できないんですね。例えば佐賀の十七歳の事件、医療少年院送致ですが、だれもおかしいと言って訴える手段がないんです。」ずっと行きまして、「これは逆送の審理もやりますから、十七歳の少年でしたら、あの決定に対して検察官は抗告受理の申し立てができるようになります。」「私は、家裁の審理も検察官が関与するだけでより慎重になるし、より被害者とか国民感情に配慮するようになるんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。」こういうくだりがあって、要は、杉浦委員が言われているのは、佐賀のバスジャック事件の医療少年院送致の決定に対して検察官は抗告受理の申し立てができるようになるんだということを言っておられるというふうに全体的に読めるんです。  そうしますと、この検察官の抗告申し立ての範囲というのは一体どの範囲になっているのか。法文を見ると、必ずしもこの決定に対して抗告を申し立てることができるということにはなっていないはずなのにこうした答弁が行われるというのは、やはり真実の発見ということ以外に何か隠された意図みたいなものがこの答弁の中にあらわれておって、どうも少年に対する家庭裁判所あり方として極めて問題があるんではないか。検察官に対して、処分に対していろいろと文句を言わせる。検察官というのは、必ずしも、少年をどのようにして健全育成していくか、更生させていくかということ等について判断できる訓練も受けておらないと思いますし、そうした能力も家庭裁判所のこうした担当の人に比べればずっと劣っている。そうした人にそうした申し立てをさせるということになるのは、極めておかしい仕組みになるんだろうというふうに思います。  その点に対して、杉浦先生に指名させていただきますけれども、いかがお考えでしょうか。
  75. 杉浦正健

    杉浦議員 お答え申し上げます。  私が御引用のところで申し上げたのは間違っていると思いませんし、委員の方の事実誤認があると思うんですが、若干舌足らずであった点は認めざるを得ないと思います。  検察官の抗告受理の申し立てができる場合というのは、改正法第三十二条の四、一項におきまして、処分自身の不当を理由として申し立てをすることができないことは明らかであります。ただ、そこにもございますように、検察官は、非行事実の認定に関し、決定に影響を及ぼす法令違反または重大な事実誤認があることを理由とする場合には、抗告受理の申し立てができる、こうなっておるわけであります。そのとおりの運用がなされるものと期待をいたしております。  これを佐賀のバスジャック事件に当てはめるとどうなるかということで、ちょっと舌足らずだったんですが、もし改正が行われた後にあの事件が起こったといたしますと、当然、検察官は立ち会いの申し立てをすると思いますし、裁判所が認めて、検察官、付添人立ち会いのもとで調査が進むことになると思います。そういう前提であの決定を私読ませてもらいました、取り寄せまして。どういう裁判官がやられたのかというので、その裁判官の身上、経歴も最高裁から取り寄せました。私は、選挙区に帰りますと、何人かの人から、何であんな事件を裁判所は逆送しないんですかと、このところ、少年法については皆さん非常にセンシティブでして、鋭い質問も浴びせられる状況でもあるわけでありますが、あの決定を詳細、私読ませていただきました。  あくまで、裁判官が判断されたことでありますし、私なりの見方にすぎませんけれども、あの裁判官の方は、責任能力は認定されているんですね。そして、精神病罹患の可能性について、家族、先祖をずっと調べて、遺伝的な要素も詳細検討しておられます。それはない。現在、精神病でもない、罹患の可能性はあるということは言っておられますが、現在はそうじゃないという認定まで詳細になさっておって、しかも医療少年院送致という決定をなさっておるわけでありますから、私があの決定を読む限り、この条文に言う、決定に影響を及ぼす重大な事実誤認があるんじゃないだろうかという強い疑いから、私個人は確信まで有しておる次第でございまして、これは私の判断でありますが、委員御引用のような言及になったわけでございます。  具体的に、旧法のもとであの審理が行われて、検察官も立ち会っておりませんので、どういうふうに検察庁が対応されるか、それは別問題でありますが、私の個人としての考えからあのような発言をしたことは申し添えさせていただきます。
  76. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今の御答弁を伺いますと、裁判官の、刑事責任能力を認めるとか、何か、事実認定のところについては問題ないけれども、最後の処分のところが問題だったという、その部分について、検察官が抗告受理の申し立てをすることができるようになるんだというような御説明だったような、そんな印象がいたしますけれども、それはやはり本来の、ここに検察官を関与させようという今回の与党案においても、そうした今言われたような説明だとおかしいことになってしまうんじゃないかというふうに思います。  そういう意味では、我々は、やはり事実認定の手続というのは一つ独立させて、その範囲内において検察官が関与する、それはいろいろな適正手続というものも確保した上での話ですけれども、そして、処分に対して検察官がどうのこうのと言う形というのは、本来の検察官の職分を越えているのではないかというように思っております。  そこで、もう時間がなくなりました。最高裁の方を呼んでおりますので、一つだけお伺いします。  今回、合議制をこの案ではもたらしているんですけれども、世の中の批判の中には、事実認定は確かに三人の裁判官でなければなかなか手が回らないということはあるかもしれないけれども、処分について言うと、三人でやったのでは、裁判官と少年との間に人間的な触れ合いがなくなってしまって、本当に適切な処分はできないんじゃないかという批判があります。  そこで、最高裁にお聞きしたいのは、これの当否を聞いても答えてくれないということだったので、まず、処分の決定をするに当たって、最高裁としては、裁判官は少年に対して理解を深めるためにどのような接触を行うようにすべきなのか、そうした指針というようなものは出しておられるんでしょうか。いかがでしょうか。
  77. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  裁判官が終局の処分を決定する、これにつきましては、法律に規定されているところ、これを具体的事案に当てはめて判断しているわけでございまして、それをさらに詳しく、このような場合はこうするべきだ、こういった指針などはないと承知しているところでございます。
  78. 平岡秀夫

    ○平岡委員 今、最高裁の方からお話を伺いましたけれども、いずれにしても、少年事件について言えば、やはり少年と裁判官との間に人間的な触れ合いがあって初めて、少年も、自分もこうしていこうということを納得するわけでありまして、与党案にあるところの合議制、これを処分のところまで及ぼすということについては極めて問題が多いというふうに考えておりますことを指摘しまして、質問を終わらせていただきます。
  79. 長勢甚遠

  80. 肥田美代子

    ○肥田委員 よろしくお願いいたします。民主党肥田美代子でございます。  まず、ことしの夏でございますが、恒例の子ども国会参議院で開かれました。その場所で、子供たち自分たちの身の回りのこと、いろいろなことを話し合ったわけです。  その中で、山形の小学生だったと思うんですが、中高生が信じられないような残酷な事件を起こしている、そのことについて、僕は原因は三つあると思うと言うんですね、一つは友達づくりが大変下手であるということ、二つ目が親との会話がスムーズにいっていないんじゃないか、三つ目には、自分の心の状態がわからずに、感情のコントロールをうまくできていないんじゃないか、小学生がこのように分析しているんですね。  その子が、親への要望として二つ挙げているのが、できるできない、早いとか遅いとか、そういうことで僕たちを見ないでほしい、二つ目には、子供がしゃべっている間は、親は手や口を出さないでほしい、もっと信じてほしい、そう言っているんですね。  自分努力目標といたしましてまた二つ挙げているんですが、他人に対しては暴力とか無視、悪口は絶対にしない、いじめをしないということを約束したい、二つ目には、相談し合える友人をつくりたい、このようなことを発表していたんですね。  これは確かに、子供の心象風景としていいものだなと思いながら私は聞いていたんですが、そこで、質問に入らせていただきます。  少年法改正議論に当たりましては、大切なことの一つに、私たちの子供観をはっきりと確立する必要があると思うんです。それは、大人が必要な援助をすれば、罪の重さを自覚して、再び過ちを犯さない子供に変わることができる、そういう立場に私は立ちたいと思うんですね。  少年法は、戦後五十年の間に、その視点から少年を守ってまいりました。それから四十年後に国連で採択されました、そして国内でも批准しておりますけれども、子どもの権利条約に照らし合わせましても、この少年法内容は遜色ないものとなっていると思っております。  子どもの権利条約には、罪を認定されたすべての子供が、彼らの持つ尊厳や価値についての意識を促進するやり方で取り扱われる権利を認めるとしております。これは、人間の尊厳を持つ存在としての子供観を示したものだと私は思います。少年非行防止に関する国連のガイドラインも、子供を社会の全面的かつ対等なパートナーであるという子供観を前提にまとめてあります。国連の少年犯罪に対する基本姿勢は、子供観を明確にした上で、個別な犯罪について、その行為だけをとらえるのではなく、子供の社会化の過程、社会政策、司法行政など総合的、包括的な論点から対策を講じるべきであると提言をいたしております。  そこで、まず大臣にお伺いしたいと思いますが、大臣の子供観をお尋ねし、少年犯罪にどのように対峙していこうと思っておられるか、質問をさせていただきます。
  81. 保岡興治

    保岡国務大臣 少年は、いずれ国民として国家社会を支えていく大切な存在であるということで、教育その他、健全育成ということについては、社会全体がいろいろな仕組みを工夫して努力していかなければならない大きなテーマだと思います。  特に、少年法に関して申し上げれば、少年というのは非常に可塑性に富むということに着眼して、そして教育改善ということからいろいろな仕組みをつくっておるものだと承知しております。そしてまた、それだけじゃなくて、単に保護の対象というだけじゃなくて、社会の一員として、子供であっても責任を自覚させることも大切だ。自分がやったことについて、行った行動について社会としてどういう評価やけじめを求められるのかということについてもしっかり教えたり、そういうことにも子供として対応できる部分についてはきちっと対応させることが肝要かと思います。
  82. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは次に、子どもの未来を考える議員連盟の幹事長でもいらっしゃる麻生太郎先生、提案者として、今度のこの少年法改正案をどのような子供観に立って、そしてどのような方法で犯罪を生み出す社会にコミットメントしようとしておられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  83. 麻生太郎

    麻生議員 自分の子供と人の子供はなかなか難しいんだと思うんですね。みんな同じように見るということができるかといえば、建前上見なくちゃいけないんだとは思うんですが、一般的に言うと、やはり自分の子供はかわいい、自分の子供は正しいと思いたがる立場に立つのは、これは人間としてある程度避けがたい、感情論としては理解できるところです。  先ほど、平岡先生だったかな、子供さんが十四歳と十六歳と言われたけれども、私も十三歳と十五歳という、何だおまえ、随分遅いなというふうに思われるでしょうけれども、事実ですから。十三歳と十五歳の子供を男と女それぞれ一人ずつ抱えておりますので、いわゆる少年法、まさに低年齢化することによってその対象になり得る年齢の子供を二人持っているんですが、やはりなかなか第三者的に自分の子供を見るのは難しいということを大前提に置いた上で話をしないと、この種の話は理屈だけで言うとなかなか現実的に離れますので、そういうのをある程度前提に置いた上で話をさせていただければ、やはり基本的には、今回の少年法改正におきましても従来の少年法と流れている理念は同じ、これは基本的に全く変わっていないと思っております。  ただし、現状を考えますときに、少なくともこの数年の間、特にいろいろな少年犯罪というものが起きるに当たって、数は少ないじゃないかという御指摘も一部にありますが、それは少年の数の絶対量が減っていますから、比率からいったら少なくなるのが当たり前なんであって、そういった意味では、従来と同じ、横一線ということは、子供の数が減っていることからいえば比率からいったら高くなっているということになりますので、そういった状況が一つ。  また、その内容がかなり残忍もしくは冷酷等々言われて、間違って、過剰防衛でとか過失でというような話ではなくて、状況としてはかなり計算し尽くされた上で等々の話が起きてきたり、何となくおもしろくないからという自分の感情を抑え切れなかったがゆえにとか、いろいろな例はあるとは思います。  そういった状況を考えますときに、子供というのは単に保護、いわゆるかわいいかわいいで保護するだけじゃなくて、先ほど大臣言われましたように、日本という国家の一員として、社会の一員として、またその地域の住民の一員としてやはりある程度責任も自覚してもらうというのは当然のことなんであって、むしろ子供の方が、昨今のテレビだインターネットだ等々の通信技術の発達もこれありで、親子の間の対話が減ってきた反面、その種の社会的な情報というものを得る機会がかなりふえておりますので、そういった意味では子供に対する影響はいろいろな形で、いい影響も出るでしょうが、悪い影響も出るとは思いますが、これは特定の子供に限らずみんな条件は同じですから、そういった中にあって、少なくとも子供というものにも社会の一員としての自覚を持たせるということも必要なんではないか。したがって、子供はかわいくて保護するだけではなく、同時にそれなりの大人としての自覚なりしつけということも大切なんではないかというのが、子供ということに関して言わせていただければそういうことになります。  先ほどの、国連の児童の権利条約というものの中にも出てきているとは思いますけれども、その流れている背景というのは基本的なところは同じだと思っております。今申し上げたあのリヤドのガイドラインにおいてもその基本的なところはほぼ同じというぐあいに理解をいたしております。
  84. 肥田美代子

    ○肥田委員 少年犯罪の背景は、保護されるべきときに保護されなかったとか、自分の立場を認めてほしいと願ったときに逆に侮辱された、そういう体験の積み上げがあるんですね。自分の居場所がないとか意見の表明ができないとか、そういう人格を無視された長い時間の積み重ねがやはり犯罪に結びついてしまったんじゃないかという事例が多々ございます。少年法は、こうした少年たちに何よりも治療や教育からのアプローチが必要であるという立場をとってまいりました。  今回の改正案は、そうした面を継承しながらも、より処罰的なアプローチを強めた内容になっております。処罰を強めることで少年犯罪が抑制できるという根拠があるのならお示しをしていただきたいと思います。
  85. 麻生太郎

    麻生議員 先ほどの民主党委員の方の御質問にも類似の質問があったように記憶しますが、基本的には、この法案が通ったからといって直ちに少年犯罪が減りますというようなことを申し上げることはないと思っております。  少年を取り巻く環境というものは法律一つできたから直ちに変わるというような簡単な状況ではないのであって、先ほどの平岡先生だったと思いましたが、家庭環境とか社会とか学校とか友人とかいろいろなものが複雑に絡み合って、かつ保護されるべきとか意見を聞くべきタイミング等々、すべてのものが複雑に絡み合った上に出てくるのであって、直ちにこの法律の変更が社会少年犯罪の発生率を減じせしめるということはないと思っております。  しかし、傍ら、今の状況の中において、少なくともそういうような状況にありながらもまともにやっている子も圧倒的な数いるという現実を一つ。しかも、そのまともにやっている子が被害者という現実を考えたときに、少なくともまともにやっている子は、何だおまえ、まともにやらなかったやつはすぐ出てきてまたぞろ同じ学校にとか、またぞろ何とかというような意見というのは極めて多いのであって、あの子がいるならおれたちもう学校に来られないとか。また、捕まった方も捕まった方で、すぐ出てこられたためにまたぞろ似たようなというようなことも決して例がないわけじゃないのであって、そういった意味では、直ちにこれの影響が出てくるとは思いませんけれども、少なくとも、社会の規範を著しく破って、しかも故意に人を殺すなどというような倫理的にも極めてゆゆしき問題を起こした子は罰せられるという常識が、ぷつんと切れたとかいうような簡単な話をある程度抑止し得るものであるという点に関しては、私どもはそれなりの効果が上がると思っております。
  86. 肥田美代子

    ○肥田委員 少年法は、付添人とか家庭裁判所の調査官それから裁判官、少年院の教官など、いろいろな方々との出会いを提供しておりますね。裁判官との出会いによって自分を変えることができた、そう言っている少年もございますし、少年院の教官が自分を変えてくれましたと申している者もおります。この人たちはやはり、非行少年だからと切り捨てておりません。新しい人生のステージを用意してくれた、そういうことだと思うんです。  六月の総選挙後、与党案はにわかにまとめられたわけでございますけれども、今回提出された改正案をまとめるに当たって、家裁調査官とか少年院の教官それから保護観察官、少年犯罪に精通した専門家等から意見聴取は行われましたでしょうか。
  87. 麻生太郎

    麻生議員 自由民主党の中におきまして、平成九年の秋以降、少年法に関する小委員会というのを設置しておりますが、この中においていろいろな方々の御意見を聴取させていただく機会を数多くいただいたと思っております。その中にあって、被害者の御家族の方々はもちろんのことですが、そういった話を自民党内でも聞かせていただきましたし、また、当委員会においても、民主党方々は御出席ではありませんでしたけれども、十月の十七日だったと思いますが、元家庭裁判所調査官の原口幹雄さんという方から御意見をいただいておりますし、私どもといたしましても、少年法に関するいろいろな委員会というものを平成九年の十月から平成十二年の現在に至るまでの間、過去約二十回、いろいろな方々の意見を聴取させていただく勉強会を持たせていただいたことも申し上げさせていただきます。
  88. 肥田美代子

    ○肥田委員 改正案の二十二条は、現行法を継承して、懇切を旨として、和やかに行うとともに、自己の非行について内省を促すとございます。この二十二条の定める内容は、どのような審判手続であれば子供の更生にとって大きな効果を上げることができるとお考えでしょうか。  要するに、改正二十二条の「自己の非行について内省を促す」というふうなことがありますけれども、この二十二条の定める内容は、どのような審判手続であれば子供の更生にとって大きな効果を上げることができるのか。
  89. 麻生太郎

    麻生議員 これは一概に、A少年の場合とB少年、C少年の場合といずれの場合とも状況によって大分違うと思っております。A少年にとりましてはB裁判官との関係がうまくいった、C少年の場合はF調査官との人間関係がうまくいった等々、事例によって全部異なるとは思いますが、基本的には、少年法の第一条に書いてありますように、少なくとも少年の話を聞いてやる、もしくは少年の言い分を聞いてやるというところが非常に大事なところだと思います。大体、おやじさんとか両親から話を聞いてもらえないとか、友達づくりが下手だ、先ほど子ども国会の中で出た意見というのは、あれはおおむね合っていると思いますね。  そういった状況というものがないがゆえにこういった少年犯罪、いわゆる非行に走る結果になった例を考えてみると、そういったようなものを補う意味においては調査官等々との人間関係とか、もしくは裁判官との信頼関係とか、または保護司、いろいろそういった点を補っておられる仕事に従事しておられる方々も大勢いらっしゃいますし、友人のかわりになっておられたり、また学校の先生のかわりになっておられる立場の人もいっぱいおられますが、そういった意味では、少年の意見もよく聞いた上で、少なくとも一方的に法律でこうよとぱんとやるのではなくて、ある程度聞いてやるという、これは辛抱が要るのですが、辛抱がないとこの種の話は難しいのです。  だから、そういった意味では、少年の言い分がかなり独善的であったりするというのはいつの時代でもある話ですけれども、その話を聞いてもらって初めて納得するというのであって、自分の意見は間違っていようが間違っていまいがやはり発言をし、それを聞いてやるというのができて初めていろいろなものが成り立ってくると思います。そういった意味では、少年審判にかかわられる方々というのはなかなか辛抱が要る仕事なんだと思っていますし、また人間的にも魅力があったりする人、ああいう人が話を聞いてくれたから納得するというので、納得の仕方は個人個人によって大分異なるとは思いますけれども、基本としては、罪を犯した少年の話を真摯に聞くという態度であって、それを全部が全部理解してやる必要はさらさらないと思いますが、真摯に聞くというところが一番肝心かなとは思っております。     〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
  90. 肥田美代子

    ○肥田委員 提案者がおっしゃるとおり、そうなんですね。子供たちの心の窓を開かせて、そして子供たちが口から発するその言葉を十分に大人が拾うという、そういうことがとても大切だと思うのですね。  現行法は一人の裁判官と一人の少年とが触れ合って審判を和やかに行おうということを基本にしておりますけれども、これが改正されまして裁定合議制になりますと、裁判官席に三人が座って、そして検察官、弁護士も出席する、たくさんの大人に囲まれてしまうわけですね。少年はだれを信じて、だれの顔を見て話せばいいのだろう。恐らく、対人関係の乏しい子供たちのことですから、威嚇的な雰囲気に感じるのではないかと私は思うのですね。これは私が自分の子供のことを考えても、やはりその場面に遭遇したら多分縮こまってしまうのじゃないかなと思うのですけれども、そういう審判方式で本当に少年に内省を促すことができるかどうか私は疑問を感じるのですが、提案者いかがでしょうか。
  91. 麻生太郎

    麻生議員 入社試験を受けるときに、ごそっと人事部長やら重役やらに取り囲まれて、君、出身校、なんて言われるとあれはなかなか威圧を感じるものであります。選挙のときにも、大勢の人の前で立ち会い演説をやるには、あれはかなり威圧を感じる、それは人によって皆いろいろな形があって当然なのですが、今言われたように、子供にとって、確かに片方が高くて片方が低くてばあっという感じでやられるというのはなかなか威圧を感じるという点はわからないわけではありませんが、同時に、公平を期するという意味からいきますと、やはり簡単な話ではなくてこれは複雑だなと思ったときには合議制といって、裁判官も自分一人では自信がなかったときにはほかの二人の方に聞くというのは、裁判の公正を期す、または冷静さを保つという意味においても僕はこれは基本的に大事なことなのだと思っておりますのが一点。  もう一つは、子供の側、裁かれる側に立ちますと、こう顔を見て、一番右側の裁判官が杉浦としますと、これは冷たい顔をしているな、これはだめだなと思うと、これはもう言わない。次に谷垣さんの顔を見て、ああ、この人は何となくやってくれるかなと思って、次に麻生というのを見ると、これはもう全然だめとなると、やはり谷垣という裁判官との間に人間関係ができるのであって、今の場合は選択肢が全くないわけですから、その意味からいきますと、これならというようなところにいけるという点もあるのではないかと、独断と偏見ですけれども、そんなぐあいに思ってもおりますので、一方的に威圧だけではないのであって、これはもう全然だめかと思ったが、これなら大丈夫かなといって、そいつには心を開くという面もあるのではないかなという感じがしております。  御疑念のような点は、一方的にそんなことは絶対ありませんと申し上げるつもりもありませんけれども、いい点もあるのではないかということを感じております。
  92. 肥田美代子

