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2000-10-31 第150回国会 衆議院 厚生委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十月三十一日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 遠藤 武彦君    理事 鴨下 一郎君 理事 坂井 隆憲君    理事 鈴木 俊一君 理事 山口 俊一君    理事 金田 誠一君 理事 釘宮  磐君    理事 桝屋 敬悟君 理事 武山百合子君       岩崎 忠夫君    岩屋  毅君       木村 義雄君    熊代 昭彦君       田村 憲久君    竹下  亘君       西川 京子君    堀之内久男君       三ッ林隆志君    宮澤 洋一君       吉川 貴盛君    吉田 幸弘君       吉野 正芳君    荒井  聰君       家西  悟君    石毛えい子君       古川 元久君    牧  義夫君       三井 辨雄君    水島 広子君       山井 和則君    江田 康幸君       福島  豊君    樋高  剛君       小沢 和秋君    瀬古由起子君       阿部 知子君    中川 智子君       上川 陽子君    増原 義剛君       小池百合子君     …………………………………    厚生政務次官       福島  豊君    参考人    (健康保険組合連合会常務    理事)          対馬 忠明君    参考人    (全国市長会介護保険対策    特別委員会委員長)    (大阪守口市長)    喜多 洋三君    参考人    (日本労働組合連合会政    策グループ長)      村上 忠行君    参考人    (全国保険医団体連合会副    会長)          室生  昇君    参考人    (日本医師会政策担当副会    長)    (日本医師会総合政策研究    機構所長)        糸氏 英吉君    参考人    (医事評論家)      行天 良雄君    参考人    (NPO大阪精神医療人権    センター代表理事)    (弁護士)        里見 和夫君    参考人    (医療法人財団天心堂へつ    ぎ病院理事長)      松本 文六君    厚生委員会専門員     宮武 太郎君     ————————————— 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   上川 陽子君     増原 義剛君 同日  辞任         補欠選任   増原 義剛君     上川 陽子君     ————————————— 十月三十一日  遺伝子組換え作物・食品の安全性審査に関する請願古川元久紹介)(第六〇七号)  同(伊藤英成紹介)(第七〇四号)  同(大島令子紹介)(第七〇五号)  同(松沢成文紹介)(第七〇六号)  高齢者定率一割負担医療費負担限度額引き上げなど患者負担増中止に関する請願今川正美紹介)(第六〇八号)  同(北川れん子紹介)(第六〇九号)  同(中川智子紹介)(第六一〇号)  同(中川智子紹介)(第七一七号)  同(松沢成文紹介)(第七一八号)  ウイルス肝炎の総合的な対策に関する請願家西悟紹介)(第六一一号)  同(古川元久紹介)(第六一二号)  同(三井辨雄君紹介)(第六一三号)  同(荒井聰紹介)(第七一九号)  同(釘宮磐紹介)(第七二〇号)  同(樋高剛紹介)(第七二一号)  小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願赤松正雄紹介)(第六一四号)  同(家西悟紹介)(第六一五号)  同(岩國哲人紹介)(第六一六号)  同(上田清司紹介)(第六一七号)  同(漆原良夫紹介)(第六一八号)  同(鹿野道彦紹介)(第六一九号)  同(海江田万里紹介)(第六二〇号)  同(金子善次郎紹介)(第六二一号)  同(鎌田さゆり紹介)(第六二二号)  同(河上覃雄君紹介)(第六二三号)  同(木下厚紹介)(第六二四号)  同(北川れん子紹介)(第六二五号)  同(小西哲紹介)(第六二六号)  同(小林守紹介)(第六二七号)  同(後藤茂之紹介)(第六二八号)  同(後藤斎紹介)(第六二九号)  同(近藤基彦君紹介)(第六三〇号)  同(佐々木秀典紹介)(第六三一号)  同(佐藤敬夫紹介)(第六三二号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第六三三号)  同(坂口力紹介)(第六三四号)  同(玉置一弥紹介)(第六三五号)  同(中津川博郷紹介)(第六三六号)  同(中村喜四郎紹介)(第六三七号)  同(春名直章紹介)(第六三八号)  同(平野博文紹介)(第六三九号)  同(藤木洋子紹介)(第六四〇号)  同(細田博之紹介)(第六四一号)  同(松本善明紹介)(第六四二号)  同(三井辨雄君紹介)(第六四三号)  同(山井和則紹介)(第六四四号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第七二二号)  同(伊藤英成紹介)(第七二三号)  同(石井郁子紹介)(第七二四号)  同(江田康幸紹介)(第七二五号)  同(小沢和秋紹介)(第七二六号)  同(大幡基夫紹介)(第七二七号)  同(大森猛紹介)(第七二八号)  同(海部俊樹紹介)(第七二九号)  同(木島日出夫紹介)(第七三〇号)  同(釘宮磐紹介)(第七三一号)  同(古賀一成紹介)(第七三二号)  同(児玉健次紹介)(第七三三号)  同(穀田恵二紹介)(第七三四号)  同(佐々木憲昭紹介)(第七三五号)  同(志位和夫紹介)(第七三六号)  同(塩川鉄也紹介)(第七三七号)  同(瀬古由起子紹介)(第七三八号)  同(田端正広紹介)(第七三九号)  同(達増拓也紹介)(第七四〇号)  同(筒井信隆紹介)(第七四一号)  同(徳田虎雄紹介)(第七四二号)  同(中田宏紹介)(第七四三号)  同(中西績介紹介)(第七四四号)  同(中林よし子紹介)(第七四五号)  同(長妻昭紹介)(第七四六号)  同(野田毅紹介)(第七四七号)  同(春名直章紹介)(第七四八号)  同(樋高剛紹介)(第七四九号)  同(不破哲三紹介)(第七五〇号)  同(藤木洋子紹介)(第七五一号)  同(藤村修紹介)(第七五二号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第七五三号)  同(牧野聖修紹介)(第七五四号)  同(松沢成文紹介)(第七五五号)  同(松本善明紹介)(第七五六号)  同(松本剛明君紹介)(第七五七号)  同(矢島恒夫紹介)(第七五八号)  同(山口富男紹介)(第七五九号)  同(吉井英勝紹介)(第七六〇号)  国立ハンセン病療養所の存続と医療福祉の充実に関する請願家西悟紹介)(第六四五号)  同(今野東紹介)(第六四六号)  同(中林よし子紹介)(第六四七号)  同(春名直章紹介)(第六四八号)  同(山口富男紹介)(第六四九号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第七六二号)  同(小沢和秋紹介)(第七六三号)  同(大森猛紹介)(第七六四号)  同(木島日出夫紹介)(第七六五号)  同(児玉健次紹介)(第七六六号)  同(瀬古由起子紹介)(第七六七号)  同(徳田虎雄紹介)(第七六八号)  同(中林よし子紹介)(第七六九号)  同(春名直章紹介)(第七七〇号)  同(藤木洋子紹介)(第七七一号)  同(松本善明紹介)(第七七二号)  同(矢島恒夫紹介)(第七七三号)  同(山口富男紹介)(第七七四号)  てんかん総合対策に関する請願三井辨雄君紹介)(第六五〇号)  高齢者定率一割負担導入など医療費負担引き上げ反対に関する請願(大幡基夫紹介)(第七〇七号)  同(木島日出夫紹介)(第七〇八号)  同(中林よし子紹介)(第七〇九号)  同(春名直章紹介)(第七一〇号)  介護保険改善医療保険改悪計画中止に関する請願小沢和秋紹介)(第七一一号)  同(児玉健次紹介)(第七一二号)  同(志位和夫紹介)(第七一三号)  同(塩川鉄也紹介)(第七一四号)  同(瀬古由起子紹介)(第七一五号)  同(山口富男紹介)(第七一六号)  年金・医療福祉等制度改革に関する請願達増拓也紹介)(第七六一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出第一号)  医療法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより会議開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案及び医療法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人方々から御意見を聴取した後、質疑を行います。  午前は、主に健康保険法等の一部を改正する法律案について、参考人として、健康保険組合連合会常務理事馬忠明君、全国市長会介護保険対策特別委員会委員長大阪守口市長喜多洋三君、日本労働組合連合会政策グループ長村上忠行君、全国保険医団体連合会会長室生昇君、以上の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席いただき、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず対馬参考人にお願い申し上げます。
  3. 対馬忠明

    対馬参考人 対馬でございます。  ちょっと風邪ぎみでございまして、お聞き苦しいところがあるかと思いますけれども、御容赦願いたいというふうに思います。  まず最初に、このような意見陳述機会を与えていただきましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。  健康保険組合連合会常務理事組合として健保連意見を申し上げるということでございますけれども、私は新日本製鉄健康保険組合理事長代理でもございまして、現場の第一線の意見を含めて申し上げることをお許しいただきたいというふうに思います。  法案内容に入る前に、私ども健保組合立場をより御理解いただくために、まず、医療保険財政がいかに待ったなしの状況に置かれているか、また介護保険料徴収納付がいかに変則的な状況にあるか、御説明させていただきたいというふうに思います。  まず最初に、医療保険財政でございますけれども資料を用意してございますのですが、平成十一年度の決算資料ナンバー一をごらんになっていただきたいというふうに思います。健保組合関係者は悪い決算にはならされているわけでございますけれども、なれた私どもにとりましても、この十一年度の決算というものは実に衝撃的なものでございました。過去初めてというものが何と七項目もございました。  一つ目が、経常収支でございます。過去最高の二千三十三億円の赤字でございました。  二つ目が、拠出金です。老健拠出金が大幅に増大しまして、収入に占める割合が初めて三割を超えました。それ以外の拠出金を加えますと、四割を超えました。  三つ目でございますが、保険料収入総額です。初めて減少いたしました。  四つ目保険料率です。組合平均保険料率は次のページに掲載されておりますけれども、これはパーミルですから千分の八十五・一一でございますが、初めて政管料率を上回りました。  五つ目財政が窮迫している組合の数でございます。法定準備金を保有できず、かつ千分の九十以上の高い保険料率を設定している組合が過去最高の数、百六十四組合ということになりました。  六つ目、被保険者の数です。過去最大の減少、これは三ページ目に記載されてございます。  七つ目ですが、標準報酬月額でございます。過去最低の伸びでございました。  ここに至るまでの財政の推移ですけれども、この資料一の最後のページにグラフが載ってございます。ごらんになっておわかりのとおり、ここ数年来、構造的な赤字になってございます。平成九年、十年だけは健保法改正影響でほぼ収支が均衡してございますけれども平成十二年度予算では、老人医療費が一部介護の方に移行するにもかかわらず、三千三百億円という巨額の赤字になってございます。十三年度も引き続いて悪化することが見込まれておりまして、予算が組めないという悲鳴を上げている組合も数多くございます。こういう中で、私ども健保関係者は何とか平成十四年度の抜本改革まではということで、精いっぱい歯を食いしばっているというのが現状の姿でございます。  次に、介護保険でございますけれども、現在、約四割の組合、私ども組合を含めてでございますけれども保険料徴収できない、本来必要な保険料でございますけれども徴収できないという極めて変則的な状況に置かれてございます。  A3一枚の資料でございますけれども、ちょっとわかりにくいのですが、右側の中ほどをごらんいただきたいわけです。この組合の場合、これはパーセンテージでございますが、法定上限が九・五%になっておりますので、本来〇・八%必要なんですけれども、〇・五%しか徴収できない、〇・三%不足するという状況になってございます。  これにつきましては、本来、介護保険導入時の四月に解決が図られるべきものでございましたけれども、七月の法改正にあわせて上乗せして徴収してバランスを図ろう、こういうことでございました。ところが、法案が廃案になったものですから、現在でも〇・五%しか徴収できない。したがいまして、納付猶予申請をしたり、積立金を取り崩して流用をしたり、こういうことで対応しているのが現状の姿でございます。  当組合新日鉄健保組合で申し上げますと、本年度の徴収不足分は、仮に一月の法改正を前提にいたしましても二・七億円、二億七千万円にも上ります。法改正がおくれますと、一カ月ごとに四千五百万円、不足分がかさんでまいります。組合を預かっている立場としては、まことに耐えがたいものがございます。  私どもは、必要な保険料をきちんと徴収してきちんと納付したい、またそういうことで組合機関決定も得ているものであります。変則的な運営を強いられて、また財政にも悪影響を及ぼすこの料率上限をぜひ見直していただきたいというふうに思います。  次に、改正法案についてであります。  私どもとしましては、十分審議を尽くされた上での速やかなる可決成立を切望する次第でございます。  その理由は三点ほどございます。  一点目は、先ほど来申し上げております財政の逼迫であります。この法案は、端的に申し上げまして、財政改善に寄与するものであります。  料率上限は先ほど申し上げましたので割愛させていだたきまして、患者負担高額療養費見直しなどについて申し上げます。  今年度の診療報酬引き上げは実質〇・二%、四百三十億円の医療給付費増をもたらすものでございました。老人患者負担見直しなどによります四百六十億円の引き下げは、この財源対策としての意味合いもあったはずでございます。引き上げは四月の実施患者負担見直しなどはいまだになされておりません。これでは片手落ちではないでしょうか。これ以上延ばすことは許されないと思います。  今回の改正だけで健保組合財政などの問題がすべて解決されるわけではありませんけれども、これにあわせて十三年度の予算措置等も講じていただきまして、何としてでも財政悪化に歯どめをかけたいということでございます。  二点目は、老人医療費の一割定率負担が織り込まれていることであります。月額上限つきでもありますし、複雑でもありますので問題点は含んでおりますけれども、この定率負担は、健保連としては長年にわたって強く主張してきた悲願でもございました。  老人若人負担公平性介護保険との整合性コスト意識向上、こういったさまざまな観点からしましても大きな前進でありまして、抜本改革につながる第一歩として高く評価したいというふうに思います。  三点目は、抜本改革実現のためにも、この目の前の法改正を速やかに行う必要があるということであります。現時点でなし得ることはすべて行うことによりまして、改革基盤を整え、後顧の憂いなく全エネルギーを十四年度抜本改革に向けていくことが、今求められているのではないでしょうか。  日夜にわたる御努力に重ねてのお願いで恐縮でございますけれども法案の速やかな改正実施をぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。  抜本改革は先送りされ続けておりまして、十四年度改革ラストチャンスではないかと思います。これを逃しますと、健保組合を初めとして医療保険制度の崩壊につながります。  十四年度改革に向けてさらなる御尽力をいただきまして、二十一世紀においても盤石の皆保険体制を確立することを心からお願い申し上げまして、陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  4. 遠藤武彦

    遠藤委員長 対馬参考人、どうもありがとうございました。  次に、喜多参考人にお願い申し上げます。
  5. 喜多洋三

    喜多参考人 大阪府の守口市長喜多でございます。  衆議院厚生委員会の皆さんにおかれましては、医療福祉などの分野において日ごろから御尽力いただき、心から敬意を表する次第でございます。また、本日は、市町村国民健康保険事業を預かる立場から意見を申し述べる機会をいただき、深く感謝をいたしております。  さて、このたび、健康保険法等改正案を御審議いただいておりますが、内容については必ずしもすべてに納得いたしているわけではありません。しかし、医療保険制度抜本改革への第一歩として位置づけられる点もございますので、今回の改正に引き続き、早急に大きな第二歩を踏み出していただきたいという思いを込め、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。  改正案についての意見を申し上げる前に、御承知の事項かとは思いますが、いま一度国民健康保険の厳しい状況について申し述べたいと思います。  国民保険の下支えをしている国民健康保険は、制度構造上、退職後の被用者国民健康保険に異動することに加え、近年の少子高齢化産業構造の変化によりまして、高齢者や低所得者割合が極めて高くなっております。この結果、組合健保政管健保等との間に大きな負担格差が生じており、同時に、財政基盤は極めて脆弱になっております。  例えば、老人加入率を見ますと、健保組合の二・九%、政管健保の五・六%に対し、国保は二四・六%に上っています。老人以外の平均年齢におきましても国保は高く、被用者保険との間には十歳程度の開きがあります。  また、所得の面で見ますと、組合健保政管健保では到底考えがたい所得のない世帯も、国保にあっては二割以上をも占めております。世帯年間平均所得につきましても、組合健保の三百八十三万円に対し国保は百七十九万円と、二倍を超える大きな開きがあります。ちなみに、私ども守口市についても、所得のない世帯が二九%あり、他の市町村国保同様、極めて厳しい財政運営を強いられております。  このような構造的な問題に加え、長引く経済の低迷が大きな影を落としておりますが、従来から低所得者が多い国保にあって、失業等による無職世帯の増加や平均所得減少影響は最も深刻であります。例えば、守口市における一世帯当たりの総所得金額は、平成九年度から十一年度にかけて百八十万円から百五十二万円と減少しており、年率では八%の減少となっているのが現実であります。  このような状況で、国保加入者保険料に対する負担感は限界に達して、これ以上負担を求めることが極めて困難になっておりますところへ、今年度から介護保険のいわゆる二号保険料が上乗せされることとされました。全国市町村長は、収納率低下財政影響も非常に懸念をしております。  さらに、老人医療費を中心とする医療費の急増が、財政運営に重くのしかかっています。高齢者医療費若人の五倍となっておりますが、引き続き高い伸びを示しております。これに伴い、国保が拠出する老人保健拠出金も急速に増加しており、守口市の例をとってみましても、国保で集めた保険料のうち、約五割が老健拠出金に充てられております。老健拠出金負担にあえいでいるのは被用者保険だけではなく、国保にとっても深刻な問題となっております。  このように、市町村国保財政状況は一段と危機的な状況になっていることは明らかでありますが、制度を支えるため、各市町村は、国保特別会計に対して多額の繰り入れをせざるを得ない状況に追い込まれております。赤字補てん等のために法定外繰り入れを行っている市町村は、平成十年度で全体の約六割、その総額は三千六十億円に上っており、他の理由による繰り入れも合わせますと、実に七千億円に近い支援になっています。国保は既に自立性を失っていると言っても過言ではありません。もちろん、多くの市町村収納率向上等にさまざまな努力をしているところでありますが、こうした危機的な状況保険者努力を超えたものとなっていることをぜひ御理解いただきたいと思います。  国保のみならず医療保険全体が置かれている厳しい現状を打開し、長期的な安定を図るには、医療保険制度抜本改革なくしては不可能であります。市町村国保を預かる立場から申し上げれば、医療保険制度全般に切り込み、給付負担の公平を基本とするすべての国民を対象とした医療保険制度の一本化を実現すべきであると考えており、あわせて医療提供あり方などの大胆な改革が実現されますと、これまで申し上げたような問題も解決するものと考えます。  さて、今回の改正案について具体的な意見を申し上げたいと思います。  まず、老人保健法関連で、一点目は、老人医療費定率一割負担についてでございます。低所得者対策や高負担対策を講じることにより、サービス利用時の負担定率とすることは、介護保険との整合性など、一定の理念に沿った内容と考えます。この点は、これまでの高齢者医療問題の議論や介護保険制度検討過程で合意が形成されてきていると認識をしております。ただ、医療機関の種類により負担上限設定方法に差を設けるなど、国民にとって非常にわかりにくいものになっております。できれば制度は簡素にという思いはありますが、やむを得ないのであれば、周知についての努力医療機関での明示などを徹底していただきたいと思います。  二点目に、薬剤の一部負担廃止についてでございますが、廃止結論自体に異論を挟むものではございません。薬剤使用適正化を図るという理由導入されたものが、その目的を達したとは言えない状況廃止されることには、大いに疑問を持っております。現行の負担方式を合理的と考えるものではありませんし、試行錯誤することも必要とは思いますが、わずか三年ほど前に実施された制度を適切な評価保険者負担に転嫁される財源についての整理、理念的な裏づけもなく短期間で変更されるのは、今後提起される制度改正案信頼性を失わせることになるのではないかと危惧いたしております。制度改正あり方の面で御一考願いたいと考えております。  次に、国民健康保険法関連でございます。  一点目は、高額療養費見直しについてでございます。  最近の所得階層の分化により、高額所得者と低所得者格差が拡大しているようでございますが、適切な負担能力評価のもと、上位所得者への負担と低所得者への軽減という配慮は当然時宜にかなったものと言えます。今後、その基準については、家計での負担水準を検証しながら改定していくことが肝要と考えます。  二点目は、いわゆる住所地特例についてでございます。  この制度は、病院所在市町村が入院を理由とする転入者への財政負担を軽減するために設けられたものでございますが、これまで市町村側が要望してきた事項でもあるので、基本的には賛成でございます。  しかしながら、国民健康保険での適用拡大、介護保険への拡大により、今後、他市転出者へのサービスを提供していかなければならないケースが増加するものと想定されます。場合によっては、住所地市町村国民健康保険介護保険保険者がいずれも異なることも生じてまいります。住民が受ける各種サービスが、種類によってはそれぞれ異なる市町村から提供されるということは、サービスを受ける側、提供する側にとり、選挙権を通じての意思表示ができないなど、不自然な状況を生むことになります。財政的な配慮は当然としても、保険者あり方市町村行政という面で将来的にはこの制度の再検討が必要ではないかということを指摘しておきたいと思います。  以上、制度改正につきまして意見を申し述べましたが、国民健康保険のみならず、多くの健保組合、政府管掌保険までもが制度維持が困難になる状況に直面しております。抜本改革の必要性についての声が上がり、長い期間議論されてきたにもかかわらず何度も先送りされ、医療保険に携わる者には不信感と焦りが生じています。予定されている平成十四年の改革は必ず目に見える大きな前進がなければならない、さもなくばそのツケは結局、国民に回ってくることになります。高齢化のピークを目前に控えた今、改革は待ったなしの状況である、この点をぜひ直視していただきたいと思います。残された一年余の期間、委員の皆さんを初め関係者の必死の努力をお願いいたしたいと思います。  再度申しますが、抜本改革第一歩として、引き続く第二歩に大きな期待を込めて、今回の改正に賛意を表します。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、村上参考人にお願いを申し上げます。
  7. 村上忠行

    村上参考人 おはようございます。日本労働組合連合会政策グループ長村上でございます。  健康保険法等の一部を改正する法律案に対する意見を述べたいと思います。  私も風邪を引いておりまして、それでなくても悪い声がより悪い声になっております。御容赦をいただきたいと思います。  まず、医療医療保険制度抜本改革についてでございます。  健康保険制度は、かつて三K赤字の一つに数えられましたように、赤字を生み出す構造的欠陥が指摘されながら、政府は抜本的な制度改革を先送りしてきました。そのため、膨張する医療費を被保険者、患者の負担増で埋め合わせするという悪循環を繰り返してまいりました。この悪循環を断ち切ることは、高齢化の進展と老人医療費の膨張から、いよいよ重大な課題となっておりまして、五年前から関係審議会で議論が重ねられてきました。  一九九七年九月の健康保険法等改正で、患者、被保険者負担が大幅に引き上げられました。このときの国会でも、医療医療保険制度抜本改革を求める意見が全政党から出されました。当時の与党三党、自民、社民、新党さきがけは、法施行に先立つ八月二十九日に「二十一世紀の国民医療 〜良質な医療と皆保険制度確保への指針〜」という改革プログラムを公表し、「抜本改革実施平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施する。」ことを明らかにしました。当時の与党三党は、二〇〇〇年度抜本改革国民に公約したのです。  また、同年秋の介護保険法制定時に、政府は介護保険法施行の二〇〇〇年度に抜本改革を行うことを明言いたしました。さらに、翌九八年の通常国会では、国保法等の一部改正審議で、抜本改革を二〇〇〇年度に行う旨の附則修正が行われました。  以上のように、抜本改革二〇〇〇年度実施は政府の公約であり、国会の意思でもあるはずです。しかし、それ以降、これらの公約すべてがほごにされてきたのであります。  そして今回、またもや改革なき負担増を行おうとしております。私たちは、これまで政府に三回も約束を破られたと思っております。抜本改革を先送りして負担増を中心とする今回の改正は、到底容認できるものではありません。大幅な法案修正を求めたいと思います。  以上を前提といたしまして、具体的に意見を述べていきたいと思います。  まず、七十歳以上のお年寄りに、薬剤一部負担廃止し、定率一割負担を求める老人に係る外来の一部負担金の見直しについてであります。  現在の老人保健制度は根本的に行き詰まっており、それにかわる新たな制度が必要なことは各方面から指摘されています。しかし、今回の改正案にはそうした積極的な改革内容は全く見当たりません。  薬剤一部負担は一九九七年に導入され、薬剤数の減少など一定の効果があらわれているにもかかわらず、みずから決めた制度を二年もたたないうちに老人のみ実質的に廃止することは、全く納得できません。そして、今回の改正は、定率一割の導入に加えて、医療機関が二百床未満か二百床以上かで異なる上限額、診療所の定率、定額選択、院内処方か院外処方かによって同じ医療費でも自己負担額が変わるという大変複雑なものになっています。お年寄りは何を見て判断すればいいのでしょう。医療機関にとっても、煩雑で大変な事務負担となるのではないでしょうか。  厚生委員会におかれまして、政府は、診療所に定額を残すことは複雑な面も否めない、複雑でわかりにくい面もあると答弁しています。政府みずからが複雑でわかりにくいことを認めているのです。このような不透明な仕組みをわざわざ導入するのは、薬剤一部負担廃止によって不足する医療費を埋め合わせるための単なる財政対策でしかないからであります。  こうした小手先の制度いじりではなく、老人保健制度にかわる新たな高齢者医療制度の創設へ全力を挙げることが先決であり、この項の撤回を求めるものであります。  次に、高額療養費に係る自己負担限度額の見直しについてであります。見直しは、標準報酬月額五十六万円以上の上位所得者について、限度額を十二万一千八百円に大幅に引き上げるとともに、一般、上位所得者ともそれぞれの限度額を超えた医療費の一%を上乗せするという内容になっています。  これは、自己負担額を軽減するために導入された高額療養費制度の根幹にかかわる重大な変更であります。この制度は、重い病気にかかったときにこそ安心して医療が受けられる安心の給付制度だったはずであります。  ところが、今回、政府は、厚生委員会で、これまでの患者負担が家計に与える影響に加えて、患者が受けた医療サービスの費用も考慮して定めることとしたと説明し、医療を受ける人と受けない人との均衡を図る、コスト意識を喚起すると答弁しております。まるで、医療費は患者自身が決定しているかのようでございます。心ならずも重病にかかって医療費がかさむ患者に、コスト意識を持てということなのでしょうか。  上位所得者とは、年収ベースで九百万円以上程度と言われておりますけれども、この層の多くは住宅ローンや教育費が重く、かつ現下の経済情勢で雇用不安、生活不安にさらされている中高年でございます。この層に、今度は病気になったときの負担を重くし、さらに生活不安を強めることになりかねません。加えて、上乗せの一%が今後引き上げられないかという不安があります。  改正内容は、保険料所得に応じて、給付は公平にとする医療保険の基本理念を揺るがすものであります。国民保険制度を維持するためにもこうしたことは避けるべきであり、特に一%は何をおいても撤回するよう強く求めたいと思います。  第三に、保険料率の設定に係る上限の見直しについてであります。介護保険料は、健康保険料と合算して、上限率を超えない範囲で徴収することになっています。今回の改正で、上限率の適用を健康保険料のみとし、介護保険料を別建てとすることは、実質的な保険料引き上げと言わざるを得ません。  介護保険法制定時、政府は、医療費で賄っていた介護に係る費用、主に社会的入院は介護保険に移るので、医療費減少し健康保険料は下がる、二〇〇〇年度までに抜本改革を行うため、介護保険料と健康保険料を合算しても法定上限率を超えないと説明しました。ところが、社会的入院が当初見込みよりも減少せず、抜本改革は行われていないため、両保険料を合算すると、多くの保険者法定上限率を超える見通しとなってきました。しかし、この要因は老人医療費の膨張による老健拠出金の増加にあり、見通しの甘さと抜本改革を先送りしてきた政府の責任であります。  介護保険法は、本年の四月に施行されたばかりです。別建てにするのであれば、抜本改革時か介護保険見直し時期に検討すべきであって、今回行うべきではありません。当面、現行三割の老人医療費の公費負担引き上げて、保険者、被保険者負担増を避けることこそ、政府として責任ある態度だと考えます。ぜひとも撤回していただきたいわけであります。  第四は、医療保険制度等の抜本改革に関する事項についてであります。改正案には、医療保険制度等の抜本改革の時期がどこにも明記されておりません。抜本改革を二〇〇二年度に必ず実行する規定を追加し、かつ、その実行を明確に約束するよう強く要望いたします。公約を破り、改革を先送りすることは、医療保険制度が維持できなくなり、国民保険制度の崩壊を招くだけです。今度こそ、ぜひとも政治の決断で、抜本改革を二〇〇二年度に実行する強い意思を国民に示すべきであります。  私の意見陳述は、健康保険法等の一部改正に対するものでございますが、最後に、医療法等の一部改正について触れさせていただきます。  医療提供体制は、医療資源を有効かつ効率的に配分し、良質な医療サービスを国民に提供するという目的から、医療制度の基礎となる重要な課題であります。改正案は、審議会の中で、後退に後退を重ね、改革とは名ばかりのものとなったというのが私どもの認識でございます。国会の場においてぜひとも修正していただきますよう要望いたします。  第一は、看護基準についてであります。今回、四対一から三対一に引き上げられようとしておりますけれども、二対一、最低でも二・五対一とすべきであります。  第二は、カルテ開示の法制化であります。国民、患者が自分の体のことを知りたいという認識が高まっています。一方、多発する医療事故が国民医療に対する不安と不信を強めています。患者の知る権利、医療への信頼確保という観点からも、本人申請によるカルテ開示の法制化を図ることは当然であると考えております。  第三は、広告規制の緩和でございます。患者が医師や医療機関を選択するとき、口コミ情報に頼っているのが現状であります。虚偽広告、誇大広告などを除き、原則自由にすべきと考えます。  以上、申し上げまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  8. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、室生参考人にお願いを申し上げます。
  9. 室生昇

