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永井参考人 四人目の
参考人の
永井よし子と申します。私は、市民そして女性の立場から、今回の
参議院の公選法改正に関する
意見を申し述べたいと思います。
既に私の前に三人の
参考人が
意見を述べました。今回の
改正案についての
問題点は、すべて私も共有したいと思います。ただ、私の申し述べる時間が十分しかございませんので、主に女性の政治参画という点について
意見を申し上げます。
私は、北京JACという市民運動をしているNGOの事務局長として、今日、
意見を申し述べることにいたします。
北京JACというのは、一九九五年、北京で開かれた世界女性
会議におきまして採択された行動綱領を
日本のあらゆる段階の政策に反映させたいという願いで、
全国的なネットワークを組んでおります女性のグループです。この五年間、特に国連を中心に採択されたさまざまな女性の行動に関する政策もきちんと反映させていただきたいと思っております。
北京の行動綱領の十二の重要課題の
一つに、女性の政策決定の場への参画を保障するということがあります。一九八五年に採択された女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約は、
日本の
国会も採択しています。そして、北京で採択された行動綱領も、
日本の了解することとし、つい昨年、男女共同参画
基本法が成立しました。それは、
国会のあらゆる
会派が賛成をしたものです。
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約では、第三条で、「あらゆる分野、特に、政治的、
社会的、経済的及び文化的分野において、女子に対して男子との平等を基礎として」ということを明確にうたっています。そして、第七条では、「自国の政治的及び公的活動における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、」政府は、「政府の政策の策定及び実施に参加する権利並びに政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する権利」を保障すべきということになっています。
一九九五年の世界
会議にとどまらず、本年六月にニューヨークで開かれました二〇〇〇年女性に関する特別総会においても、女性の政策決定の場への参加が、グローバリゼーションの負の側面が非常に拡大している昨今の世界情勢の中で、新たな展開を探る
可能性の
一つとして強く主張されております。
先ほど
志田参考人も触れましたけれども、北欧においては、
政党が積極的にポジティブアクションを取り入れることによって、女性の政策決定の場への参画が進み、
社会のあらゆる場で男女が平等で生活しやすい仕組みが進行してきました。女性が働きやすくなり、
社会保障が充実して、その結果として出生率も上がりました。男女が平等の
社会をつくることがこれからの
社会に必要であるということを的確に示している例であります。
さらに、フランスではパリテという考え方が導入されました。フランスの女性の政治参画はいわば北欧に比べて多少おくれている面がありましたけれども、今回、男性と女性が公平に平等に参画する仕組みが憲法改正により保障されました。
比例名簿を
拘束制にして女性の参画を保障する。この
議論の過程では非
拘束の
名簿の
議論も出ましたけれども、いかに憲法で男女同数の参画を義務づけたとしても、
政党が
候補者の末尾に半数の女性候補を並べたのでは、それは結果としてポジティブアクションにはなりません。名目だけです。
今回の
参議院の
改正案については、特定の個人の名前を書くことによって
政党全体の
得票数を上げるということになりますけれども、非
拘束名簿式がフランスで避けられた
議論の
経過を考えるならば、非
拘束名簿を出すことが女性に対するポジティブアクションを保障しないということの
一つの明らかな例でもあります。
日本の女性の政治参画は決定的におくれています。戦後一九四六年の
衆議院選挙で三十九人の女性議員が誕生いたしました。それは戦後の歴史の中で、八・四%、最高の女性議員の誕生と言われていますが、このときは二名連記です。女性の政治進出を助けるために
選挙制度がいかに大きな影響力を持っているかということのあかしでもあります。
ことしの
衆議院選挙では三十五人の女性議員が誕生し、七・三%の女性議員比率となり、列国
議会同盟のうち八十位に上がりましたが、たった六年前、
日本は百四十九位です。これだけ政治不信、
政党批判が高く
国民の間に沸き上がり、
選挙制度が女性にとって不利なようになったとしても、今回の
衆議院ではこれだけ批判票が集まったのです。
参議院の
選挙法改正については、
国民に周知していない段階での改正を急がれるという問題は今までるる指摘されたことではあります。そのときそのときの
都合で、
都合よく解釈されるということは
国民の一票を投じる権利を侵害するものです。
国民は一票を投じることによって、どのような仕組みの政治を選ぶか、それを
選挙の機会に行使することができます。その
選挙の機会を
国民に保障するシステムが党利党略で決められていいとは全く思いません。
選挙制度は
国民の側が納得できるものにする必要があります。お手盛りは最も避けるべき手法です。
国会議員が
国会議員の身分にかかわる仕組みを
国会だけで、しかも短時日の審議で、住民に周知されることなく、慌ただしく泥縄式につくって通してしまう、これは
国民を最も愚弄したやり方です。
国民を愚弄すると同時に、言論の府である
国会というシステム自体を軽視する、みずから
自分の顔につばを投げかけるようなものだと思います。
参議院は本来どうあるべきか、
参議院の
選挙法が改正されたとき、
村上正邦議員はくしくも言っています。
参議院は良識の府であるべきということをおっしゃっています。それだけに、深い理性と高い道義の政治理念に立って、私心を捨てて、国家百年の大計のもとに、堂々と政策を論じ、院としての高い見識を示すことによって、
国民の政治に対する安心感と信頼を得なければならないと思いますと述べておられます。
今回、
参議院で実際に行われたことはすべてこれの否定形です。真っ向から反対することです。この間まで
参議院で行われたことは、良識の府ではありません。数の暴力による
暴挙です。深い理性と高い道義ならば、本来改めるべきは
比例代表の
順位にお金を使ったことであります。
さらに言うならば、同じ
村上議員が、
参議院は学識
経験者等の有為の人材を立法府に迎えるためにある、しかしながら
現行制度においては、つまり
比例代表を取り入れたときの
議論ですが、もはやテレビ等にのべつ幕なしに出演し、
国民大衆に名の知られた有名人でなければ、有為の人材といえども
当選することはほとんど不可能にすらなっている。
今回、有名人を
政党の
名簿に載せることによって同じ効果をねらおうとしているのが同じ
与党ではないでしょうか。私どもは、一票で信任した議員の票がおすそ分けされて、気に入らない議員の誕生を招くような、そういう
制度、仕組みは全く認めることができません。
参議院が
衆議院のコピーであるとの批判は随分長いこと言われています。今回の改正は、その点についての展望もビジョンも何もありません。今これだけ行き詰まっている。世界的にも国内的にもさまざまな問題を抱えているとき、女性の政治参画を積極的に進めることが
国会の活性化あるいは
社会的な仕組みの改善につながると私は思っています。女性の政治参画の壁を一層高くするような今回の改正には反対です。
以上です。(
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