    ○肥田委員 非行の事実認定が行われる場合、検察官と弁護士が出席しますね。少年非行を認めないという立場をとりますと、検察官と対決しなければならなくなります。  調布駅南口事件で取り調べられた少年がある書物の中で、早く帰りたいばかりに、実はやっていないけれども、このまま認めてしまった方がいいのかどうかと迷ったことを述べておりますし、うその非行事実を認めてしまえば早く帰れるかもしれない、でも、やっていないと否認すれば保護観察期間が延びるかもしれないと、子供たち子供たちなりに悩むのですね。検察官立ち会いのもとでは、子供の意見表明どころか、口を閉ざす道を選び、逆に非行事実が見えなくなるおそれがあると私は思うのですけれども、もう一度お願いいたします。
  93. 麻生太郎

    麻生議員 今言われた点も、それも全部が間違っているとも合っているとも申し上げられませんが、基本的には、弁護人というものは少なくともいろいろ知恵がついているのであって、皆さんのところにも弁護士資格をお持ちの国会議員の方がお見えですし、我が方にもお見えですが、こういった方々がつきますと、途端に、おまえ、これは絶対しゃべらなくていいぞ、これは黙秘を通せとか、いろいろ知恵をつけるわけですよ。それが職業ですから、当たり前なことだと思います。決して問題発言を申し上げているわけでも何でもないのであって、これは当たり前のこと、だってそれは職業なのですから。弁護する立場の人をいかに有利にしてやるかというのは弁護人の当然の立場ですからね。それはいろいろ、これは言ってはいかぬとかしゃべったらいかぬ、それは当然の権利として黙秘権というものを持っていいのだとか、いろいろ知恵もつけます。そういった意味では、弁護人がつくということは、それによって口を閉ざす面もそれはないわけではないかもしれません。それは子供の権利もしくは被疑者の権利として当然有しております権利ですから。  そういった意味では、私どもの考えでは、検察官の面も出てくるかもしれません。しかし、ではどうして検察官がと言われれば、それは検察官は、被害者の家族の立場に立てば、やはり被害者の立場を考えて、どう言ってくれたのだろうかというのは、当然、被害者の家族として、遺族として最大の関心があるところだと思いますので。  そういったものは、これは両方の話なのであって、一方的に、検事がいるからとか、もしくは裁判官が三人にふえたからとかということだけで口を閉ざす面も確かにゼロとは申しませんけれども、その点、有能な弁護士がついたり、しかるべき弁護士という職業に従事しておられる方々がつくことによって、子供の心を開かせることにもなるし、それによって裁判がスムーズに進捗することにもなる。  むしろ、子供の知恵で、罪を犯してもいないのに、認めた方が早く済んじゃうなんというような発想は、それは間違い、そんなことをしてはだめなのだ、していないのなら断固闘えということを指導するのも弁護士としては当然のことなんであって、私どもとしては、そういった意味では、全部が全部うまくいくという気もありませんけれども、しかし、今申し上げたような点も考えていかねばならぬところだと思っております。
  94. 肥田美代子

    ○肥田委員 今提案者の方から弁護士の話が出ましたので、私、一つ提案があるのですけれども、やはり検察官の関与にかかわらず、検察官が出る出ないにかかわらず、冤罪とか自白の強制などをなくすために、すべての段階で国選弁護人をつけるというふうな方向に持っていったらどうでしょうか。
  95. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 結局、今の御議論を聞いておりまして、本来の訴訟のように検察官と被告人が対決して裁判官が裁くというような構造のものもありますし、それから、今の少年審判は対決してということをねらっているわけではなくて、仮に検察官や弁護士の付添人をつける場合であっても、裁判官のリードのもとに、やはり保護処分を行うという観点で、当事者の対決ではなしに裁判官の職権のもとでやる。いろいろなタイプの仕組みを考えることができるんだろうと思うんですね。  今おっしゃった、必ず弁護士を国選付添人でつけるというような構造をとりますと、非常に対決的な構造というものに近くなっていくんではないかなという気が私はいたしておりまして、場合によっては、やはり裁判官のもとで、先ほど先生が言っておられますように、和やかに話し合うということを主眼に置くべき事案もあるでしょうし、それから、いわゆる逆送の場合がそうでございますが、法廷で対立構造のもとで真実を明らかにするということを主眼に置かなきゃならない事件もあって、いろいろなタイプがある中でにわかにすべてに国選の付添人をつけるというのは、ちょっとまだ議論が十分に煮詰まっていないのではないかと私は考えております。
  96. 肥田美代子

    ○肥田委員 少年の意見表明についてもう一度お尋ねしたいんですが、審判手続の事実認定をめぐって検察官と弁護士が厳しく対決する場面があろうと思うのですね。そのときに、恐らく激しい大人同士の応酬になって、その真ん中で子供が小さくなっているような様子が私は想像できるんですけれども、大人同士の代理戦争が起きてくるとしますと、専門的な、法律的な言葉も飛び交うと思うのですよ。そのときに、少年はそのやりとりをきっちりと理解して、そして自分の意見や思いを表現できるかどうか、その辺を心配するんですけれども、いかがでしょうか。
  97. 谷垣禎一

    ○谷垣議員 先ほど麻生提案者がおっしゃったように、今肥田委員のおっしゃったような懸念が私はゼロだとは思いません。  しかし、刑事の手続に持っていけば、それはもう対立構造で、弁護人と検察官がいろいろぶつけ合って、両方から光を当てて裁判官が判断するという構造をとらざるを得ませんし、そういう構造のもとでは当然、対審ですから、これはちょっと私も十分煮詰めていないのであるいは間違っているかもしれませんが、多分、憲法上からも当然公開の法廷でやらなきゃならないということになってくるのではないかなと思います。  少年審判の場合に、検察官を入れるあるいは弁護士が付添人をするというのは、ちょっと先ほどの繰り返しになりますが、あくまで、対立当事者がぶつかるという形の中ではなくて、裁判官が主宰をして、どうやってこの少年の保護ないし矯正をしていくかという観点から行われるべきものでございまして、和やかな雰囲気でというのは当然この場合にもかかってくる。裁判官が保護事件を運営するに当たっては、検察官あるいは弁護士が入りましても、裁判官はそれを十分意識して、この審判の場合には訴訟指揮という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、運営をしていかなきゃならないんだろう、こう思っております。
  98. 肥田美代子

    ○肥田委員 私の心配が事実にならなければいいのにと実は願っているところでございます。  少年司法に関する国連最低基準規則というのがございますけれども、その中で、手続は、少年にとっての最善の利益に導かれ、少年がそこに加わり、みずからを自由に表現し得る総合的理解の雰囲気の中で行われるべきである、こういうふうに書いてあるのですが、改正案は、国連で定めております最低基準規則の理念、要するに、子供の利益擁護の理念を貫いていると思われますでしょうか。
  99. 麻生太郎

    麻生議員 今回の少年法改正に当たりまして、基本的に三点ございまして、少年及びその保護者に対して、その罪の責任について一層の自覚を促して、少年の成長を図るというのが第一点。二つ目は、少年審判における事実認定手続、よく問題になるところですが、事実認定手続の一層の適正化を図る、これが二点目です。三点目が、被害者に対する配慮、どうしてそうなったんだかさっぱりわからぬという被害者側の御質問のところで、そういった点を配慮するということを三点目に挙げておりまして、今回の諸制度の改正によって、少なくとも少年の健全な育成を損なうことはいささかもない、基本的な理念としてはそう思っております。  そういった意味では、加害者の少年も当然のことですが、被害者家庭被害者の家族というものは、これは殺されたとは限らず身体障害者にさせられた等々、数え上げれば、死なないとなかなか大きな取り扱いになりませんけれども、いわゆる身体障害者にされた、身体上の著しい損傷を受けたという少年に対する点も考えなければいかぬところは当然なんであって、そういったところも考えた上この提案はさせていただいておりますので、今御指摘の点については、それに関しては損なうものではないと思っております。
  100. 杉浦正健

    杉浦議員 谷垣先生がお答えになったところでありますが、子供の前で検察官と弁護人が激しくやりとりをするというようなことは、一般論としては絶対にあってはならないことでありまして、職権主義的構造ですから、そういう問題が起こりそうになったら裁判官は二人を連れて奥へ行って、別室で子供のいないところでやりとりをする。保護が目的でありますので、原則としてそういう運用がなされなきゃならない。裁判官の指揮のもとで審判が行われていくわけですから、ちょっと黙っていろということも言えますし、そこはきちっとやらなきゃいけないということは明らかだと思っております。  御心配の点がないような運用が今までなされていました。私も、付添人で軽い事件で行ったことがあるのですが、選任届を出したのに、弁護人、ちょっと外で待っていてくださいと言われまして、中へ入れなかったこともございます。それは裁判官の判断で、それに対する処分が円滑にいくように配慮するのは当然であって、たとえ重大な事件で検察官、付添人立ち会いの上で審理が行われる場合であっても、逆送されるまでは、公開法廷になるまでは、手続の中では和やかに、穏やかに、しかしきちっと非行を反省させる立場は踏まえつつ審理が行われなきゃならないということは明らかだと思います。
  101. 肥田美代子

    ○肥田委員 家庭裁判所の調査官は、どういうお仕事をなさっているのでしょうか。
  102. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  家裁調査官は、主として心理学、教育学等のいわゆる人間関係諸科学を専攻した者から採用されているわけでございまして、調査官研修所において一定期間の養成訓練を受けた上で、家庭裁判所において家事事件及び少年事件双方に関与しているわけでございます。  とりわけ、今御議論いただいております少年事件における家裁調査官の役割でございますけれども、これは、個々の事件ごとの裁判官の命令を受けまして、当該少年について、少年非行に至った経過でございますとか、その少年自身の性格特性でありますとか、あるいはその少年を取り巻く生い立ち、親子関係のありよう、友人関係、学校での関係など、当該非行に至った原因となると思われる本人自身の問題と環境の問題万般について調査を行いまして、これを踏まえて、当該少年処遇についての意見を提出する次第でございます。裁判官は、その意見を見た上で、最終的な判断をされるという仕組みになっておるわけでございます。  また、もちろん家裁調査官は、審判の席に立ち会うこともあるわけでございまして、その審判の席において、先ほど来御懸念されていますような少年のありようについて、その少年から自由な発言を引き出すというための補助的な役割を果たすこともありますし、またそこの場において、調査官が処遇について意見を述べることもあるわけでございます。  さらに、事件が終わった後におきましても、調査官がその成績の視察をする、例えば少年院等に行っている少年について状況視察をするということもあるわけでございまして、そういった意味合いにおきましては、事件の受理から、その後、少年の最終の更生に至るまでの間、目を配っている立場にある、このように御理解いただければと思っているわけでございます。  最近は、御議論いただいておりますように、深刻かつ重大な少年事件が多発している、とりわけ、その動機の理解がなかなか難しい事件が多くなっているようでございまして、その意味では、家裁調査官の役割も一層重要さを増していると承知しているところでございます。  以上でございます。
  103. 肥田美代子

    ○肥田委員 確かに、調査官のお仕事というのは、少年にとって極めて重要な存在だと思うのですね。今回、合議制になりまして裁判官が三人になる。そうしますと、地方裁判所の刑事事件を兼ねた裁判官もいらっしゃいますし、刑事裁判に臨むような雰囲気になった場合に、実はその調査官の処遇意見といいますか、そういう調査官の立場が随分弱くなるのではないかなという心配をするのですけれども、それは私の危惧でしょうか。
  104. 麻生太郎

    麻生議員 基本的には危惧で終わるべきものだと思っております。したがって、そんなことはないという立場に立って答弁申し上げるのですけれども、調査官の役割がかなり増すということになるのだと思います。三人で聞きますので、調査官の意見陳述というのは極めて大きな重さを持ちます。裁判官はその一人の意見だけで判断するのではなくて、三人で聞いて、これとおろしてきますので、そういった意味では、調査官の地位が下がるとかいうことではない。むしろ、逆に重さが増すぐらいではないかなという感じがいたしております。
  105. 肥田美代子

    ○肥田委員 その調査官の役割がいささかも変更ない、増すぐらいだとおっしゃる。それは確かに承っておきます。  それで、調査官が今千五百人いらっしゃいます。これを五人ふやそうという増員が申請されておるようですが、これは五人と言わず、もう少しふやしてほしいなという気持ちもありますけれども、どうお考えになりますか。
  106. 麻生太郎

    麻生議員 私よりもこちらの方にと思わないでもありませんけれども、これはいわゆる公務員の数は規定されております関係がありまして、なかなか難しいところだとは思います。むしろ、調査官が減るぐらいの方が、少年犯罪が減ったために調査官の必要がなくなれば一番いいのであって、そういった意味では、なかなかそう簡単にはいかないとは思いますけれども、優秀な調査官の必要性というものは私どもも感じております。
  107. 肥田美代子

    ○肥田委員 さて、犯罪被害者の話に行くわけですけれども、やはり被害者の家族のお話を聞きますと、厳罰をあえて求めるわけではない、しかし、自分の罪の深さを本当に知ってほしいのだ。もうこれは本当にのどから血が出るような訴えだと思います。それで、どんなに痛かったろうとか、どんなにつらかったろうとか、やはりその無念さが子供を失った親の原点になっていると思うのです。  これまで犯罪被害者は、少年審判手続における情報からは排除されておりました。改正案では、被害者が申し出た場合、被害者の意見を聴取したり、非行事実にかかわる記録の閲覧、謄写を認めるなど、被害者に配慮した点は評価できると思っております。非行少年の意見表明が保障されなければならないのと同じように、被害者にも意見表明の場所を保障し、被害者、遺族の居場所を確保することが私はとても大切だと思っているのです。  家庭裁判所は、請求があれば被害者の意見を聴取するとしておりますけれども、それはほかの捜査機関にも適用されますでしょうか。例えば、警察でありますとか検察でありますとか、そこに意見表明をしたいというふうに被害者の家族の方がおっしゃれば、そこは家族の望みでできますか。
  108. 古田佑紀

    古田政府参考人 捜査実務に関することですので、私からお答え申し上げます。  まず、事件の捜査におきましては、ただいま委員が多分念頭に置かれているような事件につきましては、これは当然被害者あるいはその遺族の方からいろいろな事情というのを十分お尋ねするというのがごく通常のやり方でございます。したがいまして、そういう過程で、どうしても私の気持ちがこういうことだというようなお話、これはしょっちゅう出てくるわけで、それは大事な話として受けとめて記録にしていく、そういうことをしているわけでございます。  また、後から、実はこういうことを言い忘れたとか、また、そういう機会がたまたまなくて、どうしても聞いてもらいたい話があるというようなことがございますれば、それは、捜査というのは裁判と違いまして、ある意味では自由にそういうことができるシステムでございますので、そういうことにはちゃんと対応しているということでございます。
  109. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしますと、情報の提供の場合ですけれども、捜査それから少年審判の手続、保護処分、送致など、各手続の段階で公開されると考えていいですか。
  110. 古田佑紀

    古田政府参考人 事件の情報をどの程度お知らせできるか、お知らせすることが適当かという点につきましては、捜査段階あるいは家庭裁判所の審判の段階、それが終わった段階などでいろいろ違ってくることになると思われます。  と申しますのは、捜査段階というのは非常に流動的でございまして、なかなか断定的なことを申し上げることもできない、いろいろ申し上げるとかえって混乱や誤解が起きたり、場合によっては、めぐりめぐって罪証隠滅とか、そういうような問題も引き起こしかねないとか、いろいろな問題がございます。  しかしながら、一方で、いろいろな事実関係とか少年の氏名とか、そういうものを知りたいというような御要望もあるわけでございまして、ただいま申し上げたような弊害の有無というのを考慮して、捜査機関も、特に検察庁あるいは警察などで被害者通知制度というものをつくりまして、ある一定の情報をお知らせするということにしているわけでございます。  一方、家庭裁判所につきましては、審判が非公開ということで、家庭裁判所の御判断ということになろうかと思いますが、これにつきましては、この法案で触れられているところと、家庭裁判所の実務の話でもございますので、私の方からの御説明はちょっと差し控えたいと思います。
  111. 肥田美代子

    ○肥田委員 検察とか警察それから家庭裁判所の情報がそれぞれ提供されることになりますと、情報の内容に今おっしゃったように違いとか濃淡が出てくると思うのですけれども、情報の内容の違いはどのようにして調整されるのでしょうか。
  112. 古田佑紀

    古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、それぞれの手続の段階で御提供申し上げられる情報というのもおのずと範囲が違ってくる面があるわけでございまして、それぞれの捜査機関あるいは裁判所など関係機関の立場で、先ほど申し上げましたような弊害がないような範囲で情報をお知らせするということになると思います。  一般論として申し上げれば、手続の後になればなるほど弊害が少なくなってまいりますので、提供し得る情報というのも多くなるのではないかと思っております。
  113. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、犯罪被害者方々がおっしゃるように、警察に行っても何にも教えてもらえないということはこれからはなくなるというふうに思っていいのでしょうか。
  114. 古田佑紀

    古田政府参考人 警察の被害者通知制度の運用がどういうふうになるのかということにつきましては、ちょっと私、ここで確定的なことを申し上げるということはできませんけれども、先ほど申し上げましたように、被害者の方に対して検察庁でも通知制度というのを設けて、少年の場合にはその改善更生というようなことに一層慎重な配慮が必要ということで、やや配慮する事項は多くはなりますが、いろいろな事情に応じて提供できるシステムをとっております。  したがいまして、少なくとも検察庁に関しましては、ただいま申し上げましたような制度で一定の情報の提供は可能であるということだけちょっと申し上げておきたいと思います。
  115. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしますと、ちょっと私もう一度確かめておきたいんですが、少年審判が終わった後情報公開されることはこの法律で新しくつけ加えられるわけですけれども、その前の捜査段階での情報公開については同じようだというふうに考えていいんですか。
  116. 古田佑紀

    古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、捜査段階ではまだいろいろ流動的な要素も多いというふうな問題とか、それから、後ろに当然ながら家庭裁判所の審判を控えているわけで、それに対するいろいろな影響なども考えなければいけないということがあるわけでございます。したがいまして、捜査段階と家庭裁判所の審判に移ってからということになると、これはやはりかなり違ってくることは事実だろうと思うわけです。  今回の法案で私どもの承知しております限りでは、審判の段階でも、非行事実に関する部分についての記録は、ごもっともな理由があれば、弊害がなければお見せできるというふうなことになっております。ただ、では捜査段階でそれと同じような扱いをできるかといいますと、先ほど申し上げたような点から、これはやはりちょっと難しいだろうと考えているわけです。
  117. 肥田美代子

    ○肥田委員 提案者にお尋ねしますけれども被害者の知る権利と加害者のプライバシーの保護は、どのような方法で両立させるおつもりでしょうか。
  118. 麻生太郎

    麻生議員 これはなかなか難しい問題だと思うんですが、被害者に対する情報の開示ということに関しましては、少なくとも、今回の法改正によって、少年及びその法定代理人の氏名及び住居は公開されることになります。決定の年月日並びに主文及び理由内容につきましては開示できるということにいたしております。これは、従来は全くできませんでしたので、いつどうなったんだかだれもわからぬという、被害者としては大変不満だったところなんです。  これは同時に、今度は、加害者である少年の側の方としては、当然そのプライバシーというものがどうたらという話に必ずなりますので、私どもとしては、申し上げたような、謄写とか閲覧とかさせるようにもいたしておりますけれども、その内容につきましては、少なくとも当該事件にかかわる方しか基本的には出さないことになっております。その部分に限ることにしておりますので、そういった意味では、罪を犯した少年の反省なりさらなる更生なりというものを期待して、その種の部分はできる限りというのが今申し上げた範疇なんですが、同時に、守秘義務というものをきちんと規定いたしておりまして、少なくとも謄写、閲覧したもしくはその内容をもらった人たちは、そのことに関しては守秘義務をある程度守っていただくということになります。  したがって、そういった意味では、マスコミやら何やら、わんわん被害者も加害者もというようなところは、少なくともそういった点をきちんと押さえておかないと、加害者のプライバシー、プラス被害者のプライバシーもということを両方考えなければいかぬところが当然なんであって、私どもとしてはそのバランスが非常に難しいところだと思います。そういった意味では、今回の改正案内容はいろいろその点は細かく書いてありますので、これを読みますとちょっと時間があれだと思いますので、三十一条とか五条とか、いろいろずっとその点に関しての対策を私どもなりに提案させていただいております。
  119. 肥田美代子