    室生参考人 全国保険医団体連合会会長室生昇でございます。名古屋市内で三百十三床の一般病床病院と六十床の療養型病床病院、診療所を開設しております。  本日は、健康保険法等の一部改正案医療法改正案について、意見を述べさせていただきます。  さて、私ども全国保険医団体連合会といたしましては、両法案に対して反対の立場をとっております。特に患者負担の問題につきましては、高齢者だけでなく、健康保険本人も含めて、これ以上患者負担をふやすことには反対でございます。  その理由をすべてお話しする時間がございませんので、採決前にこのことだけは御検討いただきたいという問題に絞ってお話しさせていただきます。  配付させていただいた資料ごらんいただきたいと思います。まず、今回の法改正によって、資料一の右側の欄に示したように、一・三から一・五倍に高齢者医療費負担がふえることは間違いございません。高齢者は一律に経済的弱者ではないのでこの程度の負担にはたえられるという議論もありますが、一律に経済的に豊かなわけでもございません。  資料二は、ことしの厚生白書からとった図でございます。高齢者の方の所得がどの程度あるかを見たものでございますが、ごらんのように、一一・八%は所得なし、八十万円未満の所得の方が二七・一%、約四割が年間所得八十万円未満及び収入なしということでございます。また、高齢者世帯の年間所得は、その四割が二百万円未満でございます。  今回の改正案は、こうした低所得高齢者に配慮していると言えるでしょうか。これまでの審議では、入院について、市町村民税非課税世帯高齢者は、負担上限を現行の三万五千四百円から二万四千六百円に引き下げたことが手厚い配慮とされているようでございますが、これまでは一日千二百円で済んでいます。手術などで短期間の入院をした場合は、負担は二倍、三倍となります。詳しくは資料一の白内障の例をごらんください。  また、外来については、低所得層の救済措置は全くありません。これらの措置も、実効性のある対策を御検討いただきたいと思います。  もう一つは、今回の制度改定の理由として、老人医療費が高騰して、政管健保組合健保財政を圧迫しているということが挙げられております。改革は待ったなしで、とりあえずは高齢者にも応分の負担をということでございますが、本当に今すぐでなければならないのでしょうか。  介護保険実施によって、一定額の老人医療費がそちらに移行しております。本来、本年度予算では、老人医療費は前年度より一兆三千億円少ない十兆一千億円と見込まれています。一方、介護保険の方は、十月から六十五歳以上の保険料徴収が始まって、年間で七千億円以上の保険料負担が新たに高齢者に課せられております。これらの結果、医療介護を含めて財政負担がどうなるのか、政管健保組合健保負担がどうなるのか、介護保険実施による財政影響をしっかり見定めてから高齢者の自己負担問題を検討しても遅くはないと思います。  次に、病院経営者として、医療法改正について意見を申し述べます。  まず、病床区分の見直しと一般病床の看護配置基準を四対一から三対一に引き上げる問題でございます。これについては、二つの問題があります。  第一は、現在、三対一未満の病院が約一千病院ございます。その理由について実態を把握し、国会での審議が必要だと思います。特に、五年間の特例措置の対象外となる三十二病院については、法改正によって地域における入院医療の確保に支障が起きないのか、十分な検討が必要でございます。そうした実情把握と検討を抜きにして制度改定がなされるとするなら、病床削減のためだけの改定と言わざるを得ません。  第二は、看護体制の改善をどう進めるかという問題でございます。日本の看護婦の配置数が先進国の中でも最低ランクにあることは、これまでも各方面から指摘されてきました。現在、社会問題ともなっている医療事故の背景に、看護婦の過密労働や人手不足があることは御承知のとおりでございます。まともな夜勤体制を含めて、看護の質を確保するためには、一・五対一以上の看護婦配置が必要ですが、診療報酬上での評価は二対一まででございます。それ以上の配置をとった場合は、医療機関の持ち出しとなっております。  さらに、ことし四月の診療報酬改定では、平均在院日数が二十九日以上の病棟については、これまであった二対一、二・五対一の診療報酬が廃止され、三対一以下となりました。  さらに、こうした一般病床に九十日を超えて高齢者が入院していると、入院費が削減されるだけでなく、一部の例外を除いて、どんな治療をしても一定額しか支払われないという定額制が押しつけられました。  療養病床の方はどうかといいますと、今回の改正案では最低基準が六対一となっていますが、診療報酬では最高ランクが五対一です。これ以上の看護婦配置は収入保障がありません。しかし、長期入院患者であっても、看護の必要度の高い場合は当然あるわけでありまして、現場では大きな矛盾を抱えております。看護婦の増員は、患者にとっても、医療従事者にとっても切実な願いですが、今回の医療法改正によって、以上指摘しました問題が改善されるとは思われません。  最後に、今回の医療法改正の中に、従来の地域医療計画における必要病床の名称を基準病床に改め、その必要数の算定基準を変えることが含まれております。算定方式については厚生省令で定めるとされておりますが、その内容については厚生委員会でもほとんど議論されていないように思います。  従来、全国を五つのブロックに分けて基準を決めていたものを全国一律の基準にすることによって、全国平均より入院率の高い地域の病床規制を強める、さらに、すべての地域で一〇%程度の病床を削減するという内容でございます。  御承知のように、地域によっては共働きが多く、その家族の在宅療養が困難なところもございますし、気候や交通の便の違いがあって、同じ年齢層でも入院率に違いがあるのは当然のことであります。それを、そうした地域差は認めないというのはいかがなものでございましょうか。  どちらにいたしましても、具体的に算定方式がどう変わるのか、その内容について、国会での審議抜きで厚生省にお任せということでは困ります。しっかりとした審議と、どのようになるのか国民の前に明らかにすることを求めたいと思います。  今回提出されている健康保険法、医療改正法案は、これらと表裏一体となっている診療報酬改定とによって、高齢者や病人の負担増、入院にしろ、在宅医療にしろ、重症者の治療に手間取れば病院や医院の持ち出しになる。規制が強化されて地域から病床が消えるなど、抜本改革の名のもとに、病める人をいやす場への愛とぬくもりの政策がますますなくなっていくように思われます。一方で、経営不振の不良銀行やデパートに多額の税金が投入されています。  人権を尊重し、人の命を大切にする施策を希望して、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  10. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮澤洋一君。
  12. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 自由民主党の宮澤洋一でございます。  きょうは、参考人の皆様、大変お忙しい中を御出席していただきました。また、貴重な御意見を披露していただきまして、ありがとうございました。大変感謝をしております。  私自身、大蔵省に二十年ほどおりましたので財政は知っておりましたけれども、厚生という関係になりますと、正直言って大変素人でございます。委員になって三カ月足らずでございますけれども委員会出席しておりまして、例えば今回の法改正につきましても、委員の方が熱心に、まさに日本の医療をどうやってよくしていくかということで発言され、大変勉強になったと感じております。山井委員とか阿部委員、まさに御専門の経験からいろいろな話をされたのが大変に参考になったなという感じがいたします。  一方で、日本の医療ということを考えますと、私は、自分自身、アメリカに数年住んだことがございますし、またヨーロッパに住んだ友人の話などを聞いておりますと、日本の医療というのは正直言って今の状況はなかなかいいじゃないかという気が大変しております。国民がみんな皆保険のもとで医療機関に簡単にアクセスができる、また相当レベルの医療を受けることができるということは、大変今の状況はすばらしいな、何とかこの状況を守っていかなければいけない。これは恐らくこの委員会の皆様、また、きょうの参考人の皆様もそういう感じから発言をされているんだろうと思っております。  ただ一方で、理想的な医療といいましても、我々は打ち出の小づちを持っているわけではない。まさに、医療費負担をだれがするのか、国がどの程度するのか、保険者がどの程度するのか、また患者がどの程度するのか。やはり、医療費を将来的に、伸びを抑制していくということをしながら、だれがどういうふうに負担をしていくかということを徹底的に考えていかなければいけない。  そういった意味で、抜本改革がまさに私自身必要だと思いますし、きょうの参考人の方も、対馬参考人喜多参考人また村上参考人も、平成十四年度の抜本改革に大きな期待をする、こういうお話をされ、津島大臣もまさにそれをやりたいということを委員会でもおっしゃっていた。何とか抜本改革をどうしてもやらなければいけない。ただ一方で、それを実は待っているわけには恐らくいかないし、できることからやっていかなければいけない。そういった意味で今回、健康保険法の改正案というものが提案されたわけだし、私自身もどうしてもやっていかなければいけないと思っております。  その中で、まず対馬参考人に伺いたいのですけれども、まさに健保組合は大変な財政状況にある。各党におかれましては、この改正案に反対する党もいらっしゃるわけですが、もしこの改正が今回おくれるとか、さらにできないとかいったことになりますと、健保組合運営上、大変な問題が生じるのだと思います。その辺について、ひとつ詳しくお話を聞かせていただきたいと思います。
  13. 対馬忠明

    対馬参考人 ただいま、おくれたり、できなかった場合どうかということでございますけれども、まず金額的なことを申し上げますと、健保組合全体として、医療費で年度で百七十億円ぐらいの負担増になります。新日鉄健保としては数千万円の負担増につながるということでございます。それから、いわゆる料率の上限問題がございまして、これが年間七百二十億円程度、新日鉄健保でいいますと五・四億円、五億四千万円ですね、これだけかさむということになります。  医療費全体がこの程度だったら何とかなるじゃないかということをお考えになる方もおられるかもしれませんけれども、ベースとして、平成十一年度の決算は二千三十三億円の大赤字ですけれども、十二年度も、三千三百億円の予算ですけれども、大赤字なわけですね。そこにこれらがかさんでくるということですから、とても対応のしようがないということだと思います。  それから、料率の上限との関係ですけれども、先ほども申し上げましたけれども、新日鉄健保で既に二億七千万円の、言ってみれば借財を抱えているわけですね。それがさらに、おくれる、廃止するということであれば、年度で五億四千万円ということがオンされてくるわけですね、乗っかかってくる、こういうことになります。そうしますと、せっかく今歩み出したばかりの介護保険が、二号保険料徴収のところから、根底から崩れる、こういったおそれなしとしないというふうに思います。  いずれにいたしましても、この法案がおくれたり、できないということはぜひないように、お願いいたしたいということでございます。
  14. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 ありがとうございました。  今、大変な赤字という話を承りました。また、私自身、例えば健康保険組合を解散して政管健保等に移行するというようなことがいろいろあると伺っております。国費ということでいえば、政管健保に移った途端に一三%とか一六・四%というものがプラスアルファになる。そういった意味で、民間のまさに健康保険組合というものにぜひ頑張っていただきたいと思っております。  その中で、例えばことしの三月でございますか、二〇〇〇年度末に、もうとてもやっていけないということでやめられた健康保険組合が幾つかある。十四、五ということを聞きました。それでよろしいでしょうか。
  15. 対馬忠明

    対馬参考人 ことし既に十数健保組合が解散しておりまして、これまでは、親会社の統合なり、親会社といいますか、事業主が解散したりした場合に、健保組合もそれに伴って解散するということでございましたけれども、今回非常に新たな事態といいますか困った事態、窮迫した事態は、上場会社の、会社としては存続しているのですけれども健保組合がもうお金が回らなくなってきたということで解散した組合が二組合もあるというような、本当に逼迫した状況になっているということでございます。
  16. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 どうもありがとうございました。  それでは、村上参考人に伺いたいのですけれども、今お話を承っておりまして、二〇〇二年に必ず抜本改革をというお話があり、まさに私自身もそうだなと思っております。  ただ、一方で、今回の健保法の改正につきましては、ともかくいろいろ約束をしてきた話ができていないんだから、抜本改革ができるまでは何もしない方がいい、するべきではないというお話だったと思うのでございますけれども、今、健保組合の窮状、また、国保についても先ほど喜多参考人からいろいろな状況のお話がありましたけれども、ここ一、二年まさに何もしないで二〇〇二年を待つ、そういうことなのか、ほかに何か方法がないのか、御意見を伺わせていただきたいと思います。
  17. 村上忠行

    村上参考人 私がまず申し上げたいことは、できることからやっていく、何とか財政のつじつまを合わせる、そういうことでずっと来過ぎたと思っているんですね。  例えば一九九七年の改正というのでしょうか、そこで本人負担が一割から二割へ上がりました、それから薬剤別途負担ができました。これで大体二兆円程度の負担増だったと思います。その当時の、橋本内閣でございましたけれども、ほかの措置、消費税引き上げ等々もあって、そのときの負担増というものが今日の経済状態を招いたと言われております。その大きなものとして、いつかテレビを見ておりましたら橋本元総理が言われていましたけれども医療費アップの、負担増の、ある意味でその部分を見込んでいなかった、その部分が見込んだより経済にダメージを与えたということをテレビでおっしゃったのを見たことがございます。その意味で、我々は結局、抜本改革できないから、とにかく予算、つじつまを合わせるから、負担増だ、保険料引き上げだということでつき合ってきたわけですね。  そのデッドエンドが私は二〇〇〇年度だったと思っているんです。例えば、ことしから介護保険導入されましたけれども、これも我々としては二兆円以上の負担増なんですね。それは甘んじて私どもは認めました。これは、介護の現場が大変困難な状況にある、一刻も早くこれを何とかしなきゃいかぬということで、この不況の中で私どもの実質賃金は三年連続マイナスになっておりますけれども、その中でもやはり介護保険負担はせざるを得ないということで導入に我々は賛成したわけです。我々は十分これまでそういうことでおつき合いしてきたんですね。  しかし、つき合いがよ過ぎると、どうももう一方の方が動いてくれない。我々としてはもうこれ以上我慢できない。冒頭申し上げましたけれども、かつては医療費は三K赤字の代表だったんですね。国鉄、健保それから米ということで、やはりお金がなくならないと、どうも政治が動いてくれないんじゃないか、それぐらいの思い詰めた気持ちでおるということをまず申し上げたいわけでございます。  それまでの間は、何とか財政でつないでもらえばいいと思っています。ほかにもいろいろな財政出動をしておるわけでございますから、この問題に財政が出ていってはいかぬということはないわけです。そのことによって抜本改革が早まるならば、私はその方がいいのじゃないかと。この四年間の推移を見ておりまして、とてもじゃないですけれども、我々は負担増を両面から、保険料アップとかいうことから強いられてきた、のんできました、もう我慢できませんということでございます。  以上でございます。
  18. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 お話はわかった一方で、財政というのも決して今楽な状況ではない、少しでもこれから国債を増発するということになると、本当に国債の金利がはね上がってとんでもないことになるという状況もある中で、なかなか財政というわけにいかないのではないかなという気が私はいたします。  時間が最後になってまいりましたので、喜多参考人に一つ伺いますけれども国保の方も平成十年度で法定外繰り入れが三千六十億、また全体で七千億近い支援をされているという本当にぎりぎりのところに来られている。その中で保険料徴収というので大変努力されているというお話がありましたけれども、まさに具体的に保険料徴収で本当に御苦労されていると思うので、その辺の実情をひとつ最後に教えていただきたいと思います。
  19. 喜多洋三

    喜多参考人 御質問にお答えいたしたいと思います。  御承知のことでございますが、ほかの医療保険に入れない人が国保の加入者ということになるわけでございます。一部の自営業以外は、病弱等で就業できない方、高齢で退職した方、無職の方、そこにさらに近年加わっておりますのは、不況でリストラされた方々国保の方においでになるということでございます。  勤め人の方は給料から支払うわけでありますが、国保は前年の収入を目安に保険料を掛けるということになっておりますので、掛ける時点では収入があるということにはならないわけであります。リストラをされた方は当然減免をせざるを得ないというのが実情でございます。減免をしようとしても、修学中の子供がいればどうしても保険料支払いが後回しになるという現実がございまして、退学せいというようなことにはならない、そういうことは人情として忍びないという事情も出てくるわけであります。  市町村の収納対策は、強権的手段よりも、むしろ可能な限り面談で説得に努めておるのが現状でございまして、毎月の夜間の催告、休日の戸別訪問など、人件費を考えると、公費で補てんする方が安上がりではないかと思うこともあるんですが、手間暇をかけて、やはりみずから払っていただくという観点から、そういう仕事をしておるわけでありますが、現実はなかなか効果が出ておらないわけであります。あすからの安心もよいわけでありますが、きょうの食費の方が大事だと言われると、返す言葉もないということ、担当者からも何回となく聞かされております。  現実に区分は非常に難しゅうございますが、悪質なケースで払わないという人もあるわけでございます。これは毅然とした対応をするわけでございますが、徴収をちゅうちょするような先ほど申し上げた事情もございますので、この辺もひとつ今後の政策の中で反映していただくようにぜひともお願いをしておきたいと思います。  それから、この際お願いをしたいんですが、今回の法改正で健康保険側からもいわゆる税の資料を請求する根拠が条文で出ております。介護保険にも当然あるわけでありますけれども、提供する側の、税側の方で地方税法等に提供を許す規定がございません。もらう方は規定がありますが、出す方がありませんので、介護保険実施にも現場では相当混乱をいたしております。今後とも、こういうこともひとつしんしゃくをして、よりよい方向に進めていただくようにお願いを申し上げて、答弁とさせていただきます。
  20. 宮澤洋一

    ○宮澤(洋)委員 どうも大変ありがとうございました。  時間も参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。
  21. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、釘宮磐君。
  22. 釘宮磐

    釘宮委員 参考人の皆さんには、大変お忙しい中を本日は御出席いただきまして、貴重な御意見をちょうだいしました。改めてお礼を申し上げたいと思います。  民主党の釘宮磐でございます。  それでは、参考人の皆さん方に質問をさせていただきたいと思いますが、今国会の中で、医療保険法、大変な大きな問題として私は位置づけております。この委員会の審議においてもこれまでに約二十時間近く議論をしてまいりましたけれども、正直申し上げて、どうも議論がかみ合わない、そんな感がしてなりません。  とりわけ平成九年の改正法の国会において、与党は、当時は小泉厚生大臣だったわけですけれども、とにかく抜本改革をやらなければ二十一世紀の医療保険制度は崩壊してしまうんだ、したがって、何が何でもやるんだ、そういう議論を実は九年においてもやったわけであります。その際には、やはり今と同じような参考人質疑の中で、一方では、保険財政がこのままでは破綻してしまう、だからとにかく、とりあえずこの保険財政を乗り切るんだという議論と、一方で、そんなことをやっていたのではいつまでたっても同じではないか、今本当に血を流す思い抜本改革をやらなきゃいけない、そういう議論が同じように行われた。私が津島厚生大臣に、私は今タイムスリップしたような思いだと申し上げたときに、大臣も全く同じだというような答弁をしておりました。  そういう意味で、同じ議論がここで繰り返されているのですが、二〇〇二年、政府側の答弁で、抜本改革実施するというふうに言っていますけれども、今回は附則にもそれが明記されていない状況にあります。私は、あえてきょうは、対馬参考人喜多参考人村上参考人にお伺いをしたいと思うのですけれども抜本改革が何ゆえできないのか、その阻害原因はどこにあるとお思いなのか、その点についてお三人の方にお伺いをしたいと思います。  それでは、村上さんからお願いします。
  23. 村上忠行

    村上参考人 阻害要因と言われましても、私もよくわからないところがあるのですが、例えばこれまでの経過をたどってみますと、抜本改革のために、厚生省が医療福祉審議会の中で制度企画部会というものを開催いたしました。そこで抜本改革議論を進めてきております。  その中で、一番初めにまとまったのが薬剤の問題でございまして、日本型参照価格制度導入という問題がまとまりまして、答申が出されまして、それで日本型参照価格制度に移行するかと思いましたけれども、与党の反対でこれが物の見事につぶれてしまいました。制度企画部会のメンバーに聞きますと、結局、我々がいろいろな形で議論をし、妥協もし、何とかまとめた案がある意味で政治の場で一遍に握りつぶされてしまう、何のために一年もこの問題について議論してきたんだろうという話をその委員から聞いた覚えがございます。  また、私が所属しております医療福祉審議会の運営部会のことしの、今回かかっております法案の諮問に対します委員会としての答申書の冒頭に書いてございますけれども、   かねてより医療保険制度抜本改革平成十二年度に実施することとされてきたにもかかわらず、医療保険制度改革の全体像は不透明なままである。そのため、急速な高齢化の進展に伴う医療費の高騰に対する有効な対応がなされておらず、今回の諮問案は当面の財政対策に終わっている。厚生省は抜本改革について早急に検討を進め、責任を持って可及的速やかにその実現を図るべきである。 というのがいわゆる答申書の第一項目めでございます。  だから、ある意味で阻害要因というのは、いろいろな厚生省の答弁を読みますと、利害当事者がおられて、利害当事者のすり合わせがなかなかできないということをおっしゃっておりますけれども、私は、それをすり合わせをしてまとめていくのが行政の責任であり、また行政がまとめ切れなければ、それをまとめていくのが政治の責任だと思っております。そこら辺のところが有効に機能していないからではないかというふうに推察しておるわけでございます。  以上でございます。
  24. 釘宮磐

    釘宮委員 同じく、対馬参考人にお願いします。
  25. 対馬忠明

    対馬参考人 三年前、平成九年ですけれども、私も参議院の方で健康保険法の改正問題で同じような議論をした記憶がございます。そういう意味では、確かにタイムスリップしたといったところがあるのかなと思いながら拝聴してきたところでございました。  何ゆえにというのは非常に難しいと思うのですね。医療につきまして、もしくは医療保険制度につきましては、世界各国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、あらゆるところで、いわゆる抜本改革というかどうかは別にして、かなりの改革議論をやっているわけですね。アメリカでも、大統領選挙の争点の一つがメディケア、高齢者医療制度をどうするかというのが主な争点になっているぐらい、それだけ一つには根が深いといいますか難しい問題なのかなという感じはいたします。  それともう一点は、いわゆる抜本改革というのは現状打破、言ってみますと、既得権の打破だと思うのですね。痛みを伴う、こういうことになるわけですね。そうした場合に、どうしても現状を変えたくない、抜本改革という言葉自体は非常にいいわけで、皆さん賛成だと言われますが、個別具体論になってきますと、必ず痛みを伴ってくる、利害が伴ってくる。そこが、関係団体等は当然立場も違いますし、いろいろ意見も異なってくるということが大きな原因ではないかということ、先ほど村上参考人も言われましたけれども、そのあたりをきっちり行っていっていただけるのが行政であり、また政治ではないのかなというふうに私は思うところでございます。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  26. 喜多洋三

    喜多参考人 阻害の要因というのは私自身もよくわかりませんが、むしろ要因というよりも推進力が欠如しているのじゃないかと思います。より具体的に申し上げれば、保険の実態の認識の欠如、それから政治的決断、そして、どなたがリーダーシップをとられるかわかりませんが、リーダーシップの欠如、これらがなかなか進まない大きな原因ではなかろうか、このように思います。
  27. 釘宮磐

    釘宮委員 今お三人の参考人の御意見を聞きまして、皆さん同じように、この抜本改革は待ったなしだ、抜本改革をしなければ制度そのものが崩壊を招くというような御意見だったのですが、この抜本改革がどうしてこれまでできなかったのか、その原因ということでお聞きしますと、皆さんから明確な答えが返ってこない。私はここが問題だと思うのですね。ですから、もう少し皆さん本音の議論をぜひしていただきたいなというふうに思う。  これは先ほど村上参考人の中にもありましたけれども、そこにやはり利害がそれぞれあるわけでありまして、おれのところだけは絶対に改革はお断りだということを言い続ければ、いつまでたってもできない。ましてや、それに政治が加担をしてしまったら、いつまでたってもできない。ですから、ここでこういう議論をしていても、本当に皆さん方が、やはり本音のところで私は意見を闘わせていただきたいなというふうに思います。  次に、村上参考人にお願いしたいと思うのですが、今回の医療費の増大の中で、これから二十一世紀の医療制度をどう確保していくかということの、最大の要因はやはり何といっても老人医療費の膨張にあるというふうに思うのですね。ですから、ここにある程度の抑制が行われていかない限り、負担というのはますますふえていくわけであります。  したがいまして、老人医療費を今後どのように抑制をしていくというふうにお考えになるか、要するに、老人医療費の抑制策というものについて、何か御意見がありましたら、お願いをしたいと思います。
  28. 村上忠行

    村上参考人 お答えいたします。  先ほどから話が出ていますように、今の保険制度が立ち行かなくなる、その最大の問題は老人医療費の高騰にあると思います。いずれ保険料の半分が老健拠出金に食われるというのは数年後にあるのだろうと思いますし、そうなりますと、保険というものが成り立たなくなる、こういうふうに思っております。  私は、今老人方々医療費を何が何でも抑制しろということではなく、うまくいっていない点をどう解決するかということに目をとめなければいけない。  といいますのは、若人の人たちの現役世代に比べて、老人一人当たりの医療費は五倍かかっております。この五倍かかっている要因というのは、一口に言いますと、受診率が高いとか入院期間が長い、こういうお話がございます。私は、必要な医療老人方々にもこれからもずっと提供し続けなければいかぬと思いますけれども、なぜそれが五倍かかるのか、この辺の原因の解析というのでしょうか要因解析というのでしょうか、そこを徹底的にやらなければならない。  例えば、ヨーロッパ諸国では現役世代の大体三倍程度でございますね。この五倍かかる構図のままでほっておけば、どんな保険制度を組んでも立ち行かないことは明らかでございまして、ここをどう抑制できるのか。必要な医療を供給しながらその五倍問題をどう解決し、ヨーロッパ並みにできれば、破綻に至らないで老人方々も適切な医療を受けながらやっていけるのではないか、私はこう思っております。  特に日本の高齢者方々が、外国、特にヨーロッパの方々に比べて非常に体が弱いとか病気がちであるということはないと思うのですね。それぞれ健康に生きている方もたくさんおられるわけでございます。ここを徹底的に解明して、なぜそういうことになっているのか、その要因解析の上で診療報酬体系を抜本的に変えていく、そのことが必要なのだろうと思っています。診療報酬体系の抜本改革ができなければ、これはだめだろう。  その抜本改革の方をヨーロッパなんかで見ますると、やはり包括払いとか定額払いに切りかえていくということを基本にしながらやっていくことだろうと思います。さらには、例えば日本で医療費が一番低いのは長野県だということを言われていますけれども、そこでの実態調査を見ますると、保健活動が大変充実しておりまして、かかりつけ医なんかも結構おられまして、在宅医療が進んでいるということもございます。こういう医療費の低いところのシステムも研究する必要があろうかなと。  ただ、私は、基本は何だかんだ言っても、やはり現役世代からの予防と健康づくり、このことが一番肝要かと思っておりますし、さらには老人医療学、健康学というものが欧米各国と比べますと相当おくれているのではないか。老人の健康とはという問題について、実は日本の学問というものがおくれておる、専門的な研究がおくれておる。この辺のところも早急にやっていく必要があろうか。  トータルでさまざまな改革をやらなければ老人医療の高騰はとまらない。結局、医療費は高くなるけれども老人方々も受ける医療に対して満足できない状況が続いていくのではないかというふうに思っております。  以上でございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 釘宮磐

    釘宮委員 もう時間が参りましたのでこれで終わりますが、私は、やはり政治の決断、これが一番重要だというふうに思います。そういう意味で、参考人の皆さんそれぞれに、政治家の皆さんに対しても、いわゆるリーダーシップを発揮して、この二十一世紀の医療保険制度というものをきちっとつくれということの皆さん方からの叱咤激励を心からお願い申し上げたいというふうに思います。  きょうは、どうもありがとうございました。
  30. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、桝屋敬悟君。
  31. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 四人の参考人の皆さん、本当にきょうは御苦労さまでございます。また、貴重な御提言、御指導をありがとうございます。  先ほどからのお話で、同僚の釘宮先生あたりからは、いよいよ抜本改革へという話が大きくなっておりまして、私は、せっかくの貴重な参考人意見陳述の場でありますから、次をどうするかという点で参考人の皆さんの御意見をお伺いしたいと思います。  最初に、対馬参考人にお伺いしたいと思います。  私の地元にも新日鉄の大きな工場が山口にございますので、平素から大変お世話になっております。ありがとうございます。大変厳しい状況を先ほどから聞かせていただきました。想像したとおりであります。  そういう中で、ちょっとお聞きしにくいテーマでありますけれども、一つは、これから抜本改革をやる場合の保険者の役割ということがあろうかと思います。今のような老人拠出金状況の中で、自分たちの役割とか保険者の活動なんというのを言われても困る、こういう御意見もあろうかと思いますが、やはり抜本改革をこれから前提にしますときに、それぞれ保険者として、ぜひとも医療保険制度内の改革としてお取り組みをいただきたいテーマもあるわけであります。そのあたり、どういうふうにお考えになっているのか、若干御意見をお聞きしたいと思います。
  32. 対馬忠明

    対馬参考人 保険者の役割ということでございますけれども、二つあると思うのですね。一つは、抜本改革を推進するために保険者として一体どういう行動をとっていくのかということがあると思いますし、またもう一つは、保険者としての機能発揮がそもそも今現在でも足りないのではないか、したがって、保険者としての機能発揮をするにはどうしたらいいのか、両方御質問の趣旨があったのではないかな、こういうふうに思います。  前者について申し上げますと、先ほど来申し上げているとおり、ぜひともやっていかないと、何しろ回っていかない、基盤が崩壊していくということでございますので、私どもとしてはさまざまな提言もやっていきますし、また、私どもの提言だけが唯一絶対ということでは決してございませんので、関係諸団体、例えば医師会等でも共通の認識等があるところも当然ございますから、そういったところは手を携えていきますし、また、政治家の先生の皆様方にもいろいろ御指導、御鞭撻をいただきながらやっていきたいな、こういうふうに思っております。  それから、今現在、保険者としての機能発揮がどうなのだ、将来的にどう考えるのか、こういうことでございますけれども保険者の機能発揮としては残念ながら今は不十分である。患者さんなり被保険者の意思を代替して、代理者といいましょうかエージェントといいましょうか、そういうことで、医療の世界特有のお医者さん対患者さんの情報の非対称性、こういったこともございますので、私どもとしましては、特に情報の提供等についてできるだけ努力をしてまいりたい。それには、私ども努力すればできる部分と、法制度の中でなかなかできにくい部分、両方ございますので、そのあたりを含めて努力してまいりたい、こういうふうに思ってございます。
  33. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  抜本改革に向けては、今御説明がありました、皆様方の役割を果たすときに法制度の中でできにくいと思われる部分については、ぜひとも解決をしなければならぬわけでありまして、今の状況ではなかなかまともな議論ができませんが、私は今、くしくも不十分だとおっしゃった保険者の役割というものは、私どもの党も大事に考えていきたい、それも含めて研究をしていきたい、このように思っております。  それから、喜多参考人には本当に、この前介護保険でもいろいろと御指導いただきましたけれども、先ほどの御説明の中で、この十月から高齢者の一号被保険者保険料徴収が始まった、国保に上乗せでありますから未納の心配もされておられます。そのあたり、特別措置でありますとか、それから十月からでありますから、まだ状況は見えないかもしれませんが、実際、市町村現状で、介護保険導入に伴って国保の収納率がどういうふうになるのか、御意見があればお聞かせいただきたい。  重ねて、先ほどから議論が出ておりますが、今後の高齢者医療制度をどう仕込むかということがすべての課題であります。我が党も悩んでおりますけれども、先ほど地域保険という議論もありましたけれども、その二点、御意見がありましたら伺いたいと思います。
  34. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  まず第一点目の、二号保険料国保の上でどうなっているかということでございますが、これもまだ半年ほどでございますので実態は出ておりませんが、それに加えて、先ほど一番初めの本論のところで申し述べました、リストラをされた方々国民健康保険に流入をしてきている、それも含めて徴収率がだんだん落ち込んできているという事実はございます。内訳についてはもう少し分析をしてみないと何とも言えませんが、現在はそういう状態でございます。  それから、抜本改革の方でございますが、我々市町村全国町村会、そして国民健康保険中央会で、実はそういう研究もいたしまして、医療保険改革問題研究会というのがございまして、昨年の十二月に報告書を出しております。やはり、一本化に向けて、どこの地区でも、どのような階層の方でも、またどのような年齢の方でも公平感が持てる制度にしていくべきだ、基本的にはそのように考えております。
  35. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今、喜多参考人がおっしゃった公平な制度、どこにいても、どういう階層の方でも公平にという、これが難しいわけでありまして、私ども、具体的なところで大変悩んでおります。我が党も、今後の抜本改革では、やはり後期高齢者医療、七十五歳以上を対象に新たな制度を考えなければならぬのではないかというふうに思っておりまして、また、現場の市町村の御意見もぜひ今後ともお聞かせいただきたいと思います。  それから、村上参考人にお伺いいたします。  先ほどからの三回裏切られたという半分怒りのお声は痛いほど我々も感じておりまして、全く共感するところでありますが、それだけに、次の改革は本当にきちっとやり上げなければならぬ、こう思っているのです。  今までのことではなくて、これからの改革に向けてのテーマで議論したいと思うのですが、今回、高齢者定率負担というものが導入される。これは、制度審の中でも、いろいろ問題はあるけれども、ここの部分は抜本改革の一つだ、こういう位置づけがされているわけであります。対馬参考人がうなずいておられますけれども定率というのは、我が党も悩んでいるわけであります。どうでしょうか、連合のお考えの中で、これから将来の改革をするということを前提に、お年寄りの定率負担、しかも一割ということについて、将来を見据えて、本音のところをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  36. 村上忠行

