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前田委員 とにかくなかなか難しいことだとは存じますけれ
ども、
日本国民のために頑張ってください。
二十一世紀におきまして、ロシアは多かれ少なかれ経済的に復興を遂げることは確実でありまして、そして、ロシアは、
日本にとっては
安全保障上の
観点からも非常に重要な国家となることはもちろん明らかでございます。こうした大国への外交戦略を、単にファーイースト、極東の
観点からだけではなく、しかもまた北方領土という領土問題のみを基軸にして
考えるだけではなくて、とにかく
日本外交全体を
考えられて、国益を
考えられてやっていただきたいと存じます。
また、私は、二十一世紀の外交戦略は、とにかくグローバル化した複眼的な視点を持って、しかも
冷戦構造という枠組みにとらわれないものにするべきであると
考えております。このような
観点からしますと、ロシアにとって西側の重要な隣国であり、経済的にも著しい復興を遂げておりますポーランド及び欧州の眠れる獅子と言われておりますウクライナとの関係は、私は、対ロ政策において重要な位置をこれから占めてくると思います。にもかかわらず、
冷戦構造下の東欧国家といういわばバイアスがかかっているんでしょうか。私は、ポーランド及びウクライナの重要性が
日本外交の中で見落とされているような気がしてなりません。
かの明治の元勲の山県有朋は、対ロシア政策にとってポーランドの重要性を強調しても強調し過ぎることはない、こういう
指摘をしておりました。この山県有朋の
指摘は、また次の二点からも、現代社会においてより一層深みを持ってきていると
考えます。
第一は、地政学的な見地からのものであります。
ポーランドは、平和のためのパートナーシップ構想のもとで、九四年の七月にNATOの合同演習に参加して、五年後の九九年三月には、ハンガリー、チェコとともにNATOに加盟したわけでございます。その結果、ポーランドの東側の国境がNATOの東の極限となって、
安全保障上の重要性が一層増してきました。しかも、この国境を挟んで対峙するのは、先ほど言いました欧州の眠れる獅子、ウクライナであります。
ウクライナは、単に
世界の穀倉地帯ではなくて、旧ソ連の遺産であります軍需産業を含む機甲戦力、そしてロシアの黒海艦隊、核兵器を有する、人口五千三百万人を抱える欧州の潜在的な大国であります。
このウクライナと先ほど申し上げたポーランドの地域の安定化に
日本が貢献することは、EU圏あるいはロシア圏の
安全保障上あるいは経済上の安定にも貢献することにつながっていくと思います。ここで
日本外交の重要な戦略的なカードを保有することになると私は
考えております。
もう一つ、第二の
観点ですけれ
ども、経済的見地からのものであります。
ポーランドが財政再建と構造改革を急進的に行うバルツェロビッツ・プランを実施した結果、インフレが抑制されて通貨も安定しております。GDP成長率は、九四年には五・〇%、九五年七・〇%、九六年には六%を達成して、二〇〇〇年のGDP成長率の予想は五・二%となっております。このように、ポーランド経済の成長は目覚ましく、活気にあふれたものでございます。このままいけばポーランド経済は、早ければ二〇〇五年、遅くとも二〇一〇年までには確実にEU経済を支える経済大国の一員になっていくと
考えております。
また、ポーランドは、公式には二〇〇二年、遅くとも二〇一〇年には確実にEUに加盟いたします。このことは、ポーランドがヨーロッパの中心に存在するという地理的な
観点をさらに深めるものであると思いますし、ヨーロッパでの人、物、金の
流れに重大な
変化をもたらすものであると
考えます。
あえて言いますならば、ドイツの首都ベルリンからポーランド国境まで、この国会から千葉県庁へ行くぐらい、一時間で行ける距離でございます。このポーランドの地理的な利点は、何もドイツやEUに対してだけのものではありません。先ほどから強調しておりますロシア経済圏へのアクセスにも極めて重要な位置を占めておりますし、「連帯」の発祥地グダニスクを中心とした環バルト海の経済圏にも非常に重要な位置を占めておると
考えます。
人口三千八百万人も存在して、
国民の平均年齢が四十歳未満、
日本の高度経済成長期を思わせる若い年齢層が支える国家であります。ポーランド
国民は、また極めて英語に堪能でありますし、数学におけるポーランド学派というのもあるくらい数学的、物理学的思考にたけて、まさしくIT経済を支え、遺伝子工学を支えていく人材の宝庫でもあります。しかも、ボローニャと呼ばれる海外のポーランド系住民は、金融の町シカゴでも
アメリカ経済に重大な影響を有しております。
この中欧の大国のポーランドに対する昨今の
日本の対応はいかなるものであったのでございましょうか。このグローバル化した社会における対ロシア政策、外交戦略上の視点がちょっと欠落しているのではないか。また、
冷戦構造の枠組みにとらわれた東欧という名の中部ヨーロッパ諸国の軽視、これが一九九〇年代の
日本の対ユーラシア外交の問題点ではなかったか。私はそう
考えます。このことは、中欧外交において
日本外交のゆがんだ視点になっていると思います。
人口三千八百万人のポーランドに対して、
日本の対ポーランド投資は九億六千万ドル。一方、隣国のハンガリーは、一千万人の人口にもかかわらず、
日本の対ハンガリー投資は四十六億八千万ドルであり、単純にポーランド一人当たりの投資額はハンガリー一人当たりの投資額の二十分の一。逆に言えば、ハンガリー経済よりもポーランド経済の方が発展しておりますので、二十倍もの潜在的な発展、成長の見込まれる地域であります。
こうした対中部ヨーロッパ政策は、二十一世紀を迎えるに当たって、今転換されるべき時期に来ているのではないでしょうか。ロシア経済も、先ほど申し上げたように、必ず復興するでありましょう。このとき、経済大国ドイツとの間にある成長した中欧の大国のポーランドは、非常に
我が国にとって外交戦略上重要な国になっていくと思います。この重要な国に対して
日本政府はどういう外交戦略を今お持ちなのか、また、それに基づいてどのようなことを行ってこられたのか、お答え願いたいと思います。