    ○肥田委員 あともう一つ、身柄拘束四週間で不都合な理由について、少し端的にお答えいただけますでしょうか。
  120. 麻生太郎

    麻生議員 これは非常に意見の分かれるところでありました。御存じのように、一連の捜査に関しまして四週間という拘束というものが現状なんですが、これは十二週間というのが私どもの最初考えた案でありました。十二週間というのは少年だと一学期丸々なくなるとか、いきなり三倍はとかいう御意見もいろいろ出たところで、最終的にこれは八週間という形で現状はさせていただいております。  これは、現場の声といたしましては、少なくとも四週間で事実認定を全部終えてしまうというのは、もう少年の方も知恵がついて、いろいろ知ったりして、うそをついて後で意見が変わったり、決定した後、実はあれおれがやったんだと言ってみたり、実に甚だ、結果論としては、あのときちゃんとしておければよかったという例が幾つもあったこともいろいろあるんです。現状としてはふえておりますのに対して裁判官の数が足りないとか、いろいろな理由もありますけれども、事実認定をするのに四週間はいかにも難しい、時間が短いということから、非常に大幅延長という意見がありましたけれども、最初から大幅延長にすると、今度は逆に、それだけあるから最初ほたっとけという話になりかねないとか、いろいろな御意見が出たところで、最終的に八週間ということにさせていただいたというのが私どもが八週間を提案させていただきました背景です。  したがって、これが本当に八週間で大丈夫なのかと言われると、正直言ってもう少し要るんじゃないかなと、凶悪犯罪についてはそういったような感じがいたしますし、少年の単独犯だった場合は非常に話はそこそこ、事実認定もよほど複雑でない限りはできるケースも多いんですが、少年の場合は複数犯のケースが非常に多いものですから、そうなってくると事実認定は、こっちは認定したけれどもこっちはしなかったりして、いろいろ意見が後で変わったり等々して、なかなか難しい。公判維持が難しい等々いろいろな例がございまして、今申し上げたようなところで八週間というので今回の場合提案させていただいたというのがその背景でして、いろいろ意見の分かれるところだと思いますけれども、少なくとも現行四週間でいいというのはちょっとどう考えても現状では難しいというのがありましたので、このような提案をさせていただきました。
  121. 肥田美代子

    ○肥田委員 裁判所側のその考え方は理解できるんですけれども、ただ、子供にとって身柄拘束八週間というのはかなり長い期間であり、それがこの子供の最善の利益に本当に合致するのかなという思いも実はあるんですが、ここはまたこれからの議論にさせていただきたいと思います。  これで最後の質問をさせていただくわけですが、さきの子ども国会で子供がこんなことを言っているのです。大人が責任を持って子供を守っていく社会をつくってくださいと言っているのですね。子供たちをめぐる社会の状況というのは、やはりどう考えてもたくさん直さなければいけないことがございます。  十四歳になったら、高校受験を控えて、偏差値で自分の位置が決まってしまう、だから、自分の将来が見えたかもしれないというような錯覚に陥ってしまって、勉強にもう力が入らなくて、勉強の意味を失ってしまうという子供もおります。それから、町に出ますと、コンビニにはどぎつい性描写の雑誌もありますし、ビデオも並んでおります。それから、道路には妙なチラシが張ってあったりもいたします。覚せい剤や麻薬は、子供をターゲットにしているような業者もたくさんございます。虐待防止法も我々議員立法でつくらせていただきましたけれども、やはり虐待で死ぬ子供たちは後を絶たない。  こういう社会的状況を、今度の少年法提案者がおっしゃったように、今度はこちらの方の手当ても同時進行でなるべく早くしないと、私は、この子供の状況が一方だけでよくなるとは思わないのですけれども提案者はいかがでございましょうか。
  122. 麻生太郎

    麻生議員 これは冒頭の佐々木先生の御質問のときにも一部お答えをさせていただきましたが、確かに、おっしゃるように、少年法さえ改正すればいわゆる少年犯罪が減るかと言われれば、私どもは、世の中はそんな単純な話ではない、基本的にそう思っておりまして、今肥田先生がおっしゃられたような、いろいろなものが複合的に生み出します社会的背景というものがその中にあると思っております。母親が幼少期にうちにいない、しかしそれは働くためだというのが子供の生活と比べてどうとか、これは実にいろいろな方々がいろいろなことを言われますので、物すごく難しい話だとは思っております。  基本的に、今の社会的な状況というのは五十年前とは著しく変わっておりますので、そういったものに合わせまして、今、社会全体の規範の問題にしても道徳の問題にしても法律の問題にいたしましても、学校の中の状況、すべてのものが著しく従来とは変わってきておりますので、そういったものを含めてどういった判断をすればいいかというのは、これは法務省だけでできる話でもありませんし、実に多くの方々の英知を集めて、とにかく青少年と名前がつく法律だけで十八省庁にまたがっているとたしか記憶しますので、簡単にすぐ手がつけられる話ではありませんけれども、ぜひそういった意味で、この種の話がこういったものを一つのきっかけにさらに多くの方々の御論議をいただいて、青少年の健全な育成に資するような規制なり、規制の緩和なり、また法律なり、そういったものを考えていくべきだ、私どももそう思っております。
  123. 肥田美代子

    ○肥田委員 よくぞ言ってくださったと思うのですけれども、実は、子供に関する監督省庁が十八省庁ぐらいございますね。それでもなおかつ、私たちは、やはり子供像というのは全体像でとらえなければいけないと思うのですね。法務省の子供像、厚生省の子供像というのじゃなくて、全体の子供像。ですから、総合的な子供政策が必要なのだけれども、十八省庁に別れてしまって、どうしてもそれぞれの省庁の溝の中に落ち込んでいく子供たちがたくさんいると私は思うのです。  それで、これは私の持論で恐縮なのですが、今省庁再編の時期にこういうことを申し上げるのはなにかと思いますけれども、子供庁とか子供省とかというものをつくりまして、次の世代にどういう子供をつくっていくかということを総合的に考える、そういうお役所が一つ必要で、そこからその十八省庁にいろいろな発信をしていくというようなことをイメージしているのですけれども、私の考えに賛成をしてくださいますでしょうか。
  124. 麻生太郎

    麻生議員 基本的に、子供なり婦人なりというものは、今まで高度経済成長のときと比べて、改めて数が減ったもしくはその地位が上がったという点に関しては、私どもとしては、子供、児童というものに関しての考え方いうのは、産めよふやせよの子供のたくさん多かった時代と比べて、その比率は高まっていることは間違いないと思っております。  また、これからのことを考えたら、こちらはちょっと例えとしてはいかがなものかと思いますが、大人の方は利子みたいなものですけれども、こっちは原資みたいなものですから、この原資をやはり大事に育てるのは当然のことでありまして、原資を大事にした結果生まれた利子が大人ですから、そういった意味では、この原資はやはり大事にせないかぬところだと思っておりますよ、基本的には。  しかし、今申し上げましたように、これをどこかで子供庁とか児童省とかいうものをつくった方がいいのかと言われると、それによってどんなことが起きるかということは余り考えたことがありませんので、今にわかに賛成できるかと言われると、反対もできませんけれども、なかなか賛成もできないというのが率直なところです。
  125. 肥田美代子

    ○肥田委員 その件に関しましては、これからじっくりとお話しさせていただきたいと思っております。  それで、今回の私の質問とはちょっと外れますけれども、先ほど杉浦議員が、バスジャック事件の家裁決定をごらんになったというお答えがございました。どのようにして閲覧されたのか、家庭裁判所の許可を得られたのかということでございますが、手続、それから許可が得られたのかどうか、その辺をちょっとお教えください。
  126. 杉浦正健

    杉浦議員 最高裁判所の事務当局に要請をいたしました。委員会答弁上必要だからという理由で持ってきてくれたのだと思います。
  127. 肥田美代子

    ○肥田委員 ありがとうございました。終わります。
  128. 横内正明

    横内委員長代理 この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後三時三十六分開議
  129. 長勢甚遠

    長勢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、杉浦正健君から発言を求められておりますので、これを許します。杉浦正健君。
  130. 杉浦正健

    杉浦議員 先ほどの答弁におきまして、ちょうだいした決定、全文と申し上げましたが、要旨でございました。勘違いをいたしておりましたので、謹んで御訂正させていただきます。
  131. 長勢甚遠

    長勢委員長 質疑を続行いたします。藤島正之君。
  132. 藤島正之

    藤島委員 少年法の問題といいますか、これはもともと少年問題だろうと思うのですね。  先日、テレビを見ておりましたら、暴走族が捕まって少年院に入って出てきたとき、本当に捕まってよかった、みんな捕まったらかえっていいんだけれどもなというようなことを言っておりましたけれども、要するに、今そんなふうな社会になっているということが非常に問題じゃないかと思うのですね。  したがいまして、我々自由党といたしましては、まず、しつけの問題とか家庭の問題あるいは教育の問題としてこれを取り上げ、政策として実現すべく、いろいろな点を今実は提案をしておる、そんなところでございます。  先ほど提案者の方からもお話がありましたけれども少年法をいじるだけ、変えるだけでこの問題はとても解決するような問題ではない、私も実は本当にそう思っておるわけでございます。したがいまして、少年問題全体でとらえるべきであるわけです。入り口といいますか、出る前にそういうことが起こらないようにするのが本当は問題なんですけれども、それはそれとして、やはり結果が出たものに対して少年法で対処していく、これもまた一つの、いろいろな手段の中でも重要な問題だろう、こういうふうに思うわけでございます。  それで、少年法に入るわけですけれども、まず少年法の目的でございます。第一条に「少年の健全な育成を期し、」ということになっておりまして、非常にそちらの方を強調しておるわけでございますけれども、加害者の方の保護というものにちょっと偏っているのではないかなという感じがいたしまして、少年法全体の流れはこの一条から来ている部分が大きいわけであります。したがいまして、手続にしましても、犯人の都合のいいような事実認定の方式になっているんじゃないかなという感じもしますし、心からの反省とかあるいは真の更生というものが起こりにくいように結果としてなっているような感じがしないでもないわけですね。  一方、国民の安全といいますか、そういう面が非常におろそかになっている、少年がどこかでとぐろを巻いているようなところに行くのはかえって身の危険を感じるような、そんな感じもするわけでございまして、結果的に、犯罪抑止という方に働いているのかどうか、その辺も非常に疑わしいな、そんな気が私は実はしておるわけでございます。  そこで、一つお伺いしたいのは、少年に刑罰を科することの是非といいますか可否、あるいは効果、そういったものについてどのように提案者認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  133. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  藤島議員から現行の少年法について、また社会あり方とかいろいろな少年問題に関する御意見を賜りました。我々も同じ考えを持つものであります。そこで、何としても少年法を現行のままではまずいのではないのか、それは私どもだけではなくて、世論もそうである、こういうふうに認識するところであります。  そこで、少年に刑罰を科すことの是非、そしてまた、その効果についての認識を問われたわけでございますけれども少年であっても罪を犯せば処罰されることがあるという規範意識をきちんと持たせて、社会生活における責任を自覚させる必要がある、このように私どもは思います。そして、少年の健全育成を図る上で、少年にも個々の事案に応じて刑事処分を科すこととすることは意義のあることである、このようにも考えます。  その効果につきましては、犯罪の発生には種々の要因が絡むものでありまして、現実にどの程度犯罪抑止されることになるかといったことについては、いろいろな提案者からお話がありましたように、一概に申し上げることは困難でございます。しかし、少年であっても罪を犯せば処罰されることがあることを明示することは、規範意識を育てるとともに、社会生活における責任を自覚させることにつながるのではないのか、このように考えるところでございます。  ちなみに、けさの東京新聞によりますと、この少年法改正されればどういうふうになるかというふうな十五歳から十九歳の少年のアンケート調査が掲載されておりました。それによりますと、改正されれば少年犯罪は減る、こういうふうに答えた少年は二一・八%であります。そして、いや、減らない、こう答えた少年たちは三八・一%、どちらとも言えない、四〇・一%であります。  したがいまして、少年たちは、この少年法改正されたとしても、二二%弱の少年たちしかいわゆる防止、抑止につながらないであろう、こういうふうにとらえられているわけでありますけれども、いずれにいたしましても、この法律はどういう目的を持っておるのか。一条に書かれたとおりでありますし、そして、より凶悪な犯罪を我々は防止、抑止する、とりあえず、社会の要請にもこたえる意味でどうしても改正案をお認めいただきたい、こういう思いでございます。
  134. 藤島正之

    藤島委員 今御紹介がありました東京新聞の記事、私も実は読みましたけれども少年側のそういう意識だけが問題なのかどうか、社会全体もやはり、少年犯罪には親とかいろいろなものがかかわっているわけですし、少年だけのそういう意識の調査で、減るのが二十数%というだけではないのではないかという感じはするのですけれども、それはそれとしまして、処罰が軽いから、そういうことを知っているから非行に走るというふうに見ているのかどうか。ちょっとこれは法務大臣にお伺いしたいと思います。
  135. 保岡興治

    保岡国務大臣 少年法の適用で少年非行とか少年犯罪にどういう対応をするかということは、裁判所が、法にのっとって、具体的な事案に応じて、その処遇内容あるいは刑事処分が適当かどうかという判断をするというような仕組みになっているわけでございますけれども、私が今度の選挙で有権者のいろいろな人から聞いても、やはり少年規範意識が薄れているということは非常にどなたも強調されまして、これは社会全体の鏡みたいなところもあるかもしれませんけれども少年といえども社会の一員ということで、悪いことをしたらけじめをつける、刑罰を受ける、その辺のあり方はやはり少年の健全育成という観点からも非常に重要だ、今お答えが提案者からあったとおりだと思っております。
  136. 藤島正之

    藤島委員 今法務大臣がおっしゃったように、私は健全育成という面からも、やはり罪を犯した者はそういう償いをきちっとしなければいかぬという方がはっきりしていいんじゃないかと思うのですね。今の子供というのは、そういうものをきちっとさえしておれば、それなりに行動もそういうふうにきちっとするんじゃないかな。何もかもうやむやで行動しているとは思えないものですから、私はそういう意味で今回の改正案には賛成を表明しておきたいと思います。  さて、それでは、それぞれの条文に関しまして、少し時間がありますのでお伺いしたいと思います。  まず、第二条の関係でございます。少年年齢として規定しているわけですけれども、各国の少年年齢の規定について、法務省から御説明をお願いしたいと思います。
  137. 上田勇

    上田政務次官 主要国につきまして幾つか御紹介をさせていただきたいというふうに思います。  アメリカにつきましては、多くの州におきまして十八歳未満としておりますが、中には十六歳未満というような州もございます。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア等におきましては十八歳未満になっておりまして、韓国においては二十歳未満というようなことになっております。  ただし、イギリス、ドイツ等ヨーロッパ諸国の中には、十八歳から二十一歳の範囲をまた別の範囲として、若年青年あるいは青年というような形で規定しているところもございます。  以上でございます。
  138. 藤島正之

    藤島委員 今御説明がありましたように、主な国はほとんど十八歳、あるいはそれ以下の国もありますね。ということで、私ども自由党としては、この少年法の適用年齢を十八歳未満に変え、同時に、権利と責任という意味選挙権も十八歳以上に変えるべきだ、それで権利と責任を持たすべきだ、こういうふうに考えておるのですが、今回の法案にはその点が入っておりません。この点について、提案者側は何か検討したのかどうか、どう考えているのか、それを御説明いただきたいと思います。
  139. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  その前に、藤島委員から、我々提案者改正案について賛成するというお言葉をいただきました。大変心強いお言葉であります。お礼を申し上げたいと思います。  私たちの思いは委員の思いと全く同じでございます。そして、我々は、悪いことをしたのだから、やはり幾ら更生少年の健全育成とはいえ、罰するべきものは罰しなければいけない、こういう思いで改正案をつくらせていただきましたけれども、マスコミでは厳罰化厳罰化というふうに報道され、そしてその活字だけが躍って反対されているような気がしてならないわけでありまして、また残念に思っております。  今お尋ねになられました少年法の適用年齢を十八歳未満とすること、それから選挙権の問題、選挙権付与年齢との関係というようなことでございますけれども、これは何と申しましても、与党といっても三党あるわけで、やはり三つの意見が激しくぶつかり合ってきたというのは事実でございます。  そこで得た結論は、とにかく少年法の適用年齢の上限を二十歳から十八歳に引き下げるということについては、刑事司法全般において、成長過程にある若年者をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでございます。時代の変遷、主要各国の現状、年齢について定めている他の法令との整合性のほか、最近の少年犯罪動向や十八歳、十九歳の者に対し保護処分を行うことができなくなることの当否など、もろもろの観点から検討する必要があると考えてまいりました。  それで、選挙権付与年齢との関係等について、これもやったわけでありますし、整合性をとっていかなきゃいけないということであります。少年法の適用年齢と選挙権が付与される年齢の関係をどのように考えていくか。前者は、犯罪行為に対して専ら刑罰による責任を問う年齢をどのようにすべきかという問題であるのに対しまして、後者は、選挙、いわゆる議員を選ぶことのできる権利でありますけれども選挙権を認める年齢をどのようにすべきかという問題、その間のバランスをどのように考えるかということについてはさまざまな意見がある、また、現にありました。  いずれにいたしましても、少年法の適用年齢については、このような他の法令との整合性のほか、最近の少年犯罪動向など、種々の観点から検討する必要がある、こういうふうに考えております。  委員に納得していただけるような答弁でないかもしれませんが、このように、我々話し合い、決めさせていただいたところでございます。
  140. 藤島正之

    藤島委員 先ほど賛成だと申し上げたんですけれども、これは、全部すべて賛成だ、こういう意味じゃございませんで、考え方の大筋は賛成である、こういう意味でございまして、一部にはもちろん我々の意見がありますので、これはまた徐々に述べてみたいと思います。  今のこの少年年齢の問題につきましては、要するに、与党内で意見の一致を見なかったということでございますね。端的に言えば、十八歳にすべきだという意見に対して、与党の中のほかの党がそれは反対だということで、今回は提案に盛り込んでいない、こういうふうに受けとめてよろしいわけですね。
  141. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  そのように指摘されても仕方ないかもわかりませんけれども、とにかく議論議論を重ねてこういう形にさせていただいたということでございます。
  142. 藤島正之

    藤島委員 はい、わかりました。  それでは次に、十七条関係でございますけれども、これは観護措置期間でございます。午前中にも少し議論があったわけでございますけれども、前回の閣法では十二週間だったわけですね。それが今回八週間になったという根拠というか、考え方をもう一度御説明いただきたいと思います。
  143. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  少年審判の期間中、必要があるときは少年少年鑑別所に収容しておくことができます。これを観護措置というわけですけれども、現行少年法では、その期間は二週間とされ、一回だけ更新が認められていますので、最大でも四週間しか収容しておくことができません。  しかし、少年事件でも、多数の証拠調べが必要であるなど相当の審理日数を要する事件がございますし、また、あったわけであります。そのような審理を現行の最長四週間で終えることは極めて困難であります。そのような場合には、やむを得ず少年を釈放して審理を続けることになりますけれども少年が逃亡したり、自殺、自傷行為に及んだり、あるいは罪証隠滅行為を行ったりすることもあり得ます。そのような事態を防止しつつ、的確な事実認定を行い、少年に最もふさわしい処遇を決定するためには、観護措置期間を延長する必要がございます。  廃案となった少年法改正法案は、一定の厳しい要件を果たした上で最長十二週間まで延長する案が盛り込まれておりましたけれども、これでは長過ぎるとの批判がございました。また、いや、十二週間でいい、そういう御意見もありましたけれども、今回の改正法案では、最長八週間まで延長できることとしたわけでございます。
  144. 藤島正之

    藤島委員 この点について最高裁にお尋ねしますけれども、実務的にはこれでいいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  145. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  必要とされる観護措置の期間につきましては、まさに事案ごとにさまざまであるのが現状でございます。実務上は、大多数の事件におきましては非行事実の争いがないということから、実際には、少年処遇選択のための心身鑑別などを行って、現行の四週間以内で審理を終えることは可能であるわけでございます。  しかしながら、先ほど来御議論ありますように、非行事実が激しく争われるような事案におきましては、証拠調べを行う必要があるということから、現行の四週間以内に審理を終えることは極めて困難である、こういった場合があるわけでございます。今回の改正案は、このような現状にかんがみまして、非行事実認定の一層の適正化のために八週間までの観護措置期間の延長を許容しようというものと理解されるところでございまして、実務上も、八週間あればこれまで以上に審理の充実化に資するものと考えているわけでございます。  もっとも、私どもといたしましては、法制審議会において、観護措置がとられた証拠調べの実施事件の平均審理期間でございますとか、あるいは事実が激しく争われた具体的事例をもとにしたシミュレーションなどをもとにいたしまして、最大限十二週間の観護措置期間の延長が必要であると意見を述べてまいったところでございまして、実務上も、八週間の観護措置期間内では十分な審理を遂げることはできない事案も予想されるように思われるところでございます。  今回、この法案どおり八週間が限度であると定められた場合におきましては、付添人あるいは関与をされる予定の検察官等関係者の格別の協力を得まして、集中審理を実現して、八週間以内で審理を遂げるべく努力することになるわけでございますけれども、さらに改めて上限の延長を必要とするかどうかにつきましては、実務の運用を見ながら考えてまいる必要があろうかと考えている次第でございます。
  146. 藤島正之