    村上参考人 お答え申し上げます。  私どもは、抜本改革が先だということは、物の順序だろうと思うのですね。これまで抜本改革できない、結局、予算のつじつま合わせをやる。そのために負担引き上げるとか保険料引き上げてきた。これの繰り返しは絶対困る。  抜本改革が先にされれば、私は、介護との関係からいって、将来、抜本改革が実現した暁には、申しわけないけれども高齢者方々定率一割負担をお願いせざるを得ない、かように考えておりますが、あくまでも物の順序が逆ですと、物事がすべておかしくなるというのは世の中の常でございます。しかし、医療の問題は常に逆さま逆さまということで、ここを改正してくれることをぜひお願いしたいわけであります。
  37. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  今の村上参考人の御指摘、我々政治家も政党も肝に銘じて、これからの作業に取り組んでいきたいと思います。  最後に、室生参考人にお伺いいたしますが、先ほど、いろいろ御説明をいただいて、資料もいただきました。これは、この委員会でも瀬古先生の方から全く同じ資料もいただいて、十分議論もしてきたところであります。  しかし、私は、これからの改革を考えたときに、我が党は、やはり制度の内部における改革と、制度の外部、社会保障制度外の改革、これは税も含めてしなければならぬと思っておりますが、やはりその前に、今の村上参考人の御意見ではありませんが、制度の内部における改革をきちっとやらなければいかぬというふうに思います。  特に、医療保険制度について、それぞれの利害関係人という話もありましたが、医療サイドからの改革もやらなければいかぬ。医療のむだもあるのではないか。確かに、患者負担がふえるということは大変我々も心苦しいことでありますけれども、あわせて、これからの医療費、先ほど三倍、五倍の話がありました。どこに手をつけるのかという意味では、医療制度医療体制の中におけるむだの排除ということもあろうかと思うのですが、その辺、何か御見識がありましたら、お伺いしたいと思います。
  38. 室生昇

    室生参考人 医療におけるむだの問題という御指摘がございましたが、今世界的に見ますと、日本の医療というのは国際先進国の中で最も低額で、最も効率のよい医療をやっておるというのが財政的に出ております。  一例を挙げますと、子供さん、赤ちゃんが生まれてから、周産期の死亡率というのは日本は非常に低い。アメリカはかなり高額のお金をかけておりますが、日本はそれよりずっと低額で周産期の死亡率が非常に低いということがございます。  それからもう一つは、我々医療を営んでおる者として、先ほど若干申し上げましたが、かなり診療報酬の面でそがれてきておりますが、あわせて指導監査というのがございます。これは、診療報酬を請求いたしまして、それが合理的か不合理であるかということを審査委員会審査いたします。そして、それに対するチェックがかけられておりまして、そういう意味では不合理な医療というものはチェックされております。ややもすると、当然であるようなものまで削減されてくることもあるぐらいでございますので、議員の御指摘のようなむだというものは、どんどんなくなってきておるという現状でございますので、その点は御理解願いたいと思います。
  39. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 むだはどんどん削減されておるということでありますが、我が国の社会保障、今までの経緯の中で、諸外国の例も引かれましたけれども、社会保障給付費の伸びの中で、政府の一般歳出、大変大きな伸びを示している、これもやはり我が国の大きな課題でありまして、そこはやはりむだがないとは私は言い切れない。もちろん、一切の改革を同時にしなければいけませんが、そんなことも考えている次第であります。  以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  40. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、武山百合子さん。
  41. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。  本日は、参考人の皆様、御苦労さまでございます。  まず、室生参考人に早速お尋ねしたいと思います。  国民抜本改革抜本改革と九七年からずっと言われ続けてきて、議論の方向性も何もなく、このたびまた平成十四年に抜本改革という方向性で今、政権与党は言っているわけです。また先送りしたと思っているわけです。現実にそうなんですけれども。それでは室生参考人、どのような視点で、どのような方向で行われるべきか、ぜひ御意見を開陳していただきたいと思います。
  42. 室生昇

    室生参考人 諸制度において改革が常に求められるということは、当然のことでございます。現在持っておる矛盾を解決していくことによって進歩があるのでございますから、私自身、改革そのものには、やらなければならない部分は大いにあるというふうに思っております。ただ、その改革をする視点というものが単なる財政的な問題のみに目が向けられて、健康保険というものは国民の健康をいかに保持していくかという視点が最も重要なことでございまして、その視点から改革を進めるということが重要であります。  したがいまして、今までの経過を見ていますと、国庫負担のこれに対する率が、我々の持っております資料でございますが、厚生省の資料からの引用でございますが、一九八三年から見ますと、随分一九九八年には減ってきておるということがございます。国の政策そのものが国民の健康をいかに維持していくかという観点での改革を進めていただきたいということでございまして、これは国民健康保険にしろ、政府管掌保険にしろ、数年前にかなり政府からの援助率が削減されたのは事実でございまして、その点に視点を当てた国政こそ改革すべきではなかろうかと思っております。  以上であります。
  43. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  それでは、村上参考人にお尋ねいたします。  まず、老人に係る一部負担見直しについて、大変複雑でわかりにくい制度となっております。国民はわかりません。それではこれが本来どうあるべきか、ぜひ御意見を開陳していただきたいと思います。
  44. 村上忠行

    村上参考人 お答えいたします。  私は、薬剤負担を残して、財政のつじつま合わせが必要ならば、当面はそれでやればいいんではないか、先ほど来申し上げているとおり、こんな複雑な制度というのは本当に機能するんだろうかということでございます。行く病院によって一部負担の不公平が生じる、また、二百床未満と二百床以上とでいろいろな不公平が生じる、ある意味であちこちに、一つだけの問題じゃなく複数の問題を抱えたややこしい制度というのは本当に機能するんだろうか、それならば薬剤負担を残した方がまだすっきりする、それで当面、財政的な問題は乗り切れるではないか、あとは三百五十億円程度でしょうか、このようなところはいろいろなやりくりで私はやることができると。  それから、やはり財政面から、もうお金がないという形にしないと、なかなか行政も政治も動いてくれないというのが、私がこれまで行政改革等の中で経験したことでございまして、もう保険がもたないということの危機感がどうも行政も政治も足りない。ここをきちっとしてもらうためには、財政でつじつま合わせをしてしまうと、それがいつの間にかすっと、予算が通ればそれでおしまいというのが行政の常でございます。予算が通って、その負担の裏づけとなる法案が通れば、官僚の皆さん方はいいかもしれませんが、私どもはそれによってサービスを受ける側でございまして、受ける方がどうするんだろうかと疑問に思うぐらい非常に複雑な制度というものについて、本当にちゃんと責任を負えるんだろうかということを私は疑問に思っておるわけでございます。  以上です。
  45. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  それでは、守口市長喜多参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほどお地元の御様子をお話しされたわけですけれども、本当に財政負担も大変、保険料に対する総収入も減ってきている、それで抜本的改革が先送り先送り、本当に悲痛な叫びであったと同時に、最後には、この法案に賛成いたしますと。その辺、国民はこの法案に対して抜本改革を先送りしたということで怒っているわけですけれども、市長さんは賛成だと言う、なぜ賛成するのか、意見を開陳していただきたいと思います。
  46. 喜多洋三

    喜多参考人 抜本改革につきましては、いろいろと申し上げたいことがたくさんあります。しかしながら、本論のところで申し上げましたように、今回の改革抜本改革への第一歩だという認識のもとで賛成を申し上げたわけであります。個々にいろいろと内容について申し上げたいことはたくさんあるわけでありますけれども、その点は、審議の時間、与えられた時間もございますので、総論的に賛成と申し上げたわけであります。決して全面的に、今やっている医療保険の、特に国保側として、この改正だけでいいのかということになりますと、それはノーでありまして、第一歩という認識のもとに今回は賛成をさせていただく、こういう意見でございます。
  47. 武山百合子

    ○武山委員 市町村の首長さんが、市町村財政が本当に逼迫している状態で、今回の法改正には反対だと言ったら、きっとせっぱ詰まって行政も立ち上がるのではなかろうかと私は思っております。それを一言つけ加えさせていただきます。  それでは、対馬参考人にお尋ねいたします。  保険料率の設定に係る上限の見直しについてですけれども介護保険を制定した際にこれは説明されていないわけでありまして、国民に対して本当に背信行為ではないかと思いますけれども対馬参考人、それに対して意見をお聞かせ願いたいと思います。
  48. 対馬忠明

    対馬参考人 料率上限見直しですけれども、若干私見も入りますけれども介護保険制度医療保険制度、共通する部分もかなりありますけれども、基本的には違う制度だと思うんですね。保険内容も違いますし、保険者も、片や市町村、片や我々でございますし、また対象者も、介護保険は四十歳から六十五歳未満と六十五歳以上ということですから、そもそも違うのではないかということをベースとして私自身は認識しているところであります。  それで、それを一つのベースとして、当時どうであったかということですけれども、当時の議論としても、医療保険から介護保険に移行していく部分があるではないか、そうすると、何とか今の医療保険の上限の中で介護保険を含めてやっていけるのではないかという議論があったというふうには聞いております。ただ、実態として、その後、例えば介護保険のできた平成九年度以降、十、十一、経済がマイナス成長、標準報酬も全く上がらない、こういう中で、結果的には今のように、私どもでいえば四割の組合が上限問題にかかわって非常に困っている、こういう事態になっているのではないかというふうに思っております。
  49. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  それでは、また喜多参考人にお伺いしたいと思います。  まず、診療録等の開示、カルテの開示ですね、それから広告規制の緩和。カルテの開示の方は、今回、中間報告では早急に法律に規定すべきであるとあったわけですけれども、最終的には医療従事者の自主的な取り組みに任せるべきだということで、ここは削除になったと思うんですね。それから、広告規制の方ですけれども、いわゆる法制化が見送られたわけですが、本来はどうあるべきだと思いますか。
  50. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  開示については、おっしゃっているように、私は開示に向かっていく方に賛成でございます。  それから、広告規制については、市町村は直接、医療関係のお医者さんとのそういう関係はございませんので、私の立場から申し上げるのはどうかと思いますけれども、適正な広告であればいいのではなかろうかな、このように考えております。
  51. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、同じ質問を村上参考人にお願いします。
  52. 村上忠行

    村上参考人 私どもは、カルテの開示は法制化すべきというふうに考えております。  それから、広告規制でございますけれども、特に私どもが重視したいのは医療機関評価でございまして、今どの病院がどの程度の技術力を持っているかということについて、よくわかりません。今回の法律の中では、財団法人医療評価機構でしたか、そこに特定をして、そこの評価を認めることになっておりますけれども医療評価機構がやるのはおおよそハードな部分ですね、お医者さんが何人おるとか看護婦さんが何人おるとか、どういうマニュアルがあるとか、そういう部分でございまして、私たち国民が欲しいのは、お医者さんの技術評価なんですね。  そういう意味からいきますと、医療評価機構に任せた評価評価が十分かといえば、私は十分ではない、もっとたくさんのところがさまざまな部分で医療評価を下すべきだと思いますし、先ほど保険者機能の問題が出ておりましたけれども健保組合市町村国保もそれぞれが医療評価を行って、それをいわゆる被保険者に開示していく、これもまた保険者機能として重要な部分があるんだろう、こう思っておるわけです。  以上でございます。
  53. 武山百合子

    ○武山委員 同じ質問を対馬参考人にもお願いいたします。
  54. 対馬忠明

    対馬参考人 カルテの開示ですけれども、当面、医師会の方でやっていただくということで、それが徹底すればいいわけですけれども、最終的には法制化すべきではないのかな、こういうふうに思います。  それから、広告規制につきましては、今回、一部現状よりは前に進んだわけですけれども、本来的に言えば、基本的にはすべて広告できる、ただし、こういったことはだめだというような原則自由ということにすべきではないのかな、こういうふうに思っております。
  55. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  同じ質問を室生参考人にもお願いします。
  56. 室生昇

    室生参考人 広告開示の件でございますが、私は、やはり医療そのものは開かれなければいけないということで、カルテ開示も含めまして、開かれた医療、患者さんと医師あるいは医療担当者が平等な立場で情報の交換をすべきであるというふうに考えております。  ただ、現状ではその点での法的整備が十分に進んでいない。最近、医療事故等も多発しておるということは、先ほど申し上げましたように、看護婦不足等のことが背景にありますが、その点での医師の責任というものが法的にどれまで追及され、また、逆にどれまで医療担当者が保護されるかという点では、法的整備がまず必要であろうかというふうに思います。  それから、開示の中での広告規制の緩和の問題でございますが、先ほど村上参考人も触れられました日本医療評価機構の件でございますが、これが一部の機能評価をやる企業に委託され、それを開示できるということ、これは実際に病院等で評価を受ける場合、百八十万くらいかかる。こういうようなものは果たして零細な開業医を中心とした中小病院にできるかどうか、こういう点で非常に不公平も生じますので、その辺での法的整備も進めた上で、開示というものは、カルテにしろ、広告の問題にしろ、進めていく必要があろうかというふうに思います。  同時に、住民あるいは患者さんと医療機関とがお互いに話し合える、地域におけるコミュニケーションというものを促進するような何らかの援助というものも必要ではないかというふうに思っております。  以上であります。
  57. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  少なくとも午前中の参考人の皆様は前向きで、抜本改革を本当に進めたいという方々意見を開陳していただいたわけですけれども、午前中の参考人の皆さんが今のような改革を進めたいという、五〇%はきょう来ていただいた皆さんが改革改革という前向きな姿勢でありますので、午後の四人の参考人に期待したいと思います。  どうもありがとうございました。
  58. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小沢和秋さん。
  59. 小沢和秋

    小沢(和)委員 共産党の小沢でございます。  参考人の皆さん方には、大変御苦労さんでございます。  まず、連合の村上参考人にお尋ねをしたいと思うんです。  先ほどからのお話を伺っておりますと、老人医療拠出金などの関係もあって、非常に保険料負担が重くなっている、そういうところに今回の介護保険料を別枠にするという措置をとれば、さらに保険料負担が重くなるので、そういう改悪には自分たちは反対するというお話だったと思うのです。  その点で、一つお尋ねしたいんですが、先ほどいただきました連合の「政策・制度 要求と提言」というのを拝見しますと、こういうような老人医療費などについては、公費を五〇%に引き上げて賄っていくべきだというような政策が示されているようですが、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  60. 村上忠行

    村上参考人 お答えいたします。  そのとおりでございます。  といいますのは、そもそも現在の老人保健制度ができた経過を見ますと、かつてはこの方々国民健康保険の方におられました。この人たちが大変ふえてまいりまして、国保がもたないということで今の老健制度ができてきた経過がございます。国保を出られたときは、公費は実は五割入っておったわけでございます。現在も、国保には五割の公費が入っている、そういう過去の経過。それから、介護保険料につきましても、公費が五割入っております。  よって、私どもは、新しい老人保健制度を仕組むべきだと思いますが、その上で、公費を五〇%に早急に引き上げるべきだ、こう思っております。
  61. 小沢和秋

    小沢(和)委員 重ねて村上参考人にお尋ねをしたいと思うのですが、もう一ついただいておりますパンフレットを拝見しますと、「社会保障制度の再構築と公共投資の徹底的な見直し」という表題がありまして、公共事業を見直すべきだということも主張しておられるわけであります。  日本の今の一番の問題は、社会保障には極端に我が国の政治というのはお金を出さない。その一方では、むだだらけの公共事業費などには、国、地方、公団とか、こういうようなものを合わせると、年間五十兆円も使っている。ここに思い切ってメスを入れるということが、本当に社会保障などの、今の苦しい状態を打開するための財源を確保する決め手になるのじゃないかというふうにも考えておるのです。この連合のパンフ、その点で私は大変興味深く拝見したのですが、その辺どうお考えでしょうか。
  62. 村上忠行

    村上参考人 お答えいたします。  パンフレットに記載のとおりでございますが、私自身のこれまでのいろいろな思いを申し上げますと、実は二十数年前から、ある意味で高齢化社会がやってくる、そのためにはいわゆる国、地方の支出のむだ、非効率、こういうものを排除する。それで、高齢化社会のためにはいろいろな費用が要る、そういう財政支出構造を見直す、それらを通じていわゆる高齢化社会の費用を捻出するということで、終始一貫行政改革問題に取り組んでまいりました。  しかし、この間いろいろな行政改革がなされましたけれども、残念ながら財政支出構造はほとんど動いていないわけでございます。行政改革に携わってきた人間として、じくじたる思いがございますけれども、やはり高齢化社会対応に日本全体のシステムを切りかえていくことが必要だと思っていますし、その一つとして、いわゆるむだな公共事業をやめて、必要な福祉にお金を回す、そういう時代が来ているというふうに思っておるわけでございます。  以上でございます。
  63. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ありがとうございました。  では、次に保団連の室生参考人にお尋ねをしたいと思います。  私どもが一番心配しているのは、今回の健康保険法の改正によって、国民全体、とりわけお年寄りの皆さんに非常に重い負担がさらにかかるようになる、これが強烈な受診抑制などを引き起こしていくのではないかという点でありますけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
  64. 室生昇

    室生参考人 先ほど申しましたように、負担率が増加することは申し述べたとおりでございます。それによる影響でございますが、これは既に前にもそういう経験がございまして、外来の老人の一部負担をかつて月四百円から八百円に引き上げたことが昭和六十二年にございます。このときには、対前年度比で、老人の受診率がマイナス〇・七%というふうに減っております。入院に関しましては、前年と同じような、対前年度比一・八%でございましたが、入院外におきましては、マイナス〇・八%と減少しております。これは、老人に対してやはり受診抑制が働いた結果だと思います。  ややもすると、外来の医療というものに来なくてもいいような老人も来ているかのような認識をお持ちの方がおみえになりますが、実は、その後の経過を見ておりますと、翌年には外来の伸び率が二・〇%、例年の伸び率の一・六—一・七%を大幅に上回って、二・〇%というふうに伸び率が上がっております。  これは、御老人が一年間我慢された、それによって病状が恐らく進行したと思いますが、そのような受診抑制が起こっておったのは既に今までもございますので、これは単なる定額の負担増でございましたが、今度は定率負担増が加わってまいりますと、重症になればなるほど受診抑制が働くということは火を見るよりも明らかでございまして、それらが進みますと、疾病増悪によってかえって医療費増加を来しますし、御老人にも大変な負担をかけるというふうに私は認識しております。  以上であります。
  65. 小沢和秋

    小沢(和)委員 重ねて室生参考人にお尋ねしますが、さっきのここの議論の中で、高齢者一人当たりの医療費が若い人の五倍にもなっているというようなお話がありましたが、これは本当でしょうか。
  66. 室生昇

    室生参考人 これは、若年者の全人口あるいは老人層の人口、これを分母といたしまして出た医療費でございまして、これを病気にかかった若い方、あるいは老人の方を分母としてやりますと、一人当たりのそれぞれにかかりました医療費というものは決して五倍ではございません。老人で御病気をお持ちの方は若い人より多いわけでございますから、一人当たりで換算いたしますと、その率は、入院におきますと御老人の方がたしか一・一五倍、それから、外来ではたしか一・五倍ぐらいになります。外来が一・五倍というのは、今在宅医療がございまして、在宅で治療をやっておる御老人もかなりおりまして、そういうことで外来が一・五倍、在宅医療も含まれておりますからそういうことでございます。五倍というのは、全人口を分母とした場合のあれでございますから、一人当たりの医療費率でいいますと、一・一五から一・五倍の範囲にとどまるということで、決して法外に多いということではございません。
  67. 小沢和秋

    小沢(和)委員 重ねて室生参考人にお尋ねしますが、先ほどのお話を伺っておりますと、病院の側が看護婦をふやしたくてもできないような診療報酬の仕組み上の問題があるというようなお話も出てきておったと思うんです。この点についてもう少し具体的な説明をいただきたいと思います。
  68. 室生昇

    室生参考人 本日、皆様にお配りいたしました私の資料の五のところをごらんいただきたいと思います。それを見ながら説明を聞いていただきたいと思います。  この資料五は、診療報酬の入院基本料の一群と申しまして、平均在院日数が二十九日以内の一般病床の看護婦の相当額を看護職員一人当たりの年間金額に換算したグラフでございます。七〇%以上とか四〇%以上というのは、正看護婦と准看護婦の比率をあらわして、正看護婦の比率のパーセンテージでございます。  結論だけで申しますと、非常に奇妙な点数設定になっておりまして、七〇%以上の場合には、二・五対一が最高で六百五十一万円、看護婦一人当たりの診療報酬ということになっています。看護婦をふやして二対一にしますと五百九十六万円、下がってしまうというふうになりますし、同じように四〇%以上のところは三対一が最高、二〇%以上のところは四対一が最高ということになっておりまして、看護婦数をある程度以上ふやすと、かえって診療報酬が下がるということになっております。  さらに、今回の診療報酬の改定でいきますと、二十九日の平均在院日数を超すような病棟では、仮に二・五対一の看護婦体制をとっておっても、三対一の看護料しか診療報酬としては病院には支払わないということになっておりますし、先ほど申し上げましたように、これは看護婦料だけじゃないですが、九十日を超す老人に関しては、先ほど言ったように、非常に低い額で定額制となっております。そして、先ほど申しましたような二対一以上には診療報酬上はありません。  だから、一・五対一とか一・一対一の看護体制をとっておりましても、それは専ら病院の持ち出しになるということでございまして、そのような不合理があるために病院としては非常に苦慮しておる次第であります。  以上であります。
  69. 小沢和秋

    小沢(和)委員 最後に、引き続いて室生参考人にお尋ねしたいんですが、老人医療費負担あり方全体について、医療に従事しておられるという立場から、御意見があれば聞かせていただきたいと思います。
  70. 室生昇

    室生参考人 老人医療負担の問題、診療報酬の算定の問題でしょうか、それとも患者さんの負担の方の問題でございましょうか。(小沢(和)委員負担の方ですね」と呼ぶ)御老人として負担される額をどれぐらいにすべきかという問題ですね。  これは、先ほども申し上げましたように、平均しますと、若人の方たちとそう変わらない収入でございますが、ただ、一人一人の例をとってみますと、低所得に非常に偏っておるという点が特徴的でございまして、さらに御病気をお持ちになりますと、持ち出しはふえるということ。これは単に医療費だけではなくて、それにまつわる副次的な費用もかなりかさばる。それからまた、それを支えてみえるそこの子供さんだとか御主人も、御老人を抱えてみえるために出費が重なるということがございますので、一般の若い方よりも、負担をできることならなしにしてあげるのが一番いいのじゃないかと思います。  ましてや、定額制じゃなくて定率制ということになってきますと、これは先ほど申しましたように、重症になればなるほど負担が多いということで、治療を行っていく上で非常に困難を生じるということでございますので、少なくとも定額は守らなければならないし、できることなら負担がないというふうにしていくことが理想的であろうかというふうに思っています。  以上であります。
  71. 小沢和秋

    小沢(和)委員 では、喜多参考人にも今の老人医療費負担あり方という点について、どうあるべきかという点、一言伺いたいと思います。
  72. 喜多洋三

    喜多参考人 払えないという人がおいでになるということも事実でございます。そういう人たちから取るということについては非常に苦慮をいたします。しかしながら、全体を支えるにはお金が要るわけであります。先ほどの御質問の中にもございましたが、打ち出の小づちはないわけでありますから、どこからかその金を捻出しなければなりません。  そういう意味からいきますと、介護保険料が一割ということになっておりますから、これはやむを得ないのではないか。苦しい答弁ではございますが、本当はどこかにお金があればあえてそれをやる必要はないと思います。しかし、金がなければ、みんなで支え合うという保険の原理からいってやむを得ないのではないか、このように考えております。
  73. 小沢和秋

    小沢(和)委員 どうもありがとうございました。
  74. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、阿部知子さん。
  75. 阿部知子

    ○阿部委員 社会民主党の阿部知子と申します。  まず、私ども社会民主党は、今回の御高齢者の一割負担を含む保険法の改悪に基本的に反対いたしまして、また、抜本改悪、どなたも御指摘ですが、まずそのことから手をつけるべきだという立場から御質問をいたします。  そして、一言申し添えますれば、現在、もしも一割負担、みんな苦しい、だから一割負担だというお話も先ほど来ございますが、このことを導入することが、かえってこれから検討されます高齢者医療制度に悪い影を落とすのではないかという点を危惧する立場からの質問をいたします。  まず、対馬健保連合の代表にお伺いいたします。  各医療分野、これからの医療財政改善に向けて努力が必要とされる分野だと思いますが、とりわけ健保組合、支払い側に立ちました場合に、現在、日本で行われております不正請求という問題について、支払い側の健保連合としてどのようなキャッチのアンテナをお持ちか、また、そうしたことをキャッチした場合に、どのくらいの財政の削減につながるとお考えかという点を、まず対馬さんにお伺いいたします。
  76. 対馬忠明

    対馬参考人 不正請求の問題ですけれども健保組合は必ずレセプトをチェックすることになっております。レセプトの審査で、ただ、健保組合がやっていますのは書面審査なんですね。ですから、こういった病名に対してこういった薬が使われているけれども、この病名にこの薬は要らないではないかといった審査をするわけですね。  したがいまして、例えばお医者さんの方が過剰に請求して、この病気にこの薬は適合はするのだけれども、使っていないけれどもとか、ないしは少し多目に請求したというのは、なかなかチェックするのは難しいというのが今の実態となっていますね。ただ、私ども健保連が、支払基金でやる一次審査を含めてですけれども、年間、不正請求、過剰請求、不当請求、そういったものを合わせまして、千数百億円のチェックをして、その節減を図っております。したがいまして、決して少ない金額ではないというふうに思います。
  77. 阿部知子

    ○阿部委員 引き続いて、同じ質問を村上参考人にもさせていただきますが、私ども社民党、さきに申し述べました医療抜本改革に向けて、医療薬剤費の問題、高い医療材料費の問題、反復検査の問題等々ある中で、特にカルテ開示、レセプト請求等の運動が、この不正請求とも絡めて非常に現在の医療費のむだを現時点で削減していくのではないかという立場をとっております。  そして、連合の運動が、全体にそういう不正請求抑制のためにも、カルテ開示を一生懸命お進めでございますが、先ほどの健保連対馬さんの御発言ですと、私どもは書類を審査するだけなので、その中身の不正請求はなかなかわからないのですよとおっしゃっていましたが、今、連合の進めていられるカルテ開示、レセプト開示の運動と合わせました場合に、どのような成果あるいは医療費の削減が見込まれるとお考えでしょうか。
  78. 村上忠行

    村上参考人 お答えを申します。  私は、保険者機能の問題が先ほど出ておりましたけれども保険者機能というのはいろいろな機能があろうかと思いますが、御質問のように、レセプト開示とか、それに対するいろいろな不正請求をチェックするとか、これは重要な保険者としての機能だろうと思っていますし、特に申し上げなければいけないのは、保険者はもうちょっとレセプトの審査体制の拡充を図っていただきたい。  ただ、私に言わせると、支払基金側にも問題があるのではないか。現在、一万円当たり百十円ぐらい保険者が払っていると思いますが、そのうち九十円程度がレセプトの審査費用に充てられておるというふうに伺っておりますけれども、我々が思いますに、なかなかそこでの審査が十分行われていない。  そういうことから、いわゆる書き屋さんとか削り屋さんとか、わけのわからない用語でございますけれども、書き屋というのはある意味でカルテから不正請求、水増し請求をするお手伝いをする業者、削り屋というのは、回ってきたレセプトで、水増し請求等々不当請求等を見つけて削る、こういう業者の方々は今、大変商売繁盛だそうでございまして、こういう書き屋、削り屋という商売が、いろいろな世界にいろいろな方がおられるのだろうと思いますけれども医療の世界で横行している、このこと自体、お互いの反省が必要なんだろう。  やはり医療というのは信頼というのが一番重要な基盤だと思っていますけれども、診療側にもそういうことが、横行するというのは変ですけれども、商売が繁盛するというところにはどこか欠陥があるんだろうということをお互い反省し合って、こういうことがないようにしていかなければいかぬ、それが私どもの目的でございまして、何も悪いお医者さんをあぶり出すとかそういうことではなく、やはり国民とお医者さんとの間の信頼関係を築くために、そういうことのないようにするために、私どもとしては、審査体制をぴしっとして、そのことによっていいお医者さんがいい評価をされる、こういうことをつくりたいがゆえに、我々もそういう運動をやっております。  特に、三年前から、お医者さんに行ったら領収書をもらおうという運動をやっておりまして、我々の傘下組合の中で、自動車さんとかゼンセンさんが全組合員に対してお医者さんに行ったら領収書をもらおうというカードをそれぞれ配りました。相当反響を呼びました。私どもといたしましても、連合全体で、十月から全組合員に対しまして領収書をもらおうというカードを配付いたしまして、そういう運動を進めておるわけでございます。  以上でございます。
  79. 阿部知子

    ○阿部委員 これからの医療に最も求められるものは、先日来私の指摘しております医療供給体制における人員増、医療スタッフ増と、もう一つは、医療の透明性という今、村上参考人も御指摘になった部分だと思います。  透明性に関して、レセプトあるいはカルテの開示ということが非常に重要な意味を持ちますが、きょうたまたま二つの事例、ともに歯科診療でございますが、御自身の受け取ったレセプトと健康保険組合から送られてきます医療費の通知書の間に大きな違いがあったということで、女性が、自分の歯の治療での不正請求を発見して、ともに数十万円、不正請求されていたという事例、一つは十二年八月三日の朝日新聞、いま一つは私への直接の手紙で参っております。私が思いますのは、健康保険組合財政はいろいろ苦しゅうございましょうが、やはり保険者としてのチェック機能というのをきちんと働かせていただくべく、アンテナを張る方向性をいま一度検討していただきたいと思います。  そして、それに際してもでございますが、健康保険を維持していくために健康保険組合としてかかっております事務費というのは一体、どのような額でございますのか、その点についてもお尋ねをいたします。  対馬参考人にお願いいたします。
  80. 対馬忠明