    藤島委員 提案者側、今の御答弁を聞かれたと思うんですけれども、四週間を八週間に延ばし、それはそれでいいんですけれども、それも条件がいろいろあるわけですね。簡単に八週間ぽんと延ばせるというような問題じゃなくて、二週間、二週間と厳密な条件を付して、裁判所の判断を仰ぎながら延ばしていくわけですから。これはやはり、閣法にあったように、今お話がありましたように、十二週は十二週にしておいて、何が何でも十二週まですべてのケースをやる、こういうものじゃないと思うんですね。であれば、やはり閣法のとおり十二週にしておいて、厳格な運用の方がいいんじゃないかな、こういうふうに思うわけであります。  少年法のできたころの考え方は、よく万引き少年とかそういう人を対象にしているというふうに言われましたけれども、現在はやはり集団リンチだとか、集団で悪いことをやって、なかなか審理も時間もかかるし、否認しているとなかなか簡単じゃないわけですね。先ほど、事実は大体認めちゃって簡単に終わるケースもあると言いましたけれども、今問題になるのは、逆に、そういう複雑な大勢でやるケースだということであれば、私は、これはやはり以前のように十二週に戻して運用の厳格を図る方が、今の最高裁の答弁を聞いていますとよろしいんじゃないかというふうに申し上げておきたいと思います。  それから次が、第二十条の関係でございますけれども、逆送の関係です。  これは法務省にお伺いしますけれども、現在、逆送率について、事案に沿ってちょっと説明いただきたいと思います。
  147. 上田勇

    上田政務次官 少年保護事件の終局決定人員の総数は年間約三十万人前後でございまして、平成六年から平成十一年の数字を見てみますと、そのうちいわゆる逆送になるものが三%台から五%程度でございます。ただ、この内容の中には、逆送になっている事件の大半は道路交通法違反事件等も含まれておりますので、凶悪犯について見ますと、例えば殺人で未遂を含むものについては二〇%から三〇%程度、強盗では一%から四%、強姦では二%から九%台、大体そのような数字になっております。
  148. 藤島正之

    藤島委員 今の数字、高いと見るか低いと見るか、いろいろあるとは思いますけれども法務大臣はどのようにごらんになっておりますか。
  149. 保岡興治

    保岡国務大臣 いかなる事案について検察官送致決定を行うかという点は、やはり個々の事案ごとに家庭裁判所犯罪の性質あるいは情状を考慮して個別に決定すべき事柄ですので、法務大臣としてこのことについてどうだと言われてもちょっと答えにくいところがあるので、答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
  150. 藤島正之

    藤島委員 今、逆送について問題になっているのは、やはり全般的に見てちょっと低いという評価があるからじゃないかと私は思うのですね。そういうことで今お伺いしたわけでございます。  提案者にお伺いしますけれども、この十六歳以上の少年という要件を二項で設けておりますね。これはどういう考え方なんでしょうか。
  151. 松浪健四郎

    ○松浪議員 原則逆送については、十四歳、十五歳の少年は、精神の発育も十分ではない上に義務教育の対象年齢であり、いかに人の貴重な生命を奪うという重大な犯罪を起こしたとしても、なお保護処分をとることが相当と認められる場合が多いと考えられることから、原則逆送とすべき者の範囲を十六歳以上としたものであります。  このように、少年の成長の度合い等を考慮し、年齢に応じて処分のあり方に差異を設けることが適切なものである、こういうふうに考えました。
  152. 藤島正之

    藤島委員 午前中の質疑の中でもあったのですけれども、一項と二項の関係がどうもわかりづらいのですね。先ほど、午前中は杉浦さんでしたか、御説明があったのですが、どうもわかりづらいのですけれども、一項と二項の関係をもう一度説明していただきたいと思うのです。
  153. 松浪健四郎

    ○松浪議員 上手に説明できるかどうかわかりませんけれども。  とにかく、故意の行為によって人を死亡させるという行為は、自己の犯罪を実現するために何物にもかえがたい人命を奪うという点で、極めて反社会性、反倫理性の高い、許しがたい行為である。このような罪を犯した場合には、少年であっても刑事処分の対象となるという原則を示すことによって、何よりも人命を尊重するという基本的な考え方を明らかにし、少年に対して自覚と自制を求める必要があることから、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件を原則逆送の対象としたわけであります。  もちろん、そのほかの事件についても、個々の事案において犯行の動機及び態様、犯行後の状況、少年の性格、行状及び環境等の事情を家庭裁判所が検討し、裁判所において現行の逆送制度のもとで適切な処分が選択されるものと考えておるところでございます。
  154. 藤島正之

    藤島委員 現行二十条のただし書き、十六歳を外した。私は、二項をあえて入れなくても、これだけでいいのじゃないかという感じがするのです。というのは、本文の方で「死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて」検察官に送致するというふうに書いてあるわけですから、あえて二項を入れなくても、要するに十六歳を外して、自動的に十四歳に、刑法に戻ってくるわけですけれども、それだけでいいのじゃないかというのが私の考え方なんです。  それはそれとして、提案者の方がこういうことであれば、それに沿ってちょっとお伺いしたいのですけれども、この故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件に限る、ここのところがいかがなんだろうかなという感じが実はしておるわけです。というのは、そのほかにもかなり凶悪な犯罪で、死亡までいかなくても、強盗だとか強姦だとか、死亡以上に被害者が苦しんだり社会的に大きな影響を与えている、そういう事案が結構多いわけですね。そういうのを含めないで死亡だけを含めているというのはいかがかなという感じがするのですけれども、御説明いただきたいと思います。
  155. 松浪健四郎

    ○松浪議員 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件でありましても、例えば、少女が嬰児を分娩して、途方に暮れて死に至らしめてしまったような場合や、共犯による傷害致死等の事件で付和雷同的に随行したにとどまるような場合には、必ずしも刑事処分が相当とは言えず、保護処分を相当とする場合があるのではないのか。いろいろなケースが議論されたわけでありますけれども、そこで、個々の事案において犯行の動機及び態様、犯行後の状況、少年の性格、行状及び環境等の事情を家庭裁判所がきめ細かく検討して、保護処分が適当と考えられる場合には、逆送せずに保護手続を選択することも可能としたわけであります。  なお、必要的逆送とすれば、その実質は、常に家庭裁判所において検察官送致決定をしなければならないということを意味します。検察官から家庭裁判所に事件を送致する意味を失わせることになるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  156. 藤島正之

    藤島委員 御説明はわかりますけれども、私は、被害者を死亡させた罪の事件は、今お話がありましたように、むしろ必要的逆送という方がすっきりするのじゃないかなという感じがしたものですから、最初に申し上げたように、二項はむしろ要らないのじゃないか、入れるのならば、二項は必要的逆送ですっきりすべきだ、こういうふうに思ったわけであります。
  157. 杉浦正健

    杉浦議員 私どもの検討については、プロセスがございます。  そもそも、自民党の少年法対策委員会におきまして議論になった段階では、単純にただし書き、現行の条文の「但し、送致のとき十六歳に満たない少年の事件については、これを検察官に送致することはできない。」ということを削除することから議論が始まりました。つまり、刑事処分を相当と認めるときは十四歳、十五歳でも刑事処分をできる、そういうことをすべきだという議論から始まったわけであります。  それで、それだけではだめではないかという議論になりましたのは、先ほど来お話がございました逆送率ですね。逆送率が非常に低い。特に殺人事件ですら二〇%というようなことはいかがなものかということから、大変な議論を行いました。これは、この二十条の規定があるにもかかわらず、現実に家庭裁判所は、五十年の積み重ねがあるわけでありますが、この条文に基づく、二十条に基づく逆送をされてこなかったわけであります。  これは、さまざまな背景があると思うのですけれども、積み重ねがずっとあって、先例があって、多数の家裁の裁判官、あるいは物によっては刑事の裁判官もありますが、判例の積み重ねでずっと継続されてきた、いわば伝統があるわけです。それが結果として低い逆送率、しかも世間の耳目を聳動するような事件が、あれは当然逆送だろうと思われる事件も逆送されないという事実がございまして、このただし書きを外すだけの法改正では、現実に行われている家裁における処分が変わらないのじゃないか。つまり、十四歳、十五歳については変わりますが、そのほかのと申しますか、十六歳以上を含めた少年の刑事処分についての家裁の対応が変わらないということで、これも大変な議論がございまして、この二項をつけ加えようということに相なりました。  これについては、最終的には三党協議で、故意犯によって被害者を死亡させた事件であって、その罪を犯したとき十六歳以上については決定をしなければならない、これが原則逆送の規定と言われるゆえんなんですが、自民党案では、最初は十六歳以上という制限もなく、ちょっと資料がございませんが、罪についてももっと広げておりました。つまり、私ども認識では、わかりやすく言って、殺人、強盗、強姦、その致死傷を伴うもの、それから恐喝ぐらいが当たるような凶悪犯については必要的に逆送すべしというのがそもそもの自民党案でございました。  それが、三党協議になってさまざまな御議論があって、それでは広過ぎるじゃないかという御議論もございまして、故意犯で死亡させた場合というところに落ちつき、年齢引き下げの議論と重なりまして、十四歳、十五歳は必要的にしなくたっていいんじゃないのか、家裁の判断にゆだねたらいいだろうというようなことで絞り込まれたというのが経過でございます。さまざまな御意見があることはわかりますし、おっしゃることは大変よくわかるわけなんですが、思いはございます。  それから、ただし書きもさまざまな経過がございました。当初はなかったと思うんですが、ただし書きをつけることになり、そのうちだんだんつけ加わっていきまして、このただし書き以下は、刑訴で起訴便宜主義のところに、二百四十八条でしたか、不起訴処分ができるという要件に近い書き方になっております。最終的に落ちついたわけでございますが、そもそもの議論からいたしますと、うんと絞り込んだ。それから、逆送しない部分も、裁判官の裁量に広くゆだねられる結果となったということであります。  ただ、私は、より広い必要的逆送の規定を入れるべきだとかいう考えでおりましたが、絞り込むことに強硬な反対はいたしませんでした。つまり、この部分は富士山に例えれば頂上であります。その頂上部分についてきちっとした原則逆送が行われてまいれば、その周辺といいますか、すそ野にずっと犯罪があるわけですね。例えば死に至らなくとも、死に近いような状態、脳死みたいな傷害もあるわけですね。さまざまな傷害の態様がございます。後遺障害が大きいものとかいろいろあるわけですが、死に近い重大な凶悪犯罪についても、これは必要的じゃありませんけれども、上がこう行けば、それに従ってと申しますか準じて、凶悪犯については逆送される部分が当然ふえていくだろうという考え方もございまして、最終的にこういう決め方におさまったという経緯があるわけでございます。
  158. 藤島正之

    藤島委員 この条文は二つの要素があると思うんですね。今おっしゃったように、十六歳を外して十四歳にするということと、必要的逆送にするか、そこに裁判所の判断を入れるかということですね。  自民党案だったという、いろいろな、幅の広い、死亡だけじゃない、もう少し広い部分を入れておくというのは一つの考え方で、私は、二項を立てるのならばその方がいいと思うわけでありますし、また、ただし書きを入れた経緯が今御説明ありましたけれども、ただし書きがなければないで必要的逆送になりますので、これはすっきりするんです。  それはどうもやはり最初の自民党の案に対していろいろ妥協を図った結果だということがよく理解できましたけれども、私の意見は先ほどから申し上げているような意見であるということを申し上げておきたいと思います。  それから、次は二十二条でございますけれども、審判の方式の「審判は、懇切を旨として、なごやかに、これを行わなければならない。」と。  これは、最初に私が申し上げたような、第一条の「少年の健全な育成を期し、」というところと一貫して流れている思想だと思うんですけれども、やはり、審判は少年にその行為とその社会に及ぼす影響を自覚させることを旨とする、こういう趣旨を入れるべきだ、こう私は従来から考えておりまして、今度の案はその点が、若干表現はあれですけれども、「非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。」これを入れたことは非常にいいことだと思うんですけれども、非常に意識的な犯罪行為として殺人を犯そうとか、少年だから非常に罪は軽いとかいって犯すような人に和やかにというのはいかがなものだろうかな。  万引き少年とか何かには確かに和やかにやるのはいいんですけれども、先ほどのような、集団的な、非常に悪質な事件とか、あるいは非常に凶悪な事件を今少年が起こしているわけですけれども、こういう少年に対しても「和やかに行う」という文字をあえて残しておかなければいけないのかどうか。ここをさわるからにはこれを削除した方がいいんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  159. 松浪健四郎

    ○松浪議員 審判の方式について、「和やかに行う」という文言を残した理由についてお尋ねでございますけれども、現行少年法国会審議における政府説明によりますと、家庭裁判所においては、冷ややかな暗いという感じを排し、形式張らず、具体的に常に妥当な決定をし、気分も非常に和やかな明るい裁判所をつくっていきたいという考え方によって第二十二条第一項の規定を設けたものとされています。  今回の改正案は、審判を通じて非行のある少年に対し内省を促すことができるものとしなければならないとする旨を明示するのでありますけれども、今述べた点につきましては、少年の健全育成の見地からも重要な事柄である、このように考えておりまして、あえて削除をしなかったわけでございますが、これをどうしても入れるべきだという強い主張をし、盛り込んだのは、保守党の主張であることをつけ加えておきたいと思います。
  160. 藤島正之

    藤島委員 次に移ります。  第二十二条の二の検察官の関与についてでありますが、今、新しい条文を見ますと「検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、審判に検察官を出席させることができる。」ということで、家庭裁判所判断することになっておるわけですけれども、これを重大な事案については必要的検察官関与にすべきである。裁判所の判断じゃなくて、重大事案については自動的に検察官が関与するというふうな制度にすべきだと思うんですが、その点については提案者はいかがでしょうか。
  161. 松浪健四郎

    ○松浪議員 お答えいたします。  今回の改正法案では、非行事実の認定上問題がある一定の事件につきましては、家庭裁判所の決定により検察官を少年審判に関与させることができるとしているわけでございますけれども、まず最初に、少年審判は家庭裁判所が主宰する職権主義構造をとっておりまして、検察官関与の要否も家庭裁判所判断によることとすることが適当でございます。  そして、二つ目には、重大な事件であっても、事実認定上問題のない事件についてまで必要的に検察官を関与させる必要はない。  三番目には、検察官においても関与を必要と考えるときは家庭裁判所に申し出をすることができますし、家庭裁判所も、その申し出があった場合は、申し出があったことを十分に勘案して決定すると思われるわけでございます。  したがいまして、必要的検察官関与の規定を置かなかったということでございます。
  162. 杉浦正健

    杉浦議員 この点につきましては、当初の自民党案におきましては、必要的関与という部分も入っておりました。入れるべきだと。ちょっと資料を持っておりませんが、絞り込みまして、重大な事件で、検察官が申し出た場合は裁判所は認めなきゃならないという規定を置いたところから始まりました。  ただし、今松浪さんが申されたように、裁判官に、ねばならないということをあれしますのは職権主義構造とは矛盾するわけです。特に審判の指揮について裁判所の職権を奪うようなことは好ましくないという議論もございまして、最終的にそうなっていったのですが、最高裁の見解はその間十分お伺いしております。  それで、最高裁に聞いていただいたらわかりますが、法文上はこうするけれども、検察庁から申し出があった場合に、あなた方はよもやだめだと断ることはないでしょうね、そんなにたくさん申し出るわけじゃないんですから、重要事件についてだけしか申し出ないんだから、件数からすればわずかなものです、年間数百というオーダーだと思います、検察官から申し出があった場合にあなた方は断るのか、断る場合があり得るのだったら入れなきゃいかぬぞというような議論もいたしました。もちろん、断る場合はあり得ないとは言えませんけれども、そういうことはまず考えられませんという趣旨の御了解といいますか、明らかな暗黙の了解がございまして、この規定ぶりではこういうふうにいたしましたが、そういう経緯がございます。  ですから、検察庁も、申し出される場合はうんと絞って、重要な事件についてだけ申し出をされると思います。それについて、最高裁、裁判所の方もそれを尊重して、申し出があった場合には立ち会いをさせるというふうになるということを、確信に近い期待を持っておるわけでございます。
  163. 藤島正之

    藤島委員 私は、裁判所の審理をどうのこうの、邪魔するとかそういう問題じゃなくて、法律上こういう場合はごく絞った上で必要的につけなきゃいかぬという方がすっきりすると思います。結果的に運用上きちっとされればいいわけでありますけれども、その辺は私は、法文上すっきりする方がいいと思いますけれども、ここは運用を見てからまた判断してもいいのかもしれないなという感じはいたしております。  次に、二十五条の二の保護者に対する措置ですけれども、こういう条文を入れたのは非常にいいことだと私は思っております。  また、三十一条の二の被害者等に対する通知、これも私は非常にいいことだと思っております。  次に、抗告でございますけれども、三十二条は、付添人の方は、少年の方は抗告することができるとなっておりまして、検察官の方は、三十二条の四で受理の申し立てということで、「受理すべきことを申し立てることができる。」こうなっておるのですが、この差はあるんでしょうか、ないんでしょうか。どういう意味の違いがあるんでしょうか。
  164. 松浪健四郎

    ○松浪議員 抗告と抗告受理との違いについてのお尋ねでございますけれども、抗告権であれば、高等裁判所は常に抗告審として事件の審理を行い、判断をすることとなるのに対しまして、抗告受理の申し立てでは、検察官に権利としての抗告権を認めるものではなく、高等裁判所が相当と認めた場合に限りその申し立てを受理し、抗告審として事件を審理することとなります。  このような抗告受理制度であっても、家庭裁判所の誤った判断が抗告審において適切に是正されることになるものと考えられるわけでございます。
  165. 藤島正之

    藤島委員 私の申し上げたいのは、受理をすることを申し立てることができるといって、高等裁判所が受理をするしないという問題になるわけです。これは少年の方と違っているんですけれども、ここもすっきり、抗告をすることができるというふうにしておいた方がいいんじゃないかなという感じがしたものですから、そういうふうに申し上げたわけであります。  次に、法務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、第五十一条の死刑と無期刑の緩和の規定がございますけれども、この考え方はどういうことなんでしょうか。
  166. 上田勇

    上田政務次官 委員の御指摘になりました少年法第五十一条の趣旨についてお答えいたしますが、この条文の趣旨は、可塑性に富み、教育可能性の高い少年に対してはより教育的な処遇が必要、有効であるということ、また、人格の未熟さから責任も成人より軽い場合があること、あるいはその第一項につきましては、子どもの権利条約等との整合性なども考慮いたしまして、犯行時十八歳に満たない者に対する刑を緩和したものであるというふうに理解しております。
  167. 藤島正之

    藤島委員 現在の法では、無期の場合は必要的に、必ず有期にしなければいけないという規定なんですけれども、これは今度改正されますと、無期の場合は、有期はもちろんあるんですけれども、無期そのままもあるという規定に変わるわけでありまして、これはいい措置じゃないかな、こういうふうに私は思っております。それはもちろん裁判所の判断になるわけですけれども、すべて強制的に、無期に相当するにもかかわらず有期にしなければならないというのはどうかなと思っていましたので、これはいい改正じゃないかなと実は思っております。  あと五十六条の改正、三項ですけれども、十六歳未満の少年少年院で刑を執行するというふうになっているんですけれども少年院の人の意見では、少年院というのは矯正教育をして、そこから出してあげるというのが目的なんですね。それが、少年院を出てから、あなたはまた刑務所に行くんだ、そういうふうな教育というのは本当に少年院でうまくできるのかどうか、こういうふうにも考えられるんですが、この点はどうでしょうか。
  168. 保岡興治

    保岡国務大臣 少年院においては、これまでも、義務教育を授ける必要のある十四歳、十五歳という多感な世代の少年処遇を行ってきた実績がございます。同年代の少年処遇に当たって混乱を来すようなことはないと考えておりますし、また、今回の改正案が成立した際には、改正法の趣旨内容現場施設職員に周知徹底させるとともに、少年院に収容された少年受刑者に対して、今お話のあったように、刑務所に移送されることを前提として一貫した適切な教育カリキュラムをつくり、実施する体制を整えるなど、改正法の趣旨に沿った法の運用がなされるように適切に対応したいと考えております。
  169. 杉浦正健

    杉浦議員 先日、多摩少年院視察してまいりました。この点大丈夫かとお伺いしましたら、自信を持って対応できます、義務教育、きちっとやれるとおっしゃっておりました。そういう体制にもなっておりましたので、念のため申し添えました。
  170. 藤島正之

    藤島委員 最後に、記事の掲載でございます。現在のは加害者の保護という観点に非常に偏っているんですけれども、やはり国民の前に明らかにすることによりまして非常に抑止効果も上がるんじゃないかなと思うわけでありまして、この点、今後十分に検討をしていくべき問題だろうと思うのですけれども、私は、被害者の保護という観点も考えてみる必要があるのじゃないかなと思うのですね。  というのは、やはり強姦事件なんかですと、加害者の少年の方は出ないけれども被害者の女性の方は全部明らかになっていくのですね。そうしますと、やはり地域に住むにも住めなくなるというようなことがございますし、一般の大人の事件ですと加害者も被害者も両方出ちゃいますから、それはそれで国民の知る自由等もありましてやむを得ないのでしょうけれども少年事件で、片一方の方は全く伏せられておって、片一方の被害者の方は、何にも言う場面もなくそのままどんどん出ていく、何かこれは被害者にとって非常に酷なことじゃないかなという感じがしますので、今後この点はひとつ検討していく必要があるのじゃないかなというふうに私申し上げておきたいと思います。  最後に、一、二分、法務省の方にちょっとお伺いしますけれども、オウム事件で四件公訴取り消しという記事が出ていたのですが、これは実際どういうことなんでしょうか。
  171. 保岡興治

    保岡国務大臣 検察当局において、麻原彰晃こと松本智津夫に関して、極めて異例な措置ではございますけれども、審理を迅速に進めて早期に判決を得るため、平成十二年の十月四日、麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反及び薬事法違反の各被告事件の公訴の取り消しを請求しまして、同月十二日に裁判所がこれらの事件の公訴を棄却する決定をしたものと承知しております。  具体的事件における検察当局の公判活動について法務大臣として所感を述べることは控えておるところでございますけれども、刑事裁判においては、その迅速な審理を期待する国民の声が強い。迅速な刑事裁判が、一般的には関係者の努力で改善されているのでございますが、非常に特殊な、関係者の多い、あるいは重大な争いのある事件などについては、審理が非常に長くなる。そうすると、これは正義の実現とはほど遠いのではないかという批判があることはもう当然だと思っております。  したがって、今後とも、検察当局としては、このような要請にこたえて、公判審理を促進して、刑罰法令が適正かつ迅速に適用されるよう努めてまいりたいと考えております。
  172. 藤島正之

    藤島委員 この点は、前回の委員会でも私そういうふうにお願いしたところでありますが、今の法務大臣のお言葉を聞いて気を強くしておりまして、どんどん進めていただきたいと思います。  ありがとうございました。終わります。
  173. 長勢甚遠

  174. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党保坂展人です。  少年法に関して提案者議員にお聞きする前に、幾つ大臣に本当に基礎的なことについて伺いたいと思います。  最近の少年犯罪が、過去の例に照らして残虐あるいは特異なケースが極めてふえているかどうか、この点について、大臣、いかがでしょうか。残虐で特異なケースがふえているかどうか。
  175. 保岡興治

    保岡国務大臣 我が国においてですか。その点については、また後で事務当局から数字等については触れてもらいたいと思いますが、世間の耳目を集める凶悪重大な事件が続いていることはそのとおりだと思いますし、少年の事件、非行年少少年に及んでいるということもまた事実だと思っております。
  176. 保坂展人

    保坂委員 これはいろいろ調べてみたのですが、いわゆる少年による凶悪事件、確かに現在次々と我々の印象に残る事件が多発しているように思われます。その根拠として、テレビなどのメディアが極めて発達をしているという現状があると思うのですね。  例えば、過去、昭和四十四年、一九六九年ですか、高校生の首切り殺人事件という残虐事件が発生しています。これは、十五歳の少年が車で通りかかった人に助けを求めるということからわかったそうですけれども、同級生の首なしの遺体が穴の中に置いてあった。非常におどろおどろしい事件で、多数の遺体損傷があって、当時識者ももうどう考えていいかわからない。作家なども自分もいろいろ小説を書くけれども、想像を絶する事件だと。あるいは、オリンピックの年、一九六四年には切り裂きジャックと言われる事件が発生していますね。これも少年通り魔ということで、十七歳の少年が九件の事件を自白する。  もっともっとあるのですが、これは余り、例として挙げてもいかがかと思うのですが、今みたいな事例を聞くと、我々が今日深刻に思う凶悪、残虐性あるいは特異なという形容はかつてもやはりあったのじゃないか、こう思われるのですが、いかがでしょうか。
  177. 保岡興治

    保岡国務大臣 それは保坂先生が御指摘のとおり、そういう事件がどの時代にもあるというのもまた事実だとも思います。
  178. 保坂展人

    保坂委員 では、法務省の刑事局長に伺いたいと思いますけれども、今保岡大臣から、低年齢化してきているのだというようなお話がございました。少年事件、特に重大凶悪事件の少年犯罪のピークというのはいつころなのか、現在はそのピークに比べてどうなのか、その基本的な認識について伺いたいと思います。
  179. 古田佑紀

    古田政府参考人 戦後、いわゆる少年非行のピークと呼ばれておりますのは、現在を離れますと三回あると言われております。第一回は終戦直後のいわば社会の混乱期でございます。第二期は昭和三十九年ごろをピークとする年代でございます。第三期が昭和五十年代の中ごろということでございます。  数といたしましては、現在、昭和二十一年からのすべての数字を持っているわけではございませんが、昭和五十年代後半に少年刑法犯の検挙人員は最もふえております。その後一たん鎮静してきたものが、再びここ数年増加傾向を示してきたという状況でございます。  そこで、一つ、ただいまのお尋ねの中に年少少年の問題、低年齢層の問題がございましたので、その点について若干申し上げますと、これを年少少年の人口比で見ますと、先ほど申し上げました昭和三十九年ごろ、このころは一三%ぐらいの数字を示しております。それから、昭和五十年代後半、五十七、八年、このあたりは年少少年が三〇%近い数字になっております。それで、現在はどの程度になっているかと申しますと、おおむね二〇%前後ということになっております。  以上が概略の傾向でございますが、この中で特にいわゆる凶悪犯と呼ばれているものについて見ますと、全体として人口比で考えると、現在は殺人で〇・〇〇八、強盗で〇・一一四、こういうふうな数字が並んでいるわけですが、昭和五十七、八年は、殺人で〇・〇〇三、強盗で〇・〇四ぐらいという、大体そんな程度の数字で、最近若干殺人等の人口比に占める割合がふえてきている傾向を示しているように思っております。
  180. 保坂展人

    保坂委員 では、ちょっと時間も限りがあるので、刑事局長に端的にお答えをいただきたいのです。  九月七日の日経新聞に、九五年以降ややふえる傾向にあった少年の刑法犯の検挙人員のことについて、九七年から九八年にかけて二一・九%から二一・四%に減っている。二〇〇〇年八月にまとめられた検察統計年報によると、九九年、全国の地検が捜査した少年事件の容疑者は二十七万九千七百七十四人で、前年より六・三%減少し、十四、十五歳の容疑者数も、家裁が逆送した容疑者数もともに減少している。これは事実ですか。ここから読み取れるのは、今というか直近のデータではこういうことだというふうに確認してよろしいでしょうか。
  181. 古田佑紀

    古田政府参考人 ただいま委員指摘のとおり、平成十一年におきましては、前年度に比べて約二万件ほど減少しております。
  182. 保坂展人

    保坂委員 少年法をめぐる議論がここ数年非常に大きくなってきた。その中で、凶悪化あるいは少年犯罪が大変爆発的にふえているんだという御意見もありました。さらに指摘をしておきますと、年少少年の検挙率も、やはりつい最近までのデータを見ると減少傾向があるのじゃないか、むしろ十七歳以上の少年に増加傾向が見られるというデータもあるのです。  そこで、ちょっと法務大臣に伺いたいと思うのですが、少年法の問題というのは大変重要な問題であるということは、与野党あるいは各党の皆さんも同じだと思うのですね。その際、この少年法改正の作業が一体何をよりどころにするのか、あるいは究極の根底にある目標は何なのかというときに、規範意識という言葉をしばしば提案者の方も大臣みずからも使われていると思うのですが、規範意識というのは何でしょう。
  183. 保岡興治

    保岡国務大臣 いろいろ言い方はあると思いますが、端的に言えば、社会の一員として、悪いことをすれば一定のけじめ、処罰は受けるということを自覚すること、そういう意識を持つことだと思います。
  184. 保坂展人

    保坂委員 そういう自覚を持つことを、例えば日本憲法及び教育基本法というのは阻害しているのでしょうか。
  185. 保岡興治

    保岡国務大臣 別に阻害しているとは思いません。
  186. 保坂展人

    保坂委員 先日の大臣答弁で、これは自民党の河村議員とのやりとりの中で、少年法だけでこの問題などを解決することは難しいのだ、こう言われた後で、「社会全体の気質、あるいは免疫力蘇生力、こういった全体の社会のありようというものを、やはり憲法改正を含め、あるいは教育基本法見直しを含め、新しい二十一世紀日本に向かって、私は、社会全体の規範意識けじめをつけるところはきちっとつける、責任義務、個と全体との関係、こういったことを社会全体できちっと新しい日本あり方として求めていくことが我々政治家としては非常に重要だ」、こういうふうに発言をされていますけれども法務大臣としてやはり憲法遵守義務も当然ありましょう、そして、この少年法、法治国家の中の新しい枠組みをいわば大きく変更するに当たって、御自身適当な発言だと思われますか。
  187. 保岡興治

    保岡国務大臣 午前中の質疑でもお答えしましたけれども、私は、やはり少年非行犯罪というものは、よく言われるように世の中を映し出しているところがある。したがって、社会全体が、やはり規範意識というか、そういったものの緩みが日本には出てきているんじゃないかというふうに政治家として基本的に思っております。  それに対して、やはり今、国会で、衆参で憲法調査会などを設けて、そして二十一世紀日本のあるべき姿、形というものを、あるいはどういう社会を実現していくべきか。それと裏腹の関係で、やはり私たちはどういう国民像を求めていくべきか、それは教育に非常に深くかかわるわけでありまして、そういった新しい日本、新しい社会、それを担う国民教育、こういったことについてどういう理念を持ち、どういう目標を持つかということは、こういう時代には大いに政治家議論をして、その答えについていろいろ尽くすべき議論を尽くして求めていくという姿勢が大事だろう、私は、そういう基本的な政治家としての姿勢を少年事件の背景という観点から述べたものでございます。
  188. 保坂展人

    保坂委員 先ほど大臣は、規範意識をきちっと持つこと、これは教育基本法憲法のありようが阻害しているわけじゃないんだというふうにはっきり答弁なさいました。しかし、今おっしゃるのは、そういう社会的な規範意識をつくるのは、やはり憲法教育基本法も含めて変えていかなければならないんだ、こういうお話ですね。矛盾しませんか。
  189. 保岡興治

    保岡国務大臣 保坂委員の御質問の仕方が、何か直接的に阻害しているような、そういう印象を私持ちましたから、端的に言って、今の憲法教育基本法が直ちに社会規範意識の低下をもたらしていることの阻害要因と言うことは避けたわけでございますが、ただ、一般的に言って、やはり社会のありようについてどういうところをこれから政治が議論をしていかなければならないかということになりますと、やはり憲法論議とか教育基本法あり方について論議を尽くすという姿勢は大事なものだと思っております。
  190. 保坂展人

    保坂委員 我々は、少年法、これは少年院も含め、さまざまな現場で苦労をされている職員の皆さん犯罪の捜査に当たっている警察官を含め、あるいはその犯罪の被害に遭い、この情報公開を訴えている皆さん、さまざまな方の声を聞きながら、きっちりこれは審議していきたいと思うのです。  ところが、今の大臣のような、この少年法改正論議は教育基本法改正あるいは憲法改正にも通底していくものなんだ、そういう位置づけでこの改正論議をやられますと、非常にこれは、つまりこの少年法という改正の作業が、いわばそういったいわゆる改憲に向けたプログラムの中ではっきりと大臣の中で位置づいているんだというふうにも聞こえてしまうわけなんですね。この点はいかがですか。
  191. 保岡興治

    保岡国務大臣 保坂議員がどういうことを懸念してそういうことを言っておられるのか、お立場からわからないわけではないのですが、森内閣あるいはその閣僚としての私が、具体的な憲法改正に言及するつもりはありません。  ただ、一般的に言って、社会全体のありようというものを議論していくときに、いろいろ幅広く議論を尽くしていかなきゃならない、その中で、やはり憲法教育基本法のような重要なことは、これから先議論を深め、尽くしていくという姿勢を申し上げたのであって、この少年法改正の具体的な内容に及んで憲法改正教育基本法の論議をするつもりはありません。
  192. 保坂展人

    保坂委員 それでは、保岡大臣は、具体的な条文は挙げないまでも、憲法教育基本法の中に、規範意識を欠如させる部分あるいはそういった要素があるという認識なんですか。
  193. 保岡興治

    保岡国務大臣 その点は、この法務委員会議論するより憲法調査会で議論をするものかもしれませんが、これは、私、政治家として個人的な価値観としてどういうふうに思っているかといえば、やはり社会全体というか、国家社会あるいは地域社会家庭、こういったものと個との関係は非常に重要な今後のテーマだと思っております。そういうことに関して、いろいろ憲法の立場からも教育基本法の立場からも論議を尽くしていくべきだと考えているのが実情であります。
  194. 保坂展人

    保坂委員 ここで、上田政務次官に伺いたいと思うのです、連立の中で大変御苦労されていると思うのですけれども。  公明党は、やはり人権の党というふうに、また、憲法に対しても教育基本法に対してもこの基本的な精神はきちっと守っていくべきだ、こういうふうに主張されていると私は思っているのですね。  今の保岡大臣の御答弁の中で、例えば国民の基本的人権という視点、これは日本憲法にきちっとあるわけですけれども、個と国家社会あるいは国民一人一人の義務、こういうことについてなお議論をしていきたい、こういう趣旨ですね。今のこういう御発言は、上田次官はどういうお考えで受けとめられましたか。
  195. 上田勇

    上田政務次官 お答えいたします。  保岡大臣とは、日ごろからいろいろなことについてお話を伺っておりまして、この少年法の問題についても、大臣のお考えについては日ごろからいろいろとお伺いをしているところでございます。  今大臣の御答弁にあったように、今度、少年法審議を通じて、憲法改正を前提とした論議なり教育基本法改正を視野に入れた論議に結びつけるというようなお考えは、今の答弁にもそういうようなお考えではないというふうにおっしゃっているところでございますし、当然のことながら、一方、憲法の問題についても教育基本法あり方についても、憲法については、今、国会においては憲法調査会が設置をされて、そこで論議が進んでいるところでございますし、教育問題がこれから最重要な政治課題の一つであるということはもう間違いがないわけでございまして、その中では教育基本法についての論議も当然入ってくるものだというふうに考えております。  したがって、直接的にこの少年法とどのように結びつけるかというような議論は、今の委員の御質問趣旨も少し理解に苦しむところもあるのですが、そういった憲法についても教育基本法についても論議をするということについては、今、この国会に与えられている、また求められている責任一つではないかというふうには私は思っております。
  196. 保坂展人

    保坂委員 私もなかなか理解に苦しむので質問をしたのですね。  大臣はこのときに、少年法だけでは事は解決しないんですよ、問題は規範意識だ、その中には教育基本法もある、憲法もあるではないかと。社会的な規範意識と個人の、国民一人一人の基本的な人権の関係を言われているわけですよ。そういう位置づけの中で、大臣は個人的な政治家としての考え方だと言われたわけですから、政治家として、上田次官はどうですか。
  197. 上田勇

    上田政務次官 きょうの午前中からの論議でも、少年犯罪の防止あるいはそれに対する対策というのは少年法の論議だけでは済まないということは、多くの委員からもそういう御指摘がありましたけれども、私も全くそのとおりだというふうに思っております。  このことについては、いろいろな要素、社会的なことあるいは教育の問題、そういったことについてもこれから論議を深めて、いかにして少年が健全に育っていくような社会をつくっていくのかということは、これから議論をしていかなければいけない課題がたくさん残っているのではないかというふうに思っております。  大臣の御発言趣旨もそういった趣旨であるというふうに私も理解しておりますし、その中の、とりわけ少年犯罪の現状や、少年法の規定の中で社会のルールを守っていく、あるいはそのルールに違反した場合については、重大な違反があった場合には罰則も伴うんだというような、そういう規範意識が必要であるというふうにおっしゃったものだと理解しております。それをさらに、より普遍的に考えていけば、社会全体のあり方教育の基本的な問題にも議論が及ぶ可能性があるということをおっしゃったものだというふうに理解しておりますので、私としては、そのことについて特に違和感を感じるというようなことはございません。
  198. 保坂展人

    保坂委員 連立政治ですから、それぞれの党があるいは政治家がかなり違う角度で物を考えていたり、基本認識においてもずれがある場合もあるわけですよね。  ですから、私は、教育基本法憲法についても、特に基本的な人権の部分について公明党はしっかりそれを守っていかれるんだというふうに見ているのですけれども、もう少しきちっとそういう答弁をいただきたかったという感想を述べまして、提案者皆さんにこれから質問を続けていきたいと思います。  提案者にまず伺いたいのは、今回、やはり少年法議論の中で、例えば今度参考人に来ていただこうということで、岡崎君という中学生がリンチで亡くなる、陰惨な形のリンチが行われて、そしてまた捜査がほとんどまともに行われない。まさにリンチで殺されたにもかかわらず、遺族の両親が警察署に呼ばれて、まるで加害者のような、何か悪いことをしたかのような扱いを受ける。一体何だろう、こう追い詰められたときに、いや、これはおかしいよということで声を出している。茨城県警はこのケースの場合ではきちっと謝罪をしたように私どもには見えたのですね。このことは謝罪してよかったなと思っていたら、しかし、やはりずさんな捜査は続いて、調書も御遺族の署名もない、証拠関係も非常にずさんだということで大変に怒っているのですね。  犯罪被害者皆さんの声を聞くと、確かに、少年事件ということで扱われたときに、いろいろなことが伏魔殿になってわからなくなる。特に捜査の段階でもっと情報開示をするべきではないか、こういう声も強いのですが、高木議員にこの点、いかがでしょうか。
  199. 高木陽介

    ○高木(陽)議員 お答えしたいと思います。  警察の捜査の段階での情報公開の部分、これは被害者の側から見ると、なるほど、例えば自分の家族が殺された場合だとか、どうなっているんだということで知りたい、またはそういう情報提供を望むというのは当然なことだと思います。  そういった部分では、被害者の側からそれを聞くというような制度を導入することになりました。ただ、捜査段階での情報公開ということ、これはいろいろな角度があるのですけれども、例えば警察庁における捜査段階の情報提供については、まず被害者等への通知制度、これは今申し上げましたけれども、この導入によって、被害者等の申し出がある場合には、申し出人に対し家庭裁判所送致の事実等を通知しているところであります。  それ以上に捜査段階における情報を開示することについては、捜査機関の有する情報には未確定な情報もあると思います、まだ途中の段階だとか。また、さらに、少年の健全な育成に対する影響や、被害者に情報を開示して、それが公にされることによって捜査の着手、進展の状況が明らかになって、そのことを契機として、これは一般の刑事事件の捜査の場合もそうだと思うのですが、関係証拠の隠滅や犯人の逃走が図られる等、捜査の進展に支障を生ずるおそれが高いと思われます。  その上で、そのような開示を認める制度を導入することは適当ではないというふうに今考えております。
  200. 保坂展人

    保坂委員 法務委員会でも警察の問題は何回もやりましたから、ここで警察の問題をいっぱい例を挙げてやるつもりはありません。ただ、この間ずっと、捜査は本当に公平だったのか、それから、本来国民の側に立つべき警察が本当にその職責を全うしているのかどうか。していない例もあったわけですね。今、事例に挙げた岡崎さんの例だと、加害者に警察官の家族がいるわけですね。お兄さんが警視庁、たしかお父さんが県警だったかと思いますけれども。そういうことで、捜査が尽くされていないのじゃないか、一方的だ、こういう声が上がったわけですね。そのことが、やはり少年法をめぐる議論にもシンクロしてきたことと思います。  そこで、これは警察の方に伺いたいのですが、こういう、特に少年事件被害者に対して情報開示の努力はどの程度まで、ぎりぎりやれるところまでやっているのかどうか。今までもやってきましたという話じゃなくて、さらに一歩一歩進められることは進めているのかどうか、お願いしたいと思います。
  201. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 お答えいたします。  警察といたしましては、殺人、性犯罪、傷害等の身体犯等の事件の被害者あるいは御遺族に対しまして、事件に関する情報の適切な連絡に努めているところでございます。  例えば、少年が被疑者となる殺人事件のケースについて申し上げますと、御遺族に対しまして、捜査上の支障のない範囲内における捜査の状況のほか、被疑少年を逮捕した場合には、被疑少年の氏名あるいはまたその保護者の氏名等、さらに、勾留期間終了後には、起訴、不起訴の処分結果等を連絡することといたしております。  もちろん、情報提供を望まない被害者等もいらっしゃいますので、そういう場合には、被害者連絡はあくまで被害者等の意向を酌んで行うことといたしておるところでございます。  委員御案内のとおり、少年事件につきましては、審判の関係等もございますし、また、少年の健全育成等の兼ね合い等もございますが、私どもといたしましては、そういった捜査上の支障も踏まえまして、今後とも、可能な限り最大限、被害者に対する連絡あるいは被害者対策について努めてまいる所存でございます。
  202. 保坂展人