    対馬参考人 アンテナを高く張っていただきたいということは、そのとおりだと思います。私どもとしても鋭意努力していますし、先ほど連合の方からも領収書をもらおう運動をやるというお話がありましたけれども、私どもも健保ニュース等々でPRもしていますし、また、健保組合によっては連合と連名でやるということもやっているところもございます。  それで、事務費のお話ですけれども健保連全体としては、全体の二・数%程度で、私ども新日鉄健保でいいますと、全体の診療に占める比率が一・九か二・〇か、大体その程度ですね。ですから、決してそれは事務費に多額を使っているのではないかということではないのではないかと私自身は思っておりますけれども
  81. 阿部知子

    ○阿部委員 ただいまのような御質問をいたしましたのは、毎月健保組合から送られてくる、医療にどれくらいかかったかという、ああした通知は、レセプトがきっちり各患者さんに手渡されるようになれば、あるいは必要がないのかもしれない、その部分も削減されるのかもしれないという患者さんからの声の一端でしたので、あわせて御勘案くださいませ。何せ患者負担を増す前に、削れるところは削るというのが大体家計の原則でございます。  引き続いて、守口市長喜多さんにお伺いいたします。  大変厳しい地方財政のやりくり、御苦労さまでございます。国民健康保険にかかわりまして、現在、守口市での国保未収金というのは一体どのくらいございますでしょうか。
  82. 喜多洋三

    喜多参考人 累積をいたしまして、約十四億円ほどございます。
  83. 阿部知子

    ○阿部委員 その主なものが、先ほど市長から御提示がありましたように、さまざまな無収入層等々、大変にお支払いが苦しくなっている層と思います。下世話なことを伺いますが、その十四億という未収金のうち、努力改善すべきものはどのくらいおありでしょうか。
  84. 喜多洋三

    喜多参考人 分析は非常に難しゅうございますが、払えないということで滞納している分を全部取る必要はあると思います。公平の原則からいけば、滞納分は全額徴収してくる必要があるのではないか、このように思います。それからいきますと、十四億のうち、約半分強はその部分に該当するのではないか、このように思います。
  85. 阿部知子

    ○阿部委員 ただいまの質問は、これからの介護保険料徴収とも相まって、取ろうと思っても現実にお支払いがままならない、ないしは徴収できないということも大きく影響すると思いますので、青写真を描いても、現実にそれをお支払いになる側の諸般の状況等々ございますから、なお、私どもといたしましては、現在の高齢者の実態分析ということを、これは津島厚生大臣にもお願いいたしましたが、守口市長の方からも、一番市民に近いお立場から、高齢者層の払えない実態分析についても、あわせてまた私どもに教えていただければと思います。  最後に、室生保団連副会長にお伺いいたしますが、私はさっき歯科診療の不正請求のことを問題にいたしましたが、不正請求の中でも、とりわけ歯科はその比率が高うございます。幾つかの理由が考えられますが、自費診療と保険診療という二重構造をとっておりまして、そのあたりにも大変患者さんにはわかりにくくなっている現状があるように思いますが、そのあたり、保団連の副会長としての御見解をお願いいたします。
  86. 室生昇

    室生参考人 今御指摘のように、歯科診療では自由診療と保険診療とが非常に複雑な形で混在しておりまして、医療機関の院長あるいは事務方の方もその辺の請求での難しさ、煩雑さのために過ってそのような請求をされる方もございましょう。  ただ、意識的に水増し請求とか法に抵触する不正は絶対許せませんから、こういうことは我々としては当然戒めて、今御指摘になりましたような不正請求というものは、我々医療界の中でも極めて少数の部分でありますし、その中でも特に悪質と申しますか、意識的な例は非常に少ないのではなかろうかと思っております。  さらにつけ加えますならば、今特定医療費制度というのができておりまして、歯科だけではなくて、医科の部分にもそういう差額徴収部分がたくさんございます。材料の問題もございますし、入院の場合の差額徴収もございます。だから、その辺での問題点を解決する必要も一つあろうかと思いますが、その特定医療部分というのがどんどんふえてきておるということが、事務処理の仕方においての煩雑を起こし、間違いを起こす原因にもなっておろうかと思います。できる限り健康保険においてすべてが、医療が保障されるようにすべきだと思っております。  それから、さらに申し上げますならば、患者さんに対するレセプトの提示につきましても、これは医療のオープン化という意味でも非常に重要なことでございますし、我々としても積極的に思っております。現在の医療制度の中でも、薬剤の情報提供というのは保険制度でも認められておりまして、それなりの診療報酬も出ておるわけでございまして、積極的に行っておる医療機関は多くございます。  ただ、そういうことにかかる事務費あるいは診療情報提供にかかわるいろいろな諸経費に対する保障が非常に少ないために、十分それができない。そのために患者さんに御迷惑をかけておる面も多々あるかと思いますし、そういう点では、その辺での保障を一つは十分国の方でもお考え願いたいと思っております。  以上であります。
  87. 阿部知子

    ○阿部委員 以上で終わらせていただきますが、なお、患者の一割負担を求める前に、各医療分野にかかわる皆さんと御一緒に医療費の削減という問題に努力していきたいと思います。  ありがとうございました。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  88. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、増原義剛君。
  89. 増原義剛

    増原委員 21世紀クラブの増原でございます。  いろいろな御意見を今お聞きしておりまして、私もこの場で初めて発言をさせていただくわけでありますが、国民の多くの方々というんでしょうか、少なくとも私が接してきた方々の中には、これから先進国のどの国も経験したことがない大変な高齢化社会に突入していく、そういう中にあって、年金の問題あるいは医療の問題、さらには、この四月から実施されました介護保険の問題等々につきまして、大変な先行き不安を持たれております。  本日、健保法の一部改正法が議論をされているわけでありますが、そうした中で、まさにこれは一部改正法でありまして、いわゆる抜本的な改正というものは、ある意味では姿が見えていないところにあるのではないかなと思っております。  診療報酬の問題、薬価制度の問題あるいは保険料負担の問題、さらには高齢者医療の問題、いろいろ懸案はあると思うんですが、そうした中で、先ほど来の議論をお聞きしていますと、要は、医療保険制度でもつのか、はっきり言えば財政破綻ではないか。国の財政ほどひどくはありませんけれども、言ってみれば財政破綻を眼前に控えて、これをどういうふうに乗り切っていくのか。先ほどの参考人のどなたかの資料で、平成十年度で四兆円近い公的な負担があるわけですね。これで果たして保険と言えるのかということを私は思っております。要すれば、医療保険制度は実質的に崩壊しているのではないか。  ここらあたりをどういうふうにお考えになっているか、各参考人方々に、それぞれお立場はあると思うんですが、本当にどの国も経験したことがない大変な高齢化社会を迎える中にあって、今の保険制度のままで、ある意味で、診療報酬の問題にせよ、薬価の問題にせよ、あるいは保険料の問題にせよ、それを微調整していくだけで我が国の医療はもつんだろうか。保険制度でいいんだろうか、あるいは税というものをどう考えるのか。こういうことについて、それぞれのお立場方々から御意見をお聞きいたしたいと思います。  最初対馬参考人の方からお願いできたらと思います。
  90. 対馬忠明

    対馬参考人 今、保険制度が実質的に崩壊していないだろうかということですけれども、崩壊に瀕していることは事実だと思いますね。ただ、今足元で崩壊しているかと言われますと、まだぎりぎりこらえているという状況ではないかというふうに思っております。  保険でいくのか税でいくのかということにつきましては、今いろいろな審議会もしくは有識者会議等でも、基本的には保険でいくべきではないかというふうに答申なり議論が集約されていると聞いておりますし、私どももそれはそれでよろしいのではないかな、こういうふうに思っているわけです。  ただ、公費につきましては、今、例えば老人医療については三割の公費でございますけれども、それでもっていいかと言われますと、過去の経緯を見ていきますと、先ほど来お話がございましたけれども、若干減少しているようなところもございますし、今足元がこういう状況でございますので、公費の投入についてはもっと積極的にやっていただきたいというのが私ども意見でございます。
  91. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  先ほど本論のところで申し上げましたが、国保は、持ち出し額とかいろいろなことを勘案いたしますと、既に自立性を失っている、こういう表現をいたしました。したがって、何らかの抜本改革がなければ、国保制度そのもの自体を継続するのは非常に困難だと思っております。  それから、保険か税かという御意見があるわけでございますけれども、これは、市長会といたしましては、両方がやはりあると思います。まだ意見の集約を図るべきときではございませんので、集約をいたしておりませんが、あえて私見を申し上げますと、半分以上のお金を公費で出して本当にそれが保険なのかどうかというのは、基本的に思っております。  しかし、法律で決まって市町村保険者となって我々が実際に市民の皆さんのためにやるという立場からいけば、そんな議論は捨てて、必死になって頑張っているのが全国市町村現状ではなかろうか、このように思います。
  92. 村上忠行

    村上参考人 お答え申し上げます。  破綻の危機に瀕しているという状況で一刻の猶予もならないと思っておりますが、この原因は、老健拠出金と退職者拠出金がどんどんふえている。さらに、今後、毎年四%以上の割合高齢者比率がふえていくわけですから、高齢者比率がどんどん上がっていって、保険がもたなくなるのは明らかであります。  私が申し上げたいのは、いわゆる高齢者の生活をトータルでどう考えるかという視点がなければならない。単に医療の分野だけで、保険でつじつまが合うか合わないか、負担がどうだということでは、高齢者方々の老後生活というのは成り立たないわけでございます。  サラリーマン社会が本格的になっておりまして、老後を年金に頼っている方が既に六割を超えました。世の中で働いている方々、八割を超える方々がサラリーマンでございます。こういう人たちが年をとっていけば、老後生活というのは、年金をもらう、その中から医療介護をどうやっていくか、トータルで考えてもらわなきゃいけない。それがなければ、高齢者方々は体も一つ、懐も一つでございますから、一つだけ取り出してこれでいいかというのは、私は成り立たない議論になってくると思う。  トータルでどうするのかということを、私どもはこれまでも、五年前から行政、政治に問いただしてまいりましたけれども、なかなかうまくいかない。ようやく有識者会議がつくられまして一定の報告が出ましたけれども、あれは将来の安心を担保するものではなく、私に言わせますと、当初、将来の安心をどう国民に約束するのかということで有識者会議はつくられたはずでございますけれども、かえって反対に、不安をあおる報告書になっているということで、何を考えてあの報告書が出たのかよくわかりません。  そういう意味で、トータルで年金はこうあるべき、その中で高齢者方々医療負担給付、それから介護負担給付ということを考えるべきでございます。一概に、その辺をトータルで考えないで、このままでいいかどうかということは私はこれからは間違ってくるんだろうと思っていますから、その辺のことをあわせて我々として考えておりますのは、年金は、基礎年金は税で、当面、医療の方は何とか保険で、公費をふやす中でもたせられないか。保険のよさもございますから、そういう部分を医療の世界では生かすべきではないかと思っています。それから、介護の方も、やはりある程度保険でもたせられないか、こう思っています。  先ほど言いましたように、年金が既に前国会で給付が二割削減されました。トータルで老後生活がどうなるかということを我々自身が今検討中でございまして、そういう中で今後の道を見つけ出していきたい、こういうように考えております。  以上でございます。
  93. 室生昇

    室生参考人 医療保険そのものは、日本は皆保険制度、世界的にもいい制度だと私も思っております。この皆保険制度というのは、いわゆる保険ではなくて社会保障の一環としてなければならないということでございます。  特に現在、老人医療費増が問題になっておりますが、老人に対する考え方、手当ての仕方、これは、御老人方々が長年、社会的な生活をお送りになり、その中で多くの貢献をされて御老人になられた、この方々に対しては、やはり老後が安心して暮らせるようにしていくという点で、その一環として、医療についてもそのように位置づけるべきでございますし、先ほどの参考人もおっしゃいましたが、老人の生活そのもの全体が健やかで安心できるような生活でなくちゃいけない。  私どもの地域で、ボランティアの方々が独居老人に対して配食サービスを自主的に行っておられる。そういうことによって、今まで独居の非常に元気がなかった方々が、そういう方で交流ができ、元気になって病気もなくなってくるということはございますので、そういう意味では、やはり老人の生活基盤そのものを社会的に援助していくということを、国家的にもしていただく必要があろうかと思います。  それから、公費の多額の投入というのは既に保険として崩壊ではないかというような御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、医療保険というのは、やはり人間の最も重要な健康に対する保障でございますので、これは国家的にも援助もし、保障もしていく必要があるということでございます。  先ほども若干先生の方から御質問がありましたが、国のこれに対する負担というのが、例えば老人医療費に占める割合が、一九八三年には四四・九%ございました。ところが、一九九八年には三四・四%に減っております。国民健康保険に対する国の補助も、一九八三年に四五%から三八・五%へと減っております。それから、政府管掌の保険に対する同様のものも、一六・四%が一三%というふうに一九九〇年代に減っております。このように、どんどんと医療保険に対する国の負担を軽減してきておる、これが現在の健康保険制度を大変な財政的な危機に追いやっておる一番大きな原因だと思いますので、その点をまずは回復していただく必要があろうかというふうに思います。  それから、もう一つは、先進諸外国では、企業の健康保険に対する負担割合が、被保険者である雇用されておる方々の約二倍、七、三の割合で企業主の方が負担してございます。日本の場合には多重構造がございますので、中小企業の方々にそこまでの負担をお願いするのは無理かと思いますが、少なくとも、大企業におかれましては、負担を今までよりもっと多くしていただいて、そういう中で、従業員の健康の保全あるいは従業員が将来年老いたときにも、健康で健やかな生活を保障できるようなことについて努力していただく必要があろうかというふうに思います。  以上であります。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 増原義剛

    増原委員 どうもありがとうございました。  今、参考人方々の御意見をお聞きしたのでありますが、私は幾つか自分なりに思っていることがあります。  先ほど室生参考人がおっしゃいましたけれども、ボランティアの方々が炊き出しをして地域づくりをしていく、ここなんですね。これと医療保険制度を一緒にされては困るのでありまして、要は、憲法で言う「健康で文化的な最低限度の生活」、それは何か、ナショナルミニマムとは何かということをこれからきちんと議論をしていかなくてはいけないわけであります。そうした中で、どこまでが公的な分野が受け持つのか、今度はマーケットが受け持つのか、あるいは地域のボランティアが受け持つのか、これがきちんとできないといけないわけであります。  喜多参考人が言われましたが、私もそれぞれの地域でいろいろ市町村長さん方にお聞きしたり、現場の方々にお聞きします。このたび、四月から導入されます介護保険にしましても、いよいよ徴収が始まったわけでありますが、極めて難しい。私は、国民年金と同じような状況が、三人に一人は払わないというふうな状況保険制度で生じるのではないかという強い危惧を持っておるような次第であります。  そういう意味で、もう少し国民の実態に合った議論をしていかないと、制度がどんどん空洞化、形骸化していくのではないか。信用されない制度という状況が、今どんどん生まれつつあります。そういう意味で、現場の意見をきちっと聞いてやっていくことが大事でないかな、角を矯めて牛を殺すことにならぬようにすることが一番大事ではないかなというふうに思っております。  そういう意味で、先ほど村上参考人の方から、トータルで考えていくという御指摘がございました。私は、まさにそうだなという感じがいたしております。日本の場合ですと、七十歳になると、六十五歳になると、もう銀行からの融資が受けられないとかありますが、欧米ではそういうことはありません。不動産を担保にしてきちっとした融資制度があります。そういう形での安心を、セーフティーネットをつくっていく、あるいはボランティアをどういうふうに組み合わせていくかという、トータルで物事を考えていく必要があるのかなと思っております。  ちょうど時間が参りました。どうもありがとうございました。
  95. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小池百合子さん。
  96. 小池百合子

    ○小池委員 保守党の小池百合子でございます。  四名の参考人皆様方、御苦労さまでございます。私が最後でございますので、あとしばらくおつき合いを願いたいと存じます。  全く違う話でございますけれども、アメリカの大統領選、もう間近になりました。これまでの赤字財政から転じまして、今はそれが黒字に転じて、その余剰分を何に使うか。社会保障を強化するのか、それとも減税に回すのか、大変うらやましい議論が繰り広げられているわけでございます。  ポイントは、やはり経済の回復、景気の回復がアメリカの好循環をもたらしているのだな、であるならば、まず現在の日本の景気の回復、これは目先のことのみならず、やはりこのことを抜本的に考えていかなければならない。と同時に、やはりアメリカと違いまして、高齢化がすさまじい勢いで進んでいる我が国の人口構造の問題等々を考えまして、今回の健康保険法の一部の改正ということにつながっているわけでございます。  皆さんそれぞれ、もっと何らかの抜本改革ということを口々におっしゃっておられたように思います。しかしながら、今回、大きな一歩につながるものということを踏まえまして伺わせていただきたいと思っております。  何よりも老人保健制度改革ということが一番大きなポイントになってきているわけでございます。四名の方それぞれに伺わせていただきたいと思いますが、老人保健制度の一部負担金の定率制への移行でございますけれども定率制に移行いたしましても、上限額を設けておりますので、余り影響はないものとは考えておりますけれども、この効果のほどについてどういうふうな評価をなさっておられるのか伺わせていただきたい。  と同時に、抜本改革をというお話でございました。一言で言うと、皆様がイメージなさる抜本改革とは一体何ぞやということ、この二点、それぞれに伺わせていただきます。
  97. 対馬忠明

    対馬参考人 まず、老人定率制への移行ですけれども、上限も設けられておりますし、ほかの、例えば薬剤費の問題等々ありますので、老人の一部負担という観点から見ますと、たしか七・七%ぐらいの負担が七・九%ぐらいの負担になるということですから、全体としては余り大きな影響はないというふうには聞いております。  ただ、問題は、その〇・二%の問題ではなくて、コスト意識の問題でありますとか、介護保険との整合性の問題でありますとか、老人若人負担公平性の問題でありますとか、ないしは自助、共助、公助、この位置づけの中で自助をどう考えていくか。こういった大きな枠組みの中では非常に重要な第一歩ではないかな、こういうふうに思って、私自身は大変評価をしております。  それから、抜本改革とは一体何ぞやということでございますけれども、今、足元で起きているのは、やはり医療制度が崩壊していく、結果的に見ますと、良質な医療国民みんなが受けられるという体制が崩壊に瀕しているわけですね。ですから、抜本改革を何のためにやるかということであれば、今の介護保険制度を維持して良質な医療をいかに安定的に持っていくか、こういうことだと思うのですね。  それで、その場合に、今まで一番欠けていたのは恐らく効率性の概念ではないか。効率性が必ずしも十分ではなかった。これまでは高度成長なり安定成長の中で何とかもってきましたけれども、今、足元がこういった状況の中では、やはり効率性というのをもっと強く入れていかないともたない、こういうことではないかというふうに私自身は考えます。  中身になりますと、どうしても四本柱、こうなってきまして、高齢者医療云々となってくるわけですけれども、その中でも一番大きいのは、高齢者医療制度をどう持っていくかということだというふうに思います。そのときには、先ほど申し上げました老人の一割定率負担が一つの柱になっていくと思いますし、また、公的な負担割合も今の老人の三割ではとてももちませんので、ぜひもっとふやしていただきたい。  それ以外にも、もろもろの効率化の観点からメスを入れていって、何とかして今の医療制度を二十一世紀にも安定的に維持していくということが最大の課題ではないか、こういうふうに思います。  以上です。
  98. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  まず、抜本改革の方向性でございますが、本論でも申し上げましたように、市長会も町村会も、そして国保連合会も、申し上げておるのは保険制度の一本化ということでございます。  この考え方についてはいろいろ議論がございますので、一朝一夕にはまいらないと思いますけれども、少なくとも、極めて所得の少ない方々で成り立っている国民健康保険保険料が一番高くて、受ける給付が一番低いというのは国民的にも納得できないことではないか、早急に抜本改革をしなければ、いわゆる公平性というものが保てないのではないか、このように思っています。  その中で、老人保健制度定率制でございますが、これは、先ほども他の方にもお答えをいたしました。介護保険で一割と決まっております限り、やはり自助という面から、また、自己責任という面からも一割はやむを得ないのではないか。お年寄りでも非常に高額の所得をお持ちの方がございます。そういう方は、やはりもっと保険料を取ってもいいのじゃないか、そういう考えも持っておることをこの際、披瀝申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  99. 村上忠行

    村上参考人 お答え申します。  私は、今回の老人の一割負担定率化という問題が抜本改革第一歩とは思っておりません。いわゆる負担増が抜本改革第一歩というのは、私はおかしい話だろうと思う。  先ほど来申し上げていますように、九七年には現役世代が一割から二割に上がりました。薬剤も別途負担になりました。高齢者もそのようになりました。なおかつ保険料も、政管健保で千分の三引き上げられたわけですね。それから今回でございます。負担引き上げ抜本改革第一歩というならば、もう抜本改革は本当は進んでいなきゃいけない。  私は、物事には順序というのは非常に大切だろうと思うんですね。先ほどは景気の問題、小池先生がおっしゃいましたけれども、やはり順序が景気回復にも重要なように、我々は医療問題についても順序が重要だと思っています。これは順序が間違っているというので、私ども第一歩とは思っていないということでございます。  それから、私は、やはり今後の高齢化社会で一番大切にしなきゃいけないのは、今国民の皆さん方が、これだけ経済大国になりながら、九割の人たちが老後に不安を持っておる、ここだろうと思いますね。ここを安心に変えなければ、ある意味で高齢者方々は持っている資産を私は使わないと思いますし、消費も停滞したままだろう。だから、安心の給付にどう切りかえられるかということだろうと思います。  しかし、給付が安心になりますと、出る方がいっぱい出ていくのは、これまた制度として成り立たぬわけでございまして、そのポイントは、現役世代の方の医療費の増嵩は今とまっております、高齢者方々医療費の増嵩が今後大きなポイントを持ってくると思っております。ここにどれだけの抑制をかけられるか。  先ほど来言っておりますように、なぜ日本だけが五倍かかるのでしょうか。ここに徹底的にメスを入れて、そこをヨーロッパ並みの三倍ぐらいにとどめていければ道筋は見えてくる、かように考えております。  以上でございます。
  100. 室生昇

    室生参考人 私のお配りいたしました資料の三をごらんいただきながらお聞き願いたいと思います。  四月から介護保険実施されております。この表に書いておりますように、在宅医療をやってみえる方で、平均的な、医師が月二回訪問診療、看護婦が週二回訪問看護を行った場合の例がここに出ております。その内訳が真ん中に書いてございまして、介護保険実施後の現状では、医療保険の方で千六十円、それから介護保険の方から訪問看護、在宅療養管理指導料ということで四千九百十円。ということで、この医療保険の方は二千百二十円ですが、介護保険も含めた現在では、五千九百七十円というふうになっております。  これは介護保険の方が一割負担ということになっておりますので、今後、医療の方も一割負担になった場合がその下の段に書いてございまして、在宅総合で院内処方をやっておる一番多い例でございますが、これが二千六百円となります。訪問診療料が月二回で千七百二十円、それから介護保険の方は一割負担で四千九百十円ということで、七千九百十円。このように、一・五倍ぐらいにふえるわけでございます。  だから、定率にいたしますと、このように医療だけではなくて、介護保険の部分も含めて非常に負担があるということでございます。  それからもう一つは、上限を三千円ないし五千円に決めておるということから、負担はそれほどにはないのじゃないかという御指摘でございますが、ある調査では、御老人は幾多の御病気を持っておみえになりまして、二つ以上の医療機関にかかってみえる方が大勢おみえになります。平均して一・八医療機関というふうに数字が出ております。そういたしますと、上限が三千円あるいは五千円でございましても、二つかかっておりますと、六千円、一万円というふうになりますし、眼科、整形外科、内科と三つになりますと、これはその三倍になるということでございますので、上限がありましても、大変な負担になるということであります。それと、今の介護保険の利用料の一割負担ということが加わっておる方になりますと、さらにそれがふえておるということでございますので、そういう点では非常な負担になるというふうになります。  そして、老人の患者さんの負担、これをこのようにすると、重症になればなるほど負担が多いというので、老人医療費は、だけれども、先ほど御指摘がありましたように、打ち出の小づちがないのでそれは難しいというお話がありましたが、老人医療費負担あり方については、一つは、以前の措置制度のように収入に応じた自己負担を設定するという方法がありますが、これは非常に窓口で煩雑になりまして、医療機関としてはいろいろな問題を起こす危険性があるということであります。  私としては、もう一つの方法として、自己負担は定額に抑えて、保険料なり税金で経済的能力に応じた負担をしていただくというのが、社会保障制度として健全なあり方ではないかというふうに思います。  経済的能力という点で補足いたしますと、高齢者の貯蓄や資産の問題がよく出ておりますが、これについては慎重な検討が必要で、貯蓄といっても、平均値は若年層より高いのですけれども高齢者世帯のうち貯蓄なしという世帯は一五%存在しております。半数は四百万円未満の貯蓄しかありませんし、持ち家のことも、高齢者のいる世帯の八五%は持ち家でございますが、現在住んでいるうちを切り売りして医療介護の費用に回すわけにはいきません。また、持ち家に住んでいない部分、ひとり暮らしの高齢者では、三五%が賃貸住宅に住んでおります。こうした部分に光を当てることがやはり必要ではなかろうかというふうに思います。  負担あり方という点では、老人医療費に対する国庫負担の問題があります。一九三八年には四四・九%だったというのが、現状では一〇%低くなっておるというのは、さっき申したとおりでございますので、その辺に光を当てることによって高齢者福祉そのものを底上げすれば、高齢者も安心して貯金もいろいろお使いになって、景気の回復にも役立つのじゃないかというふうに思っております。  以上でございます。
  101. 小池百合子

    ○小池委員 社会保障と今の経済のお話、まさに原因と結果のような関係にあろうかと思います。また、共通点もあり、全く違う点もあるというそれぞれの参考人のお話でございましたけれども、今のお話をまさに参考とさせていただいて、着実な運用を進めるように、今回の健保法の改正、実りのあるものにしていきたいものだと考えております。  また、先ほどの高齢者のお話でございますけれども、有識者会議でも、能力に応じ負担を分かち合う、そういう内容のものも出されておりますし、また、フローはないけれども、ストックは持っているという方々高齢者に多いわけで、リバースモーゲージなどの普及もやはり考えていくというような点で、抜本的、私も、保険制度は、はっきり申し上げて、負担がこれだけ大きくなって、それでも保険というのかという認識を持っております。また、徴収その他の面で公平性が欠けているという大きな問題点もあろうかと思います。その意味でも、今後ともいろいろな改革を積み重ねていく必要があろうかということを最後に感想を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  102. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言御礼を申し上げます。  参考人皆様方には、貴重な御意見を率直にお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。  午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  103. 遠藤武彦

    遠藤委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  午前に引き続き、両案審査のため、参考人方々から御意見を聴取した後、質疑を行います。  午後は、主に医療法等の一部を改正する法律案について、参考人として、日本医師会政策担当会長日本医師会総合政策研究機構所長糸氏英吉君、医事評論家行天良雄君、NPO大阪精神医療人権センター代表理事・弁護士里見和夫君、医療法人財団天心堂へつぎ病院理事長松本文六君、以上の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用のところをわざわざお越しくださいまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を述べていただき、審査参考にさせていただければと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず糸氏参考人にお願い申し上げます。
  104. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 日本医師会の糸氏でございます。  本日は、医療法並びに健康保険法の一部改正について意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、心から御礼申し上げます。  まずは総論的に、医療は、日本国憲法に示す国民の生存権、健康権を守る上で極めて重大な意義を持っております。また、社会保障の基本となるものであります。目先の対応に追われることなく、国家の理念を反映させ、そして国の将来像を描くという姿勢で臨むべきであろう、かように考えております。  先般発表されたWHOのレポートによりますと、日本の医療制度は、フランスと同じくトップグループに属する制度として高く評価されております。  一方、戦後半世紀以上を経て、我が国の医療システムが大きな転換期を迎えていることも事実でございます。医療制度抜本改革に向けてさまざまな議論が行われておりますけれども、二十一世紀の我が国の医療にとって必要かつ不可欠な原則を述べたいと思います。  その一つは、医療へのアクセスのよさを今後とも確保しなければならないということであります。  我が国を世界一の長寿国に達成させた原動力の一つが、一枚の保険証で、いつでも、どこでも、だれもが良質な医療を受けられる環境にあります。この環境を守っていくには、まず医療法において十分な提供体制の確保という視点が必要です。また、健康保険法においては国民保険体制の維持と現物給付制度の堅持ということです。このことを通して、国民が本当に安心して医療を享受できる環境をより整備していくことが肝要かと思います。  もう一つは、二十一世紀の超高齢社会においても持続可能な提供体制と保険制度を早急に構築しなければならないということであります。  医療法においては、高齢化に伴う対応として、長期療養者に適した病床の確保と在宅医療の整備、これらに伴うソフト、ハード両面の絶対数の不足をどのように補っていくかということなどを視野に入れなくてはいけません。保険制度においては、従来の拠出金を主体とした老人医療運営から脱却し、高齢者医療の特性を考慮した、独立した保険制度を構築していかねばなりません。そのためには、財源負担あり方、診療報酬のあり方など、一般医療と違った独特なものを考えていかねばならないと思います。  今後医療法はどうあるべきかを考えますと、現行医療法は昭和二十三年に制定されておりますが、当時は、貧困と混乱の中で、医療提供の量に主眼が置かれたのはやむを得ないことと思います。量の確保が今後とも必要なことは言うまでもありませんが、半世紀を経た今日、別の視点も必要になってくると思います。  まず第一は、今後の人口動態から的確な需要予測を行うということであります。そして、これに対応し得るハードとマンパワーの提供体制を、機能分担を考慮しながらきめ細かく整備していくことが大事であります。  第二番目に、医療というのは極めて個別性、地域性が強いということの認識の必要性です。従来のようにただ単に設備、構造、人員について医療法の基準を満たしているからよいという画一的、統制的な規制を緩和して、医療提供者が当該医療機関の機能、地域特性、患者の病態に対応できるよう柔軟性を持たせることが必要だ、かように考えております。  また、医療における営利法人の参入についてであります。  最近、営利法人の医療参入に関して各方面で議論されております。しかし、残念ながら、本質から外れた議論が多いと言わざるを得ません。  そもそも、現状、病院の開設主体の約半数は医療法人であります。この医療法人を理解することが大切であります。医療が、非営利であることを体現する規範的法人とさえ言えるかと思います。そのために、事業展開においては種々の規制を甘んじて受け入れております。これに対して、株式会社を初めとする営利法人には事業展開に対する基本的な制約がないことは御承知のとおりであります。従来営利法人の医療本体への参入を認めてこなかった理由は、医療提供という行為が極めて公共性の高いものであるからであります。  視点を変えると、営利法人は既に医療の周辺部分には多く参入していると言えます。例えば、保険医療費の二〇%以上を占める薬剤費は、製薬メーカーという営利法人の売上高に大きく寄与しております。また、国民医療費ベースで二兆円を超える調剤薬局医療費ですが、その経営主体は営利、非営利が併存しております。  一方、介護保険の実例を見ればわかるように、営利企業の参入は大きな混乱を招いております。市場で調達された資金が介護サービスの質の向上に使われず、巨額な広告宣伝費と化していることは御存じのとおりです。したがって、営利法人の参入は、医療の周辺部分において認め、本体部分についてはこれを認めないという考え方で対応すべきものと考えております。  政府審議会や規制改革委員会の議論の中では、競争原理の導入を一つの理由としておりますけれども国民保険体制の中で、診療報酬がいわゆる公定価格として設定されていることを前提とすれば、現在以上の競争が行われることはない、かように思います。  現状でも、国民は、どこの医療機関にかかろうと自由であります。医療機関や医師を変えることもまた自由であります。そういう意味では、既に競争原理は働いていると言えます。営利法人の参入によってこの競争がさらによく機能するというエビデンスは全くございません。  経営行動においては、営利法人も医療法人も一定の再生産費用の確保を目指すことは同じですが、営利法人は、これに加えて配当することをさらに目指さざるを得ません。すなわち、営利法人が持つ会計構造は必然的に医療費の高騰を生む要因となるものと考えております。したがって、医療への営利法人の参入については、これを容認すべきではない、かように考えております。  次に、看護職員の人員配置基準についてであります。  今回の改正案においては、一般病床の看護職員人員配置基準が四対一から三対一へ規制強化される内容が盛り込まれております。当初、日本医師会はこれに強く反対いたしました。その理由は、次のようなことからであります。  そもそも医療法の基準は、最低基準を定めるというのが趣旨でございます。地域の特性を無視してこれを画一的に引き上げるべきものではないということであります。現に、各病院の機能や特性に応じ人員配置を厚くすることは自由ですし、社会保険診療報酬上も、それに対応した評価体系がつくられております。  看護体制や機能というのは、入院患者さんへの個別的対応こそ最も優先されるべきものでありまして、病棟に人を配置すれば自然に質の高い看護が具現できる、かように考えるのはおかしいのであります。僻地医療がその例ですが、地域によっては、低い医療資源の配分を前提として医療を継続せざるを得ない場合もあります。  一方、中医協の医療経済実態調査の結果からも、今や、病院経営は損益分岐点比率が一〇〇%に達しようという極めて危険な状態にあることは明らかであります。国公立病院は軒並み赤字であります。  このような状況の中で、診療報酬上の手当てがないままに人員基準を引き上げることは暴挙とも言えます。コストを的確に反映し、医療の再生産を可能とする診療報酬体系の確立が今まさに求められていることを、厚生行政は強く認識すべきであると思います。  今後高齢者があふれてくる時代を迎えて、看護体制の課題は、ILOの勧告に示す三層構造の中でどのように役割分担をしていくかということだと思います。すなわち、看護婦、准看護婦、看護補助者が、機能的かつ効率的にその職務を遂行するためには、それぞれがどのような役割を果たすべきか。日本医師会は、二十一世紀の看護体制のあるべき姿について、あらゆるデータを分析して現在検討を進めており、近く公表する予定であります。  次に、診療情報の開示についてでございます。  そもそも、診療情報の開示、提供とは、日常診療の中で、医師と患者とがその情報をできるだけ共有し、医師、患者の信頼関係を醸成し、共同して疾病を克服するためのものであると考えております。  基本的な情報の開示のあり方は、開示をしてはいけないもの以外はすべて開示するということで臨むべきであると考えております。  医療の現場を考えてみてください。開示してはいけないものは、個々のケースによって全く違います。命にかかわる不治の病であっても、開示した結果が患者さんのその後の生活にとってよかったという場合もあるでしょうし、一方、開示しない方がよかったという場合もあります。このように、何を開示すべきか、あるいは開示してはいけないかは極めて微妙な問題で、それは臨床的な医師、患者関係によって多くの段階の調整を経て決まるものだと思います。  このような視点に立てば、法的な義務権利関係による強制化になじむものではない、かように思います。  もちろん、日本医師会としても、診療情報提供促進の重要性は強く認識しており、昨年、診療情報の提供に関する指針を独自に作成し、十五万人の会員に配付するとともに、その普及に全力を傾けております。現に、各都道府県医師会及び郡市区医師会に設置をお願いしております診療情報提供に係る苦情相談受付窓口は、本年五月現在、全国で四百七十五カ所に達しています。また、苦情処理機関としての診療情報提供推進委員会については、全国で百七十八カ所に設置されております。  このような地道な活動を真摯な努力によって継続していくことが大切な対応である、かように考えております。  健保法のことでございますけれども医療保険制度改革に対する日本医師会の考え方を述べてみたいと思います。  本年八月、日本医師会は、二〇一五年の医療のグランドデザインを発表し、抜本改革に対する考え方を具体的に提案いたしました。この中で核となるのは、高齢者医療制度の創設であります。これを中心に診療報酬改革などの抜本改革を進めるべきと考えております。  高齢者医療制度のポイントは、すべての七十五歳以上の後期高齢者を被保険者とすることによって、慢性疾患が主流となる当該世代への医療提供あり方の中心を、キュアからケアへと移行させます。そして、医療度や痴呆度を加味した合理的な診療報酬包括払い方式を開発いたします。あわせて、国民の合意形成を図りながら、終末期における医療の提供方法を徐々に確立していくことによって、高齢者に対する医療費の出血を医療担当者みずからの手でとめるというものであります。  後期高齢者は健康に対するリスクが極めて高いことから、制度の基本理念を保険から保障へと移行させ、財源的には、医療保険保険者からの老人保健拠出金制度廃止し、公費を重点的に投入することを提案しています。あわせて、低所得者以外の加入者みずからが保険料を支払うことによって、制度への参加意識を促すという考え方であります。
  105. 遠藤武彦

    遠藤委員長 糸氏参考人にお願い申し上げます。お約束の時間が過ぎましたので、結論をお急ぎください。
  106. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 はい。  一般医療保険制度は、原則として保険料と自己負担による保険原理で運営し、予防医療の充実、高度医療の普及などを図ることにより、疾病の発症や重症化を回避しようという考えであります。制度の創設とあわせて、現場の対応として切り離して考えることのできない医療介護を、高齢者、一般世代それぞれの保険制度の中で統合していくということも提案しております。  生産世代人口が減少していく中、めりはりのある保険制度を構築し、具体的な政策を加味した目標設定が必要なのではないかと考えております。  以上でございます。(拍手)
  107. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、行天参考人にお願い申し上げます。
  108. 行天良雄

    行天参考人 お招きをいただきまして、ありがとうございます。  ちょっと私自身の紹介を兼ねまして、医療に対してどういう立場から発言させていただくかということを御理解いただきたいと思います。  私、一九二六年生まれでございますので、逆算していただくとおわかりのとおりの年齢でして、たまたま医学部におりましたけれども、ちょうど時代が、当時は大変な混乱期で、占領アメリカ軍の病院に単なるアルバイトとして仕事を求めてまいりました。そして、その後、縁ありましてNHKに入りまして、約四十年以上にわたりまして、保健、医療福祉という番組の制作だけをやってまいりました。したがって、振り返ってみますと、日本の医療の歩みと同時に私自身がそれをいや応なしに体験させられたという環境の中で今日を迎えております。  振り返りますと、つくづく私は、まず、ちょうど日本の医療保険制度がスタートしました六一年、新国民健康保険法がスタートしたわけでございますけれども、その前後もしくは少し前というのも実際に見ておりまして、皆保険制度がもたらしたプラスというものがいかに強烈なものであり、しかも日本人全体と言っていいような人たちの生活を変えたかということを、一般の人々の立場で、文字どおり、じかに感じながら見てまいりました。  そして、その結論として、ちょうど今糸氏参考人がおっしゃったように、私は、日本の皆保険と言われております医療保険制度というのは、今世紀最大の文化財と言っていいようなすばらしいものを持ち続けてきたというふうに思っております。西欧先進諸国いずれも、何らかの形で医療保険というのを持っておりますけれども、日本ほど、給付の質をある程度維持しながら、確かに部分的なお金の違いは出ておりますけれども、これだけのレベルを維持し続けて三十九年間という国はどこにもございません。  ですから、これが今日の日本人の健康観と医療観というものをずっとつくり上げてまいりまして、このもたらしたプラスははかり知ることができないわけでございますけれども、何といっても、四十年を超えるものというのは、どうしても、そこに当然の権利としての気持ちが定着してしまっております。  それから、これはまた後ほどの問題になりますけれども、一番大きな問題は、医療供給側の医師並びにそのほかの集団の方たちも、同じようにこの皆保険というものへの依存体質ができ上がっておりまして、日本はいわゆる医療保険を中心にして、提供側とそれを受ける利用側、この二つが一つの保険の軸の中で健康観、医療観というものをつくってきた珍しい国だというふうに思っております。  さて、それが、先ほどもお話に出ましたように、このままいけば全く文句ないわけでございますけれども、二つの要因によって、相当大きな変動を覚悟しなければならなくなってまいりました。  一つは、御承知のとおりの高齢化の異常な加速です。この加速は、単なる加速ではなくて、まさに異常という言葉がぴったり当たるくらいのすごいスピードでございまして、ちょうど七〇年に七・一%で高齢化社会に入った日本は、その後、わずか二十四年間で一四%を突破いたしました。  この異常な加速性というのは、当然予想されます予想よりもすべて前倒しになっております。今いろいろと問題になっております超高齢社会、その前段階として二〇%の高齢化率というのが言われておりますけれども、これが間もなく二五%、そして三十数%という、よく言われる四人に一人どころではなく、三人に一人という状況も十分予想されるわけでございまして、これは文字どおり人類が初めて体験する、史上空前の、だれも知らないあしたであるということだけは十分に御理解いただきたいわけです。  これは、単なる高齢化率がどうこうという問題ではないし、また高齢者がふえるとかふえないといったレベルではないということをまず申し上げておきたいわけです。  それからもう一つは、もう日本だけでは、この高齢化の中での人手不足ということをカバーすることは不可能でございます。ということは、国際化と俗に言われているような、外国人の導入あるいはお手伝いをお願いするというような問題を含めまして、これは移住してくださる労働者層を中心としましてのヒューマンリソースによるカバーというのはどうしても避けられないし、またそれとは別に、よく言われております財政経済問題においても、各国との間のバランスが、日本だけの財源というものに頼ってまいりましたこの国の行き方、あり方という問題に大きな揺さぶりをかけていることは御承知のとおりでございまして、基盤がぐらつきましたら、皆保険制度の今までのような維持というのは非常に難しくなってくることは当然であるわけでございます。  さてそこで、そうなってまいりますと、では具体的に何をしたらいいかというときに、先生方のところにちょっとお配りしてございます簡単なマトリックスがございますけれども、何といっても、病気と言われているものの大きな変化、これだけはぜひ御了解いただきたいと私は思うのです。  病気というのは、一般の人たちはどう思っていたかといえば、当然、急性感染症を中心といたしまして、かかったら死ぬか生きるか、しかも変化は劇的に速いと。これが、今様の言葉で言えば、急性への対応でございます。非常に早く結果がわかったわけでございます。  ところが、今それはずっと減っておりまして、右の方に書いておりますように、老化をベースとする寿命という物の考え方、つまり今日本では、高齢だ、長命だと言われておりますけれども国民の大半は長生きするのは当然だというふうに思っております。したがって、運の悪い方だけが短命ということはありますけれども、原則的には、かつて考えられなかった長寿、長命の時代を迎えております。すると、次に考えてくることは、そこで何とかして健康で長生きしたい。逆に言いますと、長生きが前提であれば、健康で、ある程度の寿命の終わりを迎えたいという死生観の問題に急速に転換を始めております。  これが日本の医療観の大きな違いでございますけれども、特に右の上に書いてございます技術は、CT、コンピューテッドトモグラフィーそのほかの発見によって随分診断が進みましたけれども、これから出てまいります数年後というのは、いわゆる遺伝子を中心としまして、医療と言われていたものの技術を根底から変えるくらいの大きな変化というのは十分考えられるわけでございます。そして何よりも、健康観、医療観というものが大きく形を変えるだろうと思います。  そこで、きょうテーマになっております医療法絡みの問題でございますけれども、やはりみんなが寄ってたかってその最新の技術を集中しなければならない急性対応の施設、それともう一つ、寿命に向かって間違いなく歩いていけるような指導、そしてそれに対する看護と申しますか、介護といったものを、療養型、そのほかという、この二極に分化しながら今後の問題点の整理をやっていく時代ではないか。後者の方はお世話を中心として温かい雰囲気、前者の方は取り入れられる最高の技術を集中化する、当然こういう問題が一番望まれるのではないかというふうに思っております。  死亡の順位にいたしましては、申し上げるまでもなく、これはもう一目瞭然でございまして、かつては、結核、二番目に肺炎、呼吸器系、三番目に赤痢、疫痢、コレラ、腸チフス、パラチフスといったような消化器系の感染症、それが今、御存じのとおり、大手三大死因と言われております、がん、それから次に脳中枢血管系の動脈硬化ベースの疾患、三番目に心臓冠動脈の問題というのが続いておりまして、これらをいずれも国民は、病気ととらえるよりも、むしろ寿命につながる一つの運命というふうに思っております。  なぜならば、人間は必ず死ぬものでございますから、死に何をもってみずからが求め、また設計していくかという大事な問題にぶつかっておりますと、今までの物の考え方で医療というものを進めていく時代はぼつぼつ、しかも急速に変えていかなければならない。  そして、それに従事する人々の養成であるとか、あるいは配置基準という問題もまた同じく、当然変えるべき時期に来ていると思いますが、お約束の十分でございますので、とりあえず、後は御質問そのほかをいただければというふうに思っております。(拍手)
  109. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、里見参考人にお願い申し上げます。
  110. 里見和夫

    ○里見参考人 お招きいただきまして、どうもありがとうございます。  私は、医療法の改正の問題に関して、特に、一般科と差別しない精神科医療の実現についてお話をさせていただきたいと思います。私がきょう話をさせていただく内容は、お手元に三枚のレジュメとしてお配りしておりますので、それをごらんください。  私は、そのレジュメにも書きましたが、NPO大阪精神医療人権センターの代表理事をしております弁護士でございます。  大阪精神医療人権センターは、一九八五年の十一月に設立をいたしました。この一九八五年というのは、その一年前、一九八四年に、さきの精神衛生法の改正の契機になりました栃木県宇都宮病院事件が発覚した年でございます。私どもは、密室と言われる、閉鎖空間である精神病院の中で著しい人権侵害が行われているという実態を目の当たりにしまして、大阪において、特に精神病院に入院している患者さんの人権擁護活動を行うということを目的として、この精神医療人権センターを設立いたしました。以後、今日まで十五年にわたって活動を続けてきております。  この栃木県宇都宮病院では、今閉鎖空間と申し上げましたけれども、その中で、著しい人権侵害、医療とは言えないすさまじい実態、そして絶対的な医師、看護者の不足という事実が次々に明らかになりました。  そして、平成九年三月、大阪で大和川病院事件というのがマスコミ等をにぎわすに至りました。これは、西の宇都宮病院事件と言われる事件であります。ことしの四月から施行されました改正精神保健福祉法、この中身に非常に大きな影響を与えるきっかけとなった事件の一つであります。  この一九八四年の宇都宮病院事件、そして平成九年、一九九七年に発覚をした大阪の大和川病院事件、この間に、それでは精神科医療を取り巻く状況が大きく変化したのだろうか、宇都宮病院事件で指摘された医師、看護者の絶対的な不足というのが大和川病院事件の時代には解決されていたのだろうかというと、全くそうではありません。ほとんど宇都宮病院事件と同じことが明るみになっております。絶対的な医師、看護者の不足であります。そして、これを容認しているのが、いわゆる医療法の精神科特例と言われるものでございました。  私は、私自身がみずからこの事件に取り組んだ立場から、大和川病院事件の経験を踏まえて、この精神科特例はぜひ廃止されるべきものだということを皆さんに訴えたいと思います。  実は、大和川病院事件というのは、私どもが手がけた平成五年三月の事件、これはむしろ第三次大和川病院事件と言われるべきものでございまして、この病院は、そのはるか二十年前に、一九六九年、昭和四十四年に、看護者による患者傷害致死事件というのを起こしております。  この事件で刑事裁判を受けた看護者がいるわけですが、その刑事事件の判決の中で、この大和川病院における劣悪な医療実態、医師、看護者の絶対的な不足、医療とは言えない実態、これが大阪地方裁判所の刑事裁判の判決の中で明確に指摘されております。当時、大阪府は、大和川病院に対して厳格な指導が必要だということを表明しておりました。  ところが、それからさらに十年たった一九七九年、昭和五十四年に再び、大和川病院で看護者が患者さんを殴り殺すという傷害致死事件が発生したわけであります。このときも大阪府は、病院の医師、看護者の絶対的な不足、これは後ほど述べます精神科特例ではるかに引き下げられているその基準すら満たしていないという絶対的な不足、これを大阪府は認め、厳格な指導が必要だということをまた改めて表明しておりました。  ところが、それからさらに十年以上たった一九九三年、平成五年に、病院内で暴行を受けた患者さんが転院先の病院で死亡するという事件が発覚をしました。精神障害者を抱えた遺族の方の中には、家族の厄介者が死んだということで、それを特に事件にするというような積極的な意向を示さない場合もございます。しかし、この遺族は、なぜ自分たちの家族が死んだのか、そのことを明らかにしたいという強い意欲を持っておりました。そして、私どものところに相談に来ました。そしてまた、転院先の病院の医師が、このような精神病院の実態、これはやはり放置しておけないということで、全面的な協力を約束してくれました。そのことによって初めて、この大和川病院事件の問題が明らかになってきたわけであります。  この大和川病院の医師、看護者は絶対的に不足している。この経営者が、他に経営する二病院といわばかけ持ちの名簿をつくって、先ほど申し上げたはるかに低い水準の精神科特例をさも満たしているかのような名簿を作成していたという事実があります。私どもは、平成五年三月にこの相談を受けて以来、大阪府に繰り返し、この大和川病院のそういう医師、看護者の絶対的な不足の実態を訴えました。  しかし、皆さん、平成九年三月に発覚するまで、マスコミ等で取り上げられるまで、約四年間にわたって私どもの訴えは残念ながら大阪府が全面的に取り上げるには至っておりませんでした。なぜか。精神病院は特別だ、そういう発想が根底にあるからであります。その根底に最も大きく影響を与えているのが、この精神科特例であります。精神病院の医師の数は一般科の三分の一でよろしい、精神病院の看護者の数は一般科の三分の二でよろしい。しかも、その基準すら満たしていないという病院、この十月二十五日に厚生省の担当者がこの審議の中で明らかにしたところでも、二九%に及ぶ病院がその基準すら満たしていないということが明らかにされております。  一般科よりもはるかに低く設定された基準すら満たしていない、そういう精神病院の実情、これを私どもはこの亡くなった患者さんの損害賠償請求の裁判の中で取り上げました。裁判所は、私どもの訴えが証拠によって裏づけられているということで、この病院の医師の数、看護者の数が基準すら満たしていない、したがって適正な医療と言える実態ではない、その結果患者が死亡するに至ったということを明確に認定して、遺族の損害賠償請求を認めました。  私どもは、この事件を契機にというか、そもそも精神医療人権センターを発足させた一九八五年から一貫して、精神科特例は撤廃すべきだということを訴えてまいりました。この一九八四年の宇都宮病院事件の翌年に我が国に調査に参りましたICJ、国際法律家委員会の調査団も、日本の精神病院における絶対的なマンパワー不足、これを指摘しております。そして、日本政府に改善を勧告しております。にもかかわらず、今日に至るまで十分な改善を見ないままその実態は放置されてきたと言わざるを得ないのが実情であります。  それでは、精神科特例に何か合理的な根拠はあるだろうか。私は、精神科医療というのは、他科の医療に比べてむしろより人手が多い、その必然性があるとすら考えておりまして、他科よりも少ない人手、しかも皆さん、精神科特例では医師が三分の一でいい、そういう著しく低い基準を設定している、このような低い基準を合理化する合理的な理由というのは全くないというように確信しております。もしあるのなら、教えていただきたい。  このような合理的な根拠のない精神科特例によってもたらされた精神病院における医者、看護者の絶対的な不足というのが、先ほど来申し上げてきた医療の不在であり、閉鎖処遇であり、長期収容という劣悪な医療実態をつくり出してきた根源であります。  最近、うつ病あるいは中高年者の自殺というような問題を手がかりに精神疾患に対する社会の関心は広がりつつあります。ここにも書きましたように、精神科の病気の多くは、今では、できる限り早い時期に、落ちついた環境で、適正な治療、処遇、リハビリテーションが行われるならば、短期で治療が可能であるということも言われております。これは、いろいろなところで言われておりますように、人手こそ最大の、治療の最も有効な道具だということであります。  この人手こそ治療の最も有効な道具だという、その最も有効な道具を制限し、少なくていいというように言っているのが医療法の精神科特例であります。これは、今回の医療法の見直しの中でぜひとも見直されるべき課題でありました。私どもは、当然そういう方向で見直されるということをむしろ確信していたわけであります。  そして、この医療法における精神科の特例というのは、単に医療法の問題にとどまりません。要するに、精神というのは他科と違ってもいいんだ、こういう意識、これが行政にもあり、その行政にある意識が、世間一般の差別と偏見をより一層助長し、拡大するという極めて犯罪的な役割を果たしているという事実であります。  例えば、今回、精神保健福祉法の改正によって在宅の精神障害者に対するヘルパー派遣事業がようやくプログラムにのった。しかし、皆さん、これが実際に実施に移されるのは平成十四年の四月からであります。なぜ精神障害者はホームヘルパー派遣事業の対象にされないままずっと来たのか、あと二年も待たなければいけないのか、合理的な理由があるのなら教えていただきたい。  このように、精神は別だということで本来保障されるべき権利が精神障害者の前を素通りしてしまっているという実態が、長年にわたって放置されてきた。そういう意味で、医療法の精神科特例というのは、精神障害者差別の最も象徴的な条項、規定と言わざるを得ない、これを改めることなしに精神医療のより適正な医療水準の確保ということはあり得ないのじゃないだろうかというように私は考えております。したがいまして、今こそまさに、二十世紀の遺物というように私はあえて呼びますけれども、これを二十世紀最後の本国会で廃止していただく、その方向に一歩踏み出していただくことこそ決定的に重要であるというように考えます。  しかしながら、最近のこの問題をめぐる議論のありようを聞いておりますと、むしろ逆の方向になっているのじゃないだろうかという危惧を覚える項目が多々あります。
  111. 遠藤武彦

    遠藤委員長 里見参考人に申し上げます。お約束の時間が過ぎましたので、結論をお急ぎください。
  112. 里見和夫

    ○里見参考人 できる限り結論を急がせていただきたいと思います。  これまで医療法本体の中では、精神科病床と一般科病床を区別するという直接的な規定は置かれておりません。療養型病床群を含む病院であるかそうでないかということが区別されていたにすぎません。そして、一般的に備えるべき人員配置の基準ということが定められていた。ただし、政令で定めるところによって都道府県知事がその基準を満たしていなくてもよいというように許可した場合を除くという例外規定が設けられていた。そして、その政令の例外規定によって、各都道府県知事がまちまちな、つまり本来満たしているべき基準を著しく下回ったような場合にでも許可してしまうというような全国的なばらつきが出てきたために、昭和三十三年に厚生事務次官通知を出して、一般科に比べて医師については三分の一でいい、看護者については三分の二でいいという通知を出した。極めて例外の中の例外をそういう形で定めた。だから、まさに精神科差別だということが明確にわかる規定になっている。少なくとも、私どもがそういうように主張した場合におわかりいただきやすい規定になっている。  ところが、今回は、医療法の中に精神科病床と一般科病床を区別する定義規定を入れて、あと、それぞれの種類別に省令で定める基準を満たせばよろしいというように、いわば医療法の本体にそういう差別の構造を組み込んでしまうという方向に今行きつつある。そして、その結果、精神科病床はどのような基準を満たすべきかということが省令の中身として議論されている。それを聞きますと、四十八対一、患者四十八人に対して医師一人でいい、一般科の三分の一でいいという現状を追認してしまっている。看護者についても同じであります。  このような、本来、今世紀最後に廃止されるべき精神科特例が、むしろ医療法の中に取り込まれ、固定化されようとしている実情にぜひ目を向けていただきたい。そして、即座にこれを、誤った方向ではない方向に医療法の改正が行くように皆さん方の審議をお願いしたい。どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。(拍手)
  113. 遠藤武彦

    遠藤委員長 ありがとうございました。  次に、松本参考人にお願い申し上げます。
  114. 松本文六

    松本参考人 大分から参りました。急性期の病院百六十五床、老健施設九十床、サテライト診療所二つ、それから在宅総合ケアセンターを経営しております。専門は、内科というか、総合診療科ということになります。  今回の医療法等改正につきましては、現在、世界に冠たると言われています日本の国民保険制度が危機に瀕している、具体的な手を使わないと崩壊するという状況に達しているのではないかと思います。この原因は、予防と質を重視した政策がこれまでとられてこなかったということに起因すると思います。今回の改正案は、こののんびりとした危機感に由来しているというふうに思います。  この改革のキーワードは、私は、医療の質というふうに考えたいと思います。医療の質というキーワードを軸に今回の医療法等改正について考えてみましたので、意見を述べさせていただきます。  その中で、良質な医療とは何かということですが、まず第一に医療技術がよいということ。二つ目がアクセスがよいということ。これは、精神的にも物理的、空間的にもアクセスがいいということです。三つ目が療養環境がよいということ。物理的、空間的にも、あるいは精神的にも療養環境がよいという必要があると思います。四つ目が情報の共有化。これは、利用者への情報開示、あるいはいわゆるICですね。これは余り好きな言葉ではないので、私は共感に基づく同意と言っておりますが、共感に基づく同意、及びチーム医療。良質な医療を提供するためには、提供する側の医療従事者間の情報の共有が非常に大事だ。それから、五つ目が費用効率がよいということ。これは、患者さんにとりましては、安くて短期間に治療が終わるということが必要だろうと思います。そしてまた、医療提供側の経営基盤の整備という意味では非常に重要なことだろうと思います。  今申し上げました良質な医療という観点から、今回の医療法等改正について、私は、四点に限って意見を述べさせていただきたいと思います。  一つは、医療法第七条に関する入院医療提供体制の見直しですが、これは医療技術をよくするものではありません。しかし、少なくともそれの基盤見直しとしては評価できるのではないかと思っております。  二つ目は、医療法第六十九条及び七十一条関連の医療に関連する情報提供の推進ということでございます。これは、悪く言えば外圧を利用して質向上基盤をつくろう、そういう意味ではプラスじゃないかと思いますが、その中の、日本医療機関評価機構というのがありまして、これを今回出すということになっておりますが、これは時期尚早じゃないか。そういうことは改めて何年後とかいうような形にしておかなければ、あれはだめだ、医療評価機構はだめだという判定で、受けていないところも結構あるわけですね。そういう点が問題だろうと。  それから三つ目医療法第二十一条の汚物処理施設についての規制を廃止するということですが、良質な医療を提供するためには、これはおかしいのじゃないか。これはマイナス効果しかないだろうと思います。基本的に、生活者の命と健康を預かる医療機関が汚物処理をしなくてもいいという発想は本末転倒じゃないかと思います。下請に出すことの方がむしろ危険だろうと思います。  それから四つ目、医師法第十六条にかかわる医療従事者の資質の向上という件に関しましては、いわゆる臨床研修義務化の問題です。これは、医療技術の向上に役に立つだろう、良質な医療を提供するためには必要不可欠だろうと思います。しかしながら、この条文の中には、医療技術の向上を保障するための担保となる経済的保障の規定が全くありません。そういう意味では空文に等しいと私は思います。  時間が限られておりますので、この四番目の臨床研修義務化の問題に焦点を絞って触れたいと思います。  現在、医療事故が多発しておりますが、この医療事故多発の原因は一体何でしょうか。一番主要な問題は、やはり臨床教育の欠落です。医師の教育の中では、サイエンスとアートという二つの側面が非常に大事なんですが、今の大学教育ではサイエンスしか教えていないわけですね。その中でアートの部分をきっちり教える必要があるだろうと。  医療事故の多発の内容を見てみますと、その特徴は二つあります。一つは、単純ミスが非常に多いということです。単純ミスで命を落とさせているということです。二つ目が、若い医者に関係していることが多いということです。  具体的に例を二つほど挙げます。  本年一月に、大阪赤十字病院で六十三歳の男性に、前立腺がんの患者さんですが、主治医である研修医が、ほかの抗がん剤と量を間違えて、十ミリグラム打つところを八十ミリグラム、約八倍投与して、結果としてこの患者さんは亡くなりました。  それから二つ目。ことしの三月ですが、社会保険広島病院での事故があります。三歳の男児が心臓病の術後に心停止したわけです。ところが、主治医である研修医は、モニターを見ながら、血圧の数字が出ないということで、これは機械の故障だとずっとにらめっこして、機械をどこが悪いかと調べておった。こんなばかな話はないわけですね。血圧が表示されないというときは心臓がとまったというふうに考えなければいけない。機械をチェックするよりも、むしろ患者のそばに駆けつけて、脈をとって、聴診器を当てれば心臓が停止しているかどうかはっきりわかるわけですね。そういう教育がなされていない。  この二つはまさに単純ミスです。そういうようなことの中で事故が起こってきているということを私たちは知る必要があるのじゃないか。  そういう意味で、こういう未熟な、訓練されていない医師による事故が多発していることを防止するためにも、そしてすぐれた臨床医を育成するためにも、臨床研修義務化、しかも、それに経済的な保障を与えるということが非常に重要じゃないかと思います。  もう一方で、なぜこういう臨床研修制度の義務化が必要かと申しますと、社会的な背景としては、医学は急激に変容しています。それに伴って、医療技術も急激に変化しています。だから、専任の指導医が要るわけですね。  そういう中で、私自身は、この医師法第十六条にかかわることについて、六点ほど修正をお願いしたいと思っております。  まず第一に、臨床研修医には二年間にわたり司法修習生並みの経済保障を与えること。  二つ目が、研修医五人ないし十人に一人の割合の専任指導医を置くこと。  三つ目に、研修医時代には日直、当直のアルバイト及び単独診療を禁止するということ。  それから四つ目には、研修を、大学病院だけじゃなくて、あるいは三百床以上の大病院だけじゃなくて、第一線の医療機関も含んだプライマリーケアの研修が可能なようにするということですね。  第五点、卒業大学あるいは卒業医科大学で研修をさせるのは禁止して、外に出すということ。ハーバード大学は全部そうしています。  それから六つ目は、診療所の開設者には研修修了登録証を要すと書いていますが、病院の開設者には必要ないというのは基本的におかしいだろうというふうに思います。  そういう中で、この財源はどうするのかということを簡単に計算してみました。研修医一人当たり二十五万円を支給しますと、今回の資料によりますと、一年次、二年次を合わせて一万五千七百九十八人います。したがって、端数は切り捨てまして総計四百七十四億円。指導医を五人の研修医に一人、五十万円支給するとすれば百九十億円。合計六百六十四億円かかります。  金融機関への救済に十兆円以上を出している、あるいは公共関連事業費に五十兆円を超すお金を出しているということから考えてみますと、将来の日本の医療をよくする、あるいは医療費を削減するという点では、わずかな金額だろうと思います。これによって、医療事故が減少し、また若手医師の薬とか検査の使用の仕方が少なくなるだろうというふうに思います。  大学の入院医療費は全部の病院の入院医療費の、何と一二・七%を占めています。一件当たりの医療費は民間の医療機関医療法人ですね……(発言する者あり)
  115. 遠藤武彦