    保坂委員 最高裁に伺いたいのですが、審判経過について全くわからない、この件について、裁判長の職権で被害者に対して経過を説明するということはできないのか、努力できる範囲はあるのか、この点についていかがでしょうか。
  203. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  少年事件被害者に対する配慮につきましては、家庭裁判所といたしましても重要な問題であると認識しているところでございまして、少年法の目的、趣旨に反しない限度で、さまざまな対応を行っているのが現状でございます。  その意味では、審判結果等の開示の関係から申し上げますと、被害者から処分結果についてのお問い合わせがあった場合には、現在でも、支障のない限りにおきまして、主文程度はお伝えするのが運用であろうと認識しております。また、損害賠償訴訟を提起するなどのため必要がある、こういった場合には、少年事件の秘密性の要請を踏まえながら、少年の情操保護等の妨げにならない範囲において記録の閲覧等に応じる運用はされてきていると認識しているところでございます。  ただ、今委員お尋ねの点は、審判の係属中におけるそのような情報開示についてはどうなっているかというお尋ねかと思うわけでございますけれども、従来の運用を考えてみた場合には、少年事件の非公開性でございますとか秘密性との関係で慎重な扱いであったことは確かにそのとおりであったかと考えておるわけでございます。  ただこれは、例えば審理の内容被害者にお知らせすることになった場合に、その結果、的確な事実審理に支障を来したりする場合があるとか、あるいは、その事案、事項によりましては、少年、保護者がプライバシーに関する発言を控えることによって家庭裁判所が十分な情報収集ができなくなる、その結果、適切な処遇選択に支障を来す、こういった事情があるからであったと理解しているわけでございます。  もっとも、今回出されている改正法案の中身は、このような問題点を踏まえながらも、さらに、少年審判の係属中においても十分な情報を得たいという被害者からのお気持ちにこたえる必要がある、こういった趣旨で立案されているものと理解しているわけでございまして、今後は、被害者等の方からお申し出がある場合には、審判係属中におきましても、その要望に配慮して、一定の範囲においてではありますけれども、記録の閲覧等を考えていくことになろうと考えているわけでございます。  また、審判の進行予定等についての情報の関係でございますけれども、審判の行われる前にその情報をお伝えすることについては、平穏な環境の中で審判を行い、少年にまさに内省を深めさせるといった関係から考えてみた場合には慎重でなければいけない場合が多いだろうと思っておるわけでございますけれども、その審判が行われた後におきまして、例えば閲覧、謄写のお申し出があるような方については、その後において一定の御連絡を差し上げるといった運用がなされるものと承知しているところでございます。  以上でございます。
  204. 保坂展人

    保坂委員 最高裁に続けて伺いますけれども、具体的に、今回の議員立法が成立をすると、少年犯罪被害者の遺族の方たち、当事者の方たちの知る権利は相当程度満たされる、こういうふうになりますか。
  205. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、審判の係属中あるいは審判終了後において、審判の結果でありますとかあるいは記録の閲覧、謄写等によって相当程度の情報をお伝えできるようになると考えているところでございます。
  206. 保坂展人

    保坂委員 これは矯正局に伺いたいのですけれども、九月に行われた少年院長会議において、更生状況の報告などを提言されたというふうに伝えられていますが、具体的にどのように実行に移されるのか、この点について伺いたいと思います。
  207. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  今委員の方からお話がありました少年院長会同での指示でございますけれども、これまで、特に少年院においてでございますけれども、その矯正教育におきまして、被害者の悲しみとかあるいは痛みに真摯に向き合わせる教育を実施してきたところでありますが、さらにそれの充実を図るほか、例えば、少年が手紙等の方法で自発的に慰謝の気持ちを具体的行動に移していくことができるようなシステムの導入など、少年院の在院期間の全期間を貫くプログラムとして、被害者の視点に立った教育内容あるいはその方法の構築に努めていくということでございます。  今委員の方から御指摘がありました加害少年の生活状況を被害者に伝えていくという趣旨、その点についてはどうかということだろうと思いますが、少年院の場合には、在院者の改善更生を図るために矯正教育を行っているところでありますので、ある意味ではそのプライバシーも確保しなければなりませんし、また、その改善更生に障害になるというか、そういう点も配慮する必要があります。また、具体的な問題としては、被害者と加害者との関係がどういうふうになっているか、そういった点もございます。そういったもろもろの状況を考えながら、その実施のあり方については検討してまいりたいというふうに考えております。
  208. 保坂展人

    保坂委員 提案者に、この点について締めくくり的にお聞きしたいのです。  今回、被害者の権利とまでは盛り込まれていない、それぞれの裁判所の裁量に任されていたりするわけだと思います。その際に、確かに、罪を犯して今矯正中である加害者の少年と、その加害者によって被害を受けた当事者が出会うというのは大変難しい場面だと思うのですね。しかし、この法務委員会でも、ことしの春、いろいろ議論がありました。修復的司法というのですか、お互いが冷静に見詰め合いつつ、第三者のサポートを得ながら和解をしていったり謝罪をしていったり、そういう部分の整備、こういうことも問題意識におありだと思うのですが、その点についていかがでしょうか。
  209. 漆原良夫

    漆原議員 今の御意見は、外国においてもなされているというふうに聞いておりますし、また日弁連の提言の中にもございまして、我々も検討させていただきました。ただ、実際にそれを実現するとなると非常に難しいなと。いつの段階でやるか。加害者の方の承諾、被害者の方の承諾を得なきゃならない。どこでやるか。  将来、そういう方向に向かって、加害少年被害者の方と会っていろいろな被害者の心情、気持ちの状況を知るということは、これは大変更生に役立つことだろうと思いますが、それを実現するにはまだまだいっぱい難所があるということで、今回とりあえず私どもも我が党内で見送って、もう少し将来の方向を待とう、こういうふうにした次第でございます。
  210. 保坂展人

    保坂委員 それでは、提案者に端的に伺いますけれども、今回の議員立法少年院収容受刑者という概念というか法文上の表記が登場したと思うのですが、これはどういう存在なんでしょうか。
  211. 漆原良夫

    漆原議員 今回の法改正によりまして、十四歳、十五歳でも逆送可能になるということになりましたものですから、少年刑務所に行く可能性が出てきたわけですね。したがって、それをそのまま少年刑務所で服役させていいのか、こういう問題が発生してまいりました。  それで、条文にも書いてありますように、少年院で矯正保護を行うことができるというふうな取り扱いをしたものですから、そういう新しい概念といいますか言葉が出てきた、こういういきさつでございます。
  212. 保坂展人

    保坂委員 私も府中の医療少年院そしてもう一つ女子少年院へ行って、いろいろ見せていただきました。  率直に言って、少年院の現場は大変頑張っているなと思いました。大変難しい子供たち、特に医療少年院なんかは、これはもう本当にマニュアルのようなものはないわけですね。どんどん先端的事例が出てくる。そして、それにある面で振り回されながら、医療面のケアもしなければいけない、あるいはもちろん精神的にカウンセリングも施していかなければいけない。しかし、何より、話をする、コミュニケーションをすること自体難しい子供たちを預かりながら頑張っておられるのだなと改めて感心をしたところなのです。  提案者にお聞きしたいのですが、率直に言ってこの部分は苦慮されたんじゃないかなと推測するのです。保岡大臣は大丈夫だとオーケーのサインを出すのですけれども少年院というところの法務教官のまなざしは、ここに入っている子供たちと苦楽をともにする部分、あるいは厳しく教える部分、あるいは将来の希望、職業訓練あるいは学業面においてさまざまな工夫や長年の歴史、蓄積があろうかと思う。そして、少年院を出るときには、やはりいきなりは出さない。例えばお金の使い方一つなれていないということがございますから、やはりそこに、出ていく際のトレーニングの期間があろうかと思うのですね。そして、やがてそこを出ていくというふうになるんだと思うのです。  その出ていく先が、少年刑務所という新しい存在が生まれるわけですね。これは確かにそういう子供たちは少数かもしれない。しかし、これから五年、十年と長いスパンで見たときに混乱を生じないのだろうか、大丈夫なんだろうか。この点について議論は尽くされましたか。
  213. 漆原良夫

    漆原議員 おっしゃるとおり、いろいろ悩んだところでございます。  まず、十四、十五を処分可能年齢に引き下げたわけですから、そうすると、そのまま少年刑務所に入れていいのかという問題がすぐ頭に浮かぶわけです。そのまま少年刑務所に入れては、義務教育年齢でございますので不都合な部分が多いのではなかろうかと。そこで、今保坂委員がおっしゃったように、少年院はいろいろな今までの経験が積んでありますから、また一生懸命少年更生、矯正に取り組んでおられる、そういう実績があるところでございますので、少年院に送るということも一つの選択肢として考えさせていただいた。  もう一方では、やはり刑罰なわけですから、残念ながら十六歳になった段階では少年院を卒業するわけですけれども、これはそのまま釈放するわけにいかない。やはりこれは少年刑務所にまた戻ってもらうことになるわけでして、ここのところは非常に悩んだわけでございますが、とりあえず義務教育年齢の十四、十五のこの二年間についてどうするか、ここを非常に悩みました。ずっと少年刑務所よりも、少年院において矯正教育を受ける、こういう選択肢を設けたということで御理解を賜りたいと思います。
  214. 保坂展人

    保坂委員 この問題はまた触れますけれども、矯正局長が来ておられるので。  日本少年院がこの長い半世紀以上の間果たしてきた役割は大変大きなものがあるだろうと私は思っているのですね。再犯率の問題をとってみても、いわゆる凶悪犯罪のピークの時期と比べると大分下がっているというふうにも聞いています。  基本的な認識として、法務省矯正局の方は、少年院の今のありようはうまくいっているのかどうか、成果を上げているのかどうかというのを、ちょっと基本的な認識を伺いたい。
  215. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  保坂委員におかれては、少年院の活動等について御理解いただいて、大変ありがたいと思っております。  再犯率の問題の評価はともかくといたしまして、各少年院の現場におきましては、家庭裁判所少年院送致を受けた非行少年に対しまして矯正教育を施し、社会的適応力を深めていくということを基本的任務にしておるわけですけれども、その職務の遂行のために大変頑張っているというふうに私は確信しております。
  216. 保坂展人

    保坂委員 ちょっと小さな声だったのですが、頑張っているというふうにお聞きしました。  その頑張っている少年院で、今提案議員にお聞きした、新しい少年院収容受刑者が生まれるわけですね。例えば、この存在の人が少年院を離れていなくなってしまった場合には、これは提案議員、間違っていなければそのままでいいのですけれども、今までの少年院の中にいる子供たちは、ある時間を経て連れ戻し状で呼んでくるということになるんだけれども、この少年院収容受刑者の場合には収監状で収監するという扱いになるわけですね。やはり法的な位置づけもそこで変わってくるわけでしょう。  そうすると、一般的な少年院の集団での処遇、あるいは矯正教育というところで、いわばいろいろ神経を使わなければいけない部分が出てくるのじゃないか。実際に現場は混乱しないのか、大丈夫だというふうに本当に言い切れるのかどうか。ここはいかがですか。
  217. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  今度、もし改正案が成立した場合には、今申し上げましたように、少年院収容受刑者という新たな法的地位の少年少年院で処遇し、十六歳に達するまでの間に少年刑務所に移送するという取り扱いになるわけですけれども、先ほど大臣の方からお話がありましたように、これまで少年院におきましては、十四歳、十五歳という年齢層の少年に対しまして義務教育を初めとしていろいろな処遇を行ってきた実績もございますし、それなりのノウハウがあります。そういうものを踏まえまして、仮に少年院を出た後刑務所に行くということであったとしても、その間の処遇の一貫性というものを工夫しながら十分対応でき得るものと私は考えております。
  218. 保坂展人

    保坂委員 十分対応するようにしたいとこういう場では言わざるを得ないと思うのです。  では、この点について提案議員にもう一度伺いますけれども、やはりこれは死刑の問題ともちょっと通底している部分がありまして、一般的に刑務所を、犯罪を犯した方が更生をしてよく改めて、そしてまた社会性も持ってやがてそこを出ていくということが矯正の現場の職員の皆さんの誇りでもあるし、そういう意味では余り知られることのない、職業的な、内発的な仕事のばねになっているのだろうと思うのです。  ところが、それが死刑執行ということになるとどうも理解できないのだということを、昔法務委員会で、昭和三十年ぐらいですか、死刑廃止法案議論をめぐって現場の拘置所長などが心情を話しておられました。  そこまで圧倒的に違うというふうには言えないかもしれませんけれども、先ほど言った、今度少年刑務所に入るという接続の部分は一体どうなっていくのか。つまり少年院全体が、先ほど言ったような、教育を施すということで運営されてきて、よい形で出るようにということでサポートしていく体制。しかし、出ていく先は、今度はいわば監獄に近い、少年院よりもより規律を重んじる場所であるというところについて、なおそこで相当の年数を過ごさなければいけない場合に、確かに中学は卒業した、しかし高校程度の年齢じゃないですか。これは一体どういうふうに処していくのか。例えば、成人と同じように刑務をやりなさいというふうなことになるのか。  実際に少年刑務所にも少年が少人数ながらいますけれども、通信制の高校でというようなことも言われています。しかし、こういう一つの新しい道をつくって、少年院から少年刑務所へという流れは今までなかった。これを開かれたときに、今度どういう少年刑務所における少年院を出た後の処遇になるのか。これはどういう議論をされたのでしょうか。
  219. 漆原良夫

    漆原議員 先回、我が法務委員会において、少年院とそれから少年刑務所を視察してまいりまして、本日委員長から御報告をなされたところです。  私も何回か少年刑務所に行っておりますが、今回本当に感じたことは、川越少年刑務所なんですが、あそこは二十六歳以下の青少年ということなんですけれども、青少年の将来ここを出た後のことを非常に考えて、職業訓練だとか資格を取るとかいろいろなことをやっているのですね。ですから、我々委員の中から、刑務所なんだから刑罰という観点ではどうなっているのかという質問が出たくらい、むしろ青少年のここを出た後のことに力が注がれているなということを私たちは実感してまいりました。  したがって、少年受刑者ですか、これが少年院で二年間なり一年間勉強して、矯正を受けて、川越のような少年刑務所であれば、それがそのままの流れの中で、運用の中でやっていけるのじゃないかなという感じを私は持っております。また、現地の少年刑務所の方も、そういう少年をこれから育て上げていくんだという、この少年院の続きの中で刑の執行ということをぜひとも考えてもらいたいというふうに希望をしております。  以上でございます。
  220. 保坂展人

    保坂委員 今回の少年法議論、公明党の中でも相当の議論があったと伝え聞いております。例えば子どもの権利条約ということとあわせて見ながら、少年刑務所の中で成人と同様の刑務を行うというようなことになった場合に、これはどういうことになるのか、子どもの権利条約の精神に反することにならないのか、こういう議論もあったと聞いているのですけれども、その辺はどう整理されていらっしゃるのでしょうか。
  221. 高木陽介

    ○高木(陽)議員 新聞報道等でも、公明党内の議論というのが報道されたこともございました。  まず、経過を御説明しますと、本年の七月下旬に、与党三党で与党の政策責任会議少年問題に関するプロジェクトチームを設置して、今回の少年法改正について議論を重ねてまいりました。  それとともに、我が党、公明党内としてもさまざまな角度から論議を進めてまいりましたけれども、基本的な認識としてみれば、今回の少年法改正について、少年犯罪については、いろいろな角度があったのですけれども、まず一番目に、犯罪を犯さない、これが一番重要な問題で、もし犯してしまった場合どのように処分していくか、今度は処分した後どのように更生させていくか、この三段階がある、その上で、今回の少年法改正は二段階の部分であるという認識を公明党内ではしておりました。  そういった中で、今委員指摘の子どもの権利条約の問題も指摘がありましたけれども、党内論議の中では、それは反しないというような結論が党内合意としてはなされました。  さらに、これは今までのこの委員会質疑でもございましたけれども少年法改正されたからといって、少年犯罪または更生がすべて丸く、うまくおさまっていくか。そういうふうにはどなたも思っていないわけです。ただ、まずその第一段階としてこの少年法改正をやっていかなければいけないし、これをやったからそれですべて終わりというふうには私たち提案者認識はしておりません。  さらに、さまざまな角度で、少年の問題、犯罪を犯さないようにするには、またその後更生していくには、こういった問題をさらに深めていかなければいけない、そういう認識に立っております。
  222. 保坂展人

    保坂委員 公明党の中の議論の中で、かなり激しく、御自身検察官であった参議院議員の方から、検察官抗告というのはよくないのだ、厳格な証明を必要としない少年審判で、検察側抗告理由である重大な事実の誤認を想定し、職業意識を持って審判に臨めば、和やかな審判など実現するはずもなく、勢い緊張した刑事法廷と変わらなくなるから、これはいかぬ、こういう意見も出されておるようですね。  ここの点については、どういう議論になったのですか。
  223. 漆原良夫

    漆原議員 我が党の参議院の検察官出身の方からそういう意見が出されたことは確かでございますが、それに対して私が答えさせていただきまして、検察官が入ったからといってすぐ和やかじゃなくなるということにはならぬのじゃないか、ここはあくまでも審判の当事者という観点ではなくて審判の協力者という観点で、これは付添人も審判の協力者でございますので、あくまでも審判の協力者という観点で、裁判所の主宰する職権主義の中で活動を行うということですから、ここのところはある意味では裁判所の訴訟指揮というんでしょうか、審判の運営のやり方に期待しなければならないところが大きいと思うんですね。検察官が入っても付添人が入っても、なるべく少年を萎縮させないようにやっていく運用をぜひとも裁判所の皆さんにはお願いしたい、こう考えております。  もう一点は、検察官を入れることによって、やはり真実発見という観点から見れば、付添人だけの審判というよりも、証拠の見方、事実の摘示、検察官が入って論点を整理して主張することによって、より裁判官が判断しやすくなる、誤り、過ちをなくすることができる、こう考えております。一人の裁判官が、今までであれば子供の立場に立ったり、あるいは検察官の立場に立ったり、弁護士の立場に立ったり、裁判所の立場に立ったり、三役兼ねてきたわけなんですが、それを、検察官が入ることによって事実関係が明確になり論点が整理されて、裁判官は過ちなく裁判しやすくなるだろう、私は自分の経験からいってもそんなふうに感じて、そこを説明して我が党内には納得していただいたという経緯でございます。
  224. 保坂展人

    保坂委員 確かに、これは大変大事な議論をされていたんだと思うんですね。ですから、この辺の議論というのは本当に根底的な問題だと思います。  もう一点、こんな御意見、なるほどなと思うのですが、いわゆる原則逆送の部分で、これを採用すると、いわゆる犯罪少年は成人以上の不利益な手続を強制されることになるではないかという意見が出されたそうですね。  一、捜査段階では成人と同様の取り調べの対象となり、二、家裁送致後は検察官立ち会いのもとで原則逆送を前提に審判が行われ、三、その後には成人と同様の刑事裁判手続が待っている。しかも、審判で保護処分相当であるという家裁の裁量の例外的な決定が出た後も、検察官からの抗告の危険にさらされるのではないか、こういう指摘に対してはどのような議論が行われたんでしょうか。
  225. 漆原良夫

    漆原議員 そういうふうな指摘がなされたことは確かでございますが、基本的には現状と変わりません。今も審判をして逆送されれば、おっしゃるように、刑事事件と同じような手続で刑事事件の裁判をやるわけですから。それで、今の五十五条でもって保護処分が妥当であると判断されれば、五十五条でまた再度家裁に戻ってきて審理するわけですから、今の条文と、今の状況と何も変わらないというふうに私は考えて、そうお答えをしております。
  226. 保坂展人

    保坂委員 公明党の中の、あえて党内の議論に触れさせていただいたのは、これはもう与党野党多分またいで、憲法観の問題、あるいは子どもの権利条約をどう見るかとか、さまざまな大事な基本認識がクロスしている部分もあろうかと思います。その点で、やはり与党内でされた議論あるいは党内でされた議論もぜひ我々、議論の参考にさせていただきたいし、またそういう意味で、連立の中で公明党は、ぜひこの点では憲法の問題、教育基本法の問題もきっちり姿勢を示していただきたいという意味でお聞きをしました。  たくさん積み残しがあるのですが、時間になりました。これで終わります。
  227. 長勢甚遠

  228. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  いよいよ少年法審議が始まってきました。当法務委員会では、参議院比例代表選挙に非拘束名簿方式を導入する改悪をめぐって野党出席できない不正常な中で、与党によってこの少年法改正法案審議が強行されてきました。  少年法というのは、子供の未来と日本あり方にかかわる大変重大な法律であります。今回の改正も、その法の理念の根幹にかかわる大事な問題も含まれていると思います。このような法案を衆議院本会議での趣旨説明すら行わない、そして法案提出した与党だけで審議を強行するというのは、私は余りにも乱暴であったと思います。国会は、拙速な結論を避け、幅広い人たちの意見を聞き、慎重で真剣な議論をすべきだとの声が多くの関係者、国民から上がっています。当然のことだと思います。冒頭にそのことだけ申し上げて、早速質問に入りたいと思います。  最初に、法務大臣にお聞きをいたします。  十月十日の当委員会において、先ほど同僚委員からも質問されましたが、法務大臣憲法改正発言をいたしました。与党から少年法改正提出されて、法務大臣の基本的な所見が質問された中での答弁であります。  先ほどお伺いしておりますと、大臣は、一政治家としては憲法改正した方がいいという論者だが、森内閣の閣僚の一員としては具体的な答弁は差し控える、そういうふうに私は伺いました。  具体的にお聞きしましょう。憲法のどこをどのように変えるべきだという一政治家としての考えなんでしょうか。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  229. 保岡興治

    保岡国務大臣 先ほどからお答え申し上げているとおり、具体的な改正について私が閣僚として言及しているわけではありません。一政治家として、社会あり方を決めていく上では、憲法改正論議等いろいろ幅広く論議を尽くして社会あり方を求めていくべきであるということを申し上げてまいったわけでございまして、具体的な改正の方向を示唆するつもりで申し上げているつもりではありません。
  230. 木島日出夫

    ○木島委員 そうおっしゃいますが、非常に、かなり具体的に大臣の所見は述べられています。ちょっと幾つか拾ってみましても、  私は、少年法だけでこういった一連少年非行事件犯罪が解消するものということでもない。これは非常に重要な柱でありますが、やはり私は、戦後の日本社会の鏡がこの少年事件にあらわれている。したがって、社会全体の気質、あるいは免疫力蘇生力、こういった全体の社会のありようというものを、やはり憲法改正を含め、あるいは教育基本法見直しを含め、新しい二十一世紀日本に向かって、私は、社会全体の規範意識けじめをつけるところはきちっとつける、責任義務、個と全体との関係、こういったことを社会全体できちっと新しい日本あり方として求めていくことが我々政治家としては非常に重要だというふうに思っておるところでございます。 非常に明確ですよ、その理念は。  なぜこれが非常に重大かといいますと、少年法改正問題で、まさに憲法改正発言やら教育基本法見直し発言法務大臣から出てきたということだと思うのです。なぜかといいますと、現行少年法は、まさに戦後新しい憲法がつくられ、その憲法の基本理念に沿って日本のすべての法律が見直される、そういう作業の一環として一九四八年七月十五日国会で成立し、翌四九年一月一日から施行されている。憲法の基本理念を受けて少年法改正されてきたんですね。  御存じのように、憲法の三つの基本理念の一つが基本的人権の尊重でしょう。旧少年法から新少年法にどこがどう変わったか。私は、まさにこの憲法の理念が変わったことに沿う改革であったと。  簡単に触れますと、一九二二年、大正十一年の旧少年法から、一九四九年一月一日から施行された新少年法への変革というのは、私は大きく三つあったと思うのですよ。  一つは、少年非行少年犯罪に関する処遇をどこでやるか。旧少年法は、行政としての少年審判所がやっていた。それから、司法としての家庭裁判所がすべてを処遇する、こういう変革がありました。  二つ目には、刑事処分優先、少年が犯した犯罪に対して、刑事裁判に送って、有罪判決をやって、そして少年刑務所に送り込んで処遇する、そういう方向から、原則保護処分家庭裁判所少年審判として事件を処理して、そして前科者の烙印を押さずに少年院に送って、そこで教育保護の理念で少年を立ち直らせていくという、刑罰優先から保護優先への変化です。これが現行少年法が保護主義だと言われている根本でしょう。  そして三つ目には、そのために検察官優先、検察官先議という根本原則から裁判官先議ということになりました。全件が裁判所に送られてくる、そして事件の振り分けを、検察官がやるんじゃなくて裁判官がやる、そういうふうに根本的な理念の転換があったわけですよ。  その具体的なあらわれとして何があったか。年齢区分もその一つだった。十四歳、十五歳の少年には刑事処分は科さない、逆送は許さない。十六歳以上の少年については原則逆送は許さない、原則家庭裁判所保護処分、例外として逆送を認める、そういう処遇。それから、十八歳、十九歳の少年にも少年法の適用をさせていく。非常に大きな根本的な少年法の理念の転換があった。その背景にあったのは、憲法理念の転換でしょう。  そういう中で、今回、その少年法の基本理念に対する変更を求める法案与党から出されてきました。年齢区分の改定というのはその保護理念の大きな後退だという面では、まさに憲法理念、少年法の理念の大きな変革の法案がこの委員会に出されてきている。そういう中で大臣から、少年法改正問題について所見を求められたときに憲法改正発言とか教育基本法見直しが出てきたというのは、まさにこれからどのように少年法を運用するか、運用の最高責任者は法務大臣でしょう、処遇については。決定的に重要なことになるのです。だから聞くのですよ。  もうちょっと詰めますと、憲法の柱の一つが基本的人権の尊重と言いました。これは、少年犯罪被害者の権利が全く少年法制にありません、そういう面から根本的な見直しが必要だと私は考えています。そういう少年犯罪被害者の権利の伸長のためにも、また少年法の基本理念を生かして、加害少年更生のためにも、またもっと根本的に少年犯罪を大きくなくしていくためにも、教育社会、あらゆる分野で子供の基本的人権を尊重、擁護することこそその道ではないか、そういう道筋の中から少年犯罪非行をなくしていこうということが憲法の理念であり、まさにその理念の方向で法務大臣は行政を運用しなきゃならぬのだと私は思うのです。  それを具体的にあらわしたのが憲法十三条だと私は思います。「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」法務大臣答弁はこうじゃないんでしょう。まさに責任義務、個と全体の関係、こういったことを見直していこうという趣旨での答弁でしょう。  法務大臣の本音を聞きたいのです。この憲法の基本理念を大事に守り、育てていこう、充実させていこうという立場なのか、そうじゃなくて、この憲法十三条に見られるように、日本憲法は権利が大き過ぎる、義務がなさ過ぎる、そういう立場で見直すんだ、そういう考えなのか。どちらでしょうか、明確に答弁を願います。
  231. 保岡興治

    保岡国務大臣 先生がおっしゃっている憲法の基本的人権尊重の理念、これは私は非常にすぐれた理念だ、そのことについて保障する憲法遵守義務は、法務大臣としてこれはきちっと守っていくべき立場にあるということは自覚をいたしております。そしてまた、そういった憲法の理念を踏まえて少年法改正された経緯についていろいろ述べられましたし、具体的な少年法のスキームのあり方についても先生がいろいろお述べになる、この点についても、私としては、現行少年法の理念というものは尊重していくべきだと思っておりますし、今度の与党三党の議員提案に成る改正案もその理念をいささかも変更するものではない、そういうふうに考えております。  ただ、一般的に言って、私は、権利や自由、こういったものには内在する責任義務がある、そういうものの調和の中に正しい社会を求めていくことが大切だ、そのことは今の憲法でも基本的に否定しているものでもないし、むしろそれは当然憲法の理念の中に含まれているという考え方でございます。
  232. 木島日出夫

    ○木島委員 憲法遵守義務は承知しておる、憲法の基本的人権擁護の理念はかたく守る、今回の改正法案少年法の保護主義の理念に対していささかの変更も入れているものではないとおっしゃいました。憲法九十九条は、今おっしゃるように、国務大臣はこの憲法を擁護し、尊重する義務を負うと規定をしております。「注解日本憲法」によれば、尊重するというのは、憲法遵守し、これに違反せず、さらにその目的を実現することをいうとあります。  今、法務大臣にとっても法務省にとっても最大の懸案は司法制度改革だと思うのですが、司法制度改革審議会会長の佐藤幸治教授の現代法律学講座「憲法」には何と書かれているか。憲法改正手続について定めている以上、閣僚が政治家として改正に関する主張をなし得るのは当然であるが、改正されるまでは憲法に誠実に従って行動する義務があり、さらに、憲法及びそのもとにおける法令に従って行われるべき職務の公正性に対する信頼性を損なうような言動があるとすれば、本条の義務に反する可能性があろう、その意味で、閣僚の憲法改正に関する発言には国会議員の場合と違った慎重さが求められるということになろう、こう書いているのです。このような議事録に載っておるような発言をすることが余りにも軽率ではないかということを指摘して、時間もありませんから少年法改正法案の中身に入っていきたいと思います。  最初は、犯罪被害者の権利、救済、配慮の問題であります。先ほども言いましたが、現行少年法の最大の問題、私は欠陥と言ってもいいと思います。少年犯罪被害者、遺族に対する配慮、救済、権利が全くないということであると思います。  少年犯罪被害当事者の会の皆さんが、九八年四月二十八日に当時の下稲葉法務大臣へ出した要望書、そして本年十月十九日、保岡法務大臣に出した要望書がここにあります。犯罪被害者皆さんの、現行少年法少年審判手続に対する最も大きな怒りと不満というのはどこにあるか。少年犯罪によって最愛の我が子を殺されたことだけではなくて、そのこととともに、どのようにして我が子が殺されたのか、だれが本当の犯人なのか、その真相が全く被害者の家族に知らされていないこと、真実が正しく解明されていないのではないかということ、さらには、家族の思いが全く犯罪少年側に伝えられていないということ、その手段さえないということにあることが、これら一連の要望書から読みとることができるわけであります。  改正法案には、家庭裁判所への意見陳述権、審判結果の通知を受ける権利、審判中または審判後に非行事実に係る記録の閲覧、謄写権、いろいろな制約がついておりますが、一応この三つが被害者への配慮として載っております。余りにも当然であると思うのです。しかし、これでは全く不十分だと私は思います。  最初に、警察庁、法務省、最高裁にお聞きします。現行少年事件について、犯罪捜査の過程、少年審判手続の過程において、被害者側の意見を聴取すること、特に被害者側に犯罪事実の内容を知らせること、手続の進行状況を知らせること、これらに関して、現行法はどこまで許しているのか、これは許されていないと考えているのか。あるいは、そういう現行法のもとで実務はどこまでやっているのか、率直に具体的な答弁を求めます。
  233. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 お答え申し上げます。  警察におきましては、犯罪被害者対策といたしまして、先ほども申し上げましたが、被害者に対して事件に関する適切な情報の連絡に努めておるところでございます。先ほどの繰り返しになりますけれども、具体的には、殺人、性犯罪、傷害等の身体犯等の事件の被害者あるいは御遺族に対しまして、捜査の状況でありますとか、被疑者を検挙いたしました場合にはその旨及び被疑者の氏名、年齢、住所や起訴、不起訴の処分結果等について連絡をすることといたしております。  捜査の過程で、例えば、今お話がございました加害少年被害者を対面させるというようなことにつきましては、刑事訴訟法等、特に規定はございませんので、事案によっては、加害少年被害者を対面させることはできるものと考えております。ただ、一般的には、捜査段階におきまして加害少年被害者を対面させることはほとんどございませんが、例えば任意捜査の過程で、財産犯におきまして、加害者側と被害者側双方が話し合いによる解決を望んでおり、両者が対面することが捜査、加害少年の健全育成、被害者対策等の観点から問題がないと判断される場合には、加害少年被害者あるいはその保護者等と対面させることもあるものと承知をいたしております。  それから、被害者の意見聴取につきましても、当然のことながら、犯罪被害者として事情聴取をいたすわけでございます。その際に、被害者の心情等につきましても事情を聴取するわけでございまして、それが反映されるような形で適切な対応に努めておるところでございます。  以上、具体的な事例を交えて、実務を若干御紹介申し上げた次第でございます。
  234. 古田佑紀

    古田政府参考人 まず、検察庁におきますいわゆる被害者方々に対する配慮のシステムを申し上げますと、被害者等の方々に対する御希望によります事件の処理結果等の通知のシステムがございます。これは少年事件についても同じように扱っております。それから、いわゆる被害者支援員システムがございまして、電話等で御相談を受けるということになっております。  ところで、委員の御指摘の、ではどのような情報が捜査段階で提供できるかという問題につきましては、これは御案内のとおり、少年法少年審判を非公開の手続でするということになっており、その目的は、少年の健全育成を期するということにあるわけでございます。そういう少年法の固有の問題に加えまして、捜査段階では非常に流動的な要素が多い。まだ、どの程度信用ができるかとか、そういうことも確定できない証拠等もたくさんあるわけでございます。  そういうようなものの中からいかに情報を提供をするかといえば、やはり非常に確実な情報におのずと限られていきますし、また、先ほどの少年の健全育成とかそういうふうなものに影響を及ぼさない、あるいはもちろん捜査自体に影響を及ぼすようなことがあっては、これもやはりまずい、それから少年審判に影響がないように配慮しなければいけない、こういうふうないろいろな問題を考えて、その中で問題が起こらないと思われるような事項について、事案に応じて御説明を申し上げるということにおのずとなっていくわけでございます。  したがいまして、一般的にこういうことということを申し上げるのは、難しいところがあろうかと思います。
  235. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  先ほど来御説明申し上げているところでございますけれども家庭裁判所における現在の被害者方々に対する配慮の実態でございます。  まず、被害者の方に対する情報提供の観点から申し上げますと、処分結果のお問い合わせがあった場合には、現在でも、特に支障ない限り、主文ぐらいの内容については御説明をしている状況にあると承知しております。  また、損害賠償請求訴訟を提起するなどのために必要な場合には、主として終局後になろうかと思いますけれども少年事件の秘密性の要請を踏まえながら、少年の情操保護、更生等の妨げにならない範囲におきまして、記録の閲覧等に応じる運用はされているというふうに承知しております。これは規則七条によるものと理解しているところでございます。  また一方で、被害者の方からその心情等を伺う方法の関係でございますけれども一つには、裁判官でございますが、証人として被害者の方が証言する場合におきましては、その機会に心情を伺うこともあるように思いますし、あるいはまた、参考人として被害者に事情を伺うこともあるだろうと承知しておるところでございます。  また、最近はさらにこれを超えまして、家裁調査官から被害者に対しまして、その心情等に十分配慮をしながら、被害状況、被害感情等について書面で照会をしたり、あるいは面接をしたりいたしまして、その声を調査、審判に反映させるなどの工夫も行われるようになっている状況にあるということでございます。  以上でございます。
  236. 木島日出夫

    ○木島委員 今、警察庁、法務省、最高裁から答弁を求めましたが、今回の改正法は、現状でも大体実務で運用している、そんなものばかり。だから、私は、今回の改正法で表目には三つの権利が被害者に付与されたように見えますが、ほとんど現状を変えるものじゃないと思わざるを得ません。もっと抜本的な、根本的な、被害者に対する配慮、被害者の権利の付与が今少年法制に基本として求められているんじゃないかと思います。  具体的に聞きます。第五条の二、非行事実の閲覧、謄写の権利についてであります。  それによりますと、「第二十一条の決定があった後、」これは審判開始決定があった後ということですが、被害者側から「当該保護事件の非行事実」、これは「犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。」とありますが、その非行事実に係る部分に限っての閲覧、謄写の申し出があるときは、「当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合」に閲覧、謄写をさせることができるものとするというのが法案であります。  そこで、「その他正当な理由がある場合」とはどういうものか、運用で非常に大事でありますから、提案者にお聞きしたい。
  237. 杉浦正健

    杉浦議員 まず、御答弁申し上げる前に、冒頭申されました、私どもが、単独ではありません、21世紀も無所属も参加されましたから、審議に入ったことについておしかりをいただいたわけでありますが、私どもは、先生がこの法案が非常に重要だとお考えになっている同じ理由で、今国会中にぜひとも国民皆さんの御期待にこたえなきゃいかぬという立場で我々与党中心審議に入ったわけでありまして、野党四党の方が審議に御参加いただけなかったことは非常に残念だと思っていることだけは申させていただきます。  ただいまの「正当な理由」でありますが、これはまさにこれから運用になっていくわけでありますけれども、先ほど先生がおっしゃっておられたような、遺族といいますか被害者方々が、一体どういうことが調べられているのか中身を知りたいという理由で御請求になられた場合であっても、それは「正当な理由」として認められると私は思っておりますし、そういう、可能な限り審判の中身を遺族の方々に知っていただく方向で運用がなされると確信をいたしております。
  238. 木島日出夫

    ○木島委員 非常に大事な答弁が出たと思うんです。「正当な理由」の解釈としては、犯罪被害者が被害がどのようにして行われたか知りたいというだけで「正当な理由」になるんだと。それでいいですね、確認して。
  239. 杉浦正健

    杉浦議員 「正当な理由」の解釈、運用の問題になりますが、私どもとしては、そのように運用されるということを期待いたしております。
  240. 木島日出夫

    ○木島委員 単なる期待じゃなくて、立法者の意思として明確に答弁してもらいたい。
  241. 杉浦正健

    杉浦議員 言い改めます。立法者の意思としてそう考えております。
  242. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  被害者への通知の問題について聞きますが、少年審判を終局させる決定がなされた場合だけではまことに不十分ではないか。警察から検察への事件の送致の段階、検察から家庭裁判所への事件の送致の段階、審判開始決定が出た段階など、節目節目で被害者側に通知をすべきじゃないんでしょうか。本改正法案で、被害者少年審判において意見を陳述する機会が与えられるわけでありますから、どんな段階に立ち至っているのか知らなければ、せっかくのその機会も事実上失われてしまうのではないかと思いますが、提案者、どうでしょうか。
  243. 杉浦正健

    杉浦議員 このたび、私ども法案の中に盛り込みました三つ、そのうちの一つ、通知制度は廃案になった少年法改正案の中にも入っておりました。あとの二つは入っておらなくて、新規に私ども改正案に盛り込んだものでございますが、それらの措置のみをもって被害者方々のお気持ちに十分沿えるというふうには私どもまだ思っておりません。さまざま検討すべき課題があるというふうに考えているところでございます。  先ほど、警察、検察、最高裁等の御答弁の後、もう既に現実にやっているじゃないかというような御発言もあったわけでありますが、正直申して、私どもがこういうことを盛り込むということを検討を始めたから始められたという面も実際あるわけでございます。したがいまして、私どもがこのような改正条項を盛り込むことによって、さらに被害者方々の御期待にこたえる運用がなされていくものと思っているところであります。  通知の制度は、法的には一回だけということにいたしましたが、現実に警察の方でも運用しておるようでありますし、節目節目で、これはそれぞれの機関の業務がありますので御要望のような形で全部が全部対応できるかどうか、それから、事件の顔も百人百様でありますから一概には言えませんが、事案の実情に応じてそれぞれの機関において適切な対応がこの法律改正を契機としてなされるというふうに私は期待しておる次第であります。
  244. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、私の質問趣旨は、この法案は、家庭裁判所が審判を終局させる決定を出したときにのみ通知をするということが書かれているんですよ。だから、それじゃ不十分じゃないか、警察から検察への送致、検察から家裁への送致、審判開始決定、そういう節目で被害者に通知することは何ら差し支えないはずですよ。私が被害を受けた、私の子が殺された事件がどんな段階に至っているのかというのが知らされなければ、家庭裁判所に私の意見を申し立てたいということだって、言えないまま、知らないまま時が過ぎていっちゃうじゃないですか。時間の関係で私は警察、検察、裁判所には聞きませんが、そのぐらい節目節目でやったって、恐らく実務に全く支障がないと思うんです。どうして今回せめてそこまで法律で規定しなかったのかというのは、不思議でしようがないんですよ。それで、一歩踏み出していただけませんかという質問なんですよ。  どうでしょうか。何でそれをやらないような法案になっているんでしょうか。
  245. 杉浦正健

    杉浦議員 なぜそれをやらなかったかということに対する正面からのお答えにはならないかもしれませんが、せめてと申しますが、最後のこのきちっとしたところだけは法的に通知する義務を負うというところを明定したわけでございまして、今、警察やいろいろな方がおっしゃっていましたが、被害者の求めに応じて差し支えない限りお知らせもしておるようですから。  おっしゃる点は、今後の運用において状況を見ながら検討すべき問題点であることは間違いないと私ども認識しておりますが、今回は入れませんでした。
  246. 木島日出夫

    ○木島委員 今まで少年犯罪被害者皆さんの最大の不満は、運用が余りにもいいかげんだ、要求しても警察はまともに事件をやってくれないということなんですよ。だから、私が言った節目段階で通知するぐらいは全然、加害少年更生も別に妨げるわけじゃないわけですし、少年審判手続の秘密性にもさわるわけじゃないですから、中身を全部通知しろと言っているわけじゃないんですから、どんな段階に来ているのかぐらいはきちっきちっと知らせるというのは法的に義務づけたらいいんじゃないかということなんで、そういう指摘をして、次に移りたいと思うんです。  もう同僚委員からもたくさん質問がありましたから繰り返しませんが、被害者と加害者の面接というのは非常に大事だと思います。既に欧米先進国では進んでおりますが、加害少年被害者の痛みを理解する、そして本当に真摯な反省をして更生の道を歩むためにも、私は、被害者の痛みを加害少年が知るということがまず基本だと思うんです。前提であり、第一歩だと思うんですね。  ですから、捜査の段階、審判の段階、処遇の段階、時期とか条件、非常に慎重な配慮が必要だと思います。当然、加害者、被害者の、当事者の同意というのは不可欠の前提だと思います。その配慮なしに無理やりにやりましたら大変なことになりますから、そういう慎重な配慮を前提として、こういうシステムを我が国の少年法制にもつくり上げていくということが今求められているんじゃないかということだけ指摘して、これは法案にありませんから、将来の課題として法務大臣の決意だけお伺いしておきたいと思います。
  247. 保岡興治

    保岡国務大臣 先ほどから御議論のある、犯罪により被害を受けた者に対する配慮を求める国民の声というものは非常に高く、また、世間の関心も非常に強くなっているのは事実でございまして、こういった声に誠実にこたえるということは、今先生が言われた、捜査段階から処遇に至るまで、少年事件についてもいろいろ関係者が努力、配慮をこれからも尽くしていくべきであるし、そういう流れができつつある、そう思っております。  今回の与党三党の改正案も、そういう趣旨に沿った、的確な一定の条件のもとにおける被害者に対する情報の開示というものを制度として整えたと私は評価をしているところでございます。これからも、先ほど杉浦提案者からもお話があったとおり、さらに被害者皆様方のお気持ちをそんたくして、適切な改善、対応がなされるべきだと思っております。  せんだって、私も、少年事件で殺害された子供さんたちを持つ三十五の家族を代表する皆さんにお会いしまして、いろいろなお話を聞きましたけれどもお話を聞いて、やはりしっかりとやっていかなきゃいけないと思ったところでございます。
  248. 木島日出夫