    遠藤委員長 御静粛に願います。
  116. 松本文六

    松本参考人 大学入院医療費は全入院医療費の一二・七%、医療法人は一件当たり、これは九八年度のデータですが、三十二万九千円、大学は何と五十四万七千百円ですね。二十一万も多いんです。そして、いわゆる公的病院は、大学病院とそれほど技術レベルでは変わらない、それで三十六万九千二百二十円です。  大学で研修するというのは、若い医師がそういうことをやっているから医療費がかさんでいるということも頭に置いておく必要があるのじゃないかと思います。そういう意味で、研修医義務化制度に年間六百六十四億円ぐらいを投資しても、結果としては医療費の削減効果があるのじゃないかというふうに思います。  最後に、医療は、教育などとともに社会的共通資本であります。また、二十一世紀は生命科学の時代と言われています。今こそ臨床医学の質を向上させておかないと、国民医療に対する信頼は得られないと考えます。治療チームのリーダーである医師の質を上げ、医療の質を確保するために、医師法第十六条にぜひ研修医及び指導医への手当についての文言を入れてほしいというふうに思います。  健康保険法につきましては、皆さん方にお配りした資料の中に、自己負担をふやすのじゃなくて、まだ、節約することによって自己負担を出さなくてもいいようなことが十分できるのじゃないかということを書いていますので、それはぜひ目を通していただきたいと思います。  以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  117. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  118. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。
  119. 三ッ林隆志

    ○三ッ林委員 自由民主党の三ッ林隆志でございます。  参考人の皆様、本日は御多用のところをありがとうございます。  このセクションは主に医療法の改正案についてではありますが、私も長年医師として医療に携わってまいりましたので、健康保険法にもまた医療法にも関係しております。そこで、一部健康保険法についても質問させていただきます。  まず、今回の改正医療制度抜本改革に向けた第一歩でありますが、医療制度抜本改革の重要な課題が高齢者医療見直しであると考えております。この高齢者医療見直しの中でも、ふえ続ける老人医療費をどのように適正な水準にしていくかは解決していかなければならないテーマの一つであり、さまざまな手法によって老人医療費適正化に対して努力していく必要があると思います。  糸氏参考人にお聞きします。  日本医師会が先ごろ発表した二〇一五年医療のグランドデザインを読ませていただきました。また、ただいまの参考人のお話にもありましたが、そこには高齢者、特に七十五歳以上の後期高齢者医療費をどう適正にするかとともに、老人医療費の出血をとめることが重要と指摘されており、共感しますとともに、診療提供側としてのその英断に敬服いたします。  そこで、老人医療費適正化するための手法についてどのようにお考えでしょうか。先ほどのお話に追加がありますならば、お話しください。
  120. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 お答えいたします。  老人医療費適正化を具体的にどうするのだという御質問でございます。  これはなかなか難しい問題でございますけれども、私、申しますのに、老人の絶対数がふえるという客観的な事実は、これは仕方ないと思うんですね。恐らくこれから二〇四〇年くらいまでは、特に後期高齢者の絶対数が圧倒的にふえてくるということはやむを得ない。そういう意味で、医療費というのは単価掛ける量でございますので、量がふえてくることについては、これはやむを得ないことでございます。  問題は、単価をいかに抑えるかということでございます。我々としては、医療担当者の立場から、現在の出来高払いをこれから老人医療費については定額制に持っていこう、その伸びも、単価の伸びについては年率約〇・五%に抑えようというシミュレーションを考えております。これは、単価が〇・五%ですから、それに量を掛けるわけですから、実際は老人医療費伸びとしては三ないし四%、四%を超えるかと思いますが、四%くらいになろうかと思います。少なくとも医療費単価については〇・五%ぐらいの伸びを考えて、それでシミュレーションをやりますと、七十五歳以上の老人については、後期高齢者については、何とかやっていけるという研究所でのシミュレーションを出しております。  そういうことで、一つは、そういう老人医療費というものの単価、これの伸びをできるだけ抑えていくということ。その方法としては、先ほども申しましたように、一つの、例えば入院という事態を考えますと、老人それぞれの介護度合いと、その人がそれぞれ持っている痴呆度合いあるいは医療依存度、こういうものを勘案しながら、できるだけ適正な額に効率的に抑えていくということで、いろいろ複合させて、組み合わせながら対応していくということでございます。  定額ということで、例えば月三十万円で終わりだと言われましても、例えばその御老人ががんを発生した場合、あるいはインフルエンザ等で急性肺炎を発生して命が危ないといったような場合に、三十万円だから三十万円でやれと言われても、これはもう人権問題にかかわりますので、そういう急性期の場合とかやむを得ない場合については、それぞれそれなりの人権尊重という立場から対応するのは、これは当然のことでございます。  しかし、そういうケースというのは老人の中のごく一部でございます。大部分については、老人については安定した状態でございますので、定額制を基本としながら、そして、いま一つ申しておきたいことは、老人医療費引き上げるのは老人がふえるということですが、もう一つは、老人というのは必ず死を迎えるということですね。  死を迎えて、いわゆるいまわの際になったときに、これは療養を担当する我々の立場からいえば、そばに家族がおる、家族は何とかして一日でもということを当然望むわけです。そうしますと、やはり普通の医療費の数倍という高い医療費がそこで使われる。ですから、いわゆる終末医療あり方、これが半年も一年も、とても助かる見込みのない人をだらだらと人工呼吸でやっていくのかという御意見も多々ございます。  この問題はなかなか難しゅうございまして、他人様のことだったら割と冷静に判断はできるのですが、これが一たん自分の身内とか奥様とか、あるいは御主人とか自分の親とかというようなことになりますと、理屈どおりにはなかなかいかない難しいところがあります。かといって、今のこの終末期医療というものをこのまま放置していいか。  診療報酬レセプトにおける高額医療費というのは、やはり老人の終末期のものがかなり入ってまいりますので、これは先生方の御努力で、何とか国民的な合意を得ながら適正な終末期医療あり方というものを今後追求していくということも、老人医療費適正化にとって非常に大きな要因になるのじゃないかというふうに考えております。  いろいろな面を総合して勘案しながら対策を立てていく、一本でできるというものはちょっと、なかなかいい妙手はないというふうに思っております。
  121. 三ッ林隆志

    ○三ッ林委員 ありがとうございます。  続けて糸氏参考人にお聞きしますが、グランドデザインの中では自立投資の導入を提言しておられますが、具体的にどのようなものであるのかをお聞かせください。
  122. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 御存じのように、遺伝子解析から、がんも遺伝子治療で直るという時代にだんだんなってくるかと思います。あるいは臓器移植、生殖医療等いろいろ、医学、医療の進歩は非常に激しい。今の保険制度でも財政的にあっぷあっぷしている状態で、これから十年先二十年先、一方では、情報化時代で国民のすべてがお医者さん以上に治療法とか診断をよく知っている、そういう時代になってまいりますと、とてもじゃない、今の医療財源でこれから国民保険制度を維持していくということは困難になるだろう。かといって、国民保険制度というのはやはり我が国の非常に大切な遺産であろうと私は思いますし、これは守らなくてはいけない。そういうところから自立投資という考え方を、平たく言えば、この国民保険制度を守るのにどういう支援をしていくかというのが自立投資の基本的な考え方でございます。  例えば、元気なうちに皆さんがお金を出してそれを貯蓄しておく、あるいは国家がそれに対してある程度援助もし、税制的な免除もしていく。そういうものをどういうところに使うか。これはやはりこれからの高度医療に対して——今でも臓器移植の方は自腹を切って、あるいは義援金を集めて外国へ行って、やっと子供の臓器移植等はやっている。何千万という金がかかるわけです。また、これから、医療保険にはまだ適合できない高度医療で、しかし自分がぜひその恩恵にあずかりたいというような場合に、やはりそういう自立投資というものを使いたい。  一方で、もう一つ、そういうものを国民的な医療保険の別ファンドとして蓄えておく。そして、お金のない人がそれにアクセスできない場合に、国民がその自立投資の金をお金のない人のために使っていく。そういうような、一つの国民の助け合いというような意味合いでの自立投資。これは医療保険で、共助のところでみんなお互いに助け合う、公助の場合も税金でお互いに助け合っておるわけですけれども、それでは資金が足りないということで、第三の、一つの国民扶助のための投資として自立投資というものを我々は考えたらどうかと。  まあ、つくりたてのほやほやのところで、日本医師会の中でも今議論が非常に錯綜しておりますけれども、基本的には、国民が今の医療、皆保険制度をより強固に支援するためのファンドをつくろうという意味でこの自立投資というものを考えている。そうでないと、国民保険制度はこのまま医学、医療の進歩に追いついていけないし、制度そのものが崩壊していくというふうに考えておりますので、それを防ぐために、新しい医学、医療の進歩を本当に国民に享受してもらうためには、自立投資の方法が一つの有力な方法ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  123. 三ッ林隆志

    ○三ッ林委員 ありがとうございました。  次に行天参考人にお聞きします。  先ほどの参考人のお話にもありましたが、日本の医療は、国民保険を前提としまして、医療現場におけるさまざまな取り組みにより、国際的に見ても高い評価を受けております。今回の医療法改正案は、こうした中、高齢化の進展、また医療に対する国民ニーズの変化、疾病構造の変化等に対応し、良質な医療を効率的に提供する体制を確立するために提案されているものでありまして、行天参考人には、本案に対する忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  124. 行天良雄

    行天参考人 忌憚のないということでございますけれども、私の立場で、医療を国家財政まで含めた国民全体の問題、今後の問題としてとらえるか、あるいは一人一人の病んで苦しんでいらっしゃる方の立場で論ずるかということは、一見同じようなことですが、物すごく違うわけでございます。  申し上げるまでもなく、臓器移植一つをとりましても、ただいま糸氏参考人がおっしゃったように、個人の問題としてとらえますと莫大なお金をかけてということになるのですが、同じお金を普遍化すれば、もっともっとたくさんの方たちに、平均的にレベルアップできるわけでございます。  すると、先生の御質問の問題にお答えするときに、具体的に医療法のどういうところをというのは、一見断定的に申し上げれば、私は、時代が変わっているのでやはりもう仕方がない、そしてさっきもちょっと触れましたように、やはり直せる可能性、それから直してもらいたいということを客観的にも認めるような方に関しては集中化せざるを得ない。  ただし、私が一番これから期待しますのは、保険制度の手直しの問題以上に、日本人の死生観とか、今申し上げますと何か漠然とした話ですけれども、死とかいろいろな問題、特にターミナルの問題に対する考え方というのは、高齢化がもっともっと進んでまいりますと、多くの人たちはみんなおなかの中で考えていると思うのです。黙っていても長命は前提でございますので、長命になれば、それだけに死生観というのは別の意味で、かつてのように六十ぐらいで亡くなっていた時代ではなくて、七十、八十が死のあるラインになってまいりますと、相当考えていくだろう。  ですから、その場合に高齢者医療というのはどの程度動くだろうかということは、私は、ある意味では教育を伴った日本人の社会観の変化、死生観の変化というものに多少期待しておりますので、今後それがある程度いくのじゃないかと思っておりますと、先生御質問の、医療法に伴っていわゆる急性対応的な施設とそれから療養を考えていくような施設との対比というのは、一見極端ですけれども、結核、精神、それから救急がございますけれども、こういう問題をちょっと別にしまして、これはみんな特例で幾らでもできるわけですけれども、基本的にはやはり分けざるを得ない。  というのは、国民自身がそっちを望むだろうというふうに考えております。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  125. 三ッ林隆志

    ○三ッ林委員 また引き続き行天参考人にお聞きしたいのです。  医師の資質の向上が求められておりまして、それに対しまして、今回、臨床研修の必修化というふうなことが盛り込まれております。私も小児科医として救急医療とかをやっておりまして、救急医療では、かなり小児科の患者さんが多い。ですから、今までも、臨床研修で回ってくれる人たちに、ぜひとも小児科も一緒に回って研修を積んでほしいというふうに望んではいたのですが、これから必修化を迎えることになりますと、その臨床研修のあり方というふうなことについてどのような考え方をお持ちか、お聞かせください。
  126. 行天良雄

    行天参考人 あり方としては当然、医師は、あるいは看護婦を含めました医療従事者というのは、特別な専門職でございますので、まさに永久にと言っていいくらい自分自身が研さんと勉強を重ねていかなければならない職種であり、だからこそ、社会の評価が普通の立場とはちょっと違ってあるのだというふうに私は思っております。  多分先生は、それじゃ具体的にどうしたらいいかということでございましょうけれども、今はまだ具体策としてはないわけでございます。  というのは、二年間なり一年間を研修という問題で拘束いたしますと、一見きれいなんですけれども、日本の医師集団は医局という制度によって動いております。そして、医局は医師のある意味における一般へのばらまきと供給をやっておりますので、これをもし相当強行いたしますと、一般市中の病院が、医師不足ということで相当重大な影響を受けるだろう。  こういう現実問題を一体どこで切っていくかという非常に重大な問題が一方にございますので、それこそ軽々としては今の先生の御質問に、おまえはどう思うかと言われても、私個人の考え方はもちろんございますし、研修は絶対にやってもらわなければならないし、その研修の具体的な問題に関しては、先ほどもちょっとお話が出ましたように、国民全体が思い切ってお金を出していかなければ、ああいった特殊な専門職という問題の研修はそう簡単にはできないと思っておりますけれども、では予算化する問題そのほかと言っている間に、見る間に時間がたってしまいます。  それよりも、私自身は、さっき繰り返し申しましたように、一般の国民医療観とか医師に要求している問題というのが相当違った方向に流れていくだろうというふうに思っておりまして、ちょっとこれは長くなりますので、この辺で。
  127. 三ッ林隆志

    ○三ッ林委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、私の質問を終わりにさせていただきます。
  128. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 石毛えい子さん。
  129. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。参考人の皆様におかれましては、御多忙のところをありがとうございます。  まず、里見参考人にお伺いしたいのです。  私も、今回の医療法の変更の内容を見ますときに、一般病床につきましては看護基準の水準向上というようなことを打ち出しながら、精神科特例の廃止を明確にしているわけでもございませんし、改善の方向をきちっと出しているわけでもない、診療科によって置き去りにしていく部分が出てくる、こういう医療法をそのまま改正を実現させていいのかという大変な危惧を持っております。  きょう里見参考人が御指摘くださいました大和川病院事件に関しましては、私も一度だけこの病院を訪問させていただきまして、余りにも一般の病院と違う荒れた病室あるいは病院全体の光景、本当に驚き、そして気持ちがなえていくと申しましょうか、そういう体験をさせていただきました。先ほどこの大和川病院事件に関して、医師、看護婦の絶対的不足というような御指摘をいただきましたけれども、もう少し具体的に、どのような医療実態を判決が認定したのかということを御披露、御披瀝いただければと思います。  その際に、判決文の中には、精神科特例のあり方、方向性について言及がどのようにされていたのか、いないのかというような点も、できましたらお触れいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  130. 里見和夫

    ○里見参考人 御説明します。  平成十年三月二十日にこの大和川病院事件の判決が言い渡されましたけれども、その中で判決は、具体的には次のように認定しております。  大和川病院は、平成五年二月当時、これはそういう暴行事件が起こった当時でありますが、ベッド数は五百二十四床、入院患者約四百八十名であった。常勤医師は実質的には二、三名しかおらず、そのうちA医師、これは実名が挙がっておりますが、A医師、前院長は産婦人科、B医師は、現院長ですが、内科医であって、いずれも精神保健福祉法上の指定医の資格を有していなかった。看護職員は合計三十名程度しかおらず、無資格及び無経験の看護人が多く含まれていた。被告両人は、このような状況であることを隠ぺいするため、行政庁による調査に対して職員を水増しした架空の出勤簿を提示するなどしていた。そしてこの実態が、私が先ほど御紹介した第一次あるいは第二次大和川病院当時から改まっていなかったということを認定しております。  私どもは当初から、精神科特例の劣悪な基準すら満たしていなかったということを裁判の中で主張しておりまして、それを判決がそのまま、私どもの主張が証拠によって裏づけられているというように認定したものでありますが、裁判所が精神科特例の問題、これを強く意識してというよりも、一般水準よりも低い基準すら満たしていなかった、そしてその中でこのような事故が起こり、患者が十分な治療を受けることができずに死亡するに至ったということで、病院側のそういう医療体制の問題を指摘した上で責任を認めたということであります。  私は、この判決の流れの中から、精神科特例の問題を含めて裁判所が指弾したというように認識しております。
  131. 石毛えい子

    ○石毛委員 大変驚くべき医療実態がその判決の中で認定されたということを、今お示しいただきました。  四百八十名の入院患者さんに対して、常勤の医師が二、三名。しかも、この大和川病院は、救急病院といいましょうか、各地から患者さんが搬送されてくるような病院でもあったというふうに思います。そうした中で指定医の資格を持っているドクターもいない、こういう医療実態というのは、宇都宮病院事件のときにも一部そう思われた節があるのかと思いましたけれども、宇都宮病院事件にしろ大和川病院事件にしろ、伺ってみれば、余りにもすさまじいといいましょうか、特異なというふうに聞こえてくるわけなんです。  NPO大阪精神医療人権センターはさまざまな病院を訪問しておられると思いますけれども、精神医療、とりわけ精神病院の実態といいますのは、この宇都宮病院とか大和川病院というのは例外中の例外というふうに私は判断できない共通性のある問題だというふうに思うわけです。この人権センターでの病院訪問の御経験から、もう少しその辺を普遍的にお示しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  132. 里見和夫

    ○里見参考人 大和川病院あるいは宇都宮病院が、それでは精神病院の中で特殊な存在なのかということであります。私は、決してそうではないということをこれまでの調査の中から具体的に把握してまいりました。  個別の精神病院に関する情報、これはなかなか公開されてきておりません。したがって、ある病院が医療法の特例の基準を満たしているのかどうか、この基準すら満たしていないのかどうかということがなかなかわからないわけであります。情報公開請求をしても、個別病院のデータは具体的には、黒塗り、墨で塗りつぶされてしか出てこないというような状況が長らく続いてきております。  これでは患者が安心してかかれる病院はどこかということがわからないということで、私ども大阪において病院訪問、約六十ある精神病院を一つずつ訪問して、その中の様子をつぶさに患者さんの方にレポートしていこうという活動を一昨年来始めました。  昨年、とりあえずその中間段階の成果を、「扉をひらけ」という冊子で「大阪精神病院事情ありのまま」というものにまとめて報告をしておりますけれども、その中で、やはり医師、看護者の数が非常に少ない。私どもが精神病院に行ったときにいつも感じるのは、静かなんです。スタッフの姿、医師あるいは看護者の姿がなかなか見えない、静かであるということがまず第一印象です。  そして、例えば、みずからの意思で入院している、いわゆる任意入院と言われる入院形態の患者さん、これは最近では六十数%、七〇%に近いというように統計は報告をしておりますけれども、それでは、みずからの意思で入院した患者さんがどういう病棟に入っているのだろうかということを調べますと、半数近くが閉鎖病棟、かぎのかかる閉鎖病棟に入れられている。  みずからの意思で入院しながら、なぜ閉鎖病棟か。結局のところ、スタッフの数が少ないというようなことから、勢い、そのようなかぎのかかる病棟に多数の患者さんを入れて少人数のスタッフで管理するという体制にならざるを得ない。私ども、これはいろいろな病院でそういう実態を体験してまいりましたし、そのようなことを看護者の方から訴えとして聞いたこともあります。  今回の、四月から施行された改正精神保健福祉法では、任意入院の患者の処遇は原則として開放処遇とするというように指導されております。ところが、にもかかわらず、結局のところ、任意入院で入院しながら閉鎖病棟に入れられている患者さんが依然として多数ある。  厚生省は一方で、厚生科学研究の研究班を立ち上げて、その中で、このような患者さんの行動制限を再評価するためにはどうしたらいいかということも検討しております。私は、この検討そのものは、できる限りその成果が前向きに生かされるべきだというように思っております。  そのような研究班が各病院に行ったアンケートの結果は、まずどうすればそういう不必要な行動制限をなくすことができるかということについては、スタッフの数を大幅にふやすこと、これはほとんど皆さんが一致して回答している内容であります。それと病室の環境、これをもっと広く快適なものにすれば、患者さんの落ちついた状態が確保できてわざわざ保護室などに入れる必要はないというようなことも、皆さんがほぼ一致して回答しているところであります。  一般科の三分の一の医師でいいというようなことを、精神病院の実情は決して示していない。足りない、足りないから不必要な拘束までせざるを得ないというような実態、これが私どもの病院訪問の結果でも裏づけられておりますし、まさに、この厚生省の研究班が行った全国の病院からの回答の結果も、それを裏づけているというように思います。
  133. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  御指摘いただきました精神医療の実態にかんがみても、今回の医療法改正の中では、精神科特例の廃止、それから病院の設備、さまざまな人員配置水準の改善策、これを明確にしていく必要があると私は思いますし、多くの当事者の皆様もそういう思いでいらっしゃると思います。  大変時間が残り少なくなってしまいまして恐縮ですが、松本先生にお尋ねいたします。  先ほど最後の方に、医師の研修の義務化につきまして六つの修正点を御指摘いただきました。一つ一つ大変関心を引かれる点ですが、時間の関係上、アルバイトや当直を禁止すべきという御指摘をいただきましたけれども、義務化によって所得保障がされればこういうことはなくなるのでしょうかということが一つと、それから、なぜ禁止する必要があるのかというところを、ぜひ端的にお教えいただきたいと思います。
  134. 松本文六

    松本参考人 アルバイト及び日当直を禁止するというのは、一つは、今の二つの質問両方のお答えになると思うんですが、病気というのは流れがあるわけですね。風邪を引いて治るまでの過程というのがあります。それが一週間、二週間になることもありますけれども、アルバイトの場合には、一日当直するだけで、断面しか見ないんですね。そして、その人がどうなるかということについて予測をつけられるようになるためには、医者としては結構経験を要するわけです。だから、ある意味では、その断面しか見ていないために、しかもその進展と衰退を判断できないために、自分の非常に浅い知識で判断して薬を出すことがあります。だから、本来なら次の日に診なければいかぬ患者さんを、四日後に来なさいとか、一週間分薬を出すとか、若い人には往々にしてそういうことがあります。  具体的な例を挙げますと、私どもの病院で、外部から来ておった研修医の方のケースですが、膀胱炎で患者さんが来ました。そのときに三種類の抗生物質を出しておったんですね。大体膀胱炎という場合には、初発の場合には一種類しか出すべきじゃないんです。あなた、なぜ三種類出したのかと聞きますと、医学書院の新治療指針に例として一、二、三と書いている、その三種類を全部出したと言うわけです。そういう、本の読み方もある意味では教育されていない。これは患者さんにとっては非常に迷惑な話ですね。そして医療費も高くなる。  それからもう一例挙げますと、五十キロメートル離れたところから夜間に、頭が割れるようにして痛いという患者さんが来たときに、そのカルテを翌日チェックしたんですけれども、何も処置をしていない。ところが、看護婦さんの問診には頭が割れるように痛いと書いておるんです。これは一般的には、割れるように痛いといったらクモ膜下出血か何か考えなければいかぬわけですね。それを何も処置せずに帰した。あなた、どうしたの、この人は頭が割れるように痛いと言っているじゃないか、そう言っているにもかかわらず帰したのはなぜか。私にはそういうことを言いませんでしたと。カルテの中に看護婦さんがちゃんとメモしているんですね。  そういう、ある意味では基本的な最低限のことも教育されていないというのが、今の研修制度の実態だろうというふうに思います。そういう点で、今の御質問の二つのお答えになるかと思いますが、したがって、大学なんかでアルバイトに出す場合は三年次以降にする、単独診療は二年間禁止するということの方が、患者さんにとっても、本人にとってもいいことじゃないかというふうに私は考えています。
  135. 石毛えい子

    ○石毛委員 もう時間が来てしまいましたけれども、もう一点、時間がなくて恐縮ですが、本当に短く。  最近、医療事故の報道が非常に多くて、私は、経済的負担の問題と同時に、医療事故というのは医療制度への国民の信頼を大いに揺るがしていることだと思います。この医療事故と今の臨床研修というのは、今御指摘いただきましたような点も含めて大いに関係があると見なければいけないのでしょうか。この点を端的にお教えください。
  136. 松本文六

    松本参考人 恐らく絶対的にそれに関係があると思います。断面しか見ませんから、疾病の流れに沿ったきちっとした治療というのができないんですね。そういう点では事故に直接つながる。それが一つ。  もう一つは、医者というのは治療チームのリーダーですね。リーダーがいいかげんであれば、下への指示もいいかげんになってきて、下の看護婦さんなんかにしても、医者に指示されたからということでそのまま考えを抜きにやってしまうということがしばしばあるわけです。そういう意味で、チームリーダーとしての医師の資質を上げないと医療事故が減らないだろうというふうに思います。
  137. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  終わります。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、江田康幸君。
  139. 江田康幸

    江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、参考人の先生方、どうも御苦労さまでございます。  午前中の質疑でも確認されましたけれども、私は、国民医療費、特に老人医療費の増大や政管健保、それから組合健保財政の危機的状況を考えますと、医療抜本改革を進める以外に方法は断じてない、そのように思っております。この抜本改革を遅滞なく、おくれなく進めていくということが大前提ではございますが、その第一歩として、今国会での法案の成立に賛成の立場から質問をさせていただきます。  主として平成十四年の抜本改革へ向けての考え方について、専門の先生方から御意見を伺いたいと思っております。  まず、糸氏先生にお聞きいたします。  老人医療費を初めとする医療費高騰の原因としまして、病床当たりの看護職員数が十分でなくて平均在院日数が長い、また薬漬け、検査漬け、そういう上限抑制ができにくい出来高払い制の診療報酬、さらには、医師の診療報酬における過剰請求等が挙げられております。今回、急性疾患を中心とする一般病床と慢性疾患を中心とします療養病床が区分されることによりまして、診療報酬の扱い方についても変わってくると考えられます。医療費の高騰を抑える意味で、治療や投薬、検査をすればするほど報酬が加算される現行の出来高払い制、この制度見直して報酬を一定額にとどめる包括払い制の拡大、この論議がなされてくるかと思います。  このような意味から、今回の病床区分の改正抜本改革につながる第一歩評価しておりますが、医師会においては、先ほども申されましたようにグランドデザインを立てられておりますが、今後の抜本改革としてこの包括払い制の拡大についてどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  140. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 出来高払い制度と包括払い制度、この問題は、言われてからかなり久しいのですが、私は、どっちがいいということを断定することは非常に難しいだろうと思いますね。出来高払い制は悪の根源のように言われておりますけれども、しかし、出来高払いほど効率的な制度はないというふうにさえ私は思っております。  本当に必要なコストというものを我々はきちっとレセプトに書いて、そして請求して、それが審査委員会で適正であると、この病名に対してはこの診断、この治療が適正であるということが認められる、あるいは、認められなければ減点される、支払い拒否されるということで、私は、今の出来高払い制度というのは、その患者患者の状態に見合った制度として高く評価されるのじゃないか。  ただ、一部でもうけるために、やってもいないことをやるとか、あるいは不必要な薬を死ぬほど飲ますとか、そういう極端な例を一般例として持ってこられると、やはり状態はちょっとややこしくなりますが、少なくとも医師たるもの、最低の倫理を保つ以上は、私はそういうことはないというふうに考えております。しかし、確かに一部にそういう例があるのは非常に残念だと思っておりますけれども、我々日本医師会としても、そういうことが根絶するように、今後ずっと努力はしないといけないというふうに思っております。  しかし、出来高払い制度そのものは、特に急性期疾患、少なくともこの場合には、私は出来高払い制度でないとと。包括制度というのがそんなにいいのか。仮にもし包括制度をやった場合は、いわゆる請負制度でございますから、どんな病気でも三十万なら三十万で仕上げろ。そうすると、これはまた先ほどのように、心根の悪い医者は、いかにこれを安上がりに上げようかと。手のかからない患者だけを選ぶとか、あるいはまた、入院してもできるだけ、出すべき薬も出さない、やるべき検査もやらないといった、いわゆる粗診粗療ということ、これは患者さんにとっては非常に損害だと思うのですね。  いずれにしても、出来高にしても包括にしても、やはりそこの根底に医の倫理というものは必要だし、また、医の倫理というものがあれば、私は、どちらにしてもそれは適正に運営されるものだろうというふうに思います。  ただ、今回の医療法改正での一般病床と療養病床というような一つの流れを見ますと、療養病床については比較的症状が安定した方々が多いわけですから、こういう方については少なくとも包括払い制度というものは適切ではないかな、しかし、一般病床の急性期の患者さんあるいは亜急性期の患者さん、状態がいつどう変わるかわからないという不安定な方については、私は、出来高払い制度というのは患者さんのためにはいい制度ではないかというふうに思っております。これを適切に、いかにしてその人の人権を守りながらその人のためになる医療をするかということが大事なことでございます。  しかし、基本的な流れとしては、今度の医療法改正において、療養病床というものについては全体的には包括払い制度というのは支配的になるだろうし、また一般病床については、これはある程度出来高払い制度というものが支配的、主な流れになるのではないかなというふうに今考えております。
  141. 江田康幸

    江田委員 今おっしゃられましたように、一概に論じることはなかなか難しい、医の倫理、倫理性が根本であるとおっしゃられました。専門家会議の中でもさらなる議論をここはぜひとも十分にしていかなくてはならないのではないかなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、看護基準の件についてお聞かせいただきたいと思います。  最近の医療ミスの問題は、先ほども何度も出ておりますように、我々国民の最大の関心事であり、皆さん懸念されていることであるかと思います。医療費を抑える一方で、良質で安全な医療提供体制を整えていかなければならない。今回の改正では、看護婦の配置基準を三対一に引き上げるということでございますが、良質な医療への第一歩として、このことは十分評価されると思います。  先日、厚生省は、三対一の基準につきましては、夜勤の二・八体制を何とか確保できる最低基準であると説明されました。しかし、この基準でも、夜間は、一人の看護婦で二十五人の患者を受け持って走り回らなければならないというような状況もあると聞いております。  したがって、今後は、できるところからさらに基準を引き上げて良質な医療を求めていくことも必要かと考えますが、その場合の病院側の課題は、コストであろうと思われます。手厚い看護体制については診療報酬も高くしていく必要があると思いますが、今後の抜本改革に向けて、患者さんのメリットと病院経営上の負担、このバランスについてどう考え、どう検討していくべきか、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。  糸氏先生、お願いいたします。
  142. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 看護体制のことは、私たちも、最低の基準というものはもちろん医療法上決めていくべきだと考えております。ただ、最初に触れましたように、今の看護基準というのは病棟につけているわけですね。一つの病棟にこれだけの医師とこれだけの看護婦。しかし、例えばそれが二対一とかあるいは一・五対一とかいうような非常に高度な場合であったとしても、それでは、その病棟におる患者さんがすべてそういう看護体制の必要な人たちかということになると、必ずしもそうではない。  実際、患者さんから見れば、患者さん個人個人の個別的な看護こそ望まれるのじゃないか。重症な人もおれば、そうでもない、そこらへ、トイレに行くのも別に支障がないというような患者さんもおる。そういう、重症、軽症、雑多が非常に入りまじった中で、基準さえよくすれば看護体制はよくなる、医療の質はよくなるということはないだろう。その中でも、ある人は一対一どころか、それこそ看護婦さんが三人も四人も一人の患者に必要な場合もあるわけでございますので、そういった意味で、これからの看護体制というのは、今のような病棟につけるというよりも、患者個人個人の個別性を尊重した形での看護体制に切りかえるべきだというふうに私たちは思っております。  とは申しましても、現状からよりよくするためには、やはりある程度の看護体制あるいは医師基準というものは堅持しながら、よりいいように持っていかなくてはいけないのですが、やはり貴重な医療費資源、財源を使うわけですから、そこはできるだけ効率的な看護体制、そのためには個別看護というような形での看護体制、病棟につけるのじゃなしに、箱につけるのじゃなしに、人につける、患者につけるというような看護体制がこれからあるべき姿ではないか。患者本位の立場からいえば、私は、当然そうだろうと考えております。  それから、先ほど精神科のお話もございましたけれども、私は、先ほどの参考人のおっしゃるとおり、精神科だからどうでもいいというようなことは決して、いいどころか非常に悪いことに決まっておりますので、人それぞれの人権というものは大事にしていかなくてはいけない。そういう観点からすれば、やはり患者本位の医療というものをこれからの医療というのは目指すべきだろうと。今までの規制というのはややもすれば、今申しましたように、病棟につければそれでいいのじゃないかということがかえって病棟管理の悪を生んでいく温床になりかねないという面も持っていることに注目すべきだろうというふうに考えております。
  143. 江田康幸

    江田委員 ありがとうございました。  最初に言っておくべきでしたが、多様な考えもあろうかと思いますので、済みません、松本先生のお考えも、よろしいでしょうか。
  144. 松本文六

    松本参考人 看護婦の問題は、私どもの病院は二対一ですが、やはりシミュレーションしてみますと二・五対一が経営的には一番いい。現在、一般の経営に詳しい方々もそういうことを言っています。二対一というのは、ある意味では経営的には厳しいというのが実態です。それは、看護婦さんの給料がきちっと今の診療報酬体系では保障されていないということが言えるのだろうと思います。  二対一であれば、やはり二・五対一よりもいい看護ができるというのも事実です。まず、看護婦さんの疲労が少ない。疲労が少ないから事故も少なくなる。冷やり、はっとも少なくなる。これは現実の問題だろうと思います。できればもっともっと看護婦さんの夜勤が少なくなれば、医療事故ももっと少なくなるだろうと思います。  しかしながら、今の医療経済情勢の中でそこまで保障できるかどうかはわかりませんけれども、基本的には、最低限二対一ぐらいまで日本の医療は持っていかなければいかぬだろうと思っています。  以上です。
  145. 江田康幸

    江田委員 時間が厳しいんですが、もう一つだけ質問させていただきます。医療技術の進歩への対応ということについて、糸氏先生、お願いします。  ここ数年、すごい勢いでゲノム解析とかたんぱく化学、再生医療といった最新の研究が進んでおります。私も民間の研究所で研究を進めてきた方でございますので、実感としてよくわかります。抗がん剤に対して、効く人と効かない人がおります。これは遺伝子の多型の違いによるというようなこともわかってきております。また、エイズとかがんにかかっていても発症しない、そういう人もいらっしゃいます。それから、アレルギーになりやすい人とそうでない人、こういうことなども遺伝子の違いがその原因の一つとして解明されております。さらに、細胞を再生する技術の進歩等によって、痴呆症の治療や移植医療がまた飛躍的に発展するものと考えます。  このように、最新のゲノム解析とか再生医療といった研究が新たな治療法の開発を生んでいくと思いますが、それは、医薬品使用の合理化、的確な医療の実現にもなって、医療費全体の抑制にもつながるものではないかと期待しております。そのためにも、これからの先端医療を受け入れる病院側の今後の取り組み、考え方についてどのようにお考えか。時間が過ぎておりますが、医師会のグランドデザイン等がございますでしょうから、一言だけお答え願いたいと思います。
  146. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 非常に難しい御質問で、私もよくわかりませんけれども……。  少なくとも、病気を治療しておりますと、患者さんの個別性ということはいつも頭から離れないわけです。それはまさに各人、同じ兄弟でもDNAが違うわけでございますので、そういう個別性ということを考えていきますと、これを一つの普遍的な公的保険の中でいろいろ処理していくということは、なかなか難しい面がこれからますます出てくるのではないか。少なくとも、高度、精神医療等におきましても、ある程度普遍化された、あるいはそれの安全性が確認された、またそれが確かに有効だということの臨床的な実証がされないと、これはなかなか保険には使えないという状態でございます。  しかし、安全は確認されないが、あとこれしか手がないからおれはぜひこれをやってみたいなどという、個人のニーズというもの、これもやはり一般の病院の担当者としては無視できないものがあるだろう。ただ、その場合に、今は保険以外の非常に重い負担をかぶる。それに対して国はすぐ助成金を出すというわけにもまいりませんので、そこで、先ほど申しますように、平素からそういうことのために、ある程度自立投資といったものを、国民の合意でファンドをつくったらどうだろうという一つの提案を日本医師会がしておるわけです。  それに国も援助していただく。そして、出せる人には出してもらって、出せない人に対してはそのファンドから助けてあげようというような、それによって医療保険から限りなく財が出ていくことを少しでも防止して医療保険財政の安定化というものを目指すべきだろうというのが、我々のグランドデザインの中での考え方でございます。
  147. 江田康幸

    江田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  148. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、武山百合子さん。
  149. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。本日は、参考人の皆様、御苦労さまでございます。早速質問に入りたいと思います。  松本参考人にお聞きいたします。  老人に係る一部負担見直しについて、複雑な制度となっているわけですけれども、本来はどうあるべきか、お話を伺いたいと思います。
  150. 松本文六

    松本参考人 本来どうあるべきかということにつきましてはなかなか難しいと思うのですが、私は、医療費を完全に無料化するというのは問題があるだろうというふうには思いますけれども、今のシステムの中では、低所得者に対してどうするのかということはほとんど考えられていないだろうと思います。  例えば、私の方は田舎ですが、農業年金にしますと一人三万円なんですね。一人三万円の中で医療費を、しかも間接医療費といって交通費、山の中から出てくるには、バスも最近は、人口の多いところには走っていますが、田舎の方は走っていない。足腰が悪いといったら、タクシーなんかを使うわけですね。一回の通院に五千円がすぐ飛んでしまう。そういうようなケースについては、今の医療システムはほとんど考えられていないのではないか。  今回の健康保険法改正の中で、そういう点でのさまざまな工夫というか、悪い工夫というか、なされておりますが、非常にわかりにくいし、低所得者の人に対してどうするのかという視点が全くない。そして都市と農村との、どれだけアクセスのよしあしがあるかというのは恐らく厚生省のお役人さんはほとんど知らないのじゃないか。そういう意味で医療費を重層的に、低所得者あるいは農村、地方と都市というような区別の中で考えていかなければいけないのではないかというふうに思っています。
  151. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  それでは、行天参考人に。  先ほど精神科医療について、いわゆる精神科特例の見直しということで、適正病床数、社会復帰の推進などをお話しされたわけですが、いろいろと問題があった視点については触れられていなかったわけですけれども、本来どうあるべきだと思いますか。
  152. 遠藤武彦

    遠藤委員長 どちらに。
  153. 武山百合子

    ○武山委員 私は、里見参考人が話されたことですけれども行天参考人はどう思われるかとお聞きしております。
  154. 行天良雄

    行天参考人 初めに申しましたように、私は、断定的に決められないのがこの医療の問題だということを繰り返し申し上げておきたいわけです。  したがって、今ちょっと御質問いただきましたように、精神科の特例に関してどう思うかということですが、全部の医療の中で言ったら、やはり現時点では精神科というのはある程度特例、これは今ある特例の問題を申し上げているのではなくて、特例的に見なければならない状況がまだあるだろうというふうに思っております。  というのは、日本の場合は、医療というのは、一本の注射、一服の薬によって非常にドラスチックな治療というものが可能になっている、また、それが一般の人たちが医療行為として求めている一番大きいものであるわけですけれども、残念ながら、精神科関係というのは余りにも複雑な、人間そのものの持つ頂点みたいなものを抱えてしまっておりますので、幾ら開発が進んだとはいえ、一つの薬そのほかによってみんながあっといって納得するような治療の形態、治癒の形態というのはまだまだ望めないと思うのです。  そうしますと、やはりどうしてもある程度その方を経過観察する、また、在宅そのほかでの難しい問題を抱えたらということが当然出てまいりますから、今の形をもっとよくして持っていかなければいけないというのは基本的にございますけれども、先ほど里見参考人がおっしゃいましたように、この数は、私の立場から言ったら、これはお話になりません。  それから、里見参考人は別の意味で法的にいろいろとお調べになっていますが、私どもが、私どもというのは仲間や何かを入れまして、マスの立場で見ておりますものは、目を覆いたくなるほどの現状があるわけです。  一つだけ申し上げたいのは、これも極端でございまして、物すごく一生懸命にやっている精神科関係の病院、ドクターもいらっしゃいます。これはもう懸命な努力を払っています。しかし、悪いのはどうしても目立つわけです。  これは医療でも医療事故でも全部そうでございまして、メディアというものに籍を置く人間としては非常に気をつけなければいけないと思っておりますのは、影響が非常に大きいものですから、一つの事柄で全部を律することができないので、どうも今先生から御質問いただいているようには、もうちょっとはっきり言えというようなお考えがあると思いますけれども、言えない理由は全部そこにございまして、口をもごもごしているんじゃなくて、非常に危険に一方で偏りますけれども、この世界くらい両極のものもないわけでございます。  そうすると、あとできることは、いい方で一生懸命やっている方たちを何とかして支えて、その方たちにプラスをもたらすような、いわゆる法律的な問題、あるいは国全体の支援というものを考えていかざるを得ない。そのかわり、悪い方の方に関しては、社会が葬る前に、私はあえて言わせていただければ、自主的な任意団体である医師会がそういった方たちに何らかの方法を講じていくべきではないかというふうに思って、各国はおおむねその形態をとっておりますので、ちょっとそれだけ付言させていただきます。
  155. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございました。  それでは、残った時間を全部糸氏参考人に御質問したいと思います。  医療保険制度抜本改革ですけれども、医師会は、まずどのような視点で、どのような方向で行われるべきだと考えておりますでしょうか。
  156. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 お答えします。  先ほども申し述べてきたとおり、これからの時代、圧倒的に高齢者、特に後期高齢者、七十五歳以上の方がどんどんふえてくる。それに反し、子供の方はどんどん減っていくという大変な時代になってきて、その中で、社会の活性化は当然、労働人口が減りますから、減ってくる。その中で、やはり高齢者が一日でも一時間でも、一人でも多く健康で長生きして、そして社会の活性化に役立つように、これは雇用政策もあるでしょうが、頑張っていただきたい。  もう一つ大事なことは、高齢者と同時に、女性の方々の社会進出、これも非常に大事なことでございます。女性の方々の社会進出をもっとこれから安定的に促すためには、やはり子育て支援といった子育ての社会化、高齢者介護の社会化もございますけれども、これと並行して子育ての社会化というものにもっと国が真剣に取り組まなければ、とてもこれからの二十一世紀の社会の活性化は望めないというふうに考えております。  そういう両方の社会化というものを踏まえつつ、現在の国民保険制度を高齢社会の中で揺るぎないものに、微動だにしないものにしていくにはどうしていくか。それについては、やはり我々は、高齢者医療制度というものをこれから確固たるものにしていくためには、医療担当者の私たち自身がその出血をとめていくという非常な覚悟で取り組まないと、とてもじゃないが、これはやり切れないだろうというふうに思っておりますので、我々としては、かたい決意を持って、これから高齢者医療というものの効率化、しかも高齢者の長生きと生きがいというものを指標にしながら頑張っていきたい、かように思っておるのが基本的な考え方でございます。
  157. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  また糸氏参考人にお答え願いたいと思いますが、国民には、医師会が反対しているから医療改革が進まないんじゃないかと思っている人はかなりおります。そこでまず、医療改革に医師会は積極的な、前向きなお考えを持っているんでしょうか。
  158. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 医師会が医療改革を阻害しているという、とんでもないあれでございます。  我々は、既にどの団体よりもいち早く医療構造改革を示しておりますし、また、ことしも、その最終的なものとして二〇一五年のグランドデザイン、あらゆるデータを駆使しながら頑張っておるわけでございます。阻害などと言われると、非常に心外でございます。  例えば参照価格制度、あれも医師会の邪魔でだめになったと。参照価格制度なんというのは、貧乏人はゾロを飲めという政策なんですよ。これに反対するのは当たり前じゃないですか。国民立場に立てば、やはり国民がそんなお粗末な薬を飲まされるよりは、いいお薬を飲めるようにしなくてはいけない。だから、私たちは参照価格制度も反対したわけです。  事ほどさように、私は、平成十四年に向かって、これは健保連とどういう確執があろうとも、高齢者医療制度については一歩前進の合意にこぎつけたいというふうに、かたい覚悟でおります。それは、国民のため、患者のため、また国民保険制度を揺るぎないものにするためには、やはり日本医師会はどんなつらいことがあっても辛抱して、この合意にこぎつけたいというふうに考えております。  以上です。
  159. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  また糸氏参考人にお尋ねしたいと思います。カルテの開示、そして広告規制の緩和についてお尋ねしたいと思います。  先ほど、開示していけないものというお話がありましたけれども、去年の中間報告で、早急に法律に規定すべきという意見と、それから、自主的な取り組みにゆだねるべきじゃないか。それが、ことしの二月になって、医療従事者の自主的な取り組みにというふうな形になりました。ここは、医師会の反対によってできなくなったというふうに国民は思っているわけですけれども、医師会は、国民が聞くことはすべて開示したいと思っていらっしゃるんでしょうか。
  160. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 カルテの開示は、非常に難しい問題がございます。例えば、二歳の子供のカルテを二歳の子供に開示しても、これはわからない。また、それでは十三歳はどうか、あるいは十歳の人はどうだというような問題もある。  その場合に、それでは親権者はいいといっても、その親権者はおるけれども、およそ離婚等で全然見たこともない親権者が出てくるというようなこともございますし、個々の例をとりますと非常に複雑な問題がたくさん出てまいります。がんの告知の問題に絡むこともございます。  要は、日本医師会は、カルテ開示の問題は大いにすべきだ、そして病院の玄関に、うちはカルテを開示していますというのを広告したらいいと言っているわけです。そして、全国医療機関にそういう掲示をさせています。このカルテ開示について不足があれば、そしてそれでトラブルがあった場合は、地区の医師会が必ずそのトラブルを引き受ける。それができなければ、県の医師会がやる。それでできなければ日本医師会が最終的に受け取るということで、ことしの一月一日からもう全国的にカルテ開示をやり、そしてインフォームド・コンセントを徹底するように頑張っておるわけです。  そもそもカルテ開示というのは、やはり患者さんとお医者さんがお互いに情報を共有しながら、そして患者さんができるだけ、ああ、それだったら私はこの治療をしてほしいというような選択権を持てるように、十分話し合うことが必要なんです。これは、あくまでも患者と医師の個別の問題だろうと私は思います。  ただ、それを法律で規制すると、これをおまえ、やらぬとけしからぬというふうな、そういう意味合いの患者、医師の関係、えげつない言い方をすれば、ドスを突きつけて、おまえ、言うことを聞けと言われるようなやり方ではなしに、医師がみずから自主的に患者さんと良好な関係をつくっていくのが筋じゃないか。それをまず我々が、今まで努力が足りなかったのなら努力をしましょうということで、ことしから全国的にそういうことをやっております。  これがもしうまくいかないで、なおかつ国民に御不満な点があれば、それは法制化なりなんなり、それは私たちはやむを得ないかなというふうに思っていますが、まずは努力させてくださいということをお願いして現在やっているわけでございますので、そこのところは御了解願いたいと思います。
  161. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございます。  また糸氏参考人にですけれども、二歳とか十歳とかというお話がありましたけれども、やはりそれは極論だと思います。常識の範囲で、遺族による開示、それは認めることも検討すべきであると思いますけれども、遺族による開示はどう思っておられますでしょうか。
  162. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 カルテの開示そのものは、私たちは、これは本来患者本人ということにしております。  患者が亡くなった場合にどうするかという場合については、これはいろいろな難しい問題がございますけれども、遺族がどうしても見せてくれと。しかし、カルテの内容というのは、これは客観的に患者のことばかりじゃなしに、医師が患者に対する感想とかいったようなことも書いておりますし、そういう意味では、ある程度医師のプライベートな日記的な部分もございます。しかし、家族がどうしてもそれを見せてほしいと言った場合には、それは当然見せることにやぶさかではないというふうに思っておりますし、隠す必要がどうしてもあるという場合、実際どういう場合か私もちょっと想定しにくいのですが、そういうこと以外は、それは幾らお見せしても別に構わないことだろうと思っております。
  163. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  最後にもう一つだけ、ちょっとお願いします。
  164. 遠藤武彦

    遠藤委員長 時間が来ていますから。ルールを守ってください。新しい質問には入らないように。
  165. 武山百合子

    ○武山委員 はい。一つだけ最後に、短くお答えいただきたいと思います。  病院が広告できる事項なんですけれども、診療分野、治療方針、治療方法、これが今回、病院のいわゆる広告事項から削除されたわけなんですけれども、なぜ削除されたか、短い言葉でお願いいたします。
  166. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 そこのところは、厚生省に聞いていただかないとわからないと思います。
  167. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございました。
  168. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、瀬古由起子さん。
  169. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。  私は、まず最初に糸氏参考人にお聞きしたいと思います。  先ほど、医療というものは個別性と地域性が強いものだというお話がございました。今回の医療法の提案なんですけれども、例えば一般病床と療養病床に分ける、患者さんの個別性ということを考えれば、これが実際には明確にこういう形できちっと分けられるものなのかどうかという問題ですね。  それから、例えば地域性という問題でいいますと、今回、一定の必要病床数を基準病床数と改めて全国一律の基準を設けていこう、こういう流れがございます。そういう場合に、地域性という点でいえば、いろいろな状況はあると思うのですけれども、その点ではかなり無理があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  170. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 地域性の面から申しますと、全国いろいろな地域性があると思うのです。だから、大体、こういう地域医療計画とか、そういったようなものにおきましても、またいろいろな救急医療の体制とか医療の提供体制の中でも、その地域地域の地域特性というものを尊重し、これは中央で統一するのではなしに、あくまでも地域に、地域の医療審議会とか、そういうところへすべてを任せるという形の方がいいのではないかなというふうに、私は個人的にそう思っております。  そういうことでございますから、余り一元的に、こうあるべきだ、だからこれに従えという官主導のあり方というものには私は反対いたしたい、かように思っております。
  171. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今回の一般と療養病床に分けるという提案などについては、もっと個別な対応が必要ではないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  172. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 その点につきましては、私たちは分け方は、いろいろな考え方はあると思いますけれども、現時点では、一般病床というものの中には、これは急性期を中心とした、その後の続発症、亜急性期のもの、それから療養病棟については、これは完全に一種の慢性期疾患を対象とした、症状の落ちついた方々がゆっくりした環境の中で療養していただくというもの、この二つに分けたということについては、私は別に、特に異議を差し挟む必要はないというふうに思っております。  ただ、実際にそれの運用は、地域によっていろいろなやり方があるだろうと思いますけれども、余り厚生省から細かく規制はされない方がいいのじゃないかなと。医療機関が一番よく地域の事情もわかっていますし、また自分の病院のかい性といいますか、能力あるいは機能というものを一番よくわかっていますので、各医療機関の自主性に任せるべきだろうというふうに思っております。
  173. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 糸氏参考人に引き続いてお伺いしますけれども、週刊「社会保障」の中に、高額療養費の問題についての先生の談話が載っておりました。その中に、厚生省は、これは医療を受けた人と受けなかった人との公平を保つために、今回、医療費に係る一%の負担を新たに設けていくわけですけれどもコスト意識なんかも持ってもらわなければならないなどと言っているのですね。  そのときに、先生は、この一%の負担部分については、物品の売買と医療は根本的に性格が異なるにもかかわらずぜいたく税のような考え方を導入する手法には怒りを感じる、こういうふうに載せておられたわけですけれども、その点、今回の一%のこの負担部分の問題点について、もう一度お聞かせいただけますでしょうか。
  174. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 高額の方々が、保険料でようけ払い、また今度高額療養費でもようけ払いというのは、ちょっと余りいじめ過ぎじゃないかなと。少なくとも、病気なんというのは自分で好きこのんでなる人はだれもおらないわけで、これは、受益者じゃなしに受難者でございます。この受難者をもっといじめるということは、困るじゃないかと。そういうことで、厚生省には、ぜひここはもう少しソフトな対応をお願いしたいということをかねがね申してはおります。これは個人的な意見でございます。
  175. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もう一点、糸氏参考人が健保法の改正問題の中で言われているのですけれども、今回の負担によって、高齢者の受診抑制が一方では起き、一方では医療提供側の診療抑制が起きるという問題も述べられております。九七年度の医療改定のときにはやはり受診抑制という問題が起きましたけれども医療現場で、受診抑制と同時に医療提供側の診療抑制、この関係はどういう状況で起こっていくのかという点、解明していただければと思います。
  176. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 高齢者について言えば、その大部分はやはり低所得者が多いわけでございますので、年金生活者も多いという中で、しかも病気に対するリスクに絶えず脅かされている状態の中にあって、先行き不安という感じを皆さん持っておるわけでございます。  その中で、これから定率負担ということになれば、ひどい病気ほどようけ負担しないといかぬということですから、これは、患者さんにとっては、低所得者にとっては非常に困る制度であろうし、また一方では、こういう人たちを少しでも救うための手だてとして上限というものも設けていただいたということは、それはそれなりに理のあることだろうというふうに私は思っています。  また、医療を提供する我々にしてもやはり、定率ということになりますと、当然、この人はせきが治らないから念のために肺がんの検査をするためにCTを撮ろうかと思っても、負担が重くなるとつい、患者さんは、いや、そんな負担はちょっとということになりますし、どうしても本当の患者本位の治療を、医師の思うとおりにはなかなかできにくい面がやはり心情に駆られてございます。  そういう意味では、高齢者については、できたら定額制度ということでできるだけ不安感を除いてあげた方がいいのじゃないかということで、日本医師会としては定額制度をいろいろお願いしていたわけでございますが、御存じのように、ほとんど定率制ということで、わずかに診療所の外来だけ定額を認められた。それが、唯一ぎりぎりの救いであったかなというふうに私は思っておりますが、これも、審議会等いろいろな皆さんの大半の御意見であるということであれば、日本医師会も、仕方がないかなというふうに思っております。
  177. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 次に、松本参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、先ほど先生がお話しになったところで、ペーパーだけいただいて十分お話しいただけなかった医療保険改革の問題です。  今回、健康保険法の改正案は、政府は抜本改革第一歩という形で位置づけているわけですね。抜本改革内容というのは、まだいろいろ議論がございますけれども、一定の方向で、例えば高齢者については例外のない一割負担、行く行くは二割負担の方向だとか、扶養家族になっている所得が少ない高齢者保険料を取ろうじゃないかとか、いろいろ議論されているところなんですけれども、その点、先生は抜本改革なるものの考え方というものはどのように考えてみえるのか。  それと同時に、二十一世紀の医療制度あり方というものをどのようにお考えでしょうか。
  178. 松本文六

    松本参考人 大変難しい質問なんですが、やはりこれまでの日本の医療システムをしっかり総括するということがなされていないのじゃないかという思いが、私は非常に強いんですね。次々にいろいろな形で抜本改革あるいは医療改革というのが出されてくる中で、共通しているのは、患者さんの自己負担をふやすという、これだけは首尾一貫している。その中で、医療というのは何なのかということについての基本的な考え方は出されていないと思うのです。  私自身は、医療の原則として三つ考えております。一つは、医療を受ける権利は基本的な人権であるということです。それから二つ目には、医療は予防を主とするということ。三つ目には、医学、医療の変革は生活者の要求に対して正しく対処すべきであると。立場、観点、方法というレベルでこの医療システム全体を見直す必要があるんですが、それがなされていないということが一番大きな問題だろうと思います。  お手元にお配りしました「二十一世紀の医療保障システムの構築へ向けて」というものの中でも述べておりますが、やはり、基本的な人権というものをどういうふうに守るかという視点が本当に日本の医療保険制度に貫徹しているのかどうかということですね。やはりそこのおさらいをしてほしいなと。高齢者、弱者に対する配慮というのは、むしろ機械的な法改革の中で置き去りにされているというところがあるだろうと思います。  それから、予防を主とするという観点からいいますと、例えば卑近な例を挙げますと、お年寄りの腰痛、ひじ痛、その手術のときにエンダーティーというのを使いますと八千円から一万円で済むのが、チタン製のものを使うと何と四十四万円もするんですね。しかしながら、手術料は一緒。それが一つ。  それから、整形外科の手術においては、感染というのが非常に大問題になるんですね。ひざの手術をして、再手術をすればまた金がかかるわけです。ところが、感染率の非常に少ない、手術成績の非常にいいところと手術成績の悪いところが、全く評価されていない。したがって、手術を繰り返すところの方が収入がいいという、大変奇妙な構図が出ている。そういうところでの医療費のむだ遣いというのは、相当膨大なものがあるだろうと思うのです。  だから、予防を主とする、質を重視するというのが、これまでの日本の医療システムの中になかった。したがって、医療費が拡大するのをすべて自己負担の方に集約していこうという姿勢を、改めてここで考え直す必要があるんじゃないかというふうに思います。  その中で、医療費のむだ遣いについて、外国の一・五倍から三倍も高い薬剤費、あるいは、PTCAバルーン・カテーテルを使ったのが、外国では十万ぐらい、七、八万のものが三十万とか、論外な話が余りにも多過ぎるんですね。そこに全くメスを入れていないこと自身に問題があるだろうと。  そういう点で、今までの医療行政の問題点はなかったのかという観点でのおさらいをまずした上でこの問題を考えないと、基本的に何が大事かというのは恐らく永遠に出てこないだろうというふうに思います。
  179. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 本来、里見参考人にもお聞きしたかったのですけれども、私も精神病院に勤めていまして、精神科特例、これは本当に何としても廃止しなければならないと、今お話を聞いて決意を新たにした次第でございます。きょうは時間の関係で質問できないので、申しわけございません。  最後に、今、松本参考人からお話がありましたけれども、今までの医療あり方そのものについて、やはり高い薬価にメスを入れる問題、それから医療機器の価格の問題などにメスを入れる問題、それから、私たちが今問題にしているのは、やはり国の国庫補助がどんどん減らされてきているという問題があるわけですけれども、この点も、行天参考人、糸氏参考人松本参考人、一言ずつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  180. 遠藤武彦

    遠藤委員長 簡潔にひとつお願いします。  最初に、行天参考人
  181. 行天良雄

    行天参考人 繰り返しますけれども、簡潔というのは大変危険なんですけれども、私は、医療保険制度のベースだけはどうしても守っていってもらいたいと。それは、さっきお話が出ましたが、いつでも、どこでも、だれでもが、極めてわずかな負担で繰り返して世界レベルの医療を受けることができることを保障しております。したがって、これに手を入れられては困るわけですけれども、逆に、さっきも申しましたように、一般国民は、長命というのが普通になっておりますと、寿命とかをやはり自分で考えていくという態勢に入っておりますので、そういうものをむしろ期待する形という方を私としてはとりたいと思っております。
  182. 松本文六

    松本参考人 公的な助成金が少なくなっているというのは、やはり国全般の責任、政治家の責任が非常に大きいだろうと思います。  例えば、先ほども申し上げましたけれども、公共関連事業に五十兆円も投資していますが、全く使われていない道路とか、そういうものがたくさんあるわけですね。そういうことについて、それこそ医療保険と同じように、おさらいをして、どこに問題があったかということをもう少しきっちり総括すべきじゃないか。  そして、一切責任をとらない、行政のだれ一人責任をとっていないですね。自分たちの政策を提案しても、政治家は責任をとらないし、行政マンも責任をとらない。総無責任体制の中で、七百兆というこれだけ大変な借金が出てきたということ自身については、できれば皆さん方自身の中で、何でそういうことになったかというのをもっともっとはっきりさせて、責任をとってもらうようなシステムにすれば、先ほど行天先生が言われましたような最低限の医療の原則はきちっと守れるのじゃないか。そこにメスをぜひ入れていただきたいなと私は思います。
  183. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 我が国の医療費、特に公費負担が適正かどうかということ、これはやはり客観的な数字で評価していくしか仕方ないのじゃないか。そういう意味では、OECDの挙げている数字等が適切ではないかなというふうに私は思っております。特に、その国のかい性といいますか、GDPに対する国民医療費、このパーセントがフランスやドイツと比べて我が国は格段に低いというこの事実、換算すれば十兆とも十五兆とも言われます。これだけ厚生省が長年の医療費抑制策で見事に医療費抑制に成功してきたという客観的な事実は、これは我々としても見逃すことはできないというふうに思っています。それだけに、やはり国民にもっと豊かな医療を提供する国の責任があるだろう、そういう意味でここの、本陣の先生方の格段の今後の御努力をお願いしたいというふうに思っております。
  184. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  185. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、中川智子さん。
  186. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、参考人の皆様においては、お忙しい中を本当にありがとうございます。  まず最初に糸氏参考人松本参考人に、同じ質問に対してお答えをお願いしたいと思います。  余りに頻発する医療事故の原因と対策みたいなところでお話しいただきたいのですが、新聞なんかに載るのは氷山の一角ではないかというふうに思います。私の友人の夫が市民病院の事務におりまして、おなかの中にメスを入れて忘れた、そういうもう初歩的なミスのもみ消しとか、そういうことでノイローゼになりました。そういうふうな話を聞きますと、非常に高レベルな医療を持ちながら、しかし本当に安心できない、このような事態に対して、医療事故というのがなぜこれほど起きてしまうのか、その原因と対策を、まず糸氏参考人、続いて松本参考人にお伺いしたいと思います。
  187. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 本当に残念なことに、最近医療事故の問題がクローズアップされておるところでございます。日本医師会もいろいろ努力しておりまして、医療安全管理士の養成ということで本格的に今動いておるところでございます。  医療事故は、医療担当者その人のミスということと、いま一つは医療システムの中で間違いが起こるという場合と、二つあると思うのです。いわゆるヒューマンファクターと申しまして、看護婦とかお医者さんのうっかりミスというようなことで起こるごく単純な初歩的なミスもございます。一方では、非常に医療が複雑化し、チーム医療になってまいりますと、システムの中での欠陥が医療事故に噴き出る場合もあります。  いろいろなケースが私はあると思うのですが、要は、やはりこれはあってはならないことですし、患者さんにしては安全と思っている病院が結果として死をもたらしたということは、医療担当者としては本当に申しわけないことですし、一日もこの問題はおろそかにできないと深刻に受けとめております。  特に、意外と看護婦基準とか医師基準が満たされているはずの大学病院とかそういうところで結構起こっているということも考え物でございます。  そういう意味で、やはり医療担当者たる者、おれも人間だから必ずいつかはミスを起こすのだという気概で毎日職場に立たれる、そういう初歩的な、気概といったものが私は一番大切なのではないかなというふうに思っております。
  188. 松本文六