    ○木島委員 被害者の側の精神的、経済的、身体的ケアを国の行政がきちんとやるということが、今我が国では求められているんじゃないか。今、ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力による被害者をどう救済するか、ストーカー犯罪による被害者をどう救済するか、非常に大事だ。そういうことで、そういう被害者の、特に精神的ケアをしっかりやるということが、やはり行政の責任として取り組んでいくということが今求められているということをこの問題で一言述べて、次の問題に移りたいと思います。  十四、十五歳の年少少年への刑事処分についてであります。  提案者に聞きますが、現行少年法制では、この年少少年に対する刑事処分の道は開いておりません。年少少年はあくまでも保護処分として、少年院送致までを最高限度として教育、保護的処遇をすることこそがその少年更生への道であり、それがひいては再犯を抑え、我が国社会の平和、安全を守る道だ、そういう理念に基づいているからだと思うんです。  そこで、端的に聞きますが、なぜ今回、この十四、十五の年少少年へ刑事処分の道を開かなきゃならぬのでしょうか。
  249. 杉浦正健

    杉浦議員 非常に深い問題があるわけなんですが、端的にわかりやすく申せば、十四歳、十五歳の少年による信じられないような、世間を震撼させる凶悪事件が続発しておる。最近起こった大分の一家殺傷事件も十五歳の少年であります。神戸のA少年も十四歳でございました。この間、新聞では、中学生がコンビニで強盗をやったと出ておりました。殺人、強盗、強姦を凶悪事件と言っておりますが、犯罪統計を見ておりますと、このところ低年齢の凶悪事件は増加の傾向にあるということで、世間も大変心配をしておりますし、この問題についてきちっと対応してほしい、とりわけ少年法で対応してほしいという御意見は、比率はわかりませんが、国民の大方と申しますか、マジョリティーはそう願っておられるんじゃないか。そういうことを背景といたしまして、私どもは、十四歳、十五歳も刑事罰の対象とすべしという結論に達した次第であります。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  250. 木島日出夫

    ○木島委員 十四、十五の年少少年による殺人事件など凶悪事件が発生しておる、何とかこの年代の少年による凶悪事件をなくしたいという思いが込められているということは理解はいたします。  しかし、この法案が、少年法二十条のただし書きの削除という形でやっています。そうすると、逆送になるのは凶悪犯罪だけではなくて、死刑、懲役、禁錮に当たるすべての罪を犯した少年について逆送できるということになるんです。歯どめは家庭裁判所の裁判官の判断だけなんです。今の立法の趣旨とちょっと違うんじゃないですか。広過ぎやしませんか。限定をつけなかったのはなぜでしょうか。
  251. 杉浦正健

    杉浦議員 十四歳、十五歳については、原則逆送と言われている部分は除外いたしました。実際問題の処理といたしましては、凶悪犯罪を犯す十四歳、十五歳の少年というのはほんのごく一部でありますから、年少少年たちが犯す犯罪行為についての家庭裁判所保護処分あり方の根幹に差が出てくるというふうには思いませんが、こういう少年たちに、悪いことをしたら刑事処分に付せられるよということを強く警告する。それによって少年たちが、中には十三歳、十四歳、十五歳なら何をやったって刑務所へ行かないよということを認識してやっている子供もいるというような報道もございますので、そういう規範意識をしっかりと認識してもらうということが非常に大事なことではないかというふうに思います。  とりわけ、人を死に至らしめるような行為というのは、まさに人の命のとうとさ、大事さを少年たちに教え込むという意味でも、御質問にはありませんが、原則として刑事裁判だよ、刑事処分を受けるんだよということを警告することによりまして、抑制する効果が出てくるんじゃないかというふうに思っている次第であります。
  252. 木島日出夫

    ○木島委員 私、今論じているのは、十四、十五の年少少年に対する刑事処分か保護処分かの問題についてのみです。十六歳以上はこれから論じます。  私が先ほど、提案者の気持ちはわかると言ったのは、何とか年少少年による凶悪事件をなくしたいという思いはわかると言ったんです。恐らく提案者は、そういう規範意識をこの改正によって持ってもらいたい、そういう答弁でした。しかし、いわゆる一般的抑止力などは、少年法、十四、十五の少年を刑事裁判送り、刑務所送りにする、そういういわゆる厳罰化によっては生まれてこないんじゃないかということを指摘したいと思うんです。  本年九月九日、日経新聞はこういう報道をしました。非行少年法関係ない、これが九割だと。少年鑑別所に収容中の少年約千六百人を対象にしてことし七月実施したアンケートが、保岡法務大臣少年院や少年鑑別所の心理・教育担当の専門官ら五人と懇談し、少年法改正問題について意見交換した中で紹介された。そのアンケートによりますと、少年法が甘いから非行をしたのかとの問いに対し、八七%の少年が違うと否定的な回答をしたことがわかった、こういう記事なんですね。  法務省、こういうアンケート調査、間違いないですか。
  253. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  そういった調査をしたことはありますが、これはあくまでも少年処遇という、それに参考に資するための内部調査ということで行ったものであります。
  254. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、実は私、この報道記事が出た後、本年九月十一日付で、法務大臣官房秘書課長寺田逸郎氏から日経新聞東京本社編集局社会部長に対して抗議申し入れ書なるものが出されたことは知っているんですよ。抗議の内容も知っているんですよ。しかし、こういうアンケートの結果そのもの、少年法が甘いから非行をしたのかという問いに対して八七%の少年が違うという否定的な回答をした、それは事実でないということは、その抗議文の中にも全然書いていないんです。だから、このアンケートの中身は事実か、それだけ教えてくださいよ。事実なら事実でいいじゃないですか。
  255. 鶴田六郎

    鶴田政府参考人 お答えいたします。  このときの調査につきましては、いろいろな質問について調査したわけでありますけれども、その中の一つに、少年は悪いことをしても処分が軽いことを知っているから非行をしているのだという意見に対してどう思うかというものがありまして、この質問に対して約八七%が否定的に回答したことは事実であります。  ただ、ここに少しコメントさせていただきたいと思いますけれども、個々の少年はそれぞれ動機、原因があって非行を犯していると考えられるわけでありまして、少年法上の処分が重いとか軽いとかということが直接的な犯行の動機、原因となっていないことから、そういった意味で否定的に回答した者も多いと考えられるわけでありまして、さらに詳しい面接等による調査を行って真の動機とかあるいは原因を分析しておらないわけでありますので、このアンケート結果をそのまま受けとめるということはできないというふうに考えております。
  256. 木島日出夫

    ○木島委員 みずからやったアンケート結果をそのまま受け取ることはできないなんというのは本当にとんでもないことだ。法務大臣提案者に気兼ねすることはないと思うんです。こういうアンケート結果があるんだということを堂々と法務当局は社会に知らせるべきだと思います。  要するに、提案者の思いは、何とか年少少年の重大事件を食いとめたいということでこういう逆送に道を開くということを提案されているんでしょうが、そんなことでは抑止力にならぬということが示されていたと思うんです。逆に、刑事処分送り、刑務所送りすることによってどんなに害悪があるかということを論証することが大事だと思います。  まず一つとして、この十四、十五歳というのは、義務教育下にある少年であります。義務教育ですから、少年の成長に対する国の責任があるわけです。私は、この年代の少年を刑事裁判送りをして少年刑務所に送っていくということは、国の教育に対する責任を放棄するものではないかと思います。  法案には、それを免れるために、確かに十六歳に達するまで少年院で処遇するとあります。しかし、この場合の少年というのは、少年院送致の少年ではなくて、あくまでも受刑者としての少年なんです。二年たったから社会に出られる少年じゃないんです。二年少年院で処遇しても、その後待ち構えているのは少年刑務所なんですよ。そういう退院の希望がない少年と、そうではない、保護処分の結果少年院行きになった少年とを一緒にして矯正教育をするというのは、私は、少年院の現場に大きな混乱を引き起こすことにならざるを得ないと思います。時間がありませんから、これは意見だけ申し上げます。  もう一つ。この年代はまさに思春期最中の少年であります。この年代の少年がどういう状況にあるかということが発達学的にも非常に大事だと思います。私は、一つだけ、慶応義塾大学の小此木啓吾教授の講演での発言をちょっと披露したいと思います。九八年の「法と民主主義」という雑誌の十二月号に出ています。十四、十五の子供、どういう時代か。  十四、五の子どもを一人前の人格として、おまえはどうしたんだ、こうしたんだと聞いても、これを自己感覚というのですが、まだ自己感覚が十分に現実的なものにつながっていないのです。   ところが、彼らの頭の中はものすごく大人なのです。小学校五、六年生ぐらいで、人間の頭はほとんど大人と変わらない意識を持つようになると一方ではいわれています。 頭の中は大人と同じだ。しかし、人間関係は全くつくられない。自己感覚が現実的でない。中略しますが、   それから、人生の中でいちばん激しい破壊性を抱く時期です。空想的で破壊的です。皆さんもご承知かと思いますが、いま、アフリカでも、カンボジアでも、もっとも勇敢な兵士は少年兵です。十四歳、十五歳ぐらいの少年が命知らずにもっとも勇敢に戦争します。   これは日本も同じで、少年航空兵になって予科練で特攻隊に行った人はみんな十七歳ぐらいです。僕たちも覚えていますが、十四、五歳ぐらいのときは人間が生きるとか死ぬといったことにあまり現実感を持っていません。 精神医学の権威ですが、こう分析されているわけです。  この世代がある理由によってあるいは切れて、結果、重大な犯罪を起こすこともそれはあるでしょう。現にありました。しかし、こういう世代の少年に、だから刑事処分、逆送して犯罪者の烙印を押して、そして刑務所に送っていくということは全く更生に役立たない、しかも一般予防の効果も基本的にはない。こういう性格の少年のやる犯罪に、一般予防の効果なんて出てこないということは明らかではないかと思います。  次に、法務省に聞きます。  少年法はなぜ十四、十五について逆送を認めなかったのか、その立法趣旨はどのようなものであったのか、答弁願います。
  257. 古田佑紀

    古田政府参考人 現行の少年法が刑事処分可能年齢を十六歳以上と定めた理由につきましては、現行少年法の制定の過程で、当時GHQからの示唆があったという事実は承知しております。  しかしながら、政府提案理由書等を見ましても、その理由について具体的に触れているものは見当たらず、また、当時の国会における御審議の過程などを見ましても、この問題について触れた部分というのはどうも見当たらないのが実情でございまして、いろいろな記録等を点検いたしましても、その理由について確たることは申し上げられないというのが実際でございます。
  258. 木島日出夫

    ○木島委員 私も少年法が戦後改正された国会論議を読んでみましたが、おっしゃるとおり、余り確たる理由はわからない、いろいろな本を読んでみましてもなかなかわからない。それで、最近、これから当委員会にもお呼びしております守屋克彦教授、元の家庭裁判所の裁判官ですが、その方が先ほど示した「法と民主主義」の本年十月号に「少年法改正と年齢問題」という論文を出しております。そこで年齢問題の沿革に非常に詳しく触れて、ああなるほどなと私は開眼をいたしました。簡単に御披露しておきますと、こういうことなんです。  我が国の旧刑法、これは一八八〇年の旧刑法です。新刑法は明治四十年、一九〇七年です。旧刑法では責任年齢を十二歳としていた。十二歳以上十六歳未満の少年犯罪については、是非を弁別、よしあしを見分けることですね、是非を弁別したかどうかを基準として、弁別したと認められる場合は刑罰に処し、認められない場合は懲治場、要するに保護のための施設ですね、ここに収容して保護的な措置をとることができるようになっていた。明治時代の話。  しかし、実際には多くが刑罰に処せられていた。その運用を改めるために、一九〇七年、明治四十年の現行刑法、古い話ですよ。しかし、その刑法が今生きて運用されているんですからね。その現行刑法の制定作業に際して、十四歳を責任年齢にした。十二歳から十四歳まで責任年齢を上げた。そして十四歳未満を刑罰の適用年齢から外した。そして十四から十六歳未満をどうしたかというと、刑罰によらない処遇を用意する必要があるとしたんだと。そして、その後の大正十一年、一九二二年の旧少年法の制定が準備されることになったんだと。  こういう歴史が日本の戦前戦後の、明治以来の刑法、少年法の流れにある。だから守屋教授は、十六歳というので年齢を区切るには日本の刑事法制の中に大きな痕跡があると主張しているわけですね。守屋教授はさらにこの論文の中で、今回出されてきた与党案は旧少年法よりも後退することになる、こういう指摘すらあるんです。  提案者法務省はこういう沿革を知らずに今回の法案をつくったんですか。
  259. 杉浦正健

    杉浦議員 沿革についても検討いたしておりますが、後退したとは思っておりません。
  260. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間も少なくなりましたが、十六歳以上の原則逆送についてお聞きします。到底きょう全部やるわけにいきませんから、次回に一部残ると思いますが。  十六歳以上の少年の故意による犯罪による被害者死亡事件について原則逆送とする。提案者に聞きますが、これはこういうことですか。現行少年法は、十六歳以上については、非行犯罪を犯した場合は原則保護処分だ、そして、少年審判手続を経て、少年院送致が最高だ、例外として刑事裁判にさせるために逆送するんだ。ところが、今回の法改正によってこの例外と原則をひっくり返すんだ、そういうふうに受けとめてよろしいですか。
  261. 杉浦正健

    杉浦議員 人の命を奪った凶悪な犯罪についてでありますが、原則と例外を逆転させたというふうに御理解いただいてよろしいかと思います。  現行法は刑事処分相当の場合に送致しなければならないとありますが、今度はただし書きで、刑事処分以外の処分が相当な場合には送致しないことができる、こうなっておりますから、そのように御理解いただいていいと思います。
  262. 木島日出夫

    ○木島委員 原則と例外がひっくり返るということでありますから、現行少年法の運用がどうであったかが根本的に非常に大事なことだと思うんです。  そこで、最高裁に聞きます。少年法第二十条は、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは例外として逆送ができるとあります。少年審判による保護処分か刑事処分かを区分けする具体的な考慮要素はどのようなものなのか、現状の運用を教えてください。十六歳以上少年の殺人、傷害致死事件の逆送率などもあわせ答弁いただければ幸いです。
  263. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の十六歳以上の少年の逆送率の関係からまず申し上げますと、少年保護事件のうちの交通関係を除いた、一般事件と呼んでおりますけれども、この逆送率は緩やかに低下している傾向にある。そして、平成六年度以降は〇・六%台で推移している状況にあります。さらに、これを殺人事件について見た場合には、件数が少ないこともありまして、年度によって逆送事件の数字の増減が激しいわけでございますが、最近二十年間において平均いたしますと、三三%程度となっております。また、傷害致死について同じように見てみますと、最近二十年間ではおおむね一三%程度という状況にございます。  どういった要素を考慮しながらこのような判断がされているのかということでございますけれども、まさに事案に応じた個別の判断になるわけでございますが、ごく基本的な視点ということで申し上げますと、まずは非行の重大性、動機、態様、こういった観点がありますし、他方では、少年の資質や生育史、生活態度、生活環境等、非行に至った事情を総合的に判断して処分を決めているというのが実際だろうと承知しているところでございます。
  264. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。非常に幅広い調査を踏まえて、非常に深い分析を加えて現行少年法家庭裁判所によって運用されているという答弁だと思います。  私は、ここに田宮さんと広瀬さんの書かれた「注釈少年法」を持ってきております。刑事処分送りか保護処分か、刑務所か少年院かの判断がどういうメルクマールでされているか、大体今の家庭局長の答弁どおりでありますが、指摘しますと、その際の具体的な考慮要素は、少年の年齢、性格、成熟度、非行歴、環境等、事案の軽重、態様。重さもちゃんと見ているんですね。さらには、送検後の終局裁判における量刑の見通し。もしこの事件を送検して刑事裁判になったときにどのくらいの刑が言い渡されるだろうか、そこまで見ている。対応する処遇との有効性の比較。どっちの方がその少年にとっていいか、有効性の比較。例えば少年院と少年刑務所とどちらがより処遇効果が期待できるか。そして、共犯者、成人、少年の処分との権衡など多岐にわたると。  非常に深い分析、調査を踏まえた上でやはりこの少年法二十条が個別個別に適用されている。そういう結果が、答弁にありましたように、殺人事件については逆送率三三%、傷害致死事件については逆送平均一三%という、私はこれは非常に的確だと思うんです。  もう時間だといいますから最高裁や法務当局に聞きませんが、先ほど提案者杉浦議員から、ある事件をとらえて甘過ぎるという意見もありましたが、甘過ぎやしない。現在、裁判所はここまで深い分析をして、この少年はやはり医療少年院送致が相当だというので医療少年院に送っているわけでありまして、やはりそこの認識をしっかりして物を考えなきゃいかぬというふうに思います。  もう時間だからきょうはこれで終わりますが、沢登俊雄教授、これは少年法、刑事政策の権威です、この方が中公新書で「少年法 基本理念から改正問題まで」を出しまして、こう述べていることを披露して終わります。  「いずれにせよ、少年法の適用年齢をどうすべきかは、少年法の運用実績を考慮して結論が得られる問題なのです。」そして、これまでこの方が述べてきたように、「戦後わが国の成人犯罪は着実に減少の方向を持続していますが、その重要な原因として、犯罪予備軍と目される非行少年に対する教育処遇が功を奏していること、つまり少年法の運用実績が高水準で推移していることを挙げるべきだと考えます。」これを重く受けとめて、物を考えなきゃならぬと思います。  きょうは時間がありませんので、運用の問題、少年院での処遇の状況について聞くことはできませんでしたが、この次は、では日本少年院の運用がどうであるかについて引き続き質問の機会を与えていただきたいということを述べまして、質問を終わらせていただきます。     —————————————
  265. 長勢甚遠

    長勢委員長 この際、本案に対し、佐々木秀典君外三名から、民主党・無所属クラブ提案の修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。平岡秀夫君。     —————————————  少年法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  266. 平岡秀夫

    ○平岡委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。  第一は、検察官への送致を可能とする年齢を十四歳以上とする改正に対する修正であります。  与党三党案では、十四、十五歳の場合と十六歳以上の場合に何らの差を設けないこととなっておりますが、本修正案では、十四、十五歳のいわゆる年少少年については特に可塑性が高いと認められることから、検察官送致を決定できる場合を、罪質が重大で、かつ刑事処分以外の措置によっては矯正の目的を達することが著しく困難であると認められる場合に限定することとしております。また、十四、十五歳は防御能力に極めて乏しいことにかんがみ、家庭裁判所は、検察官送致を決定するには少年に弁護士である付添人を付さなければならないとしております。  第二は、十六歳未満の少年については、少年刑務所にかえて少年院において刑を執行できることとする改正に対する修正であります。  刑事処分を科された少年を矯正を目的とする少年院に収容することは矛盾でもあり、受刑者でない少年院収容者との関係でも種々の問題を生じさせるおそれがあります。本修正案では、十六歳未満の受刑者に対しては、少年刑務所において、所定の作業にかえて必要な教育を授けるものとすることにより、憲法義務教育規定との調和を図っております。  第三は、十六歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を問われる場合は検察官への送致を原則とする、いわゆる原則逆送を導入する改正に対する修正であります。  原則逆送という考えは、教育的措置によって少年を矯正し、もって再犯率を低く抑えるという少年法精神と矛盾し、少年事件について第一次的責任を有する家庭裁判所判断権を制約するものであります。本修正案は、殺人の故意があるという特に凶悪な犯罪の場合に限り、家庭裁判所は、調査の結果、刑事処分以外の措置を相当と認めるときを除き検察官に送致できることとするものであり、家庭裁判所判断権を保持させつつ、検察官送致の範囲を拡大しております。  第四は、事実認定手続に関する改正に対する修正であります。  与党三党案では、現行の少年審判制度に検察官が関与できることとなっておりますが、予断排除原則や厳格な証拠法則といった刑事手続の根本原則を前提としないで検察官の関与を認めてしまえば、少年審判制度は少年にとって著しく不利なものとなり、少年審判の場が、少年を矯正する場から少年を糾弾する場へと変質するおそれがあります。  本修正案は、事実認定を適正に行うため、保護事件の審判に関与した裁判官以外の裁判官によって構成される家庭裁判所による事実認定手続を創設するものであります。この事実認定手続を行う裁判所を事実認定裁判所と呼ぶこととしておりますが、この事実認定裁判所における手続では、検察官が非行事実の立証を行っていくほか、刑事訴訟手続に準じた証拠法則にのっとった手続をとることとした上で、少年法精神にかんがみ、これを非公開としております。さらに、非行事実の有無及び内容について認定する決定は、事実認定手続の開始決定の日から五十日以内にこれをするよう努めなければならないとしております。  この事実認定裁判所による事実認定手続の創設に伴い、与党案における検察官の関与に関する改正規定、裁定合議制度の導入に関する規定、観護措置期間の延長に関する改正規定については削除することとしております。  以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。  委員会における十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  267. 長勢甚遠

    長勢委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  次回は、明二十五日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十三分散会