    松本参考人 医療事故については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、一つは、臨床教育がきちっとなされていないということがあるだろうと思うのです。  その基盤として、現在の若いお医者さんなんかについて言いますと、教育の流れ全般が間違いを犯しても責任をとらなくてもいいというシステムだろうと思うのです。だから、小学校、中学校教育から見直さなければいかぬのではないかというふうに私は思います。  と申しますのは、受験戦争の勝者が比較的医学部には多いのですね。実際の受験勉強というのは、答えは一つしかありません。ところが、医療というのは、百人患者さんがいれば百人治療方針が違うわけです。一つだけの解答を求めていくと間違いを犯す、これは論理的にそうなるだろうと思います。  それから、大学教育の中で問題なのは、医師の素養として必要なのは、サイエンスの素養とアートの素養両方が必要だろうと思うのです。ところが、現在の医学教育の中では、教授になる人は基礎研究の論文が多いほど教授になりやすい。例えばネイチャーとかサイエンスという雑誌に載ると、インパクトファクターといって、教授選考基準の中で、そういう場合は十点、日本の小さな雑誌に十枚載せても一点だというような形で教授が決まってくるわけですね。だから、はしかを診られない小児科の臨床医というのも結構います。あるいは十年間手術をしていなくて外科の教授になっている。そういう人が教育する場合、基本的にはやはりきちっと教え切らないんですよ、教え切らない。  私は、九二年十一月十八日に四メートルのところからおっこっちゃって、肋骨数本と左の膝蓋骨と右の踵骨、かかとの骨を骨折しました。そして、縦隔洞といって、胸の中ですが、そこで出血ということで、開胸するかもしれないということで大学に運ばれました。  大学病院に入ってすぐ酸素を供給しているにもかかわらず、動脈血ガスというのをはかったわけですね。大体、一般的には一〇〇%としますと、私のは五〇%ぐらいまで下がっていたわけです。それなのに、血液ガスの検査をして、これはいいではないかと言って、すっとその酸素を外したのですね。  ところが、翌日、苦しくて苦しくてどうしようもない。酸素を入れるように主治医に言ってくれと言ったところが、主治医はいませんと。だれかいるだろうと言ったけれども、いませんと言うのですよ。私は、患者として入って、二週間絶対安静で寝ておったわけですが、先生、知らないのですか、大学は無医村ですよと言う。一体どういう意味かと私はちょっとびっくりしたのです。ほとんどの人がアルバイトに出ている、だから大学にはいないのだと。ええっということで、大変なあれになりました。  そういうように、教授自身が、基礎研究がいいものがないと教授になれない、臨床指導をしっかりやっても教授になる資格の実績にはならないということですね。そういうあたりが基本的な構造としてあるだろうということがあります。  それからもう一つは、看護婦さんなんかの問題にしてもそうですが、人の問題。それと医者の横暴、横暴な医者が中にいるのですね。医者が指示して、間違った指示でもそれをやれと。若くて力がなければないほど、看護婦の言っていることの方が正しいのだけれども、無理やり自分の指示を押し通そうとするわけです。そういう意味で、臨床教育というのは非常に大事なのです。そこがやられていないというのが問題です。  先ほどサイエンスとアートという話をしましたけれども、実際に、臨床医の中で高名な先生が、昔、三十年前に国立東京第一病院の院長をされておった方、お名前はちょっと忘れたのですが、一番いい医者は口で治す医者、次のいい医者が歯磨き粉で治す医者、一番だめな医者が化学構造式で治す医者と言われたわけです。これは、非常に象徴的な言葉だろうと思うのです。今の若い医者なんかは、化学構造だけで人を治そうとする、病気を治そうとするわけですね。ところが、先ほど言いました、口で治す医者、歯磨き粉で治す医者というのはアートの部分なのです。  患者さんの心理状態を的確に把握してそれに対してどう治療するかというのが、今の医学教育の中では全く欠けている。卒後二年間の研修教育の中でも欠けている。そういう意味で事故が頻発しているというふうに思います。横浜市立大学での患者の取り違えとか、私なんかには全く想像できかねる事態です。私だからか、あるいは私たちの世代だからなのか、ちょっと想像できない事故が余りにも多過ぎるだろうと思います。それは、基本的には医師の養成、治療チームのリーダーの医師の質の問題が一番大きいだろうと思います。
  189. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございます。研修医のときの教育、そして小中学校の教育がいかに大事かということが実によくわかりました。  次に、里見参考人にお伺いしたいのですが、今回の医療法の一部改正では、精神科の医療につきまして、いわゆる特例の見直し、適正病床数、社会復帰の推進、一切触れられていない。そのような形の中で、今回、慎重審議を尽くしてほしいということを野党は一貫して申しておりますし、きょうの参考人の皆様の御意見をしっかり受けて、引き続き審議をしっかりやりたいと思っていますが、私も、いわゆる精神疾患の友人たちの病院内での人権侵害に対して、いろいろな話を伺ってきました。  里見参考人がNPOの中で、今の精神病院のいろいろな人権侵害の実態、本当にこういうことが現実に起きているのだ、こういう声に対して、法律、行政というのは放置しておくのかという、先ほどのお話ではちょっと聞き足りなかった部分を、時間が余りないのですが、一言お願いしたいと思います。
  190. 里見和夫

    ○里見参考人 精神病院における人権侵害の実態ですが、まさに人権侵害のカタログと言ってもいいようなさまざまな問題があります。  例えば、先ほど御紹介しましたように、任意入院で入っても閉鎖病棟に入れられてしまうというのは、これは非常に著しい人権侵害の一形態であります。先ほど御紹介した大和川病院でもそうですが、任意入院で入って、保護室に一カ月近くも入れられていた、指定医の診察がないまま入れられていたというのも、大阪府の追跡調査で明らかにされております。これを人権侵害と言わずして何と言うかという問題があります。  最近でこそ少なくなりましたけれども、面会をなかなか認めないという病院もたくさんございます。かつての精神衛生法の時代から精神保健法になりましてからは、さすがに弁護士面会を認めないという病院はほとんどなくなりました。ただし、先ほど御紹介した大和川病院は、弁護士面会すら認めませんでした。私が大和川病院の弁護士面会を妨害された第一号でございます。多分、精神保健福祉法の中で、弁護士面会を認めなかったがゆえに損害賠償請求の裁判を起こして勝訴したのは私が最初であり、これが絶後ではないか。今後、また同じような間違いを起こすような病院はないというぐあいに信じておりますけれども、そういうような実態がございます。  それから、友人の面会、これは精神障害者が社会にできる限り早く復帰していくというためには極めて重要な契機でありますけれども、友人面会をなかなか認めようとしない病院は現在でもございます。大和川病院を退職した後、再就職した職員が、それまでは再就職先の病院は友人面会を認めていたのに、大和川病院と同じような手法で認めなくなったというような事例が私どものところに報告されてきています。これも人権侵害の実態の一つであります。  あるいは、時間がありませんので手短に申しますが、例えば、社会的入院患者が約十万人前後いるというように言われています。全入院患者約三十三、四万人の三分の一近くを占める。本来、医療的には退院が可能なのに、退院後の生活条件が整わないためにやむを得ず入院を継続させられるというような実態であります。これについても、私は大阪府の精神保健福祉審議会の委員をしておりますけれども、やはり患者にとっては著しい人権侵害の一つであるということが指摘され、その解消のためには、社会的な退院後の条件を整えるためにできる限り行政としては力を入れるべきだということが言われている。  こういうような訴え、これはもう枚挙にいとまがありません。電話の制限をされた、あるいは院内で十分な説明も受けずに血液検査をされて、またその結果の報告もしてくれない、インフォームド・コンセントが全然守られていないというような訴え、これは私どもの電話相談にもしょっちゅうかかってくる訴えであります。このように、人権侵害の事例は本当に挙げれば切りがないぐらいたくさんございます。  私は、先ほど申し上げた、この約十万人近い、本来なら医療的にはもう退院ができる患者さんを依然として病院にとどまらせておく、この人権侵害をどうしたらなくせるかということについて、一言だけ申し上げておきたいと思います。  退院後の生活条件、まず、住む家であります。家族がなかなか退院に協力しないというような実態がございます。私は、このような点について家族だけを非難するつもりはありません。ただ、さまざまな理由でなかなか受け入れられないというときに、精神障害の人が社会で単身で生活する条件を整える場合に、民間アパートはなかなか貸してくれません。
  191. 遠藤武彦

    遠藤委員長 そろそろまとめてください。
  192. 里見和夫

    ○里見参考人 はい。  そうすると、公的な住宅で精神障害者の単身者枠を設けていただく必要があるということになります。ところが、せんだって改正された公営住宅法施行令、この改正では、五十歳未満の精神障害者の単身者枠は依然として認められておりません。精神障害者をできる限り社会でというような方向に逆行する現状が、まだ依然として残っているということであります。ぜひこの点も、あわせて御検討いただきたいと思います。  以上です。
  193. 中川智子

    中川(智)委員 本当に大変勉強になりました。ありがとうございました。一生懸命頑張りたいと思います。  小児科の医療のことでも聞きたかったのですが、残念でした、時間がありません。きょうは本当にありがとうございました。
  194. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、上川陽子さん。
  195. 上川陽子

    上川委員 21世紀クラブの上川陽子でございます。  今回の医療法改正の中での医療従事者の配置基準につきまして、糸氏先生にまずお尋ねさせていただきます。  現在でも、医者あるいは看護者などの人員配置につきましては基準を満たしていないという病院が大変多く存在するということで、せんだって厚生省の方から、大臣からの御答弁もございましたけれども平成十一年度の立入検査によりますと、看護者の場合には九七・九%、しかしお医者さんの場合には六四・〇%という平均的な数字をいただきました。地域によりましては、北海道では四〇%、あるいは関東では七〇%と、データ的には地域による開きがございますが、しかし、平均的に六割という数字はなかなか低い水準だというふうに考えられるわけでございます。  これにつきまして、基準を満たせない理由ということでどんな理由があるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  196. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 基準を満たせない理由というのは、これは当該地域にいろいろ理由はあると思いますけれども、一つは、そういう従事者がなかなか来てくれないという場合が一つございます。看護婦が充足された、されたと言いながら、やはり地域によっては、お医者さんでもそうですけれども、呼んでもなかなか来てくれないというところが一つございます。  それと、現在の診療報酬の中でそういう方たちを基準どおり雇ってやっていった場合に、経営上、今の診療報酬ではやっていけないというような面がございます。そこそこの患者さんが十分あればいいのですが、実際、入院する患者さんが少ないといったような場合には、現在の医療一般について言えることですが、はっきり言って、今の診療報酬の中ではゆとりある医療というのはなかなか望めない。  例えば、患者さんに今の倍の時間をかける、あるいは三倍の時間をかけて患者さんと対話をしてやっていくというような場合は、これはとてもじゃない、倍をかけたから、三倍をかけたから診察料をようけくれるというわけではございません。それだけ患者が、例えば、三十人来ているのは三倍かければ十人になるということになります。そうすると、診療報酬は減ってくるということになります。  今の診療報酬の中ではゆとりある医療を保障するような診療報酬体系になっていないということが、一つ解決しなければならない大きな問題だろうと。これは、医療事故にも関係する問題でございますし、患者さんの満足度にも当然関係する問題です。  そういういろいろな、財政的な問題あるいはマンパワーの不足の問題等、いろいろなものが絡み合ってその地域特性の標欠病院というのがやはり生まれるのではないかなと思っておりますけれども、我々は、決してそれでいいと言っているわけではございません。やはり、当該病院に対してはできるだけ、あらゆる手だてを尽くしてそういう方々が充足するように、いろいろ御指導も申し上げ、お願いもしているというところでございます。
  197. 上川陽子

    上川委員 今回の改正の中で、療養型と一般型という形で分けるという措置はきちっととられるわけですけれども、それによって、医療従事者の数ということにつきましても、看護婦の場合にも変わってくる。引き上げられるということもありますが、今回の改正で、今の、基準を満たさない、達成状況が悪いという状況改善されるというふうに思われますでしょうか。先生、お願いいたします。
  198. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 この法が改正されることによって、診療報酬上きちっとした手当てがなされれば恐らくいいでしょうが、今のまま、診療報酬の手当てが全くなしで今までどおりでの改正ということになると、各病院の自己努力、経営上の努力をよりきっちりやらないとやっていけないだろうというふうに思っていますが、それぐらいのことは、各医療機関は患者さんを扱っている医療機関として当然努力すべきことだろうと。  また、厚生省当局にもいろいろ診療報酬上の手当てというものをお願いしてきておりますし、いずれ、それについては何とかやっていけるような見通しのある措置をとってくれるものというふうに期待しておるところでございます。
  199. 上川陽子

    上川委員 行天先生にお伺いいたします。  今現在の人員配置基準というのは最低の基準であるというような御指摘がございます。先ほど糸氏先生の方から、あるべき姿として、患者さん一人一人に対して個別的に看護体制をとることが望ましいのではないか、現実はなかなか厳しいわけですけれども、それが望ましいのではないかというお考えもございましたし、また、松本参考人からは、経営上の御努力も含めまして現場の御努力で、看護者の場合の配置基準として現在は二・五対一というような配置基準になっている、こういうようなお話もございました。  現在の医療従事者の配置基準というのは、何やら二十年代に決められたというふうにも伺っているわけでございますけれども、現在のように医療の質の向上ということも求められる中で、ニーズに合った基準という形で考えたときに、どういう考え方に立ってその基準を決めるべきとお考えなのか。また、今のお医者さんの場合には、十六対一あるいは四十八対一という非常に差がある水準になっているわけですけれども、これについて、先生の現在のところでの御評価というものについてお考えをお願いいたします。
  200. 行天良雄

    行天参考人 看護者中心でございますね。  御質問にお答えするとなりますと、看護者に関しましては、私は、まず病院がどういう形で患者さんを診るかということで看護者の数がおのずから決まってくると思いますので、病院というものをある程度、ある程度でございますけれども、分けていかなければ仕方がないというので、先ほど、今度の医療法の改正に関して一応賛成ということを示したわけでございます。  トータルでいきますと、急性でしかも高度の医療を必要とするところには、極端な場合、一対一はおろか、乱暴ですけれども、一人の患者さんに対して二人ぐらいも必要なところは当然出てくると思います。現に、今そういうことをやっている病院も日本ではあるわけでございますね。  ところが、数字で割りますと、三対一だ、四対一だ、あるいは二・五対一だということになりますけれども、看護者は生き物ですから休まなければいけませんし、そういうものを全部考えますと、夜中のある時間帯に関してどれだけの看護者が現実に配置できるかということが一つの目安だというふうに私は思っておりますので、全体から見ますと、足りない。そして、もっとこれはふやしていかなければいけないけれども、それは数字で言われる問題ではなくて、医療構造そのものを変えていかなければ無理だというふうに考えております。
  201. 上川陽子

    上川委員 ありがとうございます。  それでは、松本先生にお伺いいたしますけれども、先ほど医療の質の向上という観点から五項目の御指摘がございまして、その中の一つとして、情報の共有化という御指摘がございました。  今回の改正の中でも、医療における情報提供ということを推進していくために広告規制の緩和ということが盛り込まれておりまして、その一つの具体的な項目として、日本医療機能評価機構というところの医療評価の結果を広告することについての緩和が盛り込まれているということでございます。  理事長の病院では、現在、この機構の評価を受けていらっしゃいますでしょうか。
  202. 松本文六

    松本参考人 私どものところは、これが正式に発足する前の年に、試行段階のときに受けました。  実際問題として、これを受けたときに実は、一定程度期待しておったのですけれども、がっくりきたというのが正直なところですね。審査員のレベルが高い人と低い人と、従来の甘い医療観というんですか、やはり非常に古い医療観をお持ちの審査員の方もいるわけですね。私どもとしてはこれはもう当然指摘されると思ったようなことが指摘されなかったというような思いもあります。  その中で、有料化しました。有料化して約二百万ぐらいかかりますよね、受けるのに。そして、試行段階のときに、あと意見を聞かせてほしいと言ったら、全然そういう場は設けないと言われたんですね。そんな評価機構を受けても、自分たちが気がつかない改善点なんかを指摘してくれないようなところをわざわざ受けても、しようがない。今はシステムが変わっているかもしれませんけれども。そして、何人かのよその先生の意見を聞いても、あれはだめだよという意見が強くあったので、当面受ける気はないんです。  しかしながら、職員の組織的にレベルアップするときの機会としては、いいチャンスじゃないか。そう考えれば、二百万というのはそう高くはないなというふうに思います。  きちっとした評価というものは、今度医療法に入れるとすれば、これが広告できるというふうに思っていない医療機関がほとんどですから、そういう意味では、少なくとも経過期間として三年とか四年とか置いてこれを入れますよとすればもっと違った形になるのじゃないか。これは、あくまでも財団法人の医療機構の収入をよくする、経営をよくするために入れるんじゃないかと勘ぐりたくなるような内容だというふうに思っています。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  203. 上川陽子

    上川委員 大変厳しい実態ということで受けとめさせていただきたい。ありがとうございます。  医療機能評価のマニュアルの中に、医療事故に関しての対応とか姿勢とかという項目が幾つか入っているんですけれども、これにつきましては、もっと厳しいというか、細かく診断してチェックすべきではないかと私は思っているんです。そもそも現状評価が非常に厳しいということもありますが、医療事故という観点からマニュアルがきちっと運営され、またさらにそれが改善されるというふうになった場合に、医療事故が少なくなるという意味での効果ということについて、どんなふうにお考えでしょうか。
  204. 松本文六

    松本参考人 それについてはやはり、医療事故を少なくするという意味でいろいろな形のマニュアルができているということは、それに沿って院内体制を整えるという意味ではいいだろうと思います。  現実的には、私どもはそれとは関係なしに、メディカルリスクマネジメント委員会というのを院内につくってそういうことについて対処していこうということで、施設ごとにそういう委員を設けて、私ども医療法人財団天心堂全体のMRM委員会という形で対処していますので、医療機構を受けなければそれがおかしくなるということはあり得ないと思います。それは、基本的に医療機関として、医療事故をどうやって起こさないかということをシステムとしてつくるというのは当たり前のことだろうと思うのです。
  205. 上川陽子

    上川委員 この医療機能評価機構の評価の各細目については、情報開示という形について自主的な判断に任せるというような話がございますけれども、今現在、御自身の病院で行っていらっしゃるいろいろな形での改善あるいは対応ということについて、自主的に開示をするということについてはどのようにお考えでしょうか。
  206. 松本文六

    松本参考人 自主的に開示するというのは何を開示するのでしょうか。
  207. 上川陽子

    上川委員 医療事故で今取り組んでいらっしゃることに対してです。
  208. 松本文六

    松本参考人 それを自主的に開示するというのは、だれのために、何のために開示するかということですよね。実際問題として、カルテ開示なんかについては、私どもはそれについてはやりますということを一応ちゃんと張り出しています。だけれども、そういうことをしてどれだけ価値があるのかなという思いと、いまだにまだ開示してくれというのは全然ないんですね。だから、開示というのは、一体だれのために、何のために開示が必要なのかという内容の吟味が、レセプト開示も含めて私は必要じゃないかなと。  うちの場合はがんなんかを扱っているので、問題は、がんを告知できていない患者さんなんかに対して、本人が求めたときにどうするかというのが一つ問題ですね。それから、精神病の患者さんに開示する、基本的には開示してもいいというような話が原則として通用していますが、そこで混乱が起こったときにだれが責任をとるかという問題は、いまだに解決できていないだろうと思うのです。  そういう意味では、開示の問題についてはかなり慎重にしないと、結果として患者さんに迷惑がかかる場面もあり得るのじゃないかなというふうに思っています。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 上川陽子

    上川委員 時間が来ましたのでこれで御質問を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。
  210. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小池百合子さん。
  211. 小池百合子

    ○小池委員 保守党の小池百合子でございます。  本日は、参考人皆様方、ありがとうございます。九回裏、最後のバッターでございますので、よろしく御協力のほどお願いを申し上げたいと思います。  かなり専門的な御質問などが続いたところで、今回の医療法の改正、非常にわかりやすい、特に患者といいましょうか、先生方にお世話になる立場として、今回の広告規制の緩和、この実際上の運用効果は、プラスとマイナスとあろうかと思いますけれども、この辺はどのように見ておられるのか、糸氏先生に伺いたいと思っております。  これまでの広告と申しますと、病院名とか診療科名というようなベーシックなところで、どこの看板を見ても同じに見えたりしたわけでございますけれども、これからその内容についてはそれぞれ工夫が凝らされるということになるわけでございますね。それによって、患者の側からすれば選択の材料になるということにもなるわけでございますけれども、しかしながら一方で、イメージ広告が先行してしまうのではないかというようなことを指摘するところもあろうかと思います。例えば出身大学のブランド化が進むとか、いろいろな面のプラスマイナスもあろうかと思うのですが、このあたり、今回の法改正についてどのようにお考えになったのか、伺わせていただきたいと存じます。
  212. 糸氏英吉

    ○糸氏参考人 広告につきましては、私は、従来からもっと広告はオープンにやった方がいいという感じを持っていましたし、今回の改正は適切なものだというふうに思っております。その医療機関の機能、あるいは、ドクターはどういう方なのか、何が専門なのかということを患者さんが知りたいというニーズにこたえていくのは、医療機関の方としてはやはり当然のことだろうと思いますし、そういう意味では何も隠すことはないというふうに思っております。  ただ、今まで、医療広告で問題であるのはいわゆる過大広告、特にこれは命に関係しますので、下手をしますと、効きもしない、本当にそれが専門でもないものを専門にされたりというような問題があります。従来、保健所も広告については全く野放しなんですね。広告ですから、はっきり言ってうそを書いている、それによって見た人が大変な迷惑を受けているという実害があっても、保健所は別に取り締まりもしないし、ほったらかしというような状態がありました。  そういう意味で、私は、患者さんのために本当に適切な広告であれば、患者さんが知りたいということについてはどういうことでも広告して構わないと思いますけれども、そういう虚偽とか、あるいは患者さんが迷惑を受ける広告といったものに対して、それで行政がきちっとした対応をしてくれるのか、そこのところをやはりきっちり担保していただかないと、何でもかんでもということについては、私は問題だろうと。  行政が、きっちりした真っ当な広告ということを推進して、一般国民が迷うような広告については断固とした取り締まりをしてくれるということであれば結構だというふうに思っていますが、今まで余りにもそれがなかったということについて、非常に危惧の念を持っておるわけでございます。
  213. 小池百合子

    ○小池委員 続きまして、改正内容の中での、医療従事者の資質の向上の件についてでございます。  臨床研修について、医師について二年以上、歯科医師について一年以上の臨床研修の必修化というのが挙げられております。医学の勉強をなさった方がこういった形でいろいろな意味で現場を体験するというのは大変重要なことだと思います。と同時に、私は、例えば僻地の医療に従事するとか、できるだけそれが、何かプラス人生経験というのでしょうか、それにもつながるような研修内容も加えてほしいものだと。  先ほどから、本日の参考人の皆さんがそれぞれ、アートであるというようなお話もございました。例えば、お年寄りの方が入院しても、本当に若いお医者さんがまさに習いたての、方程式ではないですけれども、それをまくし立てて、そもそも心が通わないで、ほかのところはないかということで御相談に見える方とか、そういった事例もたくさんあるようでございます。  口で治すのが一番いい医者だということをおっしゃいました。こういった点も含めて医学の教育ということを、広い意味でございますけれども、先ほど来、さすがNHK御出身で、時間内にびしっと、多分一秒も残さずにお話を締めくくられました行天さん、パラダイムの整理もしていただいて非常にわかりやすかったわけでございますけれども、こういった医学教育という点について、改めてポイントを伺わせていただきたいと存じます。
  214. 行天良雄

    行天参考人 教育は、当然教える側と受ける側があるわけでございますけれども、受ける側の方から申しますと、二年間というのは非常に長うございますので、生活をある程度保障しなければならないという問題がまずございます。それで、お話が出ましたように、司法研修と同じように、全く別の予算体系をつくって、そこでその方たちの生活というものにある程度の保障をしながらやらなければ、これはちょっと気の毒というよりむちゃな話ではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、どういう授業を受けるかという問題で、今小池先生がおっしゃったように、僻地そのほかで人間関係を勉強する、これはもちろん否定しませんし、非常に大事なこれからの医療の一つだとは思いますけれども、二年間でそこまでやれる時間があるかないかというのがまず問題だというふうに私は思っております。それほど今の医学で勉強してもらわなければならない問題が余りにも大きいわけでございます。これが受ける方の立場でございます。  それから、一番問題なのは教える方でございます。日本の今までの医療構造の中で、こういった後輩をきちっと育てるだけの、つまり身をもって示す教育者というものが現に一体どのくらいいらっしゃるだろうか。また、今後どの程度期待できるだろうか。ちょうど病人に対する問題と同じように、一人の医師を養成するためには全人的な教育体系が必要でございますから、一人の専門家が必要だといって現にやっている国がたくさんございますけれども、日本では漠然と、どこかの病院、大学でもう一遍少し、二年間やればいいのだと言っていることは、ある意味では物すごい時間のむだだと思っております。  したがって、教育は双方の問題であるので、よほど国というものが腰を据えて、まずお金の面で、そして次に制度の面で、ちょこちょこっと思いつきでやれるような問題ではないということを、まず行政の方に、当然わかっていることとはいえ、確認したいことと、もう一つは、国民全体が、もうちょっと勉強してもらえばいいといったような、ただ漠とした期待ではなくて、相当きちっと期待していただければと。実態を知っていただきたいというのが私の願いでございます。
  215. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。非常に的確な、そして重い御指摘をいただいたと考えております。  実際、その本人にとってみれば、一年なり二年なりというのは大変長うございますが、患者、そしてまたいろいろな観点から考えますと、お医者さんの寿命も延びているわけでございますから、この一年、二年が本当の意味で一生の仕事としての医師また看護者としての質の向上につながることに資する今回の医療法の改正につなげていきたいものだと考えているところでございます。  最後にもう一度行天さんにお願いをしたいところでございます。  これは午前中に参考人に伺った健保法の改正絡みにもなるのでございますけれども、社会保障に関する有識者会議のメンバーでもいらっしゃいますね。せんだってその審議の内容が公表もされたわけでございますけれども、先ほど、三十九年間、これは日本の財産であるとおっしゃいました皆保険の問題、これが今回も、これから持続できるのかできないのか、すべきなのかどうなのか、こういった議論も大いに展開されたということが想像がつくわけでございます。  ただ、財産でありながらも、人口構造が変わる、生活が変わる、家族が変わる、そしてまた、先ほどありました、それこそ死生観とか社会観とかが変わる、いろいろな変化によって、今、保険というのはある意味で名ばかりで、半分はもう国庫負担に変わっているということが現実だろうというふうに考えております。その意味で、この部分の抜本的改正ということをやっていかなければ、医療も健保も本当の意味の抜本的な改正にはつながらないのではないかと私は考えているわけでございます。  もうあと二カ月で二十一世紀が来るわけでございますが、今、また今だけでなくて、これからの長い期間を見た中での保険の限界ということについてはどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと存じます。
  216. 行天良雄

    行天参考人 今、有識者会議医療保険そのほかに対する発言が相当活発に行われただろうという御指摘があったのですが、実は余り出ませんで、有識者会議の大半が、年金を中心とする負担給付の問題に集中しておりました。したがって、医療に関しては本当にわずかでございまして、きょう委員の先生方がお集まりになって医療問題をお話しいただいているということは、私としては非常に心強いことでございます。  というのは、やはり医療というのは、国民全体にとっては、年金と同じく、あるいは年代によっては年金以上に重大な関心のある事柄だろうというふうに私は思っているわけです。したがって、そこでの給付負担という問題に関しましては、保険でやるか、あるいは税金でやるかということは、今後、やはり多くのいろいろな問題の中で国民が選択していく以外にはないと思っております。  とりあえず何から着手するかといったら、私はとにかく、何が何でもまず医療保険の現行の最低線だけは守っていきたいと。そのためには当然、切るところは切る、あるいは譲るべきところは譲るという大問題が前提としてあるわけでございます。  この医療をめぐります問題は、さっきも申しましたように、皆保険ということ、これは大きく分けたら、受益者そのものである国民全体と同時に、同じ意味では生活基盤をつくっていらっしゃる医療側、この両方が皆保険というものを綱引きしながら、両者がこれを一生懸命支える形をとるという、ちょっと奇異な感じで事柄が動いております。ですから、これはいいとか悪いとかじゃなくて、この構造の中で、国民もよく考えて選択していかなければいけないのじゃないかというふうに思っているわけです。  繰り返しますけれども、両極端でございまして、国民が余りにもいい気になり過ぎていて、保険証一枚でただで診てもらえるのが当たり前だと思っているし、次から次へと義経の八艘飛びみたいに診てもらっているのはけしからぬとか、複数受診も変だとか、いろいろなことも言われます。  また一方では、医師の場合ですと、事故が起こればどうだ、あるいは請求そのほかに関しても疑問があるといって、とにかく両者ともに出てくる話は悪い方の話ばかりです。  繰り返しますと、基本的に、この制度によってどれほどこの国が栄え、かつ、日本人が安定し、安心した生活を持っているかということを十二分に考えていただきたいので、そのためには、ほかを削ってでも犠牲を出さなければいけないというふうに私は考えております。
  217. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  まさに、それだけ皆保険制度というものが空気のような存在にまでなじんだということだというふうに考えたところでございます。  もう時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、本日の皆様方の御意見をぜひとも生かしていきたいと思っております。ありがとうございました。
  218. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言御礼を申し上げます。  参考人皆様方には、長時間にわたって御臨席を賜り、かつまた貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  次回は、明十一月一日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会